<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態を図1乃至図3に沿って説明する。まず、本自動変速機1の概略構成について図1に沿って説明する。図1に示すように、例えばFRタイプ(フロントエンジン・リヤドライブ)の車両に用いて好適な自動変速機1は、内燃エンジン(E/G)101のクランク軸(出力軸)101aに接続し得る自動変速機1の入力軸11を有しており、該入力軸11の軸方向を中心としてトルクコンバータ(流体伝動装置)7と、変速機構2とを備え、内燃エンジン101から伝達される回転動力を変速自在になっている。なお、本実施の形態では、FRタイプの車両を適用しているが、これには限らず、例えばFFタイプ(フロントエンジン・フロントドライブ)の車両であってもよい。
トルクコンバータ7は、内燃エンジン101のクランク軸101aと変速機構2の入力軸12との間の動力伝達経路に配置され、自動変速機1の入力軸11に接続されたポンプインペラ7aと、作動流体を介して該ポンプインペラ7aの回転が伝達されるタービンランナ7bとを有しており、該タービンランナ7bは、入力軸11と同軸上に配設された変速機構2の入力軸12に接続されている。また、トルクコンバータ7には、トルクコンバータ7の入出力回転をロックアップし得るロックアップクラッチ10が備えられており、このロックアップクラッチ10が係合されると、自動変速機1の入力軸11の回転が変速機構2の入力軸12に直接伝達される。
変速機構2には、入力軸12(及び中間軸13)上において、プラネタリギヤDPと、プラネタリギヤユニットPUとが備えられている。プラネタリギヤDPは、サンギヤS1、キャリヤCR1、及びリングギヤR1を備えており、該キャリヤCR1に、サンギヤS1に噛合するピニオンP1及びリングギヤR1に噛合するピニオンP2を互いに噛合する形で有している所謂ダブルピニオンプラネタリギヤである。
プラネタリギヤDPのサンギヤS1は、例えばミッションケース3に一体的に固定されているボス部3bに接続されて回転が固定されている。ボス部3bは、オイルポンプボディ3aから延設されている。また、キャリヤCR1は、入力軸12に接続されて、該入力軸12と一体回転(以下、この回転を「入力回転」という。)すると共に、第4クラッチC4に接続されている。更に、リングギヤR1は、固定されたサンギヤS1と入力回転するキャリヤCR1とにより、入力回転が減速された減速回転になると共に、第1クラッチC1及び第3クラッチC3に接続されている。尚、第1クラッチC1は、他のクラッチやブレーキと共に伝達経路を形成している。
プラネタリギヤユニットPUは、4つの回転要素としてサンギヤS2、サンギヤS3、キャリヤCR2(CR3)、及びリングギヤR3(R2)を有し、該キャリヤCR2に、サンギヤS2及びリングギヤR3に噛合するロングピニオンP4と、該ロングピニオンP4及びサンギヤS3に噛合するショートピニオンP3とを互いに噛合する形で有している所謂ラビニヨ型プラネタリギヤである。
プラネタリギヤユニットPUのサンギヤS2は、第1ブレーキ(第1係合要素)B1に接続されてミッションケース3に対して固定自在となっていると共に、第4クラッチC4及び第3クラッチC3に接続されて、第4クラッチC4を介してキャリヤCR1の入力回転が、第3クラッチC3を介してリングギヤR1の減速回転が、それぞれ入力自在となっている。また、サンギヤS3は、第1クラッチC1に接続されており、リングギヤR1の減速回転が入力自在となっている。
更に、キャリヤCR2は、中間軸13を介して入力軸12の回転が入力される第2クラッチC2に接続されて、該第2クラッチC2を介して入力回転が入力自在となっており、また、第2ブレーキ(第2係合要素)B2に接続されて、第2ブレーキB2を介して回転が固定自在となっている。そして、リングギヤR3は、不図示の駆動車輪に回転を出力する出力軸15に接続されている。
以上のように構成された自動変速機1は、図1のスケルトン図に示す各クラッチC1〜クラッチC4、ブレーキB1及びブレーキB2が、図2の係合表に示す組み合わせで係脱されることにより、ドライブ(D)レンジ(ポジション)の前進1速段(1st)〜前進8速段(8th)、リバース(R)レンジの後進1速段(R)、パーキング(P)レンジ、ニュートラル(N)レンジがそれぞれ達成される。尚、第2ブレーキB2は、少なくとも前進1速段で係合されると共にNレンジで係合可能で、かつ前進高速段では解放される係合要素である。
上述した自動変速機1は、制御部(ECU)100の電気的な制御信号により、油圧制御装置20で給排される油圧によって制御される。ECU20は、例えば、CPUと、処理プログラムを記憶するROMと、データを一時的に記憶するRAMと、入出力ポートと、通信ポートとを備えており、油圧制御装置20の各ソレノイドバルブへの制御信号等、各種の信号を出力ポートから出力するようになっている。
ついで、上述した自動変速機1の油圧制御装置20の構成について、図3に基づいて説明する。なお、本実施形態においては、各切換えバルブのスプールの位置を説明するために、図中の右半分の位置を「右半位置」、左半分の位置を「左半位置」というものとする。
図3に示すように、油圧制御装置20は、レンジ切換え装置(レンジ圧切換え部)21、リニアソレノイドバルブ(第1ソレノイドバルブ)SL5、リニアソレノイドバルブ(第3ソレノイドバルブ)SL6、リニアソレノイドバルブ(第2ソレノイドバルブ、ロックアップ用ソレノイドバルブ)SLU、第1ブレーキB1の係合及び解放を行う油圧サーボ22、第2ブレーキB2の係合及び解放を行う油圧サーボ23、ソレノイドバルブSL、ロックアップリレーバルブ90、フェールセーフバルブ(カットバルブ)70などを備えている。
