JP2016018926A - インピーダンス変換素子およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】挿入損失、自己共振周波数および結合係数のトレードオフの関係を解消して、これらの特性を所定値に定めるようにしたインピーダンス変換素子およびその製造方法を提供する。【解決手段】複数の基材層を積層してなる積層素体10に、直列接続され且つトランス結合する第1コイル素子および第2コイル素子を備える。第1コイル素子は積層素体10のそれぞれ異なる層に設けられた複数の導体パターン(L1A,L1B,L1C,L1D)で構成されていて、第2コイル素子は積層素体10のそれぞれ異なる層に設けられた複数の導体パターン(L2A,L2B)で構成されていて、第1コイル素子を構成する導体パターンおよび第2コイル素子を構成する前記導体パターンは積層方向からの平面視で概形状が同じであり、第1コイル素子の導体パターンと第2コイル素子の導体パターンとの間に空隙層(AG1,AG2,AG3,AG4)が形成されている。【選択図】図2

Description

本発明はアンテナ装置等に適用するインピーダンス変換素子およびその製造方法に関するものである。
近年、携帯電話をはじめとする通信端末装置は多種多様な通信システムへの対応が求められる。このような通信端末装置におけるアンテナ装置は、例えば800MHz〜2.4GHzの広い周波数帯域をカバーする必要がある。
広い周波数帯域に対応するアンテナ装置として例えば特許文献1が開示されている。図10(A)(B)は特許文献1に示されているアンテナ装置の回路図の一例である。図10(A)は簡易的に表した回路図、図10(B)は図10(A)におけるインピーダンス変換回路25を多層基板で構成した場合の、積層構造を考慮して表した回路図である。このアンテナ装置のインピーダンス変換回路25は、図10(B)に表すように、導体パターンL1A,L1B,L1C,L1Dからなる1次コイルおよび導体パターンL2A,L2Bからなる2次コイルを備えている。図11は図10(B)に示すインピーダンス変換回路25を多層基板に構成した場合の各層の導体パターンの例を示す図である。導体パターンL1A,L1B,L1C,L1D,L2A,L2Bは複数の誘電体層に形成されていて、これらの導体パターンの所定位置は多数のビア導体で層間接続されている。
国際公開第2014/050552号
一般に、高周波トランスにおいては、挿入損失、自己共振周波数および結合係数に関する特性が重要である。図11に示したような多層基板で構成されたトランス構造のインピーダンス変換回路においては、挿入損失、自己共振周波数および結合係数は互いにトレードオフの関係にある。例えば、挿入損失を改善することを目的に、導体損を低減しようとして導体パターンのライン幅を太くすると、層間容量は増大する。その結果、自己共振周波数が低下する。また、導体パターンのライン幅を太くするとコイル内径が小さくなるので、結合係数が低下する。また、自己共振周波数を高めることを目的に、1次コイルと2次コイルとの間の容量を小さくしようとして、導体パターンの層間距離を大きくすると、1次コイルと2次コイルとの結合係数が低下する。また、結合係数を高めることを目的に、導体パターンのライン幅を細くしてコイル開口を大きくしようとすると、挿入損失が増大する。さらに、導体パターンのライン幅によってインダクタンス値とキャパシタンス値とを調整しようとすると、このインダクタンス値とキャパシタンス値とはトレードオフの関係となる。自己共振周波数は1/(2π√(LC))で定まるため、インダクタンス値とキャパシタンス値とが個別に低減できなければ自己共振周波数は高められない。
本発明の目的は、挿入損失、自己共振周波数および結合係数のトレードオフの関係を解消して、これらの特性を所定値に定めるようにしたインピーダンス変換素子およびその製造方法を提供することにある。
(1)本発明のインピーダンス変換素子は、
複数の基材層を積層してなる積層素体に、直列接続され且つトランス結合する第1コイル素子および第2コイル素子を備え、
