以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
(実施の形態1)
本実施の形態および以下の実施の形態の半導体装置は、不揮発性メモリ(不揮発性記憶素子、不揮発性半導体記憶装置)として、磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)を備えた半導体装置である。
<半導体装置の構造について>
以下では、MRAMを構成する磁気抵抗効果素子の側壁にプラズマ処理により酸化膜を形成することで、積層構造を有する磁気抵抗効果素子の側壁において、金属物質の付着物によりリーク電流が発生することを防ぐことについて説明する。ここではまず、本実施の形態の半導体装置の構造を、図1〜図3を参照して説明する。図1〜図3は、本実施の形態の半導体装置の断面図である。図1および図2には、本実施の形態の半導体装置における特徴的な部分である積層構造の断面を示している。図1および図2では同一の積層構造を示しており、図1で示す断面と、図2で示す断面とは、互いに直交する別々の断面である。図3には、図1および図2で示した磁気抵抗効果素子に加えて、半導体基板、トランジスタおよびその他の配線などを含めた半導体装置の断面図を示している。
図1には、本実施の形態の半導体装置であるMRAMの主要部である磁気抵抗効果素子MRを構成する磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)部の断面を示している。磁気トンネル接合部は、磁性層(磁化自由層)MFと、磁性層MF上に形成されたトンネル障壁層TBと、トンネル障壁層TB上に形成された磁性層(磁化固定層)MFIとを含む積層構造を有している。磁性層(磁化自由層)MFの上面はトンネル障壁層TBの下面に接しており、トンネル障壁層TBの上面は磁性層(磁化固定層)MFIの下面に接している。
また、図2に示すように、当該積層構造の下部を構成する磁性層(磁化自由層)MFは、横方向(半導体基板の主面に沿うx軸方向)に延在している。言い換えれば、磁性層(磁化自由層)MF、前記トンネル障壁層TBおよび磁性層(磁化固定層)MFIからなる積層膜の積層方向に対して垂直な方向において、磁性層(磁化自由層)MFの幅は、磁性層(磁化固定層)MFIよりも大きい。
磁性層(磁化自由層)MFと同様に、トンネル障壁層TBはx軸方向において延在しており、磁性層MFの上面を覆っている。これに対し、磁性層(磁化固定層)MFIは、磁性層(磁化自由層)MFのように延在してはいない。つまり、x軸方向における磁性層MFの両端部の上面は、磁性層MFIに覆われておらず、かつ、トンネル障壁層TBに覆われている。なお、トンネル障壁層TBは上記方向において、延在せずに磁性層MFIと同様の幅を有していてもよい。この場合、上記方向における磁性層MFIの横の磁性層MFの上面は、トンネル障壁層TBから露出する。
磁性層MFおよびMFIのそれぞれは、例えばCoFeB、つまりCo(コバルト)、Fe(鉄)およびB(ホウ素)を含む合金、または、NiFe、つまりNi(ニッケル)とFe(鉄)を含む合金などからなる。トンネル障壁層TBは、例えばMgO(酸化マグネシウム)またはAlOx(0<x<1)(酸化アルミニウム)などからなる絶縁層(酸化磁性層)である。トンネル障壁層TBは、磁性層MFと磁性層MFIとを隔て、磁性層MFと磁性層MFIとを絶縁する役割を有するスペーサ層である。トンネル障壁層TBは、好適には、非磁性の絶縁体から構成される。
ここで、磁性層MF、トンネル障壁層TBおよび磁性層MFIは、TMR(tunneling magneto resistance)効果を示す磁気トンネル接合(MTJ)部として機能する。この場合、磁性層MF、トンネル障壁層TBおよび磁性層MFIは、GMR(giant magneto resistance)効果を示すスピンバルブとして機能する。
本実施の形態の主な特徴として、図1に示すように、磁気抵抗効果素子MRを構成する積層膜の側壁は、酸化絶縁膜により覆われている。つまり、磁性層MFの側壁は、酸化膜OL1に覆われており、磁性層MFIの側壁は、酸化膜OL2により覆われている。酸化膜OL1は、磁性層MFの側壁をプラズマ処理することで酸化させて形成した絶縁膜であり、酸化膜OL2は、磁性層MFIの側壁をプラズマ処理することで酸化させて形成した絶縁膜である。酸化膜OL1、OL2は、例えばCoO(酸化コバルト)、FeO(酸化鉄)、Fe2O3(三酸化鉄)またはB2O3(酸化ホウ素、三酸化二ホウ素)を含む膜である。
ここでは図2に示すように、磁性層MFIに覆われていない磁性層MFの上面は、トンネル障壁層TBに覆われているため酸化していない。ただし、トンネル障壁層TBが延在しておらず、磁性層MFIの横の磁性層MFの上面がトンネル障壁層TBに覆われていない場合には、磁性層MFIの横の磁性層MFの上面は、磁性層MFをプラズマ処理することで酸化して形成した酸化膜OL1により覆われる。
次に、図3を用いて、半導体基板、磁気抵抗効果素子MRおよびその選択素子などを含む本実施の形態の半導体装置の構造について説明する。ただし、本実施の形態の主な特徴は磁気抵抗効果素子MRにあるため、磁気抵抗効果素子MRの選択素子であるトランジスタの構造の詳細な説明は省略する。
図3に示すように、半導体基板SBの主面上にN型のMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ(電界効果トランジスタ)Q1、Q2が形成されている。MOSトランジスタQ1、Q2のそれぞれのゲート電極G1、G2は、図3の奥行き方向(半導体基板SBの主面に沿うy軸方向)に延在しており、ワード線として使用される。
MOSトランジスタQ1を構成する一対のソース・ドレイン領域SDのうち、一方のソース・ドレイン領域SDは、コンタクトプラグCPと配線M1とを介して磁化固定層HL1に電気的に接続されており、他方のソース・ドレイン領域SDは、コンタクトプラグCPと配線M1とビアV2とを介してビット線に接続されている。MOSトランジスタQ2を構成する一対のソース・ドレイン領域SDのうち、一方のソース・ドレイン領域SDは、コンタクトプラグCPと配線M1とを介して磁化固定層HL2に電気的に接続されており、他方のソース・ドレイン領域SDは、コンタクトプラグCPと配線M1とビアV2とを介して他のビット線に接続されている。
半導体基板SBの上面、MOSトランジスタQ1およびQ2を覆うように、半導体基板SB上には、例えば酸化シリコンからなる層間絶縁膜IL1が形成されており、複数のコンタクトプラグCPは、層間絶縁膜IL1に開口された複数のコンタクトホールのそれぞれの内側に埋め込まれている。層間絶縁膜IL1およびコンタクトプラグCPのそれぞれの上面は同一面において平坦化されており、それらの上面上には、例えば酸化シリコンからなる層間絶縁膜IL2が形成されている。
層間絶縁膜IL2には、複数の配線溝が層間絶縁膜IL2を貫通して形成されており、各配線溝内には、第1配線層を構成する配線M1が形成されている。複数の配線M1のそれぞれは主に銅(Cu)からなり、それらの配線M1のそれぞれの底面は、いずれもコンタクトプラグCPの上面に接続されている。層間絶縁膜IL2および配線M1は第1配線層を構成する。
第1配線層上には、例えば酸化シリコンからなる層間絶縁膜IL3が形成されており、層間絶縁膜IL3には、複数のビアホールが層間絶縁膜IL3を貫通して形成されている。一部のビアホール内には、ビアV1が埋め込まれている。また、他の一部のビアホール内には、層間絶縁膜IL3と、層間絶縁膜IL3上に順に形成された層間絶縁膜IL4、絶縁膜IF8、IF10および層間絶縁膜IL5とを貫通するビアV2の一部が埋め込まれている。ビアV1は、MOSトランジスタQ1およびQ2と磁気抵抗効果素子MRとを電気的に接続する導体膜であり、例えば主に銅(Cu)からなる。ビアV1および層間絶縁膜IL3のそれぞれの上面は同一面において平坦化されており、ビアV1、V2のそれぞれの底面は、配線M1の上面に接続されている。
