JP7085512B2 - ポリスチレン系樹脂発泡シート及びポリスチレン系樹脂発泡容器 - Google Patents
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Description
近年、ポリスチレン系樹脂発泡容器は、耐熱性を高めて、電子レンジで加熱し、喫食する食品の容器として、広く使用されている。例えば、ポリスチレン系樹脂発泡容器に調理済の食品を盛り付け、蓋体で閉じた容器入り調理食品がある。
このような問題に対し、例えば、特許文献1には、特定の目付と密度とを有する発泡シートに、特定の目付を有する非発泡フィルムを積層した積層発泡シートが提案されている。特許文献1の積層発泡シートでは、天地圧縮強度、リップ圧縮強度、突き刺し強度等の強度の向上が図られている。
加えて、容器には、成形性を良好にすることが求められている。
[1]ポリスチレン系樹脂と、ポリフェニレンエーテル系樹脂とを含有する発泡層を有する容器用のポリスチレン系樹脂発泡シートであって、前記ポリスチレン系樹脂と前記ポリフェニレンエーテル系樹脂との合計量100質量部に対して、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量は、10~50質量部であり、前記発泡層の平均気泡径が150~400μmであり、前記発泡層は、一方の面の表面から厚さ方向に200μmまでの領域の密度(A)が0.120~0.211g/cm3であり、前記発泡層は、他方の面の表面から厚さ方向に200μmまでの領域の密度(B)が0.100~0.190g/cm3であり、前記発泡層は、前記一方の面の表面から厚さ方向に200~300μmの領域の密度(C)が0.062g/cm3以上であり、前記密度(C)は、前記密度(A)よりも低く、前記密度(A)から前記密度(B)を減じた密度差が0.016~0.105g/cm3である、ポリスチレン系樹脂発泡シート。
[2]前記密度(C)は、前記密度(B)よりも低い、[1]に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
[3]筒状体に押出発泡し、前記筒状体の内周面をマンドレルの外周面に沿わせて冷却し、次いで切裂いて製造され、前記筒状体の内周面が、前記一方の面を形成する、[1]又は[2]に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
[4]前記発泡層の厚さが0.5~5.0mmであり、前記発泡層の全体の密度(D)が0.050~0.150g/cm3である、[1]~[3]のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
[5]前記発泡層の片面又は両面に非発泡層を有し、前記非発泡層の厚さが5~100μmである、請求項1~[4]のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
[6][1]~[5]のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂発泡シートの前記一方の面を容器の内側にして加熱成形してなる、ポリスチレン系樹脂発泡容器。
[7]食品用の容器である、[6]に記載のポリスチレン系樹脂発泡容器。
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シート(以下、単に「発泡シート」ともいう。)は、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂とを含有する発泡層を有する。
発泡シートは、発泡層のみからなる単層構造でもよいし、発泡層の片面又は両面に非発泡層を備える多層構造でもよい。
図1に示すように、発泡シート1は、容器用の発泡シートであり、一方の面α(以下、「第一の面α」ともいう。)と、他方の面β(以下、「第二の面β」ともいう。)とを有する。発泡シート1は、発泡層のみからなる単層構造である。
発泡シート1は、厚さ方向中央部から第一の面αに向かうに従って気泡径が小さくなり、密度が高くなるように形成されている。
また、発泡シート1は、厚さ方向中央部から第二の面βに向かうに従って気泡径が小さくなり、密度が高くなるように形成されている。
なお、発泡シート1の厚さT1は、以下の方法で求められる値である。発泡シート1のTD方向(幅方向)の任意の10点の厚さをマイクロゲージで測定する。10点の測定値を平均して、発泡シート1の厚さT1とする。
