図1は、本発明の実施例に係る油圧制御装置50を含む動力伝達装置20を搭載した車両である自動車10の概略構成図である。同図に示す自動車10は、前輪駆動車両として構成されており、ガソリンや軽油といった炭化水素系の燃料と空気との混合気の爆発燃焼により動力を出力する原動機としてのエンジン(内燃機関)12と、エンジン12を制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)14と、図示しない電子制御式油圧ブレーキユニットを制御するブレーキ用電子制御ユニット(以下、「ブレーキECU」という)16と、エンジン12に接続されると共にエンジン12からの動力を左右の駆動輪(前輪)DWに伝達する動力伝達装置20とを備える。動力伝達装置20は、トランスミッションケース22と、流体伝動装置(トルクコンバータ)23と、自動変速機25と、油圧制御装置50と、これらを制御する本発明による制御装置としての変速用電子制御ユニット(以下、「変速ECU」という)21とを含む。
エンジンECU14は、図示しないCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート(何れも図示せず)等を有する。図1に示すように、エンジンECU14には、アクセルペダル41の踏み込み量(操作量)を検出するアクセルペダルポジションセンサ42からのアクセル開度Accや、車速センサ47からの車速V、クランクシャフトの回転位置を検出する図示しないクランクシャフトポジションセンサといった各種センサ等からの信号、ブレーキECU16や変速ECU21からの信号等が入力され、エンジンECU14は、これらの信号に基づいて何れも図示しない電子制御式のスロットルバルブや燃料噴射弁および点火プラグ等を制御する。
ブレーキECU16も図示しないCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート(何れも図示せず)等を有する。図1に示すように、ブレーキECU16には、ブレーキペダル43が踏み込まれたときにマスタシリンダ圧センサ44により検出されるマスタシリンダ圧Pmcや、車速センサ47からの車速V、図示しない各種センサ等からの信号、エンジンECU14や変速ECU21からの信号等が入力され、ブレーキECU16は、これらの信号に基づいて図示しないブレーキアクチュエータ(油圧アクチュエータ)等を制御する。
変速ECU21も図示しないCPUを中心とするマイクロコンピュータとして構成されており、CPUの他に各種プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート、タイマ(何れも図示せず)等を備える。図1に示すように、変速ECU21には、アクセルペダルポジションセンサ42からのアクセル開度Accや、複数のシフトポジションの中から所望のシフトポジションを選択するためのシフトレバー45の操作位置を検出するシフトポジションセンサ46からのシフトポジションSP、車速センサ47からの車速V、自動変速機25の入力回転数(タービンランナ23bまたは自動変速機25の入力軸26の回転数)Ninを検出する図示しない入力回転数センサ、自動変速機25の出力回転数(出力軸27の回転数)Noutを検出する図示しない出力回転数センサ、油圧制御装置50(例えば、図示しないバルブボディ内)の作動油の油温Toilを検出する油温センサ49といった各種センサ等からの信号、エンジンECU14やブレーキECU16からの信号等が入力され、変速ECU21は、これらの信号に基づいて流体伝動装置23や自動変速機25、すなわち油圧制御装置50を制御する。また、実施例において、シフトレバー45を介して選択可能なシフトポジションSPとしては、駐車時に選択されるパーキングポジション(Pポジション)、後進走行用のリバースポジション(Rポジション)、中立のニュートラルポジション(Nポジション)、通常の前進走行用のドライブポジション(Dポジション)に加えて、運転者に任意の変速段の選択を許容するスポーツポジション(Sポジション)が用意されている。
動力伝達装置20の流体伝動装置23は、図2に示すように、エンジン12のクランクシャフトに接続される入力側のポンプインペラ23aと、自動変速機25の入力軸(入力部材)26に接続された出力側のタービンランナ23bと、ロックアップクラッチ23cとを含むものである。オイルポンプ24は、ポンプボディとポンプカバーとからなるポンプアッセンブリと、ハブを介して流体伝動装置23のポンプインペラ23aに接続された外歯ギヤとを備えるギヤポンプとして構成されている。エンジン12からの動力により外歯ギヤを回転させれば、オイルポンプ24によりオイルパン(図示省略)に貯留されている作動油(ATF)が吸引されて油圧制御装置50へと圧送される。
自動変速機25は、8段変速式の変速機として構成されており、図1に示すように、入力軸26や出力軸27に加えて、ダブルピニオン式の第1遊星歯車機構30と、ラビニヨ式の第2遊星歯車機構35と、入力側から出力側までの動力伝達経路を変更するための4つのクラッチC1,C2,C3およびC4、2つのブレーキB1およびB2、並びにワンウェイクラッチF1とを含む。自動変速機25の出力軸27は、中空に形成されており、ギヤ機構28および差動機構29を介して駆動輪DWに連結される。
第1遊星歯車機構30は、外歯歯車であるサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置される内歯歯車であるリングギヤ32と、互いに噛合すると共に一方がサンギヤ31に、他方がリングギヤ32に噛合する2つのピニオンギヤ33a,33bの組を自転かつ公転自在に複数保持するプラネタリキャリヤ34とを有する。図示するように、第1遊星歯車機構30のサンギヤ31は、トランスミッションケース22に固定されており、第1遊星歯車機構30のプラネタリキャリヤ34は、入力軸26に一体回転可能に接続されている。また、第1遊星歯車機構30は、いわゆる減速ギヤとして構成されており、入力要素であるプラネタリキャリヤ34に伝達された動力を減速して出力要素であるリングギヤ32から出力する。
第2遊星歯車機構35は、外歯歯車である第1サンギヤ36aおよび第2サンギヤ36bと、第1および第2サンギヤ36a,36bと同心円上に配置される内歯歯車であるリングギヤ37と、第1サンギヤ36aに噛合する複数のショートピニオンギヤ38aと、第2サンギヤ36bおよび複数のショートピニオンギヤ38aに噛合すると共にリングギヤ37に噛合する複数のロングピニオンギヤ38bと、複数のショートピニオンギヤ38aおよび複数のロングピニオンギヤ38bを自転自在(回転自在)かつ公転自在に保持するプラネタリキャリヤ39とを有する。第2遊星歯車機構35のリングギヤ37は、出力軸27に接続されており、第2遊星歯車機構35のプラネタリキャリヤ39は、ワンウェイクラッチF1を介してトランスミッションケース22により支持される。
クラッチC1は、ピストン、複数の摩擦板や相手板、作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有し、第1遊星歯車機構30のリングギヤ32と第2遊星歯車機構35の第1サンギヤ36aとを締結すると共に両者の締結を解除することができる油圧クラッチ(油圧式摩擦係合要素)である。クラッチC2は、ピストン、複数の摩擦板や相手板、作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有し、入力軸26と第2遊星歯車機構35のプラネタリキャリヤ39とを締結すると共に両者の締結を解除することができる油圧クラッチである。クラッチC3は、ピストン、複数の摩擦板や相手板、作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有し、第1遊星歯車機構30のリングギヤ32と第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bとを締結すると共に両者の締結を解除することができる油圧クラッチである。クラッチC4は、ピストン、複数の摩擦板や相手板、作動油が供給される油室等により構成される油圧サーボを有し、第1遊星歯車機構30のプラネタリキャリヤ34と第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bとを締結すると共に両者の締結を解除することができる油圧クラッチである。
ブレーキB1は、油圧サーボを含むバンドブレーキあるいは多板摩擦式ブレーキとして構成されており、第2遊星歯車機構35の第2サンギヤ36bをトランスミッションケース22に対して回転不能に固定すると共に第2サンギヤ36bのトランスミッションケース22に対する固定を解除することができる油圧ブレーキ(油圧式摩擦係合要素)である。ブレーキB2は、油圧サーボを含むバンドブレーキあるいは多板摩擦式ブレーキとして構成されており、第2遊星歯車機構35のプラネタリキャリヤ39をトランスミッションケース22に対して回転不能に固定すると共にプラネタリキャリヤ39のトランスミッションケース22に対する固定を解除することができる油圧ブレーキである。
これらのクラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2は、油圧制御装置50による作動油の給排を受けて動作する。図3に自動変速機25の各変速段とクラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2、並びにワンウェイクラッチF1の作動状態との関係を表した作動表を示し、図4に自動変速機25を構成する回転要素間における回転数の関係を例示する速度図を示す。自動変速機25は、クラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2を図3の作動表に示す状態とすることで図4に示すように前進第1速〜前進第8速、後進第1速および後進第2速の変速段を提供する。図3からわかるように、クラッチC1は、前進第5速(所定変速段)未満の前進低速段(前進第1速〜前進第4速)の形成に際して常時係合されると共に、クラッチC2は、前進第5速以上の前進高速段(前進第5速〜前進第8速)の形成に際して常時係合され、前進第5速が形成される際には、クラッチC1およびC2が同時に係合される。なお、クラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2の少なくとも何れかは、ドグクラッチといった噛み合い係合要素とされてもよい。
図5は、油圧制御装置50を示す系統図である。油圧制御装置50は、エンジン12からの動力により駆動されてオイルパンから作動油を吸引して吐出する上述のオイルポンプ24に接続されるものであり、流体伝動装置23や自動変速機25により要求される油圧を生成すると共に、各種軸受などの潤滑部分に作動油を供給する。実施例の油圧制御装置50は、図示しないバルブボディと、オイルポンプ24からの油圧(作動油)を調圧してライン圧PLを生成するプライマリレギュレータバルブ51と、プライマリレギュレータバルブ51により生成されるライン圧PLを調圧して略一定のモジュレータ圧Pmodを生成するモジュレータバルブ52と、シフトレバー45の操作位置に応じてプライマリレギュレータバルブ51からのライン圧PLの供給先を切り替えるマニュアルバルブ53とを含む。
また、実施例の油圧制御装置50は、プライマリレギュレータバルブ51により生成される元圧としてのライン圧PLを調圧して対応するクラッチ等への油圧を生成する電磁弁装置としての第1リニアソレノイドバルブSL1、第2リニアソレノイドバルブSL2、第3リニアソレノイドバルブSL3、第4リニアソレノイドバルブSL4および第5リニアソレノイドバルブSL5と、オイルポンプ24側(モジュレータバルブ52)からのモジュレータ圧Pmodをアクセル開度Accあるいは図示しないスロットルバルブの開度に応じて調圧するリニアソレノイドバルブ(電磁弁装置)SLTと、それぞれ信号圧を出力可能な電磁弁である第1信号圧出力バルブS1および第2信号圧出力バルブS2とを含む。
プライマリレギュレータバルブ51は、リニアソレノイドバルブSLTからの油圧Psltにより駆動される。また、実施例のモジュレータバルブ52は、スプリングの付勢力とフィードバック圧とによりプライマリレギュレータバルブ51からのライン圧PLを調圧して略一定のモジュレータ圧Pmodを生成する。マニュアルバルブ53は、シフトレバー45と連動して軸方向に移動可能なスプールや、ライン圧PLが供給されるライン圧入力ポート53l、ドライブレンジ圧出力ポート53d、リバースレンジ圧出力ポート53r、ドレンポート53e等を有する。
