以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。本実施形態では、建設機械1として、クローラ式の油圧ショベルを例にとり説明するが、建設機械1はクローラ式の油圧ショベルに限るものではなく、エンジンと、ラジエータと、当該ラジエータを通過した空気を冷却ファンを介してエンジンルームに導くためのシュラウドを備える建設機械であれば、ホイール式の油圧ショベルや、油圧クレーン、ホイールローダ、トラクタ等の他の建設機械にも広く適用できる。また、以下では、油圧ショベル1の機体前後方向を単に前後、同じく機体左右方向を単に左右、同じく機体上下方向を単に上下と称することがあり、例えば「前側」というときは油圧ショベル1の機体前後方向における前方向を示すものとする。また、「注水」とは、冷却水の交換又は補充のためにタンクに冷却水が注がれる状態、動作又は作業を示し、「給水」とは、タンク内の冷却水が冷却水流路に供給される状態、動作又は作業を示すものとする。
図1は油圧ショベル1の側面図であり、図2は油圧ショベル1における上部旋回体4の上面図(但し作業装置5及びエンジンカバー17は図示省略)である。建設機械1としてのクローラ式の油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、上部旋回体4の前側に俯仰動可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置5とにより大略構成されている。下部走行体2では、その外周部に取り付けられた履体を走行モータ2Aが駆動する。旋回装置3は、図2に示す旋回モータ3Aを回転駆動することにより、下部走行体2に対し上部旋回体4を旋回させる。
作業装置5は、上部旋回体4に俯仰動可能に取付けられたブーム5Aと、ブーム5Aの先端部に俯仰動可能に取付けられたアーム5Bと、アーム5Bの先端部に回動可能に取付けられたバケット5Cとを有している。ブーム5Aはブームシリンダ5Dにより俯仰動され、アーム5Bはアームシリンダ5Eにより回動される。バケット5Cは、バケットシリンダ5Fにより回動される。下部走行体2の走行モータ2Aと旋回装置3の旋回モータ3Aと作業装置5の各油圧シリンダ5D、5E、5Fを、上部旋回体4に設けた制御弁が制御している。
上部旋回体4の下部を構成する旋回フレーム6の左前側には、キャブ7が設けられている。キャブ7には、この油圧ショベル1を操作するオペレータが搭乗可能なように、運転席71、走行用の操作レバー(図示せず)、作業用の操作レバー(図示せず)等が配設されている。旋回フレーム6の後端部には、カウンタウエイト8が取り付けられている。このカウンタウエイト8は、作業装置5との重量バランスのために設けられており、後面側が湾曲するように突出している。
図2に示すように、旋回フレーム6の後ろ側であってカウンタウエイト8の前側には、油圧ショベル1の駆動源となるエンジン9を収容する機械室25が形成されている。エンジン9は、旋回フレーム6上に左右方向に延在する横置き状態で搭載されている。機械室25の前方には壁面19(図5参照)を介してコントロールバルブ60(図5参照)が搭載されている。
エンジン9の出力軸の端部には駆動プーリ(図示せず)が取付けられている。当該駆動プーリの回転は無端ベルト(Vベルト(図示せず))を介して従動プーリ(図示せず)に伝達され、該従動プーリに取付けられた冷却ファン10が回転する。なお、冷却ファン10の駆動源はこれに機械的に連結されたエンジン9に限られず、電動機などの他の駆動源で冷却ファン10を回転駆動する構成としても良い。
エンジン9への冷却ファン10取付け側と反対側、すなわち油圧ショベル1の右後ろ側には、複数台の油圧ポンプからなる油圧ポンプユニット22が配置されている。油圧ポンプユニットの前側22には、作動油タンク21および燃料タンク20が並んで配置されている。作動油タンク21には、下部走行体2および作業装置5等を駆動するための作動油が貯えられている。油圧ポンプユニット22の油圧ポンプは、作動油タンク21内の作動油を各油圧アクチュエータに対して圧油として吐出する。各油圧アクチュエータから戻される作動油はオイルクーラ31(後述)を通過させることで冷却できる。
