JP2016196082A - 拡径用ドリルビット - Google Patents

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Abstract

【課題】単純な構造で、細径の下穴にも対応可能な拡径用ドリルビットを提供する。【解決手段】躯体Aに穿孔した下穴Hに挿入して用いられ、下穴Hの一部を研削により拡径するための拡径用ドリルビット11であって、下穴Hの一部を研削する複数の切刃部21と、複数の切刃部21を、それぞれ平行移動するように径方向にスライド移動可能に保持する切刃保持部22と、切刃保持部22を支持するシャンク部23と、を備え、複数の切刃部21は、回転に伴う遠心力により、切刃保持部22に対し径方向外側に拡開するように移動する。【選択図】図5

Description

本発明は、主として、コンクリート等の躯体に穿孔した下穴の一部を拡径するための拡径用ドリルビットに関するものである。
従来、この種の拡径用ドリルビットとして、コンクリート等の躯体に穿孔したストレート形状の下穴に挿入して用いられ、下穴の最奥部を拡径するアンダーカットドリル装置が知られている(特許文献1参照)。
このアンダーカットドリル装置は、下穴に挿入される中空円筒状の筒体と、下穴の開口縁部に着座し、ベアリングを介して筒体を回転自在に支持する当て部材と、同軸上において筒体にスライド自在に係合し、筒体と一体回転するシャフトと、筒体の先端側に設けられ、外周面に4つのガイド溝を有する円錐台形状のコーン部と、シャフトの先端部に取り付けられ、各ガイド溝に係合する4つのアームと、4つアームの先端部外面に交互に設けた2つの切刃および2つのガイド部と、を備えている。
切刃およびガイド部は、シャフトを引き上げた状態で筒体の内側に位置している。下穴に挿入した筒体およびシャフトを一体回転させ、シャフトを下動させてゆくと、コーン部のガイド溝により4つのアームが下動しながら外側に開いてゆく。これにより、切刃が下穴の内周面を研削し、下穴の底部(最奥部)に拡径部を形成する。
特開2005−280243号公報
このような従来のアンダーカットドリル装置では、切刃を有するアームをコーン部の外周面でガイドする構造となっているため、コーン部を筒体で支持せざるを得ず、構造が極めて複雑になる問題があった。また、シャフトの外側にアーム、コーン部および筒体を配置する構造となるため、全体が太径となり、比較的細径の下穴に使用することができない問題があった。
本発明は、単純な構造で、細径の下穴にも対応可能な拡径用ドリルビットを提供することをその課題としている。
本発明の拡径用ドリルビットは、躯体に穿孔したアンカー用の下穴に挿入して用いられ、下穴の一部を研削により拡径するための拡径用ドリルビットであって、下穴の一部を研削する複数の切刃部と、複数の切刃部を、それぞれ平行移動するように径方向にスライド移動可能に保持する切刃保持部と、切刃保持部を支持するシャンク部と、を備え、複数の切刃部は、回転に伴う遠心力により、切刃保持部に対し径方向外側に拡開するようにスライド移動することを特徴とする。
この構成によれば、下穴に挿入した状態でシャンク部を回転させると、ビット部の複数の切刃部は、それぞれ遠心力を受け径方向外側にスライド移動する。すなわち、切刃保持部と共に回転する複数の切刃部は、遠心力により径方向外側に拡開するようにスライド移動し、下穴の一部を研削し拡径させる。この場合、複数の切刃部を遠心力でスライド移動させる構成であるため、構造を単純化することができる。また、下穴に挿入される複数の切刃部は、切刃保持部と共に径方向に集約して配置することができると共に、従来技術のような外筒を必要としない。したがって、細径の下穴にも対応(拡径)させることができる。
この場合、各切刃部は、断面円環状に形成され、切刃保持部は、複数の切刃部を遊嵌状態で保持する複数の保持ピンを有していることが好ましい。
この構成によれば、回転より切刃部に遠心力が作用すると、切刃部は、保持ピンとの間の遊嵌間隙の範囲内で径方向外側に振られる。このため、切刃部は、径方向外側にスライド移動しつつ、下穴に接触して適宜回転する。これにより、下穴(の一部)を均一に研削することができると共に、研削による切刃部の目減りを均一化することができる(自動的にドレッシングされる)。また、保持ピンにより、径方向外側に移動する切刃部の移動端位置が規制されるため、切刃部の切刃保持部からの脱落を防止することができると共に、下穴の拡径寸法を一定にすることができる。
