以下、実施形態1〜5に係るアンテナ素子及びアンテナ素子の製造方法について、図面を参照して説明する。下記の実施形態等では、既に説明した実施形態と異なる点を重点的に説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、全ての実施形態等で逐一説明せず、一部あるいは全部省略する。下記の実施形態等において説明する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。なお、図1A、図1B、図7A、図7B、図8〜図10は、いずれも断面図であるが、構造をわかりやすくするため、構成の一部をドットパターンで示す。図1Aは、図3のX−X線断面図である。
各実施形態に係る「アンテナ素子」は、「無線伝送システム」に用いられるアンテナ素子である。ここで、「無線伝送システム」は、伝送相手(外部機器のアンテナ)と、磁界結合による無線伝送を行うシステムである。「伝送」は、信号の送受信と電力の送受信との両方の意味を含む。また、「無線伝送システム」は、近距離無線通信システムと無線給電システムとの両方の意味を含む。アンテナ素子は磁界結合による無線伝送を行うため、アンテナ素子の電流経路の長さつまり後述のコイル導体の線路長は、無線伝送で使用する周波数における波長λに比べて十分に小さく、λ/10以下である。したがって、無線伝送の使用周波数帯においては電磁波の放射効率は低い。なお、ここでいう波長λは、コイル導体が設けられている基材の誘電性及び透磁性による波長短縮効果を考慮した実効的な波長である。コイル導体の両端は、給電回路に接続され、アンテナの電流経路つまりコイル導体には、ほぼ一様な大きさの電流が流れる。
また、各実施形態に係る「アンテナ素子」が用いられる近距離無線通信としては、例えばNFC(Near Field Communication)がある。近距離無線通信で使用される周波数帯は、例えばHF帯であり、特に13.56MHz及びその近傍の周波数帯である。
また、各実施形態に係る「アンテナ素子」に用いられる無線給電の方式としては、例えば、電磁誘導方式及び磁界共鳴方式のような磁界結合方式がある。電磁誘導方式の無線給電規格としては、例えばWPC(Wireless Power Consortium)の策定する規格「Qi(登録商標)」がある。電磁誘導方式で使用される周波数帯は、例えば110kHz以上205kHz以下の範囲及び上記範囲の近傍の周波数帯に含まれている。磁界共鳴方式の無線給電規格としては、例えば、AirFuel(登録商標) Allianceの策定する規格「AirFuel Resonant」がある。磁界共鳴方式で使用される周波数帯は、例えば6.78MHz帯又は100kHz帯である。
(実施形態1)
(1)実施形態1の概要
まず、実施形態1の概要について、図1A及び図1Bを参照して説明する。
実施形態1に係るアンテナ素子1は、積層体2と、コイル導体3とを備える。アンテナ素子1では、積層体2は、第1非磁性部41と、第1非磁性部41と積層する第1磁性部51とを含む。コイル導体3は、積層体2内に設けられており、巻回軸が積層体2の積層方向D1に平行である。ここで、本明細書における「平行」とは、必ずしも厳密に「平行」であることのみを意味するのではなく、所定方向に対して0°〜±15°の角度をなしていてもよい。すなわち、実質的に平行であればよい。コイル導体3の巻回軸は、例えば、積層方向D1に対して0°〜±15°の角度をなしていてもよい。
積層体2は、第1主面21と、第2主面22とを有する。第2主面22は、積層方向D1において第1主面21に対向し、実装面である。第1磁性部51は、積層方向D1において第1非磁性部41に比べて第1主面21に近接する。
上記のようなアンテナ素子1において、コイル導体3は、第1導体パターン部61と、第1絶縁パターン部71とを含む。第1導体パターン部61は、積層方向D1において第1非磁性部41と第1磁性部51との間に位置する。第1絶縁パターン部71は、第1導体パターン部61の第2主面22側に設けられており、第1導体パターン部61の線幅δ11よりも細い線幅δ21を有する。そして、第1絶縁パターン部71は、積層方向D1からの平面視で、第1導体パターン部61と重なる。
本明細書において、「導体パターン部が積層方向D1において非磁性部と磁性部との間に位置する」とは、導体パターン部が積層方向D1において非磁性部と磁性部との両方に接していることをいう。
上記より、アンテナ素子1では、第1磁性部51と第1非磁性部41との間にコイル導体3の第1導体パターン部61が設けられている。これにより、コイル導体3が磁性部に覆われている場合に比べて、磁性損を抑制することができる。
また、アンテナ素子1では、第1非磁性部41と第1磁性部51との間に位置する第1導体パターン部61において、第1導体パターン部61の第2主面22側に、第1導体パターン部61の線幅δ11よりも細い線幅δ21を有する第1絶縁パターン部71が設けられている。これにより、押圧等の工程を経て、第1導体パターン部61を第1主面21側に盛り上がった形状にすることができるので、磁束の方向を、積層方向D1と直交する方向D2よりも積層方向D1に近づけることができる。特に、第1導体パターン部61の第1主面21側の側面のほうが、第1導体パターン部61の第2主面22側の側面よりも大きく突出させることができるので、磁束の方向を積層方向D1に容易に近づけることができる。その結果、アンテナ素子1の通信性能を向上させることができる。
これにより、磁性損を抑制し、かつ、アンテナ素子1の通信性能を向上させることができる。
(2)実施形態1の詳細
次に、実施形態1の詳細について説明する。
(2.1)アンテナ素子の全体構成
実施形態1に係るアンテナ素子1は、図1A、図2及び図3に示すように、積層体2と、コイル導体3とを備える。アンテナ素子1は、図2に示すように、例えば直方体状に形成されている。アンテナ素子1の寸法は、例えば、縦6mm程度、幅3mm程度、高さ1mm程度である。なお、アンテナ素子1は、上記の寸法には限定されない。
(2.2)アンテナ素子の各構成要素
次に、実施形態1に係るアンテナ素子1の各構成要素について、図面を参照して説明する。
(2.2.1)積層体
積層体2は、図1Aに示すように、第1非磁性部41と、第1非磁性部41と積層する第1磁性部51とを含む。積層体2は、第2磁性部52を更に含む。
積層体2は、第1主面21と、第2主面22とを有する。第2主面22は、積層体2の積層方向D1において第1主面21に対向し、実装面である。
(2.2.2)第1非磁性部
第1非磁性部41は、複数の非磁性層S3〜S9(図5及び図6参照)を積層して構成されている。第1非磁性部41は、積層方向D1において第1磁性部51と第2磁性部52とに挟まれている。第1非磁性部41を構成する複数の非磁性層S3〜S9は、例えば低温同時焼成セラミックス(LTCC)の非磁性体フェライト等の焼結体である。
(2.2.3)第1磁性部
第1磁性部51は、積層方向D1において第1非磁性部41に比べて第1主面21に近接する。より詳細には、第1磁性部51は、第1非磁性部41の放射面側に配置されている。第1磁性部51は、磁性層S10(図6参照)を含む少なくとも1つの磁性層で構成されている。第1磁性部51を構成する磁性層S10は、例えば低温同時焼成セラミックスの磁性体フェライト等の焼結体である。なお、「第1磁性部51が積層方向D1において第1非磁性部41に比べて第1主面21に近接する」とは、図1Aに示すように第1磁性部51の主面が第1主面21となっている場合と、第1磁性部51の主面が第1主面21と異なっている場合との両方を含む。
(2.2.4)第2磁性部
第2磁性部52は、積層方向D1において第1非磁性部41に比べて第2主面22に近接する。より詳細には、第2磁性部52は、第1非磁性部41の実装面側に配置されている。第2磁性部52は、磁性層S2(図5参照)を含む少なくとも1つの磁性層で構成されている。第2磁性部52を構成する磁性層S2は、例えば低温同時焼成セラミックスの磁性体フェライト等の焼結体である。なお、「第2磁性部52が積層方向D1において第1非磁性部41に比べて第2主面22に近接する」とは、図1Aに示すように第2磁性部52の主面が第2主面22となっている場合と、第2磁性部52の主面が第2主面22と異なっている場合との両方を含む。
(2.2.5)コイル導体
コイル導体3は、図1Aに示すように、積層体2内に設けられている。コイル導体3の巻回軸は、積層体2の積層方向D1に平行である。より詳細には、コイル導体3は、第1非磁性部41、第1非磁性部41と第1磁性部51との境界、又は第1非磁性部41と第2磁性部52との境界に設けられている。
コイル導体3は、第1導体パターン部61と、第2導体パターン部62と、複数(図示例では6つ)の第3導体パターン部63と、第1絶縁パターン部71とを含む。
