JP2017006590A - ミシン - Google Patents
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Abstract
Description
また、この上糸保持装置が上糸の縫い開始端部の引き抜きを防止するので、予め、縫い針の目穴に通す上糸の縫い開始端部の長さを必要最小限の長さとすることができ、縫製後の布地から垂れ下がる上糸の縫い開始端部の長さを短くすることができるようになっていた。
縫い針が挿入される針穴が形成された針板と、
前記縫い針の上下動動作を行う針上下動機構と、
前記針板の下側で前記縫い針から上糸を捕捉して下糸を絡める釜機構と、
前記針板と前記釜機構との間に設けられ、動メスの切断動作により上糸を切断する糸切り装置と、
前記糸切り装置と前記釜機構の間に設けられ、前記上糸の縫い開始端部を保持する上糸保持装置を備え、
を備えるミシンにおいて、
一針目の針落ち後であって二針目の針落ち前に前記上糸の縫い開始端部の保持動作を行うように前記上糸保持装置を制御し、
二針目の針落ち後に前記上糸の縫い開始端部を切断するように、前記糸切り装置を制御する制御装置を備えることを特徴とする。
前記糸切り装置は、前進と後退からなる往復動作を行う動メスと、当該動メスとの協働により上糸及び下糸の縫い終わり端部を切断する固定メスと、前記動メスに往復動作を付与するアクチュエーターと備え、
前記動メスは、前進時に上糸の切断部分及び下糸と上糸の非切断部分とを仕分ける糸捌き部と、後退時に切断を行う刃部とを有し、
前記制御装置は、一針目の針落ち前に、前記動メスの刃部を前記針穴よりも前進方向下流側に待機させ、二針目の針落ち後に前記動メスの刃部を前記固定メスまで後退移動させるように前記アクチュエーターを制御することを特徴とする。
前記動メスは、前記刃部が開口縁部に形成された貫通孔を有し、
前記制御装置は、一針目の針落ち前に、前記貫通孔と前記針穴とが重合する位置で前記動メスを待機させるように前記アクチュエーターを制御することを特徴とする。
前記針板の上面に沿って被縫製物を移動させる移動機構と、
前記針板又はその周囲に設けられ、前記被縫製物から垂下する上糸の端部を切除する残端切除機構とを備え、
前記制御装置は、前記被縫製物の前記上糸の縫い開始端部又は前記上糸の縫い終わり端部を前記残端切除機構に移動させると共に、前記残端切除機構による切除動作を実行させる制御を行うことを特徴とする。
被縫製物から切断された上糸の縫い開始端部を回収する吸引機構を備えることを特徴とする。
前記上糸保持装置は、
下降時の前記縫い針が遊挿され当該下降時の前記縫い針の周囲を取り囲むための枠状に形成された糸捕捉部を備え、
前記糸捕捉部は、前記縫い針の上下動経路に開口部を向けたコ字状部と、このコ字状部の開口部を開閉可能な開閉体とにより前記縫い針の周囲を取り囲むための枠状をなしており、
前記糸捕捉部は、前記コ字状部の内側で前記開閉体が前記上糸の縫い開始端部の保持を行い、
前記制御装置は、前記糸切り装置により前記上糸の縫い開始端部を切断した後に、前記開閉体により閉塞されている前記コ字状部の開口を開放するように、前記上糸保持装置を制御することを特徴とする。
また、上糸の縫い開始端部を二針目の針落ち後に切断してしまうので、上糸の縫い開始端部が縫い目に縫い込まれることを回避でき、縫い品質の向上を図ることが可能となる。
以下、図1乃至図15に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本実施形態たるミシン10の概略構成図、図2は斜視図、図3は制御系のブロック図である。
ミシン10は、いわゆる電子サイクル縫いミシンであって、ミシンフレーム20と、縫い針11を保持する針棒12を上下動させる針上下動機構30と、ミシンフレーム20のミシンベッド部21の針落ち位置に設けられた針板16と、針板16の下側で縫い針11の上糸Uを下糸Dに絡める釜機構50と、被縫製物である布地Kを縫い針11に対してX−Y平面に沿って任意に移動させる移動機構としての送り機構60と、上糸Uの縫い開始端部U0を保持する上糸保持装置130と、最終針の針落ち後に上糸U及び下糸Dを切断する糸切り装置80と、糸切り装置80による切断後の被縫製物の上糸U及び下糸Dの残端を切除する残端切除機構100と、上糸保持装置130の下方から吸引を行う吸引機構110と、上記各構成の動作制御を行う制御装置120とを備えている。
