JP2017194477A - 循環腫瘍細胞濃縮分離デバイス及び循環腫瘍細胞の濃縮分離方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】血液由来試料中の循環腫瘍細胞を簡便かつ高回収率で、さらに腫瘍細胞に対して低侵襲に回収できる、循環腫瘍細胞濃縮分離デバイスを提供する。【解決手段】血液由来試料に存在する、循環腫瘍細胞を濃縮分離するためのデバイスであって、一端が閉塞し、他端が開口した有底の管状容器に、比重が1.050〜1.080の範囲内であり、遠心分離操作によって腫瘍細胞と腫瘍細胞以外の血液細胞とを分離可能なチクソトロピー性を有する細胞分離剤を収容してなる、循環腫瘍細胞濃縮分離デバイス。【選択図】なし

Description

本発明は、血液由来試料から腫瘍細胞を濃縮分離するための循環腫瘍細胞濃縮分離デバイスに関する。より詳細には、本発明は、比重差を利用して、遠心分離後に腫瘍細胞とその他の血液細胞の中間に細胞分離剤による隔壁を形成することができる循環腫瘍細胞濃縮分離デバイス及び分離方法に関する。
循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells:CTC)とは、原発腫瘍組織または転移腫瘍組織から遊離し、血中へ浸潤することで末梢血中に分布する癌細胞である。このような循環腫瘍細胞は、癌の転移に大きく関係している。従って、循環腫瘍細胞の検出やその動態の観察等が注目されている。
他方、循環腫瘍細胞は、血液中に極微量でしか存在しないと考えられている。従って、循環腫瘍細胞を検出したり、循環腫瘍細胞の動態を観察したりするには、血液中に存在する循環腫瘍細胞を観察可能な濃度まで濃縮分離する必要があった。従来、血液試料中における循環腫瘍細胞の濃縮分離方法として、様々な方法が提案されている。例えば、血液細胞である赤血球を除去するために全血試料に溶血剤を添加する方法が知られている。しかしながら、溶血せずに残存する赤血球が多いという問題があった。また、白血球を除去できないという問題もあった。加えて、血液由来試料中に多量の溶血剤を添加すると、目的とする腫瘍細胞に与える侵襲が大きいという問題もあった。
下記の特許文献1には、循環腫瘍細胞に発現している上皮細胞接着分子(EpCAM)に対して磁気ビーズを反応させ、磁気的に腫瘍細胞を他の細胞と選別し、腫瘍細胞を選択的に回収する方法が開示されている。下記の特許文献2には、血球分離フィルターを用い、細胞の大きさにより腫瘍細胞を選別する方法が開示されている。下記の非特許文献1には、比重が1.077g/mLとされている分離剤商品を用いた密度勾配遠心法が記載されている。
特開2012−022002号公報 特開2013−042689号公報
GE Healthcare Bio-Sciences AB「Instructions 71-7167-00 AG Ficoll-Paque PLUS」
特許文献1に記載の方法では、上皮細胞由来の腫瘍細胞しか検出することができなかった。そのため腫瘍細胞の回収率が低いという問題があった。また、磁気標識抗体や磁石などが必要であり、操作方法が煩雑であった。加えて検査に長時間を要していた。
特許文献2に記載の方法では、血液分離フィルターで回収できない腫瘍細胞が存在するため、やはり腫瘍細胞の回収率が低かった。加えて、正確な濃縮分離ができないおそれがあった。
非特許文献1に記載の方法では、白血球が分離剤の表面より下方に拡がった場合に、比重が局部的に減少することがあった。そのため、血液試料を分離剤との界面を乱さないように載置しなければならなかった。従って操作が煩雑であった。また、腫瘍細胞の回収にも慎重な操作が必要であった。加えて、腫瘍細胞層と、分離媒体との界面が不明確であった。そのため、腫瘍細胞の回収率が低かった。
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、血液由来試料中の循環腫瘍細胞を簡便な操作で、高い回収率で、しかも細胞に対する侵襲性を高めることなく、腫瘍細胞を濃縮分離することができる、循環腫瘍細胞濃縮分離デバイス及び循環腫瘍細胞の濃縮分離方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題に鑑み、特定の比重を持ったチクソトロピー性を有する細胞分離剤を用いることによって上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明に係るデバイスは、血液由来試料に存在する、循環腫瘍細胞を濃縮分離するためのデバイスであって、一端が閉塞し、他端が開口した有底の管状容器と、上記管状容器内に収容されており、遠心分離後に腫瘍細胞と上記腫瘍細胞以外の血液細胞とを分離し得るチクソトロピー性を有する細胞分離剤とを備え、上記細胞分離剤の比重が1.050〜1.080の範囲内である、循環腫瘍細胞濃縮分離デバイスである。
本発明に係るデバイスのある特定の態様では、上記細胞分離剤の比重が1.055〜1.080の範囲内である。
本発明に係るデバイスのさらに別の特定の態様では、上記細胞分離剤の比重が1.065〜1.077の範囲内である。