レンジ切換え装置21は、第1、第2信号ソレノイドバルブRS1、RS2、第1信号ソレノイドバルブRS1によって切り換えられる第1切換えバルブ30、第2信号ソレノイドバルブRS2によって切り換えられる第2切換えバルブ40等を有している。そして、運転者によって、非走行レンジであるパーキング(P)レンジ又はニュートラル(N)レンジ、走行レンジであるドライブ(D)レンジ及びリバース(R)レンジ等が選択されるシフトレバー(不図示)からのシフト信号に基づいて制御信号を発生させるECU100(図1参照)からの制御信号を基にして、第1、第2信号ソレノイドバルブRS1、RS2が制御される。
なお、本実施形態に係るレンジ切換え装置21においては、上記説明したシフト信号及び制御信号が、電気信号を介して行われるシフトバイワイヤ方式によるものであり、従ってシフトレバーによってレンジの選択を行うように説明したが、例えばボタン操作によってレンジの選択を行うように構成することもできる。
第1、第2信号ソレノイドバルブRS1、RS2は、内燃エンジン101により回転駆動される不図示のオイルポンプ(油圧発生源)で発生された油圧に基づいたライン圧PL(元圧)を調圧して制御圧を出力する。また、第1信号ソレノイドバルブRS1は、通電が遮断されたときに制御圧を出力しない所謂ノーマルクローズタイプであり、第2信号ソレノイドバルブRS2は、通電が遮断されたときに制御圧を出力する所謂ノーマルオープンタイプである。
第1切換えバルブ30は、図の左半位置である第1位置と図の右半位置である第2位置とに移動可能なスプール31と、スプール31を第1位置に付勢する付勢部材としてのスプリング32とを有している。また、第1切換えバルブ30は、入力ポート30a、第1出力ポート30b、第2出力ポート30c、制御ポート30d、複数のドレーンポートEX1、EX2を有している。
入力ポート30aは、ライン圧PLが供給される。第1出力ポート30bは、スプール31の第1位置(左半位置)にて入力ポート30aと連通し、かつ第2位置(右半位置)にて入力ポート30aとの連通が遮断される。第2出力ポート30cは、スプール31の第1位置(左半位置)にて入力ポート30aとの連通が遮断され、かつ第2位置(右半位置)にて入力ポート30aと連通する。また、スプール31の第1位置にて、第2出力ポート30cとドレーンポートEX2とが連通して、第2出力ポート30c内の油がドレーンされる。また、スプール31の第2位置にて、第1出力ポート30bとドレーンポートEX1とが連通して、第1出力ポート30b内の油がドレーンされる。制御ポート30dは、第1信号ソレノイドバルブRS1から出力された制御圧が入力され、入力された制御圧がスプール31に作用する。
第2切換えバルブ40は、図の左半位置である第1位置と図の右半位置である第2位置とに移動可能なスプール41と、スプール41を第1位置に付勢する付勢部材としてのスプリング42とを有している。また、第2切換えバルブ40は、第1入力ポート40a、第2入力ポート40b、第1出力ポート40c、第2出力ポート40d、制御ポート40e、ドレーンポートEX3を有している。
第1入力ポート40aは、第1切換えバルブ30の第1出力ポート30bに接続され、第2入力ポート40bは、第1切換えバルブ30の第2出力ポート30cに接続される。第1出力ポート40cは、スプール41の第1位置(左半位置)にて第1入力ポート40aと連通し、かつ第2位置(右半位置)にて第1入力ポート40aとの連通が遮断される。第2出力ポート40dは、スプール41の第1位置(左半位置)にて第2入力ポート40bとの連通が遮断され、かつ第2位置(右半位置)にて第2入力ポート40bと連通する。また、スプール41の第1位置にて、第2出力ポート40dとドレーンポートEX3とが連通して、第2出力ポート40d内の油がドレーンされる。また、スプール41の第2位置にて、第1出力ポート40cとドレーンポートEX3とが連通して、第1出力ポート40c内の油がドレーンされる。制御ポート40eは、第2信号ソレノイドバルブRS2から出力された制御圧が入力され、入力された制御圧がスプール41に作用する。
運転者が走行レンジであるDレンジに操作した場合、第1信号ソレノイドバルブRS1及び第2信号ソレノイドバルブRS2がそれぞれOFFとなることで、第1切換えバルブ30及び第2切換えバルブ40がそれぞれ第1位置(左半位置)に切り換わる。すると、第1切換えバルブ30の入力ポート30aに供給されたライン圧PLは、調圧されて第1出力ポート30bから出力され、第2切換えバルブ40の第1入力ポート40aに供給される。そして、第2切換えバルブ40の第1出力ポート40cからDレンジ圧(走行レンジ圧)が出力される。
一方、運転者がRレンジに操作した場合、第1信号ソレノイドバルブRS1及び第2信号ソレノイドバルブRS2がそれぞれONとなることで、第1切換えバルブ30及び第2切換えバルブ40がそれぞれ第2位置(右半位置)に切り換わる。すると、後述する第2実施形態の図5に示すように、第1切換えバルブ30の入力ポート30aに供給されたライン圧PLは、調圧されて第2出力ポート30cから出力され、第2切換えバルブ40の第2入力ポート40bに供給される。そして、第2切換えバルブ40の第2出力ポート40dからRレンジ圧が出力される。
このように出力されるDレンジ圧又はRレンジ圧は、各クラッチやブレーキの油圧サーボにリニアソレノイドバルブなどを介して供給され、上述したような、Dレンジの前進1速段(1st)〜前進8速段(8th)、Rレンジの後進1速段(R)がそれぞれ達成される。