エンジン9の前側の上部には、吸気の流量を増大させるターボチャージャ等の過給機9Aが、排気管23に介在して設けられている。エンジン9は、旋回フレーム6上に防振マウントを介して防振状態で支持されている。
エンジン9の左側には、エンジン冷却水を冷却するラジエータ30、作動油を冷却するオイルクーラ31、エンジン9が吸込む空気を冷却するインタークーラ32からなる熱交換装置33が配置されている。これらの各クーラ30〜32は、冷却ファン10に対面して設けられている。図2の例では、オイルクーラ31が最も前側に位置し、その後ろにラジエータ30、さらにその後ろにインタークーラ32が配置されている。ラジエータ30、オイルクーラ31およびインタークーラ32の上部は熱交換器カバー35によって覆われている。
エンジン9、熱交換装置33および油圧ポンプユニット22等は、旋回フレーム6上でカウンタウエイト8の前側の左右に延びた空間(機械室25)に配置されている。エンジン9、熱交換装置33、油圧ポンプユニット22、作動油タンク21および燃料タンク20等の旋回フレーム6上に設けられた機器は、旋回フレーム6上に設けられた建屋カバー17で覆われている。
建屋カバー17には、旋回フレーム6の左側に位置して垂直方向に延びた左側面板17A,17Bと、旋回フレーム5の右側に位置して垂直方向に延びた右側面板17C,17Dと、左右の側面板17A〜17Dの上端部間で水平方向に延びた上面板17E,17F,17Gと、上面板17E,17F,17Gの後ろで機械室25の上部を覆うエンジンカバー17H,17I(図1,3参照)が含まれている。
左側面板17Bには、熱交換装置30に冷却風として供給される空気を流入させるための縦長の複数の孔からなる流入口72(図1,3参照)が設けられている。一方、右側面板17Dには、エンジン9等を通過した空気(冷却風)を外部へ流出させるための縦長の複数の孔からなる流出口73(図3参照)が設けられている。
図3は図2中のIII-III断面における上部旋回体4の模式的な断面図であり、図5は図2中のV-V断面における上部旋回体4の模式的な断面図であり、図6はタンク12周辺の詳細な斜視図である。なお、先の図と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略することがある(後の図も同様)。
図3に示すように、機械室25内には、エンジン9で加熱されたエンジン冷却水を空気(冷却風)と熱交換することで冷却するラジエータ30と、ラジエータ30を介して取り込んだ空気(冷却風)をエンジン9に送る冷却ファン10と、ウォータージャケット93(図4参照)に循環供給されるエンジン冷却水と熱交換して冷却されるエンジン9がこの順番で左から右に配置されている。
機械室25におけるラジエータ30とエンジン9の間には、冷却ファン10の外周側に設けられ、ラジエータ30を介してエンジン9側に取り込む空気の通路を形成するシュラウド11が設けられている。シュラウド11のエンジン側の側面板11Aは、金属製の略矩形状の板である(ただし、後述するように、側面板11Aの上端の前側は後ろ側よりも上部に延びているため正確な矩形状の板ではない。)。
側面板11Aの中央部分には略円形の開口部11Cが設けられており、開口部11Cの縁には環状のリング部材11Dがエンジン9側に突出して取り付けられている。リング部材11Dが形成する略円柱状の空間の内部には冷却ファン10が固定されている。なお、冷却ファン10の固定位置は、リング部材11Dの内部に限定されず、シュラウド11内の空気をエンジン9側に供給可能な範囲で図3中の左右にズレても良い。
前後方向に間隔を介して配置され左右方向に垂直に延びたシュラウド11の前側面板と後側面板の上部には、上面板11Bが架け渡されている。上面板11Bは、熱交換器カバー35の上面板と略同じ高さに位置し前後方向に略水平に延びた矩形状の上段部11b1と、ラジエータアッパーホース50及びインタークーラホース56の下側であって上段部11b1より低い高さに位置し前後方向に略水平の延びた矩形状の下段部11b2と、上段部11b1の後端辺と下段部11b2の前端辺を連結し前方に向かって上り勾配の斜面で形成された矩形状の連結部11b3とから構成されている。上段部11b1は連結部11b3および下段部11b2よりも前方に位置しており、これら3つの部分の中で最も上面板17E,17F(キャブ7)に近いところに位置している。