(2.2.6)第1導体パターン部
第1導体パターン部61は、積層方向D1において第1非磁性部41と第1磁性部51との間に位置する。より詳細には、第1導体パターン部61は、コイル導体3のうち第1主面21(放射面)に最も近接する部分であり、第1非磁性部41と第1磁性部51との境界に設けられている。第1導体パターン部61は、例えばAgを主成分とする導体パターン部である。
(2.2.7)第2導体パターン部
第2導体パターン部62は、積層方向D1において第1非磁性部41と第2磁性部52との間に位置する。より詳細には、第2導体パターン部62は、コイル導体3のうち第2主面22(実装面)に最も近接する部分であり、第1非磁性部41と第2磁性部52との境界に設けられている。第2導体パターン部62は、例えばAgを主成分とする導体パターン部である。
(2.2.8)第3導体パターン部
複数の第3導体パターン部63の各々は、第1非磁性部41内に位置する。つまり、各第3導体パターン部63は、第1非磁性部41で覆われている。第3導体パターン部63は、例えばAgを主成分とする導体パターン部である。
複数の第3導体パターン部63のうち第1導体パターン部61と隣接する第3導体パターン部63は、層間接続導体によって第1導体パターン部61と電気的に接続されている。上記層間接続導体は、第1非磁性部41に設けられている。より詳細には、上記層間接続導体は、第1非磁性部41を構成する非磁性層S9(図6参照)を貫通するように設けられている。
複数の第3導体パターン部63のうち第2導体パターン部62と隣接する第3導体パターン部63は、層間接続導体によって第2導体パターン部62と電気的に接続されている。上記層間接続導体は、第1非磁性部41に設けられている。より詳細には、上記層間接続導体は、第1非磁性部41を構成する非磁性層S3(図5参照)を貫通するように設けられている。
(2.2.9)第1絶縁パターン部
第1絶縁パターン部71は、第1導体パターン部61の第2主面22側に設けられており、第1導体パターン部61の線幅δ11よりも細い線幅δ21を有する。第1絶縁パターン部71は、積層方向D1からの平面視で、第1導体パターン部61と重なる。つまり、第1導体パターン部61の線幅δ11よりも狭い線幅δ21を有する第1絶縁パターン部71が第1導体パターン部61に沿って配置されている。ここで、本明細書における「絶縁パターン部」は、本発明における「絶縁部」に対応する。第1絶縁パターン部71は、本発明における第1絶縁部に対応する。
第1絶縁パターン部71の線幅δ21は第1導体パターン部61の線幅δ11よりも細く、第1絶縁パターン部71の厚さは第1導体パターン部61の厚さよりも薄い。なお、第1絶縁パターン部71及び第1導体パターン部61の寸法の大小関係は上記に限定されない。
第1導体パターン部61の第2主面22側に第1絶縁パターン部71が設けられていることによって、後述する製造の工程を経て、第1導体パターン部61は、第1主面21(放射面)側に盛り上がった形状になる。
ここで、第1導体パターン部61は、図1Bに示すような形状である。つまり、第1導体パターン部61は、凸状である。あるいは、第1導体パターン部61は、両端部よりも中央部が第1磁性部51側に突出している。あるいは、積層方向D1において、第1導体パターン部61の重心O1が第1磁性部51側に位置している。つまり、第1導体パターン部61の重心O1は、平らな第1導体バターン部に比べて、積層方向D1において第1主面21側に位置している。なお、第1導体パターン部61は、急峻に突出していなくてもよく、滑らかに突出していてもよい。
第1導体パターン部61上において第1絶縁パターン部71が形成される位置に補助膜701(図6参照)が設けられた後、第1非磁性部41と第1磁性部51と第2磁性部52との積層体を積層方向D1から押した場合、第1導体パターン部61は、積層方向D1から押されることによって、両端部よりも中央部が第1主面21側に突出した形状になる。さらに、上記積層体を積層方向D1から押した状態で焼結すると、補助膜701が燃えて、第1絶縁パターン部71が形成される。一方、第1絶縁パターン部71のような絶縁パターン部がない第2導体パターン部62及び複数の第3導体パターン部63は、第1導体パターン部61のような形状にはならず、平らな形状になる。
ところで、第1絶縁パターン部71は空隙である。すなわち、第1絶縁パターン部71は、空隙のパターンを有する空隙パターン部である。
(2.3)磁束の流れ
次に、磁束の流れについて、図4A及び図4Bを参照して説明する。
図4Aに示すように、第1導体パターン部61の線幅δ11よりも細い線幅δ21を有する第1絶縁パターン部71が第1導体パターン部61の第2主面22側に設けられている。これにより、上述したように、第1導体パターン部61は、第1主面21側に盛り上がった形状になる。
第1導体パターン部61が第1主面21側に盛り上がった形状になっていることにより、図4Aの矢印で示すように、第1磁性部51において、磁束φ1の方向を、積層方向D1と直交する方向D2から積層方向D1に近づけることができる。つまり、磁束φ1について、積層方向D1の成分を大きくすることができる。その結果、アンテナ素子1の通信性能を向上させることができる。
一方、第1絶縁パターン部71が設けられていない比較例の場合、図4Bに示すように、第1非磁性部92と第1磁性部93との間に位置する第1導体パターン部91は盛り上がった形状になっていない。第1磁性部93における磁束φ10の方向は、実施形態1の場合に比べて、積層方向D1と直交する方向D2に近い。このため、積層方向D1の成分が小さく、アンテナ素子の通信性能を向上させることが容易でない。
すなわち、実施形態1に係るアンテナ素子1は、第1導体パターン部61を第1主面21側に盛り上がった形状にすることにより、第1導体パターン部91が盛り上がっていない比較例に比べて、アンテナ素子1の通信性能を向上させることができる。
(2.4)アンテナ素子の製造方法
次に、実施形態1に係るアンテナ素子1の製造方法について、図5及び図6を参照して説明する。実施形態1に係るアンテナ素子1は、第1工程から第7工程により製造される。図5及び図6に示されている複数の基材層は、非磁性層S3〜S9及び磁性層S2,S10である。なお、図5及び図6中における一点鎖線は、層間接続導体による主要な接続関係を示している。図5の非磁性層S6と図6の非磁性層S7とは層間接続導体で電気的に接続されている。
第1工程では、第1非磁性部41を構成する複数の非磁性層S3〜S9と、第2磁性部52を構成する磁性層S2と、第1磁性部51を構成する磁性層S10とを準備する。非磁性層S3〜S9は、例えば低温同時焼成セラミックスの非磁性体フェライト等の焼結体(グリーンシート)である。磁性層S2,S10は、例えば低温同時焼成セラミックスの磁性体フェライト等の焼結体(グリーンシート)である。
第2工程では、磁性層S2の裏面に、複数の端子電極T1〜T6を形成する。複数の端子電極のT1〜T6の各々は略矩形の導体パターンである。端子電極T1〜T6の材料は、例えばAgを主成分とする導体である。
なお、磁性層S2の裏面に、端子電極T1〜T6の外縁部を覆う枠状の絶縁膜(図示せず)を形成する。より詳細には、磁性層S2の裏面に端子電極T1〜T6を形成した後、端子電極T1〜T6の外縁部を覆うように枠状に印刷した非磁性体(非磁性フェライト)ペーストを焼成して、絶縁膜として形成する。
第3工程では、非磁性層S3の裏面に第2導体パターン部62を設け、非磁性層S4〜S9の裏面に第3導体パターン部63を設け、磁性層S10の裏面(主面)に第1導体パターン部61を設ける。より詳細には、非磁性層S3の裏面に、約1ターンの第2導体パターン部62を形成する。非磁性層S4〜S9の各々の裏面に、約1ターンの第3導体パターン部63を形成する。磁性層S10の裏面に、約1ターンの第1導体パターン部61を形成する。第1導体パターン部61、第2導体パターン部62、及び各第3導体パターン部63の各々の材料は、例えばAgを主成分とする導体である。
第4工程では、磁性層S10の裏面における第1導体パターン部61上に、補助膜701を設ける。補助膜701は、例えばカーボン膜であり、第1導体パターン部61の線幅δ11(図1B参照)よりも細い線幅δ21(図1B参照)を有する。
第5工程では、磁性層S2、非磁性層S3、非磁性層S4、非磁性層S5、非磁性層S6、非磁性層S7、非磁性層S8、非磁性層S9、磁性層S10の順に積層する。積層体において、磁性層S2が最下層であり、磁性層S10が最上層である。より詳細には、第5工程では、第1導体パターン部61及び補助膜701が設けられた裏面を覆うように磁性層S10に非磁性層S9を積層する。
