JP2016008277A - ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物、及び成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリブチレンテレフタレート樹脂と、ゴム質グラフト重合体とを含むポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であって、前記ゴム質グラフト重合体は、ゴム質部分がジエン構造単位を50質量%以上又はアルキル(メタ)アクリレート構造単位を86質量%以上含む重合体であり、前記ゴム質グラフト重合体から熱水抽出した水中に含まれる硫酸イオン及び亜硫酸イオンの合計量が3.5ppm以下であり、かつ前記ゴム質グラフト重合体中に含まれる塩素イオンの含有量が150ppm以下である、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
特許文献2には、ポリブチレンテレフタレート樹脂と、耐衝撃性改良剤としてコア・シェル構造のメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体とを含むポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が開示されている。
加えて、ポリブチレンテレフタレート樹脂は高温高湿下にて、強酸性物質が存在していると加水分解が進行しやすい傾向にあり、ポリブチレンテレフタレート樹脂の分解は、成形品の曲げ強度や曲げ弾性率の低下の原因となることがある。
[1] ポリブチレンテレフタレート樹脂と、ゴム質グラフト重合体とを含むポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であって、前記ゴム質グラフト重合体は、ゴム質部分がジエン構造単位を50質量%以上又はアルキル(メタ)アクリレート構造単位を86質量%以上含む重合体であり、前記ゴム質グラフト重合体から下記の抽出処理により熱水抽出した水中に含まれる硫酸イオン及び亜硫酸イオンの合計量が3.5ppm以下であり、かつ前記ゴム質グラフト重合体中に含まれる塩素イオンの含有量が150ppm以下である、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(抽出処理)
ゴム質グラフト重合体20.0gに脱イオン水200mlを加え、95℃で20時間抽出する。
[2] 難燃剤をさらに含む、[1]に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
[3] [1]または[2]に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形して得られる、成形品。
なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
また、以下の説明において、「成形品」とは、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形して得られるものである。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂と、ゴム質グラフト重合体とを含有する。ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、難燃剤をさらに含有することが好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸を含有するジカルボン酸と、1,4−ブタンジオールとを脱水縮合して得られる。
熱可塑性ポリエステル樹脂の中でも、テレフタル酸を含有するカルボン酸と、1,4−ブタンジオールとを脱水縮合して得られるポリブチレンテレフタレート樹脂は、機械的特性、耐熱性等の特性に優れており、また、結晶化速度が速く、射出成形に好適である。
テレフタル酸以外のジカルボン酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ナフタレン−1,4−もしくは−2,6−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4−ジカルボン酸などが挙げられる。
また、ポリブチレンテレフタレート樹脂は、既知の方法にて重合して得ることができ、例えばテレフタル酸又はそのアルキルジエステルと、1,4−ブタンジオールとを既知の方法にて脱水縮合することにより得ることができる。
ゴム質グラフト重合体は、成形品の耐熱着色性の低下を抑制する効果を主に奏する。
ゴム質グラフト重合体は、ゴム質部分(以下、「ゴム部」ともいう。)が、当該ゴム質部分を構成する全単量体単位を100質量%としたときに、ジエン構造単位を50質量%以上又はアルキル(メタ)アクリレート構造単位を86質量%以上含む重合体である。これにより、成形品の耐衝撃性が向上する。ゴム質部分はジエン構造単位を60質量%以上又はアルキル(メタ)アクリレート構造単位を90質量%以上含むことが好ましい。
