以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
図1は、実施形態にかかる車両の概略構成の一例を示す模式図である。本実施形態では、車両100は、例えば、内燃機関(エンジン20)を駆動源とする自動車(内燃機関自動車)であってもよいし、電動機(モータ、図示されず)を駆動源とする自動車(電気自動車、燃料電池自動車等)であってもよいし、それらの双方を駆動源とする自動車(ハイブリッド自動車)であってもよい。また、車両100は、種々の変速装置を搭載することができるし、内燃機関や電動機を駆動するのに必要な種々の装置(システム、部品等)を搭載することができる。また、車両における車輪の駆動に関わる装置の方式や、数、レイアウト等は、種々に設定することができる。また、本実施形態では、一例として、車両100は、四輪車(四輪自動車)であり、左右二つの前輪FL,FRと、左右二つの後輪RL,RRとを有する。なお、図1では、車両前後方向(矢印FB)の前方は、左側である。
本実施形態の車両100は、図1に示すように、エンジン20と、ブレーキ制御部30と、撮像装置51と、レーダ装置52と、ブレーキスイッチ42と、アクセルペダルストロークセンサ44と、前後方向加速度センサ43と、制御装置40とを備えている。
また、車両100は、二つの前輪FR,FLのそれぞれに対応して、ホイールシリンダWfr,Wflと車輪速度センサ41fr,41flとを備える。また、二つの後輪RR,RLのそれぞれに対応して、ホイールシリンダWrr,Wrlと車輪速度センサ41rr,41rlとを備える。なお、これ以降、車輪速度センサ41fr,41fl,41rr,41rlを総称する場合には、「車輪速度センサ41」と呼ぶ。また、ホイールシリンダWfr,Wfl,Wrr,Wrlを総称する場合には、「ホイールシリンダW」と呼ぶ。
なお、車両100は、図1の他にも車両100としての基本的な構成要素を備えているが、ここでは、車両100に関わる構成ならびに当該構成に関わる制御についてのみ、説明される。
撮像装置51は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCIS(CMOS Image Sensor)等の撮像素子を内蔵するデジタルカメラである。撮像装置51は、所定のフレームレートで画像データ(動画データ、フレームデータ)を出力することができる。本実施形態では、撮像装置51は、例えば、車体(不図示)の前側(車両前後方向の前方側)の端部(平面視での端部)に位置され、フロントバンパー等に設けられうる。そして、撮像装置51は、車両100の前方の先行車両501(図4参照)等の回避対象物を含む画像データを出力する。画像データは、回避対象物を検出する元となるデータの一例である。
レーダ装置52は、例えば、ミリ波レーダ装置である。レーダ装置52は、先行車両501等の回避対象物までの距離(離間距離、検出距離、図4参照)を示す距離データや、回避対象物との相対速度(速度)を示す速度データ等を出力することができる。なお、制御装置40は、レーダ装置52による車両100と先行車両501等の回避対象物との間の距離の測定結果を随時(例えば、一定の時間間隔等で)更新して記憶部に記憶し、演算には更新された距離の測定結果を利用することができる。
車輪速度センサ41は、各車輪速度センサ41に対応する車輪が所定角度回転する毎にパルスを有する信号を出力する。
アクセルペダルストロークセンサ44は、アクセルペダルAPに設けられ、ドライバーによるアクセルペダルAPの踏込み量を検知する。ブレーキスイッチ42は、ブレーキペダルBPに設けられ、ドライバーによるブレーキペダルBPの操作の有無を示すブレーキ操作信号を出力する。具体的には、ブレーキスイッチ42は、ブレーキペダルBPが操作されている場合にはオン(High)のブレーキ操作信号を出力し、ブレーキペダルBPが操作されていない場合にはオフ(Low)のブレーキ操作信号を出力する。
前後方向加速度センサ43は、車体前後方向の加速度(前後加速度)を検出し、前後加速度Gxを表す信号を出力する。
エンジン20は、ドライバーによるアクセルペダルAPの操作に応じた動力を出力する。ブレーキ制御部30は、ブレーキECU12からの指令により、各車輪FR,FL,RR,RLにブレーキ液圧によるブレーキ力を発生させる。ブレーキ制御部30は、ブレーキペダルBPの操作力に応じたブレーキ液圧を発生し、車輪FR,FL,RR,RLにそれぞれ配置されたホイールシリンダWfr,Wfl,Wrr,Wrlに供給するブレーキ液圧をそれぞれ調整可能となっている。