また、運転者がDレンジから非走行レンジであるNレンジに操作した場合、第1信号ソレノイドバルブRS1がOFF、第2信号ソレノイドバルブRS2がONとなることで、第1切換えバルブ30が第1位置(左半位置)、第2切換えバルブ40が第2位置(右半位置)に切り換わる。すると、第1切換えバルブ30の入力ポート30aに供給されたライン圧PLは、第1出力ポート30bから出力され、第2切換えバルブ40の第1入力ポート40aに供給される。ここで、第2切換えバルブ40は、第1入力ポート40aと第1出力ポート40cとの連通が遮断されており、第1出力ポート40cとドレーンポートEX3とが連通しているため、後述するリニアソレノイドバルブSL5に供給されていたDレンジ圧が、第1出力ポート40cを介してドレーンポートEX3から排出され、Dレンジ圧が非出力とされる。
また、運転者がDレンジから非走行レンジであるPレンジに操作した場合、第1信号ソレノイドバルブRS1がON、第2信号ソレノイドバルブRS2がOFFとなることで、第1切換えバルブ30が第2位置(右半位置)、第2切換えバルブ40が第1位置(左半位置)に切り換わる。すると、第1切換えバルブ30の入力ポート30aに供給されたライン圧PLは、第2出力ポート30cから出力され、第2切換えバルブ40の第2入力ポート40bに供給される。ここで、第2切換えバルブ40は、第2入力ポート40bと第2出力ポート40dとの連通が遮断されており、第1出力ポート40cと第1入力ポート40aとが連通している。また、第1入力ポート40aと接続される第1切換えバルブ30の第1出力ポート30bは、ドレーンポートEX1と連通している。このため、リニアソレノイドバルブSL5に供給されていたDレンジ圧が、第1出力ポート40c、第1入力ポート40a、第1出力ポート30bを介してドレーンポートEX1から排出され、Dレンジ圧が非出力とされる。
なお、第1信号ソレノイドバルブRS1及び第2信号ソレノイドバルブRS2が、断線などによりオフフェールした場合、第1信号ソレノイドバルブRS1がノーマルクローズからなり、第2信号ソレノイドバルブRS2がノーマルオープンからなるため、レンジ切換え装置21はNレンジとなり、レンジ切換え装置21からDレンジ圧もRレンジ圧も出力されない。
リニアソレノイドバルブSL5は、Dレンジ圧を入力する入力ポートSL5aと、通電された際にDレンジ圧を調圧して油圧サーボ22に出力する出力ポートSL5bと、ドレーンポートEX4とを有している。そして、Dレンジに切り換えられ、前進2速段又は前進8速段の何れかを形成する場合に通電されて、油圧サーボ22にDレンジ圧を調圧しつつ供給して第1ブレーキB1を係合させる。一方、前進2速段及び前進8速段以外の変速段あるいはレンジに切り換えられた場合には、油圧サーボ22からDレンジ圧を調圧しつつドレーンポートEX4から排出して第1ブレーキB1を解放する。
リニアソレノイドバルブSLUは、ライン圧PLを入力する入力ポートSLUaと、通電された際にライン圧PLを調圧して出力する出力ポートSLUbと、ドレーンポートEX5とを有している。出力ポートSLUbは、ロックアップリレーバルブ(ロックアップ制御用バルブ)90に接続されている。
ロックアップリレーバルブ90は、ロックアップクラッチ10の入力ポート10aに接続され、ロックアップリレーバルブ90からロックアップ圧が給排されることで、ロックアップクラッチ10の係合及び解放を行う。即ち、ロックアップリレーバルブ90は、入力ポート91と、出力ポート92、93とを備え、供給された油圧をロックアップクラッチ10に供給可能で、ロックアップクラッチ10を係合させる第1状態と、ロックアップクラッチ10を解放させる第2状態とに切り換え可能である。
具体的には、ロックアップリレーバルブ90は、ソレノイドバルブSLからの油圧の出力又は非出力により、供給された油圧をロックアップクラッチ10を係合させる係合圧として出力する第1状態(L−ON)と、供給された油圧をロックアップクラッチ10に対して非供給としてロックアップクラッチ10を解放させる第2状態(L−OFF)とに切り換え可能である。ロックアップリレーバルブ90は、ソレノイドバルブSLから油圧が出力された場合に、入力ポート91と出力ポート92とが連通する第1状態に、ソレノイドバルブSLから油圧が非出力となった場合に、入力ポート91と出力ポート93とが連通する第2状態に切り換えられる。また、出力ポート92は、ロックアップクラッチ10の作動油室の入力ポート10aに接続されている。
本実施形態では、リニアソレノイドバルブSLUの出力ポートSLUbとロックアップリレーバルブ90の入力ポート91とが接続されている。即ち、リニアソレノイドバルブSLUは、ロックアップリレーバルブ90に油圧を供給可能である。したがって、リニアソレノイドバルブSLUから出力されロックアップリレーバルブ90に供給された油圧は、ロックアップリレーバルブ90が第1状態である際には、ロックアップクラッチ10を係合させる係合圧として出力される。なお、図3では、ロックアップクラッチ10を多板クラッチとしたが、ロックアップクラッチ10は、単板クラッチであっても良い。リニアソレノイドバルブSL5とリニアソレノイドバルブSLUとは、それぞれ、通電が遮断されたときに油圧を出力しない、所謂ノーマルクローズからなる。
