JP2017071861A - 耐応力腐食割れ性に優れた黄銅合金と加工部品及び接液部品 - Google Patents

耐応力腐食割れ性に優れた黄銅合金と加工部品及び接液部品 Download PDF

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Abstract

【課題】鉛の含有を防ぎつつ被削性を確保して容易に加工でき、BiやSiの添加を回避して耐応力腐食割れ性に優れた黄銅合金と加工部品及び接液部品を提供する。【解決手段】本発明は、少なくともCu:58.0〜63.0mass%、Sn:1.0〜2.0mass%、Sb:0.05〜0.29mass%、Pb:0〜0.2mass%を含有し、残部がZn及び不可避不純物から成り、γ相中のSn濃度が8mass%以下である耐応力腐食割れ性に優れた黄銅合金である。【選択図】図17

Description

本発明は、黄銅合金に関し、特に、バルブ・継手等の給水器具の合金材料として用いられ、耐応力腐食割れ性に優れた黄銅合金と加工部品及び接液部品に関する。
近年においては、例えば、水道用のバルブ、継手等の給水器具を黄銅合金により設ける場合、有毒金属である鉛の溶出を防止するために鉛フリー黄銅合金を用いる場合が主流となり、その際、鉛の代替として別の成分を含有させて被削性や耐食性などの特性を確保するようになっている。この場合、主に給水器具用の鉛フリー黄銅合金として、快削添加物としてBiを含有するビスマス系と、同じくSiを含有するシリコン系、そして快削添加物を含まないほとんど銅と亜鉛からなる40/60黄銅(以降:40/60黄銅系)などの3種類が主に実用化されている。
ビスマス系の鉛フリー黄銅合金として、例えば、特許文献1の鉛レス鍛造用黄銅材が提案されている。この黄銅材では、鉛の代替としてBiを含有させることにより、被削性を向上させている。さらに、特許文献2では、Biを含有する黄銅合金により、鉛の溶出を抑えた水道用仕切弁用弁類が提案されている。
シリコン系の鉛フリー黄銅合金としては、例えば、特許文献3や特許文献4の快削性銅合金が提案されている。これらの銅合金では、銅への鉛の含有を防ぎつつ、Siを含有させて工業的に満足しうる被削性を得ようとするものである。
特開2005−105405号公報 特許第4225540号公報 特許第3734372号公報 特許第3917304号公報
しかしながら、BiやSiなどの快削添加物を鉛入り黄銅に混入させたときには様々な不具合が発生することから、その含有量が厳しく管理されている。例えば、Siは従来から禁忌元素として知られており、製造工程における異材混入には細心の注意が必要であるばかりか、同一設備での製造が非常に困難になっている。また、Biについてもその管理基準は厳しく、鉛入り黄銅へのBiの混入よりも、ビスマス系鉛フリー黄銅へのPbの混入のほうが中間温度脆性の問題からより厳しくなっている。
これらのことから、BiやSiなどの快削添加物を混入した合金はリサイクル性に問題があった。そのためBiやSiを含有する銅合金は、リサイクルのシステムから外れた後に本来の価値よりも大幅に安価な価格で精錬所等に引き取られることもあり、リサイクルが困難なことから製品価格に転嫁されることがある。
一方、鉛フリー黄銅合金のうち、40/60黄銅系は、BiやSiを含まないため比較的リサイクルが容易であるが耐食性に問題が生じる。一般に黄銅で問題となる耐食性は、耐応力腐食割れ性、耐脱亜鉛性であり、これらのうち、特に、鉛フリー黄銅では耐応力腐食割れ性が問題となり鉛入り黄銅よりも低くなることが多い。これは、鉛入り黄銅合金ではPbにより耐応力腐食割れ性が確保されているが、鉛フリーの40/60黄銅系の合金の場合ではPbをほとんど含まないためである。
さらに、腐食性の強い軟水で使用する場合には耐脱亜鉛性も必要になり、微小開度で流量調整するような器具などに使用される場合には、耐エロージョン・コロージョン性も必要になる場合もある。
これに対応するため、40/60黄銅系に耐食性を付加した合金として、例えばSnを0.5〜1.5%程度添加して耐海水性を向上させたネーバル黄銅、さらにはこのネーバル黄銅にAsを添加して耐脱亜鉛性を向上したものなどが知られている。しかし、いずれの合金も耐応力腐食割れ性は鉛入り黄銅よりも低く、十分な実用性が得られない場合が多い。さらに、Asは、生物に対する毒性が強いことが知られており、このAsを給水器具用の合金材料に含有させることは、一般的に製造者や使用者に受け入れられない傾向にある。
本発明は、上述した実情に鑑み、鋭意検討の結果開発に至ったものであり、その目的とするところは、鉛の含有を防ぎつつ被削性を確保して容易に加工でき、BiやSiの添加を回避しながら耐応力腐食割れ性に優れた黄銅合金と加工部品及び接液部品を提供することにある。
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、少なくともCu:58.0〜63.0mass%、Sn:1.0〜2.0mass%、Sb:0.05〜0.29mass%、Pb:0〜0.2mass%を含有し、残部がZn及び不可避不純物から成り、γ相中のSn濃度が8mass%以下である耐応力腐食割れ性に優れた黄銅合金である。
請求項2に係る発明は、Ni:0.05〜1.5mass%を含有させ、かつ、このNiとSbとを添加することによる交互作用によりγ相中のSnとSbの偏析を抑制するようにした耐応力腐食割れ性に優れた黄銅合金である。
請求項3に係る発明は、γ相中のSn濃度が6.2mass%以下である耐応力腐食割れ性に優れた黄銅合金である。
請求項4に係る発明は、黄銅合金を加工成形して加工部品に用いるようにした加工部品である。
請求項5に係る発明は、黄銅合金を水接触部品に用いた接液部品である。
本発明によると、鉛の代わりにSnとSbとを所定割合で含有させることにより、鉛の含有を防ぎつつ被削性を確保して加工が容易となり、含有量を厳しく管理する必要のあるBiやSiの添加を回避してリサイクル性を向上し、BiやSiを含有させた場合と同等の耐応力腐食割れ性の向上を図ることができ、その他、耐脱亜鉛性、耐エロージョン・コロージョン性などの耐食性の向上を図ってこの耐食性を安定させることができる。
しかも、所定割合のNiを含有させることでNiとSbとの交互作用によってさらに耐応力腐食割れ性を向上し、耐食性を安定させることができる。
試験片の外観を示す写真である。 Sbを含有した黄銅合金の供試材のミクロ組織の拡大写真である。 図2におけるSbのEPMAマッピング画像を示す拡大写真である。 ネーバル黄銅のミクロ組織の拡大写真である。 Pを含有した黄銅合金の供試材のミクロ組織の拡大写真である。 比較用の黄銅合金のミクロ組織の拡大写真である。 Pを含有した黄銅合金の供試材の切りくずの写真である。 比較用の黄銅合金の切りくずの写真である。 本発明における黄銅材とその他の黄銅材のねじ込みSCC試験得点割合を示したグラフである。 鉛フリー黄銅材1におけるSnのEPMAマッピング画像を示す拡大写真である。 鉛フリー黄銅材3におけるSnのEPMAマッピング画像を示す拡大写真である。 鉛フリー黄銅材3におけるNiのEPMAマッピング画像を示す拡大写真である。 鉛フリー黄銅材5におけるSbのEPMAマッピング画像を示す拡大写真である。 鉛フリー黄銅材5におけるSnのEPMAマッピング画像を示す拡大写真である。 鉛フリー黄銅材6におけるNiのEPMAマッピング画像を示す拡大写真である。 鉛フリー黄銅材6におけるSbのEPMAマッピング画像を示す拡大写真である。 鉛フリー黄銅材6におけるSnのEPMAマッピング画像を示す拡大写真である。 鍛造品ねじ込みSCC試験サンプルを示す写真である。 アプセット試験片外観を示す写真である。 隙間噴流腐食試験結果を示す説明図である。