下段部11b2の高さは、熱交換器カバー35のエンジン側(シュラウド側)の側面板35B(図6参照)から突き出たラジエータアッパーホース50及びインタークーラホース56を避けるために、ラジエータアッパーホース50及びインタークーラホース56の下端より下の位置に設定されている。
上段部11b1には、上段部11b1よりも小さく前後方向に延びた矩形状の開口部(シュラウド点検窓)14Aが設けられている。開口部14Aには、開口部14Aを塞ぐ矩形状の点検窓カバー(開閉カバー)14Bが開口部14Aを開閉可能に取り付けられている。本実施の形態の点検窓カバー14Bは、開口部14Aの後端辺に設けられたヒンジ(ヒンジ部)14Cを介して開口部14Aを開閉可能に取り付けられている。これにより点検窓カバー14Bは上面板11B(シュラウド11)に対して回転可能に支持される。また、点検窓カバー14Bの自由端(前側端部)には、上段部11b1に点検窓カバー14Bを固定するための固定具14Dが設けられている。
点検窓カバー14Bを開くと、開口部14Aが外部に露出し、開口部14Aを介してシュラウド11の内部にアクセス可能になる。この開口部14Aから例えばブロア(送風機)を挿入し、これによりエンジン冷却時とは逆方向の空気流をラジエータ30に送り込むと、ラジエータコア30Bに付着した汚れや異物を除去することができる。
なお、開口部14Aの形状、点検窓カバー14Bの上段部11b1への固定方法は、上記のものに限られず、開口部14Aの形状はブロア等の清掃道具をシュラウド11内部に挿入可能なものであれば良く、また、点検窓カバー14Bの固定方法も開口部14Aから点検窓カバー14Bが着脱可能なものであればどのような方法でも良い。
本実施の形態のシュラウド11の側面板11Aの上端は、上面板11Bの形状(すなわち上段部11b1、下段部11b2および連結部11b3の形状)に合わせて設けられており、これにより段差が形成されて前方の方が後方よりも高くなっている。
ラジエータ30は、上端に位置し、ラジエータアッパーホース50を介してエンジン9からの冷却水が流入されるアッパータンク30Aと、アッパータンク30Aの下部に接続された複数の冷却水細管及び当該複数の冷却水細管の外周に設けられた複数の放熱フィンを有するラジエータコア30Bと、下端に位置し、ラジエータコア30Bで冷却された冷却水をラジエータロアホース51を介してエンジン9に流出するロアータンク30Cとを備えている。ラジエータ30は、ラジエータコア30Bの冷却水細管に導入された冷却水と冷却ファン10で取り込んだ冷却風とを熱交換することで、冷却水の熱を冷却風中に放熱することにより冷却水を冷却する。
シュラウド11の側面板11Aの上部には、エンジン9側に略水平に突出したブラケット(タンク支持部材)15がボルトを介して取り付けられている。ブラケット15は、ラジエータ30及びエンジン9を含むエンジン冷却系に補充(供給)するための冷却水が蓄えられるタンク(リザーブタンク(エクスパンションタンクとも言う))12を固定支持している。ブラケット15の上端は、アッパータンク30Aの下端より上方に位置している。タンク12は、ラジエータ30の上端部よりも上方に冷却水の水平面(下限水位(後述))が形成されるようにブラケット15によって支持されており、シュラウド11に隣接する位置であって点検窓カバー14Bよりもエンジン9側に配置されている。
ブラケット15は、側面板11Aだけに固定するのではなく、エンジン9が収納される機械室25を構成する構造部材の少なくとも1つに対しても固定することが好ましい。例えば、図5,6では、ブラケット15は、エンジン9の前側に配置され垂直方向に延びた壁面(前壁面)19に固定され後側に突き出したサポート部材16によって下方から支持されている。このようにタンク12(冷却水を含む)を複数の部材を介して固定支持すると、1つあたりの部材が負担するタンク12の荷重を低減できる。これにより、例えば、ブラケット15の負担する荷重が減ることでシュラウド11(側面板11A)の強度を下げることができるので、シュラウド11のコストを削減できる。
