JP6459694B2 - 積層多孔フィルム、非水電解液二次電池用セパレータ、及び非水電解液二次電池 - Google Patents

積層多孔フィルム、非水電解液二次電池用セパレータ、及び非水電解液二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、積層多孔フィルム、該積層多孔フィルムを用いた非水電解液二次電池用セパレータ及び非水電解液二次電池に関する。
多数の微細連通孔を有する高分子多孔体は、超純水の製造、薬液の精製、水処理等に使用する分離膜、衣類、衛生材料等に使用する防水透湿性フィルム、あるいは二次電池等に使用する電池用セパレータのほか、衛生材料、医療用材料等の各種分野で利用されている。
二次電池はOA、FA、家庭用電器、又は通信機器等のポータブル機器用電源として幅広く使用されている。特に、機器に装備した場合に容積効率がよく機器の小型化及び軽量化につながることから、リチウムイオン二次電池を使用したポータブル機器が増加している。
一方、大型の二次電池はロードレベリング、UPS、電気自動車をはじめ、エネルギー、環境問題に関連する多くの分野において研究開発が進められている。これらの中でも大容量、高出力、高電圧及び長期保存性に優れているという理由から、非水電解液二次電池の1種であるリチウムイオン二次電池が様々な用途に利用されている。
リチウムイオン二次電池の使用電圧は通常4.1Vから4.2Vを上限として設計されている。このような高電圧では水溶液は電気分解を起こすので電解液として使うことができない。そのため、高電圧でも耐えられる電解液として有機溶媒を使用した、いわゆる非水電解液が用いられている。非水電解液用溶媒としては、より多くのリチウムイオンを存在させることができる高誘電率有機溶媒が用いられ、該高誘電率有機溶媒としてプロピレンカーボネートやエチレンカーボネート等の有機炭酸エステル化合物が主に使用されている。溶媒中でリチウムイオン源となる支持電解質として、6フッ化リン酸リチウム等の反応性の高い電解質を溶媒中に溶解させて使用している。
リチウムイオン二次電池には内部短絡の防止の点から、正極と負極の間にセパレータが介在されている。該セパレータにはその役割から当然絶縁性が要求される。また、リチウムイオンの通路となる透気性と電解液の拡散、保持機能を付与するために微細孔構造である必要がある。これらの要求を満たすため、セパレータとしては多孔性フィルムが使用されている。
ところで、最近の電池の高容量化に伴い、電池の安全性に対する重要度が増してきている。電池用セパレータの安全性に寄与する特性として、シャットダウン特性(以下、「SD特性」とも称する)がある。このSD特性は、100〜150℃程度の高温状態になると微細孔が閉塞され、その結果、電池内部のイオン伝導が遮断されるため、その後の電池内部の温度上昇を防止できるという機能である。この時、多孔性フィルムの微細孔が閉塞される温度のうち最も低い温度をシャットダウン温度(以下、「SD温度」とも称する)という。電池用セパレータとして使用する場合は、このSD特性を具備していることが必要となる。
しかしながら、近年リチウムイオン二次電池の高エネルギー密度化、高容量化に伴い、通常のシャットダウン機能が十分に機能せず、電池内部の温度が従来のセパレータの材料として用いられるポリエチレンの融点である130℃前後を超え、更に上昇し、セパレータの熱収縮に伴う破膜によって、両極が短絡するおそれが生じるようになっている。そこで、安全性を確保するため、セパレータには現在のSD特性よりも更に高い耐熱性が要求されている。
前記要求に対し、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの少なくとも片面に、金属酸化物とバインダー樹脂とを含む多孔層を備えた多層多孔フィルム(例えば、特許文献1〜5)が提案されている。これらの特許文献に記載の多層多孔フィルムは、多孔フィルム上にαアルミナ等の無機微粒子を高充填させたコート層を設けることで、異常発熱を起こし、SD温度を越えて温度が上昇し続けた際においても、両極の短絡を防ぐことができ、安全性に優れるもの、とされている。
特開2004−227972号公報 特開2008−186721号公報 国際公開2008/149986号 特開2008−305783号公報 国際公開2012/023199号
しかし、バインダー樹脂として吸湿性を有する樹脂を用いる場合、バインダー樹脂の吸湿時の弾性率と乾燥時の弾性率とに大きな差が生じやすい。その結果、例えばポリオレフィン樹脂多孔フィルムの片面のみに無機粒子と該バインダー樹脂とを含む被覆層を設ける場合、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの一方の表面と他方の表面に非対称な厚みで被覆層を設ける場合に、得られる積層多孔フィルムにカールが生じ、製品の不具合が発生するという問題が生じる場合があった。
そこで、本発明は、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムに非対称に被覆層を有していても、またいかなる湿度雰囲気下で使用しても、カールが小さい耐カール性に優れており、かつ通気性、形状安定性、耐熱性、及び密着性にも優れた積層多孔フィルムを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を鑑みて鋭意検討を行った結果、下記の発明により解決できることを見出した。すなわち本発明は、下記の積層多孔フィルム、該積層多孔フィルムを用いた非水電解液二次電池用セパレータ及び非水電解液二次電池を提供するものである。
[1]ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの少なくとも片面に、無機粒子及びバインダー樹脂組成物を含む被覆層を有し、該バインダー樹脂組成物が温度23℃、湿度50%RHにおける平衡含水率が1%以上のバインダー樹脂と弾性率降下剤とからなり、該バインダー樹脂組成物の25℃における貯蔵弾性率が10MPa以上500MPa以下である積層多孔フィルム。
[2]上記[1]に記載の積層多孔フィルムを用いた非水電解液二次電池用セパレータ。
[3]上記[2]に記載の非水電解液二次電池用セパレータを備える非水電解液二次電池。
本発明によれば、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムに非対称に被覆層を有していても、またいかなる湿度雰囲気下で使用しても、カールが小さい耐カール性に優れ、かつ通気性、形状安定性、耐熱性、及び密着性にも優れた積層多孔フィルムを得ることができる。そして、該積層多孔フィルムは、その特性を活かし、非水電解液二次電池用セパレータとして特に好適に使用することができる。
本発明の積層多孔フィルムを収容している電池の概略的断面図である。 引き剥がし強度の測定方法を説明する図である。
以下、本発明の積層多孔フィルム、非水電解液二次電池用セパレータ及び非水電解液二次電池の実施形態について詳細に説明する。
なお、本発明において、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含むことを許容する意を包含し、特に該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分は組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100質量%含む)を占める意を包含するものである。
また、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
[積層多孔フィルム]
以下に、本発明の積層多孔フィルムを構成する各成分について説明する。
<ポリオレフィン樹脂多孔フィルム>
ポリオレフィン樹脂多孔フィルムを構成する樹脂であるポリオレフィン樹脂としては、エチレン、及びプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等のα−オレフィンを重合した単独重合体又は共重合体が挙げられる。また、これらの単独重合体又は共重合体を2種以上混合することもできる。これらの中でも、少なくともポリプロピレン樹脂、又はポリエチレン樹脂を含むことが好ましく、特に、本発明の積層多孔フィルムの機械的強度、耐熱性等を維持する観点から、少なくともポリプロピレン樹脂を含むことが好ましい。
(ポリプロピレン樹脂)
