本発明は、CD20抗原に結合し、CD20抗原を細胞表面の位置から細胞内部に迅速に内在化させる能力を有するCD20結合タンパク質に関する。これらのCD20結合タンパク質は、がん及び免疫障害などの様々な疾患の治療のための治療分子として有用である。
免疫毒素は、免疫グロブリンドメインなどに由来する細胞表面結合領域と、典型的には、細菌又は植物に見出されるものなどの天然のタンパク質毒素に由来する毒素領域とを組み合わせたキメラ分子である。免疫毒素の効力は、細胞内在化から開始するプロセスである、細胞表面から細胞質ゾルへの移動の際のその効率に大きく依存する(Pirie et al. (2011), J Biol Chem 286: 4165-72を参照されたい)。
CD20は、ヒト及びマウスにおいて少なくとも26のタンパク質を含む膜貫通4A(MS4A、membrane-spanning 4A)ファミリーとして知られるポリペプチドのファミリーのメンバーである(Ishibashi et al., (2001) Gene 264: 87-93)。全てのMS4Aメンバーと同様、CD20配列は、膜を4回貫通する膜貫通分子を形成する3つの疎水性領域を予測し、これはその機能にとって中枢的であると考えられる構造的特徴である。また、提唱される第3及び第4の膜貫通ドメインと、細胞内アミノ末端及びカルボキシ末端領域との間の単一細胞外ループも予測される(Tedder et al., (1988) Proc Natl Acad Sci, 85: 208-12)。リツキシマブなどの抗CD20モノクローナル抗体(mAb、monoclonal antibody)の多くが最も重要な残基であるアラニン−170及びプロリン−172に結合すると考えられるのは、約40アミノ酸のこの細胞外ループ内にある。CD20のアミノ酸163〜187を用いてCD20のペプチド断片に結合する抗体の結晶構造は、リツキシマブ及びCD20のための抗原−抗体相互作用点としてアミノ酸170(アラニン)からアミノ酸173(セリン)までを確認している(Du et al., (2007) J Biol Chem 282: 15073-80)。
CD20は、ホモ多量体、おそらく四量体として細胞表面上に存在すると考えられ、電子顕微鏡により、複合体化したCD20の90%が脂質ラフト及び微絨毛中の膜に存在することが示されている(Li et al., (2004) J Biol Chem 279: 19893-901)。脂質ラフトは、高いポリペプチド、スフィンゴ脂質、及びコレステロール濃度を有する細胞膜中に見出されるマイクロドメインである(Brown and London (1998) Annu Rev Cell Dev Biol, 14: 111-36)。微絨毛、又は微絨毛チャネルは、細胞膜表面からの細胞伸長である(Reaven et al. (1989), J Lipid Res 30: 1551-60)。FMC7(Polyak et al., (2003) Leukemia 17:1384-89)などの、CD20に対するいくつかの抗体は、その分子が脂質ラフト中に存在する場合にのみ結合することが知られ、リツキシマブなどのその他の分子はCD20のラフトへの会合を増加させることが知られる(Li et al, supra)。ラフト会合は、脂質ラフト内に一般に位置し、CD20多量体と会合することがわかっている別のタンパク質であるB細胞抗原受容体(BCR、B-cell antigen receptor)を介して変換されるカルシウムシグナルの増幅因子としてのCD20の提唱される機能にとって重要であると仮定されている(Polyak et al., (2008) J Biol Chem 283: 18545-52)。
CD20抗原を標的とする抗体に基づく療法がいくつかある(概説については、Boross and Leusen, (2012) Am J Cancer Res, 2:676-90を参照されたい)。機能するために治療剤が細胞表面上に残存する機構に基づく療法のための標的としてのCD20の魅力的な特徴の1つは、抗体に基づく治療剤により結合した後のCD20細胞内在化の欠如である(Anderson et al., (1984) Blood 63:1424-33;Press et al., (1987) Blood 69: 584-91)。これは細胞型特異的であり、且つ抗体型特異的であることが証明されているが、一般に、CD20は他の細胞表面抗原よりもはるかに低い比率で内在化すると考えられる(Beers et al. (2010) Sem in Hematol, 47:107-14)。
CD20は容易に内在化しないという一般的知見のため、治療剤が有効であるために結合後に治療剤を標的細胞中に内在化させる必要がある療法のための標的としてのCD20抗原の有用性に関しては、当業界で疑問がある(Anderson et al., (1984) Blood 63:1424-33;Press et al., (1987) Blood 69: 584-91;Beers et al. (2010) Sem in Hematol, 47:107-14)。かくして、有効性のために細胞内在化を必要とする免疫グロブリン型治療剤を用いてCD20抗原を標的化する際の解決されていない問題がある−CD20に結合した治療剤を、結合後に標的細胞の内部にどのように入れるかである。例えば、CD20抗原を標的とする免疫毒素の送達に基づく療法は、不十分なCD20内在化効率に基づけば無効であると予測される。かくして、CD20のような免疫グロブリン型ドメインにより効率的な比率で、又は結合の際に天然では内在化しない細胞表面抗原を標的とする有効な組成物、治療剤、及び治療方法を開発することが当業界で必要である。
特に、CD20に結合した組成物の複合体の迅速で効率的な細胞内在化を誘発するCD20標的化組成物を同定及び開発することが当業界で依然として必要である。例えば、天然CD20分子の細胞内在化を誘導する毒素由来領域を含む細胞毒性CD20結合タンパク質は、B細胞系列の細胞を標的とする有効ながん及び免疫調節治療分子の開発にとって望ましい。
Pirie et al. (2011), J Biol Chem 286: 4165-72
Ishibashi et al., (2001) Gene 264: 87-93
Tedder et al., (1988) Proc Natl Acad Sci, 85: 208-12
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Anderson et al., (1984) Blood 63:1424-33
Press et al., (1987) Blood 69: 584-91
Beers et al. (2010) Sem in Hematol, 47:107-14
本発明は、1)免疫グロブリンドメインなどのCD20結合領域と、2)SLT−1Aのトランケーションなどの志賀毒素エフェクター領域とを含む、CD20の迅速な細胞内在化を誘導するための様々なCD20結合タンパク質を提供する。細胞の表面上へのCD20抗原の結合の際に、本発明のCD20結合タンパク質は、CD20結合タンパク質とCD20抗原とを含む複合体の、真核細胞の内部への迅速な細胞内在化を誘導することができる。CD20結合領域と志賀毒素サブユニットA由来ポリペプチドとの連結は、天然に発現されるCD20の迅速な細胞内在化を誘導することができる、並びにさらなる外来物質をCD20発現細胞の内部に送達することができる細胞毒性志賀毒素に基づく分子の操作を可能にする。本発明のCD20結合タンパク質は、例えば、CD20陽性細胞型の標的化された死滅、がん、腫瘍、及びB細胞系列と関連する免疫障害などの、患者における様々な状態の治療のための診断剤として、及び治療剤としての外来物質の送達にとって有用である。
本発明のCD20結合タンパク質は、(a)免疫グロブリン型結合領域を含み、CD20の細胞外部分に特異的に結合することができるCD20結合領域と、(b)志賀毒素ファミリーの少なくとも1つのメンバーのAサブユニットのアミノ酸配列に由来するポリペプチドを含む志賀毒素エフェクター領域とを含み、細胞表面上にCD20を発現する細胞にCD20結合タンパク質を投与すると、CD20結合タンパク質は、CD20に結合した前記CD20結合タンパク質を含むタンパク質複合体の迅速な細胞内在化を誘導することができる。
本発明のCD20結合タンパク質のある特定の実施形態について、CD20結合領域は、相補性決定領域3断片、拘束された(constrained)FR3−CDR3−FR4ポリペプチド、単一ドメイン抗体断片、一本鎖可変断片、抗体可変断片、抗原結合断片、Fd断片、フィブロネクチン由来第10フィブロネクチンIII型ドメイン、テナシンIII型ドメイン、アンキリンリピートモチーフドメイン、低密度リポタンパク質受容体由来Aドメイン、リポカリン、Kunitzドメイン、プロテインA由来Zドメイン、ガンマ−B結晶由来ドメイン、ユビキチン由来ドメイン、Sac7d由来ポリペプチド、Fyn由来SH2ドメイン、操作された抗体模倣物、及びCD20結合機能を保持する前記のいずれかの任意の遺伝子操作された対応物からなる群から選択されるポリペプチドを含む免疫グロブリン型結合領域を含む。
ある特定の実施形態について、前記CD20結合タンパク質は、細胞表面上に天然に存在するCD20の迅速な細胞内在化を誘導することができる。ある特定のさらなる実施形態においては、前記CD20結合タンパク質は、細胞表面上に天然に存在するCD20の細胞内在化を約1時間未満で誘導することができる。ある特定のさらなる実施形態においては、CD20結合タンパク質は、B細胞系列のメンバーの表面上に天然に存在するCD20の細胞内在化を約1時間未満で誘導することができる。
ある特定の実施形態について、細胞表面上にCD20を発現する細胞に前記CD20結合タンパク質を投与すると、CD20結合タンパク質は、細胞死を引き起こすことができる。ある特定の他の実施形態においては、CD20結合タンパク質は、触媒活性を欠き、細胞死を引き起こすことができない志賀毒素エフェクター領域を含む。
ある特定の実施形態について、メンバーがCD20を発現する第1の細胞集団、及びメンバーがCD20を発現しない第2の細胞集団にCD20結合タンパク質を投与すると、第2の細胞集団のメンバーと比べて第1の細胞集団のメンバーに対する前記CD20結合タンパク質の細胞毒性効果は、少なくとも3倍高い。
ある特定の実施形態について、CD20結合タンパク質は、配列番号1、配列番号25、又は配列番号26のアミノ酸75〜251を含むか、又はそれから本質的になる志賀毒素エフェクター領域を含む。さらなる実施形態は、志賀毒素エフェクター領域が、配列番号1、配列番号25、若しくは配列番号26のアミノ酸1〜241;配列番号1、配列番号25、若しくは配列番号26のアミノ酸1〜251;及び/又は配列番号1、配列番号25、若しくは配列番号26のアミノ酸1〜261を含むか、又はそれから本質的になるCD20結合タンパク質である。
ある特定の実施形態について、CD20結合タンパク質は、配列番号4、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16のアミノ酸を含むか、又はそれから本質的になる。
ある特定の実施形態においては、CD20結合タンパク質は、(a)それぞれ、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、それぞれ、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;(b)それぞれ、配列番号21、配列番号22、及び配列番号23に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、それぞれ、配列番号24、配列番号10、及び配列番号11に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;又は(c)それぞれ、配列番号21、配列番号22、及び配列番号27に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメインと、(ii)それぞれ、配列番号28、配列番号10、及び配列番号29に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含む、CD20結合領域を含む。さらなる実施形態は、配列番号4のアミノ酸2〜245を含むか、又はそれから本質的になる免疫グロブリン型結合領域を含むCD20結合タンパク質である。さらなる実施形態は、配列番号4のアミノ酸2〜245を含むか、又はそれから本質的になる免疫グロブリン型結合領域と、配列番号1のアミノ酸75〜251を含むか、又はそれから本質的になる志賀毒素エフェクター領域とを含むCD20結合タンパク質である。さらなる実施形態は、配列番号4又は配列番号16を含むか、又はそれから本質的になるCD20結合タンパク質である。
ある特定の実施形態においては、CD20結合タンパク質は、志賀毒素エフェクター領域の酵素活性を変化させる、志賀毒素ファミリーのメンバーの天然のAサブユニットに対する変異であって、少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失又は置換から選択される変異を含む志賀毒素エフェクター領域を含む。
前記CD20結合タンパク質のある特定の実施形態を、細胞表面上にCD20を発現する細胞へのさらなる外来物質の送達のために用いることもできる。これらの実施形態は、(a)CD20分子の細胞外部分に特異的に結合することができる免疫グロブリン型ポリペプチドと、(b)志賀毒素ファミリーの少なくとも1つのメンバーのアミノ酸配列に由来するポリペプチドを含む志賀毒素エフェクター領域と、(c)さらなる外来物質とを含むCD20結合領域を含み、細胞表面上にCD20を発現する細胞にCD20結合タンパク質を投与すると、CD20結合タンパク質は、CD20に結合したCD20結合タンパク質を含むタンパク質複合体の迅速な細胞内在化を誘導することができ、さらなる外来物質を細胞の内部に送達することができる。ある特定のさらなる実施形態においては、前記CD20結合タンパク質は、(a)それぞれ、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、それぞれ、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;又は(b)それぞれ、配列番号21、配列番号22、及び配列番号23に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、それぞれ、配列番号24、配列番号10、及び配列番号11に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;又は(c)それぞれ、配列番号21、配列番号22、及び配列番号27に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメインと、(ii)それぞれ、配列番号28、配列番号10、及び配列番号29に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含むCD20結合領域を含む。
ある特定の実施形態においては、さらなる外来物質は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及びポリヌクレオチドからなる群から選択される。ある特定の実施形態においては、さらなる外来物質は、酵素を含むタンパク質又はポリペプチドを含む。ある特定の他の実施形態においては、さらなる外来物質は、例えば、低分子干渉RNA(siRNA、small inhibiting RNA)又はマイクロRNA(miRNA、microRNA)として機能するリボ核酸などの核酸である。
ある特定の実施形態においては、さらなる外来物質はペプチドであり、ペプチドは抗原である。ある特定の実施形態においては、さらなる外来物質は、細菌タンパク質に由来する抗原である。ある特定の他の実施形態においては、抗原はがんにおいて変異したタンパク質に由来する。さらなる実施形態は、抗原はがんにおいて異常に発現されるタンパク質に由来する。さらなる実施形態は、抗原はT細胞相補性決定領域に由来する。
ある特定の実施形態について、抗原は、ペプチド抗原が一本鎖タンパク質の結合領域と毒素エフェクター領域との間に位置するポリペプチド融合物の一部としてCD20結合タンパク質内に含まれる。ある特定の実施形態においては、さらなる外来物質は、ウイルスタンパク質に由来する抗原である。ある特定の実施形態においては、抗原は、配列番号3を含むか、又はそれから本質的になる、インフルエンザMatrix 58−66抗原である。ある特定のさらなる実施形態においては、CD20結合タンパク質は、配列番号16を含むか、又はそれから本質的になる。
本発明はまた、CD20結合タンパク質と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤又は担体とを含む医薬組成物;及び本明細書にさらに記載される本発明の方法におけるそのような細胞毒性タンパク質又はそれを含む組成物の使用も含む。
本発明はまた、本発明のCD20結合タンパク質のある特定の実施形態をコードするポリヌクレオチド、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクター、並びに本発明の発現ベクターを含む宿主細胞も提供する。
さらに、本発明は、CD20発現細胞を、本発明のCD20結合タンパク質又はその医薬組成物と接触させるステップを含む、CD20発現細胞中へのCD20結合タンパク質の細胞内在化を迅速に誘導する方法を提供する。同様に、本発明は、患者に本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物を投与するステップを含む、患者におけるCD20結合タンパク質により結合した細胞表面に局在化したCD20を内在化させる方法を提供する。
さらに、本発明は、CD20発現細胞を、インビトロ又はインビボのいずれかで、本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物と接触させるステップを含む、前記細胞を死滅させる方法を提供する。
さらに、本発明は、細胞を、インビトロ又はインビボのいずれかで、本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物と接触させるステップを含む、外来物質を細胞の内部に送達する方法を提供する。
本発明はさらに、患者に、本発明のCD20結合タンパク質を投与するステップを含む、細胞がその表面上にCD20を発現する、患者において外来物質を細胞の内部に送達するための方法を提供する。
さらに、本発明は、細胞を、本発明のCD20結合タンパク質又は本発明の医薬組成物と接触させるステップを含む、細胞を死滅させる方法を提供する。ある特定の実施形態においては、細胞を接触させるステップを、インビトロで行う。ある特定の他の実施形態においては、細胞を接触させるステップを、インビボで行う。
また、本発明は、治療上有効量の本発明のCD20結合タンパク質又は本発明の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、患者における疾患、障害、又は状態を治療する方法を提供する。ある特定の実施形態においては、本発明のこの方法を用いて治療しようとする疾患、障害、又は状態は、例えば、がん細胞、腫瘍細胞、又は免疫細胞などの、細胞表面上にCD20を発現する細胞又は細胞型と関与する。さらなる実施形態は、骨のがん、白血病、リンパ腫、メラノーマ、又は骨髄腫からなる群から選択される疾患と関連するがん又は腫瘍細胞を含む疾患を治療する方法である。この方法のある特定の実施形態においては、障害は、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、喘息、クローン病、糖尿病、移植片拒絶、移植片対宿主疾患、橋本甲状腺炎、溶血性尿毒症症候群、HIV関連疾患、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、多発動脈炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、強皮症、敗血性ショック、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、及び血管炎からなる群から選択される疾患と関連する免疫障害である。
特に、本発明のある特定の実施形態は、がん又は免疫障害の治療又は予防のための医薬の製造における、本発明のCD20結合タンパク質の使用である。特に、本発明のある特定の実施形態は、がん、腫瘍、又は免疫障害の治療又は予防における使用のための、細胞毒性タンパク質又は前記タンパク質を含む医薬組成物である。
本発明のこれらの及びその他の特徴、態様及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面に関してより良好に理解されるようになる。本発明の上記要素を自由に組み合わせるか、又は除去して、以後、そのような組合せ又は除去に反対する記述がなくても、他の実施形態を作製することができる。
例示的CD20結合タンパク質の一般的構造を示す図である。
播種性Raji-luc異種移植片モデルにおいてαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1(MT−3724)及びαCD20scFv::SLT−1Aバージョン2(MT−3727)を投与した場合の総身体発光の変化を示すグラフである。
αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1(MT−3724)及びαCD20scFv::SLT−1Aバージョン2(MT−3727)を投与した場合のRaji-luc異種移植片モデルマウスの生存の増加を示すグラフである。
Raji皮下異種移植片モデルにおいてαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1(MT−3724)及びαCD20scFv::SLT−1Aバージョン2(MT−3727)を投与した場合の腫瘍体積の変化を示すグラフである。
αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1(MT−3724)を投与した場合の非ヒト霊長類試験におけるB細胞枯渇を示す図である。特に、CD21を発現するCD20+B細胞のサブセットを分析した。
αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1(MT−3724)を投与した場合の非ヒト霊長類試験におけるB細胞枯渇を示す図である。特に、CD21を発現しないCD20+B細胞のサブセットを分析した。
本発明は、例示的な非限定的実施形態、及び添付の図面の参照を用いて、以後、より完全に説明される。本発明は、多くの異なる形態で具体化することができるが、以下に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完全なものとなり、本発明の範囲を当業者に伝達するように提供される。
本発明をより容易に理解するために、ある特定の用語を以下に定義する。さらなる定義は、本発明の詳細な説明内に見出すことができる。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる用語「a」、「an」及び「the」は、文脈が別途明確に区別しない限り、単数と複数の両方の指示対象を含む。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、2つの種、A及びBを参照する場合の用語「及び/又は」は、A及びBの少なくとも1つを意味する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、2つより多い種、A、B、及びCなどを参照する場合の用語「及び/又は」は、A、B、若しくはCの少なくとも1つ、又はA、B、若しくはCの任意の組合せの少なくとも1つを意味する(それぞれの種は単数又は複数の可能性がある)。
本明細書を通して、単語「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などの変形は、記述される整数(若しくは成分)又は整数(若しくは成分)の群の含有を意味するが、任意の他の整数(若しくは成分)又は整数(若しくは成分)の群の排除を意味しないと理解される。
本明細書を通して、用語「含む(including)」は、「限定されるものではないが、含む(including but not limited to)」を意味するために用いられる。「含む(including)」と「限定されるものではないが、含む(including but not limited to)」とは、互換的に用いられる。
用語「アミノ酸残基」又は「アミノ酸」は、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドに組み込まれるアミノ酸に対する参照を含む。用語「ポリペプチド」は、アミノ酸又はアミノ酸残基の任意のポリマーを含む。用語「ポリペプチド配列」とは、ポリペプチドが物理的に構成される一連のアミノ酸又はアミノ酸残基を指す。「タンパク質」は、1又は2以上のポリペプチド鎖を含む大分子である。「ペプチド」は、合計15〜20未満のアミノ酸残基のサイズの小さいポリペプチドである。
用語「アミノ酸」、「アミノ酸残基」又はポリペプチド配列は、別途限定しない限り、天然のアミノ酸を含み、天然のアミノ酸と同様の様式で機能することができる天然アミノ酸の既知のアナログも含む。本明細書に記載のアミノ酸は、以下の表Aのように短縮された記号で記載される。
ポリペプチドに関する語句「保存的置換」とは、ポリペプチド全体の機能及び構造を実質的に変化させないポリペプチドのアミノ酸組成の変化を指す(Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties (W. H. Freeman and Company, New York (2nd ed., 1992)を参照されたい)。
本明細書で用いられる場合、用語「発現された(expressed)」、「発現する(expressing)」又は「発現する(expresses)」とは、ポリヌクレオチド又は核酸の、ポリペプチド又はタンパク質への翻訳を指す。発現されたポリペプチド又はタンパク質は、細胞内に残存し、細胞表面膜の成分になるか、又は細胞外空間に分泌されてもよい。
本明細書で用いられる記号「α」は、記号の後の生体分子に結合することができる免疫グロブリン型結合領域の省略表現である。記号「α」は、記号の後の生体分子に結合するその能力に基づく免疫グロブリン型結合領域の機能的特徴を指すために用いられる。
CD20結合タンパク質の細胞毒性活性に関する用語「選択的細胞毒性」とは、標的細胞集団と非標的バイスタンダー細胞集団との間の細胞毒性の相対レベルを指し、標的細胞型の細胞死滅の優先性を示すために、標的細胞型の最大半量細胞毒性濃度(CD50)と非標的細胞型のCD50の比として表すことができる。
本発明の目的のために、用語「エフェクター」は、細胞毒性、生物学的シグナリング、酵素触媒作用、細胞内ルーティング、並びに/又は因子及び/若しくはアロステリック効果の動員をもたらす分子間結合などの生物学的活性を提供することを意味する。
本発明の目的のために、語句「に由来する」は、ポリペプチド領域がタンパク質中に元々見出されるアミノ酸配列を含み、ここで、全体的な機能及び構造が実質的に保存されるような元の配列からの付加、欠失、トランケーション、又は他の変化を含んでもよいことを意味する。
はじめに
志賀毒素サブユニットA由来エフェクター領域はCD20の細胞内在化を誘導するため、本発明は、機能のために細胞内在化を必要とするCD20を標的とする治療剤を操作するための課題を解決する。本発明は、細胞外CD20抗原に結合し、CD20を、細胞膜での位置から細胞の内部に迅速に内在化させるCD20結合タンパク質を提供する。ある特定の開示されるCD20結合タンパク質は、その表面上にCD20を発現する細胞を死滅させる。ある特定の開示されるCD20結合タンパク質は、分子カーゴの形態でさらなる外来物質を、その表面上にCD20を発現する細胞の内部に正確に送達することができる。本発明は、CD20を含み、CD20発現細胞の内部へのペイロードの正確な送達を可能にする多数の免疫毒素薬剤化可能な標的に拡張される。
I.CD20結合タンパク質の一般構造
本発明は、CD20結合タンパク質が、1)細胞標的化のための免疫グロブリン型結合領域を含むCD20結合領域と、2)細胞死滅のための志賀毒素エフェクター領域とを含む、特定の細胞型の選択的死滅のための様々なCD20結合タンパク質を提供する。CD20標的化免疫グロブリン型結合領域と、志賀毒素サブユニットA由来領域との連結は、強力な志賀毒素細胞毒性の細胞型特異的標的化の操作を可能にする。このシステムは、様々な志賀毒素エフェクター領域と、さらなる外来物質とを同じCD20結合領域に連結して、CD20発現細胞を含む多様な適用を提供することができる点でモジュラー式である。本発明のCD20結合タンパク質は、真核細胞の外部細胞膜を貫通するCD20分子の少なくとも1つの細胞外部分に特異的に結合することができる免疫グロブリン型CD20結合領域に連結された志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来する志賀毒素エフェクター領域を含む。この一般構造は、様々なCD20結合領域を、様々な位置で、又はそれらの間を異なるリンカーを用いて志賀毒素サブユニットA由来エフェクター領域に連結して、同じ一般構造の変動をもたらすことができる点でモジュラー式である(例えば、図1を参照されたい)。
A.免疫グロブリン型結合領域を含むCD20結合領域
本発明の目的のために、用語「CD20結合領域」とは、CD20分子の細胞外部分に特異的に結合することができるポリペプチド領域を指す。CD20の名称は関連する構造を有する複数のタンパク質及び様々な種に由来するポリペプチド配列を指してもよいが、本発明の目的のために、用語「CD20」は、正確な配列がアイソフォームに基づいて、及び個体間でわずかに変化してもよい哺乳動物中に存在するBリンパ球抗原CD20タンパク質を指す。例えば、ヒトにおいては、CD20は主なポリペプチド配列UnitProt P11836及びNCBI受託番号NP690605.1により表されるタンパク質を指すが、異なるアイソフォーム及びバリアントが存在してもよい。様々なCD20タンパク質のポリペプチド配列が、コウモリ、ネコ、ウシ、イヌ、マウス、マーモセット、及びラットなどの様々な種において記載されており、遺伝子相同性に基づくいくつかの他の種におけるバイオインフォマティクスにより予測することができる(例えば、CD20は、ヒヒ、マカク、テナガザル、チンパンジー、及びゴリラなどの様々な霊長類において予測されている)(Zuccolo J et al., PLoS One 5: e9369 (2010)及びNCBIタンパク質データベース(National Center for Biotechnology Information、U.S.)を参照されたい)。当業者であれば、CD20タンパク質が参照配列とわずかに異なる場合であっても、哺乳動物においてそれを同定することができる。
CD20分子の細胞外部分とは、CD20分子が細胞膜中に天然に存在する場合に細胞外環境に曝露されたその構造の一部を指す。この文脈において、細胞外環境に曝露されたとは、CD20分子の部分が、例えば、抗体又は単一ドメイン抗体ドメイン、ナノボディ、ラクダ科動物若しくは軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン、一本鎖可変断片、又は免疫グロブリンに対する任意数の操作された代替足場などの、抗体よりも小さい少なくとも結合部分により接近可能であることを意味する(以下を参照されたい)。当業者であれば、当業界で公知の方法を用いることにより、CD20の一部の曝露を経験的に決定することができる。CD20内のその位置に基づいて細胞外空間中で抗体に接近可能ではないと予測されたCD20のいくつかの部分は、モノクローナル抗体により接近可能であることが経験的に示されたことに留意されたい(Teeling J et al., J. Immunol. 177: 362-71 (2006))。
CD20結合領域は、抗体又は抗体様構造から一般的に由来するが、他の起源からの代替足場もこの用語の範囲内に企図される。ある特定の実施形態においては、CD20結合領域は、抗体パラトープなどの、免疫グロブリン由来結合領域に由来する。ある特定の他の実施形態においては、CD20結合領域は、任意の免疫グロブリンドメインに由来しない操作されたポリペプチドである免疫グロブリン型結合領域を含む。本発明における成分として企図されるいくつかの免疫グロブリン由来結合領域が存在する。
本発明のCD20結合タンパク質は、CD20の細胞外部分に選択的及び特異的に結合することができる1又は2以上のポリペプチドを含む免疫グロブリン型結合領域を含む。本明細書で用いられる用語「免疫グロブリン型結合領域」とは、抗原又はエピトープなどの、1又は2以上の標的生体分子に結合することができるポリペプチド領域を指す。免疫グロブリン型結合領域は、標的分子に結合するその能力によって機能的に定義され、本発明の全ての免疫グロブリン型結合領域はCD20に結合することができる。免疫グロブリン型結合領域は、抗体又は抗体様構造から一般的に由来するが、他の起源に由来する代替足場もこの用語の範囲内に企図される。
免疫グロブリン(Ig)タンパク質は、Igドメインとして知られる構造ドメインを有する。Igドメインは長さ約70〜110アミノ酸残基の範囲であり、特徴的なIg折畳みを有し、典型的には、7〜9個の逆平行ベータ鎖が2つのベータシートに整列し、サンドイッチ様構造を形成する。Ig折畳みは、サンドイッチの内部表面上での疎水性アミノ酸相互作用と、鎖中のシステイン残基間の高度に保存されたジスルフィド結合とにより安定化される。Igドメインは、可変(IgV若しくはV−set)、定常(IgC若しくはC−set)又は中間(IgI若しくはI−set)であってもよい。いくつかのIgドメインは、抗体のエピトープに結合する抗体の特異性にとって重要である、抗原結合領域(ABR、antigen binding region)とも呼ばれる、相補性決定領域(CDR、complementarity determining region)と会合することができる。Ig様ドメインも非免疫グロブリンタンパク質中に見出され、Igスーパーファミリーのタンパク質のメンバーに基づいて分類される。HUGO遺伝子命名委員会(HGNC、Gene Nomenclature Committee)は、Ig様ドメイン含有ファミリーのメンバーの一覧を提供する。
免疫グロブリン型結合領域は、アミノ酸配列が、例えば、分子操作又はライブラリースクリーニングにより、天然抗体又は非免疫グロブリンタンパク質のIg様ドメインのものから変化した、抗体又はその抗原結合断片のポリペプチド配列であってもよい。免疫グロブリン型結合領域の生成における組換えDNA技術及びインビトロでのライブラリースクリーニングの関連性のため、抗体を再設計して、より小さいサイズ、細胞進入、又は他の治療的改善などの所望の特徴を得ることができる。可能な変動は多く、ちょうど1アミノ酸の変化から、例えば、可変領域の完全な再設計までの範囲であってもよい。典型的には、可変領域の変化を作製して、抗原結合特性を改善する、可変領域安定性を改善する、又は免疫原性応答の可能性を低下させることができる。
本発明において企図されるCD20の細胞外部分に結合するいくつかの免疫グロブリン型結合領域が存在する。ある特定の実施形態においては、免疫グロブリン型結合領域は、CD20の細胞外部分に結合することができる抗体パラトープなどの、免疫グロブリン結合領域に由来する。ある特定の他の実施形態においては、免疫グロブリン型結合領域は、任意の免疫グロブリンドメインに由来しないが、CD20の細胞外部分に対して高親和性結合を提供することにより免疫グロブリン結合領域のように機能する操作されたポリペプチドを含む。この操作されたポリペプチドは、場合により、本明細書に記載の免疫グロブリンに由来する相補性決定領域を含むか、又はそれから本質的になるポリペプチド足場を含んでもよい。
本発明のCD20結合タンパク質をCD20発現細胞に標的化するのに有用である、先行技術におけるいくつかの免疫グロブリン由来結合領域及び非免疫グロブリン操作ポリペプチドが存在する。ある特定の実施形態においては、本発明のCD20結合タンパク質の免疫グロブリン型結合領域は、単一ドメイン抗体ドメイン(sdAb、single-domain antibody domain)、ナノボディ、ラクダ科動物に由来する重鎖抗体ドメイン(VHH断片)、二価ナノボディ、軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン、免疫グロブリン新抗原受容体(IgNAR、immunoglobulin new antigen receptor)、VNAR断片、一本鎖可変(scFv、single-chain variable)断片、多量体化scFv断片(ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、二特異的タンデムscFv断片、ジスルフィド安定化抗体可変(Fv)断片、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなるジスルフィド安定化抗原結合(Fab)断片、二価F(ab’)2断片、重鎖及びCH1ドメインからなるFd断片、一本鎖Fv−CH3ミニボディ、二特異的ミニボディ、二量体CH2ドメイン断片(CH2D、CH2 domain)、Fc抗原結合ドメイン(Fcab、Fc antigen binding)、単離された相補性決定領域3(CDR3、complementary determining region 3)断片、拘束(constrained)されたフレームワーク領域3、CDR3、フレームワーク領域4(FR3−CDR3−FR4)ポリペプチド、小モジュラー免疫薬(SMIP、small modular immunopharmaceutical)ドメイン、並びにそのパラトープ及び結合機能を保持する前記の任意の遺伝子操作された対応物を含む群から選択される(概説については、Weiner L, Cell 148: 1081-4 (2012); Ahmad Z et al., Clin Dev Immunol 2012: 980250 (2012)を参照されたい)。
ある特定の他の実施形態と一致して、本発明のCD20結合タンパク質の免疫グロブリン型結合領域は、CD20に対する高親和性及び特異的結合などの類似する機能的特徴を示し、より高い安定性又は低下した免疫原性などの、改善された特徴の操作を可能にする免疫グロブリンドメインに対する操作された代替足場を含んでもよい。本発明のCD20結合タンパク質のある特定の実施形態については、免疫グロブリン型結合領域は、操作されたフィブロネクチン由来第10フィブロネクチンIII型(10Fn3)ドメイン(モノボディ;AdNectin(商標)、又はAdNexin(商標));操作されたテナシン由来テナシンIII型ドメイン(Centryn(商標));操作されたアンキリンリピートモチーフ含有ポリペプチド(DARPin(商標));操作された低密度リポタンパク質受容体由来Aドメイン(LDLR−A、low-density-lipoprotein-receptor-derived, A domain)(Avimer(商標));リポカリン(アンチカリン);操作されたプロテアーゼ阻害剤由来Kunitzドメイン;操作されたプロテインA由来Zドメイン(Affibody(商標));操作されたガンマ−B結晶由来足場又は操作されたユビキチン由来足場(Affilin);Sac−7d由来ポリペプチド(Nanoffitin(登録商標)又はアフィチン);操作されたFyn由来SH2ドメイン(Fynomer(登録商標));及び操作された抗体模倣物並びにその結合機能を保持する前記の任意の遺伝子操作された対応物を含む群から選択される(Worn A, Pluckthun A, J Mol Biol 305: 989-1010 (2001); Xu L et al., Chem Biol 9: 933-42 (2002); Wikman M et al., Protein Eng Des Sel 17: 455-62 (2004); Binz H et al., Nat Biotechnol 23: 1257-68 (2005); Holliger P, Hudson P, Nat Biotechnol 23: 1126-36 (2005); Gill D, Damle N, Curr Opin Biotech 17: 653-8 (2006); Koide A, Koide S, Methods Mol Biol 352: 95-109 (2007))。
本明細書で用いられる用語「結合領域」に包含されるタンパク質構築物の非限定例としては、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片;並びに(vi)単離されたCDRが挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメインVL及びVHは別々の遺伝子によってコードされるが、それらを合成リンカーにより組換えによって接続し、VLとVHドメインが対形成して一価分子(一本鎖Fv(scFv)として知られる)を形成する一本鎖タンパク質を作製することができる。最も一般的に用いられるリンカーは、15残基の(Gly4Ser)3ペプチドであるが、他のリンカーも当業界で公知である。一本鎖抗体も、本明細書で用いられる用語「結合領域」に包含されることが意図される。
また、結合機能を提供する代替足場が本明細書で用いられる用語「結合領域」の範囲内にあることも予測される。代替足場のいくつかの例としては、ダイアボディ、CDR3ペプチド、拘束された(constrained)FR3−CDR3−FR4ペプチド、ナノボディ(米国特許出願公開第2008/0107601号明細書)、二価ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、サメ可変IgNARドメイン(国際公開第WO03/014161号パンフレット)、ミニボディ及び標的分子結合機能を保持する任意の断片又は化学的に若しくは遺伝子操作された対応物が挙げられる。
