以下、本発明の実施の形態について説明する。
まず、図1により、この実施の形態に係る自動変速機の機械的構成を説明する。
この自動変速機10は、主たる構成要素として、トルクコンバータ20と、該トルクコンバータ20の出力により駆動される変速歯車機構30と、該機構30の動力伝達経路を切り換えるクラッチやブレーキ等の複数の摩擦要素41〜45およびワンウェイクラッチ46とを有し、これらによりD,S,Lレンジ等の前進レンジにおける1〜4速と、Rレンジにおける後退側とが得られるようになっている。
上記トルクコンバータ20は、エンジン出力軸1に連結されたケース21内に固設されたポンプ22と、該ポンプ22に対抗状に配置されて該ポンプ22により作動油を介して駆動されるタービン23と、該ポンプ22とタービン23との間に介設され、かつ変速機ケース11にワンウェイクラッチ24を介して支持されてトルク増大作用を行うステータ25と、上記ケース21とタービンとの間に設けられ、該ケース21を介してエンジン出力軸1とタービン23とを直結するロックアップクラッチ26とで構成されている。そして、上記タービン23の回転がタービンシャフト27を介して変速歯車機構30側に出力されるようになっている。
ここで、このトルクコンバータ20の反エンジン側には、該トルクコンバータ20のケース21を介してエンジン出力軸1に駆動されるオイルポンプ12が配設されている。
一方、上記歯車変速機構30は、それぞれ、サンギヤ31a,32aと、これらのサンギヤ31a,32aに噛み合った複数のピニオン31b,32bと、これらのピニオン31b,32bを支持するピニオンキャリア31c,32cと、ピニオン31b,32bに噛み合ったインターナルギヤ31d,32dとを有する第1、第2遊星歯車機構31,32で構成されている。
そして、上記タービンシャフト27と第1遊星歯車機構31のサンギヤ31aとの間にフォワードクラッチ41が、同じくタービンシャフト27と第2遊星歯車機構32のサンギヤ32aとの間にリバースクラッチ42が、また、タービンシャフト27と第2遊星歯車機構32のピニオンキャリヤ32cとの間に3−4クラッチ43がそれぞれ介設されていると共に、第2遊星歯車機構32のサンギヤ32aを固定する2−4ブレーキ44が配置されている。
さらに、第1遊星歯車機構31のインターナルギヤ31dと第2遊星歯車機構32のピニオンキャリヤ32cとが連結されて、これらと変速機ケース11との間にローリバースブレーキ45とワンウェイクラッチ46とが並列に配置されていると共に、第1遊星歯車機構31のピニオンキャリヤ31cと第2遊星歯車機構32のインターナルギヤ32dとが連結されて、これらに出力ギヤ13が接続されている。そして、この出力ギヤ13の回転が伝導ギヤ2,3,4及び作動機構5を介して左右の車軸6,7に伝達されるようになっている。
ここで、上記各クラッチやブレーキ等の摩擦要素41〜45及びワンウェイクラッチ46の作動状態とギヤ段との関係をまとめると、次の表1に示すようになる。なお、この表1において、(○)は当該摩擦要素が締結されている場合を示す。また、ローリバースブレーキ45の欄における(◎)はLレンジのみで締結されることを示す。
次に、上記各摩擦要素41〜45に設けられた油圧室に対して作動圧を給排する油圧制御回路100について説明する。
ここで、上記摩擦要素41〜45のうち、バンドブレーキである2速及び4速用の2−4ブレーキは、作動圧が供給される油圧室としてアプライ室44aとリリース室44bとを有し、アプライ室44aのみに作動圧が供給されているときに該2−4ブレーキ44が締結され、リリース室44bのみに作動圧が供給されているとき、両室44a,44bとも作動圧が供給されていないとき、及び両室44a,44bとも作動圧が供給されているときに、2−4ブレーキが解放されるようになっている。また、その他の摩擦要素41〜43、45は単一の油圧室を有し、その油圧室に作動圧が供給されているときに、当該摩擦要素が締結されるようになっている。