ここで、上述したようなレンジ切換え装置21とリニアソレノイドバルブSL5との間には、第1油路50aが配置されている。即ち、第1油路50aは、レンジ切換え装置21の第2切換えバルブ40の第1出力ポート40cと、リニアソレノイドバルブSL5の入力ポートSL5aとを連通している。このため、レンジ切換え装置21から出力されたDレンジ圧は、この第1油路50aを通過してリニアソレノイドバルブSL5に供給される。
第1油路50aには、第1油路側オリフィス53を設けている。また、レンジ切換え装置21とリニアソレノイドバルブSL5との間には、第1油路50aと並列に、第1油路側オリフィス53を迂回する迂回油路50bを有する。即ち、迂回油路50bは、第1油路側オリフィス53の両側で、その両端部をそれぞれ第1油路50aに接続している。この迂回油路50bには、レンジ切換え装置21からリニアソレノイドバルブSL5に向かう方向には油圧が供給され、当該方向と反対方向には油圧が供給されない第1油路側逆止弁52を設けている。
このように、レンジ切換え装置21とリニアソレノイドバルブSL5との間に、第1油路側オリフィス53と第1油路側逆止弁52とを有する遅延機構51を設けることで、Dレンジ圧がリニアソレノイドバルブSL5に供給される場合よりも、Dレンジ圧がリニアソレノイドバルブSL5から排出される場合の方が圧力変化を遅くするようにしている。これにより、レンジ切換え装置21からリニアソレノイドバルブSL5に油圧が供給される場合には、主として第1油路側逆止弁52がある迂回油路50bを介して油圧がリニアソレノイドバルブSL5側に供給される。一方、油圧がリニアソレノイドバルブSL5からレンジ切換え装置21に排出される場合には、第1油路側逆止弁52により迂回油路50bからは油圧が排出されず、第1油路50aから第1油路側オリフィス53により流量が絞られて油圧がレンジ切換え装置21側に排出される。このように、この油圧が第1油路側オリフィス53を設けた第1油路50aを通ることで、油圧サーボ22内の油圧が急激に抜けてしまうことを防止できる。
また、第1油路50aのリニアソレノイドバルブSL5と遅延機構51との間には、第2油路60が接続されている。また、第2油路60は、ロックアップリレーバルブ90を介してリニアソレノイドバルブSLUにも接続されている。即ち、第2油路60は、ロックアップリレーバルブ90の出力ポート93に接続され、ロックアップリレーバルブ90の入力ポート91は、リニアソレノイドバルブSLUの出力ポートSLUbに接続されている。これと共に、第2油路60は、接続部61により第1油路50aに接続されている。したがって、リニアソレノイドバルブSLUによりライン圧PLを調圧して出力された油圧は、ロックアップリレーバルブ90が第2状態である際に、第2油路60、接続部61、第1油路50aを介してリニアソレノイドバルブSL5に供給可能である。このため、リニアソレノイドバルブSLUから出力された油圧は、ロックアップリレーバルブ90が第1状態である際には、ロックアップクラッチ10の係合圧として出力され、ロックアップリレーバルブ90が第2状態である際には、第2油路60などを介してリニアソレノイドバルブSL5に供給される。なお、この油圧は、接続部61から第1油路50aを介してレンジ切換え装置21側にも供給されるが、接続部61とレンジ切換え装置21との間には上述したような遅延機構51があり、第1油路側オリフィス53により流量が絞られるため、主としてリニアソレノイドバルブSL5に供給される。
また、第2油路60の第1油路50aとの接続部61とリニアソレノイドバルブSLUとの間には、第2油路側オリフィス62及び第2油路側逆止弁63を、接続部61側から順に設けている。第2油路側逆止弁63は、リニアソレノイドバルブSLUから第1油路50aに向かう方向には油圧が供給され、当該方向と反対方向には油圧が供給されないように構成されている。したがって、リニアソレノイドバルブSLUから供給される油圧は、第2油路側逆止弁63及び第2油路側オリフィス62を介して第1油路50a側に供給される。このように第2油路側オリフィス62を介することで、第1油路50aに供給される油圧の変動を低減できる。また、第2油路側逆止弁63により第1油路50aから第2油路60に油が供給されることを防止できる。
リニアソレノイドバルブSL6は、ライン圧PLを入力する入力ポートSL6aと、通電された際にライン圧PLを調圧して第2ブレーキB2の油圧サーボ23に出力する出力ポートSL6bと、ドレーンポートEX6とを有している。そして、後進1速段又は前進1速段(エンジンブレーキ時)の何れかを形成する場合に通電されて、油圧サーボ23にライン圧PLを調圧しつつ供給して第2ブレーキB2を係合させる。一方、それら以外の変速段あるいはレンジに切り換えられた場合には、油圧サーボ23から係合圧を調圧しつつドレーンポートEX6から排出して第2ブレーキB2を解放する。
フェールセーフバルブ70は、スプール71と、該スプール71を図中上方側に付勢するスプリング72とを備えていると共に、スプール71の下方に油室70aと、第1入力ポート70bと、第2入力ポート70cと、第3入力ポート70dと、第4入力ポート70eと、第1出力ポート70fと、第2出力ポート70gと、ドレーンポートEX7,8とを有している。
油室70aは、ライン圧PLが供給されており、後述するようにスプール71をスプリング72と同方向に付勢している。第1入力ポート70b及び第2入力ポート70cは、リニアソレノイドバルブSL6の出力ポートSL6bに連通され、リニアソレノイドバルブSL6から第2ブレーキB2の油圧サーボ23への供給圧が入力可能になっている。第1出力ポート70fは、油圧サーボ23に連通している。第3入力ポート70d及び第4入力ポート70eは、リニアソレノイドバルブSL5の出力ポートSL5bに連通され、リニアソレノイドバルブSL5から第1ブレーキB1の油圧サーボ22への供給圧が入力可能になっている。第2出力ポート70gは、油圧サーボ22に連通している。
