JP6266571B2 - 樹脂発泡シート、及び、樹脂発泡成形品 - Google Patents
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Description
この種の樹脂発泡シート製の熱成形品たる樹脂発泡成形品は、軽量でありながら高い強度を有し、且つ、断熱性に優れることから各種の用途において用いられている。
このポリスチレンペーパーは、ポリスチレン樹脂(PS)や汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)などと呼ばれるスチレンホモポリマーを主成分としている。
そのため、PSP製の樹脂発泡成形品は、耐油性や耐熱性が強く求められるような場合に、その要望を十分に満足させることができない場合がある。
また、樹脂発泡成形品に耐熱性が求められるような場合には、GPPSよりも高いガラス転移温度を有するポリスチレン系樹脂組成物よって形成された樹脂発泡シート、或いは、当該樹脂発泡シートにポリプロピレン系樹脂フィルムを積層させたものが原反シートとして用いられたりしている。
この耐熱性に優れた発泡シートを形成させるためのポリスチレン系樹脂組成物としては、スチレン−メタクリル酸共重合体樹脂をベースポリマーとしたものや、GPPSとポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)との混合樹脂をベースポリマーとしたものなどが知られている(下記特許文献1参照)。
そのため、このような樹脂発泡シートが熱成形されてなる樹脂発泡成形品は、十分製造容易なものになっていない。
また、本発明によれば、樹脂発泡成形品を耐熱性に優れ且つ製造容易なものとし得る。
なお、図1は、本実施形態の樹脂発泡シートの断面構造を示した概略断面図であり、以下においては、図1における“上下方向”を樹脂発泡シートや発泡層の“厚み方向”と称することがある。
また、以下においては、樹脂発泡シート、フィルム層、発泡層について「上側」や「厚み方向における一端側」とは、図1における上側を意味し、「下側」や「厚み方向における他端側」とは、図1における下側を意味する。
さらに、以下においては、図1における“横方向”を樹脂発泡シートの“幅方向”又は“平面方向”と称することがある。
そして、図1に示すように本実施形態の樹脂発泡シート1は、発泡層10の上下両方にフィルム層20,30を有しているため、以下においては、上側のフィルム層20を第1フィルム層と称し、且つ、下側のフィルム層30を第2フィルム層と称してこれらを呼び分けることとする。
ただし、前記発泡層10は、全体が同じポリスチレン系樹脂組成物で形成されてはおらず厚み方向においてポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度を5質量%以上異ならせている。
しかも、発泡層10は、前記濃度の最低値が2質量%で且つ最高値が50質量%である。
樹脂発泡シート1は、発泡層10の厚み方向におけるポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度差が5質量%未満であると美麗な外観と優れた耐熱性とを兼ね備えた成形品を得ることが難しくなる。
また樹脂発泡シート1は、濃度差がありすぎると、成形が困難となり、良好な成型品を得にくくなる。
よってポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度差は、5質量%以上19質量%未満であることが好ましく、6質量%以上17質量%未満であることがより好ましく、6質量%以上16質量%未満であることが特に好ましい。
より詳しくは、本実施形態における前記発泡層10は、前記第1フィルム層20に接する厚み方向一端部におけるポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度が、前記第2フィルム層30に接する厚み方向他端部におけるポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度よりも低濃度となっている。
即ち、前記発泡層10は、前記一端部におけるポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度をD1(質量%)とし、前記他端部におけるポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度をD2(質量%)とした際に「D1<D2」及び「5≦(D2−D1)」の関係を満たすように形成されている。
また、前記発泡層10は、前記一端部と前記他端部との間においてポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度がこれらの中間的な濃度となる箇所を有している。