マニュアルバルブ53は、シフトポジションとしてDポジションやSポジションといった前進走行ポジションが選択された際、上述のライン圧入力ポート53lとドライブレンジ圧出力ポート53dとを連通させ、プライマリレギュレータバルブ51からのライン圧PLをドライブレンジ圧出力ポート53dから出力する。また、マニュアルバルブ53は、シフトポジションとしてRポジション(後進走行ポジション)が選択された際、上述のライン圧入力ポート53lとリバースレンジ圧出力ポート53rとを連通させ、プライマリレギュレータバルブ51からのライン圧PLをリバースレンジ圧出力ポート53rから出力する。なお、シフトポジションがDポジションやRポジション等から他の位置に変更されると、マニュアルバルブ53は、それまでライン圧入力ポートと連通していたドライブレンジ圧出力ポート53dあるいはリバースレンジ圧出力ポート53rをドレンポート53eと連通させ、NポジションやPポジションが選択された際にもドライブレンジ圧出力ポート53dあるいはリバースレンジ圧出力ポート53rをドレンポート53eと連通させる。
第1リニアソレノイドバルブSL1は、図示しないソレノイドに印加される電流に応じて元圧としてのライン圧PLを調圧してクラッチC1への油圧Psl1を生成可能な常閉型リニアソレノイドバルブである。第2リニアソレノイドバルブSL2は、図示しないソレノイドに印加される電流に応じて元圧としてのライン圧PLを調圧してクラッチC2への油圧Psl2を生成可能な常閉型リニアソレノイドバルブである。第3リニアソレノイドバルブSL3は、図示しないソレノイドに印加される電流に応じて元圧としてのライン圧PLを調圧してクラッチC3やブレーキB2への油圧Psl3を生成可能な常閉型リニアソレノイドバルブである。第4リニアソレノイドバルブSL4は、図示しないソレノイドに印加される電流に応じて元圧としてのライン圧PLを調圧してクラッチC4への油圧Psl4を生成可能な常閉型リニアソレノイドバルブである。第5リニアソレノイドバルブSL5は、図示しないソレノイドに印加される電流に応じて元圧としてのライン圧PLを調圧してブレーキB1への油圧Psl5を生成可能な常閉型リニアソレノイドバルブである。また、実施例において、リニアソレノイドバルブSLTとして、常開型リニアソレノイドバルブが採用されている。
第1信号圧出力バルブS1は、モジュレータバルブ52から入力したモジュレータ圧Pmodを第1信号圧P1として出力可能な常閉型オンオフソレノイドバルブである。第2信号圧出力バルブS2は、モジュレータバルブ52から入力したモジュレータ圧Pmodを第2信号圧P2として出力可能な常閉型オンオフソレノイドバルブである。なお、第1および第2信号圧出力バルブS1,S2は、モジュレータ圧Pmod以外のライン圧PL(オイルポンプ24からの油圧)に基づく油圧(ライン圧PLを含む)を信号圧用元圧として入力するものであってもよい。
上述の第1〜第5リニアソレノイドバルブSL1〜SL5、リニアソレノイドバルブSLT、第1および第2信号圧出力バルブS1,S2は、何れも変速ECU21により制御される。すなわち、変速ECU21は、第1〜第5リニアソレノイドバルブSL1〜SL5への油圧指令値を設定し、設定した油圧指令値に基づいて第1〜第5リニアソレノイドバルブSL1〜SL5(ソレノイド部)への電流を設定する図示しない駆動回路を制御する。例えば、変速ECU21は、変速段の変更すなわちアップシフトまたはダウンシフトに際して、予め定められた図示しない変速線図から取得されるアクセル開度Acc(あるいはスロットルバルブの開度)および車速Vに対応した目標変速段が形成されるように、変速段の変更に伴って係合されるクラッチまたはブレーキ(係合側要素)に対応した第1〜第5リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の何れか1つへの油圧指令値(係合圧指令値)を設定する。また、変速ECU21は、変速段の変更に際して、当該変速段の変更に伴って解放されるクラッチまたはブレーキ(解放側要素)に対応した第1〜第5リニアソレノイドバルブSL1〜SL5の何れか1つへの油圧指令値(解放圧指令値)を設定する。そして、自動変速機25の摩擦係合要素であるクラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2への油圧は、それぞれに対応する第1、第2、第3、第4または第5リニアソレノイドバルブSL1,SL2,SL3,SL4またはSL5により直接制御(設定)される。また、変速ECU21は、アクセル開度Accあるいは図示しないスロットルバルブの開度に応じた油圧指令値を設定し、設定した油圧指令値に基づいてリニアソレノイドバルブSLT(ソレノイド部)への電流を設定する図示しない駆動回路を制御する。更に、変速ECU21は、第1および第2信号圧出力バルブS1,S2に信号圧を出力させる際には、要求される信号圧が出力されるように第1および第2信号圧出力バルブS1,S2に対応した図示しない駆動回路を制御する。
また、変速ECU21は、シフトレバー45がDポジション等の前進走行ポジションにセットされた状態で予め定められたニュートラル制御開始条件が成立すると、油圧制御装置50から自動車10の発進に際して係合される発進クラッチであるクラッチC1に供給される油圧Psl1を低下させるニュートラル制御を実行する。このようなニュートラル制御を実行することにより、自動車10の停車時等に流体伝動装置23における動力の損失やオイルポンプ24の負荷を低減させ、それによりエンジン12の負荷を低下させて燃費を向上させることができる。そして、変速ECU21は、ニュートラル制御の実行中に予め定められたニュートラル解除条件が成立すると、発進クラッチであるクラッチC1に供給される油圧Psl1を高めてニュートラル制御を解除する。
ニュートラル制御開始条件は、例えば、ブレーキペダル43が踏み込まれて自動車10が制動されると共にエンジン12がアイドル運転されており、かつ車速Vが予め定められたニュートラル制御開始車速Vref(例えば、ブレーキペダル43が踏み込まれて自動車10が停車しそうなときの車速)以下であるときに成立する。実施例において、ニュートラル制御の実行中におけるクラッチC1への油圧Psl1の目標値は、例えば、ストロークエンド圧よりも低く、クラッチC1にトルク容量をもたすことなく当該クラッチC1の油室に作動油を満たすことができる程度の圧力とされる。これにより、自動車10が完全に停車する前からニュートラル制御を実行し、それによりエンジン12の負荷を低下させて燃費をより向上させることができる。
また、実施例において、ニュートラル制御開始条件は、ブレーキペダル43が踏み込まれて自動車10が停車した状態でシフトポジションがNポジションからDポジション等の前進走行ポジションに切り替えられたときや、自動車10の走行中にシフトポジションがDポジション→Nポジション→Dポジションといったように切り換えられたときにも成立する。そして、ニュートラル解除条件は、運転者によるブレーキペダル43の踏み込みが解除されるか、運転者によりアクセルペダル41が踏み込まれた際に成立する。なお、上述のようなニュートラル制御は、シフトポジションとしてRポジションが選択されている際に実行されてもよい。
更に、実施例の変速ECU21は、ニュートラル制御開始条件が成立している際に、予め定められたヒルホールド開始条件が成立すると、ヒルホールド解除条件が成立するまで、ニュートラル制御と並行して、自動変速機25の出力軸27の回転を抑制すべく第5リニアソレノイドバルブSL5からの油圧Psl5によりブレーキB1を係合させるヒルホールド制御を実行する。また、実施例の変速ECU21は、シフトポジションとしてNポジションが選択されている際、あるいはニュートラル制御開始条件が成立している際に、予め定められたB2低圧待機条件が成立すると、B2低圧待機解除条件が成立するまで、後進第1速(および後進第2速)の形成に際して係合されるブレーキB2に当該ブレーキB2に対応した第3リニアソレノイドバルブSL3から予め定められた待機圧Pstbyに一致する油圧Psl3を供給するB2低圧待機制御を実行する。B2低圧待機制御の実行によりブレーキB2に供給される待機圧Pstbyは、ブレーキB2をスリップさせるように、例えば、ピストンストロークが開始圧よりも高く、完全係合圧よりも低い圧力とされる。ただし、B2低圧待機条件が成立した際に、ブレーキB2に待機圧Pstbyとして完全係合圧を供給してもよい。
上述のような複数のソレノイドバルブに加えて、実施例の油圧制御装置50は、図5に示すように、フェールセーフを図ると共に、第3リニアソレノイドバルブSL3からの油圧Psl3をクラッチC3とブレーキB2とに選択的に供給可能とすべく、リンプホーム用切替バルブ60と、保持圧切替バルブあるいは信号圧切替バルブとしての第1ソレノイドリレーバルブ70と、信号圧供給遮断バルブとしての第2ソレノイドリレーバルブ80と、B2供給制御バルブ(第1切替バルブ)90と、C3/B2供給制御バルブ(第2切替バルブ)95とを含む。
リンプホーム用切替バルブ60は、バルブボディ内に軸方向に移動自在に配置されるスプール600と、バルブボディ内に配置されてスプール600を図5における下方に付勢するスプリング601とを有するスプールバルブであり、第1リニアソレノイドバルブSL1の出力ポートと油路を介して連通する第1入力ポート61aと、第2リニアソレノイドバルブSL2の出力ポートと油路を介して連通する第2入力ポート61bと、第3リニアソレノイドバルブSL3の出力ポートと油路を介して連通する第3入力ポート61cと、クラッチC1の油圧入口と油路を介して連通する第1出力ポート62aと、クラッチC2の油圧入口と油路を介して連通する第2出力ポート62bと、第3出力ポート62cとを有する。更に、リンプホーム用切替バルブ60は、リニアソレノイドバルブSLTの出力ポートと油路を介して連通する第1信号圧入力ポート63aと、モジュレータバルブ52からのモジュレータ圧Pmodが供給される第2信号圧入力ポート63bと、スプリング601が配置されるスプリング室と連通すると共に保持圧Pholdが供給される保持圧入力ポート64と、それぞれマニュアルバルブ53のドライブレンジ圧出力ポート53dと油路を介して連通する第1および第2ドライブレンジ圧入力ポート65a,65bと、ライン圧PLが供給されるライン圧入力ポート66とを有する。
実施例において、リンプホーム用切替バルブ60の取付状態は、スプール600がスプリング601によって図5中下方に付勢される同図中右側半分の状態とされている。リンプホーム用切替バルブ60の取付状態では、第1入力ポート61aと第1出力ポート62aとが連通され、第2入力ポート61bと第2出力ポート62bとが連通され、第3入力ポート61cと第3出力ポート62cとが連通され、第1および第2ドライブレンジ圧入力ポート65a,65bとライン圧入力ポート66とが閉鎖される。そして、オイルポンプ24により油圧が生成されており、シフトポジションとしてDポジション等の前進走行ポジションが選択されている際、リンプホーム用切替バルブ60の保持圧入力ポート64には、基本的に、第1ソレノイドリレーバルブ70からライン圧PLに一致するドライブレンジ圧PDまたは第2信号圧出力バルブS2により出力されるモジュレータ圧Pmodに一致する第2信号圧P2が供給される。また、オイルポンプ24により油圧が生成されている際には、リンプホーム用切替バルブ60の第1信号圧入力ポート63aに常開型のリニアソレノイドバルブSLTからの油圧Psltが供給されると共に、第2信号圧入力ポート63bにモジュレータバルブ52からのモジュレータ圧Pmodが供給される。
図5に示すように、リンプホーム用切替バルブ60において、第1信号圧入力ポート63aに供給された油圧SLTを受けるスプール600の第1受圧面600aは、第2信号圧入力ポート63bに供給されたモジュレータ圧Pmodを受ける図5における下側の第1モジュレータ圧受圧面600bと同一の面積を有する。また、第1モジュレータ圧受圧面600bは、第2信号圧入力ポート63bに供給されたモジュレータ圧Pmodを受ける図5における上側の第2モジュレータ圧受圧面600cよりも大きい面積を有する。更に、第2モジュレータ圧受圧面600cは、保持圧入力ポート64に供給された保持圧Pholdを受ける保持圧受圧面600dと同一の面積を有する。そして、スプール600の第1受圧面600aに作用した油圧SLTは、スプリング601による付勢力とは反対方向の推力を発生させ、第1モジュレータ圧受圧面600bに作用したモジュレータ圧Pmodは、スプリング601による付勢力と同方向の推力を発生させる。また、第2モジュレータ圧受圧面600cに作用したモジュレータ圧Pmodは、スプリング601による付勢力とは反対方向の推力を発生させ、保持圧受圧面600dに作用した保持圧Pholdは、スプリング601による付勢力と同方向の推力を発生させる。
従って、保持圧入力ポート64に保持圧Pholdが供給されれば、第1信号圧入力ポート63aに供給される油圧Psltが元圧であるモジュレータ圧Pmodに一致したとしても、第1および第2モジュレータ圧受圧面600b,600cの面積差に起因して、スプリング601の付勢力等によりスプール600が図5における下方に付勢され、リンプホーム用切替バルブ60は、取付状態すなわち通常供給状態に保持されることになる。リンプホーム用切替バルブ60が取付状態すなわち通常供給状態に保持されると、第1入力ポート61aおよび第1出力ポート62aを介した第1リニアソレノイドバルブSL1からクラッチC1への油圧Psl1の供給、第2入力ポート61bおよび第2出力ポート62bを介した第2リニアソレノイドバルブSL2からクラッチC2への油圧Psl2の供給、および第3出力ポート62cを介した第3リニアソレノイドバルブSL3からの油圧Psl3の出力が可能となる。
