JP2016108210A - アルミナスラリー及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】アルミナを水系の溶媒に分散させてなるアルミナスラリーにおいて、アルミナの凝集が低減され、ハードケーキの生成も抑制されたアルミナスラリー及びその製造方法を提供する。【解決手段】[1]アルミナを分散媒に分散させてなるアルミナスラリーであって、該アルミナは一次平均粒径が0.1μm以上、1.0μm以下であり、該スラリー中の該アルミナの含有量が30質量%以上、70質量%以下であり、該分散媒中の水の含有量が50質量%以上であり、該スラリーの温度25℃における粘度が10mPa・s以上、3000mPa・s以下であり、かつpHが6以上、8以下であるアルミナスラリー、及び[2]工程(1):一次平均粒径が0.1μm以上、1.0μm以下のアルミナと、水の含有量が50質量%以上である分散媒とを混合して、該アルミナの含有量が30質量%以上、70質量%以下の混合液1を得る工程、工程(2):工程(1)で得られた混合液1を酸性処理した後、アルカリ金属水酸化物を添加してpHを6以上、8以下に調整し、混合液2を得る工程、工程(3):工程(2)で得られた混合液2を分散処理して、アルミナスラリーを得る工程を順に有する、上記[1]のアルミナスラリーの製造方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、アルミナスラリー及びその製造方法に関する。詳しくは、電池用セパレータ等として用いることができる積層多孔フィルムを構成する、透気性、耐熱性等に優れる被覆層の形成に適したアルミナスラリー及びその製造方法に関する。
多数の微細連通孔を有する高分子多孔体は、超純水の製造、薬液の精製、水処理などに使用する分離膜、衣類、衛生材料などに使用する防水透湿性フィルム、あるいは二次電池などに使用する電池用セパレータなど各種の分野で利用されている。
二次電池はOA、FA、家庭用電器又は通信機器等のポータブル機器用電源として幅広く使用されている。特に機器に装備した場合に容積効率がよく機器の小型化及び軽量化につながることから、リチウムイオン二次電池を使用したポータブル機器が増加している。一方、大型の二次電池はロードレベリング、無停電電源装置(UPS)、電気自動車をはじめ、エネルギー/環境問題に関連する多くの分野において研究開発が進められており、大容量、高出力、高電圧及び長期保存性に優れていることから、非水電解液二次電池の1種であるリチウムイオン二次電池の用途が広がっている。
リチウムイオン二次電池の使用電圧は通常4.1Vから4.2Vを上限として設計されている。このような高電圧では水溶液は電気分解を起こすので電解液として使うことができない。そのため、高電圧でも耐えられる電解液として有機溶媒を使用したいわゆる非水電解液が用いられている。非水電解液用溶媒としては、より多くのリチウムイオンを存在させることができる高誘電率有機溶媒が用いられ、該高誘電率有機溶媒としてプロピレンカーボネートやエチレンカーボネート等の有機炭酸エステル化合物が主に使用されている。溶媒中でリチウムイオン源となる支持電解質として、6フッ化リン酸リチウム等の反応性の高い電解質を溶媒中に溶解させて使用している。
リチウムイオン二次電池には、内部短絡の防止の点からセパレータが正極と負極の間に介在されている。該セパレータにはその役割から当然絶縁性が要求される。また、リチウムイオンの通路となる透気性と電解液の拡散、保持機能を付与するために微細孔構造である必要がある。これらの要求を満たすためセパレータとしては多孔性フィルムが使用されている。
また、最近の電池の高容量化に伴い、電池の安全性に対する重要度が増してきている。電池用セパレータの安全に寄与する特性として、シャットダウン特性(以後、「SD特性」と称する)がある。このSD特性は、100〜150℃程度の高温状態になると多孔性フィルムの微細孔が閉塞され、その結果電池内部のイオン伝導が遮断されるため、その後の電池内部の温度上昇を防止できるという機能である。この時、多孔性フィルムの微細孔が閉塞される温度のうち最も低い温度をシャットダウン温度(以後、「SD温度」と称す)という。電池用セパレータとして使用する場合は、このSD特性を具備していることが必要となる。
しかしながら、近年リチウムイオン二次電池の高エネルギー密度化、高容量化に伴い、通常のSD特性が十分に機能せず、電池内部の温度が電池用セパレータの材料として使用されるポリエチレンの融点である130℃前後を超えてさらに上昇し、セパレータの熱収縮に伴う破膜によって、両極が短絡し、発火に至る事故が発生するおそれがある。そこで、安全性を確保するため、セパレータには現在のSD特性よりもさらに高い耐熱性が求められている。
上記のようなセパレータとして使用される多孔性フィルムとして、例えば、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの少なくとも片面に、アルミナなどの金属酸化物と樹脂バインダーとを含む多孔性の被覆層を備えた多層多孔フィルムが提案されている(特許文献1〜5)。該被覆層は、例えば、アルミナ、樹脂バインダー、及びその他の成分を配合して調製したスラリーを塗工、乾燥することにより形成される。
アルミナの製造方法は種々知られており、このうち、水酸化アルミニウムの焼成により製造されるアルミナは、マグネシウム、カルシウムなどの周期表第2族に属する金属の酸化物を不純物として含有する。このような不純物を含むアルミナを水系分散媒に分散させてスラリー化すると、該不純物がスラリー中に溶出するためアルミナが凝集しやすく、高粘度になり、生産性も安定しないという問題があった。
そこで、例えばアルミナを再び溶解し、再結晶法やアルコキシド法などを用いてアルミナを高純度化するという方法も検討されているが、該方法では多大なエネルギーや資源を要するため経済的ではない。
一方、アルミナスラリーを酸洗浄したり、イオン交換樹脂により処理したりすることで上記不純物をスラリーから除去する方法が知られている。
例えば特許文献6には、所定の組成及び平均粒子径の水酸化アルミニウムを所定条件下で焼成し、得られたα−アルミナを洗浄処理する、高純度α−アルミナの製造方法において、洗浄処理後、更に粉砕処理し、再度スラリー化した上で、イオン交換樹脂を用いて不純物金属を除去することが開示されている。
特開2004−227972号公報 特開2008−186721号公報 国際公開第2008/149986号 特開2008−305783号公報 国際公開第2012/023199号 特開2008−150238号公報
特許文献6に記載された方法においては、不純物金属を除去するために強イオン性の陽イオン交換樹脂が用いられている。しかしながら、このような強酸性条件で処理されたアルミナスラリーは、スラリー中のアルミナ粒子が単粒子の状態で分散し、非常に粘度が低い為、長期保存すると、過剰に分散されたアルミナが沈降して固化した固化物(ハードケーキ)が生成するという問題が生じることが判明した。
本発明は、アルミナを水系の溶媒に分散させてなるアルミナスラリーにおいて、アルミナの凝集が低減され、上記ハードケーキの生成も抑制されたアルミナスラリー及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、特定の条件を満たすアルミナスラリー及びその製造方法が上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、下記に関する。
[1]アルミナを分散媒に分散させてなるアルミナスラリーであって、該アルミナは一次平均粒径が0.1μm以上、1.0μm以下であり、該スラリー中の該アルミナの含有量が30質量%以上、70質量%以下であり、該分散媒中の水の含有量が50質量%以上であり、該スラリーの温度25℃における粘度が10mPa・s以上、3000mPa・s以下であり、かつpHが6以上、8以下であるアルミナスラリー。
[2]前記アルミナが、水酸化アルミニウムを焼成してなるものである、上記[1]に記載のアルミナスラリー。
[3]前記分散媒が、炭素数1〜4の低級アルコールを1質量%以上、20質量%以下の範囲で含有する、上記[1]又は[2]に記載のアルミナスラリー。
[4]下記工程(1)〜(3)を順に有する、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のアルミナスラリーの製造方法。
工程(1):一次平均粒径が0.1μm以上、1.0μm以下のアルミナと、水の含有量が50質量%以上である分散媒とを混合して、該アルミナの含有量が30質量%以上、70質量%以下の混合液1を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた混合液1を酸性処理した後、アルカリ金属水酸化物を添加してpHを6以上、8以下に調整し、混合液2を得る工程
工程(3):工程(2)で得られた混合液2を分散処理して、アルミナスラリーを得る工程
[5]前記アルミナが、水酸化アルミニウムを焼成してなるものである、上記[4]に記載のアルミナスラリーの製造方法。
[6]前記工程(2)の酸性処理に酸性陽イオン交換樹脂を用いる、上記[4]又は[5]に記載のアルミナスラリーの製造方法。