即ち、当該箇所のポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度をD3(質量%)とした際に前記発泡層10は、前記濃度が「D1<D3<D2」の関係となるように形成されている。
即ち、本実施形態の前記発泡層10は、2種類のポリスチレン系樹脂組成物によって形成されている。
そして、前記のように本実施形態の前記発泡層10は、上側領域Aを形成する第1のポリスチレン系樹脂組成物(以下、「第1樹脂組成物」ともいう)の方が、下側領域Bを形成する第2のポリスチレン系樹脂組成物(以下、「第2樹脂組成物」ともいう)よりもポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度が低濃度となっている。
また、前記上側領域Aと前記下側領域Bとの境界においては、厳密な形で境界が形成されているわけではなく、仮想線Lの近傍領域は、第1樹脂組成物と第2樹脂組成物とが相溶した状態となっている。
本実施形態の樹脂発泡シート1は、発泡層10の上側領域Aと下側領域Bとの間に明確な境界が形成されておらず、これらの間に相溶化した領域を有することで、これらの間に層間剥離が生じてしまうことが抑制されている。
ただし、前記第1樹脂組成物は、樹脂発泡シート1に対して優れた耐熱性を発揮させる上においてポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度が一定以上であることが好ましい。
このようなことから、前記第1樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度が2質量%以上17質量%以下であることが好ましい。
前記第1樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度が6質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが特に好ましい。
また、前記第1樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度が16質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。
ただし、前記第2樹脂組成物は、樹脂発泡シート1に対して優れた熱成形性を発揮させる上においてポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度が一定以下であることが好ましい。
このようなことから、前記第2樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度が10質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
2≦ D1 ≦17 ・・・(1)
10≦ D2 ≦50 ・・・(2)
D1<D2 ・・・(3)
5≦(D2−D1) ・・・(4)
さらに、前記発泡層10は、下記の関係式(5)を満たすことが好ましい。
5≦(D2−D1)<19 ・・・(5)
(PPE濃度測定方法)
発泡層の表面から厚み方向に直交する方向(平面方向)に沿って発泡層を0.2mmスライスした薄片試料0.1gをクロロホルム約20mLに溶解させる。
溶解液半分程度を利用し、加熱したガラスプレート上に溶解液を滴下しIR測定に適した厚みのフィルムを作製する。
得られたフィルムの赤外分光分析を下記条件にて実施し、赤外吸収スペクトルを得る。
赤外吸収スペクトルの測定は、サーモ・フィッシャー・サイエンティフィック株式会社から商品名「iS10」で販売されているフーリエ変換赤外分光分析装置を使用して実施する。
・測定法:透過法
・測定波数領域:4000cm−1〜400cm−1
・測定深度の波数依存性:補正せず
・検出器:重水素化硫酸トリグリシン(DTGS)検出器及びKBrビームスプリッター
・分解能:4cm−1
・積算回数:32回(バックグランド測定時も同様)
得られたチャートから、A960、A906のピーク高さを求め、高分子ハンドブック(社団法人日本分析化学会 1995年初版)記載式によりPPE量を算出する。
PPE濃度(質量%)={R/(R+4.3)}×100
R=A960/A906
A960とは、赤外吸収スペクトル曲線における波数990cm−1±5cm−1での最低吸収位置と、赤外吸収スペクトル曲線における波数930cm−1±5cm−1での最低吸収位置とを結ぶ直線をベースラインとした、波数960cm−1±5cm−1の領域の赤外吸収スペクトル曲線におけるベースラインとの吸光度差(測定された吸光度−ベースラインの吸光度)の最大値を意味する。