密度(D)は、JIS K 7222:2005「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の求め方」に準拠して測定することによって求められる。
より具体的には、元のセル構造を変えないように切断した発泡シートの試験片について、その質量と見掛け体積とを測定し、下記式(0)により算出する。
密度(D)(g/cm3)=試験片の質量(g)/試験片の見掛け体積(cm3)・・・(0)
密度(A)の求め方は、後述する。
密度(B)の求め方は、後述する。
また、密度(C)は、密度(A)よりも低い。密度(C)が密度(A)よりも低いことで、成形性をより高められる。
密度(C)の求め方は、後述する。
密度差(A-B)は、密度(A)及び密度(B)を求めることにより、下記式(1)を計算して求められる。
密度差(A-B)(g/cm3)=密度(A)-密度(B)・・・(1)
密度差(A-C)は、密度(A)及び密度(C)を求め、(1)式と同様の計算により求められる。
密度差(B-C)は、密度(B)及び密度(C)を求め、(1)式と同様の計算により求められる。
密度(E)の求め方は、後述する。
第4領域a4の厚さは、特に限定されないが、発泡シート1の厚さT1から、第1領域a1から第3領域a3までの厚さの合計(すなわち、500μm)を減じた値となる。第4領域a4の厚さは、例えば、0~4500μmが好ましく、300~3500μmがより好ましく、500~2500μmがさらに好ましい。
なお、各領域の密度は、見掛け密度である。
同様に、各領域の密度は、発泡シート1を第二の面βの表面から、200μmの深さにてスライスした1枚のスライス片について、見掛け体積と質量とを測定して求めることができる。
より具体的には、密度(A)の値は、次のようにして求められる。まず、2cm×5cmの大きさに切り出した発泡シートを第一の面αの表面から200μm深さの位置でスライスしてスライス片(第1スライス片)を作製する。その第1スライス片から1cm×2cmの大きさに切り出した試料の見掛け体積(VA:cm3)と質量(WA:g)とから、下記式(2)を計算して求めることができる。
「密度(A)」=WA/VA(g/cm3)・・・(2)
「密度(B)」=WB/VB(g/cm3)・・・(3)
「密度(C)」=(WC-WA)/(VC-VA)(g/cm3)・・・(4)
発泡シート1における発泡層の全体の平均気泡径は、発泡シート1の製造条件により調整できる。より具体的には、発泡シート1を冷却する際に吹き付けるエアーの温度、風量、マンドレルの冷却水の水温、流量、樹脂組成物中の気泡調整剤の種類、含有量等により調整できる。
発泡シート1における発泡層の全体の平均気泡径は、下記の方法により算出できる。
切り出した断面を走査電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製、「S-3400N」又は「SU1510」)を用いて、20~100倍に拡大して撮影する。
このとき、横向きのA4用紙1枚に、縦横2画像ずつ合計4画像並んだ状態で印刷した際に、所定の倍率となるように顕微鏡画像を撮影する。
より具体的には、顕微鏡画像上に、MD方向、TD方向、VD方向の各方向にそれぞれ平行な長さ60mmの任意の直線を描いた際に、これらの直線上に存在する気泡の数が5~30個となるように走査電子顕微鏡での撮影倍率を調整する。
MD断面の2つの画像のそれぞれにMD方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描くと共に、TD断面の2つの画像のそれぞれにTD方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描く。
また、MD断面の1つの画像とTD断面の1つの画像とにVD方向に平行な3本の直線(60mm)を描く。こうして、MD方向、TD方向、及び、VD方向のそれぞれに平行な60mmの任意の直線を各方向6本ずつ描く。
なお、任意の直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにし、接してしまう場合には、この接点も気泡の数に加えて気泡数を計数する。
気泡数を数えた画像倍率と、この気泡数とから気泡の平均弦長tを下記式(5)より算出する。
平均弦長t(mm)=60/(気泡数×画像倍率)・・・(5)