本発明に係るデバイスのさらに別の特定の態様では、上記細胞分離剤がチクソトロピー性付与剤として数平均分子量700以上であるポリアルキレングリコールを含み、かつ該ポリアルキレングリコールが細胞分離剤の全体の5重量%以下の濃度で配合されている。
本発明に係るデバイスのある特定の態様では、上記管状容器内に収容された血液抗凝固剤をさらに含む。
本発明に係るデバイスのさらに別の特定の態様では、上記循環腫瘍細胞濃縮分離デバイスが、さらに該腫瘍細胞以外の血液細胞同士を選択的に凝集させ、遠心分離操作により沈降させるための細胞凝集薬剤がさらに含まれている。
本発明に係るデバイスのさらに別の特定の態様では、上記細胞凝集薬剤が、血球細胞を選択的に凝集させるものである。
本発明に係るデバイスのさらに別の特定の態様では、上記細胞凝集薬剤が、免疫複合体の形成能力を持つ抗体である。
本発明に係るデバイスのさらに別の特定の態様では、上記細胞凝集薬剤の抗体が、白血球表面に特有な抗原に結合する抗原認識部位と赤血球表面に特有な抗原に結合する抗原認識部位との双方が備えられている。
本発明に係るデバイスのさらに別の特定の態様では、上記細胞凝集薬剤が、血液由来試料1mLに対しての添加量が25〜150μLになるように添加されている。
本発明に係るデバイスのさらに別の特定の態様では、上記有底の管状容器の上記開口が、少なくともその一部が刺通可能に構成される栓体で封止されており、かつ内部が減圧されている。
また、本発明に係る循環腫瘍細胞の濃縮分離方法は、下記の各工程を備える。
(1)比重が1.050〜1.080の範囲内であり、遠心分離操作によって上記腫瘍細胞と上記腫瘍細胞以外の血液細胞とを分離可能な細胞分離剤が収容されており、一端が閉塞し、他端が開口した有底の管状容器内に、血液由来試料と、腫瘍細胞以外の血液細胞同士を選択的に凝集させ遠心分離操作により沈降させるための細胞凝集薬剤と、血液抗凝固剤を共存させる工程。
(2)該細胞凝集薬剤と該血液由来試料を該容器内で反応させる工程。
(3)該容器を遠心分離し、該腫瘍細胞とその他の血液細胞との間に細胞分離剤による隔壁を形成させる工程。
(4)隔壁より上側の血漿中に濃縮分離された該腫瘍細胞を回収する工程。
本発明に係る循環腫瘍細胞濃縮分離デバイス及び濃縮分離方法によれば、血液由来試料中の循環腫瘍細胞を簡便な操作で、かつ高い回収率で、さらに細胞に対する侵襲性を高めることなく、濃縮分離することができる。よって、循環腫瘍細胞を血液由来試料から効率良く回収することができる。
本発明に係る循環腫瘍細胞濃縮分離デバイスでは、上記の通り血液由来試料中に極微量しか存在しない腫瘍細胞を高純度で回収できるため、例えば、濃縮分離した試料を用いてフローサイトメーターにより腫瘍細胞を検出する際の検出効率および検出精度の向上を図ることができる。あるいは、顕微鏡下で濃縮分離した腫瘍細胞を細胞学的に解析する操作を効率的且つ高精度で実施できる。更には、腫瘍細胞を簡便な操作且つ、高回収率且つ、高純度で回収できることで、効果的な新規腫瘍治療薬の開発や、また新しい治療上及び診断上のターゲットの発見に貢献できると考えられる。
図1は、本発明の循環腫瘍細胞濃縮分離デバイスの一構造例を示す模式的正面断面図である。
以下、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。本発明によって提供されるデバイスは、血液由来試料に存在する、極微量の腫瘍細胞を濃縮分離するデバイスであって、一端が閉塞し、他端が開口した有底の管状容器に、該腫瘍細胞とその他の血液細胞の中間比重を有し、遠心分離操作によって両者を分離可能なチクソトロピー性を有する細胞分離剤を収容してなることを特徴とする循環腫瘍細胞濃縮分離デバイスである。
(血液細胞)
本発明に係る循環腫瘍細胞濃縮分離デバイスは、後で説明する細胞凝集薬剤を用いて血液由来試料に含まれる血液細胞を除去することができる。本明細書における血液細胞は、所望とする腫瘍細胞以外に血液由来試料中に存在する血液細胞を表し、例えば血球細胞、血小板細胞、より詳細には赤血球、B細胞、T細胞、単核細胞、NK細胞、顆粒細胞等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
(循環腫瘍細胞の比重及びその他の血液細胞の比重)
循環腫瘍細胞の比重は、腫瘍細胞の種類にもよるが、1.040〜1.065程度が一般的である。他方、赤血球の比重は1.095、白血球の比重は1.063〜1.085程度である。従って、循環腫瘍細胞以外の細胞の比重は、通常、1.063〜1.095の範囲である
(血液由来試料)
本明細書における血液由来試料には、被験者より採取した全血検体をそのまま用いたものの他に、例えば血液の性質を保持するため、あるいは腫瘍細胞の分離濃縮において有利な環境を作る等の目的で種々の薬剤を添加したものも同様に含まれる。
血液由来試料に添加される薬剤としては、グルコース、マルトース等の糖類、クエン酸ナトリウム等が挙げられるが、これに限定される物ではない。また、後述する血液抗凝固剤は、血液由来試料の中に予め含まれている構成を取っても良い。