なお、糸調子装置、天秤及び中押さえ機構等についてはミシンに搭載されている周知の機構であるため図示及び詳細な説明は省略する。
以下、上記各構成について順番に説明する。
ミシンフレーム20は、下部に位置するミシンベッド部21と、ミシンベッド部21の一端部から上方に立ち上げられたミシン立胴部22と、ミシン立胴部22の上部からミシンベッド部21に沿うように延設されたミシンアーム部23とからなる。
ここで、ミシン10の構成を説明するにあたって、後述する針棒12の上下動方向をZ軸方向とし、これと直交する方向であってミシンベッド部21及びミシンアーム部23の長手方向に平行な方向をY軸方向とし、Z軸方向及びY軸方向の双方に直交する方向をX軸方向とする。なお、ミシン10を水平面上に設置した場合に、Z軸方向は鉛直上下方向となり、X軸方向及びY軸方向は水平方向となる。
ミシンアーム部23の内側では、その長手方向(Y軸方向)に平行に向けられた主軸32が回転可能に支持されている。
また、ミシンベッド部21の内側では、その長手方向(Y軸方向)に平行に向けられた下軸51が回転可能に支持されている。
主軸32と下軸51には、それぞれにスプロケット33,52が固定装備され、歯付きベルト53を介して主軸32から下軸51にトルク伝達が行われている。
針上下動機構30は、図1に示すように、ミシン立胴部22の上部に設けられたサーボモーターからなるミシンモーター31と、このミシンモーター31の出力軸に接続されて回転を行う主軸32と、当該主軸32のミシン面部側の端部に固定装備された針棒クランク34と、針棒クランク34において主軸32による回転中心から偏心した位置に一端部が連結されたクランクロッド35と、針棒抱き36を介してクランクロッド35の他端部に連結された針棒12とを備えている。
針棒12は、その下端部に縫い針11を保持すると共に、Z軸方向に沿った往復上下動が可能となるようにミシンアーム部23に支持されている。
ミシンモーター31はサーボモーターであり、エンコーダー37を備えている(図2参照)。そして、制御装置120がエンコーダー37からミシンモーター31の回転速度、主軸角度等の検出を行い、ミシンモーター31に対する動作制御を実施するようになっている。
なお、針棒クランク34、クランクロッド35、針棒抱き36等の構成は、周知のものと同じであるため詳細な説明は省略する。
送り機構60は、図1及び図2に示すように、水平な針板16の上面に沿って布地Kを移動させて、縫い針11に対して任意に移動位置決めを行う。
このため、送り機構60は、ミシンベッド部21の上面において、X軸方向及びY軸方向に沿って移動可能に支持された下板61及び土台62と、土台62により昇降可能に支持され、下板61の上から布地Kの保持を行う布押さえ63と、布押さえ63を昇降させる昇降用モーター64と、土台62を介して布押さえ63をX軸方向に沿って移動させるための駆動源となるX軸モーター65と、土台62を介して布押さえ63をY軸方向に沿って移動させるための駆動源となるY軸モーター66とを備えている。
土台62は下板61の上面後端側に立設されており、土台62と下板61は、布押さえ63と共にX−Y平面に沿って移動を行う。
そして、下板61の前端部の上側には、土台62に支持された布押さえ63が配置されている。この布押さえ63は、矩形の枠状であって、土台62の前端部に形成された長穴に沿って昇降可能に支持されている。土台62には、昇降用モーター64により先端部が上下に揺動を行う図示しない昇降レバーが装備されており、布押さえ63は、昇降レバーの先端部に係合して昇降動作が付与される。
釜機構50は、水平釜を有し、内側に下糸Dを巻いたボビンを格納する内釜と、内釜の外周で回転して縫い針11から上糸Uを捕捉する外釜と、外釜に回転力を付与する釜軸と、下軸51から釜軸にトルクを伝える歯車機構と、釜土台とを備えている。
釜軸は、Z軸回りに回転可能に釜土台に支持されており、下軸51から二倍速で回転が伝達されている。つまり、釜機構50の外釜は主軸32の二倍速で回転を行っている。
図3に糸切り装置80の底面図を示す。