本明細書で用いられる「抗体由来配列」は、アミノ酸配列が天然抗体のものから変化した抗体又はその抗原結合断片のアミノ酸配列を意味する。抗体の生成における組換えDNA技術の関連性のため、抗体を再設計して所望の特徴を得ることができる。可能な変動は多く、例えば、可変領域の、ちょうど1個又は数個のアミノ酸の変化から、完全な再設計までの範囲である。典型的には、可変領域の変化を作製して、抗原結合特性を改善する、可変領域安定性を改善するか、又は免疫原性の危険性を低下させることができる。
本明細書で用いられる用語「重鎖可変(VH、heavy chain variable)ドメイン」又は「軽鎖可変(VL、light chain variable)ドメイン」はそれぞれ、任意の天然抗体VH又はVLドメイン(例えば、ヒトVH又はVLドメイン)並びに対応する天然抗体の少なくとも定性的抗原結合能力を保持するその任意の誘導体(例えば、天然マウスVH又はVLドメインに由来するヒト化VH又はVLドメイン)を指す。VH又はVLドメインは、3つのCDRにより中断された「フレームワーク」領域からなる。フレームワーク領域は、抗原のエピトープへの特異的結合のためにCDRを整列させるように働く。アミノ末端からカルボキシル末端に向かって、VH及びVLドメインは共に、以下のフレームワーク(FR)及びCDR領域:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割当ては、Kabat, Sequences of Proteins of Immunological Interest (5th ed., National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991)、又はChothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196: 901-17 (1987); Chothia et al., Nature 342:878-83, (1989)の定義に従う。VHドメインのCDR1、2、及び3はまた、本明細書ではそれぞれHCDR1、HCDR2、及びHCDR3とも呼ばれる;VLドメインのCDR1、2、及び3はまた、本明細書ではそれぞれLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とも呼ばれる。
本発明のいくつかの実施形態においては、結合領域は、特定のセットの相補性決定領域、又はCDRを含む抗体又は抗体由来配列を含む。CDRは、抗体のその抗原決定基への特異的結合にとって必要である抗体の可変ドメイン内の規定の配列領域である。本発明の一実施形態においては、CDRは、抗体の重鎖に由来する3つのCDRと、抗体の軽鎖に由来する3つのCDRとを含む。いくつかの実施形態においては、3つの重鎖CDRは、(a)それぞれ、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、それぞれ、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;(b)それぞれ、配列番号21、配列番号22、及び配列番号23に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、それぞれ、配列番号24、配列番号10、及び配列番号11に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;又は(c)それぞれ、配列番号21、配列番号22、及び配列番号27に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメインと、(ii)それぞれ、配列番号28、配列番号10、及び配列番号29に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含む。さらに、本発明のある特定の実施形態においては、結合領域は、配列番号4のアミノ酸2〜245を含むか、又はそれから本質的になる。
このシステムは、様々な多様な免疫グロブリン型結合領域を、同じ志賀毒素エフェクター領域と共に用いてCD20の異なる細胞外エピトープを標的とすることができる点でモジュラー式である。当業者であれば、CD20の細胞外部分に結合することができる免疫グロブリン型の任意のCD20結合領域を用いて、志賀毒素エフェクター領域に連結される免疫グロブリン型結合領域を設計又は選択し、本発明のCD20結合タンパク質を産生することができることを理解できる。
B.志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来する志賀毒素エフェクター領域
本発明の目的のために、語句「志賀毒素エフェクター領域」とは、リボソームを不活化し、細胞毒性効果及び/又は細胞増殖抑制効果をもたらすことができる志賀毒素ファミリーのメンバーの志賀毒素Aサブユニットに由来するポリペプチド領域を指す。志賀毒素ファミリーのメンバーとは、構造的及び機能的に関連する、特に、志賀赤痢菌(S. dysenteriae)及び大腸菌(E. coli)から単離される毒素(Johannes, Nat Rev Microbiol 8: 105-16 (2010))である天然タンパク質毒素のファミリーの任意のメンバーを指す。例えば、志賀毒素ファミリーは、志賀赤痢菌血清型1から単離される真の志賀毒素(Stx)、腸管出血性大腸菌の血清型から単離される志賀様毒素1バリアント(SLT1又はStx1又はSLT−1又はSlt−I)、及び腸管出血性大腸菌の血清型から単離される志賀様毒素2バリアント(SLT2又はStx2又はSLT−2)を包含する。SLT1はStxとただ1個の残基で異なり、両方ともベロ細胞毒素又はベロ毒素(VT、Verotoxin)と呼ばれている(O'Brien, Curr Top Microbiol Immunol 180: 65-94 (1992))。SLT1及びSLT2バリアントはアミノ酸配列レベルでは互いに約53〜60%類似するに過ぎないが、それらは志賀毒素ファミリーのメンバーと共通の酵素活性及び細胞毒性の機構を共有する(Johannes, Nat Rev Microbiol 8: 105-16 (2010))。定義されたサブタイプStx1a、Stx1c、Stx1d、及びStx2a〜gなどの、39を超える異なる志賀毒素が記載されている(Scheutz F et al., J Clin Microbiol 50: 2951-63 (2012))。志賀毒素をコードする遺伝子は水平遺伝子伝播により細菌種間で拡散し得るため、志賀毒素ファミリーのメンバーは任意の細菌種に自然に限定されない(Strauch E et al., Infect Immun 69: 7588-95 (2001); Zhaxybayeva O, Doolittle W, Curr Biol. 21: R242-6 (2011))。種間伝播の一例として、志賀毒素は患者から単離されたアシネトバクター・ヘモリティクス(A. haemolyticus)の株中で発見された(Grotiuz G et al., J Clin Microbiol 44: 3838-41 (2006))。志賀毒素をコードするポリヌクレオチドが新しい亜種又は種に進入すると、志賀毒素アミノ酸配列は、志賀毒素ファミリーのメンバーと共通の細胞毒性の機能を依然として維持しながら、遺伝子ドリフト及び/又は選択圧のためわずかな配列変化を生じることができると推定される(Scheutz, J Clin Microbiol 50: 2951-63 (2012)を参照されたい)。
本発明の志賀毒素エフェクター領域は、任意の形態のその天然志賀毒素Bサブユニットから解離した志賀毒素Aサブユニットに由来するポリペプチドを含むか、又はそれから本質的になる。さらに、本発明のCD20結合タンパク質は、志賀毒素Bサブユニットの機能的結合ドメインを含むか、又はそれから本質的になる任意のポリペプチドを含まない。むしろ、志賀毒素Aサブユニット由来領域は、異種CD20結合領域と機能的に関連し、CD20発現細胞への細胞標的化をもたらす。
ある特定の実施形態においては、本発明の志賀毒素エフェクター領域は、完全長志賀毒素Aサブユニット(例えば、SLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号25)、又はSLT−2A(配列番号26))を含むか、又はそれから本質的になってもよく、天然志賀毒素Aサブユニットは、そのアミノ末端に約22アミノ酸のシグナル配列を含有する前駆体形態を含んでもよく、このシグナル配列は除去されて成熟志賀毒素Aサブユニットを産生することに留意されたい。「毒素エフェクター領域」の1つの特定例は、志賀様毒素1(SLT−1)(配列番号1)のA鎖に由来するものである。SLT−1のA鎖は、残基1〜239に及ぶ酵素(毒性)ドメインを有する293アミノ酸から構成される。他の実施形態においては、本発明の志賀毒素エフェクター領域は、完全長志賀毒素Aサブユニットよりも短いトランケート型志賀毒素Aサブユニットを含むか、又はそれから本質的になる。
志賀様毒素1Aサブユニットトランケーションは触媒的に活性であり、インビトロでリボソームを酵素的に不活化し、細胞内で発現された場合に細胞毒性である(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。完全な酵素活性を示す最も小さい志賀毒素Aサブユニット断片は、Slt1Aの残基1〜239から構成されるポリペプチドである(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。実質的な触媒活性を保持すると報告された志賀毒素Aサブユニットの最も小さい断片は、StxAの残基75〜247(Al-Jaufy, Infect Immun 62: 956-60 (1994))であり、真核細胞内でデノボで発現されるStxAトランケーションは細胞質ゾルに到達し、リボソームの触媒的不活化を示すためには最大でも残基240のみを必要とする(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。
志賀毒素エフェクター領域は一般に、完全長Aサブユニットより小さくてもよい。志賀毒素エフェクター領域は、アミノ酸位置77〜239に由来するポリペプチド領域(SLT−1A 配列番号1;StxA 配列番号25、若しくはSLT−2A 配列番号26)又は志賀毒素ファミリーのメンバーの他のAサブユニットにおける等価物を維持することが好ましい。例えば、本発明のある特定の実施形態においては、SLT−1Aに由来する志賀毒素エフェクター領域は、配列番号1のアミノ酸75〜251、配列番号1の1〜241、配列番号1の1〜251、又は配列番号1のアミノ酸1〜261を含むか、又はそれから本質的になってもよい。同様に、Stxに由来する志賀毒素エフェクター領域は、配列番号25のアミノ酸75〜251、配列番号25の1〜241、配列番号25の1〜251、又は配列番号25のアミノ酸1〜261を含むか、又はそれから本質的になってもよい。さらに、SLT−2に由来する志賀毒素エフェクター領域は、配列番号26のアミノ酸75〜251、配列番号26の1〜241、配列番号26の1〜251、又は配列番号26のアミノ酸1〜261を含むか、又はそれから本質的になってもよい。
本発明はさらに、志賀毒素エフェクター領域が最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40以上のアミノ酸残基によって(しかし、少なくとも85%、90%、95%、99%以上のアミノ酸配列同一性を保持するもの以下によって)天然志賀毒素Aサブユニットと異なる、本発明のCD20結合タンパク質のバリアントを提供する。かくして、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来するポリペプチド領域は、天然志賀毒素Aサブユニットに対して少なくとも85%、90%、95%、99%以上のアミノ酸配列同一性が維持される限り、元の配列からの付加、欠失、トランケーション、又は他の変化を含んでもよい。
従って、ある特定の実施形態においては、志賀毒素エフェクター領域は、SLT−1A(配列番号1)、Stx(配列番号25)、及び/又はSLT−2A(配列番号26)などの、天然志賀毒素Aサブユニットに対して少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%又は99.7%の全体的配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれから本質的になる。
場合により、完全長又はトランケート型の志賀毒素Aサブユニットは、1又は2以上の変異(例えば、置換、欠失、挿入又は逆位)を含んでもよい。強力に細胞毒性である特定の実施形態においては、志賀毒素エフェクター領域は、宿主細胞形質転換、トランスフェクション、感染若しくは誘導の周知の方法によるか、又は志賀毒素エフェクター領域と連結された免疫グロブリン型結合領域を標的とすることにより媒介される内在化により、細胞中への進入後に細胞毒性を保持するために十分な配列同一性を有する。志賀毒素Aサブユニットにおける酵素活性及び/又は細胞毒性にとって最も重要な残基は、以下の残基位置:特に、アスパラギン−75、チロシン−77、グルタミン酸−167、アルギニン−170、及びアルギニン−176にマッピングされた(Di, Toxicon 57: 535-39 (2011))。本発明の実施形態のいずれかにおいて、志賀毒素エフェクター領域は、必須ではないが、好ましくは、StxA、SLT−1A中の位置77、167、170、及び203に見出されるものなどの位置の1若しくは2以上の保存されたアミノ酸、又は細胞毒性活性にとって典型的に必要とされる志賀毒素ファミリーの他のメンバー中の等価な保存された位置を維持してもよい。細胞死を引き起こす本発明のCD20結合タンパク質の能力、例えば、その細胞毒性を、当業界で周知のいくつかのアッセイの任意の1又は2以上を用いて測定することができる。
本発明のある特定の実施形態においては、1又は2以上のアミノ酸残基を変異又は欠失させて、志賀毒素エフェクター領域の細胞毒性活性を低下させるか、又は除去することができる。志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットの細胞毒性を、変異又はトランケーションによって無効化又は除去することができる。位置標識されたチロシン−77、グルタミン酸−167、アルギニン−170、チロシン−114、及びトリプトファン−203は、Stx、Stx1、及びStx2の触媒活性にとって重要であることが示されている(Hovde C et al., Proc Natl Acad Sci USA 85: 2568-72 (1988);Deresiewicz R et al., Biochemistry 31: 3272-80 (1992);Deresiewicz R et al., Mol Gen Genet 241: 467-73 (1993);Ohmura M et al., Microb Pathog 15: 169-76 (1993);Cao C et al., Microbiol Immunol 38: 441-7 (1994);Suhan M, Hovde C, Infect Immun 66: 5252-9 (1998))。グルタミン酸−167とアルギニン−170の両方を変異させると、無細胞リボソーム不活化アッセイにおいてSlt−IA1の酵素活性が除去された(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。小胞体におけるSlt−IA1のデノボ発現を用いる別の手法において、グルタミン酸−167とアルギニン−170の両方を変異させると、その発現レベルでSlt−IA1断片の細胞毒性が除去された(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。トランケーション分析により、残基75〜268のStxAの断片は依然としてインビトロで有意な酵素活性を保持することが示された(Haddad, J Bacteriol 175: 4970-8 (1993))。残基1〜239を含有するSlt−IA1のトランケートされた断片は、インビトロで有意な酵素活性及び細胞質ゾル中でのデノボ発現による細胞毒性を示した(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。小胞体における残基1〜239にトランケートされたSlt−IA1断片の発現は、それが細胞質ゾル中に逆輸送することができないため、細胞毒性的ではなかった(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。
本発明の目的のために、志賀毒素エフェクター領域及びCD20結合領域について互いに、又はCD20結合タンパク質全体のN末端及びC末端に関して、特定の順序又は向きは固定されない(例えば、図1を参照されたい)。上記のCD20結合タンパク質において、CD20結合領域と志賀毒素エフェクター領域を、互いに直接連結する、及び/又は当業界で周知の1若しくは2以上のリンカーなどの、1若しくは2以上の介在ポリペプチド配列を介して互いに好適に連結することができる。
II.CD20結合タンパク質の特定の構造変化の例
本発明のある特定の実施形態のうち、CD20結合タンパク質は、SLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号25)、又はSLT−2A(配列番号26)のアミノ酸75〜251を含むか、又はそれから本質的になる志賀毒素エフェクター領域を含む。さらなる実施形態は、志賀毒素エフェクター領域がSLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号25)、及び/又はSLT−2A(配列番号26)のアミノ酸1〜241を含むか、又はそれから本質的になるCD20結合タンパク質である。さらなる実施形態は、志賀毒素エフェクター領域がSLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号25)、及び/又はSLT−2A(配列番号26)のアミノ酸1〜251を含むか、又はそれから本質的になるCD20結合タンパク質である。さらなる実施形態は、志賀毒素エフェクター領域がSLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号25)、及び/又はSLT−2A(配列番号26)のアミノ酸1〜261を含むか、又はそれから本質的になるCD20結合タンパク質である。
ある特定の実施形態について、本発明のCD20結合タンパク質は、配列番号4、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16のアミノ酸配列を含むか、又はそれから本質的になるものである。
本明細書で用いられる用語「重鎖可変(VH)ドメイン」又は「軽鎖可変(VL)ドメイン」はそれぞれ、任意の抗体VH又はVLドメイン(例えば、ヒトVH又はVLドメイン)並びに対応する天然抗体の少なくとも定性的抗原結合能力を保持するその任意の誘導体(例えば、天然マウスVH又はVLドメインに由来するヒト化VH又はVLドメイン)を指す。VH又はVLドメインは、3つのCDRにより中断された「フレームワーク」領域からなる。フレームワーク領域は、抗原のエピトープへの特異的結合のためにCDRを整列させるように働く。アミノ末端からカルボキシル末端に向かって、VHとVLドメインは両方とも、以下のフレームワーク(FR)及びCDR領域:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割当ては、Kunik V et al., PLoS Comput Biol 8: e1002388 (2012)及びKunik V et al., Nucleic Acids Res. 40: W521-4 (2012)の定義又はあるいは、Kabat, Sequences of Proteins of Immunological Interest, (5th ed., National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991);Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196: 901-17 (1987);若しくはChothia et al., Nature 342: 878-83 (1989)の定義に従う。
本発明のある特定の実施形態においては、CDRは、抗体の重鎖に由来する3つのCDRと、抗体の軽鎖に由来する3つのCDRとを含む。ある特定の実施形態においては、3つの重鎖CDRは配列番号7(HCDR1)、配列番号8(HCDR2)、及び配列番号9(HCDR3)を含むが、3つの軽鎖CDRは配列番号9(LCDR1)、配列番号10(LCDR2)及び配列番号11(LCDR3)を含む。さらに、本発明のある特定の実施形態においては、免疫グロブリン型結合領域は、配列番号4のアミノ酸2〜245を含むか、又はそれから本質的になる。
CD20の任意の細胞外部分に対する機能的なCD20結合部位を含有し、さらにより好ましくは、高い親和性(例えば、KDで示される)でCD20に結合することができる本発明のCD20結合タンパク質のポリペプチドの断片、バリアント、及び/又は誘導体を使用することは、本発明の範囲内にある。例えば、本発明は、CD20に結合することができる免疫グロブリン由来ポリペプチド配列を提供する。任意のポリペプチドを、10−5〜10−12モル/リットル、好ましくは、200nM未満の解離定数(KD)でCD20の細胞外部分に結合するこの領域に置換することができる。
かくして、少なくとも1つのポリペプチド配列が、記載されるCDR1配列、CDR2配列、及びCDR3配列からなる群から選択される限り、開示される例示的CD20結合タンパク質の免疫グロブリン型結合部位を変化させることは本発明の範囲内にある。特に、限定されるものではないが、本発明のポリペプチド配列は、4つのフレームワーク領域(FR1〜FR4)と、3つの相補性決定領域(それぞれ、CDR1〜CDR3);又は1若しくは2以上のCDRの存在に基づいて標的生体分子結合機能を示すそのようなアミノ酸配列の任意の好適な断片から本質的になってもよい。
特定の実施形態においては、免疫グロブリン型結合領域は、(i)配列番号6、配列番号7、及び配列番号8に示されるCDRアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメインと、(ii)配列番号9、配列番号10、及び配列番号11に示されるCDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメインとを含む。他の実施形態においては、免疫グロブリン型結合領域は、配列番号4のアミノ酸2〜245を含むか、又はそれから本質的になる。
本発明のある特定の実施形態のうち、免疫グロブリン型結合領域は、CD20に特異的に結合する高い親和性を示すナノボディ又は単一ドメイン免疫グロブリン由来領域VHHに由来する。一般に、ナノボディは、ラクダ科動物及び軟骨魚類(軟骨魚綱)に見出される種類の天然の単一単量体可変ドメイン抗体(sdAb)の断片から構築される。ナノボディは、単一単量体可変ドメインをトランケートして、より小さく、より安定な分子を作製することにより、これらの天然抗体から操作される。その小さいサイズのため、ナノボディは全抗体に接近可能ではない抗原に結合することができる。
III.CD20結合タンパク質の一般機能
本発明は、CD20タンパク質が、1)細胞標的化のための免疫グロブリン型CD20結合領域と、2)細胞内在化、場合により、同様に細胞死滅を誘導するための細胞毒性志賀毒素エフェクター領域を含む、特定の細胞型の選択的死滅のための様々なCD20結合タンパク質を提供する。CD20標的化免疫グロブリン型結合領域と、志賀毒素サブユニットA由来領域との連結により、CD20発現細胞に対する強力な志賀毒素細胞毒性の特異的標的化が可能になる。その好ましい実施形態において、本発明のCD20結合タンパク質は、細胞表面上に天然に存在するCD20に結合し、細胞に進入することができる。標的化された細胞型内に内在化されると、本発明のCD20結合タンパク質のある特定の実施形態は、細胞毒性志賀毒素エフェクターポリペプチド断片を標的細胞の細胞質ゾル中に送ることができる。標的化された細胞型の細胞質ゾル中に入ると、本発明のCD20結合タンパク質のある特定の実施形態は、リボソームを酵素的に不活化し、最終的に細胞を死滅させることができる。あるいは、非毒性バリアントを用いて、さらなる外来物質を送達する、及び/又は診断目的でCD20発現細胞の内部を標識することができる。
CD20を発現する様々な細胞型を、外来物質を死滅及び/又は受容するために本発明のCD20結合タンパク質により標的化することができる。特に、本発明のCD20結合タンパク質を内在化させると予測されるCD20発現細胞型は、B細胞系列内にあるものである。「B細胞系列」は、例えば、細胞表面マーカーにより、細胞学的に、若しくは別の手段でB細胞自体と同定された細胞、又は細胞学的に、若しくは別の手段でB細胞と同定された細胞からかつて、若しくは現在誘導された細胞を記載するために用いられる用語である。用語「B細胞系列」は、B細胞系列に由来する新生物細胞又はB細胞系列に対する前駆細胞を含む。特に、標的とすることができるCD20発現細胞型は、通常はCD20を発現しない細胞系列の異形成又は新生物細胞、例えば、メラノーマ細胞である。特に、本発明のCD20結合タンパク質を用いて標的化されるCD20発現細胞としては、B細胞系列又は非B細胞系列の新生物細胞、例えば、通常はB細胞と分類されないが、CD20を発現する造血系列に由来する新生物細胞が挙げられる。
A.CD20の迅速な内在化を誘導することができるCD20結合タンパク質
本発明の志賀毒素エフェクター領域は、CD20結合タンパク質を標的細胞の外部表面から標的細胞の細胞質ゾル中に移動させる、内在化機能を提供する。しかしながら、この内在化機能はまた、CD20の細胞内在化が促進又は誘導される点で加速機能でもある。本明細書及び特許請求の範囲で用いられる語句「迅速な内在化」とは、本発明のCD20結合タンパク質が、モノクローナル抗体リツキシマブなどの、先行技術の参照分子と比較して、結合時にCD20細胞内在化のための時間を増加させることを指す。
本発明の目的のために、細胞内在化は、CD20結合タンパク質の結合に起因して内在化が起こるための時間が、1H4 CD20モノクローナル抗体(Haisma et al. (1999), Blood 92: 184-90)などの、CD20抗原を認識するよく特徴付けられた抗体の結合と共に標的分子の内在化のための時間と比較して減少する場合、迅速であると考えられる。例えば、CD20抗原の内在化のタイミングは、細胞型及び抗体型について可変であるが、典型的には、結合後約6時間まで最大レベルに到達し始めない。かくして、本明細書で定義される用語「迅速」は、この6時間の標準内在化時間帯より短い。ある特定の実施形態においては、迅速は、約1時間未満の速さであってもよいが、約1時間から約2時間まで、約3時間まで、約4時間まで、約5時間までの範囲;約2時間から約3時間まで、約4時間まで、約5時間まで、約3時間から約4時間までの範囲、約5時間まで;及び約4時間から約5時間までの範囲を包含してもよい。
B.標的化された志賀毒素細胞毒性による細胞死滅
志賀毒素ファミリーのメンバーは真核細胞を死滅させるように適合化されるため、志賀毒素エフェクター領域を用いて設計されるCD20結合タンパク質は、強力な細胞死滅活性を示すことができる。志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットは、細胞の細胞質ゾル中に入ると、真核細胞を死滅させることができる酵素ドメインを含む。本発明のCD20結合タンパク質のある特定の実施形態は、この細胞毒性機構を利用する。
本発明のCD20結合タンパク質のある特定の実施形態においては、CD20の少なくとも一部が細胞外空間から接近可能となるようにCD20を発現する細胞を接触させる際に、CD20結合タンパク質は細胞死を引き起こすことができる。CD20陽性「細胞死滅」を、エクスビボで操作された標的細胞、インビトロで培養された標的細胞、インビトロで培養された組織試料内の標的細胞、又はインビボでの標的細胞などの、標的細胞の様々な条件下で本発明のCD20結合タンパク質を用いて達成することができる。
C.CD20発現細胞と非CD20発現細胞との間の選択的細胞毒性
CD20発現細胞に対する高親和性免疫グロブリン型結合領域を用いて酵素的に活性な志賀毒素領域の送達を標的化することにより、この強力な細胞死滅活性を、CD20陽性細胞型を優先的に死滅させるように限定することができる。
ある特定の実施形態においては、細胞型の混合物に本発明のCD20結合タンパク質を投与すると、CD20結合タンパク質は、細胞外CD20標的を欠く細胞型と比較して、細胞外CD20標的を示すCD20発現細胞を選択的に死滅させることができる。志賀毒素ファミリーのメンバーは真核細胞を死滅させるために適合化されているため、志賀毒素エフェクター領域を用いて設計されるCD20結合タンパク質は、強力な細胞毒性活性を示すことができる。高親和性免疫グロブリン型結合領域を用いてCD20発現細胞への酵素的に活性な志賀毒素領域の送達を標的化することにより、この強力な細胞死滅活性を、CD20発現細胞のみを優先的に死滅させるように限定することができる。
ある特定の実施形態においては、本発明のCD20結合タンパク質は、2又は3以上の異なる細胞型の混合物内で特定の細胞型の死滅を選択的又は優先的に引き起こすことができる。これにより、有意な量の細胞外CD20標的を発現しない「バイスタンダー」細胞型と比較して、少なくとも3倍の細胞毒性効果などの高い優先性で特定の細胞型に細胞毒性活性を標的化することが可能になる。これにより、有意な量のCD20を発現しないか、又は細胞表面上に有意な量のCD20を曝露していない「バイスタンダー」細胞型と比較して、少なくとも3倍の細胞毒性効果などの高い優先性で細胞表面上にCD20を発現する特定の細胞型の標的化された細胞死滅が可能になる。
ある特定のさらなる実施形態においては、2つの異なる集団の細胞型にCD20結合タンパク質を投与すると、CD20結合タンパク質は、CD20を発現しない細胞集団に対する同じCD20結合タンパク質の最大半量細胞毒性濃度(CD50)用量よりも少なくとも3倍低い用量で細胞表面上にCD20を発現する細胞集団に対するCD50により定義される細胞死を引き起こすことができる。
ある特定の実施形態においては、細胞表面上にCD20を発現する細胞型の集団に対する細胞毒性活性は、この実施形態のCD20結合領域の任意の細胞外CD20標的と物理的にカップリングしない細胞型の集団に対する細胞毒性活性よりも少なくとも3倍高い。本発明によれば、選択的細胞毒性を、(a)この実施形態のCD結合領域の細胞外CD20標的を発現する細胞の集団に対する細胞毒性と、(b)この実施形態のCD20結合領域の任意の細胞外CD20標的と物理的にカップリングしない細胞型の細胞集団に対する細胞毒性との比(a/b)を単位として定量することができる。ある特定の実施形態においては、細胞毒性比は、CD20を発現しない細胞又は細胞型の集団と比較して、CD20を発現する細胞又は細胞型の集団について少なくとも3倍、5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、75倍、100倍、250倍、500倍、750倍、又は1000倍高い選択的細胞毒性を示す。
この優先的細胞死滅機能により、様々な条件下で、及びエクスビボで操作された細胞型の混合物、細胞型の混合物と共にインビトロで培養された組織などの非標的化バイスタンダー細胞の存在下、又は複数の細胞型の存在下でインビボで(例えば、インサイチュで、若しくは多細胞生物内のその天然の位置で)、本発明のある特定のCD20結合タンパク質により標的細胞を死滅させることができる。
さらに、場合により、触媒的に不活性な形態のCD20結合タンパク質を診断機能のために用いることができる。本発明のCD20結合タンパク質への当業界で公知のさらなる診断剤のコンジュゲーションは、患者又は生検試料中のB細胞系列の個々の免疫細胞又はがん細胞の細胞内器官(例えば、ゴルジ体、小胞体、及び細胞質ゾル画分)の画像化を可能にする。例えば、これは、新生物細胞型の診断、経時的な抗がん剤療法の進行のアッセイ、及び/又は腫瘍塊の外科的切除後の残存がん細胞の存在の評価において有用であり得る。
D.さらなる外来物質の送達
CD20結合タンパク質はCD20の細胞外部分への結合後にCD20の細胞内在化を誘導することができるため、本発明のCD20結合タンパク質のある特定の実施形態を用いて、さらなる外来物質を、CD20発現細胞の内部に送達することができる。ある意味では、CD20結合タンパク質全体が、細胞に進入する外来物質である;かくして、「さらなる」外来物質は、CD20結合タンパク質コア自体以外に連結された物質である。
本明細書で用いられる「さらなる外来物質」とは、一般的には天然標的細胞内には存在しないことが多い1又は2以上の分子を指し、本発明のCD20結合タンパク質を用いてそのような物質を細胞の内部に特異的に輸送することができる。一般に、さらなる外来物質は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及びポリヌクレオチドから選択される。ペプチドであるさらなる外来物質の一例は、インフルエンザMatrix 58−66ペプチド(配列番号3)などの、インフルエンザウイルス抗原である。その抗原を、CD20を発現する標的細胞中に送達することができるCD20結合タンパク質の1つの例示的実施形態は、配列番号16に提供される。
さらなる外来物質は、インフルエンザMatrix 58−66ペプチド(配列番号3)などの、CD20結合タンパク質コア構造内の内部ポリペプチド配列を含んでもよい。同様に、さらなる外来物質は、CD20結合構造の末端に連結された末端に位置するポリペプチド配列を含んでもよい。さらなる外来抗原として、その抗原を、細胞表面上にCD20を発現する標的細胞中に送達することができる本発明のCD20結合タンパク質のある特定の実施形態は、配列番号4、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16を含むか、又はそれから本質的になるCD20結合タンパク質である。
本発明のCD20結合タンパク質に連結することができる外来物質のさらなる例としては、細菌により感染した抗原提示細胞に特徴的なものなどの、細菌タンパク質に由来するものなどの抗原が挙げられる。さらなる外来物質のさらなる例は、がんにおいて変異したタンパク質又はがんにおいて異常に発現されるタンパク質である。さらなる外来物質のさらなる例としては、外来抗原として機能することができるT細胞相補性決定領域が挙げられる。
本発明のCD20結合タンパク質に連結することができる外来物質のさらなる例としては、酵素などの、抗原以外のタンパク質が挙げられる。さらなる型の外来物質は、ポリヌクレオチドである。特に、輸送することができるポリヌクレオチドは、低分子干渉RNA(siRNA)及びマイクロRNA(miRNA)などの、調節機能を有するように製剤化されたものである。
外来物質のさらなる例としては、細菌に感染した抗原提示細胞に特徴的なものなどの、細菌タンパク質に由来するものなどの抗原が挙げられる。外来抗原のさらなる例は、がんにおいて変異したタンパク質又はがんにおいて異常に発現されるタンパク質に由来するものである。T細胞相補性決定領域(CDR)は、本発明の目的のための外来抗原としても作用することができる。外来物質のさらなる例としては、酵素などの、抗原以外のタンパク質が挙げられる。さらなる型の外来物質は、核酸である。特に、輸送することができる核酸は、低分子干渉RNA(siRNA)及びマイクロRNA(miRNA)などの、調節機能を有するように製剤化されたものである。
全体的な構造及び機能を維持するCD20結合タンパク質のポリペプチド配列の変化
特定の上記実施形態において、本発明のCD20結合タンパク質は、ポリペプチド領域中に導入された1又は2以上のアミノ酸置換が存在するバリアントである。本明細書で用いられる用語「保存的置換」は、1又は2以上のアミノ酸が別の生物学的に類似するアミノ酸残基により置き換えられることを示す。例としては、類似する特性を有するアミノ酸残基、例えば、小さいアミノ酸、酸性アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸及び芳香族アミノ酸の置換を含む(例えば、以下の表Bを参照されたい)。通常は内因性の哺乳動物ペプチド及びタンパク質中には見出されない残基との保存的置換の例は、アルギニン又はリシン残基の、例えば、オルニチン、カナバリン、アミノエチルシステイン、又は別の塩基性アミノ酸との保存的置換である。ペプチド及びタンパク質における表現型的にサイレントな置換に関するさらなる情報については、例えば、Bowie J et al., Science 247: 1306-10 (1990)を参照されたい。以下の図表は、物理化学的特性により分類されたアミノ酸の保存的置換である。I:中性、親水性、II:酸性及びアミド、III:塩基性、IV:疎水性、V:芳香族、嵩高いアミノ酸。
ある特定の実施形態においては、本発明のCD20結合タンパク質は、それが単独で、又はCD20結合タンパク質の成分として測定可能な生物学的活性を保持する限り、本明細書に記載のポリペプチド配列と比較して、多くても20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1アミノ酸の置換を有する本発明のポリペプチド領域の機能的断片又はバリアントを含んでもよい。CD20結合タンパク質のバリアントは、細胞毒性の変化、細胞増殖抑制効果の変化、免疫原性の変化、及び/又は血清半減期の変化などの所望の特性を達成するために、免疫グロブリン型結合領域又は志賀毒素エフェクター領域の中などの、1若しくは2以上のアミノ酸を変化させるか、又は1若しくは2以上のアミノ酸を欠失させるか、若しくは挿入することにより、CD20結合タンパク質のポリペプチドを変化させる結果として、本発明の範囲内にある。本発明のCD20結合タンパク質のポリペプチドはさらに、シグナル配列を含むか、又は含まなくてもよい。
ある特定の実施形態においては、本発明のCD20結合タンパク質は、それが細胞毒性、細胞外標的生体分子結合、酵素的触媒作用、又は細胞内ルーティングなどの、測定可能な生物学的活性を保持する限り、本明細書に記載のCD20結合タンパク質のアミノ酸配列のいずれか一つに対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のアミノ酸配列同一性を有する。免疫グロブリン型結合領域は、それがその細胞外標的生体分子への結合機能を保持する限り、本明細書に記載のCD20結合タンパク質のアミノ酸配列と異なっていてもよい。ABRのアミノ酸配列が同一である場合、結合機能が保持される可能性が最も高い。例えば、アミノ酸同一性の程度を決定するために、ABRを形成するアミノ酸残基が無視される配列番号4又は配列番号16に対する85%のアミノ酸同一性から本質的になるCD20結合タンパク質は、特許請求の範囲内にある。当業者であれば、標準的な技術を用いることにより結合機能を決定することができる。
ある特定の実施形態においては、志賀毒素エフェクター領域を変化させて、志賀毒素エフェクター領域の酵素活性及び/又は細胞毒性を変化させることができる。この変化は、変化した志賀毒素エフェクター領域が成分であるCD20結合タンパク質の細胞毒性の変化をもたらしても、又はもたらさなくてもよい。可能な変化としては、トランケーション、欠失、逆位、挿入及び置換からなる群から選択される志賀毒素エフェクター領域に対する変異が挙げられる。
志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットの細胞毒性を、変異又はトランケーションにより無効化又は除去することができる。位置標識されたチロシン−77、グルタミン酸−167、アルギニン−170、チロシン−114、及びトリプトファン−203は、Stx、Stx1、及びStx2の触媒活性にとって重要であることが示されている(Hovde C et al., Proc Natl Acad Sci USA 85: 2568-72 (1988);Deresiewicz R et al., Biochemistry 31: 3272-80 (1992);Deresiewicz R et al., Mol Gen Genet 241: 467-73 (1993);Ohmura M et al., Microb Pathog 15: 169-76 (1993);Cao C et al., Microbiol Immunol 38: 441-7 (1994);Suhan M, Hovde C, Infect Immun 66: 5252-9 (1998))。グルタミン酸−167とアルギニン−170の両方を変異させると、無細胞リボソーム不活化アッセイにおいてSlt−IA1の酵素活性が除去された(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。小胞体におけるSlt−IA1のデノボでの発現を用いる別の手法において、グルタミン酸−167とアルギニン−170の両方を変異させると、その発現レベルでSlt−IA1断片細胞毒性が除去された(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。トランケーション分析により、残基75〜268のStxAの断片がインビトロで有意な酵素活性を依然として保持することが示された(Haddad, J Bacteriol 175: 4970-8 (1993))。残基1〜239を含有するSlt−IA1のトランケートされた断片は、インビトロで有意な酵素活性及び細胞質ゾル中でのデノボでの発現による細胞毒性を示した(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。小胞体中での残基1〜239にトランケートされたSlt−IA1断片の発現は、それが細胞質ゾル中に逆輸送することができないため、細胞毒性ではなかった(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。