第6工程では、磁性層と非磁性層とを積層させた状態で積層方向D1から押圧して、第1導体パターン部61のうち補助膜701が設けられている部分を残りの部分よりも磁性層S10側に位置させる。
第7工程では、積層体を焼結して、第1導体パターン部61の線幅δ11よりも細い線幅δ21を有する第1絶縁パターン部71を形成する。このとき、磁性層S10の裏面における第1導体パターン部61上に設けられた補助膜701が燃えることによって、補助膜701が存在した位置に、第1絶縁パターン部71としての空隙を形成する。
なお、積層体2には、非磁性層S3〜S9以外の層であって導体パターン部が設けられていない非磁性層が含まれていてもよい。また、積層体2には、磁性層S2,S10以外の層であって導体パターン部が設けられていない磁性層が含まれていてもよい。これらの非磁性層及び磁性層についての図示及び説明は省略する。
(3)効果
実施形態1に係るアンテナ素子1では、第1磁性部51と第1非磁性部41との間(第1磁性部51と第1非磁性部41との境界)にコイル導体3の第1導体パターン部61が設けられている。これにより、コイル導体3が磁性部に覆われている場合に比べて、磁性損を抑制することができる。
また、実施形態1に係るアンテナ素子1では、第1非磁性部41と第1磁性部51との間に位置する第1導体パターン部61において、第1導体パターン部61の第2主面22側に、第1導体パターン部61の線幅δ11よりも細い線幅δ21を有する第1絶縁パターン部71が設けられている。これにより、押圧等の工程を経て、第1導体パターン部61を第1主面21側に盛り上がった形状にすることができるので、磁束の方向を、積層方向D1と直交する方向D2よりも積層方向D1に近づけることができる。特に、第1導体パターン部61の第1主面21側の側面のほうが、第1導体パターン部61の第2主面22側の側面よりも大きく突出させることができるので、磁束の方向を積層方向D1に容易に近づけることができる。その結果、アンテナ素子1の通信性能を向上させることができる。
上記より、実施形態1に係るアンテナ素子1によれば、磁性損を抑制し、かつ、アンテナ素子1の通信性能を向上させることができる。
実施形態1に係るアンテナ素子1では、第1絶縁パターン部71は、他の導体(第3導体パターン部63等)との間に配置される空隙である。ここで、第1導体パターン部61の周囲に他の導体が存在する場合には、第1導体パターン部61と他の導体との間に浮遊容量が発生する。しかし、第1導体パターン部61と他の導体との間に空隙が位置すると、第1導体パターン部61と他の導体との間に空隙がない(第1導体パターン部61と他の導体との間の全てが第1非磁性部41である)ときよりも、第1導体パターン部61と他の導体との間に発生する浮遊容量が低くなる。すなわち、第1絶縁パターン部71が空隙であるから、第1非磁性部41に比べて第1絶縁パターン部71の比誘電率は小さい。したがって、第1絶縁パターン部71が設けられていない場合(第1導体パターン部61と他の導体との間の全てが第1非磁性部41である場合)に比べて、第1導体パターン部61と他の導体との間に発生する浮遊容量を低減させることができる。その結果、アンテナ素子1のQ値を向上させることができる。
実施形態1に係るアンテナ素子1の製造方法では、第1磁性部51を構成する磁性層S10と第1非磁性部41を構成する非磁性層S9との間(磁性層S10と非磁性層S9との境界)にコイル導体3の第1導体パターン部61が設けられているアンテナ素子1を製造する。これにより、アンテナ素子1において、コイル導体3が磁性部に覆われている場合に比べて、磁性損を抑制することができる。
また、実施形態1に係るアンテナ素子1の製造方法では、非磁性層S9と磁性層S10との間に位置する第1導体パターン部61において、第1導体パターン部61の非磁性層S9側に、第1導体パターン部61の線幅δ11よりも細い線幅δ21を有する補助膜701から第1絶縁パターン部71を形成する。これにより、アンテナ素子1において、第1導体パターン部61を磁性層S10側に盛り上がった形状にすることができるので、磁束φ1の方向を、積層方向D1と直交する方向(例えば方向D2)よりも積層方向D1に近づけることができる。特に、第1導体パターン部61の磁性層S10側の側面のほうが、第1導体パターン部61の非磁性層S9側の側面よりも大きく突出させることができるので、磁束φ1の方向を積層方向D1に容易に近づけることができる。その結果、アンテナ素子1の通信性能を向上させることができる。
上記より、実施形態1に係るアンテナ素子1の製造方法によれば、磁性損を抑制し、かつ、アンテナ素子1の通信性能を向上させるアンテナ素子1を製造することができる。
(4)変形例
以下、実施形態1の変形例について説明する。
実施形態1の変形例として、第1絶縁パターン部71は、空隙でなく、第1非磁性部41より比誘電率の小さい絶縁ペーストで形成されてもよい。本変形例の場合、第1導体パターン部61の第2主面22側に、絶縁ペーストが設けられることにより、第1絶縁パターン部71が形成される。
また、実施形態1の変形例として、コイル導体3は、1つだけの第3導体パターン部63を含んでもよい。要するに、コイル導体3は、少なくとも1つの第3導体パターン部63を含んでいればよい。
上記の各変形例に係るアンテナ素子においても、実施形態1に係るアンテナ素子1と同様の効果を奏する。
(実施形態2)
実施形態2に係るアンテナ素子1aは、図7A及び図7Bに示すように、第2導体パターン部62a上に第2絶縁パターン部72が設けられている点で、実施形態1に係るアンテナ素子1(図1A及び図1B参照)と相違する。なお、実施形態2に係るアンテナ素子1aに関し、実施形態1に係るアンテナ素子1と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
実施形態2に係るアンテナ素子1aは、実施形態1のコイル導体3に代えて図7Aに示すようなコイル導体3aを備える。実施形態2に係るアンテナ素子1aでは、実施形態1と同様、第1非磁性部41の第2主面22(実装面)側に第2磁性部52が配置されている。
コイル導体3aは、実施形態1の第2導体パターン部62に代えて第2導体パターン部62aを含む。また、コイル導体3aは、第2絶縁パターン部72を更に含む。なお、実施形態2のコイル導体3aに関し、実施形態1のコイル導体3(図1A参照)と同様の構成及び機能については説明を省略する。
第2導体パターン部62aは、実施形態1の第2導体パターン部62と同様、積層方向D1において第1非磁性部41と第2磁性部52との間に位置する。
第2絶縁パターン部72は、第2導体パターン部62aの第1主面21側に設けられており、第2導体パターン部62の線幅δ12よりも細い線幅δ22を有する。第2絶縁パターン部72は、積層方向D1からの平面視で第2導体パターン部62aと重なる。つまり、第2導体パターン部62aの線幅δ12よりも狭い線幅δ22を有する第2絶縁パターン部72が第2導体パターン部62aに沿って配置されている。第2絶縁パターン部72は、本発明における第2絶縁部に対応する。
第2絶縁パターン部72の線幅δ22は第2導体パターン部62aの線幅δ12よりも細く、第2絶縁パターン部72の厚さは第2導体パターン部62aの厚さよりも薄い。なお、第2絶縁パターン部72及び第2導体パターン部62aの寸法の大小関係は上記に限定されない。
第2導体パターン部62aの第1主面21側に第2絶縁パターン部72が設けられていることによって、第2導体パターン部62aは、第2主面22(実装面)側に盛り上がった形状になる。
ここで、第2導体パターン部62aは、図7Bに示すような形状である。つまり、第2導体パターン部62aは、凸状である。あるいは、第2導体パターン部62aは、両端部よりも中央部が第2磁性部52側に突出している。あるいは、積層方向D1において、第2導体パターン部62aの重心O2が第2磁性部52側に位置している。つまり、第2導体パターン部62aの重心O2は、平らな第2導体バターン部に比べて、積層方向D1において第2主面22側に位置している。なお、第2導体パターン部62aは、急峻に突出していなくてもよく、滑らかに突出していてもよい。
第2導体パターン部62a上において第2絶縁パターン部72が形成される位置に補助膜が設けられた後、第1非磁性部41と第1磁性部51と第2磁性部52との積層体を積層方向D1から押した場合、第2導体パターン部62aは、積層方向D1から押されることによって、両端部よりも中央部が第2主面22側に突出した形状になる。さらに、上記積層体を積層方向D1から押した状態で焼結すると、補助膜が燃えて、第2絶縁パターン部72が形成される。一方、第2絶縁パターン部72のような絶縁パターン部がない複数の第3導体パターン部63は、第2導体パターン部62aのような形状にはならず、平らな形状になる。