ポリプロピレン樹脂としては、ホモプロピレン(プロピレン単独重合体)、又はプロピレンとエチレン、及び1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセン等のα−オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体等が挙げられる。これらの中でも、本発明の積層多孔フィルムの機械的強度、耐熱性等を維持する観点から、ホモポリプロピレンがより好適に使用される。
ポリプロピレン樹脂の立体規則性を示すアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)は、80〜99%が好ましく、83〜98%がより好ましく、85〜97%が更に好ましい。アイソタクチックペンタッド分率が80%以上であるとフィルムの機械的強度が向上する。一方、アイソタクチックペンタッド分率の上限については現時点において工業的に得られる上限値で規定しているが、将来的に工業レベルで更に規則性の高い樹脂が開発された場合についてはこの限りではない。
ここで、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造の割合を意味する。このアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)は13C−NMRの測定結果に基づき算出され、メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al(Macromolecules8,687,(1975))に準拠する。
ポリプロピレン樹脂の分子量分布を示すパラメータであるMw/Mnは、2.0〜10.0が好ましく、2.0〜8.0がより好ましく、2.0〜6.0が更に好ましい。Mw/Mnが小さいほど分子量分布が狭いことを意味するが、Mw/Mnがこの範囲内であると押出成形性が向上すると共に、積層多孔フィルムの機械的強度も向上する。
ポリプロピレン樹脂のMw/MnはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定される。
ポリプロピレン樹脂の密度は、0.890〜0.970g/cmが好ましく、0.895〜0.970g/cmがより好ましく、0.900〜0.970g/cmが更に好ましい。密度が0.890g/cm以上であれば適度なSD特性を有することができる。一方、0.970g/cm以下であれば適度なSD特性を有することができる他、延伸性を維持することができる。
ポリプロピレン樹脂の密度は、密度勾配管法を用いてJIS K7112(1999年)に準じて測定される。
ポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、0.5〜15g/10分が好ましく、1.0〜10g/10分がより好ましく、1.5〜8.0g/10分が更に好ましく、2.0〜6.0g/10分が特に好ましい。MFRを0.5g/10分以上とすることで、成形加工時の樹脂の溶融粘度が高く、十分な生産性を確保することができる。また、15g/10分以下とすることで、得られる積層多孔フィルムの機械的強度を十分に保持することができる。
ポリプロピレン樹脂のMFRはJIS K7210(1999年)に従い、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
ポリプロピレン樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、懸濁重合法、溶融重合法、塊状重合法、気相重合法、またラジカル開始剤を用いた塊状重合法等が挙げられる。
ポリプロピレン樹脂としては、例えば、商品名「ノバテックPP」、「WINTEC」(以上、日本ポリプロ株式会社製)、「ノティオ」、「タフマーXR」(以上、三井化学株式会社製)、「ゼラス」、「サーモラン」(以上、三菱化学株式会社製)、「住友ノーブレン」、「タフセレン」(以上、住友化学株式会社製)、「プライムポリプロ」、「プライムTPO」(以上、株式会社プライムポリマー製)、「Adflex」、「Adsyl」、「HMS−PP(PF814)」(以上、サンアロマー株式会社製)、「バーシファイ」、「インスパイア」(以上、ダウケミカル株式会社製)等の、市販されている商品を使用できる。
(ポリエチレン樹脂)
ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレンを主成分とする共重合体等が挙げられる。
エチレンを主成分とする共重合体としては、エチレンと、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等の炭素数3〜10のα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸エステル;共役ジエン、非共役ジエン等の不飽和化合物の中から選ばれる1種以上のコモノマーとの共重合体又は多元共重合体あるいはその混合組成物が挙げられる。エチレン重合体のエチレン単位の含有量は通常50質量%を超えるものである。
これらのポリエチレン樹脂の中では、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンの中から選ばれる1種以上のポリエチレン樹脂が好ましく、高密度ポリエチレンがより好ましい。
ポリエチレン樹脂の密度は、0.910〜0.970g/cmが好ましく、0.930〜0.970g/cmがより好ましく、0.940〜0.970g/cmが更に好ましい。密度が0.910g/cm以上であれば適度なSD特性を有することができる。一方、0.970g/cm以下であれば適度なSD特性を有することができる他、延伸性が維持される。
ポリエチレン樹脂の密度は、密度勾配管法を用いてJIS K7112(1999年)に準じて測定される。
前記ポリエチレン樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、0.03〜30g/10分が好ましく、0.3〜10g/10分がより好ましい。MFRが0.03g/10分以上であれば成形加工時の樹脂の溶融粘度が十分に低いため生産性に優れる。一方、30g/10分以下であれば、十分な機械的強度を得ることができる。
ポリエチレン樹脂のMFRはJIS K7210(1999年)に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
ポリエチレン樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えば、チーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた重合方法が挙げられる。ポリエチレン樹脂の重合方法として、一段重合、二段重合、もしくはそれ以上の多段重合等があり、いずれの方法のポリエチレン樹脂も使用可能である。
(他の成分)
ポリオレフィン樹脂多孔フィルムは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、一般に樹脂組成物に配合される添加剤を適宜含有することができる。添加剤としては、成形加工性、生産性及びポリオレフィン樹脂多孔フィルムの諸物性を改良、調整する目的で添加される、耳等のトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂;シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子;カーボンブラック等の顔料;難燃剤;耐候性安定剤;耐熱安定剤;帯電防止剤;溶融粘度改良剤;架橋剤;滑剤;核剤;可塑剤;老化防止剤;酸化防止剤;光安定剤;紫外線吸収剤;中和剤;防曇剤;アンチブロッキング剤;スリップ剤;着色剤等の添加剤が挙げられる。
また開孔を促進するためや、成形加工性を付与するために、本発明の効果を阻害しない範囲で、各種樹脂や、ワックス等の低分子量化合物を添加してもよい。
(ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの層構成)
ポリオレフィン樹脂多孔フィルムは、単層でも積層でもよく、特に制限されるものではない。例えば、ポリオレフィン樹脂を含む層(以下「A層」とも称する)の単層、該A層の機能を妨げない範囲で、該A層と他の層(以下「B層」とも称する)との積層とすることができる。ここで、A層とB層とは、これらの層を構成する樹脂が互いに異なるポリオレフィン樹脂を含んでいてもよい。