(抽出処理)
ゴム質グラフト重合体20.0gに脱イオン水200mlを加え、95℃で20時間抽出する。
特に、ゴム質グラフト重合体のゴム質部分がジエン構造単位を含む場合、硫酸イオン及び亜硫酸イオンの合計量が3.5ppmを超えると、これらのイオンによってゴム質部分(例えばブタジエンゴムなど)が酸化劣化されやすい。その結果、成形品の耐熱着色性が低下する。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が難燃剤を含有する場合、ポリブチレンテレフタレート樹脂が分解すると成形品の難燃性も低下する傾向にある。
硫酸イオン及び亜硫酸イオンの合計量が3.5ppm以下であれば、耐熱着色性、曲げ強度、曲げ弾性率を維持できる。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が難燃剤を含有する場合は難燃性も維持できる。
また、本発明は、ゴム質部分がジエン構造単位を含む場合や、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が難燃剤を含有する場合に特に有効である。
ここで、ゴム質グラフト重合体の製造方法の一例について説明する。
ゴム質グラフト重合体は、重合の際に使用する乳化剤や粉体回収の際に使用する凝析剤を選定することによって得られ、例えばゴムラテックスの存在下でビニル単量体成分を重合して得られる。特に、下記工程(a)〜(c)を含む方法により製造することが好ましい。
工程(a):ゴムラテックスを調製する工程。
工程(b):弱酸と強塩基との塩である乳化剤又は非イオン性乳化剤を含むゴムラテックスの存在下で、ビニル単量体成分を乳化重合してゴム質グラフト重合体ラテックスを得る工程。
工程(c):前記ゴム質グラフト重合体ラテックスを噴霧回収、又は弱酸と強塩基との塩である凝析剤を用いて凝析回収する工程。
ゴム質グラフト重合体のゴム部はエラストマーを用いることが好ましく、中でも熱可塑性のエラストマーを用いることが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、各種共重合樹脂が用いられるが、ガラス転移温度が通常−20℃以下であり、中でも−30℃以下のものが好ましく、−50℃以下のものがより好ましく、−70℃以下のものがさらに好ましい。
ここで、ジエン構造単位とは、後述するゴムラテックスの製造に用いるジエン系単量体に由来する構造単位を意味し、アルキル(メタ)アクリレート構造単位とは、ゴムラテックスの製造に用いるアルキル(メタ)アクリレート単量体に由来する構造単位を意味し、他のビニル単量体構造単位とは、ゴムラテックスの製造に必要に応じて用いられる他のビニル単量体に由来する構造単位を意味する。
ゴム質グラフト重合体のゴム部がブタジエン構造単位を含む場合、ゴム部を構成する全単量体単位を100質量%としたときに、ブタジエン構造単位を70質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことがさらに好ましい。ゴム部がブタジエン構造単位を70質量%以上含めば、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物より得られる成形品の低温時の衝撃強度がより向上する。
なお、ゴム質グラフト重合体のゴム部は、ジエン構造単位とアルキル(メタ)アクリレート構造単位の両方を含んでいてもよい。この場合、ゴム分を構成する全単量体単位を100質量%としたときに、これらの構造単位を合計で90質量%以上含むことが好ましい。
ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」及び「メタアクリレート」の総称である。
重合に用いる重合開始剤は特に限定されず、例えばアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤を使用することができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、単量体の合計100質量部に対して0.05〜1.0質量部が好ましく、0.1〜0.3質量部がより好ましい。
乳化重合に用いる乳化剤として強酸と強塩基との塩である乳化剤を用いると、この乳化剤由来の強酸又は塩がゴム質グラフト重合体中に微量残存する。強酸又は塩が微量残存したゴム質グラフト重合体をポリブチレンテレフタレート樹脂に配合すると、強酸又は塩から遊離した強酸性のイオンによってポリブチレンテレフタレート樹脂が分解されやすくなる。その結果、成形品の耐熱着色性が低下したり、曲げ強度や曲げ弾性率が低下したりする。