制御装置40は、車両100の各部から信号やデータ等を受け取るとともに、車両100の各部の制御を実行する。制御装置40は、図1に示すように、衝突回避ECU(Electronic Control Unit)60と、ブレーキECU12と、エンジンECU13とを主に備えている。本実施形態では、制御装置40は、衝突回避装置の一例である。
エンジンECU13は、燃料の噴射制御及び吸気量の調整制御などのエンジン20の各種制御を司る。
ブレーキECU12は、自車両に対する制動トルクの調整制御、及び車輪FR,FL,RR,RL毎の制動トルクの調整制御などを司る。ブレーキECU12は、車輪FR,FL,RR,RL毎に設けられた各車輪速度センサ41のうち少なくとも一つの車輪速度センサ41からの検出信号に基づき自車両の車体速度と、前後方向加速度センサ43からの検出信号に基づき自車両の減速度等を算出し、他のECUへ送出する。なお、ここで算出される「減速度」は、自車両が減速しているときには正の値となり、自車両が加速しているときには負の値となる。
また、ブレーキECU12は、車体速度を所定の上限速度または上限加速度以下に制限する加速制限機能を実行する。加速制限機能は、アクティブスピードリミッタ(ASL)とも呼ばれる。ブレーキECU12は、加速制限機能の実行開始時に、加速制限機能の実行が行われる旨を衝突回避ECU60に通知し、加速制限機能の実行終了時に、加速制限機能の実行が終了する旨を衝突回避ECU60に通知する。衝突回避ECU60は、ブレーキECU12から加速制限機能の実行開始の旨を受信したら、加速制限機能の実行フラグをオンにして記憶部65に記憶し、ブレーキECU12から加速制限機能の実行終了の旨を受信したら、記憶部65の加速制限機能の実行フラグをオフとする。
衝突回避ECU60は、衝突回避機能の実行を制御する。衝突回避ECU60の詳細については後述する。各ECUは、コンピュータとして構成されており、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理部(不図示)と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の記憶部(衝突回避ECU60では記憶部65)を備えている。
演算処理部は、不揮発性の記憶部(例えばROMや、フラッシュメモリ等)に記憶された(インストールされた)プログラムを読み出し、当該プログラムにしたがって演算処理を実行し、各ECUとして機能する。特に、衝突回避ECU60は、後述する図2に示された各部として機能(動作)する。また、記憶部には、制御に関わる各種演算で用いられるデータ(テーブル(データ群)や、関数等)や、演算結果(演算途中の値も含む)等が記憶されうる。
なお、上述した車両100の構成はあくまで一例であって、種々に変更して実施することができる。車両100を構成する個々の装置としては、公知の装置を用いることができる。また、車両100の各構成は、他の構成と共用することができる。また、車両100は、回避対象物を検出するためにソナー装置を備えることができる。
次に、衝突回避ECU60の詳細について説明する。図2は、本実施形態の衝突回避ECU60の機能的構成の一例を示すブロック図である。本実施形態の衝突回避ECU60は、ハードウエアとソフトウエア(プログラム)との協働により、図2に示されるように、判断部61と、衝突回避制御部66と、警報制御部62と、報知制御部63と、回避制動制御部64として機能(動作)することができる。すなわち、プログラムには、一例としては、図2に示される、記憶部65を除く各ブロック、に対応したモジュールが含まれうる。ここで、警報制御部62、報知制御部63、回避制動制御部64は衝突回避実行部の一例である。記憶部65には、後述する各種の閾値、基準時間T1等、各種フラグが保存される。
衝突回避制御部66は衝突回避機能の作動を制御する。衝突回避機能は、回避対象物である先行車両等と自車両との相対距離を一定距離に維持して先行車両等との衝突を回避する機能である。衝突回避機能として、具体的には、回避制動、報知、警報がある。回避制動は、自動ブレーキともいい、先行車両等と自車両1との相対距離を維持するために、ブレーキECU12、ブレーキ制御装置30により車両1に制動をかけることである。報知は、運転席の前方等に設けられたスピーカ(不図示)から、回避制動を作動させる旨の出力である。警報は、上記スピーカ(不図示)から、回避制動を作動させるべき旨の出力である。報知と警報とは、出力音が異なる。