スプール71には、リニアソレノイドバルブSL5,SL6の係合圧に対向してスプリング72の付勢力が作用し、スプール71が図中上方側の正常位置(左半位置)と図中下方側の遮断位置(右半位置)とに制御される。スプール71が正常位置であると、第1入力ポート70bが遮断され、第2入力ポート70cと第1出力ポート70fとが連通し、第3入力ポート70dと第2出力ポート70gとが連通し、第4入力ポート70eが遮断される。また、スプール71が遮断位置であると、第1入力ポート70bと第2入力ポート70cとが連通し、第1出力ポート70fがドレーンされ、第3入力ポート70d及び第4入力ポート70eがそれぞれ遮断され、第2出力ポート70gが遮断される。
スプール71は、上方から順に、小径ランド部71aと、第1の中径ランド部71bと、第2の中径ランド部71cと、第3の中径ランド部71dと、大径ランド部71eとを備えている。第1〜第3の中径ランド部71b〜71dはいずれも同径としている。スプール71の正常位置において、小径ランド部71a及び第1の中径ランド部71bの間には、第1入力ポート70bが連通している。また、スプール71の正常位置において、第3の中径ランド部71d及び大径ランド部71eの間には、第4入力ポート70eが連通している。油室70aでのスプール71の径は、小径ランド部71aの径と同等に設定されている。これにより、油室70aにライン圧PLが供給される場合は、第1入力ポート70b及び第4入力ポート70eに係合圧が入力された場合に、スプール71はスプリング72に抗して正常位置から遮断位置に切り換わるようになっている。即ち、このフェールセーフバルブ70では、第1ブレーキB1の係合圧及び第2ブレーキB2の係合圧が入力される場合に、第2ブレーキB2の係合圧を供給可能な正常位置から第2ブレーキB2の係合圧の供給を遮断する遮断位置に切り換わる。
次に、上述した油圧制御装置20の動作について説明する。例えば、車両の走行中あるいは停止中に、DレンジからNレンジに切り換えられた際に(運転者による切り換えの他、ECU100の判断による自動的な切り換えも含む)、リニアソレノイドバルブSLUが油圧を出力し、この油圧を第2油路60を介してリニアソレノイドバルブSL5に供給可能である。即ち、リニアソレノイドバルブSLUに供給されるライン圧PLは、内燃エンジン101の駆動中に発生しているため、Nレンジ又はPレンジでも発生している。したがって、DレンジからNレンジに切り換えられた際に、制御部100が、リニアソレノイドバルブSLUにこのライン圧PLを調圧して出力させる。
ここで、例えば、車両を駐車する際などに、DレンジからNレンジ或いはNレンジからRレンジ、更にはこれらの逆方向にレンジを切り換える所謂ガレージシフトを行うような低車速の場合、内燃エンジン101の停止を懸念して、ロックアップクラッチ10を非係合とする。このため、ロックアップリレーバルブ90は第2状態となっており、リニアソレノイドバルブSLUから出力された油圧は、ロックアップリレーバルブ90を介して第2油路60に供給され、接続部61、第1油路50aを介してリニアソレノイドバルブSL5に供給され、前進2速段を利用したガレージシフトが可能になる。
また、リニアソレノイドバルブSLUは、NレンジからDレンジ又はRレンジに切り換えられるまで、油圧を出力する。ここで、リニアソレノイドバルブSL5は、DレンジからNレンジへの切り換えにより、入力ポートSL5aと出力ポートSL5bとの連通を徐々に遮断しつつ、出力ポートSL5bをドレーンポートEX4に徐々に連通させる切換え動作を行う。この際、レンジ切換え装置21からDレンジ圧が出力されなくなるため、何ら対策をしなければ、油圧サーボ22内の油圧が急激に抜けて第1ブレーキB1が急解放されてショックが生じてしまう。このため、本実施形態では、Nレンジに切換後、リニアソレノイドバルブSLUからリニアソレノイドバルブSL5に油圧を供給するようにして、油圧サーボ22内の油圧が急激に抜けて第1ブレーキB1が急解放されてショックが生じることを軽減している。
一方、フェールセーフバルブ70は、通常はスプール71が正常位置であり、リニアソレノイドバルブSL5から出力された係合圧は、第3入力ポート70dから第2出力ポート70gを抜けて第1ブレーキB1の油圧サーボ22に供給される。また、リニアソレノイドバルブSL5とは同時に作動しないリニアソレノイドバルブSL6から出力された係合圧は、第2入力ポート70cから第1出力ポート70fを抜けて第2ブレーキB2の油圧サーボ23に供給される。
ここで、例えば、車両のNレンジ時の高速走行(惰性走行)中に、リニアソレノイドバルブSL6が係合圧を出力し続けるフェールを発生したとする。この場合、例えば、第1クラッチC1が係合されていた場合に第2ブレーキB2が係合されてしまうと、エンジンブレーキが作用してしまい、車両に急減速を発生してしまう可能性がある。そこで、本実施形態では、Nレンジ時に、リニアソレノイドバルブSLUからリニアソレノイドバルブSL5を介してフェールセーフバルブ70に係合圧を入力するようにしている。この場合、係合圧は第1ブレーキB1の油圧サーボ22に供給されるが、第1ブレーキB1が係合してもNレンジを形成することは可能である。