ただし、発泡シート1の厚さが薄く、VD方向に60mm長さ分の直線を描けない場合は、長さ60mmの直線の代わりに長さ30mm又は20mmの直線を描いて、これらの直線上の気泡数を数えて長さ60mmの直線上の気泡数に換算する(例えば、長さ30mmの直線上に気泡が5個あった場合には、長さ60mmの直線上に気泡が10個あったものとみなす)。
画像倍率=スケールバー実測値(mm)/スケールバーの表示値(mm)・・・(6)
DMD(mm)=t/0.616・・・(7)
TD方向における気泡径DTD(mm)、VD方向における気泡径DVD(mm)も、DMDと同様に算出できる。
D(mm)=(DMD×DTD×DVD)1/3・・・(8)
発泡シート1の幅方向の両端20mmを除き、幅方向に等間隔に、10cm×10cmの切片10個を切り出し、各切片の質量(g)を0.001g単位まで測定する。各切片の質量(g)の平均値を1m2当たりの質量に換算した値を、発泡シート1の全体の坪量(g/m2)とする。
発泡層は、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂と発泡剤とを含む樹脂組成物を発砲してなる層である。発泡シート1は、発泡層を有することで、断熱性と耐衝撃性とを発揮する。
スチレン系モノマーと重合可能なビニルモノマーは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の二官能性モノマー等である。これらのビニルモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ここで、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」と「メタクリレート」の一方又は双方を表し、「(メタ)アクリロニトリル」は、「アクリロニトリル」と「メタクリロニトリル」の一方又は双方を表す。
ジエン系のゴム状重合体は、例えば、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-非共役ジエン三次元共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等である。
これらのポリスチレン系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
リサイクル原料は、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体である。リサイクル原料は、食品包装用トレー、魚箱、家電緩衝材等を回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したもの等である。また、使用できるリサイクル原料は、家電製品(例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等)や事務用機器(例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等)から分別回収された非発泡のポリスチレン系樹脂成形体を粉砕し、溶融混練してリペレット化したものでもよい。
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、下記式(I)で表される化合物が挙げられる。
(I)式中、nは重合度を表す正の整数である。nは、例えば、通常10~5000である。
これらのポリフェニレンエーテル系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量が上記下限値以上であると、発泡シート1の耐熱性がより高まる。ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量が上記上限値以下であると、発泡シート1が堅くなり、成形体の取り扱いがより容易になる。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体、オレフィン系モノマーを主成分とし、オレフィン系モノマーとこれに重合可能なビニルモノマーとの共重合体等が挙げられる。
これらの発泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
発泡剤の配合量は、発泡剤の種類や、発泡シート1に求める全体の密度(D)等を勘案して決定される。発泡剤の配合量は、発泡シート1における全樹脂成分100質量部に対して、1.0~7.0質量部が好ましい。
