最初に、ハイブリッド自動車1の駆動用モータに電力を供給するバッテリを含む電池パック30の配置位置について説明する。図1に示すように、ハイブリッド自動車1は、フロントシート2及びリアシート3が設置される車室4の床面を構成する車室床面パネル10と、車室4の床下空間を構成するアンダーボディ20とを備えている。
フロントシート2とリアシート3との間の床下空間には、駆動用モータに電力を供給する電池パック30が配置されている。電池パック30は、車幅方向の右側に配置されており、車幅方向において電池パック30に隣接する位置、すなわち、車幅方向の左側には、車室4の空気を電池パック30に送風する冷却ユニット40が配置されている。
図2に示すように、アンダーボディ20は、車幅中央で前後に延びるフロアトンネル21と、車幅両側で前後に延びるサイドシル22と、車幅方向に延びるクロスメンバ23と、フロアトンネル21、サイドシル22及びクロスメンバ23に囲われた部分の底部である底パネル24とを備えている。なお、図2において矢印FRは車両が進行する方向を示し、矢印UPは車両上方向を示し、矢印LHは車両の前進方向を向いたときの左側を示している。矢印FR、UP、LHの関係は他の図面においても同様である。
アンダーボディ20には、フロアトンネル21、サイドシル22、クロスメンバ23及び底パネル24によって囲われた2つの凹部25a、25bが形成されている。凹部25a、25bは、フロントシート2とリアシート3との間に位置している。
凹部25aには電池パック30が収容される。また、凹部25bには、送風口が電池パック30に向くようにして冷却ユニット40が収容される。収容された冷却ユニット40は、後述するように、冷却風を吐き出す冷却ブロワ50と、車室内の空気を取り込む吸気ダクト60と、冷却風を電池パック30に導く冷却ダクト70とを含み、冷却ブロワ50、吸気ダクト60及び冷却ダクト70は車室床面パネル10の一部を形成するフロアパネル90に吊り下げ固定されている。
フロアパネル90には、このフロアパネル90をアンダーボディ20のクロスメンバ23に取り付けるための4つの取付孔93Dが設けられている。このように冷却ブロワ50、吸気ダクト60及び冷却ダクト70を固定したフロアパネル90は、4つの取付孔93Dを介して4本のボルトDによりクロスメンバ23に固定される。また、吸気ダクト60の端部には、この吸気ダクト60をアンダーボディ20のクロスメンバ23に取り付けるための取付孔64Cが設けられている。そして、吸気ダクト60は、取付孔64Cを介してクリップCによりクロスメンバ23に固定される。
クロスメンバ23には、フロアパネル90を固定するためのボルトDに対応するネジ穴23D及び吸気ダクト60を固定するためのクリップCに対応する固定穴23Cが設けられている。また、フロアトンネル21には、フロアパネル90を固定するためのボルトDに対応するネジ孔21Dを有するブラケット21aが設けられる。
電池パック30の上方は、クロスメンバ23に取り付けられる図示しない別のフロアパネルによって覆われる。このフロアパネルは冷却ユニット40の冷却ダクト70の上方も覆う。冷却ユニット40のフロアパネル90及び電池パック30の上方を覆う別のフロアパネルは車室4の車室床面パネル10の一部を構成している。
次に、図3〜5を参照して冷却ユニット40について説明する。図3〜5では、図2に示す冷却ユニット40を上下逆にして示している。つまり、図3〜5では冷却ユニット40を下側から見た状態を示している。
図3に示すように、冷却ユニット40を構成する冷却ブロワ50、吸気ダクト60及び冷却ダクト70は、フロアパネル90の下面に吊り下げられる。フロアパネル90の下面には、フロアパネル90を補強する骨格部材100,101が固定されており、このうちの一方の骨格部材100には、冷却ブロワ50が固定されている。骨格部材100は、フロアパネル90の下面に強固に固定され、冷却ブロワ50を振動などに対抗できるように固定保持する。また、冷却ブロワ50の吸気口51には吸気ダクト60が連接され、この吸気ダクト60は車室内の空気を冷却ブロワ50に導くことができる(図5参照)。一方、冷却ブロワ50の吐出口52には冷却ダクト70の接続口71が嵌め込まれ、冷却ブロワ50から吐出した冷却風が冷却ダクト70により電池パック30に導かれる。
冷却ブロワ50は防水トレイ80によって外部からの水の浸入が防止されており、この防水トレイ80も骨格部材100,101に固定保持されている。防水トレイ80は樹脂から構成されており、その四隅には、骨格部材100,101に固定するための取付孔80Eが設けられている。また、この取付孔80Eの位置に対応して、骨格部材100,101には取付孔100E,101Eがそれぞれ設けられている。
