JP5026231B2 - ミシンの上糸つかみ装置 - Google Patents

ミシンの上糸つかみ装置 Download PDF

Info

Publication number
JP5026231B2
JP5026231B2 JP2007293237A JP2007293237A JP5026231B2 JP 5026231 B2 JP5026231 B2 JP 5026231B2 JP 2007293237 A JP2007293237 A JP 2007293237A JP 2007293237 A JP2007293237 A JP 2007293237A JP 5026231 B2 JP5026231 B2 JP 5026231B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
clamping
upper thread
thread
opening
sewing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2007293237A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009118906A (ja
Inventor
大介 加藤
克秋 坂井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Juki Corp
Original Assignee
Juki Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Juki Corp filed Critical Juki Corp
Priority to JP2007293237A priority Critical patent/JP5026231B2/ja
Priority to KR1020080111652A priority patent/KR101438154B1/ko
Priority to CN2008101770253A priority patent/CN101435140B/zh
Priority to DE102008058197.6A priority patent/DE102008058197B4/de
Publication of JP2009118906A publication Critical patent/JP2009118906A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5026231B2 publication Critical patent/JP5026231B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • DTEXTILES; PAPER
    • D05SEWING; EMBROIDERING; TUFTING
    • D05BSEWING
    • D05B65/00Devices for severing the needle or lower thread
    • DTEXTILES; PAPER
    • D05SEWING; EMBROIDERING; TUFTING
    • D05BSEWING
    • D05B65/00Devices for severing the needle or lower thread
    • D05B65/06Devices for severing the needle or lower thread and for disposing of the severed thread end ; Catching or wiping devices for the severed thread