任意成分の種類は、発泡シート1に求められる物性等を勘案して決定される。任意成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
安定剤としては、例えば、カルシウム亜鉛系熱安定剤、スズ系熱安定剤、鉛系熱安定剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セシウム系紫外線吸収剤、酸化チタン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化セリウム/ジルコニア固溶体、水酸化セリウム、カーボン、カーボンナノチューブ、酸化チタン、及びフラーレン等が挙げられる。
着色剤としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄、群青、コバルトブルー、焼成顔料、メタリック顔料、マイカ、パール顔料、亜鉛華、沈降性シリカ、カドミウム赤等が挙げられる。
消臭剤としては、例えば、シリカ、ゼオライト、リン酸ジルコニウム、ハイドロタルサイト焼成物等が挙げられる。
非発泡層を構成する樹脂は、特に限定されず、発泡層を構成する樹脂と同様の樹脂が挙げられる。
非発泡層を構成する樹脂は、発泡層を構成する樹脂と同じでもよいし、異なってもよい。
加えて、非発泡層の表面に印刷層が設けられていてもよく、印刷層の表面にさらに非発泡層が設けられていてもよい。
これらの樹脂フィルムは、無延伸フィルム、弱延伸フィルム、1軸延伸フィルム、及び、
2軸延伸フィルムのいずれであってもよい。
また、上記のような積層フィルムとする場合、ドライラミネートするポリオレフィン系樹脂フィルムは、例えば、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)フィルム、ポリプロピレン系樹脂(PP)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、シクロオレフィンコポリマー(COC)フィルム等が挙げられる。その他の樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)フィルム、エチレンビニルアルコール樹脂(EVOH)フィルム等が挙げられる。
非発泡層は、単層構造でもよく、二層以上の多層構造でもよい。
非発泡層が多層構造の場合、例えば、ポリプロピレン系樹脂(PP)フィルムの外層と、汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)フィルムの内層と、外層と内層とを接着する接着剤層と、を有する多層フィルムが好ましい。この多層フィルムは、外層が表面(露出面)に位置し、内層が発泡層側に位置する。
発泡シートは、従来公知の製造方法により製造される。
発泡シートの製造方法について、単層の発泡シート1の製造方法を例にして説明する。
図2の発泡シートの製造装置100は、押出成形により発泡シートを得る装置である。製造装置100は、押出機10と、発泡剤供給源18と、サーキュラーダイ20と、マンドレル30と、2つの巻取機40とを備える。
押出機10は、いわゆるタンデム型押出機である。押出機10は、第一の押出部11と、第一の押出部11に配管16で接続された第二の押出部12とを備える。第一の押出部11はホッパー14を備える。第一の押出部11には、発泡剤供給源18が接続されている。
第二の押出部12には、サーキュラーダイ20が接続されている。サーキュラーダイ20の下流には、カッター32を備えるマンドレル30が設けられている。サーキュラーダイ20とマンドレル30との間には、冷却用送風機(不図示)が設けられている。
第一の押出部11では、原料を任意の温度に加熱しながら混合して樹脂溶融物とし、発泡剤供給源18から発泡剤を第一の押出部11に供給し、樹脂溶融物に発泡剤を混合して樹脂組成物とする。
加熱温度は、樹脂の種類等を勘案して、樹脂が溶融しかつ任意成分が変性しない範囲で適宜決定される。加熱温度は、例えば、200~350℃が好ましく、250~320℃がより好ましい。
樹脂流路に導かれた樹脂組成物は、サーキュラーダイ20から押し出され、発泡剤が発泡して円筒状の発泡シート1aとなる。すなわち、押出発泡により、筒状体が得られる。