ところで、第2絶縁パターン部72は空隙である。すなわち、第2絶縁パターン部72は、空隙のパターンを有する空隙パターン部である。
次に、磁束φ2の流れについて、図7Bを参照して説明する。
図7Bに示すように、第2導体パターン部62aの線幅δ12よりも細い線幅δ22を有する第2絶縁パターン部72が第2導体パターン部62aの第1主面21側に設けられている。これにより、上述したように、第2導体パターン部62aは、第2主面22側に盛り上がった形状になる。
第2導体パターン部62aが第2主面22側に盛り上がった形状になっていることにより、図7Bの矢印で示すように、第2磁性部52において、磁束φ2の方向を、積層方向D1と直交する方向D2から積層方向D1に近づけることができる。つまり、積層方向D1の成分を大きくすることができる。その結果、アンテナ素子1aの通信性能を向上させることができる。
一方、第2絶縁パターン部72が設けられていない比較例の場合、第2導体パターン部は盛り上がった形状にならない。また、この比較例の場合、第2磁性部における磁束の方向は、実施形態2の場合に比べて、積層方向D1と直交する方向D2に近くなる。このため、積層方向D1の成分が小さく、アンテナ素子の通信性能を向上させることが容易でない。
上述したように、実施形態2に係るアンテナ素子1aは、第2導体パターン部62aを第2主面22側に盛り上がった形状にすることにより、第2導体パターン部が盛り上がっていない比較例に比べて、アンテナ素子1aの通信性能を向上させることができる。
次に、実施形態2に係るアンテナ素子1aの製造方法について説明する。実施形態2に係るアンテナ素子1aは、第1工程から第7工程により製造される。
まず、実施形態1と同様、第1工程から第3工程を行う。より詳細には、第1工程では、複数の非磁性層S3〜S9(図5及び図6参照)と、磁性層S2,S10(図5及び図6参照)とを準備する。第2工程では、磁性層S2の裏面に、複数の端子電極T1〜T6(図5参照)を形成する。第3工程では、非磁性層S3の裏面に第2導体パターン部62aを設け、非磁性層S4〜S9の裏面に第3導体パターン部63を設け、磁性層S10の裏面に第1導体パターン部61を設ける。
実施形態2の第4工程では、磁性層S10の裏面における第1導体パターン部61上に補助膜701を設けると共に、非磁性層S3の裏面における第2導体パターン部62a上に補助膜を形成する。第2導体パターン部62a上に形成される補助膜は、第1導体パターン部61上に形成される補助膜701と同様、例えばカーボン膜である。第2導体パターン部62a上に形成される補助膜は、第2導体パターン部62aの線幅δ12よりも細い線幅を有する。
その後、実施形態1と同様、第5工程を行う。より詳細には、第5工程では、磁性層S2、非磁性層S3、非磁性層S4、非磁性層S5、非磁性層S6、非磁性層S7、非磁性層S8、非磁性層S9、磁性層S10の順に積層する。
実施形態2の第6工程では、実施形態1と同様、磁性層と非磁性層とを積層させた状態で積層方向D1から押して、第1導体パターン部61のうち補助膜701が設けられている部分を残りの部分よりも磁性層S10側に位置させる。さらに、実施形態2では、第2導体パターン部62aのうち補助膜が設けられている部分を残りの部分よりも磁性層S2側に位置させる。
実施形態2の第7工程では、積層体を焼結して、実施形態1と同様、空隙の第1絶縁パターン部71を形成する。さらに、実施形態2では、第2導体パターン部62aの線幅δ12よりも細い線幅δ22を有する第2絶縁パターン部72を形成する。このとき、非磁性層S3の裏面における第2導体パターン部62a上に形成された補助膜が燃えることによって、補助膜が存在した位置に、第2絶縁パターン部72としての空隙を形成する。
以上説明したように、実施形態2に係るアンテナ素子1aでは、第1非磁性部41と第2磁性部52との間に位置する第2導体パターン部62aにおいて、第2導体パターン部62aの第1主面21側に、第2導体パターン部62aの線幅δ12よりも細い線幅δ22を有する第2絶縁パターン部72が設けられている。これにより、第2導体パターン部62aを第2主面22側に盛り上がった形状にすることができるので、磁束φ2の方向を、積層方向D1と直交する方向(例えば方向D2)よりも積層方向D1に近づけることができる。その結果、アンテナ素子1aの通信性能を更に向上させることができる。
なお、実施形態2の変形例として、第2絶縁パターン部72は、空隙でなく、第1非磁性部41より比誘電率の小さい絶縁ペーストで形成されてもよい。本変形例の場合、第2導体パターン部62aの第1主面21側に、絶縁ペーストが設けられることにより、第2絶縁パターン部72が形成される。
上記の変形例に係るアンテナ素子においても、実施形態2に係るアンテナ素子1aと同様の効果を奏する。
(実施形態3)
実施形態3に係るアンテナ素子1bは、図8に示すように、複数(図示例では7つ)の第3絶縁パターン部73を備える点で、実施形態1に係るアンテナ素子1(図1A参照)と相違する。なお、実施形態3に係るアンテナ素子1bに関し、実施形態1に係るアンテナ素子1と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
実施形態3に係るアンテナ素子1bは、実施形態1のコイル導体3に代えて図8に示すようなコイル導体3bを備える。
コイル導体3bは、第1導体パターン部61と、第2導体パターン部62と、複数(図示例では7つ)の第3導体パターン部63bと、第1絶縁パターン部71とを備える共に、複数(図示例では7つ)の第3絶縁パターン部73を更に含む。なお、実施形態3のコイル導体3bに関し、実施形態1のコイル導体3(図1A参照)と同様の構成及び機能については説明を省略する。
複数の第3導体パターン部63bの各々は、実施形態1の第3導体パターン部63と同様、第1非磁性部41内に位置する。
複数の第3絶縁パターン部73の各々は、複数の第3導体パターン部63bと一対一に対応し、対応する第3導体パターン部63bの第2主面22側に設けられている。各第3絶縁パターン部73は、対応する第3導体パターン部63bの線幅よりも細い線幅を有する。各第3絶縁パターン部73は、積層方向D1からの平面視で、対応する第3導体パターン部63bと重なる。つまり、第3導体パターン部63bの線幅よりも狭い線幅を有する第3絶縁パターン部73が第3導体パターン部63bに沿って配置されている。第3絶縁パターン部73は、本発明における第3絶縁部に対応する。
第3絶縁パターン部73の線幅は第3導体パターン部63bの線幅よりも細く、第3絶縁パターン部73の厚さは第3導体パターン部63bの厚さよりも薄い。なお、第3絶縁パターン部73及び第3導体パターン部63bの寸法は上記に限定されない。
第3導体パターン部63bの第2主面22側に第3絶縁パターン部73が設けられていることによって、第3導体パターン部63bは、第1主面21(実装面)側に盛り上がった形状になる。
ここで、第3導体パターン部63bは、図8に示すような形状である。つまり、第3導体パターン部63bは、凸状である。あるいは、第3導体パターン部63bは、両端部よりも中央部が第1磁性部51側に突出している。あるいは、積層方向D1において、第3導体パターン部63bの重心が第1磁性部51側に位置している。つまり、第3導体パターン部63bの重心は、平らな第3導体バターン部に比べて、積層方向D1において第1主面21側に位置している。なお、第3導体パターン部63bは、急峻に突出していなくてもよく、滑らかに突出していてもよい。
第3導体パターン部63b上に第3絶縁パターン部73が設けられた後、第1非磁性部41と第1磁性部51と第2磁性部52との積層体を積層方向D1から押した状態で焼結した場合、第3導体パターン部63bは、積層方向D1から押されることによって、両端部よりも中央部が第1主面21側に突出した形状になる。一方、第2絶縁パターン部72のような絶縁パターン部がない第2導体パターン部62は、第3導体パターン部63bのような形状にはならず、平らな形状になる。
実施形態3のように、複数の第3絶縁パターン部73が、対応する第3導体パターン部63b上に設けられていると、押圧によって、各第3導体パターン部63bは、第1主面21側に盛り上がった形状になる。この際に、複数の第3導体パターン部63bの盛り上がり度合いによって、積層方向D1において、複数の第3導体パターン部63bと並んでいる第3絶縁パターン部73の厚さが累積されるので、第1導体パターン部61の盛り上がり度合いを大きくすることができる。言い換えると、複数の第3絶縁パターン部73が、対応する第3導体パターン部63b上に設けられていると、押圧の工程によって、各第3導体パターン部63bは、第1主面21側に盛り上がった形状になる。この際に、複数の第3導体パターン部63bの盛り上がり度合いによって、積層方向D1において、複数の第3導体パターン部63bと並んでいる第1導体パターン部61の盛り上がり度合いを大きくすることができる。第1導体パターン部61の盛り上がり度合いが大きくなると、第1磁性部51における磁束φ1(図4A参照)の方向を、より積層方向D1に近づけることができる。