それぞれの衝突回避機能の処理は以下のように行われる。図3は、本実施形態の衝突回避機能の実行処理の手順を示すフローチャートである。
まず、衝突回避制御部66は、先行車両と衝突するまでの予測時間である衝突予測時間TTC(Time To Collision)を算出する(S11)。ここで、衝突回避制御部66は、衝突予測時間TTCを、次の運動方程式(1)式に基づく(2)式によって算出することができる。
ここで、tは衝突予測時間TTC、VABは自車両の先行車両に対する相対速度、XABは自車両から先行車両までの相対距離、αABは自車両の先行車両に対する相対加速度である。なお、衝突回避制御部66は、VABを車輪速度センサ41の検知結果に基づき算出し、αABを前後方向加速度センサ43の検知結果に基づき算出し、XABをレーダ装置52の検知結果に基づき算出することができる。
なお、(2)式においてtの値が負となる場合やルート内の値が負となる場合には、衝突回避制御部66は、衝突予測時間TTCであるtを次式で算出する。
t=XAB/VAB
次に、衝突回避制御部66は、衝突予測時間TTCが所定の回避制動閾値以下であるか否かを判断する(S12)。そして、衝突予測時間TTCが回避制動閾値以下である場合には(S12:Yes)、衝突回避制御部66は、回避制動制御部64に対し回避制動の作動の旨の指令を送出し、回避制動を作動させる(S13)。すなわち、回避制動制御部64は、当該指令を受けて、ブレーキECU12に対して制動を指示し、これにより、ブレーキ制御部30による制動が行われる。
衝突予測時間TTCが回避制動閾値より大きい場合には(S12:No)、衝突回避制御部66は、衝突予測時間TTCが所定の報知閾値以下であるか否かを判断する(S14)。ここで、報知閾値は、回避制動閾値より小さい値である。そして、衝突予測時間TTCが報知閾値以下である場合には(S14:Yes)、衝突回避制御部66は、報知制御部63に対し報知の作動の旨の指令を送出して、報知を作動させる。(S15)。すなわち、報知制御部63が回避制動を行う旨をスピーカから出力させる。
衝突予測時間TTCが報知閾値より大きい場合には(S14:No)、衝突回避制御部66は、衝突予測時間TTCが所定の警報閾値以下であるか否かを判断する(S16)。ここで、警報閾値は、報知閾値より小さい値である。そして、衝突予測時間TTCが警報閾値以下である場合には(S16:Yes)、衝突回避制御部66は、警報制御部62に対し警報の作動の旨の指令を送出して、警報を作動させる。(S17)。すなわち、警報制御部62が回避制動を行うべき旨をスピーカから出力させる。
衝突予測時間TTCが警報閾値より大きい場合には(S16:No)、衝突回避制御部66は、警報・報知・回避制動の継続判定を行う(ステップS18)。警報・報知・回避制動の継続判定は、自車両の減速や先行車両の進行等により衝突予測時間TTCが増加した場合、警報、報知、回避制動の各制御を継続するか否かを判断する処理である。
そして、警報・報知・回避制動の継続判定、または警報、報知、回避制動の各作動の後、衝突回避制御部66は、衝突回避機能作動の禁止・終了の判定処理を行う(S19)。この判定処理は、アクセルペダルAPの操作に基づいて、警報、報知、回避制動の衝突回避機能の作動を禁止または終了するか否かを判定する処理である。衝突回避機能の作動の禁止・終了の処理は、アクセルオーバーライド処理とも呼ばれる。
以下、本実施形態の衝突回避機能作動の禁止・終了の判定について説明する。
図2に戻り、判断部61は、ドライバーによるアクセルペダルAPの操作に基づいてドライバーによる明らかな加速意思の有無を判断する。具体的には、判断部61は、アクセルペダルストロークセンサ44から、アクセルペダルストロークセンサ44で検知されたアクセルペダルAPの踏込み量を入力し、踏込み量と第1閾値とを比較して、踏込み量が第1閾値以上である場合にドライバーによる明らかな加速意思があると判断する。ここで、第1閾値は、明らかな加速意思の有無を判断するための基準となるため、充分に大きい値とすることができ、例えば、全開加速のための踏込み量(すなわち、アクセルペダルAPの最大踏込み量=100%)の65%等の踏込み量に設定することができる。ただし、第1閾値はこれに限定されるものではない。
