以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
<車両の駆動系統>
図1は、本発明の一実施形態に係る動力分割式無段変速機4が搭載された車両1の要部の構成を示すスケルトン図である。
車両1は、エンジン2を駆動源とする自動車である。エンジン2の出力は、トルクコンバータ3および動力分割式無段変速機4を介して、車両1の駆動輪(たとえば、左右の前輪)に伝達される。
エンジン2は、E/G出力軸21を備えている。E/G出力軸21は、エンジン2が発生する動力により回転される。
トルクコンバータ3は、ポンプインペラ31、タービンランナ32およびロックアップクラッチ33を備えている。ポンプインペラ31には、E/G出力軸21が連結されており、ポンプインペラ31は、E/G出力軸21と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。タービンランナ32は、ポンプインペラ31と同一の回転軸線を中心に回転可能に設けられている。ロックアップクラッチ33は、ポンプインペラ31とタービンランナ32とを直結/分離するために設けられている。ロックアップクラッチ33が係合されると、ポンプインペラ31とタービンランナ32とが直結され、ロックアップクラッチ33が解放されると、ポンプインペラ31とタービンランナ32とが分離される。
ロックアップクラッチ33が解放された状態において、E/G出力軸21が回転されると、ポンプインペラ31が回転する。ポンプインペラ31が回転すると、ポンプインペラ31からタービンランナ32に向かうオイルの流れが生じる。このオイルの流れがタービンランナ32で受けられて、タービンランナ32が回転する。このとき、トルクコンバータ3の増幅作用が生じ、タービンランナ32には、E/G出力軸21の動力(トルク)よりも大きな動力が発生する。
ロックアップクラッチ33が係合された状態では、E/G出力軸21が回転されると、E/G出力軸21、ポンプインペラ31およびタービンランナ32が一体となって回転する。
動力分割式無段変速機4は、トルクコンバータ3から入力される動力をデファレンシャルギヤ6に伝達する。動力分割式無段変速機4は、インプット軸41、アウトプット軸42、無段変速機構43、逆転ギヤ機構44、遊星歯車機構45、スプリットドライブギヤ46およびスプリットドリブンギヤ47を備えている。
インプット軸41は、トルクコンバータ3のタービンランナ32に連結され、タービンランナ32と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。
アウトプット軸42は、インプット軸41と平行に設けられている。アウトプット軸42には、出力ギヤ48が相対回転不能に支持されている。出力ギヤ48は、デファレンシャルギヤ6(デファレンシャルギヤ6の入力ギヤ)と噛合している。
無段変速機構43は、公知のベルト式の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)と同様の構成を有している。具体的には、無段変速機構43は、プライマリ軸51と、プライマリ軸51と平行に設けられたセカンダリ軸52と、プライマリ軸51に相対回転不能に支持されたプライマリプーリ53と、セカンダリ軸52に相対回転不能に支持されたセカンダリプーリ54と、プライマリプーリ53とセカンダリプーリ54とに巻き掛けられたベルト55とを備えている。
プライマリプーリ53は、プライマリ軸51に固定された固定シーブ61と、固定シーブ61にベルト55を挟んで対向配置され、プライマリ軸51にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ(プライマリシーブ)62とを備えている。可動シーブ62に対して固定シーブ61と反対側には、プライマリ軸51に固定されたシリンダ63が設けられ、可動シーブ62とシリンダ63との間に、ピストン室(油室)64が形成されている。
セカンダリプーリ54は、セカンダリ軸52に固定された固定シーブ65と、固定シーブ65にベルト55を挟んで対向配置され、セカンダリ軸52にその軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持された可動シーブ(セカンダリシーブ)66とを備えている。可動シーブ66に対して固定シーブ65と反対側には、セカンダリ軸52に固定されたシリンダ67が設けられ、可動シーブ66とシリンダ67との間に、ピストン室(油室)68が形成されている。回転軸線方向において、固定シーブ65と可動シーブ66との位置関係は、プライマリプーリ53の固定シーブ61と可動シーブ62との位置関係と逆転している。
無段変速機構43では、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54の各ピストン室64,68に供給される油圧が制御されて、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54の各溝幅が変更されることにより、プライマリプーリ53とセカンダリプーリ54とのプーリ比が連続的に無段階で変更される。
具体的には、プーリ比が小さくされるときには、プライマリプーリ53のピストン室64に供給される油圧が上げられる。これにより、プライマリプーリ53の可動シーブ62が固定シーブ61側に移動し、固定シーブ61と可動シーブ62との間隔(溝幅)が小さくなる。これに伴い、プライマリプーリ53に対するベルト55の巻きかけ径が大きくなり、セカンダリプーリ54の固定シーブ65と可動シーブ66との間隔(溝幅)が大きくなる。その結果、プライマリプーリ53とセカンダリプーリ54とのプーリ比が小さくなる。
プーリ比が大きくされるときには、プライマリプーリ53のピストン室64に供給される油圧が下げられる。これにより、ベルト55に対するセカンダリプーリ54の推力がベルト55に対するプライマリプーリ53の推力よりも大きくなり、セカンダリプーリ54の固定シーブ65と可動シーブ66との間隔が小さくなるとともに、固定シーブ61と可動シーブ62との間隔が大きくなる。その結果、プライマリプーリ53とセカンダリプーリ54とのプーリ比が大きくなる。
