JP6086750B2 - 拡径用ドリルビット - Google Patents

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Description

本発明は、主として、コンクリート等の躯体に穿孔した下穴の一部を拡径するための拡径用ドリルビットに関するものである。
従来、この種の拡径用ドリルビットとして、コンクリート等の躯体に穿孔したストレート形状の下穴に挿入して用いられ、下穴の最奥部を拡径するアンダーカットドリル装置が知られている(特許文献1参照)。
このアンダーカットドリル装置は、下穴に挿入される中空円筒状の筒体と、下穴の開口縁部に着座し、ベアリングを介して筒体を回転自在に支持する当て部材と、同軸上において筒体にスライド自在に係合し、筒体と一体回転するシャフトと、筒体の先端側に設けられ、外周面に4つのガイド溝を有する円錐台形状のコーン部と、シャフトの先端部に取り付けられ、各ガイド溝に係合する4つのアームと、4つアームの先端部外面に交互に設けた2つの切刃および2つのガイド部と、を備えている。
切刃およびガイド部は、シャフトを引き上げた状態で筒体の内側に位置している。下穴に挿入した筒体およびシャフトを一体回転させ、シャフトを下動させてゆくと、コーン部のガイド溝により4つのアームが下動しながら外側に開いてゆく。これにより、切刃が下穴の内周面を研削し、下孔の底部(最奥部)に拡径部を形成する。
特開2005−280243号公報
このような従来のアンダーカットドリル装置では、切刃を有するアームをコーン部の外周面でガイドする構造となっているため、コーン部を筒体で支持せざるを得ず、構造が極めて複雑になる問題があった。また、シャフトの外側にアーム、コーン部および筒体を配置する構造となるため、全体が太径となり、比較的細径の下穴に使用することができない問題があった。
本発明は、単純な構造で、細径の下穴にも対応可能な拡径用ドリルビットを提供することをその課題としている。
本発明の拡径用ドリルビットは、躯体に穿孔した下穴に挿入して用いられ、下穴の一部を研削により拡径するための拡径用ドリルビットであって、下穴に挿入され、シャンク部の先端部に切刃部を設けた複数の個別ビット部を有すると共に、複数の個別ビット部を環状に配置したビット部と、基端側で動力源側の回転軸に着脱自在に装着され、先端側でビット部を基部において同軸上に保持するホルダーシャフト部と、を備え、ホルダーシャフト部は、回転に伴う遠心力で、複数の個別ビット部の先端側が径方向外側に拡開するように、ビット部を保持し、複数の個別ビット部は、全体が断面円状の輪郭を為すようにそれぞれ円弧状断面に形成され、且つホルダーシャフト部に保持される係合基部が幅狭であって外側の円弧状段部を存して厚肉に形成され、ホルダーシャフト部は、各係合基部に外側から接触するアウターホルダおよび内側から接触するインナーホルダを有し、アウターホルダの内周面には、各円弧状段部が抜止め状態に掛け止めされる環状掛止め部が形成され、インナーホルダの外周面には、環状掛止め部に対峙し、各個別ビット部の拡開中心となる環状突起部が形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、ビット部を下穴に挿入した状態で、動力源を回転駆動させると、ホルダーシャフト部およびビット部が一体回転する。この回転により、ビット部を構成する複数の個別ビット部は、それぞれ遠心力を受け径方向外側に拡開する。すなわち、回転する複数の個別ビット部は、遠心力により径方向外側に拡開して、各個別ビット部の切刃部が下穴の一部を研削し拡径させる。この場合、複数の個別ビット部を遠心力で拡開させる構成であるため、構造を単純化することができる。また、下穴に挿入される複数の個別ビット部(ビット部)は、径方向に集約して配置することができると共に、従来技術のような外筒を必要としない。したがって、細径の下穴にも対応(拡径)させることができる。
また、各個別ビット部は、その円弧状段部がアウターホルダの環状掛止め部に掛け止めされるようにして、抜止め状態を維持する。また、拡開する各個別ビット部は、インナーホルダの環状突起部に接触する部分を中心に回動する。個別ビット部の係合基部は、インナーホルダの環状突起部により浮き上がった状態で保持され、この浮き上がり代が、各個別ビット部の回動のための空間となる。このように、複数の個別ビット部をその基部側を中心に円滑に拡開させることができる。また、各切刃部は円弧状を為すため、拡開が進むに従って、各切刃部の研削部位が円弧状の周面全体から中間部分に移行する。すなわち、研削が進むに従って切刃部の摩擦抵抗が小さくなるため、研削を円滑に進めることができる。