[7]前記工程(2)におけるアルカリ金属水酸化物の添加量が、混合液1に対し50質量ppm以上、1000質量ppm以下である、上記[4]〜[6]のいずれかに記載のアルミナスラリーの製造方法。
本発明のアルミナスラリー及びその製造方法によれば、アルミナの凝集が少なく、上記ハードケーキの生成も抑制される。例えば非水電解液二次電池用セパレータ等に好適に用いられる積層多孔フィルムの製造において、当該スラリーを含有する分散液を用いて多孔性の被覆層を形成すると、塗布法により均一な層を安定して形成することができるので、該フィルムの生産性を安定化させることができる。
本発明の積層多孔フィルムを収容している電池の概略的断面図である。
以下、本発明のアルミナスラリー及びその製造方法の実施形態について詳細に説明する。
なお、本発明において、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含し、主成分の含有量は50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100質量%を含む)を占める意を包含するものである。
また、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特に断りのない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
[アルミナスラリー]
本発明のアルミナスラリーは、アルミナを分散媒に分散させてなるアルミナスラリーであり、該アルミナは一次平均粒径が0.1μm以上、1.0μm以下であり、該スラリー中の該アルミナの含有量が30質量%以上、70質量%以下であり、該分散媒中の水の含有量が50質量%以上であり、該スラリーの温度25℃における粘度が10mPa・s以上、3000mPa・s以下であり、かつpHが6以上、8以下であることを特徴とする。
本発明のアルミナスラリーは上記構成を有することにより、アルミナの凝集が低減されるとともに、過剰に分散されたアルミナが沈降して固化した固化物(以下、単に「ハードケーキ」ともいう)の生成が抑制される。
本発明において上記効果が得られる理由は定かではないが、以下のように推察される。
水酸化アルミニウムの焼成により製造されるアルミナは、マグネシウム、カルシウムなどの周期表第2族に属する金属の酸化物を不純物として含有する。該不純物を含むアルミナを水系分散媒に分散させてスラリー化すると、該不純物がスラリー中に溶出するためアルミナが凝集しやすくなる。
上記問題を解決するために、例えば前述の特許文献6に記載されている方法により該不純物を除去することができる。しかしながらアルミナスラリーを強酸性条件で処理すると、アルミナの凝集は抑えられる一方、アルミナが過剰に分散される場合がある。過剰に分散されたアルミナがスラリー中で沈降して固化してハードケーキを生成すると、該ハードケーキの解砕は非常に困難であるため、該スラリー及びこれを用いた積層多孔フィルムなどの各種製品の生産性が低下する要因となる。
そこで本発明においては、アルミナを分散媒に分散させてなるアルミナスラリーにおいて、特に該スラリーの粘度及びpHを所定の範囲とすること、さらには、該アルミナスラリーの製造において特定の方法を用いることにより、上記課題を解決できることを見出したものである。
以下に、本発明のアルミナスラリーを構成する各成分について説明する。
<アルミナ>
本発明のアルミナスラリーに用いるアルミナは、αアルミナ、γアルミナ、θアルミナ、κアルミナ、擬ベーマイトなどが挙げられる。中でも、本発明のアルミナスラリーを非水電解液二次電池用セパレータ用の積層多孔フィルムに用いる場合には、電池に組み込んだ際に化学的に不活性であるという観点で、αアルミナが好ましい。
本発明に用いるアルミナは、一次平均粒径が0.1μm以上、1.0μm以下である。該アルミナの一次平均粒径は、好ましくは0.2μm以上、より好ましくは0.3μm以上である。一方、該アルミナの一次平均粒径は、好ましくは0.8μm以下、より好ましくは0.7μm以下である。使用するアルミナの一次平均粒径を0.1μm以上とすることで、非水電解液二次電池用セパレータ用の積層多孔フィルムに用いた際に十分な耐熱性を発現することができる。また、該一次平均粒径を1.0μm以下とすることで、アルミナの分散性が向上する。
なお、本発明において「アルミナの一次平均粒径」は、実施例に記載の方法によって測定及び算出される。
本発明に用いるアルミナの比表面積は、5m/g以上、15m/g以下であることが好ましい。比表面積が5m/g以上であれば、アルミナスラリーの粘度が保持され、粘度安定性が向上する。また、本発明のアルミナスラリーを用いて得られる積層多孔フィルムを非水電解液二次電池にセパレータとして組み込む際に電解液の浸透が速くなり、該非水電解液二次電池の生産性が良好となる。また、比表面積が15m/g以下であれば、アルミナスラリーを用いて得られる積層多孔フィルムを非水電解液二次電池にセパレータとして組み込む際に、電解液成分の吸着を抑えられる。
上記観点から、アルミナの比表面積はより好ましくは5.5m/g以上、さらに好ましくは6m/g以上であり、より好ましくは14m/g以下、さらに好ましくは13m/g以下である。
なお、本発明において「アルミナの比表面積」は定容量式ガス吸着法により測定される値であり、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
本発明に用いるアルミナの製造方法は特に限定されないが、例えば、アルミニウムアルコキシド法などで製造された水酸化アルミニウムを焼成する方法、有機アルミニウムを原料として用いる方法、並びに、遷移アルミナ又は熱処理により遷移アルミナとなるアルミナを原料として用い、塩化水素を含有するガス雰囲気下で焼成する方法などが挙げられる。
これらの中でも、不純物金属に由来するアルミナの凝集を低減しつつ、ハードケーキの生成を抑制するという本発明の効果の点からは、本発明に用いるアルミナは、水酸化アルミニウムを焼成してなるものが好ましい。
アルミニウムアルコキシド法としては、例えば、アルミニウムアルコキシドを、水を用いて加水分解してスラリー状、ゾル状、ゲル状の水酸化アルミニウムを得て、それを乾燥させることにより乾燥粉末状の水酸化アルミニウムを得る方法などが挙げられる。
上記のアルミニウムアルコキシド法などにより得られた乾燥粉末状の水酸化アルミニウムを焼成することにより、アルミナが得られる。水酸化アルミニウムの焼成温度、焼成温度までの昇温速度及び焼成時間は、所望の物性を有するアルミナとなるように適宜選定することができる。水酸化アルミニウムの焼成は、例えば焼成温度1100〜1500℃、焼成時間0.5〜24時間の範囲で行うことができる。
水酸化アルミニウムの焼成は、大気雰囲気中の他、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中で焼成してもよく、プロパンガスなどの燃焼によって焼成するガス炉のように、水蒸気分圧が高い雰囲気中で焼成してもよい。
上記方法で得られたアルミナの一次平均粒径が1.0μmを超えた状態で凝集している場合には、予め粉砕処理を行って一次平均粒径を1.0μm以下にすることが好ましい。アルミナの粉砕は、例えば振動ミル、ボールミル、ジェットミルなどの公知の装置を用いて行うことができ、乾式状態で粉砕する方法、及び、湿式状態で粉砕する方法のいずれも用いることができる。
<分散媒>
本発明のアルミナスラリーは、上記アルミナを分散媒に分散させたものである。分散媒としてはアルミナを適度に均一かつ安定に分散させることができるものであれば特に制限はないが、コスト及び環境負荷の点、アルミナの凝集を抑制する観点、並びに、アルミナスラリーを後述する積層多孔フィルムにおける被覆層の形成に用いる際に、該被覆層を塗布法で形成する際の塗工性の観点から、分散媒中の水の含有量は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、85質量%以上がよりさらに好ましい。また、該分散媒中の水の含有量は100質量%以下であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
水以外に用いることのできる分散媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、水、ジオキサン、アセトニトリル、低級アルコール、グリコール類、グリセリン、乳酸エステルなどが挙げられる。中でも、分散媒は炭素数1〜4の低級アルコールを含有することが好ましい。該低級アルコールとしては、炭素数1〜4の1価のアルコールが好ましく、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコールから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記の中でも、分散媒は水と炭素数1〜4の低級アルコールとの混合分散媒が好ましく、水と炭素数1〜4の1価のアルコールとの混合分散媒がより好ましく、水とイソプロピルアルコールとの混合分散媒がさらに好ましい。