A906とは、赤外吸収スペクトル曲線における波数930cm−1±5cm−1での最低吸収位置と、赤外吸収スペクトル曲線における波数880cm−1±15cm−1での最低吸収位置とを結ぶ直線をベースラインとした、波数906cm−1±5cm−1の領域の赤外吸収スペクトル曲線におけるベースラインとの吸光度差(測定された吸光度−ベースラインの吸光度)の最大値を意味する。
また、本実施形態の前記発泡層10は、通常、0.5mm以上5mm以下の厚みとされ、1.0mm以上3.5mm以下の厚みとされることが好ましい。
1/3≦(ρa/ρb)≦3 ・・・(5)
1/3≦(Ta/Tb)≦3 ・・・(6)
5≦(Tg2−Tg1)≦30 ・・・(7)
また、前記第1樹脂組成物や前記第2樹脂組成物には、発泡層を良好な発泡状態にさせるための発泡剤や気泡調整剤をさらに含有させることができる。
また、前記第1樹脂組成物や前記第2樹脂組成物には、必要に応じて各種の添加剤を含有させることができる。
なお、第1樹脂組成物や第2樹脂組成物は、ポリスチレン系樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂以外の成分を過度に含有するのは好ましいことではなく、通常、ポリスチレン系樹脂とポリフェニレンエーテル系樹脂との合計含有量が90質量%以上とされる。
従って、前記ポリスチレン系樹脂としては、スチレン単独重合体(汎用ポリスチレン樹脂:GPPS)やハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS)を採用することが好ましく、第1樹脂組成物や第2樹脂組成物は、含有する全てのポリスチレン系樹脂におけるスチレン単位の割合が90質量%以上となるように調製されていることが好ましい。
なお、本実施形態においては、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、1種単独で第1樹脂組成物や第2樹脂組成物に含有させる必要はなく、2種以上のものを第1樹脂組成物や第2樹脂組成物に含有させてもよい。
分解型発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、カルシウムアジド、ナトリウムアジド、ホウ水素ナトリウム等の無機系分解性発泡剤、アゾジカルボンアミド、アゾビススルホルムアミド、アゾビスイソブチロニトリル及びジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタンメチレンテロラミン及びN,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物、ベンゼンスルホニルヒドラジド等が挙げられる。
第1フィルム層20や第2フィルム層30を形成させるための樹脂フィルムとしては、汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)フィルム、ハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS)フィルム、又は、これらのフィルムにポリオレフィン系樹脂フィルムがドライラミネートされた積層フィルムなどが挙げられる。
第1フィルム層20や第2フィルム層30をGPPSフィルムやHIPSフィルムで構成させる場合、これらは、無延伸フィルム、弱延伸フィルム、1軸延伸フィルム、及び、2軸延伸フィルムのいずれであってもよい。
また、第1フィルム層20や第2フィルム層30を前記のような積層フィルムとする場合、ドライラミネートするポリオレフィン系樹脂フィルムは、例えば、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)フィルム、ポリプロピレン系樹脂(PP)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、シクロオレフィンコポリマー(COC)フィルムなどとすることができる。
また、第1フィルム層20及び第2フィルム層30は、その材質を互いに共通させていても異ならせていても良い。
該製造方法を例示すると、例えば、前記樹脂発泡シート1は、第1樹脂組成物と第2樹脂組成物とを共押出法によってシート化して発泡層10のみからなるシートを作製し、このシートに後から樹脂フィルムを積層して第1フィルム層20や前記第2フィルム層を形成させる方法などが挙げられる。
なお、発泡層10のみからなるシートを作製した後、第1フィルム層20や第2フィルム層30を形成させる方法としては、例えば、押出ラミネート法、熱ラミネート法などが挙げられる。
また、前記樹脂発泡シート1は、発泡層10の形成とフィルム層20,30の形成とを上記のように別工程とするのではなく、発泡層10とフィルム層20,30とを共押出法によって一度に形成させるようにしてもよい。