ところで、複数の第3絶縁パターン部73は空隙である。すなわち、各第3絶縁パターン部73は、空隙のパターンを有する空隙パターン部である。
複数の第3絶縁パターン部73が空隙であるから、第1非磁性部41に比べて、各第3絶縁パターン部73の比誘電率は小さい。したがって、第3絶縁パターン部73が設けられていない場合に比べて、積層方向D1において隣接する2つの第3導体パターン部63b間の比誘電率を1に近づけることができる。これにより、積層方向D1において隣接する2つの第3導体パターン部63b間の浮遊容量、及び、第2導体パターン部62に最も近い第3導体パターン部63bと第2導体パターン部62との間の浮遊容量を減少させることができる。その結果、アンテナ素子1bのQ値を向上させることができる。
また、複数の第3絶縁パターン部73が空隙であることによって、第1非磁性部41と第1磁性部51との間の線膨張係数差により第1非磁性部41の内部に生じる応力を緩和することができる。また、第1非磁性部41と第2磁性部52との間の線膨張係数差により第1非磁性部41の内部に生じる応力を緩和することができる。これにより、積層方向D1と直交する方向(例えば方向D2)へのクラックの発生を低減させることができる。
次に、実施形態3に係るアンテナ素子1bの製造方法について説明する。実施形態3に係るアンテナ素子1bは、第1工程から第7工程により製造される。
まず、実施形態1と同様、第1工程から第3工程を行う。より詳細には、第1工程では、複数の非磁性層S3〜S9(図5及び図6参照)と、磁性層S2,S10(図5及び図6参照)とを準備する。第2工程では、磁性層S2の裏面に、複数の端子電極T1〜T6(図5参照)を形成する。第3工程では、非磁性層S3の裏面に第2導体パターン部62を設け、非磁性層S4〜S9の裏面に第3導体パターン部63bを設け、磁性層S10の裏面(主面)に第1導体パターン部61を設ける。
実施形態3の第4工程では、磁性層S10の裏面における第1導体パターン部61上に補助膜701(図12参照)を設けると共に、非磁性層S4〜S9の裏面における第3導体パターン部63b上に補助膜703(図11及び図12参照)を設ける。第3導体パターン部63b上に設けられた補助膜703は、第1導体パターン部61上に設けられた補助膜701と同様、例えばカーボン膜である。第3導体パターン部63b上に設けられた補助膜703は、第3導体パターン部63bの線幅よりも細い線幅を有する。
その後、実施形態1と同様、第5工程を行う。より詳細には、第5工程では、磁性層S2、非磁性層S3、非磁性層S4、非磁性層S5、非磁性層S6、非磁性層S7、非磁性層S8、非磁性層S9、磁性層S10の順に積層する。
実施形態3の第6工程では、実施形態1と同様、磁性層と非磁性層とを積層させた状態で積層方向D1から押して、第1導体パターン部61のうち補助膜701が設けられている部分を残りの部分よりも磁性層S10側に位置させる。さらに、実施形態3では、第3導体パターン部63bのうち補助膜703が設けられている部分を残りの部分よりも磁性層S10側に位置させる。
実施形態3の第7工程では、積層体を焼結して、実施形態1と同様、空隙の第1絶縁パターン部71を形成する。さらに、実施形態3では、第3導体パターン部63bの線幅よりも細い線幅を有する第3絶縁パターン部73を形成する。このとき、非磁性層S4〜S9の裏面における第3導体パターン部63b上に形成された補助膜703が燃えることによって、補助膜703が存在した位置に、第3絶縁パターン部73としての空隙を形成する。
以上説明したように、実施形態3に係るアンテナ素子1bでは、第1非磁性部41内に位置する第3導体パターン部63bに、第3導体パターン部63bの線幅よりも細い線幅を有する第3絶縁パターン部73が設けられている。これにより、積層方向D1において、第1絶縁パターン部71と第3絶縁パターン部73との厚さが累積されるので、第1導体パターン部61の盛り上がり度合いを大きくすることができる。その結果、磁束の方向を積層方向D1へ更に向けることができる。
また、実施形態3に係るアンテナ素子1bでは、第3絶縁パターン部73が空隙である場合、第2導体パターン部62と第3導体パターン部63bとの間の浮遊容量を低減させることができるので、アンテナ素子1bのQ値を向上させることができる。
さらに、実施形態3に係るアンテナ素子1bでは、第3絶縁パターン部73が空隙である場合、非磁性部(例えば第1非磁性部41)と磁性部(例えば第1磁性部51)との線膨張係数差により非磁性部の内部に生じる応力を緩和させることができる。これにより、導体パターン間(第1導体パターン部61と第3導体パターン部63bとの間、2つの第3導体パターン部63b間)において、積層方向D1とは直交する方向D2のクラックの発生を低減させることができる。
なお、実施形態3の変形例として、コイル導体3bは、1つだけの第3導体パターン部63bを含んでもよい。要するに、コイル導体3bは、少なくとも1つの第3導体パターン部63bを含んでいればよい。
また、実施形態3の変形例として、コイル導体3bは、1つだけの第3絶縁パターン部73を含んでもよい。要するに、コイル導体3bは、少なくとも1つの第3絶縁パターン部73を含んでいればよい。
実施形態3の変形例として、複数の第3絶縁パターン部73の各々は、空隙でなく、第1非磁性部41より比誘電率の小さい絶縁ペーストで形成されてもよい。本変形例の場合、複数の第3導体パターン部63bの各々の第2主面22側に、絶縁ペーストが設けられることにより、複数の第3絶縁パターン部73が形成される。
上記の各変形例に係るアンテナ素子においても、実施形態3に係るアンテナ素子1bと同様の効果を奏する。
(実施形態4)
実施形態4に係るアンテナ素子1cは、図9に示すように、第1非磁性部41の間に第3磁性部53が設けられている点で、実施形態1に係るアンテナ素子1(図1A参照)と相違する。なお、実施形態4に係るアンテナ素子1cに関し、実施形態1に係るアンテナ素子1と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
実施形態4に係るアンテナ素子1cは、実施形態1の積層体2に代えて図9に示すような積層体2cを備える。
積層体2cは、第3磁性部53を更に含む。なお、実施形態4の積層体2cに関し、実施形態1の積層体2(図1A参照)と同様の構成及び機能については説明を省略する。
第3磁性部53は、第1非磁性部41を積層方向D1において2つに分割するように設けられている。第3磁性部53は、第1非磁性部41の中間に設けられている。第3磁性部53は、磁性層S6a(図11参照)を含む少なくとも1つの磁性層で構成されている。第3磁性部53を構成する磁性層S6aは、例えば低温同時焼成セラミックスの磁性体フェライト等の焼結体である。
実施形態4のように、第1非磁性部41の中間に第3磁性部53が設けられていることにより、2つに分かれた非磁性部411,412を薄くすることができる。これにより、第1非磁性部41が第1磁性部51及び第2磁性部52から受ける引っ張り応力(第1非磁性部41と第1磁性部51及び第2磁性部52との線膨張係数差により生じる、積層方向D1と直交する方向の応力)を低減させることができる。その結果、第1磁性部51及び第2磁性部52における積層方向D1のクラックの発生を低減させることができる。
また、積層体2cは、第2非磁性部42を更に含む。第2非磁性部42は、積層方向D1において第1磁性部51よりも第1主面21に近接する。第2非磁性部42は、非磁性層S11(図12参照)で構成されている。第2非磁性部42を構成する非磁性層S11は、例えば低温同時焼成セラミックスの非磁性体フェライト等の焼結体である。
さらに、積層体2cは、第3非磁性部43を更に含む。第3非磁性部43は、積層方向D1において第2磁性部52よりも第2主面22に近接する。第3非磁性部43は、非磁性層S1(図11参照)で構成されている。第3非磁性部43を構成する非磁性層S1は、例えば低温同時焼成セラミックスの非磁性体フェライト等の焼結体である。
上記より、積層体2cでは、積層方向D1の両端が非磁性部となる。一般的に、非磁性部に比べて磁性部のほうが脆いため、積層体2cの両端を非磁性部とすることによって、機械強度を高めることができる。
次に、実施形態4に係るアンテナ素子1cの製造方法について説明する。実施形態4に係るアンテナ素子1cは、第1工程から第8工程により製造される。