ビアV1および層間絶縁膜IL3のそれぞれの上には、例えば窒化シリコン膜からなる層間絶縁膜IL4が形成されている。層間絶縁膜IL4には、2つのビアV1のそれぞれの上面を露出する溝が、2つのビアV1のそれぞれに対応して形成されている。つまり、層間絶縁膜IL4を貫通する2つの溝のそれぞれの底面においてビアV1の上面が露出している。ここで、一方の溝内には、ビアV1上に順に形成された導体膜TA1a、磁化固定層HL1および導体膜TA1bからなる積層膜が埋め込まれている。また、他方の溝内には、ビアV1上に順に形成された導体膜TA2a、磁化固定層HL2および導体膜TA2bからなる積層膜が埋め込まれている。
導体膜TA1b、TA2bおよび層間絶縁膜IL4のそれぞれの上面は同一面において平坦化されており、導体膜TA1a、TA2aのそれぞれの底面は、ビアV1の上面に接続されている。導体膜TA1a、TA2a、TA1bおよびTA2bは、例えばTa(タンタル)を含む導体膜であり、磁化固定層HL1、HL2は、例えばCo(コバルト)を含む磁性体層である。磁化固定層HL1、HL2のそれぞれの磁化の向きは、上下方向、つまりz軸方向に平行であり、磁化固定層HL1、HL2のそれぞれの磁化の向きは互いに反対方向を向いている。
層間絶縁膜IL4上には、図1および図2を用いて説明した磁気抵抗効果素子MRが形成されている。図2を用いて説明したように、図3に示す磁気抵抗効果素子MRは、その底部の磁性層MFがx軸方向に延在しており、x軸方向における磁性層MFの一方の端部の底面は導体膜TA1bを介して磁化固定層HL1に接続されており、他方の端部の底面は導体膜TA2bを介して磁化固定層HL2に接続されている。磁化固定層HL1、HL2のそれぞれの直上にトンネル障壁層TBおよび磁性層MFIは形成されておらず、磁性層MFI上には、導体膜TA6が形成されており、導体膜TA6の上面には、層間絶縁膜IL5を貫通するビアV2が接続されている。ビアV2はグラウンド線に接続されている。
ここでは図示を省略するが、導体膜TA6は、磁性層MFI上に形成された積層膜からなる。当該積層膜は、磁性層MFI上に順に形成された、例えばTa(タンタル)を含む導体膜と、例えばCo(コバルト)を含む導体膜と、例えばTa(タンタル)を含む導体膜との3層からなる。
磁気抵抗効果素子MRを構成する磁性層MFIは、導体膜TA6およびビアV2を介してグラウンド線に接続されている。また、磁気抵抗効果素子MR内において、磁性層MFIと磁性層MFとは、それらの間に介在するトンネル障壁層TBにより絶縁されている。また、磁気抵抗効果素子MRを構成する磁性層MFは、一方の端部が導体膜TA1b、磁化固定層HL1、導体膜TA1a、ビアV1、配線M1およびコンタクトプラグCPを介してMOSトランジスタQ1に接続されており、他方の端部が導体膜TA2b、磁化固定層HL2、導体膜TA2a、ビアV1、配線M1およびコンタクトプラグCPを介してMOSトランジスタQ2に接続されている。
磁性層MFの側壁は酸化膜OL1により覆われており、磁性層MFIの側壁は酸化膜OL2により覆われている。磁気抵抗効果素子MRおよびその上の導体膜TA6は、例えば窒化シリコン膜からなる絶縁膜IF10により覆われている。つまり、磁性層MFの側壁と絶縁膜IF10との間には、酸化膜OL1が介在している。また、磁性層MFIの側壁と絶縁膜IF10との間には、酸化膜OL2が介在している。絶縁膜IF10上には、層間絶縁膜IL5が形成されている。ビアV2は、層間絶縁膜IL5および層間絶縁膜IL5の下の絶縁膜IF10を貫通して導体膜TA6の上面に接続されている。
層間絶縁膜IL5の上面と、複数のビアV2のそれぞれの上面とは、同一の面において平坦化されている。x軸方向において、磁性層MFの横の絶縁膜IF10と層間絶縁膜IL4との間には、例えば窒化シリコン膜からなる絶縁膜IF8が介在している。絶縁膜IF8の上面の高さは、磁性層MFの上面の高さと同等か、または磁性層MFの上面の高さよりも低い。図3に示す磁気抵抗効果素子MR、MOSトランジスタQ1およびQ2は、MRAMの1つのメモリセルを構成している。
次に、図4を用いて、本実施の形態の磁気抵抗効果素子MRを用いて構成された磁気メモリセルMCの回路構成を説明する。図4には、本実施の形態の1つの磁気メモリセルMCの回路を示している。磁気抵抗効果素子MRは、3端子素子であるが、その3端子のうちの磁性層MFI(図3参照)に接続される端子は読み出しのためのグラウンド線GDに接続される。磁性層MF(図3参照)の両端の2つの端子のうち、一方の端子はMOSトランジスタQ1の第1ソース・ドレイン領域に接続され、他方の端子はMOSトランジスタQ2の第1ソース・ドレイン領域に接続される。
また、トランジスタQ1の第2ソース・ドレイン領域は、書き込みのためのビット線BL1に接続され、トランジスタQ2の第2ソース・ドレイン領域は、書き込みのためのビット線BL2に接続される。また、トランジスタQ1のそれぞれのゲート電極は、ワード線WLに接続される。図4に示した磁気メモリセルMCは、アレイ状に配置され、周辺回路に接続され、これにより磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM)が構成される。
次に、図4に示された磁気メモリセルMCの書き込み、読み出し動作について説明する。まず書き込みを行う場合には、ワード線WLを“high”にし、トランジスタQ1、Q2を“ON”にする。またビット線BL1、BL2のいずれか一方を“high”にし、他方を“low”とする。ビット線BL1、BL2のどちらかを“high”にし、どちらを“low”にするかで磁性層MFを流れる電流の方向が変わるため、磁気抵抗効果素子MRへのデータの書き込みが可能となる。
また、読み出しの際には、ワード線WLを“high”にし、トランジスタQ1、Q2を“ON”とする。またビット線BL1、BL2のいずれか一方を“high”にし、他方を“open”とする。このときビット線BL1、BL2のいずれか一方から磁気抵抗効果素子MRを貫通する電流がグラウンド線GDへと流れるため、磁気抵抗効果による高速での読み出しが可能となる。ただし、図4に示された回路、およびここで述べられた回路の設定は、実施の形態の一例に過ぎず、他の回路構成による実施も可能である。
<磁気抵抗効果素子の動作について>
以下に、磁気抵抗効果素子MRの動作について、図5〜図9を用いて説明する。ここでは、磁壁移動型の磁気抵抗効果素子MRにおいて情報の書き込み、読み出しを行う際の磁気抵抗効果素子MR内における磁化の向きについて具体的に説明する。
図5は、本実施の形態の磁気抵抗効果素子MRの主要な部分の構成を示す斜視図である。以下では、図5に示すように、xyz直交座標系を定義して説明を行う。図6、図8および図9は、磁気抵抗効果素子MRを構成する磁性層MFを示すx−y平面図であり、図7は、磁気抵抗効果素子MRの構成を示すx−z断面図である。図7では、図を分かりやすくするため、ハッチングを省略している。なお、図5〜図9では、酸化膜OL1、OL2(図2参照)を示していない。また、ここでは図をわかりやすくするため、磁性層MFの両端のそれぞれの下面に接するように磁化固定層HL1、HL2を示している。実際には、図3を用いて説明したように、磁性層MFと磁化固定層HL1、HL2との間には他の膜が介在している場合がある。
図5に示すように、磁気抵抗効果素子MRは、x方向に延伸して設けられる磁性層MFと、磁性層MF上に隣接して設けられ、x方向に延伸するトンネル障壁層TBと、トンネル障壁層TB上に隣接して磁性層MFとは反対側に設けられる磁性層MFIとを有する。また、磁性層MFの両端の下面に隣接して、磁化固定層HL1、HL2が設けられている。
磁性層MF、磁性層MFI、磁化固定層HL1およびHL2は強磁性体により構成される。ここで、図7に、磁性層MF、磁性層MFI、磁化固定層HL1およびHL2の磁化の向きを白い矢印で示す。図7に示すように、磁性層MF、磁性層MFI、磁化固定層HL1およびHL2の磁化は、いずれもz軸に略平行な方向を向いている。このような磁化方向を実現させるために、磁性層MF、磁性層MFI、磁化固定層HL1およびHL2は垂直磁化を有する材料、または積層膜により形成されることが好ましい。この場合の積層膜とは、強磁性体同士の積層膜でもよいし、強磁性体と非磁性体からなる積層膜でもよい。