実施形態に係る拡径用ドリルビットを穿孔装置に装着した状態の外観図である。 第1実施形態に係る拡径用ドリルビットの構造図である。 拡径用ドリルビットのビット部廻りの斜視図である。 拡径用ドリルビットのビット部廻りの構造図(a)、および分解構造図(b)である。 拡径用ドリルビットの拡径動作を示す説明図である。 第2実施形態に係る拡径用ドリルビットのビット部廻りの断面図(a)および構造図(b)である。 第3実施形態に係る拡径用ドリルビットのビット部廻りの分解斜視図(a)および断面図(b)である。 第4実施形態に係る拡径用ドリルビットのビット部廻りの断面図(a)および構造図(b)である。 第5実施形態に係る拡径用ドリルビットのビット部廻りの断面図(a)および構造図(b)である。 第6実施形態に係る拡径用ドリルビットのビット部廻りの断面図である。 第7実施形態に係る拡径用ドリルビットのビット部廻りの断面図である。 第8実施形態に係る拡径用ドリルビットの構造図である。 第9実施形態に係る拡径用ドリルビットの構造図である。 第10実施形態に係る拡径用ドリルビットの構造図(a)、および分解構造図(b)である。
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る拡径用ドリルビットについて説明する。この拡径用ドリルビットは、主として、アンカーを打ち込むためにコンクリートや石材等の躯体に形成した下穴に対し、その一部を拡径するものであり、打ち込んだアンカーの引抜き強度を高め得るものである。ダイヤモンドコアドリル等で穿孔したストレート形状の下穴は、微小な軸ブレにより開口部側が広く奥側が狭く穿孔され、実質上、微小なテーパー形状となる。このため、打ち込んだアンカーに、地震等による大きな力が繰り返し加わると、経時的に引抜き強度が低下する。拡径用ドリルビットは、このようなアンカーの経時的な引抜き強度の低下を防止すべく、下穴と同様の作業要領で下穴の一部を拡径するものである。
図1は、拡径用ドリルビットを穿孔装置に装着した状態の外観図である。同図に示すように、穿孔装置1は、手持ちの電動ドリル2と、電動ドリル2に装着した冷却液アタッチメント3とを有し、この冷却液アタッチメント3に拡径用ドリルビット10が装着される。すなわち、拡径用ドリルビット10は、動力源を構成する穿孔装置1(電動ドリル2)の冷却液アタッチメント3における回転軸3aに着脱自在に装着して用いられる。
この回転軸3aには、冷却液の流路が形成される一方、冷却液アタッチメント3は、図外の冷却液供給装置が接続されており、冷却液は、この冷却液供給装置から冷却液アタッチメント3を介して拡径用ドリルビット10の先端部に供給される。実施形態の穿孔装置1では、冷却液アタッチメント3に穿孔用ドリルビット(例えば、ダイアモンドコアビット)を装着して下穴Hを穿孔した後、穿孔用ドリルビットに代えて拡径用ドリルビット10を装着し、下穴Hの最奥部Haを拡径するようにしている。
図2は、第1実施形態に係る拡径用ドリルビット10の構造図である。同図に示すように、拡径用ドリルビット10は、先端部で下穴Hの拡径を行うビット部11と、基端側で穿孔装置1の回転軸3a(冷却液アタッチメント3)に着脱自在に装着され、先端側でビット部11を基部において同軸上に支持するシャフト部12と、を備えている。
また、ビット部11は、下穴Hを研削する複数(実施形態のものは2つ)の切刃部21と、複数の切刃部21を径方向に移動自在に保持する切刃保持部22と、切刃保持部22を介して複数の切刃部21を支持するシャンク部23と、を有している。この拡径用ドリルビット10では、ビット部11を下穴Hに挿入した状態で、穿孔装置1により拡径用ドリルビット10を回転させることで、遠心力により、複数の切刃部21が径方向外側に拡開する(図5参照)。
シャフト部12は、その小口に窪入形成した雌ねじ部31を有し、この雌ねじ部31が、冷却液アタッチメント3の回転軸3aの雄ねじ部(図1参照)に螺合される。図示しないが、シャフト部12にはスパナ用の工具掛け部が形成されており、シャフト部12は、雌ねじ部31の部分で冷却液アタッチメント3、すなわち穿孔装置1に着脱自在に装着される。