(細胞分離剤)
本発明は、チクソトロピー性を有する細胞分離剤を一端が閉塞し、他端が開口した有底の管状容器に収容してなるデバイスを提供することで上記課題を解決する。
前述したように、本発明では、細胞分離剤の比重は、循環腫瘍細胞の比重と、循環腫瘍細胞以外の血液細胞の比重との間の値とすることが必要である。それによって、遠心分離操作後に、循環腫瘍細胞と、他の血液細胞との間に隔壁を確実に形成することができる。
ところで、一般にチクソトロピー性を有する細胞分離剤は、比重が高くなるに伴って遠心力による流動応答性が鈍化するため、一般的に用いられる血清あるいは血漿用の分離剤は比重1.040〜1.055に調製されている。
本発明における細胞分離剤の比重は、1.050〜1.080の範囲内である。従って、腫瘍細胞と他の血液細胞を分離することができる。好ましくは、この比重が1.055〜1.080の範囲内であり、より好ましくは、1.065〜1.077の範囲内である。さらに好ましくは、この比重が1.070〜1.077の範囲内である。このような比重範囲であれば、循環腫瘍細胞と、他の血液細胞とをより一層確実に分離することができる。
もっとも、比重範囲が高くなると、細胞分離剤の流動性が低くなるおそれがある。従って、好ましくは、後述するチクソトロピー性増強剤を添加することが望ましい。チクソトロピー性増強剤としては、後述するように、数平均分子量が700以上のポリアルキレングリコールを好適に用いることができる。このようなチクソトロピー性増強剤を添加することにより、遠心分離後に、腫瘍細胞と他の血液細胞との間に十分な強度の隔壁をより一層確実に形成することができる。
本発明の細胞分離剤は、特に限定されないが、液状成分と無機粉末とを含有することが好ましい。液状成分と無機粉末とを組み合わせることにより、前述した比重範囲を容易に実現することができる。無機粉末は表面が親水性の無機粉末でもよく、もしくは表面が疎水性の無機粉末でもよい。また、上記無機粉末として、表面が親水性の無機粉末と、表面が疎水性の無機粉末とを併用してもよい。
本発明における細胞分離剤において、前記液状成分としては、特に限定されることはなく、シリコーン系、α−オレフィン−フマル酸ジエステル共重合体系、アクリル系、ポリエステル系、セバシン酸と2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールと1,2−プロパンジオールとの共重合体系、ポリエーテルポリウレタン系、ポリエーテルエステル系等の液状樹脂や、ポリ−α−ピネンポリマーと塩素化炭化水素の液状混合物系、塩素化ポリブテンとエポキシ化動植物油等の液状化合物の液状混合物系、三弗化塩化エチレンやベンゼンポリカルボン酸アルキルエステル誘導体等とポリオキシアルキレングリコール等の液状混合物系、シクロペンタジエンオリゴマーとフタル酸エステル等の液状混合物系等の液/液あるいは固/液混合物のように、常温で液状を示す従来公知のものを用いればよい。
また、前記無機粉末についても特に制限されることはなく、公知の気相法(乾式法とも言う)あるいは沈降法で製造されるシリカ、または、ベントナイト、スメクタイト等からなる粘土鉱物等の二酸化珪素系、あるいは酸化チタン系、アルミナ系等の微粉末から選ばれる1種、あるいは2種以上を混合して使用してよい。
また、本発明においては、上記無機粉末は、表面が親水性を有していてもよく、疎水性を有していてもよい。また、表面が疎水性の無機粉末と、表面が親水性の無機粉末とを併用してもよい。
本発明では、上記無機粉末として二酸化珪素系粉末あるいは酸化チタン系粉末が好適に用いられ、双方を併用してもよい。
二酸化珪素系粉末のうち、親水性のシリカとしては、例えばアエロジル(登録商標)90G、130、200、300等のアエロジルシリーズ(日本アエロジル社製)、レオロシール(登録商標)QS−10、QS−20、QS−30等のレオロシールシリーズ(トクヤマ社製)、WACKER HDK S13、N20、T30等のWACKER HDKシリーズ(旭化成ワッカーシリコーン社製)等の気相法親水性シリカが入手可能であり、使用し易い。
また、疎水性シリカとしては、例えばアエロジルR972、R974、R805、R812等のアエロジルシリーズ(日本アエロジル社製)、レオロシールMT−10、DM−30S、HM−30S、KS−20S、PM−20等のレオロシールシリーズ(トクヤマ社製)、WACKER HDK H15、H18、H30等のWACKER HDKシリーズ(旭化成ワッカーシリコーン社製)等の気相法疎水性シリカが、入手し易く使用し易い。
本発明において、チクソトロピー性増強剤をさらに添加することが好ましい。このようなチクソトロピー性増強剤としては、チクソトロピー性を高め得る限り特に限定されないが、好ましくは、ポリアルキレングリコールが用いられる。より好ましくは、炭素数が2〜4のアルキレンオキサイド単量体の1種または2種以上を重合してなる重合体が好適に用いられる。さらに好ましくは、炭素数が3または4のアルキレンオキサイド単量体の1種または2種以上を重合してなる重合体であって、数平均分子量が700以上のポリアルキレングリコールが用いられる。このようなチクソトロピー性増強剤の添加により遠心分離後に隔壁をより一層確実に形成でき、かつ十分な強度の隔壁を形成することができる。