即ち、樹脂発泡シート1は、共押出シート、押出ラミネーションシート、熱ラミネーションシートなどの積層シートであってもよい。
また、前記樹脂発泡シート1は、発泡層10を有することから断熱性に優れた樹脂発泡成形品を熱成形によって作製する際の原材料として好適なものである。
さらに、樹脂発泡シート1は、ポリスチレン系樹脂の脆性改善に有効なポリフェニレンエーテル系樹脂が発泡層10に含有されているため10℃以下や0℃以下といった冷蔵・冷凍環境下において利用される樹脂発泡成形品の原材料として好適なものである。
上記のようなことから前記樹脂発泡シート1は、容器などの原材料として好適であり、食品を収容するための食品収容用容器の原材料として特に好適である。
とりわけ前記樹脂発泡シート1は、容器ごと食品を電子レンジで加熱調理するためのレンジアップ用容器の原材料として好適である。
また、この容器の内側を特に耐熱性に優れたものとする上においては、前記発泡層10の下側領域Bが容器内側となるようにして前記樹脂発泡シートに熱成形を施すことが好ましい。
そして、容器が、上記のようなレンジ加熱される食品を収容させるための用途に利用されるものである場合、容器内側となるフィルム層は、少なくとも食品と接する表面が耐熱性や耐油性に優れていることが好ましい。
そして、このようなフィルム層の形成に好適な樹脂フィルムとしては、例えば、ポリプロピレン系樹脂フィルムと2軸延伸GPPSフィルムとがドライラミネートされたものなどが挙げられる。
ここで樹脂発泡シート1の上側領域Aと下側領域Bとの間に明確な境界が形成されていないということは、このような熱成形に際して前記境界において層間剥離が生じ難い状態になっていることを意味する。
即ち、本実施形態の樹脂発泡シート1は、発泡層を形成するための第1樹脂組成物と第2樹脂組成物との両方にポリフェニレンエーテル系樹脂が含有されているため共押出法によって形成させた共押出シートの場合でも上側領域Aと下側領域Bとの間に明確な境界が形成され難く層間剥離が生じ難いという利点を有する。
そのため上記のような場合、得られる樹脂発泡シートは、発泡層の上側領域と下側領域との間に明確な境界が形成され易く、熱成形に際して条件を十分にコントロールしないと層間剥離が生じるおそれがある。
また、上記のようにして得られた樹脂発泡シートは、厚み方向一端側と他端側とで軟化温度を大きく異ならせるため、成形型で賦形する直前における加熱条件を正確にコントロールしないと、片面が過度に軟化したり、逆に片面が軟化不十分になったりして良好な樹脂発泡成形品が得られなくなるおそれを有する。
そして、厚みの薄い樹脂発泡シートを両面に大きな温度差を設けた状態に維持するのは容易なことではない。
その一方で本実施形態の樹脂発泡シート1は、第1樹脂組成物及び第2樹脂組成物の両方にポリフェニレンエーテル系樹脂を含んでいるため、熱成形における条件管理を厳密なものとする必要性が低く、樹脂発泡成形品を容易に製造させ得る。
本実施形態の樹脂発泡シート1によって作製されることが好ましい容器に関し、図4、5を参照しつつ説明する。
該容器100は、樹脂発泡シート1が熱成形されてなる熱成形品である。
本実施形態の前記容器100は、真空成形品、圧空成形品、真空圧空成形品、マッチモールド成形品、プレス成形品等とすることができる。
図4に示した容器100は、上部開口を有し、前記蓋体200が外嵌合される外嵌合容器であり、食品収容容器である。
前記容器100は、平面視矩形のトレー状となっている。
前記容器100は、食品を収容するための収容凹部を備え、該収容凹部が食品を載置するための底面部110と該底面部110の外周縁からやや外広がりに立上る周側壁部120とによって形成されている。
また、前記容器100は、周側壁部120の上端部から外向きに延びるフランジ部130を備えている。
該容器100には、該フランジ部130を外側から覆うように外嵌合されて前記蓋体200が装着される。
該底面部110は、上面側が食品載置面となっており、下面側が容器接地面となっている。
前記リブ110aは、底面部110を形成する樹脂発泡シートの一部が上向きに凸となるように折り曲げられて形成されたものであり、樹脂発泡シートが山折りとなるように熱成形されて形成されたものである。
該リブ110aは、図5に示すように断面形状が逆V字状となっており、突出方向における基端部110a1よりも先端部110a2の方が細幅となっている。
また、従来の樹脂発泡シートでは、リブの高さ、樹脂発泡シートの折り曲げ角度、リブ先端の曲率半径などによっては、成形条件を高い精度でコントロールしてもリブ先端にシワやひび割れが形成されることを十分に抑制することが出来ない場合がある。