特に、ゴム質グラフト重合体のゴム部がジエン構造単位を含む場合、前記の遊離した強酸性イオンによってゴム部(例えばブタジエンゴムなど)が酸化劣化されやすい。その結果、成形品の耐熱着色性が低下する。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が難燃剤を含有する場合は難燃性も低下する傾向にある。
ゴム質グラフト重合体の原料となるゴム粒子を乳化重合する場合、乳化剤として弱酸と強塩基との塩である乳化剤や、非イオン性乳化剤を用いれば、前記水中に含まれる硫酸イオン及び亜硫酸イオンの合計量が3.5ppm以下であり、塩素イオンの含有量が150ppm以下であるゴム質グラフト重合体が得られやすくなる。
一方、非イオン性乳化剤はイオンを発生しない。
なお、スルホン酸系乳化剤はイオンが遊離した際の酸性度が高いため、ゴム粒子を乳化重合する際には用いないことが好ましい。
ここで、ゴムラテックス中のゴム粒子の「体積平均粒子径」は、光散乱粒子計を用いて測定したゴムラテックス中のゴム粒子の50%体積平均粒子径を意味する。その測定方法は後述する。
ゴムラテックス中のゴム粒子の体積平均粒子径は、通常の乳化重合によれば、約0.1μmとなる。その体積平均粒子径を0.1〜1μmとするには、肥大化剤によりゴムラテックス中のゴム粒子を肥大化するなどの方法が用いられる。ゴム粒子の肥大化は、ゴムラテックスに対して肥大化剤を添加することで行うことができる。肥大化剤は公知のものから任意に選択することができるが、酸基含有共重合体(K)及び/又は酸素酸塩(M)を用いることが好ましい。
酸素酸塩(M)としては、酸素酸のアルカリ金属塩もしくはアルカリ土類金属塩、又は亜鉛、ニッケル、及びアルミニウムの塩の中から選ばれた少なくとも一種の酸素酸塩が好ましい。このような酸素酸塩(M)の例としては、硫酸、硝酸、リン酸等と、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、ニッケル、アルミニウム等との塩が挙げられる。酸素酸塩(M)は、肥大化を行う際の粒子径制御の行いやすさ、入手しやすさ、及び取り扱いやすさの点で、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、リン酸ナトリウム、リン酸マグネシウムなどが好ましい。
ゴム質グラフト重合体ラテックスは、例えばゴム部からなるゴム粒子を含むラテックス(ゴムラテックス)の存在下で、ビニル単量体成分を重合して得られる。ゴムラテックスの存在下で重合するビニル単量体成分はグラフト単量体成分であり、(メタ)アクリレート、芳香族ビニル単量体、及びシアン化ビニル単量体から選ばれる少なくとも1種の単量体を含むことが好ましい。グラフト単量体成分の少なくとも一部は、ゴム部にグラフト結合してグラフト重合体を形成していることが好ましい。
グラフト用の芳香族ビニル単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
グラフト用のシアン化ビニル単量体としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
乳化重合に用いる乳化剤として強酸と強塩基との塩である乳化剤を用いると、上述したように、この乳化剤由来の強酸又は塩がゴム質グラフト重合体中に微量残存し、遊離した強酸性のイオンによってポリブチレンテレフタレート樹脂が分解されやすくなり、その結果、成形品の耐熱着色性が低下したり、曲げ強度や曲げ弾性率が低下したりする。特に、ゴム質グラフト重合体のゴム部がジエン構造単位を含む場合、前記の遊離した強酸性イオンによってゴム部(例えばブタジエンゴムなど)が酸化劣化されやすい。その結果、成形品の耐熱着色性が低下する。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が難燃剤を含有する場合は難燃性も低下する傾向にある。
グラフト重合を乳化重合にて行う場合、乳化剤として弱酸と強塩基との塩である乳化剤や、非イオン性乳化剤を用いれば、前記水中に含まれる硫酸イオン及び亜硫酸イオンの合計量が3.5ppm以下であり、塩素イオンの含有量が150ppm以下であるゴム質グラフト重合体が得られやすくなる。
弱酸と強塩基との塩である乳化剤や、非イオン性乳化剤としては、ゴム部の説明において先に例示したカルボン酸系乳化剤、リン酸系乳化剤、非イオン性乳化剤などが挙げられる。
ゴム質グラフト重合体は、上記のようにして得られるゴム質グラフト重合体ラテックスから噴霧回収、又はゴム質グラフト重合体ラテックスを凝析して回収することにより得られる。本発明において、粉体を得るために用いるゴム質グラフト重合体のラテックスは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