本発明に係る細胞分離剤では、上記特定のポリアルキレングリコールは1種のみが用いられてもよく、2種以上配合されてもよい。
本発明で用いられるポリアルキレングリコールにおいて炭素数2のエチレングリコール単量体の重合成分が分子内に過剰に含まれると、水溶性が増大するために好ましくなく、デイビス法によるHLB値が16以下のものが好適に使用される。なお、デイビス法によるHLB値とは下記式により算出される。
<HLB値=7+親水基の基数の総和−親油基の基数の総和>
なお、基数とは各官能基に定められている固有の数値である。
また、出発物質となったアルコール類の官能基数に由来する水酸基数に応じて、あるいは該水酸基のアルキル基等による封鎖処理の有無等により、1あるいは1より大なる数の水酸基を有するポリアルキレングリコールのいずれもが用いられる。水溶性を低めるためには、1分子あたりの水酸基数が3個以下であることがより好ましい。
また、上記ポリアルキレングリコールの分子内には、水酸基の封鎖目的以外に導入された疎水性残基が含まれていてもよい。このような疎水性残基としては、アルキレン基、アルケン基、アルキン基、芳香環基、ジメチルシロキサン系置換基などが挙げられる。
また、上記水酸基に代えて、あるいは追加的に、カルボニル基、アミノ基またはチオール基などの水素結合性極性基を含んでいてもよい。この場合においても、水溶性を低めるには、1分子あたりの極性基の数は3個以下であることがより好ましい。
ポリアルキレングリコールの数平均分子量が700より小さいと、遠心分離後に形成される隔壁に亀裂が入ることがある。その結果、血球細胞と腫瘍細胞とが混ざり合い、腫瘍細胞の純度が低下する可能性がある。従って、数平均分子量は700以上であることが望ましい。より好ましくは、2個以上の水酸基を有するポリアルキレングリコールの場合、数平均分子量は1000以上であることが望ましい。なお、上記ポリアルキレングリコールの数平均分子量の上限値は特に限定されないが、100,000以下であることが望ましい。100,000を超えると、水酸基密度が小さくなり、チクソトロピー性増強剤として作用しなくなることがある。
上記ポリアルキレングリコールの濃度は、血液分離剤全体の5重量%以下であることが好ましい。5重量%以下とすることにより、細胞分離剤を好ましい粘度範囲により一層容易に調整することができる。より好ましくは3重量%以下であり、さらに好ましくは2重量%以下である。また、上記ポリアルキレングリコールの濃度の好ましい下限は0.1重量%である。0.1重量%以上にすることにより、細胞分離剤の粘度範囲を好ましい範囲に調整することがより一層容易となる。
上記特定のポリアルキレングリコールの具体例としては、以下の各種ポリアルキレングリコールを挙げることができる。ただし、下記に例示する物質に限定されるものではない。
1より大きな数の末端水酸基を有するポリアルキレングリコールとしては、例えばポリブチレングリコール(日油社製、PB−700、PB−1000、PB−2000等のユニオール(登録商標) PBシリーズ)、ポリプロピレングリコール(日油社製、D−700、D−1200、D−4000等のユニオール Dシリーズ)、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル(日油社製、TG−1000、TG−3000、TG−4000等のユニオール TGシリーズ)、ポリオキシプロピレンソルビット(日油社製、HS−1600D等のユニオール HSシリーズ)、ポリセリン(日油社製、DCB−1000、DCB−2000、DCB−4000等のポリセリン DCBシリーズ、およびDC−1100、DC−1800E、DC−3000E等のポリセリン DCシリーズ)、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル(日油社製、DGP−700等のユニルーブ(登録商標)シリーズ)、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル(旭硝子社製、S3003、S3006、S3011等のプレミノールシリーズ)、ポリプロピレングリコール(旭硝子社製、S4001、S4006、S4011、S4015等のプレミノール(登録商標)シリーズ)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(三洋化成工業社製、PE−34、PE−61、PE−62、PE−64、PE−71、PE−74等のニューポール(登録商標) PEシリーズ)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル(ADEKA社製、AM−502等のアデカポリエーテル)が挙げられる。
