JP6459694B2 - 積層多孔フィルム、非水電解液二次電池用セパレータ、及び非水電解液二次電池 - Google Patents
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Description
一方、大型の二次電池はロードレベリング、UPS、電気自動車をはじめ、エネルギー、環境問題に関連する多くの分野において研究開発が進められている。これらの中でも大容量、高出力、高電圧及び長期保存性に優れているという理由から、非水電解液二次電池の1種であるリチウムイオン二次電池が様々な用途に利用されている。
[2]上記[1]に記載の積層多孔フィルムを用いた非水電解液二次電池用セパレータ。
[3]上記[2]に記載の非水電解液二次電池用セパレータを備える非水電解液二次電池。
なお、本発明において、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含むことを許容する意を包含し、特に該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分は組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100質量%含む)を占める意を包含するものである。
また、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
以下に、本発明の積層多孔フィルムを構成する各成分について説明する。
<ポリオレフィン樹脂多孔フィルム>
ポリオレフィン樹脂多孔フィルムを構成する樹脂であるポリオレフィン樹脂としては、エチレン、及びプロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等のα−オレフィンを重合した単独重合体又は共重合体が挙げられる。また、これらの単独重合体又は共重合体を2種以上混合することもできる。これらの中でも、少なくともポリプロピレン樹脂、又はポリエチレン樹脂を含むことが好ましく、特に、本発明の積層多孔フィルムの機械的強度、耐熱性等を維持する観点から、少なくともポリプロピレン樹脂を含むことが好ましい。
ポリプロピレン樹脂としては、ホモプロピレン(プロピレン単独重合体)、又はプロピレンとエチレン、及び1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセン等のα−オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体等が挙げられる。これらの中でも、本発明の積層多孔フィルムの機械的強度、耐熱性等を維持する観点から、ホモポリプロピレンがより好適に使用される。
ここで、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造の割合を意味する。このアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)は13C−NMRの測定結果に基づき算出され、メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al(Macromolecules8,687,(1975))に準拠する。
ポリプロピレン樹脂のMw/MnはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定される。
ポリプロピレン樹脂の密度は、密度勾配管法を用いてJIS K7112(1999年)に準じて測定される。
ポリプロピレン樹脂のMFRはJIS K7210(1999年)に従い、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレンを主成分とする共重合体等が挙げられる。
エチレンを主成分とする共重合体としては、エチレンと、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等の炭素数3〜10のα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸エステル;共役ジエン、非共役ジエン等の不飽和化合物の中から選ばれる1種以上のコモノマーとの共重合体又は多元共重合体あるいはその混合組成物が挙げられる。エチレン重合体のエチレン単位の含有量は通常50質量%を超えるものである。
ポリエチレン樹脂の密度は、密度勾配管法を用いてJIS K7112(1999年)に準じて測定される。
ポリエチレン樹脂のMFRはJIS K7210(1999年)に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
