JP2017022366A - 乾燥条件下で使用するための固体電解キャパシタ素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】乾燥条件下で良好な性質を示すことができるキャパシタアセンブリを提供する。【解決手段】乾燥条件下での性能達成能力は、一部は、固体電解質に、特定の化学式を有する固有導電性ポリマーを使用することにより達成される。【選択図】なし

Description

[背景技術]
固体電解キャパシタ(例えばタンタルキャパシタ)は典型的には、金属粉(例えばタンタル)を金属リード線の周囲にプレスし、プレス部品を焼結し、焼結陽極を陽極酸化した後、固体電解質を適用することによって製造される。固有導電性ポリマーは、それらの有益な低等価直列抵抗(“ESR”)及び“非燃焼/非発火”故障モードのために、固体電解質として使用されることが多い。例えば、そのような電解質は、触媒及びドーパントの存在下、3,4−ジオキシチオフェンモノマー(“EDOT”)の現場化学重合によって形成できる。しかしながら、現場重合ポリマーを使用する従来のキャパシタは、比較的高い漏れ電流(“DCL”)を有しがちであり、高速スイッチング又は動作電流スパイク時に経験するような高電圧で故障しやすい。これらの課題を克服しようとして、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリ(スチレンスルホン酸)の複合体(“PEDOT:PSS”)から形成された分散液も使用されている。PEDOT:PSS分散液は低い漏れ電流値をもたらすことができるが、印加電圧後に次第に減少するDCLの能力は、キャパシタ内の湿度レベルに依存する。すなわち、水分含量の高いキャパシタは比較的速いDCL減衰速度を示しやすいが、乾燥キャパシタは、特に低温ではかなり遅いDCL減衰速度を示す傾向にある。
従って、改良された性能を有する固体電解キャパシタを求めるニーズが今も存在する。
本発明の一態様に従って、約10%以下の相対湿度を有する乾燥雰囲気と接触するキャパシタアセンブリを開示する。前記キャパシタアセンブリは、焼結多孔体上に形成された誘電体を含有する陽極と、陽極を覆う固体電解質とを含むキャパシタ素子を含む。固体電解質は、以下の式(I):
[式中、
Rは、(CH−O−(CHであり;
aは、0〜10であり;
bは、1〜18であり;
Zは、アニオンであり;そして
Xは、カチオンである]
を有する反復単位を含有する固有導電性ポリマーを含む。
本発明の別の態様に従って、キャパシタ素子と;キャパシタ素子がその内部に配置される内部空洞を規定し、前記内部空洞は約10%以下の相対湿度を有する気体雰囲気を有するハウジングと;陽極体と電気的に接続されている陽極終端と;そして固体電解質と電気的に接続されている陰極終端とを含むキャパシタアセンブリを開示する。キャパシタ素子は、焼結多孔体上に形成された誘電体を含有する陽極と、陽極を覆う固体電解質とを含み、固体電解質は上記のような固有導電性ポリマーを含む。
本発明のその他の特徴及び側面を以下にさらに詳細に示す。
当業者に向けられた、本発明の最良の形態を含む本発明の完全かつ実施可能な開示を、添付の図面を参照しながら本明細書の後半でさらに詳細に示す。
図1は、本発明のアセンブリのキャパシタアセンブリの一つの態様を示す断面図である。 図2は、本発明のアセンブリのキャパシタアセンブリの別の態様を示す断面図である。 図3は、本発明のアセンブリのキャパシタアセンブリのさらに別の態様を示す断面図である。 図4は、本発明のアセンブリのキャパシタアセンブリのさらに別の態様を示す上面図である。
本明細書及び図面において繰り返し使用されている参照文字は、本発明の同一又は類似の特徴又は構成要素を表すものとする。
当業者であれば、本解説は単に例示的態様の説明であって、本発明のより広範な側面を制限することを意図していないことは理解されるはずである。その広範な側面は、例示的構成の中で具体化されている。
一般的に言えば、本発明は、乾燥条件下で良好な性質を示すことができるキャパシタアセンブリに向けられる。そのような条件下での性能達成能力は、一部は、固体電解質に、以下の式(I):
[式中、
Rは、(CH−O−(CHであり;
aは、0〜10、一部の態様においては0〜6、そして一部の態様においては1〜4(例えば1)であり;
bは、1〜18、一部の態様においては1〜10、そして一部の態様においては2〜6(例えば3、4、又は5)であり;
Zは、SO 、C(O)O、BF 、CFSO 、SbF 、N(SOCF 、C 、ClO などのようなアニオンであり;
Xは、水素、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウム又はカリウム)、アンモニウムなどのようなカチオンである]
を有する反復単位を含有する固有導電性ポリマーを使用することによる。
その独特の構造のために、ポリマーの負に帯電したアニオン(Z)は、水が存在しない乾燥条件下でも一般的に解離したままである。電圧が印加されると、そのような負に帯電した基は誘電体へと向かうので、誘電体との境界の陰極表面上に漏れ電流に対する障壁を作り出す。従って、印加電圧を受けた場合、キャパシタアセンブリは、時間をかけて急速にゼロに近づくDCLの減少を示すことができる。例えば、定格電圧(例えば16ボルト)を5分間受けた後、キャパシタアセンブリは、わずか約80マイクロアンペア(“μA”)以下、一部の態様においては約70μA以下、一部の態様においては約50μA以下、そして一部の態様においては約0.1〜約30μAのDCLを示すだけでありうる。合計40分間の定格電圧を受けた後も、キャパシタアセンブリは、さらに低いDCL値、例えば約25マイクロアンペア(“μA”)以下、一部の態様においては約20μA以下、一部の態様においては約15μA以下、そして一部の態様においては約0.01〜約10μAを示し続けることができる。注目すべきは、キャパシタアセンブリは、そのような低いDCL値を乾燥条件下でも示すことができるということである。すなわち、キャパシタアセンブリは、相対湿度が約10%以下、一部の態様においては約5%以下、そして一部の態様においては約0.001%〜約1%の雰囲気と接触させて配置した場合に、そのようなDCL値を示すことができる。乾燥雰囲気は、キャパシタアセンブリ自体の内部雰囲気の一部のことも、又はキャパシタアセンブリが保管及び/又は使用時に曝される外部雰囲気のこともある。
キャパシタアセンブリは湿潤条件下でも乾燥条件下でも良好な性能を達成できるので、様々に異なる用途に使用することができる。例えば、一定の態様においては、キャパシタ素子をハウジング内に気密封止し、それが曝される水分量を制限することにより、キャパシタアセンブリの熱安定性を増大させるのが望ましいこともある。さもなければ極端な条件下(例えば約175℃を超える高温及び/又は約35ボルトを超える高電圧)でポリマーは酸化されることにもなりかねない。一態様において、キャパシタ素子は、不活性ガスを含有する気体雰囲気の存在下でハウジング内に気密封止されてもよい。そうすることにより、キャパシタ素子の固体電解質に供給される水分量はさらに制限される。
本発明の様々な態様について以下でさらに詳細に説明する。
I.キャパシタ素子
A.陽極体
キャパシタ素子は、焼結多孔体上に形成された誘電体を含有する陽極を含む。多孔性陽極体は、バルブ金属(すなわち酸化可能な金属)又はバルブ金属系化合物、例えば、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ハフニウム、チタン、それらの合金、それらの酸化物、それらの窒化物などを含有する粉体から形成できる。粉体は、典型的には、タンタル塩(例えば、フッ化タンタル酸カリウム(KTaF)、フッ化タンタル酸ナトリウム(NaTaF)、五塩化タンタル(TaCl)など)を還元剤と反応させる還元法から形成される。還元剤は、液体、気体(例えば水素)、又は固体、例えば金属(例えばナトリウム)、金属合金、又は金属塩の形態で提供されうる。一態様において、例えば、タンタル塩(例えばTaCl)を約900℃〜約2,000℃、一部の態様においては約1,000℃〜約1,800℃、そして一部の態様においては約1,100℃〜約1,600℃の温度で加熱して蒸気にし、それを気体還元剤(例えば水素)の存在下で還元することができる。そのような還元反応の更なる詳細については、MaeshimaらによるWO2014/199480に記載されている。還元後、生成物を冷却、粉砕、及び洗浄して粉体にすることができる。
粉体の比電荷は、所望の用途に応じて、典型的には約2,000〜約800,000マイクロファラッド*ボルト/グラム(“μF*V/g”)の間で変動する。例えば、一定の態様においては、約100,000〜約800,000μF*V/g、一部の態様においては約120,000〜約700,000μF*V/g、そして一部の態様においては約150,000〜約600,000μF*V/gの比電荷を有する高電荷粉体が使用されうる。他の態様においては、約2,000〜約100,000μF*V/g、一部の態様においては、約5,000〜約80,000μF*V/g、そして一部の態様においては約10,000〜約70,000μF*V/gの比電荷を有する低電荷粉体が使用されうる。当該技術分野で公知の通り、比電荷は、キャパシタンスと使用された陽極酸化電圧を掛け、次いでこの積を陽極酸化電極体の重量で割ることによって決定できる。
粉体は、一次粒子を含有する自由流動性の微粉砕粉末でありうる。粉体の一次粒子は、一般的に、約5〜約500ナノメートル、一部の態様においては約10〜約400ナノメートル、そして一部の態様においては約20〜約250ナノメートルのメジアン径(D50)を有する。これは、BECKMAN COULTER Corporation社製のレーザー粒径分布分析装置(例えばLS−230)を用いて決定される。測定前に粒子を70秒間の超音波振動に付してもよい。一次粒子は、典型的には三次元の粒子形状を有する(例えば球状(nodular)又は角状(angular))。そのような粒子は、典型的には比較的低い“アスペクト比”、すなわち平均厚で割った粒子の平均直径又は幅(“D/T”)を有する。例えば、粒子のアスペクト比は、約4以下、一部の態様においては約3以下、そして一部の態様においては約1〜約2でありうる。一次粒子のほかに、粉体は、一次粒子の凝集(aggregating又はagglomerating)によって形成された二次粒子などの他のタイプの粒子も含有しうる。そのような二次粒子は、約1〜約500マイクロメートル、そして一部の態様においては約10〜約250マイクロメートルのメジアン径(D50)を有しうる。
粒子の凝集(agglomeration)は、粒子の加熱及び/又はバインダの使用によって起こりうる。例えば、凝集は、約0℃〜約40℃、一部の態様においては約5℃〜約35℃、そして一部の態様においては約15℃〜約30℃の温度で起こりうる。適切なバインダは、同じく、例えば、ポリ(ビニルブチラール);ポリ(酢酸ビニル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(ビニルピロリドン);セルロース系ポリマー、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びメチルヒドロキシエチルセルロース;アタクチックポリプロピレン、ポリエチレン;ポリエチレングリコール(例えば、Dow Chemical Co.社製Carbowax);ポリスチレン、ポリ(ブタジエン/スチレン);ポリアミド、ポリイミド、及びポリアクリルアミド、高分子量ポリエーテル;エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー;フルオロポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド、及びフルオロ−オレフィンコポリマー;アクリルポリマー、例えばナトリウムポリアクリレート、ポリ(低級アルキルアクリレート)、ポリ(低級アルキルメタクリレート)及び低級アルキルアクリレートとメタクリレートのコポリマー;ならびに脂肪酸及びワックス、例えばステアリン酸及びその他の石鹸脂肪酸、植物ワックス、マイクロワックス(精製パラフィン)などを含みうる。