よって、凝析剤としては、弱酸と強塩基との塩を用いることが好ましく、弱酸のアルカリ(土類)金属塩が用いることがより好ましい。凝析剤として弱酸と強塩基との塩を用いれば、前記水中に含まれる硫酸イオン及び亜硫酸イオンの合計量が3.5ppm以下であり、塩素イオンの含有量が150ppm以下であるゴム質グラフト重合体が得られやすくなる。
これらの凝析剤は水溶液として使用するため、水溶性が高いことが好ましい。また凝析剤は、凝析時にゴム質グラフト重合体ラテックスに含まれる乳化剤と難解離性の塩を形成するものが好ましい。このような凝析剤は、ゴム質グラフト重合体中に微量残存しても、該重合体をポリブチレンテレフタレート樹脂に配合して得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の熱安定性を低下させにくい。
これらの観点から、上記凝析剤のうち、有機酸のアルカリ土類金属塩又は硫酸以外の無機酸のアルカリ土類金属塩が好ましく、中でもカルシウム塩、マグネシウム塩がより好ましく、酢酸カルシウムがさらに好ましい。
ここで、「噴霧回収」とは、ゴム質グラフト重合体を含むラテックスを微小液滴状に噴霧した後に、熱風を当てて乾燥させ、ゴム質グラフト重合体を回収することをいう。
ゴム質グラフト重合体には、酸化防止の目的で、通常知られた酸化防止剤の1種又は2種以上を添加することができる。ゴム質グラフト重合体への酸化防止剤の添加方法は特に限定されるものではないが、数百μmの粒子径を有する粉体や錠剤として、又は水に分散させた状態(ディースパージョン)で添加する方法などが挙げられる。本発明においては、ゴム質グラフト重合体ラテックスに酸化防止剤をディスパージョンにて添加する方法がもっとも好ましく、酸化防止剤が添加されたゴム質グラフト重合体ラテックスを上述した凝析又は噴霧回収することで、酸化防止剤が添加されたゴム質グラフト重合体が得られる。酸化防止剤をディスパージョンで添加することで、酸化防止剤をゴム質グラフト重合体に近く、より均一に添加することができるため、ブタジエンゴム等のゴム部の酸化劣化を抑制し、より優れた耐熱着色性が得られる。
これらの化合物の中でも、炭素数5以上のアルキル基によって1つ以上置換された芳香族モノヒドロキシ化合物が好ましく、具体的オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどが挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が特に好ましい。
ゴム質グラフト重合体の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、0.1〜50質量部が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上がさらに好ましい。また、ゴム質グラフト重合体の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、40質量部以下がより好ましく、35質量部以下がさらに好ましく、30質量部以下が特に好ましい。ゴム質グラフト重合体の含有量が上記下限値以上であれば、成形品の衝撃強度がより高まり、成形品が破断しにくくなる。一方、ゴム質グラフト重合体の含有量が上記上限値以下であれば、良好な成形性が得られ、成形時に樹脂焼けが発生したり発色性が損なわれたりすることを抑制できる。
難燃剤は、成形品に難燃性を付与する成分である。
難燃剤としては、一般に知られている殆ど全ての難燃剤を用いることができ、具体的には、ハロゲン化ビスフェノールA、ハロゲン化ポリカーボネートオリゴマー、臭素化エポキシ化合物等のハロゲン系化合物と酸化アンチモン等の難燃助剤との組合せからなるハロゲン系難燃剤;有機塩系難燃剤;リン酸エステル系難燃剤、ハロゲン化リン酸エステル型難燃剤等のリン系難燃剤;芳香族スルホン酸の金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩等のスルホン酸系難燃剤;分岐型のフェニルシリコーン化合物、フェニルシリコーン系樹脂等のオルガノポリシロキサン等のシリコーン系難燃剤などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの難燃剤の中でも、得られる成形品の難燃性がより向上する点で、リン系難燃剤及びスルホン酸系難燃剤が好ましく、リン系難燃剤がより好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂以外の他の熱可塑性樹脂や、酸化防止剤、ポリテトラフルオロエチレン、離型剤等の添加剤を含有してもよい。