図6に示すように、磁性層MFは、磁化固定部FP1、FP2、磁壁移動部WM、および磁壁ピンサイトMW1、MW2を備えている。図7に示すように、磁化固定部FP1は、磁性層MFのx軸方向における一方の端部であり、磁化固定部FP2は、磁性層MFのx軸方向における他方の端部である。また、磁壁移動部WMは、x軸方向における磁性層MFの中央部であり、磁壁移動部WMと磁化固定部FP1との間に磁壁ピンサイトMW1が位置し、磁壁移動部WMと磁化固定部FP2との間に磁壁ピンサイトMW2が位置している。
磁性層(磁化固定層)MFI、磁化固定層HL1およびHL2の磁化の向きは固定されているため変化しないが、磁性層(磁化自由層)MFの磁化の向きはz軸方向において+z方向または−z方向の間で反転し得る。磁性層MFIは、平面視において磁壁移動部WMの少なくとも一部と重なるように設けられている。磁化固定部FP1、FP2には、z軸方向において磁化固定層HL1、HL2が隣接して設けられている。これにより、磁化固定部FP1、FP2の磁化方向は、互いに略反平行方向に固定されている。また、磁壁移動部WMは、その磁化が+z方向、−z方向の間で反転可能である。
このとき、磁化固定部FP1、FP2、および磁壁移動部WMの磁化の方向に応じて、磁壁ピンサイトMW1と磁壁ピンサイトMW2のいずれか一方に磁壁が形成される。磁壁ピンサイトMW1、MW2は、この系に磁界が印加されていない場合または電流が流れていない場合に、この磁壁を安定に停留させる機能を有する。なお、図5〜図7に示されるような構造では、磁壁ピンサイトMW1、MW2として特別な構造を設けなくても、自然に磁壁をピニングできることがマイクロマグネティクス計算から判明している。ただし、意図的にピニングポテンシャルをより強くするような工夫が磁壁ピンサイトMW1、MW2になされてもよい。
磁化固定部FP1、FP2、および磁性層MFIのそれぞれは、外部の異なる配線に電気的に接続される。ここで磁化固定部FP1、FP2は、磁化固定層HL1、HL2を介して外部の配線に電気的に接続されてもよい。すなわち、磁気抵抗効果素子MRは3端子の素子である。
次に、磁気抵抗効果素子MRへのデータの書き込み方法について、図8、図9を用いて説明する。図8、図9は、磁気抵抗効果素子MRがとり得る2つの状態、即ち、“0状態”(図8参照)と“1”状態(図9参照)とを模式的に示す平面図である。ここで、”0”状態とは、磁気抵抗効果素子MRにデータ”0”が書き込まれた状態をいい、”1”状態とは、磁気抵抗効果素子MRにデータ”1”が書き込まれた状態をいう。
以下では、磁化固定部FP1の磁化は+z方向に、磁化固定部FP2の磁化は−z方向に固定されているものとして説明をする。また、以下では、図8に示す“0”状態では、磁壁移動部WMが+z方向に磁化し、図9に示す“1”状態では、磁壁移動部WMが−z方向に磁化しているものと定義する。ただし、磁化固定部FP1、FP2の磁化方向は、互いに略反平行、つまり反対方向であればよく、上述の方向に限られない。また、データの値と磁壁移動部WMの磁化方向との関係に関する定義が上述の限りでないことは言うまでもない。
上述のような磁化状態のとき、“0”状態では磁壁は磁壁ピンサイトMW2に、“1”状態では磁壁は磁壁ピンサイトMW1に形成される。本実施の形態では、磁性層MF中を流れる電流の向きを変えることにより、磁壁を磁壁ピンサイトMW1、MW2間で移動させ、これにより所望のデータを磁気抵抗効果素子MRに書き込む。
例えば、磁気抵抗効果素子MRが図8の“0”状態にあるときに、+x方向に電流が流れた場合、つまり、−x方向に伝導電子が流れた場合、磁壁ピンサイトMW2にあった磁壁は、伝導電子によるスピントランスファートルクを受け、伝導電子と同じ方向に移動し、磁壁ピンサイトMW1に至る。また、磁気抵抗効果素子MRが図9の“1”状態にあるときに、−x方向に電流が流れた場合、つまり、+x方向に伝導電子が流れた場合、磁壁ピンサイトMW1にあった磁壁は、伝導電子によるスピントランスファートルクを受け、伝導電子と同じ方向に移動し、磁壁ピンサイトMW2に至る。このようにして“0”状態から“1”状態へ、および“1”状態から“0”状態への書き込みができる。
また、磁気抵抗効果素子MRが図8に示された“0”状態にあるときに、−x方向に電流を流した場合、つまりデータ“0”を書き込んだ場合、磁壁は+x方向に移動しようとするが、磁化固定部FP2の磁化が十分強く固定されていれば、磁壁移動は起こらない。したがって、オーバーライト動作(磁化の方向を反転させない書き込み動作)も可能である。また、磁化固定部FP2の磁化が磁壁移動により+z方向に反転しても、電流の流れが止まったときに再び元の状態、すなわち−z方向を向く状態に回復する手段を備えれば、上述のようなオーバーライト動作は可能となる。この回復の手段としては、磁化固定層HL1、HL2との磁気的相互作用が利用できる。
次に、本実施の形態の磁気抵抗効果素子MRからのデータの読み出し方法について、図7を用いて説明する。本実施の形態では磁壁移動部WMの磁化方向でデータを記憶し、また、磁壁移動部WMはトンネル障壁層TBを介して磁性層MFIに接続される。磁気抵抗効果素子MRからのデータの読み出しには、磁気抵抗効果を利用する。磁気抵抗効果により、磁性層MFとトンネル障壁層TBと磁性層MFIとで構成された磁気トンネル接合(またはスピンバルブ)の抵抗値は、磁壁移動部WMの磁化方向によって異なる。したがって、磁性層MFと磁性層MFIの間で電流を流すことによりデータを読み出すことができる。
例えば、磁性層MFの中の磁壁移動部WMの磁化の向きと磁性層MFIの磁化の向きとが同じときには低抵抗状態が実現される。一方、磁壁移動部WMの磁化の向きと磁性層MFIの磁化の向きとが反対方向のときには高抵抗状態が実現される。
<半導体装置の効果について>
以下に、本実施の形態の半導体装置の効果について、比較例である半導体装置を示す図40および図41を用いて説明する。図40および図41は、比較例の磁気抵抗効果素子MRaを示す断面図であり、その他の構造物の図示は省略している。図40で示す断面と、図41で示す断面とは、互いに直交する別々の断面である。
図40および図41に示す比較例の磁気抵抗効果素子MRaは、図1および図2に示す本実施の形態の磁気抵抗効果素子MRと同様に、磁性層MF、トンネル障壁層TBおよび磁性層MFIからなる積層構造により構成されている。比較例の磁気抵抗効果素子MRaが、本実施の形態の磁気抵抗効果素子MRと大きく異なる点は、比較例において、磁性層MFの側壁および磁性層MFIの側壁が、それぞれ酸化膜などの絶縁膜により覆われていない点にある。
実際には、比較例の磁気抵抗効果素子MRaは、絶縁膜IF10および層間絶縁膜IL5(図3参照)などにより覆われているが、磁性層MF、MFIのそれぞれの側壁は酸化膜OL1、OL2(図1および図2参照)に覆われていない。また、図40および図41に示すように、磁気抵抗効果素子MRaの表面には、金属付着物MMが付着している。金属付着物MMは膜状に形成されている場合、または島状に複数形成されている場合が考えられる。ここで、金属付着物MMは、磁性層MF、MFIのそれぞれの側壁に接しており、磁性層MFIの横のトンネル障壁層TBの上面に接している。なお、トンネル障壁層TBが磁性層MFのように延在していない場合には、トンネル障壁層TBから露出する磁性層MFの上面にも金属付着物MMが付着する。
金属付着物MMは、半導体装置の製造工程のうち、積層膜をドライエッチング法(異方性エッチング法)により加工することで、磁性層MF、トンネル障壁層TBおよび磁性層MFIのパターンを形成する工程において発生する導電体物質である。