そして、Nレンジ時にリニアソレノイドバルブSL5からフェールセーフバルブ70に係合圧が入力されることにより、フェールしたリニアソレノイドバルブSL6から同時に係合圧が供給されると、スプリング72及び油室70aのライン圧PLに抗してスプール71が押し下げられて正常位置から遮断位置に切り換えられる。即ち、この油圧制御装置20では、リニアソレノイドバルブSL6が第2ブレーキB2の係合圧を供給し続けるフェールを発生した場合に、リニアソレノイドバルブSL5及びリニアソレノイドバルブSLUによって第1ブレーキB1の係合圧を出力することによりフェールセーフバルブ70を遮断位置に切り換える。
以上説明したように、本実施形態の自動変速機1の油圧制御装置20によれば、第1ブレーキB1の係合圧及び第2ブレーキB2の係合圧が入力される場合に、第2ブレーキB2の係合圧を供給可能な正常位置から第2ブレーキB2の係合圧の供給を遮断する遮断位置に切り換わるフェールセーフバルブ70を備えている。このため、例えば、第2ブレーキB2の係合圧がフェールにより供給され続けてしまった場合に、リニアソレノイドバルブSL5及びリニアソレノイドバルブSLUによって第1ブレーキB1の係合圧を供給することによりフェールセーフバルブ70を切り換えて、第2ブレーキB2を解放することができる。これにより、リニアソレノイドバルブSL6から油圧サーボ23への油圧供給が遮断されるので、意図しない変速段が形成されてしまうことが防止される。
また、本実施形態の自動変速機1の油圧制御装置20によれば、DレンジからNレンジに切り換えられた際に、リニアソレノイドバルブSLUにより油圧をリニアソレノイドバルブSL5に供給可能であるため、アキュムレータを設けることなく、DレンジからNレンジに切り換えられた際のショックを軽減できる。そして、このようなショックを軽減するためのアキュムレータを設ける必要がないため、装置の小型化を図れる。
また、従来のようにアキュムレータを使用した構造の場合、NレンジからDレンジへの切り換え時の各クラッチやブレーキへの油圧充填の際に、アキュムレータを容積変化させるため、応答性に対して不利である。これに対して本実施形態の場合には、アキュムレータがないため、NレンジからDレンジへの切り換え時の各クラッチやブレーキへの油圧充填の応答性を向上させられる。
また、リニアソレノイドバルブSLUからリニアソレノイドバルブSL5に油圧を供給する第2油路60は、リニアソレノイドバルブSL5と遅延機構51との間に接続するため、リニアソレノイドバルブSLUからの油圧を主としてリニアソレノイドバルブSL5に供給できる。
また、本実施形態の自動変速機1の油圧制御装置20によれば、内燃エンジン101のクランク軸101aと入力軸12との間の動力伝達経路に配置されるトルクコンバータ7のロックアップクラッチ10の係合圧を調圧するリニアソレノイドバルブSLUを利用して、Nレンジ時にリニアソレノイドバルブSL5に元圧を供給している。このため、ロックアップクラッチ10を係合させる既存のリニアソレノイドバルブSLUを共用してリニアソレノイドバルブSL5に油圧を供給するようにしているため、第2油路60を設けるだけで、新たにバルブを設ける必要がない。したがって、装置の大型化を抑制できると共に、低コストで上述したような油圧制御装置20を得られる。
なお、図3に示した構成の場合、リニアソレノイドバルブSLUは、ロックアップリレーバルブ90を介してロックアップクラッチ10に直接油圧を供給している。但し、リニアソレノイドバルブSLUは、ロックアップクラッチ10の切り換えを行うロックアップコントロールバルブ(ロックアップ制御用バルブ)を制御するものであっても良い。例えば、2本の油路によりトルクコンバータ7及びロックアップクラッチ10を含む装置内に油圧を供給し、ロックアップコントロールバルブにより油圧の循環方向を切り換えることでロックアップクラッチ10の係合と解放とを行う構成がある。この構成では、ライン圧などの油圧がロックアップコントロールバルブにより調圧されて、2本の油路に供給される。そして、ロックアップコントロールバルブがリニアソレノイドバルブSLUにより制御されることで、油圧の循環方向の切り換えが行われる。具体的には、リニアソレノイドバルブSLUから油圧が出力された場合に、ロックアップコントロールバルブが第1状態に切り換わり、ロックアップクラッチ10を係合させる。一方、リニアソレノイドバルブSLUからの油圧が非出力となった場合に、ロックアップコントロールバルブが第2状態に切り換わり、ロックアップクラッチ10を解放させる。
このような構成では、ロックアップクラッチ10の非係合時にロックアップコントロールバルブを他の油圧で切り換わらないようにロックしておけば、リニアソレノイドバルブSLUからの油圧をリニアソレノイドバルブSL5に供給できる。具体的には、リニアソレノイドバルブSLUからロックアップコントロールバルブに油圧が非出力となった場合に、ロックアップコントロールバルブがロックアップクラッチ10を解放させる状態(第2状態)に維持されるようにすれば、リニアソレノイドバルブSLUからの油圧をリニアソレノイドバルブSL5に供給できる。具体的な構成としては、例えば、ロックアップコントロールバルブに対して、リニアソレノイドバルブSLUからの油圧に対向するように他のソレノイドバルブから油圧を供給できるよう構成することができる。したがって、この場合でも、リニアソレノイドバルブSLUを、上述と同様に、DレンジからNレンジなどに切り換える際にリニアソレノイドバルブSL5に油圧を供給するバルブとしても使用できる。
<第2の実施形態>