一方、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54の推力は、プライマリプーリ53およびセカンダリプーリ54とベルト55との間で滑りが生じない大きさを必要とする。そのため、インプット軸41に入力されるトルクの大きさに応じた推力が得られるよう、セカンダリプーリ54のピストン室68に供給される油圧が制御される。
逆転ギヤ機構44は、インプット軸41に入力される動力を逆転かつ減速させてプライマリ軸51に伝達する構成である。具体的には、逆転ギヤ機構44は、インプット軸41に相対回転不能に支持されるインプット軸ギヤ71と、インプット軸ギヤ71よりも大径で歯数が多く、プライマリ軸51にスプライン嵌合により回転軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されて、インプット軸ギヤ71と噛合するプライマリ軸ギヤ72とを含む。
遊星歯車機構45は、サンギヤ81、キャリア82およびリングギヤ83を備えている。サンギヤ81は、セカンダリ軸52にスプライン嵌合により回転軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されている。キャリア82は、アウトプット軸42に相対回転可能に外嵌されている。キャリア82は、複数個のピニオンギヤ84を回転可能に支持している。複数個のピニオンギヤ84は、円周上に配置され、サンギヤ81と噛合している。リングギヤ83は、複数個のピニオンギヤ84を一括して取り囲む円環状を有し、各ピニオンギヤ84にセカンダリ軸52の回転径方向の外側から噛合している。また、リングギヤ83には、アウトプット軸42が接続され、リングギヤ83は、アウトプット軸42と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。
スプリットドライブギヤ46は、インプット軸41に相対回転可能に外嵌されている。
スプリットドリブンギヤ47は、遊星歯車機構45のキャリア82と同一の回転軸線を中心に一体的に回転可能に設けられている。スプリットドリブンギヤ47は、スプリットドライブギヤ46よりも小径に形成され、スプリットドライブギヤ46よりも少ない歯数を有している。
また、動力分割式無段変速機4は、クラッチC1,C2およびブレーキB1を備えている。
クラッチC1は、インプット軸41とスプリットドライブギヤ46とを直結(一体回転可能に結合)する係合状態と、その直結を解除する解放状態とに切り替えられる。
クラッチC2は、遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とを直結(一体回転可能に結合)する係合状態と、その直結を解除する解放状態とに切り替えられる。
ブレーキB1は、遊星歯車機構45のキャリア82を制動する係合状態と、キャリア82の回転を許容する解放状態とに切り替えられる。
<変速モード>
図2は、車両1の前進時および後進時におけるクラッチC1,C2およびブレーキB1の状態を示す図である。図2において、「○」は、クラッチC1,C2およびブレーキB1が係合状態であることを示している。「×」は、クラッチC1,C2およびブレーキB1が解放状態であることを示している。図3は、遊星歯車機構45のサンギヤ81、キャリア82およびリングギヤ83の回転数(回転速度)の関係を示す共線図である。
動力分割式無段変速機4には、Pレンジ(駐車レンジ)、Rレンジ(後進レンジ)、Nレンジ(中立レンジ)およびDレンジ(前進レンジ)が設けられている。それらのレンジは、車室内に配設されたシフトレバー(セレクトレバー)の操作により切り替えることができる。すなわち、シフトレバーのポジションとして、Pポジション、Rポジション、NポジションおよびDポジションが設けられており、シフトレバーをPポジション、Rポジション、NポジションまたはDポジションに選択的に位置させると、それぞれPレンジ、Rレンジ、NレンジまたはDレンジが構成される。
動力分割式無段変速機4は、Dレンジにおける変速モードとして、ベルトモードおよびスプリットモードを有している。ベルトモードとスプリットモードとは、クラッチC1,C2の掛け替えにより切り替えられる。
ベルトモードでは、図2に示されるように、クラッチC1およびブレーキB1が解放され、クラッチC2が係合される。これにより、スプリットドライブギヤ46がインプット軸41から切り離され、遊星歯車機構45のキャリア82がフリー(自由回転状態)になり、遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とが直結される。
インプット軸41に入力される動力は、逆転ギヤ機構44により逆転かつ減速されて、無段変速機構43のプライマリ軸51に伝達され、プライマリ軸51およびプライマリプーリ53を回転させる。プライマリプーリ53の回転は、ベルト55を介して、セカンダリプーリ54に伝達され、セカンダリプーリ54およびセカンダリ軸52を回転させる。遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とが直結されているので、セカンダリ軸52と一体となって、サンギヤ81、リングギヤ83およびアウトプット軸42が回転する。したがって、ベルトモードでは、図3に示されるように、動力分割式無段変速機4の変速比(ユニット変速比)が無段変速機構43による変速比であるベルト変速比、つまり無段変速機構43のプライマリプーリ53とセカンダリプーリ54とのプーリ比と一致する。
スプリットモードでは、図2に示されるように、クラッチC1が係合され、クラッチC2およびブレーキB1が解放される。これにより、インプット軸41とスプリットドライブギヤ46とが直結され、遊星歯車機構45のキャリア82がフリーになり、遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とが切り離される。
インプット軸41に入力される動力は、逆転ギヤ機構44により逆転かつ減速されて、無段変速機構43のプライマリ軸51に伝達され、プライマリ軸51からプライマリプーリ53、ベルト55およびセカンダリプーリ54を介してセカンダリ軸52に伝達され、遊星歯車機構45のサンギヤ81に伝達される。一方、インプット軸41に入力される動力は、スプリットドライブギヤ46からスプリットドリブンギヤ47を介して遊星歯車機構45のキャリア82に増速されて伝達される。