図2に示すように、この油圧制御回路100には、主たる構成要素として、ライン圧を生成するレギュレータバルブ101と、手動操作によってレンジの切換を行うためのマニュアルバルブ102と、変速時に作動して各摩擦要素41〜45に通じる油路を切り換えるローリバースバルブ103、バイパスバルブ104、3−4シフトバルブ105及びロックアップシフトバルブ106と、これらのバルブ103〜106を作動させるための第1、第2オンオフソレノイドバルブ(以下「オンオフSV」と記す)111,112と、これらのオンオフSV111,112に供給される元圧を生成するソレノイドレデューシングバルブ(以下「レデューシングバルブ」と記す)107と、第1オンオフSV111からの作動圧の供給先を切り換えるソレノイドリレーバルブ(以下「リレーバルブ」と記す)108と、各摩擦要素41〜45の油圧室に供給される作動圧の生成、調整、排出等の制御を行う第1〜第3デューティソレノイドバルブ(以下「デューティSV」と記す)121,122,123等が備えられている。
ここで、上記オンオフSV111,112およびデューティSV121〜123はいずれも3方弁であって、上、下流側の油路を連通させた状態と、下流側の油路をドレンさせた状態とが得られるようになっている。そして、後者の場合、上流側の油路が遮断されるので、ドレン状態で上流側からの作動油を徒に排出することがなく、オイルポンプ12の駆動ロスが低減される。
なお、オンオフSV111,112はONのときに上、下流側の通路を連通させる。また、デューティSV121〜123はOFFのとき、即ちデューティ率(1ON−OFF周期におけるON時間の比率)が0%のときに全開となって、上、下流側の油路を完全に連通させ、ONのとき、即ちデューティ率が100%のときに、上流側の油路を遮断して下流側の油路をドレン状態とすると共に、その中間のデューティ率では、上流側の油圧を元圧として、下流側にそのデューティ率に応じた値に調整した油圧を生成するようになっている。
上記レギュレータバルブ101は、オイルポンプ12から吐出された作動油の圧力を所定のライン圧に調整する。そして、このライン圧は、メインライン200を介して上記マニュアルバルブ102に供給させると共に、上記レデューシングバルブ107と3−4シフトバルブ105とに供給される。
このレデューシングバルブ107に供給されたライン圧は、ライン201,202を介して第1、第2オンオフSV111,112に供給される。
そして、この一定圧は、第1オンオフSV111がONのときには、ライン203を介して上記リレーバルブ108のスプールが図面上(以下同様)右側に位置するときは、さらにライン204を介してバイパスバルブ104のスプールを左側に付勢する。また、この一定圧は、リレーバルブ108にスプールが左側に位置するときは、ライン205を介して3−4シフトバルブ105の一端の制御ポート105aにパイロット圧として供給され、該3−4シフトバルブ105のスプールを右側に付勢する。
また、第2オンオフSV112がONのときには、上記レデューシングバルブ107からの一定圧は、ライン206を介してロックアップシフトバルブ106の一端の制御ポート106aにパイロット圧として供給され、該シフトバルブ106のスプールを左側に付勢する。また、バイパスバルブ104のスプールが右側に位置するときは、さらにライン207を介してロックアップシフトバルブ106のスプールを左側に付勢する。また、バイパスバルブ104のスプールが左側に位置するときは、ライン208を介してローリバースバルブ103の一端の制御ポート103aにパイロット圧として供給され、該ローリバースバルブ103のスプールを左側に付勢する。
さらに、レデューシングバルブ107からの一定圧は、ライン209を介して上記レギュレータバルブ101の調圧ポート101aにも供給される。その場合に、この一定圧は、上記ライン209に備えられたリニアソレノイドバルブ(以下「リニアSV」と記す)131により例えばエンジン負荷等に応じて調整され、したがって、レギュレータバルブ101によってライン圧がエンジン負荷等に応じて調整されることになる。
なお、上記3−4シフトバルブ105に導かれたメインライン200は、該バルブ105のスプールが右側に位置するときに、ライン210を介して第1アキュムレータ141に通じ、該アキュムレータ141にライン圧を導入する。
一方、上記メインライン200からマニュアルバルブ102に供給されるライン圧は、D,S,Lの各前進レンジでは第1出力ライン211および第2出力ライン212に、Rレンジでは第1出力ライン211に、また、Nレンジでは第3出力ライン213にそれぞれ導入される。