第1工程では、複数の非磁性層S1,S3〜S5,S7〜S9,S11(図11及び図12参照)と、磁性層S2,S10(図11及び図12参照)とを準備する。さらに、実施形態4の第1工程では、実施形態1の非磁性層S6に代えて、磁性層S6a(図11参照)を準備する。
第2工程では、非磁性層S1の裏面に、複数の端子電極T1〜T6(図11参照)を形成し、磁性層S2の裏面に、複数の導体23〜28(図11参照)を形成する。
実施形態1と同様、第3工程及び第4工程を行う。より詳細には、第3工程では、実施形態1と同様、非磁性層S3の裏面に第2導体パターン部62を設け、非磁性層S4,S5,S7〜S9及び磁性層S6aの裏面に第3導体パターン部63を設け、磁性層S10の裏面に第1導体パターン部61を設ける。第4工程では、磁性層S10の裏面における第1導体パターン部61上に補助膜701を設ける。
第5工程では、非磁性層S11の表面にポジションマーク705(図12参照)を形成し、非磁性層S11の裏面に導体704(図12参照)を形成する。
第6工程では、非磁性層S1、磁性層S2、非磁性層S3、非磁性層S4、非磁性層S5、磁性層S6a、非磁性層S7、非磁性層S8、非磁性層S9、磁性層S10、非磁性層S11の順に積層する。
その後、実施形態1の第6工程及び第7工程と同様、第7工程及び第8工程を行う。より詳細には、第7工程では、磁性層と非磁性層とを積層させた状態で積層方向D1から押して、第1導体パターン部61のうち補助膜701が設けられている部分を残りの部分よりも磁性層S10側に位置させる。第8工程では、積層体を焼結して、空隙の第1絶縁パターン部71を形成する。
以上説明したように、実施形態4に係るアンテナ素子1cでは、第1非磁性部41を少なくとも2つに分断するように第3磁性部53が設けられている。これにより、2つに分断された第1非磁性部41の1つ当たりの厚さを薄くすることができるので、第1磁性部51等の磁性部が受ける引っ張り応力を低減させることができる。その結果、磁性部の積層方向D1のクラックの発生を低減させることができる。
実施形態4に係るアンテナ素子1cでは、第1磁性部51よりも強度の高い第2非磁性部42が第1磁性部51よりも第1主面21に近接し(外側に設けられており)、かつ、第2磁性部52よりも強度の高い第3非磁性部43が第2磁性部52よりも第2主面22に近接している(外側に設けられている)。これにより、アンテナ素子1cの強度を高めることができる。
なお、実施形態4の変形例として、積層体2cは、複数の第3磁性部53を含んでもよい。本変形例の場合、複数の第3磁性部53は、第1非磁性部41を2つ以上に分断するように設けられている。
上記の変形例に係るアンテナ素子においても、実施形態4に係るアンテナ素子1cと同様の効果を奏する。
(実施形態5)
実施形態5に係るアンテナ素子1dは、図10に示すように、第3導体パターン部63d上に第3絶縁パターン部73が設けられており、かつ、第1非磁性部41の間に第3磁性部53が設けられている点で、実施形態1に係るアンテナ素子1(図1A参照)と相違する。なお、実施形態5に係るアンテナ素子1dに関し、実施形態1に係るアンテナ素子1と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
実施形態5に係るアンテナ素子1dは、実施形態1の積層体2及びコイル導体3に代えて図10に示すような積層体2d及びコイル導体3dを備える。
積層体2dは、第3磁性部53を更に含む。なお、実施形態5の積層体2dに関し、実施形態1の積層体2(図1A参照)と同様の構成及び機能については説明を省略する。
第3磁性部53は、第1非磁性部41を積層方向D1において2つに分割するように設けられている。第3磁性部53は、第1非磁性部41の中間に設けられている。第3磁性部53は、磁性層S6a(図11参照)を含む少なくとも1つの磁性層で構成されている。第3磁性部53を構成する磁性層S6aは、例えば低温同時焼成セラミックスの磁性体フェライト等の焼結体である。
実施形態5のように、第1非磁性部41の中間に第3磁性部53が設けられていることにより、2つに分かれた非磁性部411,412を薄くすることができる。これにより、第1磁性部51及び第2磁性部52が第1非磁性部41から受ける引っ張り応力(積層方向D1と直交する方向の応力)を低減させることができる。その結果、第1磁性部51及び第2磁性部52における積層方向D1のクラックの発生を低減させることができる。
また、積層体2dは、第2非磁性部42を更に含む。第2非磁性部42は、積層方向D1において第1磁性部51よりも第1主面21に近接する。第2非磁性部42は、非磁性層S11(図12参照)で構成されている。第2非磁性部42を構成する非磁性層S11は、例えば低温同時焼成セラミックスの非磁性体フェライト等の焼結体である。
さらに、積層体2dは、第3非磁性部43を更に含む。第3非磁性部43は、積層方向D1において第2磁性部52よりも第2主面22に近接する。第3非磁性部43は、非磁性層S1(図11参照)で構成されている。第3非磁性部43を構成する非磁性層S1は、例えば低温同時焼成セラミックスの非磁性体フェライト等の焼結体である。
上記より、積層体2dでは、積層方向D1の両端が非磁性部となる。一般的に、非磁性部に比べて磁性部のほうが脆いため、積層体2dの両端を非磁性部とすることによって、機械強度を高めることができる。
さらに、コイル導体3dは、第1導体パターン部61と、第2導体パターン部62と、複数(図示例では7つ)の第3導体パターン部63dと、第1絶縁パターン部71とを備えると共に、複数(図示例では7つ)の第3絶縁パターン部73を更に含む。なお、実施形態5のコイル導体3dに関し、実施形態1のコイル導体3(図1A参照)と同様の構成及び機能については説明を省略する。
複数の第3導体パターン部63dの一部は、実施形態1の第3導体パターン部63と同様、第1非磁性部41内に位置する。一方、複数の第3導体パターン部63dの残りは、第1非磁性部41と第3磁性部53との境界に設けられている。
複数の第3絶縁パターン部73の各々は、複数の第3導体パターン部63dと一対一に対応し、対応する第3導体パターン部63dの第2主面22側に設けられている。各第3絶縁パターン部73は、対応する第3導体パターン部63dの線幅よりも細い線幅を有する。各第3絶縁パターン部73は、積層方向D1からの平面視で、対応する第3導体パターン部63dと重なる。つまり、第3導体パターン部63dの線幅よりも狭い線幅を有する第3絶縁パターン部73が第3導体パターン部63dに沿って配置されている。
第3絶縁パターン部73の線幅は第3導体パターン部63dの線幅よりも細く、第3絶縁パターン部73の厚さは第3導体パターン部63dの厚さよりも薄い。なお、第3絶縁パターン部73及び第3導体パターン部63dの寸法は上記に限定されない。
第3導体パターン部63dの第2主面22側に第3絶縁パターン部73が設けられていることによって、第3導体パターン部63dは、第1主面21(実装面)側に盛り上がった形状になる。
ここで、第3導体パターン部63dは、図10に示すような形状である。つまり、第3導体パターン部63dは、凸状である。あるいは、第3導体パターン部63dは、両端部よりも中央部が第1磁性部51側に突出している。あるいは、積層方向D1において、第3導体パターン部63dの重心が第1磁性部51側に位置している。つまり、第3導体パターン部63dの重心は、平らな第3導体バターン部に比べて、積層方向D1において第1主面21側に位置している。なお、第3導体パターン部63dは、急峻に突出していなくてもよく、滑らかに突出していてもよい。
第3導体パターン部63d上に第3絶縁パターン部73が設けられた後、第1非磁性部41と第1磁性部51と第2磁性部52との積層体を積層方向D1から押した状態で焼結した場合、第3導体パターン部63dは、積層方向D1から押されることによって、両端部よりも中央部が第1主面21側に突出した形状になる。一方、第2絶縁パターン部72のような絶縁パターン部がない第2導体パターン部62は、第3導体パターン部63dのような形状にはならず、平らな形状になる。
実施形態5のように、複数の第3絶縁パターン部73が、対応する第3導体パターン部63d上に設けられていると、第3絶縁パターン部73の厚さが累積されるので、第1導体パターン部61の盛り上がり度合いを大きくすることができる。第1導体パターン部61の盛り上がり度合いが大きくなると、第1磁性部51における磁束φ1(図4A参照)の方向を、より積層方向D1に近づけることができる。