第2の実施形態を図4に沿って説明する。本実施形態では、Nレンジ時にリニアソレノイドバルブSL5に元圧を供給するソレノイドバルブをリニアソレノイドバルブ(第2ソレノイドバルブ)SRとした点で、第1の実施形態と構成を異にするが、その他の構成及び作用は、上述の第1の実施形態と同様であるため、以下、同じ構成には同じ符号を付してその説明を省略又は簡略にし、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
本実施形態の油圧制御装置120は、レンジ切換え装置21、リニアソレノイドバルブSL5、SL6、SR、第1ブレーキB1の油圧サーボ22、第2ブレーキB2の油圧サーボ23、フェールセーフバルブ70を有している。
リニアソレノイドバルブSRは、フェール時に油圧を出力するフェール用ソレノイドバルブであり、モジュレータ圧Pmodを入力する入力ポートSRaと、通電された際にモジュレータ圧Pmodを調圧して出力する出力ポートSRbとを有している。出力ポートSRbは、不図示の各リレーバルブやコントロールバルブに接続され、リニアソレノイドバルブSRは、各バルブに信号圧を出力する。なお、モジュレータ圧Pmodは、ライン圧PLを不図示のソレノイドモジュレータバルブにより、ライン圧PLが所定圧以上となると略々一定となるように調圧された油圧である。
このように構成される油圧制御装置120は、例えば、車両の走行中あるいは停止中に、DレンジからNレンジに切り換えられた際に(運転者による切り換えの他、ECU100の判断による自動的な切り換えも含む)、リニアソレノイドバルブSRが油圧を出力し、この油圧を第2油路60を介してリニアソレノイドバルブSL5に供給可能である。即ち、リニアソレノイドバルブSRに供給されるモジュレータ圧Pmodは、内燃エンジン101の駆動中に発生しているため、Nレンジ又はPレンジでも発生している。したがって、DレンジからNレンジに切り換えられた際に、制御部100が、リニアソレノイドバルブSRにこのモジュレータ圧Pmodを調圧して出力させる。
このように、本実施形態の油圧制御装置120によると、車両の走行中あるいは停止中にDレンジからNレンジに切り換えられた際に、リニアソレノイドバルブSRにより油圧をリニアソレノイドバルブSL5に供給可能であるため、アキュムレータを設けることなく、DレンジからNレンジに切り換えられた際のショックを軽減できる。
また、本実施形態の自動変速機1の油圧制御装置120によれば、第1の実施形態と同様に、フェールセーフバルブ70を備えているので、例えば、第2ブレーキB2の係合圧がフェールにより供給され続けてしまった場合に、リニアソレノイドバルブSL5及びリニアソレノイドバルブSRによって第1ブレーキB1の係合圧を供給することによりフェールセーフバルブ70を切り換えて、第2ブレーキB2を解放することができる。
尚、第1及び第2の実施形態は、以下の構成を少なくとも備える。第1及び第2の実施形態の自動変速機(1)の油圧制御装置(20、120)は、走行レンジに切り換えられた場合に油圧発生源の油圧に基づいた元圧を、走行レンジ圧として出力し、非走行レンジに切り換えられた場合に前記走行レンジ圧を非出力とするレンジ圧切換え部(21)と、 前記レンジ圧切換え部(21)から出力される前記走行レンジ圧が通過する第1油路(50a)と、前記第1油路(50a)に接続され、前記非走行レンジから前記走行レンジに切り換えられた場合に第1係合要素(B1)の油圧サーボ(22)に前記走行レンジ圧を調圧しつつ供給して前記第1係合要素(B1)を係合可能であり、前記走行レンジから前記非走行レンジに切り換えられた場合に前記油圧サーボ(22)から前記走行レンジ圧を調圧しつつ排出して前記第1係合要素(B1)を解放可能な第1ソレノイドバルブ(SL5)と、前記第1油路(50a)の前記第1ソレノイドバルブ(SL5)とレンジ圧切換え部(21)との間に接続された第2油路(60)と、前記走行レンジから前記非走行レンジに切り換えられた際に、少なくとも前記非走行レンジで油圧を出力し、この油圧を前記第2油路(60)を介して前記第1ソレノイドバルブ(SL5)に供給可能な第2ソレノイドバルブ(SLU、SR)と、前記第2油路(60)の前記第1油路(50a)との接続部(61)と前記第2ソレノイドバルブ(SLU、SR)との間に、前記第2ソレノイドバルブ(SLU、SR)から前記第1油路(50a)に向かう方向には油圧が供給され、当該方向と反対方向には油圧が供給されない第2油路側逆止弁(63)と、前記第1係合要素(B1)の係合圧及び第2係合要素(B2)の係合圧が入力される場合に、前記第2係合要素(B2)の係合圧を供給可能な正常位置から前記第2係合要素(B2)の係合圧の供給を遮断する遮断位置に切り換わるカットバルブ(70)と、を備える。この構成によれば、カットバルブ(70)を備えているので、例えば、第2係合要素(B2)の係合圧がフェールにより供給され続けてしまった場合に、第1ソレノイドバルブ(SL5)及び第2ソレノイドバルブ(SLU、SR)によって第1係合要素(B1)の係合圧を供給することによりカットバルブ(70)を切り換えて、第2係合要素(B2)を解放することができる。
また、第1及び第2の実施形態の自動変速機(1)の油圧制御装置(20、120)によると、走行レンジから非走行レンジに切り換えられた際に、第2ソレノイドバルブ(SLU、SR)により油圧を第1ソレノイドバルブ(SL5)に供給可能であるため、アキュムレータを設けることなく、走行レンジから非走行レンジに切り換えられた際のショックを軽減できる。このようにアキュムレータを設ける必要がないため、装置の小型化を図れる。また、第2油路(60)は、第1ソレノイドバルブ(SL5)と第1油路側オリフィス(53)との間に接続するため、第2ソレノイドバルブ(SLU、SR)からの油圧を主として第1ソレノイドバルブ(SL5)に供給できる。更に、第2油路(60)の第1油路(50a)との接続部(61)と第2ソレノイドバルブ(SLU、SR)との間に第2油路側逆止弁(63)を設けているため、油圧発生源から第1油路(50a)を介して第1ソレノイドバルブ(SL5)に油圧を供給する場合に第1油路(50a)から第2油路(60)に油が流れることを防止できる。