第1コイル素子は前記積層素体のそれぞれ異なる層に設けられた複数の導体パターンで構成されていて、
第2コイル素子は前記積層素体のそれぞれ異なる層に設けられた複数の導体パターンで構成されていて、
前記第1コイル素子を構成する前記導体パターンおよび前記第2コイル素子を構成する前記導体パターンは積層方向からの平面視で概形状が同じであり、
前記第1コイル素子の導体パターンと前記第2コイル素子の導体パターンとの間に空隙層が形成されたことを特徴とする。
上記構成により、第1コイル素子を構成する導体パターンと第2コイル素子を構成する導体パターンとの層間容量を抑制できる。すなわち、各層の導体パターンや層間距離(導体パターンの厚み方向間隔)を変更することなく、容量成分を低減できる。このことにより、挿入損失を増大させることなく、また結合係数を低下することなく、自己共振周波数を高めることができる。
(2)前記空隙層は、第1コイル素子の導体パターンの、第2コイル素子の導体パターンに対向する面、または第2コイル素子の導体パターンの、第1コイル素子の導体パターンに対向する面に空隙層が形成されていて、第1コイル素子を構成する導体パターンと第1コイル素子を構成する導体パターンとの間には形成されていないことが好ましい。この構成により、少ない層数の空隙層で、第1コイル素子と第2コイル素子との層間容量を抑制できる。
(3)前記空隙層のライン幅は、導体パターンのライン幅より太くすれば、第1コイル素子と第2コイル素子との間の実効的な誘電率が効果的に小さくなり、第1コイル素子と第2コイル素子との層間容量をより抑制できる。
(4)前記空隙層のライン幅は、導体パターンのライン幅より細くすれば、導体パターンの変形により、導体パターンの表面積が大きくなり(断面輪郭線が長くなり)、挿入損失が低減できる。
(5)本発明のインピーダンス変換素子の製造方法は、
複数の基材層を積層してなる積層素体に、直列接続され且つトランス結合する第1コイル素子および第2コイル素子を備えたインピーダンス変換素子の製造方法であって、
前記複数の基材層のうち第1の基材層の第1面に第1コイル素子の導体ペーストパターンを塗布形成し、この導体ペーストパターンの表面に空隙層形成用ペーストパターンを塗布形成する工程と、
前記複数の基材層のうち第2の基材層の第1面に空隙層形成用ペーストパターンを塗布形成し、この空隙層形成用ペーストパターンの表面に第2コイル素子の導体ペーストパターンを塗布する工程と、
第1の基材層の第1面を第2の基材層の第2面に重ねて積層して積層体を形成する工程と、
前記積層体を焼成することで、前記複数の基材層を焼成するとともに、前記空隙層形成用ペーストパターンを消失させて空隙層にする工程と、を備えたことを特徴とする。
上記製造方法によれば、少ない基材層で大きな空隙層を形成できる。
(6)本発明のインピーダンス変換素子の製造方法は、
複数の基材層を積層してなる積層素体に、直列接続され且つトランス結合する第1コイル素子および第2コイル素子を備えたインピーダンス変換素子の製造方法であって、
前記複数の基材層のうち第1の基材層の第1面に第1コイル素子の導体ペーストパターンを塗布形成し、この導体ペーストパターンの表面に空隙層形成用ペーストパターンを塗布形成する工程と、
前記複数の基材層のうち第2の基材層の第1面に第2コイル素子の導体ペーストパターンを塗布形成し、この導体パターンの表面に空隙層形成用ペーストパターンを塗布形成する工程と、
第1の基材層と第2の基材層との間に、前記第1コイル素子の導体ペーストパターンおよび前記第2コイル素子の導体ペーストパターンが形成されていない第3の基材層を挟み、且つ第1の基材層の第1面を第2の基材層の第1面に対向させて、第1の基材層、第2の基材層、および第3の基材層を積層して積層体を形成する工程と、
前記積層体を焼成することで、前記複数の基材層を焼成するとともに、前記空隙層形成用ペーストパターンを消失させて空隙層にする工程と、を備えたことを特徴とする。
上記製造方法によれば、導体ペーストパターンの塗布形成と空隙形成用ペーストの塗布形成の順を一定にできるので、パターン形成工程を単純化できる。