志賀毒素Aサブユニット中の酵素活性及び/又は細胞毒性にとって最も重要な残基は、以下の残基位置:特に、アスパラギン−75、チロシン−77、グルタミン酸−167、アルギニン−170、及びアルギニン−176にマッピングされた(Di, Toxicon 57: 535-39 (2011))。特に、グルタミン酸−E167からリシン及びアルギニン−176からリシンへの変異を含有するStx2Aの二重変異体構築物は、完全に不活化されたが、Stx1及びStx2中の多くの単一の変異は、細胞毒性の10倍の低下を示した。さらに、Stx1Aの1〜239又は1〜240へのトランケーションはその細胞毒性を低下させ、同様に、Stx2Aの保存的疎水性残基へのトランケーションはその細胞毒性を低下させた。
志賀様毒素1Aサブユニットトランケーションは触媒的に活性であり、インビトロでリボソームを酵素的に不活化することができ、及び細胞内で発現された場合に細胞毒性的である(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。完全な酵素活性を示す最も小さい志賀毒素Aサブユニット断片は、Slt1Aの残基1〜239から構成されるポリペプチドである(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。実質的な触媒活性を保持すると報告された志賀毒素Aサブユニットの最も小さい断片はStxAの残基75〜247であったが(Al-Jaufy, Infect Immun 62: 956-60 (1994))、真核細胞内でデノボで発現されるStxAトランケーションは、細胞質ゾルに到達し、リボソームの触媒的不活化を示すためには最大で残基240のみを必要とする(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。
SLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号25)、又はSLT−2A(配列番号26)に由来する特定の実施形態においては、これらの変化は、位置75のアスパラギン、位置77のチロシン、位置114のチロシン、位置167のアスパラギン酸、位置170のアルギニン、位置176のアルギニンの置換、及び/又は位置203のトリプトファンの置換を含む。位置75のアスパラギンからアラニンへの置換、位置77のチロシンからセリンへの置換、位置114のチロシンからアラニンへの置換、位置167のアスパラギン酸からグルタミン酸への置換、位置170のアルギニンからアラニンへの置換、位置176のアルギニンからリシンへの置換、及び/又は位置203のトリプトファンからアラニンへの置換などの、そのような置換の例は、先行技術に基づけば当業者には公知である。
本発明のCD20結合タンパク質は、場合により、当業界で公知の治療剤及び/又は診断剤を含んでもよい1又は2以上のさらなる薬剤にコンジュゲートさせてもよい。
CD20結合タンパク質の産生、製造、及び精製
本発明のCD20結合タンパク質を、当業者には周知の生化学的操作技術を用いて産生することができる。例えば、本発明のCD20結合タンパク質を、標準的な合成方法により、組換え発現系の使用により、又は任意の他の好適な方法により製造することができる。かくして、CD20結合タンパク質を、例えば、(1)標準的な固相若しくは液相方法を用いて、段階的に、若しくは断片集合によりCD20結合タンパク質のポリペプチド若しくはポリペプチド成分を合成し、最終ペプチド化合物産物を単離及び精製するステップ;(2)宿主細胞中でCD20結合タンパク質のポリペプチド若しくはポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチドを発現させ、宿主細胞若しくは宿主細胞培養物から発現産物を回収するステップ;又は(3)CD20結合タンパク質のポリペプチド若しくはポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチドを無細胞でインビトロで発現させ、発現産物を回収するステップ;又は(1)、(2)若しくは(3)の方法の任意の組合せによりペプチド成分の断片を取得した後、その断片を接続(例えば、ライゲート)して、ペプチド成分を取得し、ペプチド成分を回収するステップを含む方法などのいくつかの方法で合成することができる。
固相又は液相ペプチド合成を用いて本発明のCD20結合タンパク質のポリペプチド又はポリペプチド成分を合成することが好ましい。本発明のCD20結合タンパク質を、好適には、標準的な合成方法により製造することができる。かくして、ペプチドを、例えば、標準的な固相又は液相方法により、段階的に、又は断片集合によりペプチドを合成し、最終ペプチド産物を単離及び精製するステップを含む方法により合成することができる。この文脈において、国際公開第WO1998/11125号パンフレット、又は特に、Fields, G et al., Principles and Practice of Solid-Phase Peptide Synthesis (Synthetic Peptides, Gregory A. Grant (ed.), Oxford University Press, U.K., 2nd ed., 2002)及びその中の合成例を参照することができる。
本発明のCD20結合タンパク質を、当業界で周知の組換え技術を用いて調製(産生及び精製)することができる。一般に、コードするポリヌクレオチドを含むベクターを形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞を培養し、細胞培養物からポリペプチドを回収することによりポリペプチドを調製する方法は、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, U.S., 1989);Dieffenbach et al., PCR Primer: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y., U.S., 1995)に記載されている。任意の好適な宿主細胞を用いて、本発明のCD20結合タンパク質を産生させることができる。宿主細胞は、本発明のポリペプチドの発現を誘導する1又は2以上の発現ベクターを安定的に、若しくは一過的にトランスフェクトされた、形質転換された、形質導入された、又は感染させた細胞であってもよい。さらに、本発明のCD20結合タンパク質を、CD20結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを改変し、1若しくは2以上のアミノ酸の変化又は1若しくは2以上のアミノ酸の挿入をもたらし、細胞毒性の変化、細胞増殖抑制効果の変化、免疫原性の変化、及び/又は血清半減期の変化などの所望の特性を達成することによって産生することができる。
従って、本発明はまた、上記の方法に従って本発明のCD20結合タンパク質を産生し、本発明のポリペプチドの一部又は全部をコードするポリヌクレオチド、宿主細胞中に導入された場合に本発明のポリペプチドの一部若しくは全部をコードすることができる本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び/又は本発明のポリヌクレオチド若しくは発現ベクターを含む宿主細胞を使用する方法も提供する。
ポリペプチド又はタンパク質を宿主細胞又は無細胞系において組換え技術を用いて発現させる場合、高純度のものであるか、又は実質的に均一である調製物を得るために、宿主細胞因子などの他の成分から所望のポリペプチド又はタンパク質を分離(又は精製)することが有利である。遠心分離技術、抽出技術、クロマトグラフィー技術及び分画技術(ゲル濾過によるサイズ分離、イオン交換カラム、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、DEAEなどのシリカ若しくは陽イオン交換樹脂上でのクロマトグラフィー、クロマト分画、及び夾雑物を除去するためのプロテインAセファロースクロマトグラフィーによる電荷分離)、並びに沈降技術(例えば、エタノール沈降又は硫酸アンモニウム沈降)などの、当業界で周知の方法により、精製を達成することができる。任意数の生化学的精製技術を用いて、本発明のCD20結合タンパク質の純度を増加させることができる。ある特定の実施形態においては、本発明のCD20結合タンパク質を、場合によりホモ多量体形態(すなわち、2又は3以上の同一のCD20結合タンパク質のタンパク質複合体)で精製することができる。
以下の実施例は、本発明のCD20結合タンパク質を産生するための方法の非限定例、並びに開示される例示的CD20結合タンパク質に関するCD20結合タンパク質産生の特異的であるが、非限定的な態様の説明である。
CD20結合タンパク質を含む医薬組成物
本発明は、以下にさらに詳細に説明される状態、疾患、障害、又は症状(例えば、がん、悪性腫瘍、非悪性腫瘍、及び免疫障害)の治療又は予防のための、医薬組成物における、単独での、又は1若しくは2以上のさらなる治療剤と組み合わせた使用のためのCD20結合タンパク質を提供する。本発明は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤、又は媒体と一緒に、本発明のCD20結合タンパク質、又は本発明によるその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を含む医薬組成物をさらに提供する。ある特定の実施形態においては、本発明の医薬組成物は、ホモ多量体及び/又はヘテロ多量体形態の本発明のCD20結合タンパク質を含んでもよい。医薬組成物は、以下にさらに詳細に説明される疾患、状態、障害、又は症状を治療、改善、又は予防する方法において有用である。それぞれのそのような疾患、状態、障害、又は症状は、本発明による医薬組成物の使用に関して別々の実施形態であると想定される。本発明は、以下により詳細に説明されるような、本発明による治療の少なくとも1つの方法における使用のための医薬組成物をさらに提供する。
本明細書で用いられる用語「患者」と「対象」は、少なくとも1つの疾患、障害、又は状態の症状、兆候、及び/又は指示を呈する、任意の生物、一般には、ヒト及び動物などの脊椎動物を指すように互換的に用いられる。これらの用語は、霊長類、家畜動物(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、ペット(例えば、ネコ、イヌなど)及び実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラットなど)の非限定例などの哺乳動物を含む。
本明細書で用いられる場合、「治療する」、「治療すること」又は「治療」及びその文法的な変形は、有益な、又は望ましい臨床結果を得るための手法を指す。この用語は、状態、障害若しくは疾患の開始若しくは発症速度を減速させること、それと関連する症状を軽減若しくは緩和すること、状態の完全若しくは部分的な退縮を生成すること、又は上記のいずれかのいくつかの組合せを指してもよい。本発明の目的のために、有益な、又は望ましい臨床結果としては、限定されるものではないが、検出可能であっても、又は検出不可能であっても、症状の軽減若しくは緩和、疾患の程度の減少、疾患状態の安定化(例えば、悪化しないこと)、疾患進行の遅延若しくは減速、疾患状態の改善若しくは緩和、及び寛解(部分的又は全体的)が挙げられる。「治療する」、「治療すること」又は「治療」はまた、治療を受けない場合に予想される生存期間と比較した生存の延長を意味してもよい。かくして、治療を必要とする対象(例えば、ヒト)は、問題の疾患又は障害に既に罹患した対象であってもよい。用語「治療する」、「治療すること」又は「治療」は、治療の非存在下と比較した病的状態又は症状の重篤度の増加の阻害又は軽減を含み、関連する疾患、障害、又は状態の完全な停止を含意することを必ずしも意味しない。
本明細書で用いられる用語「予防する」、「予防すること」、「予防」及びその文法的な変形は、状態、疾患、又は障害の発生を予防するか、又はその病状を変化させるための手法を指す。したがって、「予防」は、予防的又は予防的手段を指し得る。本発明の目的のために、有益な、又は望ましい臨床結果としては、限定されるものではないが、検出可能であっても、又は検出不可能であっても、疾患の症状、進行又は発達の予防又は減速が挙げられる。かくして、予防を必要とする対象(例えば、ヒト)は、問題の疾患又は障害にまだ罹患していない対象であってもよい。用語「予防」は、治療の非存在下と比較した疾患の開始の減速を含み、関連する疾患、障害又は状態の永続的な予防を含意することを必ずしも意味しない。かくして、状態を「予防すること」又はその「予防」は、ある特定の文脈では、状態を発生する危険性を低下させること、又は状態と関連する症状の発達を予防するか、若しくは遅延させることを指してもよい。
本明細書で用いられる場合、「有効量」又は「治療上有効量」は、標的状態を予防若しくは治療すること、又は状態と関連する症状を有益に緩和することなどの、対象において少なくとも1つの望ましい治療効果をもたらす組成物(例えば、治療組成物又は薬剤)の量又は用量である。最も望ましい治療上有効量は、それを必要とする所与の対象のために当業者により選択される特定の治療の所望の有効性をもたらす量である。この量は、限定されるものではないが、治療化合物の特徴(活性、薬物動態、薬力学、及びバイオアベイラビリティなど)、対象の生理学的状態(年齢、性別、疾患の種類、疾患の段階、一般的な身体状態、所与の用量に対する応答性、及び医薬の種類など)、製剤中の薬学的に許容される担体の性質、並びに投与経路などの、当業者によって理解される様々な因子に応じて変化する。臨床及び薬学業界の当業者であれば、日常的な実験を介して、すなわち、化合物の投与に対する対象の応答をモニタリングし、それに従って用量を調整することにより、治療上有効量を決定することができる(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (Gennaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, U.S., 19th ed., 1995)を参照されたい)。
CD20結合タンパク質を含む医薬組成物の産生又は製造
本発明のCD20結合タンパク質のいずれかの薬学的に許容される塩又は溶媒和物は同様に本発明の範囲内にある。
本発明の文脈における用語「溶媒和物」とは、溶質(この場合、本発明によるポリペプチド化合物又はその薬学的に許容される塩)と溶媒との間で形成される規定の化学量論の複合体を指す。この文脈では、溶媒は、例えば、水、エタノール又は別の薬学的に許容される、典型的には、低分子有機種、例えば、限定されるものではないが、酢酸若しくは乳酸であってもよい。問題の溶媒が水である場合、そのような溶媒和物は通常、水和物と呼ばれる。
本発明のCD20結合タンパク質、又はその塩を、典型的には、薬学的に許容される担体中に、治療上有効量の本発明の化合物、又はその塩を含む、保存又は投与のために調製される医薬組成物として製剤化することができる。用語「薬学的に許容される担体」は、任意の標準的な医薬担体を含む。治療的使用のための薬学的に許容される担体は、製薬業界で周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co. (A. Gennaro, ed., 1985)に記載されている。本明細書で用いられる場合、「薬学的に許容される担体」は、任意かつ全ての生理学的に許容される、すなわち、適合性の、溶媒、分散媒体、コーティング、抗微生物剤、等張剤、及び吸収遅延剤などを含む。薬学的に許容される担体又は希釈剤としては、経口、直腸、経鼻又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、及び経皮など)投与にとって好適な製剤において用いられるものが挙げられる。例示的な薬学的に許容される担体としては、滅菌注射溶液又は分散物の即興での調製のための滅菌水性溶液又は分散物及び滅菌粉末が挙げられる。本発明の医薬組成物中で用いることができる好適な水性及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びその好適な混合物、植物油、例えば、オリーブ油、並びに注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが挙げられる。例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散物の場合は必要な粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。ある特定の実施形態においては、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は表皮投与(例えば、注射又は輸注による)にとって好適なものである。選択される投与経路に応じて、CD20結合タンパク質又は他の薬学的成分を、活性CD20結合タンパク質が特定の投与経路により患者に投与された場合に遭遇し得る、低いpHの作用及びその他の自然の不活化条件から化合物を保護することを意図される材料中でコーティングすることができる。
本発明の医薬組成物の製剤を、単位投与形態で都合良く提供し、製薬業界において周知の任意の方法により調製することができる。そのような形態では、組成物は適切な量の活性成分を含有する単位用量に分割される。単位投与形態は、包装された調製物、個別量の調製物を含有する包装、例えば、パケット化された錠剤、カプセル、及びバイアル又はアンプル中の粉末であってもよい。単位投与形態はまた、カプセル、カシェ、若しくは錠剤自体であってもよく、又はそれは適切な数のこれらの包装された形態のいずれかであってもよい。それを、単一用量の注射可能な形態で、例えば、ペンの形態で提供することができる。組成物を、任意の好適な経路及び投与手段のために製剤化することができる。皮下又は経皮様式の投与が、本明細書に記載の治療的CD20結合タンパク質にとって特に好適であり得る。
本発明の医薬組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などのアジュバントを含有してもよい。微生物の存在の防止を、滅菌手順と、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの含有との両方によって確保することができる。組成物中の糖、塩化ナトリウムなどの等張剤も望ましい。さらに、注射可能な医薬形態の吸収の延長を、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤の含有によりもたらすことができる。
本発明の医薬組成物はまた、場合により薬学的に許容される酸化防止剤を含む。例示的な薬学的に許容される酸化防止剤は、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性酸化防止剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロールなどの油溶性酸化防止剤;及びクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤である。
別の態様において、本発明は、本発明の異なるCD20結合タンパク質の1つ若しくは組合せ、又は前記のいずれかのエステル、塩若しくはアミドと、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
治療組成物は、典型的には、製造及び保存の条件下で無菌かつ安定である。組成物を、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高い薬物濃度にとって好適な他の規則的構造として製剤化することができる。担体は、例えば、水、エタノールなどのアルコール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、又は任意の好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒体であってもよい。例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散物の場合は必要な粒径の維持により、及び当業界で周知の製剤化学による界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。ある特定の実施形態においては、等張剤、例えば、糖、マンニトールなどのポリアルコール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムが組成物中で望ましい。注射可能組成物の吸収の延長を、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを含有させることによってもたらすことができる。
皮内又は皮下適用のために用いられる溶液又は懸濁液は、典型的には、注射用水、生理食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗細菌剤;アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩などのバッファー;及び例えば、塩化ナトリウム又はデキストロースなどの等張性調整剤のうちの1又は2以上を含む。pHを、塩酸若しくは水酸化ナトリウムなどの酸若しくは塩基、又はクエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩などのバッファーを用いて調整することができる。そのような調製物を、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨て注射筒又は複数用量バイアル中に封入することができる。
必要な量の本発明のCD20結合タンパク質を、適切な溶媒中に、上記の成分の1つ又は組合せと共に組込み、必要に応じて、次いで、滅菌精密濾過を行うことにより、滅菌注射溶液を調製することができる。活性化合物を、分散媒体及び他の成分、例えば、上記のものなどを含有する滅菌媒体中に組込むことにより、分散物を調製することができる。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法は、滅菌濾過された溶液からの任意のさらなる所望の成分に加えて活性成分の粉末をもたらす減圧乾燥又は凍結−乾燥(凍結乾燥)である。
治療上有効量の本発明のCD20結合タンパク質を、例えば、静脈内、皮膚又は皮下注射により投与されるよう設計する場合、結合剤は発熱原を含まない、非経口的に許容される水性溶液の形態にある。適切なpH、等張性、安定性などを考慮に入れて、非経口的に許容されるタンパク質溶液を調製するための方法は、当業者の技術の範囲内にある。静脈内、皮膚、又は皮下注射のための好ましい医薬組成物は、結合剤に加えて、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース及び塩化ナトリウム注射液、乳酸リンゲル注射液、又は当業界で公知の他の媒体などの等張性媒体を含有する。本発明の医薬組成物はまた、安定剤、保存剤、バッファー、酸化防止剤、又は当業者には周知の他の添加剤を含有してもよい。
本明細書の他の場所に記載のように、化合物を、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロカプセル送達系を含む制御放出製剤などの、迅速な放出に対して化合物を保護する担体と共に調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの、生分解性、生体適合性ポリマーを用いることができる。そのような製剤の調製のための多くの方法が特許されており、当業者には一般に公知である(例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems (J. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., NY, U.S., 1978)を参照されたい)。
ある特定の実施形態においては、本発明の医薬組成物を、インビボで所望の分布を確保するために製剤化することができる。例えば、血液脳関門は多くの大きい、及び/又は親水性の化合物を排除する。本発明の治療化合物又は組成物を特定のインビボでの位置に標的化するために、例えば、特定の細胞又は臓器に選択的に輸送され、かくして、標的化薬物送達を増強する1又は2以上の部分を含んでもよいリポソーム中でそれらを製剤化することができる。標的化部分の例としては、葉酸又はビオチン;マンノシド;抗体;界面活性プロテインA受容体;p120カテニンなどが挙げられる。
ポリヌクレオチド、発現ベクター、及び宿主細胞
本発明のCD20結合タンパク質を超えて、そのようなCD20結合タンパク質、又はその機能的部分をコードするポリヌクレオチドも本発明の範囲内にある。用語「ポリヌクレオチド」は、用語「核酸」と等価であり、両方ともデオキシリボ核酸(DNA)のポリマー、リボ核酸(RNA)のポリマー、ヌクレオチドアナログを用いて生成されるこれらのDNA又はRNAのアナログ、並びにその誘導体、断片及びホモログを含む。本発明のポリヌクレオチドは、一本鎖、二本鎖、又は三本鎖であってもよい。開示されるポリヌクレオチドは、例えば、RNAコドンの3番目の位置で許容されることが知られる揺れを考慮に入れて、例示的CD20結合タンパク質をコードすることができるが、依然として異なるRNAコドンと同じアミノ酸をコードする全てのポリヌクレオチドを含むように特に開示される(Stothard P, Biotechniques 28: 1102-4 (2000)を参照されたい)。
一態様において、本発明は、本発明のCD20結合タンパク質、又はその断片若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、例えば、CD20結合タンパク質のアミノ酸配列の1つを含むポリペプチドと、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%以上同一であるポリペプチドをコードする核酸配列を含んでもよい。本発明はまた、本発明のCD20結合タンパク質、又はその断片若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、又は任意のそのような配列のアンチセンス若しくは相補体を含むポリヌクレオチドを含む。
本発明のポリヌクレオチド(又はCD20結合タンパク質)の誘導体又はアナログは、特に、例えば、同じサイズのポリヌクレオチド若しくはポリペプチド配列と比較して、又はアラインメントが当業界で公知のコンピュータ相同性プログラムにより行われる整列された配列と比較した場合、少なくとも約45%、50%、70%、80%、95%、98%、又はさらには99%の同一性(80〜99%の好ましい同一性)により、本発明のポリヌクレオチド又はCD20結合タンパク質と実質的に相同である領域を有するポリヌクレオチド(又はポリペプチド)分子を含む。例示的プログラムは、Smith T, Waterman M, Adv. Appl. Math. 2: 482-9 (1981)のアルゴリズムを用いる、デフォルト設定を用いるGAPプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for UNIX, Genetics Computer Group, University Research Park, Madison, WI, U.S.)である。また、ストリンジェントな条件下で本発明のタンパク質をコードする配列の相補体にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドも含まれる(例えば、Ausubel F, et al., Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, New York, NY, U.S., 1993)及び以下を参照されたい)。ストリンジェントな条件は、当業者には公知であり、Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, NY, U.S., Ch. Sec. 6.3.1-6.3.6 (1989)に見出すことができる。
さらに、本発明は、本発明の範囲内にあるポリヌクレオチドを含む発現ベクターをさらに提供する。本発明のCD20結合タンパク質をコードすることができるポリヌクレオチドを、発現ベクターを産生するための当業界で周知の材料及び方法を用いて、細菌プラスミド、ウイルスベクター及びファージベクターなどの公知のベクター中に挿入することができる。そのような発現ベクターは、選択される任意の宿主細胞又は無細胞発現系(例えば、以下の実施例に記載されるpTxb1及びpIVEX2.3)内での企図されるCD20結合タンパク質の産生を支援するのに必要なポリヌクレオチドを含む。特定の種類の宿主細胞又は無細胞発現系と共に使用するための発現ベクターを含む特定のポリヌクレオチドは、当業者には周知であり、日常的な実験を用いて決定するか、又は購入することができる。
本明細書で用いられる用語「発現ベクター」とは、1又は2以上の発現単位を含む、線状又は環状のポリヌクレオチドを指す。用語「発現単位」は、所望のポリペプチドをコードし、宿主細胞中での核酸セグメントの発現を提供することができるポリヌクレオチドセグメントを示す。典型的には、発現単位は、転写プロモーター、所望のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム、及び転写ターミネーターを含み、全て作動可能な構成にある。発現ベクターは、1又は2以上の発現単位を含有する。かくして、本発明の文脈において、単一ポリペプチド鎖(例えば、志賀毒素エフェクター領域に連結されたscFv)を含むCD20結合タンパク質をコードする発現ベクターは、単一ポリペプチド鎖のための少なくとも発現単位を含むが、例えば、2又は3以上のポリペプチド鎖(例えば、VLドメインと、毒素エフェクター領域に連結されたVHドメインを含む第2のドメインとを含む1つの鎖)を含むCD20結合タンパク質は、1つがCD20結合タンパク質の2つのポリペプチド鎖のそれぞれのものである少なくとも2つの発現単位を含む。多鎖CD20結合タンパク質の発現のためには、各ポリヌクレオチド鎖のための発現単位を異なる発現ベクター上に別々に含有させることもできる(例えば、発現を、各ポリペプチド鎖のための発現ベクターが導入された単一の宿主細胞を用いて達成することができる)。
ポリペプチド及びタンパク質の一過的又は安定的な発現を指令することができる発現ベクターが、当業界で周知である。発現ベクターとしては一般に、限定されるものではないが、異種シグナル配列又はペプチド、複製起点、1又は2以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列のうちの1又は2以上が挙げられ、これらはそれぞれ当業界で周知である。用いることができる任意選択の調節制御配列、組込み配列、及び有用なマーカーが当業界で公知である。
用語「宿主細胞」とは、発現ベクターの複製又は発現を支援することができる細胞を指す。宿主細胞は、大腸菌などの原核細胞又は真核細胞(例えば、酵母、昆虫、両生類、鳥類、又は哺乳動物細胞)であってもよい。本発明のポリヌクレオチドを含むか、又は本発明のCD20結合タンパク質を産生することができる宿主細胞株の作製及び単離を、当業界で公知の標準的な技術を用いて達成することができる。
本発明の範囲内にあるCD20結合タンパク質は、宿主細胞によるより最適な発現などの、所望の特性を達成するのにより好適にすることができる、1若しくは2以上のアミノ酸を変化させるか、又は1若しくは2以上のアミノ酸を欠失させるか、若しくは挿入することによってCD20結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを改変することにより産生される本明細書に記載のCD20結合タンパク質のバリアント又は誘導体であってもよい。
CD20結合タンパク質又はその医薬組成物の使用方法
一般に、本発明の目的は、がん、腫瘍、免疫障害、又は本明細書に記載のさらなる病状などの、疾患、障害、及び状態の予防及び/又は治療において用いることができる、薬理活性剤、並びにそれを含む組成物を提供することである。従って、本発明は、CD20発現細胞を死滅させるため、さらなる外来物質をCD20発現細胞中に送達するため、CD20発現細胞の内部を標識するため、並びに本明細書に記載の疾患、障害、及び状態を治療するための本発明のCD20結合タンパク質及び医薬組成物の使用方法を提供する。
特に、本発明の目的は、現在当業界で公知である薬剤、組成物、及び/又は方法と比較してある特定の利点を有するそのような薬理活性剤、組成物、及び/又は方法を提供することである。従って、本発明は、特定のポリペプチド配列を有するCD20結合タンパク質及びその医薬組成物の使用方法を提供する。例えば、配列番号1、3、4、6〜12、14、16、及び/又は18〜29中のポリペプチド配列のいずれかを、以下の方法において用いられるCD20結合タンパク質の成分として特に用いることができる。
本発明は、CD20発現細胞を、インビトロ又はインビボのいずれかで、本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物と接触させるステップを含む、前記細胞を死滅させる方法を提供する。特定の実施形態においては、本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物を用いて、がん細胞、感染細胞、及び/又は血液細胞を含む混合物などの、非CD20発現細胞を含む異なる細胞型の混合物中のCD20発現細胞を死滅させることができる。
ある特定の実施形態においては、本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物を用いて、生物の内部などの異なる細胞型の混合物中のがん細胞を死滅させることができる。ある特定の実施形態においては、本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物は、単独で、又は他の化合物若しくは医薬組成物と共に、治療を必要とする患者などの対象中の、細胞の集団に、インビトロ又はインビボで投与した場合、強力な細胞死滅活性を示すことができる。CD20への高親和性免疫グロブリン型結合領域を用いる酵素的に活性な志賀毒素領域の送達を標的化することにより、この強力な細胞死滅活性を、がん細胞、新生物細胞、悪性細胞、非悪性腫瘍細胞、又は感染細胞などの、生物内のある特定の細胞型を特異的かつ選択的に死滅するように制限することができる。
用語「がん細胞」又は「がん性細胞」とは、異常に加速された様式で増殖及び分裂する様々な新生物細胞を指し、当業者には明らかである。用語「がん細胞」は、悪性細胞と非悪性細胞の両方を含む。一般に、がん及び/又は腫瘍は、治療及び/又は予防の影響を受けやすい疾患、障害、又は状態と定義することができる。がん細胞及び/又は腫瘍細胞を含むがん及び腫瘍(悪性又は非悪性のいずれか)は、当業者には明らかである。
本発明は、本発明の少なくとも1つのCD20結合タンパク質又はその医薬組成物を患者に投与するステップを含む、患者におけるCD20発現細胞を死滅させる方法を提供する。
CD20結合タンパク質又はその医薬組成物のある特定の実施形態を用いて、患者中のCD20発現免疫細胞(健康であっても、悪性であっても)を死滅させることができる。
患者から取り出された単離された細胞集団からエクスビボでB細胞を枯渇させるために、本発明のCD20結合タンパク質又はその医薬組成物を使用することは、本発明の範囲内にある。
さらに、本発明は、治療上有効量の少なくとも1つの本発明のCD20結合タンパク質又はその医薬組成物を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、患者における疾患、障害、又は状態を治療する方法を提供する。この方法を用いて治療することができる企図される疾患、障害、及び状態としては、がん、悪性腫瘍、非悪性腫瘍、及び免疫障害が挙げられる。「治療上有効用量」の本発明の化合物の投与は、疾患症状の重篤度の低下、疾患の無症状期間の頻度及び持続期間の増加、又は疾患の罹患に起因する機能障害若しくは身体障害の予防をもたらすことができる。
本発明の化合物の治療上有効量は、投与経路、治療される哺乳動物の種類、及び考慮される特定の患者の身体的特徴に依存する。これらの因子及びこの量の決定とのその関係は、医学界における当業者には周知である。この量及び投与方法は、最適な有効性を達成するように調整することができ、体重、食事、併用薬物などの因子及び医学界の当業者には周知の他の因子に依存してもよい。ヒトでの使用にとって最も適切な用量サイズ及び投薬レジメンを、本発明により得られる結果によって誘導し、適切に設計された臨床試験において確認することができる。有効用量及び治療プロトコールを、実験動物における低用量から出発して、次いで、効果をモニタリングしながら用量を増加させ、同様に投薬レジメンを体系的に変化させる従来の手段によって決定することができる。所与の対象のための最適な用量を決定する場合には、医師はいくつかの因子を考慮に入れることができる。そのような考慮は、当業者には公知である。
許容される投与経路は、限定されるものではないが、エアロゾル、腸内、経鼻、眼、経口、非経口、直腸、経膣、又は経皮(例えば、クリーム、ゲル若しくは軟膏の局所投与、又は経皮パッチを用いる)などの、当業界で公知の任意の投与経路を指してもよい。「非経口投与」は、典型的には、腫瘍内注射、眼窩下、輸注、動脈内、嚢内、心臓内、皮内、筋肉内、腹腔内、肺内、脊髄内、胸骨内、髄腔内、子宮内、静脈内、くも膜下、被膜下、皮下、経粘膜、又は経器官投与などの、意図される作用部位での、又はそれと連絡する注射と関連する。
本発明の医薬組成物の投与のために、用量範囲は一般に、宿主の体重の約0.0001〜100mg/kg、及びより通常は、0.01〜5mg/kgである。例示的用量は、0.25mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重又は10mg/kg体重又は1〜10mg/kgの範囲内にあってもよい。例示的治療レジメンは、1日1回若しくは2回投与、又は週に1回若しくは2回投与、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、月1回、2若しくは3ヶ月毎に1回、又は3〜6ヶ月毎に1回である。特定の患者のための治療利益を最大化するのに必要とされる知識のある医療専門家であれば、用量を選択及び再調整することができる。
本発明の医薬組成物は、典型的には、複数の機会に同じ患者に投与される。単一用量間の間隔は、例えば、2〜5日、毎週、毎月、2〜3ヶ月毎、6ヶ月毎、又は毎年であってもよい。投与間の間隔はまた、対象又は患者における血中レベル又は他のマーカーの調節に基づいて、不規則なものであってもよい。本発明の化合物のための用量レジメンは、6回の用量について2〜4週間毎に投与される化合物を用いる1mg/kg体重又は3mg/kg体重、次いで、3mg/kg体重又は1mg/kg体重での3ヶ月毎の静脈内投与を含む。
本発明の医薬組成物を、1又は2以上の当業界で公知の様々な方法を用いて、1又は2以上の投与経路により投与することができる。当業者であれば理解できるように、投与の経路及び/又は様式は、所望の結果に応じて変化する。本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物の投与経路としては、例えば、意図される作用部位(例えば、腫瘍内注射)での、又はそれと連絡する注射又は輸注による、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄、又は他の非経口投与経路が挙げられる。他の実施形態においては、本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物を、局所、表皮又は粘膜投与経路などの非経口経路により、例えば、鼻内、経口、経膣、直腸、舌下、又は局所投与により投与することができる。
本発明の治療的CD20結合タンパク質又は医薬組成物を、1又は2以上の当業界で公知の様々な医療用デバイスを用いて投与することができる。例えば、一実施形態においては、本発明の医薬組成物を、針のない皮下注射デバイスを用いて投与することができる。本発明において有用な周知のインプラント及びモジュールの例は当業界にあり、例えば、制御速度送達のための埋込み式マイクロ輸注ポンプ;皮膚を介する投与のためのデバイス;正確な輸注速度での送達のための輸注ポンプ;連続薬物送達のための可変流動性埋込み式輸注デバイス;及び浸透圧薬物送達システムを含む。これらの及びその他のそのようなインプラント、送達システム、及びモジュールは、当業者には公知である。
本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物を、単独で、又は1若しくは2以上の他の治療剤若しくは診断剤と共に投与することができる。組合せ療法は、特定の患者、治療しようとする疾患又は状態に基づいて選択される少なくとも1つの他の治療剤と組み合わせた、本発明のCD20結合タンパク質又はその医薬組成物を含んでもよい。他のそのような薬剤の例としては、特に、細胞毒性的な抗がん剤若しくは化学療法剤、抗炎症剤若しくは抗増殖剤、抗微生物剤若しくは抗ウイルス剤、増殖因子、サイトカイン、鎮痛剤、治療活性低分子若しくはポリペプチド、一本鎖抗体、古典的抗体若しくはその断片、又は1若しくは2以上のシグナリング経路を調節する核酸分子、及び治療的若しくは予防的治療レジメンを補完するか、若しくはそうでなければそれにおいて有益であってもよい同様の調節治療剤が挙げられる。
本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物のある特定の実施形態を用いる患者の治療は、標的細胞の細胞死及び/又は標的細胞の増殖阻害をもたらす。そのようなものとして、本発明のCD20結合タンパク質、及びそれらを含む医薬組成物は、標的細胞の死滅又は枯渇が有益であり得る様々な病理学的障害、例えば、特に、がん、免疫障害、及び感染細胞を治療するための方法において有用である。本発明は、細胞増殖を抑制するため、並びに新生物及び過活動性B細胞などの細胞障害を治療するための方法を提供する。