以下に、本発明におけるリサイクル性と耐食性に優れた黄銅合金と加工部品及び接液部品を実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の黄銅合金は、少なくともCu:58.0〜63.0mass%、Sn:1.0〜2.0mass%、Sb:0.05〜0.29mass%を有し、残部がZn及び不可避不純物からなるリサイクル性と耐食性に優れた黄銅合金である。
この銅合金に対して、Ni:0.05〜1.5mass%を含有させることが望ましい。
さらに、この黄銅合金にP:0.05〜0.2mass%を含有させてもよい。
本発明の黄銅合金に含まれる元素とその望ましい組成範囲、及びその理由を説明する。
Sn:1.0〜2.0mass%
Snは、黄銅合金における耐応力腐食割れ性(耐SCC性)、耐脱亜鉛性、耐エロージョン・コロージョン性などの耐食性を向上させる元素であり、本発明においては主として耐SCC性を向上させる必須元素である。Snの含有によりγ相を析出し耐SCC性を向上させるためには、1.0mass%以上の含有が必要である。また、C3771やC3604などの鉛入り黄銅と同等以上の耐SCC性を確保するためには後述するSbやNiの相乗効果を利用して、1.1mass%以上の含有が望ましく、1.4mass%以上含有させると比較的大きな口径の鍛造製バルブや薄肉の鍛造品など、熱間加工性を特に重視しつつ耐SCC性を確保することができる。一方で、Snの含有は合金を硬くし機械的性質(特に伸び)を低下させ製品の信頼性を損ねる可能性があるため、2.0mass%以下とし、より好ましくは1.8mass%以下とする。また、冷間加工性を特に重視する場合には1.3mass%以下とし、優れた冷間加工性を得るためには1.6mass%以下とするのが望ましい。
Sb:0.05〜0.29mass%
Sbは、黄銅合金の耐脱亜鉛性と耐SCC性を向上させる元素として知られている。本発明では、後述するSnの含有とともに耐SCC性の向上と安定化、さらにはNiとの相乗効果により耐SCC性を飛躍的に向上させる必須元素である。耐脱亜鉛性と耐SCC性を向上させるためには0.05mass%の含有が必要で、0.07mass%以上の含有でより確実に効果が得られる。一方で過剰に含有してもこれらの効果は飽和することから耐食性を得るための必要最低限必要な含有量として0.15mass%、より好ましくは0.10mass%を上限とするのが望ましい。
また、Sbは、0.3〜2.0mass%の含有で黄銅合金の被削性を向上する元素として知られているが、本発明では1.0mass%以上のSnの含有によるγ相の析出を前提として、このγ相にSbを固溶させることによりSbの含有量を0.29mass%以下でも被削性の改善効果(特に切りくずの破砕性)を得ることが可能である.これにより、過剰なSbの含有による金属間化合物の生成により伸びが小さくなることを防ぐことができる。被削性の改善効果は、少なくとも0.07mass%以上の含有量で得られる。なお、後述する各実施例において、Sbは0.07〜0.10mass%付近の値を示している。0.10mass%を超えるSbの含有は、安全性に関する特別な配慮が必要であることから、この付近の値は、市場流通性を考慮した耐SCC性を示す根拠データとして適切である。
Ni:0.05〜1.5mass%
Niは、黄銅合金の機械的性質や耐食性を向上する元素として知られている.耐SCC性に関しては、多少の効果があるとの見解が一般的であるが、後述するように40/60黄銅+Sn(ネーバル黄銅)をベースとする合金にNiを含有すると耐SCC性が低下することが明らかになっている。一方で、40/60黄銅+Sn +SbをベースとしNiを含有した場合、Sn:1.0〜2.0(好ましくはSn:1.1〜1.6)mass%及びSb:0.05〜0.29(好ましくはSb:0.08〜0.10)mass%の範囲において耐SCC性が向上し、つまり耐SCC性に関してSbとNiによる相乗効果の存在が明らかになった。これにより飛躍的に耐SCC性を向上かつ安定化させ、伸びを低下させるSnの含有量を低くすることが可能となった。Niの耐SCC性向上効果は0.05mass%以上の含有で得られ、0.10mass%以上の含有でより確実となる。一方で過剰の含有は硬質な金属間化合物の生成により被削性などが低下することから1.5mass%、より好ましくは1.0mass%を上限とし、また、Niは熱間延性を低下させる元素でもあることから0.5.mass%、より好ましくは0.25mass%を上限とするのが良い。
Cu:58.0〜63.0mass%
黄銅製品は、熱間加工(熱間押出し、熱間鍛造)、冷間加工(引き抜き)の工程を経て生産される。更に、材料特性として、機械的性質、被削性、耐食性などが用途に応じて求められる。
Cu含有量は、これらを加味して決定されるものであり、本来は、黄銅合金中に種々の目的で添加されているSn、Ni、Sb、P含有量に応じてCu含有量の調整がなされるべきであるが、本発明では、概ね以下のように成分範囲を決定する。
黄銅棒の冷間加工性は、おおよそ58.0mass%以上で安定して実施可能であることが一般的に知られている。また、熱間加工性は、約600〜800℃において変形能が高いβ相を60%以上100%未満となるCu含有量に調整することが重要と一般的に知られている。このような条件を満たすCu含有量の上限は63.0mass%、より好ましくは62.5mass%を上限とするのが良い。
安定した熱間加工性を得たり被削性を向上させるためには、61.9mass%以下とするのが良い。とりわけ熱間鍛造用として使用する場合には、上限を61.0mass%程度にすべきであり、より優れた熱間鍛造性を確保するためには、60.8mass%以下とするのが良い。
冷間加工用として使用する場合、優れた伸びを確保することが必要なので下限は59.2mass%とするのが良く、さらに優れた冷間加工性を得るためには61.0mass%以上とするのが良い。また、より優れた耐脱亜鉛性を得るためには60.0mass%を下限とするのが良い。
P:0.05〜0.2mass%
Pは、黄銅の耐脱亜鉛性を向上させる元素として公知の元素である。ISO6509−1981の耐脱亜鉛腐食試験において、最大脱亜鉛腐食深さが200μmなどの厳しい耐脱亜鉛性の要求がある場合には、本発明合金においてSbの含有とともにPの含有が必須である。Pの耐脱亜鉛性向上効果は0.05mass%以上の含有で得られ、より確実には0.08mass%以上とするのが良い。一方で、過剰な含有は硬質の金属間化合物の生成により特に熱間加工性を低下させることから、上限を0.2mass%とするのが良い。