得られた粉体は、任意の従来式粉体プレス装置を用いて圧縮し、ペレットに成形することができる。例えば、ダイと一つ又は複数のパンチを含有するシングルステーション式圧縮プレス機であるプレス成形機を用いることができる。あるいは、ダイと単一の下方パンチのみを使用するアンビル式(anvil-type)圧縮プレス成形機を使用することもできる。シングルステーション式圧縮プレス成形機はいくつかの基本的タイプで入手可能である。例えば、シングルアクション、ダブルアクション、浮動ダイ、可動式プラテン、対向ラム、スクリュー、インパクト、ホットプレス、印圧加工又はサイジングなどの様々な能力を有するカムプレス、トグル/ナックルプレス、及び偏心/クランクプレス機などである。粉体は、ワイヤ、シートなどの形態でありうる陽極リード周囲に圧縮される。リードは、陽極体から縦方向に延ばすことができ、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ハフニウム、チタンなどの任意の導電性材料、ならびにそれらの導電性酸化物及び/又は窒化物から形成できる。リードの接続も、他の公知技術、例えば、陽極体へのリードの溶接によって、又は形成中(例えば圧縮及び/又は焼結の前)に陽極体内部にそれを埋め込むことによって達成できる。
何らかのバインダは、プレス後ペレットを真空下、一定の温度(例えば約150℃〜約500℃)で数分間加熱することによって除去できる。あるいは、バインダは、ペレットを、Bishopらによる米国特許第6,197,252号に記載されているような水溶液と接触させることによって除去することもできる。その後、ペレットを焼結し、多孔質の一体塊(integral mass)にする。ペレットは、典型的には約700℃〜約1600℃、一部の態様においては約800℃〜約1500℃、そして一部の態様においては約900℃〜約1200℃の温度で、約5分〜約100分間、そして一部の態様においては約8分〜約15分間焼結される。これは、一段階で行われても又は複数段階で行われてよい。所望であれば、焼結は、酸素原子の陽極への移動を制限する雰囲気中で行ってもよい。例えば、焼結は、真空下、不活性ガス下、水素下などの還元雰囲気中で行うことができる。還元雰囲気は、約10トル〜約2000トル、一部の態様においては約100トル〜約1000トル、そして一部の態様においては約100トル〜約930トルの圧力でありうる。水素とその他のガス(例えばアルゴン又は窒素)の混合物も使用できる。
B.誘電体
陽極は誘電体でも被覆される。誘電体は、焼結陽極を陽極酸化し、誘電体層を陽極上及び/又は陽極内に形成させることにより形成できる。例えば、タンタル(Ta)陽極を陽極酸化すると五酸化タンタル(Ta)になる。典型的には、陽極酸化は、陽極を電解質中に浸漬することなどにより、まず溶液を陽極に適用することにより実施される。水(例えば脱イオン水)などの溶媒が一般的に使用される。イオン伝導度を増強するために、溶媒中で解離してイオンを形成できる化合物を使用してもよい。そのような化合物の例は、例えば、電解質に関して以下に記載されているような酸などである。例えば、酸(例えばリン酸)は、陽極酸化溶液の約0.01wt%〜約5wt%、一部の態様においては約0.05wt%〜約0.8wt%、そして一部の態様においては約0.1wt%〜約0.5wt%を構成しうる。所望であれば、酸のブレンドを使用することもできる。
電流を陽極酸化溶液に流し、誘電体層を形成させる。化成電圧(formation voltage)の値は誘電体層の厚さを制御する。例えば、電源は最初、所要電圧に到達するまで定電流モードに設定することができる。その後、電源を定電位モードに切り替え、所望の誘電体厚が陽極の表面全体に確実に形成されるようにすることができる。当然ながら、パルス又はステップ定電位法などのその他の公知法も使用できる。陽極酸化が起こる電圧は、典型的には、約4〜約250V、一部の態様においては約5〜約200V、そして一部の態様においては約10〜約150Vの範囲である。酸化中、陽極酸化溶液は高温、例えば約30℃以上、一部の態様においては約40℃〜約200℃、そして一部の態様においては約50℃〜約100℃に維持できる。陽極酸化は周囲温度以下で実施することもできる。得られた誘電体層は陽極表面上及びその孔内に形成されうる。
必須ではないが、一定の態様において、誘電体層は、陽極の外表面を覆う第一の部分と陽極の内表面を覆う第二の部分を有するという点において、陽極全体を通して異なる厚さを有することもできる。そのような態様においては、第一の部分は、その厚さが第二の部分の厚さより厚くなるように選択的に形成される。しかしながら、誘電体層の厚さは特定の領域内で均一である必要はないことは理解されるべきである。外表面に隣接する誘電体層のある部分は、例えば、内表面にある層のある部分より実際には薄いこともあるし、その逆のこともある。それでもなお、誘電体層は、外表面にある層の少なくとも一部が内表面の少なくとも一部より厚くなるように形成されうる。これらの厚さにおける正確な差は特定の用途に応じて変動しうるが、第一の部分の厚さの、第二の部分の厚さに対する比は、典型的には約1.2〜約40、一部の態様においては約1.5〜約25、そして一部の態様においては約2〜約20である。
異なる厚さを有する誘電体層を形成させるためには多段階法が一般的に使用される。方法の各段階において、焼結陽極は陽極酸化され、誘電体層が形成される(例えば五酸化タンタル)。陽極酸化の第一段階中は比較的小さい化成電圧が典型的には使用されて、内部領域に所望の誘電体厚が達成されるのを確実にする。例えば、化成電圧は、約1〜約90ボルト、一部の態様においては約2〜約50ボルト、そして一部の態様においては約5〜約20ボルトの範囲である。その後、焼結体を方法の第二段階で陽極酸化し、誘電体の厚さを所望レベルにまで増大させる。これは、一般的には、第一段階で使用された電圧より高い電圧で電解質中で陽極酸化することにより達成される。例えば、化成電圧は、約50〜約350ボルト、一部の態様においては約60〜約300ボルト、そして一部の態様においては約70〜約200ボルトの範囲である。第一及び/又は第二段階中、電解質は、約15℃〜約95℃、一部の態様においては約20℃〜約90℃、そして一部の態様においては約25℃〜約85℃の範囲内の温度に維持されうる。
陽極酸化法の第一及び第二段階中に使用される電解質は同じでも又は異なっていてもよい。しかしながら、典型的には、異なる溶液を使用するほうが、誘電体層の外側部分をより厚くするのをより容易にするので望ましい。例えば、相当量の酸化物皮膜が陽極の内表面に形成されないようにするために、第二段階で使用される電解質は、第一段階で使用される電解質よりイオン伝導度が低いのが望ましいであろう。この点で、第一段階中に使用される電解質は、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、ボロン酸などの酸性化合物を含有しうる。そのような電解質は、25℃の温度での測定で、約0.1〜約100mS/cm、一部の態様においては約0.2〜約20mS/cm、そして一部の態様においては約1〜約10mS/cmの導電率を有しうる。第二段階中に使用される電解質は、典型的には弱酸の塩を含有する。そうするとヒドロニウムイオン濃度が、孔内への電荷通過の結果、孔内で増大する。イオン輸送又はイオン拡散は、電荷のバランスを取るために、弱酸のアニオンが必要に応じて孔内に移動するように起こる。その結果、主な導電種(ヒドロニウムイオン)の濃度は、ヒドロニウムイオン、酸アニオン、及び非解離酸間の平衡の確立で低下するので、導電不良種が形成される。導電種の濃度の低下は、電解質中での比較的高い電圧降下をもたらす。このために内部の更なる陽極酸化は妨害されるが、連続高導電率領域における高い化成電圧に対してはより厚い酸化物層が外側に蓄積する。適切な弱酸塩は、例えば、ホウ酸、ボロン酸、酢酸、シュウ酸、乳酸、アジピン酸などのアンモニウム塩又はアルカリ金属塩(例えばナトリウム、カリウムなど)でありうる。特に適切な塩は、四ホウ酸ナトリウム及び五ホウ酸アンモニウムを含む。そのような電解質は、典型的には、25℃の温度での測定で、約0.1〜約20mS/cm、一部の態様においては約0.5〜約10mS/cm、そして一部の態様においては約1〜約5mS/cmの導電率を有する。
所望であれば、陽極酸化の各段階は、所望の誘電体厚を達成するために1回又は複数回繰り返されてもよい。さらに、陽極は、第一及び/又は第二段階の後、電解質を除去するために別の溶媒(例えば水)で濯ぐか又は洗浄されてもよい。
C.固体電解質
固体電解質は誘電体を覆い、一般的にキャパシタアセンブリの陰極として機能する。典型的には、固体電解質の全厚は、約1〜約50μm、そして一部の態様においては約5〜約20μmである。上記のように、固体電解質は、以下の式(I):
[式中、
Rは、(CH−O−(CHであり;
aは、0〜10、一部の態様においては0〜6、そして一部の態様においては1〜4(例えば1)であり;
bは、1〜18、一部の態様においては1〜10、そして一部の態様においては2〜6(例えば2、3、4、又は5)であり;
Zは、SO 、C(O)O、BF 、CFSO 、SbF 、N(SOCF 、C 、ClO などのようなアニオンであり;
Xは、水素、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、ルビジウム、セシウム又はカリウム)、アンモニウムなどのようなカチオンである]
の反復単位を有する固有導電性ポリマーを含有する。
一つの特別な態様において、式(I)のZは、固有導電性ポリマーが式(II):
[式中、R及びXは上記定義の通りである]の反復単位を含有するようにするためにスルホン酸イオンである。式(I)又は(II)において、aは好ましくは1であり、bは好ましくは3又は4である。同様に、Xは好ましくはナトリウム又はカリウムである。
所望であれば、ポリマーは、他のタイプの反復単位を含有するコポリマーでもよい。そのような態様においては、式(I)の反復単位は、典型的には、コポリマー中の反復単位の全量の約50mol%以上、一部の態様においては約75mol%〜約99mol%、そして一部の態様においては約85mol%〜約95mol%を構成する。当然ながら、ポリマーは、100mol%の式(I)の反復単位を含有する限りにおいてホモポリマーであってもよい。そのようなホモポリマーの具体例は、ポリ(4−(2,3−ジヒドロチエノ−[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)−1−ブタン−スルホン酸、塩)及びポリ(4−(2,3−ジヒドロチエノ−[3,4−b][l,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)−l−プロパンスルホン酸、塩)を含む。