1個の末端水酸基を有するポリアルキレングリコールとしては、例えばポリオキシプロピレンブチルエーテル(日油社製、MB−7、MB−14、MB−38、MB−700等のユニルーブ MBシリーズ)、ポリオキシプロピレングリコールモノエーテル(三洋化成社製、LB−285、LB−625、LB−3000、LB−1800X等のニューポール LBシリーズ)、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル(旭硝子社製、S1004F、S1005等のプレミノールシリーズ)が挙げられる。
本発明に係る細胞分離剤においては、細胞分離剤としての性能を維持できる範囲で、相溶化剤、酸化防止剤等の添加剤が更に配合されてもよい。
本発明に係る細胞分離剤の比重は、1.050〜1.080に調整される。本発明に係る細胞分離剤の比重は、好ましくは1.055〜1.080に調整され、より好ましくは1.065〜1.077に調整される。比重を1.055未満にした場合は腫瘍細胞の比重よりも低くなるためか、所望とする腫瘍細胞の回収率が低くなることがある。一方、比重を1.080よりも高くすると所望としない腫瘍細胞以外の血液細胞、特に血球細胞の比重と近くなるため、遠心分離時の細胞分離剤の流動性が低下して、腫瘍細胞とその他の血液細胞の中間に隔壁を形成することができなくなることがある。
(血液抗凝固剤)
本発明に係る腫瘍細胞濃縮分離デバイスには、必要に応じて血液抗凝固剤が添加されてもよい。該血液抗凝固剤は後に説明する細胞凝集薬剤と血液由来試料の反応時に両者と共存する形態を取っていればよい。すなわち、該血液抗凝固剤は予め前記容器内に収容される形態を取っていてもよいし、また予め血液由来試料に別に添加される形態を取っていてもよい。予め前記容器内に収容される形態を取る場合は、容器内壁面に塗布される形態や、顆粒状、シート状等の血液由来試料に溶解しやすい形状にして容器内に収容する形態を取ってもよい。
本発明で用いられる血液抗凝固剤としては特に限定されることはなく、クエン酸、ヘパリン、EDTA等、公知の血液抗凝固剤を用いることができる。
(細胞凝集薬剤)
本発明の腫瘍細胞濃縮分離デバイスは、必要に応じて細胞凝集薬剤を含有する。本発明における細胞凝集薬剤とは、所望とする腫瘍細胞以外の血液細胞を選択的に凝集させ、比重差を用いた遠心分離操作により沈降、分離しやすくさせることで該腫瘍細胞の純度を高めることができる薬剤を意味する。そのため、そのような作用機序を持つ薬剤であれば公知の薬剤を適用することが可能であるが、好適には、白血球表面に特有な抗原に結合する抗原認識部位と、赤血球表面に特有な抗原に結合する抗原認識部位を両方具備する抗体(RosetteSep human CD45 depletion cocktail、STEMCELL Technologies社製)が用いられる。
また、別の凝集方法を持つ薬剤としては、白血球表面に特有な抗原と結合することができる抗原認識部位を、比重の大きい担体に物理結合あるいは化学結合した薬剤や、マイクロビーズ等の不溶性担体に血球細胞を物理吸着させる薬剤も用いることができる。
(細胞分離剤の製造方法)
本発明に係る細胞分離剤の製造方法は従来公知の方法を用いることができ、特に限定されない。すなわち、前記液状成分と、前記無機粉末と、前記特定のポリアルキレングリコールとを適宜の方法で混合すればよい。混合方法については特に限定されず、プラネタリーミキサー、ロールミル、ホモジナイザーなどの公知の混練機を用いた方法を挙げることができる。
(循環腫瘍細胞濃縮分離デバイス)
本発明に係る循環腫瘍細胞濃縮分離デバイスは、構成要素として、容器本体と、容器本体内に収容されており、かつ上記本発明に係る細胞分離剤、及び必要に応じて血液抗凝固剤や細胞凝集薬剤とを備える。該容器本体としては、特に限定されず、採血管として広く用いられている有底の管状容器を始め、試験管、遠沈管、マイクロチューブ等の任意の遠心分離可能な有底の管状容器を用いることができる。
図1は、このような循環腫瘍細胞濃縮分離デバイスの一構造例を示す模式的正面断面図である。循環腫瘍細胞濃縮分離デバイス1は、有底の管状容器からなる容器本体2を有する。この容器本体2内に、細胞分離剤3が収容されている。
上記有底の管状容器の開口した一端が、少なくともその一部が刺通可能に構成された栓体で封止されており、かつ該容器の内部が減圧されていてもよい。また、上記容器本体の材質についても、遠心分離に耐え得る限り、特に限定されず、合成樹脂やガラスなど任意の材料を用いることができる。
容器本体及び栓体では、それぞれ血餅付着防止等の効果を果たすために内部表面処理が施されていてもよい。
また、細胞分離剤の添加量は一般に該容器1本当たり0.3g〜3.0g程度が添加されている事が好ましいが、使用する容器の容積や形状によって最適な添加量を選択することができる。
また、本発明に係る循環腫瘍細胞濃縮分離デバイスでは、上記細胞凝集薬剤は、血液由来試料1mLに対しての添加量が25〜150μLとなるように容器に収容されていることが望ましい。それによって、腫瘍細胞と、腫瘍細胞以外の血液細胞とを本発明に従ってより一層効果的に分離することができる。