スプリットドライブギヤ46とスプリットドリブンギヤ47とのギヤ比は一定で不変(固定)であるので、スプリットモードでは、インプット軸41に入力される動力が一定であれば、遊星歯車機構45のキャリア82の回転が一定速度に保持される。そのため、プーリ比が上げられると、遊星歯車機構45のサンギヤ81の回転数が下がるので、図3に破線で示されるように、遊星歯車機構45のリングギヤ83(アウトプット軸42)の回転数が上がる。その結果、スプリットモードでは、無段変速機構43のプーリ比が大きいほど、動力分割式無段変速機4のユニット変速比が小さくなる。
ベルトモードおよびスプリットモードにおけるアウトプット軸42の回転は、出力ギヤ48を介して、デファレンシャルギヤ6に伝達される。これにより、車両1のドライブシャフト7,8が前進方向に回転する。
Rレンジでは、リバースモードとなり、図2に示されるように、クラッチC1,C2が解放され、ブレーキB1が係合される。これにより、スプリットドライブギヤ46がインプット軸41から切り離され、遊星歯車機構45のサンギヤ81とリングギヤ83とが切り離され、遊星歯車機構45のキャリア82が制動される。
インプット軸41に入力される動力は、逆転ギヤ機構44により逆転かつ減速されて、無段変速機構43のプライマリ軸51に伝達され、プライマリ軸51からプライマリプーリ53、ベルト55およびセカンダリプーリ54を介してセカンダリ軸52に伝達され、セカンダリ軸52と一体に、遊星歯車機構45のサンギヤ81を回転させる。遊星歯車機構45のキャリア82が制動されているので、サンギヤ81が回転すると、遊星歯車機構45のリングギヤ83がサンギヤ81と逆方向に回転する。このリングギヤ83の回転方向は、前進時(ベルトモードおよびスプリットモード)におけるリングギヤ83の回転方向と逆方向となる。そして、リングギヤ83と一体に、アウトプット軸42が回転する。アウトプット軸42の回転は、出力ギヤ48を介して、デファレンシャルギヤ6に伝達される。これにより、車両1のドライブシャフト7,8が後進方向に回転する。
<油圧回路>
図4は、動力分割式無段変速機4の油圧回路100の構成を示す回路図である。
動力分割式無段変速機4の油圧回路100には、クラッチC1,C2に油圧を供給するための各種のバルブが含まれる。すなわち、油圧回路100には、SL1ソレノイドバルブ101、SL2ソレノイドバルブ102、C1カットバルブ103、C2カットバルブ104およびSRバルブ105が含まれる。
SL1ソレノイドバルブ101は、ノーマルクローズタイプのリニアソレノイドバルブである。SL1ソレノイドバルブ101の入力ポートには、Pc圧が入力される。SL1ソレノイドバルブ101では、電磁コイルへの通電が制御されることにより、入力ポートに入力されるPc圧(クラッチ元圧)が調圧され、その調圧により得られるSL1圧(制御圧)が出力ポートから出力される。
Pc圧は、クラッチモジュレータバルブ(図示せず)から出力される油圧である。クラッチモジュレータバルブは、ライン圧が一定圧以下であるときには、そのライン圧と同圧のPc圧を出力し、ライン圧が当該一定圧よりも高いときには、当該一定圧に減圧されたPc圧を出力する。
SL2ソレノイドバルブ102は、ノーマルクローズタイプのリニアソレノイドバルブである。SL2ソレノイドバルブ102の入力ポートには、マニュアルバルブからPc圧が入力される。SL2ソレノイドバルブ102では、電磁コイルへの通電が制御されることにより、入力ポートに入力されるPc圧が調圧され、その調圧により得られるSL2圧(制御圧)が出力ポートから出力される。
C1カットバルブ103は、クラッチC1へのSL1圧の供給を許可/禁止するためのバルブである。C1カットバルブ103は、スプール111を備えている。スプール111は、略円筒状の周壁を有するスリーブ112内に収容され、第1過渡位置と第2位置との間でスリーブ112の中心線方向に移動可能に設けられている。
スプール111には、略円柱状のランド部113,114,115が中心線方向に間隔を空けてこの順に並んで形成されている。ランド部113,114,115は、同じ直径を有している。
また、スリーブ112内には、中心線方向の一端側(ランド部113側)の端部に、スプール111を他端側(ランド部115側)に付勢するスプリング116が設けられている。
スリーブ112の周壁には、第1選択圧入力ポート121、第2選択圧入力ポート122、Pc圧入力ポート123、ドレンポート124、C1圧出力ポート125、C2圧出力ポート126、第1信号ポート127および第2信号ポート128が形成されている。
第1選択圧入力ポート121は、スプール111が第1過渡位置(図4に示されるスプール111の左半分の位置)に位置する状態で、ランド部113,114間と連通し、スプール111が第2位置(図4に示されるスプール111の右半分の位置)に位置する状態で、ランド部114により閉鎖される。
第2選択圧入力ポート122は、スプール111が第1過渡位置に位置する状態で、ランド部114,115間と連通し、スプール111が第2位置に位置する状態で、ランド部115により閉鎖される。
Pc圧入力ポート123は、スプール111が第1過渡位置に位置する状態で、ランド部114により閉鎖され、スプール111が第2位置に位置する状態で、ランド部114,115間と連通する。
ドレンポート124は、スプール111が第1過渡位置に位置する状態で、ランド部113により閉鎖され、スプール111が第2位置に位置する状態で、ランド部113,114間と連通する。
C1圧出力ポート125は、スプール111の位置にかかわらず、ランド部113,114間と連通している。スプール111が第1過渡位置に位置する状態では、第1選択圧入力ポート121とC1圧出力ポート125とがランド部113,114間を介して連通する。スプール111が第2位置に位置する状態では、ドレンポート124とC1圧出力ポート125とがランド部113,114間を介して連通する。
C2圧出力ポート126は、スプール111の位置にかかわらず、ランド部114,115間と連通している。スプール111が第1過渡位置に位置する状態では、第2選択圧入力ポート122とC2圧出力ポート126とがランド部114,115間を介して連通する。スプール111が第2位置に位置する状態では、Pc圧入力ポート123とC2圧出力ポート126とがランド部114,115間を介して連通する。
第1信号ポート127は、スプール111の位置にかかわらず、ランド部113とスリーブ112内の一端との間、つまりスプリング116が配置されている空間に連通している。