シャフト部12の軸心部には、冷却液用のシャフト内流路32が形成されている。シャフト内流路32は、基端側で冷却液アタッチメント3に連通すると共に、先端側で後述するビット内流路34に連通している。シャフト部12を冷却液アタッチメント3の回転軸3aに装着すると、このシャフト内流路32およびビット内流路34と、冷却液アタッチメント3とが連通し、冷却液アタッチメント3からの冷却液の通液が可能となる。
図2、図3および図4に示すように、ビット部11は、シャフト部12の先端から延びるシャンク部23と、シャンク部23の先端に設けた円筒状の切刃保持部22と、切刃保持部22に保持された2つの切刃部21と、を有している。この場合、下穴Hの内径に対し、2つの切刃部21の外径は僅かに小径に形成されている。また、2つの切刃部21の外径に対し、切刃保持部22の外径は僅かに小径に、さらに切刃保持部22の外径に対し、シャンク部23の外径は小径に形成されている。
一方、シャンク部23の軸心部および切刃保持部22の内側には、上記のシャフト内流路32に連通するビット内流路34が構成されている。ビット内流路34に導入された冷却液は、後述する切刃保持部22の2つのスリット部55(切刃開口部)から2つの切刃部21に向かって、下穴H内に放出される。なお、ビット内流路34のうち、シャンク部23に形成されている部分により、シャンク内流路34aが構成されている。また、冷却液に代えて、圧縮エアーや冷却ガスを用いることも可能である(詳細は、後述する)。
切刃保持部22は、2つの切刃部21を外周面に沿うように保持する保持部本体41と、保持部本体41が取り付けられる保持部受け42と、を有している。保持部受け42は、基端側がシャンク部23に連結されており、先端側内周面には、保持部本体41が螺合する雌ねじ44が形成されている。実施形態のものは、保持部受け42、シャンク部23およびシャフト部12が一体に形成されている。もっとも、これら保持部受け42、シャンク部23およびシャフト部12を適宜別体とし、ねじや溶接により接合する構成であってもよい。また、保持部受け42は、シャンク部23より太径に形成されており、これらの内部には、雌ねじ44の部分を含んでビット内流路34が構成されている。
保持部本体41は、フランジ状の先端フランジ部51と、先端フランジ部51に連なり、2つの切刃部21を保持する円筒保持部52と、円筒保持部52に連なる円筒ねじ部53と、を有している。また、保持部本体41は、先端フランジ部51の中心部先端に設けた尖塔部54と、円筒保持部52および円筒ねじ部53の部分に形成した複数(2つ)のスリット部55(切刃開口部)と、を有している。この場合、先端フランジ部51、円筒保持部52、円筒ねじ部53および尖塔部54は、一体に形成されていることが好ましい。なお、円筒保持部52および円筒ねじ部53の内側は、ビット内流路34の一部として機能する。
先端フランジ部51と保持部受け42とは同径に形成され、円筒保持部52に保持された切刃部21を、微小な間隙を存して軸方向に挟み込むように配設されている。詳細は後述するが、各切刃部21は、スリット部55を介して円筒保持部52に保持されており、この状態で円筒ねじ部53が保持部受け42の雌ねじ44に螺合している。なお、保持部本体41を保持部受け42に螺合するために、先端フランジ部51に工具掛け部を設けることが好ましい(図示省略)。
円筒ねじ部53は、外周面に雄ねじが形成されているものの、円筒保持部52と同径に形成されている。また、2つのスリット部55は、円筒ねじ部53の基端から円筒保持部52に向かって切り込むようにして形成されている。さらに、2つのスリット部55は、円筒保持部52および円筒ねじ部53の周方向において、180°点対称位置に形成されている。したがって、各切刃部21は、円筒ねじ部53の基端、すなわち小口からスライドさせるようにして、円筒保持部52に装着される。また、保持部本体41は、2つの切刃部21を装着してから保持部受け42に取り付けられる。
各切刃部21は、切刃保持部52の外周面に沿うように設けた切刃本体61と、切刃本体61の内側に突設されたリブ部62と、リブ部62の先端に設けた抜止め部63と、を有している。切刃本体61と抜止め部63とは、略1/4円弧の断面形状を有しており、リブ部62がスリット部55に対し径方向にスライド自在に係合している。すなわち、切刃保持部52(保持部本体41)の外側に切刃本体61が位置すると共に、内側に抜止め部63が位置し、この状態で、リブ部62がスリット部55に対しスライド自在に係合している。