衝突回避制御部66は、回避制動(自動ブレーキ)が作動していない状態で、判断部61によってドライバーによる明らかな加速意思があると判断された場合には、衝突回避機能(警報、報知、回避制動)の作動を禁止する制御を行う。すなわち、この場合、衝突回避制御部66は、衝突予測時間TTCの値にかかわらず、警報制御部62、報知制御部63、回避制動制御部64に対して作動の指令を送出しない。なお、衝突回避制御部66は、衝突回避機能(警報、報知、回避制動)を作動させる場合に、いずれの衝突回避機能、すなわち警報、報知、回避制動を作動したかの情報を記憶部65にフラグとして保存しておく。判断部61は、回避制動を作動中か否かを、当該記憶部65のフラグを参照して判断する。
図4は、本実施形態における先行車両の追い越しを行う状態の一例を示す模式図である。自車両1が走行中に先行車両501の追い越しやすり抜けを行おうとして、ドライバーがアクセルペダルAPを踏み込んで加速した場合を考える。この場合、自車両1では、先行車両501との車間距離が短くなり、衝突予測時間TTCも減少するため、衝突回避機能(警報/報知/回避制動)を行わなければ先行車両501と衝突を回避することが不可能な領域503に入る。すなわち、衝突予測時間TTCが閾値以下となり、衝突回避機能が作動してしまい、ドライバーの意図である先行車両501の追い越しやすり抜けを阻害してしまう。
このため、本実施形態では、ドライバーによる明らかな加速意思があると判断された場合には、衝突回避制御部66は、衝突回避機能(警報、報知、回避制動)を作動させないこととし、先行車両501の追い越しやすり抜けを可能としているのである。
なお、本実施形態では、アクセルペダルAPの踏込み量が第1閾値以上である場合に明らかな加速意思ありと判断しているが、加速意思ありの判断基準はこれに限定されるものではない。
また、衝突回避制御部66は、回避制動の作動が開始後、減速度の立ち上がりが終了するまでは、衝突回避機能の作動の終了を行わない。具体的には、衝突回避制御部66は、回避制動の作動が開始してから所定の閾値時間T1が経過するまでは、原則として、衝突回避機能(警報、報知、回避制動)の作動の終了を行わない。この閾値時間T1は、回避制動が開始された後、回避制動開始後に制動での減速による慣性でアクセルペダルAPがドライバーにより踏み増しされてしまう時間に相当する。かかる時間は予め測定しておき、閾値時間T1として記憶部65に設定保存される。
回避制動の作動が開始してその直後にアクセルペダルAPの操作が行われた場合には、回避制動によって車両100が減速することから、減速による慣性でドライバーがアクセルペダルAPを誤って踏み込んだ可能性がある。このため、本実施形態では、衝突回避機能の作動開始から閾値時間T1までの間は、減速の慣性によるアクセルペダルAPの踏込み量の最大値を超えない範囲の踏込み量が検知されても、衝突回避機能の作動を終了しないこととし、回避制動開始後に制動での減速の慣性によるアクセルペダルAPの操作で作動中の衝突回避機能が終了しないようにしている。
従って、回避制動の作動が開始してから閾値時間T1経過前に、アクセルペダルストロークセンサ44から検知されたアクセルペダルAPの踏込み量が、減速の慣性による踏込み量の最大値である第3閾値を超えた場合には、衝突回避制御部66は、衝突回避機能(警報、報知、回避制動)の作動を終了する。すなわち、この場合、衝突回避制御部66は、警報制御部62、報知制御部63、回避制動制御部64に対して作動の終了の指令を送出する。
ここで、第3閾値は、アクセルペダルAPの誤踏込みを判断するための閾値である。第3閾値は、減速の慣性による踏込み量の最大値以上の値であれば特に限定されるものではない。ここで、減速の慣性による踏込み量の最大値は予め測定しておき、第3閾値として記憶部65に設定保存される。本実施形態では、第3閾値は、全開加速のための踏込み量(アクセルペダルAPの最大踏込み量=100%)の80%に設定している。ただし、第3閾値はこれに限定されるものではない。
図5は、本実施形態における回避制動開始後からの減速度とアクセル踏込み量の経時的変化の一例を示す図である。図5において、横軸はいずれも時間である。図5(a)のグラフは、回避制動開始後からの減速度の時間的変化を示し、図5(b)のグラフは、回避制動開始後からのアクセル踏込み量の時間的変化を示している。
図5(a)のグラフに示すように、回避制動の作動が開始すると減速度が徐々に増加するが、減速度が増加して一定のGに達して維持される時点(立ち上がった状態)までを閾値時間T1としている。そして、図5(b)のグラフに示すように、閾値時間T1の経過前において、減速による慣性でアクセルペダルAPが踏み込まれるが、第3閾値を超えない限り、衝突回避制御部66は、衝突回避機能の作動の終了(キャンセル)を行わない。