ポリオレフィン樹脂多孔フィルムは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、一般に樹脂組成物に配合される添加剤を適宜含有することができる。添加剤としては、成形加工性、生産性及びポリオレフィン樹脂多孔フィルムの諸物性を改良、調整する目的で添加される、耳等のトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂;シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子;カーボンブラック等の顔料;難燃剤;耐候性安定剤;耐熱安定剤;帯電防止剤;溶融粘度改良剤;架橋剤;滑剤;核剤;可塑剤;老化防止剤;酸化防止剤;光安定剤;紫外線吸収剤;中和剤;防曇剤;アンチブロッキング剤;スリップ剤;着色剤等の添加剤が挙げられる。
また開孔を促進するためや、成形加工性を付与するために、本発明の効果を阻害しない範囲で、各種樹脂や、ワックス等の低分子量化合物を添加してもよい。
ポリオレフィン樹脂多孔フィルムは、単層でも積層でもよく、特に制限されるものではない。例えば、ポリオレフィン樹脂を含む層(以下「A層」とも称する)の単層、該A層の機能を妨げない範囲で、該A層と他の層(以下「B層」とも称する)との積層とすることができる。ここで、A層とB層とは、これらの層を構成する樹脂が互いに異なるポリオレフィン樹脂を含んでいてもよい。
本発明で採用しうる層構成の具体例としては、A層、B層を積層した2層構造、A層、B層、A層、若しくはB層、A層、B層を順に積層した3層構造等が例示できる。また、他の機能を有する層と組み合わせて3種3層の様な形態も可能である。この場合、他の機能を有する層との積層順序は特に問わない。更に層数としては4層、5層、6層、7層と必要に応じて増やしてもよい。
なお、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの物性は、層構成や積層比、各層の組成、製造方法によって自由に調整できる。
ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの製造方法は、従来公知の多孔性フィルムの製造方法を好適に用いることができ、特に限定されるものではないが、通常、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムを形成するための前駆体である無孔膜状物を作製し、これを多孔化することによってポリオレフィン樹脂多孔フィルムを形成する方法が好ましく採用される。なお、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムは、かかる製造方法により製造される多孔フィルムのみに限定されるものではない。
また必要に応じて、延伸の前後にポリオレフィン樹脂組成物に含まれている弾性率降下剤を溶剤によって抽出、乾燥させる方法も適用される。さらに、寸法安定性の改良を目的として、延伸の後に熱処理や弛緩処理を施すこともできる。
無孔膜状物中にβ晶を生成させる方法としては、ポリプロピレン樹脂のα晶の生成を促進させる物質を添加しない方法、特許第3739481号公報に記載されているように過酸化ラジカルを発生させる処理を施したポリプロピレンを添加する方法、及びポリプロピレン樹脂を含む樹脂組成物にβ晶核剤を添加する方法等が挙げられる。
β晶核剤としては以下に示すものが挙げられるが、ポリプロピレン樹脂のβ晶の生成及び成長を増加させるものであれば特に限定される訳ではなく、また2種類以上を混合して用いてもよい。
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウム等に代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウム等に代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルー等に代表されるフタロシアニン顔料;有機二塩基酸である成分Aと周期律表第2族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分Bとからなる二成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物等が挙げられる。そのほか核剤の具体的な種類については、特開2003−306585号公報、特開平08−144122号公報、特開平09−194650号公報に記載されている。
β晶核剤の含有量がポリプロピレン樹脂100質量部に対して0.0001質量部以上であれば、製造時において十分にポリプロピレン樹脂のβ晶を生成、成長させることができ、非水電解液二次電池用セパレータとして用いる際にも十分なβ晶活性が確保でき、所望の透気性能が得られる。また、β晶核剤の含有量がポリプロピレン樹脂100質量部に対して5質量部以下であれば、製造コストと得られる効果とのバランスに優れるほか、ポリオレフィン樹脂多孔フィルム表面へのβ晶核剤のブリード等がなく好ましい。