ある特定の実施形態においては、本発明のCD20結合タンパク質及び医薬組成物を用いて、がん、腫瘍(悪性及び非悪性)、及び免疫障害を治療又は予防することができる。
ある特定の実施形態においては、本発明は、治療上有効量の本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、ヒトなどの哺乳動物対象における悪性腫瘍又は新生物及び他の血液細胞関連がんを治療するための方法を提供する。
本発明のCD20結合タンパク質及び医薬組成物は、例えば、抗新生物剤としての使用、免疫応答の調節における使用、移植組織からの望ましくない細胞型の除去における使用、及び診断剤としての使用などの、様々な適用を有する。本発明のCD20結合タンパク質及び医薬組成物は、一般に抗新生物剤である−これは、それらががん又は腫瘍細胞の増殖を阻害する、及び/又はその死滅を引き起こすことによって新生物細胞又は悪性細胞の発生、成熟、又は拡散を治療及び/又は予防することができることを意味する。
ある特定の実施形態においては、本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物は、例えば、白血病、リンパ腫、骨髄腫、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、喘息、クローン病、糖尿病、移植片拒絶、移植片対宿主疾患、橋本甲状腺炎、溶血性尿毒症症候群、HIV関連疾患、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、多発動脈炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、強皮症、敗血性ショック、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、及び血管炎などのB細胞により媒介される疾患又は障害を治療するために用いられる。
本発明のCD20結合タンパク質及び医薬組成物を、治療上有効量の本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、がんを治療する方法において用いることができる。CD20の発現を有することが示されたいくつかのがんとしては、限定されるものではないが、B細胞リンパ腫(非ホジキン及びホジキンの両方を含む)、ヘアリー細胞白血病、B細胞慢性リンパ球性白血病、いくつかのT細胞リンパ腫、及びメラノーマがん幹細胞が挙げられる。本発明の方法のある特定の実施形態においては、治療されるがんは、骨のがん、白血病、リンパ腫、メラノーマ、及び骨髄腫からなる群から選択される。
本発明のCD20結合タンパク質及び医薬組成物を、治療上有効量の本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、免疫障害を治療する方法において用いることができる。本発明の方法のある特定の実施形態においては、免疫障害は、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、喘息、クローン病、糖尿病、移植片拒絶、移植片対宿主疾患、橋本甲状腺炎、溶血性尿毒症症候群、HIV関連疾患、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、多発動脈炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、強皮症、敗血性ショック、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、及び血管炎からなる群から選択される疾患と関連する炎症と関連する。
特に、本発明のある特定の実施形態は、がん、腫瘍、又は免疫障害の治療又は予防のための医薬の成分としてのCD20結合タンパク質の使用である。例えば、患者の皮膚上に提示される免疫障害を、炎症を軽減するための努力においてそのような医薬を用いて治療することができる。
本発明のCD20結合タンパク質を超えて、適用可能な場合、そのような分子をコードするポリヌクレオチドは本発明の範囲内にある。用語「ポリヌクレオチド」は用語「核酸」と等価であり、両方ともデオキシリボ核酸及びリボ核酸のポリマーを含む。そのようなポリヌクレオチドは、例えば、アミノ酸コドンの第3の位置で許容されることが知られる揺れを考慮に入れて、特定のCD20結合タンパク質をコードするが、等価なアミノ酸を依然としてコードすることができる全てのポリヌクレオチドを含むことが特に開示される。さらに、本発明は、本発明の範囲内のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む。そのような発現ベクターは、選択される任意の宿主細胞中での本発明のCD20結合タンパク質の産生を支援するのに必要なポリヌクレオチドを含む。特定の型の宿主細胞と共に用いるための発現ベクターを含む特定のポリヌクレオチドは、当業者には周知であり、日常的な実験を用いて決定することができるか、又は購入することができる。
本発明はまた、細胞を、患者内などのインビボ又はインビトロで本発明のCD20結合タンパク質と接触させることにより、CD20結合タンパク質を細胞の内部に迅速に内在化させる方法も提供する。本発明は、CD20発現細胞を、患者内などのインビボ又はインビトロで本発明のCD20結合タンパク質と接触させることにより、その細胞がその表面上にCD20抗原を発現する前記細胞を死滅させる方法をさらに提供する。
本発明のCD20結合タンパク質が上記のような外来物質を含むか、又はそれにコンジュゲートされる場合、これらのCD20結合タンパク質を、その外来物質を、標的細胞表面上にCD20抗原を発現する前記標的細胞中に送達する方法において用いることができる。本発明はまた、CD20発現細胞を、患者内などのインビボ又はインビトロで本発明のCD20結合タンパク質と接触させることにより、外来物質を前記細胞の内部に送達する方法も提供する。
従って、腫瘍又はがん細胞がその表面上にCD20抗原を発現し、本発明のタンパク質を、そのような治療を必要とする患者に投与することを含む、がんを治療するための方法において、本発明のCD20結合タンパク質を用いることができる。CD20の発現を有することが示されたいくつかのがんとしては、限定されるものではないが、B細胞リンパ腫(非ホジキンとホジキンの両方を含む)、ヘアリー細胞白血病、B細胞慢性リンパ球性白血病、いくつかのT細胞リンパ腫、及びメラノーマがん幹細胞が挙げられる。
本発明の目的のために、用語「リンパ腫」は、B細胞リンパ腫(非ホジキン型とホジキン型など)、ヘアリー細胞白血病、B細胞慢性リンパ球性白血病、T細胞リンパ腫、及びメラノーマがん幹細胞型リンパ腫を含む。
本発明のある特定の実施形態は、以下の、1〜40の番号であり、生物学的配列について表Cに記載している:(1)細胞中へのCD20抗原の内在化のためのCD20結合タンパク質であって、CD20に特異的な結合領域と、志賀様毒素1(SLT−1)に由来する毒素エフェクター領域とを含み、細胞表面上に存在するCD20の迅速な内在化を誘導する、CD20結合タンパク質。(2)タンパク質が、B細胞系列細胞中へのCD20の内在化を約1時間未満で誘導する、実施形態1に記載のCD20結合タンパク質。(3)毒素エフェクター領域が配列番号1のアミノ酸75〜251を含む、請求項1に記載のCD20結合タンパク質(表Cを参照されたい)。(4)毒素エフェクター領域が配列番号1のアミノ酸1〜251を含む、実施形態1に記載のCD20結合タンパク質。(5)毒素エフェクター領域が配列番号1のアミノ酸1〜261を含む、実施形態1に記載のCD20結合タンパク質。(6)タンパク質が細胞毒性である、実施形態1に記載のCD20結合タンパク質。
(7)CD20結合領域が、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、dAb断片、scFv、ダイアボディ、CDR3ペプチド、拘束された(constrained)FR3−CDR3−FR4ペプチド、ナノボディ、二価ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、サメ可変IgNARドメイン、ミニボディ、及びCD20結合機能を保持する任意の断片又は化学的に若しくは遺伝子操作された対応物からなる群から選択される、実施形態1に記載のCD20結合タンパク質。(8)結合領域がscFvである、実施形態1に記載のCD20結合タンパク質。
(9)結合領域が、(A)(i)それぞれ、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8に示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメインと、(ii)それぞれ、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン;又は(B)(i)それぞれ、配列番号21、配列番号22、及び配列番号23に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメインと、(ii)それぞれ、配列番号24、配列番号10、及び配列番号11に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含む、実施形態8に記載のCD20結合タンパク質。
(10)CD20結合領域が配列番号4のアミノ酸2〜245を含む、実施形態8に記載のCD20結合タンパク質。(11)CD20結合領域が配列番号4のアミノ酸2〜245を含み、毒素エフェクター領域が配列番号1のアミノ酸75〜251を含む、実施形態1に記載のCD20結合タンパク質。(12)配列番号4を含む、実施形態1に記載のCD20結合タンパク質。(13)表面上にCD20を発現する細胞を死滅させるためのCD20結合タンパク質であって、結合領域が、それぞれ、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメインと、それぞれ、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメインとを含み、投与すると、表面上にCD20を発現する細胞を死滅させることができる、CD20結合タンパク質。
(14)CD20結合領域が配列番号4のアミノ酸2〜245を含む、実施形態13に記載のCD20結合タンパク質。(15)CD20結合領域が配列番号4のアミノ酸2〜245を含み、毒素エフェクター領域が配列番号1のアミノ酸75〜251を含む、実施形態13に記載のCD20結合タンパク質。(16)配列番号4を含む実施形態13に記載のCD20結合タンパク質。
(17)表面上にCD20を発現する細胞中への外来物質の送達のためのCD20結合タンパク質であって、CD20に特異的な結合領域、毒素エフェクター領域が志賀様毒素1(SLT−1)に由来する毒素エフェクター領域、及び外来物質を含み、投与すると、表面上にCD20を発現する細胞中に外来物質を送達することができる、CD20結合タンパク質。
(18)結合領域が、(A)(i)それぞれ、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8に示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメインと、(ii)それぞれ、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン;又は(B)(i)それぞれ、配列番号21、配列番号22、及び配列番号23に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメインと、(ii)それぞれ、配列番号23、配列番号10、及び配列番号11に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含む、実施形態17に記載のCD20結合タンパク質。
(19)外来物質がペプチド、タンパク質、及び核酸からなる群から選択される、実施形態18に記載のCD20結合タンパク質。(20)外来物質がペプチドであり、ペプチドが抗原である、実施形態19に記載のCD20結合タンパク質。(21)抗原がタンパク質の結合領域と毒素エフェクター領域との間にコードされる、実施形態20に記載のCD20結合タンパク質。(22)抗原がウイルスタンパク質に由来する、実施形態19に記載のCD20結合タンパク質。(23)抗原が配列番号2である、実施形態21に記載のCD20結合タンパク質。(24)番号5を含む、実施形態21に記載のCD20結合タンパク質。(25)抗原が細菌タンパク質に由来する、実施形態20に記載のCD20結合タンパク質。(26)抗原ががんにおいて変異したタンパク質に由来する、実施形態20に記載のCD20結合タンパク質。(27)抗原ががんにおいて異常に発現されるタンパク質に由来する、実施形態20に記載のCD20結合タンパク質。(28)抗原がT細胞CDR領域に由来する、実施形態20に記載のCD20結合タンパク質。
(29)外来物質がタンパク質である、実施形態19に記載のCD20結合タンパク質。(30)タンパク質が酵素である、実施形態29に記載のCD20結合タンパク質。(31)外来物質が核酸である、実施形態19に記載のCD20結合タンパク質。(31)核酸がsiRNAである、実施形態30に記載のCD20結合タンパク質。(32)実施形態1に記載のCD20結合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。(33)実施形態32に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。(34)実施形態33に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
(35)実施形態1〜12のいずれかのタンパク質を患者に投与するステップを含む、CD20抗原を患者の細胞中に迅速に内在化させる方法。(36)実施形態1〜16のいずれかのタンパク質を患者に投与するステップを含む、CD20抗原をその表面上に発現する患者の細胞を死滅させる方法。(37)実施形態17〜31のいずれかのタンパク質を患者に投与するステップを含む、CD20をその表面上に発現する患者の細胞中に外来物質を送達する方法。(39)実施形態1〜31のいずれかのタンパク質を患者に投与するステップを含む、患者における、腫瘍又はがん細胞表面上にCD20抗原を発現するがんを治療する方法。(40)がんがリンパ腫である、実施形態39に記載の方法。
本発明は、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来する志賀毒素エフェクター領域と、CD20の細胞外部分に結合することができる免疫グロブリン型ポリペプチドを含むCD20結合領域とを含むCD20結合タンパク質の以下の非限定例によりさらに例示される。
[実施例]
以下の実施例は、本発明のある特定の実施形態を示す。しかしながら、これらの実施例は例示目的のためのものに過ぎず、本発明の条件及び範囲に関して全体的に明確であると意図されるものではなく、解釈されるべきでもないと理解される。実施例は、そうでなければ詳細に説明される場合を除いて、当業者には周知であり、日常的である標準的な技術を用いて実行された。
以下の実施例は、CD20をその細胞表面に発現する細胞を選択的に死滅させる例示的CD20結合タンパク質の能力を示すものである。例示的CD20結合タンパク質は、標的細胞型により発現されるCD20上の細胞外抗原に結合し、標的細胞に進入した。内在化されたCD20結合タンパク質は、その志賀毒素エフェクター領域を細胞質ゾルに送り、リボソームを不活化した後、標的細胞のアポトーシスによる死滅を引き起こした。かくして、例示的CD20結合タンパク質は、CD20結合タンパク質が細胞表面CD20との複合体を形成した後、迅速な細胞内在化を誘導するその志賀毒素エフェクター領域のためCD20発現細胞型内に内在化することができた。
これらの例示的CD20結合タンパク質は、αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1(配列番号4)、αCD20scFv::SLT−1Aバージョン2(配列番号16)、B9E9−SLT−1A(配列番号12)、及びC2B8−SLT−1A(配列番号14)を含む。
例示的CD20結合タンパク質の構築、産生、及び精製
第1に、CD20結合領域と志賀毒素エフェクター領域とを設計又は選択した。以下の実施例において、志賀毒素エフェクター領域は、志賀様毒素1(SLT−1A)のAサブユニットに由来するものであった。pECHE9Aプラスミド中にクローニングされたSLT−1Aの断片を含有し、SLT−1Aのアミノ酸1〜251をコードするポリヌクレオチドを得た(Cheung M et al., Mol Cancer 9: 28 (2010))。
CD20結合領域を、1H4 CD20モノクローナル抗体に由来する組換えscFvとして設計した(Haisma et al. (1999), Blood 92: 184-90)。2つの免疫グロブリン可変領域(VL及びVH)を、リンカー(配列番号18)によって分離した。
第2に、結合領域と志賀毒素エフェクター領域とを組み合わせて、一本鎖組換えポリペプチドを形成させた。本実施例において、1H4 CD20モノクローナル抗体に由来する組換えscFvをコードするポリヌクレオチドを、マウスIgG3分子(配列番号20)をコードするポリヌクレオチドに由来する「マウスヒンジ」ポリヌクレオチドと読み枠を合わせて、及びSLT−1Aをコードするポリヌクレオチド(配列番号1の残基1〜251)と読み枠を合わせてクローニングした。完全長配列は、検出及び精製を容易にするために読み枠を合わせてクローニングされたポリヌクレオチド配列をコードするStrep-tag(登録商標)(配列番号19)から始まる。本実施例のポリヌクレオチド配列を、DNA2.0, Inc.社(Menlo Park、CA、U.S.)からのサービスを用いて大腸菌中での効率的な発現のためにコドン最適化して、αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1をコードする発現ベクターを産生した。
インフルエンザ抗原を含む異なるCD20結合タンパク質を、同様の様式で構築及び産生した。DNA2.0社(Menlo Park、CA、U.S.)は、抗原配列(配列番号3)を含む複数のポリヌクレオチドを合成し、必要とされるポリヌクレオチド成分を以下の一本鎖ポリペプチド(アミノ末端からカルボキシ末端に向かって)Strep-tag(登録商標)(配列番号19)、1H4由来組換えscFv(上記のもの)、マウスIgG3分子(配列番号20)、リンカー(配列番号3)、及びSLT−1A由来配列(配列番号1の残基1〜251)をコードするオープンリーディングフレームを作製するためにベクターpJ201を用いてインフレームで接続した。この組換えポリヌクレオチドを、ポリペプチド産生のためにpTXB1中にクローニングした。再度、大腸菌中での効率的発現のためのコドン最適化は、DNA2.0社(Menlo Park、CA)により実施されて、αCD20scFv::SLT−1Aバージョン2をコードする発現ベクターが産生された。
第3に、αCD20scFv::SLT−1A組換えCD20結合タンパク質のバージョン1と2の両方を、細菌及び無細胞の両方のタンパク質翻訳系に関する標準的な技術を用いることにより産生した。次いで、CD20結合タンパク質を、当業界で周知の技術を用いて精製及び単離した。
例示的CD20結合タンパク質の解離定数(KD)の決定
αCD20scFv::SLT−1A CD20結合タンパク質のバージョン1と2の両方の細胞結合特性を、蛍光に基づくフローサイトメトリーアッセイにより決定した。それぞれの試料は、0.5×106個のCD20発現細胞(Raji(CD20+))又は非発現細胞(BC1(CD20−))を含有し、以後、「1XPBS+1%BSA」と呼ばれる、Hyclone 1XPBS(Fisher Scientific社、Waltham、MA)+1%BSA(Calbiochem社、San Diego、CA、U.S.)中のCD20結合タンパク質の様々な希釈液100μLと共に4℃で1hインキュベートした。反応の飽和を誘導するために、最も高い濃度のCD20結合タンパク質を選択した。細胞を1XPBS+1%BSAで2回洗浄した。細胞を、0.3μgの抗Strep tag(登録商標)mAb-FITC(#A01736-100、Genscript社、Piscataway、NJ、U.S.)を含有する100μlの1XPBS+1%BSAと共に4℃で1hインキュベートした。細胞を1XPBS+1%BSAで2回洗浄し、200μlの1XPBS中に懸濁し、フローサイトメトリーにかけた。全ての試料に関するベースライン補正された平均蛍光強度(MFI、mean fluorescence intensity)データを、それぞれの実験試料からFITCのみの試料(陰性試料)のMFIを差し引くことにより得た。Prismソフトウェア(GraphPad Software社、San Diego、CA、U.S.)を用いて、グラフをMFI対「タンパク質濃度」としてプロットした。見出し結合−飽和の下での1部位結合[Y=Bmax *X/(KD+X)]のPrismソフトウェア機能を用いてBmax及びKDをベースライン補正されたデータを用いて算出した。Bmaxは、MFIで報告される最大特異的結合である。KDは、ナノモル濃度(nM)で報告される平衡結合定数である。
複数の実験にわたって、Raji(CD20+)細胞に関するαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1のKDは、約80〜100nMであると決定された。1つの実験において、CD20+細胞に結合するαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1のCD20結合タンパク質のBmaxは、約140,000MFIであり、KDは約83nMであると測定されたが(表1)、このアッセイにおいてはCD20−細胞への意味のある結合は観察されなかった。1つの実験においては、CD20+細胞に結合するαCD20scFv::SLT−1Aバージョン2に関するBmaxは約110,000MFIであり、KDは約101nMであると測定されたが(表1)、このアッセイにおいてはCD20−細胞への意味のある結合は観察されなかった。
例示的CD20結合タンパク質の最大半量阻害濃度(IC50)の決定
αCD20scFv::SLT−1A CD20結合タンパク質のバージョン1と2の両方のリボソーム不活化能力を、TNT(登録商標)Quick Coupled Transcription/Translation kit(L1170 Promega社、Madison、WI、U.S.)を用いる無細胞インビトロタンパク質翻訳アッセイを用いて決定した。このキットは、Luciferase T7 Control DNA(L4821 Promega社、Madison、WI、U.S.)及びTNT(登録商標)Quick Master Mixを含む。リボソーム活性反応を、製造業者の説明書に従って調製した。
試験しようとするαCD20scFv::SLT−1Aバージョンの10倍希釈系列を適切なバッファー中で調製し、同一のTNT反応混合物成分の系列を各希釈液について作製した。αCD20scFv::SLT−1Aタンパク質の希釈系列中の各試料を、Luciferase T7 Control DNAと共にそれぞれのTNT反応混合物と混合した。被験試料を30℃で1.5時間インキュベートした。インキュベーション後、Luciferase Assay Reagent(E1483 Promega社、Madison、WI、U.S.)を全ての被験試料に添加し、ルシフェラーゼタンパク質翻訳量を製造業者の説明書に従って発光により測定した。翻訳阻害のレベルを、相対発光単位に対する総タンパク質の対数変換された濃度の非線形回帰分析により決定した。統計ソフトウェア(GraphPad Prism社、San Diego、CA、U.S.)を用いて、最大半量阻害濃度(IC50)値を、見出し用量応答阻害の下でlog(阻害剤)対応答(3つのパラメータ)のPrismソフトウェア関数[Y=最低値+((最高値−最低値)/(1+10^(X−LogIC50)))]を用いて各試料について算出した。実験タンパク質及びSLT−1Aのみの対照タンパク質のIC50を算出した。SLT−1Aのみの対照タンパク質のパーセントを、[(SLT−1A対照タンパク質のIC50/実験タンパク質のIC50)×100]により算出した。
無細胞タンパク質合成に対するαCD20scFv::SLT−1Aの両バージョンの阻害効果は強力であった。複数の実験により、αCD20scFv::SLT−1Aの両バージョンのIC50は約50ピコモル濃度(pM)であると決定された。一実施形態においては、タンパク質合成に関するαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1のIC50は、約38pMであったか、又はSLT−1Aのみの陽性対照の19%以内であった(表2)。同様に、この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に関するαCD20scFv::SLT−1Aバージョン2のIC50は、約58pMであったか、又はSLT−1Aのみの陽性対照の18%以内であった(表2)。
免疫蛍光アッセイによる細胞内在化の決定
CD20−細胞株(BC−1、Jurkat(J45.01)、及びU266)と比較したCD20+陽性細胞株(Daudi、Raji、及びRamos)中でのαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1の結合及び内在化プロファイルを分析するために、免疫蛍光試験を実行した。例えば、50nMのそれぞれのCD20タンパク質を、37℃で1時間、0.8×106個のRaji細胞と共にインキュベートして、CD20結合タンパク質のSLT−1A部分の結合及び内在化を可能にした。次いで、細胞を1XPBSで洗浄し、BD cytofix/cytoperm(BD Biosciences社、San Jose、CA、U.S.)を用いて固定及び透過処理した後、1X BD Perm/Wash(商標)Buffer(BD Biosciences社、San Jose、CA、U.S.)で2回洗浄した。細胞を、室温で45分間、1X BD Perm/Wash(商標)Buffer中のAlexa Fluor(登録商標)-555標識されたマウス抗SLT−1A抗体(BEI Resources社、Manassas、VA、U.S.)と共にインキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、4℃で10分間、BD cytofix(BD Biosciences社、San Jose、CA、U.S.)で固定した。次いで、細胞を1XPBSで洗浄し、1XPBS中に再懸濁した後、ポリ−L−リシン被覆スライドガラス(VWR社、Radnor、PA、U.S.)上に接着させた。スライドを、4’,6’−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)含有Vectashield(Fisher Scientific社、Waltham、MA、U.S.)でカバースリップし、Zeiss Fluorescence Microscope(Zeiss社、Thornwood、NY、U.S.)により観察した。
免疫蛍光試験により、αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1及びB9E9−SLT−1Aが、37℃で1時間以内に細胞表面に結合し、CD20を発現する細胞中に進入することが示された。
CD20+細胞死滅アッセイ:CD20結合タンパク質の細胞毒性選択性及び最大半量細胞毒性濃度(CD50)の決定
αCD20scFv::SLT−1Aの両バージョンの細胞毒性プロファイルを、CD20+細胞死滅アッセイにより決定した。このアッセイは、標的生体分子を発現しない細胞と比較して、細胞表面上にCD20を発現する細胞を死滅させるCD20結合タンパク質の能力を決定する。細胞を、384穴プレート中、20μLの培地中に播種した(2×103個/ウェル)。試験しようとするαCD20scFv::SLT−1Aタンパク質を、1XPBS中で5倍又は10倍に希釈し、5μLの希釈液又はバッファー対照を細胞に添加した。培地のみを含有する対照ウェルを、ベースライン補正のために用いた。細胞試料を、試験しようとするαCD20scFv::SLT−1A又はバッファーのみと共に37℃で3日間、5%二酸化炭素(CO2)の雰囲気中でインキュベートした。全細胞生存又は生存率を、製造業者の説明書に従ってCellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(G7573 Promega社、Madison、WI、U.S.)を用いる発光読出しを用いて決定した。実験ウェルの生存率を、以下の式:(試験RLU−平均培地RLU)/(平均細胞RLU−平均培地RLU)*100を用いて算出した。生存率に対するLogポリペプチド濃度を、Prism(GraphPad Prism社、San Diego、CA、U.S.)中でプロットし、対数(阻害剤)対正規化応答(可変勾配)分析を用いて、例示的CD20結合タンパク質に関する最大半量細胞毒性濃度(CD50)値を決定した。さらに、リンパ腫患者からの細胞試料をこの細胞死滅アッセイにおいて分析して、αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1の細胞毒性プロファイルを決定した。
複数の実験にわたって、αCD20scFv::SLT−1Aの両バージョンは、CD20陰性細胞株の細胞死滅と比較して10〜1000倍の特異性でCD20特異的細胞死滅を示した(表3)。αCD20scFv::SLT−1Aの両バージョンのCD20特異的細胞死滅プロファイルもSLT−1A(251)が細胞を死滅させる能力と対照的であり、CD20特異性を欠いていた(表3)。αCD20scFv::SLT−1Aタンパク質の両バージョンのCD50は、CD20−細胞株に関する600〜2,000を超えるものと比較して、細胞株に応じて、CD20+細胞に関しては約3〜70nMであると測定された(表3)。αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1 CD20結合タンパク質のCD50は、細胞表面上にCD20を発現する細胞と比較して、細胞表面上にCD20を発現しない細胞について100〜400倍高かった(細胞毒性が低い)。患者試料からのヒトリンパ腫細胞に対するαCD20scFv::SLT−1AバージョンのCD50は、約7〜40nMであった(表3)。
CD20+細胞死滅の比較:CD20+細胞に対するCD20結合タンパク質の相対的細胞毒性の決定
実施例5に記載のようなRaji(CD20+)中でのCD20+細胞死滅アッセイを用いて、3つの潜在的に細胞毒性のCD20結合タンパク質を試験した。代表的な結果のセットを、表5に報告する。複数の実験にわたって、αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1は、CD20結合タンパク質B9E9(配列番号12)と比較して50〜100倍の細胞死滅機能を示した(表4)。
インビボでの異種移植片試験を用いるCD20結合タンパク質の標的化された細胞毒性の決定
免疫不全マウス株に基づく2つの異種移植片モデル系を用いて、経時的な、及び様々な用量に関する、インビボ及び腫瘍環境中でCD20+腫瘍細胞を死滅させる例示的CD20結合タンパク質の能力を試験した。これらの異種移植片モデル系は、移植片対宿主応答、を欠く、特に、免疫系不全であるよく特徴付けられたマウス株に依拠する。第1に、SCID(重症複合型免疫不全、severe combined immune deficiency)マウスを用いて静脈内腫瘍モデルを試験して、マウスを通じて播種された腫瘍を作製し、ヒト腫瘍細胞に対する例示的CD20結合タンパク質のインビボでの効果を試験した。第2に、BALBc/ヌードマウスを用いて皮下腫瘍モデルを試験して、マウス上で皮下腫瘍を作製し、再度、ヒト腫瘍細胞に対する例示的CD20結合タンパク質のインビボでの効果を試験した。
第1の異種移植片系について、32匹のC.B.−17SCIDマウス(8匹の動物の4群)を、200μLのPBS中の1×107個のRaji-lucヒトリンパ腫由来細胞(Molecular Imaging社、Ann Arbor、MI、U.S.)でチャレンジした。腫瘍チャレンジ後5〜9日目及び12〜16日目で、群は、群毎に以下のものを静脈内投与により受容した:1群:PBS;2群:2mg/kgの用量のαCD20scFv::SLT−1Aバージョン2;3群:2mg/kgの用量のαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1;及び4群:4mg/kgの用量のαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1(5〜9日目のみ)。1X106個の光子/秒単位(p/s)で、生物発光を、Caliper IVIS 50光学画像化システム(Perkin Elmer社、Waltham、MA、U.S.)を用いて5、10、15及び20日目に測定した。図2は、両用量レベルのαCD20scFv::SLT−1Aの両バージョンと、αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1が、PBS対照と比較して統計的に有意に低い全生物発光をどのようにもたらしたかを示す。全生物発光の低下は、本発明のCD20結合タンパク質を用いる治療後に播種性全身腫瘍組織量の統計的に有意な減少を反映していた。図3は、αCD20scFv::SLT−1Aのいずれかのバージョンを投与した場合の生存の統計的に有意な増加を示す。平均生存年齢はPBS対照と比較して全ての治療に関して5日増加した。
第2の異種移植片モデルについては、28匹のBALBc/ヌードマウス(6又は7匹の動物の4群)を、2.5×106個のRajiヒトリンパ腫細胞(Washington Biotechnology社、Simpsonville、MD、U.S.)で皮下的にチャレンジした。腫瘍体積を、カリパスを用いる当業界で公知の標準的な方法を用いて決定した。それぞれのマウスの平均腫瘍体積が約160mm3に到達した時点を0日目に設定した(各群に由来する1匹のマウスは260mm3を超える腫瘍を有していたため、それを除外した)。0〜4日目及び7〜11日目に、群は、群毎に以下のものの静脈内投与を受容した:群1:PBS;群2:2mg/kgの用量のαCD20scFv::SLT−1Aバージョン2;群3:2mg/kgの用量のαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1;群4:4mg/kgの用量のαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1。腫瘍体積を測定し、試験日数の関数としてグラフ化した。図4は、αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1を用いる治療(両用量レベルの)が24日目までにPBS対照と比較して有意に減少した腫瘍体積をどのようにもたらしたかを示す。これはまた、表5に報告されるように、54日目までの無腫瘍マウスの数に反映される。
非ヒト霊長類におけるCD20結合タンパク質のインビボでの効果の決定
例示的CD20結合タンパク質αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1を、非ヒト霊長類に投与して、インビボでの効果について試験した。カニクイザル霊長類における末梢血Bリンパ球のインビボでの枯渇を、様々な用量のαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1の非経口投与後に観察した。
ある実験において、10頭のカニクイザル霊長類に、2週間にわたって隔日にPBS又は様々な用量(50、150及び450マイクログラムの薬物/キログラム体重(mcg/kg))のαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1を静脈内注射した。次いで、3日目及び8日目に投与する前に採取された末梢血試料を、CD20を発現するBリンパ球のパーセンテージについて分析した(図5及び図6)。カニクイザルにおいては、2つの異なるB細胞サブセットが記載されている;CD21陰性、高レベルのCD20を発現するCD40陽性細胞、並びにフローサイトメトリーによるものよりも低レベルのCD20を発現するCD21陽性及びCD40陽性(Vugmeyster et al.., Cytometry 52: 101-9 (2003))。治療前に採取された血液試料に由来するベースラインレベルと比較した用量依存的B細胞枯渇が、3日目(50、150及び450mcg/kgで投与した動物における4、14及び45%の低下)及び8日目(50、150及び450mcg/kgで投与した動物における32、52及び75%の低下)に観察された(表6)。この実験により、αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1がCD20陽性の霊長類B細胞をインビボで死滅させることができることが示された。
志賀様毒素1のAサブユニット及びオファツムマブ抗体に由来するCD20結合タンパク質
本実施例では、志賀毒素エフェクター領域は、志賀様毒素1のAサブユニット(SLT−1A)に由来する。免疫グロブリン型結合領域αCD20は、ヒトCD20に結合することができる免疫グロブリン型結合領域を含むモノクローナル抗体オファツムマブ(Gupta I, Jewell R, Ann N Y Acad Sci 1263: 43-56 (2012))に由来する。
CD20結合タンパク質SLT−1A::αCD20の構築、産生、及び精製
免疫グロブリン型結合領域αCD20と、志賀毒素エフェクター領域とを一緒に連結して、タンパク質を形成させる。例えば、CD20結合タンパク質SLT−1A::αCD20をコードするポリヌクレオチドを発現させることにより、融合タンパク質を産生する。SLT−1A::αCD20 CD20結合タンパク質の発現を、以前の実施例に記載のような、細菌及び/又は無細胞のタンパク質翻訳系を用いて達成する。
CD20結合タンパク質SLT−1A::αCD20のインビトロでの特性の決定
CD20+細胞及びCD20−細胞に関する本実施例のCD20結合タンパク質の結合特性を、以前の実施例に上記されたような蛍光に基づくフローサイトメトリーにより決定する。CD20+細胞に結合するSLT−1A::αCD20のBmaxは、約50,000〜200,000MFIであり、KDは0.01〜100nMの範囲内にあると測定されるが、このアッセイにおけるCD20−細胞への有意な結合はない。
SLT−1A::αCD20 CD20結合タンパク質のリボソーム不活化能力を、以前の実施例に上記されたような無細胞インビトロタンパク質翻訳において決定する。無細胞タンパク質合成に対する本実施例のCD20結合タンパク質の阻害効果は有意である。この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に関するSLT−1A::αCD20のIC50は、約0.1〜100pMである。
細胞死滅アッセイを用いるCD20結合タンパク質SLT−1A::αCD20の細胞毒性の決定
SLT−1A::αCD20の細胞毒性特性を、CD20+細胞を用いて以前の実施例に上記されたような一般的な細胞死滅アッセイにより決定する。さらに、SLT−1A::αCD20の選択的細胞毒性特性を、CD20+細胞との比較として、CD20−細胞を用いる同じ一般的な細胞死滅アッセイにより決定する。本実施例のCD20結合タンパク質のCD50は、細胞株に応じてCD20+細胞について約0.01〜100nMである。CD20結合タンパク質のCD50は、細胞表面上にCD20を発現する細胞と比較して、細胞表面上にCD20を発現しない細胞について約10〜10,000倍高い(細胞毒性が低い)。
動物モデルを用いるCD20結合タンパク質SLT−1A::αCD20のインビボでの効果の決定
動物モデルを用いて、新生物細胞に対するCD20結合タンパク質SLT−1A::αCD20のインビボでの効果を決定する。様々なマウス株を用いて、細胞表面上にCD20を発現するヒト新生物細胞のマウスへの注射から得られるマウスにおける異種移植腫瘍に対する静脈内投与後のCD20結合タンパク質の効果を試験する。非ヒト霊長類を用いて、実施例8に記載のように末梢血B細胞に対するSLT−1A::αCD20の効果を試験することができる。
様々なCD20結合ドメインに基づく様々なCD20結合タンパク質
本実施例では、志賀毒素エフェクター領域は、志賀様毒素1のAサブユニット(SLT−1A)、志賀毒素(StxA)、及び/又は志賀様毒素2(SLT−2A)に由来する。免疫グロブリン型結合領域は、表8から選択される分子に由来する免疫グロブリンドメインに由来し、CD20の細胞外部分に結合する。本実施例の例示的細胞毒性タンパク質を作製し、以前の実施例に記載のように試験する。
本発明のある特定の実施形態を例示によって説明してきたが、本発明を多くの改変、変更及び適合化と共に実行することができ、本発明の精神から逸脱するか、又は特許請求の範囲を超えることなく、いくつかの等価物又は代替的な解決法の使用が当業者の範囲内にあることが明らかである。
全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかもそれぞれ個々の刊行物、特許又は特許出願の全体が参照により組込まれると具体的かつ個別的に示されたのと同程度に、その全体が参照により本明細書に組込まれる。米国仮特許出願第61/777,130号明細書は、その全体が参照により組込まれる。本明細書で引用されるアミノ酸及びヌクレオチド配列に関するGenBank(National Center for Biotechnology Information、U.S.)からの全ての電子的に利用可能な生物学的配列情報の完全な開示は、参照により組込まれる。
本発明は、CD20抗原に結合し、CD20抗原を細胞表面の位置から細胞内部に迅速に内在化させる能力を有するCD20結合タンパク質に関する。これらのCD20結合タンパク質は、がん及び免疫障害などの様々な疾患の治療のための治療分子として有用である。