第2信号ポート128は、スプール111の位置にかかわらず、ランド部115とスリーブ112内の他端との間に連通している。
C2カットバルブ104は、クラッチC2へのC2圧の供給を許可/禁止するためのバルブである。C2カットバルブ104は、スプール131を備えている。スプール131は、略円筒状の周壁を有するスリーブ132内に収容され、第1位置と第2過渡位置との間でスリーブ132の中心線方向に移動可能に設けられている。
スプール131には、略円柱状のランド部133,134,135が中心線方向に間隔を空けてこの順に並んで形成されている。ランド部133,134,135は、同じ直径を有している。
また、スリーブ132内には、中心線方向の一端側(ランド部133側)の端部に、スプール131を他端側(ランド部135)に付勢するスプリング136が設けられている。
スリーブ132の周壁には、SL1圧入力ポート141、SL2圧入力ポート142、Pc圧入力ポート143、ドレンポート144、Pc圧出力ポート145、第1選択圧出力ポート146、第2選択圧出力ポート147、第1信号ポート148および第2信号ポート149が形成されている。
SL1圧入力ポート141は、スプール131が第1位置に位置する状態で、ランド部134により閉鎖され、スプール131が第2過渡位置に位置する状態で、ランド部133,134間と連通する。
SL2圧入力ポート142は、スプール131が第1位置に位置する状態で、ランド部135により閉鎖され、スプール131が第2過渡位置に位置する状態で、ランド部134,135間と連通する。
Pc圧入力ポート143は、スプール131が第1位置に位置する状態で、ランド部133,134の間と連通し、スプール131が第2過渡位置に位置する状態で、ランド部133と対向し、ランド部133,134の間と連通しない。Pc圧入力ポート143には、Pc圧が入力される。
ドレンポート144は、スプール131が第1位置に位置する状態で、ランド部134,135の間と連通し、スプール131が第2過渡位置に位置する状態で、ランド部134により閉鎖される。
Pc圧出力ポート145は、スプール131の位置にかかわらず、Pc圧入力ポート143と連通している。すなわち、Pc圧入力ポート143とPc圧出力ポート145とは、スプール131が第1位置に位置する状態では、ランド部133,134間を介して連通し、スプール131が第2過渡位置に位置する状態では、ランド部133の周囲に形成されている連通路を介して連通する。
第1選択圧出力ポート146は、スプール131の位置にかかわらず、ランド部133,134の間と連通している。第1選択圧出力ポート146は、スプール131が第1位置に位置する状態で、ランド部133,134の間を介して、Pc圧入力ポート143およびPc圧出力ポート145と連通し、スプール131が第2過渡位置に位置する状態で、ランド部133,134の間を介して、SL1圧入力ポート141と連通する。
第2選択圧出力ポート147は、スプール131の位置にかかわらず、ランド部134,135の間と連通している。第2選択圧出力ポート147は、スプール131が第1位置に位置する状態で、ランド部133,134の間を介して、ドレンポート144と連通し、スプール131が第2過渡位置に位置する状態で、ランド部133,134の間を介して、SL2圧入力ポート142と連通する。
第1信号ポート148は、スプール111の位置にかかわらず、ランド部133とスリーブ132内の一端との間、つまりスプリング136が配置されている空間に連通している。
第2信号ポート149は、スプール111の位置にかかわらず、ランド部135とスリーブ132内の他端との間に連通している。
SRバルブ105は、ノーマルクローズタイプのオン/オフソレノイドバルブである。SRバルブ105の入力ポートには、Pc’圧が入力される。SRバルブ105は、電磁コイルへの通電(オン)により開成し、電磁コイルへの通電の遮断(オフ)により閉成する。SRバルブ105が開いた状態では、SRバルブ105の出力ポートからPc’圧が出力され、SRバルブ105が閉じられることにより、その出力ポートからのPc’圧の出力が停止される。
Pc’圧は、Pc圧と同じ油圧、つまりクラッチモジュレータバルブから出力される油圧であってもよいし、後述する回路動作が確保されるのであれば、クラッチモジュレータバルブとは別のバルブで一定圧以下に調圧されるモジュレータ圧であってもよい。
そして、油圧回路100には、SL1ソレノイドバルブ101、SL2ソレノイドバルブ102、C1カットバルブ103、C2カットバルブ104およびSRバルブ105間でオイル(油圧)を流通させる油路151〜161が設けられている。
油路151は、SRバルブ105の出力ポートとC1カットバルブ103の第1信号ポート127とを連通させる。
油路152は、SRバルブ105の出力ポートとC2カットバルブ104の第1信号ポート148とを連通させる。
油路153は、SL1ソレノイドバルブ101の出力ポートとC2カットバルブ104のSL1圧入力ポート141とを連通させる。
油路154は、SL2ソレノイドバルブ102の出力ポートとC2カットバルブ104のSL2圧入力ポート142とを連通させる。
油路155は、C1カットバルブ103の第1選択圧入力ポート121とC2カットバルブ104の第1選択圧出力ポート146とを連通させる。
油路156は、C1カットバルブ103の第2選択圧入力ポート122とC2カットバルブ104の第2選択圧出力ポート147とを連通させる。
油路157は、C1カットバルブ103のPc圧入力ポート123とC2カットバルブ104のPc圧出力ポート145とを連通させる。
油路158は、C1カットバルブ103のC1圧出力ポート125とクラッチC1の油室とを連通させる。
油路159は、C1カットバルブ103のC1圧出力ポート125とC2カットバルブ104の第2信号ポート149とを連通させる。
油路160は、C1カットバルブ103のC2圧出力ポート126とクラッチC2の油室とを連通させる。
油路161は、C1カットバルブ103のC2圧出力ポート126とC1カットバルブ103の第2信号ポート128とを連通させる。
<回路動作>