具体的には、磁性層MF、MFIを形成するために設けた導体膜を上記工程により一部除去して加工した際に、除去された部分の当該導体膜を構成していた金属粒子が、再び半導体基板上の構造物の表面に付着することで、金属付着物MMが形成される。言い換えれば、金属付着物MMは、磁性層MFまたはMFIの一部を構成する導電体物質が、異方性エッチングによりエッチングされた後、当該異方性エッチングにより形成された前記磁気抵抗効果素子の表面に付着したものである。
つまり、金属付着物MMは、磁性層MF、MFIを構成する金属と同じ金属を含んでいる。例えば、磁性層MF、MFIがCoFeBからなる場合、金属付着物MMは、Co、Fe、Bまたはそれらの化合物などにより構成される。このような金属付着物MMが磁気抵抗効果素子MRaの側壁などに付着した場合、CoまたはFeなどの導体からなる金属付着物MMを介して、磁性層MFと磁性層MFIとが互いに導通する問題が生じる。この場合、磁性層MF、MFIの相互間におけるリーク電流が増大する。なお、B(ホウ素)からなる付着物は導電性が低いため、リーク電流発生の原因にはなりにくい。
磁性層MF、MFIの相互間においてリーク電流が流れた場合、または、短絡が生じた場合、図7〜図8を用いて説明したように磁性層MFの磁性特性を正常に変化させることができず、データの書き込み動作も読み出し動作も正常に行うことができなくなる。よって、半導体装置の信頼性が低下する問題が生じる。
これに対し、本実施の形態の半導体装置では、図1および図2に示すように、上記加工により形成した磁性層MF、MFIを含む磁気抵抗効果素子MRに対してプラズマ処理を行うことで、磁性層MF、MFIのそれぞれの露出する表面を酸化する。これにより、磁性層MF、MFIのそれぞれの露出する表面を覆う酸化膜OL1、OL2を形成することで、磁性層MFIの近傍に金属付着物MM(図40および図41参照)が残った場合であっても、磁性層MF、MFIを酸化膜OL1、OL2により金属付着物MMから保護することができる。
したがって、金属付着物MMによるリーク電流の発生および短絡を防ぐことができるため、磁気抵抗効果素子MRに所望の電流を流し、書き込み動作および読み出し動作を正常に行うことができる。したがって、半導体装置の信頼性を向上させることができる。なお、図20〜図26を用いて後述するように、上記プラズマ処理では金属付着物MMを昇華させて除去することができる。
<半導体装置の製造方法について>
以下では、エッチングを行うことで、MRAMを構成する磁気抵抗効果素子を形成した後、炭素および酸素を含むガス雰囲気においてプラズマ処理を行うことでカルボニル基を形成し、当該カルボニル基を有する物質(カルボニル化合物)を昇華させることと、当該プラズマ処理により磁気抵抗効果素子の側壁に酸化膜を形成することにより、リーク電流の発生を防ぐことについて説明する。
ここでは、まず、図10〜図30を用いて、本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する。図10〜図30は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の断面図である。ただし、本実施の形態の主な特徴は磁気抵抗効果素子の製造方法にあるため、磁気抵抗効果素子の選択素子であるトランジスタの構造の詳細な説明は省略する。また、図12〜図29では、図をわかりやすくするため、磁気抵抗効果素子を形成する領域の近傍の断面のみを拡大して示す。具体的には、図12〜図29では、第1配線層よりも上の領域の断面を示す。
まず、図10に示すように、例えば単結晶シリコからなる半導体基板SBを用意した後、半導体基板SBの主面に溝を形成し、当該溝内に例えば主に酸化シリコン膜からなる素子分離領域EIを形成する。その後、素子分離領域EIの横の半導体基板SBの主面、つまり活性領域に、N型のMOSトランジスタQ1およびN型のMOSトランジスタQ2を形成する。MOSトランジスタQ1、Q2は、素子分離領域EIにより互いに分離されている。MOSトランジスタQ1、Q2は、P型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であってもよい。
続いて、半導体基板SB上に、例えば酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜IL1を形成した後、層間絶縁膜IL1を貫通するコンタクトプラグCPを複数形成する。コンタクトプラグCPの上面と層間絶縁膜IL1との上面は、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法などの研磨法により平坦化する。ここでは、各コンタクトプラグCPは、MOSトランジスタQ1、Q2のそれぞれが有するソース・ドレイン領域のそれぞれに接続されている。
続いて、層間絶縁膜IL1上に、例えば酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜IL2を形成した後、層間絶縁膜IL2を貫通する配線M1を複数形成する。配線M1の上面と層間絶縁膜IL2との上面は、CMP法などの研磨法により平坦化する。各配線M1は、コンタクトプラグCPの上面に接続する。これにより、層間絶縁膜IL2および複数の配線M1を含む第1配線層を形成する。
次に、図11に示すように、第1配線層上に、例えば酸化シリコン膜からなる層間絶縁膜IL3を、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて形成する。その後、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて、層間絶縁膜IL3に、一部の配線M1の上面を露出するビアホールを形成する。ここで露出する配線M1は、MOSトランジスタQ1が有する一対のソース・ドレイン領域のうちの一方と、MOSトランジスタQ2が有する一対のソース・ドレイン領域のうちの一方とのそれぞれに電気的に接続された配線M1である。
続いて、スパッタリング法およびめっき法などを用いて、層間絶縁膜IL2、IL3および配線M1のそれぞれの上に、主に銅(Cu)からなる導体膜を形成することで、上記ビアホールを埋め込む。その後、CMP法により層間絶縁膜IL2上の当該導体膜を除去して層間絶縁膜IL2の上面を露出させることで、各ビアホール内に、当該導体膜からなるビアV1を形成する。
次に、図12に示すように、例えばスパッタリング法を用いて、層間絶縁膜IL3およびビアV1の上に、導体膜TA1a、磁化固定層HL1および導体膜TA1bを順に形成する。導体膜TA1a、TA1bは、例えばTa(タンタル)を含む導体膜であり、磁化固定層HL1は、例えばCo(コバルト)を含む磁性体層である。続いて、導体膜TA1b上に、例えばCVD法を用いて窒化シリコン膜からなる絶縁膜IF1と、酸化シリコン膜からなる絶縁膜IF2とを順に形成する。
次に、図13に示すように、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて、絶縁膜IF2を加工することで、絶縁膜IF1の上面の一部を露出させる。ここでは、2つ形成したビアV1のうち、一方のビアV1の直上に絶縁膜IF2を残し、他の領域の絶縁膜IF2は除去する。
次に、図14に示すように、絶縁膜IF2をハードマスクとして使用してドライエッチングを行うことで、絶縁膜IF1、導体膜TA1b、磁化固定層HL1および導体膜TA1aをパターニングする。導体膜TA1a、磁化固定層HL1、導体膜TA1bおよび絶縁膜IF1からなる積層膜は、2つのビアV1のうちの一方のビアV1の上面を覆っている。これにより、層間絶縁膜IL3の上面および他方のビアV1の上面が露出する。ここでは、絶縁膜IF2は除去されるものとして説明する。
次に、図15に示すように、例えばスパッタリング法を用いて、層間絶縁膜IL3、ビアV1および上記積層膜の上に、導体膜TA2a、磁化固定層HL2および導体膜TA2bを順に形成する。導体膜TA2a、TA2bは、例えばTa(タンタル)を含む導体膜であり、磁化固定層HL2は、例えばCo(コバルト)を含む磁性体層である。続いて、導体膜TA2b上に、例えばCVD法を用いて窒化シリコン膜からなる絶縁膜IF3と、酸化シリコン膜からなる絶縁膜IF4とを順に形成する。