Description

本発明は、工業用ミシンのようなミシンの上糸つかみ装置に係り、特に、縫い始めの1針目の縫い針に挿通されている上糸の糸端部を針板の下方で挟持するのに好適なミシンの上糸つかみ装置に関する。
従来から、縫い始めの縫い目を確実に形成するなどの理由により、縫い始めの1針目の縫い針の糸通し穴に挿通されている上糸(針糸)の糸端部を針板の下方で挟持することのできる種々のミシンの上糸つかみ装置(以下、単に、上糸つかみ装置と記す。)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
このような上糸つかみ装置においては、縫い始めに、枠状に形成された糸捕捉部(透穴)を縫い針の上下動経路上に配置し、縫い始めの1針目において糸捕捉部の内部に上糸を捕捉した後に、糸捕捉部を縫い針の上下動経路から離間させてから、糸捕捉部の内穴の一部を構成する第1挟持部と、この第1挟持部と対向するように接離自在に配置された第2挟持部との間で上糸の糸端部、詳しくは、上糸の先端(糸端)の近傍を挟持し、その後予め設定された針数、例えば2針あるいは3針を針落ちした後、挟持した上糸の糸端部を解放するように形成されている。
特開2004−167007号公報
しかしながら、従来の上糸つかみ装置においては、挟持した上糸の糸端部の先端側が生地裏の縫い目に縫い込まれて糸捕捉部を通るループが形成された場合、ループを糸捕捉部から外すことができないという問題点があった。
このように、ループを糸捕捉部から解放することができない、すなわち、上糸の糸端部が糸捕捉部から外れないと、生地ずれ(縫い形状ずれ)、糸切れ、装置の動作不良などが発生し、安定した縫い目を得ることができないことになる。
ここで、生地裏とは、縫製時において針板上に載置される縫製対象物としての生地の針板側の面をいう。
前記糸捕捉部から上糸のループが外れないことについて、図32から図35により具体的に説明する。
従来の上糸つかみ装置101においては、縫い始めの最初の針落ち(1針目)が行われると、縫い針Nは、その上下動経路NLに沿って移動する。この時、縫い針Nは、その先端部近傍に設けられた糸通し穴Naに上糸Tが挿通された状態で、ベッド部MBに配設された針板P上に載置されている生地Cを突き刺して針板Pの針穴Paの下方に下降する。この縫い針Nの下降は、第1挟持部材102に設けられた平面枠状の糸捕捉部103を通過して行われる。そして、縫い針Nが上昇すると、上糸ループTLが形成される。この上糸ループTLは、釜Kの剣先Kaですくい取られることにより、先端Taが垂れ下がった状態となり、糸捕捉部103の内部に上糸Tが捕捉される。この糸捕捉部103は、上糸Tを捕捉した後に、縫い針Nの上下動経路NLの側方に離間され、その後、糸捕捉部103の内面103aの一部を構成する第1挟持部104と、第2挟持部材105に設けられた第2挟持部106(第1挟持部104と対向するように配置されている)第2挟持部106との間で上糸Tが挟持される(図32)。
この状態で、さらに予め設定された針数を針落ち、例えば、縫い針Nが1針(2針目)あるいは2針(2針目および3針目)上下動すると、上糸Tが図示しない下糸と結節し、針板P上に載置された生地Cに縫い目Sが形成される。そして、上糸Tと下糸とが結節した後の針落ち(第3針目あるいは第4針目)の前に、第1挟持部104と第2挟持部106との間に挟持している上糸Tが解放され、この状態で順次縫い目Sが形成される。また、上糸Tの先端Taは、縫製の進行にともなう生地Cの送りにより、糸捕捉部103から抜け出す。
ここで、1針目で第1挟持部104と第2挟持部106との間に挟持した上糸Tの糸捕捉部103を通過した部分である糸端部TAが、2針目以降の上糸ループTLの引き上げ経路上、例えば、釜Kの剣先Kaの通過経路に掛かるように位置していると、2針目の上糸ループTLの内部に糸端部TAが入る(図33)。
この時、第1挟持部104と第2挟持部106との間で挟持した上糸Tの糸端部TAの長さ、詳しくは、上糸Tの挟持箇所から先端Taまでの長さ(以下、「糸端長さ」と記す。)が、上糸Tの挟持箇所から生地Cの針落ち点DPまでの距離より長い場合には、上糸Tの糸端部TAが上糸ループTLの中に入り込んだ状態となり、図示しない天秤による上糸Tの引き上げにより、上糸ループTLとともに上糸Tの糸端部TAが引き上げられる(図34)。
したがって、上糸Tの引き上げが完了すると、糸捕捉部103を通過した上糸Tの糸端部TAの先端Ta側が生地裏の縫い目Sに縫い込まれてしまい、糸捕捉部103を通るループW(縫い目Sの形成に供される上糸ループTLとは異なる)が形成される(図35)。
このループWは、第1挟持部104と第2挟持部106との相互間を離間させることにより、挟持した上糸Tを解放しても、糸捕捉部103から外れずに、糸捕捉部103に絡んだ状態となるので、針数の増加、すなわち、縫製の進行にともなう生地Cの送りにより、生地Cに引っ張られ、あるいは生地Cを引っ張ることになるので、生地ずれ(縫い形状ずれ)、糸切れ、装置の動作不良などが発生する。
なお、上糸つかみ装置101により挟持されたときの上糸Tの「糸端長さ」は、主として、
1:縫い始めにおける上糸Tの糸通し穴Naから先端Taまでの長さ(以下、「挿通長さ」と記す。)
1−1.前縫製サイクルでの糸切り後の上糸Tの「挿通長さ」
⇒糸切り時の上糸Tの張力(調整値)/生地Cと上糸Tの抵抗など
1−2.上糸Tの糸換えなどがあった場合は、(オペレーターによる)上糸Tの「挿通長さ」
2.1針目での上糸Tと生地Cの抵抗
3.1針目での上糸Tとミシン糸経路部品(針棒案内、針穴ガイド、アーム糸案内など)の抵抗
4.1針目の上糸Tへの付加張力(通常の糸調子による張力:調整値)
5.糸取りばねの張力、ストローク(調整値)
6.1針目の縫い目Sの長さ、生地Cの厚み
の6つの要素によって決まる。
ここで、要素2、5については、上糸Tと生地Cの抵抗が大きい場合、天秤による上糸Tの引上げ時に上糸Tと生地Cの抵抗に負けて、糸取りばねが動作する移動量が増し、その結果、引上げられる上糸量が減り、生地裏に残る上糸Tの長さが長くなる。この結果、上糸Tの「糸端長さ」が長くなる。
要素3については、ゲージ交換がない限り、上糸Tの「糸端長さ」は一定とされ、ばらつきは生じない。なお、ゲージとは、針棒案内、針穴ガイド、アーム糸案内などの糸道部品を挙げることができる。また、ゲージ交換とは、厚物縫製などで各糸道ゲージ交換のことをいう。
要素4については、上糸Tを挟持したときの糸張力を縫い張力値より高く制御するなどによって、上糸Tの「糸端長さ」のばらつきが抑えられる。なお、上糸Tを挟持したときの糸張力とは、1針目の上糸Tを捕捉する際の糸張力であり、例えば最大張力へ一時的に向上させて安定させる。また、縫い張力値とは、2針目以降の通常縫製時の張力をいう。
要素6については、第1挟持部材102は、1針目で上糸Tを糸捕捉部103で捕捉した後、2針目で第2挟持部材105との協働により上糸Tを挟持するために、縫い目Sの長さが長く、生地Cの厚さが厚いと、上糸Tが消費されて上糸Tを挟持したときの上糸Tの「糸端長さ」が短くなるが、それを見越して「挿通長さ」を長く調整しているケースも多く、縫始めに止め縫いの小ピッチを設けたり、生地Cの厚さが薄くなると、上糸Tの「糸端長さ」が長くなる。
なお、上糸Tと生地Cの抵抗や、縫い目Sの長さ(縫製ピッチ)、生地Cの厚みなどは縫製対象物が変わると変化してしまい、上糸Tや生地Cの品質や特性によっては縫製毎に抵抗が変化するケースがある。このため、縫製条件や、その条件換えによって、縫い始めの上糸Tの「挿通長さ」は変化し、それにともない上糸Tの「糸端長さ」も変化する。糸換え時にオペレータにより設定される「挿通長さ」も、安全を考慮して長めにする場合が多い。
また、縫始めの「挿通長さ」が短い場合、上糸Tの挟持前に糸端部TAが第1挟持部材102の糸捕捉部103から外れてしまい、上糸Tの挟持ができなくなる。そこで、第1挟持部材102の糸捕捉部103を縫い針Nの上下動経路NLに近付けて、「挿通長さ」が短い場合においても上糸Tを捕捉・挟持可能としている。
しかしながら、このような構成においては、糸捕捉部103が縫い針Nの上下動経路NLの近傍となり、意図的(調整)に、あるいは、ばらつきによって「挿通長さ」が長い場合には、2針目以降、生地裏に縫い込まれループWが生じることになる。
さらに、従来の糸つかみ装置101では、上糸Tの「糸端長さ」が、上糸Tの挟持箇所から生地Cの針落ち点DPまでの距離より長い場合には、挟持している時間(針数)が多いほど、繰り返し上糸ループTLが通過するため、糸端部TAが引上げられ、縫い込まれる頻度が高くなる。
なお、2針目で上糸Tを挟持した後、挟持状態を保ちつつ、糸捕捉部103を縫い針Nの上下動経路NLから遠ざかる位置に移動させ、2針目以降の上糸ループTLの引上げ経路上、例えば釜Kから挟持した上糸Tの糸端部TAを離間させることもできるが、この場合、挟持した上糸Tも移動させることになり、挟持力が強いと生地ずれや糸切れの要因となり、挟持力が弱いと挟持した上糸Tの糸端部TAが短い場合に挟持部分から外れてしまう。
そこで、挟持している上糸の糸端部の先端側が生地裏の縫い目に縫い込まれて糸捕捉部を通るループが形成された場合でも、ループを糸捕捉部から外すことのできるミシンの上糸つかみ装置が求められている。
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、挟持している上糸の糸端部の先端側が生地裏の縫い目に縫い込まれて糸捕捉部を通るループが形成された場合でも、糸捕捉部からループを容易かつ確実に外すことのできるミシンの上糸つかみ装置を提供することを目的とする。
前述した目的を達成するため特許請求の範囲の請求項1に係る本発明のミシンの上糸つかみ装置の特徴は、上糸の糸端部を捕捉し挟持するための上糸挟持手段と、前記上糸挟持手段を駆動するための駆動手段とを有しており、縫い始めに、縫い針の糸通し穴に挿通されている上糸の糸端部をベッド部の針板の下方でかつ前記縫い針の上下動経路から離間した位置で捕捉し挟持するとともに、その後予め設定された針数を針落ちした後、挟持した前記上糸の糸端部を解放するように形成されているミシンの上糸つかみ装置において、前記上糸挟持手段は、切欠きおよびこの切欠きの開口を開閉可能に配設された開閉体を具備する糸捕捉部を備え、前記開閉体のうちの前記切欠きの開口を閉塞する部位により第1挟持部が形成された第1挟持部材と、前記第1挟持部に対し相対的に接離可能に配設され前記第1挟持部との間で前記糸端部を挟持する第2挟持部を具備する第2挟持部材とを有しており、前記糸捕捉部は、前記切欠きの開口を前記開閉体が閉じた閉状態で前記針板の針穴を貫通した縫い針の糸通し穴が通過可能な全体として枠状をなすように形成されており、前記第1挟持部と前記第2挟持部とは、前記開閉体が前記切欠きの開口を閉じた前記糸捕捉部の閉状態における内部において前記糸端部を挟持するように形成されており、前記駆動手段は、少なくとも前記糸捕捉部の内部が前記上下動経路上に位置しかつ前記第1挟持部と前記第2挟持部とが前記上下動経路を介して両側に対向する初期位置と、前記第1挟持部と前記第2挟持部とが前記上下動経路の側方に離間しかつ前記第1挟持部と前記第2挟持部との間で前記糸端部を挟持する挟持位置との2位置を選択的に取り得るように前記上糸挟持手段を駆動可能に形成されており、さらに、前記第1挟持部は、前記上糸を挟持した後に、前記開閉体に上糸の張力が強く作用して前記上糸によって前記開閉体が前記切欠きの開口を開いた前記糸捕捉部の閉状態とするように可動に形成されている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、第1挟持部と第2挟持部との間に挟持している上糸の糸端部の先端側が生地裏の縫い目に縫い込まれて糸捕捉部を通るループが形成された場合、縫製の進行にともなう生地の送りによるループが第1挟持部を引く力よって開閉体が切欠きの開口を開くように動作して糸捕捉部が開状態となり、ループひいては上糸を糸捕捉部から外すことができる。
また、請求項2に係る本発明のミシンの上糸つかみ装置の特徴は、上糸の糸端部を捕捉し挟持するための上糸挟持手段と、前記上糸挟持手段を駆動するための駆動手段とを有しており、縫い始めに、縫い針の糸通し穴に挿通されている上糸の糸端部をベッド部の針板の下方でかつ前記縫い針の上下動経路から離間した位置で捕捉し挟持するとともに、その後予め設定された針数を針落ちした後、挟持した前記上糸の糸端部を解放するように形成されているミシンの上糸つかみ装置において、前記上糸挟持手段は、切欠きおよびこの切欠きの開口を開閉可能に配設された開閉体を具備する糸捕捉部を備え、前記開閉体のうちの前記切欠きの開口を閉塞する部位により第1挟持部が形成された第1挟持部材と、前記第1挟持部に対し相対的に接離可能に配設され前記第1挟持部との間で前記糸端部を挟持する第2挟持部を具備する第2挟持部材とを有しており、前記糸捕捉部は、前記切欠きの開口を前記開閉体が閉じた閉状態で前記針板の針穴を貫通した縫い針の糸通し穴が通過可能な全体として枠状をなすように形成されており、前記第1挟持部と前記第2挟持部とは、前記開閉体が前記切欠きの開口を閉じた前記糸捕捉部の閉状態における内部において前記糸端部を挟持するように形成されており、前記駆動手段は、少なくとも前記糸捕捉部の内部が前記上下動経路上に位置しかつ前記第1挟持部と前記第2挟持部とが前記上下動経路を介して両側に対向する初期位置と、前記第1挟持部と前記第2挟持部とが前記上下動経路の側方に離間しかつ前記第1挟持部と前記第2挟持部との間で前記糸端部を挟持する挟持位置と、第1挟持部と前記第2挟持部とが前記挟持位置よりさらに前記上下動経路の側方に離間しかつ前記第1挟持部と前記第2挟持部との間で挟持した前記糸端部を解放する解放位置との3位置を選択的に取り得るように前記上糸挟持手段を駆動可能に形成されており、さらに、前記第1挟持部は、前記上糸を挟持した後、上糸解放時に、前記開閉体に上糸の張力が強く作用して前記上糸によって前記開閉体が前記切欠きの開口を開いた前記糸捕捉部の閉状態とするように可動に形成されている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、糸端を釜内から引き上げ、第1挟持部と第2挟持部との間に挟持している上糸の糸端部の先端側が生地裏の縫い目に縫い込まれて糸捕捉部を通るループが形成された場合、縫製の進行にともなう生地の送りによるループが第1挟持部を引く力よって開閉体が切欠きの開口を開くように動作して糸捕捉部が開状態となり、ループひいては上糸を糸捕捉部から外すことができる。
また、請求項3に係る本発明のミシンの上糸つかみ装置の特徴は、請求項1または請求項2において、前記開閉体は、常時は付勢手段の付勢力によって前記糸捕捉部を閉状態に保持するように形成されている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、糸捕捉部を閉状態とすることが容易にできるし、付勢手段の付勢力に抗する力が第1挟持部に加わった場合には糸捕捉部を開状態とすることができる。
また、請求項4に係る本発明のミシンの上糸つかみ装置の特徴は、請求項3において、前記付勢手段の付勢力を調節するための付勢力調節手段が設けられている点にある。そして、このような構成を採用したことにより、付勢手段の付勢力を容易に調節することができる。
本発明に係るミシンの上糸つかみ装置によれば、第1挟持部と第2挟持部との間に挟持している上糸の糸端部の先端側が生地裏の縫い目に縫い込まれて糸捕捉部を通るループが形成された場合、開閉体が切欠きの開口を開くように動作して糸捕捉部が開状態となり、ループひいては上糸を糸捕捉部から外すことができるなどの優れた効果を奏する。
以下、本発明を図面に示す実施形態により説明する。
本実施形態のミシンの上糸つかみ装置(以下、単に、上糸つかみ装置と記す。)を適用したミシンについて図1から図25により説明する。