一方、電源喪失等により第1〜第5リニアソレノイドバルブSL1〜SL5、リニアソレノイドバルブSLT、第1および第2信号圧出力バルブS1,S2といった電気的に制御されるバルブのすべて(以下「全ソレノイドバルブ」という)を制御し得なくなり、常閉型の第1〜第5リニアソレノイドバルブSL1〜SL5、第1および第2信号圧出力バルブS1,S2から油圧が出力されなくなるオールフェール状態が発生すると、実施例の油圧制御装置50では、第1ソレノイドリレーバルブ70から保持圧Pholdが供給されなくなる。そして、オールフェール状態が発生すると共にオイルポンプ24により油圧が生成されている際には、リンプホーム用切替バルブ60の第1信号圧入力ポート63aには、常開型のリニアソレノイドバルブSLTから元圧であるモジュレータ圧Pmodがそのまま供給され、第2信号圧入力ポート63bにもモジュレータ圧Pmodが供給される。従って、この場合には、第1および第2モジュレータ圧受圧面600b,600cの面積差に起因してモジュレータ圧Pmodによりスプール600に付与される推力がスプリング601の付勢力に打ち勝って当該スプール600を図5における上方へと移動させる。これにより、リンプホーム用切替バルブ60は、オールフェール状態が発生した際に図5中左側半分の状態すなわちフェール供給状態を形成する。
リンプホーム用切替バルブ60のフェール供給状態では、第1ドライブレンジ圧入力ポート65aと第1出力ポート62aとが連通され、第2ドライブレンジ圧入力ポート65bと第2出力ポート62bとが連通され、ライン圧入力ポート66と第3出力ポート62cとが連通され、第1、第2および第3入力ポート61a〜61cが閉鎖される。ここで、実施例の油圧制御装置50は、更に図示しない第2のリンプホーム用切替バルブを含んでおり、当該第2のリンプホーム用切替バルブは、オールフェール状態が発生した際にクラッチC1が係合される前進第1速〜前進第4速(以下「前進低速段」という)の何れかが形成されていた場合、リンプホーム用切替バルブ60の第1ドライブレンジ圧入力ポート65aにのみマニュアルバルブ53からのドライブレンジ圧PDを供給する。また、第2のリンプホーム用切替バルブは、オールフェール状態が発生した際にクラッチC2が係合される前進第5速〜前進第8速(以下「前進高速段」という)の何れかが形成されていた場合、リンプホーム用切替バルブ60の第2ドライブレンジ圧入力ポート65bにのみマニュアルバルブ53からのドライブレンジ圧PDを供給する。そして、実施例の油圧制御装置50では、オールフェール状態が発生した際に、リンプホーム用切替バルブ60の第3出力ポート62cが後述するようにC3/B2供給制御バルブ95を介してクラッチC3の油圧入口と連通される。
これにより、実施例の油圧制御装置50によれば、オールフェール状態が発生した際に前進低速段の何れかが形成されていた場合には、リンプホーム用切替バルブ60を介してクラッチC1にドライブレンジ圧PDを供給して当該クラッチC1を係合させると共に、リンプホーム用切替バルブ60およびC3/B2供給制御バルブ95を介してクラッチC3にライン圧PLを供給して当該クラッチC3を係合させ、自動変速機25の前進第3速を形成することができる。また、オールフェール状態が発生した際に前進高速段の何れかが形成されていた場合には、リンプホーム用切替バルブ60を介してクラッチC2にドライブレンジ圧PDを供給して当該クラッチC2を係合させると共に、リンプホーム用切替バルブ60およびC3/B2供給制御バルブ95を介してクラッチC3にライン圧PLを供給して当該クラッチC3を係合させ、自動変速機25の前進第7速を形成することができる。
上述のリンプホーム用切替バルブ60に保持圧Pholdを供給する第1ソレノイドリレーバルブ70は、図5に示すように、バルブボディ内に軸方向に移動自在に配置されるスプール700と、バルブボディ内に配置されてスプール700を図5における上方に付勢するスプリング701とを有するスプールバルブであり、マニュアルバルブ53のドライブレンジ圧出力ポート53dと油路を介して連通する第1入力ポート71aと、第2入力ポート71bと、リンプホーム用切替バルブ60の保持圧入力ポート64と油路を介して連通する出力ポート72と、第1リニアソレノイドバルブSL1の出力ポートと油路を介して連通する第1信号圧入力ポート73aと、第2リニアソレノイドバルブSL2の出力ポートと油路を介して連通する第2信号圧入力ポート73bと、スプリング701が配置されるスプリング室と連通する対向圧入力ポート74とを有する。
実施例において、第1ソレノイドリレーバルブ70の取付状態は、スプール700がスプリング701によって図5中上方に付勢される同図中左側半分の状態とされている。第1ソレノイドリレーバルブ70の取付状態では、第2入力ポート71bと出力ポート72とが連通されると共に、第1入力ポート71aが閉鎖される。また、第1ソレノイドリレーバルブ70の第1入力ポート71aには、マニュアルバルブ53からのドライブレンジ圧PDが第1油圧として供給され、第2入力ポート71bおよび対向圧入力ポート74には、第2ソレノイドリレーバルブ80からの第2油圧が供給される。
図5に示すように、第1ソレノイドリレーバルブ70において、対向圧入力ポート74に供給された第2ソレノイドリレーバルブ80から供給される対向圧としての第2油圧を受けるスプール700の第1受圧面700aは、第1信号圧入力ポート73aに供給された第1リニアソレノイドバルブSL1からの油圧Psl1を受ける図5における下側の第2受圧面700bと同一の面積を有する。また、第2受圧面700bは、第1信号圧入力ポート73aに供給された油圧Psl1を受ける図5における上側の第3受圧面700cよりも大きい面積を有する。更に、第3受圧面700cは、第2信号圧入力ポート73bに供給された第2リニアソレノイドバルブSL2からの油圧Psl2を受ける第4受圧面700dと同一の面積を有する。そして、スプール700の第1受圧面700aに作用した第2油圧は、スプリング701による付勢力と同方向の推力を発生させ、第2受圧面700bに作用した油圧Psl1は、スプリング701による付勢力とは反対方向の推力を発生させる。また、第3受圧面700cに作用した油圧Psl1は、スプリング701による付勢力と同方向の推力を発生させ、第4受圧面に作用した油圧Psl2は、スプリング701による付勢力とは反対方向の推力を発生させる。
そして、オイルポンプ24により油圧が生成されており、シフトポジションとしてDポジション等の前進走行ポジションが選択されると共に前進第1速〜前進第4速の何れかが形成されている際には、第1ソレノイドリレーバルブ70の第1信号圧入力ポート73aに第1リニアソレノイドバルブSL1からの油圧Psl1が供給される。また、オイルポンプ24により油圧が生成されており、シフトポジションとしてDポジション等の前進走行ポジションが選択されると共に前進第5速が形成されている際には、第1ソレノイドリレーバルブ70の第1信号圧入力ポート73aに第1リニアソレノイドバルブSL1からの油圧Psl1が供給されると共に、第2信号圧入力ポート73bに第2リニアソレノイドバルブSL2からの油圧Psl2が供給される。更に、オイルポンプ24により油圧が生成されており、シフトポジションとしてDポジション等の前進走行ポジションが選択されると共に前進第6速〜前進第8速の何れかが形成されている際には、第2信号圧入力ポート73bに第2リニアソレノイドバルブSL2からの油圧Psl2が供給される。
このように、第1および第2信号圧入力ポート73a,73bの少なくとも何れか一方に油圧Psl1またはPsl2が供給される際、油圧Psl1およびPsl2の少なくとも何れか一方によりスプール700に付与される推力がスプリング701の付勢力に打ち勝って当該スプール700を図5における下方へと移動させ、第1ソレノイドリレーバルブ70は、図5中右側半分の状態すなわち第1出力状態を形成する。第1ソレノイドリレーバルブ70が第1出力状態を形成すると、第1入力ポート71aと出力ポート72とが連通されると共に、第2入力ポート71bが閉鎖され、出力ポート72からリンプホーム用切替バルブ60の保持圧入力ポート64に第1油圧すなわちドライブレンジ圧Pdが保持圧Pholdとして供給される。これにより、シフトポジションとしてDポジション等の前進走行ポジションが選択されると共に前進第1速〜前進第8速の何れかが形成されている際には、リンプホーム用切替バルブ60が図5中右側半分に示す通常供給状態に保持されることになる。
一方、それまで第1および第2信号圧入力ポート73a,73bの少なくとも何れか一方に供給されていた油圧Psl1およびPsl2の少なくとも何れか一方が低下し、スプリング701の付勢力が油圧Psl1およびPsl2の少なくとも何れか一方による推力に打ち勝つと、第1ソレノイドリレーバルブ70は、図5中左側半分に示す第2出力状態(=取付状態)を形成する。第1ソレノイドリレーバルブ70が第2出力状態を形成すると、第2入力ポート71bと出力ポート72とが連通されると共に、第1入力ポート71aが閉鎖され、第2入力ポート71bに第2ソレノイドリレーバルブ80から第2油圧が供給されていれば、出力ポート72からリンプホーム用切替バルブ60の保持圧入力ポート64に第2油圧が保持圧Pholdとして供給される。
これにより、油圧Psl1およびPsl2の少なくとも何れか一方の低下に伴って第1ソレノイドリレーバルブ70が第2出力状態を形成した際、第2入力ポート71bに第2ソレノイドリレーバルブ80から第2油圧が供給されていれば、出力ポート72からリンプホーム用切替バルブ60の保持圧入力ポート64に第2油圧が保持圧Pholdとして供給される。従って、リンプホーム用切替バルブ60が図5中右側半分に示す通常供給状態に保持されることになる。また、第2入力ポート71bに第2ソレノイドリレーバルブ80から第2油圧が供給される際には、第1ソレノイドリレーバルブ70の対向圧入力ポート74にも第2ソレノイドリレーバルブ80からの第2油圧が供給されることから、この際には、第1ソレノイドリレーバルブ70を第2出力状態に保持することができる。
上述の第1ソレノイドリレーバルブ70に第2油圧を供給可能な第2ソレノイドリレーバルブ80は、図5に示すように、バルブボディ内に軸方向に移動自在に配置されるスプール800と、バルブボディ内に配置されてスプール800を図5における上方に付勢するスプリング701とを有するスプールバルブであり、マニュアルバルブ53のドライブレンジ圧出力ポート53dと油路を介して連通する第1入力ポート81aと、第2信号圧出力バルブS2の出力ポートと油路を介して連通する第2入力ポート81bと、第1ソレノイドリレーバルブ70の第2入力ポート71bおよび対向圧入力ポート74と油路を介して連通する出力ポート82と、第1信号圧出力バルブS1の出力ポートと油路を介して連通する信号圧入力ポート83と、第1ソレノイドリレーバルブ70の出力ポート72と油路を介して連通する切替信号圧入力ポート84と、切替信号圧出力ポート85と、スプリング801が配置されるスプリング室と連通すると共にブレーキB1に対応した第5リニアソレノイドバルブSL5の出力ポートと油路を介して連通する対向圧入力ポート86とを有する。
第2ソレノイドリレーバルブ80の取付状態は、スプール800がスプリング801によって図5中上方に付勢される同図中左側半分の状態とされている。第2ソレノイドリレーバルブ80の取付状態では、第1入力ポート81aが閉鎖されると共に、第2入力ポート81bと出力ポート82とが連通され、更に、切替信号圧入力ポート84と切替信号圧出力ポート85とが連通される。また、実施例において、第2ソレノイドリレーバルブ80の第1入力ポート81aには、マニュアルバルブ53からのドライブレンジ圧PDが供給され、第2信号圧出力バルブS2により第2信号圧P2が出力されると、第2入力ポート81bには、当該第2信号圧P2が供給される。また、第1信号圧出力バルブS1により第1信号圧P1が出力されると、第2ソレノイドリレーバルブ80の信号圧入力ポート83には、当該第1信号圧P1が供給される。更に、第5リニアソレノイドバルブSL5からブレーキB1に油圧Psl5が供給される際には、当該油圧Psl5が第2ソレノイドリレーバルブ80の対向圧入力ポート86にも供給される。
第2ソレノイドリレーバルブ80の信号圧入力ポート83に第1信号圧出力バルブS1からの第1信号圧P1が供給される際には、第1信号圧P1によりスプール800に付与される推力がスプリング801の付勢力に打ち勝って当該スプール800を図5における下方へと移動させ、第2ソレノイドリレーバルブ80は、図5中右側半分の状態すなわち信号圧遮断状態を形成する。第2ソレノイドリレーバルブ80が信号圧遮断状態を形成すると、第1入力ポート81aと出力ポート82とが連通されると共に、第2入力ポート81bがドレンポートと連通され、切替信号圧入力ポート84が閉鎖される。