固有導電性ポリマーは、当業者には理解されるように様々な技術を通じて形成できる。一つの特別な態様においては、例えば、3,4−エチレンジオキシチオフェン塩を酸化触媒の存在下で重合することができる。これらのモノマーの誘導体、例えば上記化合物の二量体又は三量体も使用できる。誘導体は、同一又は異なるモノマー単位で構成され得、純粋形でも相互の混合物及び/又はモノマーとの混合物でも使用できる。これらの前駆体の酸化形又は還元形も使用できる。酸化触媒は、遷移金属塩、例えば、アンモニウム、ナトリウム、金、鉄(III)、銅(II)、クロム(VI)、セリウム(IV)、マンガン(IV)、マンガン(VII)、又はルテニウム(III)カチオンを含有する無機又は有機酸の塩でありうる。特に適切な遷移金属塩は、ハロゲン化物(例えば、FeCl又はHAuCl);その他の無機酸の塩(例えば、Fe(ClO、Fe(SO、(NH、又はNaMo12PO40);及び有機ラジカルを含む有機酸及び無機酸の塩などである。有機ラジカルを有する無機酸の塩の例は、例えば、C〜C20アルカノールの硫酸モノエステルの鉄(III)塩(例えば硫酸ラウリルの鉄(III)塩)などである。同様に、有機酸の塩の例は、例えば、C〜C20アルカンスルホン酸(例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、又はドデカンスルホン酸)の鉄(III)塩;脂肪族ペルフルオロスルホン酸(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸、又はペルフルオロオクタンスルホン酸)の鉄(III)塩;脂肪族C〜C20カルボン酸(例えば2−エチルヘキシルカルボン酸)の鉄(III)塩;脂肪族ペルフルオロカルボン酸(例えば、トリフルオロ酢酸又はペルフルオロオクタン酸)の鉄(III)塩;C〜C20アルキル基で置換されていてもよい芳香族スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、又はドデシルベンゼンスルホン酸)の鉄(III)塩;シクロアルカンスルホン酸(例えばカンファースルホン酸)の鉄(III)塩などである。これら上記塩の混合物も使用できる。
酸化重合は、一般的に単数又は複数種類の溶媒の存在下で起こる。適切な溶媒は、例えば、水、グリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシジグリコール、ジプロピレングリコールなど);グリコールエーテル(例えば、メチルグリコールエーテル、エチルグリコールエーテル、イソプロピルグリコールエーテルなど);アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、及びブタノール);ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン);エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチレングリコールエーテルアセテート、メトキシプロピルアセテート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど);アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルカプリル/カプリン脂肪酸アミド及びN−アルキルピロリドン);スルホキシド又はスルホン(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びスルホラン);フェノール化合物(例えば、トルエン、キシレンなど)等々を含みうる。水は特に反応の適切な溶媒である。反応が起こる温度は、典型的には約−20℃〜約140℃、一部の態様においては約20℃〜約100℃の範囲で変動する。反応が完了したら、公知のろ過技術を用いて何らかの塩不純物を除去できる。
ポリマーは、どのように形成されたかに関わらず、主鎖上に位置する正電荷(少なくとも一部はポリマーに共有結合されたアニオンによって相殺されている)を有する限り、“固有”導電性と見なされる。ポリマーは、例えば、比較的高い比導電率、乾燥状態で約1ジーメンス/センチメートル(“S/cm”)以上、一部の態様においては約10S/cm以上、一部の態様においては約20S/cm以上、そして一部の態様においては約50〜約500S/cmを有しうる。その固有導電率の結果、固体電解質は、ポリスチレンスルホン酸などの慣用のドーパントの添加を必要としない。実際、固体電解質は実質的にそのようなドーパントを含まない。それでも、本発明の一定の態様においてドーパントを使用することもあることは理解されるべきである。しかしながら、使用される場合、ドーパントは、典型的には、固体電解質中に約5wt%以下、一部の態様においては約2wt%以下、そして一部の態様においては約1wt%以下の量で存在する。
ポリマーは、一般的に水に高溶解性でもあるので、陽極へのより容易で効果的な適用を可能にする。可溶性ポリマーは、高比電荷粉体によって形成された小孔により容易に浸透できるので、得られた固体電解質は“皮膜様”の形態を有し、陽極の少なくとも一部を実質的に均一な様式で被覆する。これにより、得られた酸化物の品質のみならずその表面被覆率も改良されるので、キャパシタアセンブリの電気的性質が増強される。
i.内層
固体電解質は、一般的に、一つ又は複数の“内側”導電性ポリマー層から形成される。この文脈における“内側”という用語は、同じ材料から形成され、誘電体を、直接的であれ別の層(例えば接着剤層)を介してであれ、覆っている一つ又は複数の層のことを言う。内層(一つ又は複数)は、例えば、典型的には、上記のような固有導電性ポリマーを含有する。そのようなポリマーを使用することにより、本発明者らはキャパシタ素子が乾燥条件下でも良好な性能を示しうることを見出した。一つの特別な態様において、内層(一つ又は複数)は、一般的に、外来的(extrinsically)導電性ポリマーを含まず、主に固有導電性ポリマーから形成される。さらに詳しくは、固有導電性ポリマーは、内層(一つ又は複数)の約50wt%以上、一部の態様においては約70wt%以上、そして一部の態様においては約90wt%以上(例えば100wt%)を構成しうる。一つ又は複数の内層が使用できる。例えば、固体電解質は、典型的には2〜30、一部の態様においては4〜20、そして一部の態様においては約5〜15の内層(例えば10層)を含有する。
内層(一つ又は複数)は溶媒を含有する溶液の形態で適用できる。ポリマーの濃度は、所望の粘度及び層が陽極に適用される特定の様式に応じて変動しうる。しかしながら、典型的には、ポリマーは、溶液の約0.1〜約10wt%、一部の態様においては約0.4〜約5wt%、そして一部の態様においては約0.5〜約4wt%を構成する。溶媒は、同様に、溶液の約90wt%〜約99.9wt%、一部の態様においては約95wt%〜約99.6wt%、そして一部の態様においては約96wt%〜約99.5wt%を構成する。他の溶媒も確かに使用できるが、溶液が“水”溶液と見なされるように、水が主溶媒であることが一般的に望ましい。大部分の態様において、例えば、水は、使用される溶媒の少なくとも約50wt%、一部の態様においては少なくとも約75wt%、そして一部の態様においては約90wt%〜約100wt%を構成する。使用される場合、溶液は、いずれかの公知技術、例えば浸漬、流延(例えば、カーテンコーティング、スピンコーティングなど)、印刷(例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷など)等々を用いて陽極に適用できる。得られた導電性ポリマー層は、陽極に適用された後、乾燥及び/又は洗浄できる。
ii.外層
固体電解質は、本質的に同じ材料すなわち固有導電性ポリマーから形成されるよう“内層”のみを含有していてもよい。それでも、他の態様において、固体電解質は、内層(一つ又は複数)とは異なる材料から形成され、内層(一つ又は複数)を覆う一つ又は複数の任意の“外側”導電性ポリマー層を含有することもできる。例えば、外層(一つ又は複数)は、外来的導電性ポリマー粒子の分散液から形成できる。一つの特別な態様において、外層(一つ又は複数)は、外来的導電性ポリマーが各外層の約50wt%以上、一部の態様においては約70wt%以上、そして一部の態様においては約90wt%以上(例えば100wt%)を構成するという点において、主にそのような外来的導電性ポリマー粒子から形成される。一つ又は複数の外層が使用できる。例えば、固体電解質は、2〜30、一部の態様においては4〜20、そして一部の態様においては約5〜15の外層を含有でき、そのそれぞれは外来的導電性ポリマー粒子の分散液から形成されていてもよい。
使用される場合、外来的導電性ポリマーは、例えば、以下の式(III):
の反復単位を有しうる。
上記式中、
は、直鎖又は分枝のC〜C18アルキルラジカル(例えば、メチル、エチル、n−又はイソ−プロピル、n−、イソ−、sec−又はtert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1−エチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ドデシル、n−トリデシル、n−テトラデシル、n−ヘキサデシル、n−オクタデシルなど);C〜C12シクロアルキルラジカル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシルなど);C〜C14アリールラジカル(例えば、フェニル、ナフチルなど);C〜C18アラルキルラジカル(例えば、ベンジル、o−、m−、p−トリル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−キシリル、メシチルなど);C〜Cヒドロキシアルキルラジカル、又はヒドロキシルラジカルであり;そして
qは、0〜8、一部の態様においては0〜2、そして一部の態様においては0の整数である。一つの特別な態様において、“q”は0であり、ポリマーはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である。そのようなポリマーの形成に適したモノマーの一つの適切な市販例は3,4−エチレンジオキシチオフェンであり、Heraeus社からCleviosTM Mの名称で入手できる。
式(III)のポリマーは、ポリマーに共有結合されていない別の対イオンの存在を必要とする限りにおいて、“外来的に”導電性であると一般に見なされる。対イオンは、導電性ポリマーの電荷に対抗するモノマー性又はポリマー性アニオンでありうる。ポリマー性アニオンは、例えば、ポリマー性カルボン酸(例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸など);ポリマー性スルホン酸(例えば、ポリスチレンスルホン酸(“PSS”)、ポリビニルスルホン酸など);等々のアニオンでありうる。これらの酸は、ビニルカルボン酸及びビニルスルホン酸とその他の重合可能モノマー、例えばアクリル酸エステル及びスチレンとのコポリマーなどのコポリマーでもよい。同様に、適切なモノマー性アニオンは、例えば、C〜C20アルカンスルホン酸(例えばドデカンスルホン酸);脂肪族ペルフルオロスルホン酸(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸又はペルフルオロオクタンスルホン酸);脂肪族C〜C20カルボン酸(例えば2−エチル−ヘキシルカルボン酸);脂肪族ペルフルオロカルボン酸(例えば、トリフルオロ酢酸又はペルフルオロオクタン酸);C〜C20アルキル基で置換されていてもよい芳香族スルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸又はドデシルベンゼンスルホン酸);シクロアルカンスルホン酸(例えばカンファースルホン酸又はテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ペルクロレート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート又はヘキサクロロアンチモネート);等々のアニオンを含む。特に適切な対アニオンは、ポリマー性カルボン酸又はスルホン酸(例えば、ポリスチレンスルホン酸(“PSS”))のようなポリマー性アニオンである。そのようなポリマー性アニオンの分子量は、典型的には、約1,000〜約2,000,000、そして一部の態様においては約2,000〜約500,000の範囲である。
外来的導電性粒子は、典型的には、約1〜約150ナノメートル、一部の態様においては約2〜約50ナノメートル、そして一部の態様においては約5〜約40ナノメートルの平均サイズ(例えば直径)を有する。粒子の直径は、超遠心分離、レーザー回折などの公知技術を用いて決定できる。粒子の形状も同様に変動しうる。一つの特別な態様において、例えば、粒子は球形である。しかしながら、平板状、棒(ロッド)状、円盤状、棒(バー)状、管状、不規則形などのその他の形状も本発明によって想定されていることは理解されるはずである。分散液中の粒子の濃度は、分散液の所望の粘度及び分散液がキャパシタ素子に適用される特定の様式に応じて変動しうる。しかしながら、典型的には、粒子は、分散液の約0.1〜約10wt%、一部の態様においては約0.4〜約5wt%、そして一部の態様においては約0.5〜約4wt%を構成する。