タンク12は、シュラウド11の上面板11Bに設けられた開口部14Aの上部を避けるように側面板11Aに隣接して配置されている。つまり、平面図において、タンク12の輪郭と開口部14Aの輪郭が重ならないようにタンク12は配置されている。より具体的には、タンク12の最左端(平面図で見たときタンク12において最もラジエータ30に近い箇所)が、開口部14Aの最右端(平面図でみたとき開口部14Aにおいて最もエンジン9に近い箇所)よりもエンジン9側(右側)に位置するように、ブラケット15によってタンク12は固定されている。
タンク12の底面には給水口となる開口部が設けられており、当該開口部には略垂直に下方に延びた後にラジエータロアホース51に連結されるメイクアップ配管(給水管)54が取り付けられている。これによりタンク12内の冷却水はメイクアップ配管54を介してラジエータロアホース51に供給される。タンク12において、その下限水位の高さは、アッパータンク30Aの内部空洞の最上部よりも高く、かつ、エンジン9に設けられる冷却水流路が形成する内部空洞における最上部よりも高い位置に設定されている。通常はエンジン9の上端部よりラジエータ30の上端部の方が高くなるので、当該条件は、ラジエータ30(アッパータンク30A)の内部空洞の最上部より高い位置に当該下限水位を設置すれば充足されることになる。
なお、メイクアップ配管54は、ラジエータコア30Bからウォーターポンプ91に至る流路のどこかに接続すれば良く、ラジエータロアタンク30Cやウォーターポンプ91に連結しても良い。
タンク12の上面には冷却水注入用の開口部が設けられており、当該開口部にはキャップ12Aが取り付けられている。冷却水の補給後にキャップ12Aを締めることでタンク12内が密閉される。タンク12の上限水位は、タンク12内の水層の上部に空気層が確保されるように決定されている。この空気層により冷却水流路内の圧力を安定して保つことができる。また、タンク12の上部又はキャップ12Aには、タンク内部の空気圧を調整可能な圧力弁(図示せず)を設けることが好ましい。
タンク12には2つの開口部が開口している。このうち一方の開口部には、ラジエータ30から抜いた空気が導入されるエア抜き配管52が取り付けられており、他方の開口部には、エンジン9の冷却水流路から抜いた空気が導入されるエア抜き配管53が取り付けられている。図3の例では、エア抜き配管52,53は、タンク12の側面に接続されているが、その接続位置に特に限定は無く、例えばタンク12の上面や下面に接続しても良い。
エア抜き配管52の他端はラジエータ30のアッパータンク30Aの上端部に接続されており、ラジエータ30内に空気が存在する場合には当該空気は冷却水とともにエア抜き配管52を介してタンク12内に導入され気液分離されるようになっている。本実施の形態のエア抜き配管52のラジエータ側は、図6に示すように、熱交換器カバー35のエンジン9側の側面板35Bに設けた孔35Aを介して熱交換器カバー35の内部に導入され、端部がアッパータンク30Aに接続されている。
上述のように、エア抜き配管52は、アッパータンク30Aにおいて特に空気の溜まり易い上端部(最高位部)に接続することが好ましい。しかし、ウォーターポンプ91の稼働により冷却水流路に生じる圧力差に起因してタンク12には冷却水が常に流入するため、最高部位でなくともエア抜きは可能である。そのため、アッパータンク30Aの側面にエア抜き配管52を接続しても良い。
エア抜き配管53の他端は、エンジン9に設けられる冷却水流路が他の部分と比較して相対的に高い位置を通過する部分に接続されている。これにより、エンジン9内の冷却水流路内に空気が存在する場合には、当該空気はエア抜き配管53を介してタンク12内に導入されるようになっている。
エア抜き配管53についても、エア抜き配管52と同様に、エンジン9の冷却水流路における最高部位に接続することが好ましいが、当該冷却水流路の側面に接続しても良い。なお、エンジン9の冷却水流路が複数の頂点を描くように配設されている場合(各頂点の高さは異なっていても良いし、同じでも良い)には、当該複数の頂点のいずれか1つ若しくはそれぞれ又はそれらの近傍にエア抜き配管53を接続することが好ましい。 エンジンカバー17Hは、熱交換装置33の上方に固定され前後方向に延びる回転軸(図示せず)を中心に回転可能に構成されており、エンジンカバー17Hを開閉できるようになっている。エンジンカバー17Hはタンク12の上端より高い位置で保持されている。なお、本実施の形態のエンジンカバー17Hの上面は略水平に延びておりその高さを均一としたが、タンク12の上部の高さだけを他の部分と比較して相対的に高くしても良い。例えば、このようなカバー形状(図5に1点鎖線で示したカバー17Haの形状)を、機械室25内の前端にタンク12を配置したときに採用した場合には、従前より背の高い部分をキャブ7(運転席71)に近づけることができるので、カバー高さを均一にする場合と比較して、運転席71に座った運転者の後方視界を良好に確保できる。