本発明によれば、各層の導体パターンや層間距離(導体パターンの厚み方向間隔)を変更することなく、容量成分を低減できる。これに伴い、自己共振周波数を高めることができる。また、導体パターンのライン幅を太くして挿入損失を低減できる。さらには、導体パターンの層間距離を狭めて結合係数を高めることができる。
図1は第1の実施形態に係るインピーダンス変換素子21の各種導体パターンの斜視図である。 図2はインピーダンス変換素子21の断面図である。 図3はインピーダンス変換素子21の各基材層の平面図である。 図4はインピーダンス変換素子21の積層前の各基材層の断面図である。 図5は第2の実施形態に係るインピーダンス変換素子22の断面図である。 図6はインピーダンス変換素子22の積層前の各基材層の断面図である。 図7は第3の実施形態に係る携帯電話端末等の無線通信装置の構成を示す図である。 図8(A)は本実施形態に係るインピーダンス変換素子に生じる主な寄生容量を示す図である。図8(B)は比較例であるコモンモードチョークコイルに生じる主な寄生容量Cを示す図である。 図9(A)、図9(B)は本実施形態に係るインピーダンス変換素子において、第1コイル素子と第2コイル素子との間に生じる寄生容量を示す図である。 図10(A)、図10(B)は特許文献1に示されているアンテナ装置の回路図の一例である。 図11は図10(B)に示すインピーダンス変換回路25を多層基板に構成した場合の各層の導体パターンの例を示す図である。
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態に係るインピーダンス変換素子21の各種導体パターンの斜視図である。これらの導体パターンが形成されている誘電体の基材層は除いて描いている。このインピーダンス変換素子21の回路図は図10(A)(B)に示したインピーダンス変換素子25と同じである。
図1に表れているように、導体パターンL1A,L1Bによる第1ループ状導体LP1、導体パターンL1C,L1Dによる第2ループ状導体LP2、導体パターンL2Aによる第3ループ状導体LP3、導体パターンL2Bによる第4ループ状導体LP4、がそれぞれ形成されている。各層の導体パターンはビア導体により層間接続されている。
最下層の基材層の下面には、第1ポート(給電ポート)P1に相当する端子、第2ポート(アンテナポート)P2に相当する端子、グランド端子P3およびその他の実装用端子(空き端子NC)が形成されている。これらの端子は最下層の基材層の下面に形成されている。
第1コイル素子(図10(A)に示したL1)は第1ループ状導体LP1および第2ループ状導体LP2で構成されている。第2コイル素子(図10(A)に示したL2)は第3ループ状導体LP3および第4ループ状導体LP4で構成されている。
第1ループ状導体LP1および第2ループ状導体LP2は第3ループ状導体LP3と第4ループ状導体LP4との間に層方向に挟み込まれている。
第1ループ状導体LP1の一部である導体パターンL1Bおよび第2ループ状導体LP2の一部である導体パターンL1Cは並列接続されている。そして、第1ループ状導体LP1の残余部である導体パターンL1Aおよび第2ループ状導体LP2の残余部である導体パターンL1Dが前記並列回路に対してそれぞれ直列接続されている。
導体パターンL2Aによる第3ループ状導体LP3および導体パターンL2Bによる第4ループ状導体LP4は直列接続されている。
図2はインピーダンス変換素子21の断面図である。図2においては、図の上部を端子形成面(回路基板に実装するための実装面)として表している。
本実施形態のインピーダンス変換素子21は、図2に表れているように、複数の基材層を積層してなる積層素体10に構成されている。積層素体10内に複数の導体パターンL1A,L1B,L1C,L1D,L2A,L2Bおよび複数の空隙層AG1,AG2,AG3,AG4が形成されている。