また、Pは上記金属間化合物の生成により被削性(特に切りくずの破砕性)を改善する元素であり、Pの金属間化合物が生成する0.08mass%程度で顕著な効果が得られる。被削性を向上する効果はPの含有量の増加とともに大きくなるが、上記熱間加工性の低下も考慮して0.15mass%、より好ましくは0.10mass%を上限とするのが良い。
Pb:0.3mass%以下
Pbの上限を厳しく管理してしまうと限られた溶解材料の使用を強いられ合金のコストアップ要因となることから、リサイクル性の観点からは一定量を許容することが望ましい。一方で、Pbは人体に対し有害であるため可能な限り減らすことが望ましく、水道水への溶出基準のひとつであるNSF61−Section8−Annex Fのクリアを前提とした場合、製品形状にもよるがPbの上限は0.3mass%以下とすることが望ましい。さらに、Pbの含有規制のひとつであるNSF61−Annex Gによると、Pbは接液部品の加重平均で0.25mass%までは許容されることから、この規格に準拠するなら鉛の上限は0.25mass%とするのが望ましい。また、RoHs指令の暫定基準の4mass%が撤廃された場合、Pbの上限は0.1mass%となる可能性が高い。したがって電気電子部品などに使用される場合はPbの上限は0.1mass%とするのが望ましい。さらにはCDAの抗菌素材としての登録を考慮した場合、0.09mass%を上限とするのが望ましい。
Bi:0.3mass%以下
Biはリサイクル性の観点からC3771などのPb入り一般材への混入は避けるべきであるが、上限を厳しく管理するとPbと同じ理由から逆にリサイクル性を損なう。C3771に混入しても問題の無い範囲で0.1mass%程度の許容が望ましく、さらに溶解重量に対し50%程度をリターン材を投入することを考慮すれば、Biは0.2mass%は許容したほうが良い。一方で、Pbの含有量にもよるが、Bi−Pb共晶による脆化を考慮するとBi含有量は0.3mass%を上限にすることが望ましい。
なお、0.3mass%以下のBiを含有することにより、耐脱亜鉛性が向上する。
不可避不純物:Fe、Si、Mn
本発明における鉛フリー黄銅合金の実施形態の不可避不純物としては、Fe、Si、Mnが挙げられる。これらの元素を含有すると、硬い金属間化合物の析出により合金の切削性が低下し、切削工具の交換頻度が上昇するなどの悪影響を生ずる。従って、Fe:0.1mass%以下(より高い耐食性が要求される場合には0.01mass%以下)、Si:0.1mass%以下、Mn:0.03mass%以下を、切削性への影響が低い不可避不純物として扱う。
その他、As:0.1mass%以下、Al:0.03mass%以下、Ti:0.01mass%以下、Zr:0.1mass%以下、Co:0.3mass%以下、Cr:0.3mass%以下、Ca:0.1mass%以下、B:0.1mass%以下、Se:0.1mass%以下、Cd:0.1mass%以下が不可避不純物として挙げられる。
以上の元素に基づき、本発明のリサイクル性と耐食性に優れた鉛フリー黄銅合金が構成される。黄銅合金の実用化学成分として望ましい成分範囲と、脱亜鉛切削用、脱亜鉛鍛造用、一般切削用、一般鍛造用の各用途として望ましい成分範囲を絞ったものを表1に示す。成分範囲の単位はmass%である。表中においては残部のZnを省略しており、この残部には不可避不純物も含まれるものとする。
Figure 2017071861
次いで、本発明の鉛フリー黄銅合金の耐応力腐食割れ性を試験により検証した。前記したとおり、耐食性の1つとして耐応力腐食割れ性が挙げられ、この耐応力腐食割れ性の評価として、以下の試験を行った。供試材及び比較用の比較材の試験片として、棒材(φ26以上の引き抜き材)を図1に示すφ25×35(Rc1/2ねじ込み継手)にNC加工機で加工したものを使用した。
ステンレス製ブッシングのねじ込みトルクを9.8N・m(100kgf・cm)、アンモニア濃度を14%、試験室温度を20℃前後に管理するものとした。また、この耐応力腐食割れ性試験において、以降の各試験における供試材又は比較材は、同一材質について複数の供試材を用意し、各試験を実施した。応力腐食割れ試験は、ブッシングをねじ込んだ供試品を、アンモニア濃度14%雰囲気中のデシケータに設置後、任意の時間で取出し、10%硫酸にて洗浄後、観察を行う。観察は実体顕微鏡(倍率7倍)を用いて行い、割れが発生していないものを○判定、微細な割れ(肉厚の1/2以下)が発生しているものを△判定、肉厚の1/2以上の割れが発生しているものを▲判定、肉厚貫通亀裂が発生しているものを×判定とする。また、試験後の判定を定量的に表すために、○:3点、△:2点、▲:1点、×:0点とし、それぞれの点数と試験時間を掛け合わせた数値を水準毎に合計し、合計得点として評価した。
耐応力腐食割れ性について評価するために、比較的応力腐食割れの発生しにくい鉛入り黄銅材を比較材とし、この比較材を基準とした。応力腐食割れ試験時間の水準は、4時間、8時間、16時間、24時間、48時間とする。表2に鉛入り黄銅材の化学成分値を、表3に耐応力腐食割れ試験結果を、表4に点数評価結果を示す。このときの比較材の個数を比較材1〜比較材4までの4個とした。
Figure 2017071861
Figure 2017071861
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鉛入り黄銅材(比較材1〜4)の耐応力腐食割れ試験結果から、合計得点は144点であり、満点の場合の1200点から考慮した得点割合は12.0%と算出でき、これを基準とする。即ち、本発明の鉛フリー黄銅合金の耐応力腐食割れ試験を行った際の得点割合が12.0%以上の場合、概ね耐応力腐食割れ性に優れると考えるものとした。
また、鉛入り黄銅材の耐応力腐食割れ試験の結果、肉厚貫通亀裂が16時間経過の時点で初めて発生しており、8時間の時点では発生していない。従って、耐応力腐食割れ試験を行った際に、8時間時点で肉厚貫通亀裂が発生していないことも基準の1つとして挙げられ、安定した耐SCC性を有すると判断できる。
これらのことから、耐応力腐食割れ性に優れる黄銅合金としては、(1)耐応力腐食割れ試験の結果を前記判定で判定したときの得点割合が12.0%以上であること、(2)耐応力腐食割れ試験を行った際に、8時間経過の時点で肉厚貫通亀裂の発生がないことが挙げられる。
続いて、本発明と比較例の鉛フリー黄銅合金の供試材の応力腐食割れ試験を行った。その試験方法と試験結果を以下に示す。
[実施例1−1(Sn含有の比較例合金(1))]
Snを添加したときの応力腐食割れ性を確認するために、表5の化学成分値に示したSn:1.5mass%をベースとして製造した棒材を供試材とした。表6にこれらの供試材の耐応力腐食割れ試験結果と得点割合を示す。尚、本試験は、試験時間水準2時間、4時間、8時間、16時間、24時間、48時間で行った。
Figure 2017071861