そして、上記第1出力ライン211は第2デューティSV122に導かれ、該第2デューティSV122に制御元圧としてライン圧を供給する。この第2デューティSV122の下流側は、ライン214を介してローリバースバルブ103に導かれていると共に、該バルブ103のスプールが右側に位置するときには、さらにライン215を介して2−4ブレーキ44のアプライ室44aに導かれ、また、上記ローリバースバルブ103のスプールが左側に位置するときには、さらにライン216を介してローリバースブレーキ45の油圧室に導かれる。ここで、上記ライン214からはライン217が分岐され、第2アキュムレータ142に導かれている。
また、上記第2出力ライン212は、第1デューティSV121及び第3デューティSV123に導かれ、これらのでデューティSV121,123に制御元圧としてライン圧をそれぞれ供給すると共に、3−4シフトバルブ105にも導かれている。この3−4シフトバルブ105に導かれたライン212は、該バルブ105のスプールが左側に位置するときに、さらにライン219を介してフォワードクラッチ41の油圧室に導かれる。
ここで、上記フォワードクラッチライン219から分岐されたライン220は3−4シフトバルブ105に導かれ、該バルブ105のスプールが左側に位置するときに、前述のライン210を介して第1アキュムレータ141に通じると共に、該バルブ105のスプールが右側に位置するときには、ライン221を介して2−4ブレーキ44のリリース室44bに通じる。
また、第2出力ライン212から制御元圧が供給される上記第3デューティSV123の下流側は、ライン222を介して上記リレーバルブ108の一端の制御ポート108aに導かれてパイロット圧を供給し、該リレーバルブ108のスプールを左側に付勢すると共に、上記ライン222から分岐されたライン223はローリバースバルブ103に導かれ、該バルブ103のスプールが右側に位置するときに、さらにライン224に通じる。
このライン224からは、オリフィス151を介してライン225が分岐されていると共に、この分岐されたライン225は3−4シフトバルブ105に導かれ、該3−4シフトバルブ105のスプールが左側に位置するときに、ライン221を介して2−4ブレーキ44のリリース室44bに導かれる。
また、上記ライン224からオリフィス151を介して分岐されたライン225からは、さらにライン226が分岐されていると共に、このライン226はバイパスバルブ104に導かれ、該バルブ104のスプールが右側に位置するときに、ライン227を介して3−4クラッチ43の油圧室に導かれる。
さらに、上記ライン224は直接バイパスバルブ104に導かれ、該バルブ104のスプールが左側に位置するときに、上記ライン226を介してライン225に通じる。つまり、ライン224とライン225とが上記オリフィス151をバイパスして通じることになる。
また、第2出力ライン212から制御元圧が供給される第1デューティSV121の下流側は、ライン228を介してロックアップシフトバルブ106に導かれ、該バルブ106のスプールが右側に位置するときに、上記フォワードクラッチライン219に連通する。また、該ロックアップシフトバルブ106のスプールが左側に位置するときには、ライン229を介してロックアップクラッチ26のフロント室26aに通じる。
さらに、マニュアルバルブ102からの第3出力ライン213はローリバースバルブ103に導かれ、該バルブ103にライン圧を供給する。そして、該バルブ103のスプールが左側に位置するときに、ライン230を介してリバースクラッチ42の油圧室に導かれる。
また、同じく第3出力ライン213から分岐されたライン231はバイパスバルブ104に導かれ、該バルブ104のスプールが右側に位置するときに、前述のライン208を介してローリバースバルブ103の制御ポート103aにパイロット圧としてライン圧を供給し、該ローリバースバルブ103のスプールを左側に付勢する。
以上の構成に加え、この油圧制御回路100には、コンバータリリーフバルブ109が備えられている。このバルブ109は、レギュレータバルブ101からライン232を介して供給される作動圧を一定圧に調圧した上で、これをライン233を介してロックアップシフトバルブ106に供給する。