また、本発明には、血液由来試料中の循環腫瘍細胞を濃縮分離するための循環腫瘍細胞濃縮分離デバイスの使用も含まれる。本発明は、血液由来試料に存在する、循環腫瘍細胞を濃縮分離するためのデバイスの使用であって、一端が閉塞し、他端が開口した有底の管状容器と、上記管状容器内に収容されており、遠心分離後に腫瘍細胞と上記腫瘍細胞以外の血液細胞とを分離しうるチクソトロピー性を有する細胞分離剤とを備え、上記細胞分離剤の比重が1.050〜1.080の範囲内である、循環腫瘍細胞濃縮分離デバイスの使用を提供する。
上記のように、本発明の循環腫瘍細胞濃縮分離デバイスを使用することにより、血液由来試料中の腫瘍細胞の濃縮分離方法を実現することが可能となる。本発明の循環腫瘍細胞濃縮分離デバイスを使用した血液由来試料中の腫瘍細胞の濃縮分離方法は、以下の工程を備える。
(循環腫瘍細胞濃縮分離デバイスを使用する血液由来試料中の循環腫瘍細胞の濃縮分離方法)
(1)比重が1.050〜1.080の範囲内であり、遠心分離操作によって前記腫瘍細胞と前記腫瘍細胞以外の血液細胞とを分離可能な細胞分離剤が収容されており、一端が閉塞し、他端が開口した有底の管状容器内に、血液由来試料と、腫瘍細胞以外の血液細胞同士を選択的に凝集させ遠心分離操作により沈降させるための細胞凝集薬剤と、血液抗凝固剤を共存させる工程、
(2)該細胞凝集薬剤と該血液由来試料を該容器内で反応させる工程、
(3)該容器を遠心分離し、該腫瘍細胞とその他の血液細胞との間に細胞分離剤による隔壁を形成させる工程、
(4)隔壁より上側の血漿中に濃縮分離された該腫瘍細胞を回収する工程。
デバイスに関する詳細は上述したとおりであり、本明細書に接した当業者は明細書の記載を参照し適宜に変更等を加え、本発明の血液由来試料中の循環腫瘍細胞の濃縮分離方法を実施することができる。
本発明におけるデバイスを用いて濃縮分離された循環腫瘍細胞は、検出試薬を用いて標識した後にフローサイトメトリー等の方法を用いて計数、分析することができる。検出試薬としては、例えば循環腫瘍細胞の表面に発現している特有な抗原を認識する抗体を含んだ試薬や、腫瘍細胞に感染して腫瘍細胞特有のテロメラーゼ活性で反応して増殖し、蛍光を発するウイルスを含んだ試薬等が挙げられる。
本発明のデバイスを使用することにより、腫瘍細胞を高純度で回収することができるため、フローサイトメーターによる腫瘍細胞の検出効率及び検出精度の向上が期待される。
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜12及び比較例1〜2]
(実施例1〜12及び比較例1〜2において用いた物質)
1)液状成分
液状成分1:アクリル酸エステル重合体(比重1.032、25℃における粘度=65Pa.s)
粘度の測定は、レオメーター DV−III(ブルックフィールド社製)により行った。
2)無機粉末
無機粉末として、疎水性シリカ(日本アエロジル社製、アエロジルR974、粒径:約12nm、比表面積:約170m/g、化学的に表面をCH基で処理することにより疎水性とされている)と酸化チタン(石原産業社製、タイペークA−100、粒径0.15μm)を併用した。
3)ポリアルキレングリコール
チクソトロピー性増強剤1〜3として、下記の表1に示すポリアルキレングリコールを用意した。
増強剤1:ポリオキシプロピレングリセリルエーテル(旭硝子社製、プレミノールS3011)
増強剤2:ポリブチレングリコール(日油社製、ユニオールPB700)
増強剤3:ポリオキシプロピレングリセリルエーテル(アデカ社製、アデカポリエーテルG300)
Figure 2017194477
(細胞分離剤の作製)
(実施例1)
下記の表2に示すように、液状成分1を94.9重量%と、上記混合物である無機粉末を計4.6重量%と、ポリアルキレングリコールとして表1に示したチクソトロピー性増強剤1を0.5重量%とを含むように、これらを配合し、室温下でプラネタリーミキサーを用いて撹拌混合し、細胞分離剤を作製した。
(実施例2〜12及び比較例1〜2)
使用した材料及び配合割合を下記の表2に示すように変更したことを除いては、実施例1と同様にして細胞分離剤を作製した。なお、実施例11ではポリアルキレングリコールを用いなかった。実施例12では数平均分子量350であるチクソトロピー性増強剤3を用いた。比較例1では細胞分離剤の比重が1.045となるように調整した。比較例2では、細胞分離剤の比重が1.085となるように調整した。
Figure 2017194477
(循環腫瘍細胞濃縮分離デバイスの作製)
15mL容量のコニカルチューブ(BD社製)を用意し、各チューブに実施例1〜12及び比較例1〜2の細胞分離剤を約1.8gずつ収容することで循環腫瘍細胞濃縮分離デバイスを作製した。
(評価)
以下の評価はEDTAにより抗凝固処理を行ったヒト健常血に結腸腺癌培養細胞(DLD−1)を50個/血液1mLとなるように添加した擬似患者血を使用して行った。
1)細胞分離剤の流動性評価
循環腫瘍細胞濃縮分離デバイス3本に擬似患者血を各2mL注入後、1200g×20分/室温の条件で遠心分離を行った。細胞分離剤による隔壁の平均厚み5mm以上の場合には○を付し、2mm以上、5mm未満の厚みの場合には△を付し、2mm未満の厚みの場合には×とした。結果を下記の表3に示す。
2)隔壁強度