この糸切り装置80は、Z軸回りに回動を行う動メス81と、動メス81と協働して上糸U及び下糸Dを切断する固定メス82と、動メス81の回動動作の駆動源となるアクチュエーターとしての糸切りモーター83と、糸切りモーター83から動メス81に往復回動を伝達する複数のリンク体83〜85とを備えている。
ここで、まず、動メス81の構造と上糸U及び下糸Dの縫い終わり端部の切断動作とについて説明する。
動メス81は、非使用時にはポジションP1に待機しており、ポジションP1からポジションP2,P3を通過してポジションP4まで前進回動を行った後に、ポジションP4からポジションP2,P3を通過してポジションP1まで後退回動を行って、上糸U及び下糸Dの縫い終わり端部の切断を行う。
糸切り装置80は、上糸Uの縫い針11側の部分と布地側の部分の内の布地側の部分のみと下糸Dとを切断する必要があるので、動メス81の前進回動時には、上糸Uの縫い針11側の部分(非切断部分)と、上糸Uの布地側の部分(切断部分)及び下糸Dとに選り分ける糸捌き作業を行い、後退回動時に上糸Uの布地側の部分及び下糸Dを切断する。
さらに、糸捌き部811と捕捉部813との間であって前側寄りの位置には、貫通孔814が形成され、当該貫通孔814の前側内縁部に刃部812が形成されている。
そして、動メス81の後退回動時において、捕捉部813が固定メスの刃先821を通過すると、動メス81の上面と固定メス82の下面との間に上糸Uの布地側の部分と下糸Dとが挟まれた状態となる。
そして、動メス81がさらに後退回動を続けると、動メス81の上面と固定メス82の下面とに挟まれた上糸Uの布地側の部分と下糸Dとが押し込まれるようにして貫通孔814に入り込み、刃部812と固定メス82の刃先とがすれ違う際に、上糸Uの布地側の部分と下糸Dとが切断される。
この糸切り装置80は、一針目の針落ちの際に上糸Uの縫い開始端部を捕捉して、二針目の針落ち後に切断を行う。
動メス81は、前述したように貫通孔814が形成されているが、この貫通孔814は長穴状であって、動メス81の回動により貫通孔814が針穴161に対して重合する配置となっている。なお、貫通孔814は、回動による円周方向に沿った長穴状であって針穴161の直径よりも幾分幅広になっている。
このポジションP2は、動メス81と縫い針11の干渉を回避しつつ、貫通孔814内の上糸Uの縫い開始端部が切断されない状態を維持するための位置である。
上糸保持装置130は、図5〜図11に示されるように、上糸の端部を保持面と挟持面との間で挟持(保持)する保持状態と、挟持(保持)した上糸の端部を開放する解放状態とを切り替え可能な挟持手段としての糸掴みAと、糸掴みAを相対的に移動させて保持状態と解放状態とを切り替える駆動手段Bと、駆動手段Bの動作位置を検出する検出手段Cとにより構成されている。
なお、保持面1316は、挟持面1325との間に上糸Uを挟み込むための保持面として機能する。
先端部材132は、先端部材本体1321の前端側において図5における下方に延出する挟持部1322と、挟持部1322の下端から図5における前方に突出する突起部1323とを有しており、先端部材本体1321の後端側には連結孔1324が形成されている。挟持部1322の前側の面は、保持面1316との間に上糸Uを挟み込むための挟持面1325として機能する。かかる挟持面1325は、先端部材132(上板144)が駆動手段Bに支持された状態において、X−Z平面に平行となる。
上板本体133は、下板131よりもやや短い略平板状の部材である。上板本体133の前端部1331の下部には下方に突出する連結突起1332が設けられている。また、上板144には、その下面から下方に突出する後ピン1333と、後ピン1333のやや右前方で下方に突出する右ピン1334とがそれぞれ設けられている。
そして、先端部材132の連結孔1324と、上板本体133の連結突起1332とを嵌合して連結することにより、先端部材132と上板本体133とが一体に組み付けられ、上板144となる。
そして、下板131の前ピン1314と、上板144の後ピン1333は、後述するガイド137の中孔部1372を挿通し、そのガイド137の下方で、コイルばね139を介し、接続されている。