サーキュラーダイ20から押し出される樹脂組成物の吐出量は、例えば、100~500kg/hが好ましく、200~400kg/hがより好ましい。樹脂組成物の吐出量が上記下限値以上であると、樹脂組成物が冷却され過ぎず、円筒状の発泡シート1aの密度が高くなり過ぎることを抑制できる。加えて、樹脂組成物の吐出量が上記下限値以上であると、円筒状の発泡シート1aの生産性を高められる。樹脂組成物の吐出量が上記上限値以下であると、樹脂組成物が充分に冷却され、所望の密度を有する円筒状の発泡シート1aが得られやすい。
マンドレル30の内部には、冷却水が通流し、円筒状の発泡シート1aの内周面を冷却できる機構となっている。
冷却水の温度は、例えば、10~40℃が好ましく、15~30℃がより好ましい。冷却水の温度が上記数値範囲内であると、所望の密度となるように円筒状の発泡シート1aの内周面を冷却できる。
冷却水の流量は、例えば、5~40L/minが好ましく、10~30L/minがより好ましい。冷却水の流量が上記数値範囲内であると、所望の密度となるように円筒状の発泡シート1aの内周面を冷却できる。
円筒状の発泡シート1aの外周面に冷却用のエアーを吹き付ける風量(以下、「風量2」ともいう。)は、例えば、0.01~0.08m3/m2が好ましく、0.015~0.07m3/m2がより好ましい。風量2が上記数値範囲内であると、所望の密度となるように円筒状の発泡シート1aの外周面を冷却できる。
なお、風量の単位「m3/m2」は、発泡シート1の単位面積(m2)当たりに吹き付けるエアーの体積(m3)を示す。
発泡シート1は、各々ガイドロール42とガイドロール44とに掛け回され、巻取機40に巻き取られて発泡シートロール4となる。
こうして、単層構造である発泡シート1が得られる。
ここで説明した発泡シート1の発泡層は、単層の発泡層であるが、発泡シートの発泡層は、例えば、共押出によって2層以上の発泡層が積層されたものでもよく、熱融着又は接着によって2層以上の発泡層が積層されたものでもよい。
本発明のポリスチレン系樹脂発泡容器(単に「発泡容器」ともいう。)は、上述した本発明の発泡シートの一方の面を容器の内側にして加熱成形してなるものである。ここで、発泡シートの一方の面は、高密度層を形成する第1領域a1(密度(A)である領域)側の面をいう。
発泡容器としては、例えば、平面視形状が真円形、楕円形、半円形、多角形、扇形等のトレー、丼形状の容器、有底円筒状又は有底角筒状等の容器、納豆用容器等の蓋付容器等の種々の容器;容器本体に装着される蓋体等が挙げられる。
これらの容器の用途としては、例えば、食品用が好ましい。
発泡容器における発泡層の全体密度は、用途等を勘案して決定され、発泡シートにおける発泡層の全体の密度(D)と同様である。
発泡容器の一方の面の表面から厚さ方向に200μmまでの領域の発泡層の密度は、発泡シートにおける第1領域a1の密度(A)と同様である。
発泡容器の他方の面の表面から厚さ方向に200μmまでの領域の発泡層の密度は、発泡シートにおける第2領域a2の密度(B)と同様である。
発泡容器の一方の面の表面から厚さ方向に200~300μmの領域の発泡層の密度は、発泡シートにおける第3領域a3の密度(C)と同様である。
発泡容器の一方の面の表面から厚さ方向に300μmから、発泡容器の他方の面の表面から厚さ方向に200μmまでの領域の発泡層の密度は、発泡シートにおける第4領域a4の密度(E)と同様である。
この他、発泡容器における各領域の密度差は、発泡シートにおける各領域の密度差と同様である。
また、発泡容器における発泡層の平均気泡径は、発泡シートにおける発泡層の平均気泡径と同様である。
加えて、発泡層の一方の面の表面から厚さ方向に200~300μmの領域の密度(C)を、極端な密度の低下がないように制御することで、局所的に弱い発泡層がないため、発泡容器の天地圧縮強度をさらに高められる。
本実施例において使用した原料は下記の通りである。
・A-1:ポリスチレン系樹脂(PS系樹脂)、MW=323×103、DIC株式会社製、製品名「XC-515」。
・A-2:ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE系樹脂)70質量%とPS系樹脂30質量%との混合物、SABIC社製、製品名:「ノリルEFN4230」。
・気泡調整剤:タルク含有樹脂組成物(タルク(平均比表面積10~40m2/g)を40質量%含有。東洋スチレン株式会社製、製品名「DSM1401A」)。
・消臭剤:ハイドロタイルサイト焼成物(平均比表面積125~190m2/g)。
・発泡剤:ブタン(イソブタン:ノルマルブタン=68:32(質量比)の混合物)。
(発泡シートの製造)
