JP2019189770A - ポリスチレン系樹脂組成物、シート、及び成形品 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]
ポリスチレン系樹脂(a)と結晶性ポリアミド系樹脂(b)とを含むポリスチレン系樹脂組成物であって、前記ポリスチレン系樹脂(a)は、スチレン系単量体単位と、(メタ)アクリル酸単量体単位と、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位とを含むスチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体であり、前記ポリスチレン系樹脂(a)を100質量%として、前記スチレン系単量体単位の含有量が49〜99質量%、前記(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量が0〜16質量%、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が1〜35質量%であり、前記ポリスチレン系樹脂組成物を100質量%として、前記ポリスチレン系樹脂(a)の含有量が85〜99質量%、前記結晶性ポリアミド系樹脂(b)の含有量が1〜15質量%であることを特徴とする、ポリスチレン系樹脂組成物。
[2]
JIS K7361−1に準拠して測定した曇り度が、30%以下である、[1]に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
[3]
前記ポリスチレン系樹脂(a)の重量平均分子量(Mw)が、10万〜35万である、[1]又は[2]に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
[4]
[1]〜[3]のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする、シート。
[5]
[4]に記載のシートからなることを特徴とする、成形品。
本実施形態のポリスチレン系樹脂組成物は、ポリスチレン系樹脂(a)と結晶性ポリアミド系樹脂(b)とを含むポリスチレン系樹脂組成物であって、前記ポリスチレン系樹脂(a)は、スチレン系単量体単位と、(メタ)アクリル酸単量体単位と、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位とを含むスチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体であり、前記ポリスチレン系樹脂(a)を100質量%として、前記スチレン系単量体単位の含有量が49〜99質量%、前記(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量が0〜16質量%、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が1〜35質量%であり、前記ポリスチレン系樹脂組成物を100質量%として、前記ポリスチレン系樹脂(a)の含有量が85〜99質量%、前記結晶性ポリアミド系樹脂(b)の含有量が1〜15質量%であることを特徴とする、ポリスチレン系樹脂組成物である。
本実施形態のポリスチレン系樹脂組成物は、上記のように、特定の組成を有するポリスチレン系樹脂(a)と結晶性ポリアミド系樹脂(b)とを特定の割合で含有することで、従来のポリスチレン系樹脂と結晶性ポリアミド系樹脂との組み合わせでは得られない、透明性の発現を可能にしている。その透明性の発現機構は明らかではないが、推定するに、ポリスチレン系樹脂組成物中で連続相を形成する特定組成のポリスチレン系樹脂(a)と、結晶性ポリアミド系樹脂(b)とを混合することで、その相互作用により、結晶性ポリアミド系樹脂(b)の分散径が微分散化し、結晶化も抑制されるため、透明性が発現するものと考えられる。
更に、本実施形態の樹脂組成物は、上述のとおり、実質ポリスチレン系樹脂(a)が連続相を形成し、そこに結晶性ポリアミド系樹脂(b)が微分散する構造であるにもかかわらず、驚くべきことに、一般のポリスチレン系樹脂や、ポリスチレン系樹脂が連続相を形成する樹脂と比較して、著しく耐薬品性が向上している。また、ポリスチレン系樹脂(a)が連続相を構成するため、ポリスチレン系樹脂に特有の成形加工性、成形安定性、寸法安定性等に優れる性質を発現することができる。
本実施形態のポリスチレン系樹脂(a)は、スチレン系単量体単位と、(メタ)アクリル酸単量体単位と、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位とを含むスチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体であり、ポリスチレン系樹脂(a)を100質量%として、前記スチレン系単量体単位の含有量が49〜99質量%、前記(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量が0〜16質量%、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が1〜35質量%である。