したがって、切刃保持部22に保持された2つの切刃部21は、回転により生ずる遠心力により径方向外側に拡開する。すなわち、拡開の初期状態において、切刃本体61の内面が上記の円筒保持部52の外周面に接触し、拡開の完了状態において、抜止め部63の外面が円筒保持部52の内周面に接触する(図5参照)。もっとも、本実施形態の切刃本体61は、研削による目減りを考慮して十分な厚みを有しており、実際には、拡径部の研削を時間で管理(10秒〜20秒程度)することが好ましい。したがって、抜止め部63が円筒保持部52に接触する状態となったら、切刃部21の交換(寿命)を考慮することとなる。なお、実施形態における下穴Hの拡径は、アンカーの引抜き強度を高めるものであるため、拡径寸法は微小であってもよい。したがって、切刃部21のスライド移動を0.1〜2mm程度とすることが好ましい。
また、切刃本体61に対し、リブ部62および抜止め部63を軸方向において同寸法としたが、リブ部62および抜止め部63を短く形成してもよい。もっとも、詳細は後述するが、冷却液により切刃部21の拡開を促進するために、リブ部62や抜止め部63を、軸方向或いは周方向に大きく形成するようにしてもよい。
切刃本体61は、断面円弧状のダイヤモンドの切刃で構成されており、研削用のダイヤモンドは外周部に設けられている。これにより、下穴Hの最奥部Ha内周面が研削され、所定の寸法に拡径される。また、この研削に際し切刃部21には、強い遠心力が作用することが好ましい。このため、切刃本体61の内面には、錘65を設けることが好ましい(図3において、仮想線で示す)。錘65は、例えば鉛やタングステン等の比重の重いものとする。
切刃本体61は円弧状を為すため、拡開が進むに従って、その研削部位が円弧状の周面全体から中間部分に移行する(図5参照)。すなわち、研削が進むに従って切刃本体61の摩擦抵抗が小さくなるため、研削を円滑に進めることができる。とっとも、切刃本体61の円弧状の外周部を、切刃保持部22の回転中心に対する円弧より曲率の大きい円弧で構成しておいてもよい。また、研削初期における研削抵抗を小さくすべく、切刃本体61の周方向の先端側(回転方向の先端側)は、面取り形状とすることも好ましい。なお、周方向において、2つの切刃部21が初期状態にあるこの部分の径は、下穴Hの径より0.5〜1.0mm程度細径に形成されており、ビット部11の下穴Hへの挿入が円滑に行えるようになっている。
次に、図1および図5を参照して、拡径用ドリルビット10による下穴Hの拡径作業について説明する。この拡径作業では、予め対象となるコンクリート躯体A等に下穴Hが形成されているものとする。なお、この場合のコンクリート躯体Aには、コンクリート製の外壁、内壁、スラブの他、基礎や梁等が含まれる。下穴Hは、例えば上記の穿孔装置1にダイアモンドコアビットを装着した穿孔作業により形成される。
拡径作業では、先ず穿孔装置1に拡径用ドリルビット10を装着し、そのビット部11を下穴Hに挿入する(図5(a)参照)。ビット部11の尖塔部54を下穴Hの穴底に突き当てるように挿入したら、電動ドリル2を駆動して拡径用ドリルビット10を回転させる。また同時に或いは相前後して、シャフト内流路32およびビット内流路34を介して、切刃部21に冷却液を供給する。
拡径用ドリルビット10が回転すると、2つの切刃部21に遠心力が作用し、2つの切刃部21を外側に拡開してゆく(図5(b)参照)。また、ビット内流路34の先端部から放出された冷却液も、遠心力により、2つの切刃部21の内側部分で放射状に広がり、切刃部21の拡開を促進する。これにより、回転するビット部11の切刃本体61が、下穴Hの内面を研削し、下穴Hの最奥部Haが拡径されてゆく。やがて、抜止め部63が保持部本体41により位置規制され、或いは所定時間経過すると、最奥部Haが所定の寸法に拡径される。
ここで作業者は、電動ドリル2をOFFし、拡径用ドリルビット10の回転を停止させる(冷却液の供給も停止)。これにより、2つの切刃部21に作用する遠心力がゼロとなり、2つの切刃部21が閉じるように初期状態に戻る。続いて、ビット部11を引き抜くようにする。
このように、第1実施形態では、ビット部11を下穴Hに挿入し回転させだけで、下穴Hの最奥部Haを簡単且つ短時間で拡径することができる。また、複数の切刃部21を、遠心力により拡開される構成であるため、装置構成を単純化することができる。さらに、2つの切刃部21は、切刃保持部22と共に径方向に集約して配置することができるため、細径の下穴Hに対しても適切な拡径を行うことができる。