本実施の形態に係る油圧ショベル1が備えるエンジン冷却システムの概略について図4を用いて説明する。なお、図4における矢印は、冷却水(冷却水中に空気が含まれる場合も含む)の流通方向を示しているが、当該矢印は冷却水の流れの方向だけでなく、冷却水が流れる流通路(配管、ホースを含む)をも示すものとする。
図4に示すエンジン冷却システムは、ウォーターポンプ91と、サーモスタット92と、ウォータージャケット93と、ERGクーラ94と、ラジエータ30と、タンク12を備えている。
ウォーターポンプ91は、エンジン9の動力により駆動され、サーモスタット92またはロアータンク30Cからの冷却水を押し出してウォータージャケット93及びEGRクーラに送ることで冷却水を循環している。
ウォータージャケット93は、エンジン9のシリンダ(図示せず)の周囲に設けられた水路であり、ウォーターポンプ9から送り出された冷却水は主にここを通過する際にエンジン9と熱交換してエンジン9を冷却する。
EGRクーラ94は、エンジン排気と冷却水を熱交換することでエンジン排気を冷却するものであり、ここで冷却された排気は吸入空気と混合されて再度シリンダ内に導入される。EGRクーラ94及びこれに関連する冷却系は省略が可能である。
サーモスタット92は冷却水温度に応じて水路を開閉する弁装置であり、冷却水温度が開弁温度以上のときに開き、これによりラジエータ30に冷却水が導入される。一方、開弁温度未満のときのサーモスタット92は閉じており、冷却水はラジエータ30に導入されることなく循環する。図示したサーモスタット92は、エンジン9(ウォータージャケット93及びEGRクーラ94)の外部(アッパータンク30A)に冷却水が出ていく流路に設置されているが、外部(ロアータンク30C)からエンジン9の内部(ウォーターポンプ93)に冷却水が入ってくる流路に設置しても良い。
既述の通り、エア抜き配管53のエンジン側の端部は、エンジン9内に構成される冷却水流路に接続されており、気泡が混入した冷却水は当該流路を介してタンク12に流入される。図4の例ではEGRクーラ94の出口に接続された流路がエンジン内の高い場所を通過している関係上、当該流路にエア抜き配管53が接続されているが、冷却水流路の高さによっては、ウォータージャケット93からサーモスタット92に至る流路に接続されることもあるし、他の流路に接続されることもある。
上記のように構成された建設機械では、ラジエータ30とエンジン9内の冷却水流路で水位が最も高くなる場所よりも高い位置にタンク12の下限水位が設定されるので、ラジエータ30やエンジン9の冷却水流路で空気が発生しても、これをエア抜き配管52,53を介してタンク12に導入して冷却水から分離することができる。また、シュラウド11の側面板11Aに隣接する位置にタンク12を配置したので、ラジエータ30、エンジン9およびラジエータロアホース51のいずれからもタンク12までの距離を短くでき、これによりエア抜き配管52,53及びメイクアップ配管54の配設が極めて容易になる。さらにこのようにタンク12を配置すると、メイクアップ配管54をタンク12の底面から略鉛直に延ばしてラジエータロアホース51に連結できるので、冷却水補給時のタンク12からラジエータロアホース51への給水が極めてスムーズに行われる。さらに、シュラウド11の上面板11Bにおける開口部14Aの上部にはタンク12を含む他の機器が存在しないので、開口部14Aからブロアを挿入してラジエータの清掃を行うことも極めて容易である。したがって、本実施の形態によれば、エンジン冷却系への注水性能やラジエータ30の清掃性能を損なうことなく、ラジエータ30およびエンジン9に設けられる冷却水流路内のエア抜きが可能となる。