次に、図16に示すように、図13および図14を用いて説明した工程とほぼ同様の工程を行うことで、図14を用いて説明した工程の後に露出していたビアV1の上面を覆う導体膜TA2a、磁化固定層HL2、導体膜TA2bおよび絶縁膜IF3を含む積層膜からなるパターンを形成する。
すなわち、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて、絶縁膜IF4を加工することで、絶縁膜IF3の上面の一部を露出させる。ここでは、2つ形成したビアV1のうち、導体膜TA1aにより覆われていない方のビアV1の直上に絶縁膜IF4を残し、他の領域の絶縁膜IF4は除去する。その後、絶縁膜IF4をハードマスクとしてドライエッチングを行うことで、絶縁膜IF3、導体膜TA2b、磁化固定層HL2および導体膜TA2aをパターニングする。これにより、層間絶縁膜IL3と、導体膜TA1a、磁化固定層HL1、導体膜TA1bおよび絶縁膜IF1からなる積層膜とを露出させる。ここでは、絶縁膜IF4は除去されるものとして説明する。
これにより、2つのビアV1のうちの一方のビアV1の直上の導体膜TA1a、磁化固定層HL1、導体膜TA1bおよび絶縁膜IF1を含む積層膜と、他方のビアV1の直上の導体膜TA2a、磁化固定層HL2、導体膜TA2bおよび絶縁膜IF3を含む積層膜とを形成する。これらの積層膜は、互いに離間している。
次に、図17に示すように、上記の2つの積層膜および層間絶縁膜IL3のそれぞれの上に、例えばCVD法を用いて、例えば窒化シリコン膜からなる絶縁膜を形成する。その後、例えばCMP法を用いて当該絶縁膜の上面を研磨する。このとき、絶縁膜IF1およびIF3も研磨して除去する。これにより、導体膜TA1b、TA2bのそれぞれの上面を露出させることで、当該絶縁膜からなる層間絶縁膜IL4を形成する。層間絶縁膜IL4と導体膜TA1b、TA2bとのそれぞれの上面は同一面において平坦化されている。
次に、図18に示すように、例えばスパッタリング法およびCVD法を用いて、層間絶縁膜IL4と導体膜TA1b、TA2bとのそれぞれの上に、導体膜TA3、磁性層(磁化自由層)MF、絶縁層(酸化磁性層)IF5、磁性層(磁化固定層)MFI、導体膜TA6、絶縁膜IF6およびIF7を順に形成する。導体膜TA3は、例えばTa(タンタル)を含む導体膜である。磁性層MFおよびMFIのそれぞれは、例えばCoFeB、つまりCo(コバルト)、Fe(鉄)およびB(ホウ素)などを含む合金などからなる。絶縁層IF5は、例えばMgO(酸化マグネシウム)またはAlOx(0<x<1)(酸化アルミニウム)などからなる酸化磁性層である。
導体膜TA6は、図の右側に拡大して示すように、磁性層MFI上に順に形成された導体膜TA4、CMおよびTA5を含む積層構造を有している。導体膜TA3、TA4は、例えばTa(タンタル)を含む導体膜である。導体膜CMは、例えばCo(コバルト)を含む磁性体層である。絶縁膜IF6は、例えば窒化シリコン膜からなり、絶縁膜IF7は、例えば酸化シリコン膜からなる。
次に、図19に示すように、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて、絶縁膜IF7を加工することで、絶縁膜IF6の一部の上面を露出させる。これにより形成された絶縁膜IF7のパターンは、平面視において、磁化固定層HL1および磁化固定層HL2の両方と重なっている。
次に、図20に示すように、絶縁膜IF7をハードマスクとして使用してドライエッチング(異方性エッチング)を行うことで、絶縁膜IF6、導体膜TA6、磁性層MFI、絶縁層IF5、磁性層MFおよび導体膜TA3を加工する。ドライエッチングは、プラズマエッチングにより行う。当該プラズマエッチングは、メタノール(CH3OH)、エタノール(C3H6O)、アルゴン(Ar)または塩素(Cl)などのガスを用いて行う。これにより、層間絶縁膜IL4の上面の一部を露出させる。また、これにより絶縁層IF5からなるトンネル障壁層TBを形成する。本エッチング工程は、磁性層MFおよびトンネル障壁層TBの最終的なパターンを形成するために行うものである。ここでは、絶縁膜IF7は除去されるものとして説明する。
ここで、当該ドライエッチングにより、磁性層MF、MFIの一部は除去される。ただし、このとき、除去した磁性層MF、MFIを構成していた金属粒子は反応生成物となり、当該反応生成物の一部は当該ドライエッチング(プラズマエッチング)を行うプラズマ装置(平行平板プラズマ装置)内から排気されるが、残りの一部はプラズマ装置内に残る。プラズマ装置内に残った反応生成物は、上記加工により露出した層間絶縁膜IL4の上面、磁性層MFの側壁およびMFIの側壁などに付着する場合がある。図では、このような反応生成物であって、磁性層MFの側壁およびMFIの側壁などに付着したものを、金属付着物MMとして図示している。ただし、図21〜図23では、図を分かりやすくするため、金属付着物MMの図示を省略する。
例えば、磁性層MF、MFIがCoFeBからなる場合、金属付着物MMは、Co、Fe、Bまたはそれらの化合物などにより構成される。
次に、図21に示すように、層間絶縁膜IL4上に、例えばCVD法を用いて、絶縁膜IF8、IF9を順に形成することで、層間絶縁膜IL4の上面と、層間絶縁膜IL4上の磁性層MF、MFIを含む積層膜とを覆う。その後、例えばCMP法を用いて絶縁膜IF9の上面を研磨する。当該研磨工程では、絶縁膜IF8の上面を露出させない。図示は省略しているが、絶縁膜IF8と磁性層MF、MFIのそれぞれの側壁との間の一部には、金属付着物MM(図20参照)が介在している。
次に、図22に示すように、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて、絶縁膜IF9を加工することで、絶縁膜IF8の上面の一部を露出させる。磁化固定層HL1、HL2との間の領域の直上に絶縁膜IF9を残し、当該領域の直上の絶縁膜IF9の横の絶縁膜IF8を全て露出させる。すなわち、磁化固定層HL1、HL2のそれぞれの直上の絶縁膜IF9は除去する。また、層間絶縁膜IL4上の磁性層MF、MFIを含む積層膜を覆う絶縁膜IF8の横には、絶縁膜IF9が残る。つまり、当該積層膜の側壁側には、絶縁膜IF8を介して絶縁膜IF9が残る。
次に、図23に示すように、絶縁膜IF9をハードマスクとしてドライエッチングを行うことで、絶縁膜IF8および導体膜TA6を加工する。これにより、磁化固定層HL1、HL2のそれぞれの直上の磁性層MFIの上面を露出させる。磁性層MFIの横には、絶縁膜IF8を介して絶縁膜IF9が残っている場合がある。ここでは、磁性層MFIの直上の絶縁膜IF9は当該エッチングにより除去されるものとして説明する。
次に、図24に示すように、絶縁膜IF8をハードマスクとして用い、プラズマ装置によりドライエッチング(プラズマエッチング、異方性エッチング)を行うことで、磁性層MFIの一部を除去し、これによりトンネル障壁層TBの上面を露出させる。当該プラズマエッチングは、メタノール(CH3OH)、エタノール(C3H6O)、アルゴン(Ar)または塩素(Cl)などのガスを用いて行う。
ここでは、絶縁膜IF9と、磁性層MF、MFIおよびトンネル障壁層TBを含む積層膜の横の絶縁膜IF8の一部とが除去される。なお、磁性層MF、MFIおよびトンネル障壁層TBを含む積層膜の横の絶縁膜IF8が、すべて除去される場合もある。また、当該エッチングによりトンネル障壁層TBの一部も除去して、磁性層MFの上面を露出させてもよい。ここでは、絶縁膜IF8の上面の高さは、トンネル障壁層TBの上面の高さよりも低くなるものとして説明する。
このとき、磁性層MFの側壁に形成されていた金属付着物MMが絶縁膜IF8から露出する。また、当該エッチングにより磁性層MFIを加工することで、さらに金属付着物MMが形成される。つまり、磁性層MFIが除去された領域において磁性層MFIを構成していた金属粒子からなる金属付着物MMが、磁性層MFIの側壁および磁性層MFIの横のトンネル障壁層TBの上面に付着する。磁性層MFIの横においてトンネル障壁層TBが磁性層MFを覆っていない場合は、磁性層MFの上面にも金属付着物MMが付着する。ここで形成される金属付着物MMも、Co、Fe、Bまたはそれらの化合物などにより構成される。