このコイルばね139が最も縮んだ状態において、下板131の前ピン1314と上板144の後ピン1333とは最も接近するとともに、下板131の左ピン1315と、上板144の右ピン1334とも最も接近する。つまり、この状態において、左ピン1315と右ピン1334とは、下板131(上板144)をはさみ、下板131(上板144)の長手方向に垂直な方向に配置されている。
さらに、コイルばね139は引っ張りばねであり、常時前ピン1314と後ピン1333を互いに接近する方向に付勢しており、これにより下板131の保持面1316と、上板144の挟持面1325とは外力を加えない限り、常時当接した状態を維持する。
ガイド137は、その中央部に所定幅を有する溝部1371が前後方向に沿って形成され、さらに溝部1371には、中孔部1372が前後方向に沿って形成されている。また、ガイド137の溝部1371の左右両側には、スリット状の左孔部1373及び右孔部1374が前後方向に沿ってそれぞれ形成されている。ここで、これら左孔部1373及び右孔部1374は、互いに平行に形成されているが、左孔部1373及び右孔部1374は互いに前後方向においてややずれた位置関係となっており、相対的に左孔部1373は前側に、右孔部1374は後側に形成されている。また、ガイド137の左縁の下部には、ねじ1375により、コロ142が取り付けられている。
なお、溝部1371の幅は、下板131及び上板144の幅と略同一である。
よって、保持用モーター134の回動軸1341の回動に伴う駆動力は、カム板リンク136を介して左ピン1315と右ピン1334に伝動される。そして、左ピン1315と右ピン1334とはそれぞれ左孔部1373と右孔部1374とにより前後に移動自在に配置されているので、その駆動力は、下板131と上板144(糸掴みA)を前後に相対的に移動するように伝動される。
具体的には、スリット板150の前後動に伴い、第1被検出部1501が第1のセンサ151の発光光を遮蔽するとき、第1のセンサ151は第1被検出部1501を検出しオン状態となり、遮蔽しないとき第1のセンサ151はオフ状態となる。そして、第1のセンサ151は、そのオン状態かオフ状態かを示す検出信号を制御装置120に出力する。
同様に、第2被検出部1502が第2のセンサ152の発光光を遮蔽するとき、第2のセンサ152は第2被検出部1502を検出しオン状態となり、遮蔽しないとき第2のセンサ152はオフ状態となる。そして、第2のセンサ152は、そのオン状態かオフ状態かを示す検出信号を制御装置120に出力する。
なお、図7、図9、図10においては、発光素子が出力した発光光が受光素子へ向かう光路155を(A)平面図では点線で、(B)側面図ではドットで示している。
なお、検出手段Cは、発光素子と受光素子の組合せによる位置検出の他に、保持用モーター134にエンコーダーを設け、エンコーダーの角度検出により位置検出を行っても良い。
まず、図5を参照して、縫製開始前から縫製開始直後にかけての動作を説明する。
そして、この「初期位置」において、検出手段Cのスリット板150は、連結部材135の前移動とともに前移動しており、スリット板150の第1被検出部1501及び第2の被検出部1502は、それぞれ第1のセンサ151と第2のセンサ152において非検出位置にあり、オフ状態である。
そして、この「中間保持位置」において、検出手段Cのスリット板150は、連結部材135の後移動とともに後移動しており、スリット板150の第1被検出部1501は第1のセンサ151において検出位置にあり、オン状態である。また、第2の被検出部1502は第2のセンサ152において非検出位置にあり、オフ状態である。
このような抵抗を付与することによって、天秤により引き上げられる上糸Uが慣性力によってたるんでしまうことを防ぐとともに、糸掴みAから抜けてしまうことを防ぐことができ、また、縫い針11の目穴からの上糸Uの縫い開始の端部U0までの長さを一定に保つことができる。
この上糸保持位置において、制御装置120は、前述した糸切り装置80による上糸Uの縫い開始端部の切断を実行する。
この時、カム板リンク136の左ピン1315は、カム板リンク136の後移動に伴い、ガイド137の左孔部1373に沿って後移動して左孔部1373の後壁に当接し、左ピン1315の後移動が規制された状態となる。