次に、図6を参照して、第2実施形態に係る拡径用ドリルビット10Aにつき、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。同図に示すように、この拡径用ドリルビット10Aでは、第1実施形態の先端フランジ部51に相当する部分が、ビット部11において、最も太径に形成された太径嵌合部71となっている。すなわち、太径嵌合部71は、非拡開状態の2つの切刃部21やシャンク部23より僅かに太径に形成され、下穴H(の最奥部Ha)より僅かに細径(嵌挿する程度)に形成されている。
ビット部11を下穴Hに挿入すると、尖塔部54が下穴Hの穴底に突き当たり、太径嵌合部71が下穴Hの最奥部Haに位置する。この状態で、ビット部11が回転すると、太径嵌合部71は、尖塔部54を回転中心として、下穴Hに嵌挿された状態で回転する。この場合、太径嵌合部71に対し、下穴Hが、冷却液を潤滑剤とした軸受として機能し、ビット部11の回転ブレが防止される。これにより、2つの切刃部21による下穴H(拡径部)の研削が円滑に行われる。
また、各切刃部21の切刃本体61は、その外周部(外周面)が、切刃保持部22の回転中心に対する円弧より曲率の大きい円弧で構成されている。これにより、研削時の摩擦抵抗が小さくなるため、研削を円滑に進めることができる。さらに、各切刃部21の抜止め部63は、冷却液に対する受圧面積を大きくとるべく、リブ部62に直交する面でカットされている。
次に、図7を参照して、第3実施形態に係る拡径用ドリルビット10Bにつき、主に上記実施形態と異なる部分について説明する。同図に示すように、この拡径用ドリルビット10Bでは、各切刃部21が、切刃本体61と抜止め部63とで構成され、これに対応して、円筒保持部52および円筒ねじ部53には、第1実施形態のスリット部55に相当する広幅の切刃開口部73が形成されている。
円筒保持部52は、シャンク部23と略同径に形成されている。そして、2つの切刃開口部73は、円筒保持部52の周方向において180°点対称位置に形成されている。円筒保持部52の内面には、2つの切刃開口部73に連なる矩形断面のガイド室74が構成されており、このガイド室74において、両切刃部21の抜止め部63が対峙している。切刃本体61が切刃開口部73に、且つ抜止め部63がガイド室74に、それぞれガイドされて径方向に外側にスライド移動(拡開)する。また、抜止め部63が、ガイド室74と切刃開口部73との間の段部75に当接することで、切刃部21の径方向外側への移動端位置が規制されるようになっている。
各切刃部21は、外周面(円弧面)が円筒保持部52の外周面と面一となるように設けた切刃本体61と、切刃本体61の基端に設けた板状の抜止め部63と、を有している。抜止め部63は、ガイド室74と切刃開口部73との間の段部75により抜け止めとなるように、切刃本体61より広幅に形成されている。そして、径方向において、切刃本体61が切刃開口部73にスライド自在に係合し、抜止め部63がガイド室74の内壁面にスライド自在に係合している。
このよう構成では、ビット部11を下穴Hに挿入し回転させだけで、下穴Hの最奥部Haを簡単且つ短時間で拡径することができる。また、2つの切刃部21を、遠心力により拡開される構成であるため、装置構成を単純化することができる。
次に、図8を参照して、第4実施形態に係る拡径用ドリルビット10Cにつき、主に上記実施形態と異なる部分について説明する。同図に示すように、この拡径用ドリルビット10Cでは、各切刃部21が、断面円環状に形成されている。また、切刃保持部22は、各切刃部21を遊嵌状態で保持する2つの保持ピン77を有している。さらに、切刃保持部22の切刃開口部73は、切刃部21の径方向への移動を許容すべく、径方向外側に向かって拡開形状に形成されている。
保持ピン77は丸棒状に形成され、保持部受け42の端面から軸方向に延在している。切刃部21は、その内側において十分な間隙を存して保持ピン77に保持されており、この間隙寸法が、切刃部21の径方向への移動代となる。回転より切刃部21に遠心力が作用すると、切刃部21は、保持ピン77との間の遊嵌間隙の範囲内で径方向外側に振られる。これにより、切刃部21は、下穴Hに接触してこれを研削する。また、切刃部21は、研削時に抵抗を受けて自身も回転する。これにより、研削による切刃部21の目減りを均一化することができる。