次に、図25および図26に示すように、上記プラズマ装置を用いた上記ドライエッチング行程に続いて、当該プラズマ装置内において、プラズマ処理を行う。これにより、金属付着物MMを昇華させて除去する。また、磁性層MFの側壁を酸化させて、磁性層MFの側壁を覆う酸化膜OL1を形成し、さらに、磁性層MFIの側壁を酸化させて、磁性層MFIの側壁を覆う酸化膜OL2を形成する。また、昇華しなかった金属付着物MMを酸化させる。なお、図26は図25の奥行き方向(y軸方向)およびz軸方向に沿う断面であって、磁気抵抗効果素子MRを含む位置の断面を示す図である。
具体的には、以下のような条件で上記プラズマ処理を行う。すなわち、プラズマ処理には、平行平板プラズマ装置を用いる。当該プラズマ処理では、プラズマ装置に、C(炭素)およびO(酸素)を含むガスを供給する。C(炭素)およびO(酸素)を含むガスとして、当該プラズマ処理では、例えばCO(一酸化炭素)ガスまたはCO2(二酸化炭素)ガスのいずれか一方、またはそれらの両方を含むガスを用いる。また、このガスに加えて、プラズマ活性化のためにAr(アルゴン)ガスまたはHe(ヘリウム)ガスなどの不活性ガスを供給してもよい。
当該プラズマ処理において供給する上記ガスの流量は1〜15L/minである。エッチング装置に供給するガス全体の流量のうち、上述したC(炭素)およびO(酸素)を含むガスは、70〜100%を占める。プラズマエッチング装置内の圧力は1〜5Torrとする。プラズマを発生させるためにプラズマ装置に供給する高周波(RF:Radio Frequency)電源のパワーは、500〜1500Wである。
装置内の温度は104℃以上とし、ここでは温度200〜300℃とする。具体的には、例えば250℃とする。プラズマ処理における装置内の温度が200〜300℃であるのは、当該プラズマ処理に続いて、同装置内において図27を用いて後述する窒化シリコン膜の成膜工程を行うためである。当該温度で成膜を行うことで、当該窒化シリコン膜の膜質を高めることができる。
上記のように、酸化炭素ガス(例えばCOガスまたはCO2ガスなどのCOxガス)を用いてプラズマ処理を行うことで、CoまたはFeなどにより構成される金属付着物MMは、プラズマによりカルボニル基を形成する。つまり、金属付着物MMが当該酸化炭素ガスに反応してカルボニル基が形成される。当該カルボニル基を含むカルボニル化合物は、例えばCo2(CO)8またはFe(CO)5からなる。
Coを含む金属付着物MMをプラズマ処理することで形成されたカルボニル化合物(例えばCo2(CO)8)は、52℃で昇華する。また、Feを含む金属付着物MMをプラズマ処理することで形成されたカルボニル化合物(例えばFe(CO)5)は、103℃で昇華する。したがって、ここでは104℃以上の温度で当該プラズマ処理を行うことで、金属付着物MMから形成されたカルボニル化合物を除去する。つまり、磁気抵抗効果素子MRの表面を含む半導体基板上から金属付着物MMを除去する。よって、図25および図26では金属付着物MMを図示していない。
また、ここではプラズマ処理により磁気抵抗効果素子MRを構成する磁性層MF、MFIのそれぞれの露出する表面は酸化され、酸化膜OL1、OL2が形成される。つまり、酸化膜OL1は磁性層MFの組成物の酸化物を含み、酸化膜OL2は磁性層MFIの組成物の酸化物を含む。また、図示はしていないが、上記プラズマ処理により金属付着物MMが昇華されなかった場合であっても、残った金属付着物MMは酸化される。これにより形成された酸化膜OL1、OL2と金属付着物MMの酸化物とは、例えばCoO(酸化コバルト)、FeO(酸化鉄)、Fe2O3(三酸化鉄)またはB2O3(酸化ホウ素、三酸化二ホウ素)からなる。
なお、図24を用いて説明したエッチング工程を行うと同時に、上述したCOxガスをプラズマ装置に供給して、エッチングとプラズマ処理を同時に行ってもよい。この場合、当該エッチングにより加工された磁性層MFIなどにより磁気抵抗効果素子MRが形成され、金属付着物MMはカルボニル化合物になって昇華され、磁性層MF、MFIの側壁にはそれぞれ酸化膜OL1、OL2が形成される。
また、磁性層MFIの横においてトンネル障壁層TBが磁性層MFを覆っていない場合は、磁性層MFの上面に付着した金属付着物MMもカルボニル化合物になって昇華され、トンネル障壁層TBから露出する磁性層MFの上面にも酸化膜OL1が形成される。これに対し、図25に示すようにトンネル障壁層TBを磁性層MFの上面上に残した場合には、仮に導電性を有する金属付着物MMが一部残ったとしても、金属付着物MMによるリークの発生を、より防ぎやすくなる効果が得られる。これは、磁性層MFの側壁から磁性層MFIの側壁までの導電経路が長くなるためである。
次に、図27に示すように、上記プラズマ処理に用いた上記プラズマ装置を引き続き用いて、プラズマCVD法により、磁気抵抗効果素子MR上および絶縁膜IF8上に、例えば窒化シリコン膜からなる絶縁膜IF10を形成する。続いて、絶縁膜IF10上に、例えばCVD法を用いて層間絶縁膜IL5を形成する。層間絶縁膜IL5は例えば酸化シリコン膜からなる。その後、層間絶縁膜IL5の上面を例えばCVD法により研磨して平坦化する。このとき、絶縁膜IF10の上面は露出させない。
次に、図28に示すように、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて層間絶縁膜IL5、絶縁膜IF10、IF8およびIF6を貫通するビアホールを形成する。なお、図では導体膜TA6上の当該ビアホールを導体膜TA6とほぼ同じ幅で形成した場合の断面を示しているため、導体膜TA6上の絶縁膜IF6およびIF8を示していないが、当該ビアホールの幅は導体膜TA6より小さくてもよい。
当該ビアホールの底面では、導体膜TA6の上面が露出している。また、この工程では、図28に示していない領域において、他のビアホールを形成する。当該他のビアホールは、図30に示す層間絶縁膜IL5、絶縁膜IF10、IF8、層間絶縁膜IL4およびIL3を貫通し、配線M1の上面を露出するものである。
次に、図29および図30に示すように、スパッタリング法およびめっき法などを用いて、層間絶縁膜IL5および導体膜TA6のそれぞれの上に、主に銅(Cu)からなる導体膜を形成することで、上記ビアホールを埋め込む。その後、CMP法により層間絶縁膜IL5上の当該導体膜を除去して層間絶縁膜IL5の上面を露出させることで、ビアホール内に、当該導体膜からなるビアV2を形成する。この工程では、当該ビアV2の他に、上記他のビアホール内にもビアV2を形成する。
図示は省略するが、その後の工程では、層間絶縁膜IL5上およびビアV2上に第2配線層を形成する。また、当該第2配線層上に他の配線層を形成することで、本実施の形態の磁気抵抗効果素子MRを含むMRAMのメモリセルを有する半導体装置が完成する。本実施の形態のMRAMの動作方法は、図4〜図9を用いて説明した通りである。
<本実施の形態の半導体装置の製造方法の効果>
以下に、本実施の形態の半導体装置の製造方法の効果について説明する。
図40および図41を用いて説明したように、磁性層MF、トンネル障壁層TBおよび磁性層MFIをドライエッチング(異方性エッチング)により加工して磁気抵抗効果素子MRaを形成する際、磁性層MF、MFIを構成していた金属付着物MMが磁気抵抗効果素子MRaの側壁に付着する虞がある。この場合、金属付着物MMを介してリーク電流が流れ、磁気抵抗効果素子MRaが正常に動作しなくなることで、半導体装置の信頼性が低下する問題が生じる。