図4に示すように、骨格部材100,101が固定されたフロアパネル90の下面には、冷却ブロワ50及び吸気ダクト60が固定される。骨格部材100には、冷却ブロワ50を固定するための2つのスタッドボルト100Aが設けられ、フロアパネル90の下面にも、冷却ブロワ50を固定するための1つのスタッドボルト92Aが設けられている。これらスタッドボルト92A、100Aに対応して、冷却ブロワ50は、この冷却ブロワ50を固定するための取付孔50Aを有しており、ナットAによってスタッドボルト92A、100Aに固定される。
フロアパネル90の下面には、吸気ダクト60を固定するためのクリップ固定孔94Bを有するブラケット95が設けられている。このクリップ固定孔94Bに対応して、吸気ダクト60には、この吸気ダクト60を固定するための取付孔64Bが設けられており、クリップBによって吸気ダクト60はフロアパネル90のブラケット95に固定される。
フロアパネル90は、車幅方向に延びる複数のビード91が形成された薄肉板金から構成されており、凹部25bを覆う形状を有している。フロアパネル90に固定される骨格部材100,101は、フロアパネル90の両端であって、ビード91と直交する方向に配置されている。
骨格部材100には、骨格部材100をアンダーボディ20のクロスメンバ23に取り付けるための取付孔100Dが設けられている。一方の骨格部材101にも、この骨格部材101をアンダーボディ20のクロスメンバ23に取り付けるための取付孔101Dが設けられている。取付孔100D,101Dは、フロアパネル90の取付孔93Dに対応する位置に配置されている。このため、骨格部材100,101は、ボルトDによってフロアパネル90とともにクロスメンバ23に固定される(図2参照)。
骨格部材100,101は所定の厚さを有する金属板材からなる。なお、板金を折り曲げて形成してもよい。骨格部材100,101は、フロアパネル90を補強することから所望の剛性が要求される。特に、骨格部材100には冷却ブロワ50が固定されることから、冷却ブロワ50の振動に耐えられる剛性も要求される。そこで、骨格部材100,101は、フロアパネル90を補強でき、かつ、冷却ブロワ50の振動に耐えられる剛性となるように、その固定位置、形状、材質が設定されている。本実施形態では、冷却ブロワ50が取り付けられる骨格部材100を幅広形状としている。
図4、5に示すように、冷却ブロワ50は、図示しない回転ファンの中央部から回転軸方向に吸気する吸気口51と、回転軸の半径方向に空気を吐出する吐出口52とを有するシロッコファンである。冷却ブロワ50には、この冷却ブロワ50をフロアパネル90及び骨格部材100に取り付けるための取付孔50Aを有する3つの脚53が設けられている。また、冷却ブロワ50には、図示しない電源ケーブルが接続されている。
図2〜7に示すように、冷却ブロワ50の吸気口51には、吸気ダクト60が接続されている。吸気ダクト60は、車室4に開口する四角形状の吸気口61と、この吸気口61から連続する湾曲したダクト62と、冷却ブロワ50の吸気口51に接続する接続口63と、吸気口61を覆うカバー部材65とを備える。吸気ダクト60と冷却ブロワ50とは、接続口63と吸気口51とを連接した状態で、図示しないクリップによって互いに固定される。
吸気口61の周囲にはフランジ64が設けられており、このフランジ64には、フロアパネル90に取り付けるための取付孔64B(図4参照)と、クロスメンバ23に取り付けるための取付孔64Cと、カバー部材65を取り付けるための取付孔64Fとが設けられている。
図6、7に示すように、吸気口61の上方には、四角形状の吸気口61に対応した開放箱形状のカバー部材65が配置されている。カバー部材65は、吸気口61を覆う天板65aと、この天板65aの周囲から連続して形成された側板65bと、この天板65aの四隅から下方に延びる一対の脚部65cと、これら脚部65cの下端を互いに連結する四角環状のフランジ65dと、このフランジ65dの下面から下方に向かって突出する係合爪65fとを備えている。
天板65aは、吸気口61の開口端面Hの上方に離間して配置されている。側板65bの下端65b1は、吸気口61の開口端面Hの下方まで延びており、吸気口61の周囲を取り囲むように覆っている。このため、側板65bの下端65b1とフランジ65dとの間は開口しており、吸気口61の側面と側板65bの内面(内壁)との間に吸気口61に通じる開口部が形成されている。そして、吸気口61への吸気通路は、側板65bの下端65b1の下方から一旦吸気口61を越えて吸気口61の内部に入る通路構造となり、吸気口61までの吸気通路の構造がラビリンス構造となっている。ここで、ラビリンス構造とは、吸気口61への吸気通路が上下方向にジグザグ形状となっている構造であり、吸気口61への液体の浸入を抑制する構造である。