一方で、本実施形態の樹脂発泡シート1は、成形条件を過度に狭い範囲に調整することなくリブ先端にシワやひび割れが形成されることを抑制できる。
なお、図5は、リブの延在する方向に直交する垂直平面によってリブを切断した様子を示した概略断面図である。
前記のような効果をより顕著に発揮させる上において、本実施形態の樹脂発泡シート1は、リブの高さ(h:食品載置面から垂直方向に最も離れた位置における高さ)が10mm以上50mm以下の容器の形成に用いられることが好ましく、15mm以上40mm以下高さのリブを有する容器の形成に用いられることがより好ましい。
また、樹脂発泡シート1によって形成させる容器のリブは、基端部の幅(W:mm)に対する高さ(h:mm)の比率(h/W)が、0.3以上2.0以下であることが好ましく、0.4以上1.8以下であることがより好ましい。
前記リブにおける樹脂発泡シート1の折り曲げ角度(θ)は、25度以上75度以下であることが好ましく、30度以上70度以下であることがより好ましい。
前記リブの先端部の曲率半径(上面側の曲率半径:r)は、1.5mm以上7.0mm以下であることが好ましく、2.0mm以上6.0mm以下であることがより好ましい。
また、このような容器を作製する場合、第1樹脂組成物で形成された側が容器内側となるように樹脂発泡シート1を熱成形することで、前記リブにシワやひび割れが形成されることをより確実に防止し得る。
しかし、本発明の樹脂発泡シートは、上記例示のものに限定されるものではなく、例えば、成形品の両面をシャープな形状のものにすることが求められるような場合には、第2樹脂組成物が厚み方向両側から第1樹脂組成物で挟み込まれた発泡層を有するものとすることができる。
即ち、本発明の樹脂発泡シートは、いわゆる「3層同時押出」の形式で共押出が実施され、発泡層の厚み方向一端部と他端部とがそれぞれ第1樹脂組成物によって形成され、厚み方向中央部に第2樹脂組成物で形成させた領域が備えられた態様とすることができる。
即ち、本発明の樹脂発泡シートは、いわゆる「3層同時押出」の形式で共押出が実施され、発泡層の厚み方向一端部と他端部とがそれぞれ第2樹脂組成物によって形成され、厚み方向中央部に第1樹脂組成物で形成させた領域が備えられた態様とすることができる。
即ち、ポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度が異なる3種類以上のポリスチレン系樹脂組成物を用いて発泡層が形成されている樹脂発泡シートも、本発明の樹脂発泡シートとして意図する範囲のものである。
スクリュー径90mmの単軸押出機とスクリュー径150mmの単軸押出機とが直列に配置され、スクリュー径90mmの単軸押出機が上流側となるように配置されたタンデム押出機を2系統用意し、これらを1つの合流金型を介してサーキュラーダイに接続させた。
即ち、2系統のタンデム押出機の内の第1の系統のタンデム押出機に相対的にポリフェニレンエーテル系樹脂濃度の低い第1樹脂組成物を供給して溶融混練させ、第2の系統のタンデム押出機に相対的にポリフェニレンエーテル系樹脂濃度の高い第2樹脂組成物を供給して溶融混練させ、且つ、これらのタンデム押出機から吐出される溶融混練物を前記サーキュラーダイから共押出できるように準備した。
すなわち、第1樹脂組成物のPPE濃度は2.8質量%とした。
そして、この混合樹脂とは別にタルク(気泡調整剤)練り込みマスターバッチ(商品名「DSM1401M」)を用意した。
前記混合樹脂100質量部に対し前記マスターバッチを0.8質量部の割合でブレンドしてバッチ式混合装置に投入し、該混合装置で十分に混合した後に、第1の系統のタンデム押出機の上流側押出機(スクリュー径90mm)に供給した。
この上流側の押出機では、シリンダー温度の最高設定温度を290℃とし、発泡剤として混合ブタン約4.0質量部(対混合樹脂100質量部)を途中で加え、GPPSやPPEとともに溶融混練して、該溶融混練後の混練物を下流側の押出機に供給させるようにした。
また、下流側の押出機では、上流側の押出機から供給された溶融混練物を120kg/hの割合で合流金型へと供給させるようにした。
すなわち、第2樹脂組成物のPPE濃度は21.0質量%とした。
そして、この混合樹脂とは別にタルク(気泡調整剤)練り込みマスターバッチ(商品名「DSM1401M」)を用意した。
この混合樹脂100質量部に対し前記マスターバッチ(DSM1401M)を1.0質量部の割合でブレンドしてバッチ式混合装置に投入し、該混合装置で十分に混合した後に、第2の系統のタンデム押出機の上流側押出機(スクリュー径90mm)に供給した。
この上流側の押出機では、シリンダー温度の最高設定温度を300℃とし、発泡剤として混合ブタン約5.0質量部(対混合樹脂100質量部)を途中で加えて前記混合樹脂とともに溶融混練し、該溶融混練後の混練物を下流側の押出機に供給するようにした。