本実施形態のポリスチレン系樹脂(a)に含まれるスチレン系単量体単位を構成するスチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が挙げられる。これらは、単独で又は混合して使用できるが、特にスチレンが好ましい。
本実施形態のポリスチレン系樹脂(a)に含まれる(メタ)アクリル酸単量体単位は、主に、ポリスチレン系樹脂(a)の耐熱性を向上させる役割を果たす。
(メタ)アクリル酸単量体単位を構成する(メタ)アクリル酸単量体としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、(メタ)アクリル酸の塩等が挙げられる。これらは、単独で又は混合して使用できるが、ポリスチレン系樹脂(a)の耐熱性を向上させる観点から、メタクリル酸が好ましい。
本実施形態のポリスチレン系樹脂(a)を100質量%として、(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量は、0〜16質量%であり、好ましくは3〜14質量%、より好ましくは6〜13質量%の範囲である。(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量が16質量%を超えると、耐熱性には優れるものの、良好な透明性を発現することが困難となる。
本実施形態のポリスチレン系樹脂(a)に含まれる(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は、主に、ポリスチレン系樹脂(a)の機械的強度を向上させる役割を果たす。更に、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は、ポリスチレン系樹脂(a)の耐候性、表面硬度等の特性の向上にも寄与する。
(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を構成する(メタ)アクリル酸エステル単量体は、エステル部の炭素数が1〜18であることが好ましく、より好ましくは1〜4である。
(メタ)アクリル酸エステルのエステル部としては、メチル、エチル、ブチルといった脂肪族炭化水素、シクロヘキシルといった脂肪族環状炭化水素等が挙げられ、特にメチルが好ましい。
具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸テトラデシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ヘキサデシル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸テトラデシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ヘキサデシル、メタクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらは、単独で又は混合して使用できるが、特にメタクリル酸メチルが好ましい。
本実施形態のポリスチレン系樹脂(a)を100質量%として、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の含有量は、1〜35質量%であり、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは3〜15質量%である。(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の含有量が1〜35質量%であることにより、良好な透明性を発現することができる。
本実施形態のポリスチレン系樹脂(a)の重量平均分子量(Mw)は、10万〜35万であることが好ましく、より好ましくは13万〜30万、更に好ましくは16万〜25万である。重量平均分子量(Mw)が10万〜35万である場合、衝撃強度と流動性とのバランスに優れるポリスチレン系樹脂(a)が得られ、またゲル化物の混入も少ない。
本実施形態のポリスチレン系樹脂(a)のZ平均分子量(Mz)の重量平均分子量(Mw)に対する比(Mz/Mw)は、1.6〜3.5であることが好ましく、より好ましくは1.7〜3.0、更に好ましくは1.7〜2.5である。Mz/Mwが1.6〜3.5である場合、衝撃強度と流動性とのバランスに優れるポリスチレン系樹脂(a)が得られ、またゲル化物の混入も少ない傾向となる。
なお本開示で、重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)は、ゲルパーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン標準換算で測定することができる。
ポリスチレン系樹脂(a)の含有量は、本実施形態のポリスチレン系樹脂組成物を100質量%として、85〜99質量%であり、好ましくは87.5〜99質量%であり、より好ましくは90〜99質量%である。
本実施形態のポリスチレン系樹脂(a)は、例えば、以下に示す重合方法により製造することができる。