これに対し、本実施の形態では、図20および図24を用いて説明した工程においても金属付着物MMが生成され、磁性層MF、MFIのそれぞれに付着しているが、その後、図25および図26を用いて説明したように、炭素および酸素を含むガスの雰囲気において、プラズマ処理を行っている。当該プラズマ処理により、導電性を有する金属付着物MMには、当該ガスを構成する炭素および酸素と反応してカルボニル基が形成され、その後、当該カルボニル基を含むカルボニル化合物は、プラズマ装置内の104℃以上の温度により昇華される。これにより金属付着物MMが除去されるため、リーク電流の発生を防ぐことができるため、磁気抵抗効果素子MRが正常に動作しなくなることを防ぐことができる。したがって、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
また、当該プラズマ処理により、磁性層MFの側壁は、磁性層MFの酸化物からなる絶縁膜である酸化膜OL1に覆われ、磁性層MFIの側壁は、磁性層MFIの酸化物からなる絶縁膜である酸化膜OL2に覆われる。したがって、導電性を有する金属付着物MMが磁性層MF、MFIのそれぞれの表面に付着してリーク経路となることを防ぐことができる。また、カルボニル基の形成および昇華により除去されずに残った金属付着物MMも酸化されて絶縁物となるため、リークの発生を防ぐことができる。よって、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
なお、磁性層MF、MFIがFeNiからなる場合でも、上記プラズマ処理によりFe(鉄)などからなる金属付着物MMがカルボニル化合物となって昇華する。また、磁気抵抗効果素子MRの表面が、例えば酸化ニッケル(NiO)または酸化鉄(FeO、Fe2O3)などからなる酸化膜OL1、OL2により覆われる。また、金属付着物MMは酸化されて絶縁物となる。よって、磁気抵抗効果素子MRにおけるリークの発生を防ぐことができる。
上記のように、本実施の形態の半導体装置の製造方法では、プラズマ処理を行う際に、炭素と酸素とを含むガス(例えば酸化炭素ガス)を意図的に供給し、比較的低温で昇華されるカルボニル化合物を形成することが重要である。
これに対し、プラズマ処理において供給するガスとして、例えばメタン(CH4)および酸素(O2)を含むガスを用いても、当該ガス内に炭素および酸素が含まれるため、上記のようにカルボニル基を形成して昇華させることができ、さらに、酸素(O2)による磁気抵抗効果素子の側壁の酸化効果も得ることができる。
しかし、メタン(CH4)および酸素(O2)を含むガスによりプラズマ処理を行う場合よりも、酸化炭素ガスを用いてプラズマ処理を行う場合の方が、リーク電流をより低減できることが、本発明者らの実験により判明している。これは、COまたはCO2のように、プラズマ装置に供給される時点で既に炭素と酸素とが結合している酸化炭素ガスを用いた方が、よりカルボニル基を形成しやすいため、昇華により金属付着物の除去効果を顕著に得ることができるためである。
(変形例について)
上記半導体装置の製造方法の変形例として、図25および図26を用いて説明したプラズマ処理に用いるガスに酸素(O2)ガスを加えてもよい。つまり、当該プラズマ処理では、プラズマ装置内にCOxガス、つまり、例えばCOもしくはCO2またはそれらの両方と、O2ガスとを供給してプラズマ処理を行うことで、図10〜図30を用いて説明した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
これに加えて、上記プラズマ処理による酸化をさらに強調することが可能となる。すなわち、図25および図26に示す酸化膜OL1、OL2の膜厚を大きくし、磁性層MF、MFIの側壁をより確実に覆うことができる。したがって、リーク電流の発生を防ぐことができる。また、昇華しなかった金属付着物MMをより確実に酸化して絶縁膜に変えることができるため、金属付着物MMを介して流れるリーク電流の発生を防ぐことができる。
(実施の形態2)
次に、前記実施の形態1とは異なるパターンの磁気抵抗効果素子を有するMRAMを形成する場合について説明する。以下では、本実施の形態2の半導体装置の製造方法について、図31〜図34を用いて説明する。図31〜図34は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の断面図である。図31〜図34では、図12〜図29と同様に、第1配線層よりも上の領域の主要部の断面のみを示す。
まず、図10〜図18を用いて説明した工程と同様の工程を行う。その後、絶縁膜IF7(図18参照)をパターニングした後、図31に示すように、絶縁膜IF7をマスクとしてドライエッチング(異方性エッチング)を行うことで、絶縁膜IF6、導体膜TA6、磁性層MFI、絶縁層IF5、磁性層MFおよび導体膜TA3を加工する。ドライエッチングは、プラズマエッチングにより行う。これにより、層間絶縁膜IL4、導体膜TA1bおよびTA2bのそれぞれの上面の一部を露出させる。
これにより絶縁層IF5からなるトンネル障壁層TBを形成する。本エッチング工程は、磁性層MF、MFIおよびトンネル障壁層TBの最終的なパターンを形成するために行うものである。これにより、磁性層MF、MFIおよびトンネル障壁層TBからなる磁気抵抗効果素子MRを形成する。ここでは、絶縁膜IF7は除去されるものとして説明する。ここで、当該ドライエッチングにより除去した磁性層MF、MFIを構成していた金属からなる金属付着物MMが、磁性層MFの側壁およびMFIの側壁などに付着する。
パターニングした磁性層MF、MFIおよびトンネル障壁層TBを含む積層膜のパターンは、前記実施の形態1の図20で説明した工程では導体膜TA1b、導体膜TA2bのそれぞれの上面をすべて覆っていたが、本実施の形態の当該パターンの幅は狭いため、導体膜TA1b、導体膜TA2bのそれぞれの上面の一部は当該パターンにより覆われ、他の一部は当該パターンから露出している。つまり、ここまでの工程で前記実施の形態1における図10〜図20で説明した工程と異なるのは、パターニングした磁性層MF、MFIおよびトンネル障壁層TBを含む積層膜のパターンの幅のみである。
次に、図32に示すように、図25および図26を用いて説明したプラズマ処理を行う。これにより、金属付着物MMが酸化炭素ガスに反応してカルボニル基が形成され、当該カルボニル基を含むカルボニル化合物は昇華されて除去される。また、当該プラズマ処理により、磁性層MFの側壁には酸化膜OL1が形成され、磁性層MFIの側壁には酸化膜OL2が形成される。また、昇華しなかった金属付着物MMは酸化する。プラズマ処理の条件、および、酸化膜OL1、OL2などの組成は、前記実施の形態1と同様である。
次に、図33に示すように、上記プラズマ処理に用いたプラズマ装置を引き続き用いて、プラズマCVD法により、磁気抵抗効果素子MR、層間絶縁膜IL4、導体膜TA1bおよびTA2bのそれぞれの上に、例えば窒化シリコン膜からなる絶縁膜IF10を形成する。続いて、絶縁膜IF10上に、例えばCVD法を用いて層間絶縁膜IL5を形成する。層間絶縁膜IL5は例えば酸化シリコン膜からなる。その後、層間絶縁膜IL5の上面を例えばCVD法により研磨して平坦化する。このとき、絶縁膜IF10の上面は露出させない。
次に、図34に示すように、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて層間絶縁膜IL5および絶縁膜IF10を貫通するビアホールを形成する。当該ビアホールの底面では、導体膜TA6の上面が露出している。また、この工程では、図28に示していない領域において、他のビアホールを形成する。
続いて、フォトリソグラフィ技術およびドライエッチング法を用いて、平面視において当該ビアホールを形成した領域と重なる位置において、層間絶縁膜IL5の上面に配線溝を形成する。配線溝は、ビアホールよりも形成深さが浅く、配線溝の底面は、磁気抵抗効果素子MR上において、絶縁膜IF10の上面に達していない。なお、配線溝を形成してから、当該配線溝の底面にビアホールを形成してもよい。