天板65aの内側には、冷却ブロワ50の作動音を吸音する吸音部材66が設けられている。騒音は吸音部材66に垂直入射する場合に最も吸音されるので、吸気口61に対向する部分に吸音部材66を設けることによって、吸音効率を最適化することができる。また、吸気ダクト60の吸気口61近傍の内側面にも吸音部材67が設けられている。吸音部材66、67は、グラスウール等の無機質繊維、アルミニウム等の金属繊維、ポリエチレン系樹脂等の合成樹脂発泡体等から構成されている。
図6に示すように、吸気口61の周囲の車室床面パネル10はフロアカーペット110によって覆われている。フロアカーペット110には、吸気口61に対応する開口が設けられており、フロアカーペット110は、車室4側となる表面層111と、車室床面パネル10側となる裏面層を形成するフェルト層112との2層を備える。フロアカーペット110は、クリップ等の固定手段によって車室床面パネル10に固定されている。
図7、8に示すように、係合爪65fは、先端がテーパ形状であり弾性部材で形成されている。また、係合爪65fは、フランジ65dにおけるフランジ64の取付孔64Fに対応する位置にそれぞれ設けられており取付孔64Fに係合する。係合爪65fが取付孔64Fに係合する位置は、フロアカーペット110を挟み込んだ際に、フロアカーペット110のフェルト層112を押し潰して圧縮する位置に設定されている。すなわち、フロアカーペット110のフェルト層112を押し潰しつつ、係合爪65fが取付孔64Fに係合すると、フロアカーペット110が挟み込まれて固定される。よって、吸気口61の周囲では、フロアカーペット110がフランジ64とフランジ65dとに押し潰されて挟み込まれるので吸気口61の周囲はシール(密閉)される。
また、吸気口61には、異物の浸入を抑制する防塵フィルタ61aが着脱自在に取り付けられており、この防塵フィルタ61aは交換可能である。そして、カバー部材65は、係合爪65fにより着脱自在であるので、防塵フィルタ61aの清掃等のメンテナンスや交換を容易にすることができる。
図3を参照して冷却ダクト70について説明する。図3に示すように、冷却ダクト70は、冷却ブロワ50の吐出口52に嵌め込まれる接続口71と、この接続口71から連続して下流に向かって拡幅形状のダクト72と、電池パック30に空気を吐出するダクト端である排気口73とを備える。
次に、冷却ユニット40の組立及びアンダーボディ20への取り付けについて説明する。まず、図5に示すように、冷却ブロワ50の吸気口51に吸気ダクト60の接続口63を連接して、冷却ブロワ50と吸気ダクト60とを図示しないクリップによって互いに固定する。
そして、図4に示すように、フロアパネル90の下面に、図示しないボルトによって、骨格部材100,101を取り付けて固定する。吸気ダクト60が固定された冷却ブロワ50の脚53の取付孔50Aに、骨格部材100のスタッドボルト100A及びフロアパネル90のスタッドボルト92Aを挿通してナットAによって締結して、冷却ブロワ50を骨格部材100及びフロアパネル90に固定する。また、吸気ダクト60の取付孔64BにクリップBを挿通してフロアパネル90のクリップ固定孔94Bに取り付けることによって、吸気ダクト60のフランジ64をフロアパネル90に固定する。
さらに、図3に示すように、冷却ダクト70の接続口71を、冷却ブロワ50の吐出口52に嵌め込む。また、防水トレイ80の取付孔80E及び骨格部材100,101の取付孔100E,101Eに図示しないクリップを挿通して、防水トレイ80を骨格部材100,101に取り付ける。このようにして、冷却ユニット40が組み立てられる。
この組み立てられた冷却ユニット40は、図2に示すように、電池パック30が収容されたアンダーボディ20の凹部25bに収容される。その後、冷却ユニット40の取り付け位置を調整して、冷却ユニット40をボルトDにより固定する。
冷却ユニット40の取り付け後、フロアパネル90をフロアカーペット110で覆って、フロアカーペット110をクリップ等の固定手段によって車室床面パネル10に固定する。そして、カバー部材65のフランジ65dとフランジ64とによってフロアカーペット110を挟み込むように、カバー部材65の係合爪65fをフランジ64の取付孔64Fに係合する。この係合によって、フロアカーペット110は、フランジ65dとフランジ64とによって押し潰されて固定される。また、カバー部材65がフランジ64に取り付けられることによって吸気口61の上方や周囲が覆われる。
その他の図示しない構成部品やフロアカーペット110の取り付けが終了して、冷却ブロワ50が駆動されると、図6中、矢印Gで示すように、車室4の空気が側板65bの下端65b1の下方から吸気口61を一旦越えて吸気口61の内部に吸引されて排気口73から吐出される。排気口73から吐出された空気は、電池パック30に送風されて電池パック30を冷却してアンダーボディ20の内部へ排出される。