分散液は、ポリマー層の接着性をさらに増強し、そしてまた分散液内の粒子の安定性を増大するために、一つ又は複数のバインダを含有することもできる。バインダは、有機的性質のもの、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチレート、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸アミド、ポリメタクリル酸エステル、ポリメタクリル酸アミド、ポリアクリロニトリル、スチレン/アクリル酸エステル、酢酸ビニル/アクリル酸エステル及びエチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシド樹脂、シリコーン樹脂又はセルロースなどでありうる。架橋剤も、バインダの接着能力を増強するために使用できる。そのような架橋剤は、例えば、メラミン化合物、マスクドイソシアネート又は官能性シラン、例えば3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、テトラエトキシシラン及びテトラエトキシシラン加水分解物又は架橋可能ポリマー、例えばポリウレタン、ポリアクリレート又はポリオレフィン、及びその後の架橋を含みうる。
分散剤も、層を陽極に適用するための能力を促進するために使用できる。適切な分散剤は、脂肪族アルコール(例えば、メタノール、エタノール、i−プロパノール及びブタノール)、脂肪族ケトン(例えば、アセトン及びメチルエチルケトン)、脂肪族カルボン酸エステル(例えば、酢酸エチル及び酢酸ブチル)、芳香族炭化水素(例えば、トルエン及びキシレン)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン及びシクロヘキサン)、塩素化炭化水素(例えば、ジクロロメタン及びジクロロエタン)、脂肪族ニトリル(例えばアセトニトリル)、脂肪族スルホキシド及びスルホン(例えば、ジメチルスルホキシド及びスルホラン)、脂肪族カルボン酸アミド(例えば、メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミド)、脂肪族及びアラリファチック(araliphatic)エーテル(例えば、ジエチルエーテル及びアニソール)、水、及び上記溶媒のいずれかの混合物などの溶媒を含む。特に適切な分散剤は水である。
上記以外に、さらに他の成分も分散液に使用できる。例えば、約10ナノメートル〜約100マイクロメートル、一部の態様においては約50ナノメートル〜約50マイクロメートル、そして一部の態様においては約100ナノメートル〜約30マイクロメートルのサイズを有する慣用のフィラーも使用できる。そのようなフィラーの例は、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、シリカ、硫酸カルシウム又はバリウム、水酸化アルミニウム、ガラス繊維又はガラス球、木粉、セルロース粉末、カーボンブラック、導電性ポリマーなどである。フィラーは、分散液に粉末形で導入できるが、繊維などの別の形態で存在してもよい。
イオン性又は非イオン性界面活性剤のような界面活性物質も分散液に使用できる。さらに、有機官能性シラン又はそれらの加水分解物のような接着剤も使用できる。例えば、3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン又はオクチルトリエトキシシランなどである。分散液は、導電性を増大させる添加剤を含有していてもよい。例えば、エーテル基含有化合物(例えばテトラヒドロフラン)、ラクトン基含有化合物(例えば、γ−ブチロラクトン又はγ−バレロラクトン)、アミド又はラクタム基含有化合物(例えば、カプロラクタム、N−メチルカプロラクタム、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルピロリドン(NMP)、N−オクチルピロリドン、又はピロリドン)、スルホン及びスルホキシド(例えば、スルホラン(テトラメチレンスルホン)又はジメチルスルホキシド(DMSO))、糖又は糖誘導体(例えば、サッカロース、グルコース、フルクトース、又はラクトース)、糖アルコール(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、フラン誘導体(例えば、2−フランカルボン酸又は3−フランカルボン酸)、アルコール(例えば、エチレングリコール、グリセロール、ジ−又はトリエチレングリコール)などである。
分散液は、様々な公知技術を用いて、例えば、スピンコーティング、含浸、流し込み、滴下適用、注入、スプレー、ドクターブレード、刷毛塗り、印刷(例えば、インクジェット、スクリーン、又はパッド印刷)、又は浸漬によって適用できる。分散液の粘度は、典型的には、約0.1〜約100,000mPas(100s−1の剪断速度で測定)、一部の態様においては約1〜約10,000mPas、一部の態様においては約10〜約1,500mPas、そして一部の態様においては約100〜約1000mPasである。
所望であれば、ヒドロキシル官能性の非イオン性ポリマーも、固体電解質の外層に使用できる。“ヒドロキシ官能性”という用語は、一般的に、化合物が少なくとも一つのヒドロキシル官能基を含有しているか、又は溶媒の存在下でそのような官能基を所有できることを意味する。理論によって制限するつもりはないが、一定の分子量を有するヒドロキシ官能性ポリマーの使用は、高電圧での化学分解の可能性を最少化できると考えられている。例えば、ヒドロキシ官能性ポリマーの分子量は、1モルあたり約100〜10,000グラム、一部の態様においては約200〜2,000、一部の態様においては約300〜約1,200、そして一部の態様においては約400〜約800でありうる。
任意の様々なヒドロキシ官能性非イオン性ポリマーが一般的にこの目的のために使用できる。一態様において、例えば、ヒドロキシ官能性ポリマーはポリアルキレンエーテルである。ポリアルキレンエーテルは、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエピクロロヒドリンなど)、ポリオキセタン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトンなどを含みうる。ポリアルキレンエーテルは、典型的には、末端ヒドロキシ基を有する主に直鎖の非イオン性ポリマーである。特に適切なのは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレングリコール(ポリテトラヒドロフラン)で、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はテトラヒドロフランの水への重付加によって製造される。ポリアルキレンエーテルは、ジオール又はポリオールからの重縮合反応によって製造できる。ジオール成分は、特に、5〜36個の炭素原子を含有する飽和又は不飽和、分枝又は非分枝の脂肪族ジヒドロキシ化合物又は芳香族ジヒドロキシ化合物、例えばペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ネオペンチルグリコール、ビス−(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサン、ビスフェノールA、二量体ジオール、水素化二量体ジオール又はさらには上記ジオールの混合物から選ぶことができる。さらに、多価アルコール、例えば、グリセロール、ジ−及びポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール又はソルビトールも重合反応に使用することができる。
上記以外に、その他のヒドロキシ官能性非イオン性ポリマーも本発明に使用できる。そのようなポリマーの一部の例は、例えば、エトキシ化アルキルフェノール;エトキシ化又はプロポキシ化C−C24脂肪アルコール;一般式:CH−(CH10−16−(O−C1−25−OHを有するポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル(例えば、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル及びペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル);一般式:CH−(CH10−16−(O−C1−25−OHを有するポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル;一般式:C17−(C)−(O−C1−25−OHを有するポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル(例えばTritonTM X−100);一般式:C19−(C)−(O−C1−25−OHを有するポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテル(例えばノノキシノール−9);C−C24脂肪酸のポリオキシエチレングリコールエステル、例えばポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル(例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、PEG−20メチルグルコースジステアレート、PEG−20メチルグルコースセスキステアレート、PEG−80ヒマシ油、及びPEG−20ヒマシ油、PEG−3ヒマシ油、PEG 600ジオレエート、及びPEG 400ジオレエート)及びポリオキシエチレングリセロールアルキルエステル(例えば、ポリオキシエチレン−23グリセロールラウレート及びポリオキシエチレン−20グリセロールステアレート);C−C24脂肪酸のポリオキシエチレングリコールエーテル(例えば、ポリオキシエチレン−10セチルエーテル、ポリオキシエチレン−10ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−20セチルエーテル、ポリオキシエチレン−10オレイルエーテル、ポリオキシエチレン−20オレイルエーテル、ポリオキシエチレン−20イソヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレン−15トリデシルエーテル、及びポリオキシエチレン−6トリデシルエーテル);ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックコポリマー(例えばPoloxamers);等々、ならびにそれらの混合物などである。
ヒドロキシ官能性非イオン性ポリマーは、様々な方法で外層に配合できる。一定の態様において、例えば、非イオン性ポリマーは、単に外来的導電性ポリマーの分散液に配合すればよい。そのような態様において、層中の非イオン性ポリマーの濃度は、約1wt%〜約50wt%、一部の態様においては約5wt%〜約40wt%、そして一部の態様においては約10wt%〜約30wt%でありうる。他の態様においては、しかしながら、非イオン性ポリマーは初期外層の形成後に適用されてもよい。そのような態様においては、非イオン性ポリマーを適用するために使用される技術は様々でありうる。例えば、非イオン性ポリマーは、様々な方法、例えば、浸漬(immersion)、浸漬(dipping)、流し込み、ドリッピング、注入、スプレー、塗布(spreading)、塗装(painting)又は印刷、例えばインクジェット、スクリーン印刷又はタンポン印刷を用いて、液体溶液の形態で適用できる。水、アルコール、又はそれらの混合物など、当業者に公知の溶媒が溶液に使用できる。そのような溶液中の非イオン性ポリマーの濃度は、典型的には、溶液の約5wt%〜約95wt%、一部の態様においては約10wt%〜約70wt%、そして一部の態様においては約15wt%〜約50wt%の範囲である。所望であれば、そのような溶液は一般的に導電性ポリマーを含まなくてもよい。例えば、導電性ポリマーは、溶液の約2wt%以下、一部の態様においては約1wt%以下、そして一部の態様においては約0.5wt%以下を構成しうる。