免疫毒素は、免疫グロブリンドメインなどに由来する細胞表面結合領域と、典型的には、細菌又は植物に見出されるものなどの天然のタンパク質毒素に由来する毒素領域とを組み合わせたキメラ分子である。免疫毒素の効力は、細胞内在化から開始するプロセスである、細胞表面から細胞質ゾルへの移動の際のその効率に大きく依存する(Pirie C et al., J Biol Chem 286: 4165-72 (2011)を参照されたい)。
CD20は、ヒト及びマウスにおいて少なくとも26のタンパク質を含む膜貫通4A(MS4A、membrane-spanning 4A)ファミリーとして知られるポリペプチドのファミリーのメンバーである(Ishibashi K et al., Gene 264: 87-93 (2001))。全てのMS4Aメンバーと同様、CD20配列は、膜を4回貫通する膜貫通分子を形成する3つの疎水性領域を予測し、これはその機能にとって中枢的であると考えられる構造的特徴である。また、提唱される第3及び第4の膜貫通ドメインと、細胞内アミノ末端及びカルボキシ末端領域との間の単一細胞外ループも予測される(Tedder T et al., Proc Natl Acad Sci 85: 208-12 (1988))。リツキシマブなどの抗CD20モノクローナル抗体(mAb、monoclonal antibody)の多くが最も重要な残基であるアラニン−170及びプロリン−172に結合すると考えられるのは、約40アミノ酸のこの細胞外ループ内にある。CD20のアミノ酸163〜187を用いてCD20のペプチド断片に結合する抗体の結晶構造は、リツキシマブ及びCD20のための抗原−抗体相互作用点としてアミノ酸170(アラニン)からアミノ酸173(セリン)までを確認している(Du J et al., J Biol Chem 282: 15073-80 (2007))。
CD20は、ホモ多量体、おそらく四量体として細胞表面上に存在すると考えられ、電子顕微鏡により、複合体化したCD20の90%が脂質ラフト及び微絨毛中の膜に存在することが示されている(Li H et al., J Biol Chem 279: 19893-901 (2004))。脂質ラフトは、高いポリペプチド、スフィンゴ脂質、及びコレステロール濃度を有する細胞膜中に見出されるマイクロドメインである(Brown D, London E, Annu Rev Cell Dev Biol 14: 111-36 (1998))。微絨毛、又は微絨毛チャネルは、細胞膜表面からの細胞伸長である(Reaven E et al., J Lipid Res 30: 1551-60 (1989))。FMC7(Polyak M et al., Leukemia 17:1384-89 (2003))などの、CD20に対するいくつかの抗体は、その分子が脂質ラフト中に存在する場合にのみ結合することが知られ、リツキシマブなどのその他の分子はCD20のラフトへの会合を増加させることが知られる(Li H et al, supra)。ラフト会合は、脂質ラフト内に一般に位置し、CD20多量体と会合することがわかっている別のタンパク質であるB細胞抗原受容体(BCR、B-cell antigen receptor)を介して変換されるカルシウムシグナルの増幅因子としてのCD20の提唱される機能にとって重要であると仮定されている(Polyak M et al., J Biol Chem 283: 18545-52 (2008))。
CD20抗原を標的とする抗体に基づく療法がいくつかある(概説については、Boross P, Leusen J, Am J Cancer Res 2: 676-90 (2012)を参照されたい)。機能するために治療剤が細胞表面上に残存する機構に基づく療法のための標的としてのCD20の魅力的な特徴の1つは、抗体に基づく治療剤により結合した後のCD20細胞内在化の欠如である(Anderson K et al., Blood 63: 1424-33 (1984); Press O et al., Blood 69: 584-91 (1987))。これは細胞型特異的であり、且つ抗体型特異的であることが証明されているが、一般に、CD20は他の細胞表面抗原よりもはるかに低い比率で内在化すると考えられる(Beers S et al., Sem Hematol 47: 107-14 (2010))。
CD20は容易に内在化しないという一般的知見のため、治療剤が有効であるために結合後に治療剤を標的細胞中に内在化させる必要がある療法のための標的としてのCD20抗原の有用性に関しては、当業界で疑問がある(Anderson K et al., Blood 63: 1424-33 (1984); Press O et al., Blood 69: 584-91 (1987) ; Beers S et al., Sem Hematol 47: 107-14 (2010))。かくして、有効性のために細胞内在化を必要とする免疫グロブリン型治療剤を用いてCD20抗原を標的化する際の解決されていない問題がある−CD20に結合した治療剤を、結合後に標的細胞の内部にどのように入れるかである。例えば、CD20抗原を標的とする免疫毒素の送達に基づく療法は、不十分なCD20内在化効率に基づけば無効であると予測される。かくして、CD20のような免疫グロブリン型ドメインにより効率的な比率で、又は結合の際に天然では内在化しない細胞表面抗原を標的とする有効な組成物、治療剤、及び治療方法を開発することが当業界で必要である。
特に、CD20に結合した組成物の複合体の迅速で効率的な細胞内在化を誘発するCD20標的化組成物を同定及び開発することが当業界で依然として必要である。例えば、天然CD20分子の細胞内在化を誘導する毒素由来領域を含む細胞毒性CD20結合タンパク質は、B細胞系列の細胞を標的とする有効ながん及び免疫調節治療分子の開発にとって望ましい。
Pirie C et al., J Biol Chem 286: 4165-72 (2011)
Ishibashi K et al., Gene 264: 87-93 (2001)
Tedder T et al., Proc Natl Acad Sci 85: 208-12 (1988)
Du J et al., J Biol Chem 282: 15073-80 (2007)
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Brown D, London E, Annu Rev Cell Dev Biol 14: 111-36 (1998)
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Boross P, Leusen J, Am J Cancer Res 2: 676-90 (2012)
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Press O et al., Blood 69: 584-91 (1987)
Beers S et al., Sem Hematol 47: 107-14 (2010)
本発明は、1)免疫グロブリンドメインなどのCD20結合領域と、2)SLT−1Aのトランケーションなどの志賀毒素エフェクター領域とを含む、CD20の迅速な細胞内在化を誘導するための様々なCD20結合タンパク質を提供する。細胞の表面上へのCD20抗原の結合の際に、本発明のCD20結合タンパク質は、CD20結合タンパク質とCD20抗原とを含む複合体の、真核細胞の内部への迅速な細胞内在化を誘導することができる。CD20結合領域と志賀毒素サブユニットA由来ポリペプチドとの連結は、天然に発現されるCD20の迅速な細胞内在化を誘導することができる、並びにさらなる外来物質をCD20発現細胞の内部に送達することができる細胞毒性志賀毒素に基づく分子の操作を可能にする。本発明のCD20結合タンパク質は、例えば、CD20陽性細胞型の標的化された死滅、がん、腫瘍、及びB細胞系列と関連する免疫障害などの、患者における様々な状態の治療のための診断剤として、及び治療剤としての外来物質の送達にとって有用である。
本発明のCD20結合タンパク質は、(a)免疫グロブリン型結合領域を含み、CD20の細胞外部分に特異的に結合することができるCD20結合領域と、(b)志賀毒素ファミリーの少なくとも1つのメンバーのAサブユニットのアミノ酸配列に由来するポリペプチドを含む志賀毒素エフェクター領域とを含み、細胞表面上にCD20を発現する細胞にCD20結合タンパク質を投与すると、CD20結合タンパク質は、CD20に結合した前記CD20結合タンパク質を含むタンパク質複合体の迅速な細胞内在化を誘導することができる。
本発明のCD20結合タンパク質のある特定の実施形態について、CD20結合領域は、相補性決定領域3断片、拘束された(constrained)FR3−CDR3−FR4ポリペプチド、単一ドメイン抗体断片、一本鎖可変断片、抗体可変断片、抗原結合断片、Fd断片、フィブロネクチン由来第10フィブロネクチンIII型ドメイン、テナシンIII型ドメイン、アンキリンリピートモチーフドメイン、低密度リポタンパク質受容体由来Aドメイン、リポカリン、Kunitzドメイン、プロテインA由来Zドメイン、ガンマ−B結晶由来ドメイン、ユビキチン由来ドメイン、Sac7d由来ポリペプチド、Fyn由来SH2ドメイン、操作された抗体模倣物、及びCD20結合機能を保持する前記のいずれかの任意の遺伝子操作された対応物からなる群から選択されるポリペプチドを含む免疫グロブリン型結合領域を含む。
ある特定の実施形態について、前記CD20結合タンパク質は、細胞表面上に天然に存在するCD20の迅速な細胞内在化を誘導することができる。ある特定のさらなる実施形態においては、前記CD20結合タンパク質は、細胞表面上に天然に存在するCD20の細胞内在化を約1時間未満で誘導することができる。ある特定のさらなる実施形態においては、CD20結合タンパク質は、B細胞系列のメンバーの表面上に天然に存在するCD20の細胞内在化を約1時間未満で誘導することができる。
ある特定の実施形態について、細胞表面上にCD20を発現する細胞に前記CD20結合タンパク質を投与すると、CD20結合タンパク質は、細胞死を引き起こすことができる。ある特定の他の実施形態においては、CD20結合タンパク質は、触媒活性を欠き、細胞死を引き起こすことができない志賀毒素エフェクター領域を含む。
ある特定の実施形態について、メンバーがCD20を発現する第1の細胞集団、及びメンバーがCD20を発現しない第2の細胞集団にCD20結合タンパク質を投与すると、第2の細胞集団のメンバーと比べて第1の細胞集団のメンバーに対する前記CD20結合タンパク質の細胞毒性効果は、少なくとも3倍高い。
ある特定の実施形態について、CD20結合タンパク質は、配列番号1、配列番号25、又は配列番号26のアミノ酸75〜251を含むか、又はそれから本質的になる志賀毒素エフェクター領域を含む。さらなる実施形態は、志賀毒素エフェクター領域が、配列番号1、配列番号25、若しくは配列番号26のアミノ酸1〜241;配列番号1、配列番号25、若しくは配列番号26のアミノ酸1〜251;及び/又は配列番号1、配列番号25、若しくは配列番号26のアミノ酸1〜261を含むか、又はそれから本質的になるCD20結合タンパク質である。
ある特定の実施形態について、CD20結合タンパク質は、配列番号4、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16のアミノ酸を含むか、又はそれから本質的になる。
ある特定の実施形態においては、CD20結合タンパク質は、(a)それぞれ、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、それぞれ、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;(b)それぞれ、配列番号21、配列番号22、及び配列番号23に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、それぞれ、配列番号24、配列番号10、及び配列番号11に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;又は(c)それぞれ、配列番号21、配列番号22、及び配列番号27に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメインと、それぞれ、配列番号28、配列番号10、及び配列番号29に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含む、CD20結合領域を含む。さらなる実施形態は、配列番号4のアミノ酸2〜245を含むか、又はそれから本質的になる免疫グロブリン型結合領域を含むCD20結合タンパク質である。さらなる実施形態は、配列番号4のアミノ酸2〜245を含むか、又はそれから本質的になる免疫グロブリン型結合領域と、配列番号1のアミノ酸75〜251を含むか、又はそれから本質的になる志賀毒素エフェクター領域とを含むCD20結合タンパク質である。さらなる実施形態は、配列番号4又は配列番号16を含むか、又はそれから本質的になるCD20結合タンパク質である。
ある特定の実施形態においては、CD20結合タンパク質は、志賀毒素エフェクター領域の酵素活性を変化させる、志賀毒素ファミリーのメンバーの天然のAサブユニットに対する変異であって、少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失又は置換から選択される変異を含む志賀毒素エフェクター領域を含む。
前記CD20結合タンパク質のある特定の実施形態を、細胞表面上にCD20を発現する細胞へのさらなる外来物質の送達のために用いることもできる。これらの実施形態は、(a)CD20分子の細胞外部分に特異的に結合することができる免疫グロブリン型ポリペプチドと、(b)志賀毒素ファミリーの少なくとも1つのメンバーのアミノ酸配列に由来するポリペプチドを含む志賀毒素エフェクター領域と、(c)さらなる外来物質とを含むCD20結合領域を含み、細胞表面上にCD20を発現する細胞にCD20結合タンパク質を投与すると、前記CD20結合タンパク質は、CD20に結合したCD20結合タンパク質を含むタンパク質複合体の迅速な細胞内在化を誘導することができ、さらなる外来物質を細胞の内部に送達することができる。ある特定のさらなる実施形態においては、CD20結合タンパク質は、(a)それぞれ、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、それぞれ、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;又は(b)それぞれ、配列番号21、配列番号22、及び配列番号23に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、それぞれ、配列番号24、配列番号10、及び配列番号11に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;又は(c)それぞれ、配列番号21、配列番号22、及び配列番号27に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメインと、それぞれ、配列番号28、配列番号10、及び配列番号29に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含むCD20結合領域を含む。
ある特定の実施形態においては、さらなる外来物質は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及びポリヌクレオチドからなる群から選択される。ある特定の実施形態においては、さらなる外来物質は、酵素を含むタンパク質又はポリペプチドを含む。ある特定の他の実施形態においては、さらなる外来物質は、例えば、低分子干渉RNA(siRNA、small inhibiting RNA)又はマイクロRNA(miRNA、microRNA)として機能するリボ核酸などの核酸である。
ある特定の実施形態においては、さらなる外来物質はペプチドであり、ペプチドは抗原である。ある特定の実施形態においては、さらなる外来物質は、細菌タンパク質に由来する抗原である。ある特定の他の実施形態においては、抗原はがんにおいて変異したタンパク質に由来する。さらなる実施形態は、抗原はがんにおいて異常に発現されるタンパク質に由来する。さらなる実施形態は、抗原はT細胞相補性決定領域に由来する。
ある特定の実施形態について、抗原は、ペプチド抗原が一本鎖タンパク質の結合領域と毒素エフェクター領域との間に位置するポリペプチド融合物の一部としてCD20結合タンパク質内に含まれる。ある特定の実施形態においては、さらなる外来物質は、ウイルスタンパク質に由来する抗原である。ある特定の実施形態においては、抗原は、配列番号3を含むか、又はそれから本質的になる、インフルエンザMatrix 58−66抗原である。ある特定のさらなる実施形態においては、CD20結合タンパク質は、配列番号16を含むか、又はそれから本質的になる。
本発明はまた、本発明のCD20結合タンパク質と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤又は担体とを含む医薬組成物;及び本明細書にさらに記載される本発明の方法におけるそのような細胞毒性タンパク質又はそれを含む組成物の使用も含む。
本発明はまた、本発明のCD20結合タンパク質をコードするポリヌクレオチド、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクター、並びに本発明の発現ベクターを含む宿主細胞も提供する。
さらに、本発明は、本発明のCD20発現細胞を、本発明のCD20結合タンパク質又はその医薬組成物と接触させるステップを含む、CD20発現細胞中へのCD20結合タンパク質の細胞内在化を迅速に誘導する方法を提供する。同様に、本発明は、患者に本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物を投与するステップを含む、患者におけるCD20結合タンパク質により結合した細胞表面に局在化したCD20を内在化させる方法を提供する。
さらに、本発明は、CD20発現細胞を、インビトロ又はインビボのいずれかで、本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物と接触させるステップを含む、前記細胞を死滅させる方法を提供する。
さらに、本発明は、細胞を、インビトロ又はインビボのいずれかで、本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物と接触させるステップを含む、外来物質を細胞の内部に送達する方法を提供する。
本発明はさらに、患者に、本発明のCD20結合タンパク質を投与するステップを含む、細胞がその表面上にCD20を発現する、患者において外来物質を細胞の内部に送達するための方法を提供する。
さらに、本発明は、細胞を、本発明のCD20結合タンパク質又は本発明の医薬組成物と接触させるステップを含む、細胞を死滅させる方法を提供する。細胞を死滅させる方法のある特定の実施形態においては、細胞を接触させるステップを、インビトロで行う。ある特定の他の実施形態においては、細胞を接触させるステップを、インビボで行う。
また、本発明は、治療上有効量の本発明のCD20結合タンパク質又は本発明の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、患者における疾患、障害、又は状態を治療する方法を提供する。治療する方法のある特定の実施形態においては、本発明のこの方法を用いて治療しようとする疾患、障害、又は状態は、例えば、がん細胞、腫瘍細胞、又は免疫細胞などの、細胞表面上にCD20を発現する細胞又は細胞型と関与する。さらなる実施形態は、骨のがん、白血病、リンパ腫、メラノーマ、又は骨髄腫からなる群から選択される疾患と関連するがん又は腫瘍細胞を含む疾患を治療する方法である。この方法のある特定の実施形態においては、障害は、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、喘息、クローン病、糖尿病、移植片拒絶、移植片対宿主疾患、橋本甲状腺炎、溶血性尿毒症症候群、HIV関連疾患、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、多発動脈炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、強皮症、敗血性ショック、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、及び血管炎からなる群から選択される疾患と関連する免疫障害である。
特に、本発明のある特定の実施形態は、がん又は免疫障害の治療又は予防のための医薬の製造における、本発明のCD20結合タンパク質の使用である。特に、本発明のある特定の実施形態は、がん、腫瘍、又は免疫障害の治療又は予防における使用のための、細胞毒性タンパク質又は前記タンパク質を含む医薬組成物である。
本発明のこれらの及びその他の特徴、態様及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面に関してより良好に理解されるようになる。本発明の上記要素を自由に組み合わせるか、又は除去して、以後、そのような組合せ又は除去に反対する記述がなくても、他の実施形態を作製することができる。
本発明の例示的CD20結合タンパク質の一般的構造を示す図である。
播種性Raji-luc異種移植片モデルにおいてαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1及びαCD20scFv::SLT−1Aバージョン2を投与した場合の総身体発光の変化を示すグラフである。
αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1及びαCD20scFv::SLT−1Aバージョン2を投与した場合のRaji-luc異種移植片モデルマウスの生存の増加を示すグラフである。
Raji皮下異種移植片モデルにおいてαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1及びαCD20scFv::SLT−1Aバージョン2を投与した場合の腫瘍体積の変化を示すグラフである。
αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1を投与した場合の非ヒト霊長類試験におけるB細胞枯渇を示す図である。特に、CD21を発現するCD20+B細胞のサブセットを分析した。
αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1を投与した場合の非ヒト霊長類試験におけるB細胞枯渇を示す図である。特に、CD21を発現しないCD20+B細胞のサブセットを分析した。
本発明は、例示的な非限定的実施形態、及び添付の図面の参照を用いて、以後、より完全に説明される。本発明は、多くの異なる形態で具体化することができるが、以下に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完全なものとなり、本発明の範囲を当業者に伝達するように提供される。
本発明をより容易に理解するために、ある特定の用語を以下に定義する。さらなる定義は、本発明の詳細な説明内に見出すことができる。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる用語「a」、「an」及び「the」は、文脈が別途明確に区別しない限り、単数と複数の両方の指示対象を含む。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、2つの種、A及びBを参照する場合の用語「及び/又は」は、A及びBの少なくとも1つを意味する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、2つより多い種、A、B、及びCなどを参照する場合の用語「及び/又は」は、A、B、若しくはCの少なくとも1つ、又はA、B、若しくはCの任意の組合せの少なくとも1つを意味する(それぞれの種は単数又は複数の可能性がある)。
本明細書を通して、単語「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などの変形は、記述される整数(若しくは成分)又は整数(若しくは成分)の群の含有を意味するが、任意の他の整数(若しくは成分)又は整数(若しくは成分)の群の排除を意味しないと理解される。
本明細書を通して、用語「含む(including)」は、「限定されるものではないが、含む(including but not limited to)」を意味するために用いられる。「含む(including)」と「限定されるものではないが、含む(including but not limited to)」とは、互換的に用いられる。
用語「アミノ酸残基」又は「アミノ酸」は、タンパク質、ポリペプチド、又はペプチドに組み込まれるアミノ酸に対する参照を含む。用語「ポリペプチド」は、アミノ酸又はアミノ酸残基の任意のポリマーを含む。用語「ポリペプチド配列」とは、ポリペプチドが物理的に構成される一連のアミノ酸又はアミノ酸残基を指す。「タンパク質」は、1又は2以上のポリペプチド鎖を含む大分子である。「ペプチド」は、合計15〜20未満のアミノ酸残基のサイズの小さいポリペプチドである。
用語「アミノ酸」、「アミノ酸残基」又はポリペプチド配列は、別途限定しない限り、天然のアミノ酸を含み、天然のアミノ酸と同様の様式で機能することができる天然アミノ酸の既知のアナログも含む。本明細書に記載のアミノ酸は、以下の表Aのように短縮された記号で記載される。
ポリペプチドに関する語句「保存的置換」とは、ポリペプチド全体の機能及び構造を実質的に変化させないポリペプチドのアミノ酸組成の変化を指す(Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties (W. H. Freeman and Company, New York (2nd ed., 1992)を参照されたい)。
本明細書で用いられる場合、用語「発現された(expressed)」、「発現する(expressing)」又は「発現する(expresses)」とは、ポリヌクレオチド又は核酸の、ポリペプチド又はタンパク質への翻訳を指す。発現されたポリペプチド又はタンパク質は、細胞内に残存し、細胞表面膜の成分になるか、又は細胞外空間に分泌されてもよい。
本明細書で用いられる記号「α」は、記号の後の生体分子に結合することができる免疫グロブリン型結合領域の省略表現である。記号「α」は、記号の後の生体分子に結合するその能力に基づく免疫グロブリン型結合領域の機能的特徴を指すために用いられる。
CD20結合タンパク質の細胞毒性活性に関する用語「選択的細胞毒性」とは、標的細胞集団と非標的バイスタンダー細胞集団との間の細胞毒性の相対レベルを指し、標的細胞型の細胞死滅の優先性を示すために、標的細胞型の最大半量細胞毒性濃度(CD50)と非標的細胞型のCD50の比として表すことができる。
本発明の目的のために、用語「エフェクター」は、細胞毒性、生物学的シグナリング、酵素触媒作用、細胞内ルーティング、並びに/又は因子及び/若しくはアロステリック効果の動員をもたらす分子間結合などの生物学的活性を提供することを意味する。
本発明の目的のために、語句「に由来する」は、ポリペプチド領域がタンパク質中に元々見出されるアミノ酸配列を含み、ここで、全体的な機能及び構造が実質的に保存されるような元の配列からの付加、欠失、トランケーション、又は他の変化を含んでもよいことを意味する。
はじめに
志賀毒素サブユニットA由来エフェクター領域はCD20の細胞内在化を誘導するため、本発明は、機能のために細胞内在化を必要とするCD20を標的とする治療剤を操作するための課題を解決する。本発明は、細胞外CD20抗原に結合し、CD20を、細胞膜での位置から細胞の内部に迅速に内在化させるCD20結合タンパク質を提供する。ある特定の開示されるCD20結合タンパク質は、その表面上にCD20を発現する細胞を死滅させる。ある特定の開示されるCD20結合タンパク質は、分子カーゴの形態でさらなる外来物質を、その表面上にCD20を発現する細胞の内部に正確に送達することができる。本発明は、CD20を含み、CD20発現細胞の内部へのペイロードの正確な送達を可能にする多数の免疫毒素薬剤化可能な標的に拡張される。
I.本発明のCD20結合タンパク質の一般構造
本発明は、各CD20結合タンパク質が、1)細胞標的化のための免疫グロブリン型結合領域を含むCD20結合領域と、2)細胞死滅のための志賀毒素エフェクター領域とを含む、特定の細胞型の選択的死滅のための様々なCD20結合タンパク質を提供する。CD20標的化免疫グロブリン型結合領域と、志賀毒素サブユニットA由来領域との連結は、強力な志賀毒素細胞毒性の細胞型特異的標的化の操作を可能にする。このシステムは、様々な志賀毒素エフェクター領域と、さらなる外来物質とを同じCD20結合領域に連結して、CD20発現細胞を含む多様な適用を提供することができる点でモジュラー式である。本発明のCD20結合タンパク質は、真核細胞の外部細胞膜を貫通するCD20分子の少なくとも1つの細胞外部分に特異的に結合することができる免疫グロブリン型CD20結合領域に連結された志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来する志賀毒素エフェクター領域を含む。この一般構造は、様々なCD20結合領域を、様々な位置で、又はそれらの間を異なるリンカーを用いて志賀毒素サブユニットA由来エフェクター領域に連結して、同じ一般構造の変動をもたらすことができる点でモジュラー式である(例えば、図1を参照されたい)。
A.免疫グロブリン型結合領域を含むCD20結合領域
本発明の目的のために、用語「CD20結合領域」とは、CD20分子の細胞外部分に特異的に結合することができるポリペプチド領域を指す。CD20の名称は関連する構造を有する複数のタンパク質及び様々な種に由来するポリペプチド配列を指してもよいが、本発明の目的のために、用語「CD20」は、正確な配列がアイソフォームに基づいて、及び個体間でわずかに変化してもよい哺乳動物中に存在するBリンパ球抗原CD20タンパク質を指す。例えば、ヒトにおいては、CD20は主なポリペプチド配列UnitProt P11836及びNCBI受託番号NP690605.1により表されるタンパク質を指すが、異なるアイソフォーム及びバリアントが存在してもよい。様々なCD20タンパク質のポリペプチド配列が、コウモリ、ネコ、ウシ、イヌ、マウス、マーモセット、及びラットなどの様々な種において記載されており、遺伝子相同性に基づくいくつかの他の種におけるバイオインフォマティクスにより予測することができる(例えば、CD20は、ヒヒ、マカク、テナガザル、チンパンジー、及びゴリラなどの様々な霊長類において予測されている)(Zuccolo J et al., PLoS One 5: e9369 (2010)及びNCBIタンパク質データベース(National Center for Biotechnology Information、U.S.)を参照されたい)。当業者であれば、CD20タンパク質が参照配列とわずかに異なる場合であっても、哺乳動物においてそれを同定することができる。
CD20分子の細胞外部分とは、CD20分子が細胞膜中に天然に存在する場合に細胞外環境に曝露されたその構造の一部を指す。この文脈において、細胞外環境に曝露されたとは、CD20分子の部分が、例えば、抗体又は単一ドメイン抗体ドメイン、ナノボディ、ラクダ科動物若しくは軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン、一本鎖可変断片、又は免疫グロブリンに対する任意数の操作された代替足場などの、抗体よりも小さい少なくとも結合部分により接近可能であることを意味する(以下を参照されたい)。当業者であれば、当業界で公知の方法を用いることにより、CD20の一部の曝露を経験的に決定することができる。CD20内のその位置に基づいて細胞外空間中で抗体に接近可能ではないと予測されたCD20のいくつかの部分は、モノクローナル抗体により接近可能であることが経験的に示されたことに留意されたい(Teeling J et al., J. Immunol. 177: 362-71 (2006))。
CD20結合領域は、抗体又は抗体様構造から一般的に由来するが、他の起源からの代替足場もこの用語の範囲内に企図される。ある特定の実施形態においては、CD20結合領域は、抗体パラトープなどの、免疫グロブリン由来結合領域に由来する。ある特定の他の実施形態においては、CD20結合領域は、任意の免疫グロブリンドメインに由来しない操作されたポリペプチドである免疫グロブリン型結合領域を含む。本発明における成分として企図されるいくつかの免疫グロブリン由来結合領域が存在する。
本発明のCD20結合タンパク質は、CD20の細胞外部分に選択的及び特異的に結合することができる1又は2以上のポリペプチドを含む免疫グロブリン型結合領域を含む。本明細書で用いられる用語「免疫グロブリン型結合領域」とは、抗原又はエピトープなどの、1又は2以上の標的生体分子に結合することができるポリペプチド領域を指す。免疫グロブリン型結合領域は、標的分子に結合するその能力によって機能的に定義され、本発明の全ての免疫グロブリン型結合領域はCD20に結合することができる。免疫グロブリン型結合領域は、抗体又は抗体様構造から一般的に由来するが、他の起源に由来する代替足場もこの用語の範囲内に企図される。
免疫グロブリン(Ig)タンパク質は、Igドメインとして知られる構造ドメインを有する。Igドメインは長さ約70〜110アミノ酸残基の範囲であり、特徴的なIg折畳みを有し、典型的には、7〜9個の逆平行ベータ鎖が2つのベータシートに整列し、サンドイッチ様構造を形成する。Ig折畳みは、サンドイッチの内部表面上での疎水性アミノ酸相互作用と、鎖中のシステイン残基間の高度に保存されたジスルフィド結合とにより安定化される。Igドメインは、可変(IgV若しくはV−set)、定常(IgC若しくはC−set)又は中間(IgI若しくはI−set)であってもよい。いくつかのIgドメインは、抗体のエピトープに結合する抗体の特異性にとって重要である、抗原結合領域(ABR、antigen binding region)とも呼ばれる、相補性決定領域(CDR、complementarity determining region)と会合することができる。Ig様ドメインも非免疫グロブリンタンパク質中に見出され、Igスーパーファミリーのタンパク質のメンバーに基づいて分類される。HUGO遺伝子命名委員会(HGNC、Gene Nomenclature Committee)は、Ig様ドメイン含有ファミリーのメンバーの一覧を提供する。
免疫グロブリン型結合領域は、アミノ酸配列が、例えば、分子操作又はライブラリースクリーニングによる選択により、天然抗体又は非免疫グロブリンタンパク質のIg様ドメインのものから変化した、抗体又はその抗原結合断片のポリペプチド配列であってもよい。免疫グロブリン型結合領域の生成における組換えDNA技術及びインビトロでのライブラリースクリーニングの関連性のため、抗体を再設計して、より小さいサイズ、細胞進入、又は他の治療的改善などの所望の特徴を得ることができる。可能な変動は多く、ちょうど1アミノ酸の変化から、例えば、可変領域の完全な再設計までの範囲であってもよい。典型的には、可変領域の変化を作製して、抗原結合特性を改善する、可変領域安定性を改善する、又は免疫原性応答の可能性を低下させることができる。
本発明において企図されるCD20の細胞外部分に結合するいくつかの免疫グロブリン型結合領域が存在する。ある特定の実施形態においては、免疫グロブリン型結合領域は、CD20の細胞外部分に結合することができる抗体パラトープなどの、免疫グロブリン結合領域に由来する。ある特定の他の実施形態においては、免疫グロブリン型結合領域は、任意の免疫グロブリンドメインに由来しないが、CD20の細胞外部分に対して高親和性結合を提供することにより免疫グロブリン結合領域のように機能する操作されたポリペプチドを含む。この操作されたポリペプチドは、場合により、本明細書に記載の免疫グロブリンに由来する相補性決定領域を含むか、又はそれから本質的になるポリペプチド足場を含んでもよい。
本発明のCD20結合タンパク質をCD20発現細胞に標的化するのに有用である、先行技術におけるいくつかの免疫グロブリン由来結合領域及び非免疫グロブリン操作ポリペプチドが存在する。ある特定の実施形態においては、本発明のCD20結合タンパク質の免疫グロブリン型結合領域は、単一ドメイン抗体ドメイン(sdAb、single-domain antibody domain)、ナノボディ、ラクダ科動物に由来する重鎖抗体ドメイン(VHH断片)、二価ナノボディ、軟骨魚類に由来する重鎖抗体ドメイン、免疫グロブリン新抗原受容体(IgNAR、immunoglobulin new antigen receptor)、VNAR断片、一本鎖可変(scFv、single-chain variable)断片、多量体化scFv断片(ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、二特異的タンデムscFv断片、ジスルフィド安定化抗体可変(Fv)断片、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなるジスルフィド安定化抗原結合(Fab)断片、二価F(ab’)2断片、重鎖及びCH1ドメインからなるFd断片、一本鎖Fv−CH3ミニボディ、二特異的ミニボディ、二量体CH2ドメイン断片(CH2D、CH2 domain)、Fc抗原結合ドメイン(Fcab、Fc antigen binding)、単離された相補性決定領域3(CDR3、complementary determining region 3)断片、拘束された(constrained)フレームワーク領域3、CDR3、フレームワーク領域4(FR3−CDR3−FR4)ポリペプチド、小モジュラー免疫薬(SMIP、small modular immunopharmaceutical)ドメイン、並びにそのパラトープ及び結合機能を保持する前記の任意の遺伝子操作された対応物を含む群から選択される(概説については、Weiner L, Cell 148: 1081-4 (2012); Ahmad Z et al., Clin Dev Immunol 2012: 980250 (2012)を参照されたい)。
ある特定の他の実施形態と一致して、本発明のCD20結合タンパク質の免疫グロブリン型結合領域は、CD20に対する高親和性及び特異的結合などの類似する機能的特徴を示し、より高い安定性又は低下した免疫原性などの、改善された特徴の操作を可能にする免疫グロブリンドメインに対する操作された代替足場を含んでもよい。本発明のCD20結合タンパク質のある特定の実施形態については、免疫グロブリン型結合領域は、操作されたフィブロネクチン由来第10フィブロネクチンIII型(10Fn3)ドメイン(モノボディ;AdNectin(商標)、又はAdNexin(商標));操作されたテナシン由来テナシンIII型ドメイン(Centryn(商標));操作されたアンキリンリピートモチーフ含有ポリペプチド(DARPin(商標));操作された低密度リポタンパク質受容体由来Aドメイン(LDLR−A、low-density-lipoprotein-receptor-derived, A domain)(Avimer(商標));リポカリン(アンチカリン);操作されたプロテアーゼ阻害剤由来Kunitzドメイン;操作されたプロテインA由来Zドメイン(Affibody(商標));操作されたガンマ−B結晶由来足場又は操作されたユビキチン由来足場(Affilin);Sac−7d由来ポリペプチド(Nanoffitin(登録商標)又はアフィチン);操作されたFyn由来SH2ドメイン(Fynomer(登録商標));及び操作された抗体模倣物並びにその結合機能を保持する前記の任意の遺伝子操作された対応物を含む群から選択される(Worn A, Pluckthun A, J Mol Biol 305: 989-1010 (2001); Xu L et al., Chem Biol 9: 933-42 (2002); Wikman M et al., Protein Eng Des Sel 17: 455-62 (2004); Binz H et al., Nat Biotechnol 23: 1257-68 (2005); Holliger P, Hudson P, Nat Biotechnol 23: 1126-36 (2005); Gill D, Damle N, Curr Opin Biotech 17: 653-8 (2006); Koide A, Koide S, Methods Mol Biol 352: 95-109 (2007))。
本明細書で用いられる用語「結合領域」に包含されるタンパク質構築物の非限定例としては、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片;並びに(vi)単離されたCDRが挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメインVL及びVHは別々の遺伝子によってコードされるが、それらを合成リンカーにより組換えによって接続し、VLとVHドメインが対形成して一価分子(一本鎖Fv(scFv)として知られる)を形成する一本鎖タンパク質を作製することができる。最も一般的に用いられるリンカーは、15残基の(Gly4Ser)3ペプチドであるが、他のリンカーも当業界で公知である。一本鎖抗体も、本明細書で用いられる用語「結合領域」に包含されることが意図される。
また、結合機能を提供する代替足場が本明細書で用いられる用語「結合領域」の範囲内にあることも予測される。代替足場のいくつかの例としては、ダイアボディ、CDR3ペプチド、拘束された(constrained)FR3−CDR3−FR4ペプチド、ナノボディ(米国特許出願公開第2008/0107601号明細書)、二価ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、サメ可変IgNARドメイン(国際公開第WO03/014161号パンフレット)、ミニボディ及び標的分子結合機能を保持する任意の断片又は化学的に若しくは遺伝子操作された対応物が挙げられる。