第1コイル素子を構成する導体パターンL1A,L1B,L1C,L1Dおよび第2コイル素子を構成する導体パターンL2A,L2Bは積層方向からの平面視で概形状が同じである。第1コイル素子の導体パターンL1A,L1Bと第2コイル素子の導体パターンL2Bとの間に空隙層AG3,AG4が形成されている。同様に、第1コイル素子の導体パターンL1C,L1Dと第2コイル素子の導体パターンL2Aとの間に空隙層AG1,AG2が形成されている。
第1コイル素子を構成する導体パターンL1A,L1B,L1C,L1Dが形成された複数の層は、第2コイル素子を構成する導体パターンL2A,L2Bが形成された層で挟まれている。空隙層AG2は第1コイル素子の導体パターンL1C,L1Dの、第2コイル素子の導体パターンL2Aに対向する面に形成されている。空隙層AG1は第2コイル素子の導体パターンL2Aの、第1コイル素子の導体パターンL1C,L1Dに対向する面に形成されている。空隙層AG3は第1コイル素子の導体パターンL1A,L1Bの、第2コイル素子の導体パターンL2Bに対向する面に形成されている。空隙層AG4は第2コイル素子の導体パターンL2Bの、第1コイル素子の導体パターンL1A,L1Bに対向する面に形成されている。また、第1コイル素子を構成する導体パターンL1A,L1Bと導体パターンL1C,L1Dとの間には空隙層は形成されていない。
図3はインピーダンス変換素子21の各基材層の平面図である。図3において丸形状のパターンは層間接続導体(ビア導体)である。図4はインピーダンス変換素子21の積層前の各基材層の断面図である。この図4は、図3において破線で示す位置での断面図である。
この例では、誘電体セラミックグリーンシートである基材層S1〜S6のうち所定の基材層に導体ペーストパターンおよび空隙層形成用ペーストパターンが印刷により塗布形成されている。図3において、空隙層形成用ペーストパターンと導体ペーストパターンとを2つの層に分離して表している。上記各基材層S1〜S6は例えばBAS(BaO、Al2 O3 およびSiO2 を含む混合セラミック)等のLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)の焼成前のシートである。空隙層形成用ペーストはセラミック素体の焼成時に消失しうるペーストである。例えばアクリル樹脂ペーストやカーボンペーストである。導体ペーストは例えば銅ペーストである。
基材層S3には空隙層形成用ペーストパターンP(AG1)が形成されていて、この空隙層形成用ペーストパターンP(AG1)の表面に導体ペーストパターンP(L2A)が形成されている。
基材層S5には空隙層形成用ペーストパターンP(AG3)が形成されていて、この空隙層形成用ペーストパターンP(AG3)の表面に導体ペーストパターンP(L1A),P(L1B)が形成されている。
また、基材層S4には導体ペーストパターンP(L1C),P(L1D)が形成されていて、この導体ペーストパターンP(L1C),P(L1D)の表面に空隙層形成用ペーストパターンP(AG2)が形成されている。基材層S6には導体ペーストパターンP(L2B)が形成されていて、この導体ペーストパターンP(L2B)の表面に空隙層形成用ペーストパターンP(AG4)が形成されている。
基材層S1には端子形成用の導体ペーストパターンP(P1),P(P2),P(P3),P(NC)が形成されている。基材層S2には導体ペーストパターンP(L2A−1)が形成されている。
上述のとおり、各基材層へ所定のペーストパターン(空隙層形成用ペーストパターンおよび/または導体ペーストパターン)を印刷し、それら基材層を積層し加圧した後、個片に分割する。この基材層の加圧によって導体ペーストパターンは空隙層形成用ペーストパターンで押し広げられ所定のライン幅になる。その後、これら個片を800〜1000℃の温度で還元性雰囲気中において焼成する。この焼成時に空隙層形成用ペーストは主にCO2 に変化することで消失する。すなわち空隙層形成用ペーストパターンは空隙層パターンとして残る。
本実施形態では、図3、図4に示したように空隙層形成用ペーストのライン幅は、導体パターンのライン幅より太い。そのため、図2に表れているように、空隙層は導体パターンのライン幅より広がった空間を形成する。従って、第1コイル素子の導体パターン(L1A,L1B,L1C,L1D)と第2コイル素子の導体パターン(L2A,L2B)との間の実効的な誘電率が効果的に小さくなり、第1コイル素子と第2コイル素子との層間容量をより抑制できる。