分散媒中の炭素数1〜4の低級アルコールの含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下の範囲である。
本発明のアルミナスラリー中の前記アルミナの含有量は、ハードケーキの生成を抑制するための粘度を確保するという観点から、30質量%以上であり、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上である。また、アルミナの凝集を抑制する観点及びハンドリング性の観点から、アルミナスラリー中のアルミナの含有量は、70質量%以下であり、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。
本発明のアルミナスラリーは、温度25℃における粘度が10mPa・s以上、3000mPa・s以下である。該粘度が上記範囲であると、アルミナの凝集が低減され、該スラリーを積層多孔フィルムの被覆層形成に用いた際に生産性が安定する。また該被覆層形成時の塗工性も良好になる。該粘度は50mPa・s以上が好ましく、100mPa・s以上がより好ましい。また、2000mPa・s以下が好ましく、1000mPa・s以下がより好ましく、800mPa・s以下がさらに好ましい。
アルミナスラリーの粘度は、例えば、B型粘度計(東機産業(株)製「TVB10H」)を用いて、温度25℃、100rpmの周速にて測定される値であり、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。
また本発明のアルミナスラリーは、pHが6以上、8以下であることを特徴とする。該スラリーのpHが6未満であると、過剰に分散されたアルミナの沈降、固化によるハードケーキの生成を抑制することができない。また該スラリーのpHが8を超えると、アルミナの凝集を抑制できず、該スラリーを積層多孔フィルムの被覆層形成に用いた際の塗工性が低下する。
上記観点から、アルミナスラリーのpHは、好ましくは6.2以上、より好ましくは6.5以上であり、好ましくは7.8以下、より好ましくは7.5以下である。pHは温度25℃においてpHメーターで測定される値である。
[アルミナスラリーの製造方法]
本発明のアルミナスラリーの製造方法には特に制限はないが、本発明の効果を得る観点から、下記工程(1)〜(3)を順に有する製造方法(以下「本発明の製造方法」ともいう)を用いることが好ましい。
工程(1):一次平均粒径が0.1μm以上、1.0μm以下のアルミナと、水の含有量が50質量%以上である分散媒とを混合して、該アルミナの含有量が30質量%以上、70質量%以下の混合液1を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた混合液1を酸性処理した後、アルカリ金属水酸化物を添加してpHを6以上、8以下に調整し、混合液2を得る工程
工程(3):工程(2)で得られた混合液2を分散処理して、アルミナスラリーを得る工程
以下、本発明の製造方法について詳細を説明する。
<工程(1)>
工程(1)では、一次平均粒径が0.1μm以上、1.0μm以下のアルミナと、水の含有量が50質量%以上である分散媒とを混合して、該アルミナの含有量が30質量%以上、70質量%以下の混合液1を得る。アルミナ及び分散媒については、前記と同じである。
上記所定量のアルミナと分散媒とを混合する方法としては特に制限はないが、例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散、撹拌羽根等による機械撹拌法などを用いて行うことができる。
<工程(2)>
工程(2)では、工程(1)で得られた混合液1を酸性処理した後、アルカリ金属水酸化物を添加してpHを6以上、8以下に調整し、混合液2を得る。工程(2)において混合液1を酸性処理することにより、スラリー中のアルミナの凝集を抑制することができる。さらに、該酸性処理後にアルカリ金属水酸化物を添加して該スラリーのpHを所定の範囲に調整することで、アルミナが過剰に分散されることを抑制し、これによるハードケーキの生成を抑えることができる。
酸性処理に用いる酸成分としては、アルミナの凝集を低減できるものであれば特に制限なく用いることができる。
スラリーに使用するアルミナが水酸化アルミニウムを焼成してなるものである場合には、該アルミナに含まれる不純物を除去してアルミナの凝集を抑える観点から、酸性処理に酸性陽イオン交換樹脂を用いることが好ましい。好ましい酸性陽イオン交換樹脂としては、例えばポリスチレンスルホン酸などが挙げられる。
酸性陽イオン交換樹脂以外に酸性処理に用いることのできる酸成分としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸等の低級1級カルボン酸;硝酸、亜硝酸等のニトロ酸;過塩素酸、次亜塩素酸等のハロゲンオキソ酸;塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸等のハロゲン化イオン;燐酸、サリチル酸、グリコール酸、乳酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸等、が挙げられる。これらの中でも、少量添加でpHを下げられる点、入手の容易性、酸の安定性が高いという観点で、蟻酸、酢酸、硝酸、塩酸、及び燐酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
酸性処理後の混合液のpHは、好ましくは6未満、より好ましくは5以下である。該pHが6未満であれば、スラリー中のアルミナの凝集を抑制することができる。
工程(2)では上記酸性処理を行った後に、アルカリ金属水酸化物を添加してpHを6以上、8以下に調整し、混合液2を得る。これにより、該酸性処理によって低粘度化していたアルミナスラリーが適度に増粘され、アルミナが沈降、固化してハードケーキを生成することを抑制できる。
好ましいアルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムが挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、水酸化リチウム及び水酸化カリウムから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。アルカリ金属水酸化物は、固体状態で添加してもよく、アルカリ金属水酸化物の水溶液を調製して添加してもよい。
工程(2)におけるアルカリ金属水酸化物の添加量は、pHを6以上、8以下に調整できる量であれば特に制限はないが、混合液1に対し50質量ppm以上、1000質量ppm以下であることが好ましい。上記範囲であれば、アルミナの凝集を抑制し、かつハードケーキの生成も抑えることができる。アルカリ金属水酸化物の添加量は、より好ましくは60質量ppm以上、さらに好ましくは70質量ppm以上である。また該添加量は、より好ましくは900質量ppm以下、さらに好ましくは800質量ppm以下である。
<工程(3)>
工程(3)では、工程(2)で得られた混合液2を分散処理して、アルミナスラリーを得る。
混合液2を分散処理する方法としては特に制限はないが、例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散、撹拌羽根等による機械撹拌法等が挙げられる。これらの中でも、磨砕物の混入防止の観点から、ビーズミルを用いて分散処理することが好ましい。
ビーズミルに用いられるビーズの種類としては、ガラスビーズ、セラミックビーズなどが挙げられる。ビーズの硬度の観点からは、セラミックビーズが好ましく、アルミナ、ジルコニア、及びジルコンから選ばれる1種以上のセラミックビーズがより好ましい。ビーズ径は、好ましくは0.1mm以上、3mm以下であり、アルミナの分散性の観点から、より好ましくは1.5mm以下、さらに好ましくは0.8mm以下である。
また、ビーズミル中のビーズの充填率は、分散効率の観点から、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上であり、好ましくは90%以下である。
分散処理時の温度及び平均滞留時間についても特に制限はなく、例えばビーズミルを用いて連続的に分散を行う場合、通常、温度10〜50℃、平均滞留時間0.1〜60分の範囲で分散処理を行うことができる。
<アルミナスラリーの用途>
上記本発明のアルミナスラリーは、研磨剤、セラミック成型体の成型、非水電解液二次電池の電極又はセパレータの被覆層の形成、光反射材の反射層の形成などに用いることができる。特に、電池用セパレータ等として用いることができる積層多孔フィルムの被覆層の形成に好適に用いられる。
(積層多孔フィルム)
本発明のアルミナスラリーは、電池用セパレータ等として用いることができる積層多孔フィルムの被覆層の形成に用いることができる。該積層多孔フィルムは、例えば、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの少なくとも片面に被覆層を有し、該被覆層が本発明のアルミナスラリー及び後述する樹脂バインダーを含有する分散液を用いて形成されたものである。
以下に、上記積層多孔フィルムを構成する各成分について説明する。