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上記耐応力腐食割れ試験の結果、供試材1〜4、供試材5〜8の得点割合は、それぞれ25.5%および19.9%であり、前記した基準の得点割合である12.0%を上回る。しかし、これらの供試材No.1〜8は、いずれも4時間時点で肉厚貫通亀裂が発生したため、安定した耐SCC性を有しているとはいえない。
[実施例1−2(Sn、Ni含有の比較例合金(2))]
次いで、Niを添加したときの応力腐食割れ性を確認するために、表7の化学成分値に示したSn:1.5mass%ベース材にNiを添加した棒材を供試材とし、これらの供試材に耐応力腐食割れ試験を実施した。表8において、これらの供試材の耐応力腐食割れ試験結果と得点割合を示す。尚、本試験は、試験時間水準2時間、4時間、8時間、16時間、24時間、48時間で行った。
Figure 2017071861
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耐応力腐食割れ試験の結果、供試材9〜12の得点割合が4.9%、供試材13〜16の得点割合が4.6%であり、基準の得点割合12.0%を満たしておらず、耐SCC性に優れているとはいえない。また、Niを0.18mass%から0.40mass%へ増加させても、耐SCC性は向上しておらず、Ni単独での耐SCC性向上効果はみられず、むしろNi添加により耐SCC性が低下することが確認された。
[実施例1−3(Sn、Sb含有の本発明合金(1))]
続いて、Sbを添加したときの応力腐食割れ性を確認するために、表9の化学成分値に示したSn:1.5mass%ベース材にSbを添加した棒材を供試材として応力腐食割れ試験を行った。表10に耐応力腐食割れ試験結果と得点割合を示す。尚、本試験は、試験時間水準4時間、8時間、16時間、24時間、48時間で行った。
Figure 2017071861
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耐応力腐食割れ試験の結果、供試材17〜18の得点割合は37.8%であり、前記した鉛入り黄銅材の場合の基準の得点割合12.0%を上回る。Sn:1.5mass%ベース材である供試材1〜4、供試材5〜8と比較すると、耐SCC性が向上しており、Sb添加の効果がみられる。また、8時間時点で肉厚貫通亀裂は発生しておらず、安定した耐SCC性が発揮された。
[実施例1−4(Sn、Sb、Ni含有の本発明合金(2))]
Ni、Sbを添加したときの応力腐食割れ性を確認するために、表11の化学成分値に示したSn:1.5mass%ベース材にNiとSbを同時に添加した棒材を供試材として応力腐食割れ試験を行った。表12に耐応力腐食割れ試験結果と得点割合を示す。尚、本試験は試験時間水準8時間、16時間、24時間、48時間で行った。
Figure 2017071861
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応力腐食割れ試験の結果、供試材No.20、21の得点割合は83.3%であり、Sbを単独で添加した場合と比較して、耐SCC性が向上している。従って、Sbの単独添加と比較して、NiおよびSbを同時添加することにより耐SCC性が向上しており、交互作用によるものと思われる。また、8時間時点で肉厚貫通亀裂の発生はなく、安定した耐SCC性を有している。
[実施例1−5(Sn、Sb、Ni、P含有の本発明合金(3))]
Ni、Sb、Pを添加したときの応力腐食割れ性を確認するために、表13の化学成分値に示したSn:1.5mass%ベース材にNi、Sb、Pを同時に添加した棒材を供試材として応力腐食割れ試験を行った。表14に耐応力腐食割れ試験結果と得点割合を示す。尚、本試験は、試験時間水準4時間、8時間、16時間、24時間、48時間で行った。
Figure 2017071861
Figure 2017071861
応力腐食割れ試験の結果、何れの供試材の場合にも得点割合は63.0〜88.7%とSCC試験の基準である鉛入り黄銅材の場合の12%を大きく上回っており、優れた耐SCC性を有している。前記のとおり、Ni、Sbの同時添加の場合(供試材20、21の場合)には得点割合が83.3%であり、耐SCC性だけ考慮した場合はNi、Sbのみの添加で十分であるが、これに耐脱亜鉛性を持たせる場合には、さらにPの添加が有効となる。
[実施例1−6(Sn、Sb、Ni、P含有の本発明合金(4))]
表15にSn:1.2mass%ベース材にNi、Sb、Pを同時に添加した棒材からなる供試材の化学成分値を、表16に耐応力腐食割れ試験結果と得点割合を示す。尚、本試験は、試験時間水準4時間、8時間、12時間、16時間、24時間で行った。得点割合は34.4〜63.5%といずれもSCC試験の基準である12%を上回っており、8時間時点で肉厚貫通亀裂の発生もない。優れた耐応力腐食割れ性を持たせるためには、Sn量が多い方が好ましいが、本試験で行ったSn量1.2mass%でも、Cu量60.8〜62.0mass%の範囲で鉛入り黄銅材と比較して優れた耐SCC性を有していることが確認できた。
Figure 2017071861
Figure 2017071861
[実施例1−7(Sn、Sb、Ni、P含有の本発明合金(5))]
表17にSn:1.2mass%ベース材にSb、Pを同時に添加し、Niを0.4mass%とした棒材からなる供試材の化学成分値を、表18に耐応力腐食割れ試験結果と得点割合を示す。尚、本試験は、試験時間水準4時間、6時間、8時間、16時間、24時間で行った。得点割合は60.2%とSCC試験の基準である12%を上回っており、8時間時点で肉厚貫通亀裂の発生もなく、Ni:0.4mass%でも優れた耐SCC性を有していることが確認された。
Figure 2017071861
Figure 2017071861
上記のように、ねじ込みSCC試験を行った結果、図9に示すような試験結果と得点割合となった。鉛フリー黄銅材1については、Ni、Sbの添加なしで、得点割合が25.5%、鉛フリー黄銅材3については、Ni:0.2mass%添加で、得点割合が4.9%、鉛フリー黄銅材5については、Sb:0.08mass%添加で、得点割合が37.8%、鉛フリー黄銅材6については、Ni:0.2mass%、Sb:0.08mass%添加で、得点割合が83.3%であった。
即ち、Niの単独添加では耐SCC性向上に寄与せず、むしろ耐SCC性が低下する。Sbの単独添加では、若干耐SCC性が向上するが16時間時点でも肉厚貫通亀裂が発生しており、必ずしも安定して良好な耐SCC性とはいえない。また、Ni、Sbを同時添加することにより、顕著に耐SCC性が向上している。従って、本発明の黄銅合金において、Ni、Sbそれぞれの元素の単独添加ではなく、同時添加することによるNiとSbの交互作用により、耐SCC性が向上することが確認された。
ここで、Ni、Sbを同時添加することによる作用を、(1)亀裂の発生数、(2)β相の面積率、(3)マッピング分析、(4)定量分析により確認した。
亀裂の発生数測定の試験と分析結果を示す。