遠心分離後の循環腫瘍細胞濃縮分離デバイスを横倒しにし、60Hzで1時間の振動を与えた。隔壁が移動しなかった場合には○、移動しているが隔壁を保っている場合には△、隔壁が崩壊して血球細胞と混合した場合には×とした。結果を下記の表3に示す。
3)隔壁形成状態評価
遠心分離後に形成された隔壁の状態を、並びに油状浮遊物及び油膜の有無を目視により観察した。下記の表3に結果を示す。表3においては、隔壁に亀裂が生じている場合には「亀裂」とした。また、油状浮遊物や油膜が生じている場合には「△油」と記載した。これらがいずれも観察されない場合には○を付した。
4)腫瘍細胞回収率
遠心分離後、隔壁より上側の血漿中に濃縮分離された腫瘍細胞をピペッティングによって懸濁回収した。DLD−1は上皮系の細胞であるため、回収した懸濁液にCD326−FITC抗体(ミルテニー社製)を添加して蛍光標識を行った。また、残存する所望でない白血球をCD45−APC(ミルテニー社製)によって蛍光標識を行い、フローサイトメーター(FACSAria、BD社製)により、CD326+/CD45−の細胞数を計測し、擬似患者血中に含まれていた腫瘍細胞数100個に対する回収率を算出した。結果を表3に示す。
Figure 2017194477
表3から明らかなように、実施例1〜9では、細胞分離剤の流動性、隔壁強度、隔壁形成状態、腫瘍細胞回収率のいずれにおいても良好な結果を示した。また、実施例10では、隔壁形成状態の観察において、油状浮遊物や油膜は生じ、隔壁強度が若干低かったものの、腫瘍細胞を実施例1〜9と同様に高い回収率で回収することができた。実施例10では、ポリオキシアルキレングリコールが10重量%と多く添加されていたため、上記油状浮遊物や油膜が生じていたものと考えられる。
これに対して、ポリアルキレングリコールが添加されていない実施例11では、充分なチクソトロピー性が得られず、充分な隔壁強度が得られなかったものの、腫瘍細胞回収率が良好であった。
平均分子量350のポリアルキレングリコールを用いた実施例12では、腫瘍細胞回収率は良好であったが、遠心分離後の隔壁に亀裂が生じていた。平均分子量350のポリアルキレングリコールを用いたとしても、チクソトロピー性が実施例11と同様に十分に高められなかったため、十分な強度の隔壁が形成されていなかったものと考えられる。しかしながら、実施例12においても、十分な強度の隔壁が形成されていなかったと考えられるものの、実施例11同様に、腫瘍細胞回収率が良好であった。
なお、十分な隔壁強度が得られない、または隔壁に亀裂が生じる場合、分離剤によって分離された血球や腫瘍細胞の漏出が発生する可能性がある。そのため、腫瘍細胞の回収率に影響を与えるおそれや、回収された腫瘍細胞が含まれた液相に血球が混合するおそれがある。
細胞分離剤の比重を1.045に調整した比較例1では流動性、隔壁強度、隔壁状態は良好であるが、腫瘍細胞の回収率が39%と低かった。細胞分離剤の比重を1.085に調整した比較例2では遠心分離を行っても隔壁が形成されなかった。
よって、細胞分離剤の比重は1.055〜1.080に調製することが好ましい。さらに腫瘍細胞をより高い回収率で得ることができ、且つ細胞分離剤の流動性をより高くするため、細胞分離剤の比重は1.065〜1.077に調製することが好ましい。
[実施例13〜18]
血液由来試料と細胞凝集薬剤が共存する下記の実施例13〜18を説明する。
なお、以下の評価では実施例3と同じ循環腫瘍細胞濃縮分離デバイス及び擬似患者血を用いた。
(実施例13)
細胞凝集薬剤として、RosetteSep human CD45 depletion cocktail(STEMCELL Technologies社製)を使用した。EDTAで抗凝固処理した擬似患者血2mLに細胞凝集薬剤を10μL(5μL/血液1mL)添加して揺動混和を行い、室温で20分間静置した後、1200G×20分/室温の条件で遠心分離した。
遠心分離後、隔壁より上側の血漿中に濃縮分離された腫瘍細胞をピペッティングによって懸濁回収した。回収した懸濁液にCD326−FITC抗体(ミルテニー社製)及びCD45−APC(ミルテニー社製)によって蛍光標識を行い、フローサイトメーター(FACSAria、BD社製)で、CD326+/CD45−の細胞数及び、全細胞数を計測し、擬似患者血中に含まれていた腫瘍細胞数100個に対する回収率、及び残存する所望としない腫瘍細胞以外の血液細胞数を算出した。結果を表4に示す。
(実施例14〜18)
細胞凝集薬剤の添加量を下記の表4に示すように変更したことを除いては、実施例13と同様にして評価を行った。結果を表4に示す。なお、表中の細胞凝集薬剤の添加量及び、腫瘍細胞以外の血液細胞数は血液由来試料1mLあたりに換算して示す。
Figure 2017194477
表4から明らかなように、血液由来試料1mLに対する細胞凝集薬剤の添加量が増えるに伴って、腫瘍細胞以外の血液細胞数は減少した。血液由来試料1mLに対して細胞凝集薬剤を25μL以上添加することにより、腫瘍細胞以外の血液細胞数の残存数が顕著に減少した。従って、細胞凝集薬剤の添加量は血液由来試料1mLに対して25μL以上であることが好ましいことがわかる。