この場合、インナーホルダの外周面には、各個別ビット部の拡開に際し、各係合基部の側面をガイドする複数のガイド突起部が形成されていることが好ましい。
この構成によれば、複数のガイド突起部により、拡開(回動)する各個別ビット部を、回転反力(ねじれ)に抗して外側に拡開させることができる。
この場合、各個別ビット部の先端部には、錘が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、各個別ビット部に強い遠心力を作用させることができるため、下穴の研削を促進することができ、その拡径を短時間で行うことができる。
一方、ホルダーシャフト部に取り付けられ、下穴の開口縁部に当接してビット部の下穴への挿入深さを調整可能な調整アタッチメントを、更に備えることが好ましい。
この構成によれば、調整アタッチメントにより、ビット部の下穴への挿入深さを調整することができ、下穴の任意の深さ位置に対し拡径を行うことができる。
一方、ホルダーシャフト部は、軸心部に冷却剤を供給するためのシャフト内流路を有し、ホルダーシャフト部に取り付けられると共にビット部の内側に配設され、シャフト内流路に連通する冷却剤パイプを、更に備えることが好ましい。
この構成によれば、シャフト内流路および冷却液パイプを介して、動力源側からビット部(複数の個別ビット部)の先端部(切刃部)に冷却剤を供給することができる。このため、下穴の拡径を円滑に且つ効率良く行うことができる。また、冷却剤パイプから放出する冷却剤により、個別ビット部に拡開力を作用させることができる。なお、冷却剤として、冷却液、圧縮エアー、冷却ガス等を用いることが好ましい。
実施形態に係る拡径用ドリルビットを穿孔装置に装着した状態の外観図である。 第1実施形態に係る拡径用ドリルビットの構造図である。 拡径用ドリルビットのビット部廻り(a)および各個別ビット部(b)の斜視図である。 拡径用ドリルビットの拡径動作を示す説明図である。 第1実施形態の変形例に係るビット部の構造図である。 第2実施形態に係る拡径用ドリルビットの構造図である。 第3実施形態に係る拡径用ドリルビットの構造図である。
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る拡径用ドリルビットについて説明する。この拡径用ドリルビットは、主として、アンカーを打ち込むためにコンクリートや石材等の躯体に形成した下穴に対し、その最深部を拡径するものであり、打ち込んだアンカーの引抜き強度を高め得るものである。ダイヤモンドコアドリル等で穿孔したストレート形状の下孔は、微小な軸ブレにより開口部側が広く奥側が狭く穿孔され、実質上、微小なテーパー形状となる。このため、打ち込んだアンカーに、地震等による大きな力が繰り返し加わると、経時的に引抜き強度が低下する。拡径用ドリルビットは、このようなアンカーの経時的な引抜き強度の低下を防止すべく、下穴と同様の作業要領で下穴の一部を拡径するものである。
図1は、拡径用ドリルビットを穿孔装置に装着した状態の外観図である。同図に示すように、穿孔装置1は、手持ちの電動ドリル2と、電動ドリル2に装着した冷却液アタッチメント3とを有し、この冷却液アタッチメント3に拡径用ドリルビット10が装着される。すなわち、拡径用ドリルビット10は、動力源を構成する穿孔装置1(電動ドリル2)の冷却液アタッチメント3における回転軸3aに着脱自在に装着して用いられる。
この回転軸3aには、冷却液の流路が形成される一方、冷却液アタッチメント3は、図外の冷却液供給装置が接続されており、冷却液は、この冷却液供給装置から冷却液アタッチメント3を介して拡径用ドリルビット10の先端部に供給される。実施形態の穿孔装置1では、冷却液アタッチメント3に穿孔用ドリルビット(例えば、ダイアモンドコアビット)を装着して下穴Hを穿孔した後、穿孔用ドリルビットに代えて拡径用ドリルビット10を装着し、下穴Hの最奥部Ha(穴底部)を拡径するようにしている。
図2は、第1実施形態に係る拡径用ドリルビット10の構造図である。同図に示すように、拡径用ドリルビット10は、先端部で下穴Hの拡径を行うビット部11と、基端側で穿孔装置1の回転軸3a(冷却液アタッチメント3)に着脱自在に装着され、先端側でビット部11を基部において同軸上に保持するホルダーシャフト部12と、を備えている。また、拡径用ドリルビット10は、同軸上においてホルダーシャフト部12の先端に設けられ、ビット部11内を先方に延びる冷却液パイプ13(冷却剤パイプ)を備えている。この拡径用ドリルビット10では、ビット部11を下穴Hに挿入した状態で、穿孔装置1により拡径用ドリルビット10を回転させることで、遠心力によりビット部11を拡開させる(図4参照)。