SCC試験後サンプルのミクロ観察を行い、材質によって亀裂の発生に傾向があるか調査を行った。観察結果を以下に示す。観察結果として、ミクロ組織はいずれの材質もα相、β相、γ相からなっている、亀裂はいずれの材質もα相、β相から発生している、発生した亀裂は、いずれの材質もα粒内、β粒内、結晶粒界を通っており、材質間の差はみられない、亀裂の終点は、いずれの材質もα粒内、粒界、γ相であり、材質間の差はみられないなどの傾向がみられた。
これらのことから、β相中では亀裂が止まっている様子がみられないため、β相から亀裂が発生した場合、そのまま亀裂が進行する可能性がある。そこで、各材質についてβ相から発生している亀裂の数を測定した。β相から発生した亀裂を測定するため、SCC試験後サンプル管用ネジ部端面の、切断・樹脂埋めを行った、その後、研磨・エッチングし、1000倍で各材質100枚の写真を撮影し、β相から発生した亀裂の数について測定を行った。β相からの亀裂発生数測定結果を表19に示す。測定を行った結果、耐SCC性が顕著に良好であった鉛フリー黄銅材6の亀裂が4材質中で一番少ないことが判明した。
Figure 2017071861
次に、β相の面積率測定の結果を示す。
各材質について、β相から発生する亀裂の数が異なることが分かった。組成により、β相の割合が異なることが考えられるため、各材質についてβ相の面積率測定を行った。測定は、各材質のミクロ組織写真を500倍で10枚撮影し、点算法によりβ相の面積率を求めた。この測定結果を表20に示す。β相面積率は、鉛フリー黄銅材6>鉛フリー黄銅材5>鉛フリー黄銅材1>鉛フリー黄銅材3の順に減少しており、耐SCC性が良好な鉛フリー黄銅材6のβ相面積率が16.5%と最も大きい値を示した。即ち、鉛フリー黄銅材6は最もβ相が多いにも関わらず、亀裂の発生が少ないことが判明した。
Figure 2017071861
続いて、マッピング分析結果を示す。図10〜図17においては、各鉛フリー黄銅材におけるSn、Ni、SbのEPMAマッピング画像の拡大写真を示している。
各元素のマッピング分析は、電子線マイクロアナライザー(EPMA)にて行った。分析条件は、加速電圧15kV、ビームサイズ1μm、ビーム電流30nA、試料電流20nA、サンプリングタイム20(ms)、分析視野102.4μm×102.4μm(×3000)とした。
マッピングは、写真の右側にある数値と明暗色により各元素の濃度を表しており、数値が低くなるにつれて濃度が低くなる。α相はCu濃度が高く、β相はZn濃度が、γ相についてはSn濃度が高いことが確認された。また、Niについては、鉛フリー黄銅材3、鉛フリー黄銅材6のいずれも存在箇所が特定できない。Sbについては、Snの箇所と同じ場所に存在している傾向にあり、おそらくγ相にあるものと思われる。
マッピングの分析を行った結果、γ相中に存在するSn濃度が各材質によって若干異なることが判明した。即ち、鉛フリー黄銅材1(図10)、鉛フリー黄銅材3(図11)については、γ相のSnが部分的に明るく示されており、濃度が高いことが分かる。一方、Sbを添加した鉛フリー黄銅材5(図14)、Ni、Sbを添加した鉛フリー黄銅材6(図17)については、部分的に明るい部分がみられず、γ相中のSn濃度が低いことが分かる。
また、鉛フリー黄銅材5のSbについてのマッピング結果から、γ相中に存在するSbが周囲よりも明るく示されている部分がみられる。このことから、Sbの単独添加はγ相中のSnの偏析を抑制する働きがあるものの、Sb自身がγ相中に偏析する可能性があることを示している。従って、鉛フリー黄銅材5が必ずしも安定して良好な耐SCC性を示さない場合があるのは、このことが原因の一つと考えられる。
Ni、Sbを同時添加した鉛フリー黄銅材6については、γ相中のSn濃度やSb濃度の高い箇所がみられず、NiがSnやSbの偏析を抑制しているものと考えられる。従って、鉛フリー黄銅材5と比較して顕著に耐SCC性が向上する理由として、Niがγ相中のSnやSbを均一に分散させる働きがあることが原因の一つと考えられる。
定量分析結果を以下に示す。
マッピング分析で各相に特定の元素が存在していることが分かったため、定量分析を行った。各相の定量分析は、波長分散型X線分析装置(WDX)にて行った。分析条件は、加速電圧15kV、ビーム電流10nAで実施した。60/40黄銅の場合、ポイント分析において、加速電圧15kVの場合、1μm程度のビームの広がりや深さ方向へX線発生領域が広がると計算されている。したがって、比較的大きなサイズの相を選定して分析を行った。α相、β相、γ相の定量分析結果をそれぞれ表21〜表23に示す。なお、各分析値は、含有量そのものではない。また、Niの値は、その存在有無を示す参考値である。
Figure 2017071861
Figure 2017071861
Figure 2017071861
各表の結果より、α相については、Cu量61〜65mass%、Zn量33〜36mass%、Sn量0.7〜1.3mass%の範囲であり、材質による顕著な違いはみられない。β相については、Cu量56〜58mass%、Zn量39〜40mass%、Sn量1.5〜2.4mass%と、α相同様に材質による顕著な違いはみられない。γ相については、耐SCC性が良好でない鉛フリー黄銅材1、鉛フリー黄銅材3のSn濃度が9mass%程度であった。Sbを添加して若干耐SCC性が向上した鉛フリー黄銅材5については、γ相中のSn濃度が8mass%程度と低下していた。Ni、Sbを同時添加し、耐SCC性が顕著に向上した鉛フリー黄銅材6については、γ相中のSn濃度が6%程度と更に低下していた。従って、耐SCC性が良好な材質ほど、γ相中のSn濃度が低いことが分かり、Snの偏析が抑制されている様子が分かる。
以上のことから、Ni、Sbを同時添加することにより、γ相中のSnやSbの偏析を抑制し、均一に分散させたり、亀裂の発生を抑制したりすることが、鉛フリー黄銅材6の耐SCC性が顕著に優れる理由として考えられる。
続いて、本発明の鉛フリー黄銅合金の耐脱亜鉛性を試験により検証した。この耐脱亜鉛試験として、ISO6509−1981に規定された、黄銅の脱亜鉛腐食試験方法に基づいて行った。
[実施例2−1(鋳造材)]
供試材として、金型鋳造で製作した鋳物から採取したものを使用した。このときの鋳造条件を表24に示す。
Figure 2017071861
表25において、上記耐脱亜鉛試験による試験結果を示す。試験結果の判定基準として、最大脱亜鉛腐食深さが、100μm以下の場合を◎、100〜200μm以下を○、200〜400μm以下を△、400μmより大きい場合を×として評価した。
Figure 2017071861
表25において、Cu、Zn、Snを添加した比較材5の最大脱亜鉛腐食深さは437μmであり×評価とした。この比較材5にPを添加した比較材6は最大脱亜鉛腐食深さ154μm、比較材5にSbを添加した供試材47は最大脱亜鉛腐食深さ118μmであるため○判定とする。さらにSbとともにPを添加した供試材49は最大脱亜鉛腐食深さ62μmであるため◎判定となった。以上より、厳しい耐脱亜鉛性への要求がある場合にはSbとPの同時添加が必要であることが確認された。