(i)各層を多孔化したのち、多孔化された各層をラミネートしたり接着剤等で接着したりして積層する方法。
(ii)各層を積層して積層無孔膜状物を作製し、ついで当該無孔膜状物を多孔化する方法。
(iii)各層のうちいずれか1層を多孔化したのち、もう1層の無孔膜状物と積層し、多孔化する方法。
本発明においては、その工程の簡略さ、生産性の観点から(ii)の方法を用いることが好ましく、なかでも2層の接着性を確保するために、共押出で積層無孔膜状物を作製した後、多孔化する方法が特に好ましい。
本発明の積層多孔フィルムは、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの少なくとも片面に、し、無機粒子及びバインダー樹脂組成物を含む被覆層を有する。被覆層は、片面だけに設けてもよいし、また必要に応じて両面に設けてもよく、用途に応じて適宜選択すればよい。
無機粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどの金属炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウムなどの金属硫酸塩;フッ化カルシウム、フッ化マグネシウムなどの金属フッ化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物;アルミナ、カルシア、マグネシア、チタニア、酸化亜鉛、シリカなどの金属酸化物;タルク、クレー、マイカなどの粘土鉱物、更にはチタン酸バリウム等の材料により構成される粒子が挙げられ、これらの材料により構成される粒子を単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、無機粒子は、これらの材料を単独で含んでいてもよいし、複数種の材料を含むものであってもよい。
これらの中でも、電池に組み込んだ際に化学的に不活性であるという観点で、硫酸バリウム粒子又はアルミナ粒子が好ましく、特にアルミナ粒子であることが好ましい。
無機粒子の平均粒径は、例えば画像解析装置を用いる方法、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いる方法などによって測定、算出される値である。画像解析装置を用いる場合の平均粒径は、任意の方向(方向Zとする)から当該無機粒子を投影した場合の二次元的な投影像の短径と長径を平均した値と、前記方向Zと直交する任意の方向(方向Xとする)から当該無機粒子を投影した場合の二次元的な投影像の短径と長径を平均した値とを、平均した値として算出される。算出に用いる無機粒子の個数は50個以上であればよい。
無機粒子の比表面積は定容量式ガス吸着法により測定される値である。
バインダー樹脂組成物は、温度23℃、湿度50%RHにおける平衡含水率が1%以上のバインダー樹脂と弾性率降下剤とからなり、25℃における貯蔵弾性率が10MPa以上500MPa以下の組成物である。
バインダー樹脂は、温度23℃、湿度50%RHにおける平衡含水率が1%以上であることを要する。平衡含水率が1%以上であることにより、無機粒子とバインダー樹脂組成物とを含む被覆層形成用塗工液において無機粒子の優れた分散性が得られるので、結果として優れた耐熱性、密着性、耐カール性が得られ、また電気化学的安定性が得られる。これと同様の観点から、バインダー樹脂の平衡含水率は1.5%以上が好ましく、2%以上がより好ましい。一方、バインダー樹脂の平衡含水率の上限は特に制限されないが、通常30%以下であり、20%以下がより好ましく、15%以下が更に好ましい。
バインダー樹脂の平衡含水率は、JIS K7251(2002年)に基づいて測定される。
バインダー樹脂組成物は、弾性率降下剤を含むことを要する。弾性率降下剤を含むことにより、バインダー樹脂の有する接着性、耐熱性、電気化学的安定性を損なうことなく、バインダー樹脂組成物の弾性率を低下させることができ、その結果、本発明の積層多孔フィルムは被覆層を非対称に被覆層を有していても、またいかなる湿度雰囲気下においてもカールの小さい耐カール性に優れるフィルムとなる。
バインダー樹脂組成物の25℃の貯蔵弾性率は、10MPa以上500MPa以下であることを要する。バインダー樹脂組成物の25℃における貯蔵弾性率が10MPa以上であることにより、優れた耐熱性が得られる。一方、バインダー樹脂組成物の25℃における貯蔵弾性率が500MPa以下であることにより、常温のいかなる湿度雰囲気下においても、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの弾性率がバインダー樹脂組成物の弾性率を上回るため、優れた耐カール性が得られる。これと同様の観点から、バインダー樹脂組成物の25℃における貯蔵弾性率は、20MPa以上であることがより好ましく、30MPa以上であることが更に好ましい。また、400MPa以下であることがより好ましく、200MPa以下であることが更に好ましい。