また、判断部61は、ドライバーによるアクセルペダルAPの操作に基づいて、ドライバーによる衝突回避機能の明らかなキャンセル意思の有無を判断する。具体的には、判断部61は、アクセルペダルストロークセンサ44から、アクセルペダルストロークセンサ44で検知されたアクセルペダルAPの踏込み量を入力する。そして、判断部61は、アクセルペダルAPの踏込み量が所定の第2閾値以上である場合、または一定時間内に複数回のアクセルペダルAPの踏込みが検知された場合、若しくは、アクセルペダルAPの踏込み速度が所定の速度閾値以上である場合に、ドライバーによる衝突回避機能の明らかなキャンセル意思があると判断する。
衝突回避制御部66は、回避制動(自動ブレーキ)が作動している状態で、判断部61によってドライバーによる衝突回避機能の明らかなキャンセル意思があると判断された場合には、衝突回避機能(警報、報知、回避制動)の作動を終了する。すなわち、この場合、衝突回避制御部66は、警報制御部62、報知制御部63、回避制動制御部64に対して作動の終了の指令を送出する。
回避制動の作動開始から、回避制動で減速による慣性でアクセルペダルAPが踏み増しされてしまう基準時間T1を経過した後も、大きな減速が継続しているため、ドライバーの加速意思を捉えることは困難である。しかしながら、キャンセルの手段を設けずに、回避制動の作動後に、アクセルペダルAPの操作による衝突回避機能のキャンセルを一切受け付けないとすると、故障や誤認識で衝突回避の制御が継続してしまった際に、回避制動が作動したままになり、車両を動作させることが困難となり、例えば、先行車両または後方車両との衝突回避のための追い越しも困難となる。このため、本実施形態では、衝突回避制御部66は、アクセルペダルAPの操作から、ドライバーによる衝突回避機能の明らかなキャンセル意思があると判断された場合には、衝突回避機能(警報、報知、回避制動)の作動を終了させて、衝突回避機能が継続して実行される場合でも、車両を動作させることを可能とし、このため、先行車両または後方車両との衝突回避のための追い越しを可能としている。
図6は、本実施形態におけるアクセルペダルAPの踏込み量による明らかなキャンセル意思について説明するための図である。図6は、回避制動の作動中におけるアクセル踏込み量について示しており、横軸が時間、縦軸がアクセル踏込み量である。
図6に示すように、回避制動の作動中において、ドライバーによりアクセルペダルが踏み込まれ、アクセル踏込み量が第2閾値以上となった時点で、判断部61が回避制動の作動の明らかなキャンセル意思があったと判断し、衝突回避制御部66が回避制動の作動を終了させている。ここで、第2閾値は、明らかなキャンセル意思の有無を判断するための基準となるため、充分に大きい値とすることができる。本実施形態では、第2閾値を、全開加速のための踏込み量(アクセルペダルAPの最大踏込み量=100%)に設定している。
このように、第2閾値は、回動制動による減速制御中に、ドライバーが通常操作することのないアクセルペダルAPの操作量(踏込み量)に設定されるが、解除後の車両100の挙動等を考慮して、最大踏込み量である100%以外の値に設定してもよい。また、例えば、第1閾値は、駆動トルクの小さいエンジンを搭載している場合や減速比の小さなギヤ選択がなされている場合等の条件のときは、加速する際のドライバーのアクセルペダルAPの操作量は大きくなる。このため、第1閾値は、上記条件以外の場合に比べて、相対的に大きく設定される。
さらに、例えば、第3閾値は、衝突回避による減速度の変化が小さい場合やアクセルペダルAPの反力が大きい場合、アクセルペダルAPの全閉から全開までのストローク量が大きい場合等の条件のときには、誤って操作されるアクセル開度(アクセルペダルAPの踏込み量)が小さくなる。このため、第3閾値は、上記条件以外の場合に比べて、相対的に小さく設定される。
従って、条件によっては、本実施形態と異なり、第1閾値と第3閾値の大小関係が、第3閾値≦第1閾値となる場合もある。また、回避制動による減速制御の開始後の全域で第2閾値による衝突回避機能の作動の終了が可能であるため、第2閾値>第3閾値となるように第2閾値と第3閾値とが設定されることが望ましい。しかし、第2閾値≦第3閾値となるように第2閾値と第3閾値とが設定された場合でも、基準時間T1以外で第2閾値により衝突回避機能の作動を終了することができる。