本発明で採用しうる層構成の具体例としては、A層、B層を積層した2層構造、A層、B層、A層、若しくはB層、A層、B層を順に積層した3層構造等が例示できる。また、他の機能を有する層と組み合わせて3種3層の様な形態も可能である。この場合、他の機能を有する層との積層順序は特に問わない。更に層数としては4層、5層、6層、7層と必要に応じて増やしてもよい。
なお、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの物性は、層構成や積層比、各層の組成、製造方法によって自由に調整できる。
(ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの製造方法)
ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの製造方法は、従来公知の多孔性フィルムの製造方法を好適に用いることができ、特に限定されるものではないが、通常、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムを形成するための前駆体である無孔膜状物を作製し、これを多孔化することによってポリオレフィン樹脂多孔フィルムを形成する方法が好ましく採用される。なお、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムは、かかる製造方法により製造される多孔フィルムのみに限定されるものではない。
前駆体である無孔膜状物の作製方法は、特に限定されず公知の方法を用いてよいが、例えば押出機を用いて、上記のポリオレフィン樹脂、必要に応じて添加される添加剤、及び後述するβ晶核剤等を含むポリオレフィン樹脂組成物を溶融し、Tダイから押出し、キャストロールで冷却固化するという方法が挙げられる。またチューブラー法により製造した膜状物を切り開いて平面状とする方法も適用できる。
無孔膜状物の多孔化方法としては、特に限定されることなく、湿式による一軸以上の延伸多孔化、乾式による一軸以上の延伸多孔化等、公知の方法を用いればよい。延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法等の手法があり、これらを単独あるいは2つ以上組み合わせて一軸以上の延伸を行う。中でも、多孔構造制御の観点から逐次二軸延伸が好ましい。
また必要に応じて、延伸の前後にポリオレフィン樹脂組成物に含まれている弾性率降下剤を溶剤によって抽出、乾燥させる方法も適用される。さらに、寸法安定性の改良を目的として、延伸の後に熱処理や弛緩処理を施すこともできる。
また、後述する被覆層との接着性を向上させる目的で、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの表面に、コロナ処理、プラズマ処理、化学的酸化処理等の表面処理を施すことが好ましい。
ポリオレフィン樹脂多孔フィルムにポリプロピレン樹脂を用いる場合、無孔膜状物にいわゆるβ晶を生成させることが好ましい。無孔膜状物中にβ晶が生成していれば、フィラー等の添加剤を使用しない場合においても、延伸を施すことで微細孔が容易に形成されるため、優れた透気特性を有するポリオレフィン樹脂多孔フィルムを得ることができる。
無孔膜状物中にβ晶を生成させる方法としては、ポリプロピレン樹脂のα晶の生成を促進させる物質を添加しない方法、特許第3739481号公報に記載されているように過酸化ラジカルを発生させる処理を施したポリプロピレンを添加する方法、及びポリプロピレン樹脂を含む樹脂組成物にβ晶核剤を添加する方法等が挙げられる。
(β晶核剤)
β晶核剤としては以下に示すものが挙げられるが、ポリプロピレン樹脂のβ晶の生成及び成長を増加させるものであれば特に限定される訳ではなく、また2種類以上を混合して用いてもよい。
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウム等に代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウム等に代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルー等に代表されるフタロシアニン顔料;有機二塩基酸である成分Aと周期律表第2族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分Bとからなる二成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物等が挙げられる。そのほか核剤の具体的な種類については、特開2003−306585号公報、特開平08−144122号公報、特開平09−194650号公報に記載されている。
β晶核剤の市販品としては、新日本理化株式会社製β晶核剤「エヌジェスターNU−100」、β晶核剤の添加されたポリプロピレン樹脂の具体例としては、Aristech社製ポリプロピレン「Bepol B−022SP」、Borealis社製ポリプロピレン「Beta(β)−PP BE60−7032」、Mayzo社製ポリプロピレン「BNX BETAPP−LN」等が挙げられる。
ポリプロピレン樹脂に添加するβ晶核剤の含有量は、β晶核剤の種類又はポリプロピレン樹脂の組成等により適宜調整することができ、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムを構成するポリプロピレン樹脂100質量部に対し、0.0001〜5質量部が好ましく、0.001〜3質量部がより好ましく、0.01〜1質量部が更に好ましく、0.1〜0.8質量部が特に好ましい。
β晶核剤の含有量がポリプロピレン樹脂100質量部に対して0.0001質量部以上であれば、製造時において十分にポリプロピレン樹脂のβ晶を生成、成長させることができ、非水電解液二次電池用セパレータとして用いる際にも十分なβ晶活性が確保でき、所望の透気性能が得られる。また、β晶核剤の含有量がポリプロピレン樹脂100質量部に対して5質量部以下であれば、製造コストと得られる効果とのバランスに優れるほか、ポリオレフィン樹脂多孔フィルム表面へのβ晶核剤のブリード等がなく好ましい。
また、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムを、前述のとおりA層、B層を積層した2層構造、A層、B層、A層等として順に積層した3層構造、又は4層以上の構造とする場合、その製造方法は、多孔化と積層の順序等によって以下の3つに大別される。
(i)各層を多孔化したのち、多孔化された各層をラミネートしたり接着剤等で接着したりして積層する方法。
(ii)各層を積層して積層無孔膜状物を作製し、ついで当該無孔膜状物を多孔化する方法。
(iii)各層のうちいずれか1層を多孔化したのち、もう1層の無孔膜状物と積層し、多孔化する方法。
本発明においては、その工程の簡略さ、生産性の観点から(ii)の方法を用いることが好ましく、なかでも2層の接着性を確保するために、共押出で積層無孔膜状物を作製した後、多孔化する方法が特に好ましい。
ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの厚みは5〜100μmが好ましく、より好ましくは8〜50μm、更に好ましくは10〜30μmである。ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの厚みが5μm以上であれば、本発明の積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして用いる場合に、実質的に必要な電気絶縁性を得ることができ、例えば電極の突起部分に大きな力がかかった場合でも、セパレータを突き破って短絡しにくく安全性に優れる。また、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの厚みが100μm以下であれば、本発明の積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして用いる場合に電気抵抗を小さくすることができるので、電池の性能を十分に確保することができる。
<被覆層>
本発明の積層多孔フィルムは、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの少なくとも片面に、し、無機粒子及びバインダー樹脂組成物を含む被覆層を有する。被覆層は、片面だけに設けてもよいし、また必要に応じて両面に設けてもよく、用途に応じて適宜選択すればよい。
(無機粒子)