(ミシンの全体的な概略構成)
図1に示すように、本実施形態のミシン1は、従来公知の如く、ベッド部2と、ベッド部2の図1の右側に示す後部に設けられた上方に向かって突設された連結胴部3と、この連結胴部3の上部から図1の左側に示す前方に向けてベッド部2と平行に延在するように延出して設けられたアーム部4とを有する全体としてほぼコ字状に形成されている。
なお、本実施形態のミシン1は、ベッド部2の先端部が略筒状に形成されるとともに、後述するX軸方向の幅が他の部位よりも狭く設定されたシリンダベッドミシンの基本構成を備えているものである。
ここで、説明の便宜上、後述する縫い針Nの上下動方向をZ軸方向とし、これと直交する方向であってベッド部2およびアーム部4の長手方向をY軸方向とし、Z軸方向およびY軸方向の双方に直交する方向をX軸方向とする。
また、ミシン1を水平面上に設置した場合に、Z軸方向における+側を上、−側を下とし、X軸方向における+側を左、−側を右、Y軸方向における+側を前、−側を後として以下に説明する。
前記ミシン1は、アーム部4の先端部に設けられ、ミシンモータ5(図17)の駆動力により上下方向に往復動する縫い針Nと、アーム部4の上部に設けられ、縫い針Nに上糸Tを供給するための図示しない上糸供給源と、この上糸供給源と縫い針Nとの間で上糸Tを所定の荷重で挟持してその送り方向の移動に抵抗力を発生させる糸調子装置6と、この糸調子装置6と縫い針Nとの間で所定のタイミングで天秤7により上糸Tの引き上げを行う天秤装置と、ベッド部2の上面に設けられ、縫い針Nの先端部を挿通させる針穴8a(図7)が設けられた針板8と、ベッド部2の内部であって針板8の下方に設けられ、下降した縫い針Nから上糸ループTL(図5)をすくい取るとともにこの上糸ループTLに図示しない下糸を挿通させる垂直半回転釜を備えた釜機構9と、針板8と釜機構9の間において縫い針Nの1針目の上昇時に上糸Tの糸端部TAの挟持を行う上糸つかみ装置10と、ベッド部2の内部に設けられ、縫製後に上糸Tおよび下糸を切断する図示しない糸切り装置と、後述する各部の動作の制御を司る制御手段11(図17)とを有している。
前記縫い針Nは、図1の下方に示す先端より少し上方に糸通し穴Na(目穴:図7)が形成されており、この糸通し穴Naに上糸Tが挿通されるようになっている。また、縫い針Nの図1の上方に示す基端部は、図示しない針留めを介して針棒12の下端部に着脱自在に取り付けられている。この針棒12は、アーム部4の図1の左側に示す自由端側に配置されており、針棒12の下端部は、アーム部4の自由端側の下面から、ベッド部2の針落ち位置、詳しくは、針板8の針穴8aに向かって突出するように配設されている。また、針棒12は、図示しない針棒駆動機構に接続されており、この針棒駆動機構は、下端部に縫い針Nが取り付けられた針棒12を、ミシンモータ5の駆動力によって回転駆動される図示しないミシン主軸の回転に連動して、所定の周期で、かつ、所定のストロークをもって上下方向に往復動することができるよう形成されている。
前記ミシンモータ5には、その回転位相角度を検出するためのエンコーダ13(図17)が併設されており、縫い針Nが上死点に位置したときを0°として現在のミシンモータ5の出力軸が0〜360°のいずれの角度位置にあるかを制御手段11に出力することができるようになっている。
前記天秤7は、上糸Tが挿通される図示しないガイド穴が設けられ、上糸Tが挿通された状態で上下動を行うことにより、その上昇時に縫い針Nの糸通し穴Naに挿通された上糸Tの引き上げを行うようになっている。また、天秤装置は、天秤7を縫い針Nと同じ周期で上下動させるが、天秤7が上死点に位置するタイミングは、縫い針Nが上死点に位置する時点よりも少し遅れるように設定されている。
図8に示すように、釜機構9は、揺動運動(正回転方向への半回転運動および逆回転方向への半回転運動を交互に繰り返す往復半回転運動)を行い、周方向に沿って突出した剣先15により上糸ループTLを捕捉する中釜16と、中釜16を回転自在に支持する大釜17と、大釜17の上部に設けられた上糸ガイド板18と、連結胴部3側から大釜17に向かってベッド部2の長手方向に平行に延出されて図示しないドライバーを介して中釜16に揺動駆動力を付与する釜軸19(図1に一部のみ図示)とを有している。
前記中釜16は、揺動運動を繰り返し行えるようにその外周に沿ってレール状の突出構造部20が形成され、その両側に大釜17の支持溝17aと摺接するレース面21、22を備えている。また、剣先15は、レール状の突出構造部20の端部に形成されており、中釜16の一方の半回転動作により、上糸ガイド板18のガイド穴18aから進入した縫い針Nの糸通し穴Naのすぐ脇を通過することで上糸ループTLをすくい取ることができるようになっている。このため、剣先15は、その先端部が、中釜16の回転軸線RLに沿った一方の方向Lに偏った形状に形成されるとともに、剣先15および突出構造部20は、縫い針Nの上下動経路NLに対して回転軸線RLに沿った他方の方向R側に配置されている。
また、釜軸19は、中釜16に対してR側に位置しており(以下、方向R側を釜軸側とする)、直接、中釜16に連結されてはいないが、中釜16に併設されてともに揺動運動を行うドライバを介して中釜16に揺動運動を行うための駆動力を伝達するようになっている。
前記釜機構9の釜軸19はY軸方向に平行に配設されており、中釜16に対してY軸方向−側に位置するとともに、この方向から中釜16を揺動運動させる駆動力の付与を行うことができるようになっている。また、釜軸19は、ミシンモータ5から分岐された駆動力が揺動駆動力に変換されて伝達されるようになっており、縫い針Nの上下方向への往復運動と中釜16の揺動運動とについて所定の位相差で同期が図られている。
前記上糸ガイド板18は、上糸Tの中釜16のレース面21、22に対する接触や、大釜17とレース面22の摺動面(接触面)への侵入を防止するための板状の部材で、図8の矢印Uにて示す上方から見ると、図5に示すように、Y軸方向−側の端部がX軸方向両側に向かって拡がり、Y軸方向+側の端部がX軸方向−側に向かって拡がった形状のガイド穴18aが設けられており、このガイド穴18aのY軸方向のほぼ中央部のX軸方向−の部分には、中釜16の剣先15によってすくい取られた上糸ループTLを広げるための糸分け部18bが設けられている。
図6および図7に示すように、図7の矢印Eにて示す方向に回転する剣先15によってすくい取られた上糸ループTLは、この糸分け部18bによって剣先15を境に縫い針N側の上糸TFと生地側の上糸TBとに前後に大 きく分離され、中釜16の両レース面21、22に対する接触や巻き込みが防止されるようになっている。
(上糸つかみ装置の構成)
前記上糸つかみ装置10は、縫い始めの縫い目Sを確実に形成、すなわち縫い始めの上糸Tの糸端部TAが生地Cから抜脱することを防止するために、縫い始めの1針目の縫い針Nに挿通されている上糸Tの糸端部TAを針板8の下方で、かつ、縫い針Nの上下動経路NLから離間した位置で捕捉し挟持するとともに、その後予め設定された針数を針落ちした後、挟持した上糸Tの糸端部TAを解放するものである。
本実施形態の上糸つかみ装置10は、上糸Tの糸端部TAを捕捉し挟持するための相対的に接離可能にされた第1挟持部24および第2挟持部25を具備する上糸挟持手段26(以下、単に、挟持手段と記す。)と、この挟持手段26を駆動するための駆動手段27とを有している。この駆動手段27は、さらに、移動手段28と、関連動作手段29とを備えている。
前記移動手段28は、縫い針Nの上下動経路NL上に位置する初期位置(図8〜図11)と、この初期位置から縫い針Nの上下動経路NL(Z軸方向に平行であって、上死点における縫い針Nの先端位置から下死点における縫い針Nの先端位置を結ぶ経路)に対して後方(連結胴部3側)に離間した挟持位置(図12、図13)と、この挟持位置よりさらに後方(連結胴部3側)に離間した解放位置(図14、図15)とに移動させることを可能とするとともに、縫い始めに初期位置から挟持位置に移動させ、予め設定された針数の針落ちの間停止した後に、挟持位置から解放位置に移動させるようになっている。
前記関連動作手段29は、挟持手段26が初期位置に位置するときに、第2挟持部25を縫い針Nの上下動経路NLより連結胴部3側の位置に配置するとともに第1挟持部24を縫い針Nの上下動経路NLを挟んで挟持部31と対向する位置に配置し、挟持手段26が初期位置から挟持位置に移動したときに、第1挟持部24と第2挟持部25を接近する方向に移動させて上糸Tの糸端部TAの挟持を行わせ、挟持手段26を解放位置に移動させたときに、第2挟持部25を第1挟持部24から離間させて挟持した上糸Tの糸端部TAを解放させるように、第1挟持部24および第2挟持部25を移動手段28の移動に機械的に連動させるようになっている。
すなわち、本実施形態の駆動手段27は、挟持手段26が初期位置と挟持位置と解放位置との3位置を選択的に取り得るように動作させることができるように構成されている。
ここで、本実施形態の上糸つかみ装置10について、以下に詳しく説明する。
(上糸つかみ装置の上糸挟持手段)
図2は上糸つかみ装置の主要な全体構成を示す斜視図、図3は図2の一部分解斜視図である。
図2および図3に示すように、本実施形態の挟持手段26は、第1挟持部24を具備する第1挟持部材31と、第2挟持部25を具備する第2挟持部材32とを有している。これらの各部材31、32は、いずれもその全体形状が長尺板状であり、これらは第2挟持部材32を上として重ね合わされ、いずれもその長手方向をY軸方向に平行に向けられた状態でY軸方向(前後方向)に沿って双方が滑動可能に関連動作手段29に支持されている。
以下、挟持手段26の各部の説明において方向を示す言葉が使用される場合には、特にことわりがない限り、挟持手段26が関連動作手段29に支持された状態における方向を示しているものとする。
図4に拡大して示すように、第1挟持部材31は、Y軸方向+側に位置する先端部に糸捕捉部33が設けられている。この糸捕捉部33は、先端において前後方向に沿って長い平面矩形状の切欠き34と、この切欠き34の先端側に位置する開口を開閉可能に配設された開閉体としての開閉板35とを備えている。そして、糸捕捉部33は、切欠き34の開口を開閉板35が閉じた閉状態において、針板8の針穴8aを貫通した縫い針Nの糸通し穴Naが通過可能な全体として枠状をなすように形成されている。また、開閉板35のうちの切欠き34の開口を閉塞する部位により第1挟持部24が形成されている。
前記第1挟持部材31のX軸方向−側に位置する側面の先端側には、平面ほぼ三角状をなす開閉板用取付板部36がX軸方向−側に向かって突出するように延出形成されており、この開閉板用取付板部36の上面には開閉板用支持部材37の下端が取り付けられている。そして、開閉板用支持部材37には、開閉板35の基端部が回転自在に支持されている。また、開閉板用支持部材37には、付勢手段としてのねじりコイルばね38が取り付けられている。このねじりコイルばね38は、開閉板35の上面側に配置されており、一端が開閉板35に形成された係止溝39に掛けられ、他端が開閉板用取付板部36の上面に上方に向かって突設されたピン状のばね掛け体40の外周に掛けられている。そして、開閉板35は、ねじりコイルばね38の付勢力(張力)により、常時は開閉板35の先端側に形成された四角棒状の閉塞部35aの図4におけるY軸方向−側に位置する側面を切欠き34の開口端に当接させている。これにより、糸捕捉部33を閉じた閉状態に保持することができるようになっている。さらに、閉塞部35aの図4におけるY軸方向−側に位置する側面のうちの切欠き34の内部空間と対向する部分(両開口端に当接されている部分に挟まれた部分)が、切欠き34の開口を閉塞する部位とされており、この部位により上糸Tを挟持する際に用いられる第1挟持部24が形成されている。すなわち、第1挟持部24は、開閉板35の閉塞部35aの一部を形成している。さらにまた、閉塞部35aの先端は、平面半円状、平面円弧状などに形成された丸め部41とされている。
なお、閉塞部35aの切欠き34と対向する側に位置する上端縁および下端縁のそれぞれに、アール状の面取りを設けることが、後述するように、閉塞部35a、すなわち第1挟持部24からループWが接触しつつ抜ける際に、糸切れが生じるのを防止することができるという意味で好ましい。
したがって、開閉板35は、常時はねじりコイルばね38の付勢力によって糸捕捉部33を閉状態に保持するように形成されている。
前記開閉板35が切欠き34の開口を塞ぐように保持させているねじりコイルばね38の付勢力は、後述する第2挟持部25が第1挟持部24に当接する力(荷重)より大きく形成されている。
勿論、開閉板35の一部を構成する第1挟持部24に対して糸捕捉部33を内側から外側に向かう方向にねじりコイルばね38の付勢力より大きな荷重が加わった場合、開閉板35は、開閉板用支持部材37を中心として糸捕捉部33を開状態とするように可動可能に形成されている。
すなわち、後述するように、挟持した上糸Tの糸端部TAがループWとなって挟持手段26から外れなくなり、針数の増加により生地Cが送られて上糸Tに高い張力が加わったときには、その上糸Tの張力が第1挟持部24に加わって第1挟持部24、ひいては開閉板35が切欠き34の開口を開くように動作可能になっている。
よって、第1挟持部24は、上糸Tを挟持した後に、上糸によって開閉板35が切欠き34の開口を開いた糸捕捉部33の閉状態とするように可動に形成されている。
前記ねじりコイルばね38の他端が掛けられるばね掛け体40は、複数、本実施形態においては2つ設けられており、ねじりコイルばね38の付勢力を調節することができるようになっている。
前記ばね掛け体40を複数、本実施形態においては2つ設ける構成により、本実施形態の付勢手段としてのねじりコイルばね38の付勢力を調節するための付勢力調節手段42が構成されている。
本実施形態の切欠き34は、第2挟持部材32の第2挟持部25の前後方向の移動を案内する案内ガイドとしても機能するように形成されている。
なお、切欠き34の形状としては、設計コンセプトなどの必要に応じて、平面矩形状以外の形状、例えば底部をほぼ円弧状あるいは半円状としたほぼU字状としてもよく、特に、本実施形態の平面矩形状に限定されるものではない。
また、閉塞部35aとしては、四角棒状に限らず、断面円形の丸棒状、断面多角形の角棒状であってもよい。但し、先端を丸めることが糸切れを防止することができるという意味で好ましい。
図3および図4に示すように、第1挟持部材31のY軸方向−側に位置する後端には、前後方向に沿って長い平面矩形状の貫通穴43が形成されている。この貫通穴43は、後述する関連動作手段29の引っ張りばね44が配置され、その伸縮を行う動作領域を形成している。この貫通穴43の前端部に引っ張りばね44の一端部が連結されている。また、第1挟持部材31のY軸方向中間部やや後寄りの位置には、X軸方向−側に向かって延設されたブラケット部45が設けられ、その先端部には下方に向かって延出された丸棒状の係合ピン46がその先端を下方に向けて固定装備されている。そして、第1挟持部材31は、係合ピン46を介して関連動作手段29による前後方向の移動力が入力されるように形成されている。
図3に示すように、第2挟持部材32は、前側部48と後側部49とに二分割されており、これらが連結体50により連結されることで一体の略長尺板形状に形成されている。そして、前側部48の前端部には第2挟持部25が設けられており、この第2挟持部25は、閉状態の糸捕捉部33の一部を構成している第1挟持部24に対して接離可能な挟持面25aと、第1挟持部24に対する当接時に第1挟持部24の下方を通過して第1挟持部材31の先端面より前方に突出する屈曲部25bとを有している。