ここで、本実施形態のトランス構造のインピーダンス変換素子とコモンモードチョークコイルとの相違点について示す。図8(A)は本実施形態に係るインピーダンス変換素子に生じる主な寄生容量を示す図である。図8(B)はコモンモードチョークコイルに生じる主な寄生容量Cを示す図である。
コモンモードチョークコイルにおいては、ノーマルモード信号は2つのコイルLA,LBを差動伝送する。そのため、2つのコイルLA,LB間に掛かる電位差は2倍(C∝+V−(−V)=2V)になる。そのため、この大きな電位差によるコイル間の容量結合は大きい。
これに対し、本実施形態のインピーダンス変換素子はオートトランス構造であるため、第1コイル素子L1(L1A,L1B,L1C,L1D)と第2コイル素子L2(L2A,L2B)は接続されており、且つインダクタンスが数nHと小さいため、コイル素子間の電位差は小さい。そのため、寄生容量C2は小さい(C2∝+V−(−0)≒V)。また、第2コイル素子L2は分割されて、導体パターンL2A,L2Bの直列構造であるので、入出力ポートP2とグランド間に生じる寄生容量C1も小さい(C1∝+V−(−0)≒V)。そのため、コモンモードチョークコイルに比べて、コイル間に生じる寄生容量C1,C2は小さい。
図9(A)、図9(B)は本実施形態に係るインピーダンス変換素子において、第1コイル素子と第2コイル素子との間に生じる寄生容量を示す図である。図9(A)では本実施形態に係るインピーダンス変換素子の回路図に空隙層を付加して表している。
上述のとおり、第2コイル素子L2は導体パターンL2A、L2Bに分割された直列構造であるため、寄生容量C1は低減されるが、第1コイル素子と第2コイル素子との対向面積が増えて、寄生容量C2a,C2bの合計値は大きい。(容量は電位差に比例するため、第1コイル素子同士の間に生じる寄生容量に比べて、第1コイル素子L1と第2コイル素子L2との間に生じる寄生容量C2a,C2bの方が大きい。)
しかし、図9(A)に示すように、第1コイル素子L1の導体パターンと第2コイル素子の導体パターンL2A,L2Bとの間に空隙層が存在するため、上記寄生容量C2a,C2bは抑制される。
このようにして、容量成分を低減して自己共振周波数を高めることができる。
なお、本実施形態のインピーダンス変換素子はオートトランス構造であり、第1コイル素子L1と第2コイル素子L2との接続点が存在する。従って、構造的にビア導体部があるため、コイル素子形成用の導体パターンの全体を覆うような空隙層を形成することはできない。(作製上、対向する導体パターンをビア導体部で層間接続するため、ビア導体部に空隙層形成用ペーストを塗布できない。)すなわち、本実施形態のインピーダンス変換素子は、コモンモードチョークコイルの構造に比べて、寄生容量の大きい箇所を選択的、意図的に改善を図っている、と言える。
《第2の実施形態》
図5は第2の実施形態に係るインピーダンス変換素子22の断面図である。図6はインピーダンス変換素子22の積層前の各基材層の断面図である。
本実施形態のインピーダンス変換素子22は、図5に表れているように、複数の基材層を積層してなる積層素体10に構成されている。積層素体10内に複数の導体パターンL1A,L1B,L1C,L1D,L2A,L2Bおよび複数の空隙層AG1,AG2,AG3,AG4が形成されている。本実施形態のインピーダンス変換素子22の導体パターンの平面形状は第1の実施形態で示したものと基本的に同じである。
第1の基材層である基材層S4の第1面(図に示す向きでは上面)に第1コイル素子の導体ペーストパターンP(L1C),P(L1D)が形成されていて、この導体ペーストパターンP(L1C),P(L1D)の表面に空隙層形成用ペーストパターンP(AG2)が形成されている。また、第2の基材層である基材層S2の第1面(図に示す向きでは下面)に第2コイル素子の導体ペーストパターンP(L2A)が形成されていて、この導体ペーストパターンP(L2A)の表面に空隙層形成用ペーストパターンP(AG1)が形成されている。