なお、Niを0.2mass%程度添加した比較材7、8、及び供試材48、50の結果から、耐脱亜鉛腐食性に対するNiの微量添加の効果は小さいことが確認された。
また、供試材48(最大脱亜鉛腐食深さ194μm)にBiを微量に添加した供試材51は最大脱亜鉛腐食深さ92μmであることから、Biの含有が耐脱亜鉛性の向上に効果のあることが確認された。
[実施例2−2(棒材)]
次に、鉛フリー黄銅合金として、押出棒(φ35の押出材)により供試材を設けた場合の耐脱亜鉛性について試験により確認した。このときの耐脱亜鉛試験の結果を表26に示す。
Figure 2017071861
表の結果より、Pを含まない供試材52の最大脱亜鉛腐食深さは445μmであり×判定となった。一方、Pを含有する供試材53、54、55、56はいずれも最大脱亜鉛腐食深さ100μm未満であり、Cu、Sn、Sbの含有を前提として、Pの添加により耐脱亜鉛性が向上することが確認された。
本発明の鉛フリー黄銅合金において、Sbを含有させることによる被削性の改善効果を確認するために切削試験をおこなった。
ここで、快削添加元素である鉛を含有しない黄銅合金は、前記したように著しく切削性が低下することが知られている。切削性は、抵抗値、工具寿命、切りくずの破砕性、仕上がり表面品位と4項目に大別できるが、このうち、機械切削加工では「切りくずの破砕性(処理性)」が悪いと機械に切りくずが巻付き排出されない不具合が生じてしまうため、実生産上最も重要である。
[実施例3−1(切削試験)]
Sbの含有により、被削性の改善(特に、切りくずの破砕性)を検証するために、表27に示した化学成分の供試材及びこれと比較するための比較材を切削試験により切削し、それぞれの切削結果を確認した。
Figure 2017071861
切削試験としては、横型NC旋盤にて切削し、このときの切削抵抗を測定するものとした。切削抵抗の測定機器としてキスラー切削動力計3軸タイプを使用した。切削性は切りくず1片当たりの重量により評価するものとした。表28において、このときの切削試験の条件を示す。
Figure 2017071861
上記の切削試験条件により、Sbを含有する供試材と、Sbを含有しない比較材とを切削するときの主分力、背分力、送分力をそれぞれ測定し、これらの主分力、背分力、送分力から切削抵抗合力をもとめた。切削抵抗合力は、
Figure 2017071861
の式により計算するものとする。
測定した主分力、背分力、送分力の結果と、計算した合力の値を表29の切削試験結果に示す。
Figure 2017071861
表29より、Sbを含有しない比較材9で切りくず1片の重量が0.178gであり、Sbを0.09%含有する供試材57では切りくずが0.086gと小さくなり、Sbの微量の含有で切りくずが細かくなり、被削性が向上することが確認された。
[実施例3−2(ミクロ組織観察)]
続いて、表30において、供試材57に近い化学成分である供試材58の化学成分を示し、さらに図2にこの供試材49のミクロ組織の拡大写真、図3に図2におけるSbのEPMAマッピング画像の拡大写真を示す。この供試材58の成分組織は供試材57に類似しており、Sb挙動が同一であるため供試材57の代用とするものである。
Figure 2017071861
Sbを0.09mass%添加すると、図3のEPMA画像が示すようにγ相が明るく表され、Sb濃度が高いことがわかる。このことからSbは金属間化合物ではなく、γ相に固溶して存在する。
Sbが固溶したγ相は、固溶強化により硬質で脆化し切削加工時に切りくずが分断する起点となるため、切りくず破砕性が向上する。
[実施例3−3(比較例合金(1))]
なお、Sb:0.3〜2.0mass%、Mn:0.2〜1.0mass%かつ第3元素:Ti、Ni、B、Fe、Se、Mg、Si、Sn、P、希土類元素の中から少なくとも2種以上を含む(0.1mass%〜1.0mass%)合金であり、Sbを含む硬質の金属間化合物が結晶粒界に生成し被削性を改善する黄銅合金が知られている(特表2007−517981号公報)。しかし、供試材57は、Mnを含有していない上に、Sbの含有が0.08mass%と低く金属間化合物で存在せず、γ相に固溶しているため被削性改善メカニズムが根本的に異なっている。
[実施例3−4(比較例合金(2))]
また、表31にネーバル黄銅の化学成分値、図4にこのネーバル黄銅のミクロ組織の拡大写真を示す。ネーバル黄銅の場合、Snの含有が1.0mass%以下ではγ相がほとんど生成せずSbを固溶できないため、被削性改善の効果が得られない。
Figure 2017071861
[実施例3−5(比較例合金(3))]
ここで、Bi含有黄銅合金でSbが被削性に与える効果を検証するために切削試験を実施した。表32に切削試験で用いたBi含有黄銅材の化学成分を示す。何れの比較材もBiを1.0mass%以上含有させるものとし、それぞれSb無、Sb0.08mass%含有させた材料とした。表33に切削試験の結果、表34に切りくず1片重量の分散分析表を示す。
Figure 2017071861
Figure 2017071861
Figure 2017071861
切削試験結果より、切りくずは、Sbを0.08mass%含有すると若干細かくなる傾向にあるが、分散分析表からP値が0.135であり統計的な有意差は認められず、実験によるばらつきの範囲内でSbは被削性に影響を及ぼさないと判断できる。
このように快削添加物Biを1mass%以上含有している合金では、Biの被削性向上効果がSbと比較して著しく大きいため、Sbの被削性向上効果を確認することが不可能である。
次いで、鉛フリー銅合金にPを含有させることによる被削性の改善効果を確認した。
[実施例4−1(バルブ部品を対象とした評価)]
この場合、ボールバルブのハウジングを荒加工するものとし、本実施例においては、ツーピース型ねじ込み式鍛造製ボールバルブ(呼び径1B)のボデー内周切削加工品を評価対象とし、Pを含有した黄銅合金を供試材59、Pを含有しない黄銅合金を供試材60として加工時に発生した切りくずを比較した。表35において供試材59、供試材60の化学成分をそれぞれ示し、図5、図6においてそれぞれ供試材59、供試材60のミクロ組織の写真を示す。
Figure 2017071861
供試材の切削としては総形バイト加工によって行うものとし、この加工により発生した切りくずを図7、図8に示す。供試材60においては、図8に示すように切りくずが連続しており、この連続した切りくずが主軸などに巻付いて回転が止まる等の不具合を生じるおそれがある。一方、供試材59においては、図7に示すように切りくずが比較的分断されており、この場合には切りくずが主軸などに絡むことなく加工が可能になる。これは、供試材60に対して供試材59ではPを0.10mass%含有しているためであり、PとCuやNiなどの金属間化合物の生成により切りくずが分断されたためである。