無機粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどの金属炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウムなどの金属硫酸塩;フッ化カルシウム、フッ化マグネシウムなどの金属フッ化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物;アルミナ、カルシア、マグネシア、チタニア、酸化亜鉛、シリカなどの金属酸化物;タルク、クレー、マイカなどの粘土鉱物、更にはチタン酸バリウム等の材料により構成される粒子が挙げられ、これらの材料により構成される粒子を単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、無機粒子は、これらの材料を単独で含んでいてもよいし、複数種の材料を含むものであってもよい。
これらの中でも、電池に組み込んだ際に化学的に不活性であるという観点で、硫酸バリウム粒子又はアルミナ粒子が好ましく、特にアルミナ粒子であることが好ましい。
アルミナとしては、αアルミナ、γアルミナ、θアルミナ、κアルミナ、擬ベーマイト等が挙げられるが、中でも非水電解液二次電池用セパレータとして用いた場合、電池に組み込んだ際に化学的に不活性であるという観点でαアルミナが好ましい。
無機粒子の平均粒径の下限としては、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.2μm以上である。一方、上限として好ましくは3.0μm以下、より好ましくは1.5μm以下である。平均粒径を0.01μm以上とすることで、本発明の積層多孔フィルムが十分な耐熱性を発現することができる。また、平均粒径を3.0μm以下とすることで、被覆層、該被覆層を形成する無機粒子及びバインダー樹脂組成物を含む被覆層形成用塗工液中の無機粒子の分散性が向上する。
無機粒子の平均粒径は、例えば画像解析装置を用いる方法、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いる方法などによって測定、算出される値である。画像解析装置を用いる場合の平均粒径は、任意の方向(方向Zとする)から当該無機粒子を投影した場合の二次元的な投影像の短径と長径を平均した値と、前記方向Zと直交する任意の方向(方向Xとする)から当該無機粒子を投影した場合の二次元的な投影像の短径と長径を平均した値とを、平均した値として算出される。算出に用いる無機粒子の個数は50個以上であればよい。
無機粒子の比表面積は、5m/g以上、15m/g未満であることが好ましい。比表面積が5m/g以上であれば、本発明の積層多孔フィルムを非水電解液二次電池にセパレータとして組み込む際に電解液の浸透が速くなり、生産性が良好となる。また、比表面積が15m/g未満であれば、本発明の積層多孔フィルムを非水電解液二次電池にセパレータとして組み込む際に電解液成分の吸着を抑えられる。
無機粒子の比表面積は定容量式ガス吸着法により測定される値である。
被覆層において、無機粒子と、後述するバインダー樹脂組成物との総量に対する無機粒子の含有率は、80質量%以上、99質量%以下が好ましく、92質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましく、98質量%以上が特に好ましい。無機顔料の含有量がこの範囲内であることにより、被覆層が優れた透気性を維持することができ、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムと被覆層との密着性を維持しつつ、積層多孔フィルムとした場合の耐熱性を向上させることができる。
(バインダー樹脂組成物)
バインダー樹脂組成物は、温度23℃、湿度50%RHにおける平衡含水率が1%以上のバインダー樹脂と弾性率降下剤とからなり、25℃における貯蔵弾性率が10MPa以上500MPa以下の組成物である。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、温度23℃、湿度50%RHにおける平衡含水率が1%以上であることを要する。平衡含水率が1%以上であることにより、無機粒子とバインダー樹脂組成物とを含む被覆層形成用塗工液において無機粒子の優れた分散性が得られるので、結果として優れた耐熱性、密着性、耐カール性が得られ、また電気化学的安定性が得られる。これと同様の観点から、バインダー樹脂の平衡含水率は1.5%以上が好ましく、2%以上がより好ましい。一方、バインダー樹脂の平衡含水率の上限は特に制限されないが、通常30%以下であり、20%以下がより好ましく、15%以下が更に好ましい。
バインダー樹脂の平衡含水率は、JIS K7251(2002年)に基づいて測定される。
バインダー樹脂は、無機粒子とポリオレフィン樹脂多孔フィルムとの密着性を良好なものとし、電気化学的に安定で、かつ積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合に有機電解液に対して安定な樹脂であることが好ましい。このようなバインダー樹脂の具体例としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸-2-ヒドロキシエチル、ポリメタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、ポリアクリルアミド等の(メタ)アクリル酸誘導体;ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール誘導体;ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセトアミド等のポリビニルアミド誘導体;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル誘導体;脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、芳香族脂肪族ポリアミド等のポリアミド樹脂;及びこれらの共重合体が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、有機電解液に対する安定性が高いことからセルロース誘導体、ポリビニルアルコール誘導体が好ましく、特にカルボキシメチルセルロース、又はポリビニルアルコールが好ましい。
(弾性率降下剤)
バインダー樹脂組成物は、弾性率降下剤を含むことを要する。弾性率降下剤を含むことにより、バインダー樹脂の有する接着性、耐熱性、電気化学的安定性を損なうことなく、バインダー樹脂組成物の弾性率を低下させることができ、その結果、本発明の積層多孔フィルムは被覆層を非対称に被覆層を有していても、またいかなる湿度雰囲気下においてもカールの小さい耐カール性に優れるフィルムとなる。
弾性率降下剤は、バインダー樹脂との関係で、バインダー樹脂組成物の25℃における貯蔵弾性率の範囲を後述する特定範囲とすることが可能であり、電気化学的安定性を損なわない化合物であれば特に限定されるものではない。具体的には、ポリプロピレングリコールのポリエーテル誘導体等の炭素数3以上のアルキレン基を有するポリアルキレングリコールのポリエーテル誘導体;ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホン、スルホラン等の含硫黄有機物;炭酸エチレン、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン等の環状エステル化合物;N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル尿素等のアミド化合物;アジポニトリル、スクシノニトリル、オキシジプロピオニトリル、またエチレングリコールビス(プロピオニトリル)エーテル等のシアノエチル化エチレングリコール等のニトリル化合物が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、炭素数3以上のアルキレン基を有するポリアルキレングリコールのポリエーテル誘導体、含硫黄有機物、アミド化合物、及びニトリル化合物が好ましく、更に、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチル尿素、及びシアノエチル化エチレングリコールが、バインダー樹脂との相溶性が良好であることから好ましい。