一方、この拡径用ドリルビット10Cでは、円筒ねじ部53が無く、円筒保持部52は保持部受け42と一体に形成されている。また、太径嵌合部71は、保持部受け42から延びる2つの保持ピン77に溶着されている。すなわち、太径嵌合部71は、各保持ピン77の先端部が嵌合する2つの溶着孔71aを有しており、溶着孔71aに保持ピン77の先端部を嵌合し、溶着(ろう接または溶接)するようになっている。より具体的には、保持ピン77に切刃部21を装着し、この状態で、保持ピン77の先端部に太径嵌合部71を溶着する。これにより、切刃部21は、軸方向において、僅かな間隙を存して、保持部受け42と太径嵌合部71との間に挟み込まれるようにして、切刃保持部22に保持されている。
また、ビット内流路34は、保持部受け42の先端側で縮径され、端面の中心部に開放されている。この縮径部分により冷却液は、2つの切刃部21の間に勢い良く放出され、2つの切刃部21の拡開を促進する。なお、切刃保持部22は、保持部受け42の部分で、シャンク部23に対しねじ接合としてもよい。このようにすれば、切刃部21が目減りしたときに、切刃保持部22と切刃部21とをユニットとして一体に交換することができる。
次に、図9を参照して、第5実施形態に係る拡径用ドリルビット10Dにつき、主に上記実施形態と異なる部分について説明する。同図に示すように、この拡径用ドリルビット10Dでは、第4実施形態に係る拡径用ドリルビット10Cと異なり、太径嵌合部71は、円筒保持部52から延びる2つの接合ピン79に溶着されている。すなわち、円筒保持部52の端面には、180°点対称位置に2つの接合ピン79が突設されており、この接合ピン79を対応する2つの溶着孔71a嵌合し溶着(ろう接または溶接)することで、太径嵌合部71が円筒保持部52に取り付けられている。
また、この拡径用ドリルビット10Dの保持ピン77は、第4実施形態の保持ピン77と異なり、太径嵌合部71から延びる2つの先端側保持ピン77aと、円筒保持部52から延びる基端側保持ピン77bとで構成されている。先端側保持ピン77aと基端側保持ピン77bとは、同軸上に位置しており、上記の第4実施形態と同様に、断面円環状の切刃部21を遊嵌状態で保持している。
次に、図10を参照して、第6実施形態に係る拡径用ドリルビット10Eにつき、主に上記実施形態と異なる部分について説明する。同図に示すように、この拡径用ドリルビット10Eでは、第4・第5実施形態の保持ピン77に代えて、断面矩形の2つの摺接ピン81(摺接保持部)が設けられている。一方、各切刃部21は、断面円弧状の外周部を有すると共に径方向に長い形状に形成されている。また、各切刃部21には、径方向に延びるスライド孔82が形成されており、切刃部21は、このスライド孔82の部分で摺接ピン81に保持されている。
すなわち、切刃部21は摺接ピン81に対し、スライド孔82を介して径方向にスライド自在に保持されている。また、切刃部21の外周面(円弧面)は、円筒保持部52の外周面と面一となるように配設されている。回転により切刃部21が遠心力を受けると、切刃部21は径方向外側にスライドし、その外周部が円筒保持部52から突出する。これにより、回転する2つの切刃部21が同時に下穴Hに接触し、下穴Hを研削する。また、この場合も、2つの切刃部21の間に勢い良く放出される冷却液により、2つの切刃部21の拡開が促進される。
次に、図11を参照して、第7実施形態に係る拡径用ドリルビット10Fにつき、主に上記実施形態と異なる部分について説明する。同図に示すように、この拡径用ドリルビット10Fでは、各切刃部21が、断面円弧状の外周部を有する切刃本体84と、切刃本体84を支持する断面「C」字状のスライド部85と、を有している。また、切刃保持部22は、各スライド部85を介して、2つの切刃部21を径方向にスライド自在に且つ抜止め状態に保持する抜止め保持部86を有している。
抜止め保持部86は、抜止めを考慮して断面「H」字状に形成され、円筒保持部52と同様に、保持部受け42と一体に形成されている。回転により切刃部21が遠心力を受けると、切刃部21は径方向外側にスライド移動し、下穴Hに接触してこれを研削する。また、ビット内流路34の流路端は、抜止め保持部86を挟む2箇所で開放されており、この場合も、冷却液は、2つの切刃部21の間に勢い良く放出され、2つの切刃部21の拡開を促進する。