本明細書で用いられる「抗体由来配列」は、アミノ酸配列が天然抗体のものから変化した抗体又はその抗原結合断片のアミノ酸配列を意味する。抗体の生成における組換えDNA技術の関連性のため、抗体を再設計して所望の特徴を得ることができる。可能な変動は多く、例えば、可変領域の、ちょうど1個又は数個のアミノ酸の変化から、完全な再設計までの範囲である。典型的には、可変領域の変化を作製して、抗原結合特性を改善する、可変領域安定性を改善するか、又は免疫原性の危険性を低下させることができる。
本明細書で用いられる用語「重鎖可変(VH、heavy chain variable)ドメイン」又は「軽鎖可変(VL、light chain variable)ドメイン」はそれぞれ、任意の天然抗体VH又はVLドメイン(例えば、ヒトVH又はVLドメイン)並びに対応する天然抗体の少なくとも定性的抗原結合能力を保持するその任意の誘導体(例えば、天然マウスVH又はVLドメインに由来するヒト化VH又はVLドメイン)を指す。VH又はVLドメインは、3つのCDRにより中断された「フレームワーク」領域からなる。フレームワーク領域は、抗原のエピトープへの特異的結合のためにCDRを整列させるように働く。アミノ末端からカルボキシル末端に向かって、VH及びVLドメインは共に、以下のフレームワーク(FR)及びCDR領域:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割当ては、Kabat, Sequences of Proteins of Immunological Interest (5th ed., National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991)、又はChothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196: 901-17 (1987); Chothia et al., Nature 342:878-83, (1989)の定義に従う。VHドメインのCDR1、2、及び3はまた、本明細書ではそれぞれHCDR1、HCDR2、及びHCDR3とも呼ばれる;VLドメインのCDR1、2、及び3はまた、本明細書ではそれぞれLCDR1、LCDR2、及びLCDR3とも呼ばれる。
本発明のCD20結合タンパク質のいくつかの実施形態においては、結合領域は、特定のセットの相補性決定領域、又はCDRを含む抗体又は抗体由来配列を含む。CDRは、抗体のその抗原決定基への特異的結合にとって必要である抗体の可変ドメイン内の規定の配列領域である。本発明の一実施形態においては、CDRのセットは、抗体の重鎖に由来する3つのCDRと、抗体の軽鎖に由来する3つのCDRとを含む。いくつかの実施形態においては、3つの重鎖CDRは、(a)それぞれ、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、それぞれ、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;(b)それぞれ、配列番号21、配列番号22、及び配列番号23に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと、それぞれ、配列番号24、配列番号10、及び配列番号11に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン;又は(c)それぞれ、配列番号21、配列番号22、及び配列番号27に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメインと、それぞれ、配列番号28、配列番号10、及び配列番号29に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含む。さらに、本発明のある特定の実施形態においては、結合領域は、配列番号4のアミノ酸2〜245を含むか、又はそれから本質的になる。
このシステムは、様々な多様な免疫グロブリン型結合領域を、同じ志賀毒素エフェクター領域と共に用いてCD20の異なる細胞外エピトープを標的とすることができる点でモジュラー式である。当業者であれば、CD20の細胞外部分に結合することができる免疫グロブリン型の任意のCD20結合領域を用いて、志賀毒素エフェクター領域に連結される免疫グロブリン型結合領域を設計又は選択し、本発明のCD20結合タンパク質を産生することができることを理解できる。
B.志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来する志賀毒素エフェクター領域
本発明の目的のために、語句「志賀毒素エフェクター領域」とは、リボソームを不活化し、細胞毒性効果及び/又は細胞増殖抑制効果をもたらすことができる志賀毒素ファミリーのメンバーの志賀毒素Aサブユニットに由来するポリペプチド領域を指す。志賀毒素ファミリーのメンバーとは、構造的及び機能的に関連する、特に、志賀赤痢菌(S. dysenteriae)及び大腸菌(E. coli)から単離される毒素(Johannes, Nat Rev Microbiol 8: 105-16 (2010))である天然タンパク質毒素のファミリーの任意のメンバーを指す。例えば、志賀毒素ファミリーは、志賀赤痢菌血清型1から単離される真の志賀毒素(Stx)、腸管出血性大腸菌の血清型から単離される志賀様毒素1バリアント(SLT1又はStx1又はSLT−1又はSlt−I)、及び腸管出血性大腸菌の血清型から単離される志賀様毒素2バリアント(SLT2又はStx2又はSLT−2)を包含する。SLT1はStxとただ1個の残基で異なり、両方ともベロ細胞毒素又はベロ毒素(VT、Verotoxin)と呼ばれている(O'Brien, Curr Top Microbiol Immunol 180: 65-94 (1992))。SLT1及びSLT2バリアントはアミノ酸配列レベルでは互いに約53〜60%類似するに過ぎないが、それらは志賀毒素ファミリーのメンバーと共通の酵素活性及び細胞毒性の機構を共有する(Johannes, Nat Rev Microbiol 8: 105-16 (2010))。定義されたサブタイプStx1a、Stx1c、Stx1d、及びStx2a〜gなどの、39を超える異なる志賀毒素が記載されている(Scheutz F et al., J Clin Microbiol 50: 2951-63 (2012))。志賀毒素をコードする遺伝子は水平遺伝子伝播により細菌種間で拡散し得るため、志賀毒素ファミリーのメンバーは任意の細菌種に自然に限定されない(Strauch E et al., Infect Immun 69: 7588-95 (2001); Zhaxybayeva O, Doolittle W, Curr Biol. 21: R242-6 (2011))。種間伝播の一例として、志賀毒素は患者から単離されたアシネトバクター・ヘモリティクス(A. haemolyticus)の株中で発見された(Grotiuz G et al., J Clin Microbiol 44: 3838-41 (2006))。志賀毒素をコードするポリヌクレオチドが新しい亜種又は種に進入すると、志賀毒素アミノ酸配列は、志賀毒素ファミリーのメンバーと共通の細胞毒性の機能を依然として維持しながら、遺伝子ドリフト及び/又は選択圧のためわずかな配列変化を生じることができると推定される(Scheutz, J Clin Microbiol 50: 2951-63 (2012)を参照されたい)。
本発明の志賀毒素エフェクター領域は、任意の形態のその天然志賀毒素Bサブユニットから解離した志賀毒素Aサブユニットに由来するポリペプチドを含むか、又はそれから本質的になる。さらに、本発明のCD20結合タンパク質は、志賀毒素Bサブユニットの機能的結合ドメインを含むか、又はそれから本質的になる任意のポリペプチドを含まない。むしろ、志賀毒素Aサブユニット由来領域は、異種CD20結合領域と機能的に関連し、CD20発現細胞への細胞標的化をもたらす。
ある特定の実施形態においては、本発明の志賀毒素エフェクター領域は、完全長志賀毒素Aサブユニット(例えば、SLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号25)、又はSLT−2A(配列番号26))を含むか、又はそれから本質的になってもよく、天然志賀毒素Aサブユニットは、そのアミノ末端に約22アミノ酸のシグナル配列を含有する前駆体形態を含んでもよく、このシグナル配列は除去されて成熟志賀毒素Aサブユニットを産生することに留意されたい。「毒素エフェクター領域」の1つの特定例は、志賀様毒素1(SLT−1)(配列番号1)のA鎖に由来するものである。SLT−1のA鎖は、残基1〜239に及ぶ酵素(毒性)ドメインを有する293アミノ酸から構成される。他の実施形態においては、本発明の志賀毒素エフェクター領域は、完全長志賀毒素Aサブユニットよりも短いトランケート型志賀毒素Aサブユニットを含むか、又はそれから本質的になる。
志賀様毒素1Aサブユニットトランケーションは触媒的に活性であり、インビトロでリボソームを酵素的に不活化し、細胞内で発現された場合に細胞毒性である(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。完全な酵素活性を示す最も小さい志賀毒素Aサブユニット断片は、Slt1Aの残基1〜239から構成されるポリペプチドである(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。実質的な触媒活性を保持すると報告された志賀毒素Aサブユニットの最も小さい断片は、StxAの残基75〜247(Al-Jaufy, Infect Immun 62: 956-60 (1994))であり、真核細胞内でデノボで発現されるStxAトランケーションは細胞質ゾルに到達し、リボソームの触媒的不活化を示すためには最大でも残基240のみを必要とする(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。
志賀毒素エフェクター領域は一般に、完全長Aサブユニットより小さくてもよい。志賀毒素エフェクター領域は、アミノ酸位置77〜239に由来するポリペプチド領域(SLT−1A 配列番号1;StxA 配列番号25、若しくはSLT−2A 配列番号26)又は志賀毒素ファミリーのメンバーの他のAサブユニットにおける等価物を維持することが好ましい。例えば、本発明のある特定の実施形態においては、SLT−1Aに由来する志賀毒素エフェクター領域は、配列番号1のアミノ酸75〜251、配列番号1の1〜241、配列番号1の1〜251、又は配列番号1のアミノ酸1〜261を含むか、又はそれから本質的になってもよい。同様に、他の特定の態様のうち、StxAに由来する志賀毒素エフェクター領域は、配列番号25のアミノ酸75〜251、配列番号25の1〜241、配列番号25の1〜251、又は配列番号25のアミノ酸1〜261を含むか、又はそれから本質的になってもよい。さらに、他の特定の態様のうち、SLT−2に由来する志賀毒素エフェクター領域は、配列番号26のアミノ酸75〜251、配列番号26の1〜241、配列番号26の1〜251、又は配列番号26のアミノ酸1〜261を含むか、又はそれから本質的になってもよい。
本発明はさらに、志賀毒素エフェクター領域が最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40以上のアミノ酸残基によって(しかし、少なくとも85%、90%、95%、99%以上のアミノ酸配列同一性を保持するもの以下によって)天然志賀毒素Aサブユニットと異なる、本発明のCD20結合タンパク質のバリアントを提供する。かくして、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来するポリペプチド領域は、天然志賀毒素Aサブユニットに対して少なくとも85%、90%、95%、99%以上のアミノ酸配列同一性が維持される限り、元の配列からの付加、欠失、トランケーション、又は他の変化を含んでもよい。
従って、ある特定の実施形態においては、志賀毒素エフェクター領域は、SLT−1A(配列番号1)、Stx(配列番号25)、及び/又はSLT−2A(配列番号26)などの、天然志賀毒素Aサブユニットに対して少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、99.5%又は99.7%の全体的配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又はそれから本質的になる。
場合により、完全長又はトランケート型の志賀毒素Aサブユニットは、1又は2以上の変異(例えば、置換、欠失、挿入又は逆位)を含んでもよい。強力に細胞毒性である特定の実施形態においては、志賀毒素エフェクター領域は、宿主細胞形質転換、トランスフェクション、感染若しくは誘導の周知の方法によるか、又は志賀毒素エフェクター領域と連結された免疫グロブリン型結合領域を細胞標的とすることにより媒介される内在化により、細胞中への進入後に細胞毒性を保持するために十分な配列同一性を有する。志賀毒素Aサブユニットにおける酵素活性及び/又は細胞毒性にとって最も重要な残基は、以下の残基位置:特に、アスパラギン−75、チロシン−77、グルタミン酸−167、アルギニン−170、及びアルギニン−176にマッピングされた(Di, Toxicon 57: 535-39 (2011))。本発明の実施形態のいずれかにおいて、志賀毒素エフェクター領域は、必須ではないが、好ましくは、StxA、SLT−1A中の位置77、167、170、及び203に見出されるものなどの位置の1若しくは2以上の保存されたアミノ酸、又は細胞毒性活性にとって典型的に必要とされる志賀毒素ファミリーの他のメンバー中の等価な保存された位置を維持してもよい。細胞死を引き起こす本発明のCD20結合タンパク質の能力、例えば、その細胞毒性を、当業界で周知のいくつかのアッセイの任意の1又は2以上を用いて測定することができる。
本発明のある特定の実施形態においては、1又は2以上のアミノ酸残基を変異又は欠失させて、志賀毒素エフェクター領域の細胞毒性活性を低下させるか、又は除去することができる。志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットの細胞毒性を、変異又はトランケーションによって低減又は除去することができる。位置標識されたチロシン−77、グルタミン酸−167、アルギニン−170、チロシン−114、及びトリプトファン−203は、Stx、Stx1、及びStx2の触媒活性にとって重要であることが示されている(Hovde C et al., Proc Natl Acad Sci USA 85: 2568-72 (1988);Deresiewicz R et al., Biochemistry 31: 3272-80 (1992);Deresiewicz R et al., Mol Gen Genet 241: 467-73 (1993);Ohmura M et al., Microb Pathog 15: 169-76 (1993);Cao C et al., Microbiol Immunol 38: 441-7 (1994);Suhan M, Hovde C, Infect Immun 66: 5252-9 (1998))。グルタミン酸−167とアルギニン−170の両方を変異させると、無細胞リボソーム不活化アッセイにおいてSlt−IA1の酵素活性が除去された(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。小胞体におけるSlt−IA1のデノボ発現を用いる別の手法において、グルタミン酸−167とアルギニン−170の両方を変異させると、その発現レベルでSlt−IA1断片の細胞毒性が除去された(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。トランケーション分析により、残基75〜268のStxAの断片は依然としてインビトロで有意な酵素活性を保持することが示された(Haddad, J Bacteriol 175: 4970-8 (1993))。残基1〜239を含有するSlt−IA1のトランケートされた断片は、インビトロで有意な酵素活性及び細胞質ゾル中でのデノボ発現による細胞毒性を示した(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。小胞体における残基1〜239にトランケートされたSlt−IA1断片の発現は、それが細胞質ゾル中に逆輸送することができないため、細胞毒性的ではなかった(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。
本発明の目的のために、志賀毒素エフェクター領域及びCD20結合領域について互いに、又はCD20結合タンパク質全体のN末端及びC末端に関して、特定の順序又は向きは固定されない(例えば、図1を参照されたい)。上記のCD20結合タンパク質において、CD20結合領域と志賀毒素エフェクター領域を、互いに直接連結する、及び/又は当業界で周知の1若しくは2以上のリンカーなどの、1若しくは2以上の介在ポリペプチド配列を介して互いに好適に連結することができる。
II.本発明のCD20結合タンパク質の特定の構造変化の例
本発明のある特定の実施形態のうち、CD20結合タンパク質は、SLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号25)、又はSLT−2A(配列番号26)のアミノ酸75〜251を含むか、又はそれから本質的になる志賀毒素エフェクター領域を含む。さらなる実施形態は、志賀毒素エフェクター領域がSLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号25)、及び/又はSLT−2A(配列番号26)のアミノ酸1〜241を含むか、又はそれから本質的になるCD20結合タンパク質である。さらなる実施形態は、志賀毒素エフェクター領域がSLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号25)、及び/又はSLT−2A(配列番号26)のアミノ酸1〜251を含むか、又はそれから本質的になるCD20結合タンパク質である。さらなる実施形態は、志賀毒素エフェクター領域がSLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号25)、及び/又はSLT−2A(配列番号26)のアミノ酸1〜261を含むか、又はそれから本質的になるCD20結合タンパク質である。
ある特定の実施形態について、本発明のCD20結合タンパク質は、配列番号4、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16のアミノ酸配列を含むか、又はそれから本質的になるものである。
本明細書で用いられる用語「重鎖可変(VH)ドメイン」又は「軽鎖可変(VL)ドメイン」はそれぞれ、任意の抗体VH又はVLドメイン(例えば、ヒトVH又はVLドメイン)並びに対応する天然抗体の少なくとも定性的抗原結合能力を保持するその任意の誘導体(例えば、天然マウスVH又はVLドメインに由来するヒト化VH又はVLドメイン)を指す。VH又はVLドメインは、3つのCDRにより中断された「フレームワーク」領域からなる。フレームワーク領域は、抗原のエピトープへの特異的結合のためにCDRを整列させるように働く。アミノ末端からカルボキシル末端に向かって、VHとVLドメインは両方とも、以下のフレームワーク(FR)及びCDR領域:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割当ては、Kunik V et al., PLoS Comput Biol 8: e1002388 (2012)及びKunik V et al., Nucleic Acids Res. 40: W521-4 (2012)の定義又はあるいは、Kabat, Sequences of Proteins of Immunological Interest, (5th ed., National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991);若しくはChothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196: 901-17 (1987);Chothia et al., Nature 342: 878-83 (1989)の定義に従う。
本発明のある特定の実施形態においては、CDRは、抗体の重鎖に由来する3つのCDRと、抗体の軽鎖に由来する3つのCDRとを含む。ある特定の実施形態においては、3つの重鎖CDRは配列番号7(HCDR1)、配列番号8(HCDR2)、及び配列番号9(HCDR3)を含むが、3つの軽鎖CDRは配列番号9(LCDR1)、配列番号10(LCDR2)及び配列番号11(LCDR3)を含む。さらに、本発明のある特定の実施形態においては、免疫グロブリン型結合領域は、配列番号4のアミノ酸2〜245を含むか、又はそれから本質的になる。
CD20の任意の細胞外部分に対する機能的なCD20結合部位を含有し、さらにより好ましくは、高い親和性(例えば、KDで示される)でCD20に結合することができる本発明のCD20結合タンパク質のポリペプチドの断片、バリアント、及び/又は誘導体を使用することは、本発明の範囲内にある。例えば、本発明は、CD20に結合することができる免疫グロブリン由来ポリペプチド配列を提供する。任意のポリペプチドを、10−5〜10−12モル/リットル、好ましくは、200nM未満の解離定数(KD)でCD20の細胞外部分に結合するこの領域に置換することができる。
かくして、少なくとも1つのポリペプチド配列が、記載されるCDR1配列、CDR2配列、及びCDR3配列からなる群から選択される限り、開示される例示的CD20結合タンパク質の免疫グロブリン型結合部位を変化させることは本発明の範囲内にある。特に、限定されるものではないが、本発明のポリペプチド配列は、4つのフレームワーク領域(FR1〜FR4)と、3つの相補性決定領域(それぞれ、CDR1〜CDR3);又は1若しくは2以上のCDRの存在に基づいて標的生体分子結合機能を示すそのようなアミノ酸配列の任意の好適な断片から本質的になってもよい。
特定の実施形態においては、免疫グロブリン型結合領域は、(i)配列番号6、配列番号7、及び配列番号8に示されるCDRアミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメインと、(ii)配列番号9、配列番号10、及び配列番号11に示されるCDRアミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメインとを含む。他の実施形態においては、免疫グロブリン型結合領域は、配列番号4のアミノ酸2〜245を含むか、又はそれから本質的になる。
本発明のある特定の実施形態のうち、免疫グロブリン型結合領域は、CD20に特異的に結合する高い親和性を示すナノボディ又は単一ドメイン免疫グロブリン由来領域VHHに由来する。一般に、ナノボディは、ラクダ科動物及び軟骨魚類(軟骨魚綱)に見出される種類の天然の単一単量体可変ドメイン抗体(sdAb)の断片から構築される。ナノボディは、単一単量体可変ドメインをトランケートして、より小さく、より安定な分子を作製することにより、これらの天然抗体から操作される。その小さいサイズのため、ナノボディは全抗体に接近可能ではない抗原に結合することができる。
III.本発明のCD20結合タンパク質の一般機能
本発明は、CD20タンパク質が、1)細胞標的化のための免疫グロブリン型CD20結合領域と、2)細胞内在化、場合により、同様に細胞死滅を誘導するための細胞毒性志賀毒素エフェクター領域を含む、特定の細胞型の選択的死滅のための様々なCD20結合タンパク質を提供する。CD20標的化免疫グロブリン型結合領域と、志賀毒素サブユニットA由来領域との連結により、CD20発現細胞に対する強力な志賀毒素細胞毒性の特異的標的化が可能になる。その好ましい実施形態において、本発明のCD20結合タンパク質は、細胞表面上に天然に存在するCD20に結合し、細胞に進入することができる。標的化された細胞型内に内在化されると、本発明のCD20結合タンパク質のある特定の実施形態は、細胞毒性志賀毒素エフェクターポリペプチド断片を標的細胞の細胞質ゾル中に送ることができる。標的化された細胞型の細胞質ゾル中に入ると、本発明のCD20結合タンパク質のある特定の実施形態は、リボソームを酵素的に不活化し、最終的に細胞を死滅させることができる。あるいは、非毒性バリアントを用いて、さらなる外来物質を送達する、及び/又は診断目的でCD20発現細胞の内部を標識することができる。
CD20を発現する様々な細胞型を、外来物質を死滅及び/又は受容するために本発明のCD20結合タンパク質により標的化することができる。特に、本発明のCD20結合タンパク質を内在化させると予測されるCD20発現細胞型は、B細胞系列内にあるものである。「B細胞系列」は、例えば、細胞表面マーカーにより、細胞学的に、若しくは別の手段でB細胞自体と同定された細胞、又は細胞学的に、若しくは別の手段でB細胞と同定された細胞からかつて、若しくは現在誘導された細胞を記載するために用いられる用語である。用語「B細胞系列」は、B細胞系列に由来する新生物細胞又はB細胞系列に対する前駆細胞を含む。特に、標的とすることができるCD20発現細胞型は、通常はCD20を発現しない細胞系列の異形成又は新生物細胞、例えば、メラノーマ細胞である。特に、本発明のCD20結合タンパク質を用いて標的化されるCD20発現細胞としては、B細胞系列又は非B細胞系列の新生物細胞、例えば、通常はB細胞と分類されないが、CD20を発現する造血系列に由来する新生物細胞が挙げられる。
A.CD20の迅速な内在化を誘導することができるCD20結合タンパク質
本発明の志賀毒素エフェクター領域は、CD20結合タンパク質を標的細胞の外部表面から標的細胞の細胞質ゾル中に移動させる、内在化機能を提供する。しかしながら、この内在化機能はまた、CD20の細胞内在化が促進又は誘導される点で加速機能でもある。本明細書及び特許請求の範囲で用いられる語句「迅速な内在化」とは、本発明のCD20結合タンパク質が、モノクローナル抗体リツキシマブなどの、先行技術の参照分子と比較して、結合時にCD20細胞内在化のための時間を減少させることを指す。
本発明の目的のために、細胞内在化は、CD20結合タンパク質の結合に起因して内在化が起こるための時間が、1H4 CD20モノクローナル抗体(Haisma H et al., Blood92: 184-90 (1999))などの、CD20抗原を認識するよく特徴付けられた抗体の結合と共に標的分子の内在化のための時間と比較して減少する場合、迅速であると考えられる。例えば、CD20抗原の内在化のタイミングは、細胞型及び抗体型について可変であるが、典型的には、結合後約6時間まで最大レベルに到達し始めない。かくして、本明細書で定義される用語「迅速」は、この6時間の標準内在化時間帯より短い。ある特定の実施形態においては、迅速は、約1時間未満の速さであってもよいが、約1時間から約2時間まで、約3時間まで、約4時間まで、約5時間までの範囲;約2時間から約3時間まで、約4時間まで、約5時間まで、約3時間から約4時間までの範囲、約5時間まで;及び約4時間から約5時間までの範囲を包含してもよい。
B.標的化された志賀毒素細胞毒性による細胞死滅
志賀毒素ファミリーのメンバーは真核細胞を死滅させるように適合化されるため、志賀毒素エフェクター領域を用いて設計されるCD20結合タンパク質は、強力な細胞死滅活性を示すことができる。志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットは、細胞の細胞質ゾル中に入ると、真核細胞を死滅させることができる酵素ドメインを含む。本発明のCD20結合タンパク質のある特定の実施形態は、この細胞毒性機構を利用する。
本発明のCD20結合タンパク質のある特定の実施形態においては、CD20の少なくとも一部が細胞外空間から接近可能となるようにCD20を発現する細胞を接触させる際に、CD20結合タンパク質は細胞死を引き起こすことができる。CD20陽性「細胞死滅」を、エクスビボで操作された標的細胞、インビトロで培養された標的細胞、インビトロで培養された組織試料内の標的細胞、又はインビボでの標的細胞などの、標的細胞の様々な条件下で本発明のCD20結合タンパク質を用いて達成することができる。
C.CD20発現細胞と非CD20発現細胞との間の選択的細胞毒性
CD20発現細胞に対する高親和性免疫グロブリン型結合領域を用いて酵素的に活性な志賀毒素領域の送達を標的化することにより、この強力な細胞死滅活性を、CD20陽性細胞型を優先的に死滅させるように限定することができる。
ある特定の実施形態においては、細胞型の混合物に本発明のCD20結合タンパク質を投与すると、CD20結合タンパク質は、細胞外CD20標的を欠く細胞型と比較して、細胞外CD20標的を示すCD20発現細胞を選択的に死滅させることができる。志賀毒素ファミリーのメンバーは真核細胞を死滅させるために適合化されているため、志賀毒素エフェクター領域を用いて設計されるCD20結合タンパク質は、強力な細胞毒性活性を示すことができる。高親和性免疫グロブリン型結合領域を用いてCD20発現細胞への酵素的に活性な志賀毒素領域の送達を標的化することにより、この強力な細胞死滅活性を、CD20発現細胞のみを優先的に死滅させるように限定することができる。
ある特定の実施形態においては、本発明のCD20結合タンパク質は、2又は3以上の異なる細胞型の混合物内で特定の細胞型の死滅を選択的又は優先的に引き起こすことができる。これにより、有意な量の細胞外CD20標的を発現しない「バイスタンダー」細胞型と比較して、少なくとも3倍の細胞毒性効果などの高い優先性で特定の細胞型に細胞毒性活性を標的化することが可能になる。これにより、有意な量のCD20を発現しないか、又は細胞表面上に有意な量のCD20を曝露していない「バイスタンダー」細胞型と比較して、少なくとも3倍の細胞毒性効果などの高い優先性で細胞表面上にCD20を発現する特定の細胞型の標的化された細胞死滅が可能になる。
ある特定のさらなる実施形態においては、2つの異なる集団の細胞型にCD20結合タンパク質を投与すると、CD20結合タンパク質は、CD20を発現しない細胞集団に対する同じCD20結合タンパク質の最大半量細胞毒性濃度(CD50)用量よりも少なくとも3倍低い用量で細胞表面上にCD20を発現する細胞集団に対するCD50により定義される細胞死を引き起こすことができる。
ある特定の実施形態においては、細胞表面上にCD20を発現する細胞型の集団に対する細胞毒性活性は、この実施形態のCD20結合領域の任意の細胞外CD20標的と物理的にカップリングしない細胞型の集団に対する細胞毒性活性よりも少なくとも3倍高い。本発明によれば、選択的細胞毒性を、(a)この実施形態のCD20結合領域の細胞外CD20標的を発現する細胞の集団に対する細胞毒性と、(b)この実施形態のCD20結合領域の任意の細胞外CD20標的と物理的にカップリングしない細胞型の細胞集団に対する細胞毒性との比(a/b)を単位として定量することができる。ある特定の実施形態においては、細胞毒性比は、CD20を発現しない細胞又は細胞型の集団と比較して、CD20を発現する細胞又は細胞型の集団について少なくとも3倍、5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、75倍、100倍、250倍、500倍、750倍、又は1000倍高い選択的細胞毒性を示す。
この優先的細胞死滅機能により、様々な条件下で、及びエクスビボで操作された細胞型の混合物、細胞型の混合物と共にインビトロで培養された組織などの非標的化バイスタンダー細胞の存在下、又は複数の細胞型の存在下でインビボで(例えば、インサイチュで、若しくは多細胞生物内のその天然の位置で)、本発明のある特定のCD20結合タンパク質により標的細胞を死滅させることができる。
さらに、場合により、触媒的に不活性な形態のCD20結合タンパク質を診断機能のために用いることができる。本発明のCD20結合タンパク質への当業界で公知のさらなる診断剤のコンジュゲーションは、患者又は生検試料中のB細胞系列の個々の免疫細胞又はがん細胞の細胞内器官(例えば、ゴルジ体、小胞体、及び細胞質ゾル画分)の画像化を可能にする。例えば、これは、新生物細胞型の診断、経時的な抗がん剤療法の進行のアッセイ、及び/又は腫瘍塊の外科的切除後の残存がん細胞の存在の評価において有用であり得る。
D.さらなる外来物質の送達
CD20結合タンパク質はCD20の細胞外部分への結合後にCD20の細胞内在化を誘導することができるため、本発明のCD20結合タンパク質のある特定の実施形態を用いて、さらなる外来物質を、CD20発現細胞の内部に送達することができる。ある意味では、CD20結合タンパク質全体が、細胞に進入する外来物質である;かくして、「さらなる」外来物質は、CD20結合タンパク質コア自体以外に連結された物質である。
本明細書で用いられる「さらなる外来物質」とは、一般的には天然標的細胞内には存在しないことが多い1又は2以上の分子を指し、本発明のCD20結合タンパク質を用いてそのような物質を細胞の内部に特異的に輸送することができる。一般に、さらなる外来物質は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、及びポリヌクレオチドから選択される。ペプチドであるさらなる外来物質の一例は、インフルエンザMatrix 58−66ペプチド(配列番号3)などの、インフルエンザウイルス抗原である。その抗原を、CD20を発現する標的細胞中に送達することができるCD20結合タンパク質の1つの例示的実施形態は、配列番号16に提供される。
さらなる外来物質は、インフルエンザMatrix 58−66ペプチド(配列番号3)などの、CD20結合タンパク質コア構造内の内部ポリペプチド配列を含んでもよい。同様に、さらなる外来物質は、CD20結合構造の末端に連結された末端に位置するポリペプチド配列を含んでもよい。さらなる外来抗原として、その抗原を、細胞表面上にCD20を発現する標的細胞中に送達することができる本発明のCD20結合タンパク質のある特定の実施形態は、配列番号4、配列番号12、配列番号14、又は配列番号16を含むか、又はそれから本質的になるCD20結合タンパク質である。
本発明のCD20結合タンパク質に連結することができる外来物質のさらなる例としては、細菌により感染した抗原提示細胞に特徴的なものなどの、細菌タンパク質に由来するものなどの抗原が挙げられる。さらなる外来物質のさらなる例は、がんにおいて変異したタンパク質又はがんにおいて異常に発現されるタンパク質である。さらなる外来物質のさらなる例としては、外来抗原として機能することができるT細胞相補性決定領域が挙げられる。
本発明のCD20結合タンパク質に連結することができる外来物質のさらなる例としては、酵素などの、抗原以外のタンパク質が挙げられる。さらなる型の外来物質は、ポリヌクレオチドである。特に、輸送することができるポリヌクレオチドは、低分子干渉RNA(siRNA)及びマイクロRNA(miRNA)などの、調節機能を有するように製剤化されたものである。
外来物質のさらなる例としては、細菌に感染した抗原提示細胞に特徴的なものなどの、細菌タンパク質に由来するものなどの抗原が挙げられる。外来抗原のさらなる例は、がんにおいて変異したタンパク質又はがんにおいて異常に発現されるタンパク質に由来するものである。T細胞相補性決定領域(CDR)は、本発明の目的のための外来抗原としても作用することができる。外来物質のさらなる例としては、酵素などの、抗原以外のタンパク質が挙げられる。さらなる型の外来物質は、核酸である。特に、輸送することができる核酸は、低分子干渉RNA(siRNA)及びマイクロRNA(miRNA)などの、調節機能を有するように製剤化されたものである。
全体的な構造及び機能を維持する本発明のCD20結合タンパク質のポリペプチド配列の変化
特定の上記実施形態において、本発明のCD20結合タンパク質は、ポリペプチド領域中に導入された1又は2以上のアミノ酸置換が存在するバリアントである。本明細書で用いられる用語「保存的置換」は、1又は2以上のアミノ酸が別の生物学的に類似するアミノ酸残基により置き換えられることを示す。例としては、類似する特性を有するアミノ酸残基、例えば、小さいアミノ酸、酸性アミノ酸、極性アミノ酸、塩基性アミノ酸、疎水性アミノ酸及び芳香族アミノ酸の置換を含む(例えば、以下の表Bを参照されたい)。通常は内因性の哺乳動物ペプチド及びタンパク質中には見出されない残基との保存的置換の例は、アルギニン又はリシン残基の、例えば、オルニチン、カナバリン、アミノエチルシステイン、又は別の塩基性アミノ酸との保存的置換である。ペプチド及びタンパク質における表現型的にサイレントな置換に関するさらなる情報については、例えば、Bowie J et al., Science 247: 1306-10 (1990)を参照されたい。以下の図表は、物理化学的特性により分類されたアミノ酸の保存的置換である。I:中性、親水性、II:酸性及びアミド、III:塩基性、IV:疎水性、V:芳香族、嵩高いアミノ酸。
ある特定の実施形態においては、本発明のCD20結合タンパク質は、それが単独で、又はCD20結合タンパク質の成分として測定可能な生物学的活性を保持する限り、本明細書に記載のポリペプチド配列と比較して、多くても20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1アミノ酸の置換を有する本発明のポリペプチド領域の機能的断片又はバリアントを含んでもよい。CD20結合タンパク質のバリアントは、細胞毒性の変化、細胞増殖抑制効果の変化、免疫原性の変化、及び/又は血清半減期の変化などの所望の特性を達成するために、免疫グロブリン型結合領域又は志賀毒素エフェクター領域の中などの、1若しくは2以上のアミノ酸を変化させるか、又は1若しくは2以上のアミノ酸を欠失させるか、若しくは挿入することにより、CD20結合タンパク質のポリペプチドを変化させる結果として、本発明の範囲内にある。本発明のCD20結合タンパク質のポリペプチドはさらに、シグナル配列を含むか、又は含まなくてもよい。
ある特定の実施形態においては、本発明のCD20結合タンパク質は、それが細胞毒性、細胞外標的生体分子結合、酵素的触媒作用、又は細胞内ルーティングなどの、測定可能な生物学的活性を保持する限り、本明細書に記載のCD20結合タンパク質のアミノ酸配列のいずれか一つに対して少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上のアミノ酸配列同一性を有する。免疫グロブリン型結合領域は、それがその細胞外標的生体分子への結合機能を保持する限り、本明細書に記載のCD20結合タンパク質のアミノ酸配列と異なっていてもよい。ABRのアミノ酸配列が同一である場合、結合機能が保持される可能性が最も高い。例えば、アミノ酸同一性の程度を決定するために、ABRを形成するアミノ酸残基が無視される配列番号4又は配列番号16に対する85%のアミノ酸同一性から本質的になるCD20結合タンパク質は、無視される。当業者であれば、標準的な技術を用いることにより結合機能を決定することができる。
ある特定の実施形態においては、志賀毒素エフェクター領域を変化させて、志賀毒素エフェクター領域の酵素活性及び/又は細胞毒性を変化させることができる。この変化は、変化した志賀毒素エフェクター領域が成分であるCD20結合タンパク質の細胞毒性の変化をもたらしても、又はもたらさなくてもよい。可能な変化としては、トランケーション、欠失、逆位、挿入及び置換からなる群から選択される志賀毒素エフェクター領域に対する変異が挙げられる。
志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットの細胞毒性を、変異又はトランケーションにより低減又は除去することができる。位置標識されたチロシン−77、グルタミン酸−167、アルギニン−170、チロシン−114、及びトリプトファン−203は、Stx、Stx1、及びStx2の触媒活性にとって重要であることが示されている(Hovde C et al., Proc Natl Acad Sci USA 85: 2568-72 (1988);Deresiewicz R et al., Biochemistry 31: 3272-80 (1992);Deresiewicz R et al., Mol Gen Genet 241: 467-73 (1993);Ohmura M et al., Microb Pathog 15: 169-76 (1993);Cao C et al., Microbiol Immunol 38: 441-7 (1994);Suhan M, Hovde C, Infect Immun 66: 5252-9 (1998))。グルタミン酸−167とアルギニン−170の両方を変異させると、無細胞リボソーム不活化アッセイにおいてSlt−IA1の酵素活性が除去された(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。小胞体におけるSlt−IA1のデノボでの発現を用いる別の手法において、グルタミン酸−167とアルギニン−170の両方を変異させると、その発現レベルでSlt−IA1断片細胞毒性が除去された(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。トランケーション分析により、残基75〜268のStxAの断片がインビトロで有意な酵素活性を依然として保持することが示された(Haddad, J Bacteriol 175: 4970-8 (1993))。残基1〜239を含有するSlt−IA1のトランケートされた断片は、インビトロで有意な酵素活性及び細胞質ゾル中でのデノボでの発現による細胞毒性を示した(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。小胞体中での残基1〜239にトランケートされたSlt−IA1断片の発現は、それが細胞質ゾル中に逆輸送することができないため、細胞毒性ではなかった(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。