バインダー樹脂組成物の25℃における貯蔵弾性率は、JIS K7244−4(1999年)に基づき、後述の実施例に記載の方法で測定される。
被覆層形成用塗工液を塗布し、乾燥する塗布乾燥法により被覆層を形成する場合、該塗工液は、酸成分を含むことが好ましい。被覆層形成用塗工液は、酸成分を含むことにより、該塗工液中の無機粒子の凝集を抑制し、長期保存時の粘度安定性が向上するため、均一な被覆層を形成することができ、優れた耐熱性、耐カール性が得られる。
酸成分は、被覆層中に酸そのものとして残存していてもよいし、被覆層中のアルカリ性不純物と反応して形成した塩として残存していてもよい。
酸成分の含有量が10質量ppm以上であれば、均一性に優れた被覆層を形成できる。また、酸成分の含有量が10000質量ppm以下であれば、被覆層を有する積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータに用いた際にも、非水電解液二次電池の性能に悪影響を与えない。
無機粒子と平衡含水率が1%以上のバインダー樹脂を用いて、ポリオレフィン樹脂多孔フィルム上に被覆層を形成して積層多孔フィルムを作製する場合、例えば常温かつ高湿度環境下ではバインダー樹脂が吸湿膨張し、その弾性率が大きく低下する。すると、積層多孔フィルムにおいてはポリオレフィン樹脂多孔フィルムの弾性率が支配的となり、バインダー樹脂は膨張した状態で配向緩和を生じる。
その後、積層多孔フィルムを常温のまま乾燥環境下に置くと、バインダー樹脂が乾燥収縮しながら弾性率が増加し、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの弾性率と拮抗するようになる。そのため、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの片面に被覆層を形成する場合や、両面に厚みの異なる被覆層を形成する場合など、被覆層を非対称に形成すると、積層多孔フィルムにカールが生じ、ハンドリング性が損なわれることになる。
そこで本発明者は、バインダー樹脂に弾性率降下剤を含有し、常温で特定範囲の貯蔵弾性率を有するバインダー樹脂組成物を用いることによって、常温のいかなる湿度雰囲気下においても、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの弾性率がバインダー樹脂組成物の弾性率を上回るような弾性率設計とし、バインダー樹脂の有する接着性や耐熱性、電気化学的安定性を損なうことなく積層多孔フィルムのカールを小さくし得る、優れた耐カール性が得られることに想到したのである。
被覆層の製造方法としては、上記被覆層形成用塗工液をポリオレフィン樹脂多孔フィルムの少なくとも片面に塗布し、乾燥する塗布乾燥法が、連続生産性の観点から、塗布乾燥法が好ましい。
このような溶媒としては、例えば、水、アセトニトリル、炭素数1〜4のアルコール、グリコール類、グリセリン、乳酸エステル等が挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。炭素数1〜4のアルコールとしては、炭素数1〜4の1価のアルコールが好ましく、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコールから選ばれる1種以上がより好ましい。
塗布工程における塗布方法は、必要とする被覆層の厚み、塗布面積を実現できる方法により行えば、特に限定されない。このような塗布方法としては、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法等が挙げられる。また、被覆層形成用塗工液は、その用途に照らし、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの片面だけに塗布されてもよいし、両面に塗布されてもよい。
本発明の積層多孔フィルムの総厚みは5〜100μmが好ましく、8〜50μmがより好ましく、10〜30μmが更に好ましい。総厚みが5μm以上であれば、本発明の積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合、実質的に必要な電気絶縁性を得ることができ、例えば電極の突起部分に大きな力がかかった場合でも、非水電解液二次電池用セパレータを突き破って短絡しにくく安全性に優れる。また、厚みが100μm以下であれば、積層多孔フィルムの電気抵抗を小さくすることができるので、電池の性能を十分に確保することができる。
一方、上限については70%以下が好ましく、65%以下がより好ましく、60%以下が更に好ましい。空孔率が70%以下であれば、積層多孔フィルムの強度を十分に保持することができ、ハンドリングの観点からも好ましい。
空孔率は、多孔フィルムの実質量W1を測定し、該フィルムを構成する材料の含有比率、密度、及び厚みから空孔率0%の場合の質量W0を計算し、それらの値から下記式に基づき算出した値である。