これにより、マニュアルバルブ53から第1入力ポート81aにドライブレンジ圧PDが供給されていれば、第2ソレノイドリレーバルブ80の出力ポート82から、第1ソレノイドリレーバルブ70の第2入力ポート71bにドライブレンジ圧PDが第2油圧として供給されると共に、第1ソレノイドリレーバルブ70の対向圧入力ポート74にドライブレンジ圧PDが対向圧として供給される。この際、第1ソレノイドリレーバルブ70が図5中右側半分に示す第1出力状態を形成していると、第2入力ポート71bが閉鎖されていることから、第1ソレノイドリレーバルブ70の出力ポート72からは、リンプホーム用切替バルブ60の保持圧入力ポート64には保持圧Phold(=ドライブレンジ圧)が供給されない。
これに対して、第2ソレノイドリレーバルブ80から第1ソレノイドリレーバルブ70にドライブレンジ圧PDが第2油圧として供給される際に第1ソレノイドリレーバルブ70が図5中左側半分に示す第2出力状態を形成していると、第1ソレノイドリレーバルブ70の出力ポート72から、リンプホーム用切替バルブ60の保持圧入力ポート64に第2ソレノイドリレーバルブ80からのドライブレンジ圧PD(第2油圧)が保持圧Pholdとして供給される。また、上述のように、第2ソレノイドリレーバルブ80の切替信号圧入力ポート84は、第1ソレノイドリレーバルブ70の出力ポート72と油路を介して連通することから、第1ソレノイドリレーバルブ70の出力ポート72から出力された保持圧Pholdとしてのドライブレンジ圧PD(第2油圧)は当該切替信号圧入力ポート84に切替信号圧Pcsとして供給される。ただし、この際、第2ソレノイドリレーバルブ80は、切替信号圧入力ポート84を閉鎖する信号圧遮断状態を形成しているので、第2ソレノイドリレーバルブ80の切替信号圧出力ポート85から切替信号圧Pcsが出力されることはない。
また、第1信号圧出力バルブS1による第1信号圧P1の出力が停止され、第2ソレノイドリレーバルブ80の信号圧入力ポート83に第1信号圧P1が供給されない際には、スプリング801の付勢力によりスプール800が図5における上方へと付勢され、第2ソレノイドリレーバルブ80は、図5中左側半分の状態すなわち信号圧供給状態を形成する。第2ソレノイドリレーバルブ80が信号圧供給状態を形成すると、第2入力ポート81bと出力ポート82とが連通されると共に、切替信号圧入力ポート84と切替信号圧出力ポート85とが連通され、第1入力ポート81aが閉鎖される。
これにより、第2信号圧出力バルブS2により第2信号圧P2が出力され、第2入力ポート81bに当該第2信号圧P2(=Pmod)が供給されていれば、第2ソレノイドリレーバルブ80の出力ポート82から、第1ソレノイドリレーバルブ70の第2入力ポート71bに第2信号圧P2が第2油圧として供給されると共に、第1ソレノイドリレーバルブ70の対向圧入力ポート74に第2信号圧P2が対向圧として供給される。この際、第1ソレノイドリレーバルブ70が図5中右側半分に示す第1出力状態を形成していると、第2入力ポート71bが閉鎖されていることから、第1ソレノイドリレーバルブ70の出力ポート72からは、リンプホーム用切替バルブ60の保持圧入力ポート64には保持圧Phold(=第2信号圧P2)が供給されない。
これに対して、第2ソレノイドリレーバルブ80から第1ソレノイドリレーバルブ70に第2信号圧P2が第2油圧として供給される際に第1ソレノイドリレーバルブ70が図5中左側半分に示す第2出力状態を形成していると、第1ソレノイドリレーバルブ70の出力ポート72から、リンプホーム用切替バルブ60の保持圧入力ポート64に第2ソレノイドリレーバルブ80からの第2信号圧P2(第2油圧)が保持圧Pholdとして供給される。また、上述のように、第2ソレノイドリレーバルブ80の切替信号圧入力ポート84は、第1ソレノイドリレーバルブ70の出力ポート72と油路を介して連通することから、第1ソレノイドリレーバルブ70の出力ポート72から出力された保持圧Pholdとしての第2信号圧P2(第2油圧)は当該切替信号圧入力ポート84に切替信号圧Pcsとして供給される。
この際、第2ソレノイドリレーバルブ80は、切替信号圧入力ポート84と切替信号圧出力ポート85とを連通させる信号圧供給状態を形成しているので、第2ソレノイドリレーバルブ80の切替信号圧出力ポート85から切替信号圧Pcsが出力されることになる。また、第2ソレノイドリレーバルブ80が信号圧供給状態を形成している際に、上述の第1出力状態を形成した第1ソレノイドリレーバルブ70の出力ポート72からドライブレンジ圧PD(第1油圧)が保持圧Pholdとして出力されていると、当該ドライブレンジ圧PD(第1油圧)は、第2ソレノイドリレーバルブ80の切替信号圧入力ポート84に切替信号圧Pcsとして供給され、切替信号圧出力ポート85から出力されることになる。
B2供給制御バルブ90は、バルブボディ内に軸方向に移動自在に配置されるスプール900と、バルブボディ内に配置されてスプール900を図5における上方に付勢するスプリング901とを有するスプールバルブであり、上述の第2ソレノイドリレーバルブ80からの切替信号圧Pcsに応じて作動してブレーキB2に対する油圧の供給を制御する。図5に示すように、B2供給制御バルブ90は、入力ポート91と、ブレーキB2の油圧入口と油路を介して連通する出力ポート92と、スプリング901が配置されるスプリング室と対向するように形成された油室と連通すると共に第2ソレノイドリレーバルブ80の切替信号圧出力ポート85と油路を介して連通する信号圧入力ポート93と、ドレンポート94とを有する。
実施例において、B2供給制御バルブ90の取付状態は、スプール900がスプリング901によって図5中上方に付勢される同図中左側半分に示す第1状態とされている。B2供給制御バルブ90の取付状態すなわち第1状態では、入力ポート91と出力ポート92とが連通されると共に、ドレンポート94が閉鎖される。これにより、第2ソレノイドリレーバルブ80からB2供給制御バルブ90の信号圧入力ポート93に切替信号圧Pcsが供給されない際、B2供給制御バルブ90は、第1状態(取付状態)に保持され、入力ポート91に供給された油圧のブレーキB2への供給が許容される一方、ドレンポート94からの作動油の排出が阻止される。
一方、第2ソレノイドリレーバルブ80からB2供給制御バルブ90の信号圧入力ポート93に切替信号圧Pcsが供給される際には、当該切替信号圧Pcsによりスプール900に付与される推力がスプリング901の付勢力に打ち勝って当該スプール900を図5における下方へと移動させ、B2供給制御バルブ90は、図5中右側半分の状態すなわち第2状態を形成する。B2供給制御バルブ90が第2状態を形成すると、ドレンポート94と出力ポート92とが連通されると共に、入力ポート91が閉鎖される。これにより、第2ソレノイドリレーバルブ80からB2供給制御バルブ90の信号圧入力ポート93に切替信号圧Pcsが供給される際には、ドレンポート94を介したブレーキB2からの作動油の排出が許容される一方、入力ポート91に供給された油圧のブレーキB2への供給が遮断される。
C3/B2供給制御バルブ95は、バルブボディ内に軸方向に移動自在に配置されるスプール950と、バルブボディ内に配置されてスプール950を図5における上方に付勢するスプリング701とを有するスプールバルブであり、第1信号圧出力バルブS1からの第1信号圧P1に応じて作動してクラッチC3およびブレーキB2に対する油圧の供給を制御する。図5に示すように、C3/B2供給制御バルブ95は、マニュアルバルブ53のリバースレンジ圧出力ポート53rと連通する第1入力ポート96aと、リンプホーム用切替バルブ60の第3出力ポート62cと油路を介して連通する第2入力ポート96bと、B2供給制御バルブ90の入力ポート91と油路を介して連通する第1出力ポート97aと、クラッチC3の油圧入口と油路を介して連通する第2出力ポート97bと、スプリング951が配置されるスプリング室と対向するように形成された油室と連通すると共に第1信号圧出力バルブS1の出力ポートと油路を介して連通する信号圧入力ポート98と、B2供給制御バルブ90のドレンポート94と油路を介して連通するドレン用入力ポート99aと、ドレンポート99bおよび99cとを有する。
図5に示すように、C3/B2供給制御バルブ95の第1入力ポート96aは、中途に逆止弁54を有するリバースレンジ圧供給油路55を介してマニュアルバルブ53のリバースレンジ圧出力ポート53rと連通する。逆止弁54は、マニュアルバルブ53から第1入力ポート96a(C3/B2供給制御バルブ95側)への作動油の流通を許容する一方、第1入力ポート96aからマニュアルバルブ53への作動油の逆流を規制する。また、リバースレンジ圧供給油路55には、中途に逆止弁56およびオリフィス(流出量規制手段)ORを有する第1ドレン油路57が逆止弁54をバイパスするように接続されている。第1ドレン油路57の逆止弁56は、第1入力ポート96a(C3/B2供給制御バルブ95側)からマニュアルバルブ53への作動油の流通を許容する一方、マニュアルバルブ53から第2入力ポート96bへの作動油の流通を規制する。また、オリフィスORは、図示するように、逆止弁56よりも第1入力ポート96a(C3/B2供給制御バルブ95)側に配置される。
更に、C3/B2供給制御バルブ95のドレンポート99bは、中途に逆止弁58を有する第2ドレン油路59に接続されている。第2ドレン油路59の逆止弁58は、ドレンポート99bからの作動油の流出を許容する一方、ドレンポート99bへの作動油の流入を規制する。図示するように、第2ドレン油路59は、流出量規制手段としてのオリフィスを有していない。また、ドレンポート99cは、図示するように、逆止弁54やオリフィスORよりもC3/B2供給制御バルブ95側でリバースレンジ圧供給油路55に接続されている。
実施例において、C3/B2供給制御バルブ95の取付状態は、スプール950がスプリング951によって図5中上方に付勢される同図中左側半分に示す第1供給状態とされている。C3/B2供給制御バルブ95の取付状態すなわち第1状態では、第1入力ポート96a(リバースレンジ圧供給油路55)と第1出力ポート97aとが連通され、第2入力ポート96bと第2出力ポート97bとが連通され、ドレン用入力ポート99aとドレンポート99bとが連通され、ドレンポート99cが閉鎖される。そして、第1信号圧出力バルブS1による第1信号圧P1の出力が停止され、第1信号圧出力バルブS1からC3/B2供給制御バルブ95の信号圧入力ポート98に第1信号圧P1が供給されない際、C3/B2供給制御バルブ95は、第1供給状態(取付状態)に保持される。
C3/B2供給制御バルブ95が第1供給状態(取付状態)を形成した際には、マニュアルバルブ53から第1入力ポート96aに供給されたリバースレンジ圧PRを第1出力ポート97aからB2供給制御バルブ90の入力ポート91に供給すること、およびリンプホーム用切替バルブ60から第2入力ポート96bに供給された第3リニアソレノイドバルブSL3からの油圧Psl3またはライン圧PLを第2出力ポート97bからクラッチC3に供給することが可能となる。また、C3/B2供給制御バルブ95が第1供給状態(取付状態)を形成した際には、B2供給制御バルブ90のドレンポート94をドレン用入力ポート99aおよびドレンポート99bを介して第2ドレン油路59と連通させることができる。
これに対して、第1信号圧出力バルブS1により第1信号圧P1が出力され、C3/B2供給制御バルブ95の信号圧入力ポート98に第1信号圧P1が供給される際には、第1信号圧P1によりスプール950に付与される推力がスプリング951の付勢力に打ち勝って当該スプール900を図5における下方へと移動させ、C3/B2供給制御バルブ95は、図5中右側半分の状態すなわち第2供給状態を形成する。C3/B2供給制御バルブ95が第2供給状態を形成すると、第1入力ポート96aとドレン用入力ポート99aとが連通され、第2入力ポート96bと第1出力ポート97aとが連通され、第2出力ポート97bとドレンポート99cとが連通され、ドレンポート99bが閉鎖される。
C3/B2供給制御バルブ95が第2供給状態を形成した際には、リンプホーム用切替バルブ60から第2入力ポート96bに供給された第3リニアソレノイドバルブSL3からの油圧Psl3を第1出力ポート97aからB2供給制御バルブ90の入力ポート91に供給することが可能となる。また、この際、B2供給制御バルブ90のドレンポート94と連通するドレン用入力ポート99aは、リバースレンジ圧供給油路55や第1ドレン油路57と連通し、ドレンポート99cもリバースレンジ圧供給油路55や第1ドレン油路57と連通する。
次に、上述のように構成される油圧制御装置50の動作について説明する。
