JP2016000828A - ゴム質グラフト重合体、熱可塑性樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

ゴム質グラフト重合体、熱可塑性樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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新治 松岡
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Abstract

【課題】耐衝撃性、難燃性に優れ、かつ金属腐食性が低い熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供する。
【解決手段】 ジエン構造単位を含むゴム質部分を含むゴム質グラフト重合体であって、
該ゴム質部分とグラフト部分の質量割合が、ゴム質部分70〜90質量%、グラフト部分10〜30質量%であり、下記の抽出処理により熱水抽出した水中に含まれる硫酸イオン及び亜硫酸イオンの合計量が3.5ppm以下であり、塩素イオンの含有量が150ppm以下であり、ゴム質グラフト重合体の総量に対するナトリウムイオンとカリウムイオンの含有量の合計が20ppm以下であるゴム質グラフト重合体。
(抽出処理) ゴム質グラフト重合体20.0gに脱イオン水200mlを加え、95℃で20時間抽出する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ゴム質グラフト重合体、熱可塑性樹脂組成物及び成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂に代表される熱可塑性樹脂組成物は、自動車分野、OA機器分野、電気・電子機器分野の材料として、工業的に広く利用されている。これらの材料は、薄肉化、大型化が進んでいる。そこで、種々の熱可塑性樹脂やそのアロイにおいて、耐衝撃性等の機械的特性が良好であり、かつ優れた難燃性を有する樹脂材料が求められている。
本発明の目的は、耐衝撃性、難燃性に優れ、かつ金属腐食性が低い熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供することにある。
前記課題は以下の本発明[1]〜[6]によって解決される。
[1] ジエン構造単位を含むゴム質部分を含むゴム質グラフト重合体であって、該ゴム質部分とグラフト部分の質量割合が、ゴム質部分70〜90質量%、グラフト部分10〜30質量%であり、下記の抽出処理により熱水抽出した水中に含まれる硫酸イオン及び亜硫酸イオンの合計量が3.5ppm以下であり、塩素イオンの含有量が150ppm以下であり、ゴム質グラフト重合体の総量に対するナトリウムイオンとカリウムイオンの含有量の合計が20ppm以下であるゴム質グラフト重合体。
(抽出処理)
ゴム質グラフト重合体20.0gに脱イオン水200mlを加え、95℃で20時間抽出する。
[2] ゴム質グラフト重合体の総量に対するカルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオンの含有量の合計が1000ppm以下である[1]に記載のゴム質グラフト重合体
[3] [1]または[2]に記載のゴム質グラフト重合体及び熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物。
[4] 前記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート、ポリエステル、スチレン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つ以上である[3]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5] 難燃剤をさらに含む、[3]または[4]に記載の熱可塑性樹脂組成物
[6] [3]〜[5]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる、成形品。
本発明によれば、耐衝撃性、難燃性に優れ、かつ金属腐食性が低い熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
[ゴム質グラフト重合体]
本発明においてゴム質グラフト重合体は、ゴムラテックスの存在下で、ビニル単量体を重合して得られる。
[ゴム部]
ゴム質グラフト重合体のゴム部はエラストマーを用いることが好ましく、中でも熱可塑性のエラストマーを用いることが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、各種共重合樹脂が用いられるが、ガラス転移温度が通常−20℃以下であり、中でも−30℃以下のものが好ましく、−50℃以下のものがより好ましく、−70℃以下のものがさらに好ましい。
ゴム質グラフト重合体のゴム部は、ジエン構造単位を含む。特に、ガラス転移温度が−20℃以下の構造単位を有する重合体であることが好ましい。また、ゴム部は、必要に応じて他のビニル単量体構造単位を有していてもよい。
ここで、ジエン構造単位とは、後述するゴムラテックスの製造に用いるジエン系単量体に由来する構造単位を意味し、他のビニル単量体構造単位とは、ゴムラテックスの製造に必要に応じて用いられる他のビニル単量体に由来する構造単位を意味する。
ゴム質グラフト重合体のゴム部は、ゴム質グラフト重合体を配合した熱可塑性樹脂組成物の成形品の耐衝撃性を向上する観点から、ゴム部を構成する全単量体単位を100質量%としたときに、ジエン構造単位を50質量%以上含むことが好ましく、75質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましい。