他の熱可塑性樹脂としては、一般に知られている殆ど全ての熱可塑性樹脂を用いることができる。他の熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン系樹脂、ポリスチレン(PS)、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、(メタ)アクリル酸エステル・スチレン共重合体(MS)、スチレン・アクリロニトリル共重合体(SAN)、スチレン・無水マレイン酸共重合体(SMA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル・スチレン・アクリレート共重合体(ASA)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン・スチレン共重合体(AES)等のスチレン系樹脂(St系樹脂)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等のアクリル系樹脂(Ac系樹脂)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリアミド系樹脂(PA系樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂(PEs系樹脂)、(変性)ポリフェニレンエーテル系樹脂(PPE系樹脂)、ポリオキシメチレン系樹脂(POM系樹脂)、ポリスルフォン系樹脂(PSO系樹脂)、ポリアリレート系樹脂(PAr系樹脂)、ポリフェニレン系樹脂(PPS系樹脂)、熱可塑性ポリウレタン系樹脂(PU系樹脂)等のエンジニアリングプラスチックス、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー、1,2−ポリブタジエン、トランス1,4−ポリイソプレン等の熱可塑性エラストマー(TPE)、PC/ABS等のPC系樹脂/St系樹脂アロイ、ポリ塩化ビニル(PVC)/ABS等のPVC系樹脂/St系樹脂アロイ、PA/ABS等のPA系樹脂/St系樹脂アロイ、PA系樹脂/TPEアロイ、PA/PP等のPA系樹脂/ポリオレフィン系樹脂アロイ、PBT系樹脂/TPE、PC/PBT等のPC系樹脂/PEs系樹脂アロイ、ポリオレフィン系樹脂/TPE、PP/PE等のオレフィン系樹脂同士のアロイ、PPE/HIPS、PPE/PBT、PPE/PA等のPPE系樹脂アロイ、PVC/PMMA等のPVC系樹脂/Ac系樹脂アロイなどのポリマーアロイや、硬質、半硬質、軟質塩化ビニル樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。さらに、グラフトコポリマーなどの相溶化剤を併用することもできる。
酸化防止剤は、上述したようにゴム質グラフト重合体の製造時においてゴム質グラフト重合体ラテックスに添加することで配合してもよいし、ポリブチレンテレフタレート樹脂とゴム質グラフト重合体とを混合してポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を製造する際に、これらに添加することで配合してもよい。
フェノール系酸化防止剤及びホスフェイト系酸化防止剤としては、ゴム質グラフト重合体の説明において先に例示したフェノール系酸化防止剤及びホスフェイト系酸化防止剤が挙げられ、また、好ましい酸化防止剤としても同様のものが挙げられる。
ポリテトラフルオロエチレンは、アンチドリップ剤の役割を主に果たす。
ポリテトラフルオロエチレンは、下記一般式(1)で表される単位を有する重合体又はその誘導体である。
(−CF2−CF2−) ・・・(1)
ポリテトラフルオロエチレンの市販品としては、例えばダイキン工業社製の「ポリフロンFA−500」等の未変性ポリテトラフルオロエチレン;ガラタケミカルズ社製の「BLENDEX B449」等のSAN変性ポリテトラフルオロエチレン;三菱レイヨン社製の「メタブレンA−3000」、「メタブレンA−3750」、「メタブレンA−3800」等のアクリル変性ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのポリテトラフルオロエチレンの中でも、ポリブチレンテレフタレート樹脂中での分散性に優れ、得られる成形品の機械的特性、耐熱性、難燃性がより向上する点で、SAN変性ポリテトラフルオロエチレン及びアクリル変性ポリテトラフルオロエチレンが好ましく、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレンがより好ましい。
なお、「質量平均分子量」は、例えば、ふっ素樹脂ハンドブック(里川編、日刊工業新聞社、1990年)の第36頁に記載のように、示差熱分析で測定される結晶化熱から計算される値である。
離型剤は、シート成形時の冷却ロールからのロール離れ、あるいは射出成形時の金型からの離型性をより向上させるなどの目的で配合される。
離型剤としては、例えば一価又は多価アルコールの高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸、パラフィンワックス、蜜蝋、オレフィン系ワックス、カルボキシ基及び/又はカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の紫外線による変色は、従来のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に比較して著しく小さいが、さらなる改良の目的で紫外線吸収剤・光安定剤の1種又は2種以を含有していてもよい。