したがって、第1挟持部材31と第2挟持部材32との相対的な接近動作により、第1挟持部材31の糸捕捉部33に上方から挿通された上糸Tを、第1挟持部24と第2挟持部25の挟持面25aとにより挟持することができるように形成されている。また、挟持された上糸Tは、挟持面25aの下端部から前方に向かって延設された屈曲部25bにより、前方に向かって折り曲げられ、上糸Tを前方から下方にしなう状態とすることができるようになっている。その結果、上糸Tの糸端部TAは、屈曲部25bにより、より前方に位置した状態で垂れ下がることとなるので、その下方に位置する釜機構9の中釜16よりも前方に位置がずらされて、中釜16への接触や巻き込みを防止することができるように形成されている。
なお、第1挟持部24および第2挟持部25としては、第1挟持部24と第2挟持部25の挟持面25aとが上糸Tを介して当接することのできる形状、例えば平面円弧状などの湾曲に形成してもよい。
前記後側部49は、前後方向に沿って貫通穴51が形成され、第2挟持部材32と第1挟持部材31とが重ね合わされた状態で関連動作手段29に支持された場合に、貫通穴51は前述した第1挟持部材31の貫通穴43と重合し、これらの内側に関連動作手段29の引っ張りばね44が配置され、その伸縮を行う動作領域を形成するようになっている。この貫通穴51の後端部に引っ張りばね44の他端部が連結されている。
したがって、第2挟持部材32は第1挟持部材31と引っ張りばね44を介して連結された状態となり、第1挟持部材31の第1挟持部24と第2挟持部材32の第2挟持部25とは、常時互いに接近し当接する方向に付勢力が付与されるようになっている。
前記第2挟持部材32の後側部49のY軸方向の中間部にはX軸方向+側に向かって延設されたブラケット部52が設けられ、その先端部には下方に向かって延出された丸棒状の係合ピン53ががその先端を下方に向けて固定装備されている。そして、第2挟持部材32には、係合ピン53を介して関連動作手段29による前後方向の移動力が入力されるようになっている。
(上糸保持装置の移動手段)
前記移動手段28は、挟持手段26の第1挟持部24および第2挟持部25に対して、縫製開始前に予め縫い針Nの上下動経路NLの下方である初期位置(図8)に移動させ、縫製開始後であって1針目の縫い針Nが生地から引き抜かれたときに縫い針Nの上下動経路NLに対して初期位置よりも後方となる挟持位置(図12)に移動させ、予め設定された回数の針落ちが行われると(例えば2〜3針)縫い針Nの上下動経路NLに対して挟持位置よりも後方となる解放位置(図14)に移動させるという3つの位置への移動を行うものである。
そのため、移動手段28は、関連動作手段29に支持された挟持手段26をY軸方向に沿って往復駆動するY軸移動機構55と、挟持手段26が初期位置、挟持位置および解放位置のいずれの位置にあるか否かを検出する移動位置検出手段56と、移動位置検出手段56の検出に基づいてY軸移動機構55の動作制御を行う移動位置決め制御手段とを備えている。
前記Y軸移動機構55は、図3に示すように、駆動手段27の駆動源としての回転駆動力を出力する糸つかみ用モータ58と、糸つかみ用モータ58の出力軸に自らの揺動中心位置が連結された主動リンク体59と、関連動作手段29の相対位置調節リンク体60にY軸方向の移動力を付与する従動リンク体61と、主動リンク体59から従動リンク体61へ駆動力を伝達する伝達リンク体62とを備えている。
前記糸つかみ用モータ58としては、例えばステッピングモータが用いられており、制御手段11の動作制御により正逆方向について任意の回転角度量で駆動されるようになっている。
前記主動リンク体59は、その一端部が糸つかみ用モータ58の出力軸に固定連結され、その他端部が伝達リンク体62の一端部に回動可能に連結されている。
前記従動リンク体61は、その一端部が関連動作手段29の後述するガイド板63に軸支され、その他端部が伝達リンク体62の他端部に回動可能に連結されている。また、略くの字形の従動リンク体61には関連動作手段29の相対位置調節リンク体60にY軸方向に沿った移動力を付与するための係合突起64が設けられている。
前記伝達リンク体62は、ほぼY軸方向に沿うように配設され、糸つかみ用モータ58の駆動による主動リンク体59の揺動とともに従動リンク体61を揺動させるように形成されている。
これらの構成により、糸つかみ用モータ58が駆動すると主動リンク体59の揺動とともに従動リンク体61が揺動し、係合突起64を介して関連動作手段29の相対位置調節リンク体60がY軸方向に沿って移動を行うように形成されている。
前記移動位置検出手段56について図10、図13、図15により説明する。なお、図2および図3では、移動位置検出手段56は図示を省略してある。また、図10は挟持手段26が初期位置に位置したときの下面図であり、図13は挟持手段26が挟持位置に位置したときの下面図であり、図15は挟持手段26が解放位置に位置したときの下面図である。
前記移動位置検出手段56は、発光素子と受光素子とを有し、これらの間の遮蔽物の存在の有無を検出する第1および第2の状態センサ66、67と、前述したY軸移動機構55の伝達リンク体62に設けられ、第1および第2の遮蔽領域68、69を有する遮蔽板70とを備えている。
前記第1および第2の状態センサ66、67は、遮蔽板70の移動線上に沿って並んで配置されているとともに、第1の状態センサ47が後側に配置される。これにより、各状態センサ66、67はほぼY軸方向に沿って並んだ状態となる。各状態センサ66、67の受光素子は、遮蔽物有りの状態をON状態とし、遮蔽物なしの状態をOFF状態とし、各状態が識別可能な信号を制御手段11に出力するようになっている。
一方、遮蔽板70は、第1および第2の状態センサ66、67の双方に対して発光素子−受光素子間を通過するように伝達リンク体62に固定支持されている。そして、第1の遮蔽領域68は、図10に示すように挟持手段26が初期位置にあるときには第1の状態センサ66と第2の状態センサ67の間に位置し、挟持位置にあるときには図13に示すように第1の状態センサ66を遮蔽する位置にあり、解放位置にあるときには図15に示すように依然として第1の状態センサ66を遮蔽する位置にあるようにそのY軸方向位置およびY軸方向長さが設定されている。
前記第2の遮蔽領域69は、図10、図13に示すように、挟持手段26が初期位置または挟持位置にあるときにはいずれの場合も第2の状態センサ67よりもよりも前方に位置し、解放位置にあるときに初めて図15に示すように第2の状態センサ67を遮蔽する位置となるようにそのY軸方向位置が設定されている。
したがって、制御手段11では、挟持手段26が初期位置にあることを第1および第2の状態センサ66、67の双方がOFF状態であることから判別でき、挟持手段26が挟持位置にあることを第1の状態センサがON状態かつ第2の状態センサ67がOFF状態であることから判別でき、挟持手段26が解放位置にあることを第1および第2の状態センサ66、67の双方がON状態であることから判別できるようになっている。
前記移動位置決め制御手段について説明する。この移動位置決め制御手段は、実際には、制御手段11の制御により実現する。このように、移動位置決め制御手段は、ミシン全体の動作制御を行う制御手段11の機能の一部を借りて実現してもよいし、独立した制御手段により実現させてもよい。
前記移動位置決め制御手段としての制御手段11は、予め、挟持手段26を初期位置から挟持位置へ移動させるための糸つかみ用モータ58の回転角度量および挟持位置から解放位置へ移動させる回転角度量を記憶しており、挟持手段26を第2および解放位置に位置決めする際には記憶角度位置を参照して糸つかみ用モータ58の動作制御を行う。
なお、初期位置については、制御手段11が、ミシン1の主電源投入時に移動位置検出手段56を利用して初期位置制御部としての制御(イニシャライズ動作処理)を行い、糸つかみ用モータ58を駆動して第1および第2の状態センサ66、67の双方がOFF状態となる位置を検索し、その位置で待機するように構成されている。
また、縫製開始後の1針目においてミシンモータ5のエンコーダ13により出力軸角度が例えば245°であることを検出すると、縫い針Nが生地Cから上方に抜けたことを認識して挟持手段26を挟持位置に位置決めする上糸保持制御部としての制御を行う。
なお、本実施形態のミシン1では、ミシンモータ5の出力軸について縫い針Nの上死点位置を0°とした場合に、245°まで回転すると縫い針Nが下死点を通過して針板8の上方に抜けるように設定されている。さらに、エンコーダ13の出力により、縫製開始後の所定数の針落ちを検出すると挟持手段26を解放位置に位置決めする上糸解放制御部としての制御を行うようになっている。ここで、エンコーダ13の出力による針数の認識は、例えば、エンコーダ13による180°を示す信号出力回数を計数することにより行われる。
(上糸保持装置の関連動作手段)
前記関連動作手段29について図2から図16によりて説明する。
前記関連動作手段29は、第2挟持部材32と第1挟持部材31とをそれぞれY軸方向に沿って往復可能に支持するガイド手段としてのガイド板63と、第2挟持部25と第1挟持部24とが互いに接近する方向に第2挟持部材32と第1挟持部材31との間に常時張力を付与する張力付勢手段としての引っ張りばね44と、自らの揺動による姿勢変化に応じて第2挟持部25と第1挟持部24とを接離させることを可能として第2挟持部材32と第1挟持部材31のそれぞれに係合するとともに、移動手段28による挟持手段26の各移動位置への移動力が入力される相対位置調節リンク体60と、挟持手段26が初期位置にあるときに、相対位置調節リンク体60に当接して第2挟持部25と第1挟持部24とを離間させる方向に揺動せしめる第1の当接部材72と、挟持手段26が解放位置にあるときに、相対位置調節リンク体60に当接して第2挟持部25と第1挟持部24とを離間させる方向に揺動せしめる第2の当接部材73とを有している。
前記ガイド板63は、ベッド部2の上部であって針板8の後方に固定装備されている。
以下、関連動作手段29の各部の説明において方向を示す言葉が使用される場合には、特にことわりがない限り、ガイド板63がベッド部2に固定装備された状態における方向を示しているものとする。
前記ガイド板63の上面にはそのX軸方向における中間位置にY軸方向に沿ったガイド溝75が設けられている。このガイド溝75には、挟持手段26の第1挟持部材31および第2挟持部材32が長手方向を揃えて重ね合わされた状態で格納され、さらにその上からは押さえ板76が第1挟持部材31および第2挟持部材32がガイド溝75から外れ落ちないように蓋をしている。これにより、第1挟持部材31および第2挟持部材32はガイド溝75に案内されて各々Y軸方向に沿って滑動することが可能となる。
但し、前述したように、第1挟持部材31と第2挟持部材32とは引っ張りばね44を介して連結されているので、外力が加わらない限り、各部材31、32は第1挟持部24と第2挟持部25とを当接させた状態を維持することとなる。
前記ガイド板63のガイド溝75を挟んで両側には、それぞれ貫通穴77、78が設けられている。一方の貫通穴77は、第1挟持部材31に設けられた係合ピン46が上方から嵌挿され、他方の貫通穴78には第2挟持部材32の係合ピン53が嵌挿される。また、各貫通穴77、78は、いずれも、挟持手段26の初期位置から解放位置までの移動およびこれにともなう第1挟持部材31および第2挟持部材32の相対的な移動において各係合ピン46、53に各穴77、78の前端部および後端部がいずれも接触しないようにそのY軸方向長さが設定されている。また、各貫通穴77、78に挿通された各係合ピン46、53はその先端部がガイド板63の下面側から幾分突出し、個別に相対位置調節リンク体60に係合されている。
前記相対位置調節リンク体60は、その長手方向に沿って並んだ配置で、第1挟持部材31との回動係合部79と、第2挟持部材32との回動係合部80と、これらの間に位置する移動手段28との回動係合部81とが設けられている。
すなわち、第1挟持部材31との回動係合部79は、相対位置調節リンク体60の長手方向に沿った長穴状の貫通穴であり、係合ピン46が挿通されている。第2挟持部材32との回動係合部80は、円形貫通穴であり、係合ピン53が挿通されている。移動手段28との回動係合部81は、相対位置調節リンク体60の長手方向に沿った長穴状の貫通穴であり、係合突起64が挿通されている。
図16は相対位置調節リンク体60の揺動動作と第1挟持部材31および第2挟持部材32の応対位置変化を関係を示す下方から見た説明図である。
図16に示すように、第1挟持部材31および第2挟持部材32は、前述したように、外力を受けない限り引っ張りばね44により第1挟持部24と第2挟持部25との当接状態が維持されている。
この時、引っ張りばね44による第1挟持部24と第2挟持部25との当接力に対し、ねじりコイルばね38による開閉板35と第1挟持部材31の先端(切欠き34の開口端)とを当接させている当接力が十分に大きな荷重に設定されている。この状態が上糸Tの挟持状態となる。そして、各係合ピン46、53は、第1挟持部24と第2挟持部25とが当接状態にあるときにY軸方向についてほぼ同じ位置に並ぶように位置設定が図られている。
したがって、これら各係合ピン46、53と各回動係合部79、80を介して連結された相対位置調節リンク体60も、引っ張りばね44の付勢力により通常状態にあってはほぼX軸方向に沿った状態が維持されることになる(図16の実線で示した状態)。
また、この状態において、例えば、移動手段28の係合突起64からのY軸方向移動力により相対位置調節リンク体60に対して反時計方向の回転力が加わると、当該相対位置調節リンク体60は揺動し、その姿勢に変化を生じる。この時、各回動係合部79、80にはY軸方向に変位を生じることにより、第1挟持部材31と第2挟持部材32との間に第1挟持部24と第2挟持部25とが互いに離間する方向の外力が付与されることになる。
したがって、引っ張りばね44の張力に抗して第1挟持部24および第2挟持部25が離間し、上糸Tの保持状態から解放状態に切り替えられる。
前記第1の当接部材72について図10、図16により説明する。
前記第1の当接部材72は、挟持手段26が初期位置にあるときに第1挟持部24と第2挟持部25とを離間状態とし、初期位置から挟持位置に移動する際に第1挟持部24と第2挟持部25とが互いに接近し合う方向に移動させ、挟持位置に到達するまでに当接するように相対位置調節リンク体60の揺動を操作するように形成されている。
このような動作を実現するために、第1の当接部材72は、初期位置に位置する相対位置調節リンク体60に対して、移動手段28の回動係合部81と第2挟持部材32の回動係合部80との間において前方から当接するように配置されている。この配置とすることにより、初期位置に挟持手段26を位置決めするために移動手段28により前方への移動力が相対位置調節リンク体60に付与された場合に、相対位置調節リンク体60は引っ張りばね44の張力に抗して第1の当接部材72との接点を支点として揺動する。その際、当接時よりも第2挟持部材32の回動係合部80は後方に移動し、第1挟持部材31の回動係合部79は前方に移動することとなる。
したがって、第1挟持部材31を介して第1挟持部24は前方に、第2挟持部材32を介して第2挟持部25は後方に移動するので、これらは互いに離間した状態となる(図16の二点鎖線)。この状態において第1挟持部24と第2挟持部25との間に上糸Tの挿通が行われる。
そして、この初期位置から挟持位置に挟持手段26が移動すると、第1の当接部材72による相対位置調節リンク体60への当接状態が徐々に解除されるので、相対位置調節リンク体60は引っ張りばね44の張力により時計方向に回動することとなる。