第1の基材層である基材層S5の第1面(図に示す向きでは下面)に第1コイル素子の導体ペーストパターンP(L1A),P(L1B)が形成されていて、この導体ペーストパターンP(L1A),P(L1B)の表面に空隙層形成用ペーストパターンP(AG3)が形成されている。また、第2の基材層である基材層S7の第1面(図に示す向きでは上面)に第2コイル素子の導体ペーストパターンP(L2B)が形成されていて、この導体ペーストパターンP(L2B)の表面に空隙層形成用ペーストパターンP(AG4)が形成されている。
基材層S4(第1の基材層)と基材層S2(第2の基材層)との間に第3の基材層である基材層S3が挟み込まれる。そして、基材層S4の第1面と基材層S2の第1面とは基材層S3を介して対向する。
同様に、基材層S5(第1の基材層)と基材層S7(第2の基材層)との間に第3の基材層である基材層S6が挟み込まれる。そして、基材層S5の第1面と基材層S7の第1面とは基材層S6を介して対向する。
上記基材層S3,S6には、第1コイル素子の導体ペーストパターンおよび第2コイル素子の導体ペーストパターンが形成されていない。
上述のとおり、各基材層へ所定のペーストパターン(空隙層形成用ペーストパターンおよび/または導体ペーストパターン)を印刷し、それら基材層を積層し加圧した後、個片に分割する。その後、これら個片を800〜1000℃の温度で還元性雰囲気中において焼成する。この焼成時に空隙層形成用ペーストはCO2 として消失する。すなわち空隙層形成用ペーストパターンは空隙層パターンとして残る。
本実施形態によれば、どの基材層についても、導体ペーストパターンの塗布形成と空隙形成用ペーストの塗布形成の順を一定にできるので、パターン形成工程を単純化できる。
また、本実施形態では、図5、図6に示したように空隙層形成用ペーストのライン幅は、導体パターンのライン幅より細い。そのため、導体ペーストパターンP(L1A),P(L1B),P(L1C),P(L1D),P(L2A),P(L2B)は空隙層形成用ペーストパターンP(AG1),P(AG2),P(AG3),P(AG4)に押圧されて、図5に表れているように変形する。そのため、導体パターンの表面積が大きく(断面輪郭線が長く)なり、表皮効果に伴って、導体損失が低減され、その結果、挿入損失が抑制される。
《第3の実施形態》
図7は第3の実施形態に係る携帯電話端末等の無線通信装置の構成を示す図である。この図7では、無線通信装置の筐体内の主要部についてのみ表している。筐体内にアンテナ素子11および回路基板が設けられていて、回路基板にはグランド導体20が形成されていて、インピーダンス変換素子21および給電回路30が設けられている。
インピーダンス変換素子21は、アンテナ素子11と給電回路30との間に接続され、アンテナ素子11と給電回路30とのインピーダンスを整合させる。
この無線通信装置は、例えば900MHz帯や2GHz帯のセルラー帯高周波信号の通信を行う。
本実施形態のインピーダンス変換素子21によれば、自己共振周波数を高くすることができるので、より高周波帯域での通信を行うことができ、且つ挿入損失を低く、結合係数を高くすることができる。
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能であることは明らかである。例えば異なる実施形態で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
AG1,AG2,AG3,AG4…空隙層
C,C1,C2,C2a,C2b…寄生容量
L1…第1コイル素子
L1A,L1B,L1C,L1D,L2A,L2B…導体パターン
L2…第2コイル素子
L2A,L2B…導体パターン
LP1…第1ループ状導体
LP2…第2ループ状導体
LP3…第3ループ状導体
LP4…第4ループ状導体
P(AG1),P(AG2),P(AG3),P(AG4)…空隙層形成用ペーストパターン
P(L1A),P(L1B),P(L1C),P(L1D),P(L2A),P(L2B)…導体ペーストパターン