((重合工程))
本実施形態のポリスチレン系樹脂(a)の重合方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法等、公知のスチレン重合方法が挙げられる。これらの重合法は、バッチ重合法であっても連続重合法であってもよく、生産性の点から連続重合法であることが好ましい。
連続塊状重合法としては、例えば、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体、必要に応じて重合溶媒、重合開始剤、及び連鎖移動剤等を添加及び混合して、単量体類を含む原料溶液を調製する。単独或いは直列及び/又は並列に配列された2個以上の反応器と、未反応単量体等の揮発性成分を除去する脱揮工程のための脱揮装置とを備えた設備に、上記原料溶液を連続的に送入し、段階的に重合を進行させる方法が挙げられる。
重合溶媒は、一般的に連続塊状重合や連続溶液重合において重合速度や分子量等を調整するために用いられる。重合溶媒としては、特に制限はないが、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、及びキシレン等のアルキルベンゼン類、アセトン及びメチルエチルケトン等のケトン類、並びにヘキサン及びシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が挙げられる。
重合溶媒の使用量は、特に限定されるものではないが、ゲル化の制御、生産性の向上、分子量の増大等の観点から、通常、重合反応器内の重合溶液全体100質量%に対して1〜50質量%であることが好ましく、3〜20質量%であることがより好ましい。
重合開始剤としては、特に制限はないが、有機過酸化物、例えば、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、及びn−ブチル−4,4ービス(t−ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、及びジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、及びイソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、並びにt−ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。
重合開始剤は、スチレン系単量体に対して0.005〜0.08質量%使用することが好ましい。
連鎖移動剤としては、特に制限はないが、例えば、α−メチルスチレンダイマー、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、及びn−オクチルメルカプタン等を挙げることができる。
連鎖移動剤は、スチレン系単量体に対して0.01〜0.50質量%使用することが好ましい。
脱揮装置としては、例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機等の通常の脱揮装置を用いることができ、一般的には加熱器付きの真空脱揮槽や脱揮押出機等が用いられる。脱揮装置の配列としては、例えば、加熱器付きの真空脱揮槽を1段のみ使用したもの、加熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したもの、及び加熱器付きの真空脱揮槽と脱揮押出機とを直列に接続したもの等が挙げられる。揮発成分を極力低減するためには、加熱器付きの真空脱揮槽を直列に2段接続したもの、又は加熱器付きの真空脱揮槽と脱揮押出機とを直列に接続したものが好ましい。
本実施形態の結晶性ポリアミド系樹脂(b)としては、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン1010、ナイロン11、ナイロン12等の脂肪族系ポリアミド系樹脂、これらの脂肪族ポリアミドとテレフタル酸(T)、イソフタル酸(I)等のジカルボン酸との共重合体、例えば、ナイロン66/6T、ナイロン66/6I、ナイロン66/6T/6I等、及びこれらの混合物等を挙げることができる。これらの中でも、特にナイロン6及びナイロン11が好ましい。
なお本開示で、結晶化度は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて算出される値である。測定された結晶融解時の熱量から以下のとおり算出される。
結晶化度=Q/Q100×100
Q:DSCにより測定された融解熱量
Q100:結晶化度100%での融解熱量
なお本開示で、融点は、JIS K7121に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により測定される値である。測定で現れた吸熱を示すピークを樹脂の融解を示すピークとし、最も高温側に現れた吸熱を示すピークにおける温度を、融点とする。