また、第1の実施形態の自動変速機(1)の油圧制御装置(20)では、前記第2ソレノイドバルブ(SLU)は、内燃エンジン(101)の出力軸(101a)と変速機構(2)の入力軸(12)との間の動力伝達経路に配置される流体伝動装置(7)のロックアップクラッチ(10)の係合圧を調圧するロックアップ用ソレノイドバルブ(SLU)である。この構成によれば、ロックアップクラッチ(10)を係合させる既存のロックアップ用ソレノイドバルブ(SLU)を共用して第1ソレノイドバルブ(SL5)に油圧を供給するようにしているため、第2油路(60)を設けるだけで、新たにバルブを設ける必要がない。したがって、装置の大型化を抑制できると共に、低コストで上述したような油圧制御装置(20)を得られる。
また、第1及び第2の実施形態の自動変速機(1)の油圧制御装置(20、120)によると、前記接続部(61)と、前記レンジ圧切換え部(21)の間の前記第1油路(50a)上に配置された第1油路側オリフィス(53)を備える。この構成によれば、油圧が第1油路側オリフィス(53)を設けた第1油路(50a)を通ることで、油圧サーボ(22)内の油圧が急激に抜けてしまうことを防止できる。
また、第1及び第2の実施形態の自動変速機(1)の油圧制御装置(20、120)では、前記第2係合要素(B2)の係合圧を供給する第3ソレノイドバルブ(SL6)を備え、前記第3ソレノイドバルブ(SL6)が前記第2係合要素(B2)の係合圧を供給し続けるフェールを発生した場合に、前記第1ソレノイドバルブ(SL5)及び前記第2ソレノイドバルブ(SLU、SR)によって前記第1係合要素(B1)の係合圧を出力することにより前記カットバルブ(70)を前記遮断位置に切り換える。この構成によれば、例えば、第3ソレノイドバルブ(SL6)がフェールにより油圧を供給し続けてしまった場合に、第1ソレノイドバルブ(SL5)及び第2ソレノイドバルブ(SLU、SR)によって第1係合要素(B1)の係合圧を供給することによりカットバルブ(70)を切り換えて、第3ソレノイドバルブ(SL6)から供給される油圧を遮断して、第2係合要素(B2)を解放することができる。
また、第1及び第2の実施形態の自動変速機(1)の油圧制御装置(20、120)では、前記自動変速機(1)は、複数の係合要素の係脱により複数の変速段を形成可能であり、前記第2係合要素(B2)は、少なくとも前進1速段で係合されると共に前記非走行レンジで係合可能で、かつ前進高速段では解放される係合要素である。この構成によれば、第2ブレーキB2のような前進1速段及び後進1速段で係合する係合要素に適用することができる。
また、第1及び第2の実施形態の自動変速機(1)の油圧制御装置(20、120)では、前記レンジ圧切換え部(21)により前記走行レンジ圧が出力され、かつ、前記カットバルブ(70)が前記正常位置に位置する場合に、前記第1係合要素(B1)を解放する際は、前記第2ソレノイドバルブ(SLU,SR)から油圧を出力しつつ、前記第1係合要素(B1)を解放する。この構成によれば、第1係合要素(B1)の油圧サーボ(22)内の油圧が急激に抜けることで第1係合要素(B1)が急解放されてショックが生じてしまうことを防止することができる。
<他の実施形態>
上述の各実施形態では、この技術を前進1速段(1st)〜前進8速段(8th)を達成する自動変速機に適用した例について説明したが、この技術は、例えば、前進6速段や前進9速段以上の変速段を達成できる自動変速機などの他の多段自動変速機、或いは、無段変速機(CVT)、更にはハイブリッド駆動装置等にも適用できる。また、上述の各実施形態では、DレンジからNレンジ、又は、RレンジからNレンジに切り換える場合について説明したが、DレンジからPレンジ、又は、RレンジからPレンジに切り換える場合にこの技術を適用しても良い。
また、上述の各実施形態では、第1係合要素として第1ブレーキB1、第2係合要素として第2ブレーキB2を適用した場合について説明したが、これには限られず、他の係合要素を適用してもよい。
また、上述の各実施形態では、レンジ圧切換え部として、シフトバイワイヤ方式のレンジ切換え装置21をこの技術に適用した例について説明したが、レンジ圧切換え部は、例えばマニュアルシフトバルブのようなものであっても良い。また、Dレンジ又はRレンジからNレンジに切り換えた場合にショックを軽減するために制御する摩擦係合要素は、上述したような第1ブレーキB1以外であっても良い。例えば、1速段よりも大きい前進段の状態で、DレンジからNレンジなどに切り換える場合には、その前進段で係合している摩擦係合要素を上述の各実施形態と同様に制御する。
更に、Dレンジ又はRレンジからNレンジに切り換える際に、このような摩擦係合要素を制御する第1ソレノイドバルブに第2ソレノイドバルブから供給する油圧は、上述したようなライン圧やモジュレータ圧以外であっても、必要な油圧を確保できればセカンダリ圧、潤滑圧などであっても良く、例えば、この技術をベルト式CVTに適用した場合には、ベルトの挟持圧を調圧して使用するようにしても良い。要は、少なくともNレンジのような非走行レンジで発生している油圧であれば良い。