動力分割式無段変速機4では、シフトポジションがPポジションまたはRポジションからNポジションを経由してDポジションに切り替えられると、Dレンジのベルトモードが構成されるまでの変速過渡の期間、SRバルブ105がオン(通電状態)される。また、ベルトモードとスプリットモードとが切り替えられる際には、変速過渡の期間、SRバルブ105がオンされる。
SRバルブ105がオンされると、SRバルブ105からPc’圧が出力される。Pc’圧は、油路151を通してC1カットバルブ103の第1信号ポート127に入力され、油路152を通してC2カットバルブ104の第1信号ポート148に入力される。Pc’圧の入力により、C1カットバルブ103のスプール111およびC2カットバルブ104のスプール131は、それぞれ第1過渡位置および第2過渡位置に強制的に保持される。
C1カットバルブ103のスプール111が第1過渡位置に位置する状態では、C1カットバルブ103のスリーブ112内において、第1選択圧入力ポート121とC1圧出力ポート125とが連通し、第2選択圧入力ポート122とC2圧出力ポート126とが連通する。また、C2カットバルブ104のスプール131が第2過渡位置に位置する状態では、C2カットバルブ104のスリーブ132内において、SL1圧入力ポート141と第1選択圧出力ポート146とが連通し、SL2圧入力ポート142と第2選択圧出力ポート147とが連通する。
そのため、SRバルブ105がオンされている状態では、SL1ソレノイドバルブ101から出力されるSL1圧が油路153を通してC2カットバルブ104のSL1圧入力ポート141からスリーブ132内に入力され、そのSL1圧が第1選択圧出力ポート146から第1選択圧として出力される。そして、第1選択圧であるSL1圧は、油路155を通してC1カットバルブ103の第1選択圧入力ポート121からスリーブ112内に入力され、C1圧出力ポート125から出力されて、油路158を通してクラッチC1の油室に供給される。
また、SL2ソレノイドバルブ102から出力されるSL2圧が油路154を通してC2カットバルブ104のSL2圧入力ポート142からスリーブ132内に入力され、そのSL2圧が第2選択圧出力ポート147から第2選択圧として出力される。そして、第2選択圧であるSL2圧は、油路156を通してC1カットバルブ103の第2選択圧入力ポート122からスリーブ112内に入力され、C2圧出力ポート126から出力されて、油路160を通してクラッチC2の油室に供給される。
したがって、SL1ソレノイドバルブ101およびSL2ソレノイドバルブ102への通電を制御して、SL1圧およびSL2圧を増減させることにより、クラッチC1,C2の各油室に供給される油圧を増減させることができ、クラッチC1,C2を掛け替えることができる。クラッチC1,C2の掛け替えにより、ベルトモードとスプリットモードとを選択的に構成することができる。
SRバルブ105がオフされると、SRバルブ105からのPc’圧の出力が停止する。クラッチC1がSL1圧によって係合し、クラッチC2が解放されている状態では、C1カットバルブ103のC1圧出力ポート125から出力されているSL1圧が油路159を通してC2カットバルブ104の第2信号ポート149からスリーブ132内に入力されている。そのため、スプール131を第2過渡位置に保持する油圧としてのPc’圧のC2カットバルブ104への入力がなくなると、SL1圧により、スプール131が第2過渡位置から第1位置に変位する。このとき、C1カットバルブ103のC2圧出力ポート126から出力されるSL2圧が第2信号ポート128に入力されていても、クラッチC2が解放される程度にSL2圧が小さいので(たとえば、SL2圧=0)、スプール111は、スプリング116の付勢力により、第1過渡位置に位置し続ける。
C2カットバルブ104のスプール131が第1位置に位置する状態では、C2カットバルブ104のスリーブ132内において、Pc圧入力ポート143とPc圧出力ポート145および第1選択圧出力ポート146とが連通し、ドレンポート144と第2選択圧出力ポート147とが連通する。
そのため、C1カットバルブ103のスプール111が第1過渡位置に位置し、C2カットバルブ104のスプール131が第1位置に位置する状態では、Pc圧がPc圧入力ポート143からスリーブ132内に入力され、そのPc圧が第1選択圧出力ポート146から第1選択圧として出力される。そして、第1選択圧であるPc圧は、油路155を通してC1カットバルブ103の第1選択圧入力ポート121からスリーブ112内に入力され、C1圧出力ポート125から出力されて、油路158を通してクラッチC1の油室に供給される。したがって、SL1ソレノイドバルブ101からのSL1圧の出力の有無にかかわらず、Pc圧によりクラッチC1の係合状態が維持される。また、油路156,160がC1カットバルブ103のスリーブ112内を介して連通し、油路156がC2カットバルブ104のスリーブ132内を介してドレンポート144と連通する。これにより、クラッチC2の油室から油圧がドレンされる。
一方、クラッチC1が解放され、クラッチC2がSL2圧によって係合している状態では、C1カットバルブ103のC2圧出力ポート126から出力されているSL2圧が油路161を通してC1カットバルブ103の第2信号ポート128からスリーブ112内に入力されている。そのため、スプール111を第1過渡位置に保持する油圧としてのPc’圧のC1カットバルブ103への入力がなくなると、SL2圧により、スプール111が第1過渡位置から第2位置に変位する。このとき、C1カットバルブ103のC1圧出力ポート125から出力されるSL1圧がC2カットバルブ104の第2信号ポート149に入力されていても、クラッチC1が解放される程度にSL1圧が小さいので(たとえば、SL1圧=0)、スプール111は、スプリング136の付勢力により、第2過渡位置に位置し続ける。
C1カットバルブ103のスプール111が第2位置に位置する状態では、C1カットバルブ103のスリーブ112内において、Pc圧入力ポート123とC2圧出力ポート126とが連通し、ドレンポート124とC1圧出力ポート125とが連通する。