紫外線吸収剤・光安定剤としては、紫外線吸収能を有する化合物であれば特に限定されない。紫外線吸収能を有する化合物としては、有機化合物、無機化合物が挙げられる。これらの中でも、有機化合物はポリブチレンテレフタレート樹脂との親和性を確保しやすく、均一に分散しやすいので好ましい。
ブルーイング剤は、成形品の黄色味を打ち消すためなどの目的で配合される。
ブルーイング剤としては、従来のポリブチレンテレフタレート樹脂に使用されるものであれば特に支障なく使用することができ、一般的にはアンスラキノン系染料が入手容易であり好ましい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、上記の添加剤の他、本発明の効果を損なわない範囲で、周知の種々の添加剤、例えば、難燃助剤、加水分解抑制剤、帯電防止剤、発泡剤、染顔料等を含有することができる。また、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、例えば芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル、アモルファスポリオレフィン等の合成樹脂や、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の生分解性樹脂などを含有してもよい。
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂と、ゴム質グラフト重合体と、必要に応じて難燃剤とを混合することにより製造することができる。具体的には、例えばペレット状のポリブチレンテレフタレート樹脂と、ゴム質グラフト重合体と、必要に応じて難燃剤とを押出機を用いて混合し、ストランド状に押出し、回転式カッター等でペレット状にカットすることによりポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を得ることができる。
以上説明した本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂と、上述した特定のゴム質グラフト重合体とを含有するので、耐熱着色性、耐衝撃性に優れ、高い曲げ強度、曲げ弾性率を有する成形品を得ることができ、金属に対する腐食性が低い。
また、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が難燃剤を含有していれば、難燃性にも優れた成形品を得ることができる。
本発明の成形品は、上述した本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形して得られるものである。成形方法としては特に制限されないが、例えば射出成形が挙げられる。射出成形であれば、複雑な形状の成形品が得られる。複雑な形状に成形すると応力集中部が発生しやすくなる傾向にあるが、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いれば、衝撃強度の向上効果が得られるため、応力集中による破断を抑制することができる。
以上説明した本発明の成形品は、本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形したものであるので、耐熱着色性、耐衝撃性に優れ、高い曲げ強度、曲げ弾性率を有する。ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が難燃剤をさらに含有していれば、得られる成形品の難燃性も高まる。
各種測定・評価方法は以下の通りである。
(1)ゴムラテックス中のゴム粒子の体積平均粒子径の測定
ゴムラテックスを脱イオン水で希釈し、レーザー回折散乱式粒度分布計(島津製作所社製、商品名;SALD−7100)を用い、ゴム粒子の体積平均粒子径を測定した。体積平均粒子径の算出は、ゴム粒子の屈折率を1.50として行った。
ゴム質グラフト重合体のラテックスを脱イオン水で希釈し、レーザー回折散乱式粒度分布計(島津製作所社製、商品名;SALD−7100)を用い、ゴム質グラフト重合体の体積平均粒子径を測定した。体積平均粒子径の算出は、ゴム質グラフト重合体の屈折率を1.50として行った。
ゴム質グラフト重合体20.0gをガラス製耐圧容器に量り取り、これに脱イオン水200mlを加えて、ギアオーブン内にて95℃、20時間、熱水による抽出処理を行った。この液を室温(25℃)に冷却してから目開き0.2μmのセルロース混合エステル製メンブランフィルターで濾過し、濾液を試料液とした。