〔ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム〕
積層多孔フィルムは、電池内部での化学的安定性などの観点から、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを有する。
ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムに用いるポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィンを重合した単独重合体又は共重合体が挙げられる。また、これらの単独重合体又は共重合体を2種以上混合することもできる。この中でもポリプロピレン系樹脂、又は、ポリエチレン系樹脂を用いることが好ましく、特に、積層多孔フィルムの機械的強度、耐熱性などを維持する観点から、ポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
≪ポリプロピレン系樹脂≫
ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムに用いることのできるポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、又はプロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセンなどα−オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体などが挙げられる。この中でも、積層多孔フィルムの機械的強度、耐熱性などを維持する観点から、ホモポリプロピレンがより好適に使用される。
また、ポリプロピレン系樹脂としては、立体規則性を示すアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が80〜99%であることが好ましい。より好ましくは83〜98%、さらに好ましくは85〜97%である。アイソタクチックペンタッド分率が80%以上であればフィルムの機械的強度が良好である。一方、アイソタクチックペンタッド分率の上限については現時点において工業的に得られる上限値で規定しているが、将来的に工業レベルでさらに規則性の高い樹脂が開発された場合についてはこの限りではない。
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al(”Macromolecules”,8,687,(1975))に準拠する。
また、ポリプロピレン系樹脂の分子量分布を示すパラメータであるMw/Mnは、2.0〜10.0であることが好ましい。より好ましくは2.0〜8.0、さらに好ましくは2.0〜6.0であるものが使用される。M/Mが小さいほど分子量分布が狭いことを意味するが、M/Mが2.0未満であると押出成形性が低下する等の問題が生じるほか、工業的に生産することも困難である。一方、M/Mが10.0を超えた場合は低分子量成分が多くなり、積層多孔フィルムの機械的強度が低下しやすい。
ポリプロピレン系樹脂のM/MはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定される。
ポリプロピレン系樹脂の密度は、0.890〜0.970g/cmであることが好ましく、0.895〜0.970g/cmであることがより好ましく、0.900〜0.970g/cmであることがさらに好ましい。密度が0.890g/cm以上であれば、積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータに使用した際に適度なSD特性を発現できるため好ましい。一方、0.970g/cm以下であれば適度なSD特性を発現できるほか、延伸性が維持される点で好ましい。
ポリプロピレン系樹脂の密度は、密度勾配管法を用いてJIS K7112(1999年)に準じて測定される。
また、ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、通常、MFRは0.5〜15g/10分であることが好ましく、1.0〜10g/10分であることがより好ましい。MFRが0.5g/10分以上とすることで、成形加工時の樹脂の溶融粘度が高く、十分な生産性を確保することができる。一方、15g/10分以下とすることで、得られる積層多孔フィルムの機械的強度を十分に保持することができる。
ポリプロピレン系樹脂のMFRはJIS K7210(1999年)に従い、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
なお、前記ポリプロピレン系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、懸濁重合法、溶融重合法、塊状重合法、気相重合法、またラジカル開始剤を用いた塊状重合法などが挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、商品名「ノバテックPP」、「WINTEC」(以上、日本ポリプロ(株)製)、「ノティオ」、「タフマーXR」(以上、三井化学(株)製)、「ゼラス」、「サーモラン」(以上、三菱化学(株)製)、「住友ノーブレン」、「タフセレン」(以上、住友化学(株)製)、「プライムポリプロ」、「プライムTPO」(以上、(株)プライムポリマー製)、「Adflex」、「Adsyl」、「HMS−PP(PF814)」(以上、サンアロマー(株)製)、「バーシファイ」、「インスパイア」(以上、ダウケミカル(株)製)などの市販されている商品を使用できる。
≪ポリエチレン系樹脂≫
ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムに用いることのできるポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレンを主成分とする共重合体、すなわち、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンなどの炭素数3〜10のα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル、共役ジエンや非共役ジエンのような不飽和化合物の中から選ばれる1種又は2種以上のコモノマーとの共重合体又は多元共重合体あるいはその混合組成物が挙げられる。エチレン系重合体のエチレン単位の含有量は通常50質量%を超えるものである。
これらのポリエチレン系樹脂の中では、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンの中から選ばれる少なくとも1種のポリエチレン系樹脂が好ましく、高密度ポリエチレンがより好ましい。
前記ポリエチレン系樹脂の密度は、0.910〜0.970g/cmであることが好ましく、0.930〜0.970g/cmであることがより好ましく、0.940〜0.970g/cmであることがさらに好ましい。密度が0.910g/cm以上であれば、積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータに使用した際に適度なSD特性を発現できるため好ましい。一方、0.970g/cm以下であれば適度なSD特性を発現できるほか、延伸性が維持される点で好ましい。
ポリエチレン系樹脂の密度は、密度勾配管法を用いてJIS K7112(1999年)に準じて測定される。
また、前記ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、通常MFRは0.03〜30g/10分であることが好ましく、0.3〜10g/10分であることがより好ましい。MFRが0.03g/10分以上であれば成形加工時の樹脂の溶融粘度が十分に低いため生産性に優れる。一方、30g/10分以下であれば、十分な機械的強度を得ることができる。
ポリエチレン系樹脂のMFRはJIS K7210(1999年)に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
ポリエチレン系樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えば、チーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた重合方法が挙げられる。ポリエチレン系樹脂の重合方法として、一段重合、二段重合、もしくはそれ以上の多段重合等があり、いずれの方法のポリエチレン系樹脂も使用可能である。
≪他の成分≫
ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムには、前述した樹脂のほか、目的とする効果を著しく阻害しない範囲内で、一般に樹脂に配合される添加剤を適宜添加できる。
上記添加剤としては、成形加工性、生産性及びポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの諸物性を改良、調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂やシリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤又は着色剤などの添加剤が挙げられる。
またポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの開孔を促進するため、及び成形加工性を付与するために、目的とする効果を著しく阻害しない範囲で、各種樹脂や、ワックス等の低分子量化合物を添加してもよい。
≪ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの層構成≫
ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムは、単層でもよく、積層でもよい。中でも、前記ポリオレフィン系樹脂を含む層(以下「A層」と称する場合がある)の単層、当該A層の機能を妨げない範囲で、当該A層と他の層(以降「B層」と称する場合がある)との積層が好ましい。なお、B層がA層とは異なるポリオレフィン系樹脂を含む層であってもよい。
具体的にはA層/B層を積層した2層構造、A層/B層/A層、もしくは、B層/A層/B層として積層した3層構造などが例示できる。また、他の機能を持つ層と組み合わせて3種3層の様な形態も可能である。この場合、他の機能を持つ層との積層順序は特に問わない。層数としては、4層、5層、6層、7層と必要に応じて増やしてもよい。
≪ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの製造方法≫
ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの製造方法は、従来公知の多孔性フィルムの製造方法を好適に用いることができ、特に限定されるものではないが、通常、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを形成するための前駆体である無孔膜状物を作製し、これを多孔化することによってポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを形成する方法が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを形成するための前駆体である無孔膜状物の作製方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば押出機を用いて、多孔フィルムの原料となるポリオレフィン系樹脂又はポリオレフィン系樹脂と各種添加剤との混合物を溶融し、Tダイから押出し、キャストロールで冷却固化する方法が挙げられる。またチューブラー法により製造した膜状物を切り開いて平面状とする方法も適用できる。
無孔膜状物の多孔化方法としては、特に限定されず、湿式による一軸以上の延伸多孔化、乾式による一軸以上の延伸多孔化など、公知の方法を用いることができる。延伸多孔化における延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法などの手法があり、これらの手法を単独で又は2つ以上組み合わせて一軸延伸あるいは二軸延伸を行う。中でも、多孔構造制御の観点から逐次二軸延伸が好ましい。また必要に応じて、延伸の前後に樹脂組成物に含まれている可塑剤を溶剤によって抽出、乾燥させる方法も適用される。さらに、寸法安定性の改良を目的として、延伸の後に熱処理や弛緩処理を施すこともできる。
ここで、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムにポリプロピレン系樹脂を用いる場合には、前記無孔膜状物にいわゆるβ晶を生成させることが好ましい。無孔膜状物中にβ晶を生成していれば、フィラー等の添加剤を使用しない場合においても、延伸を施すことで微細孔が容易に形成されるため、優れた透気特性を有するポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを得ることができる。
ポリプロピレン系樹脂の無孔膜状物中にβ晶を生成させる方法としては、前記ポリプロピレン系樹脂のα晶の生成を促進させる物質を添加しない方法や、特許第3739481号公報に記載されているように過酸化ラジカルを発生させる処理を施したポリプロピレンを添加する方法、及び組成物にβ晶核剤を添加する方法などが挙げられる。
≪β晶核剤≫
本発明で用いることのできるβ晶核剤としては以下に示すものが挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成及び成長を増加させるものであれば特に限定されない。またβ晶核剤は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分Aと周期律表第2族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分Bとからなる二成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。そのほか核剤の具体的な種類については、特開2003−306585号公報、特開平08−144122号公報、特開平09−194650号公報に記載されている。
β晶核剤の市販品としては、新日本理化(株)製のβ晶核剤「エヌジェスターNU−100」が挙げられる。また、β晶核剤が添加されたポリプロピレン系樹脂の市販品としては、Aristech社製のポリプロピレン系樹脂「Bepol B−022SP」、Borealis社製のポリプロピレン系樹脂「Beta(β)−PP BE60−7032」、Mayzo社製のポリプロピレン系樹脂「BNX BETAPP−LN」などが挙げられる。
前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂に添加するβ晶核剤の配合割合は、β晶核剤の種類又はポリプロピレン系樹脂の組成などにより適宜調整することが必要であるが、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、0.0001〜5質量部であることが好ましい。また、0.001〜3質量部がより好ましく、0.01〜1質量部がさらに好ましい。
β晶核剤の配合割合がポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.0001質量部以上であれば、製造時において十分にポリプロピレン系樹脂のβ晶を生成及び成長させることができるので、得られる積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして用いる際にも十分なβ晶活性を発現し、所望の透気性能が得られる。また、β晶核剤の配合割合がポリプロピレン系樹脂100質量部に対して5質量部以下であれば、コスト的にも有利になるほか、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム表面へのβ晶核剤のブリードなどがなく好ましい。
また、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムが積層構造である場合、その製造方法は、多孔化と積層の順序等によって以下の3つに大別される。
(i)各層を多孔化したのち、多孔化された各層をラミネートしたり接着剤等で接着したりして積層する方法。
(ii)各層を積層して積層無孔膜状物を作製し、ついで当該無孔膜状物を多孔化する方法。
(iii)各層のうちいずれか1層を多孔化したのち、もう1層の無孔膜状物と積層し、多孔化する方法。
上記のうち、その工程の簡略さ、生産性の観点から(ii)の方法を用いることが好ましく、なかでも2層の層間接着性を確保するために、共押出で積層無孔膜状物を作製した後、多孔化する方法が特に好ましい。
ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの厚みは5〜100μmが好ましく、より好ましくは8〜50μm、さらに好ましくは10〜30μmである。ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの厚みが5μm以上であれば、積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして用いる場合に、実質的に必要な電気絶縁性を得ることができ、例えば電極の突起部分に大きな力がかかった場合でも、セパレータを突き破って短絡しにくく安全性に優れる。また、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの厚みが100μm以下であれば、積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして用いる場合に電気抵抗を小さくすることができるので、電池の性能を十分に確保することができる。
〔被覆層〕
上記積層多孔フィルムは、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの少なくとも片面に被覆層を有する。該被覆層は、本発明のアルミナスラリー、及び樹脂バインダーを含有する分散液(以下「被覆層形成用分散液」ともいう)を用いて形成されるものであり、アルミナ及び樹脂バインダーを少なくとも含む。該分散液に用いられるアルミナスラリーは前述のとおりである。