ジエン構造単位の原料となる単量体(ジエン系単量体)としては、特に限定されないが、ブタジエン、イソプレンなどのジエン系モノマー、例えば1,3−ブタジエンが挙げられる。これらのうち、熱可塑性樹脂組成物の低温時の衝撃強度発現性や発色性の観点から、1,3−ブタジエン構造単位を含むことが好ましい。
他のビニル単量体構造単位の原料となる単量体(他のビニル単量体)としては、ジエン系単量体と共重合可能な、単官能性または多官能性のビニル単量体を用いることができる。このような他のビニル単量体としては、例えばエチレン、アクリロニトリル、アルキル(メタ)アクリレート等の単官能性単量体;ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能性単量体が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及び「メタクリレート」の総称である。
ゴム質グラフト重合体の原料となるゴムラテックス(ゴム粒子を含むラテックス)を製造する際の重合方法は特に限定されないが、水系では乳化重合や懸濁重合、溶液系では溶液重合などが挙げられる。ゴム粒子の粒径制御、コア・シェル構造のゴム粒子が得られやすい点で、乳化重合が好ましい。
重合に用いる重合開始剤は特に限定されず、例えばアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤を使用することができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、単量体の合計100質量部に対して0.05〜1.0質量部が好ましく、0.1〜0.3質量部がより好ましい。
乳化重合に用いる乳化剤としては、弱酸と強塩基との塩である乳化剤や、非イオン性乳化剤が好ましい。
乳化重合に用いる乳化剤として強酸と強塩基との塩である乳化剤を用いると、この乳化剤由来の強酸または塩がゴム質グラフト重合体中に微量残存する。強酸または塩が微量残
存したゴム質グラフト重合体を熱可塑性樹脂に配合すると、強酸または塩から遊離した強酸性のイオンによって熱可塑性樹脂が分解されやすくなることがある。その結果、成形品の耐熱着色性が低下したり、難燃性が低下したりする。
特に、前記の遊離した強酸性イオンによってゴム部(例えばブタジエンゴムなど)が酸化劣化されやすい。その結果、成形品の耐熱着色性が低下する。
ゴム質グラフト重合体の原料となるゴム粒子を乳化重合する場合、乳化剤として弱酸と強塩基との塩である乳化剤や、非イオン性乳化剤を用いれば、熱水による抽出処理よって測定される硫酸イオン(SO 2−)と亜硫酸イオン(SO 2−)の合計量(g/g)が3.5ppm以下であり、塩素イオン(Cl)の含有量が150ppm以下であるゴム質グラフト重合体が得られやすくなる。
弱酸と強塩基との塩である乳化剤としては、カルボン酸系乳化剤、リン酸系乳化剤などが挙げられる。カルボン酸系乳化剤及びリン酸系乳化剤はイオンが遊離した際の酸性度が低い。
一方、非イオン性乳化剤はイオンを発生しない。
なお、スルホン酸系乳化剤はイオンが遊離した際の酸性度が高いため、ゴム粒子を乳化重合する際には用いないことが好ましい。
カルボン酸系乳化剤としては、例えばカプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リシノール酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、ミード酸、エイコサトリエン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、アドレン酸、ボセオペンタエン酸、エイコサペンタエン酸、オズボンド酸、イワシ酸、テトラコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ニシン酸等の炭素数8〜28のアルキル基を有する飽和/不飽和脂肪酸の金属塩;アルケニルコハク酸等のオリゴカルボン酸化合物の金属塩;N−ラウロイルサルコシン、N−ココイルサルコシン等のサルコシン誘導体の金属塩が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
リン酸系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンフェニルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、アルキルリン酸が挙げられる。これらのリン酸系乳化剤は、酸型でもよく、ナトリウム塩、カリウム塩等の塩型でもよい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
非イオン性乳化剤としては、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルが挙げられる。
上記のカルボン酸系乳化剤、リン酸系乳化剤及び非イオン性乳化剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、詳しくは後述するが、ゴム質グラフト重合体を回収するに際して凝析を容易に行うためには、上記の乳化剤のうち、カルボン酸系乳化剤
及びリン酸系乳化剤から選ばれる少なくとも1種の乳化剤を用いることが好ましい。