実施形態5のように、複数の第3絶縁パターン部73が、対応する第3導体パターン部63d上に設けられていると、第3絶縁パターン部73の厚さが累積されるので、第1導体パターン部61の盛り上がり度合いを大きくすることができる。第1導体パターン部61の盛り上がり度合いが大きくなると、第1磁性部51における磁束の方向を、より積層方向D1に近づけることができる。
ところで、複数の第3絶縁パターン部73は空隙である。すなわち、各第3絶縁パターン部73は、空隙のパターンを有する空隙パターン部である。
複数の第3絶縁パターン部73が空隙であるから、第1非磁性部41に比べて、各第3絶縁パターン部73の比誘電率は小さい。したがって、第3絶縁パターン部73が設けられていない場合に比べて、積層方向D1において隣接する2つの第3導体パターン部63d間の浮遊容量、及び、第2導体パターン部62に最も近い第3絶縁パターン部73と第2導体パターン部62との間の浮遊容量を減少させることができる。その結果、アンテナ素子1dのQ値を向上させることができる。
また、複数の第3絶縁パターン部73が空隙であることによって、第1非磁性部41と第1磁性部51との間の線膨張係数差により第1非磁性部41の内部に生じる応力を緩和することができる。また、第1非磁性部41と第2磁性部52との間の線膨張係数差により第1非磁性部41の内部に生じる応力を緩和することができる。これにより、積層方向D1と直交する方向(例えば方向D2)へのクラックの発生を低減させることができる。
次に、実施形態5に係るアンテナ素子1dの製造方法について、図11及び図12を参照して説明する。実施形態5に係るアンテナ素子1dは、第1工程から第8工程により製造される。図11及び図12に示されている複数の基材層は、非磁性層S1,S3〜S5,S7〜S9,S11及び磁性層S2,S6a,S10である。なお、図11及び図12中における一点鎖線は、層間接続導体による主要な接続関係を示している。図11の磁性層S6aと図12の非磁性層S7とは層間接続導体で電気的に接続されている。
第1工程では、複数の非磁性層S1,S3〜S5,S7〜S9,S11及び複数の磁性層S2,S6a,S10を準備する。非磁性層S1,S3〜S5,S7〜S9,S11は、例えば低温同時焼成セラミックスの非磁性体フェライト等の焼結体である。磁性層S2,S6a,S10は、例えば低温同時焼成セラミックスの磁性体フェライト等の焼結体である。
第2工程では、非磁性層S1の裏面に、複数の端子電極T1〜T6を形成する。複数の端子電極のT1〜T6の各々は略矩形の導体パターンである。磁性層S2の裏面に、複数の導体23〜28を形成する。複数の導体23〜28は、それぞれ端子電極T1〜T6に類似した形状(略矩形)の導体パターンである。端子電極T1〜T6及び導体23〜28は、例えばAgを主成分とする導体パターンである。
なお、非磁性層S1の裏面に、端子電極T1〜T6の外縁部を覆う枠状の絶縁膜(図示せず)を形成する。より詳細には、非磁性層S1の裏面に端子電極T1〜T6を形成した後、端子電極T1〜T6の外縁部を覆うように枠状に印刷した非磁性体(非磁性フェライト)ペーストを焼成して、絶縁膜として形成する。
第3工程では、非磁性層S3の裏面に第2導体パターン部62を設け、非磁性層S4〜S5,S7〜S9及び磁性層S6aの裏面に第3導体パターン部63dを形成し、磁性層S10の裏面に第1導体パターン部61を設ける。より詳細には、非磁性層S3の裏面に、約1ターンの第2導体パターン部62を形成する。非磁性層S4の裏面に、約1ターンの第3導体パターン部63dを形成する。非磁性層S5の裏面に、約1ターンの第3導体パターン部63dを形成する。磁性層S6aの裏面に、約1ターンの第3導体パターン部63dを形成する。非磁性層S7の裏面に、約1ターンの第3導体パターン部63dを形成する。非磁性層S8の裏面に、約1ターンの第3導体パターン部63dを形成する。非磁性層S9の裏面に、約1ターンの第3導体パターン部63dを形成する。磁性層S10の裏面に、約1ターンの第1導体パターン部61を形成する。
第4工程では、磁性層S10の裏面における第1導体パターン部61上に、約1ターンの補助膜701を設けると共に、非磁性層S4,S5,S7〜S9及び磁性層S6aの裏面における第3導体パターン部63d上に、約1ターンの補助膜703を設ける。
第5工程では、非磁性層S11の表面にポジションマーク705(製造時の位置決めを容易にするマーク)を形成する。非磁性層S11の裏面に導体704を形成する。ポジションマーク705は矩形の導体パターンである。導体704は、ポジションマーク705に類似した形状(略矩形)の導体パターンである。ポジションマーク705及び導体704は、例えばAgを主成分とする導体パターンである。
第6工程では、非磁性層S1、磁性層S2、非磁性層S3、非磁性層S4、非磁性層S5、磁性層S6a、非磁性層S7、非磁性層S8、非磁性層S9、磁性層S10、非磁性層S11の順に積層する。積層体において、非磁性層S1が最下層であり、非磁性層S11が最上層である。より詳細には、より詳細には、第6工程では、第1導体パターン部61及び補助膜701が設けられた裏面を覆うように磁性層S10に非磁性層S9を積層する。
第7工程では、磁性層と非磁性層とを積層させた状態で積層方向D1から押して、第1導体パターン部61のうち補助膜701が設けられている部分を残りの部分よりも磁性層S10側に位置させる。
第8工程では、積層体を焼結して、第1導体パターン部61の線幅δ11(図1B参照)よりも細い線幅δ21(図1B参照)を有する第1絶縁パターン部71を形成する。このとき、磁性層S10の裏面における第1導体パターン部61上に設けられた補助膜701が燃えることによって、補助膜701が存在した位置に、第1絶縁パターン部71としての空隙を形成する。
以上説明したように、実施形態5に係るアンテナ素子1dでは、第1非磁性部41を少なくとも2つに分断するように第3磁性部53が設けられている。これにより、2つに分断された第1非磁性部41の1つ当たりの厚さを薄くすることができるので、第1磁性部51等の磁性部が受ける引っ張り応力を低減させることができる。その結果、磁性部の積層方向D1のクラックの発生を低減させることができる。
実施形態5に係るアンテナ素子1dでは、第1磁性部51よりも強度の高い第2非磁性部42が第1磁性部51よりも第1主面21に近接し(外側に設けられており)、かつ、第2磁性部52よりも強度の高い第3非磁性部43が第2磁性部52よりも第2主面22に近接している(外側に設けられている)。これにより、アンテナ素子1dの強度を高めることができる。
なお、実施形態5の変形例として、積層体2dは、複数の第3磁性部53を含んでもよい。本変形例の場合、複数の第3磁性部53は、第1非磁性部41を2つ以上に分断するように設けられている。
実施形態5の変形例として、コイル導体3dは、1つだけの第3導体パターン部63dを含んでもよい。要するに、コイル導体3dは、少なくとも1つの第3導体パターン部63dを含んでいればよい。
また、実施形態5の変形例として、コイル導体3dは、1つだけの第3絶縁パターン部73を含んでもよい。要するに、コイル導体3dは、少なくとも1つの第3絶縁パターン部73を含んでいればよい。
実施形態5の変形例として、複数の第3絶縁パターン部73の各々は、空隙でなく、第1非磁性部41より比誘電率の小さい絶縁ペーストで形成されてもよい。本変形例の場合、複数の第3導体パターン部63dの各々の第2主面22側に、絶縁ペーストが設けられることにより、複数の第3絶縁パターン部73が形成される。
上記の変形例に係るアンテナ素子においても、実施形態5に係るアンテナ素子1dと同様の効果を奏する。
以上説明した実施形態及び変形例は、本発明の様々な実施形態及び変形例の一部に過ぎない。また、実施形態及び変形例は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
例えば、上述した各実施形態では、絶縁部として、第1絶縁パターン部71、第2絶縁パターン部72、及び第3絶縁パターン部73を示したが、これらの絶縁部は、必ずしもコイル導体のほぼ全周に沿って形成されたパターン状である必要はない。これらの絶縁部は、コイル導体の周の一部にのみ形成されていてもよく、又は、パターンが途切れながら形成されていてもよい。
(態様)
以上説明した実施形態及び変形例より以下の態様が開示されている。