空孔率(%)={(W0−W1)/W0}×100
透気度はフィルム厚み方向の空気の通り抜け易さを表し、具体的には100mLの空気が該フィルムを通過するのに必要な時間で表現されている。そのため、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方がフィルムの厚み方向の連通性が良いことを意味し、その数値が大きい方がフィルム厚み方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とはフィルム厚み方向の孔のつながり度合いである。本発明の積層多孔フィルムの透気度が低ければ様々な用途に使用することができる。例えば非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合、透気度が低いということはリチウムイオンの移動が容易であることを意味し、電池性能に優れるため好ましい。
積層多孔フィルムの透気度は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
積層多孔フィルムの収縮率は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
引き剥がし強度は、フィルムの搬送トラブルや外観不良を軽減できるという観点から、3N/18mm以上であることが好ましく、4N/18mm以上であることがより好ましい。上限については、特に制限は無く20N/18mm以下であることが理想であるが、現実的には10N/18mm以下であることが好ましい。
本発明の非水電解液二次電池は、本発明の積層多孔フィルムを用いた非水電解液二次電池用セパレータを備えるものである。本発明の積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして収容している非水電解液二次電池について、図1を参照して具体的に説明する。
図1に示される非水電解液二次電池20において、正極板21、負極板22の両極は電池用セパレータ10を介して互いに重なるようにして渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体とする。
正極板21、電池用セパレータ10、及び負極板22を捲回体とする捲回工程について詳しく説明する。電池用セパレータ10の片端をピンのスリット部の間に通し、ピンを少しだけ回転させて電池用セパレータの一端をピンに巻きつけておく。この時、ピンの表面と電池用セパレータの被覆層とが接触している。その後、電池用セパレータ10を間に挟むようにして正極板21と負極板22とを配置し、捲回機によってピンを回転させて、正負極板21、22と電池用セパレータ10を捲回する。捲回後、ピンは捲回物から引き抜かれる。
(1)バインダー樹脂組成物の25℃における貯蔵弾性率の測定
各実施例及び比較例に記載の割合でバインダー樹脂と弾性率降下剤とを混合し、溶媒に溶解させたバインダー樹脂組成物を平滑なガラス板上に流延し、乾燥させることで、バインダー樹脂組成物のフィルムを得た。該フィルムの動的粘弾性を、JIS K7244−4(1999年)に基づき以下の条件で測定した。得られた動的粘弾性データより、25℃における貯蔵弾性率を求めた。
振動周波数:1Hz
温度 :−100〜230℃
昇温速度 :3℃/分
積層多孔フィルムの総厚みは、1/1000mmのダイアルゲージにて、積層多孔フィルムの面内を不特定に5ヶ所測定し、その平均値として算出した。
被覆層の厚みは、被覆層を形成した後の積層多孔フィルムの総厚みと、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの厚みとの差として算出した。
透気度は、JIS P8117(2009年)に準拠して測定した。
各実施例及び比較例で作製した積層多孔フィルムを、縦方向に25mm、横方向に150mmの短冊状に切り出してサンプルとし、温度25℃、湿度99%RHに設定した恒温恒湿槽で15分間静置した。次いで、横方向が鉛直になるよう短冊状に垂らせた状態で、大気圧から5mmHgの圧力まで減圧し、5分間真空乾燥を行ない、乾燥空気を封入し、常圧に戻した後、速やかにアルミニウム製の板に水平に静置し、端面の反りあがり高さの平均値を測定した。耐カール性は、該平均値の結果をもとに、以下の評価基準にしたがって評価した。
○:フィルムの端面の反りあがり高さが10mm未満
×:フィルムの端面の反りあがり高さが10mm以上
まず、実施例及び比較例で作製した積層多孔フィルムを長さ150mm×幅10mmのサイズに切り出し、長さ方向に100mmの間隔で2点印を入れてサンプルを作製した。次いで、130℃に設定したオーブン(タバイエスペック株式会社製「タバイギヤオーブンGPH200」)に該サンプルを入れ、1時間静置した。該サンプルをオーブンから取り出して冷却した後、2点印間の長さ(mm)を測定し、以下の式にて収縮率を算出した。