乳化剤の使用量は、特に限定されないが、ゴムラテックス中の樹脂固形分100質量部に対して、0.1〜10.0質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。乳化剤の使用量が、0.1質量部以上であると乳化安定性に優れ、10.0質量部以下であるとゴム質グラフト重合体のラテックスの凝析が容易になる。また、乳化剤の使用量が少ないほど、前記水中に含まれる硫酸イオン及び亜硫酸イオンの合計量や、ゴム質グラフト重合体中の塩素イオンの含有量や、ナトリウムイオン、カリウムイオンの合計量や、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオンの合計量を減らすことができる。
[ゴム粒子の体積平均粒子径]
ゴムラテックス中のゴム粒子の体積平均粒子径は0.1〜1μmであることが好ましい。
[ゴム粒子の肥大化]
ゴムラテックス中のゴム粒子の体積平均粒子径は、通常の乳化重合によれば、約0.1μmとなる。その体積平均粒子径を0.1〜1μmとするには、肥大化剤によりゴムラテックス中のゴム粒子を肥大化するなどの方法が用いられる。ゴム粒子の肥大化は、ゴムラテックスに対して肥大化剤を添加することで行うことができる。肥大化剤は公知のものから任意に選択することができるが、酸基含有共重合体(K)及び/または酸素酸塩(M)を用いることが好ましい。
酸基含有共重合体(K)としては、不飽和酸、アルキルアクリレート、及び必要に応じて他の共重合可能な単量体を含む単量体混合物を重合して得られる重合体が好ましい。
不飽和酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマール酸、ケイヒ酸、ソルビン酸及びp−スチレンスルホン酸が挙げられる。これらの中でも、入手性や取り扱い性の点で、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アルキルアクリレートとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレートが挙げられる。これらの中でも、アルキル基の炭素数が1〜12のアルキルアクリレートが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
他の共重合可能な単量体としては、不飽和酸やアルキルアクリレートと共重合可能であれば特に制限されないが、例えばα−メチルスチレン等のスチレン誘導体、アルキルメタクリレート、アクリロニトリルが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
酸基含有共重合体(K)の製造に用いる単量体混合物の組成としては、不飽和酸が3〜40質量%、アルキルアクリレートが97〜35質量%、他の共重合可能な単量体が0〜40質量%であることが好ましく、不飽和酸が5〜35質量%、アルキルアクリレートが95〜40質量%、他の共重合可能な単量体が0〜35質量%であることがより好ましい。単量体混合物の組成が上記範囲内であれば、肥大化を行う際のラテックスの安定性が優れ、肥大化して得られるゴムラテックスのゴム粒子径を制御しやすい。
酸基含有共重合体(K)は、前記組成の単量体混合物を、公知の乳化重合法によって重合することにより得ることができる。重合は一段階で行っても多段階で行ってもよい。多段階で重合することによって、2層以上の多層構造を有する酸基含有共重合体(K)を得ることができる。
ゴム粒子の肥大化の際には、ゴム質グラフト重合体の性能を妨げない範囲で、酸素酸塩(M)を用いることができる。
酸素酸塩(M)としては、酸素酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩、または亜鉛、ニッケル、及びアルミニウムの塩の中から選ばれた少なくとも一種の酸素酸塩が好ましい。このような酸素酸塩(M)の例としては、硫酸、硝酸、リン酸等と、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、ニッケル、アルミニウム等との塩が挙げられる。酸素酸塩(M)は、肥大化を行う際の粒子径制御の行いやすさ、入手しやすさ、及び取り扱いやすさの点で、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、リン酸ナトリウム、リン酸マグネシウム等が好ましい。
これらの酸基含有共重合体(K)及び酸素酸塩(M)は、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。酸基含有共重合体(K)及び酸素酸塩(M)を各々単独で用いる場合、酸基含有共重合体(K)の添加量は、ポリマー固形分として、ゴムラテックスの樹脂固形分100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.5〜4質量部がより好ましく、0.5〜3質量部がさらに好ましい。また、酸素酸塩(M)の添加量は、ゴムラテックスの樹脂固形分100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.1〜4質量部がより好ましい。酸基含有共重合体(K)及び酸素酸塩(M)をこれらの範囲内で添加することでゴムラテックス中のゴム粒子の肥大化がより効率的に行われ、得られる肥大化ゴムラテックスの安定性も大幅に向上する。
なお、酸基含有共重合体(K)を用いて肥大化処理を行う場合、ゴムラテックスのpHは7以上であることが好ましい。pHが酸性側にある場合には、酸基含有共重合体(K)を添加しても肥大化効率が低い場合がある。ゴムラテックスのpHは、ゴムラテックスの製造中に調製してもよく、また、肥大化処理の前に別途行ってもよい。
[グラフト部]