第1の態様に係るアンテナ素子(1;1a;1b;1c;1d)は、積層体(2;2c;2d)と、コイル導体(3;3a;3b;3d)とを備える。積層体(2;2c;2d)は、第1非磁性部(41)と、第1磁性部(51)とを含む。第1磁性部(51)は、第1非磁性部(41)と積層する。コイル導体(3;3a;3b;3d)は、積層体(2;2c;2d)内に設けられている。コイル導体(3;3a;3b;3d)の巻回軸は、積層体(2;2c;2d)の積層方向(D1)に平行である。積層体(2;2c;2d)は、第1主面(21)と、第2主面(22)とを有する。第2主面(22)は、積層方向(D1)において第1主面(21)に対向し、実装面である。第1磁性部(51)は、積層方向(D1)において第1非磁性部(41)に比べて第1主面(21)に近接する。コイル導体(3;3a;3b;3d)は、第1導体パターン部(61)と、第1絶縁部(第1絶縁パターン部71)とを含む。第1導体パターン部(61)は、積層方向(D1)において第1非磁性部(41)と第1磁性部(51)との間に位置する。第1絶縁部は、第1導体パターン部(61)の第2主面(22)側に設けられており、第1導体パターン部(61)の線幅(δ11)よりも細い幅(線幅δ21)を有する。第1絶縁部は、積層方向(D1)からの平面視で、第1導体パターン部(61)と重なる。
第1の態様に係るアンテナ素子(1;1a;1b;1c;1d)によれば、コイル導体(3;3a;3b;3d)が磁性部に覆われている場合に比べて、磁性損を抑制することができる。
また、第1の態様に係るアンテナ素子(1;1a;1b;1c;1d)によれば、第1導体パターン部(61)を第1主面(21)側に盛り上がった形状にすることができるので、磁束(φ1)の方向を、積層方向(D1)と直交する方向(D2)よりも積層方向(D1)に近づけることができる。特に、第1導体パターン部(61)の第1主面(21)側の側面のほうが、第1導体パターン部(61)の第2主面(22)側の側面よりも大きく突出させることができるので、磁束(φ1)の方向を積層方向(D1)に容易に近づけることができる。その結果、アンテナ素子(1;1a;1b;1c;1d)の通信性能を向上させることができる。
上記より、第1の態様に係るアンテナ素子(1;1a;1b;1c;1d)によれば、磁性損を抑制し、かつ、アンテナ素子(1;1a;1b;1c;1d)の通信性能を向上させることができる。
第2の態様に係るアンテナ素子(1;1a;1b;1c;1d)では、第1の態様において、第1絶縁部(第1絶縁パターン部71)は空隙である。
第2の態様に係るアンテナ素子(1;1a;1b;1c;1d)によれば、第1導体パターン部(61)の周囲に他の導体が存在する場合、第1導体パターン部(61)と他の導体との間に空隙が位置するので、第1導体パターン部(61)と他の導体との間に発生する浮遊容量を低減させることができる。
第3の態様に係るアンテナ素子(1a)では、第1又は2の態様において、積層体(2)は、第2磁性部(52)を更に含む。第2磁性部(52)は、第1非磁性部(41)に比べて第2主面(22)に近接する。コイル導体(3a)は、第2導体パターン部(62a)と、第2絶縁部(第2絶縁パターン部72)とを更に含む。第2導体パターン部(62a)は、積層方向(D1)において第1非磁性部(41)と第2磁性部(52)との間に位置する。第2絶縁部は、第2導体パターン部(62a)の第1主面(21)側に設けられており、第2導体パターン部(62a)の線幅(δ12)よりも細い幅(線幅δ22)を有する。第2絶縁部は、積層方向(D1)からの平面視で第2導体パターン部(62a)と重なる。
第3の態様に係るアンテナ素子(1a)によれば、第2導体パターン部(62a)を第2主面(22)側に盛り上がった形状にすることができるので、磁束(φ2)の方向を、積層方向(D1)と直交する方向(D2)よりも積層方向(D1)に近づけることができる。その結果、アンテナ素子(1a)の通信性能を更に向上させることができる。
第4の態様に係るアンテナ素子(1b;1d)では、第1〜3の態様のいずれか1つにおいて、コイル導体(3b;3d)は、少なくとも1つの第3導体パターン部(63b;63d)と、少なくとも1つの第3絶縁部(第3絶縁パターン部73)とを更に含む。第3導体パターン部(63b;63d)は、第1非磁性部(41)内に位置する。第3絶縁部は、第3導体パターン部(63b;63d)の第2主面(22)側に設けられており、第3導体パターン部(63b;63d)の線幅よりも細い幅を有する。第3絶縁部は、積層方向(D1)からの平面視で第3導体パターン部(63b;63d)と重なる。
第4の態様に係るアンテナ素子(1b;1d)によれば、積層方向(D1)において、第1絶縁部(第1絶縁パターン部71)と第3絶縁部(第3絶縁パターン部73)との厚さが累積されるので、第1導体パターン部(61)の盛り上がり度合いを大きくすることができる。その結果、磁束の方向を積層方向(D1)へ更に向けることができる。
また、第4の態様に係るアンテナ素子(1b;1d)によれば、第3絶縁部が空隙である場合、第2導体パターン部(62)と第3導体パターン部(63b;63d)との間の浮遊容量を低減させることができるので、アンテナ素子(1b;1d)のQ値を向上させることができる。
さらに、第4の態様に係るアンテナ素子(1b;1d)によれば、第3絶縁部が空隙である場合、非磁性部(例えば第1非磁性部(41))と磁性部(例えば第1磁性部(51))との線膨張係数差により非磁性部に生じる応力を緩和させることができる。これにより、導体パターン間(第1導体パターン部(61)と第3導体パターン部(63b;63d)との間、第3導体パターン部(63b;63d)間)において、積層方向(D1)とは直交する方向(D2)のクラックの発生を低減させることができる。
第5の態様に係るアンテナ素子(1c;1d)では、第1〜4の態様のいずれか1つにおいて、積層体(2c;2d)は、第3磁性部(53)を更に含む。第3磁性部(53)は、第1非磁性部(41)を積層方向(D1)において少なくとも2つに分割するように設けられている。
第5の態様に係るアンテナ素子(1c;1d)によれば、2つに分断された第1非磁性部(41)の1つ当たりの厚さを薄くすることができるので、第1磁性部(51)等の磁性部が受ける引っ張り応力を低減させることができる。その結果、磁性部の積層方向(D1)のクラックの発生を低減させることができる。
第6の態様に係るアンテナ素子(1d)では、第1〜5の態様のいずれか1つにおいて、積層体(2d)は、第2磁性部(52)と、第2非磁性部(42)と、第3非磁性部(43)とを更に含む。第2磁性部(52)は、第1非磁性部(41)に比べて第2主面(22)に近接する。第2非磁性部(42)は、積層方向(D1)において第1磁性部(51)よりも第1主面(21)に近接する。第3非磁性部(43)は、積層方向(D1)において第2磁性部(52)よりも第2主面(22)に近接する。
第6の態様に係るアンテナ素子(1d)によれば、アンテナ素子(1d)の強度を高めることができる。
第7の態様に係るアンテナ素子(1;1a;1b;1c;1d)の製造方法は、非磁性部を構成する非磁性層と、磁性部を構成する磁性層とを準備する工程を有する。上記製造方法は、磁性層の主面に第1導体パターン部(61)を設ける工程を更に有する。上記製造方法は、第1導体パターン部(61)上に、第1導体パターン部(61)の線幅(δ11)よりも細い線幅を有する補助膜(701)を設ける工程を更に有する。上記製造方法は、第1導体パターン部(61)及び補助膜(701)が設けられた主面を覆うように磁性層に非磁性層を積層する工程を更に有する。上記製造方法は、磁性層と非磁性層とを積層させた状態で積層方向(D1)から押して、第1導体パターン部(61)のうち補助膜(701)が設けられている部分を残りの部分よりも磁性層側に位置させる工程を更に有する。上記製造方法は、積層体を焼結して、第1導体パターン部(61)の線幅(δ11)よりも細い幅(線幅δ21)を有する第1絶縁部(第1絶縁パターン部71)を形成する工程を更に有する。
第7の態様に係るアンテナ素子(1;1a;1b;1c;1d)の製造方法によれば、アンテナ素子(1;1a;1b;1c;1d)において、コイル導体(3;3a;3b;3d)が磁性部に覆われている場合に比べて、磁性損を抑制することができる。
また、第7の態様に係るアンテナ素子(1;1a;1b;1c;1d)の製造方法によれば、アンテナ素子(1;1a;1b;1c;1d)において、第1導体パターン部(61)を磁性層側に盛り上がった形状にすることができるので、磁束(φ1)の方向を、積層方向(D1)と直交する方向(D2)よりも積層方向(D1)に近づけることができる。特に、第1導体パターン部(61)の磁性層側の側面のほうが、第1導体パターン部(61)の非磁性層側の側面よりも大きく突出させることができるので、磁束(φ1)の方向を積層方向(D1)に容易に近づけることができる。その結果、アンテナ素子(1;1a;1b;1c;1d)の通信性能を向上させることができる。
上記より、第7の態様に係るアンテナ素子(1;1a;1b;1c;1d)の製造方法によれば、磁性損を抑制し、かつ、アンテナ素子(1;1a;1b;1c;1d)の通信性能を向上させるアンテナ素子を製造することができる。