ホルダーシャフト部12は、穿孔装置1(冷却液アタッチメント3)に着脱自在に装着されるシャフト本体21と、同軸上においてシャフト本体21の先端から延びるホルダ取付部22と、同軸上においてホルダ取付部22の先端から延びるインナーホルダ23と、インナーホルダ23を囲繞した状態でホルダ取付部22に取り付けられたアウターホルダ24と、を有している。そして、インナーホルダ23とアウターホルダ24との間隙には、上記のビット部11がその基部において保持されている。
シャフト本体21は、その小口に窪入形成した雌ねじ部31を有し、この雌ねじ部31が、冷却液アタッチメント3の回転軸3aの雄ねじ部(図1参照)に螺合される。図示しないが、シャフト本体21にはスパナ用の工具掛け部が形成されており、ホルダーシャフト部12は、雌ねじ部31の部分で冷却液アタッチメント3、すなわち穿孔装置1に着脱自在に装着される。
シャフト本体21、ホルダ取付部22およびインナーホルダ23は、一体に形成されており、これらの軸心部には、冷却液用のシャフト内流路35が形成されている。シャフト内流路35は、基端側で冷却液アタッチメント3に連通すると共に、先端側で上記の冷却液パイプ13に連通している。ホルダーシャフト部12を冷却液アタッチメント3の回転軸3aに装着すると、このシャフト内流路25および冷却液パイプ13と、冷却液アタッチメント3とが連通し、冷却液アタッチメント3からの冷却液の通液が可能となる。
なお、冷却液パイプ13は、ホルダーシャフト部12(インナーホルダ23)と一体に形成してもよいし、インナーホルダ23に対しねじ込み等で固定する(別体)ようにしてもよい。また、冷却液パイプ13の先端は、冷却液が後述する切刃部53の内側に向かって放出される構造とすることが好ましい(詳細は、後述する)。なお、冷却液に代えて、圧縮エアーや冷却ガスを用いることも可能である(詳細は、後述する)。
ホルダ取付部22は、シャフト本体21より細径に形成され、且つシャフト本体21の先端からに先方に延在するように形成されている。ホルダ取付部22の外周面には雄ねじが形成され、この部分にアウターホルダ24が螺合している。
図2および図3に示すように、インナーホルダ23は、ホルダ取付部22より細径に形成され、且つホルダ取付部22から先方に延在するように形成されている。また、インナーホルダ23は、円筒状のインナー本体41と、インナー本体41の先端部外周面に突設した断面楔状の環状突起部42と、インナー本体41の外周面に突設した4つのガイド突起部43と、を有している。各ガイド突起部43は、軸方向に長い長円形に形成されており、4つのガイド突起部43は、周方向に均等に配置されている。詳細は後述するが、個別ビット部51の係合基部57は、その内面が環状突起部42に接触し、且つ隣接する2つのガイド突起部43に挟まれるように配設されている。
アウターホルダ24は、円筒状のアウター本体45と、アウター本体45の先端部内周面に突設した環状掛止め部46と、を有している。アウター本体45の基部側内周面には、雌ねじが形成されており、アウターホルダ24は、この部分でホルダ取付部22に着脱自在に螺合している。なお、図示しないが、アウター本体45の外周面には、アウターホルダ24を螺合するための工具掛け部が形成されている。
環状掛止め部46は、断面楔状に形成されており、アウター本体45の先端部において内側に突出している。詳細は後述するが、個別ビット部51の係合基部57に連なる円弧状段部58が、この環状掛止め部46に係合し、各個別ビット部51(ビット部11)の抜け止めが為されるようになっている。そして、ホルダ取付部22に装着したアウターホルダ24の環状掛止め部46は、インナーホルダ23の環状突起部42に対峙するように、軸方向において近傍に配設されている。
図2および図3に示すように、ビット部11は、複数(図示のものは、4つ)の個別ビット部51を環状に配置して構成されている。具体的には、ビット部11は、円筒状のシャンクの先端部に円筒状の切刃を設けたビットを、周方向に4分割した形態を有している。各個別ビット部51は、ホルダーシャフト部12に保持される1/4円弧断面のシャンク部52と、シャンク部52の先端部に設けた(溶着した)1/4円弧断面の切刃部53と、を有している(図3(b)参照)。すなわち、複数の個別ビット部51は、全体が断面円状の輪郭を為すようにそれぞれ円弧状断面に形成されている。このように構成された複数の個別ビット部51は、回転により生ずる遠心力により、各シャンク部52の基部を中心に拡開する。