バインダー樹脂100質量部に対する弾性率降下剤の含有量は、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることが更に好ましく、20質量部以上であることが特に好ましい。また、100質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であることがより好ましく、80質量部以下であることが更に好ましく、70質量部以下であることが特に好ましい。バインダー樹脂100質量部に対する弾性率降下剤の含有量が1質量部以上であれば、バインダー樹脂の有する耐熱性を損なうことなく、優れた耐カール性が得られる。一方、バインダー樹脂100質量部に対する弾性率降下剤の含有量が100質量部以下であれば、バインダー樹脂の有する接着性や電気化学的安定性の低下を抑制することができる。
(バインダー樹脂組成物の25℃の貯蔵弾性率)
バインダー樹脂組成物の25℃の貯蔵弾性率は、10MPa以上500MPa以下であることを要する。バインダー樹脂組成物の25℃における貯蔵弾性率が10MPa以上であることにより、優れた耐熱性が得られる。一方、バインダー樹脂組成物の25℃における貯蔵弾性率が500MPa以下であることにより、常温のいかなる湿度雰囲気下においても、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの弾性率がバインダー樹脂組成物の弾性率を上回るため、優れた耐カール性が得られる。これと同様の観点から、バインダー樹脂組成物の25℃における貯蔵弾性率は、20MPa以上であることがより好ましく、30MPa以上であることが更に好ましい。また、400MPa以下であることがより好ましく、200MPa以下であることが更に好ましい。
バインダー樹脂組成物の25℃における貯蔵弾性率は、JIS K7244−4(1999年)に基づき、後述の実施例に記載の方法で測定される。
(酸成分)
被覆層形成用塗工液を塗布し、乾燥する塗布乾燥法により被覆層を形成する場合、該塗工液は、酸成分を含むことが好ましい。被覆層形成用塗工液は、酸成分を含むことにより、該塗工液中の無機粒子の凝集を抑制し、長期保存時の粘度安定性が向上するため、均一な被覆層を形成することができ、優れた耐熱性、耐カール性が得られる。
酸成分は、被覆層中に酸そのものとして残存していてもよいし、被覆層中のアルカリ性不純物と反応して形成した塩として残存していてもよい。
酸成分は、25℃希薄水溶液下における第一酸解離定数(pKa1)が5以下であり、かつ第二酸解離定数(pKa2)が存在しないか又は7以上であることが好ましい。このような特性を有する酸成分の例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸等の低級1級カルボン酸;硝酸、亜硝酸等のニトロ酸;過塩素酸、次亜塩素酸等のハロゲンオキソ酸;塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸等のハロゲン化イオン;燐酸、サリチル酸、グリコール酸、乳酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸等、が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、少量添加でpHを下げられる点、入手の容易性、酸の安定性が高いという観点で、蟻酸、酢酸、硝酸、塩酸、燐酸が好ましい。酸成分が上述の条件を満たすことで、無機粒子の凝集を抑え、被覆層形成用塗工液の長期保存時の粘度安定性が向上する。
被覆層形成用塗工液中の酸成分の含有量は、10質量ppm以上、10000質量ppm以下であることが好ましい。また、酸成分の含有量は30質量ppm以上、9000質量ppm以下がより好ましく、50質量ppm以上、8000質量ppm以下が更に好ましい。
酸成分の含有量が10質量ppm以上であれば、均一性に優れた被覆層を形成できる。また、酸成分の含有量が10000質量ppm以下であれば、被覆層を有する積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータに用いた際にも、非水電解液二次電池の性能に悪影響を与えない。
本発明におけるカール低減のメカニズム、すなわち非対称に被覆層を有していても、またいかなる湿度雰囲気下で使用しても、カールが小さい耐カール性が発現するメカニズムについてより具体的に説明する。
無機粒子と平衡含水率が1%以上のバインダー樹脂を用いて、ポリオレフィン樹脂多孔フィルム上に被覆層を形成して積層多孔フィルムを作製する場合、例えば常温かつ高湿度環境下ではバインダー樹脂が吸湿膨張し、その弾性率が大きく低下する。すると、積層多孔フィルムにおいてはポリオレフィン樹脂多孔フィルムの弾性率が支配的となり、バインダー樹脂は膨張した状態で配向緩和を生じる。
その後、積層多孔フィルムを常温のまま乾燥環境下に置くと、バインダー樹脂が乾燥収縮しながら弾性率が増加し、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの弾性率と拮抗するようになる。そのため、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの片面に被覆層を形成する場合や、両面に厚みの異なる被覆層を形成する場合など、被覆層を非対称に形成すると、積層多孔フィルムにカールが生じ、ハンドリング性が損なわれることになる。
そこで本発明者は、バインダー樹脂に弾性率降下剤を含有し、常温で特定範囲の貯蔵弾性率を有するバインダー樹脂組成物を用いることによって、常温のいかなる湿度雰囲気下においても、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの弾性率がバインダー樹脂組成物の弾性率を上回るような弾性率設計とし、バインダー樹脂の有する接着性や耐熱性、電気化学的安定性を損なうことなく積層多孔フィルムのカールを小さくし得る、優れた耐カール性が得られることに想到したのである。
(被覆層の製造方法)
被覆層の製造方法としては、上記被覆層形成用塗工液をポリオレフィン樹脂多孔フィルムの少なくとも片面に塗布し、乾燥する塗布乾燥法が、連続生産性の観点から、塗布乾燥法が好ましい。
被覆層を塗布乾燥法で製造する場合において、被覆層形成用塗工液は、無機粒子を適度に均一かつ安定に分散させ、またバインダー樹脂が適度に均一かつ安定に溶解または分散させる観点から、溶媒を含むことが好ましい。
このような溶媒としては、例えば、水、アセトニトリル、炭素数1〜4のアルコール、グリコール類、グリセリン、乳酸エステル等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。炭素数1〜4のアルコールとしては、炭素数1〜4の1価のアルコールが好ましく、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコールから選ばれる1種以上がより好ましい。
コスト面、環境負荷の観点から、溶媒としては、水、又は水と炭素数1〜4のアルコールとの混合溶媒が好ましく、水と炭素数1〜4の1価のアルコールとの混合溶媒がより好ましく、水とイソプロピルアルコールとの混合溶媒が更に好ましい。また、本発明において溶媒として水を用いる場合、溶媒中の水の含有量は、樹脂組成物の粘度安定性を向上させる観点から、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
被覆層形成用塗工液は、例えば、無機粒子とバインダー樹脂とを撹拌する、無機粒子とバインダー樹脂と溶媒とを撹拌する、あるいは無機粒子と溶媒とを撹拌した後にバインダー樹脂を加えて撹拌することで得られる。撹拌は、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散、撹拌羽根等による機械撹拌法等により行えばよい。この場合、被覆層形成用塗工液中の無機粒子、バインダー樹脂の分散安定性の向上により、該塗工液の分散安定性及び長期保存時の粘度安定性を向上させ、また被覆層形成に適した粘性を最適化するために、分散助剤、安定剤、増粘剤等をさらに配合してもよい。
ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの表面に、被覆層形成用塗工液を塗布する塗布工程は、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムを製造した後に行ってもよいし、また該フィルムの製造工程の途中の段階で、例えばポリオレフィン樹脂フィルムの押出成形の後で、かつ延伸工程の前に行ってもよい。