≪樹脂バインダー≫
樹脂バインダーは、被覆層中のアルミナの結合剤として作用し、該アルミナを多く含む被覆層と、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムとの接着性を向上させるために用いられる。
被覆層に用いられる樹脂バインダーとしては、アルミナを多く含む被覆層と、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムとを良好に接着でき、電気化学的に安定で、かつ積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして使用する際に有機電解液に対して安定なものであれば、特に制限なく用いることができる。
具体的には、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアラミド、ポリオキシエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル由来の構造単位が0〜20モル%のもの)、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのエチレン−アクリル酸共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン−トリクロロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸及びその誘導体、ポリメタクリル酸及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルセルロース、ポリビニルアルコール、シアノエチルポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリN−ビニルアセトアミド、架橋アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、マレイン酸変性ポリオレフィンなどが挙げられる。これらの樹脂バインダーは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、被覆層形成用分散液に用いられる、水を主成分とする分散媒中及び電池の内部における電解液中で比較的安定であることから、ポリオキシエチレン、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸及びその誘導体、マレイン酸変性ポリオレフィンが好ましく、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、及びポリアクリル酸誘導体から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
前記被覆層において、アルミナと樹脂バインダーとの総量に対するアルミナの含有量は、80質量%以上、99.9質量%以下の範囲であることが好ましい。該アルミナの含有量は92質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、98質量%以上が特に好ましい。アルミナと樹脂バインダーとの総量に対するアルミナの含有量が上記範囲内であることにより、該被覆層が優れた透気性を発現し、かつアルミナの結着性も維持することができる。
したがって被覆層形成用分散液には、アルミナと樹脂バインダーとの含有量比が上記範囲となるように、アルミナスラリーと樹脂バインダーとを配合することが好ましい。
さらに被覆層形成用分散液には、分散安定性を向上させ、及び被覆層形成に適した粘性に最適化するために、分散助剤、安定剤、増粘剤等を配合してもよい。また、分散媒をさらに添加してもよい。当該分散媒は、アルミナ、樹脂バインダー並びにその他の成分が適度に均一かつ安定に溶解又は分散可能なものを用いることが好ましく、前記アルミナスラリーにおいて例示した分散媒と同様のものを用いることができる。
被覆層形成用分散液は、本発明のアルミナスラリー、前記樹脂バインダー、及び必要に応じ用いられるその他の成分を混合し、必要に応じさらに分散処理することにより調製できる。被覆層形成用分散液に含まれる各成分を混合、分散処理する方法は、前記アルミナスラリーの製造方法において例示した方法と同様の方法を用いることができる。
〔被覆層の形成方法〕
被覆層は、上述した被覆層形成用分散液を用いて形成される。該被覆層の形成方法としては、共押出法、ラミネート法、塗布法などが挙げられるが、連続生産性の観点から、塗布法により形成することが好ましい。すなわち、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの少なくとも片面に、被覆層形成用分散液を塗布して被覆層を形成することが好ましい。
被覆層形成用分散液は、その用途に応じて、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面だけに塗布されてもよいし、両面に塗布されてもよい。すなわち本発明の積層多孔フィルムにおいて、被覆層は、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面にのみ形成されていてもよく、両面に形成されていてもよい。
被覆層形成用分散液の塗布方式としては、必要とする層厚や塗布面積を実現できる方式であれば特に限定されない。例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法などが挙げられる。
なお、被覆層形成用分散液をポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの表面に塗布する工程は、使用するポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの製造工程の途中の段階で行ってもよい。例えば、ポリオレフィン系樹脂フィルムの押出成形の後でかつ延伸工程の前に行ってもよいし、縦延伸工程の後に行ってもよいし、横延伸工程の後に行ってもよい。
被覆層形成用分散液を塗布した後、さらに前記分散媒を除去する工程を行うことが好ましい。これにより、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムに、アルミナ及び樹脂バインダーを含む被覆層を形成することができる。該分散媒を除去する方法は、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムに悪影響を及ぼさない方法であれば特に限定されない。例えば、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを固定しながらその融点以下の温度にて乾燥する方法、低温で減圧乾燥する方法、前記樹脂バインダーに対する貧溶媒に浸漬して樹脂バインダーを凝固させると同時に溶媒を抽出する方法などが挙げられる。
好ましくは上記方法を用いることにより、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムに被覆層を形成し、積層多孔フィルムを製造できる。
〔積層多孔フィルムの形状及び物性〕
上記積層多孔フィルムの総厚みは、用途に応じて適宜選択することができる。該積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合には、積層多孔フィルムの総厚みは好ましくは5〜100μm、より好ましくは8〜50μm、さらに好ましくは10〜30μmである。該総厚みが5μm以上であれば、非水電解液二次電池用セパレータとして実質的に必要な電気絶縁性を得ることができ、例えば電極の突起部分に大きな力がかかった場合でも非水電解液二次電池用セパレータを突き破って短絡しにくく、安全性に優れる。また、積層多孔フィルムの総厚みが100μm以下であれば、積層多孔フィルムの電気抵抗を小さくすることができるので、電池の性能を十分に確保することができる。
また、積層多孔フィルムにおける被覆層の厚みは、耐熱性の観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは2μm以上、特に好ましくは3μm以上である。一方で被覆層の厚みとしては、連通性を確保し優れた透気特性を付与する観点から、好ましくは90μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下、特に好ましくは10μm以下である。なお、被覆層を2層以上有する場合には、上記被覆層の厚みとは、1層あたりの厚みを意味する。
上記積層多孔フィルムにおいて、空孔率は30%以上が好ましく、35%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましい。空孔率が30%以上であれば、連通性を確保し透気特性に優れた積層多孔フィルムとすることができる。
一方、積層多孔フィルムの空孔率は70%以下が好ましく、65%以下がより好ましく、60%以下がさらに好ましい。空孔率が70%以下であれば、積層多孔フィルムの強度を十分に保持することができ、ハンドリングの観点からも好ましい。