P1,P2…入出力ポート
P3…グランド端子
NC…空き端子
S1〜S7…基材層
10…積層素体
11…アンテナ素子
20…グランド導体
21,22…インピーダンス変換素子
25…インピーダンス変換回路
30…給電回路

Claims (6)

  1. 複数の基材層を積層してなる積層素体に、直列接続され且つトランス結合する第1コイル素子および第2コイル素子を備えたインピーダンス変換素子であって、
    第1コイル素子は前記積層素体のそれぞれ異なる層に設けられた複数の導体パターンで構成されていて、
    第2コイル素子は前記積層素体のそれぞれ異なる層に設けられた複数の導体パターンで構成されていて、
    前記第1コイル素子を構成する前記導体パターンおよび前記第2コイル素子を構成する前記導体パターンは積層方向からの平面視で概形状が同じであり、
    前記第1コイル素子の導体パターンと前記第2コイル素子の導体パターンとの間に空隙層が形成されたことを特徴とするインピーダンス変換素子。
  2. 前記第1コイル素子を構成する導体パターンが形成された複数の層は、前記第2コイル素子を構成する導体パターンが形成された層で挟まれていて、
    前記空隙層は、前記第1コイル素子の導体パターンの、前記第2コイル素子の導体パターンに対向する面、または前記第2コイル素子の導体パターンの、前記第1コイル素子の導体パターンに対向する面に空隙層が形成されていて、第1コイル素子を構成する導体パターンと第1コイル素子を構成する導体パターンとの間には形成されていない、請求項1に記載のインピーダンス変換素子。
  3. 前記空隙層のライン幅は、前記導体パターンのライン幅より太い、請求項2に記載のインピーダンス変換素子。
  4. 前記空隙層のライン幅は、前記導体パターンのライン幅より細い、請求項2に記載のインピーダンス変換素子。
  5. 複数の基材層を積層してなる積層素体に、直列接続され且つトランス結合する第1コイル素子および第2コイル素子を備えたインピーダンス変換素子の製造方法であって、
    前記複数の基材層のうち第1の基材層の第1面に第1コイル素子の導体ペーストパターンを塗布形成し、この導体ペーストパターンの表面に空隙層形成用ペーストパターンを塗布形成する工程と、
    前記複数の基材層のうち第2の基材層の第1面に空隙層形成用ペーストパターンを塗布し、この空隙層形成用ペーストパターンの表面に第2コイル素子の導体ペーストパターンを塗布する工程と、
    第1の基材層の第1面を第2の基材層の第2面に重ねて積層して積層体を形成する工程と、
    前記積層体を焼成することで、前記複数の基材層を焼成するとともに、前記空隙層形成用ペーストパターンを消失させて空隙層にする工程と、を備えたインピーダンス変換素子の製造方法。
  6. 複数の基材層を積層してなる積層素体に、直列接続され且つトランス結合する第1コイル素子および第2コイル素子を備えたインピーダンス変換素子の製造方法であって、
    前記複数の基材層のうち第1の基材層の第1面に第1コイル素子の導体ペーストパターンを塗布形成し、この導体パターンの表面に空隙層形成用ペーストパターンを塗布形成する工程と、
    前記複数の基材層のうち第2の基材層の第1面に第2コイル素子の導体ペーストパターンを塗布形成し、この導体ペーストパターンの表面に空隙層形成用ペーストパターンを塗布形成する工程と、
    第1の基材層と第2の基材層との間に、前記第1コイル素子の導体ペーストパターンおよび前記第2コイル素子の導体ペーストパターンが形成されていない第3の基材層を挟み、且つ第1の基材層の第1面を第2の基材層の第1面に対向させて、第1の基材層、第2の基材層、および第3の基材層を積層して積層体を形成する工程と、
    前記積層体を焼成することで、前記複数の基材層を焼成するとともに、前記空隙層形成用ペーストパターンを消失させて空隙層にする工程と、を備えたインピーダンス変換素子の製造方法。
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