D.外部ポリマーコーティング
必須ではないが、固体電解質を覆う外部ポリマーコーティングも陽極に適用することができる。外部ポリマーコーティングは、一般的に、上記のような外来的導電性ポリマー粒子の分散液から形成される一つ又は複数の層を含有する。外部コーティングは、キャパシタ本体のエッジ領域にさらに浸透して、誘電体に対する接着を増大できるので、より機械的に堅牢な部品が得られ、そのために等価直列抵抗及び漏れ電流を低減できる。一般的に、陽極体の内部に浸透するというより、エッジの被覆度を改良することを意図しているので、外部コーティングに使用される粒子は、典型的には、固体電解質の何らかの任意の分散液に使用される粒子より大きいサイズを有する。例えば、外部ポリマーコーティングに使用される粒子の平均サイズの、固体電解質の何らかの分散液に使用される粒子の平均サイズに対する比率は、典型的には約1.5〜約30、一部の態様においては約2〜約20、そして一部の態様においては約5〜約15である。例えば、外部コーティングの分散液に使用される粒子は、約50〜約500ナノメートル、一部の態様においては約80〜約250ナノメートル、そして一部の態様においては約100〜約200ナノメートルの平均サイズを有しうる。
所望であれば、架橋剤も外部ポリマーコーティングに使用して、固体電解質に対する接着度を増強することができる。典型的には、架橋剤は外部コーティングに使用される分散液の適用前に適用される。適切な架橋剤は、例えば、Merkerらによる米国特許公開第2007/0064376号に記載されており、例えば、アミン(例えば、ジアミン、トリアミン、オリゴマーアミン、ポリアミンなど);多価金属カチオン、例えば、Mg、Al、Ca、Fe、Cr、Mn、Ba、Ti、Co、Ni、Cu、Ru、Ce又はZnの塩又は化合物、ホスホニウム化合物、スルホニウム化合物などを含む。特に適切な例は、例えば、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ビス(アミノ−メチル)シクロヘキサン、エチレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ブタンジアミンなどのほか、それらの混合物を含む。
架橋剤は、典型的には、25℃における測定でpHが1〜10、一部の態様においては2〜7、一部の態様においては3〜6の溶液又は分散液から適用される。酸性化合物を使用すれば、所望pHレベルの達成に役立つ。架橋剤用の溶媒又は分散剤の例は、水又は有機溶媒、例えばアルコール、ケトン、カルボン酸エステルなどを含む。架橋剤は、キャパシタ本体に任意の公知法、例えば、スピンコーティング、含浸、流延、滴下適用、スプレー適用、蒸着、スパッタリング、昇華、ナイフコーティング、塗装又は印刷、例えばインクジェット、スクリーン又はパッド印刷により適用できる。適用されたら、架橋剤はポリマー分散液の適用前に乾燥させることができる。その後、この工程は所望厚が達成されるまで繰り返されてよい。例えば、架橋剤及び分散液の層を含む全外部ポリマーコーティングの全厚は、約1〜約50μm、一部の態様においては約2〜約40μm、そして一部の態様においては約5〜約20μmの範囲であろう。
E.その他の構成要素
所望であれば、キャパシタ素子は、当該技術分野で知られているようなその他の層も含有できる。例えば、比較的絶縁性の樹脂材料(天然又は合成)で作られているような保護コーティングを誘電体と固体電解質との間に形成してもよい。そのような材料は、約10Ω・cmより大、一部の態様においては約100より大、一部の態様においては約1,000Ω・cmより大、一部の態様においては約1×10Ω・cmより大、そして一部の態様においては約1×1010Ω・cmより大の比抵抗(specific resistivity)を有しうる。本発明に利用できるいくつかの樹脂材料は、ポリウレタン、ポリスチレン、不飽和又は飽和脂肪酸のエステル(例えばグリセリド)などであるが、これらに限定されない。例えば、適切な脂肪酸のエステルは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エレオステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アロイリット酸(aleuritic acid)、シェロール酸(shellolic acid)などのエステルであるが、これらに限定されない。これら脂肪酸のエステルは、得られた皮膜を迅速に重合して安定な層にすることを可能にする“乾性油”を形成させるために比較的複雑な組合せで使用される場合に特に有用であることが分かっている。そのような乾性油は、モノ−、ジ−、及び/又はトリ−グリセリドを含みうる。これらはグリセロール主鎖と、それぞれ1、2、及び3個のエステル化された脂肪アシル残基を有する。例えば、使用できるいくつかの適切な乾性油は、オリーブ油、アマニ油、ヒマシ油、キリ油、大豆油、及びセラックなどであるが、これらに限定されない。これら及びその他の保護コーティング材料は、Fifeらによる米国特許第6,674,635号により詳細に記載されており、前記特許はすべての目的のためにその全文を引用によって本明細書に援用する。
所望であれば、部品には炭素層(例えばグラファイト)及び銀層をそれぞれ適用することもできる。銀コーティングは、例えば、キャパシタのためのはんだ付け可能導体、接触層、及び/又は集電荷体として機能でき、炭素コーティングは、銀コーティングと固体電解質との接触を制限できる。このようなコーティングは固体電解質の一部を覆うのでも全部を覆うのでもよい。
II.終端
形成されたら、キャパシタ素子に終端を設けることができる(特に表面実装用途に使用される場合)。例えば、キャパシタアセンブリは、キャパシタ素子の陽極リードが電気的に接続されている陽極終端と、キャパシタ素子の陰極が電気的に接続されている陰極終端とを含有しうる。終端を形成するためには、導電性金属(例えば、銅、ニッケル、銀、ニッケル、亜鉛、スズ、パラジウム、鉛、銅、アルミニウム、モリブデン、チタン、鉄、ジルコニウム、マグネシウム、及びそれらの合金)のような任意の導電性材料が使用できる。特に適切な導電性金属は、例えば、銅、銅合金(例えば、銅−ジルコニウム、銅−マグネシウム、銅−亜鉛、又は銅−鉄)、ニッケル、及びニッケル合金(例えばニッケル−鉄)を含む。終端の厚さは、一般的にキャパシタの厚さを最小化するように選ばれる。例えば、終端の厚さは、約0.05〜約1ミリメートル、一部の態様においては約0.05〜約0.5ミリメートル、及び約0.07〜約0.2ミリメートルの範囲であろう。一つの例示的導電性材料は、Wieland社(ドイツ)から入手できる銅−鉄合金の金属板である。所望であれば、終端の表面は、当該技術分野で公知のように、最終部品の回路基板への実装を確実にするために、ニッケル、銀、金、スズなどで電気めっきしてもよい。一つの特別な態様においては、終端の両面がそれぞれニッケル及び銀フラッシュでめっきされ、一方、実装面もスズはんだ層でめっきされる。
終端は、当該技術分野で公知の任意の技術を用いてキャパシタ素子に接続することができる。一態様においては、例えば、陰極終端と陽極終端を規定するリードフレームを備え付けてもよい。電解キャパシタ素子をリードフレームに取り付けるには、導電接着剤をまず陰極終端の表面に適用すればよい。導電接着剤は、例えば、樹脂組成物内に含有された導電性金属粒子を含みうる。金属粒子は、銀、銅、金、白金、ニッケル、亜鉛、ビスマスなどでありうる。樹脂組成物は、熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)、硬化剤(例えば酸無水物)、及びカップリング剤(例えばシランカップリング剤)を含みうる。適切な導電接着剤は、Osakoらによる米国特許公開第2006/0038304号に記載されている。導電接着剤を陰極終端に適用するのには任意の様々な技術が使用できる。例えば、印刷技術を使用すれば、それらの実用上及び費用節約上の利益が得られる。陽極リードも、機械的溶接、レーザー溶接、導電接着剤などの当該技術分野で公知の任意の技術を用いて陽極終端に電気的に接続できる。陽極リードを陽極終端に電気接続したら、導電接着剤を硬化し、電解キャパシタ素子の陰極終端への適切な接着を確実にすることができる。
III.ハウジング
キャパシタ素子は、様々な方法でハウジング内に組み込むことができる。一定の態様においては、例えば、キャパシタ素子をケース内に閉じ込め、次いで、硬化されると硬化ハウジングを形成できる熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)などの樹脂材料を充填する。樹脂材料でキャパシタ素子を包囲及び封入する際、陽極及び陰極終端の少なくとも一部を露出させて回路基板に実装できるようにする。このようにして封入されると、キャパシタ素子と樹脂材料は一体化されたキャパシタアセンブリとなる。
当然ながら、代替の態様においては、キャパシタ素子をハウジング内に分離及び別個のまま封入するのが望ましいこともあろう。この方式では、ハウジングの雰囲気を乾燥状態、すなわちキャパシタ素子と接触できる水分の程度を制限するように選択的に制御することができる。例えば、雰囲気の水分含量(相対湿度を用いて表す)は、約10%以下、一部の態様においては約5%以下、一部の態様においては約3%以下、そして一部の態様においては約0.001〜約1%でありうる。例えば、雰囲気はガス状で、窒素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、クリプトン、ラドンなどのほか、それらの混合物などの少なくとも一つの不活性ガスを含有しうる。典型的には、不活性ガスは、ハウジング内の雰囲気の大部分、例えば、雰囲気の約50wt%〜100wt%、一部の態様においては約75wt%〜100wt%、そして一部の態様においては約90wt%〜約99wt%を構成する。所望であれば、二酸化炭素、酸素、水蒸気などの比較的少量の非不活性ガスも使用できる。しかしながら、そのような場合、非不活性ガスは、典型的にはハウジング内の雰囲気の15wt%以下、一部の態様においては10wt%以下、一部の態様においては約5wt%以下、一部の態様においては約1wt%以下、そして一部の態様においては約0.01wt%〜約1wt%を構成する。
ハウジングの形成には、金属、プラスチック、セラミックなど、任意の様々な材料が使用できる。一態様において、例えば、ハウジングは、タンタル、ニオブ、アルミニウム、ニッケル、ハフニウム、チタン、銅、銀、鋼(例えばステンレス)、それらの合金(例えば導電性酸化物)、それらの複合材料(例えば導電性酸化物で被覆された金属)などのような金属の一つ又は複数の層を含む。別の態様においては、ハウジングは、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、ガラスなどのほか、それらの組合せのようなセラミック材料の一つ又は複数の層を含む。
ハウジングは、円柱形、D字形、長方形、三角形、角柱形など、任意の所望の形状を有しうる。図1を参照すると、例えば、ハウジング122とキャパシタ素子120を含有するキャパシタアセンブリ100の一つの態様が示されている。この特別な態様において、ハウジング122は一般的に長方形である。典型的には、ハウジングとキャパシタ素子は、キャパシタ素子が内部空洞内に容易に収容できるように、同じ又は類似の形状を有している。図示された態様においては、例えば、キャパシタ素子120もハウジング122も一般的に長方形の形状を有している。