ゴム質グラフト重合体ラテックスは、例えばゴム部からなるゴム粒子を含むラテックス(ゴムラテックス)の存在下で、ビニル単量体を重合して得られる。ゴムラテックスの存在下で重合するビニル単量体は、グラフト単量体成分である。グラフト単量体成分は、(メタ)アクリレート、芳香族ビニル単量体及びシアン化ビニル単量体から選ばれる少なくとも1種の単量体を含むことが好ましい。グラフト単量体成分の少なくとも一部は、ゴム部にグラフト結合してグラフト重合体を形成していることが好ましい。
グラフト用の(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば以下のものが挙げられる。メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
グラフト用の芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレンが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
グラフト用のシアン化ビニル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ゴム質グラフト重合体100質量%中のゴム粒子の割合は70〜90質量%である。この値が70質量%以上であれば、強度発現の面で好ましい。また、この値が90質量%以下であれば、熱可塑性樹脂への分散性、ゴム質グラフト重合体の凝固、回収の観点から好ましい。
ゴムラテックスへのビニル単量体のグラフト重合方法は特に限定されないが粒子径の制御、コア・シェル構造を容易に形成できるという理由から、乳化重合が好ましい。乳化重合法としては、単量体の一括添加重合、単量体の連続添加重合、多段階重合などの一般に知られている乳化重合法を採用することができる。乳化剤の添加も単量体の添加と同様の方法を採用することができる。
グラフト重合に用いる重合開始剤は、ゴムラテックスを重合する際の重合開始剤と同じものを使用することができる。
[ゴム質グラフト重合体の回収]
ゴム質グラフト重合体は、上記のようにして得られるゴム質グラフト重合体ラテックスから噴霧回収、またはゴム質グラフト重合体ラテックスを凝析して回収することにより得られる。これらのうち、凝析法の方がゴム質グラフト重合体中に乳化剤等の重合助剤が残存しにくく好ましい。本発明において、粉体を得るために用いるゴム質グラフト重合体のラテックスは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ゴム質グラフト重合体ラテックスの凝析法は、例えば、ゴム質グラフト重合体ラテックスを、凝析剤を溶解させた熱水と接触させ、攪拌しながら重合体を凝析させてスラリーとし、生成した析出物を洗浄、脱水、乾燥する方法が挙げられる。
ゴム質グラフト重合体ラテックスを凝析する際の凝析剤が強酸、または強酸と強塩基との塩であると、得られるゴム質グラフト重合体中に凝析剤由来の強酸または塩が微量残存し、この強酸または塩から遊離した強酸性のイオンによって熱可塑性樹脂が分解されやすくなることがある。その結果、成形品の耐熱着色性が低下したり、難燃性が低下したりする。また、前記の遊離した強酸性イオンによってゴム部(例えばブタジエンゴムなど)が酸化劣化されやすい。その結果、成形品の耐熱着色性や難燃性が低下する。
よって、凝析剤としては、弱酸と強塩基との塩を用いることが好ましく、弱酸のアルカリ(土類)金属塩が用いることがより好ましい。凝析剤として弱酸と強塩基との塩を用いれば、熱水による抽出処理よって測定される硫酸イオン(SO 2−)と亜硫酸イオン(SO 2−)の合計量(g/g)が3.5ppm以下であり、塩素イオン(Cl)の含有量が150ppm以下であるゴム質グラフト重合体が得られやすくなる。
弱酸と強塩基との塩である凝析剤としては、例えば酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸バリウム等の有機酸のアルカリ(土類)金属塩;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム等の硫酸以外の無機酸のアルカリ(土類)金属塩が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの凝析剤は水溶液として使用するため、水溶性が高いことが好ましい。また凝析剤は、凝析時にゴム質グラフト重合体ラテックスに含まれる乳化剤と難解離性の塩を形成するものが好ましい。このような凝析剤は、ゴム質グラフト重合体中に微量残存しても、
該重合体を熱可塑性樹脂に配合して得られる熱可塑性樹脂組成物の熱安定性を低下させにくい。
これらの観点から、上記凝析剤のうち、有機酸のアルカリ土類金属塩または硫酸以外の無機酸のアルカリ土類金属塩が好ましく、中でもカルシウム塩、マグネシウム塩がより好ましく、酢酸カルシウムがさらに好ましい。
ゴム質グラフト重合体ラテックスを凝析する際の凝析剤の使用量は、ラテックスを十分に凝析させる量であれば特に限定されないが、ゴム質グラフト重合体ラテックス中の樹脂固形分100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がさらに好ましい。凝析剤の使用量が0.1質量部以上であると、ゴム質グラフト重合体の粉体回収性及び粉体取り扱い性が良好である。一方、凝析剤の使用量が20質量部以下であると、得られたゴム質グラフト重合体を熱可塑性樹脂に配合した熱可塑性樹脂組成物は難燃性が良好である。また、凝析剤の使用量が少ないほど、前記水中に含まれる硫酸イオン及び亜硫酸イオンの合計量や、ゴム質グラフト重合体中の塩素イオンの含有量や、ナトリウムイオン、カリウムイオンの合計量や、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオンの合計量を減らすことができる。