そして、図3に示すように、3速ロックアップクラッチ解放時においては、ライン207の油圧が第2オンオフSV112のドレンポートからドレンされ、ロックアップシフトバルブ106のスプールが右側に位置することになり、上記一定圧は、ライン229を介してロックアップクラッチ26のフロント室26aに供給される。
また、図4に示すように、3速ロックアップクラッチ締結時においては、ライン207の油圧が第2オンオフSV112の供給ポートから供給されて、ロックアップシフトバルブ106のスプールが左側に位置することになり、上記一定圧は、ライン234を介してロックアップクラッチ26のリヤ室26bに供給されると共に、フロント室26aの油圧は第1デューティSV121のドレンポートからドレンされる。
ここで、ロックアップクラッチ26は、フロント室26aに上記一定圧が供給することにより解放されると共に、リヤ室26bに一定圧が供給されたときに締結されるようになっているが、この締結時において、ロックアップシフトバルブ106のスプールが左側に位置するときには、上記第1デューティSV121で生成された作動圧がフロント圧26に供給されることにより、この作動圧に応じた締結力が得られるようになり、所定のスリップ量を実現するスリップ制御が行われる。
また、この油圧制御回路100においては、前述のように、レギュレータバルブ101によって調整されるライン圧を、リニアSV131からの制御圧により、例えばエンジン負荷に応じた油圧に制御されるが、レンジに応じたライン圧の制御も行われるようになっている。つまり、上記マニュアルバルブ102から導かれて、D,S,L及びNレンジでメインライン200に通じるライン235が、レギュレータバルブ101の減圧ポート101bに接続されており、上記D,S,L及びNレンジでは、Rレンジよりライン圧の調圧値を低くするようになっている。
一方、図5に示すように、この油圧制御回路100における上記第1、第2オンオフSV111,112、第1〜第3デューティSV121〜123及びリニアSV131を制御するコントローラ300が備えられている。
このコントローラ300には、当該車両の車速を検出する車速センサ301、エンジン負荷としてのスロットル開度を検出するスロットル開度センサ303、運転者によって選択されたレンジを検出するインヒビタスイッチ304、変速歯車機構30への入力回転数であるタービンシャフト27の回転数を検出するタービン回転数センサ305、変速歯車機構30の出力回転数を検出する出力回転数センサ306等からの信号が入力され、これらのセンサ及びスイッチ301〜307からの信号が示す当該車両ないしエンジンの運転状態等に応じて、上記オンオフSV111,112、デューティSV121〜123及びリニアSV131の作動を制御するようになっている。
コントローラ300は、図6に示すマップに基いて、車速とスロットル開度とに応じて予め設定された制御特性に従って目標変速段を設定し、その目標変速段が達成されるように、油圧制御回路100に備えられたオンオフSV111,112、デューティSV121〜123及びリニアSVなどに制御信号を出力し、油圧制御回路100の油路を切換えたり各摩擦要素41〜45に供給する制御油圧を生成する。
また、コントローラ300は、図7に示すマップに基いて、車速とスロットル開度とに応じて予め設定された制御特性に従ってロックアップクラッチ26の締結状態を制御する。すなわち、相対的に低負荷高回転領域は4速ロックアップ領域及び3速ロックアップ領域に設定されている。車両の運転状態が、このロックアップ領域にある間は、第1デューティSV121のデューティ率を大きくしてロックアップクラッチを完全締結状態とする。また、相対的に高負荷低回転領域はコンバータ領域に設定されている。車両の運転状態が、このコンバータ領域にある間は、第1デューティSV121のデューティ率を小さくして完全解放状態とする。
また、低負荷中回転領域は、加速スリップ領域に設定されている一方、スロットル開度がゼロ(全閉)のパワーオフ領域(減速領域)のうち相対的に高・中回転側は減速スリップ領域に設定されている。車両の運転状態が、これらのスリップ領域にある間は、第1デューティSV121のデューティ率を中庸の値に制御してロックアップクラッチ26をスリップ状態とする。