結晶性ポリアミド系樹脂(b)の含有量は、本実施形態のポリスチレン系樹脂組成物を100質量%として、1〜15質量%であり、好ましくは1〜12.5質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。結晶性ポリアミド系樹脂(b)の含有量が1〜15質量%であることにより、透明性を発現することができる。
本実施形態のポリスチレン系樹脂組成物を1mm厚に成形したときの曇り度(%)は、30%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下、更に好ましくは10%以下である。曇り度の下限は特にない。1mm厚での曇り度が30%以下であれば、薄肉透明用途での適用が可能と考えられる。
なお本開示で、曇り度は、JIS K7361−1に準拠して算出される値である。
本実施形態のポリスチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度は、電子レンジでの使用環境の観点から、108℃以上が好ましく、より好ましくは113℃以上、更に好ましくは117℃以上である。また、ビカット軟化温度の上限は特にない。
なお本開示で、ビカット軟化温度は、JIS K7206に準拠して、荷重49N、昇温速度50℃/時にて測定される値である。
本実施形態のポリスチレン系樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で従来公知のその他の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂としては、特に限定されるものではなく、スチレン−ブタジエンブロック共重合体やMBS樹脂等の補強材やポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。
また、本実施形態のポリスチレン系樹脂組成物には、スチレン系樹脂組成物において使用が一般的な各種添加剤を、公知の作用効果を達成するために適宜添加することもできる。かかる添加剤としては、例えば、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、可塑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、鉱油等が挙げられる。
これらの配合の方法については特に規定はないが、例えば、樹脂の重合時に添加して重合する方法や樹脂組成物を得る際、ブレンダーで予め添加剤を混合し、押出機やバンバリーミキサー等にて溶融混錬する方法等が挙げられる。
本実施形態のポリスチレン系樹脂組成物における添加剤の含有量は、5質量%以下であることが好ましい。
本実施形態のポリスチレン系樹脂組成物は、例えば、上述の製造方法でスチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位とを重合して得られるポリスチレン系樹脂(a)と、結晶性ポリアミド系樹脂(b)と、必要に応じて上述の添加剤等とを、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー等の公知の混練機を用いて溶融混練する方法等で得ることができる。なお、上述のポリスチレン系樹脂(a)の製造工程において、上述の添加剤等を適宜添加することにより、本実施形態のポリスチレン系樹脂組成物を製造してもよい。
本実施形態のシートは、本実施形態のポリスチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする、シートである。
本実施形態のシートは、耐熱性、耐油性、透明性に優れ、沸騰水、電子レンジ等で加熱され、特に揚げ物等油を多く含む食品容器等に有用である。
シートの厚みは、成形品での用途により変化し、特に限定されるものではないが、通常は0.1〜2.0mmである。
本実施形態のシートは、単独で容器に使用しても良いし、更に他の樹脂シートと複合化(ラミネート化)して使用しても良い。他の樹脂シートの種類としては、一般のポリスチレンに使用されるものを用いることができる。
本実施形態のシートの製造方法としては、特に制限されず、押出成形、射出成形等の一般の公知の方法を用いることができる。例えば、単軸又は二軸押出機等により溶融した樹脂組成物をT−ダイ又はサーキュラーダイから押出し、少なくとも一軸、好ましくは二軸延伸する。延伸の方法は、一軸延伸の場合は、シート化するための付属設備であるロールの速度比を変えて行う。二軸延伸の場合は、例えば、ロール群の速度比を変えて一軸延伸した後、テンターで垂直方向に延伸する等の方法で行うことができる。
このようにして得られたシートは、通常巻き取りロール等により巻き取られる。
本実施形態の成形品は、本実施形態のポリスチレン系樹脂組成物を含むシートからなることを特徴とする、成形品である。
本実施形態のシートを、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、両面真空成形、プレス成形等の従来公知の方法により二次加工して、各種の容器(トレー類、コップ類、カップ類等)を成形することができる。
実施例及び比較例において各種物性の評価に用いた試験法、原材料は以下のとおりである。
測定及び評価方法は以下のとおりである。