図3に示すように、各シャンク部52は、軸方向に長く延在するシャンク部本体55と、シャンク部本体55の基端側に連なる係合基部57とで構成されている。係合基部57は、ホルダーシャフト部12に保持される部位であり、シャンク部本体55に対し幅狭に形成されている。これにより、4つの係合基部57が、アウターホルダ24に挿入可能となっている。
また、係合基部57は、シャンク部本体55に対し、外側に形成した円弧状段部58を存して厚肉に形成されている。この場合、複数の個別ビット部51が閉じた状態(非拡開状態)で、各シャンク部52の係合基部57がアウターホルダ24(アウター本体45)の内周面に接触し、拡開状態および非拡開状態を問わず、円弧状段部58がアウターホルダ24の環状掛止め部46に掛け止めされている。
一方、各係合基部57は、先端側内周面(ほぼ円弧状段部58の位置)において、インナーホルダ23の環状突起部42に接触すると共に、両側面がインナーホルダ23の2つのガイド突起部43に挟まれるように接触している。なお、係合基部57は、幅狭に形成したシャンク部本体55の基部に、円弧状段部58を構成する円弧状の部材を重ね、溶着して構成してもよい。
非拡開状態の複数の個別ビット部51は、各シャンク部52において、アウターホルダ24に抜止め状態で掛け止めされ、且つインナーホルダ23の先端部に接触している。また、インナー本体41と係合基部57との間には、環状突起部42の突出寸法分の間隙が生じている。この状態から、遠心力により拡開状態に移行すると、各シャンク部52は、環状突起部42を中心に且つガイド突起部43にガイドされて回動する。これにより、アウター本体45に接触していた係合基部57の基端側がインナー本体41側に移動し、シャンク部52(各個別ビット部51)の回動が許容される。
各切刃部53は、断面円弧状のダイヤモンドの切刃で構成されており、研削用のダイヤモンドは外周面にのみ設けられている。これにより、下穴Hの最奥部Ha内周面が研削され、所定の寸法に拡径される。なお、実施形態における下穴Hの拡径は、アンカーの抜け止めを目的とするものであるため、拡径寸法は微小であってもよい。したがって、切刃部53の移動を0.1〜2mm程度とすることが好ましい。また、この研削に際し切刃部53には、強い遠心力が作用することが好ましい。このため、切刃部53の内面には、錘61を設けることが好ましい(図3において、仮想線で示す)。錘61は、例えば鉛やタングステン等の比重の重いものとする。なお、シャンク部52の先端部には、錘61を設けることが好ましい。
各切刃部53は円弧状を為すため、拡開が進むに従って、その研削部位が円弧状の周面全体から中間部分に移行する(図4参照)。すなわち、研削が進むに従って切刃部53の摩擦抵抗が小さくなるため、研削を円滑に進めることができる。また、研削初期における研削抵抗を小さくすべく、切刃本体61の周方向の先端側(回転方向の先端側)は、面取り形状とすることが好ましい。なお、周方向において、4つの切刃部53が相互に接触している状態(初期状態)のこの部分の径は、下穴Hの径より0.5〜1.0mm程度細径に形成されており、ビット部11の下穴Hへの挿入が円滑に行えるようになっている。
次に、図1および図4を参照して、拡径用ドリルビット10による下穴Hの拡径作業について説明する。この拡径作業では、予め対象となるコンクリート躯体A等に下穴Hが形成されているものとする。なお、この場合のコンクリート躯体Aには、コンクリート製の外壁、内壁、スラブの他、基礎や梁等が含まれる。下穴Hは、例えば上記の穿孔装置1にダイアモンドコアビットを装着した穿孔作業により形成される。
拡径作業では、先ず穿孔装置1に拡径用ドリルビット10を装着し、そのビット部11を下穴Hに挿入する(図4(a)参照)。ビット部11を下穴Hの穴底に突き当てるように挿入したら、電動ドリル2を駆動して拡径用ドリルビット10を回転させる。また同時に或いは相前後して、シャフト内流路35および冷却液パイプ13を介して、切刃部53に冷却液を供給する。