そして、車両の運転状態がコンバータ領域からスリップ領域へ移行したときは、コントローラ300は、トルクコンバータ20の入力要素(エンジン出力軸1)と出力要素(タービンシャフト27)との間のスリップ量が所定の目標スリップ量に収束するようにロックアップクラッチ26の締結力を制御するスリップ制御を行う。
次に、この第1、第2オンオフSV111,112及び第1〜第3デューティSV121〜123の作動状態と各摩擦要素41〜45の油圧室に対する作動圧の給排状態の関係を説明する。ここで、第1、第2オンオフSV111,112及び第1〜第3デューティSV121〜123の各変速段ごとの作動状態の組み合わせ(ソレノイドパターン)は、次の表2に示すように設定されている。
この表2中、(○)は、オンオフSV111,112についてはON、デューティSV121〜123についてはOFFであって、いずれも、上流側の油路を下流側の油路に連通させて元圧をそのまま下流側に供給する状態を示す。また、(×)は、オンオフSV111,112についてはOFF、デューティSV121〜123についてはONであって、いずれも、上流側の油路を遮断して、下流側の油路をドレンさせた状態を示す。さらに、第1デューティSV121についての(△)は、スリップ制御の際の中間圧を生成するためにデューティ制御されている状態を示す。
次に、上記自動変速機の3速ロックアップクラッチ解放時及び3速スリップ制御時の第1、第2オンオフSV111,112及び第1〜第3デューティSV121〜123の作動状態と各摩擦要素41〜45の油圧室に対する作動圧の給排状態の関係について説明する。
まず、3速でロックアップクラッチ解放時は、表2及び図8に示すように、第1デューティSV121が作動して、第1出力ライン212からのライン圧を元圧として作動圧を生成しており、この作動圧がライン228を介してロックアップシフトバルブ106に供給される。そして、該ロックアップシフトバルブ106のスプールが右側に位置することにより、上記作動圧は、さらにライン219を介してフォワードクラッチ41の油圧室にフォワードクラッチ圧として供給され、これにより該フォワードクラッチ41が締結される。
ここで、上記ライン219から分岐されたライン220が3−4シフトバルブ105及びライン210を介して第1アキュムレータ141に通じていることにより、上記フォワードクラッチ圧の供給が緩やかに行われる。
一方、第2デューティSV121も作動し、第1出力ライン211からのライン圧を元圧として作動圧を生成する。この作動圧は、ライン214を介してローリバースブレーキ45に供給されるが、この時点で該ローリバースバルブ103のスプールが右側に位置することにより、さらにライン215に導入され、2−4ブレーキ44のアプライ室44aにサーボアプライ圧として供給される。これにより、上記フォワードクラッチ41に加えて2−4ブレーキ44が締結される。
なお、上記ライン214はライン217を介して第2アキュムレータ142に通じているから、上記サーボアプライ圧の供給ないし2−4ブレーキ44の締結が緩やかになる。そして、このアキュムレータ142に蓄えられた作動油は、Lレンジの1速への変速に際してローリバースバルブ103のスプールが左側に移動したときに、ライン216からローリバースブレーキ45の油圧室にプリチャージされる。
また、第3デューティSV123も作動し、第2出力ライン212からのライン圧を元圧として作動圧を生成する。この作動圧は、ライン222及びライン223を介してローリバースバルブ103に供給されるが、この時点では該バルブ103のスプールが右側に位置することにより、さらにライン224に導入される。
そして、この第3デューティSV123で生成された作動圧は、上記ライン224からオリフィス151を解してライン225に導入されて3−4シフトバルブ105に導かれるが、この時点では該3−4シフトバルブ105のスプールが左側に位置することにより、さらにライン221を介して2−4ブレーキ44のリリース室44bにサーボリリース圧として供給される。これにより、2−4ブレーキ44が解放される。