図6は、油圧制御装置50に含まれる第1〜第5リニアソレノイドバルブSL1〜SL5および第1および第2信号圧出力バルブS1,S2への通電状態を示す作動表である。同図において、“○”は、各バルブが全閉または全開となるようにソレノイドに通電することを示し、“×”は、各バルブが全閉または全開となるようにソレノイドへの通電を解除することを示し、“△”は、当該バルブに対応したクラッチ等を係合させない程度の油圧を出力するように通電制御することを示し、“(○)”は、上述のヒルホールド開始条件が成立した際に、当該バルブが全開となるようにソレノイドに通電することを示し、“(△)”は、上述のニュートラル制御開始条件、ヒルホールド開始条件およびB2低圧待機条件の少なくとも何れかが成立した際に、当該バルブに対応したクラッチ等を係合させない程度の油圧を出力するように通電制御することを示す。また、同図における“/”の左側は、車速Vがそれぞれの状態について定められた閾値以下である低車速時を示し、“/”の右側は、車速Vがそれぞれの状態について定められた閾値を超えている高車速時を示す。そして、以下の説明では、オイルポンプ24が作動して油圧を発生しているものとする。
自動車10のイグニッションスイッチがオンされると共に、PポジションあるいはNポジションが選択された状態での停車中には、変速ECU21による制御によって第1信号圧出力バルブS1のソレノイドに電流が印加(通電)され、図6に示すように、第1信号圧出力バルブS1から第1信号圧P1が出力される。従って、第2ソレノイドリレーバルブ80は、図5中右側半分に示す信号圧遮断状態を形成する。また、この際、図6に示すように、第1および第2リニアソレノイドバルブSL1,SL2から油圧Psl1,Psl2が出力されず、第1ソレノイドリレーバルブ70は、図5中左側半分に示す第2出力状態(=取付状態)を形成する。そして、PポジションあるいはNポジションが選択された状態では、マニュアルバルブ53のドライブレンジ圧出力ポート53dからドライブレンジ圧PDが出力されない。
これにより、PポジションあるいはNポジションが選択された状態での停車中には、第1ソレノイドリレーバルブ70には、マニュアルバルブ53からドライブレンジ圧PDが第1油圧として供給されず(かつ第1入力ポート71aが閉鎖され)、第2ソレノイドリレーバルブ80からドライブレンジ圧PDが第2油圧として供給されないことから、第1ソレノイドリレーバルブ70からリンプホーム用切替バルブ60の保持圧入力ポート64に保持圧Pholdが供給されない。ただし、自動車10の運転者によりアクセルペダル41が大きく踏み込まれない限り、リニアソレノイドバルブSLTからモジュレータ圧Pmodに一致する油圧Psltが出力されることはないことから、リンプホーム用切替バルブ60は、基本的に、スプリング601の付勢力と、第2信号圧入力ポート63bに供給されるモジュレータ圧Pmodによりスプール600に付与される図5中下向きの推力により図5中右側半分に示す通常供給状態に保持される。
また、第1ソレノイドリレーバルブ70から保持圧Pholdすなわち切替信号圧Pcsが出力されず、しかも第2ソレノイドリレーバルブ80が切替信号圧入力ポート84を閉鎖する信号圧遮断状態を形成していることから、B2供給制御バルブ90の信号圧入力ポート93には切替信号圧Pcsが供給されない。従って、B2供給制御バルブ90は、図5中左側半分に示す第1状態を形成する。そして、第1信号圧出力バルブS1から第1信号圧P1が出力されることにより、C3/B2供給制御バルブ95は、図5中右側半分に示す第2供給状態を形成する。これにより、PポジションあるいはNポジションが選択された状態での停車中には、リンプホーム用切替バルブ60の第3入力ポート61cおよび第3出力ポート62cと、C3/B2供給制御バルブ95の第2入力ポート96bおよび第1出力ポート97aと、B2供給制御バルブ90の入力ポート91および出力ポート92とが連通される。
これにより、実施例の油圧制御装置50を備えた自動車10では、PポジションあるいはNポジションが選択された状態での停車中にB2低圧待機条件を成立させることが可能となるので、図7に示すように、第3リニアソレノイドバルブSL3からブレーキB2に上述の待機圧Pstbyに一致する油圧Psl3を供給するB2低圧待機制御を実行することができる。この結果、油圧制御装置50によれば、シフトポジションがPポジションあるいはNポジションからRポジションへと変更された際に、第1信号圧出力バルブS1による第1信号圧P1の出力を停止させてC3/B2供給制御バルブ95を第2供給状態から図5中左側半分に示す第1供給状態へと切り替えることで、速やかに後進第1速を形成することが可能となる。
すなわち、シフトポジションがPポジションあるいはNポジションからRポジションへと変更されて第1信号圧出力バルブS1による第1信号圧P1の出力が停止されても、第1ソレノイドリレーバルブ70から切替信号圧Pcs(および保持圧Phold)が出力されることはなく、B2供給制御バルブ90は第1状態に保持される。従って、第1信号圧出力バルブS1による第1信号圧P1の出力が停止されると、マニュアルバルブ53のリバースレンジ圧出力ポート53rからのリバースレンジ圧PR(=ライン圧PL)が第2供給状態を形成するC3/B2供給制御バルブ95および第1状態を形成するB2供給制御バルブ90を介してブレーキB2に供給され、第3リニアソレノイドバルブSL3からの油圧Psl3が第2供給状態を形成するC3/B2供給制御バルブ95を介してクラッチC3に供給されることになる。これにより、Rポジションの選択に伴って解放状態から完全係合状態に移行させるべき油圧係合要素を実質的にクラッチC3のみとして、速やかに後進第1速を形成することが可能となる。
また、図7に示すように、自動車10の停車中にシフトポジションがPポジションあるいはNポジションからDポジションへと変更された際には(図7における時刻t0)、図6に示すように、第1信号圧出力バルブS1による第1信号圧P1の出力が継続され、第2ソレノイドリレーバルブ80は、引き続き信号圧遮断状態を形成する。そして、運転者によりDポジションが選択されると、マニュアルバルブ53のドライブレンジ圧出力ポート53dからドライブレンジ圧PDが信号圧遮断状態を形成する第2ソレノイドリレーバルブ80の第1入力ポート81aに供給され、第2ソレノイドリレーバルブ80の出力ポート82からドライブレンジ圧PDが第2油圧として第1ソレノイドリレーバルブ70の第2入力ポート71bに供給されると共に、対向圧として対向圧入力ポート74に供給される。
従って、運転者によるDポジションの選択に伴って、図7に示すように、前進第1速の形成に際して係合される発進クラッチとしてのクラッチC1を完全係合させるべく第1リニアソレノイドバルブSL1から油圧Psl1が出力されると共に、油圧Psl1が高められても、Dポジションの選択とほぼ同時に、対向圧としてのドライブレンジ圧PD(=ライン圧PL)によりスプリング701の付勢力と同方向の推力がスプール700に付与されることから、第1ソレノイドリレーバルブ70は、引き続き図5中左側半分に示す第2出力状態を形成する。すなわち、実施例の油圧制御装置50では、第1リニアソレノイドバルブSL1からの油圧Psl1を上昇させるNポジションあるいはPポジションからDポジションへの変更動作に伴って油圧Psl1が第1ソレノイドリレーバルブ70を第2出力状態とする圧力まで上昇する前(油圧Psl1が元圧であるライン圧PLに一致する前)から、ドライブレンジ圧PDが第1ソレノイドリレーバルブ70に第2油圧および対向圧として供給される。
これにより、リンプホーム用切替バルブ60にドライブレンジ圧PDを保持圧Pholdとして供給しつつ、Dポジションの選択に伴って第1リニアソレノイドバルブSL1からの油圧Psl1を上昇させる際に、対向圧としてのドライブレンジ圧PDによって第1ソレノイドリレーバルブ70を第2出力状態に保持することが可能となり、第1ソレノイドリレーバルブ70の状態が切り替わることで第1リニアソレノイドバルブSL1からクラッチC1に実際に供給される油圧が変動するのを良好に抑制して変速ショックが発生しないようにすることができる。
上述のようにシフトポジションがNポジションあるいはPポジションからDポジションへと変更された後には、第2出力状態に保持された第1ソレノイドリレーバルブ70の出力ポート72からドライブレンジ圧PD(第2油圧)が保持圧Pholdとしてリンプホーム用切替バルブ60の保持圧入力ポート64に供給され、リンプホーム用切替バルブ60の保持圧入力ポート64は、通常供給状態に保持される。また、第1ソレノイドリレーバルブ70の出力ポート72からのドライブレンジ圧PD(第2油圧)は、切替信号圧Pcsとして、第2ソレノイドリレーバルブ80の切替信号圧入力ポート84に供給されるが、第1信号圧出力バルブS1からの第1信号圧P1の出力により第2ソレノイドリレーバルブ80が信号圧遮断状態を形成することで、B2供給制御バルブ90の信号圧入力ポート93には切替信号圧Pcsが供給されない。従って、B2供給制御バルブ90は、第1状態を形成し、C3/B2供給制御バルブ95は、第1信号圧出力バルブS1からの第1信号圧P1を入力することにより第2供給状態を形成する。
これにより、シフトポジションのNポジションあるいはPポジションからDポジションへの変更の前後で、リンプホーム用切替バルブ60、第1および第2ソレノイドリレーバルブ70,80、B2供給制御バルブ90およびC3/B2供給制御バルブ95の状態は変化しない。この結果、実施例の油圧制御装置50を備えた自動車10では、Dポジションが選択されてクラッチC1が係合された状態での停車中にも(図7における時刻t0〜時刻t1の間)、B2低圧待機条件を成立させることが可能となるので、図7に示すように、第3リニアソレノイドバルブSL3からブレーキB2に上述の待機圧Pstbyに一致する油圧Psl3を供給するB2低圧待機制御を実行することができる。
ここで、図7に示すように、Dポジションの選択後にクラッチC1が係合(完全係合)された後、ブレーキペダル43の踏み込みが継続されて自動車10が停車していると、上述のニュートラル制御開始条件が成立し(図7における時刻t1)、変速ECU21によるニュートラル制御が開始される。そして、変速ECU21は、ニュートラル制御を実行する際にも、第1信号圧出力バルブS1に第1信号圧P1を出力させる。これにより、第1リニアソレノイドバルブSL1からの油圧Psl1は、ストロークエンド圧よりも低く、クラッチC1にトルク容量をもたすことなく当該クラッチC1の油室に作動油を満たすことができる程度に定められた目標値まで低下させられる。また、第1信号圧出力バルブS1から第1信号圧P1が出力されることで、第2ソレノイドリレーバルブ80は、信号圧遮断状態を形成してドライブレンジ圧PDが第2油圧および対向圧として第1ソレノイドリレーバルブ70を供給することから、第1ソレノイドリレーバルブ70は、第2出力状態に保持される。
従って、第1ソレノイドリレーバルブ70の出力ポート72からドライブレンジ圧PD(第2油圧)が保持圧Pholdとしてリンプホーム用切替バルブ60の保持圧入力ポート64に供給され、リンプホーム用切替バルブ60の保持圧入力ポート64は、通常供給状態に保持される。また、第1ソレノイドリレーバルブ70の出力ポート72からのドライブレンジ圧PD(第2油圧)は、切替信号圧Pcsとして、第2ソレノイドリレーバルブ80の切替信号圧入力ポート84に供給されるが、第1信号圧出力バルブS1からの第1信号圧P1の出力により第2ソレノイドリレーバルブ80が信号圧遮断状態を形成することで、B2供給制御バルブ90の信号圧入力ポート93には切替信号圧Pcsが供給されない。従って、B2供給制御バルブ90は、第1状態を形成し、C3/B2供給制御バルブ95は、第1信号圧出力バルブS1からの第1信号圧P1を入力することにより第2供給状態を形成する。
このように、ニュートラル制御の開始前後(図7における時刻t1の前後)においても、リンプホーム用切替バルブ60、第1および第2ソレノイドリレーバルブ70,80、B2供給制御バルブ90およびC3/B2供給制御バルブ95の状態は変化しない。これにより、実施例の油圧制御装置50を備えた自動車10では、ニュートラル制御の実行中にも、B2低圧待機条件を成立させることが可能となり、図7に示すように、第3リニアソレノイドバルブSL3からブレーキB2に上述の待機圧Pstbyに一致する油圧Psl3を供給するB2低圧待機制御を実行することができる(図7における時刻t0〜時刻t1の間)。この結果、油圧制御装置50によれば、ニュートラル制御の実行中にシフトポジションがDポジションからRポジションへと変更された際に、第1信号圧出力バルブS1による第1信号圧P1の出力を停止させてC3/B2供給制御バルブ95を第2供給状態から第1供給状態へと切り替えることで、速やかに後進第1速を形成することが可能となる。
また、ニュートラル制御の実行中にヒルホールド条件が成立すると(図7における時刻t2)、変速ECU21は、自動変速機25の出力軸27の回転を抑制するためのヒルホールド制御を開始し、ブレーキB1を係合させるべく第5リニアソレノイドバルブSL5を全開とする。こうして、ブレーキB1に第5リニアソレノイドバルブSL5からライン圧PLに一致する油圧Psl5が供給され、それに伴って、当該油圧Psl5が第2ソレノイドリレーバルブ80の対向圧入力ポート86にも供給される。対向圧入力ポート86に供給された油圧Psl5は、スプリング801の付勢力と同方向の推力をスプール800に付与し、油圧Psl5による推力とスプリング801の付勢力とが第1信号圧P1による推力に打ち勝つことにより、スプール800は図5における上方へと移動する。これにより、ニュートラル制御と共にヒルホールド制御が実行される際、第2ソレノイドリレーバルブ80は、図5中左側半分に示す信号圧供給状態を形成し、切替信号圧入力ポート84と切替信号圧出力ポート85とを連通させると共に、第1入力ポート81aを閉鎖する。