したがって、第1の当接部材72との当接状態が完全に解除されるまで相対位置調節リンク体60は時計方向に回動し、第2挟持部25は第2挟持部材32を介して前方に移動するとともに、第1挟持部24は第1挟持部材31を介して後方に移動する。このため、第1挟持部24と第2挟持部25とによる上糸Tの挟持は、初期位置における第1挟持部24より後方であって、初期位置における第2挟持部25よりも前方となる位置で行われることとなる。
前記第2の当接部材73について図13、図15により説明する。
前記第2の当接部材73は、挟持手段26が挟持位置から解放位置に移動する際に挟持状態にある第1挟持部24と第2挟持部25とを再び離間する方向に移動させるように相対位置調節リンク体60の揺動を操作するように形成されている。
このような動作を実現するために、第2の当接部材73は、挟持手段26が挟持位置から解放位置に移動する際に相対位置調節リンク体60が通過する領域に対してX軸方向−側から当該相対位置調節リンク体60に摺接するように配置されている。
このため、ほぼX軸方向に沿った状態(図13)で解放位置に接近する相対位置調節リンク体60のX軸方向−側の端部に設けられた摺接部60aに対して第2の当接部材73は摺接する。この相対位置調節リンク体60の摺接部60aは、その前方側がX軸方向−側に徐々に延ばされた形状のため、摺接開始後さらに後方に相対位置調節リンク体60が移動することで、相対位置調節リンク体60は図15に示すように反時計方向に揺動し、この状態で挟持手段26は解放位置に到達する。この揺動により、第2挟持部材32の回動係合部80は第1挟持部材31の回動係合部79よりも大きく後方に移動する。その結果、第1挟持部24と第2挟持部25とは互いに離間した状態となり(図15)、第1挟持部24と第2挟持部25との間に保持された上糸Tの糸端部TAの解放が行われることになる。
(各移動位置における保持部および挟持部の配置)
前記挟持手段26が初期位置に移動して位置決めされる場合、第1挟持部24と第2挟持部25とは互いに離間し合う方向に移動することは、前述の通りである。そして、初期位置に到達すると、図8に示すように、第1挟持部24は縫い針Nの上下動経路NLより前方に位置することになる。
また、第2挟持部25はその屈曲部25bの先端部が、直線Mよりも少なくとも後ろ側に位置することになる。この直線Mは、針穴8aの下端部における後方側縁部(下方から見た円形の針穴8aのY軸方向に沿った直径のY軸方向−側の端部となる位置)から縫い針Nの上下動経路NLの後方側に近接して配置された中釜16の後ろ側となる一方のレース面128における上端部とを連結することで決定される直線である。
前記第2挟持部25の先端部の配置をこのように設定することで縫製における1針目による上糸ループTLが中釜16の剣先15に捕捉され上糸ガイド板18の糸分け部18bによって広げられる(拡張される)場合に、第2挟持部25の先端部が上糸Tに接触して糸分け部18bが上糸ループTLを広げることが妨げられず、したがって、上糸Tがレース面22に接触することを効果的に抑制することが可能である。
なお、第1挟持部24の位置や第2挟持部25の先端位置は、第1挟持部材31および第2挟持部材32のY軸方向長さや相対位置調節リンク体60に対する第1の当接部材72の当接位置により決定される。例えば、第1の当接部材72の当接位置が移動手段28の回動係合部81寄りであれば第1挟持部材31の位置はより前方となり、第2挟持部25の先端位置はより後方となる。また、当接位置が第2挟持部材32の回動係合部80寄りであれば第1挟持部24の位置はより後方となり、第2挟持部25の先端位置はより前方となる。
また、初期位置としては、糸捕捉部33が上下動経路NL上に位置しかつ第1挟持部24と第2挟持部25とが上下動経路NLを介して両側に対向する位置であればよい。
前記挟持手段26の挟持位置は、図13に示すように、縫い針Nの上下動経路NLの近傍とされ、より近いことが望ましい。これは、縫い針Nに近い位置で上糸Tの糸端部TAの挟持を行うことにより、挟持手段26から垂れ下がる上糸Tの糸端部TAの長さを短くすることができるからである。
なお、図13は、上糸Tの糸端部TAの挟持が行われる挟持位置の一例を示す図であり、挟持位置が縫い針Nの上下動経路NLのやや側方に位置しているが、本実施形態においては、第1挟持部24および第2挟持部25がともに移動する構成とされており、縫い針Nが針板8より下方の上下動経路NL上にあるときは、第1挟持部24および第2挟持部25を縫い針Nの上下動と干渉しない位置に位置させることができるため、挟持位置をさらに縫い針Nの上下動経路NLに近づけて、例えば、針の上下動経路NL上とすることも可能である。
また、挟持位置から縫い針Nの上下動経路NLまでの距離もまた、相対位置調節リンク体60に対する第1の当接部材72の当接位置により決定される。例えば、第1の当接部材72の当接位置が移動手段28の回動係合部81寄りであれば挟持位置は上下動経路NLにより近くなり、また、当接位置が第2挟持部材32の回動係合部80寄りであれば挟持位置は上下動経路NLに遠くなる。
なお、挟持位置としては、第1挟持部24と第2挟持部25とが上下動経路NLの側方に離間、すなわち、第1挟持部24および第2挟持部25が縫い針Nの上下動経路NLから外れ、縫い針Nと干渉しない位置であればよい。
前記挟持手段26が解放位置に移動して位置決めされる場合、第1挟持部24と第2挟持部25とが上糸Tを解放可能な距離だけ離間すればよい。
なお、解放位置については、第1挟持部24および第2挟持部25が縫い針Nの上下動経路NLから外れ、縫い針Nと干渉しない位置であればよいが、縫製において必要となる他の機構に干渉しないように、挟持位置よりも後方に設定される。
また、初期位置から挟持位置へ移動する途中で上糸Tの糸端部TAの挟持を行うようにしてもよい。
さらに、解放位置を個別に設けずに、挟持位置と同一の位置、すなわち、挟持位置で上糸Tの糸端部TAの挟持と解放との両者を行うように構成してもよい。
(制御手段)
図15に示すように、制御手段11は、詳細には図示しないが、各種演算処理を行うCPU(MPUであってもよい。)と、制御、判断などの各種処理用の各種プログラムが記憶、格納されたROMと、各種処理におけるワークメモリとして使用されるRAMとを有している。そして、制御手段11には、システムバスおよび駆動回路などを介してミシンモータ5、エンコーダ13、糸つかみ用モータ58、糸切り装置の糸切りモータ83、移動位置検出手段56の第1の状態センサ66、第2の状態センサ67、縫製の開始と停止を入力するためのスタート/ストップスイッチ84などが接続されている。
前記制御手段11は、ミシンモータ5の出力軸に設けられているエンコーダ13から入力されるパルス信号に基づき、ミシンモータ5の回転角度を認識することができる。
また、制御手段11は、第1の状態センサ66、第2の状態センサ67から入力される検出信号に基づき、挟持手段26の各移動位置を確認することができる。
また、制御手段11は、スタート/ストップスイッチ81から縫製開始信号が入力されると、確認、認識したミシンモータ5の回転角度や移動位置検出手段46の動作位置検出に応じて、駆動手段27の駆動源としての糸つかみ用モータ58の駆動を制御することができる。
なお、駆動手段27としては、移動手段28および関連動作手段29のかわりに、第1のアクチュエータの駆動力により挟持手段26の全体を初期位置、挟持位置および解放位置の3位置(初期位置および挟持位置の2位置の場合もある。)を選択的に取り得るように移動させる構成と、第2のアクチュエータの駆動力により第1挟持部24と第2挟持部25とを相対的に接離動作させる構成とを併せて用いてもよい。
つぎに、前述した構成からなる本実施形態の作用について図8から図25により説明する。
図16は本発明に係る上糸つかみ装置を備えたミシンの実施形態における動作を説明するフローチャートである。
(ミシンの動作説明)
図16に示すように、制御手段11は、スタート/ストップスイッチ84からの縫製開始信号に基づき、移動位置検出手段56により初期位置の検出が行われる(ステップS1)。この検出は、第1および第2の状態センサ66、67がいずれもOFF状態である否かにより判断される。
前述したように、動作制御は、図示しない主電源の入力時に移動位置検出手段56により挟持手段26は初期位置に位置決めされている。したがって、挟持手段26は、縫い針Nの上下動経路NL上に位置し、第1挟持部24は縫い針Nの上下動経路NLの前方に位置し、第2挟持部25は直線Mより後方に位置している(図8から図11の状態)。また、予め初期位置に位置決めされているにもかかわらず、何らかの要因により第1または第2の状態センサ66、67のいずれかがON状態と検出されると、エラー処理(表示、警告など)を行い(ステップSa1)、ミシン1の各部の動作を中止して(ステップSa2)、処理を終了する。
一方、ステップS1において、第1または第2の状態センサ66、67がいずれもOFF状態が検出されると、ミシンモータ5の駆動を開始する(ステップS2)。これにより、縫い針Nは針板8の針穴8aを貫通し、閉状態とされた糸捕捉部33の内部でかつ第1挟持部24と第2挟持部25との間を上糸Tが通過する。さらに、その下方において、縫い針Nの脇の上糸ループTLが釜機構9の剣先15に捕捉される。そして、中釜16の回転と上糸ガイド板18とにより上糸ループTLは広げられるが、その際、第2挟持部25の先端部が充分に後方に位置するため、上糸ガイド板18による上糸ループTLの拡大を遮らない。したがって、後方に位置するレース面22への上糸Tの接触は防止される。
さらに、ミシンモータ5のエンコーダ13から、1針目の縫い針Nが生地Cから抜け出し、天秤7が上死点に達したか否かがエンコーダ信号の検出角度から判断され(ステップS3)、予め設定された角度に至るまでステップS3の処理が繰り返される。このエンコーダ13の出力が天秤7が上死点に達したことを示すと、制御手段11は、移動手段28の糸つかみ用モータ58に挟持位置へ挟持手段26を移動させるよう駆動を開始する動作制御を行う(ステップS4)。すなわち、予め設定されている初期位置から挟持位置までの移動量に応じた回転角度量の記憶を参照し、これに応じて糸つかみ用モータ58を駆動する。
これにより、挟持手段26は初期位置から挟持位置に向かって移動を開始する。これにより、関連動作手段29の相対位置調節リンク体60は引っ張りばね44の付勢力によりX軸方向に沿うように揺動を開始するので、第1挟持部24は後方に移動し、第2挟持部25は前方に移動する。
前記天秤7が上死点に達してから第1挟持部24と第2挟持部25により上糸Tの糸端部TAを挟持させるのは、天秤7の上死点では上糸Tに対する天秤7の引き上げが完了しているため針穴8aより下方にある、上糸Tは最も短い状態にあり、この時に第1挟持部24と第2挟持部25により上糸Tを挟持すると、挟持された部分から端部までの上糸Tの長さである「糸端長さ」を最も短くすることができるからである。
ついで、予め設定された回転角度量分の糸つかみ用モータ58の駆動が行われ停止されると、挟持手段26が挟持位置に到達するとともに、第1挟持部24は後方に移動し、第2挟持部25は前方に移動し、互いに接近するとともに第1挟持部24と第2挟持部25の挟持面25aが当接する(図12および図13の状態)。これにより、これらの間に挿通されていた上糸Tの糸端部TAが挟持される。なお、実際には、挟持手段26が挟持位置に到達する途中で第1挟持部24と第2挟持部25の挟持面25aが当接される。
ついで、予め設定された回転角度量分の糸つかみ用モータ58の駆動が行われ停止されると、制御手段11は、移動位置検出手段56の各状態センサ66、67の出力を確認する(ステップS5)。
前記挟持位置では、第1の状態センサ66がON状態、第2の状態センサ67がOFF状態となるのが正常状態であるが、いずれかのセンサ66、67についてこれ以外の状態が検出された場合にはエラー処理(表示、警告など)を行い(ステップSa1)、ミシン1の各部の動作を中止して(ステップSa2)、処理を終了する。
また、ステップS5において、各センサ47、48が適正な状態を示した場合には、上糸Tが挟持部材20に挟持されたまま、縫製が継続される。すなわち、ミシン1は、2針目以降の縫製を行う(ステップS6)。なお、挟持位置への移動は縫い針Nの針先が針板8の上方にある間に完了する。
ついで、制御手段11は、予め設定されている針数の針落ち(例えば、2回の針落ち)が行われたか否かの判断を行う(ステップS7)。この針落ちの回数は、例えば、エンコーダ13による180°を示す信号出力回数を計数することにより、針落ちの回数を認識することができる。
前記制御手段11が、所定数の針落ちが行われていないと判断すると(ステップS7:NO)、所定数の針落ちが行われるまでステップS7の処理を繰り返す。
一方、制御手段11が、所定数の針落ちが行われたと判断すると(ステップS7:YES)、ステップS8へ進行する。
前記制御手段11は、移動手段28の糸つかみ用モータ58に解放位置へ挟持手段26を移動させるよう駆動を開始する動作制御を行う(ステップS8)。すなわち、予め設定されている挟持位置から解放位置までの移動量に応じた回転角度量の記憶を参照し、これに応じて糸つかみ用モータ58を駆動する。
これにより、挟持手段26は挟持位置から解放位置に向かって移動を開始する。そして、挟持手段26が解放位置に接近する途中で、関連動作手段29の相対位置調節リンク体60の摺接部60aが第2の当接部材73に摺接する。そして、さらに挟持手段26の移動が継続されると、相対位置調節リンク体60は引っ張りばね44の付勢力に抗して揺動し、第2挟持部25が第1挟持部24より大きく後方に移動する。したがって、上糸Tの糸端部TAの挟持状態が解除され、上糸Tの糸端部TAは挟持手段26から解放されつつ、挟持手段26は解放位置に到達する(図14および図15の状態)。
前記挟持手段26が解放位置に到達すると、制御手段11は、移動位置検出手段56の各状態センサ66、67の出力を確認する(ステップS9)。解放位置では、第1の状態センサ66がON状態、第2の状態センサ67がON状態となるのが正常状態であるが、いずれかのセンサ47、48についてこれ以外の状態が検出された場合には、制御手段11は、挟持手段26が解放位置に到達していないと判断し、両センサ47、48がON状態となるまでステップS8の処理を繰り返す。
ついで、制御手段11は、縫製が終了したか否かの判断を行う(ステップS10)。制御手段11が、縫製は終了していないと判断すると(ステップS10:NO)、縫製が終了されるまでステップS10の処理を繰り返す。
一方、制御手段11が、縫製は終了したと判断すると(ステップS10:YES)、ステップS11へ進行する。
縫製が終了すると、制御手段11は、糸切り機構の糸切りモータ82に駆動信号を出力し、糸切りモータ82の駆動力により、糸切り機構による縫製に供した糸(上糸Tおよび下糸)の糸切りが行われる(ステップS11)。
そして、制御手段11は、移動手段28の糸つかみ用モータ58に駆動信号を出力し、糸つかみ用モータ58の駆動力により、挟持手段26は解放位置から初期位置に復帰する(ステップS12)。
そして、これらステップS1の処理からステップS12の処理(ステップSa1、ステップSa2の処理を含む。)を経ることにより、上糸つかみ装置10を備えるミシン1の縫製に係る1サイクルが終了する。
なお、挟持手段26が挟持位置で上糸Tの解放を行う構成とした場合には、前記ステップS7〜9が省略される。
上記の説明は、上糸Tの「糸端長さ」が短い場合においての各移動位置における挟持手段26の基本動作であり、縫い始めの縫製品質の向上に有用なものである。