収縮率(%)={(100−加熱後の長さ)/100}×100
以上の測定は、積層多孔フィルムの縦方向、横方向についてそれぞれ行った。
耐熱性は、上記「(5)130℃における収縮率の測定」の結果をもとに、以下の評価基準において評価した。
○:上記(5)で測定した130℃、1時間における収縮率が、縦方向と横方向のいずれも10%未満の場合。
×:上記(5)で測定した130℃、1時間における収縮率が、縦方向と横方向のいずれかが10%以上の場合。
各実施例及び比較例で作製した積層多孔フィルムについて、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムと被覆層との引き剥がし強度をJIS Z0237(2009年)に準拠して、以下の手法で測定した。
まず、積層多孔フィルムを縦方向に150mm、横方向に50mmの短冊状に切り出してサンプルとし、該サンプルの縦方向にテープ42(図2)として、セロハンテープ(ニチバン株式会社製、JIS Z1522(2009年)、幅:18mm)を貼付け、該セロハンテープの粘着面とは反対側の面同士が重なるように180°に折り返し、該サンプルから25mm剥がした。
次に、図2に示される引張試験機(株式会社インテスコ製、インテスコIM−20ST)の下部チャックに剥がした部分のサンプルの片端を固定し、上部チャックに該セロハンテープを固定し、試験速度300mm/分にて引き剥がし強度を測定した。測定後、最初の25mmの長さの測定値は無視し、試験片から引き剥がされた50mmの長さの引き剥がし強度測定値を平均し、引き剥がし強度とした。
密着性は、上記「(7)引き剥がし強度の測定」の結果をもとに、以下の評価基準にしたがって評価した。
○:引き剥がし強度が3N/18mm以上
×:引き剥がし強度が3N/18mm未満
(ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの作製)
ポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製「ノバテックPP FY6HA」、密度:0.90g/cm3、MFR:2.4g/10分)と、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを準備した。このポリプロピレン樹脂100質量部に対して、β晶核剤を0.2質量部の割合でブレンドし、東芝機械株式会社製の同方向二軸押出機(口径:40mmφ、L/D:32)に投入し、設定温度300℃で溶融混合後、水槽にてストランドを冷却固化し、ペレタイザーにてストランドをカットし、原料ペレットを作製した。
該原料ペレットを再度押出機に投入して溶融し、Tダイより押出し、127℃のキャスティングロールで冷却固化させて膜状物を作製した。該膜状物を、縦延伸機を用いて105℃で縦方向に4.6倍延伸し、その後、横延伸機にて150℃で横方向に2倍延伸後、153℃で熱固定/弛緩処理を行った。次いで弛緩処理を行い、更にVETAPHONE社製ジェネレータCP1を使用し、出力0.4kW・速度10m/minでコロナ表面処理を施すことでポリオレフィン樹脂多孔フィルムを得た。
アルミナ(日本軽金属社製「LS−410」,平均粒径:0.5μm,比表面積:7.3m2/g)52.6質量部、イソプロピルアルコール5.3質量部、イオン交換水42.1質量部を混合し、ビーズミル処理を行ない、アルミナスラリーを得た。使用したビーズミルの条件は下記のとおりであった。
横型式ビーズミル装置:アイメックス株式会社製「NVM−1.5」
ビーズ :ジルコニア製ビーズ(直径:0.5mm)、充填率85%
周速 :10m/秒
吐出量 :350mL/分
得られたアルミナスラリーを1週間静置したのち、アルミナスラリー61.8質量部、5質量%ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製「PVA−124」、温度23℃、湿度50%RHにおける平衡含水率=2.5%)水溶液9.9質量部、弾性率降下剤としてジメチルスルホキシド(ナカライテスク株式会社製)を0.3質量部、イオン交換水28質量部を混合し、全量に対し、70質量ppmとなるよう塩酸を加えることで、固形分濃度33質量%の被覆層形成用樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムのコロナ処理を施した面に#12番手のバーコーターを用いて塗布した後、60℃の乾燥炉にて2分間乾燥させた。得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
実施例1において、ジメチルスルホキシドに代え、弾性率降下剤としてエチレングリコールビス(プロピオニトリル)エーテル(東京化成工業株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層多孔フィルムを得た。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