プロトン核磁気共鳴(1H−NMR)測定機で測定したスペクトルの積分比から、ポリスチレン系樹脂(a)の組成を定量した。
試料調製:樹脂ペレット30mgを重ジメチルスルホキシド(d6−DMSO)0.75mLに60℃で4〜6時間加熱溶解した。
測定機器:日本電子(株)製 JNM ECA−500
測定条件:測定温度25℃、観測核1H、積算回数64回、繰り返し時間11秒。
(スペクトルの帰属)
スチレンの芳香族水素、メタクリル構造のαメチル、エステルのCH3水素、カルボン酸水素の積分値より、スチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量(質量%)を求めた
ポリスチレン系樹脂(a)の重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)の重量平均分子量(Mw)に対する比(Mz/Mw)を、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、以下の条件で測定した。
・試料調製:測定試料5mgを10mLの溶媒に溶解し、0.45μmのフィルターでろ過をおこなった。
・測定条件
装置:東ソー製HLC―8220
分別カラム:東ソー製TSK gel Super HZM−H(内径4.6mm)を2本直列に接続
ガードカラム:東ソー製TSK guard column Super HZ−H
測定溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
注入量:10μL
測定温度:40℃
流速:0.35mL/分
検量線の作成には東ソー製のTSK標準ポリスチレン11種類(F−850、F−450、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000)を用いた。1次直線の近似式を用いて検量線を作成した。
ポリスチレン系樹脂(a)の屈折率(%)は、ポリスチレン系樹脂(a)をプレス成形でフィルム状にし、アタゴ社製アッベ式屈折計DR−M2を用いて、JIS K7142に準拠し、23℃で測定した。
ポリスチレン系樹脂組成物1gをジメチルホルムアミド5mLに溶解させた。この溶液を濃縮し、テトラヒドロフラン5mLを用いて結晶性ポリアミド系樹脂(b)を再沈殿させ、分離した。再沈殿させた結晶性ポリアミド系樹脂(b)の質量を測定することにより、ポリスチレン系樹脂(a)及び結晶性ポリアミド系樹脂(b)の各含有量(質量%)を求めた。
ポリスチレン系樹脂組成物について、押出機(東芝機械社製、製品名:TEM26SS)を用いて、シリンダー温度220℃、吐出10kg/hでペレタイズする際、サージングにより押出が困難な場合を×(不可)、サージングが起こるものの、押出可能な場合を△(可)、安定した押出が可能な場合を〇(良好)と評価した。
ポリスチレン系樹脂組成物の耐薬品性を評価するため、成形機(創研社製)を用いて、温度200℃、圧力10MPaでプレス成形した試験片(直径3.0mm、厚さ2mm)をメチルエチルケトン(MEK)溶媒中に浸漬させた。2時間静置後に外観観察を行い、MEKにほとんど溶解しなかったものを〇(良好)、一部溶解したものを△(可)、完全に溶解したものを×(不可)とした。
ポリスチレン系樹脂組成物の厚さ1mmの射出成形試験片を用い、JIS K7361−1に準拠して曇り度(%)を測定した。透明性について、1mm厚の曇り度が30%以下を〇(良好)、30%〜70%を△(可)、70%以上を×(不可)と評価した。1mm厚での曇り度が30%以下であれば、薄肉透明用途での適用が可能と考えられる。
ポリスチレン系樹脂組成物の耐熱性について、JIS K7206に従い、49N、50℃/時の条件でビカット軟化温度(℃)の測定を行った。
〈ポリスチレン系樹脂(a)の原料〉
スチレン系単量体:スチレン
(メタ)アクリル酸単量体:メタクリル酸
(メタ)アクリル酸エステル単量体:メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル
〈その他〉
重合開始剤:1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン
[樹脂A]
スチレン70質量部、メタクリル酸8.5質量部、メタクリル酸メチル6.5質量部、エチルベンゼン15.0質量部、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン0.025質量部からなる重合原料組成液を、0.8L/時の速度で、容量が3.6リットルの完全混合型反応器、容量が6.2リットルの層流型反応器、更には未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置に、連続的に順次供給した。完全混合反応器の重合温度は124℃、層流型反応器の温度を128℃とした。脱揮された未反応ガスは−5℃の冷媒を通した凝縮器で凝縮して未反応液として回収し、ポリマー分は樹脂ペレットとして回収した。得られた樹脂Aの重量平均分子量(Mw)は19.5万、Z平均分子量(Mz)の重量平均分子量(Mw)に対する比(Mz/Mw)は2.0、屈折率は1.576であった。