また、下流側の押出機では、上流側の押出機から供給された溶融混練物を120kg/hの割合で前記合流金型へと供給させるようにした。
口径125mmのサーキュラーダイを通して、外側が第1樹脂組成物、内側が第2樹脂組成物となるように円筒形に押出発泡(共押出)させた直後に、その内側と外側にエアーを
かけて冷却した。
エアー温度は27℃とし、吹き付け量は、外側(第1樹脂組成物側)では0.068m3/m2とし、内側(第2樹脂組成物側)では0.087m3/m2とした。
この第1の実施例の樹脂発泡シートは、厚みが1.6mmであり、坪量が110g/m2であった。
(成形性)
樹脂発泡シートの一面側と他面側とのそれぞれに対面するようヒーターがセットされた予備加熱装置に実施例1の樹脂発泡シートを供給し、第1樹脂組成物で形成された面(以下、「第1面」ともいう)及びこの面とは反対の第2樹脂組成物で形成された面(以下、「第2面」ともいう)とをそれぞれ加熱して樹脂発泡シートを軟化状態にし、該樹脂発泡シートを成形型に沿わせて変形させ樹脂発泡成形品を作製した。
このとき前記第2面がトレーの内側となるように熱成形を実施し、樹脂発泡成形品として長辺200mm、短辺100mm、深さ30mmの角形トレーを作製した。
実施例1の樹脂発泡シートを用いた場合、第1面側のヒーター温度を第2面側のヒーター温度より、10℃低くしただけでは、第1面側がオーバーヒートしてしまい良質な角形トレーは得られなかった。
しかし、第1面側のヒーター温度を第2面側のヒーター温度よりも15℃低くした場合には、第1面側がオーバーヒートせず、良質な角形トレーが得られた。
一方で、後述する第2実施例の樹脂発泡シートを用いた場合、第1面側のヒーター温度と第2面側のヒーター温度との差が10℃以内でも、第1面側がオーバーヒートせず良質な角形トレーが得られた。
このことから、表1における成形性の欄には、実施例1の樹脂発泡シートの判定結果を「○」で表示し、実施例2の成形性の欄には、判定結果を「◎」で表示するようにした。
また、実施例7では、第1面側のヒーター温度を第2面側のヒーター温度より、15℃低くしただけでは、第1面側がオーバーヒートしてしまい良質な角形トレーは得られなかった。
そして、実施例7では、第1面側のヒーター温度を第2面側のヒーター温度より、20℃低くした場合には、第1面側がオーバーヒートせず、角形トレーが得られるものの、これ以上第1面側のヒーター温度を下げると、第2面側が加熱不足の状態で熱成形されて容器内側に“ナキ”と呼ばれる表面割れが生じるおそれがあった。
そのため、表1においては、実施例7の成形性の判定結果を「△」で表示するようにした。
なお、この角形トレーの作製に際し、第1面側のヒーター温度を第2面側のヒーター温度に比べて大きく低下させなければオーバーヒートしてしまい、第2面側が加熱不足の状態で熱成形されて容器内側に“ナキ”と呼ばれる表面割れが生じるような場合には、成形性が良好でないと判断し、表1には判定結果を「×」で表示するようにした。
上記で得られた角形トレーの外観を目視で確認した。
第1面側における型の出がシャープであり、微細な凹凸形状に至るまで輪郭がシャープで外観美麗なものについては「◎」と判定した。
型の出が比較的シャープであるものの微細な凹凸形状において輪郭が若干ぼやけているものについては「○」とした。
型の出が悪く、微細な凹凸形状における輪郭もぼやけており、外観が悪いものについては「×」と判定した。
樹脂発泡シートを、前記予備加熱装置にて加熱し、初期に対して2倍程度まで2次発泡させたものを試料とし、顕微鏡により断面観察を行った。
その結果、厚み方向中央部において層間剥離が発生していることが観察されたものは「×」と判定し、層間剥離が発生していないものの第1面と、第2面の界面が明確に確認できるものについては、「○」と判定した。
また、層間剥離は観察されず第1面と第2面の界面がわからないものについては「◎」と判定した。
結果を表1に示す。
100℃に加熱したオーブンに前記の角形トレーを入れて30分間経過した後に取出し、該取出し後の角形トレーの変形を確認した。
変形は、トレー上縁部(リップ部)において、対向する短辺のそれぞれの中心間距離を測定し、元の寸法(200mm)に対する寸法変化によって確認し、以下の基準により判定した。
耐熱性◎:寸法変化が±10mm未満であり変形が十分小さい。
耐熱性○:寸法変化が±10mm以上±13mm未満であり変形が小さい。
耐熱性△:寸法変化が±13mm以上±15mm未満であり変形が許容限度内である。
耐熱性×:寸法変化が±15mm以上であり、許容限度を超えた変形が生じている。
結果を表1に示す。
前記の角形トレー5つをポリエチレン製のチャック袋に入れ、24時間静置した。
男女5人の被験者により前記チャック袋内の臭気を官能評価した。