凝析法によって得られた凝析物の洗浄方法としては特に限定されるものではないが、洗浄効率を高めるために、水、またはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの炭素原子数4以下のアルコールで洗浄することが好ましく、特に水及び/またはメタノールで洗浄することが好ましい。
[硫酸イオン(SO 2−)、亜硫酸イオン(SO 2−)量]
ゴム質グラフト重合体から下記の熱水による抽出処理よって測定される硫酸イオン(SO 2−)と亜硫酸イオン(SO 2−)の合計量(g/g)は3.5ppm以下であり、3.0ppm以下が好ましく、2.5ppm以下がより好ましい。
(抽出処理)
ゴム質グラフト重合体20.0gに脱イオン水200mlを加え、95℃で20時間抽出する。
これらの両イオンの合計量が3.5ppmを超えるゴム質グラフト重合体を熱可塑性樹脂に配合すると、これらのイオンによって熱可塑性樹脂が分解されやすくなることがある。その結果、成形品の耐熱着色性が低下したり、難燃性が低下したりする。また、これらのイオンによってゴム質部分(例えばブタジエンゴムなど)が酸化劣化されやすくなる。その結果、成形品の耐熱着色性が低下する。
上記の観点から、硫酸イオン(SO 2−)及び亜硫酸イオン(SO 2−)の合計量が3.5ppm以下であれば、耐熱着色性や難燃性を維持できる。
[塩素イオン(Cl)量]
また、ゴム質グラフト重合体中に含まれる塩素イオン(Cl)の含有量(g/g)は150ppm以下であり、100ppm以下が好ましく、50ppm以下がより好ましい。塩素イオンの含有量が150ppmを超えると、本発明のゴム質グラフト重合体を製造する際や、熱可塑性樹脂組成物を射出成形する際に、製造ラインの金属製配管や、成形機の金型などを腐食させる。
[金属イオン量]
ゴム質グラフト重合体中に含まれるナトリウムイオン、カリウムイオンの合計量は20ppm以下であり、好ましくは10ppm以下である。また、ゴム質グラフト重合体中に含まれるカルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオンの合計量は1000ppm以下であることが好ましい。
ナトリウムイオン、カリウムイオンの合計量が20ppmを超えるゴム質グラフト重合体を熱可塑性樹脂に配合すると、これらのイオンによって熱可塑性樹脂が分解されやすくなることがある。その結果、成形品の耐熱着色性が低下したり、難燃性が低下したりする。
また、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオンの合計量が1000ppmを超えるゴム質グラフト重合体を熱可塑性樹脂に配合すると、これらのイオンによって熱可塑性樹脂が分解されやすくなることがある。その結果、成形品の耐熱着色性が低下したり、難燃性が低下したりすることがある。
硫酸イオン及び亜硫酸イオンの合計量や、塩素イオンの含有量や、ナトリウムイオン、カリウムイオンの合計量や、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオンの合計量は、ゴム質グラフト重合体を製造する際に用いる乳化剤や凝析剤の種類、使用量、洗浄媒体の種類、使用量などにより調整できる。
[酸化防止剤]
ゴム質グラフト重合体には、酸化防止の目的で、通常知られた酸化防止剤の1種または2種以上を添加することができる。ゴム質グラフト重合体への酸化防止剤の添加方法は特に限定されるものではないが、数百μmの粒子径を有する粉体や錠剤として、または水に分散させた状態(ディスパージョン)で添加する方法などが挙げられる。本発明においては、ゴム質グラフト重合体ラテックスに酸化防止剤をディスパージョンにて添加する方法がもっとも好ましく、酸化防止剤が添加されたゴム質グラフト重合体ラッテクスを上述した凝析または噴霧回収することで、酸化防止剤が添加されたゴム質グラフト重合体が得られる。酸化防止剤をディスパージョンで添加することで、酸化防止剤をゴム質グラフト重合体に近く、より均一に添加することができるため、ブタジエンゴム等のゴム部の酸化劣化を抑制し、より優れた耐熱着色性が得られる。
酸化防止剤の添加量は、ゴム質グラフト重合体100質量部に対し、0.0001〜10質量部が好ましく、その下限量は0.001質量部以上がより好ましく、0.01質量部以上がさらに好ましく、その上限量は6質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましい。酸化防止剤の添加量が上記下限値以上であると成形時の着色の抑制効果が良好となる傾向がある。一方、酸化防止剤の含有量が上記上限値以下であると射出成形時における金型への付着物が抑制されることにより、表面外観が良好な製品を得ることができる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、及びホスファイト系酸化防止剤からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、フェノール系酸化防止剤及び/またはチオエーテル系酸化防止剤がより好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、ペンタエリスリトール−テトラキス{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ビス[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)]が挙げられる。これらの中でも、3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、ペンタエリスリトール−テトラキス{3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