図5において、供試材59ではPの0.10mass%含有により硬質で脆化した金属間化合物が結晶粒界に生成する。硬質で脆いP系の金属間化合物は、切削加工時に切りくずが分断する起点となるため切りくず破砕性が向上する。このときの切削時における主分力、背分力、送分力を前記のSb含有の場合と同様に棒材(引き抜き材)を用いてそれぞれ測定し、これらより切削抵抗合力をもとめた。このときの切削試験結果を表36に示す。
Figure 2017071861
表36に示した切削試験において、切りくず1片の重量がPを添加しない供試材60では0.310g、Pを0.10mass%添加した供試材59では0.110gと約1/3に切りくずが細かくなり、金属間化合物の影響が顕著に表れている。
[実施例4−2(棒材を対象とした評価)]
続いて、Snを1.2mass%とした場合のP及びSbの含有による被削性を検証する。切削試験に使用した棒材からなる供試材の化学成分値を表37に、切削試験結果を表38に示す。切削試験の条件は実施例3と同様である。この結果を実施例3における比較材9の結果と比較すると、比較材9のSnが1.5mass%であることに対して、供試材61〜63のSnは1.1〜1.2mass%であるにもかかわらず、切りくず1片当たりの重量が小さくなり、PおよびSbによる被削性向上効果が確認された。また、Ni量が0.2mass%および0.4mass%で大差はなく、比較材9と比較して切りくず1片当たりの重量が小さくなる。
Figure 2017071861
Figure 2017071861
本発明の鉛フリー黄銅合金の鍛造品について、耐応力腐食割れ性評価を行うため、以下の試験を行った。供試材および比較用の試験片として、図18の左側に示す鍛造品サンプルを鍛造温度760℃で鍛造し、NC加工機により図18中に示すφ25×34(Rc1/2ねじ込み継手)に加工したものを使用した。ステンレス製ブッシングのねじ込みトルクを9.8N・m(100kgf・cm)アンモニア濃度を14%、試験室温度を20℃に管理するものとした。この場合の点数評価方法は、実施例1の場合と同様とした。
[実施例5−1(比較例合金:基準値の確認)]
鉛入り黄銅鍛造材についての耐応力腐食割れ性について評価するために、鉛入り黄銅鍛造材を比較材とし、この比較材を鍛造材の基準とした。応力腐食割れ試験時間の水準は、4時間、8時間、16時間、24時間とする。表39に鉛入り黄銅鍛造材の化学成分値を、表40に耐応力腐食割れ試験結果を、表41に点数評価結果を示す。このときの比較材の個数を比較材14〜比較材17までの4個とした。
Figure 2017071861
Figure 2017071861
Figure 2017071861
鉛入り黄銅鍛造材(比較材14〜17)の耐応力腐食割れ試験結果から、合計得点は24点であり、満点の場合の624点から考慮した得点割合は3.8%と算出でき、これを基準とする。即ち、本発明の鉛フリー黄銅鍛造品の耐応力腐食割れ試験を行った際の得点割合が3.8%以上の場合、概ね耐応力腐食割れ性に優れるものとした。
また、鉛入り黄銅鍛造材の耐応力腐食割れ試験の結果、肉厚貫通亀裂が8時間経過の時点で初めて発生しており、4時間の時点では発生していない。従って、耐応力腐食割れ試験を行った際に、4時間時点で肉厚貫通亀裂が発生していないことも基準の1つとして挙げられ、安定した耐SCC性を有すると判断できる。
これらのことから、耐応力腐食割れ性に優れる黄銅鍛造合金としては、(1)耐応力腐食割れ試験の結果を前記判定で判定したときの得点割合が3.8%以上であること、(2)耐応力腐食割れ試験を行った際に、4時間経過の時点で肉厚貫通亀裂の発生がないことが挙げられる。
[実施例5−2(本発明合金)]
続いて、本発明の鉛フリー黄銅鍛造合金の供試材の耐応力腐食割れ試験を行った。その試験方法と試験結果を以下に示す。
表42に示す化学成分値の鍛造サンプルを760℃で鍛造し、NC加工機によりRc1/2ねじ込み継手に加工し、耐応力腐食割れ試験を行った。表43に耐応力腐食割れ試験結果を、表44に点数評価結果を示す。このときの供試材の個数を供試材64〜供試材67までの4個とした。
Figure 2017071861
Figure 2017071861
Figure 2017071861
上記耐応力腐食割れ試験の結果、供試材64〜67の得点割合は60.3%であり、前記した基準の得点割合である3.8%を大幅に上回る。また、試験時間24時間経過時点でも肉厚貫通亀裂は発生しておらず、耐SCC性に優れることが確認された。
本発明の鉛フリー黄銅合金の熱間加工性を、鍛造品の熱間延性試験により確認した。
表45にこのときの供試材、比較材の化学成分値を示す。供試材としては3個の供試材68〜70とし、比較材18としては鉛入り黄銅材C3771とした。それぞれφ35mmの押し出し棒材を用いた。
Figure 2017071861
[実施例6−1(アプセット試験)]
(1)試験方法
φ35mm×30mmのサンプルを各試験温度に電気炉にて加熱し、400tナックルプレス機にて6mmの厚さまでサンプルをプレスし、サンプル外周面の状態(割れの有無)を観察し評価した。この場合の評価として、○:割れ無し・シワ無し、△:少数の微細割れもしくはシワ有り、×:割れ有りとした。
(2)試験結果
表46にアプセット試験片外観評価結果を示している。表において、供試材68、69は、一般鍛造用黄銅棒C3771である比較材18に比較して、非常に広い温度範囲にわたって結果が良好であった。Pを添加した供試材70は、500℃〜620℃の低温側、860℃の高温側で割れが発生したものの、C3771に比較して広い温度範囲にわたって結果が良好であった。
図19においては、本発明の代表例である供試材69(鉛フリー黄銅材6)と比較材18(C3771)のアプセット試験片外観写真を示している。
Figure 2017071861
[実施例6−2(熱間変形抵抗試験)]
(1)試験方法
φ10mm×15mmLのサンプルを各試験温度に電気炉にて所定の加熱温度まで加熱し、一定荷重の重りを所定の高さから落下させ、加熱したサンプルに荷重を付加し、サンプルの試験前後の厚さより、変形抵抗を算出して評価する。

Figure 2017071861
ここで、Wは重りの重量(kg)、Hは重りの落下高さ(mm)、Vは試料の体積(m)、hは変形前の試料高さ(mm)、hは変形後の高さ(mm)を示す。
(2)試験結果
供試材68〜70、比較材18の各温度の熱間変形抵抗値を表47に示す。
表の結果より、供試材は、いずれの材質・加熱温度においても、その抵抗値が、比較材(C3771)の抵抗値よりもやや増加する程度にまで抑えられることが確認された。
Figure 2017071861
本発明の鉛フリー黄銅合金の機械的性質に関して、引張強さ(基準値:315MPa以上)、伸び(基準値:15%以上)、硬さ(80Hv以上)について確認試験を行った。
供試材、及び比較材として、実施例6と同じ供試材68〜70、比較材18を用いた。
[実施例7−1(引張強さ)]
(1)試験方法
試験片として4号試験片を使用し、その試験方法はJIS Z 2241「金属材料引張試験方法」に準ずる。
(2)試験結果
供試材68、供試材69、供試材70のいずれも比較材18(C3771)の引張強さを上回り、基準値315MPa以上を満足した。
[実施例7−2(伸び)]