ところで、前記挟持手段26が挟持した上糸Tの「糸端長さ」が一定以上に長い場合においては、挟持手段26が挟持した糸端部TAが2針目以降の上糸ループTLの引上げ経路上、例えば中釜16の剣先15の通過経路に掛かるように位置していると、上糸ループTLによって引上げられ(図19)、生地裏の縫い目Sに縫い込まれて糸捕捉部33を通るループWが形成され(図20)るが、このループWにより、第1挟持部24、ひいては開閉板35が糸捕捉部33を開状態とするように開閉板用支持部材37を中心として回転し、挟持手段26はループW、ひいては上糸Tを糸捕捉部33から外すことができる。
ここで、この一定以上の「糸端長さ」とは、前述したように、上糸Tの挟持箇所から生地Cの針落ち点DPまでの距離より長い場合のことである。
さらに詳しく説明すると、本実施形態の糸つかみ装置10において、挟持位置にて開閉板35(第1挟持部24)と第2挟持部25(挟持面25a)によって糸挟持が行われ、この挟持位置を維持し数針の縫製が行われ、挟持した糸端部TAが、2針目以降の上糸ループTLの引上げによって引上げられ生地裏の縫い目Sに縫い込まれて糸捕捉部33を通るループWが形成される。このループWの生地裏の縫い目Sへの縫込みが強いと、挟持手段26が解放位置へ移動して第1挟持部24と第2挟持部25との間に挟持した上糸Tを解放しても、ループWが糸捕捉部33、詳しくは、第1挟持部24を構成する開閉板35の閉塞部35aから外れずに、生地Cと糸捕捉部33がループWで繋がったままとなる(図21)。
この状態でさらに縫製が進むと、生地Cが送り方向に移動するため、繋がったループWによる挟持手段26の第1挟持部24を引く力(張力)が生地Cの送りにともなって漸増し、この第1挟持部24、すなわち開閉板35の閉塞部35aをY軸方向+側に引く力が、ねじりコイルばね38による開閉板35の閉塞部35aをY軸方向−側に付勢して糸捕捉部33を閉状態に保持して力を上回ると、開閉板35が糸捕捉部33を開状態とするように開閉板用支持部材37を回転中心として回転し、閉塞部35aの切欠き34の開口端から離間し、糸捕捉部33が開状態となる(図22、図23)。なお、図19から図22においては、要部のみ符号を付してある。
この開閉板35の回転は、生地Cの送りにともなって大きくなり、これによりループWの閉塞部35aと接触している部分が閉塞部35aをその長手方向に沿って先端側に向かって接触しつつ移動し、閉塞部35aの先端の丸め部41を通過すると、ループWは、糸捕捉部33、ひいては挟持手段26から外れることになる(図24、図25)。そして、ループWが糸捕捉部33から外れると、ねじりコイルばね38の付勢力によって開閉板35は糸捕捉部33を閉状態とするように復帰する。なお、図19から図25においては、要部のみ符号を付してある。
ここで、縫製に供する上糸Tが太い場合など、挟持手段26を引く力が高くなる縫製条件では、ねじりコイルばね38の他端が掛けられるばね掛け体40を架け替えて、ねじりコイルばね38のばね力を高く設定する(糸切れや生地ずれを誘発するのを防止するために、上糸Tや生地が弱い場合はねじりコイルばね38のばね力の設定を上げない)。
前記閉塞部35aの先端には丸め部41が形成されているので、ループWが先端を超える際に誤って切断してしまうのを防止することができる。
このように、本実施形態の上糸つかみ装置10によれば、第1挟持部24が上糸Tを挟持した後に、上糸Tによって糸捕捉部33を開状態とするように可動に形成されているから、第1挟持部24と第2挟持部25との間に挟持している上糸Tの糸端部TAの先端側が生地裏の縫い目Sに縫い込まれて糸捕捉部33を通るループWが形成された場合でも、縫製の進行にともなう生地Cの送りによるループWが第1挟持部24をY軸方向+側に引く力よって糸捕捉部33を容易かつ確実に開状態とすることができる。そして、糸捕捉部33を開状態とすることにより、ループW、ひいては上糸Tを糸捕捉部から容易かつ確実に外すことができる。
したがって、本実施形態の上糸つかみ装置10によれば、糸捕捉部33は、初期位置において切欠き34の開口を開閉板35が閉じた閉状態で針板8の針穴8aを貫通した縫い針Nの糸通し穴Naを通過させて上糸Tの糸端部TAを捕捉することができ、挟持手段26は、挟持位置において第1挟持部24と第2挟持部25との間に上糸Tの糸端部TAを挟持することができるとともに、解放位置において第1挟持部24と第2挟持部25との間に挟持した上糸Tの糸端部TAを解放することができる。
また、本実施形態の上糸つかみ装置10によれば、第1挟持部24が上糸Tを挟持した後に、上糸Tによって開閉体としての開閉板35が切欠き34の開口を開いた糸捕捉部33の閉状態とするように可動に形成されているから、第1挟持部24と第2挟持部25との間に挟持している上糸Tの糸端部TAの先端側が縫い目Sに縫い込まれて糸捕捉部33を通るループWが形成された場合でも、縫製の進行にともなう生地Cの送りによるループWが第1挟持部を引く力よって開閉体としての開閉板35が切欠き34の開口を開くように動作して糸捕捉部33を開状態とすることができるから、ループW、ひいては上糸Tを糸捕捉部33から容易かつ確実に外すことができる。その結果、生地ずれ、糸切れ、装置の動作不良などが発生するのを容易かつ確実に防止することができるとともに、高い縫製品質を確実に確保することができる。
また、本実施形態の上糸つかみ装置10によれば、開閉体としての開閉板35が、常時は付勢手段としてのねじりコイルばね38の付勢力によって糸捕捉部33を閉状態に保持するように形成されているから、糸捕捉部33を閉状態とすることが容易にできるし、ねじりコイルばね38の付勢力に抗する力が第1挟持部24に加わった場合には糸捕捉部を開状態とすることができる。
さらに、本実施形態の上糸つかみ装置10によれば、付勢手段としてのねじりコイルばね38の付勢力を調節するための付勢力調節手段42が設けられているから、ねじりコイルばね38の付勢力を容易に調節することができる。
また、本実施形態の上糸つかみ装置10によれば、「挿通長さ」が変化するような縫製条件であっても、糸つかみ装置10が使用可能となるので、縫製品質の向上、縫始め高速化(生産性)が維持・具現できるという副次的効果を奏する。
また、本実施形態の上糸つかみ装置10によれば、「挿通長さ」を、糸つかみ装置10に合せて調整する必要がなくなるため、縫製条件変更時の「挿通長さ」調整が不要となり生産性が向上するという副次的効果も奏する。
また、本実施形態の上糸つかみ装置10によれば、「挿通長さ」にかかわらず、糸つかみ装置10を使用できるため、「挿通長さ」に影響する糸取りばねの調整や、糸道部品(ゲージ)交換をせずにすむので生産性が向上するという副次的効果も奏する。
また、本実施形態の上糸つかみ装置10によれば、ループWがねじりコイルばね38の付勢力を超えて開口板35、すなわちループが第1挟持部24をねじりコイルばね38の付勢力を超えて引いた時のみ可動して糸捕捉部33を開状態としてループWが引き抜かれるため、通常は糸捕捉部33は閉状態を維持しているので、縫製の進行にともなう生地Cの送りによって上糸Tの糸端部TAが徐々に糸捕捉部33から抜けていくので、取りの巣を軽減できるという効果も奏する。
また、本実施形態の上糸つかみ装置10によれば、駆動手段27は、1つの糸つかみ用モータ58の駆動力によって、上糸挟持手段26を初期位置、挟持位置、解放位置の3位置を選択的に取り得るように容易かつ確実に駆動させることができる。
図26から図31は、本発明に係るミシンの上糸つかみ装置の他の実施形態を示すものである。
本実施形態の上糸つかみ装置10Aは、第1挟持部24と第2挟持部25とが解放位置に位置したときに、糸捕捉部33を開状態とするように第1挟持部24を機械的に作動させる強制作動手段91を設けたものである。
すなわち、図26から図28に示すように、本実施形態の上糸つかみ装置10Aにおいては、強制作動手段91としての開閉板駆動部材92を有している。この開閉板駆動部材92は、ガイド板63AのY軸方向+側に位置する先端面の中央部からX軸方向−側寄りにおいてY軸方向+側に突出する棒状に形成されている。また、開閉板駆動部材92の先端は、開閉板35のY軸方向−側に位置する側面のうちの、回転中心と、第2挟持部25と対向する第1挟持部24との間の部位と対向する位置に配置されている。勿論、開閉板駆動部材92は、開閉板用支持部材37と干渉しない位置に配置されている。
なお、開閉板駆動部材92は、ガイド板60Aに限らず、ベッド部2などの他の固定部位に配置してもよい。
また、開閉板駆動部材92は、第1挟持部24と第2挟持部25とが解放位置に位置したときに、糸捕捉部33を開状態とするように第1挟持部24を回転させる回転角度(開き角度)としては、ループWが第1挟持部24から容易に抜け出すことができる角度とすることが好ましい。
そこで、開閉板駆動部材92としては、Y軸方向+側の先端の位置をY軸方向に沿って調節可能な構成としてもよい。例えば、開閉板駆動部材92の基端部にねじ部を形成し、このねじ部をガイド板60Aあるいは他の固定部位に設けたねじ穴に螺入させるときの螺入量を変化させる構成を挙げることができる。このような構成とすることにより、部品の精度を緩めコスト低減が図れるとともに、開閉板35の回動タイミングおよび開き角度を詳細に調整でき、上糸Tの太さや強度に対して細かな設定を可能として糸切れを防ぎ、一層の縫い品質の向上を図ることができる。
なお、第1挟持部24は、前述したように、上糸Tを挟持した後に、上糸Tによって糸捕捉部33を開状態とするように可動に形成されているから、何らかの理由によりループWが第1挟持部24(開閉板35の閉塞部35a)にひっかっかったっ場合には、縫製の進行にともなう生地Cの送りの進行により、ループWによって開閉板35の回転をさらに漸増(開き角が大きくなる)し、ループWが第1挟持部24から外れることになる。
また、第1挟持部24と第2挟持部25とが解放位置よりさらにY軸方向−側まで移動可能とすることで、第1挟持部24の回転角度(開き角度)を調節するようにしてもよい。
その他の構成については、前述した実施形態の上糸つかみ装置10と同様とされており、その詳しい説明は省略する。
このような構成からなる本実施形態の上糸つかみ装置10Aによれば、図29に示すように、挟持手段26が挟持位置から解放位置に移動する途中で、開閉板35の側面が開閉板駆動部材92の先端に当接する。そして、挟持手段26が解放位置に到達すると、図30に示すように、開閉板35が糸捕捉部33を開状態とするように開閉板用支持部材37を回転中心として予め設定された角度まで回転し、閉塞部35aが切欠き34の先端側に位置する開口端から離間する。
したがって、本実施形態の上糸つかみ装置10Aによれば、第1挟持部24と第2挟持部25とが解放位置に位置したときに、強制作動手段91により、糸捕捉部33を開状態とするように第1挟持部24を機械的に作動させることができる。その結果、第1挟持部24と第2挟持部25との間に挟持している上糸Tの糸端部TAの先端側が生地裏の縫い目Sに縫い込まれて糸捕捉部33を通るループWが形成された場合でも、縫製の進行にともなう生地Cの送りにより、ループWは、開状態とされた糸捕捉部33の開閉板35の閉塞部35aを先端側に向かって移動し、閉塞部35aの先端の丸め部41を通過して、図31に示すように、糸捕捉部33、ひいては挟持手段26から外れる。
すなわち、本実施形態の上糸つかみ装置10Aによれば、強制作動手段91により挟持手段26が予め設定された所定のタイミングである解放位置に位置したときに、糸捕捉部33を強制的に閉状態から開状態とすることができるので、強度の低い糸や縫製物に張力を与えずにループWを挟持手段26から外すことができる。
したがって、本実施形態の上糸つかみ装置10Aによれば、前述した実施形態の上糸つかみ装置10と同様の効果を奏することができるとともに、挟持している上糸Tの糸端部TAの先端側が生地裏の縫い目Sに縫い込まれて糸捕捉部33を通るループWが形成された場合でも、上糸T、縫い目S、生地Cのそれぞれに張力を与えることなく、糸捕捉部33からループWを容易かつより確実に外すことができる。
よって、本実施形態の上糸つかみ装置10Aによれば、生地ずれ、糸切れ、装置の動作不良などが発生するのをより容易かつより確実に防止することができるとともに、より高い縫製品質を確実に確保することができる。
なお、本発明の開閉板により糸捕捉部を開閉可能とするミシンの糸つかみ装置の構成は、既存の枠状の糸保持部を備えた上糸挟持手段を有するミシンの糸つかみ装置に用いることができる。
また、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。
本発明に係るミシンの上糸つかみ装置の実施形態を備えたミシンの要部を示す一部切断外観正面図 図1の上糸つかみ装置の要部の構成を示す斜視図 図2の分解斜視図 図3の第1挟持部の拡大分解斜視図 図1の釜機構の上糸ガイド板の平面図 図1の釜機構の中釜の正面図 図1のミシンの針下部分の構成の要部を示す部分斜視図 図1の上糸つかみ装置の上糸挟持手段が初期位置に位置した状態の要部の正面図 図8の上糸挟持手段の要部の部分拡大図 図8の上糸つかみ装置の要部の下面図 図10の要部の部分拡大図 図1の上糸つかみ装置の上糸挟持手段が挟持位置に位置した状態の要部の側面図 図1の上糸つかみ装置の上糸挟持手段が挟持位置に位置した状態の要部の下面図 図1の上糸つかみ装置の上糸挟持手段が解放位置に位置した状態の要部の側面図 図1の上糸つかみ装置の上糸挟持手段が解放位置に位置した状態の要部の下面図 図1の上糸つかみ装置の相対位置調節リンク体の揺動動作と第1挟持部材および第2挟持部材の相対位置変化の関係を下方から見て示す説明図 図1のミシンの制御系の要部を示すブロック図 図1のミシンの動作のフローチャート 図1の上糸つかみ装置の上糸挟持手段が挟持位置に位置して上糸の糸端部が2針目の上糸ループにより引き上げられる途中の状態を示す説明図 図19に続く上糸の糸端部が生地裏の縫い目に縫い込まれて糸捕捉部を通るループが形成された状態を示す説明図 図20に続く上糸挟持手段が解放位置に位置して上糸の糸端部を解放した後においてループが糸捕捉部から外れずに生地と糸捕捉部がループで繋がった状態を示す説明図 図21に続く縫製の進行にともなう生地の送りにより糸捕捉部を開状態とするようにループが第1挟持部を作動させた状態を示す説明図 図22の上糸つかみ装置の第1挟持部の作動状態を下方から見て示す説明図 図22に続く縫製の進行にともなう生地の送りによりループが糸捕捉部から外れた状態を示す説明図 図24のループが糸捕捉部から外れた状態を下方から見て示す説明図 本発明に係るミシンの上糸つかみ装置の他の実施形態を備えたミシンの上糸挟持手段が初期位置に位置した状態の要部を示す正面図 図26の上糸つかみ装置の要部の下面図 図26のガイド板の平面図 図26の上糸つかみ装置の強制作動手段が第1挟持部を作動させた状態を示す説明図 図29の上糸つかみ装置の第1挟持部の作動状態を下方から見て示す説明図 図29のループが糸捕捉部から外れた状態を下方から見て示す説明図 従来のミシンの上糸つかみ装置における上糸を挟持した状態を示す説明図 従来のミシンの上糸つかみ装置における上糸ループの内部に糸端部が入る状態を示す説明図 図33に続く上糸ループとともに上糸の糸端部が引き上げられる状態を示す説明図 図34に続く上糸の糸端部が生地裏の縫い目に縫い込まれて糸捕捉部を通るループが形成された状態を示す説明図
符号の説明
1 ミシン
8 針板
8a 針穴
9 釜機構
10、10A 上糸つかみ装置
11 制御手段
24 第1挟持部
25 第2挟持部
26 上糸挟持手段
27 駆動手段
28 移動手段
29 関連動作手段
31 第1挟持部材
32 第2挟持部材
33 糸捕捉部
34 切欠き
35 開閉板
35a 閉塞部
38 ねじりコイルばね(付勢手段)
40 ばね掛け体
42 付勢力調節手段
55 Y軸移動機構
56 移動位置検出手段
63 63a ガイド板
91 強制作動手段
92 開閉板駆動部材
N 縫い針
Na 糸通し穴
NL 上下動経路
T 上糸
TA 糸端部
TL 上糸ループ
W ループ
C 生地