また、上記ライン224からオリフィス151を介して分岐されたライン225からはさらにライン226が分岐されているから、上記作動圧は該ライン226によりバイパスバルブ104に導かれると共に、この時点では該バイパスバルブ104のスプールが右側に位置することにより、さらにライン227を介して3−4クラッチ43の油圧室に3−4クラッチ圧として供給される。従って、3速では、フォワードクラッチ41と3−4クラッチ43とが締結される一方、2−4ブレーキ44が解放されることになる。
なお、この3速の状態では、上記のように第3デューティSV123が作動圧を生成し、これがライン222を介してリレーバルブ108の制御ポート108aに供給されることにより、該リレーバルブ108のスプールが左側に移動する。
また、この3速の状態でロックアップクラッチ26がスリップ制御される場合は、表2及び図9に示すように、上記3速ロックアップクラッチ解放の状態に対して、まず第3オンオフSV112が作動することにより、レデューシングバルブ107(図2参照)からの一定圧が該第2オンオフSV112、ライン206、バイパスバルブ104及びライン207を介してロックアップシフトバルブ106のスプールを左側に移動させる。このとき、フォワードクラッチ41の油圧室には、ライン212からの作動圧が3−4シフトバルブ105及びライン218等を介して供給され、該フォワードクラッチ41が締結状態に保持される。
また、このとき、ロックアップクラッチ26においては、リヤ室26bにライン233,234を介してコンバータリリーフバルブ109(図2参照)からの一定圧が供給された状態で、第3デューティSV123により、フロント室26a内の作動圧が排出もしくはデューティ制御により調整される。これにより該ロックアップクラッチ26が締結状態もしくはスリップ状態に制御される。
ところで、図10は、ロックアップシフトバルブ106のスプールを左側に移動させるための元圧を発生させる第2オンオフSV112に故障が発生し、第1デューティSVが常にフォワードクラッチ41に接続されているときの状態を示す。このとき、ロックアップシフトバルブ106のスプールは右側に位置するので、第1デューティSV121からロックアップクラッチ26のフロント室26aに供給されるべき作動圧がフォワードクラッチ41に供給されることになる。しかしながら、図4に示したように、スリップ制御が実行されると第1デューティSV121がドレンポートを解放するよう制御されるので、このとき第1デューティSV121で生成される作動圧はフォワードクラッチ41を完全に締結できる圧力はなく、フォワードクラッチ41は半クラッチ状態になる。一方、ロックアップシフトバルブ106のスプールが右側に位置するときは、ライン233を介してロックアップクラッチ26のフロント室26aに解放用の油圧が供給される。
このような状態において、スロットル開度が増大されると、半クラッチ状態のフォワードクラッチ41に滑りが生じてクラッチフェイシングの摩損が生じることになる。また、ロックアップクラッチ26は解放状態であるので、スリップ制御時よりもスリップ量が大きくなる異常によって上記故障を検出する場合、変速機10はニュートラル状態になっているので、タービンシャフト27に掛かる負荷が軽減され、スリップ量は減少することになる。その結果、スリップ制御時のスリップ量が実現されて、正常であるとの誤判定が生じ、上記故障の検出が遅れることになる。
なお、上記のようなロックアップシフトバルブ106のスプールが右側に固定される故障の原因は、第2オンオフSV112の故障だけでなく、この第2オンオフSV112による油圧供給経路上のいずれかに生じる故障や、ロックアップシフトバルブ106のスプールの噛み込みの故障などによっても発生する。
このようなロックアップシフトバルブ106のスプールが右側に固定される故障に対して、本発明においては、このような故障判定をタービン回転数センサ305と出力回転数センサ306による検出値により算出した変速比を用いて故障判定を行うようにしている。すなわち、加速時においてフォワードクラッチ41が半クラッチ状態のときは、出力側の回転数に対して入力側の回転数が上昇しギヤ比が増える一方、減速比においては出力側の回転数に対して入力側の回転数が減少してギヤ比は減少するので、このとき、3速変速段において許容されるギヤ比の範囲を逸脱したとき、故障判定を行うようにしている。
次に、この故障判定について図11のフローチャート及び図12のマップを用いて説明する。