次に、図12を参照して、第8実施形態に係る拡径用ドリルビット10Gにつき、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。同図に示すように、この拡径用ドリルビット10Gは、下穴Hの最奥部Haを拡径する第1実施形態の拡径用ドリルビット10と異なり、下穴Hの任意の深さ位置を拡径することを意図している。このため、第8実施形態の拡径用ドリルビット10Gは、ビット部11の下穴Hへの挿入深さを調整可能な調整アタッチメント90を、更に備えている。
調整アタッチメント90は、シャフト部12に螺合する円筒状のアタッチメント本体91と、アタッチメント本体91に隣接してシャフト部12に螺合する止めねじ部92と、アタッチメント本体91の先端部に設けた円環状の回転受容部93と、を有している。
シャフト部12の外周面には、雄ねじが形成されており、これに対応してアタッチメント本体91の内周面および止めねじ部92の内周面には、雌ねじが形成されている。シャフト部12に対し、止めねじ部92を深く螺合した後、アタッチメント本体91を螺合してビット部11の下穴Hへの挿入深さを調整する。調整が完了したら、アタッチメント本体91が緩まないように、止めねじ部92を戻してアタッチメント本体91に接するように締め付ける。なお、シャフト部12の外周面には、挿入深さを指標する目盛を形成しておくことが好ましい。
回転受容部93は、例えばスラスト軸受で構成されており、下穴Hの開口縁部に当接するようになっている。アタッチメント本体91および止めねじ部92は、シャフト部12と共に回転するが、回転受容部93によりこの回転を縁切りし、下穴Hの開口縁部に回転動力が伝達しないように構成されている。
このような構成では、アタッチメント本体91のねじ込み深さにより、ビット部11の下穴Hへの挿入深さを調整することができる。すなわち、下穴Hの任意の深さ位置に拡径部分を形成することができる。なお、この実施形態では、調整アタッチメント90をシャフト部12に設けるようにしているが、これをシャンク部23に設けるようにしてもよい。かかる場合には、調整アタッチメント90を、コンパクトに構成することができる。
次に、図13を参照して、第9実施形態に係る拡径用ドリルビット10Hにつき、主に上記の実施形態と異なる部分について説明する。同図に示すように、この拡径用ドリルビット10Hは、上記の実施形態と異なりシャフト部12が無く、電動ドリルに直接チャッキングして用いるタイプとなっている。2つの切刃部21および切刃保持部22は、第4ないし第7実施形態のようにユニット化されており、シャンク部23の先端にねじ接合により取り付けられている。一方、シャンク部23は、基端部に六角に被チャック部88を有している。
このような構成では、冷却液を供給することなく、下穴Hを研削する簡易な拡径用ドリルビット10Hを提供することができる。
次に、図14を参照して、第10実施形態に係る拡径用ドリルビット10Iにつき、主に上記の実施形態と異なる部分について説明する。同図に示すように、この拡径用ドリルビット10Iは、2つの切刃部21と切刃保持部22とがユニット化され、シャンク部23の先端にねじ接合により取り付けられている。また、シャンク部23の基端部には接合凹部101が形成され、これに対応して、シャフト部12の先端部には接合凸部102が形成されている。そして、この接合凹部101と接合凸部102との接合部分で、研削時のビット部11(切刃部21)に生ずる振動を吸収するようにしている。
この実施形態の切刃保持部22では、太径嵌合部71の端面に環状溝104が形成される一方、円形保持部52の端面には、環状溝104に対応する環状突起105が形成されている。円形保持部52の切刃開口部73に切刃部21を装着し、環状突起105に環状溝104を嵌め入れて、溶着(ろう接または溶接)することにより、2つの切刃部21と切刃保持部22とがユニット化されている。
シャフト部12は、電動ドリル2側に取り付けられる本体シャフト部107と、本体シャフト部107から先方に延びる嵌合軸部108と、嵌合軸部108から先方に延びる動力軸部109と、を有している。そして、この嵌合軸部108と動力軸部109とにより、接合凸部102が構成されている。嵌合軸部108は、円筒状に形成され、その外周面には、第1Oリング111(第1緩衝部材)を取り付けるためのリング溝108aが形成されている。動力軸部109は、六角の筒状に形成され、電動ドリル2から入力した回転力をシャンク部23に伝達する。