拡径用ドリルビット10が回転すると、4つの個別ビット部51に遠心力が作用し、4つの個別ビット部51を外側に拡開してゆく(図4(b)参照)。また、冷却液パイプ13から放出された冷却液も、4つの切刃部53の内側部分で放射状に広がり、個別ビット部51の拡開を促進する。これにより、回転する各個別ビット部51の切刃部53が、下穴Hの内面を研削し、下穴Hの最奥部Haが拡径されてゆく。そして、拡径用ドリルビット10の回転開始から所定時間(10〜20秒程度)経過すると、最奥部Haが所定の寸法に拡径される。
ここで(所定時間経過後)作業者は、電動ドリル2をOFFし、拡径用ドリルビット10の回転を停止させる(冷却液の供給も停止)。これにより、4つの個別ビット部51に作用する遠心力がゼロとなり、4つの個別ビット部51が閉じるように初期状態に戻る。続いて、ビット部11を引き抜くようにする。
このように、第1実施形態では、ビット部11を下穴Hに挿入して所定時間回転させだけで、下穴Hの最奥部Haを簡単且つ短時間で拡径することができる。また、複数の個別ビット部51を、遠心力により拡開される構成であるため、装置構成を単純化することができる。さらに、複数の個別ビット部51は、径方向に集約して配置することができるため、細径の下穴Hに対しても適切な拡径を行うことができる。
図5は、第1実施形態の変形例に係るビット部11Aを表している。同図に示すように、このビット部11Aでは、4つの個別ビット部51が、相互のシャンク部52において噛み合うように構成されている。すなわち、各シャンク部52の両側面52aが凹凸形状に形成され、隣接するシャンク部52同士が側面52aにおいて相互に噛み合っている。
このような構成では、シャンク部52同士が噛み合うことにより、回転する4つの個別ビット部51に生ずる捻り変形が抑制され、回転に対するビット部11Aの強度アップを図ることができる。
次に、図6を参照して、第2実施形態に係る拡径用ドリルビット10Aにつき、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。同図に示すように、この拡径用ドリルビット10Aは、下穴Hの最奥部Haを拡径する第1実施形態の拡径用ドリルビット10と異なり、下穴Hの任意の深さ位置を拡径することを意図している。このため、第2実施形態の拡径用ドリルビット10Aは、ビット部11の下穴Hへの挿入深さを調整可能な調整アタッチメント70を、更に備えている。
調整アタッチメント70は、ホルダーシャフト部12に螺合する円筒状のアタッチメント本体71と、アタッチメント本体71に隣接してホルダーシャフト部12に螺合する止めねじ部72と、アタッチメント本体71の先端部に設けた円環状の回転受容部73と、を有している。
シャフト本体31の外周面には、雄ねじが形成されており、これに対応してアタッチメント本体71の内周面および止めねじ部72の内周面には、雌ねじが形成されている。シャフト本体31に対し、止めねじ部72を深く螺合した後、アタッチメント本体71を螺合してビット部11の下穴Hへの挿入深さを調整する。調整が完了したら、アタッチメント本体71が緩まないように、止めねじ部72を戻してアタッチメント本体71に接するように締め付ける。なお、シャフト本体31の外周面には、挿入深さを指標する目盛を形成しておくことが好ましい。
回転受容部73は、例えばスラスト軸受で構成されており、下穴Hの開口縁部に当接するようになっている。アタッチメント本体71および止めねじ部72は、ホルダーシャフト部12と共に回転するが、回転受容部73によりこの回転を縁切りし、下穴Hの開口縁部に回転動力が伝達しないように構成されている。
このような構成では、アタッチメント本体71のねじ込み深さにより、ビット部11の下穴Hへの挿入深さを調整することができる。すなわち、下穴Hの任意の深さ位置に拡径部分を形成することができる。
次に、図7を参照して、第3実施形態に係る拡径用ドリルビット10Bにつき、主に第1実施形態と異なる部分について説明する。同図に示すように、この拡径用ドリルビット10Bでは、そのビット部11Bが、円筒状のシャンクの先端部に円筒状の切刃を設けたビットを、軸方向の複数の切込みにより、基部を残して周方向に複数分割した形態を有している。すなわち、ビット部11Bは、円筒状基部81と、円筒状基部81から延び、割りスリット82を存して環状に配置した4つのシャンク部52と、シャンク部52の先端部に形成した4つの切刃部53と、を有している。また、円筒状基部81の外側には、ビット部11Bをホルダーシャフト部12に取り付けるための雄ねじ部材83が溶着されている。さらに、各シャンク部52は、遠心力で拡開可能となるようにばね性を有している。