所望であれば、本発明のキャパシタアセンブリは、比較的高い容積効率を示すことができる。そのような高い効率を促進するために、キャパシタ素子は、典型的には、ハウジングの内部空洞の容積の相当部分を占める。例えば、キャパシタ素子は、ハウジングの内部空洞の約30vol%以上、一部の態様においては約50vol%以上、一部の態様においては約60vol%以上、一部の態様においては約70vol%以上、一部の態様においては約80vol%〜約98vol%、そして一部の態様においては約85vol%〜約97vol%を占めることができる。この目的のために、キャパシタ素子の寸法と、ハウジングによって規定される内部空洞の寸法との間の差は典型的には比較的小さい。
図1を参照すると、例えば、キャパシタ素子120は、ハウジング122によって規定される内部空洞126の長さと比較的同じくらいの長さ(陽極リード6の長さを除く)を有しうる。例えば、陽極の長さの内部空洞の長さに対する比率は、約0.40〜1.00、一部の態様においては約0.50〜約0.99、一部の態様においては約0.60〜約0.99、そして一部の態様においては約0.70〜約0.98の範囲である。キャパシタ素子120は、約5〜約10ミリメートルの長さを有し、内部空洞126は約6〜約15ミリメートルの長さを有しうる。同様に、キャパシタ素子120の高さ(−z方向における)の内部空洞126の高さに対する比率は、約0.40〜1.00、一部の態様においては約0.50〜約0.99、一部の態様においては約0.60〜約0.99、そして一部の態様においては約0.70〜約0.98の範囲でありうる。キャパシタ素子120の幅(−x方向における)の内部空洞126の幅に対する比率も、約0.50〜1.00、一部の態様においては約0.60〜約0.99、一部の態様においては約0.70〜約0.99、そして一部の態様においては約0.80〜約0.98、そして一部の態様においては約0.85〜約0.95の範囲でありうる。例えば、キャパシタ素子120の幅は、約2〜約7ミリメートルであり、内部空洞126の幅は約3〜約10ミリメートルであり、キャパシタ素子120の高さは、約0.5〜約2ミリメートルであり、内部空洞126の高さは約0.7〜約6ミリメートルでありうる。
決して必須ではないが、キャパシタ素子はハウジングに、陽極終端と陰極終端がその後の回路への統合のためにハウジングの外部に形成されるように取り付けることもできる。終端の特定の配置は意図する用途に依存しうる。一態様において、例えば、キャパシタアセンブリは、表面実装可能でありながら、なお機械的に堅牢であるように形成できる。例えば、陽極リードは、外部の表面実装可能な陽極及び陰極終端(例えば、パッド、シート、プレート、フレームなど)に電気的に接続できる。そのような終端は、キャパシタと接続するためにハウジングを通って延長できる。終端の厚さ又は高さは、一般的にキャパシタアセンブリの厚さを最小化するように選ばれる。例えば、終端の厚さは、約0.05〜約1ミリメートル、一部の態様においては約0.05〜約0.5ミリメートル、及び約0.1〜約0.2ミリメートルの範囲でありうる。所望であれば、終端の表面は、当該技術分野で公知のように、最終部品が回路基板に実装可能となることを確実にするために、ニッケル、銀、金、スズなどで電気めっきしてもよい。一つの特別な態様において、終端は、ニッケル及び銀フラッシュでそれぞれ蒸着され、実装表面もスズはんだ層でめっきされる。別の態様では、終端は、導電性をさらに増大させるために、ベース金属層(例えば銅合金)上に薄い金属外層(例えば金)が蒸着される。
一定の態様においては、終端への接続を機械的に安定な様式で促進するために、接続部材をハウジングの内部空洞内に使用できる。例えば、再び図1を参照すると、キャパシタアセンブリ100は、第一の部分167と第二の部分165から形成された接続部材162を含みうる。接続部材162は、外部終端と同様の導電性材料から形成できる。第一の部分167と第二の部分165は、一体化されていても又は直接もしくは追加の導電性素子(例えば金属)を介してのいずれかで互いに接続されている別個の部品片でもよい。図示されている態様においては、第二の部分165は、リード6が延びている横方向(例えば−y方向)に一般的に平行な平面に設けられている。第一の部分167は、リード6が延びている横方向に一般的に垂直な平面に設けられているという意味において“直立”している。こうして、第一の部分167は、リード6の水平方向の動きを制限できるので、使用中の表面接触と機械的安定性が増強される。所望であれば、絶縁材料7(例えば、TeflonTMワッシャー)をリード6の周りに使用してもよい。
第一の部分167は、陽極リード6に接続されている実装領域(図示せず)を有しうる。該領域は、リード6の表面接触と機械的安定性をさらに増強するために、“U字形”を有することができる。該領域のリード6への接続は、溶接、レーザー溶接、導電接着剤など、任意の様々な公知技術を用いて達成できる。一つの特別な態様において、例えば、領域は陽極リード6にレーザー溶接される。しかしながら、選択された技術に関わらず、第一の部分167は、キャパシタアセンブリ100の寸法安定性をさらに増強するために、陽極リード6を実質的水平配置に保持できる。
再度図1を参照すると、接続部材162とキャパシタ素子120がハウジング122にそれぞれ陽極及び陰極終端127及び129を通じて接続されている本発明の一態様が示されている。さらに詳しくは、この態様のハウジング122は、外壁123と二つの対向する側壁124を含み、その間にキャパシタ素子120を包含する空洞126が形成されている。外壁123と側壁124は、上記のような金属、プラスチック、又はセラミック材料の一つ又は複数の層から形成できる。この特別な態様において、陽極終端127は、ハウジング122内に配置され、接続部材162に電気的に接続されている第一の領域127aと、ハウジング122の外部に配置され、実装表面201を提供する第二の領域127bとを含有する。同様に、陰極終端129は、ハウジング122内に配置され、キャパシタ素子120の固体電解質に電気的に接続されている第一の領域129aと、ハウジング122の外部に配置され、実装表面203を提供する第二の領域129bとを含有する。そのような領域の部分全体がハウジングの内部又は外部に配置される必要はないことは理解されるはずである。
図示された態様において、導電性配線(conductive trace)127cは、ハウジングの外壁123内に延びて、第一の領域127aと第二の領域127bを接続している。同様に、導電性配線129cは、ハウジングの外壁123内に延びて、第一の領域129aと第二の領域129bを接続している。導電性配線及び/又は終端の領域は別個でも又は一体化されていてもよい。ハウジングの外壁を通って延びる以外に、配線は、外壁の外部など、他の場所に配置することもできる。当然ながら、本発明は、決して、所望の終端を形成するために、導電性配線の使用に限定しているわけではない。
採用されている特定の構成に関わらず、終端127と129のキャパシタ素子120への接続は、溶接、レーザー溶接、導電接着剤などの任意の公知技術を用いて行うことができる。一つの特別な態様においては、例えば、導電接着剤131を用いて、接続部材162の第二の部分165を陽極終端127に接続している。同様に、導電接着剤133を用いて、キャパシタ素子120の陰極を陰極終端129に接続している。
任意に、ポリマー性拘束部材(polymeric restraint)も、キャパシタ素子の一つ又は複数の表面、例えば、後面、前面、上面、下面、側面、又はそれらのいずれかの組合せと接触させて配置することもできる。ポリマー性拘束部材は、ハウジングからのキャパシタ素子の剥離の可能性を低減できる。これに関し、ポリマー性拘束部材は、それが振動力を受けた場合でもキャパシタ素子を比較的固定された位置に保持することを可能にする一定程度の強度を有しうるが、それほど強くないので亀裂は入る。例えば、拘束部材は、約25℃の温度での測定で、約1〜約150メガパスカル(“MPa”)、一部の態様においては約2〜約100MPa、一部の態様においては約10〜約80MPa、そして一部の態様においては約20〜約70MPaの引張強さを有しうる。拘束部材は導電性でないのが通常望ましい。再度図1を参照すると、例えば、単一のポリマー性拘束部材197がキャパシタ素子120の上面181及び後面177と接触して配置されている一態様が示されている。図1には単一の拘束部材が示されているが、別の拘束部材も同じ機能を果たすために使用されうることは理解されるはずである。実際、より一般的には、キャパシタ素子の任意の所望面に接触させるために任意の数のポリマー性拘束部材が使用できる。複数の拘束部材が使用される場合、それらは相互に接触していても、又は物理的に分離されていてもよい。例えば、一態様において、キャパシタ素子120の上面181及び前面179と接触する第二のポリマー性拘束部材(図示せず)が使用できる。第一のポリマー性拘束部材197と第二のポリマー性拘束部材(図示せず)は、相互に接触していてもいなくてもよい。さらに別の態様において、ポリマー性拘束部材は、他の面と共に又は他の面の代わりに、キャパシタ素子120の下面183及び/又は側面(一つ又は複数)とも接触することができる。
どのように適用されるかに関わらず、典型的には、ポリマー性拘束部材はハウジングの少なくとも一つの面とも接触させて、キャパシタ素子を可能性ある剥離に対してさらに機械的に安定化させることの一助とするのが望ましい。例えば、拘束部材は、一つ又は複数の側壁、外壁、蓋などの内表面と接触させることができる。図1では、例えば、ポリマー性拘束部材197は、側壁124の内面107及び外壁123の内面109と接触している。ハウジングと接触してはいるが、ハウジングによって規定される空洞の少なくとも一部は、不活性ガスが空洞を流通して固体電解質と酸素との接触を制限できるように非占有状態のままであることがなお望ましい。例えば、空洞容積の少なくとも約5%、一部の態様においては空洞容積の約10%〜約50%は、キャパシタ素子及びポリマー性拘束部材によって占有されないままである。
所望の様式で接続されたら、得られたパッケージは上記のように気密封止される。再度図1を参照すると、例えば、ハウジング122は、キャパシタ素子120及びポリマー性拘束部材197がハウジング122内に配置された後、側壁124の上面上に配置される蓋125も含みうる。蓋125は、セラミック、金属(例えば、鉄、銅、ニッケル、コバルトなどのほか、それらの合金)、プラスチックなどから形成できる。所望であれば、封止部材187を蓋125と側壁124の間に配置し、良好な封止の提供を助けることができる。一態様において、例えば、封止部材は、ガラス−金属封止(glass-to-metal seal)、Kovar(登録商標)リング(Goodfellow Camridge,Ltd.社)などを含みうる。側壁124の高さは、一般的に、蓋125が、キャパシタ素子120のいずれの表面とも接触しないような高さである(キャパシタ素子が汚染されないように)。ポリマー性拘束部材197は蓋125と接触してもしなくてもよい。所望の位置に配置されたら、蓋125は、溶接(例えば、抵抗溶接、レーザー溶接など)、はんだ付けなどの公知技術を用いて、側壁124に気密封止される。気密封止は、一般的に、上記のような不活性ガスの存在下で行われるので、得られたアセンブリは、酸素又は水蒸気のような反応性ガスを実質的に含まない。
記載された態様は単に例示であること、そして、キャパシタ素子をハウジング内に気密封止するために様々なその他の構成(configuration)が本発明で使用できることは理解されるはずである。図2を参照すると、例えば、外壁123と蓋225とを含み、その間にキャパシタ素子120及びポリマー性拘束部材197を包含する空洞126が形成されているハウジング222を使用した別のキャパシタアセンブリ200の態様が示されている。蓋225は、少なくとも一つの側壁224と一体化された外壁223を含む。図示された態様においては、例えば、二つの対向する側壁224が断面で示されている。外壁223及び123は、どちらも横方向(−y方向)に延び、一般的に、互いに及び陽極リード6の横方向に平行である。側壁224は、外壁223から、外壁123に対して一般的に垂直である縦方向に延びている。蓋225の遠位端500は、外壁223によって規定され、近位端501は、側壁224のリップ253によって規定されている。