志賀毒素Aサブユニット中の酵素活性及び/又は細胞毒性にとって最も重要な残基は、以下の残基位置:特に、アスパラギン−75、チロシン−77、グルタミン酸−167、アルギニン−170、及びアルギニン−176にマッピングされた(Di, Toxicon 57: 535-39 (2011))。特に、グルタミン酸−E167からリシン及びアルギニン−176からリシンへの変異を含有するStx2Aの二重変異体構築物は、完全に不活化されたが、Stx1及びStx2中の多くの単一の変異は、細胞毒性の10倍の低下を示した。さらに、Stx1Aの1〜239又は1〜240へのトランケーションはその細胞毒性を低下させ、同様に、Stx2Aの保存的疎水性残基へのトランケーションはその細胞毒性を低下させた。
志賀様毒素1Aサブユニットトランケーションは触媒的に活性であり、インビトロでリボソームを酵素的に不活化することができ、及び細胞内で発現された場合に細胞毒性的である(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。完全な酵素活性を示す最も小さい志賀毒素Aサブユニット断片は、Slt1Aの残基1〜239から構成されるポリペプチドである(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。実質的な触媒活性を保持すると報告された志賀毒素Aサブユニットの最も小さい断片はStxAの残基75〜247であったが(Al-Jaufy, Infect Immun 62: 956-60 (1994))、真核細胞内でデノボで発現されるStxAトランケーションは、細胞質ゾルに到達し、リボソームの触媒的不活化を示すためには最大で残基240のみを必要とする(LaPointe, J Biol Chem 280: 23310-18 (2005))。
SLT−1A(配列番号1)、StxA(配列番号25)、又はSLT−2A(配列番号26)に由来する特定の実施形態においては、これらの変化は、位置75のアスパラギン、位置77のチロシン、位置114のチロシン、位置167のアスパラギン酸、位置170のアルギニン、位置176のアルギニンの置換、及び/又は位置203のトリプトファンの置換を含む。位置75のアスパラギンからアラニンへの置換、位置77のチロシンからセリンへの置換、位置114のチロシンからアラニンへの置換、位置167のアスパラギン酸からグルタミン酸への置換、位置170のアルギニンからアラニンへの置換、位置176のアルギニンからリシンへの置換、及び/又は位置203のトリプトファンからアラニンへの置換などの、そのような置換の例は、先行技術に基づけば当業者には公知である。
本発明のCD20結合タンパク質は、場合により、当業界で公知の治療剤及び/又は診断剤を含んでもよい1又は2以上のさらなる薬剤にコンジュゲートさせてもよい。
本発明のCD20結合タンパク質の産生、製造、及び精製
本発明のCD20結合タンパク質を、当業者には周知の生化学的操作技術を用いて産生することができる。例えば、本発明のCD20結合タンパク質を、標準的な合成方法により、組換え発現系の使用により、又は任意の他の好適な方法により製造することができる。かくして、CD20結合タンパク質を、例えば、(1)標準的な固相若しくは液相方法を用いて、段階的に、若しくは断片集合によりCD20結合タンパク質のポリペプチド若しくはポリペプチド成分を合成し、最終ペプチド化合物産物を単離及び精製するステップ;(2)宿主細胞中でCD20結合タンパク質のポリペプチド若しくはポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチドを発現させ、宿主細胞若しくは宿主細胞培養物から発現産物を回収するステップ;又は(3)CD20結合タンパク質のポリペプチド若しくはポリペプチド成分をコードするポリヌクレオチドを無細胞でインビトロで発現させ、発現産物を回収するステップ;又は(1)、(2)若しくは(3)の方法の任意の組合せによりペプチド成分の断片を取得した後、その断片を接続(例えば、ライゲート)して、ペプチド成分を取得し、ペプチド成分を回収するステップを含む方法などのいくつかの方法で合成することができる。
固相又は液相ペプチド合成を用いて本発明のCD20結合タンパク質のポリペプチド又はポリペプチド成分を合成することが好ましい。本発明のCD20結合タンパク質を、好適には、標準的な合成方法により製造することができる。かくして、ペプチドを、例えば、標準的な固相又は液相方法により、段階的に、又は断片集合によりペプチドを合成し、最終ペプチド産物を単離及び精製するステップを含む方法により合成することができる。この文脈において、国際公開第WO1998/11125号パンフレット、又は特に、Fields, G et al., Principles and Practice of Solid-Phase Peptide Synthesis (Synthetic Peptides, Gregory A. Grant, ed., Oxford University Press, U.K., 2nd ed., 2002))及びその中の合成例を参照することができる。
本発明のCD20結合タンパク質を、当業界で周知の組換え技術を用いて調製(産生及び精製)することができる。一般に、コードするポリヌクレオチドを含むベクターを形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞を培養し、細胞培養物からポリペプチドを回収することによりポリペプチドを調製する方法は、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY, U.S., 1989);Dieffenbach et al., PCR Primer: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y., U.S., 1995)に記載されている。任意の好適な宿主細胞を用いて、本発明のCD20結合タンパク質を産生させることができる。宿主細胞は、本発明のポリペプチドの発現を誘導する1又は2以上の発現ベクターを安定的に、若しくは一過的にトランスフェクトされた、形質転換された、形質導入された、又は感染させた細胞であってもよい。さらに、本発明のCD20結合タンパク質を、CD20結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを改変し、1若しくは2以上のアミノ酸の変化又は1若しくは2以上のアミノ酸の挿入をもたらし、細胞毒性の変化、細胞増殖抑制効果の変化、免疫原性の変化、及び/又は血清半減期の変化などの所望の特性を達成することによって産生することができる。
従って、本発明はまた、上記の方法に従って本発明のCD20結合タンパク質を産生し、本発明のポリペプチドの一部又は全部をコードするポリヌクレオチド、宿主細胞中に導入された場合に本発明のポリペプチドの一部若しくは全部をコードすることができる本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び/又は本発明のポリヌクレオチド若しくは発現ベクターを含む宿主細胞を使用する方法も提供する。
ポリペプチド又はタンパク質を宿主細胞又は無細胞系において組換え技術を用いて発現させる場合、高純度のものであるか、又は実質的に均一である調製物を得るために、宿主細胞因子などの他の成分から所望のポリペプチド又はタンパク質を分離(又は精製)することが有利である。遠心分離技術、抽出技術、クロマトグラフィー技術及び分画技術(ゲル濾過によるサイズ分離、イオン交換カラム、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、DEAEなどのシリカ若しくは陽イオン交換樹脂上でのクロマトグラフィー、クロマト分画、及び夾雑物を除去するためのプロテインAセファロースクロマトグラフィーによる電荷分離)、並びに沈降技術(例えば、エタノール沈降又は硫酸アンモニウム沈降)などの、当業界で周知の方法により、精製を達成することができる。任意数の生化学的精製技術を用いて、本発明のCD20結合タンパク質の純度を増加させることができる。ある特定の実施形態においては、本発明のCD20結合タンパク質を、場合によりホモ多量体形態(すなわち、2又は3以上の同一のCD20結合タンパク質のタンパク質複合体)で精製することができる。
以下の実施例は、本発明のCD20結合タンパク質を産生するための方法の非限定例、並びに開示される例示的CD20結合タンパク質に関するCD20結合タンパク質産生の特異的であるが、非限定的な態様の説明である。
本発明のCD20結合タンパク質を含む医薬組成物
本発明は、以下にさらに詳細に説明される状態、疾患、障害、又は症状(例えば、がん、悪性腫瘍、非悪性腫瘍、及び免疫障害)の治療又は予防のための、医薬組成物における、単独での、又は1若しくは2以上のさらなる治療剤と組み合わせた使用のためのCD20結合タンパク質を提供する。本発明は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、賦形剤、又は媒体と一緒に、本発明のCD20結合タンパク質、又は本発明によるその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を含む医薬組成物をさらに提供する。ある特定の実施形態においては、本発明の医薬組成物は、ホモ多量体及び/又はヘテロ多量体形態の本発明のCD20結合タンパク質を含んでもよい。医薬組成物は、以下にさらに詳細に説明される疾患、状態、障害、又は症状を治療、改善、又は予防する方法において有用である。それぞれのそのような疾患、状態、障害、又は症状は、本発明による医薬組成物の使用に関して別々の実施形態であると想定される。本発明は、以下により詳細に説明されるような、本発明による治療の少なくとも1つの方法における使用のための医薬組成物をさらに提供する。
本明細書で用いられる用語「患者」と「対象」は、少なくとも1つの疾患、障害、又は状態の症状、兆候、及び/又は指示を呈する、任意の生物、一般には、ヒト及び動物などの脊椎動物を指すように互換的に用いられる。これらの用語は、霊長類、家畜動物(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)、ペット(例えば、ネコ、イヌなど)及び実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラットなど)の非限定例などの哺乳動物を含む。
本明細書で用いられる場合、「治療する」、「治療すること」又は「治療」及びその文法的な変形は、有益な、又は望ましい臨床結果を得るための手法を指す。この用語は、状態、障害若しくは疾患の開始若しくは発症速度を減速させること、それと関連する症状を軽減若しくは緩和すること、状態の完全若しくは部分的な退縮を生成すること、又は上記のいずれかのいくつかの組合せを指してもよい。本発明の目的のために、有益な、又は望ましい臨床結果としては、限定されるものではないが、検出可能であっても、又は検出不可能であっても、症状の軽減若しくは緩和、疾患の程度の減少、疾患状態の安定化(例えば、悪化しないこと)、疾患進行の遅延若しくは減速、疾患状態の改善若しくは緩和、及び寛解(部分的又は全体的)が挙げられる。「治療する」、「治療すること」又は「治療」はまた、治療を受けない場合に予想される生存期間と比較した生存の延長を意味してもよい。かくして、治療を必要とする対象(例えば、ヒト)は、問題の疾患又は障害に既に罹患した対象であってもよい。用語「治療する」、「治療すること」又は「治療」は、治療の非存在下と比較した病的状態又は症状の重篤度の増加の阻害又は軽減を含み、関連する疾患、障害、又は状態の完全な停止を含意することを必ずしも意味しない。
本明細書で用いられる用語「予防する」、「予防すること」、「予防」及びその文法的な変形は、状態、疾患、又は障害の発生を予防するか、又はその病状を変化させるための手法を指す。したがって、「予防」は、予防的又は予防的手段を指し得る。本発明の目的のために、有益な、又は望ましい臨床結果としては、限定されるものではないが、検出可能であっても、又は検出不可能であっても、疾患の症状、進行又は発達の予防又は減速が挙げられる。かくして、予防を必要とする対象(例えば、ヒト)は、問題の疾患又は障害にまだ罹患していない対象であってもよい。用語「予防」は、治療の非存在下と比較した疾患の開始の減速を含み、関連する疾患、障害又は状態の永続的な予防を含意することを必ずしも意味しない。かくして、状態を「予防すること」又はその「予防」は、ある特定の文脈では、状態を発生する危険性を低下させること、又は状態と関連する症状の発達を予防するか、若しくは遅延させることを指してもよい。
本明細書で用いられる場合、「有効量」又は「治療上有効量」は、標的状態を予防若しくは治療すること、又は状態と関連する症状を有益に緩和することなどの、対象において少なくとも1つの望ましい治療効果をもたらす組成物(例えば、治療組成物又は薬剤)の量又は用量である。最も望ましい治療上有効量は、それを必要とする所与の対象のために当業者により選択される特定の治療の所望の有効性をもたらす量である。この量は、限定されるものではないが、治療化合物の特徴(活性、薬物動態、薬力学、及びバイオアベイラビリティなど)、対象の生理学的状態(年齢、性別、疾患の種類、疾患の段階、一般的な身体状態、所与の用量に対する応答性、及び医薬の種類など)、製剤中の薬学的に許容される担体の性質、並びに投与経路などの、当業者によって理解される様々な因子に応じて変化する。臨床及び薬学業界の当業者であれば、日常的な実験を介して、すなわち、化合物の投与に対する対象の応答をモニタリングし、それに従って用量を調整することにより、治療上有効量を決定することができる(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (Gennaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, U.S., 19th ed., 1995)を参照されたい)。
本発明のCD20結合タンパク質を含む医薬組成物の産生又は製造
本発明のCD20結合タンパク質のいずれかの薬学的に許容される塩又は溶媒和物は同様に本発明の範囲内にある。
本発明の文脈における用語「溶媒和物」とは、溶質(この場合、本発明によるポリペプチド化合物又はその薬学的に許容される塩)と溶媒との間で形成される規定の化学量論の複合体を指す。この文脈では、溶媒は、例えば、水、エタノール又は別の薬学的に許容される、典型的には、低分子有機種、例えば、限定されるものではないが、酢酸若しくは乳酸であってもよい。問題の溶媒が水である場合、そのような溶媒和物は通常、水和物と呼ばれる。
本発明のCD20結合タンパク質、又はその塩を、典型的には、薬学的に許容される担体中に、治療上有効量の本発明の化合物、又はその塩を含む、保存又は投与のために調製される医薬組成物として製剤化することができる。用語「薬学的に許容される担体」は、任意の標準的な医薬担体を含む。治療的使用のための薬学的に許容される担体は、製薬業界で周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Co. (A. Gennaro, ed., 1985)に記載されている。本明細書で用いられる場合、「薬学的に許容される担体」は、任意かつ全ての生理学的に許容される、すなわち、適合性の、溶媒、分散媒体、コーティング、抗微生物剤、等張剤、及び吸収遅延剤などを含む。薬学的に許容される担体又は希釈剤としては、経口、直腸、経鼻又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、及び経皮など)投与にとって好適な製剤において用いられるものが挙げられる。例示的な薬学的に許容される担体としては、滅菌注射溶液又は分散物の即興での調製のための滅菌水性溶液又は分散物及び滅菌粉末が挙げられる。本発明の医薬組成物中で用いることができる好適な水性及び非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びその好適な混合物、植物油、例えば、オリーブ油、並びに注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチルが挙げられる。例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散物の場合は必要な粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。ある特定の実施形態においては、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は表皮投与(例えば、注射又は輸注による)にとって好適なものである。選択される投与経路に応じて、CD20結合タンパク質又は他の薬学的成分を、活性CD20結合タンパク質が特定の投与経路により患者に投与された場合に遭遇し得る、低いpHの作用及びその他の自然の不活化条件から化合物を保護することを意図される材料中でコーティングすることができる。
本発明の医薬組成物の製剤を、単位投与形態で都合良く提供し、製薬業界において周知の任意の方法により調製することができる。そのような形態では、組成物は適切な量の活性成分を含有する単位用量に分割される。単位投与形態は、包装された調製物、個別量の調製物を含有する包装、例えば、パケット化された錠剤、カプセル、及びバイアル又はアンプル中の粉末であってもよい。単位投与形態はまた、カプセル、カシェ、若しくは錠剤自体であってもよく、又はそれは適切な数のこれらの包装された形態のいずれかであってもよい。それを、単一用量の注射可能な形態で、例えば、ペンの形態で提供することができる。組成物を、任意の好適な経路及び投与手段のために製剤化することができる。皮下又は経皮様式の投与が、本明細書に記載の治療的CD20結合タンパク質にとって特に好適であり得る。
本発明の医薬組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などのアジュバントを含有してもよい。微生物の存在の防止を、滅菌手順と、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの含有との両方によって確保することができる。組成物中の糖、塩化ナトリウムなどの等張剤も望ましい。さらに、注射可能な医薬形態の吸収の延長を、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅延させる薬剤の含有によりもたらすことができる。
本発明の医薬組成物はまた、場合により薬学的に許容される酸化防止剤を含む。例示的な薬学的に許容される酸化防止剤は、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの水溶性酸化防止剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ−トコフェロールなどの油溶性酸化防止剤;及びクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などの金属キレート剤である。
別の態様において、本発明は、本発明の異なるCD20結合タンパク質の1つ若しくは組合せ、又は前記のいずれかのエステル、塩若しくはアミドと、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
治療組成物は、典型的には、製造及び保存の条件下で無菌かつ安定である。組成物を、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高い薬物濃度にとって好適な他の規則的構造として製剤化することができる。担体は、例えば、水、エタノールなどのアルコール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、又は任意の好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒体であってもよい。例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散物の場合は必要な粒径の維持により、及び当業界で周知の製剤化学による界面活性剤の使用により、適切な流動性を維持することができる。ある特定の実施形態においては、等張剤、例えば、糖、マンニトールなどのポリアルコール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムが組成物中で望ましい。注射可能組成物の吸収の延長を、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチンを含有させることによってもたらすことができる。
皮内又は皮下適用のために用いられる溶液又は懸濁液は、典型的には、注射用水、生理食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗細菌剤;アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩などのバッファー;及び例えば、塩化ナトリウム又はデキストロースなどの等張性調整剤のうちの1又は2以上を含む。pHを、塩酸若しくは水酸化ナトリウムなどの酸若しくは塩基、又はクエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩などのバッファーを用いて調整することができる。そのような調製物を、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨て注射筒又は複数用量バイアル中に封入することができる。
必要な量の本発明のCD20結合タンパク質を、適切な溶媒中に、上記の成分の1つ又は組合せと共に組込み、必要に応じて、次いで、滅菌精密濾過を行うことにより、滅菌注射溶液を調製することができる。活性化合物を、分散媒体及び他の成分、例えば、上記のものなどを含有する滅菌媒体中に組込むことにより、分散物を調製することができる。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法は、滅菌濾過された溶液からの任意のさらなる所望の成分に加えて活性成分の粉末をもたらす減圧乾燥又は凍結−乾燥(凍結乾燥)である。
治療上有効量の本発明のCD20結合タンパク質を、例えば、静脈内、皮膚又は皮下注射により投与されるよう設計する場合、結合剤は発熱原を含まない、非経口的に許容される水性溶液の形態にある。適切なpH、等張性、安定性などを考慮に入れて、非経口的に許容されるタンパク質溶液を調製するための方法は、当業者の技術の範囲内にある。静脈内、皮膚、又は皮下注射のための好ましい医薬組成物は、結合剤に加えて、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース及び塩化ナトリウム注射液、乳酸リンゲル注射液、又は当業界で公知の他の媒体などの等張性媒体を含有する。本発明の医薬組成物はまた、安定剤、保存剤、バッファー、酸化防止剤、又は当業者には周知の他の添加剤を含有してもよい。
本明細書の他の場所に記載のように、化合物を、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロカプセル送達系を含む制御放出製剤などの、迅速な放出に対して化合物を保護する担体と共に調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの、生分解性、生体適合性ポリマーを用いることができる。そのような製剤の調製のための多くの方法が特許されており、当業者には一般に公知である(例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems (J. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., NY, U.S., 1978)を参照されたい)。
ある特定の実施形態においては、本発明の医薬組成物を、インビボで所望の分布を確保するために製剤化することができる。例えば、血液脳関門は多くの大きい、及び/又は親水性の化合物を排除する。本発明の治療化合物又は組成物を特定のインビボでの位置に標的化するために、例えば、特定の細胞又は臓器に選択的に輸送され、かくして、標的化薬物送達を増強する1又は2以上の部分を含んでもよいリポソーム中でそれらを製剤化することができる。標的化部分の例としては、葉酸又はビオチン;マンノシド;抗体;界面活性プロテインA受容体;p120カテニンなどが挙げられる。
ポリヌクレオチド、発現ベクター、及び宿主細胞
本発明のCD20結合タンパク質を超えて、そのようなCD20結合タンパク質、又はその機能的部分をコードするポリヌクレオチドも本発明の範囲内にある。用語「ポリヌクレオチド」は、用語「核酸」と等価であり、両方ともデオキシリボ核酸(DNA)のポリマー、リボ核酸(RNA)のポリマー、ヌクレオチドアナログを用いて生成されるこれらのDNA又はRNAのアナログ、並びにその誘導体、断片及びホモログを含む。本発明のポリヌクレオチドは、一本鎖、二本鎖、又は三本鎖であってもよい。開示されるポリヌクレオチドは、例えば、RNAコドンの3番目の位置で許容されることが知られる揺れを考慮に入れて、例示的CD20結合タンパク質をコードすることができるが、依然として異なるRNAコドンと同じアミノ酸をコードする全てのポリヌクレオチドを含むように特に開示される(Stothard P, Biotechniques 28: 1102-4 (2000)を参照されたい)。
一態様において、本発明は、本発明のCD20結合タンパク質、又はその断片若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、例えば、CD20結合タンパク質のアミノ酸配列の1つを含むポリペプチドと、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%以上同一であるポリペプチドをコードする核酸配列を含んでもよい。本発明はまた、本発明のCD20結合タンパク質、又はその断片若しくは誘導体をコードするポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列、又は任意のそのような配列のアンチセンス若しくは相補体を含むポリヌクレオチドを含む。
本発明のポリヌクレオチド(又はCD20結合タンパク質)の誘導体又はアナログは、特に、例えば、同じサイズのポリヌクレオチド若しくはポリペプチド配列と比較して、又はアラインメントが当業界で公知のコンピュータ相同性プログラムにより行われる整列された配列と比較した場合、少なくとも約45%、50%、70%、80%、95%、98%、又はさらには99%の同一性(80〜99%の好ましい同一性)により、本発明のポリヌクレオチド又はCD20結合タンパク質と実質的に相同である領域を有するポリヌクレオチド(又はポリペプチド)分子を含む。例示的プログラムは、Smith T, Waterman M, Adv. Appl. Math. 2: 482-9 (1981)のアルゴリズムを用いる、デフォルト設定を用いるGAPプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for UNIX, Genetics Computer Group, University Research Park, Madison, WI, U.S.)である。また、ストリンジェントな条件下で本発明のタンパク質をコードする配列の相補体にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドも含まれる(例えば、Ausubel F, et al., Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, New York, NY, U.S., 1993)及び以下を参照されたい)。ストリンジェントな条件は、当業者には公知であり、Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley & Sons, NY, U.S., Ch. Sec. 6.3.1-6.3.6 (1989)に見出すことができる。
さらに、本発明は、本発明の範囲内にあるポリヌクレオチドを含む発現ベクターをさらに提供する。本発明のCD20結合タンパク質をコードすることができるポリヌクレオチドを、発現ベクターを産生するための当業界で周知の材料及び方法を用いて、細菌プラスミド、ウイルスベクター及びファージベクターなどの公知のベクター中に挿入することができる。そのような発現ベクターは、選択される任意の宿主細胞又は無細胞発現系(例えば、以下の実施例に記載されるpTxb1及びpIVEX2.3)内での企図されるCD20結合タンパク質の産生を支援するのに必要なポリヌクレオチドを含む。特定の種類の宿主細胞又は無細胞発現系と共に使用するための発現ベクターを含む特定のポリヌクレオチドは、当業者には周知であり、日常的な実験を用いて決定するか、又は購入することができる。
本明細書で用いられる用語「発現ベクター」とは、1又は2以上の発現単位を含む、線状又は環状のポリヌクレオチドを指す。用語「発現単位」は、所望のポリペプチドをコードし、宿主細胞中での核酸セグメントの発現を提供することができるポリヌクレオチドセグメントを示す。典型的には、発現単位は、転写プロモーター、所望のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム、及び転写ターミネーターを含み、全て作動可能な構成にある。発現ベクターは、1又は2以上の発現単位を含有する。かくして、本発明の文脈において、単一ポリペプチド鎖(例えば、志賀毒素エフェクター領域に連結されたscFv)を含むCD20結合タンパク質をコードする発現ベクターは、単一ポリペプチド鎖のための少なくとも発現単位を含むが、例えば、2又は3以上のポリペプチド鎖(例えば、VLドメインと、毒素エフェクター領域に連結されたVHドメインを含む第2の鎖とを含む1つの鎖)を含むCD20結合タンパク質は、1つがCD20結合タンパク質の2つのポリペプチド鎖のそれぞれのものである少なくとも2つの発現単位を含む。多鎖CD20結合タンパク質の発現のためには、各ポリヌクレオチド鎖のための発現単位を異なる発現ベクター上に別々に含有させることもできる(例えば、発現を、各ポリペプチド鎖のための発現ベクターが導入された単一の宿主細胞を用いて達成することができる)。
ポリペプチド及びタンパク質の一過的又は安定的な発現を指令することができる発現ベクターが、当業界で周知である。発現ベクターとしては一般に、限定されるものではないが、異種シグナル配列又はペプチド、複製起点、1又は2以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列のうちの1又は2以上が挙げられ、これらはそれぞれ当業界で周知である。用いることができる任意選択の調節制御配列、組込み配列、及び有用なマーカーが当業界で公知である。
用語「宿主細胞」とは、発現ベクターの複製又は発現を支援することができる細胞を指す。宿主細胞は、大腸菌などの原核細胞又は真核細胞(例えば、酵母、昆虫、両生類、鳥類、又は哺乳動物細胞)であってもよい。本発明のポリヌクレオチドを含むか、又は本発明のCD20結合タンパク質を産生することができる宿主細胞株の作製及び単離を、当業界で公知の標準的な技術を用いて達成することができる。
本発明の範囲内にあるCD20結合タンパク質は、宿主細胞によるより最適な発現などの、所望の特性を達成するのにより好適にすることができる、1若しくは2以上のアミノ酸を変化させるか、又は1若しくは2以上のアミノ酸を欠失させるか、若しくは挿入することによってCD20結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを改変することにより産生される本明細書に記載のCD20結合タンパク質のバリアント又は誘導体であってもよい。
本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物の使用方法
一般に、本発明の目的は、がん、腫瘍、免疫障害、又は本明細書に記載のさらなる病状などの、疾患、障害、及び状態の予防及び/又は治療において用いることができる、薬理活性剤、並びにそれを含む組成物を提供することである。従って、本発明は、CD20発現細胞を死滅させるため、さらなる外来物質をCD20発現細胞中に送達するため、CD20発現細胞の内部を標識するため、並びに本明細書に記載の疾患、障害、及び状態を治療するための本発明のCD20結合タンパク質及び医薬組成物の使用方法を提供する。
特に、本発明の目的は、現在当業界で公知である薬剤、組成物、及び/又は方法と比較してある特定の利点を有するそのような薬理活性剤、組成物、及び/又は方法を提供することである。従って、本発明は、特定のポリペプチド配列を有するCD20結合タンパク質及びその医薬組成物の使用方法を提供する。例えば、配列番号1、3、4、6〜12、14、16、及び/又は18〜29中のポリペプチド配列のいずれかを、以下の方法において用いられるCD20結合タンパク質の成分として特に用いることができる。
本発明は、CD20発現細胞を、インビトロ又はインビボのいずれかで、本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物と接触させるステップを含む、前記細胞を死滅させる方法を提供する。特定の実施形態においては、本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物を用いて、がん細胞、感染細胞、及び/又は血液細胞を含む混合物などの、非CD20発現細胞を含む異なる細胞型の混合物中のCD20発現細胞を死滅させることができる。
ある特定の実施形態においては、本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物を用いて、生物の内部などの異なる細胞型の混合物中のがん細胞を死滅させることができる。ある特定の実施形態においては、本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物は、単独で、又は他の化合物若しくは医薬組成物と共に、治療を必要とする患者などの対象中の、細胞の集団に、インビトロ又はインビボで投与した場合、強力な細胞死滅活性を示すことができる。CD20への高親和性免疫グロブリン型結合領域を用いる酵素的に活性な志賀毒素領域の送達を標的化することにより、この強力な細胞死滅活性を、がん細胞、新生物細胞、悪性細胞、非悪性腫瘍細胞、又は感染細胞などの、生物内のある特定の細胞型を特異的かつ選択的に死滅させるように制限することができる。
用語「がん細胞」又は「がん性細胞」とは、異常に加速された様式で増殖及び分裂する様々な新生物細胞を指し、当業者には明らかである。用語「がん細胞」は、悪性細胞と非悪性細胞の両方を含む。一般に、がん及び/又は腫瘍は、治療及び/又は予防の影響を受けやすい疾患、障害、又は状態と定義することができる。がん細胞及び/又は腫瘍細胞を含むがん及び腫瘍(悪性又は非悪性のいずれか)は、当業者には明らかである。
本発明は、本発明の少なくとも1つのCD20結合タンパク質又はその医薬組成物を患者に投与するステップを含む、患者におけるCD20発現細胞を死滅させる方法を提供する。
CD20結合タンパク質又はその医薬組成物のある特定の実施形態を用いて、患者中のCD20発現免疫細胞(健康であっても、悪性であっても)を死滅させることができる。
患者から取り出された単離された細胞集団からエクスビボでB細胞を枯渇させるために、本発明のCD20結合タンパク質又はその医薬組成物を使用することは、本発明の範囲内にある。
さらに、本発明は、治療上有効量の少なくとも1つの本発明のCD20結合タンパク質又はその医薬組成物を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、患者における疾患、障害、又は状態を治療する方法を提供する。この方法を用いて治療することができる企図される疾患、障害、及び状態としては、がん、悪性腫瘍、非悪性腫瘍、及び免疫障害が挙げられる。「治療上有効用量」の本発明の化合物の投与は、疾患症状の重篤度の低下、疾患の無症状期間の頻度及び持続期間の増加、又は疾患の罹患に起因する機能障害若しくは身体障害の予防をもたらすことができる。
本発明の化合物の治療上有効量は、投与経路、治療される哺乳動物の種類、及び考慮される特定の患者の身体的特徴に依存する。これらの因子及びこの量の決定とのその関係は、医学界における当業者には周知である。この量及び投与方法は、最適な有効性を達成するように調整することができ、体重、食事、併用薬物などの因子及び医学界の当業者には周知の他の因子に依存してもよい。ヒトでの使用にとって最も適切な用量サイズ及び投薬レジメンを、本発明により得られる結果によって誘導し、適切に設計された臨床試験において確認することができる。有効用量及び治療プロトコールを、実験動物における低用量から出発して、次いで、効果をモニタリングしながら用量を増加させ、同様に投薬レジメンを体系的に変化させる従来の手段によって決定することができる。所与の対象のための最適な用量を決定する場合には、医師はいくつかの因子を考慮に入れることができる。そのような考慮は、当業者には公知である。
許容される投与経路は、限定されるものではないが、エアロゾル、腸内、経鼻、眼、経口、非経口、直腸、経膣、又は経皮(例えば、クリーム、ゲル若しくは軟膏の局所投与、又は経皮パッチを用いる)などの、当業界で公知の任意の投与経路を指してもよい。「非経口投与」は、典型的には、腫瘍内注射、眼窩下、輸注、動脈内、嚢内、心臓内、皮内、筋肉内、腹腔内、肺内、脊髄内、胸骨内、髄腔内、子宮内、静脈内、くも膜下、被膜下、皮下、経粘膜、又は経器官投与などの、意図される作用部位での、又はそれと連絡する注射と関連する。
本発明の医薬組成物の投与のために、用量範囲は一般に、宿主の体重の約0.0001〜100mg/kg、及びより通常は、0.01〜5mg/kgである。例示的用量は、0.25mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重又は10mg/kg体重又は1〜10mg/kgの範囲内にあってもよい。例示的治療レジメンは、1日1回若しくは2回投与、又は週に1回若しくは2回投与、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、月1回、2若しくは3ヶ月毎に1回、又は3〜6ヶ月毎に1回である。特定の患者のための治療利益を最大化するのに必要とされる知識のある医療専門家であれば、用量を選択及び再調整することができる。
本発明の医薬組成物は、典型的には、複数の機会に同じ患者に投与される。単一用量間の間隔は、例えば、2〜5日、毎週、毎月、2〜3ヶ月毎、6ヶ月毎、又は毎年であってもよい。投与間の間隔はまた、対象又は患者における血中レベル又は他のマーカーの調節に基づいて、不規則なものであってもよい。本発明の化合物のための用量レジメンは、6回の用量について2〜4週間毎に投与される化合物を用いる1mg/kg体重又は3mg/kg体重、次いで、3mg/kg体重又は1mg/kg体重での3ヶ月毎の静脈内投与を含む。
本発明の医薬組成物を、1又は2以上の当業界で公知の様々な方法を用いて、1又は2以上の投与経路により投与することができる。当業者であれば理解できるように、投与の経路及び/又は様式は、所望の結果に応じて変化する。本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物の投与経路としては、例えば、意図される作用部位(例えば、腫瘍内注射)での、又はそれと連絡する注射又は輸注による、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄、又は他の非経口投与経路が挙げられる。他の実施形態においては、本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物を、局所、表皮又は粘膜投与経路などの非経口経路により、例えば、鼻内、経口、経膣、直腸、舌下、又は局所投与により投与することができる。
本発明の治療的CD20結合タンパク質又は医薬組成物を、1又は2以上の当業界で公知の様々な医療用デバイスを用いて投与することができる。例えば、一実施形態においては、本発明の医薬組成物を、針のない皮下注射デバイスを用いて投与することができる。本発明において有用な周知のインプラント及びモジュールの例は当業界にあり、例えば、制御速度送達のための埋込み式マイクロ輸注ポンプ;皮膚を介する投与のためのデバイス;正確な輸注速度での送達のための輸注ポンプ;連続薬物送達のための可変流動性埋込み式輸注デバイス;及び浸透圧薬物送達システムを含む。これらの及びその他のそのようなインプラント、送達システム、及びモジュールは、当業者には公知である。
本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物を、単独で、又は1若しくは2以上の他の治療剤若しくは診断剤と共に投与することができる。組合せ療法は、特定の患者、治療しようとする疾患又は状態に基づいて選択される少なくとも1つの他の治療剤と組み合わせた、本発明のCD20結合タンパク質又はその医薬組成物を含んでもよい。他のそのような薬剤の例としては、特に、細胞毒性的な抗がん剤若しくは化学療法剤、抗炎症剤若しくは抗増殖剤、抗微生物剤若しくは抗ウイルス剤、増殖因子、サイトカイン、鎮痛剤、治療活性低分子若しくはポリペプチド、一本鎖抗体、古典的抗体若しくはその断片、又は1若しくは2以上のシグナリング経路を調節する核酸分子、及び治療的若しくは予防的治療レジメンを補完するか、若しくはそうでなければそれにおいて有益であってもよい同様の調節治療剤が挙げられる。
本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物のある特定の実施形態を用いる患者の治療は、標的細胞の細胞死及び/又は標的細胞の増殖阻害をもたらす。そのようなものとして、本発明のCD20結合タンパク質、及びそれらを含む医薬組成物は、標的細胞の死滅又は枯渇が有益であり得る様々な病理学的障害、例えば、特に、がん、免疫障害、及び感染細胞を治療するための方法において有用である。本発明は、細胞増殖を抑制するため、並びに新生物及び過活動性B細胞などの細胞障害を治療するための方法を提供する。