そのため、C1カットバルブ103のスプール111が第2位置に位置し、C2カットバルブ104のスプール131が第2過渡位置に位置する状態では、Pc圧がPc圧入力ポート143からランド部133の周囲に形成されている連通路を介してPc圧出力ポート145から油路157に出力される。そして、Pc圧は、油路157からC1カットバルブ103のPc圧入力ポート123を介してスリーブ112内に入力され、C2圧出力ポート126から油路160を通してクラッチC2の油室に供給される。したがって、SL2ソレノイドバルブ102からのSL2圧の出力の有無にかかわらず、Pc圧によりクラッチC2の係合状態が維持される。また、油路158がC1カットバルブ103のスリーブ112内を介してドレンポート124と連通する。これにより、クラッチC1の油室から油圧がドレンされる。
<作用効果>
以上のように、クラッチC1とクラッチC2との掛け替えが終了し、SRバルブ105からのPc’圧の出力が停止した後は、SL1ソレノイドバルブ101からのSL1圧の出力およびSL2ソレノイドバルブ102からのSL2圧の出力の有無にかかわらず、クラッチC1またはクラッチC2の係合状態が維持される。そのため、SL1ソレノイドバルブ101および/またはSL2ソレノイドバルブ102の故障により、SL1ソレノイドバルブ101および/またはSL2ソレノイドバルブ102からの意図しない油圧の出力または停止が発生しても、クラッチC1およびクラッチC2の係合/解放状態が変化することを抑制できる。その結果、動力分割式無段変速機4がインターロック状態(クラッチC1およびクラッチC2の両方が係合する状態)およびニュートラル状態(クラッチC1およびクラッチC2の両方が解放される状態)に陥ることを抑制でき、また、変速比の急変を抑制できる。よって、SL1ソレノイドバルブ101および/またはSL2ソレノイドバルブ102の故障発生時にも、動力分割式無段変速機4が搭載された車両1を安全に走行させることができる。
また、クラッチC1およびクラッチC2の各係合状態がPc圧により維持されるので、SL1ソレノイドバルブ101およびSL2ソレノイドバルブ102は、クラッチC1とクラッチC2との掛け替えの際にクラッチC1またはクラッチC2の係合に必要な油圧を出力できれば十分であり、係合状態の安定した維持に必要な高油圧を出力しなくてよい。したがって、SL1ソレノイドバルブ101およびSL2ソレノイドバルブ102の各出力油圧の最大値を小さく設定し、SL1ソレノイドバルブ101およびSL2ソレノイドバルブ102の制御入力(電流)の変化に対する出力油圧の変化の勾配を小さくすることができる。その結果、SL1ソレノイドバルブ101およびSL2ソレノイドバルブ102からの出力油圧の制御性を向上させることができ、クラッチC1とクラッチC2との掛け替え時の係合ショックの発生などを抑制することができる。
さらに、SL1ソレノイドバルブ101およびSL2ソレノイドバルブ102がノーマルクローズタイプのリニアソレノイドバルブで構成されるので、クラッチC1とクラッチC2との掛け替えが終了し、SRバルブ105からのPc’圧の出力が停止した後は、SL1ソレノイドバルブ101およびSL2ソレノイドバルブ102をオフにすることができる。これにより、SL1ソレノイドバルブ101およびSL2ソレノイドバルブ102による電力消費をなくすことができる。その結果、動力分割式無段変速機4が搭載される車両1の燃費を向上させることができる。
<第2実施形態>
図5は、本発明の第2実施形態に係る油圧回路200の構成を示す回路図である。図5において、図4に示される各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、その同一の参照符号が付された部分の説明を省略し、油圧回路200の構成について、図4に示される油圧回路100との相違点のみを説明する。
油圧回路200では、C1カットバルブ103のドレンポート124およびC2カットバルブ104のドレンポート144と調圧バルブ排出油路などの極低圧排出油路とを連通させる油路201が設けられている。極低圧排出油路は、油圧が0または極低圧(クラッチC1,C2に備えられるピストンを移動させることができない油圧)のオイルで満たされている。油路201の終端は、天地方向の天側に向けて解放されている。
この構成によって、クラッチC1が解放された状態でクラッチC1およびC1カットバルブ103からクラッチC1に油圧を供給する油路158にオイルが残るので、クラッチC1の係合の際に、クラッチC1および油路158にオイルを速やかに充填することができ、クラッチC1の応答性を向上させることができる。また、クラッチC2が解放された状態でクラッチC2およびC2カットバルブ104からクラッチC2に油圧を供給する油路160にオイルが残るので、クラッチC2の係合の際に、クラッチC2および油路160にオイルを速やかに充填することができ、クラッチC2の応答性を向上させることができる。
油路201の終端には、油路201内の油圧が一定圧以上に上昇すると開弁するリリーフバルブが介装されてもよい。リリーフバルブは、図6に示されるように、ボール式の一方弁202であってもよいし、図7に示されるように、スプリングを備える構成のチェックバルブ203であってもよい。
<第3実施形態>
図8は、本発明の第3実施形態に係る油圧回路300の構成を示す回路図である。図8において、図4に示される各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、その同一の参照符号が付された部分の説明を省略し、油圧回路300の構成について、図4に示される油圧回路100との相違点のみを説明する。
油圧回路300では、SRバルブ105の出力ポートとC2カットバルブ104の第1信号ポート148とを連通させる油路152の途中部に、油路152の管路抵抗を増大させるためのオリフィス301が設けられている。
SRバルブ105がオンされている変速過渡(クラッチC1,C2の掛け替え)の期間は、SL1ソレノイドバルブ101の出力ポートとクラッチC1の油室とが連通し、SL2ソレノイドバルブ102の出力ポートとクラッチC2の油室とが連通する。そのため、SL1ソレノイドバルブ101およびSL2ソレノイドバルブ102の両方に故障が発生し、SL1ソレノイドバルブ101およびSL2ソレノイドバルブ102からそれぞれ比較的高いSL1圧およびSL2圧が出力されると、クラッチC1およびクラッチC2の両方が係合するインターロック状態に陥るおそれがある。