同様に、右ピン1334は、ガイド137の右孔部1374に沿って後移動し、左ピン1315が左孔部1373の後壁に当接した後も、右ピン1334のみが移動して、下板131及び上板144が前後に離間した状態となり、貫通孔1312が開いた状態となる。このとき、貫通孔1312は針板16の針穴161よりも後方となる。
そして、貫通孔1312が開いて糸掴みAは解放状態となる。この糸掴みAが開放状態となる位置を「解放位置」とする。前述したように、上糸保持位置において、制御装置120は、上糸Uの縫い開始端部の切断を行っているので、糸掴みAは、切除された上糸Uの縫い開始端部U1を保持した状態にあるが、解放状態となることにより、切除された上糸Uの縫い開始端部U1を解放して糸掴みAから取り除くことが可能となる。
吸引機構110は、ミシンベッド部21内において、解放位置にある上糸保持装置130の糸掴みAの下方に配置された図示しない吸引ノズルと、吸引ノズル内を負圧にするための吸引ポンプ114(図3参照)と、吸引ノズルから吸引された切除後の上糸Uの縫い開始端部を捕集する集塵トラップとを備えている。
かかる構成により、上糸Uの縫い開始端部を切除後、解放位置に移動した糸掴みAから切除された上糸Uの縫い開始端部U1を吸引し、集塵トラップに回収することができる。
残端切除機構100は、図2に示すように、作業台14における二箇所の開口部に設けられている。各残端切除機構100は、糸切り装置80により上糸Uの縫い開始端部の切断並びに上糸U及び下糸Dの縫い終わり端部の切断後において、布地の裏面に残端が残った場合に、これをより短く切除するためのものである。
それぞれの残端切除機構100は、作業台14の開口部内において、動メス及び固定メスを昇降可能に配置し、動メス及び固定メスを昇降させる昇降用エアシリンダー102(図3参照)と、動メスによる切断動作を実行させる糸切除用エアシリンダー103(図3参照)とを備えている。
そして、残端切除機構100は、通常時は、縫製の妨げとならないように作業台14の上面よりも低い位置に待機しており、残端の切除の際には、送り機構60が布地の縫い開始端部又は縫い終わり端部を開口部まで搬送し、動メス及び固定メスを作業台14の上面近くまで上昇させて残端の切除を行うことができる。
なお、残端切除機構100は、針落ち位置の両側に二基設けられているので、制御装置120は、最終針における布地の縫い開始端部又は縫い終わり端部が近い方の残端切除機構100を選択して搬送し、残端処理を行う。
図3に示すように、制御装置120は、制御用の各種プログラムが記憶、格納されたROM122と、これらの各種プログラムに従って各種演算処理を行うCPU121と、各種処理におけるワークメモリとして使用されるRAM123と、各種の縫製データ及び設定データを格納したEEPROM124とで概略構成されている。
そして、制御装置120には、図示しないシステムバス、インターフェイス及び駆動回路等を介して、針上下動機構30のミシンモーター31及びエンコーダー37、送り機構60のX軸モーター65、Y軸モーター66及び昇降用モーター64、糸切り装置80の糸切りモーター83、残端切除機構100の昇降用エアシリンダー102及び糸切除用エアシリンダー103、吸引機構110の吸引ポンプ114、上糸保持装置130の保持用モーター134、第1のセンサ151及び第2のセンサ152等が接続されている。
なお、昇降用エアシリンダー102及び糸切除用エアシリンダー103は、実際には、これらを作動させる電磁弁に対して制御装置120は制御を行うが、ここでは各電磁弁の図示を省略する。
操作入力部125では、例えば、縫製パターンデータ中の針数、針落ち位置、残端処理の実行の有無等の各種のコマンドの設定を行う。
ペダル126は、踏み込みにより縫製の開始を指示入力する。
縫製時に制御装置120が行う糸切断制御について、図12〜図14の動作説明図及び図15のフローチャートに基づいて説明する。
ミシン10の縫製動作は、縫製パターンデータを読み込むと共に、一針ごとに布押さえ63を縫製パターンに応じた針落ち位置に移動して所定の縫製パターンに従う縫い目を形成する動作制御が行われる。
ここでは、上記縫製の開始から終了までの間に実行される上糸U及び下糸Dの切断動作の制御について主に説明する。