チオエーテル系酸化防止剤としては、例えばジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジトリデシル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ビス[2−メチル−4−(3−ラウリルチオプロピオニルオキシ)−5−tert−ブチルフェニル]スルフィド、オクタデシルジスルフィド、メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール、1,1’−チオビス(2−ナフトール)(ビス[3−(ドデシルチオ)プロピオン酸]2,2−ビス[[3−(ドデシルチオ)−1−オキソプロピルオキシ]メチル]−1,3−プロパンジイル)が挙げられる。これらの中でも、(ビス[3−(ドデシルチオ)プロピオン酸]2,2−ビス[[3−(ドデシルチオ)−1−オキソプロピルオキシ]メチル]−1,3−プロパンジイル)が好ましい。
チオエーテル系酸化防止剤としては、分子量が700以上のものが好ましい。分子量が700以上であれば、低揮発性であるため、熱可塑性樹脂組成物の高温成形時のおいてもより優れた耐熱着色性を示す。
ホスファイト系酸化防止剤としては、例えばトリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。これらの中でも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトがより好ましい。
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、ゴム質グラフト重合体とを含有する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂は、特に限定されず、公知の熱可塑性樹脂を使用することができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、以下のものが挙げられる。ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、シンジオタクティックポリスチレン等のスチレン系樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂;ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;6−ナイロン、6,6−ナイロン、ポリフェニレンテレフタルアミド等のポリアミド;ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール。これらの中でも、ポリカーボネート、ポリエステル、スチレン系樹脂が、ゴム質グラフト重合体を配合することで、耐衝撃性が向上しやすいため好ましい。また、これらの熱可塑性樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂とゴム質グラフト重合体の配合割合は、所望の物性等に応じて適宜決定すればよく、特に制限されないが、熱可塑性樹脂組成物100質量%中、ゴム質グラフト重合体の含有量が0.1〜40質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%であることがより好ましく、1〜15質量%であることがさらに好ましい。ゴム質重合体の含有量が0.1質量%以上であれば、良好な耐衝撃性が得られ、40質量%以下であれば熱可塑性樹脂組成物の耐熱性を損ないにくい。
さらに、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、成形品に種々の機能付与や特性改善のために、公知の添加物を配合してもよい。かかる添加剤としては、例えば、難
燃剤、滴下防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、滑剤、摺動剤、着色剤、蛍光増白剤、蓄光顔料、蛍光染料、帯電防止剤が挙げられる。また、成形品の強度、剛性、難燃性を向上させるために、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム繊維等の充填剤を配合してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂とゴム質グラフト重合体とを含む熱可塑性樹脂組成物は、粉体の混合物として、または溶融混練物として調整される。その際、例えば、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、2本ロール、ニーダー、ブラベンダー等が使用される。
[成形品]
本発明の成形品は、上記の熱可塑性樹脂組成物を成形したものである。その成形方法としては、例えば、圧縮成形、トランスファー成形、射出成形、ブロー成形、真空成形、押出し成形、積層成形、カレンダー成形が挙げられる。
本発明の成形品は、雑貨、家庭用電気製品、OA機器、電気・電子機器、建材、自動車部品をはじめ、広い分野に使用することができる。
以下、実施例により本発明を説明する。なお、以下の説明において、特に断りがない限り「部」は質量部を意味し、「%」は質量%を意味する。まず、評価方法について説明する。