その結果、臭気の強いと感じた人が0人又は1人であった場合については「◎」、臭気の強いと感じた人が2人又は3人であった場合については「○」と判定し、臭気の強いと感じた人が4人以上であった場合には「×」と判定した。
第1樹脂組成物に含有させるGPPS(商品名「HP−555」)と、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)及びポリスチレン樹脂(PS)の混合物(商品名「ノリルEFN4230」)との割合を表1に示す通りとし、且つ、該第1樹脂組成物を溶融混練する上流側押出機のシリンダーの最高設定温度を290℃に代えて300℃としたこと以外は、実施例1と同様の条件で樹脂発泡シートを作製し、該樹脂発泡シートに対して実施例1と同様の評価を行った。
結果を表1に示す。
第1樹脂組成物に含有させるGPPS(商品名「HP−555」)と、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)及びポリスチレン樹脂(PS)の混合物(商品名「ノリルEFN4230」サビック社製 PPE/PS=70/30)との割合を表1に示す通りとし、且つ、該第1樹脂組成物を溶融混練する上流側押出機のシリンダーの最高設定温度を290℃に代えて300℃としたこと以外は、実施例1と同様の条件で樹脂発泡シートを作製し、該樹脂発泡シートに対して実施例1と同様の評価を行った。
結果を表1に示す。
第1樹脂組成物に含有させるGPPS(商品名「HP−555」)とポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)及びポリスチレン樹脂(PS)の混合物(商品名「ノリルEFN4230」)との割合を表1に示す通りとし、且つ、該第1樹脂組成物を溶融混練する上流側押出機のシリンダーの最高設定温度を290℃に代えて300℃としたこと以外は、実施例1と同様の条件で樹脂発泡シートを作製し、該樹脂発泡シートに対して実施例1と同様の評価を行った。
結果を表1に示す。
第1樹脂組成物に含有させるGPPS(商品名「HP−555」)とポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)及びポリスチレン樹脂(PS)の混合物(商品名「ノリルEFN4230」)との割合を表1に示す通りとし、且つ、該第1樹脂組成物を溶融混練する上流側押出機のシリンダーの最高設定温度を290℃に代えて300℃としたこと以外は、実施例1と同様の条件で樹脂発泡シートを作製し、該樹脂発泡シートに対して実施例1と同様の評価を行った。
結果を表1に示す。
第1樹脂組成物に含有させるGPPS(商品名「HP−555」)とポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)及びポリスチレン樹脂(PS)の混合物(商品名「ノリルEFN4230」)との割合を表1に示す通りとし、且つ、該第1樹脂組成物を溶融混練する上流側押出機のシリンダーの最高設定温度を290℃に代えて300℃としたこと以外は、実施例1と同様の条件で樹脂発泡シートを作製し、該樹脂発泡シートに対して実施例1と同様の評価を行った。
結果を表1に示す。
第1樹脂組成物に含有させるGPPS(商品名「HP−555」)とポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)及びポリスチレン樹脂(PS)の混合物(商品名「ノリルEFN4230」)との割合を表1に示す通りとしたこと以外は、実施例1と同様の条件で樹脂発泡シートを作製し、該樹脂発泡シートに対して実施例1と同様の評価を行った。
結果を表1に示す。
第1樹脂組成物としてポリフェニレンエーテル系樹脂を含有しないものを用いて樹脂発泡シートを作製した。
即ち、発泡層ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)及びポリスチレン樹脂(PS)の混合物(商品名「ノリルEFN4230」、サビック社製PPE/PS=70/30)に代えてHIPS(商品名「E641N」、東洋スチレン社製)を用いた。
なお、当該樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含有していないものではあるが、便宜上、ここでは「第1樹脂組成物」と称する。
該第1樹脂組成物に含有させるGPPS(商品名「HP−555」)及びHIPS(商品名「E641N」)の割合を表1に示す通りとし、且つ、該第1樹脂組成物を溶融混練する上流側押出機のシリンダーの最高設定温度を290℃に代えて260℃としたこと以外は、実施例1と同様の条件で樹脂発泡シートを作製し、該樹脂発泡シートに対して実施例1と同様の評価を行った。
結果を表1に示す。