このように、ニュートラル制御と共にヒルホールド制御が実行される際には、信号圧供給状態を形成した第2ソレノイドリレーバルブ80により第1ソレノイドリレーバルブ70へのドライブレンジ圧PD(第2油圧)PDの供給すなわち第2油圧および対向圧の供給が禁止され、クラッチC1からの油圧Psl1が低いことから、第1ソレノイドリレーバルブ70は、第2出力状態に保持される。そして、ニュートラル制御と共にヒルホールド制御が実行される際には、第1ソレノイドリレーバルブ70から第2ソレノイドリレーバルブ80を介してB2供給制御バルブ90に切替信号圧Pcsが供給されず、切替信号圧Pcsを入力しないB2供給制御バルブ90は、第3リニアソレノイドバルブSL3からの油圧Psl3のブレーキB1への供給を許容する第1状態を形成する。この結果、ニュートラル制御と共にヒルホールド制御が実行される際にも、B2低圧待機条件を成立させることが可能となるので、図7に示すように、第3リニアソレノイドバルブSL3からブレーキB2に上述の待機圧Pstbyに一致する油圧Psl3を供給すれば、ブレーキB1およびB2の同時係合(タイアップ)を生じさせることなく、ブレーキB2をスリップ状態で待機させることができる。この結果、ニュートラル制御およびヒルホールド制御の実行中にシフトポジションがDポジションからRポジションへと変更された際に速やかに後進第1速を形成することが可能となる。
そして、例えば運転者によるブレーキペダル43の踏み込みが解除されてニュートラル解除条件が成立すると(図7における時刻t3)、同時にヒルホールド解除条件およびB2低圧待機解除条件が成立し、変速ECU21は、ニュートラル制御、ヒルホールド制御およびB2低圧待機制御の解除を開始する。すなわち、変速ECU21は、クラッチC1を係合させるべく油圧Psl1が高まるように第1リニアソレノイドバルブSL1を制御し、ブレーキB1への油圧Psl5の供給を停止させるべく第5リニアソレノイドバルブSL5を全閉とし、ブレーキB2への油圧Psl3の供給を停止させるべく第3リニアソレノイドバルブSL3を全閉とする。こうして第5リニアソレノイドバルブSL5から油圧Psl5が出力されなくなると、油圧Psl5は、第2ソレノイドリレーバルブ80の対向圧入力ポート86にも供給されなくなり、第1信号圧出力バルブS1から第1信号圧P1が継続して出力されることから、第2ソレノイドリレーバルブ80は、再度、図5中右側半分に示す信号圧遮断状態を形成する。
これにより、ニュートラル制御の解除開始とほぼ同時に、第1ソレノイドリレーバルブ70には、第2ソレノイドリレーバルブ80からのドライブレンジ圧PDが第2油圧および対向圧として供給され始める。すなわち、実施例の油圧制御装置50では、ニュートラル制御の解除に伴って油圧Psl1が第1ソレノイドリレーバルブ70を第2出力状態とする圧力まで上昇する前(油圧Psl1が元圧であるライン圧PLに一致する前)から、ドライブレンジ圧PDが第1ソレノイドリレーバルブ70に第2油圧および対向圧として供給される。これにより、ニュートラル制御の解除に伴って、それまで比較的低い油圧Psl1を出力していた第1リニアソレノイドバルブSL1から比較的高い油圧Psl1が出力されるようになっても、対向圧としてのドライブレンジ圧PD(=ライン圧PL)によりスプリング701の付勢力と同方向の推力がスプール700に付与されることから、リンプホーム用切替バルブ60にドライブレンジ圧PDを保持圧Pholdとして供給しつつ、対向圧としてのドライブレンジ圧PDによって第1ソレノイドリレーバルブ70を引き続き第2出力状態に保持することができる。この結果、ニュートラル制御が解除される際に、第1ソレノイドリレーバルブ70の状態が切り替わることで第1リニアソレノイドバルブSL1からクラッチC1に実際に供給される油圧が変動するのを良好に抑制して変速ショックが発生しないようにすることが可能となる。
なお、ニュートラル制御の実行中にヒルホールド制御が実行されない場合には、第2ソレノイドリレーバルブ80の対向圧入力ポート86に第5リニアソレノイドバルブSL5からの油圧Psl5が供給されることはなく、第2ソレノイドリレーバルブ80は第1信号圧出力バルブS1からの第1信号圧P1を入力して信号圧遮断状態を形成する。従って、この場合、ニュートラル制御の解除開始前から、第1ソレノイドリレーバルブ70には、第2ソレノイドリレーバルブ80からドライブレンジ圧PDが第2油圧および対向圧として供給されていることになる。
上述のようにして第1リニアソレノイドバルブSL1からの油圧SL1が高められ、クラッチC1が係合すると共に、油圧Psl1が元圧であるライン圧PLに一致すると、ニュートラル制御等の解除が終了する(図7における時刻t4)。そして、その後に運転者によりアクセルペダル41が踏み込まれると(図7における時刻t5)、自動変速機25の前進第1速が形成された状態で自動車10の走行が開始される。そして、図6からわかるように、前進第1速が形成された状態での走行中に車速Vが予め定められた閾値を超えると、第1信号圧出力バルブS1からの第1信号圧P1の出力が停止されることになる。
なお、実施例の油圧制御装置50では、自動変速機25の前進第2速から前進第8速が形成される際、図6に示すように、基本的に第1信号圧出力バルブS1からの第1信号圧P1の出力が停止され、第2ソレノイドリレーバルブ80は、基本的に信号圧供給状態を形成する。また、第1ソレノイドリレーバルブ70は、自動変速機25の前進第1速から前進第8速が形成される際に、第1および第2リニアソレノイドバルブSL1,SL2の何れか一方または双方から油圧Psl1,Psl2が出力されている際に第1出力状態を形成する。
従って、Dポジション等の前進走行ポジションが選択されて前進第2速〜前進第8速が形成されている際には、基本的にドライブレンジ圧PDが切替信号圧(Pcs)として供給されることでB2供給制御バルブ90が第2状態を形成し、C3/B2供給制御バルブ95は、第1信号圧P1を入力せずに図5中左側半分に示す第1供給状態を形成する。これにより、ブレーキB2の油室は、第2状態を形成するB2供給制御バルブ90の出力ポート92およびドレンポート94や、第1供給状態を形成するC3/B2供給制御バルブ95のドレン用入力ポート99aおよびドレンポート99bを介してオリフィス等の流出量規制手段を有さない第2ドレン油路59と連通する。この結果、Dポジション等の前進走行ポジションが選択されて前進第2速〜前進第8速が形成されている際には、ブレーキB2の油室に流れ込んだ漏れ油等を第2ドレン油路59を介して速やかに排出(大ドレン)させることができる。また、前進第3速の形成時に第2信号圧出力バルブS2に第2信号圧P2を出力させるのは、前進第3速から前進第1速への飛び変速時(キックダウン時)に開固着等により第1信号圧出力バルブS1から第1信号圧P1が出力されてしまった際、第3リニアソレノイドバルブSL3からブレーキB2に供給された作動油(油圧Psl3)を当該ブレーキB2から速やかに排出可能とするためである。なお、この場合には、第2信号圧P2は、少なくとも第2ソレノイドリレーバルブ80を経由しない供給路(図示省略)を介してB2供給制御バルブ90の第2の信号圧入力ポート95(図5参照)に供給される。
引き続き、図8を参照しながら、自動変速機25の前進低速段(前進第1速〜前進第4速)と前進高速段(前進第6速〜前進第8速)との間で変速(飛び変速)が実行される際の油圧制御装置50の動作について説明する。図8は、自動変速機25の前進第6速から前進第4速へのダウンシフトが行われる際の油圧制御装置50の動作を説明するためのタイムチャートである。
変速ECU21は、自動変速機25の前進第6速が形成された状態での自動車10の走行中に、図示しない変速線図から取得される目標変速段が前進第6速から前進第4速に変更になったと判断すると、係合中のクラッチC4の係合を維持したまま、係合中のクラッチC2を解放させると共に、クラッチC1を係合させるように油圧制御装置50を制御する。すなわち、変速ECU21は、目標変速段が前進第6速から前進第4速に変更になった時点(図8における時刻t10)から、解放側のクラッチC2に対応した第2リニアソレノイドバルブSL2からの油圧Psl2が低下すると共に、係合側のクラッチC1に対応した第1リニアソレノイドバルブSL1からの油圧Psl1が上昇するように第2リニアソレノイドバルブSL2への解放圧指令値と第1リニアソレノイドバルブSL1への係合圧指令値を設定する。第2リニアソレノイドバルブSL2への解放圧指令値は、図8に示すように、変速開始直後に比較的急峻に低下し、その後、比較的緩やかに低下するように設定される。これに対して、第1リニアソレノイドバルブSL1への係合圧指令値は、図8に示すように、変速開始直後にそれまで油圧が供給されていなかったクラッチC1に作動油が急速に充填(ファストフィル)されるように比較的高く設定された後、一旦低下させられ、その後、元圧であるライン圧PLに一致するように比較的急峻に高められる。
従って、前進第6速から前進第4速へのダウンシフトといったような、前進低速段と前進高速段との間での変速中には、第1および第2リニアソレノイドバルブSL1,SL2の双方からの油圧Psl1,Psl2が一旦低下した後、第1および第2リニアソレノイドバルブSL1,SL2の何れか一方からの油圧Psl1またはPsl2(ダウンシフトの場合、油圧Psl1、アップシフトの場合、油圧Psl2)が高まることになる。このため、何ら対策を施さなければ、前進低速段と前進高速段との間での変速中には、第1および第2リニアソレノイドバルブSL1,SL2の双方からの油圧Psl1,Psl2の低下に伴って第1ソレノイドリレーバルブ70が第2出力状態を形成した後、係合側のクラッチC1またはC2に対応した第1および第2リニアソレノイドバルブSL1,SL2の何れか一方からの油圧Psl1またはPsl2が高められた際に第1ソレノイドリレーバルブ70が第1出力状態を形成し、第1リニアソレノイドバルブSL1等からの油圧が第1ソレノイドリレーバルブ70に供給されることで、クラッチC1等に供給される油圧(係合圧)が変動してしまい、変速ショックが生じてしまうおそれがある。
これを踏まえて、変速ECU21は、目標変速段の変更に伴って前進低速段と前進高速段との間で変速段を変更する場合、目標変速段が変更されたのとほぼ同時に、第1信号圧出力バルブS1からの第1信号圧P1の出力を停止させたまま、第2信号圧P2を出力するように第2信号圧出力バルブS2を制御する。これにより、第1信号圧P1を入力せずに信号圧供給状態を形成する第2ソレノイドリレーバルブ80の第2入力ポート81bに供給される第2信号圧出力バルブS2からの第2信号圧P2が、出力ポート82を介して第1ソレノイドリレーバルブ70に第2油圧および対向圧として供給される。
この結果、前進低速段と前進高速段との間での変速が開始されると、第1ソレノイドリレーバルブ70は、対向圧としての第2信号圧P2によって第1出力状態から第2出力状態へと切り替えられ、第1ソレノイドリレーバルブ70の第2入力ポート71bと出力ポート72とが連通されると共に、第1入力ポート71aが閉鎖される。そして、第1ソレノイドリレーバルブ70の第2入力ポート71bには、第2ソレノイドリレーバルブ80から第2信号圧P2が第2油圧として供給され、出力ポート72からリンプホーム用切替バルブ60の保持圧入力ポート64に第2信号圧P2が保持圧Pholdとして供給されることになる。
このように、実施例の油圧制御装置50は、前進低速段と前進高速段との間での変速が実行される際に、第1信号圧出力バルブS1からの第1信号圧P1の出力を停止させつつ第2信号圧出力バルブS2からの第2信号圧P2を出力させ、第1ソレノイドリレーバルブ70を第1出力状態から第2出力状態へと切り替える。これにより、リンプホーム用切替バルブ60に第2信号圧P2を保持圧Pholdとして供給しつつ、前進低速段と前進高速段との間での変速に伴って、第1および第2リニアソレノイドバルブSL1,SL2の双方からの油圧Psl1,Psl2が一旦低下した後、第1および第2リニアソレノイドバルブSL1,SL2の何れか一方からの油圧Psl1またはPsl2が高まっても、対向圧としての第2信号圧P2によって第1ソレノイドリレーバルブ70を第2出力状態に保持することができる。従って、油圧制御装置50によれば、前進低速段と前進高速段との間での変速が実行される際に、第1ソレノイドリレーバルブ70の状態が切り替わることで第1,第2リニアソレノイドバルブSL1,SL2からクラッチC1,C2に供給される油圧Psl1,Psl2が変動するのを良好に抑制して変速ショックが発生しないようにすることができる。