図7は、本実施形態におけるアクセルペダルAPの踏み込み速度による明らかなキャンセル意思について説明するための図である。図7は、回避制動の作動中におけるアクセル踏込み量とアクセル踏込み速度について示している。図7(a)のグラフがアクセル踏込み量の時間的変化を示し、図7(b)のグラフがアクセル踏込み速度の時間的変化を示している。本実施形態では、回避制動の作動中において、図7(a)のグラフに示すように、アクセル踏込み量の変化率が所定の勾配以上となった時点、あるいは、図7(b)のグラフに示すように、アクセル踏込み速度が所定の速度閾値以上となった時点で、判断部61がドライバーによる衝突回避機能の明らかなキャンセル意思があると判断し、衝突回避制御部66が回避制動の作動を終了させている。ここで、アクセル踏込み速度は、アクセルペダルAPの踏込み量の変化量から算出される。
図8は、本実施形態におけるアクセルペダルAPの踏込み回数による明らかなキャンセル意思について説明するための図である。図8は、回避制動の作動中におけるアクセルペダルAPの踏込み量について示しており、横軸が時間、縦軸がアクセル踏込み量である。ここで、アクセルペダルストロークセンサ44からの検知信号を入力し、検知信号である踏込み量が0より大きい場合に、アクセルペダルAPが操作されていると判断し、当該操作を踏込み回数の1回分としてカウントする。
図8に示すように、回避制動の作動中において、ドライバーによりアクセルペダルが踏込み回数閾値である2回踏み込まれた場合に、2回目の踏込みを検知した時点で、判断部61が回避制動の作動の明らかなキャンセル意思があったと判断し、衝突回避制御部66が回避制動の作動を終了させている。なお、図8の例では踏込み回数閾値を2回としているが、踏込み回数閾値を3回以上として構成することもできる。あるいは、明らかなキャンセル意思があると判断するための条件として、「アクセルペダルAPの踏込み量0%が所定の時間以上継続した場合」や「回避制動の作動後、所定の時間が経過した場合」等の検出する期間や状態を限定する条件と組み合わせた上で、踏込み回数閾値を1回とするように構成することもできる。さらに、上記検出する期間や状態を限定する条件に「ブレーキペダルBPが踏まれていない場合」や「ハンドルが操作されている場合」等の条件を加えて、踏込み回数閾値を1回とするように構成してもよい。
なお、本実施形態では、アクセルペダルAPの踏込み量が第2閾値以上である場合、または一定時間内に複数回のアクセルペダルAPの踏込みが検知された場合、若しくは、アクセルペダルAPの踏込み速度が速度閾値以上である場合の3つの場合に明らかなキャンセル意思ありと判断しているが、これら3つの場合に限定されるものではない。
また、判断部61は、記憶部65の加速制限機能の実行フラグを参照して、ブレーキECU12により加速制限機能が実行されているか否かを判断する。そして、衝突回避制御部66は、加速制限機能の実行中は、アクセルペダルストロークセンサ44でアクセルペダルAPの操作にかかわらず、すなわち明らかな加速意思や明らかなキャンセル意思を示すようなアクセルペダルAPの操作が検知された場合でも、衝突回避機能の作動の禁止や終了を行わない制御を行う。
車両100の速度や加速度が制限される加速制限機能の実行制御中は、アクセルペダルAPの操作と車両100の速度、加速度が一致しない状態であり、ドライバーによりアクセルペダルAPの操作が通常の操作と異なる恐れがある。言い換えれば、加速制限機能の実行制御中では、ドライバーがアクセルペダルAPを操作しても加速感が伴わないことから、アクセルペダルAPの踏込み量によるドライバーの明らかな加速意思を判断することが困難である。このため、本実施形態では、加速制限機能の実行制御中は、アクセルペダルAPの操作が検知された場合でも、衝突回避機能の作動の禁止や終了を行わないようにして、衝突回避機能の作動の禁止や終了の判定における誤判断を防止している。
図9は、本実施形態の加速制限機能の実行制御中における自車両の車速、アクセル踏込み量、加速度の時間的変化を示す図である。図9(a)は自車両の車速の変化の経時的変化を示し、図9(b)はアクセル踏込み量の経時的変化を示し、図9(c)は加速度の経時的変化を示している。
図9(a)、(b)に示すように、加速制限機能が開始されると、アクセルペダルAPの踏込み量が増加した場合でも、車速は上限速度に制限される。また、アクセルペダルAPの踏み込み量が増加した場合、車両100の加速度は本来、図9(c)の点線に示すように増加していくが、制限機能が開始されると、図9(c)の実線に示すように加速度は低下する。従って、アクセルペダルAPの踏込み量が第1閾値以上となった場合でも、車体速度や加速度は制限されるので、明らかな加速意思と判断することはできない。