タンク12への給水時やラジエータ30の清掃時には、作業員は上面板17E,17Fに載った状態で作業を行うことになるため、上記のように上段部11b1に開口部14A及び点検窓カバー14Bを設けると開口部14A及び点検窓カバー14Bへの作業員のアクセスが容易になる。さらに、本実施の形態ではヒンジ14Cを開口部14Aの後端辺側に設けているので、点検窓カバー14Bの開閉時に作業員が把持する自由端を上面板17E,17F側に配置できるので、点検窓カバー14Bの開閉作業が容易になる。さらに、ヒンジ14Cを開口部14Aの後端辺側に設けると、開口部14Aを開放した状態では、ヒンジ14Cを中心に回転した点検窓カバー14Bの自由端が後方に位置することになるので、点検窓カバー14Bがラジエータ30の清掃時の邪魔になることがない。
また、上段部11b1の高さは、本実施の形態のように、ラジエータアッパーホース50及びインタークーラホース56及びエア抜き配管52の上端より上の位置に設定することが好ましい。このようにすると、点検窓カバー14Bを全開しても、点検窓カバー14Bの上面が、ラジエータアッパーホース50、インタークーラホース56またはエア抜き配管52に接触する前に上段部11b1の一部またはこれから上方に突き出たボルト等の固定具に接触するので、点検窓カバー14Bの上面がラジエータアッパーホース50、インタークーラホース56またはエア抜き配管52に接触して損傷することが防止できる。
なお、上段部11b1と下段部11b2の高さ関係にかかわらず、清掃作業中は上段部11b1又はその周辺の部材と点検窓カバー14Bとの間にサポートロッド(つっかえ棒)を架け渡すことで、点検窓カバー14Bが清掃の邪魔にならない状態に保持し、かつ、清掃作業終了後に点検窓カバー14Bの自由端を把持しやすい位置に保持することが好ましい。
また、上記の実施の形態では、熱交換器カバー35のエンジン側(シュラウド側)の側面板35Bからは、ラジエータアッパーホース50、インタークーラホース56およびエア抜き配管52がエンジン9側に突き出していたが、これに加えてオイルクーラ31に作動油を供給するための作動油配管やその他の配管が突き出る場合もある。また、当該作動油配管、ラジエータアッパーホース50、インタークーラホース56およびエア抜き配管52の少なくとも1つの配管が熱交換器カバー35のエンジン側の側面板35Bから突き出すこともあり、さらに、その突き出し位置も図示した例とは異なる場合もあるが、どのような場合でも本発明は適用可能であり、さらにどのような場合でも点検窓カバー14Bの上面と各配管との接触を回避できる。
ところで、本実施の形態の上面板11Bは、上段部11b1に設けた点検窓カバー14Bへのアクセスを容易にするために上段部11b1と下段部11b2で高さを異ならせたが、上段部11b1を下段部11b2の高さまで下げて上面板11Bを水平面にしても良い。ただし、上記の実施の形態のように、タンク12の下端をラジエータ30より上方で保持する目的で、下段部11b2の高さより上方の位置でブラケット15を側面板11Aに固定した場合には、上段部11b1を下段部11b2の高さまで下げても、側面板11Aの形状はそのままにする必要がある(すなわち、側面板11Aの上端では前方の方が後方よりも高くなった段差状とする必要がある)。
また、上記の例では、側面板11Aを熱交換器カバー35の上面まで延ばし、そこにブラケット15を取り付けてタンク12を支持したが、シュラウド11の上面板11Bと側面板11Aの上端部とが熱交換器カバー35の上面より低い場合には、上記で説明したものよりも背の高いブラケットを側面板11Aに取り付け、上記と同じ条件を満たす位置にタンク12を設置すればよい。また、ブラケット15の固定先は側面板11A(シュラウド11)に限らず、エンジン9の前後に略垂直に設けられ機械室25を画定する隔壁又はこれに類する部材(構造部材)にしても良い。
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例が含まれる。例えば、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、ある実施の形態に係る構成の一部を、他の実施の形態に係る構成に追加又は置換することが可能である。