次に、図29および図30に示すように、スパッタリング法およびめっき法などを用いて、層間絶縁膜IL5および導体膜TA6のそれぞれの上に、主に銅(Cu)からなる導体膜を形成することで、上記ビアホールおよび上記配線溝を埋め込む。その後、CMP法により層間絶縁膜IL5上の当該導体膜を除去して層間絶縁膜IL5の上面を露出させることで、ビアホール内に、当該導体膜からなるビアV2を形成し、配線溝内に、配線M2を形成する。すなわち、いわゆるデュアルダマシン法を用いてビアV2とその上部の配線M2とを同時に形成する。なお、デュアルダマシン法による配線M2の形成方法を、前記実施の形態1に適用してもよい。
図示は省略するが、その後の工程では、層間絶縁膜IL5上および配線M2上に複数の配線層を形成することで、本実施の形態の磁気抵抗効果素子MRを含むMRAMを有する半導体装置が完成する。本実施の形態のMRAMは、磁気抵抗効果素子MRの形状が前記実施の形態1と異なり、磁性層MFIが磁性層MFと同様にx軸方向に延在しているが、図4〜図9を用いて説明した方法により動作する。
前記実施の形態1では磁性層MF、MFIおよびトンネル障壁層TBを含む積層膜に対して2回エッチングを行うことで磁気抵抗効果素子MR(図20および図24参照)を形成したが、本実施の形態では、図31に示すように、1回のエッチングにより磁気抵抗効果素子MRを形成する。このような場合であっても、上記積層膜を加工することにより、リーク電流発生の原因となる金属付着物MMが生成されるが、上記エッチング後にプラズマ処理を行うことで、金属付着物MMを除去し、また、酸化膜OL1、OL2の形成および金属付着物MMの酸化によりリーク電流の発生を防ぐことできる。つまり、前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態3)
次に、STT(Spin Transfer Torque)型のMRAMを形成する場合について説明する。前記実施の形態1および2のMRAMは、磁気抵抗効果素子の底部に2つのトランジスタを接続するものであるが、本実施の形態のSTT型MRAMは、磁気抵抗効果素子の底部に1つのトランジスタを接続する不揮発性メモリである。以下では、本実施の形態3の半導体装置の製造方法について、図35〜図39を用いて説明する。図35〜図39は、本実施の形態の半導体装置の製造工程中の断面図である。図35では、半導体基板およびその上面上に形成されたトランジスタを示すが、図36〜図39では、第1配線層と、第1配線層よりも上の領域との主要部の断面のみを示す。
本実施の形態の半導体装置の製造工程では、まず、図35に示すように、図10および図11を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、半導体基板SB上に、MOSトランジスタQ1と、MOSトランジスタQ1上の層間絶縁膜IL1と、層間絶縁膜IL1上の第1配線層と、第1配線層上のビアV1とを形成する。なお、ここでは図10および図11と異なり、後に形成する1つの磁気抵抗効果素子MRに対してMOSトランジスタQ1を1つだけ形成する。MOSトランジスタQ1を構成する一対のソース・ドレイン領域SDのうち、一方にコンタクトプラグCPが接続されている。コンタクトプラグCPの上面には配線M1が接続され、配線M1の上面にはビアV1が接続されている。
次に、図36に示すように、図18を用いて説明した工程と同様の成膜工程を行う。すなわち、層間絶縁膜IL3上およびビアV1上に、例えばスパッタリング法およびCVD法を用いて、導体膜TA3、磁性層(磁化自由層)MF、絶縁層IF5、磁性層(磁化固定層)MFI、導体膜TA6、絶縁膜IF6およびIF7を順に形成する。導体膜TA6は、図の右側に拡大して示すように、磁性層MFI上に順に形成された導体膜TA4、CMおよびTA5を含む積層構造を有している。これらの積層膜を構成する各膜の材料は、図18を用いて説明した前記実施の形態1と同様である。
次に、図37に示すように、図19を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、絶縁膜IF7を加工し、これにより、絶縁膜IF6の一部の上面を露出させる。これにより形成された絶縁膜IF7のパターンは、平面視において、ビアV1と重なっている。
次に、図38に示すように、図20を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、絶縁膜IF7をハードマスクとして使用してドライエッチング(異方性エッチング)を行う。これにより、絶縁膜IF6、導体膜TA6、磁性層MFI、絶縁層IF5、磁性層MFおよび導体膜TA3を加工する。ドライエッチングは、プラズマエッチングにより行う。当該プラズマエッチングは、メタノール(CH3OH)、エタノール(C3H6O)、アルゴン(Ar)または塩素(Cl)などのガスを用いて行う。
これにより、層間絶縁膜IL3の上面の一部を露出させる。また、これにより絶縁層IF5からなるトンネル障壁層TBを形成する。当該エッチング工程は、磁性層MF、MFIおよびトンネル障壁層TBの最終的なパターンを形成するために行うものである。このエッチング工程により加工された磁性層MF、MFIおよびトンネル障壁層TBにより、磁気抵抗効果素子MRが形成される。ここでは、絶縁膜IF7は除去されるものとして説明する。
ここで、当該ドライエッチングにより、前記実施の形態1と同様に、金属付着物(図示しない)が生成され、磁性層MFの側壁およびMFIの側壁などに付着する。
続いて、図25および図26を用いて説明したプラズマ処理と同様のプラズマ処理を行う。これにより、金属付着物は昇華され、または酸化される。また、磁性層MFの側壁は酸化膜OL1により覆われ、MFIの側壁は酸化膜OL2により覆われる。
次に、図39に示すように、図27〜図30を用いて説明した工程と同様の工程を行うことで、磁気抵抗効果素子MRを絶縁膜IF10および層間絶縁膜IL5で覆い、層間絶縁膜IL5、絶縁膜IF10およびIF6を貫通し、導体膜TA6に接続されたビアV2を形成する。
図示は省略するが、その後の工程では、層間絶縁膜IL5上およびビアV2上に第2配線層を形成する。また、当該第2配線層上に他の配線層を形成することで、本実施の形態の磁気抵抗効果素子MRを含むMRAMを有する半導体装置が完成する。
本実施の形態のSTT型MRAMは、磁気抵抗効果素子MRを構成する磁性層(磁化自由層)MFの磁化の向きを、磁気抵抗効果素子MRに流れる電流の向きにより変化させることでデータの書き込みを行うものである。ここで、磁性層MFと磁性層MFIの磁化の向きは、いずれも半導体基板SBの主面に沿う方向において、互いに平行な向きを向いている。つまり、例えば磁性層MFと磁性層MFIの磁化の向きはいずれもx軸方向に沿う。ただし、磁性層MFの磁化の向きは、磁気抵抗効果素子MRに電流を流すことで、電子スピンのトルク作用により反転させることができる。
磁性層MFと磁性層MFIの磁化の向きが、互いにほぼ逆向きである場合、つまり略反平行である場合、磁気抵抗効果素子MRの抵抗値は小さくなる。これに対し、磁性層MFと磁性層MFIの磁化の向きが、略同一方向を向いている場合、磁気抵抗効果素子MRの抵抗値は大きくなる。STT型MRAMでは、磁気抵抗効果素子MRに電流を流し、磁気抵抗効果素子MRの抵抗値の大小の違いを判別することで、データ”0”またはデータ”1”のいずれが書き込まれているかを読み出すことができる。
本実施の形態では、図38を用いて説明したプラズマ処理を行うことで、金属付着物を昇華し、または酸化する。また、当該プラズマ処理により、磁性層MFの側壁を酸化膜OL1により覆い、磁性層MFIの側壁を酸化膜OL2により覆う。よって、磁性層MFと磁性層MFIとの間において、金属付着物の再付着に起因するリーク電流が発生することを防ぐことができる。つまり、前記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
なお、磁性層(磁化自由層)MFをトンネル障壁層TB上に配置し、磁性層(磁化固定層)MFIをトンネル障壁層TBの下に配置してもよい。
以上、本発明者らによってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。