また、判断部61は、ブレーキスイッチ42からブレーキ操作信号を入力し、ブレーキ操作信号がオン/オフのいずれを示すかによりブレーキペダルBPの操作の有無を判断する。また、判断部61は、アクセルペダルストロークセンサ44からの検知信号を入力し、上述のように、検知信号である踏込み量が0より大きい場合に、アクセルペダルAPが操作されていると判断する。
そして、衝突回避制御部66は、判断部61によって、ブレーキペダルBPとアクセルペダルAPとが同時に操作されていると判断された場合には、アクセルペダルストロークセンサ44でアクセルペダルAPの操作にかかわらず、衝突回避機能の作動の禁止や終了を行わない制御を行う。
アクセルペダルAPとブレーキペダルBPの双方が踏み込まれている状態は、ドライバーがブレーキペダルBPを踏み込んだが、アクセルペダルAPにも触ってしまった等の特殊な状態であることが多い。このような特殊な状態では、加速よりも減速を優先させるために、ドライバーのアクセルペダルAPの操作による衝突回避機能の作動の禁止や終了を行わないようにしている。
以下、このような本実施形態の衝突回避機能作動の禁止・終了の判定(図3のS19)について、一連の流れで説明する。図10は、本実施形態の衝突回避機能作動の禁止・終了の判定処理の手順の一例を示すフローチャートである。図10に示す処理は、図3のS13で回避制動が作動した場合、S15で報知が作動した場合、S17で警報が作動した場合のそれぞれの場合において別個に実行される。
まず、判断部61は、ブレーキECU12等において、加速制限機能が実行中であるか否かを、記憶部65の加速制限機能の実行フラグを参照して判断する(S31)。そして、加速制限機能が実行中である場合には(S31:Yes)、処理は終了する。これにより、衝突回避機能の作動の禁止・終了は、アクセルペダルAPの操作にかかわらず行われない。
一方、加速制限機能が実行中でない場合には(S31:No)、判断部61は、ブレーキスイッチ42から出力されるブレーキ操作信号がオンであるか否かを判断することにより、ブレーキペダルBPの操作を検知したか否かを判断する(S32)。そして、ブレーキペダルBPの操作を検知した場合には(S32:Yes)、処理は終了する。これにより、衝突回避機能作動の禁止・終了は行われず、ブレーキペダルBPによる操作がドライバーがアクセルペダルAPの操作より優先されたことになる。
一方、ブレーキペダルBPの操作が検知されない場合には(S32:No)、判断部61は、記憶部65のフラグを参照して、回避制動(自動ブレーキ)が作動中であるか否かを判断する(S33)。回避制動の作動中でない場合には(S33:No)、判断部61は、アクセルペダルストロークセンサ44からの検知信号により、アクセルペダルAPの踏込み量が第1閾値以上であるか(すなわち加速走行であるか?)を判断する(S34)。
回避制動の作動中でなく、アクセルペダルAPの踏込み量が第1閾値以上である場合には(S34:Yes)、判断部61はドライバーによる明らかな加速意思があると判断し、衝突回避制御部66は、警報または報知が作動中であれば警報または報知の作動を終了し、警報または報知が作動中でなければ警報または報知の作動を禁止する。また、衝突回避制御部66は、回避制動の作動を禁止する(S35)。そして、処理は終了する。
S34において、アクセルペダルAPの踏込み量が第1閾値未満である場合には(S34:No)、処理は終了する。従って、衝突回避機能の作動の禁止は行われない。
S33において、回避制動の作動中である場合には(S33:Yes)、判断部61は、回避制動の作動開始から閾値時間T1が経過しているか否か、すなわち減速度の立ち上がりが終了しているか否かを判断する(S36)。そして、回避制動の作動開始から閾値時間T1が経過していない場合、すなわち、減速度の立ち上がりが終了していない場合には(S36:No)、判断部61は、アクセルペダルストロークセンサ44からの検知信号により、アクセルペダルAPの踏込み量が第3閾値以上であるか(すなわち減速の慣性による踏込み量を超えているか?)を判断する(S37)。
そして、アクセルペダルAPの踏込み量が第3閾値以上である場合には(S37:Yes)、衝突回避制御部66は、警報、報知、回避制動の作動を終了する(S41)。
一方、S37において、アクセルペダルAPの踏込み量が第3閾値未満である場合には(S37:No)、処理は終了する。従って、衝突回避機能の作動の終了は行われない。