塗布工程における塗布方法は、必要とする被覆層の厚み、塗布面積を実現できる方法により行えば、特に限定されない。このような塗布方法としては、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法等が挙げられる。また、被覆層形成用塗工液は、その用途に照らし、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの片面だけに塗布されてもよいし、両面に塗布されてもよい。
被覆層形成用塗工液を塗布した後の乾燥は、乾燥炉等を用いて行うことができる。乾燥条件は、被覆層の厚みにより多少変動するので、該厚みに応じて適宜選定すればよく、例えば、好ましくは50〜80℃、より好ましくは50〜70℃の温度条件で、好ましくは10秒〜30分、より好ましくは20秒〜5分である。
また、被覆層形成用塗工液を塗布した後、該塗工液が溶媒を含む場合は、溶媒を除去する工程を行うことが好ましい。これにより、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの少なくとも片面に、無機粒子及びバインダー樹脂組成物を含む被覆層を形成することができる。溶媒を除去する方法としては、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムに悪影響を及ぼさない方法であれば、特に限定することなく採用することができ、例えば、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムを固定しながらその融点以下の温度にて乾燥する方法、低温で減圧乾燥する方法、バインダー樹脂に対する貧溶媒に浸漬してバインダー樹脂を凝固させると同時に溶媒を抽出する方法等が挙げられる。
<積層多孔フィルムの形状及び物性>
本発明の積層多孔フィルムの総厚みは5〜100μmが好ましく、8〜50μmがより好ましく、10〜30μmが更に好ましい。総厚みが5μm以上であれば、本発明の積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合、実質的に必要な電気絶縁性を得ることができ、例えば電極の突起部分に大きな力がかかった場合でも、非水電解液二次電池用セパレータを突き破って短絡しにくく安全性に優れる。また、厚みが100μm以下であれば、積層多孔フィルムの電気抵抗を小さくすることができるので、電池の性能を十分に確保することができる。
また、被覆層の厚みは、耐熱性の観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上、特に好ましくは3μm以上である。一方で上限としては、連通性の観点から、好ましくは90μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下、特に好ましくは10μm以下である。なお、被覆層を2層以上有する場合には、上記被覆層の厚みとは、1層あたりの厚みを意味する。
本発明の積層多孔フィルムにおいて、空孔率は30%以上が好ましく、35%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましい。空孔率が30%以上であれば、連通性を確保し透気特性に優れた積層多孔フィルムとすることができる。
一方、上限については70%以下が好ましく、65%以下がより好ましく、60%以下が更に好ましい。空孔率が70%以下であれば、積層多孔フィルムの強度を十分に保持することができ、ハンドリングの観点からも好ましい。
空孔率は、多孔フィルムの実質量Wを測定し、該フィルムを構成する材料の含有比率、密度、及び厚みから空孔率0%の場合の質量Wを計算し、それらの値から下記式に基づき算出した値である。
空孔率(%)={(W−W)/W}×100
本発明の積層多孔フィルムの透気度は1000秒/100mL以下が好ましく、10〜800秒/100mLがより好ましく、50〜500秒/100mLが更に好ましい。透気度が1000秒/100mL以下であれば、積層多孔フィルムに連通性があることを示し、優れた透気性能を示すことができるため好ましい。
透気度はフィルム厚み方向の空気の通り抜け易さを表し、具体的には100mLの空気が該フィルムを通過するのに必要な時間で表現されている。そのため、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方がフィルムの厚み方向の連通性が良いことを意味し、その数値が大きい方がフィルム厚み方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とはフィルム厚み方向の孔のつながり度合いである。本発明の積層多孔フィルムの透気度が低ければ様々な用途に使用することができる。例えば非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合、透気度が低いということはリチウムイオンの移動が容易であることを意味し、電池性能に優れるため好ましい。
積層多孔フィルムの透気度は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
本発明の積層多孔フィルムは、電池用セパレータ、とりわけ非水電解液二次電池用セパレータとして使用する際に、SD特性を有することが好ましい。具体的には、135℃で5秒間加熱後の透気度が10000秒/100mL以上であることが好ましく、より好ましくは25000秒/100mL以上、更に好ましくは50000秒/100mL以上である。135℃で5秒間加熱後の透気度を10,000秒/100mL以上とすることで、異常発熱時において空孔が速やかに閉塞し、電流が遮断されるため、電池の破裂等のトラブルを回避することができる。
本発明の積層多孔フィルムの130℃における収縮率は、縦方向と横方向のいずれにおいても3%未満が好ましく、2.5%未満がより好ましく、2%未満であることが更に好ましい。130℃における収縮率が3%未満であれば、SD温度を超えて異常発熱した際においても、寸法安定性がよく、耐熱性を有することを示唆しており、破膜を防ぎ、内部短絡温度を向上することができる。下限としては特に限定しないが、0%以上が好ましい。
積層多孔フィルムの収縮率は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
本発明の積層多孔フィルムは、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムと被覆層との密着性に優れる。密着性は後述の実施例に記載の方法で測定される引き剥がし強度で評価することができ、引き剥がし強度が大きいほど密着性に優れたフィルムとなる。
引き剥がし強度は、フィルムの搬送トラブルや外観不良を軽減できるという観点から、3N/18mm以上であることが好ましく、4N/18mm以上であることがより好ましい。上限については、特に制限は無く20N/18mm以下であることが理想であるが、現実的には10N/18mm以下であることが好ましい。
(非水電解液二次電池)
本発明の非水電解液二次電池は、本発明の積層多孔フィルムを用いた非水電解液二次電池用セパレータを備えるものである。本発明の積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして収容している非水電解液二次電池について、図1を参照して具体的に説明する。
図1に示される非水電解液二次電池20において、正極板21、負極板22の両極は電池用セパレータ10を介して互いに重なるようにして渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体とする。
正極板21、電池用セパレータ10、及び負極板22を捲回体とする捲回工程について詳しく説明する。電池用セパレータ10の片端をピンのスリット部の間に通し、ピンを少しだけ回転させて電池用セパレータの一端をピンに巻きつけておく。この時、ピンの表面と電池用セパレータの被覆層とが接触している。その後、電池用セパレータ10を間に挟むようにして正極板21と負極板22とを配置し、捲回機によってピンを回転させて、正負極板21、22と電池用セパレータ10を捲回する。捲回後、ピンは捲回物から引き抜かれる。