リップ253は側壁224から横方向に延びている。これは一般的に外壁123の横方向に平行であろう。側壁224とリップ253との間の角度は変動しうるが、典型的には約60°〜約120°、一部の態様においては約70°〜約110°、そして一部の態様においては約80°〜約100°(例えば約90°)である。リップ253は周辺エッジ251も規定している。これは、一般的に、リップ253と外壁123が延びている横方向に垂直である。周辺エッジ251は、側壁224の外周の先に位置し、一般的に外壁123のエッジ151と同一平面上にある。リップ253は、溶接(例えば抵抗又はレーザー)、はんだ付け、接着剤(glue)などの任意の公知技術を用いて、外壁123に封止できる。例えば、図示された態様においては、部品間に封止部材287が使用され(ガラス−金属封止、Kovar(登録商標)リングなど)、それらの接合を促進している。いずれにせよ、上記リップの使用は、部品間のより安定な接続を可能にでき、キャパシタアセンブリの封止及び機械的安定性を改良する。
さらに他の可能なハウジング構成が本発明で使用できる。例えば、図3は、端子ピン327bと329bがそれぞれ陽極及び陰極の外部終端として使用されている以外は図2と類似したハウジング構成を有するキャパシタアセンブリ300を示している。さらに詳しくは、端子ピン327aは、外壁323内に形成された配線327cを通って延び、公知技術(例えば溶接)を用いて陽極リード6に接続されている。追加的セクション327aは、ピン327bを固定するために使用できる。同様に、端子ピン329bは、外壁323内に形成された配線329cを通って延び、上記のような導電接着剤133を介して陰極に接続されている。
図1〜3に示された態様は、ここでは単一のキャパシタ素子だけに関して議論されている。しかしながら、複数のキャパシタ素子もハウジング内に気密封止できることも理解されるはずである。複数のキャパシタ素子は、ハウジングに任意の様々な技術を用いて取り付けることができる。図4を参照すると、例えば、2個のキャパシタ素子を含有するキャパシタアセンブリ400の一つの特別な態様が示されているので、これについてさらに詳細に説明する。さらに詳しくは、キャパシタアセンブリ400は、第一のキャパシタ素子420aと、それと電気通信している第二のキャパシタ素子420bを含む。この態様において、キャパシタ素子は、それらの主要面が水平に配置されるように配列されている。すなわち、キャパシタ素子420aの主要面(その幅(−x方向)及び長さ(−y方向)によって規定される)は、キャパシタ素子420bの対応する主要面に隣接して配置されている。従って、主要面は一般的に同一平面上にある。あるいは、キャパシタ素子は、それらの主要面が同一平面上になく、一定方向(例えば−z方向又は−方向)に互いに垂直になるように配置されてもよい。当然ながら、キャパシタ素子は同じ方向に延びる必要はない。
キャパシタ素子420a及び420bは、外壁423と側壁424及び425(一緒になって空洞426を規定している)を含有するハウジング422内に配置されている。示されてはいないが、側壁424及び425の上面を覆い、アセンブリ400を上記のように封止する蓋を使用してもよい。任意に、ポリマー性拘束部材も使用して、キャパシタ素子の振動を制限するのに役立てることもできる。図4では、例えば、別個のポリマー性拘束部材497a及び497bが、キャパシタ素子420a及び420bにそれぞれ隣接及び接触して配置されている。ポリマー性拘束部材497a及び497bは、異なる様々な位置に配置することもできる。さらに、拘束部材の一つを取り除くことも、又は追加の拘束部材を使用することもできる。一定の態様において、例えば、キャパシタ素子間にポリマー性拘束部材を使用して機械的安定性をさらに改良するのが望ましいであろう。
キャパシタ素子のほかに、キャパシタアセンブリは、各キャパシタ素子の陽極リードが電気的に接続されている陽極終端と、各キャパシタ素子の陰極が電気的に接続されている陰極終端も含有する。再度図4を参照すると、例えば、キャパシタ素子は、共通の陰極終端429に平行に接続されているのが示されている。この特別な態様において、陰極終端429は、まずキャパシタ素子の底面に一般的に平行な平面に設けられ、導電性配線(図示せず)と電気的に接触することができる。キャパシタアセンブリ400は、キャパシタ素子420aと420bの陽極リード407a及び407bにそれぞれ接続された接続部材427及び527も含む。さらに詳しくは、接続部材427は、直立部分465と、陽極終端(図示せず)に接続された平面部分463を含有する。同様に、接続部材527は、直立部分565と、陽極終端(図示せず)に接続された平面部分563を含有する。当然ながら、様々なその他のタイプの接続機構も使用できることは理解されるはずである。
その特定の構造に関わらず、得られたキャパシタアセンブリは様々な有益特性を示すことができる。例えば、キャパシタアセンブリは、雰囲気湿度の存在下でもごくわずかなキャパシタンス損失及び/又は変動しかないことを可能にする高いその湿潤キャパシタンスの百分率を示すことができる。この性能特性は、等式:
湿潤対乾燥キャパシタンス=(乾燥キャパシタンス/湿潤キャパシタンス)×100
によって決定される“湿潤対乾燥キャパシタンス百分率(wet-to-dry capacitance percentage)”によって定量化される。
キャパシタアセンブリは、約50%以上、一部の態様においては約60%以上、一部の態様においては約70%以上、そして一部の態様においては約80%〜100%の湿潤対乾燥キャパシタンス百分率を示すことができる。乾燥キャパシタンスは、周波数120Hzでの測定で、約30ナノファラッド/平方センチメートル(“nF/cm”)以上、一部の態様においては約100nF/cm以上、一部の態様においては約200〜約3,000nF/cm、そして一部の態様においては約400〜約2,000nF/cmでありうる。
キャパシタは、動作周波数100kHzでの測定で、約200ミリオーム(mohms)、一部の態様においては約150ミリオーム未満、そして一部の態様においては約0.1〜約100ミリオームという比較的低い等価直列抵抗(“ESR”)も示すことができる。また、キャパシタアセンブリの誘電正接(dissipation factor)も比較的低いレベルに維持できると考えられている。誘電正接は、一般的に、キャパシタで発生する損失のことで、通常、理想的なキャパシタ性能のパーセンテージとして表される。例えば、本発明のキャパシタの誘電正接は、典型的には、周波数120Hzでの決定で、約1%〜約25%、一部の態様においては約3%〜約10%、そして一部の態様においては約5%〜約15%である。キャパシタアセンブリは、高電圧用途、例えば約35ボルト以上、一部の態様においては約50ボルト以上、そして一部の態様においては約60ボルト〜約200ボルトの定格電圧で使用することもできる。キャパシタアセンブリは、例えば、約2ボルト以上、一部の態様においては約5ボルト以上、一部の態様においては約10ボルト以上、そして一部の態様においては約10〜約100ボルトという比較的高い“破壊電圧”(キャパシタが故障する電圧)を示すことができる。同様に、キャパシタアセンブリは、高電圧用途で一般的な比較的高いサージ電流に耐えることもできる。ピークサージ電流は、例えば、約100アンペア以上、一部の態様においては約200アンペア以上、そして一部の態様においては約300アンペア〜約800アンペアでありうる。
本発明は、以下の実施例を参照することによりより良く理解することができる。
試験手順
等価直列抵抗(ESR)
等価直列抵抗は、Kelvinリードを備えたKeithley 3330 Precision LCZメーターを用い、2.2ボルトのDCバイアス及び0.5ボルトのピーク-ピーク正弦波信号で測定できる。動作周波数は100kHz、温度は23℃±2℃である。
誘電正接
誘電正接は、Kelvinリードを備えたKeithley 3330 Precision LCZメーターを用い、2.2ボルトのDCバイアス及び0.5ボルトのピーク-ピーク正弦波信号で測定できる。動作周波数は120Hz、温度は23℃±2℃である。
キャパシタンス
キャパシタンスは、Kelvinリードを備えたKeithley 3330 Precision LCZメーターを用い、2.2ボルトのDCバイアス及び0.5ボルトのピーク-ピーク正弦波信号で測定できる。動作周波数は120Hz、温度は23℃±2℃である。場合によっては、“湿潤対乾燥”キャパシタンスも決定できる。“乾燥キャパシタンス”とは、固体電解質、グラファイト、及び銀層を適用する前の部品のキャパシタンスのことであるが、“湿潤キャパシタンス”とは、誘電体形成後の部品のキャパシタンスのことで、14%硝酸中、1mFのタンタル陰極を参照とし、10ボルトのDCバイアス及び0.5ボルトのピーク-ピーク正弦波信号で、電解質浸漬30秒後に測定される。
漏れ電流
漏れ電流は、漏洩試験メーターを用い、23℃±2℃の温度及び定格電圧(例えば16ボルト)で、最低60秒後に測定できる。
乾燥雰囲気中での試験
試験は、相対湿度がほぼ0%になるように150℃の温度に加熱することによって得られた乾燥雰囲気中で実施できる(7部品)。漏れ電流は、雰囲気中(電圧なし)で40時間後、回復サンプルに対して記録され、0時における初期測定値と比較される。試験条件後の回復時間は30分であった。漏れ電流は、23℃±2℃の温度及び定格電圧(例えば16ボルト)で、それぞれ20秒から60分後までに測定される。
実施例1
70,000μFV/gのタンタル粉体を用いて陽極サンプルを形成した。各陽極サンプルにタンタル線を埋め込み、1380℃で焼結し、そしてプレスして密度5.8g/cmにした。得られたペレットは4.10×2.75×0.60mmのサイズを有していた。ペレットを、水/リン酸電解質(温度85℃で導電率8.6mS)中で42.0ボルトに陽極酸化し、誘電体層を形成させた。このペレットを再度、水/ホウ酸/四ホウ酸二ナトリウム(温度30℃で導電率2.0mS)中で25秒間、90ボルトに陽極酸化し、より厚い酸化物層を外側に蓄積させた。次に、導電性ポリマーコーティングは、陽極を、固体含量1.1%及び粘度20mPa.sを有する分散ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(CleviosTM K,Heraeus社製)中に浸漬することによって形成させた。コーティング後、部品を125℃で20分間乾燥させた。この工程を10回繰り返した。その後、部品を、固体含量2.0%及び粘度20mPa.sを有する分散ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(CleviosTM K,Heraeus社製)中に浸漬した。コーティング後、部品を125℃で20分間乾燥させた。この工程を3回繰り返した。その後、部品を、固体含量2%及び粘度160mPa.sを有する分散ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(CleviosTM K,Heraeus社製)中に浸漬した。コーティング後、部品を125℃で20分間乾燥させた。この工程を8回繰り返した。次に、部品をグラファイト分散液中に浸漬し、乾燥させた。最後に、部品を銀分散液中に浸漬し、乾燥させた。このようにして47μF/16Vキャパシタの多数の部品(1600)を製造し、シリカ樹脂に封入した。
実施例2