一方、この場合のホルダーシャフト部12は、インナーホルダ33およびアウターホルダ34が無く、シャフト本体31と、これに連なると共に内周面に雌ねじを形成したビット取付部85と、を有している。そして、ビット部11Bは、その基部に設けた雄ねじ部材83により、ホルダーシャフト部12のビット取付部85に着脱自在に螺合される。
このような構成では、拡径用ドリルビット10Bの回転に伴う遠心力により、各シャンク部52が撓んで4つの個別ビット部51が拡開される。この状態から回転を停止すると、4つの個別ビット部51が自身のばね性により閉じる。この場合には、円筒状基部81により、複数の個別ビット部51の一体性が維持され、複数の個別ビット部51を円滑に開閉させることができる。もっとも、シャンク部52を別体とし、雄ねじ部材83によりこれを一体化するようにしてもよい。
なお、本実施形態では、個別ビット部51の個数を4つとしたが、2つ、3つ、5つ等であってもよい。また、各シャンク部52を円弧状断面としたが、矩形断面等であってもよい。さらに、冷却液に代えて、圧縮エアーや冷却ガスを用いる場合には、冷却液アタッチメント3に冷却液供給装置に代えて圧縮エアー供給装置(コンプレッサー等)を接続するか、或いは冷却液アタッチメント3に代えて、液化ガス等のガスボンベを搭載可能な冷却ガスアタッチメントを用いるようにする。
1 穿孔装置、2 電動ドリル、3 冷却液アタッチメント、3a 回転軸、10,10A,10B 拡径用ドリルビット、11,11A,11B ビット部、12 ホルダーシャフト部、13 冷却液パイプ、21 シャフト本体、22 ホルダ取付部、23 インナーホルダ、24 アウターホルダ、35 シャフト内流路、42 環状突起部、43 ガイド突起部、46 環状掛止め部、51 個別ビット部、52 シャンク部、53 切刃部、57 係合基部、58 円弧状段部、61 錘、70 調整アタッチメント、81 円筒状基部、A コンクリート躯体、H 下穴、Ha 最奥部

Claims (5)

  1. 躯体に穿孔した下穴に挿入して用いられ、前記下穴の一部を研削により拡径するための拡径用ドリルビットであって、
    前記下穴に挿入され、シャンク部の先端部に切刃部を設けた複数の個別ビット部を有すると共に、複数の前記個別ビット部を環状に配置したビット部と、
    基端側で動力源側の回転軸に着脱自在に装着され、先端側で前記ビット部を基部において同軸上に保持するホルダーシャフト部と、を備え、
    前記ホルダーシャフト部は、回転に伴う遠心力で、複数の前記個別ビット部の先端側が径方向外側に拡開するように、前記ビット部を保持し、
    複数の前記個別ビット部は、全体が断面円状の輪郭を為すようにそれぞれ円弧状断面に形成され、且つ前記ホルダーシャフト部に保持される係合基部が幅狭であって外側の円弧状段部を存して厚肉に形成され、
    前記ホルダーシャフト部は、前記各係合基部に外側から接触するアウターホルダおよび内側から接触するインナーホルダを有し、
    前記アウターホルダの内周面には、前記各円弧状段部が抜止め状態に掛け止めされる環状掛止め部が形成され、
    前記インナーホルダの外周面には、前記環状掛止め部に対峙し、前記各個別ビット部の拡開中心となる環状突起部が形成されていることを特徴とする拡径用ドリルビット。
  2. 前記インナーホルダの外周面には、前記各個別ビット部の拡開に際し、前記各係合基部の側面をガイドする複数のガイド突起部が形成されていること特徴とする請求項1に記載の拡径用ドリルビット。
  3. 前記各個別ビット部の先端部には、錘が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の拡径用ドリルビット。
  4. 前記ホルダーシャフト部に取り付けられ、前記下穴の開口縁部に当接して前記ビット部の前記下穴への挿入深さを調整可能な調整アタッチメントを、更に備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の拡径用ドリルビット。
  5. 前記ホルダーシャフト部は、軸心部に冷却剤を供給するためのシャフト内流路を有し、
    前記ホルダーシャフト部に取り付けられると共に前記ビット部の内側に配設され、前記シャフト内流路に連通する冷却剤パイプを、更に備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の拡径用ドリルビット。
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