積層多孔フィルムの透気度は1000秒/100mL以下が好ましく、10〜800秒/100mLがより好ましく、50〜500秒/100mLがさらに好ましい。透気度が1000秒/100mL以下であれば、積層多孔フィルムに連通性があることを示し、優れた透気特性を示すことができるため好ましい。
透気度はフィルム厚み方向の空気の通り抜け難さを表し、具体的には100mLの空気が当該フィルムを通過するのに必要な時間で表現されている。そのため、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方がフィルムの厚み方向の連通性がよいことを意味し、その数値が大きい方がフィルム厚み方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とはフィルム厚み方向の孔のつながり度合いである。積層多孔フィルムの透気度が低ければ様々な用途に使用することができる。例えば非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合、透気度が低いということはリチウムイオンの移動が容易であることを意味し、電池性能に優れるため好ましい。
積層多孔フィルムの透気度(ガーレー値)は、JIS P8117(2009年)に準拠した方法で測定される。
上記積層多孔フィルムは、電池用セパレータとしての使用時において、SD特性を有することが好ましい。具体的には、135℃で5秒間加熱後の透気度は10000秒/100mL以上であることが好ましく、より好ましくは25000秒/100mL以上、さらに好ましくは50000秒/100mL以上である。135℃で5秒間加熱後の透気度が10000秒/100mL以上とすることで、異常発熱時において空孔が速やかに閉塞し、電流が遮断されるため、電池の破裂等のトラブルを回避することができる。
上記積層多孔フィルムにおいては、本発明のアルミナスラリーを含む分散液を用いて被覆層を形成するため、均一な被覆層を得ることができ、該被覆層の表面平滑性も向上する。表面平滑性については、例えば、微細形状測定機((株)小阪研究所製「ET4000A」)を用いて、積層多孔フィルムの被覆層側表面について300μm×400μmの視野角を観察し、周囲よりも5μm以上突き出た凸部の個数(ザラつき量)を集計することで評価することができ、ザラつき量が少ないほど表面平滑性に優れたフィルムとなる。
フィルムの搬送トラブルや外観不良を軽減できることから、ザラつき量は100個/mm未満であることが好ましく、80個/mm未満であることがさらに好ましい。下限については、特に制限はなく、0個/mmが理想であるが、現実的には10−10個/mm以上であることが好ましい。
(非水電解液二次電池)
続いて、上記積層多孔フィルムを電池用セパレータとして収容している非水電解液二次電池について、図1を参照して説明する。
正極板21、負極板22の両極は電池用セパレータ10を介して互いに重なるようにして渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体とする。
前記捲回工程について詳しく説明する。電池用セパレータの片端をピンのスリット部の間に通し、ピンを少しだけ回転させて電池用セパレータの一端をピンに巻きつけておく。この時、ピンの表面と電池用セパレータの被覆層とが接触している。その後、電池用セパレータを間に挟むようにして正極と負極を配置し、捲回機によってピンを回転させて、正負極と電池用セパレータを捲回する。捲回後、ピンは捲回物から引き抜かれる。
前記正極板21、電池用セパレータ10及び負極板22を一体的に巻き付けた捲回体を有底円筒状の電池ケース内に収容し、正極及び負極のリード体24、25と溶接する。ついで、前記電解質を電池缶内に注入し、電池用セパレータ10などに十分に電解質が浸透した後、電池缶の開口周縁にガスケット26を介して正極蓋27を封口し、予備充電、エージングを行い、筒型の非水電解液二次電池を作製する。
電解液としては、リチウム塩を電解液とし、これを有機溶媒に溶解した電解液が用いられる。
有機溶媒としては特に限定されないが、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート、プロピオン酸メチルもしくは酢酸ブチルなどのエステル類、アセトニトリル等のニトリル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジメトキシメタン、ジメトキシプロパン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランもしくは4−メチル−1,3−ジオキソランなどのエーテル類、又はスルホランなどが挙げられ、これらを単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
なかでも、エチレンカーボネート1質量部に対してメチルエチルカーボネートを2質量部混合した溶媒中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.0mol/Lの割合で溶解した電解質が好ましい。
負極としてはアルカリ金属又はアルカリ金属を含む化合物をステンレス鋼製網などの集電材料と一体化させたものが用いられる。前記アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム又はカリウムなどが挙げられる。前記アルカリ金属を含む化合物としては、例えばアルカリ金属とアルミニウム、鉛、インジウム、カリウム、カドミウム、スズもしくはマグネシウムなどとの合金、さらにはアルカリ金属と炭素材料との化合物、低電位のアルカリ金属と金属酸化物もしくは硫化物との化合物などが挙げられる。負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としてはリチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などを用いることができる。
正極としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、二酸化マンガン、五酸化バナジウムもしくはクロム酸化物などの金属酸化物、二硫化モリブデンなどの金属硫化物などが活物質として用いられ、これらの正極活物質に導電助剤やポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤などを適宜添加した合剤を、ステンレス鋼製網などの集電材料を芯材として成形体に仕上げたものが用いられる。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明のアルミナスラリーについてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<評価方法>
(1)アルミナの一次平均粒径
アルミナの一次平均粒径は、日機装(株)製「マイクロトラック 9320HRA」を用いて、レーザー回折法により求めた。
(2)アルミナの比表面積
アルミナの比表面積は、定容量ガス吸着法により測定した。
(3)pH
アルミナスラリーを遠心分離器にかけ、得られた上澄み液について、簡易型pHテスター(pHep:ハンナ インスツルメンツ・ジャパン(株)製)を用いてpHを測定した。
(4)アルミナスラリーの粘度
B型粘度計(東機産業(株)製「TVB10H」)を用いて、温度25℃で100rpmの周速にて測定した。
(5)ハードケーキの有無
アルミナスラリー100gを100mLのポリエチレン製ボトルに入れ、1週間静置して得られた沈降物に対し、20cmのストローク幅、100Hzの周期で5分間水平方向に往復運動させ、下記の判断基準にてハードケーキの有無を確認した。
○:ボトル底面の沈降物層が往復運動にて再分散され、ほとんど消失する。
×:ボトル底面の沈降物層が往復運動後も残っている。
(6)塗工性
被覆層形成用分散液の塗工性は、ザラつき量で評価した。ザラつき量は、微細形状測定機((株)小阪研究所製「ET4000A」)を用いて、積層多孔フィルムの被覆層側表面について300μm×400μmの視野角を観察し、周囲よりも5μm以上突き出た凸部の個数を集計した。塗工性は、このザラつき量の値をもって以下の基準で評価した。
○:ザラつき量が100個/mm未満
×:ザラつき量が100個/mm以上
(7)積層多孔フィルムの総厚み
積層多孔フィルムの総厚みは、1/1000mmのダイアルゲージにて、積層多孔フィルムの面内を不特定に5箇所測定し、その平均値として算出した。
(8)被覆層の厚み
被覆層の厚みは、被覆層形成後の積層多孔フィルムの総厚みと、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの厚みとの差として算出した。
(9)透気度(ガーレー値)
透気度は、JIS P8117(2009年)に準拠して測定した。
(ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの作製)
ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ(株)製「ノバテックPP FY6HA」、密度:0.90g/cm、MFR:2.4g/10min)と、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを準備した。このポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、β晶核剤を0.2質量部の割合で各原材料をブレンドし、東芝機械株式会社製の同方向二軸押出機(口径:40mmφ、L/D:32)に投入し、設定温度300℃で溶融混合後、水槽にてストランドを冷却固化し、ペレタイザーにてストランドをカットし、原料ペレットを作製した。
前記の原料ペレットを再度押出機に投入して溶融し、Tダイ(口金)より押出し、124℃のキャスティングロールで冷却固化させて膜状物を作製した。
前記膜状物を、縦延伸機を用いて100℃で縦方向に4.6倍延伸し、その後、横延伸機にて150℃で横方向に2.1倍延伸後、153℃で熱固定を行った。続いて弛緩処理を行い、さらにVETAPHONE社製ジェネレータCP1を使用し、出力0.4kW、速度10m/minでコロナ表面処理を施すことで、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(厚み20μm)を得た。
[実施例1]
アルミナ(日本軽金属(株)製「LS−235C」、一次平均粒径0.5μm、比表面積6.4m/g)52.6質量部、イソプロピルアルコール5.3質量部、イオン交換水42.1質量部を容器に投入して混合し、ポリテトラフルオロエチレンの撹拌羽根を用いて、回転速度1000rpmにて15分間撹拌を行って、混合液1を得た〔工程(1)〕。
次に、酸性イオン交換樹脂であるポリスチレンスルホン酸(オルガノ(株)製「アンバーライト:IR124」)100質量部に対し、10重量%の塩酸1000質量部で洗浄を3回行い、乾燥することで粗製イオン交換樹脂(EX−A)を準備した。
混合液1に、粗製イオン交換樹脂(EX−A)を5質量部加え30分撹拌して酸性処理を行った。酸性処理後の混合液のpHは3.5であった。続いて、液面に浮上しているイオン交換樹脂を取り除き、残った混合液に対し、アルカリ金属水酸化物として水酸化リチウムを該混合液の全量に対し500質量ppmとなるよう添加して混合液2を得た〔工程(2)〕。この後、混合液2を温度25℃においてビーズミルにより連続的に分散処理を行い、pHが7.0であるアルミナスラリーを得た〔工程(3)〕。ビーズミルの詳細条件は下記のとおりであった。
装置 :アイメックス社製「NVM−1.5」
ビーズ:φ0.5mmジルコニア製ビーズ(充填率85%)
周速 :10m/秒
吐出量:350mL/分
平均滞留時間:0.6分
また、得られたアルミナスラリーを1週間静置したのち、該アルミナスラリー61.8質量部、5質量%ポリビニルアルコール(クラレ(株)製「PVA−124」)水溶液9.9質量部、イオン交換水28.3質量部を混合し、固形分濃度33質量%の被覆層形成用の分散液を得た。
得られた被覆層形成用の分散液を前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムにグラビアロール(格子型、線数:25L/インチ、深度290μm、セル容量145mL/m)を用いて塗布した後、45℃の乾燥炉にて乾燥させて被覆層を形成し、総厚み24μmの積層多孔フィルムを得た。
得られたアルミナスラリー及び積層多孔フィルムについて前記評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例2]
まず、実施例1において作製した粗製イオン交換樹脂(EX−A)100質量部を1000質量部のイオン交換水で3回洗浄を行い、乾燥することで精製イオン交換樹脂(EX−B)を得た。
実施例1において、粗製イオン交換樹脂(EX−A)を精製イオン交換樹脂(EX−B)に変更し、及び、アルカリ金属水酸化物として水酸化カリウムを全量に対し100質量ppm添加したこと以外は、実施例1と同様の方法でpHが7.5であるアルミナスラリーを得た。
また、得られたスラリーを1週間静置したのち、5分間振盪し、再分散させ、該スラリー61.8質量部、5質量%ポリビニルアルコール(クラレ(株)製「PVA−124」)水溶液9.9質量部、イオン交換水28.3質量部を混合し、固形分濃度33質量%の被覆層形成用の分散液を得た。
得られた被覆層形成用の分散液を前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムにグラビアロール(格子型、線数:25L/インチ、深度290μm、セル容量145mL/m)を用いて塗布した後、45℃の乾燥炉にて乾燥させて被覆層を形成し、総厚み24μmの積層多孔フィルムを得た。
得られたアルミナスラリー及び積層多孔フィルムについて前記評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、水酸化リチウムを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法でアルミナスラリーを調製した。しかしながら、1週間静置後のアルミナスラリーは底部に強固なハードケーキが生成しており、5分間振盪を行っても再分散が困難であった。
また、得られたスラリーの上澄みを使用し、実施例1と同様の方法で総厚み22μmの積層多孔フィルムを作製し、前記評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1において、イオン交換樹脂による酸性処理を行わず、かつ水酸化リチウムを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法でアルミナスラリーを調製した。該アルミナスラリーはイオン交換樹脂による酸性処理が行われていないため、原料アルミナ由来の水酸化ナトリウムを350質量ppm含有しており、そのpHは9.0であった。
また、得られたスラリーを使用し、実施例1と同様の方法で総厚み33μmの積層多孔フィルムを作製し、前記評価を行った。結果を表1に示す。
表1より、実施例で得られたアルミナスラリーはハードケーキの生成が抑制されており、またアルミナの凝集も低減されているため、該アルミナスラリーを用いた被覆層形成用分散液は塗工性が良好であり、形成された被覆層は表面平滑性に優れる。また、得られた積層多孔フィルムの透気性も良好であった。
一方、比較例1のアルミナスラリーは前述のとおりハードケーキの生成を抑制することができなかった。また比較例2のアルミナスラリーはハードケーキの生成は見られなかったが、アルミナの凝集を抑制できないことから、得られた積層多孔フィルムは巻外にかけてザラつきが顕著であり、生産性にも劣るものであった。
本発明のアルミナスラリー及びその製造方法によれば、アルミナの凝集が少なく、上記ハードケーキの生成も抑制される。例えば非水電解液二次電池用セパレータ等に好適に用いられる積層多孔フィルムの製造において、当該スラリーを含有する分散液を用いて多孔性の被覆層を形成すると、塗布法により均一な層を安定して形成することができるので、該フィルムの生産性を安定化させることができる。
10 非水電解液二次電池用セパレータ
20 二次電池
21 正極板
22 負極板
24 正極リード体
25 負極リード体
26 ガスケット
27 正極蓋

Claims (7)

  1. アルミナを分散媒に分散させてなるアルミナスラリーであって、該アルミナは一次平均粒径が0.1μm以上、1.0μm以下であり、該スラリー中の該アルミナの含有量が30質量%以上、70質量%以下であり、該分散媒中の水の含有量が50質量%以上であり、該スラリーの温度25℃における粘度が10mPa・s以上、3000mPa・s以下であり、かつpHが6以上、8以下であるアルミナスラリー。
  2. 前記アルミナが、水酸化アルミニウムを焼成してなるものである、請求項1に記載のアルミナスラリー。
  3. 前記分散媒が、炭素数1〜4の低級アルコールを1質量%以上、20質量%以下の範囲で含有する、請求項1又は2に記載のアルミナスラリー。
  4. 下記工程(1)〜(3)を順に有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアルミナスラリーの製造方法。
    工程(1):一次平均粒径が0.1μm以上、1.0μm以下のアルミナと、水の含有量が50質量%以上である分散媒とを混合して、該アルミナの含有量が30質量%以上、70質量%以下の混合液1を得る工程
    工程(2):工程(1)で得られた混合液1を酸性処理した後、アルカリ金属水酸化物を添加してpHを6以上、8以下に調整し、混合液2を得る工程
    工程(3):工程(2)で得られた混合液2を分散処理して、アルミナスラリーを得る工程
  5. 前記アルミナが、水酸化アルミニウムを焼成してなるものである、請求項4に記載のアルミナスラリーの製造方法。
  6. 前記工程(2)の酸性処理に酸性陽イオン交換樹脂を用いる、請求項4又は5に記載のアルミナスラリーの製造方法。
  7. 前記工程(2)におけるアルカリ金属水酸化物の添加量が、混合液1に対し50質量ppm以上、1000質量ppm以下である、請求項4〜6のいずれか1項に記載のアルミナスラリーの製造方法。
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