[硫酸イオン(SO 2−)及び亜硫酸イオン(SO 2−)量の測定]
ゴム質グラフト重合体20.0gをガラス製耐圧容器に量り取り、これに脱イオン水200mlを加えて、ギアオーブン内にて95℃、20時間、熱水による抽出処理を行った。この液を室温(25℃)に冷却してから目開き0.2μmのセルロース混合エステル製メンブランフィルターで濾過し、濾液を試料液とした。
イオンクロマトグラフ(日本ダイオネクス社製、商品名;IC−20型、分離カラム:IonPac AS12A)を用いて前記試料液中の硫酸イオン(SO 2−)及び亜硫酸イオン(SO 2−)の量を測定した。検量線は硫酸ナトリウムの標準液(キシダ化学社製、イオンクロマトグラフィー用硫酸イオン標準液(SO 2−):1000mg/L)及び亜硫酸ナトリウムの標準液(キシダ化学社製、イオンクロマトグラフィー用亜硫酸イオン標準液(SO 2−):1000mg/L)を用い、SO 2−及びSO 2−:各20ppmの一点で作成して行なった。イオンクロマトグラフより定量した濃度から、ゴム質グラフト重合体中に含まれる硫酸イオン量及び亜硫酸イオン量の合計量(g/g)を算出した。
[塩素イオン(Cl)量の測定]
ゴム質グラフト重合体0.05gを、試料燃焼装置(三菱化学社製、商品名「QF−02」)にて完全燃焼させ、発生ガスを0.3%過酸化水素水20mlに吸収させたものを試料液とした。イオンクロマトグラフ(日本ダイオネクス社製、商品名;IC−20型、分離カラム:IonPac AS12A)を用いて試料液中の塩素(Cl)の量を測定した。検量線はキシダ化学社製、イオンクロマトグラフィー用塩化物イオン標準液(Cl):1000mg/Lを用い、Cl:20ppmの一点で作成して行なった。イオンクロマトグラフより定量した濃度から、ゴム質グラフト重合体中に含まれる塩素含有量(g/g)を算出した。
[金属イオン量の測定]
まず、試料1gを白金皿に量り取り、電熱器により乾式灰化させ塩酸及び蒸留水で溶解し、蒸留水で50mlにメスアップし検液とした。この検液をICP発光分析装置(機種名「IRIS Interpid IIXSP」Thermo Scientific社製)を用いて金属イオン量を定量した。
[耐金属腐食性]
ゴム質グラフト重合体の粉体10gを耐熱ガラス製の容器に計量し、これに脱イオン水を10g加え、さらに合金工具鋼製のクリップを入れた。常温(23℃)にて、10日間保持した後に合金工具鋼製のクリップの腐食状態を目視で確認し、以下の評価基準にて耐金属腐食性を評価した。評価が「a」のゴム質グラフト重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物は、金属に対する腐食性が低い、すなわち耐金属腐食性に優れることを意味する。
a:腐食無し。
c:腐食有り(錆有り)。
[試験片の作製]
表7に従って各材料を混合して、熱可塑性樹脂組成物を得た。これらの各熱可塑性樹脂組成物を、それぞれ表7に示したバレル温度に加熱した同方向二軸押出機(池貝社製、機種名「PCM−30」)にてスクリュー回転数150rpmの条件で溶融混練して熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを、熱風乾燥機を用いて70℃で12時間乾燥した後、100t射出成形機(住友重機械工業社製、機種名「SE−100DU」)にて、表7に示したシリンダー温度及び金型温度の条件で成形して短冊状の試験片1(長さ120mm、幅12.7mm、厚み0.8mm)と、試験片2(長さ120mm、幅12.7mm、厚み1.6mm)を得た。
[難燃性]
UL−94Vの規格に従って、5本の試験片3を用いて垂直型燃焼試験を実施した。難燃性の判定はUL−94Vに従い、V−0、V−1、V−2に分類した(V−0が最も難燃性が高いことを示す)。総燃焼時間は、5本の合計燃焼時間(第一接炎時、第二接炎時の燃焼時間を含む)である。
[材料]
以下の実施例及び比較例で用いた化合物の略号を表1に示す。
[ゴム質グラフト重合体の製造]
<実施例1>
(ゴムラテックス(H−1)の製造)
表2中の成分(1)の欄に示す6種類の材料を容量70Lのオートクレーブ中に仕込み、昇温して43℃となった時点で、表2中の成分(2)の欄に示す4種類の材料からなるレドックス系開始剤をオートクレーブ内に添加し、重合を開始した後、さらに60℃まで昇温した。重合開始から8時間反応させて、ブタジエン系ゴム粒子を含むラテックス(ゴムラテックス(H−1))を得た。
(酸基含有共重合体ラテックス(K−1)の製造)
表3中の成分(3)の欄に示す6種類の材料を反応容器内に仕込み、内温を60℃に昇温した後、表3中の成分(4)の欄に示す3種類の材料からなる混合物を、2時間にわたり連続滴下で投入して重合させた。さらに2時間撹拌を続けることにより、モノマー転化率97%以上の酸基含有共重合体ラテックス(K−1)を得た。
(肥大化ゴムラテックス(H−1’)の製造)
製造したゴムラテックス(H−1)のうち、ポリマー固形分として75質量部のゴムラテックス(H−1)をフラスコに配合し、内温50℃にてポリマー固形分として2質量部の酸基含有共重合体ラテックス(K−1)を加えて30分間保持してゴムラテックス(H−1)中のゴム粒子を肥大化させ、肥大化ゴムラテックス(H−1’)を得た。
(ゴム質グラフト重合体(B−1)の製造)
引き続き、肥大化ゴムラテックス(H−1’)の入った反応容器内に、表4中の初期仕込みの欄に示す脱イオン水と、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートと、アルケニルコハク酸カリウムの3種類の材料を加え、温度を65℃まで昇温した。次いで、表4中の「1段目グラフト」の欄に示す3種類の材料からなる混合物を90分間かけて滴下し重合を進行させた後、30分間保持し、第1グラフト重合工程を行った。