S36において、回避制動の作動開始から閾値時間T1が経過した場合、すなわち、減速度の立ち上がりが終了した場合には(S36:Yes)、判断部61は、アクセルペダルAPの踏込み量が第2閾値以上であるか(すなわち全開加速走行であるか?)を判断する(S38)。アクセルペダルAPの踏込み量が第2閾値以上である場合には(S38:Yes)、判断部61は、ドライバーによる衝突回避機能の作動の明らかなキャンセル意思があると判断し、衝突回避制御部66は、警報、報知、回避制動の作動を終了する(S41)。
一方、アクセルペダルAPの踏込み量が第2閾値未満である場合には(S38:No)、判断部61は、アクセルペダルストロークセンサ44からの検知信号により、一定時間内に複数回のアクセルペダルAPの踏込みがあったか否かを判断する(S39)。一定時間内に複数回のアクセルペダルAPの踏込みがあった場合には(S39:Yes)、判断部61は、ドライバーによる衝突回避機能の作動の明らかなキャンセル意思があると判断し、衝突回避制御部66は、警報、報知、回避制動の作動を終了する(S41)。
一方、一定時間内に複数回のアクセルペダルAPの踏込みがなかった場合には(S39:No)、判断部61は、アクセルペダルストロークセンサ44からの検知信号により、アクセルペダルAPの踏込み速度が速度閾値以上であるか否かを判断する(S40)。アクセルペダルAPの踏込み速度が速度閾値以上である場合には(S40:Yes)、判断部61は、ドライバーによる衝突回避機能の作動の明らかなキャンセル意思があると判断し、衝突回避制御部66は、警報、報知、回避制動の作動を終了する(S41)。
一方、アクセルペダルAPの踏込み速度が速度閾値未満である場合には(S40:No)、処理は終了する。従って、衝突回避機能の作動の終了は行われない。
このように本実施形態では、回避制動(自動ブレーキ)が作動していない状態で、判断部61により、ドライバーによるアクセルペダルAPの操作に基づいてドライバーによる明らかな加速意思があると判断された場合には、衝突回避制御部66が衝突回避機能(警報、報知、回避制動)の作動を禁止する制御を行う。このため、本実施形態では、例えば、衝突回避機能が搭載された車両の走行において、ドライバーの意図を反映して、ドライバーが意図した動作、すなわち先行車両の追い越しやすり抜けを行うことができる。
また、本実施形態では、衝突回避制御部66が回避制動の作動が開始後、減速度の立ち上がりが終了するまでは、衝突回避機能の作動の終了を行わない。このため、本実施形態によれば、例えば、回避制動による車両100の減速による慣性でドライバーがアクセルペダルAPを誤って踏み増したような場合でも、衝突回避機能の作動を終了しないこととし、衝突回避機能の作動を確実にすることができる。
また、本実施形態では、回避制動の作動が開始してから減速度の立ち上がりが終了する前に(閾値時間T1経過前に)、アクセルペダルストロークセンサ44から検知されたアクセルペダルAPの踏込み量が、減速の慣性による踏込み量の最大値を超えた場合には、衝突回避制御部66が衝突回避機能(警報、報知、回避制動)の作動を終了する。このため、本実施形態によれば、例えば、回避制動の作動開始後の減速度の立ち上がり前でも、ドライバーの意思で衝突回避機能の作動を終了することができる。
また、本実施形態では、回避制動が作動している状態で、判断部61によってアクセルペダルAPの操作により、ドライバーによる衝突回避機能の明らかなキャンセル意思があると判断された場合には、衝突回避制御部66が衝突回避機能(警報、報知、回避制動)の作動を終了する。このため、本実施形態によれば、例えば、回避制動の作動が継続して行われる場合でもドライバーの意図したとおりに車両を動作させることを可能とし、このため、先行車両または後方車両との衝突回避のための追い越し等も可能となる。
また、本実施形態では、車両100の速度や加速度が制限される加速制限機能の実行制御中は、アクセルペダルAPの操作が検知された場合でも、衝突回避機能の作動の禁止や終了を行わない。このため、本実施形態によれば、例えば、衝突回避機能の作動の禁止や終了の判定における誤判断を防止することができる。
また、本実施形態では、ブレーキペダルBPとアクセルペダルAPとが同時に操作されていると判断された場合には、アクセルペダルAPの操作にかかわらず、衝突回避機能の作動の禁止や終了を行わない制御を行う。このため、本実施形態によれば、例えば、アクセルペダルAPとブレーキペダルBPの双方が踏み込まれている特殊な状態において、ドライバーのアクセルペダルAPの操作による衝突回避機能の作動の禁止や終了を行わないので、加速よりも減速を優先させることができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。