図2の発泡シートの製造装置と同様の製造装置を用い、下記のようにして単層の発泡シートを得た。
表1~2の組成に従い、樹脂原料:A-1と、樹脂原料:A-2と、気泡調整剤と、消臭剤とを混合した。表中の組成は、質量部を表す。
原料の混合物をホッパーから第一の混合部(スクリュー径:115mm)に供給し、最高到達温度300℃で加熱し、溶融混練して樹脂溶融物とした。
第一の押出部に発泡剤(イソブタン:ノルマルブタン=70:30(質量比)の混合物)を供給し、樹脂溶融物と発泡剤とを混合して樹脂組成物とした。発泡剤の配合量は、ポリスチレン系樹脂100質量部対して、表1~2に示す質量部とした。
樹脂組成物を第一の混合部から第二の混合部(スクリュー径:180mm)に供給し、190℃に冷却し、サーキュラーダイ(口径160mm)から押し出し、発泡させて冷却用マンドレルにて成形し、円筒状の発泡シートを得た。この際、サーキュラーダイから押し出された直後に、円筒状の発泡シートの内周面及び外周面に表1~2に記載の風量の冷却用のエアー(28℃)を吹き付けて冷却した。加えて、冷却用マンドレルの外周面に沿わせるように円筒状の発泡シートの内周面を通過させ、円筒状の発泡シートを冷却した。実施例1~6及び比較例1~7は、円筒状の発泡シートの内周面が高密度層となるように冷却した。実施例7は、円筒状の発泡シートの外周面が高密度層となるように冷却した。マンドレルを通流する冷却水の温度は25℃(比較例7は42℃)、冷却水の流量は、25L/minであった。
冷却後の円筒状の発泡シートを押出方向に沿って切り裂いて、表1~2に示す発泡層からなる発泡シートを得た。
得られた発泡シートについて、厚さ、平均気泡径、全体の密度(D)、シート表面から200μm厚さの領域の密度(密度(A)、密度(B))、シート表面200μmから300μmの領域の密度(密度(C))を測定した。加えて、各領域の密度差を算出した。結果を表1~2に示す。表中の平均気泡径の単位は、μmである。
得られた発泡シートの一方の面にはCPPSドライラミフィルム(厚さ50μm:無延伸PPフィルムと無延伸PSフィルムのドライラミフィルム)を熱ラミネートし、他方の面にはCPSフィルム(厚さ20μm:無延伸PSフィルム)を熱ラミネートして、発泡層の両面に非発泡層を有する積層発泡シートを得た。
なお、CPPSドライラミフィルムは180℃の熱ロールに接触させ、CPSフィルムは160℃の熱ロールに接触させ、その後、ラミネート圧力0.5MPa、ラミネート速度4.0m/minで、25℃の発泡シートに積層した。一方の面、すなわち、高密度層を形成する密度(A)である領域の面に、CPPSドライラミフィルムの無延伸PSフィルム側を積層した。他方の面、すなわち、密度(B)である領域の面に、CPSフィルムを積層した。
得られた積層発泡シートの発泡層における各領域の密度や密度差は、積層する前の発泡シートにおける各領域の密度や密度差と同様であった。
得られた積層発泡シートを単発成形機にて加熱成形した。加熱成形により、円形の底面とこの底面の周縁から立ち上がる側面とを有し、上部が開口している発泡容器を得た。この発泡容器の開口部の径は20cm、底面の径は17cm、高さは4cmであった。
発泡容器は、一方の面の側が、容器の内側を形成するように加熱成形した。一方の面、すなわち、高密度層を形成する密度(A)である領域側の面を容器の内側にして加熱成形して、発泡容器を得た。
得られた発泡容器を測定用試料とした。テンシロン万能材料試験機((株)オリエンテック製、型番「UCT-10T」)を用いて、各例の測定用試料について、発泡容器の天地圧縮強度を測定した。天地圧縮強度を測定するに際しては、表面に空気抜き用の溝が設けられた専用板の上に、測定用試料を底面が上になるように設置した。試験速度400mm/minで、φ200mmの圧縮板を用いて測定用試料を圧縮していき、降伏点までの最大荷重と変位量を測定した。測定用試料10個について測定し、その算術平均値を算出した。算出された算術平均値に基づき、下記評価基準に従って、天地圧縮強度を評価した。
《評価基準》
○:最大荷重20kgf以上、かつ、変位量5.0mm以上。
△:最大荷重20kgf以上、かつ、変位量4.5mm以上5.0mm未満。
×:最大荷重20kgf未満、又は、変位量4.5mm未満。
得られた発泡容器の外観を目視で観察し、下記評価基準に従って、成形性を評価した。
《評価基準》
○:容器の表面に穴開きや亀裂が認められない。
×:容器の表面に穴開きや亀裂が認められる。