その後、該重合体の存在下で、表4中の「2段目グラフト」の欄に示す3種類の材料からなる混合物を30分間かけて滴下した後、1時間保持し、第2グラフト重合工程を行い、ゴム質グラフト重合体ラテックスを得た。
得られたゴム質グラフト重合体ラテックスに、フェノール系酸化防止剤のIrg1076(n−オクタデシル−3−(3’,5’ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)2.5質量部と、チオエーテル系酸化防止剤であるAO−412S(ビス[3−(ドデシルチオ)プロピオン酸]2,2−ビス[[3−(ドデシルチオ)−1−オキソプロピルオキシ]メチル]−1,3―プロパンジイル)を0.75質量部添加した。これを酢酸カルシウム5質量部が入った脱イオン水460質量部に添加して重合物を凝析し、3000部の脱イオン水で洗浄し、脱水、乾燥してゴム質グラフト重合体(B−1)を得た。
<実施例2>
(ゴム質グラフト重合体(B−2)の製造)
肥大化ゴムラテックス(H−1’)の製造までは、実施例1と同様にして、肥大化ゴムラテックス(H−1’)を製造した。引き続き、肥大化ゴムラテックス(H−1’)の入った反応容器内に、表5中の初期仕込みの欄に示す脱イオン水と、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートと、アルケニルコハク酸カリウムの3種類の材料を加え、温度を65℃まで昇温した。次いで、表5中の「1段目グラフト」の欄に示す3種類の材料からなる混合物を25分間かけて滴下し重合を進行させた後、40分間保持し、第1グラフト重合工程を行った。
その後、該重合体の存在下で、表5中の「2段目グラフト」の欄に示す2種類の材料からなる混合物を30分間かけて滴下した後、1時間保持し、第2グラフト重合工程を行った。
その後、該重合体の存在下で、表5中の「3段目グラフト」の欄に示す2種類の材料からなる混合物を10分間かけて滴下した後、2時間保持し、第3グラフト重合工程を行い、ゴム質グラフト重合体ラテックスを得た。
続いて、実施例1と同様に、酸化防止剤を添加した後に凝析、水洗、脱水、乾燥して、ゴム質グラフト重合体(B−2)を得た。
[ゴム質グラフト重合体の評価]
ゴム質グラフト重合体中の硫酸イオン量、亜硫酸イオン量、及び塩素イオン量を前記測定方法に従って測定し、ゴム質グラフト重合体による耐金属腐食性を前記評価方法に従って評価した。結果を表6に示す。
表6中、「−ROOK」は混合脂肪酸カリウム及びロジン酸カリウムのことである。
表6に示す種類のゴム質グラフト重合体を用い、前記ペレットの作製方法に従って熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットを用い、前記試験片の作製方法に従って試験片1〜2を作製し、難燃性を前記評価方法に従って評価した。各配合と、その評価結果を表7に示す。
表6の結果より、実施例1及び2のゴム質グラフト重合体は、耐金属腐食性に優れていた。
表7の結果より、実施例3〜6の熱可塑性樹脂組成物からは、難燃性に優れた成形品(試験片)が得られた。
本発明によれば、耐衝撃性、難燃性に優れ、かつ金属腐食性が低い熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供することができる。
本発明の成形品は、雑貨、家庭用電気製品、OA機器、電気・電子機器、建材、自動車部品をはじめ、広い分野において有用である。

Claims (6)

  1. ジエン構造単位を含むゴム質部分を含むゴム質グラフト重合体であって、
    該ゴム質部分とグラフト部分の質量割合が、ゴム質部分70〜90質量%、グラフト部分10〜30質量%であり、
    下記の抽出処理により熱水抽出した水中に含まれる硫酸イオン及び亜硫酸イオンの合計量が3.5ppm以下であり、塩素イオンの含有量が150ppm以下であり、ゴム質グラフト重合体の総量に対するナトリウムイオンとカリウムイオンの含有量の合計が20ppm以下である
    ゴム質グラフト重合体。
    (抽出処理)
    ゴム質グラフト重合体20.0gに脱イオン水200mlを加え、95℃で20時間抽出する。
  2. ゴム質グラフト重合体の総量に対するカルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオンの含有量の合計が1000ppm以下である請求項1に記載のゴム質グラフト重合体
  3. 請求項1または2に記載のゴム質グラフト重合体及び熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物。
  4. 前記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート、ポリエステル、スチレン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つ以上である請求項3に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  5. 難燃剤をさらに含む、請求項3または4に記載の熱可塑性樹脂組成物
  6. 請求項3〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を成形して得られる、成形品。
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