第1樹脂組成物に含有させるGPPS(商品名「HP−555」)と、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)及びポリスチレン樹脂(PS)の混合物(商品名「ノリルEFN4230」)との割合を表1に示す通りとしたこと以外は、実施例1と同様の条件で樹脂発泡シートを作製し、該樹脂発泡シートに対して実施例1と同様の評価を行った。
結果を表1に示す。
第1樹脂組成物に含有させるGPPS(商品名「HP−555」)と、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)及びポリスチレン樹脂(PS)の混合物(商品名「ノリルEFN4230」)との割合を表1に示す通りとし、且つ、該第1樹脂組成物を溶融混練する上流側押出機のシリンダーの最高設定温度を290℃に代えて300℃としたこと以外は、実施例1と同様の条件で樹脂発泡シートを作製し、該樹脂発泡シートに対して実施例1と同様の評価を行った。
結果を表1に示す。
第1樹脂組成物に含有させるGPPS(商品名「HP−555」)と、ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE)及びポリスチレン樹脂(PS)の混合物(商品名「ノリルEFN4230」)との割合を表1に示す通りとし、且つ、該第1樹脂組成物を溶融混練する上流側押出機のシリンダーの最高設定温度を290℃に代えて300℃としたこと以外は、実施例1と同様の条件で樹脂発泡シートを作製し、該樹脂発泡シートに対して実施例1と同様の評価を行った。
結果を表1に示す。
この図2、3は、何れも正面視左側の写真が樹脂発泡シートを2次発泡させる前のシート断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影したもので、正面視右側の写真が2次発泡後の断面写真である。
そして実施例3の樹脂発泡シートに係る断面写真(図2)では、2次発泡後も正常な断面構造が示されている一方で、比較例1の樹脂発泡シートに係る断面写真(図3)では、厚み方向中央部において気泡どうしが連結した粗大気泡が形成されており、層間剥離が生じていることが確認できる。
Claims (4)
- 発泡層を有する樹脂発泡シートであって、
前記発泡層が、ポリスチレン系樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂を含むポリスチレン系樹脂組成物によって形成され、厚み方向においてポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度を5質量%以上異ならせており、該発泡層における前記濃度の最低値が2質量%以上で且つ最高値が50質量%以下であり、
前記発泡層は、前記厚み方向両端部の内の一端部におけるポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度をD1(質量%)とし、他端部におけるポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度をD2(質量%)とした場合に下記の関係式(1)〜(4)の全てを満たす樹脂発泡シート。
2≦ D1 ≦17 ・・・(1)
10≦ D2 ・・・(2)
D1 < D2 ・・・(3)
6≦(D2−D1)<17 ・・・(4) - 発泡層を有する樹脂発泡シートが熱成形されてなる樹脂発泡成形品であって、
前記発泡層が、ポリスチレン系樹脂及びポリフェニレンエーテル系樹脂を含むポリスチレン系樹脂組成物によって形成され、厚み方向においてポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度を5質量%以上異ならせており、該発泡層における前記濃度の最低値が2質量%以上で且つ最高値が50質量%以下であり、
前記発泡層は、前記厚み方向両端部の内の一端部におけるポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度をD1(質量%)とし、他端部におけるポリフェニレンエーテル系樹脂の濃度をD2(質量%)とした場合に下記の関係式(1)〜(4)の全てを満たす樹脂発泡成形品。
2≦ D1 ≦17 ・・・(1)
10≦ D2 ・・・(2)
D1 < D2 ・・・(3)
6≦(D2−D1)<17 ・・・(4) - 容器であり、且つ、発泡層の前記一端部の側が内側となるように熱成形されてなる容器である請求項2記載の樹脂発泡成形品。
- 容器であり、且つ、発泡層の前記他端部の側が内側となるように熱成形されてなる容器である請求項2記載の樹脂発泡成形品。
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