まず、ステップS1で変速中か否かを検出し、変速中のときは以下の故障判断を行わないようにしてリターンする。そして、ステップS1で変速中でないときは、ステップS2でスリップ制御中か否かを検出する。スリップ制御中でないときはリターンし、スリップ制御中のときはステップS3で図11に示すマップに基いてギヤ比が所定範囲(Gmin〜Gmax)内にあるか否かを検出する。このとき、ギヤ比が上記所定範囲(Gmin〜Gmax)内にあるときは、故障は生じていないものと判断してリターンし、ギヤ比が上記所定範囲(Gmin〜Gmax)内から逸脱しているときは、ステップS4に進んでギヤ比が上記所定範囲(Gmin〜Gmax)内から逸脱している積算時間を検出する。そして、逸脱した状態が所定時間T経過すると、ステップS5でロックアップシフトバルブ106のスプールが常に右側に位置する故障が発生しているものと判断して、ステップ6でスリップ制御を禁止する。このときスリップ制御を禁止するとは、スリップ制御から図3に示すロックアップクラッチ26を完全に解放する制御に切換えてフォワードクラッチ41に高い作動圧を供給するようにすることである。
以上のように、ロックアップシフトバルブ106のスプールが右側に固定される故障をロックアップクラッチ26のスリップ量ではなく、変速比の状態に基いて判定するので、スリップ量の減少に基く誤判定が生じることがなくなり、その結果、迅速な故障判断が実現されて、フォワードクラッチ41の摩損の回避することができる。
また、変速比が所定の許容範囲外になった状態であるとき、つまり、例えば加速時においてフォワードクラッチ41が半クラッチ状態であることに起因して動力が伝達されないときには変速比が許容範囲のローギヤ比側に逸脱する状態である一方、減速時において同様のときには変速比が許容範囲のハイギヤ比側に逸脱する状態であるので、これを検出することによって故障判定を行うことによって、迅速かつ正確に故障判定を行うことができる。このとき、図13に示すように変速比の変化速度が所定の許容変化速度ΔG以上になったとき、すなわち、加速時において変速比がローギヤ比側に急激に変化したときや、減速時において変速比がハイギヤ比側に急激に変化したときを検出することによって故障判定を行うことによって、上記の図12に示した変速比が許容範囲(Gmin〜Gmax)から逸脱する以前に故障を検出することができ、故障検出の一層の迅速化を図ることができる。
一方、スロットル開度が所定のスロットル開度以上のとき、すなわち加速時に、変速比がハイギヤ比側に変化する場合は、フォワードクラッチ41が半クラッチ状態にある結果の現象ではなく、ロックアップシフトバルブ106のスプールが固定される故障とは別の箇所が故障していると考えられるので、このときは故障判定を行わないようにして、不適切な故障判定を防止することができる。
また、スロットル開度が所定のスロットル開度以下のとき、すなわち減速時に、変速比が所定変速比範囲に対してローギヤ比側に範囲外である場合は、同様にフォワードクラッチ41が半クラッチ状態にある結果の現象ではないので、故障判定を行わないようにして不適切な故障判定を防止することができる。
そして、故障判定がされたときには、スリップ制御を禁止し、つまりロックアップクラッチ26が解放状態になるように制御することによって、ロックアップクラッチ26の解放用の高い作動圧がフォワードクラッチ41に供給されることになるので、フォワードクラッチ41の半クラッチ状態を解消することができ、該クラッチ41の摩損を防止することができる。
また、故障判定がされたときには、フォワードクラッチ41の締結力を増大するように第1デューティSV121により生成される作動圧が高い圧力になるように制御するようにしてもよい。このとき、同様にフォワードクラッチ41の半クラッチ状態を解消することができ、該クラッチ41の摩損を防止することができる。
なお、本実施の形態においては、ギヤ段が3速のときの例について示したが、別の油圧制御回路の構成においても、単一のデューティソレノイドバルブによりロックアップクラッチのフロント室及びいずれかの摩擦要素に供給する作動圧を生成するように構成されているときは、スリップ制御用の比較的低い油圧が摩擦要素に供給され、半クラッチ状態となりうるので、本発明は、本実施の形態で示した油圧制御回路及び3速時に限らず適用可能である。