他方、実施例13〜17まで細胞凝集薬剤の添加量が増加するにつれて、腫瘍細胞以外の血液細胞数は順次少なくなっていた。もっとも、実施例18ではわずかに残存数が上昇傾向を示した。従って、細胞凝集薬剤の添加量は血液由来試料1mLに対して150μ以下にすることが好ましい。
よって、細胞凝集薬剤の血液由来試料1mLに対する添加量は25μL〜150μLにすることが好ましい。
また、表4の結果から、血液由来試料1mL中にある約5,300,000,000個の血液細胞に対して、細胞分離剤を内包する腫瘍細胞濃縮分離デバイスを用いることにより、血液由来試料中の腫瘍細胞以外の血液細胞を約2,000分の1に容易に除去することができた。また、血液由来試料中の細胞凝集試薬を好適な添加量範囲25μL〜150μLとすることにより、腫瘍細胞以外の血液細胞数を約50,000分の1に容易に除去することができた。この場合においても、腫瘍細胞の回収率は高かった。
血液由来試料中に極微量しか存在しない腫瘍細胞を高純度で回収することにより、フローサイトメーターによる腫瘍細胞の検出効率および検出精度の向上が期待される、あるいは顕微鏡下で腫瘍細胞を細胞学的に解析する操作を効率的且つ精度高く実施できると考えられる。更には、本発明による腫瘍細胞濃縮デバイスは簡便な操作で腫瘍細胞を高回収率且つ、高純度で回収できるため、新しく効果的な腫瘍治療薬を開発するためにも貢献し、また新しい治療上及び診断上のターゲットを見いだすのを助けることができると考える。
1…循環腫瘍細胞濃縮分離デバイス
2…容器本体
3…細胞分離剤

Claims (12)

  1. 血液由来試料に存在する、循環腫瘍細胞を濃縮分離するためのデバイスであって、
    一端が閉塞し、他端が開口した有底の管状容器と、
    前記管状容器内に収容されており、遠心分離後に腫瘍細胞と前記腫瘍細胞以外の血液細胞とを分離し得るチクソトロピー性を有する細胞分離剤とを備え、
    前記細胞分離剤の比重が1.050〜1.080の範囲内である、循環腫瘍細胞濃縮分離デバイス。
  2. 前記細胞分離剤の比重が1.055〜1.080の範囲内である、請求項1に記載の循環腫瘍細胞濃縮分離デバイス。
  3. 前記細胞分離剤の比重が1.065〜1.077の範囲内である、請求項1に記載の循環腫瘍細胞濃縮分離デバイス。
  4. 前記細胞分離剤がチクソトロピー性付与剤として数平均分子量700以上であるポリアルキレングリコールを含み、かつ該ポリアルキレングリコールが細胞分離剤の全体の5重量%以下の濃度で配合されているものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の循環腫瘍細胞濃縮分離デバイス。
  5. 前記管状容器内に収容されている血液抗凝固剤をさらに含む、請求項1に記載の循環腫瘍細胞濃縮分離デバイス。
  6. 前記腫瘍細胞以外の血液細胞同士を選択的に凝集させ、遠心分離操作により沈降させる細胞凝集薬剤をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の循環腫瘍細胞濃縮分離デバイス。
  7. 前記細胞凝集薬剤が、血球細胞を選択的に凝集させる細胞凝集薬剤である、請求項6に記載の循環腫瘍細胞濃縮分離デバイス。
  8. 前記細胞凝集薬剤が、免疫複合体の形成能力を持つ抗体である、請求項7に記載の循環腫瘍細胞濃縮分離デバイス。
  9. 前記細胞凝集薬剤の抗体が、白血球表面に特有な抗原に結合する抗原認識部位と赤血球表面に特有な抗原に結合する抗原認識部位との双方を備える、請求項8に記載の循環腫瘍細胞濃縮分離デバイス。
  10. 前記細胞凝集薬剤が、血液由来試料1mLに対しての添加量が25〜150μLになるように添加されている、請求項6〜9のいずれか1項に記載の循環腫瘍細胞濃縮分離デバイス。
  11. 前記有底の管状容器の開口が、少なくともその一部が刺通可能に構成される栓体で封止されており、かつ内部が減圧されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の循環腫瘍細胞濃縮分離デバイス。
  12. 血液由来試料中の循環腫瘍細胞を濃縮分離する方法であって、
    (1)比重が1.050〜1.080の範囲内であり、遠心分離操作によって前記腫瘍細胞と前記腫瘍細胞以外の血液細胞とを分離可能な細胞分離剤が収容されており、一端が閉塞し、他端が開口した有底の管状容器内に、血液由来試料と、腫瘍細胞以外の血液細胞同士を選択的に凝集させ遠心分離操作により沈降させるための細胞凝集薬剤と、血液抗凝固剤を共存させる工程と、
    (2)該細胞凝集薬剤と該血液由来試料を該容器内で反応させる工程と、
    (3)該容器を遠心分離し、該腫瘍細胞とその他の血液細胞との間に細胞分離剤による隔壁を形成させる工程と、
    (4)隔壁より上側の血漿中に濃縮分離された該腫瘍細胞を回収する工程と、
    を備える、血液由来試料中の循環腫瘍細胞の濃縮分離方法。
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