正極板21、電池用セパレータ10及び負極板22を一体的に巻き付けた捲回体を有底円筒状の電池ケース内に収容し、正極及び負極のリード体24、25と溶接する。ついで、電解質を電池缶内に注入し、電池用セパレータ10等に十分に電解質が浸透した後、電池缶の開口周縁にガスケット26を介して正極蓋27を封口し、予備充電、エージングを行い、筒型の非水電解液二次電池20を作製する。
電解液としては、リチウム塩を電解液とし、これを有機溶媒に溶解した電解液が用いられる。有機溶媒としては特に限定されるものではないが、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート、プロピオン酸メチルもしくは酢酸ブチル等のエステル類、アセトニトリル等のニトリル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジメトキシメタン、ジメトキシプロパン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランもしくは4−メチル−1,3−ジオキソラン等のエーテル類、又はスルホラン等が挙げられ、これらを単独で又は二種類以上を混合して用いることができる。中でも、エチレンカーボネート1質量部に対してメチルエチルカーボネートを2質量部混合した溶媒中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.0mol/Lの割合で溶解した電解質が好ましい。
負極としてはアルカリ金属又はアルカリ金属を含む化合物をステンレス鋼製網等の集電材料と一体化させたものが用いられる。アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム又はカリウム等が挙げられる。アルカリ金属を含む化合物としては、例えばアルカリ金属とアルミニウム、鉛、インジウム、カリウム、カドミウム、スズもしくはマグネシウム等との合金、更にはアルカリ金属と炭素材料との化合物、低電位のアルカリ金属と金属酸化物もしくは硫化物との化合物等が挙げられる。負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としてはリチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭等を用いることができる。
正極としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、二酸化マンガン、五酸化バナジウムもしくはクロム酸化物等の金属酸化物、二硫化モリブデン等の金属硫化物等が活物質として用いられ、これらの正極活物質に導電助剤やポリテトラフルオロエチレン等の結着剤等を適宜添加した合剤を、ステンレス鋼製網等の集電材料を芯材として成形体に仕上げたものが用いられる。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の積層多孔フィルムについて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、積層多孔フィルムの長手方向を「縦方向」、長手方向に対して垂直方向を「横方向」と称する。
<測定方法及び評価方法>
(1)バインダー樹脂組成物の25℃における貯蔵弾性率の測定
各実施例及び比較例に記載の割合でバインダー樹脂と弾性率降下剤とを混合し、溶媒に溶解させたバインダー樹脂組成物を平滑なガラス板上に流延し、乾燥させることで、バインダー樹脂組成物のフィルムを得た。該フィルムの動的粘弾性を、JIS K7244−4(1999年)に基づき以下の条件で測定した。得られた動的粘弾性データより、25℃における貯蔵弾性率を求めた。
振動周波数:1Hz
温度 :−100〜230℃
昇温速度 :3℃/分
(2)積層多孔フィルムの総厚みの測定
積層多孔フィルムの総厚みは、1/1000mmのダイアルゲージにて、積層多孔フィルムの面内を不特定に5ヶ所測定し、その平均値として算出した。
(3)被覆層の厚みの測定
被覆層の厚みは、被覆層を形成した後の積層多孔フィルムの総厚みと、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの厚みとの差として算出した。
(4)透気度(ガーレ値)の測定
透気度は、JIS P8117(2009年)に準拠して測定した。
(5)耐カール性の評価
各実施例及び比較例で作製した積層多孔フィルムを、縦方向に25mm、横方向に150mmの短冊状に切り出してサンプルとし、温度25℃、湿度99%RHに設定した恒温恒湿槽で15分間静置した。次いで、横方向が鉛直になるよう短冊状に垂らせた状態で、大気圧から5mmHgの圧力まで減圧し、5分間真空乾燥を行ない、乾燥空気を封入し、常圧に戻した後、速やかにアルミニウム製の板に水平に静置し、端面の反りあがり高さの平均値を測定した。耐カール性は、該平均値の結果をもとに、以下の評価基準にしたがって評価した。
○:フィルムの端面の反りあがり高さが10mm未満
×:フィルムの端面の反りあがり高さが10mm以上
(6)130℃における収縮率の測定
まず、実施例及び比較例で作製した積層多孔フィルムを長さ150mm×幅10mmのサイズに切り出し、長さ方向に100mmの間隔で2点印を入れてサンプルを作製した。次いで、130℃に設定したオーブン(タバイエスペック株式会社製「タバイギヤオーブンGPH200」)に該サンプルを入れ、1時間静置した。該サンプルをオーブンから取り出して冷却した後、2点印間の長さ(mm)を測定し、以下の式にて収縮率を算出した。
収縮率(%)={(100−加熱後の長さ)/100}×100
以上の測定は、積層多孔フィルムの縦方向、横方向についてそれぞれ行った。
(7)耐熱性の評価
耐熱性は、上記「(5)130℃における収縮率の測定」の結果をもとに、以下の評価基準において評価した。
○:上記(5)で測定した130℃、1時間における収縮率が、縦方向と横方向のいずれも10%未満の場合。
×:上記(5)で測定した130℃、1時間における収縮率が、縦方向と横方向のいずれかが10%以上の場合。
(8)引き剥がし強度の測定
各実施例及び比較例で作製した積層多孔フィルムについて、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムと被覆層との引き剥がし強度をJIS Z0237(2009年)に準拠して、以下の手法で測定した。
まず、積層多孔フィルムを縦方向に150mm、横方向に50mmの短冊状に切り出してサンプルとし、該サンプルの縦方向にテープ42(図2)として、セロハンテープ(ニチバン株式会社製、JIS Z1522(2009年)、幅:18mm)を貼付け、該セロハンテープの粘着面とは反対側の面同士が重なるように180°に折り返し、該サンプルから25mm剥がした。
次に、図2に示される引張試験機(株式会社インテスコ製、インテスコIM−20ST)の下部チャックに剥がした部分のサンプルの片端を固定し、上部チャックに該セロハンテープを固定し、試験速度300mm/分にて引き剥がし強度を測定した。測定後、最初の25mmの長さの測定値は無視し、試験片から引き剥がされた50mmの長さの引き剥がし強度測定値を平均し、引き剥がし強度とした。
(9)密着性の評価
密着性は、上記「(7)引き剥がし強度の測定」の結果をもとに、以下の評価基準にしたがって評価した。
○:引き剥がし強度が3N/18mm以上
×:引き剥がし強度が3N/18mm未満
<実施例及び比較例>
(ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの作製)
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製「ノバテックPP FY6HA」、密度:0.90g/cm、MFR:2.4g/10分)と、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを準備した。このポリプロピレン樹脂100質量部に対して、β晶核剤を0.2質量部の割合でブレンドし、東芝機械株式会社製の同方向二軸押出機(口径:40mmφ、L/D:32)に投入し、設定温度300℃で溶融混合後、水槽にてストランドを冷却固化し、ペレタイザーにてストランドをカットし、原料ペレットを作製した。
該原料ペレットを再度押出機に投入して溶融し、Tダイより押出し、127℃のキャスティングロールで冷却固化させて膜状物を作製した。該膜状物を、縦延伸機を用いて105℃で縦方向に4.6倍延伸し、その後、横延伸機にて150℃で横方向に2倍延伸後、153℃で熱固定/弛緩処理を行った。次いで弛緩処理を行い、更にVETAPHONE社製ジェネレータCP1を使用し、出力0.4kW・速度10m/minでコロナ表面処理を施すことでポリオレフィン樹脂多孔フィルムを得た。