接合凹部101は、嵌合軸部108が嵌合する第1凹部112と、動力軸部109が嵌合する第2凹部113と、を有している。第1凹部112と嵌合軸部108との間には、第1Oリング111が介設され、冷却液をシールする共に径方向の振動を吸収するようにしている。第2凹部113は、動力軸部109と相補的形状を有し、動力軸部109の回転を第2凹部113に伝達可能に、且つ動力軸部109に対し第2凹部113が軸方向にスライド自在に接合している。なお、動力軸部109と第2凹部113とは、スプラインやセレーションの接合形態としてもよい。
また、第1凹部112と第2凹部113との間の環状段部114には、第2Oリング115(第2緩衝部材)が設けられている。接合凸部102に接合凹部101を接合すると、環状段部114と嵌合軸部108との間で第2Oリング115が押し潰される。これにより、冷却液がシールされる共に軸方向の振動が吸収される。同様に、本体シャフト部107と嵌合軸部108の間の環状段部116には、第3Oリング117(第2緩衝部材)が設けられている。接合凸部102に接合凹部101を接合すると、環状段部116(本体シャフト部107の端面)と接合凹部101の端面との間で第3Oリング117が押し潰される。これにより、冷却液がシールされる共に軸方向の振動が吸収される。
2つの切刃部21は、点対称に配設されているが、回転により振動が発生する。上記の実施形態では、第1Oリング111により径方向の振動を、第2Oリング115および第3Oリング117により軸方向の振動を、それぞれ吸収するようにしているため、作業者に違和感が生ずることがなく、且つビット部11の耐久性に影響を及ぼすこともなく、下穴Hを適切に研削することができる。なお、第2Oリング115および第3Oリング117の一方を省略してもよい。
なお、本実施形態では、切刃部21の個数を2つとしたが、3つ以上であってもよい。また、切刃部21の拡開を促進すべく、シャンク部23の先端に冷却液用のノズルを設け、切刃部21の抜止め部63に内側から冷却液を吹き付ける構成としてもよい。一方、冷却液に代えて、圧縮エアーや冷却ガスを用いる場合には、冷却液アタッチメント3に冷却液供給装置に代えて圧縮エアー供給装置(コンプレッサー等)を接続するか、或いは冷却液アタッチメント3に代えて、液化ガス等のガスボンベを搭載可能な冷却ガスアタッチメントを用いるようにする。さらに、本実施形態の切刃本体61では、ダイヤモンドの切刃を用いるようにしているが、ダイヤモンドの他、炭素工具鋼、合金工具鋼、高速度工具鋼、超硬合金、セラミック、サーメット、立方晶窒化ほう素等の切刃を用いてもよい。
1 穿孔装置、2 電動ドリル、3 冷却液アタッチメント、3a 回転軸、10,10A 拡径用ドリルビット、11,11A ビット部、12 シャフト部、21 切刃部、22 切刃保持部、23 シャンク部、32 シャフト内流路、34 ビット内流路、34a シャンク内流路、41 保持部本体、42 保持部受け、51 先端フランジ部、52 円筒保持部、53 円筒ねじ部、54 尖塔部、55 スリット部、61,84 切刃本体、62 リブ部、63 抜止め部、65 錘、71 太径嵌合部、73 切刃開口部、77 保持ピン、81 摺接ピン、82 スライド孔、85 スライド部、86 抜止め保持部、90 調整アタッチメント、101 接合凹部、102 接合凸部、111 第1Oリング、115 第2Oリング、117 第3Oリング、A コンクリート躯体、H 下穴、Ha 最奥部

Claims (2)

  1. 躯体に穿孔したアンカー用の下穴に挿入して用いられ、前記下穴の一部を研削により拡径するための拡径用ドリルビットであって、
    前記下穴の一部を研削する複数の切刃部と、
    前記複数の切刃部を、それぞれ平行移動するように径方向にスライド移動可能に保持する切刃保持部と、
    前記切刃保持部を支持するシャンク部と、を備え、
    前記複数の切刃部は、回転に伴う遠心力により、前記切刃保持部に対し径方向外側に拡開するようにスライド移動することを特徴とする拡径用ドリルビット。
  2. 前記各切刃部は、断面円環状に形成され、
    前記切刃保持部は、前記複数の切刃部を遊嵌状態で保持する複数の保持ピンを有していることを特徴とする請求項1に記載の拡径用ドリルビット。
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