これにより、動メス81は、貫通孔814が針穴161の下方となり、当該貫通孔814に一針目の針落ちを行わせることが可能となる。
また、糸掴みAは開口状態で針穴161の下方に位置し、貫通孔1312への一針目の針落ちを行わせることが可能となる。
これにより、上糸Uは糸掴みAに緩やかに保持され、天秤の引き上げに対して摺動抵抗が付与される。
これにより、動メス81の貫通孔814に挿通されていた上糸Uの縫い開始端部は固定メス82との協働により切断される。
そして、CPU121は、吸引機構110の吸引ポンプ114を作動させて、切除された上糸Uの縫い開始端部U1をノズルから吸引し、回収する(ステップS21)。
そして、主軸角度が所定位置に到達すると、CPU121は、ポジションP1に位置する動メス81をポジションP4まで前進回動させてから再び後退回動によりポジションP1に戻す動作を行う(ステップS25)。
これにより、針穴161から垂下する上糸Uの縫い終わり端部の布地側の部分と下糸Dの縫い終わり端部とが選別され、切断される。
さらに、縫製パターンデータ中に、残端切除を実行する設定となっているか否かを判定し(ステップS29)、実行が設定されていない場合には、そのまま縫製を終了する。
一方、残端切除の実行が設定されている場合には、送り機構60により、布地Kの縫い開始位置と縫い終わり位置とを順番に残端切除機構100の真上に移動させると共に、昇降用エアシリンダー102と糸切除用エアシリンダー103を作動させて、縫い開始位置における上糸Uの残端の切除と縫い終わり位置における上糸U及び下糸Dの残端の切除を実行する(ステップS31)。
そして、縫製を終了する。
ミシン10は、制御装置120が、一針目の針落ち後であって二針目の針落ち前に上糸Uの縫い開始端部の保持動作を行うように上糸保持装置130を制御し、二針目の針落ち後に上糸Uの縫い開始端部を切断するように、糸切り装置80を制御するので、切断後の短くなった上糸Uの縫い開始端部が布地Kにおける一針目の針落ち位置から抜けてしまうことを回避しつつ、布地Kに生じる上糸Uの縫い開始端部を短くすることが可能となる。そして、これにより、縫い品質の向上を図ることが可能となる。
また、上糸Uの縫い開始端部を二針目の針落ち後に切断してしまうので、上糸Uの縫い開始端部が縫い目に縫い込まれることを回避でき、縫い品質の向上を図ることが可能となる。
これにより、上糸U及び下糸Dの縫い終わり端部を切断するための糸切り装置80によって上糸の縫い開始端部の切断も行うことができ、装置の構成を低減することができ、ミシンの製造コストの低減を図ることが可能となる。
また、既存のミシンの糸切り装置をそのまま或いは最小限の改造により上糸の縫い開始端部の切断に利用することが可能となる。
上糸保持装置の他の例を図16〜図18に示す。この上糸保持装置130Aは前述した上糸保持装置130と比べて下板131の先端部分の構造のみが異なっており、他の部分及び他の部材については上糸保持装置130と同一であることから、同一部分については同符号を付して説明を省略し、異なる部分のみについて説明を行う。
開閉腕1711Aと入力腕1712Aとは、いずれも段ネジ172Aを中心として一体的に前後に回動可能であり、入力腕1712Aの回動端部には、下糸131Aとの間で張設されたバネ173Aの張力により、後方への回動力が入力されている。従って、開閉腕1711Aにも同時に後方への回動力が入力される。
さらに、開閉腕1711Aは、糸掴みAが上糸挟持位置のときには、開閉腕1711Aの後端面が先端部材132の挟持面1325に当接又はより近接状態となり、上糸Uを挟持可能な状態となる。
これにより、下板131Aのコ字状部1312Aを塞いでいた開閉板171Aの開閉腕1711Aは、コ字状部1312Aを開放する。
貫通孔1312を有する下板131は、貫通孔1312の前側部分に上糸Uが絡みついた場合に、貫通孔1312の周囲が連続しているため、切除された上糸Uの縫い開始端部U1が吸引時に絡みついたままとれなくなるおそれがあったが、この上糸保持装置130Aは、下板131Aにコ字状部1312Aから開閉板171Aが離れて開放状態となるので、絡みついた上糸Uの縫い開始端部U1が開閉腕1711Aから容易に外れ、切除された上糸Uの縫い開始端部U1をより確実に吸引することが可能となる。