そこで、SL1ソレノイドバルブ101および/またはSL2ソレノイドバルブ102に故障が発生した場合には、SRバルブ105がオンからオフに切り替えられる。これにより、SRバルブ105からのPc’圧の出力が停止し、C1カットバルブ103のスプリング116が配置されている空間から油路151に油圧が排出され、C2カットバルブ104のスプリング136が配置されている空間から油路152に油圧が排出される。油路152にオリフィス301が設けられているので、C1カットバルブ103からの油圧の排出と比べて、C2カットバルブ104からの油圧の排出が遅れる。そのため、C2カットバルブ104のスプール131が第2過渡位置から動き出す前に、C1カットバルブ103のスプール111が第1過渡位置から第2位置に変位する。
C1カットバルブ103のスプール111が第2位置に位置することにより、C1カットバルブ103のC2圧出力ポート126からPc圧が出力され、そのPc圧によりクラッチC2が係合する。また、C1カットバルブ103のC1圧出力ポート125がドレンポート124と連通するので、クラッチC1が解放される。そして、C2カットバルブ104の第2信号ポート149に油圧が供給されないので、C2カットバルブ104のスプール131が第2過渡位置から動かない。
よって、インターロック状態を回避することができるだけでなく、クラッチC1に優先して、クラッチC2を係合させることができ、ベルトモードでの車両1の前進走行を可能にすることができる。
また、SL1ソレノイドバルブ101またはSL2ソレノイドバルブ102にオープン故障が生じている状態で、ベルトモードとスプリットモードとを切り替えるために、SRバルブ105がオンされた場合にも、SRバルブ105がオンからオフに直ちに切り替えられることにより、インターロック状態に陥ることを回避できる。
すなわち、ベルトモードからスプリットモードに切り替えられる場合、SRバルブ105がオンされるよりも前に、SL2ソレノイドバルブ102からクラッチC2の係合を維持可能な大きさのSL2圧が出力される。SL1ソレノイドバルブ101にオープン故障が生じている状態で、SRバルブ105がオンにされた場合、SRバルブ105がオンからオフに直ちに切り替えられる。SL2圧の減圧開始前にSRバルブ105がオフに切り替えられた場合、油路152にオリフィス301が設けられているので、前述の動作と同様に、C1カットバルブ103のスプール111が第1過渡位置から第2位置に変位し、C2カットバルブ104のスプール131が第2過渡位置から動かない。したがって、ベルトモードが維持されるので、インターロック状態に陥ることを回避でき、ベルトモードでの車両1の前進走行が可能である。
SRバルブ105がオンからオフに切り替えられた時点で、SL2圧の減圧が進んでいた場合には、C1カットバルブ103のスプール111が第1過渡位置から動かず、C2カットバルブ104のスプール131が第2過渡位置から第1位置に変位し、スプリットモードが構成される。この場合にも、インターロック状態に陥ることは回避される。
SL2ソレノイドバルブ102にオープン故障が生じている状態で、ベルトモードからスプリットモードに切り替えるために、SRバルブ105がオンにされた場合、SRバルブ105がオンからオフに切り替えられると、前述の動作と同様に、C1カットバルブ103のスプール111が第1過渡位置から第2位置に変位し、C2カットバルブ104のスプール131が第2過渡位置から動かない。したがって、ベルトモードが維持されるので、インターロック状態に陥ることを回避でき、ベルトモードでの車両1の前進走行が可能である。
スプリットモードからベルトモードに切り替えられる場合、SRバルブ105がオンされるよりも前に、SL1ソレノイドバルブ101からクラッチC1の係合を維持可能な大きさのSL1圧が出力される。SL1ソレノイドバルブ101にオープン故障が生じている状態で、SRバルブ105がオンにされた場合、SRバルブ105がオンからオフに直ちに切り替えられる。SL2ソレノイドバルブ102から出力されるSL2圧が増大すると、C2カットバルブ104のスプール131が第1過渡位置から第2位置に変位する。
スプリットモードからベルトモードに切り替えられる際に、SL2ソレノイドバルブ102にオープン故障が生じている状態で、SRバルブ105がオンにされた場合、SRバルブ105がオンからオフに直ちに切り替えられる。この場合にも、SL2ソレノイドバルブ102から出力されるSL2圧により、C2カットバルブ104のスプール131が第1過渡位置から第2位置に変位する。
C1カットバルブ103のスプール111が第2位置に位置する状態では、C1カットバルブ103のスリーブ112内において、ドレンポート124とC1圧出力ポート125とが連通する。そのため、C2カットバルブ104のスプール131が第1位置に位置していても、C2カットバルブ104のスプール131が第1過渡位置から第2位置に変位すると、クラッチC1の油室から油圧がドレンされ、C1圧出力ポート125から出力される油圧が0に低下する。その結果、クラッチC1が解放され、C2カットバルブ104のスプール131がスプリング136の付勢力により第1位置から第2過渡位置に変位する。一方、クラッチC2の油室には、C1カットバルブ103のC2圧出力ポート126から出力されるPc圧が供給され、そのPc圧により、クラッチC2が係合する。よって、インターロック状態に陥ることを回避でき、ベルトモードでの車両1の前進走行が可能となる。
よって、ベルトモードでの車両1の短距離の走行を可能とするリンプホーム(非常時回避)機能を実現することができる。
なお、オリフィス301が設けられてない構成、つまり油圧回路100,200の構成であっても、SL1ソレノイドバルブ101および/またはSL2ソレノイドバルブ102に故障が発生した場合に、SRバルブ105をオフすることにより、インターロック状態に陥ることは回避できる。
オリフィス301が設けられた構成では、油路152の管路抵抗が増大するので、SRバルブ105からC2カットバルブ104へのPc’圧の供給が遅れ、SRバルブ105がPc’圧を出力してからC2カットバルブ104のスプール131が第1位置から第2過渡位置に変位するまでにタイムラグが生じる。その結果、タイムラグが生じている間、クラッチC1,C2の掛け替えの制御の開始を待たなければならず、制御性が悪化するおそれがある。
タイムラグを解消するため、図8に仮想線(二点鎖線)で示されるように、油路152にオリフィス301をバイパスするバイパス路302が接続されて、バイパス路302にSRバルブ105からC2カットバルブ104側へのPc’圧の流通を許可する一方弁303が介装されてもよい。