各例の積層発泡シートから縦700mm×横1040mmの平面視長方形状の試験片を切り出した。単発成形機(東成産業株式会社製、商品名「ユニック自動成形機 FM-3A」)の上側ヒーターの平均温度を280℃、下側ヒーターの平均温度を230℃、上側雰囲気温度を185℃、下側雰囲気温度を175℃にした。
次に、上記試験片を上記単発成形機に導入し、積層発泡シートを発泡させ、厚さ略3.5mmとなるように加熱時間を調整し、二次発泡板を得た。得られた二次発泡板の非発泡層の表面状態を目視で観察し、下記評価基準に従って、耐熱性を評価した。バブル(気泡)の発生が認められた試験片は、積層したフィルムが浮き上がり、いわゆる「ラミ浮き」と呼ばれる状態となり、耐熱性に劣る。
《評価基準》
○:バブルの発生が認められない。
×:気泡径5mm以下の微小なバブルが多数認められた、又は気泡径5mm超のバブルが1個以上認められた。
容器強度、成形性、耐熱性の上記評価結果から、下記評価基準に従って、総合評価を行った。「A」、「B」を合格とした。
《評価基準》
A:容器強度、成形性、耐熱性、全ての評価が「○」。
B:容器強度の評価が「△」、かつ、成形性の評価及び耐熱性の評価が「○」。
C:容器強度、成形性、耐熱性、いずれかの評価が「×」。
一方、密度(B)が本発明の範囲外である比較例1は、成形性の評価が「×」だった。密度差(A-B)が本発明の範囲外である比較例2は、容器強度の評価が「×」だった。密度(C)が本発明の範囲外である比較例3は、容器強度の評価が「×」だった。密度(A)及び密度差(A-B)が本発明の範囲外である比較例4は、成形性の評価及び耐熱性の評価が「×」だった。発泡層の平均気泡径が本発明の範囲外である比較例5は、容器強度の評価及び耐熱性の評価が「×」だった。発泡層の平均気泡径が本発明の範囲外である比較例6は、成形性の評価が「×」だった。密度(C)が本発明の範囲外である比較例7は、容器強度の評価が「×」だった。
α 一方の面
β 他方の面
Claims (7)
- ポリスチレン系樹脂と、ポリフェニレンエーテル系樹脂とを含有する発泡層を有する容器用のポリスチレン系樹脂発泡シートであって、
前記ポリスチレン系樹脂と前記ポリフェニレンエーテル系樹脂との合計量100質量部に対して、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量は、10~50質量部であり、
前記発泡層の平均気泡径が150~400μmであり、
前記発泡層は、一方の面の表面から厚さ方向に200μmまでの領域の密度(A)が0.120~0.211g/cm3であり、
前記発泡層は、他方の面の表面から厚さ方向に200μmまでの領域の密度(B)が0.100~0.190g/cm3であり、
前記発泡層は、前記一方の面の表面から厚さ方向に200~300μmの領域の密度(C)が0.062g/cm3以上であり、
前記密度(C)は、前記密度(A)よりも低く、
前記密度(A)から前記密度(B)を減じた密度差が0.016~0.105g/cm3である、
ポリスチレン系樹脂発泡シート。 - 前記密度(C)は、前記密度(B)よりも低い、請求項1に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
- 筒状体に押出発泡し、前記筒状体の内周面をマンドレルの外周面に沿わせて冷却し、次いで切裂いて製造され、
前記筒状体の内周面が、前記一方の面を形成する、請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。 - 前記発泡層の厚さが0.5~5.0mmであり、
前記発泡層の全体の密度(D)が0.050~0.150g/cm3である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。 - 前記発泡層の片面又は両面に非発泡層を有し、
前記非発泡層の厚さが5~100μmである、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。 - 請求項1~5のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂発泡シートの前記一方の面を容器の内側にして加熱成形してなる、ポリスチレン系樹脂発泡容器。
- 食品用の容器である、請求項6に記載のポリスチレン系樹脂発泡容器。
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