実施例1において、ジメチルスルホキシドに代え、弾性率降下剤としてN−メチル−2−ピロリドン(ナカライテスク株式会社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層多孔フィルムを得た。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
実施例1において、ジメチルスルホキシドを添加しない以外は、実施例1と同様にし、積層多孔フィルムを得た。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
実施例1において、ジメチルスルホキシドをフェノール(ナカライテスク株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同様にし、積層多孔フィルムを得た。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
実施例1において、ジメチルスルホキシドをアジピン酸(ナカライテスク株式会社製)に変更した以外は、実施例1と同様にし、積層多孔フィルムを得た。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
実施例1において、被覆層を積層せず、ポリオレフィン樹脂多孔フィルムのみの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
*2,弾性率降下剤A:ジメチルスルホキシド
弾性率降下剤B:エチレングリコールビス(プロピオニトリル)エーテル
弾性率降下剤C:N−メチル−2−ピロリドン
*3,平衡含水率:温度23℃、湿度50%RHにおけるバインダー樹脂の平衡含水率である。
*4,貯蔵弾性率:上記「(1)バインダー樹脂組成物の25℃における貯蔵弾性率の測定」の方法により測定したバインダー樹脂組成物の貯蔵弾性率である。
一方、被覆層を有するものの、バインダー樹脂組成物が弾性率降下剤を含まない比較例1〜3の積層多孔フィルムは、優れた耐カール性が得られなかった。また、被覆層を有しない比較例4の多孔フィルムは、形状安定性、耐熱性の点で十分なものとはいえなかった。
20 二次電池
21 正極板
22 負極板
24 正極リード体
25 負極リード体
26 ガスケット
27 正極蓋
41 サンプル
42 テープ
43 滑り止め
44 上部チャック
45 下部チャック
Claims (10)
- ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの少なくとも片面に、無機粒子及びバインダー樹脂組成物を含む被覆層を有し、該バインダー樹脂組成物が温度23℃、湿度50%RHにおける平衡含水率が1%以上のバインダー樹脂と弾性率降下剤とからなり、該バインダー樹脂組成物の25℃における貯蔵弾性率が30MPa以上500MPa以下である積層多孔フィルム。
- 前記弾性率降下剤が、含硫黄有機物及びシアノエチル化エチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の積層多孔フィルム。
- 前記バインダー樹脂100質量部に対する前記弾性率降下剤の含有量が1質量部以上100質量部以下である請求項1又は2に記載の積層多孔フィルム。
- 前記弾性率降下剤が、ジメチルスルホキシド及びエチレングリコールビス(プロピオニトリル)エーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
- 前記ポリオレフィン樹脂多孔フィルムを構成する樹脂が、少なくともポリプロピレンを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
- 前記無機粒子が、アルミナ粒子である請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
- 前記被覆層が、前記無機粒子及びバインダー樹脂組成物を含む被覆層形成用塗工液を、前記ポリオレフィン樹脂多孔フィルムの少なくとも片面に塗布し、乾燥させる塗布乾燥法により形成されてなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
- 前記被覆層形成用塗工液が溶媒を含み、該溶媒が水を50質量%以上含む請求項7に記載の積層多孔フィルム。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層多孔フィルムを用いた非水電解液二次電池用セパレータ。
- 請求項9に記載の非水電解液二次電池用セパレータを備える非水電解液二次電池。
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