Claims (4)

  1. 上糸の糸端部を捕捉し挟持するための上糸挟持手段と、前記上糸挟持手段を駆動するための駆動手段とを有しており、縫い始めに、縫い針の糸通し穴に挿通されている上糸の糸端部をベッド部の針板の下方でかつ前記縫い針の上下動経路から離間した位置で捕捉し挟持するとともに、その後予め設定された針数を針落ちした後、挟持した前記上糸の糸端部を解放するように形成されているミシンの上糸つかみ装置において、
    前記上糸挟持手段は、
    切欠きおよびこの切欠きの開口を開閉可能に配設された開閉体を具備する糸捕捉部を備え、前記開閉体のうちの前記切欠きの開口を閉塞する部位により第1挟持部が形成された第1挟持部材と、
    前記第1挟持部に対し相対的に接離可能に配設され前記第1挟持部との間で前記糸端部を挟持する第2挟持部を具備する第2挟持部材とを有しており、
    前記糸捕捉部は、前記切欠きの開口を前記開閉体が閉じた閉状態で前記針板の針穴を貫通した縫い針の糸通し穴が通過可能な全体として枠状をなすように形成されており、
    前記第1挟持部と前記第2挟持部とは、前記開閉体が前記切欠きの開口を閉じた前記糸捕捉部の閉状態における内部において前記糸端部を挟持するように形成されており、
    前記駆動手段は、少なくとも前記糸捕捉部の内部が前記上下動経路上に位置しかつ前記第1挟持部と前記第2挟持部とが前記上下動経路を介して両側に対向する初期位置と、前記第1挟持部と前記第2挟持部とが前記上下動経路の側方に離間しかつ前記第1挟持部と前記第2挟持部との間で前記糸端部を挟持する挟持位置との2位置を選択的に取り得るように前記上糸挟持手段を駆動可能に形成されており、
    さらに、前記第1挟持部は、前記上糸を挟持した後に、前記開閉体に上糸の張力が強く作用して前記上糸によって前記開閉体が前記切欠きの開口を開いた前記糸捕捉部の閉状態とするように可動に形成されていることを特徴とするミシンの上糸つかみ装置。
  2. 上糸の糸端部を捕捉し挟持するための上糸挟持手段と、前記上糸挟持手段を駆動するための駆動手段とを有しており、縫い始めに、縫い針の糸通し穴に挿通されている上糸の糸端部をベッド部の針板の下方でかつ前記縫い針の上下動経路から離間した位置で捕捉し挟持するとともに、その後予め設定された針数を針落ちした後、挟持した前記上糸の糸端部を解放するように形成されているミシンの上糸つかみ装置において、
    前記上糸挟持手段は、
    切欠きおよびこの切欠きの開口を開閉可能に配設された開閉体を具備する糸捕捉部を備え、前記開閉体のうちの前記切欠きの開口を閉塞する部位により第1挟持部が形成された第1挟持部材と、
    前記第1挟持部に対し相対的に接離可能に配設され前記第1挟持部との間で前記糸端部を挟持する第2挟持部を具備する第2挟持部材とを有しており、
    前記糸捕捉部は、前記切欠きの開口を前記開閉体が閉じた閉状態で前記針板の針穴を貫通した縫い針の糸通し穴が通過可能な全体として枠状をなすように形成されており、
    前記第1挟持部と前記第2挟持部とは、前記開閉体が前記切欠きの開口を閉じた前記糸捕捉部の閉状態における内部において前記糸端部を挟持するように形成されており、
    前記駆動手段は、少なくとも前記糸捕捉部の内部が前記上下動経路上に位置しかつ前記第1挟持部と前記第2挟持部とが前記上下動経路を介して両側に対向する初期位置と、前記第1挟持部と前記第2挟持部とが前記上下動経路の側方に離間しかつ前記第1挟持部と前記第2挟持部との間で前記糸端部を挟持する挟持位置と、第1挟持部と前記第2挟持部とが前記挟持位置よりさらに前記上下動経路の側方に離間しかつ前記第1挟持部と前記第2挟持部との間で挟持した前記糸端部を解放する解放位置との3位置を選択的に取り得るように前記上糸挟持手段を駆動可能に形成されており、
    さらに、前記第1挟持部は、前記上糸を挟持した後、上糸解放時に、前記開閉体に上糸の張力が強く作用して前記上糸によって前記開閉体が前記切欠きの開口を開いた前記糸捕捉部の閉状態とするように可動に形成されていることを特徴とするミシンの上糸つかみ装置。
  3. 前記開閉体は、常時は付勢手段の付勢力によって前記糸捕捉部を閉状態に保持するように形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のミシンの上糸つかみ装置。
  4. 前記付勢手段の付勢力を調節するための付勢力調節手段が設けられていることを特徴とする請求項3に記載のミシンの上糸つかみ装置。
JP2007293237A 2007-11-12 2007-11-12 ミシンの上糸つかみ装置 Active JP5026231B2 (ja)