このように、側板65bの下端65b1が吸気口61の開口端面Hの下方まで延びており、吸気口61の周囲を取り囲むように覆っているので、吸気ダクト60内への吸気通路が側板65bの下端65b1の下方から吸気口61を一旦越えて吸気口61の内部に入る通路となり、吸気通路の構造がラビリンス構造となっている。このため、車室4内で大量の液体をこぼしたとしても、吸気口61の上方はカバー部材65によって覆われているので吸気口61からの液体の浸入が抑制される。
また、吸気口61の周囲に液体が流れてきたとしても、吸気口61はフロアカーペット110の上方位置にあり、ラビリンス構造となっているので液体の浸入が抑制される。このため、冷却ブロワ50への液体の浸入も抑制されて、液体による冷却ブロワ50の故障を低減できる。
さらに、ラビリンス構造により棒状異物の吸気口61への浸入も抑制されて防塵フィルタ61aの破損を抑制できる。また、吸気口61内への液体の浸入が抑制されることにより、例えば、吸気口61の直下に冷却ブロワ50を配置しても、冷却ブロワ50への液体の浸入が抑制される。また、カバー部材65の吸気口61に対向する部分に吸音部材66が設けられており、すなわち、最も吸音効率が良い部分に吸音部材66が設けられているので、冷却ブロワ50の騒音を効率よく吸収することができる。
冷却ブロワ50の排気圧力が高い場合には、電池パック30を冷却後の温度上昇した空気がアンダーボディ20内に回り込み、吸気口61とフロアカーペット110との隙間から吸気口61の近傍に流出することがあり、この温度上昇した空気を吸気口61から吸引すると電池パック30の冷却効率が低下することがある。
しかし、上述の実施形態では、吸気口61の周囲のフロアカーペット110をフランジ64、65dにより押し潰して挟み込んでいるので、吸気口61の周囲が密閉されてシール性能が向上される。このため、吸気口61の周囲から温度上昇した空気が漏れ出ることが抑制されるので、この周囲から漏れ出た温度上昇した空気を吸気口61から吸引することも抑制されて、電池パック30の冷却効率の低下を防ぐことができる。また、吸気口61の周囲のシール性能の向上により車室床面パネル10の下方からの騒音が漏れることも低減できる。さらに、フロアカーペット110の厚さに製造誤差が生じても、フロアカーペット110を挟み込んで圧縮するので製造誤差を吸収することができる。
また、冷却ブロワ50はフロアパネル90の下面に固定されるので、冷却ブロワ50はフロアパネル90に吊り下げられる状態、すなわち、凹部25bにおける上方に配置される状態となるので、アンダーボディ20が浸水した場合でも、冷却ブロワ50への浸水を抑制できる。また、冷却ブロワ50は防水トレイ80に覆われているので、冷却ブロワ50への浸水をさらに抑制できる。
さらに、冷却ブロワ50の振動に耐えられる剛性を有する骨格部材100に、冷却ブロワ50を直接固定しているので、冷却ブロワ作動時に冷却ブロワ50が振動しても、その振動はフロアパネル90、吸気ダクト60及び冷却ダクト70に伝わりにくく、冷却ブロワ50の振動伝搬による騒音を抑制できる。また、骨格部材100をアンダーボディ20に固定しているので、骨格部材100の剛性が高まり、冷却ブロワ50の振動伝搬による騒音をさらに抑制できる。
本実施形態では、フロアパネル90を骨格部材100,101により補強しているので、フロアパネル90の上に乗員が乗っても変形しない剛性を備えており、図1に示すように、冷却ユニット40を乗員が乗降する部分に配置することが可能となる。また、乗降の負荷による冷却ユニット40への影響も抑制できる。フロアパネル90にビード91を設けることによってフロアパネル90の剛性をさらに向上できる。
なお、上述の実施形態では、カバー部材65の側板65bの下端65b1とフランジ65dとの間が開口していたが、側板65bの下端65b1をフランジ65dまで延出して、側板65bとフランジ65dとを一体化してもよい。この場合には、側板65dに複数のスリットを設けて、このスリットから車室内の空気を吸気して、吸気口61の側面と側板65bの内面との間を介して吸気口61に吸気する。
このような構成とすることによって、カバー部材65の脚部65cが不要になりカバー部材65の形状を簡略化することができ、また、吸気口61への異物の浸入抑制も向上することができる。
また、上述の実施形態では、カバー部材65のフランジ64への取り付けに係合爪65fの構成を用いているが、この構成に代えてスタッドボルト等の締結手段を用いてもよい。また、冷却ユニット40がフロアパネル90の床下空間に配置された場合について説明したが、冷却ユニット40が、座席の下方、荷室等に配置された場合でも、吸気口61にカバー部材65を適用することは可能である。特に、吸気口61が車室4に露出する場合にはカバー部材65によって保護されるので有効である。