また、油路151の管路抵抗を増大させる構成は、オリフィス301に限定されない。たとえば、油路151の油路長が大きくされることにより、油路151の管路抵抗が増大されてもよいし、油路151の途中部の曲げを増やすことにより、油路151の管路抵抗が増大されてもよい。また、油路151の断面積を小さくすることにより、油路151の管路抵抗が増大されてもよい。
油路152の管路抵抗を増大させた構成では、SRバルブ105がオフされると、クラッチC2が係合し、クラッチC1が解放されて、ベルトモードが構成されるが、油路151の管路抵抗を増大させた場合には、SRバルブ105がオフされると、クラッチC1が係合し、クラッチC2が解放されて、スプリットモードが構成される。すなわち、油路152の管路抵抗を増大させるか、油路151の管路抵抗を増大させるかにより、故障発生時にベルトモードまたはスプリットモードのいずれを構成するかを機械的に決定することができる。
<第4実施形態>
図9は、本発明の第3実施形態に係る油圧回路400の構成を示す回路図である。図9において、図4に示される各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、その同一の参照符号が付された部分の説明を省略し、油圧回路400の構成について、図4に示される油圧回路100との相違点のみを説明する。
油圧回路400では、C1カットバルブ103に、プランジャ401が追加されている。プランジャ401は、スリーブ112内におけるスプリング116と反対側の端部に、スリーブ112の中心線方向に移動可能に設けられ、スプール111のランド部113,114,115と同じ直径の円筒状の周面を有している。
第2信号ポート128は、スプール111およびプランジャ401の位置にかかわらず、スプール111のランド部115とプランジャ401との間に連通する位置に設けられている。
また、スリーブ112の周壁には、フェイルセーフ信号ポート402が形成されている。フェイルセーフ信号ポート402は、プランジャ401の位置にかかわらず、プランジャ401とスリーブ112内のスプリング116側と反対側の端との間に連通している。
フェイルセーフ信号ポート402には、SRバルブ105がオープン故障した場合に、所定のフェイルセーフ切替圧が供給される。フェイルセーフ信号ポート402にフェイルセーフ切替圧が供給されるときには、SRバルブ105からC1カットバルブ103およびC2カットバルブ104へのPc’圧の入力が強制的に停止される構成が採用されている。たとえば、フェイルセーフバルブが追加されて、SRバルブ105が正常に動作しているときには、フェイルセーフバルブに入力されるPc’圧がSRバルブ105に供給され、SRバルブ105にオープン故障が発生したときには、フェイルセーフバルブに入力されるPc’圧がフェイルセーフ切替圧としてフェイルセーフ信号ポート402に入力される構成が採用されてもよい。
前述したように、SRバルブ105が正常に動作している状態で、SL1ソレノイドバルブ101および/またはSL2ソレノイドバルブ102に故障が発生した場合には、SRバルブ105をオフすることにより、インターロック状態に陥ることを回避できる。
SRバルブ105にオープン故障が発生している状態でSL1ソレノイドバルブ101および/またはSL2ソレノイドバルブ102に故障が発生した場合には、フェイルセーフ信号ポート402にフェイルセーフ切替圧が入力される。フェイルセーフ切替圧が入力されると、フェイルセーフ切替圧により、プランジャ401がスプリング116側に押圧される。そして、プランジャ401がスプール111を押圧し、スプール111がスプリング116の付勢力に抗して第1過渡位置から第2位置に変位する。スプール111が第2位置に変位することにより、クラッチC1の油室から油圧がドレンされ、C1圧出力ポート125から出力される油圧が0に低下する。その結果、クラッチC1が解放され、C2カットバルブ104のスプール131がスプリング136の付勢力により第1位置から第2過渡位置に変位する。一方、クラッチC2の油室には、C1カットバルブ103のC2圧出力ポート126から出力されるPc圧が供給され、そのPc圧により、クラッチC2が係合する。よって、インターロック状態に陥ることを回避でき、ベルトモードでの車両1の前進走行が可能となる。
よって、SRバルブ105にオープン故障が発生した場合にも、ベルトモードでの車両1の短距離の走行を可能とするリンプホーム機能を実現することができる。
なお、C2カットバルブ104にプランジャおよびフェイルセーフ信号ポートが追加されてもよく、この場合、フェイルセーフ切替圧がフェイルセーフ信号ポートに入力されると、クラッチC1が係合し、クラッチC2が解放されて、スプリットモードが構成される。すなわち、C1カットバルブ103にプランジャ401およびフェイルセーフ信号ポート402を追加するか、C2カットバルブ104にプランジャおよびフェイルセーフ信号ポートを追加するかにより、故障発生時にベルトモードまたはスプリットモードのいずれを構成するかを機械的に決定することができる。
<変形例>
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、さらに他の形態で実施することも可能である。
たとえば、前述の第1〜第4実施形態に係る構成は、任意に組み合わせることができ、図10に示される油圧回路500のように、第1〜第4実施形態の全ての特徴が組み込まれてもよい。
本発明は、動力分割式無段変速機4のクラッチC1,C2に油圧を供給する油圧回路に限らず、相対的に変速比が大きいローモードと相対的に変速比が小さいハイモードとを切替可能な副変速機付CVTには、モードの切り替えのために選択的に係合される2個の係合要素が備えられているので、その2個の係合要素に油圧を供給する油圧回路に適用されてもよい。また、本発明は、AT(Automatic Transmission:自動変速機)またはDCT(Dual Clutch Transmission:デュアルクラッチ式変速機)に備えられる2個の係合要素(たとえば、1速用クラッチおよび2速用クラッチ)に油圧を供給する油圧回路に適用されてもよい。
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。