(1)試験方法
試験片として4号試験片を使用し、その試験方法はJIS Z 2241「金属材料引張試験方法」に準ずる。
(2)試験結果
供試材68、供試材69、供試材70のいずれも比較材18の伸びを下回るものの、基準値15%以上を満足した。
[実施例7−3(硬さ)]
(1)試験方法
試験方法はJIS Z 2244「ビッカース硬さ試験−試験方法に」準じ、棒材横断面の外周から1/3R付近を測定した。なお硬さの基準はC3604の基準を用いた。
(2)試験結果
供試材68、供試材69、供試材70のいずれも比較材18の硬さを上回り、基準値80Hv以上を満足した。
以上の引張強さ、伸び、硬さに関する機械的性質の試験結果を、表48に示す。
Figure 2017071861
本発明の鉛フリー黄銅合金の鍛造品の耐エロージョン・コロージョン性を評価するため以下の隙間噴流腐食試験(エロージョン・コロージョン腐食試験)を実施した。供試材、及び比較材として、前述の供試材69、比較材18(C3771)と、表49に示した供試材61を用いた。
Figure 2017071861
(1)試験方法
試験の条件を表50に示す。隙間噴流腐食試験は、隙間噴流腐食試験は円形の円盤状のノズルと試験片を0.4mmの間隔を隔てて重ね、その隙間へ上側の円盤の中心部に設けられた直径φ1.6mmのノズル口を通じて40±5℃の試験液(1%塩化第二銅水溶液)を注入する。試験液は隙間を満たして試験片の表面を放射状に流れる。試験液の流量は0.4L/minで、ノズル内の流速は3.3m/secである。
耐エロージョン・コロージョン腐食性は、質量損失、最大腐食深さ、腐食形態により評価した。
Figure 2017071861
(2)試験結果
図20に隙間噴流腐食試験結果を示す。図の試験結果より、供試材69、供試材71の質量損失、最大腐食深さは比較材18と比較して大きく下回っており、優れた耐エロージョン・コロージョン性を有していることが確認された。
なお、本発明の黄銅合金を用いたバルブや水栓等の水接触部品(配管機材)の少なくとも接液部を、例えば特許第3345569号に記載の方法により洗浄し、鉛の溶出を防止するようにしても良い。具体的には、硝酸にインヒビターを添加した洗浄液で洗浄して、当該接液部表面層の脱鉛化すると共に、同表面層の銅表面に皮膜を形成して硝酸による腐食を抑制する。前記インヒビターとしては、塩酸及び/又はベンゾトリアゾールを用い、前記洗浄液の硝酸濃度は0.5〜7wt%、塩酸濃度は0.05〜0.7wt%とするのが好ましい。
また、本発明の黄銅合金を用いニッケルめっき処理を施したバルブや水栓等の水接触部品(配管機材)の接液部表面層に付着しているニッケル塩を、例えば特許第4197269号に記載の方法により洗浄し、硝酸と、インヒビターとして塩酸を添加した洗浄液によって効果的に処理する処理温度(10℃〜50℃)と処理時間(20秒〜30分)のもとで酸洗浄工程を経て、前記ニッケル塩を洗浄除去すると共に、前記塩酸で接液部表面に被膜を形成した状態により、接液部表面層を効果的に脱ニッケル化処理を施すようにしても良い。前記洗浄液の硝酸濃度は0.5〜7wt%、塩酸濃度は0.05〜0.7wt%とするのが好ましい。
また、本発明の黄銅合金を用いたバルブや水栓等の水接触部品(配管機材)の少なくとも接液部を、例えば特許第5027340号に記載の方法により、カドミウムの溶出を防止するようにしても良い。具体的には、カドミウムが固溶した銅合金製配管器材の少なくとも接液部に不飽和脂肪酸からなる有機物質により皮膜を形成し、この配管器材の接液部表層の亜鉛を被覆して亜鉛中に固溶しているカドミウムの溶出を抑制する。前記不飽和脂肪酸は、モノ不飽和脂肪酸又はジ不飽和脂肪酸、トリ不飽和脂肪酸、テトラ不飽和脂肪酸、ペンタ不飽和脂肪酸、ヘキサ不飽和脂肪酸を含有した有機物質が好ましい。前記不飽和脂肪酸は、モノ不飽和脂肪酸のオレイン酸又はジ不飽和脂肪酸のリノール酸を含有した有機物質が好ましい。モノ不飽和脂肪酸のオレイン酸は、0.004wt%≦オレイン酸濃度≦16.00wt%が好ましい。更に、前記配管器材を酸又はアルカリ系の溶液で洗浄した後に、前記不飽和脂肪酸からなる有機物質で皮膜を形成すると良い。
本発明のリサイクル性と耐食性に優れた黄銅合金は、リサイクル性、耐応力腐食割れ性はもとより、切削性、機械的性質(引張強さ、伸び)、耐脱亜鉛性、耐エロージョン・コロージョン性、耐鋳造割れ性、更には耐衝撃性も要求されるあらゆる分野に広く適用することが可能である。
また、本発明の黄銅合金を用いて鋳塊(インゴット)を製造し、これを中間品として提供したり、本発明の合金を加工成形、例えば鍛造成形して、接液部品、建築資材、電気・機械部品、船舶用部品、温水関連機器等を提供することができる。
本発明のリサイクル性と耐食性に優れた黄銅合金を材料として好適な部材・部品は、特に、バルブや水栓等の水接触部品、即ち、ボールバルブ、ボールバルブ用中空ボール、バタフライバルブ、ゲートバルブ、グローブバルブ、チェックバルブ、バルブ用ステム、給水栓、給湯器や温水洗浄便座等の取付金具、給水管、接続管及び管継手、冷媒管、電気温水器部品(ケーシング、ガスノズル、ポンプ部品、バーナなど)、ストレーナ、水道メータ用部品、水中下水道用部品、排水プラグ、エルボ管、ベローズ、便器用接続フランジ、スピンドル、ジョイント、ヘッダー、分岐栓、ホースニップル、水栓付属金具、止水栓、給排水配水栓用品、衛生陶器金具、シャワー用ホースの接続金具、ガス器具、ドアやノブ等の建材、家電製品、サヤ管ヘッダー用アダプタ、自動車クーラー部品、釣り具部品、顕微鏡部品、水道メーター部品、計量器部品、鉄道パンタグラフ部品、その他の部材・部品に広く応用することができる。更には、トイレ用品、台所用品、浴室品、洗面所用品、家具部品、居間用品、スプリンクラー用部品、ドア部品、門部品、自動販売機部品、洗濯機部品、空調機部品、ガス溶接機用部品、熱交換器用部品、太陽熱温水器部品、金型及びその部品、ベアリング、歯車、建設機械用部品、鉄道車両用部品、輸送機器用部品、素材、中間品、最終製品及び組立体等にも広く適用できる。

Claims (5)

  1. 少なくともCu:58.0〜63.0mass%、Sn:1.0〜2.0mass%、Sb:0.05〜0.29mass%、Pb:0〜0.2mass%を含有し、残部がZn及び不可避不純物から成り、γ相中のSn濃度が8mass%以下であることを特徴とする耐応力腐食割れ性に優れた黄銅合金。
  2. Ni:0.05〜1.5mass%を含有させ、かつ、このNiと前記Sbとを添加することによる交互作用によりγ相中のSnとSbの偏析を抑制するようにした請求項1に記載の耐応力腐食割れ性に優れた黄銅合金。
  3. γ相中のSn濃度が6.2mass%以下である請求項1又は2に記載の耐応力腐食割れ性に優れた黄銅合金。
  4. 請求項1乃至3の何れか1項に記載の黄銅合金を加工成形して加工部品に用いるようにした加工部品。
  5. 請求項1乃至3の何れか1項に記載の黄銅合金を水接触部品に用いた接液部品。
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