Priority Applications (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007293237A JP5026231B2 (ja) 2007-11-12 2007-11-12 ミシンの上糸つかみ装置
KR1020080111652A KR101438154B1 (ko) 2007-11-12 2008-11-11 재봉기의 윗실유지장치
CN2008101770253A CN101435140B (zh) 2007-11-12 2008-11-12 缝纫机的上线保持装置
DE102008058197.6A DE102008058197B4 (de) 2007-11-12 2008-11-12 Oberfadenhaltevorrichtung einer Nähmaschine

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007293237A JP5026231B2 (ja) 2007-11-12 2007-11-12 ミシンの上糸つかみ装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009118906A JP2009118906A (ja) 2009-06-04
JP5026231B2 true JP5026231B2 (ja) 2012-09-12

Family

ID=40586098

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007293237A Active JP5026231B2 (ja) 2007-11-12 2007-11-12 ミシンの上糸つかみ装置

Country Status (4)

Country Link
JP (1) JP5026231B2 (ja)
KR (1) KR101438154B1 (ja)
CN (1) CN101435140B (ja)
DE (1) DE102008058197B4 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5312130B2 (ja) * 2009-03-24 2013-10-09 Juki株式会社 ミシンの上糸保持装置
JP6560913B2 (ja) * 2015-06-26 2019-08-14 Juki株式会社 ミシン
TWI597401B (zh) * 2016-09-14 2017-09-01 啟翔股份有限公司 縫紉機的線保持機構
JP7043016B2 (ja) * 2019-04-23 2022-03-29 ヤマトミシン製造株式会社 衣類の縫目拡張装置

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2827252B2 (ja) * 1989-02-23 1998-11-25 ブラザー工業株式会社 オーバーロックミシン
US4977842A (en) * 1988-05-31 1990-12-18 Brother Kogyo Kabushiki Kaisha Overlock sewing machine with a threading mechanism for easily threading a looper
JPH0956956A (ja) * 1995-08-21 1997-03-04 Juki Corp ミシンを用いた糸の縫い込み方法及びミシン
JP4037151B2 (ja) * 2002-04-10 2008-01-23 Juki株式会社 ミシンの上糸保持装置
JP4235435B2 (ja) 2002-11-20 2009-03-11 Juki株式会社 ミシンの上糸保持装置

Also Published As

Publication number Publication date
DE102008058197A1 (de) 2009-06-04
JP2009118906A (ja) 2009-06-04
DE102008058197B4 (de) 2019-05-09
KR101438154B1 (ko) 2014-09-05
KR20090049031A (ko) 2009-05-15
CN101435140B (zh) 2013-03-27
CN101435140A (zh) 2009-05-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5073272B2 (ja) ミシン
JP6031380B2 (ja) 二本針ミシン
CN105908395B (zh) 缝纫机
JP5885018B2 (ja) 二重環縫いの縫目のほつれ止め方法及び二重環縫いミシンの縫目のほつれ止め装置
KR20130131491A (ko) 솔기의 풀림 멈춤 방법, 솔기의 풀림 멈춤 장치 및 솔기 구조
JP6560913B2 (ja) ミシン
JP5026231B2 (ja) ミシンの上糸つかみ装置
JP6045392B2 (ja) ミシン
JP5265226B2 (ja) ミシンの上糸つかみ装置
JP4235435B2 (ja) ミシンの上糸保持装置
JP5312130B2 (ja) ミシンの上糸保持装置
JP2008080110A (ja) ミシン
JP2011172801A (ja) ミシン
EP2241662B1 (en) Thread cutting device for sewing machine
JP2004222919A (ja) ミシン
JP4030864B2 (ja) ミシンの上糸保持装置
JP2011212137A (ja) ミシン
TW201708650A (zh) 附有線跡綻線防止裝置之雙環縫合縫紉機
JP5089122B2 (ja) ミシンの全回転釜
JP2016202723A (ja) ミシン
JP2009050638A (ja) ミシン
CN112301575B (zh) 缝纫机
CN108360163B (zh) 制造线缝开头面线的方法和配置成实施这种方法的缝纫机
JP2009279216A (ja) 玉縁縫いミシン

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20101105

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120514

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120522

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120620

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150629

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5026231

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150