キャパシタを、異なる導電性ポリマーコーティングを使用した以外は、実施例1に記載のようにして形成した。導電性ポリマーコーティングは、陽極を、固体含量1.9%を有するポリ(4−(2,3−ジヒドロチエノ−[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)−1−ブタン−スルホン酸(CleviosTM K,Heraeus社製)の溶液中に浸漬することによって形成させた。コーティング後、部品を125℃で20分間乾燥させた。この工程は繰り返さなかった。その後、部品を、固体含量1.1%及び粘度20mPa.sを有する分散ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(CleviosTM K,Heraeus社製)中に浸漬した。コーティング後、部品を125℃で20分間乾燥させた。この工程を10回繰り返した。その後、部品を、固体含量2.0%及び粘度20mPa.sを有する分散ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(CleviosTM K,Heraeus社製)中に浸漬した。コーティング後、部品を125℃で20分間乾燥させた。この工程を3回繰り返した。その後、部品を、固体含量2%及び粘度160mPa.sを有する分散ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(CleviosTM K,Heraeus社製)中に浸漬した。コーティング後、部品を125℃で20分間乾燥させた。この工程を8回繰り返した。次に、部品をグラファイト分散液中に浸漬し、乾燥させた。最後に、部品を銀分散液中に浸漬し、乾燥させた。このようにして47μF/16Vキャパシタの多数の部品(800)を製造し、シリカ樹脂に封入した。
実施例3
キャパシタを、異なる導電性ポリマーコーティングを使用した以外は、実施例1に記載のようにして形成した。導電性ポリマーコーティングは、陽極を、固体含量1.9%を有するポリ(4−(2,3−ジヒドロチエノ−[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)−1−ブタン−スルホン酸(CleviosTM K,Heraeus社製)の溶液中に浸漬することによって形成させた。コーティング後、部品を125℃で20分間乾燥させた。この工程を10回繰り返した。その後、部品を、固体含量2.0%及び粘度20mPa.sを有する分散ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(CleviosTM K,Heraeus社製)中に浸漬した。コーティング後、部品を125℃で20分間乾燥させた。この工程を3回繰り返した。その後、部品を、固体含量2%及び粘度160mPa.sを有する分散ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(CleviosTM K,Heraeus社製)中に浸漬した。コーティング後、部品を125℃で20分間乾燥させた。この工程を8回繰り返した。次に、部品をグラファイト分散液中に浸漬し、乾燥させた。最後に、部品を銀分散液中に浸漬し、乾燥させた。このようにして47μF/16Vキャパシタの多数の部品(800)を製造し、シリカ樹脂に封入した。
次に、完成した実施例1〜3のキャパシタについて、電気的性能を試験した。キャパシタンス、Df、ESR及びDCLのメジアンの結果を以下の表1〜3に示す。
当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明のこれら及びその他の修正及び変形を実施できるであろう。さらに、様々な態様の側面は、全体的にも又は部分的にも交換できることも理解されるはずである。さらに、当業者であれば、以上の記載は単なる例であって、当該添付の特許請求の範囲においてさらに記載される本発明を制限することを意図したものでないことも分かるであろう。
6 陽極リード
7 絶縁材料
100 キャパシタアセンブリ
107 内面(側壁の)
109 内面(外壁の)
120 キャパシタ素子
122 ハウジング
123 外壁
124 側壁
125 蓋
126 内部空洞
127 陽極終端
127a 第一の領域(陽極終端の)
127b 第二の領域(陽極終端の)
127c 導電性配線
129 陰極終端
129a 第一の領域(陰極終端の)
129b 第二の領域(陰極終端の)
129c 導電性配線
131 導電接着剤
133 導電接着剤
151 エッジ
162 接続部材
165 第二の部分(接続部材の)
167 第一の部分(接続部材の)
177 後面
179 前面
181 上面
183 下面
187 封止部材
197 ポリマー性拘束部材
200 キャパシタアセンブリ
201 実装表面
203 実装表面
222 ハウジング
223 外壁
224 側壁
225 蓋
251 周辺エッジ
253 リップ
287 封止部材
300 キャパシタアセンブリ
323 外壁
327a 端子ピン
327b 端子ピン
327c 配線
329b 端子ピン
329c 配線
400 キャパシタアセンブリ
407a 陽極リード
407b 陽極リード
420a 第一のキャパシタ素子
420b 第二のキャパシタ素子
422 ハウジング
423 外壁
424 側壁
425 側壁
426 空洞
427 接続部材
429 陰極終端
463 平面部分
465 直立部分
497a ポリマー性拘束部材
497b ポリマー性拘束部材
500 遠位端(蓋の)
501 近位端(蓋の)
527 接続部材
563 平面部分
565 直立部分

Claims (29)

  1. 約10%以下の相対湿度を有する乾燥雰囲気と接触するキャパシタアセンブリであって、前記キャパシタアセンブリは、焼結多孔体上に形成された誘電体を含有する陽極と、陽極を覆う固体電解質とを含むキャパシタ素子を含み、前記固体電解質は、以下の式(I):

    [式中、
    Rは、(CH−O−(CHであり;
    aは、0〜10であり;
    bは、1〜18であり;
    Zは、アニオンであり;そして
    Xは、カチオンである]
    を有する反復単位を含有する固有導電性ポリマーを含むキャパシタアセンブリ。
  2. キャパシタアセンブリが、印加電圧を5分間受けた後、約100マイクロアンペア以下の漏れ電流を示す、請求項1に記載のキャパシタアセンブリ。
  3. キャパシタアセンブリが、印加電圧を40分間受けた後、約25マイクロアンペア以下の漏れ電流を示す、請求項2に記載のキャパシタアセンブリ。
  4. 陽極体がタンタルを含む、請求項1に記載のキャパシタアセンブリ。
  5. aが1であり、bが3又は4である、請求項1に記載のキャパシタアセンブリ。
  6. ZがSOである、請求項1に記載のキャパシタアセンブリ。
  7. Xがアルカリ金属である、請求項1に記載のキャパシタアセンブリ。
  8. ポリマーが、ポリ(4−(2,3−ジヒドロチエノ−[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)−1−ブタン−スルホン酸、塩)、ポリ(4−(2,3−ジヒドロチエノ−[3,4−b][l,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)−l−プロパンスルホン酸、塩)、又はそれらの組合せである、請求項1に記載のキャパシタアセンブリ。
  9. 固体電解質が一つ又は複数の内層を含有し、前記内層は固有導電性ポリマーを含有する、請求項1に記載のキャパシタアセンブリ。
  10. 固体電解質が5〜15の内層を含有する、請求項9に記載のキャパシタアセンブリ。
  11. 内層が一般的に外来的導電性ポリマーを含まない、請求項9に記載のキャパシタアセンブリ。
  12. 固体電解質が一つ又は複数の外層を含有し、前記外層の少なくとも一つは、ポリマー性対イオンと以下の式(III):

    [式中、
    は、直鎖又は分枝のC〜C18アルキルラジカル;C〜C12シクロアルキルラジカル;C〜C14アリールラジカル;C〜C18アラルキルラジカル;又はC〜Cヒドロキシアルキルラジカル、又はヒドロキシルラジカルであり;そして
    qは、0〜8の整数である]
    の反復単位を有する外来的導電性ポリマーとを含有する粒子の分散液から形成される、請求項9に記載のキャパシタアセンブリ。
  13. 外層の少なくとも一つがヒドロキシル官能性非イオン性ポリマーを含有する、請求項12に記載のキャパシタアセンブリ。
  14. キャパシタ素子がその内部に封入されるハウジングをさらに含む、請求項1に記載のキャパシタアセンブリ。
  15. ハウジングが、キャパシタ素子を封入する樹脂材料から形成される、請求項14に記載のキャパシタアセンブリ。
  16. ハウジングが、キャパシタ素子がその内部に配置される内部空洞を規定し、前記内部空洞は約10%以下の相対湿度を有する気体雰囲気を有する、請求項14に記載のキャパシタアセンブリ。
  17. 気体雰囲気が不活性ガスを含有する、請求項16に記載のキャパシタアセンブリ。
  18. キャパシタアセンブリであって、
    焼結多孔体上に形成された誘電体を含有する陽極と、陽極を覆う固体電解質とを含むキャパシタ素子であって、前記固体電解質は、以下の式(I):

    [式中、
    Rは、(CH−O−(CHであり;
    aは、0〜10であり;
    bは、1〜18であり;
    Zは、アニオンであり;そして
    Xは、カチオンである]
    を有する反復単位を含有する固有導電性ポリマーを含むキャパシタ素子と;
    キャパシタ素子がその内部に配置される内部空洞を規定し、前記内部空洞は約10%以下の相対湿度を有する気体雰囲気を有するハウジングと;
    陽極体と電気的に接続されている陽極終端と;そして
    固体電解質と電気的に接続されている陰極終端と
    を含むキャパシタアセンブリ。
  19. 気体雰囲気が不活性ガスを含有する、請求項18に記載のキャパシタアセンブリ。
  20. 陽極体がタンタルを含む、請求項18に記載のキャパシタアセンブリ。
  21. aが1であり、bが3又は4である、請求項18に記載のキャパシタアセンブリ。
  22. ZがSOである、請求項18に記載のキャパシタアセンブリ。
  23. Xがアルカリ金属である、請求項18に記載のキャパシタアセンブリ。
  24. ポリマーが、ポリ(4−(2,3−ジヒドロチエノ−[3,4−b][1,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)−1−ブタン−スルホン酸、塩)、ポリ(4−(2,3−ジヒドロチエノ−[3,4−b][l,4]ジオキシン−2−イルメトキシ)−l−プロパンスルホン酸、塩)、又はそれらの組合せである、請求項18に記載のキャパシタアセンブリ。
  25. 固体電解質が一つ又は複数の内層を含有し、前記内層は固有導電性ポリマーを含有する、請求項18に記載のキャパシタアセンブリ。
  26. 固体電解質が5〜15の内層を含有する、請求項25に記載のキャパシタアセンブリ。
  27. 内層が一般的に外来的導電性ポリマーを含まない、請求項25に記載のキャパシタアセンブリ。
  28. 固体電解質が一つ又は複数の外層を含有し、前記外層の少なくとも一つは、ポリマー性対イオンと以下の式(III):

    [式中、
    は、直鎖又は分枝のC〜C18アルキルラジカル;C〜C12シクロアルキルラジカル;C〜C14アリールラジカル;C〜C18アラルキルラジカル;又はC〜Cヒドロキシアルキルラジカル、又はヒドロキシルラジカルであり;そして
    qは、0〜8の整数である]
    の反復単位を有する外来的導電性ポリマーとを含有する粒子の分散液から形成される、請求項25に記載のキャパシタアセンブリ。
  29. 外層の少なくとも一つがヒドロキシル官能性非イオン性ポリマーを含有する、請求項28に記載のキャパシタアセンブリ。
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