図9は、シフトポジションがRポジションからNポジション(PポジションおよびDポジションの場合も同様)に変更された際の油圧制御装置50の動作を説明するためのタイムチャートである。
運転者によりシフトポジションとしてRポジションが選択されて後進第1速(および後進第2速)が形成されている際には、第1信号圧出力バルブS1からの第1信号圧P1の出力が停止され、第2ソレノイドリレーバルブ80は、図5中左側半分に示す信号圧供給状態を形成する。また、Rポジションが選択されて後進第1速が形成されている際には、第1および第2リニアソレノイドバルブSL1,SL2の双方から油圧Psl1,Psl2が出力されず、第1ソレノイドリレーバルブ70は、図5中左側半分に示す第2出力状態を形成し、更に、第2信号圧出力バルブS2からの第2信号圧P2の出力が停止される。これにより、Rポジションが選択されて後進第1速が形成されている際には、第1ソレノイドリレーバルブ70には第1油圧および第2ソレノイドリレーバルブ80からの第2油圧としてのドライブレンジ圧PDが供給されず、第1ソレノイドリレーバルブ70および第2ソレノイドリレーバルブ80から切替信号圧Pcs(および保持圧Phold)が出力されることはない。従って、B2供給制御バルブ90は、第1状態(取付状態)に保持され、C3/B2供給制御バルブ95は、第1信号圧P1を入力せずに図5中左側半分に示す第1供給状態を形成する。この結果、第3リニアソレノイドバルブSL3から出力される油圧Psl3がクラッチC3に供給されると共に、マニュアルバルブ53のリバースレンジ圧出力ポートPRから出力されるリバースレンジ圧PRがブレーキB2に供給され、クラッチC3およびブレーキB2の同時係合により後進第1速が形成される。
なお、後進第1速(および後進第2速)が形成される際には、第1ソレノイドリレーバルブ70が第2出力状態を形成して保持圧Pholdを出力しないことになるが、リンプホーム用切替バルブ60は、運転者によりアクセルペダル41が大きく踏み込まれていなければ、基本的に、スプリング601の付勢力等により図5中右側半分に示す通常供給状態に保持される。従って、リンプホーム用切替バルブ60が通常供給状態を形成していれば、第3リニアソレノイドバルブSL3からの油圧Psl3をクラッチC3に供給することができる。また、Rポジションが選択された状態で運転者によりアクセルペダル41が大きく踏み込まれてリニアソレノイドバルブSLTからモジュレータ圧Pmodに一致する油圧Psltが出力された際、リンプホーム用切替バルブ60は、油圧Psltによりスプール600に付与される推力によりフェール供給状態を形成するが、この際には、リンプホーム用切替バルブ60は、第3リニアソレノイドバルブSL3からの油圧Psl3に代えて、ライン圧PLをC3/B2供給制御バルブ95に供給する。従って、油圧制御装置50によれば、リニアソレノイドバルブSLTからの油圧Psltによりリンプホーム用切替バルブ60の状態が切り替わったとしても、後進第1速の形成を継続することが可能となる。なお、後進第2速の形成に際しては、第3リニアソレノイドバルブSL3に油圧Psl3を出力させる代わりに、第4リニアソレノイドバルブSL4に油圧Psl4を出力させればよい。
上述のようにして、Rポジションが選択されて自動変速機25の後進第1速が形成された状態でシフトポジションがRポジションからNポジション(PポジションおよびDポジションの場合も同様)に変更された際に(図9における時刻t10)、油温センサ49により検出される作動油の油温Toilが予め定められた基準温度(所定温度)Tref(例えば、−20℃)を上回っている場合、変速ECU21は、油圧Psl3の出力を停止させるべく第3リニアソレノイドバルブSL3を全閉とすると共に、第1および第2第1信号圧出力バルブS1,S2からの第1および第2信号圧P1,P2の出力を停止させたままとする。
これにより、ブレーキB2の油室は、第1状態を形成するB2供給制御バルブ90の出力ポート92および入力ポート91や、第1供給状態を形成するC3/B2供給制御バルブ95の第1出力ポート97a、第1入力ポート96a、リバースレンジ圧供給油路55を介して中途にオリフィスORを有する第1ドレン油路57と連通する。そして、ブレーキB2の油室内の作動油(油圧)は、B2供給制御バルブ90、C3/B2供給制御バルブ95、リバースレンジ圧供給油路55、および第1ドレン油路57を介してマニュアルバルブ53のドレンポート53eから図示しないオイルパンに排出されることになる。この結果、後進第1速の形成に伴ってブレーキB2に供給されていた作動油(油圧)をオリフィスORにより流出規制しながら、第1ドレン油路57から比較的緩やかに排出させ(オリフィスドレン)、ブレーキB2の急解放に起因したショックの発生を抑制することができる。
更に、変速ECU21は、シフトポジションがRポジションからNポジション(PポジションおよびDポジションの場合も同様)に変更されてから、予め定められた第1時間tt1が経過した時点から(図9における時刻t20)、予め定められた第2時間tt2だけ(図9における時刻t30まで)、第2信号圧P2を出力するように第2信号圧出力バルブS2を制御する。これにより、第2信号圧出力バルブS2からの第2信号圧P2が信号圧供給状態を形成する第2ソレノイドリレーバルブ80から第2油圧および対向圧として第1ソレノイドリレーバルブ70に供給され、第2出力状態を形成する第1ソレノイドリレーバルブ70および信号圧供給状態を形成する第2ソレノイドリレーバルブ80を介して、第2信号圧P2が切替信号圧PcsとしてB2供給制御バルブ90に供給される。
この結果、切替信号圧Pcを入力したB2供給制御バルブ90が第2状態を形成し、ブレーキB2の油室は、第2状態を形成するB2供給制御バルブ90の出力ポート92およびドレンポート94や、第1供給状態を形成するC3/B2供給制御バルブ95のドレン用入力ポート99aおよびドレンポート99bを介してオリフィス等の流出量規制手段を有さない第2ドレン油路59と連通する。そして、ブレーキB2の油室内の作動油(油圧)は、B2供給制御バルブ90、C3/B2供給制御バルブ95を介して、中途にオリフィス等の流出量規制手段を有さない第2ドレン油路59を介して図示しないオイルパンに排出(クイックドレン)されることになる。従って、油圧制御装置50によれば、油温Toilが所定温度Trefを上回っている際に、後進第1速の形成に伴ってブレーキB2に供給されていた作動油を第1ドレン油路57から比較的緩やかに排出させ、ブレーキB2の急解放に起因したショックの発生のおそれが少なくなった段階から、残余の作動油を第2ドレン油路59から速やかに排出させることができる。これにより、ブレーキB2の急解放に起因したショックの発生を抑制しつつ、後進第1速を形成していたブレーキB2からの作動油の排出に要する時間を短縮化することが可能となる。
図9に示すように、変速ECU21は、第2信号圧出力バルブS2に第2信号圧P2を出力させ始めてから第2時間tt2が経過した時点(図9における時刻t30)で第2信号圧出力バルブS2からの第2信号圧P2の出力を停止させると共に、Nポジション(PポジションおよびDポジションの場合も同様)の選択時に第1信号圧出力バルブS1から出力されるべき第1信号圧P1の出力を開始させる。これにより、第2ソレノイドリレーバルブ80が信号圧遮断状態を形成することでB2供給制御バルブ90への切替信号圧Pcsの供給が絶たれ、B2供給制御バルブ90は、第2状態から第1状態へと切り替えられる。また、第1信号圧P1を入力したC3/B2供給制御バルブ95が第2供給状態を形成し、クラッチC3の油室がC3/B2供給制御バルブ95の第2出力ポート97b、ドレンポート99c、リバースレンジ圧供給油路55を介して中途にオリフィスORを有する第1ドレン油路57と連通する。この結果、クラッチC3の油室内の作動油(油圧)を第1ドレン油路57を介してマニュアルバルブ53のドレンポート53eから図示しないオイルパンに排出することができる。
一方、Rポジションが選択されて自動変速機25の後進第1速が形成された状態でシフトポジションがRポジションからNポジション(PポジションおよびDポジションの場合も同様)に変更された際に、油温センサ49により検出される作動油の油温Toilが上述の基準温度Tref以下である場合、変速ECU21は、図10に示すように、第3リニアソレノイドバルブSL3を全閉とすると共に、RポジションからNポジションへの変更(図10における時刻t10′)とほぼ同時に、第1信号圧出力バルブS1からの第1信号圧P1の出力を停止させたまま第2信号圧出力バルブS2に第2信号圧P2を出力させる。これにより、第2信号圧出力バルブS2からの第2信号圧P2が信号圧供給状態を形成する第2ソレノイドリレーバルブ80から第2油圧および対向圧として第1ソレノイドリレーバルブ70に供給され、第2信号圧出力状態を形成する第1ソレノイドリレーバルブ70および信号圧供給状態を形成する第2ソレノイドリレーバルブ80を介して、第2信号圧P2が切替信号圧PcsとしてB2供給制御バルブ90に供給される。
この結果、切替信号圧Pcを入力したB2供給制御バルブ90が第2状態を形成し、ブレーキB2の油室は、第2状態を形成するB2供給制御バルブ90の出力ポート92およびドレンポート94や、第1供給状態を形成するC3/B2供給制御バルブ95のドレン用入力ポート99aおよびドレンポート99bを介してオリフィス等の流出量規制手段を有さない第2ドレン油路59と連通する。そして、ブレーキB2の油室内の作動油(油圧)は、B2供給制御バルブ90、C3/B2供給制御バルブ95を介して、中途にオリフィス等の流出量規制手段を有さない第2ドレン油路59を介して図示しないオイルパンに排出(クイックドレン)されることになる。
このように、油圧制御装置50によれば、油温Toilが基準温度Tref以下であって作動油の粘度が高まっている際には、シフトポジションがRポジションからNポジションに変更された段階からB2供給制御バルブ90を第2状態へと切り替えて、ブレーキB2に供給されていた作動油を第2ドレン油路59から排出させることができる。従って、油温Toilが基準温度Tref以下であって作動油の粘度が高まっている際に、ブレーキB2の急解放に起因したショックの発生を抑制しつつ、後進第1速を形成していたブレーキB2からの作動油の排出に要する時間を短縮化し、その後にブレーキB2の引き摺り等が発生するのを良好に抑制することが可能となる。そして、変速ECU21は、第2信号圧出力バルブS2に第2信号圧P2を出力させ始めてから所定時間tt0が経過した時点(図10における時刻t20′)で第2信号圧出力バルブS2からの第2信号圧P2の出力を停止させると共に、Nポジション(PポジションおよびDポジションの場合も同様)の選択時に第1信号圧出力バルブS1から出力されるべき第1信号圧P1の出力を開始させる。
また、自動変速機25を備えた自動車10では、例えばアクセルオフかつブレーキオフであることや、車速Vがロックアップオン車速未満であることを含む1速エンジンブレーキ実行条件が成立した際(1速エンジンブレーキ時)に、前進第1速が形成された状態で自動変速機25の入力軸26から出力軸27にエンジンのフリクショントルクを伝達すべくブレーキB2が係合される。すなわち、前進第1速が形成された状態で1速エンジンブレーキ実行条件が成立すると、変速ECU21は、それまで第1信号圧出力バルブS1から第1信号圧P1が出力されていれば、当該第1信号圧P1の出力を継続させ、それまで第1信号圧出力バルブS1から第1信号圧P1が出力されていなければ、当該第1信号圧P1の出力を開始させ、更に、第3リニアソレノイドバルブSL3を全開とする。
これにより、第2ソレノイドリレーバルブ80が第1信号圧出力バルブS1から第1信号圧P1を入力して信号圧遮断状態を形成することから、B2供給制御バルブ90は、切替信号圧Pcsを入力せずに第1状態を形成し、C3/B2供給制御バルブ95は、第1信号圧出力バルブS1から第1信号圧P1を入力して第2供給状態を形成する。そして、ブレーキB2には、第2供給状態を形成するC3/B2供給制御バルブ95および第1状態を形成するB2供給制御バルブ90を介して第3リニアソレノイドバルブSL3からの油圧Psl3が供給され、それによりブレーキB2が係合することになる。
そして、例えば車速Vの高まり等に応じて1速エンジンブレーキ実行条件が非成立となると、変速ECU21は、ブレーキB2の係合を解除すべく第3リニアソレノイドバルブSL3を全閉とすると共に、第1信号圧出力バルブS1からの第1信号圧P1の出力を停止させる。これにより、B2供給制御バルブ90は、第1リニアソレノイドバルブSL1からの油圧Psl1により第1出力状態を形成する第1ソレノイドリレーバルブ70および第1信号圧出力バルブS1から第1信号圧P1を入力せずに信号圧供給状態を形成する第2ソレノイドリレーバルブ80から切替信号圧Pcsを入力して第2状態を形成する。また、C3/B2供給制御バルブ95は、第1信号圧出力バルブS1から第1信号圧P1を入力せずに第1供給状態を形成する。従って、ブレーキB2の油室は、第2状態を形成するB2供給制御バルブ90の出力ポート92およびドレンポート94や、第1供給状態を形成するC3/B2供給制御バルブ95のドレン用入力ポート99aおよびドレンポート99bを介してオリフィス等の流出量規制手段を有さない第2ドレン油路59と連通する。この結果、1速エンジンブレーキ実行条件が非成立となったのに伴ってブレーキB2を解放させる際には、ブレーキB2の油室内の作動油(油圧)を第2ドレン油路59を介して速やかに排出(大ドレン)させることができる。