[実施例1]
アルミナ(日本軽金属社製「LS−410」,平均粒径:0.5μm,比表面積:7.3m/g)52.6質量部、イソプロピルアルコール5.3質量部、イオン交換水42.1質量部を混合し、ビーズミル処理を行ない、アルミナスラリーを得た。使用したビーズミルの条件は下記のとおりであった。
横型式ビーズミル装置:アイメックス株式会社製「NVM−1.5」
ビーズ :ジルコニア製ビーズ(直径:0.5mm)、充填率85%
周速 :10m/秒
吐出量 :350mL/分
得られたアルミナスラリーを1週間静置したのち、アルミナスラリー61.8質量部、5質量%ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製「PVA−124」、温度23℃、湿度50%RHにおける平衡含水率=2.5%)水溶液9.9質量部、弾性率降下剤としてジメチルスルホキシド(ナカライテスク株式会社製)を0.3質量部、イオン交換水28質量部を混合し、全量に対し、70質量ppmとなるよう塩酸を加えることで、固形分濃度33質量%の被覆層形成用樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムのコロナ処理を施した面に#12番手のバーコーターを用いて塗布した後、60℃の乾燥炉にて2分間乾燥させた。得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
[実施例2]
実施例1において、ジメチルスルホキシドに代え、弾性率降下剤としてエチレングリコールビス(プロピオニトリル)エーテル(東京化成工業株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層多孔フィルムを得た。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
[実施例3]
実施例1において、ジメチルスルホキシドに代え、弾性率降下剤としてN−メチル−2−ピロリドン(ナカライテスク株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層多孔フィルムを得た。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
[比較例1]
実施例1において、ジメチルスルホキシドを添加しない以外は、実施例1と同様にし、積層多孔フィルムを得た。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
[比較例2]
実施例1において、ジメチルスルホキシドをフェノール(ナカライテスク株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同様にし、積層多孔フィルムを得た。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
[比較例3]
実施例1において、ジメチルスルホキシドをアジピン酸(ナカライテスク株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同様にし、積層多孔フィルムを得た。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
[比較例4]
実施例1において、被覆層を積層せず、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムのみの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
*1,PVA:ポリビニルアルコール樹脂,株式会社クラレ製「PVA−124」
*2,弾性率降下剤A:ジメチルスルホキシド
弾性率降下剤B:エチレングリコールビス(プロピオニトリル)エーテル
弾性率降下剤C:N−メチル−2−ピロリドン
*3,平衡含水率:温度23℃、湿度50%RHにおけるバインダー樹脂の平衡含水率である。
*4,貯蔵弾性率:上記「(1)バインダー樹脂組成物の25℃における貯蔵弾性率の測定」の方法により測定したバインダー樹脂組成物の貯蔵弾性率である。
表1に示されるように、本発明に係る積層多孔フィルムは被覆層を片面に有する、すなわち非対称に被覆層を有していても、湿度99%RHという高湿度雰囲気下における耐カール性に優れており、また通気性、形状安定性、耐熱性、及び密着性にも優れていることが確認された。
一方、被覆層を有するものの、バインダー樹脂組成物が弾性率降下剤を含まない比較例1〜3の積層多孔フィルムは、優れた耐カール性が得られなかった。また、被覆層を有しない比較例4の多孔フィルムは、形状安定性、耐熱性の点で十分なものとはいえなかった。
本発明の積層多孔フィルムは、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムに非対称に被覆層を有していても、またいかなる湿度雰囲気下で使用しても、カールが小さい耐カール性に優れ、かつ通気性、形状安定性、耐熱性、及び密着性にも優れたものである。そのため、これらの性能が要求される種々の用途に応用することができる。具体的には、リチウムイオン二次電池用セパレータ;使い捨て紙オムツ、生理用品等の体液吸収用パットもしくはベッドシーツ等の衛生材料;手術衣もしくは温湿布用基材等の医療用材料;ジャンパー、スポーツウエアもしくは雨着等の衣料用材料;壁紙、屋根防水材、断熱材、吸音材等の建築用材料;乾燥剤;防湿剤;脱酸素剤;使い捨てカイロ;鮮度保持包装もしくは食品包装等の包装材料等の資材として好適に利用できる。とりわけ、高い耐熱性、カールが小さい耐カール性が要求されるリチウムイオン二次電池用セパレータとして好適に利用できる。
10 非水電解液二次電池用セパレータ
20 二次電池
21 正極板
22 負極板
24 正極リード体
25 負極リード体
26 ガスケット
27 正極蓋
41 サンプル
42 テープ
43 滑り止め
44 上部チャック
45 下部チャック

Claims (10)

  1. ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの少なくとも片面に、無機粒子及びバインダー樹脂組成物を含む被覆層を有し、該バインダー樹脂組成物が温度23℃、湿度50%RHにおける平衡含水率が1%以上のバインダー樹脂と弾性率降下剤とからなり、該バインダー樹脂組成物の25℃における貯蔵弾性率が30MPa以上500MPa以下である積層多孔フィルム。
  2. 前記弾性率降下剤が、含硫黄有機物及びシアノエチル化エチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の積層多孔フィルム。
  3. 前記バインダー樹脂100質量部に対する前記弾性率降下剤の含有量が1質量部以上100質量部以下である請求項1又は2に記載の積層多孔フィルム。
  4. 前記弾性率降下剤が、ジメチルスルホキシド及びエチレングリコールビス(プロピオニトリル)エーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
  5. 前記ポリオレフィン樹脂多孔フィルムを構成する樹脂が、少なくともポリプロピレンを含む請求項1〜のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
  6. 前記無機粒子が、アルミナ粒子である請求項1〜のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
  7. 前記被覆層が、前記無機粒子及びバインダー樹脂組成物を含む被覆層形成用塗工液を、前記ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの少なくとも片面に塗布し、乾燥させる塗布乾燥法により形成されてなる請求項1〜のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
  8. 前記被覆層形成用塗工液が溶媒を含み、該溶媒が水を50質量%以上含む請求項に記載の積層多孔フィルム。
  9. 請求項1〜のいずれか1項に記載の積層多孔フィルムを用いた非水電解液二次電池用セパレータ。
  10. 請求項に記載の非水電解液二次電池用セパレータを備える非水電解液二次電池。
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