スチレンを60質量部、メタクリル酸を12.5質量部、メタクリル酸メチルを12.5質量部とした以外は、樹脂Aと同様の条件で製造し、樹脂Bを得た。得られた樹脂Bの重量平均分子量(Mw)は19.3万、Z平均分子量(Mz)の重量平均分子量(Mw)に対する比(Mz/Mw)は2.2、屈折率は、1.569であった。
(メタ)アクリル酸エステル単量体として、メタクリル酸メチル6.5質量部の代わりに、メタクリル酸メチル4.9質量部及びアクリル酸ブチル1.6質量部を使用した以外は、樹脂Aと同様の条件で製造し、樹脂Cを得た。得られた樹脂Cの重量平均分子量(Mw)は20.1万、Z平均分子量(Mz)の重量平均分子量(Mw)に対する比(Mz/Mw)は2.1、屈折率は、1.571であった。
スチレン−メタクリル酸共重合樹脂[PSジャパン製、商品名:PSJポリスチレンG9001、スチレン/メタクリル酸比=93/7、重量平均分子量(Mw)=18.8万、Z平均分子量(Mz)の重量平均分子量(Mw)に対する比(Mz/Mw)=2.1、屈折率:1.583]を使用した。
スチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂スチレン/メタクリル酸メチル比=70/30、屈折率:1.56]を使用した。
スチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂、スチレン/メタクリル酸メチル比=40/60、屈折率:1.53]を使用した。
[PA6]:DSM製、ナイロン6(商品名:Novamid 1020J)、屈折率:1.53
得られたポリスチレン系樹脂(a)(樹脂A)90質量部と結晶性ポリアミド系樹脂(b)(PA6)10質量部とを、250℃に設定した二軸押出機(26mmφ、L/D=48.5)により溶融混練した後、ストランド状に押出してペレタイズすることにより、ポリスチレン系樹脂組成物を得た。得られたポリスチレン系樹脂組成物の評価結果を表1に記す。
表1に示す種類・割合でポリスチレン系樹脂(a)、結晶性ポリアミド系樹脂(b)を加え、実施例1と同様の条件で二軸押出機を用いて混練後、ペレタイズし、ポリスチレン系樹脂組成物を得た。得られたポリスチレン系樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
表2に示す種類・割合でポリスチレン系樹脂(a)、結晶性ポリアミド系樹脂(b)を用いた以外は実施例1と同様に実施し、得られたポリスチレン系樹脂組成物を評価した。評価結果を表2に示す。
比較例2では、比較例1と同様に結晶性ポリアミド系樹脂(b)量の増加により、押出安定性が低下すると同時に、透明性の低下が見られた。
比較例3では、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含まない樹脂Dを用いたことにより、透明性が著しく低下し、また耐薬品性の低下も見られた。
比較例4では、スチレン/メタクリル酸メチル比が40/60である樹脂Fを用いたことにより、透明性が著しく低下し、また耐薬品性の低下も見られた。
比較例5は、透明性、耐熱性には優れるものの、耐薬品性が非常に低い結果となった。
Claims (5)
- ポリスチレン系樹脂(a)と結晶性ポリアミド系樹脂(b)とを含むポリスチレン系樹脂組成物であって、前記ポリスチレン系樹脂(a)は、スチレン系単量体単位と、(メタ)アクリル酸単量体単位と、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位とを含むスチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体であり、前記ポリスチレン系樹脂(a)を100質量%として、前記スチレン系単量体単位の含有量が49〜99質量%、前記(メタ)アクリル酸単量体単位の含有量が0〜16質量%、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量が1〜35質量%であり、前記ポリスチレン系樹脂組成物を100質量%として、前記ポリスチレン系樹脂(a)の含有量が85〜99質量%、前記結晶性ポリアミド系樹脂(b)の含有量が1〜15質量%であることを特徴とする、ポリスチレン系樹脂組成物。
- JIS K7361−1に準拠して測定した曇り度が、30%以下である、請求項1に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
- 前記ポリスチレン系樹脂(a)の重量平均分子量(Mw)が、10万〜35万である、請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂組成物。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする、シート。
- 請求項4に記載のシートからなることを特徴とする、成形品。
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