ある特定の実施形態においては、本発明のCD20結合タンパク質及び医薬組成物を用いて、がん、腫瘍(悪性及び非悪性)、及び免疫障害を治療又は予防することができる。
ある特定の実施形態においては、本発明は、治療上有効量の本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物を、それを必要とする対象に投与するステップを含む、ヒトなどの哺乳動物対象における悪性腫瘍又は新生物及び他の血液細胞関連がんを治療するための方法を提供する。
本発明のCD20結合タンパク質及び医薬組成物は、例えば、抗新生物剤としての使用、免疫応答の調節における使用、移植組織からの望ましくない細胞型の除去における使用、及び診断剤としての使用などの、様々な適用を有する。本発明のCD20結合タンパク質及び医薬組成物は、一般に抗新生物剤である−これは、それらががん又は腫瘍細胞の増殖を阻害する、及び/又はその死滅を引き起こすことによって新生物細胞又は悪性細胞の発生、成熟、又は拡散を治療及び/又は予防することができることを意味する。
ある特定の実施形態においては、本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物は、例えば、白血病、リンパ腫、骨髄腫、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、喘息、クローン病、糖尿病、移植片拒絶、移植片対宿主疾患、橋本甲状腺炎、溶血性尿毒症症候群、HIV関連疾患、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、多発動脈炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、強皮症、敗血性ショック、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、及び血管炎などのB細胞により媒介される疾患又は障害を治療するために用いられる。
本発明のCD20結合タンパク質及び医薬組成物を、治療上有効量の本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、がんを治療する方法において用いることができる。CD20の発現を有することが示されたいくつかのがんとしては、限定されるものではないが、B細胞リンパ腫(非ホジキン及びホジキンの両方を含む)、ヘアリー細胞白血病、B細胞慢性リンパ球性白血病、いくつかのT細胞リンパ腫、及びメラノーマがん幹細胞が挙げられる。本発明の方法のある特定の実施形態においては、治療されるがんは、骨のがん、白血病、リンパ腫、メラノーマ、及び骨髄腫からなる群から選択される。
本発明のCD20結合タンパク質及び医薬組成物を、治療上有効量の本発明のCD20結合タンパク質又は医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、免疫障害を治療する方法において用いることができる。本発明の方法のある特定の実施形態においては、免疫障害は、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、喘息、クローン病、糖尿病、移植片拒絶、移植片対宿主疾患、橋本甲状腺炎、溶血性尿毒症症候群、HIV関連疾患、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、多発動脈炎、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、強皮症、敗血性ショック、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、及び血管炎からなる群から選択される疾患と関連する炎症と関連する。
特に、本発明のある特定の実施形態は、がん、腫瘍、又は免疫障害の治療又は予防のための医薬の成分としてのCD20結合タンパク質の使用である。例えば、患者の皮膚上に提示される免疫障害を、炎症を軽減するための努力においてそのような医薬を用いて治療することができる。
本発明のCD20結合タンパク質を超えて、適用可能な場合、そのような分子をコードするポリヌクレオチドは本発明の範囲内にある。用語「ポリヌクレオチド」は用語「核酸」と等価であり、両方ともデオキシリボ核酸及びリボ核酸のポリマーを含む。そのようなポリヌクレオチドは、例えば、アミノ酸コドンの第3の位置で許容されることが知られる揺れを考慮に入れて、特定のCD20結合タンパク質をコードするが、等価なアミノ酸を依然としてコードすることができる全てのポリヌクレオチドを含むことが特に開示される。さらに、本発明は、本発明の範囲内のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む。そのような発現ベクターは、選択される任意の宿主細胞中での本発明のCD20結合タンパク質の産生を支援するのに必要なポリヌクレオチドを含む。特定の型の宿主細胞と共に用いるための発現ベクターを含む特定のポリヌクレオチドは、当業者には周知であり、日常的な実験を用いて決定することができるか、又は購入することができる。
本発明はまた、細胞を、患者内などのインビボ又はインビトロで本発明のCD20結合タンパク質と接触させることにより、CD20結合タンパク質を細胞の内部に迅速に内在化させる方法も提供する。本発明は、CD20発現細胞を、患者内などのインビボ又はインビトロで本発明のCD20結合タンパク質と接触させることにより、その細胞がその表面上にCD20抗原を発現する前記細胞を死滅させる方法をさらに提供する。
本発明のCD20結合タンパク質が上記のような外来物質を含むか、又はそれにコンジュゲートされる場合、これらのCD20結合タンパク質を、その外来物質を、標的細胞表面上にCD20抗原を発現する前記標的細胞中に送達する方法において用いることができる。本発明はまた、CD20発現細胞を、患者内などのインビボ又はインビトロで本発明のCD20結合タンパク質と接触させることにより、外来物質を前記細胞の内部に送達する方法も提供する。
従って、腫瘍又はがん細胞がその表面上にCD20抗原を発現し、本発明のタンパク質を、そのような治療を必要とする患者に投与することを含む、がんを治療するための方法において、本発明のCD20結合タンパク質を用いることができる。CD20の発現を有することが示されたいくつかのがんとしては、限定されるものではないが、B細胞リンパ腫(非ホジキンとホジキンの両方を含む)、ヘアリー細胞白血病、B細胞慢性リンパ球性白血病、いくつかのT細胞リンパ腫、及びメラノーマがん幹細胞が挙げられる。
本発明の目的のために、用語「リンパ腫」は、B細胞リンパ腫(非ホジキン型とホジキン型など)、ヘアリー細胞白血病、B細胞慢性リンパ球性白血病、T細胞リンパ腫、及びメラノーマがん幹細胞型リンパ腫を含む。
本発明のある特定の実施形態は、以下の、1〜40の番号であり、生物学的配列について表Cに記載している:(1)細胞中へのCD20抗原の内在化のためのCD20結合タンパク質であって、CD20に特異的な結合領域と、志賀様毒素1(SLT−1)に由来する毒素エフェクター領域とを含み、細胞表面上に存在するCD20の迅速な内在化を誘導する、CD20結合タンパク質。(2)タンパク質が、B細胞系列細胞中へのCD20の内在化を約1時間未満で誘導する、実施形態1に記載のCD20結合タンパク質。(3)毒素エフェクター領域が配列番号1のアミノ酸75〜251を含む、請求項1に記載のCD20結合タンパク質(表Cを参照されたい)。(4)毒素エフェクター領域が配列番号1のアミノ酸1〜251を含む、実施形態1に記載のCD20結合タンパク質。(5)毒素エフェクター領域が配列番号1のアミノ酸1〜261を含む、実施形態1に記載のCD20結合タンパク質。(6)タンパク質が細胞毒性である、実施形態1に記載のCD20結合タンパク質。
(7)CD20結合領域が、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片、dAb断片、scFv、ダイアボディ、CDR3ペプチド、拘束された(constrained)FR3−CDR3−FR4ペプチド、ナノボディ、二価ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、サメ可変IgNARドメイン、ミニボディ、及びCD20結合機能を保持する任意の断片又は化学的に若しくは遺伝子操作された対応物からなる群から選択される、実施形態1に記載のCD20結合タンパク質。(8)結合領域がscFvである、実施形態1に記載のCD20結合タンパク質。
(9)結合領域が、(A)(i)それぞれ、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8に示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメインと、(ii)それぞれ、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン;又は(B)(i)それぞれ、配列番号21、配列番号22、及び配列番号23に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメインと、(ii)それぞれ、配列番号24、配列番号10、及び配列番号11に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含む、実施形態8に記載のCD20結合タンパク質。
(10)CD20結合領域が配列番号4のアミノ酸2〜245を含む、実施形態8に記載のCD20結合タンパク質。(11)CD20結合領域が配列番号4のアミノ酸2〜245を含み、毒素エフェクター領域が配列番号1のアミノ酸75〜251を含む、実施形態1に記載のCD20結合タンパク質。(12)配列番号4を含む、実施形態1に記載のCD20結合タンパク質。(13)表面上にCD20を発現する細胞を死滅させるためのCD20結合タンパク質であって、結合領域が、それぞれ、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメインと、それぞれ、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメインとを含み、投与すると、表面上にCD20を発現する細胞を死滅させることができる、CD20結合タンパク質。
(14)CD20結合領域が配列番号4のアミノ酸2〜245を含む、実施形態13に記載のCD20結合タンパク質。(15)CD20結合領域が配列番号4のアミノ酸2〜245を含み、毒素エフェクター領域が配列番号1のアミノ酸75〜251を含む、実施形態13に記載のCD20結合タンパク質。(16)配列番号4を含む実施形態13に記載のCD20結合タンパク質。
(17)表面上にCD20を発現する細胞中への外来物質の送達のためのCD20結合タンパク質であって、CD20に特異的な結合領域、毒素エフェクター領域が志賀様毒素1(SLT−1)に由来する毒素エフェクター領域、及び外来物質を含み、投与すると、表面上にCD20を発現する細胞中に外来物質を送達することができる、CD20結合タンパク質。
(18)結合領域が、(A)(i)それぞれ、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8に示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメインと、(ii)それぞれ、配列番号9、配列番号10、及び配列番号11に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメイン;又は(B)(i)それぞれ、配列番号21、配列番号22、及び配列番号23に示されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変(VH)ドメインと、(ii)それぞれ、配列番号23、配列番号10、及び配列番号11に示されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変(VL)ドメインを含む、実施形態17に記載のCD20結合タンパク質。
(19)外来物質がペプチド、タンパク質、及び核酸からなる群から選択される、実施形態18に記載のCD20結合タンパク質。(20)外来物質がペプチドであり、ペプチドが抗原である、実施形態19に記載のCD20結合タンパク質。(21)抗原がタンパク質の結合領域と毒素エフェクター領域との間にコードされる、実施形態20に記載のCD20結合タンパク質。(22)抗原がウイルスタンパク質に由来する、実施形態19に記載のCD20結合タンパク質。(23)抗原が配列番号2である、実施形態21に記載のCD20結合タンパク質。(24)番号5を含む、実施形態21に記載のCD20結合タンパク質。(25)抗原が細菌タンパク質に由来する、実施形態20に記載のCD20結合タンパク質。(26)抗原ががんにおいて変異したタンパク質に由来する、実施形態20に記載のCD20結合タンパク質。(27)抗原ががんにおいて異常に発現されるタンパク質に由来する、実施形態20に記載のCD20結合タンパク質。(28)抗原がT細胞CDR領域に由来する、実施形態20に記載のCD20結合タンパク質。
(29)外来物質がタンパク質である、実施形態19に記載のCD20結合タンパク質。(30)タンパク質が酵素である、実施形態29に記載のCD20結合タンパク質。(31)外来物質が核酸である、実施形態19に記載のCD20結合タンパク質。(31)核酸がsiRNAである、実施形態30に記載のCD20結合タンパク質。(32)実施形態1に記載のCD20結合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。(33)実施形態32に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。(34)実施形態33に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
(35)実施形態1〜12のいずれかのタンパク質を患者に投与するステップを含む、CD20抗原を患者の細胞中に迅速に内在化させる方法。(36)実施形態1〜16のいずれかのタンパク質を患者に投与するステップを含む、CD20抗原をその表面上に発現する患者の細胞を死滅させる方法。(37)実施形態17〜31のいずれかのタンパク質を患者に投与するステップを含む、CD20をその表面上に発現する患者の細胞中に外来物質を送達する方法。(39)実施形態1〜31のいずれかのタンパク質を患者に投与するステップを含む、患者における、腫瘍又はがん細胞表面上にCD20抗原を発現するがんを治療する方法。(40)がんがリンパ腫である、実施形態39に記載の方法。
本発明は、志賀毒素ファミリーのメンバーのAサブユニットに由来する志賀毒素エフェクター領域と、CD20の細胞外部分に結合することができる免疫グロブリン型ポリペプチドを含むCD20結合領域とを含むCD20結合タンパク質の以下の非限定例によりさらに例示される。
[実施例]
以下の実施例は、本発明のある特定の実施形態を示す。しかしながら、これらの実施例は例示目的のためのものに過ぎず、本発明の条件及び範囲に関して全体的に明確であると意図されるものではなく、解釈されるべきでもないと理解される。実施例は、そうでなければ詳細に説明される場合を除いて、当業者には周知であり、日常的である標準的な技術を用いて実行された。
以下の実施例は、CD20をその細胞表面に発現する細胞を選択的に死滅させる例示的CD20結合タンパク質の能力を示すものである。例示的CD20結合タンパク質は、標的細胞型により発現されるCD20上の細胞外抗原に結合し、標的細胞に進入した。内在化されたCD20結合タンパク質は、その志賀毒素エフェクター領域を細胞質ゾルに送り、リボソームを不活化した後、標的細胞のアポトーシスによる死滅を引き起こした。かくして、例示的CD20結合タンパク質は、CD20結合タンパク質が細胞表面CD20との複合体を形成した後、迅速な細胞内在化を誘導するその志賀毒素エフェクター領域のためCD20発現細胞型内に内在化することができた。
これらの例示的CD20結合タンパク質は、αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1(配列番号4)、αCD20scFv::SLT−1Aバージョン2(配列番号16)、B9E9−SLT−1A(配列番号12)、及びC2B8−SLT−1A(配列番号14)を含む。
例示的CD20結合タンパク質の構築、産生、及び精製
第1に、CD20結合領域と志賀毒素エフェクター領域とを設計又は選択した。以下の実施例において、志賀毒素エフェクター領域は、志賀様毒素1(SLT−1A)のAサブユニットに由来するものであった。pECHE9Aプラスミド中にクローニングされたSLT−1Aの断片を含有し、SLT−1Aのアミノ酸1〜251をコードするポリヌクレオチドを得た(Cheung M et al., Mol Cancer 9: 28 (2010))。
CD20結合領域を、1H4 CD20モノクローナル抗体に由来する組換えscFvとして設計した(Haisma et al. (1999), Blood 92: 184-90)。2つの免疫グロブリン可変領域(VL及びVH)を、リンカー(配列番号18)によって分離した。
第2に、結合領域と志賀毒素エフェクター領域とを組み合わせて、一本鎖組換えポリペプチドを形成させた。本実施例において、1H4 CD20モノクローナル抗体に由来する組換えscFvをコードするポリヌクレオチドを、マウスIgG3分子(配列番号20)をコードするポリヌクレオチドに由来する「マウスヒンジ」ポリヌクレオチドと読み枠を合わせて、及びSLT−1Aをコードするポリヌクレオチド(配列番号1の残基1〜251)と読み枠を合わせてクローニングした。完全長配列は、検出及び精製を容易にするために読み枠を合わせてクローニングされたポリヌクレオチド配列をコードするStrep-tag(登録商標)(配列番号19)から始まる。本実施例のポリヌクレオチド配列を、DNA2.0, Inc.社(Menlo Park、CA、U.S.)からのサービスを用いて大腸菌中での効率的な発現のためにコドン最適化して、αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1をコードする発現ベクターを産生した。
インフルエンザ抗原を含む異なるCD20結合タンパク質を、同様の様式で構築及び産生した。DNA2.0社(Menlo Park、CA、U.S.)は、抗原配列(配列番号3)を含む複数のポリヌクレオチドを合成し、必要とされるポリヌクレオチド成分を以下の一本鎖ポリペプチド(アミノ末端からカルボキシ末端に向かって)Strep-tag(登録商標)(配列番号19)、1H4由来組換えscFv(上記のもの)、マウスIgG3分子(配列番号20)、リンカー(配列番号3)、及びSLT−1A由来配列(配列番号1の残基1〜251)をコードするオープンリーディングフレームを作製するためにベクターpJ201を用いてインフレームで接続した。この組換えポリヌクレオチドを、ポリペプチド産生のためにpTXB1中にクローニングした。再度、大腸菌中での効率的発現のためのコドン最適化は、DNA2.0社(Menlo Park、CA)により実施されて、αCD20scFv::SLT−1Aバージョン2をコードする発現ベクターが産生された。
第3に、αCD20scFv::SLT−1A組換えCD20結合タンパク質のバージョン1と2の両方を、細菌及び無細胞の両方のタンパク質翻訳系に関する標準的な技術を用いることにより産生した。次いで、CD20結合タンパク質を、当業界で周知の技術を用いて精製及び単離した。
例示的CD20結合タンパク質の解離定数(KD)の決定
αCD20scFv::SLT−1A CD20結合タンパク質のバージョン1と2の両方の細胞結合特性を、蛍光に基づくフローサイトメトリーアッセイにより決定した。それぞれの試料は、0.5×106個のCD20発現細胞(Raji(CD20+))又は非発現細胞(BC1(CD20−))を含有し、以後、「1XPBS+1%BSA」と呼ばれる、リン酸緩衝生理食塩水Hyclone 1XPBS(Fisher Scientific社、Waltham、MA)+1%ウシ血清アルブミン(BSA)(Calbiochem社、San Diego、CA、U.S.)中のCD20結合タンパク質の様々な希釈液100μLと共に摂氏4度(℃)で1hインキュベートした。反応の飽和を誘導するために、最も高い濃度のCD20結合タンパク質を選択した。細胞を1XPBS+1%BSAで2回洗浄した。細胞を、0.3μgの抗Strep tag(登録商標)mAb-FITC(#A01736-100、Genscript社、Piscataway、NJ、U.S.)を含有する100μlの1XPBS+1%BSAと共に4℃で1hインキュベートした。細胞を1XPBS+1%BSAで2回洗浄し、200μlの1XPBS中に懸濁し、フローサイトメトリーにかけた。全ての試料に関するベースライン補正された平均蛍光強度(MFI、mean fluorescence intensity)データを、それぞれの実験試料からFITCのみの試料(陰性試料)のMFIを差し引くことにより得た。Prismソフトウェア(GraphPad Software社、San Diego、CA、U.S.)を用いて、グラフをMFI対「タンパク質濃度」としてプロットした。見出し結合−飽和の下での1部位結合[Y=Bmax *X/(KD+X)]のPrismソフトウェア機能を用いてBmax及びKDをベースライン補正されたデータを用いて算出した。Bmaxは、MFIで報告される最大特異的結合である。KDは、ナノモル濃度(nM)で報告される平衡結合定数である。
複数の実験にわたって、Raji(CD20+)細胞に関するαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1のKDは、約80〜100nMであると決定された。1つの実験において、CD20+細胞に結合するαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1のCD20結合タンパク質のBmaxは、約140,000MFIであり、KDは約83nMであると測定されたが(表1)、このアッセイにおいてはCD20−細胞への意味のある結合は観察されなかった。1つの実験においては、CD20+細胞に結合するαCD20scFv::SLT−1Aバージョン2に関するBmaxは約110,000MFIであり、KDは約101nMであると測定されたが(表1)、このアッセイにおいてはCD20−細胞への意味のある結合は観察されなかった。
例示的CD20結合タンパク質の最大半量阻害濃度(IC50)の決定
αCD20scFv::SLT−1A CD20結合タンパク質のバージョン1と2の両方のリボソーム不活化能力を、TNT(登録商標)Quick Coupled Transcription/Translation kit(L1170 Promega社、Madison、WI、U.S.)を用いる無細胞インビトロタンパク質翻訳アッセイを用いて決定した。このキットは、Luciferase T7 Control DNA(L4821 Promega社、Madison、WI、U.S.)及びTNT(登録商標)Quick Master Mixを含む。リボソーム活性反応を、製造業者の説明書に従って調製した。
試験しようとするαCD20scFv::SLT−1Aバージョンの10倍希釈系列を適切なバッファー中で調製し、同一のTNT反応混合物成分の系列を各希釈液について作製した。αCD20scFv::SLT−1Aタンパク質の希釈系列中の各試料を、Luciferase T7 Control DNAと共にそれぞれのTNT反応混合物と混合した。被験試料を30℃で1.5時間インキュベートした。インキュベーション後、Luciferase Assay Reagent(E1483 Promega社、Madison、WI、U.S.)を全ての被験試料に添加し、ルシフェラーゼタンパク質翻訳量を製造業者の説明書に従って発光により測定した。翻訳阻害のレベルを、相対発光単位に対する総タンパク質の対数変換された濃度の非線形回帰分析により決定した。統計ソフトウェア(GraphPad Prism社、San Diego、CA、U.S.)を用いて、最大半量阻害濃度(IC50)値を、見出し用量応答阻害の下でlog(阻害剤)対応答(3つのパラメータ)のPrismソフトウェア関数[Y=最低値+((最高値−最低値)/(1+10^(X−LogIC50)))]を用いて各試料について算出した。実験タンパク質及びSLT−1Aのみの対照タンパク質のIC50を算出した。SLT−1Aのみの対照タンパク質のパーセントを、[(SLT−1A対照タンパク質のIC50/実験タンパク質のIC50)×100]により算出した。
無細胞タンパク質合成に対するαCD20scFv::SLT−1Aの両バージョンの阻害効果は強力であった。複数の実験により、αCD20scFv::SLT−1Aの両バージョンのIC50は約50ピコモル濃度(pM)であると決定された。一実施形態においては、タンパク質合成に関するαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1のIC50は、約38pMであったか、又はSLT−1Aのみの陽性対照の19%以内であった(表2)。同様に、この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に関するαCD20scFv::SLT−1Aバージョン2のIC50は、約58pMであったか、又はSLT−1Aのみの陽性対照の18%以内であった(表2)。
免疫蛍光アッセイによる細胞内在化の決定
CD20−細胞株(BC−1、Jurkat(J45.01)、及びU266)と比較したCD20+陽性細胞株(Daudi、Raji、及びRamos)中でのαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1の結合及び内在化プロファイルを分析するために、免疫蛍光試験を実行した。例えば、50nMのそれぞれのCD20タンパク質を、37℃で1時間、0.8×106個のRaji細胞と共にインキュベートして、CD20結合タンパク質の結合及び内在化を可能にした。次いで、細胞を1XPBSで洗浄し、BD cytofix/cytoperm(BD Biosciences社、San Jose、CA、U.S.)を用いて固定及び透過処理した後、1X BD Perm/Wash(商標)Buffer(BD Biosciences社、San Jose、CA、U.S.)で2回洗浄した。細胞を、室温で45分間、1X BD Perm/Wash(商標)Buffer中のAlexa Fluor(登録商標)-555標識されたマウス抗SLT−1A抗体(BEI Resources社、Manassas、VA、U.S.)と共にインキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、4℃で10分間、BD cytofix(BD Biosciences社、San Jose、CA、U.S.)で固定した。次いで、細胞を1XPBSで洗浄し、1XPBS中に再懸濁した後、細胞をポリ−L−リシン被覆スライドガラス(VWR社、Radnor、PA、U.S.)上に接着させた。スライドを、4’,6’−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)含有Vectashield(Fisher Scientific社、Waltham、MA、U.S.)でカバースリップし、Zeiss Fluorescence Microscope(Zeiss社、Thornwood、NY、U.S.)により観察した。
免疫蛍光試験により、αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1及びB9E9−SLT−1Aが、37℃で1時間以内に細胞表面に結合し、CD20を発現する細胞中に進入することが示された。
CD20+細胞死滅アッセイ:CD20結合タンパク質の細胞毒性選択性及び最大半量細胞毒性濃度(CD50)の決定
αCD20scFv::SLT−1Aの両バージョンの細胞毒性プロファイルを、CD20+細胞死滅アッセイにより決定した。このアッセイは、標的生体分子を発現しない細胞と比較して、細胞表面上にCD20を発現する細胞を死滅させるCD20結合タンパク質の能力を決定する。細胞を、384穴プレート中、20μLの培地中に播種した(2×103個/ウェル)。試験しようとするαCD20scFv::SLT−1Aタンパク質を、1XPBS中で5倍又は10倍に希釈し、5μLの希釈液又はバッファー対照を細胞に添加した。培地のみを含有する対照ウェルを、ベースライン補正のために用いた。細胞試料を、試験しようとするαCD20scFv::SLT−1A又はバッファーのみと共に37℃で3日間、5%二酸化炭素(CO2)の雰囲気中でインキュベートした。全細胞生存又は生存率を、製造業者の説明書に従ってCellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assay(G7573 Promega社、Madison、WI、U.S.)を用いる発光読出しを用いて決定した。実験ウェルの“生存率”を、以下の式:(試験RLU−平均培地RLU)/(平均細胞RLU−平均培地RLU)*100を用いて算出した。生存率に対するLogポリペプチド濃度を、Prismソフトウェア(GraphPad Prism社、San Diego、CA、U.S.)を使用してプロットし、対数(阻害剤)対正規化応答(可変勾配)分析を用いて、例示的CD20結合タンパク質に関する最大半量細胞毒性濃度(CD50)値を決定した。さらに、リンパ腫患者からの細胞試料をこの細胞死滅アッセイにおいて分析して、αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1の細胞毒性プロファイルを決定した。
複数の実験にわたって、αCD20scFv::SLT−1Aの両バージョンは、CD20陰性細胞株の細胞死滅と比較して10〜1000倍の特異性でCD20特異的細胞死滅を示した(表3)。αCD20scFv::SLT−1Aの両バージョンのCD20特異的細胞死滅プロファイルもSLT−1A(251)成分が細胞を死滅させる能力と対照的であり、CD20特異性を欠いていた(表3)。αCD20scFv::SLT−1Aタンパク質の両バージョンのCD50 値は、CD20−細胞株に関する600〜2,000を超えるものと比較して、細胞株に応じて、CD20+細胞に関しては約3〜70nMであると測定された(表3)。αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1 CD20結合タンパク質のCD50は、細胞表面上にCD20を発現する細胞と比較して、細胞表面上にCD20を発現しない細胞について100〜400倍高かった(細胞毒性が低い)。患者試料からのヒトリンパ腫細胞に対するαCD20scFv::SLT−1AバージョンのCD50は、約7〜40nMであった(表3)。
CD20+細胞死滅の比較:CD20+細胞に対するCD20結合タンパク質の相対的細胞毒性の決定
実施例5に記載のようなRaji細胞(CD20+)中でのCD20+細胞死滅アッセイを用いて、3つの潜在的に細胞毒性のCD20結合タンパク質を試験した。代表的な結果のセットを、表4に報告する。複数の実験にわたって、αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1は、CD20結合タンパク質B9E9(配列番号12)と比較して50〜100倍大きい細胞死滅機能を示した(表4)。
インビボでの異種移植片試験を用いるCD20結合タンパク質の標的化された細胞毒性の決定
免疫不全マウス株に基づく2つの異種移植片モデル系を用いて、経時的な、及び様々な用量に関する、インビボ及び腫瘍環境中でCD20+腫瘍細胞を死滅させる例示的CD20結合タンパク質の能力を試験した。これらの異種移植片モデル系は、移植片対宿主応答、を欠く、特に、免疫系不全であるよく特徴付けられたマウス株に依拠する。第1に、SCID(重症複合型免疫不全、severe combined immune deficiency)マウスを用いて静脈内腫瘍モデルを試験して、マウスを通じて播種された腫瘍を作製し、ヒト腫瘍細胞に対する例示的CD20結合タンパク質のインビボでの効果を試験した。第2に、BALBc/ヌードマウスを用いて皮下腫瘍モデルを試験して、マウス上で皮下腫瘍を作製し、再度、ヒト腫瘍細胞に対する例示的CD20結合タンパク質のインビボでの効果を試験した。
第1の異種移植片系について、32匹のC.B.−17SCIDマウス(8匹の動物の4群)を、200μLのPBS中の1×107個のRaji-lucヒトリンパ腫由来細胞(Molecular Imaging社、Ann Arbor、MI、U.S.)でチャレンジした。腫瘍チャレンジ後5〜9日目及び12〜16日目で、群は、群毎に以下のものを静脈内投与により受容した:1群:PBS;2群:2mg/kgの用量のαCD20scFv::SLT−1Aバージョン2;3群:2mg/kgの用量のαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1;及び4群:4mg/kgの用量のαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1(5〜9日目のみ)。1X106個の光子/秒単位(p/s)で、生物発光を、Caliper IVIS 50光学画像化システム(Perkin Elmer社、Waltham、MA、U.S.)を用いて5、10、15及び20日目に測定した。図2は、両用量レベルのαCD20scFv::SLT−1Aの両バージョンと、αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1が、PBS対照と比較して統計的に有意に低い全生物発光をどのようにもたらしたかを示す。全生物発光の低下は、本発明のCD20結合タンパク質を用いる治療後に播種性全身腫瘍組織量の統計的に有意な減少を反映していた。図3は、αCD20scFv::SLT−1Aのいずれかのバージョンを投与した場合の生存の統計的に有意な増加を示す。平均生存年齢はPBS陰性対照と比較して全ての治療に関して5日増加した。
第2の異種移植片モデルについては、28匹のBALBc/ヌードマウス(6又は7匹の動物の4群)を、2.5×106個のRajiヒトリンパ腫細胞(Washington Biotechnology社、Simpsonville、MD、U.S.)で皮下的にチャレンジした。腫瘍体積を、カリパスを用いる当業界で公知の標準的な方法を用いて決定した。それぞれのマウスの平均腫瘍体積が約160mm3に到達した時点を0日目に設定した(各群に由来する1匹のマウスは260mm3を超える腫瘍を有していたため、それを除外した)。0〜4日目及び7〜11日目に、群は、群毎に以下のものの静脈内投与を受容した:群1:PBS;群2:2mg/kgの用量のαCD20scFv::SLT−1Aバージョン2;群3:2mg/kgの用量のαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1;群4:4mg/kgの用量のαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1。腫瘍体積を測定し、試験日数の関数としてグラフ化した。図4は、αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1を用いる治療(両用量レベルの)が24日目までにPBS対照と比較して有意に減少した腫瘍体積をどのようにもたらしたかを示す。これはまた、表5に報告されるように、54日目までの無腫瘍マウスの数に反映される。
非ヒト霊長類におけるCD20結合タンパク質のインビボでの効果の決定
例示的CD20結合タンパク質αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1を、非ヒト霊長類に投与して、インビボでの効果について試験した。カニクイザル霊長類における末梢血Bリンパ球のインビボでの枯渇を、様々な用量のαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1の非経口投与後に観察した。
ある実験において、10頭のカニクイザル霊長類に、2週間にわたって隔日にPBS又は様々な用量(50、150及び450マイクログラムの薬物/キログラム体重(mcg/kg))のαCD20scFv::SLT−1Aバージョン1を静脈内注射した。次いで、3日目及び8日目に投与する前に採取された末梢血試料を、CD20を発現するBリンパ球のパーセンテージについて分析した(図5及び図6)。カニクイザルにおいては、2つの異なるB細胞サブセットがフローサイトメトリーによって記載されている;(1)CD21陰性、高レベルのCD20を発現するCD40陽性細胞、並びに(2)低レベルのCD20を発現するCD21陽性及びCD40陽性(Vugmeyster Y et al.., Cytometry 52: 101-9 (2003))。治療前に採取された血液試料に由来するベースラインレベルと比較した用量依存的B細胞枯渇が、3日目(50、150及び450mcg/kgで投与した動物における4、14及び45%の低下)及び8日目(50、150及び450mcg/kgで投与した動物における32、52及び75%の低下)に観察された(表6)。この実験により、αCD20scFv::SLT−1Aバージョン1がCD20陽性の霊長類B細胞をインビボで死滅させることができることが示された。
志賀様毒素1のAサブユニット及びオファツムマブ抗体に由来するCD20結合タンパク質
本実施例では、志賀毒素エフェクター領域は、志賀様毒素1のAサブユニット(SLT−1A)に由来する。免疫グロブリン型結合領域αCD20は、ヒトCD20に結合することができる免疫グロブリン型結合領域を含むモノクローナル抗体オファツムマブ(Gupta I, Jewell R, Ann N Y Acad Sci 1263: 43-56 (2012))に由来する。
CD20結合タンパク質SLT−1A::αCD20の構築、産生、及び精製
免疫グロブリン型結合領域αCD20と、志賀毒素エフェクター領域とを一緒に連結して、タンパク質を形成させる。例えば、CD20結合タンパク質SLT−1A::αCD20をコードするポリヌクレオチドを発現させることにより、融合タンパク質を産生する。SLT−1A::αCD20 CD20結合タンパク質の発現を、以前の実施例に記載のような、細菌及び/又は無細胞のタンパク質翻訳系を用いて達成する。
CD20結合タンパク質SLT−1A::αCD20のインビトロでの特性の決定
CD20+細胞及びCD20−細胞に関する本実施例のCD20結合タンパク質の結合特性を、以前の実施例に上記されたような蛍光に基づくフローサイトメトリーにより決定する。CD20+細胞に結合するSLT−1A::αCD20のBmaxは、約50,000〜200,000MFIであり、KDは0.01〜100nMの範囲内にあると測定されるが、このアッセイにおけるCD20−細胞への有意な結合はない。
SLT−1A::αCD20 CD20結合タンパク質のリボソーム不活化能力を、以前の実施例に上記されたような無細胞インビトロタンパク質翻訳において決定する。無細胞タンパク質合成に対する本実施例のCD20結合タンパク質の阻害効果は有意である。この無細胞アッセイにおけるタンパク質合成に関するSLT−1A::αCD20のIC50は、約0.1〜100pMである。
細胞死滅アッセイを用いるCD20結合タンパク質SLT−1A::αCD20の細胞毒性の決定
SLT−1A::αCD20の細胞毒性特性を、CD20+細胞を用いて以前の実施例に上記されたような一般的な細胞死滅アッセイにより決定する。さらに、SLT−1A::αCD20の選択的細胞毒性特性を、CD20+細胞との比較として、CD20−細胞を用いる同じ一般的な細胞死滅アッセイにより決定する。本実施例のCD20結合タンパク質のCD50は、細胞株に応じてCD20+細胞について約0.01〜100nMである。CD20結合タンパク質のCD50は、細胞表面上にCD20を発現する細胞と比較して、細胞表面上にCD20を発現しない細胞について約10〜10,000倍高い(細胞毒性が低い)。
動物モデルを用いるCD20結合タンパク質SLT−1A::αCD20のインビボでの効果の決定
動物モデルを用いて、新生物細胞に対するCD20結合タンパク質SLT−1A::αCD20のインビボでの効果を決定する。様々なマウス株を用いて、細胞表面上にCD20を発現するヒト新生物細胞のマウスへの注射から得られるマウスにおける異種移植腫瘍に対する静脈内投与後のCD20結合タンパク質の効果を試験する。非ヒト霊長類を用いて、実施例8に記載のように末梢血B細胞に対するSLT−1A::αCD20の効果を試験することができる。
CD20結合ドメインに基づく様々なCD20結合タンパク質
本実施例では、志賀毒素エフェクター領域は、志賀様毒素1のAサブユニット(SLT−1A)、志賀毒素(StxA)、及び/又は志賀様毒素2(SLT−2A)に由来する。免疫グロブリン型結合領域は、表7から選択される分子に由来する免疫グロブリンドメインに由来し、CD20の細胞外部分に結合する。本実施例の例示的細胞毒性タンパク質を作製し、CD20を細胞表面に発現するCD20+細胞を使用した以前の実施例に記載のように試験する。
本発明のある特定の実施形態を例示によって説明してきたが、本発明を多くの改変、変更及び適合化と共に実行することができ、本発明の精神から逸脱するか、又は特許請求の範囲を超えることなく、いくつかの等価物又は代替的な解決法の使用が当業者の範囲内にあることが明らかである。
全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかもそれぞれ個々の刊行物、特許又は特許出願の全体が参照により組込まれると具体的かつ個別的に示されたのと同程度に、その全体が参照により本明細書に組込まれる。米国仮特許出願第61/777,130号明細書は、その全体が参照により組込まれる。本明細書で引用されるアミノ酸及びヌクレオチド配列に関するGenBank(National Center for Biotechnology Information、U.S.)からの全ての電子的に利用可能な生物学的配列情報の完全な開示は、参照により組込まれる。