以上説明したように、油圧制御装置50は、複数のクラッチC1〜C4、ブレーキB1およびB2のうちの何れかを選択的に係合させて後進段と複数の前進段とを形成する自動変速機25に適用され、第1切替バルブに相当するB2供給制御バルブ90と、第2信号圧P2を出力する第2信号圧出力バルブS2と、切替信号圧供給手段に相当する第1および第2ソレノイドリレーバルブ70,80、第1信号圧P1を出力する第1信号圧出力バルブS1および変速ECU21とを含む。B2供給制御バルブ90は、切替信号圧Pcsを入力しない際に、後進第1速(および後進第2速)の形成に際して係合されるブレーキB2に係合用油圧としてのリバースレンジ圧PRを供給する第1状態を形成し、切替信号圧Pcsを入力した際に、ブレーキB2へのリバースレンジ圧PRの供給を遮断すると共にブレーキB2からの作動油の排出を許容する第2状態を形成するものである。
このような油圧制御装置50において、Dポジションが選択されて前進第1速から前進第8速が形成されている際には、基本的に、第1および第2ソレノイドリレーバルブ70,80からドライブレンジ圧(所定の油圧)PDが切替信号圧PcsとしてB2供給制御バルブ90に供給される。また、Rポジションが選択されている際には、B2供給制御バルブ90への切替信号圧Pcsの供給が停止される。更に、シフトポジションがRポジションからNポジションに変更された際には、第2信号圧出力バルブS2からの第2信号圧P2が切替信号圧PcsとしてB2供給制御バルブ90に供給することが許容される。そして、B2供給制御バルブ90が切替信号圧Pcsを入力せずに第1状態を形成する際には、中途に流出量規制手段としてのオリフィスORを有する第1ドレン油路57を介してブレーキB2から作動油が排出され、B2供給制御バルブ90が切替信号圧Pcsを入力して第2状態を形成する際には、中途に流出量規制手段を有さない第2ドレン油路59を介してブレーキB2から作動油が排出される。
従って、Dポジションが選択されて前進第1速から前進第8速が形成されている際には、ドライブレンジ圧PDが切替信号圧Pcsとして供給されることでB2供給制御バルブ90が第2状態を形成することから、ブレーキB2に流れ込んだ漏れ油等を第2ドレン油路59を介して速やかに排出(大ドレン)させることができる。また、Rポジションの選択時には、切替信号圧Pcsの供給が停止されることでB2供給制御バルブ90が第1状態を形成することから、リバースレンジ圧PRによりブレーキB2を係合させることができる。更に、シフトポジションがRポジションからNポジションに変更された際には、第2信号圧出力バルブS2からの第2信号圧P2を切替信号圧PcsとしてB2供給制御バルブ90に供給することが許容される。従って、シフトポジションがRポジションからNポジションに変更された際に第2信号圧出力バルブS2に第2信号圧P2を出力させなければ、B2供給制御バルブ90が第1状態を形成するので、後進第1速等の形成に伴ってブレーキB2に供給されていた作動油を第1ドレン油路57から比較的緩やかに排出させ、ブレーキB2の急解放に起因したショックの発生を抑制することができる。また、シフトポジションがRポジションからNポジションに変更された際に第2信号圧出力バルブS2に第2信号圧P2を出力させることにより、B2供給制御バルブ90を第2状態へと切り替えて、ブレーキB2に供給されていた作動油を第2ドレン油路59から速やかに排出させることができる。この結果、油圧制御装置50によれば、後進第1速および後進第2速の形成に際して係合されるブレーキB2から作動油をより適正に排出することが可能となる。
また、油圧制御装置50の制御手段に相当する変速ECU21は、シフトポジションがRポジションからNポジションに変更された際に油温Toilが基準温度(所定温度)Tref以下である場合、予め定められた時間tt0だけ第2信号圧P2を出力するように第2信号圧出力バルブS2を制御する。これにより、油温Toilが基準温度Tref以下であって作動油の粘度が高まっている際には、シフトポジションがRポジションからNポジションに変更された段階からB2供給制御バルブ90を第2状態へと切り替えて、ブレーキB2に供給されていた作動油を第2ドレン油路59から排出させることができる。この結果、油温Toilが低く作動油の粘度が高まっている際に、ブレーキB2の急解放に起因したショックの発生を抑制しつつ、後進第1速等を形成していたブレーキB2からの作動油の排出に要する時間を短縮化し、その後にブレーキB2の引き摺り等が発生するのを良好に抑制することが可能となる。
更に、変速ECU21は、シフトポジションがRポジションからNポジションに変更された際に油温Toilが基準温度Trefを上回っている場合、予め定められた第1時間tt1の経過後に予め定められた第2時間tt2だけ第2信号圧P2を出力するように第2信号圧出力バルブS2を制御する。これにより、油温Toilが基準温度Trefを上回っている際には、まず、後進第1速等の形成に伴ってブレーキB2に供給されていた作動油を第1ドレン油路57から比較的緩やかに排出させ、ブレーキB2の急解放に起因したショックの発生のおそれが少なくなった段階から、残余の作動油を第2ドレン油路59から速やかに排出させることができる。この結果、油温Toilが基準温度Trefを上回っている際に、ブレーキB2の急解放に起因したショックの発生を抑制しつつ、後進第1速等を形成していたブレーキB2からの作動油の排出に要する時間を短縮化することが可能となる。
また、油圧制御装置50は、それぞれオイルポンプ24からの油圧に基づくライン圧PLを調圧してDポジションが選択されて前進第1速〜前進第8速段が形成される際に少なくとも何れか一方が係合されるクラッチC1,C2への油圧を出力する第1、第2リニアソレノイドバルブSL1,SL2を含むと共に、切替信号圧供給手段として、第1ソレノイドリレーバルブ70、第1信号圧出力バルブS1および第2ソレノイドリレーバルブ80を含む。第1ソレノイドリレーバルブ70は、第1油圧としてのDポジションが選択された際にマニュアルバルブ53から出力されるドライブレンジ圧PDを切替信号圧Pcsとして出力することを許容する第1出力状態と、第2ソレノイドリレーバルブ80からの第2油圧すなわちドライブレンジ圧PDまたは第2信号圧P2を切替信号圧Pcsとして出力することを許容する第2出力状態とを選択的に形成可能であり、第1および第2リニアソレノイドバルブSL1,SL2の少なくとも何れか一方からの油圧Psl1,Psl2による推力によって第1出力状態を形成すると共に、第1および第2リニアソレノイドバルブSL1,SL2の少なくとも何れか一方からの油圧Psl1,Psl2の低下に伴って第2出力状態を形成する。また、第2ソレノイドリレーバルブ80は、第1信号圧出力バルブS1から第1信号圧P1を入力しない際に、第1ソレノイドリレーバルブ70へのドライブレンジ圧(第2油圧)PDの供給を禁止すると共に、第2信号圧出力バルブS2から第1ソレノイドリレーバルブ70への第2信号圧P2の供給および第1ソレノイドリレーバルブ70からB2供給制御バルブ90への切替信号圧Pcsの供給を許容する信号圧供給状態を形成し、第1信号圧出力バルブS1から第1信号圧P1を入力した際に、第1ソレノイドリレーバルブ70へのドライブレンジ圧(第2油圧)PDの供給を許容すると共に、第1ソレノイドリレーバルブ70からB2供給制御バルブ90への切替信号圧Pcsの供給を遮断する信号圧遮断状態を形成する。
これにより、Dポジションが選択されて前進第1速〜前進第8速が形成される際には、第1および第2リニアソレノイドバルブSL1,SL2の少なくとも何れか一方からの油圧Psl1,Psl2による推力によって第1ソレノイドリレーバルブ70が第1出力状態を形成する。従って、第1信号圧出力バルブS1による第1信号圧P1の出力を停止させることで、第1油圧すなわちDポジションが選択された際にマニュアルバルブ53から出力されるドライブレンジ圧PD(=ライン圧PL)を第1ソレノイドリレーバルブ70および第2ソレノイドリレーバルブ80を介してB2供給制御バルブ90に切替信号圧Pcsとして供給することができる。更に、Rポジションが選択されている際には、マニュアルバルブ53から第1ソレノイドリレーバルブ70および2ソレノイドリレーバルブ80へのドライブレンジ圧PD(ライン圧PL)の供給が断たれるので、B2供給制御バルブ90への切替信号圧Pcsの供給が停止されることになる。また、シフトポジションがRポジションからNポジションに変更された際には、マニュアルバルブ53から第1ソレノイドリレーバルブ70および2ソレノイドリレーバルブ80へのドライブレンジ圧PD(ライン圧PL)の供給が断たれ、基本的にB2供給制御バルブ90への切替信号圧Pcsの供給が停止される。更に、シフトポジションがRポジションからNポジションに変更された際に第1信号圧出力バルブS1による第1信号圧P1の出力を停止させた状態で第2信号圧出力バルブP2に第2信号圧P2を出力させれば、当該第2信号圧P2を第1ソレノイドリレーバルブ70および2ソレノイドリレーバルブ80を介してB2供給制御バルブ90に切替信号圧Pcsとして供給することができる。
また、油圧制御装置50は、後進第1速の形成に際してブレーキB2と同時に係合されるクラッチC3への油圧を出力する第3リニアソレノイドバルブL3と、第1信号圧出力バルブS1から第1信号圧P1を入力しない際に、Rポジションが選択された際にマニュアルバルブ53から出力されるリバースレンジ圧PR(=ライン圧PL)をB2供給制御バルブ90に供給することを許容すると共に第3リニアソレノイドバルブSL3からの油圧Psl3をクラッチC3に供給することを許容する第1供給状態を形成し、第1信号圧出力バルブS1から第1信号圧P1を入力した際に、第3リニアソレノイドバルブSL3からの油圧Psl3をB2供給制御バルブ90に供給することを許容する第2供給状態を形成するC3/B2供給制御バルブ95とを含む。そして、第1供給状態を形成したC3/B2供給制御バルブ95からリバースレンジ圧PRがB2供給制御バルブ90に供給される際、第1状態を形成したB2供給制御バルブ90は、第3リニアソレノイドバルブSL3からの油圧Psl3に代えて、C3/B2供給制御バルブ95からのリバースレンジ圧PRをブレーキB2に供給する。更に、C3/B2供給制御バルブ95は、第1供給状態を形成した際に、第1状態を形成したB2供給制御バルブ90を介してブレーキB2と第1ドレン油路57とを連通させると共に、第2状態を形成したB2供給制御バルブ90を介してブレーキB2と第2ドレン油路59とを連通させる。
これにより、B2供給制御バルブ90が第1状態を形成する際に、中途にオリフィスORを有する第1ドレン油路57を介してブレーキB2から作動油を排出させると共に、B2供給制御バルブ90が第2状態を形成する際には、中途に流出量規制手段を有さない第2ドレン油路59を介してブレーキB2から作動油を排出させることが可能となる。また、かかる油圧制御装置50によれば、Dポジションが選択されて前進第1速が形成される際に、第1信号圧出力バルブS1に第1信号圧P1を出力させることで、B2供給制御バルブ90およびC3/B2供給制御バルブ95を介してクラッチC3に対応した第3リニアソレノイドバルブSL3からの油圧をブレーキB2に供給することが可能となる。
なお、上記油圧制御装置50は、8段変速式の自動変速機25に適用されるものとして説明されたが、これに限られるものではなく、本発明による油圧制御装置が7段以下あるいは9段以上の変速段を有する変速機に適用され得ることはいうまでもない。
また、課題を解決するための手段の欄に記載した符号は、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係を説明するためのものであり、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載された発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載された発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。すなわち、実施例はあくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一例に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の解釈は、その欄の記載に基づいて行なわれるべきものである。
以上、実施例を用いて本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。