本実施形態では電子サイクル縫いミシンを例示したが、これに限らず、糸切り装置を備える他の形式のミシンにも、上糸Uの縫い開始端部を切断する制御を適用することは可能である。
また、糸切り装置80は、動メス81が垂直軸回りに回動するものを例示したが、これに限らず、直動式の動メスや水平軸回りに回動する動メスを備える糸切り装置であっても上糸Uの縫い開始端部を切断する制御を適用することは可能である。
11 縫い針
12 針棒
131A 下板
1312A コ字状部
171A 開閉体
1711A 開閉腕
1713A 突起部
14 作業台
16 針板
161 針穴
20 ミシンフレーム
30 針上下動機構
31 ミシンモーター
50 釜機構
60 送り機構
63 布押さえ
80 糸切り装置
81 動メス
811 糸捌き部
812 刃部
813 捕捉部
814 貫通孔
82 固定メス
83 糸切りモーター(アクチュエーター)
100 残端切除機構
110 吸引機構
120 制御装置
130 上糸保持装置
K 布地(被縫製物)
D 下糸
P1〜P4 ポジション
U 上糸
Claims (6)
- 縫い針が挿入される針穴が形成された針板と、
前記縫い針の上下動動作を行う針上下動機構と、
前記針板の下側で前記縫い針から上糸を捕捉して下糸を絡める釜機構と、
前記針板と前記釜機構との間に設けられ、動メスの切断動作により上糸を切断する糸切り装置と、
前記糸切り装置と前記釜機構の間に設けられ、前記上糸の縫い開始端部を保持する上糸保持装置と、
を備えるミシンにおいて、
一針目の針落ち後であって二針目の針落ち前に前記上糸の縫い開始端部の保持動作を行うように前記上糸保持装置を制御し、
二針目の針落ち後に前記上糸の縫い開始端部を切断するように、前記糸切り装置を制御する制御装置を備えることを特徴とするミシン。 - 前記糸切り装置は、前進と後退からなる往復動作を行う動メスと、当該動メスとの協働により上糸及び下糸の縫い終わり端部を切断する固定メスと、前記動メスに往復動作を付与するアクチュエーターと備え、
前記動メスは、前進時に上糸の切断部分及び下糸と上糸の非切断部分とを仕分ける糸捌き部と、後退時に切断を行う刃部とを有し、
前記制御装置は、一針目の針落ち前に、前記動メスの刃部を前記針穴よりも前進方向下流側に待機させ、二針目の針落ち後に前記動メスの刃部を前記固定メスまで後退移動させるように前記アクチュエーターを制御することを特徴とする請求項1記載のミシン。 - 前記動メスは、前記刃部が開口縁部に形成された貫通孔を有し、
前記制御装置は、一針目の針落ち前に、前記貫通孔と前記針穴とが重合する位置で前記動メスを待機させるように前記アクチュエーターを制御することを特徴とする請求項2記載のミシン。 - 前記針板の上面に沿って被縫製物を移動させる移動機構と、
前記針板又はその周囲に設けられ、前記被縫製物から垂下する上糸の端部を切除する残端切除機構とを備え、
前記制御装置は、前記被縫製物の前記上糸の縫い開始端部又は前記上糸の縫い終わり端部を前記残端切除機構に移動させると共に、前記残端切除機構による切除動作を実行させる制御を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のミシン。 - 被縫製物から切断された上糸の縫い開始端部を回収する吸引機構を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のミシン。
- 前記上糸保持装置は、
下降時の前記縫い針が遊挿され当該下降時の前記縫い針の周囲を取り囲むための枠状に形成された糸捕捉部を備え、
前記糸捕捉部は、前記縫い針の上下動経路に開口部を向けたコ字状部と、このコ字状部の開口部を開閉可能な開閉体とにより前記縫い針の周囲を取り囲むための枠状をなしており、
前記糸捕捉部は、前記コ字状部の内側で前記開閉体が前記上糸の縫い開始端部の保持を行い、
前記制御装置は、前記糸切り装置により前記上糸の縫い開始端部を切断した後に、前記開閉体により閉塞されている前記コ字状部の開口を開放するように、前記上糸保持装置を制御することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のミシン。
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