イオンクロマトグラフ(日本ダイオネクス社製、商品名;IC−20型、分離カラム:IonPac AS12A)を用いて前記試料液中の硫酸イオン(SO4 2−)及び亜硫酸イオン(SO3 2−)の量を測定した。検量線は硫酸ナトリウムの標準液(キシダ化学社製、イオンクロマトグラフィー用硫酸イオン標準液(SO4 2−):1000mg/L)及び亜硫酸ナトリウムの標準液(キシダ化学社製、イオンクロマトグラフィー用亜硫酸イオン標準液(SO3 2−):1000mg/L)を用い、SO4 2−及びSO3 2−:各20ppmの一点で作成して行なった。イオンクロマトグラフより定量した濃度から、ゴム質グラフト重合体中に含まれる硫酸イオン量及び亜硫酸イオン量の合計量(g/g)を算出した。
ゴム質グラフト重合体0.05gを、試料燃焼装置(三菱化学社製、商品名;QF−02)にて完全燃焼させ、発生ガスを0.3%過酸化水素水20mlに吸収させたものを試料液とした。イオンクロマトグラフ(日本ダイオネクス社製、商品名;IC−20型、分離カラム:IonPac AS12A)を用いて試料液中の塩素(Cl−)の量を測定した。検量線はキシダ化学社製、イオンクロマトグラフィー用塩化物イオン標準液(Cl−):1000mg/Lを用い、Cl−:20ppmの一点で作成して行なった。イオンクロマトグラフより定量した濃度から、ゴム質グラフト重合体中に含まれる塩素含有量(g/g)を算出した。
ゴム質グラフト重合体の粉体10gを耐熱ガラス製の容器に計量し、これに脱イオン水を10g加え、さらに合金工具鋼製のクリップを入れた。常温(23℃)にて、10日間保持した後に合金工具鋼製のクリップの腐食状態を目視で確認し、以下の評価基準にて耐金属腐食性を評価した。評価が「a」のゴム質グラフト重合体を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、金属に対する腐食性が低い、すなわち耐金属腐食性に優れることを意味する。
a:腐食無し。
c:腐食有り(錆有り)。
ポリブチレンテレフタレート樹脂90.0質量部と、ゴム質グラフト重合体10.0質量部とを混合し、バレル温度260℃に加熱した脱揮式押出機(池貝社製、商品名;PCM−30)にてスクリュー回転数150rpmの条件で混練してペレット状のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物1を得た。
得られたペレット状のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物1を、熱風乾燥機を用いて80℃で6時間乾燥した後、100t射出成形機(住友重機械工業社製、商品名;SE−100DU)にて、シリンダー温度260℃、金型温度70℃の条件で成形して平板状の試験片1(長さ100mm、幅50mm、厚み2mm)と、試験片2(長さ80mm、幅10mm、厚み4mm)を得た。
ポリブチレンテレフタレート樹脂40.5質量部と、ゴム質グラフト重合体10.0質量部と、ポリカーボネート樹脂49.5質量部とを混合し、バレル温度260℃に加熱した脱揮式押出機(池貝社製、商品名;PCM−30)にてスクリュー回転数150rpmの条件で混練してペレット状のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物2を得た。
得られたペレット状のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物2を、熱風乾燥機を用いて80℃で6時間乾燥した後、100t射出成形機(住友重機械工業社製、商品名;SE−100DU)にて、シリンダー温度260℃、金型温度70℃の条件で成形して平板状の試験片3(長さ100mm、幅50mm、厚み2mm)と、試験片4(長さ80mm、幅10mm、厚み4mm)を得た。
ポリブチレンテレフタレート樹脂72.0質量部と、ゴム質グラフト重合体5.0質量部と、難燃剤22.5質量部と、ポリテトラフルオロエチレン0.5質量部とを混合し、バレル温度260℃に加熱した脱揮式押出機(池貝社製、商品名;PCM−30)にてスクリュー回転数150rpmの条件で混練してペレット状のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物3を得た。
得られたペレット状のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物3を、熱風乾燥機を用いて80℃で6時間乾燥した後、100t射出成形機(住友重機械工業社製、商品名;SE−100DU)にて、シリンダー温度260℃、金型温度70℃の条件で成形して平板状の試験片5(長さ100mm、幅50mm、厚み2mm)と、試験片6(長さ80mm、幅10mm、厚み4mm)と、試験片7(長さ120mm、幅12.7mm、厚み1.6mm)を得た。
試験片1、試験片3、試験片5のYI値をJIS K7105に準拠し、分光色差計(日本電色工業社製、機種名「SE2000」)を用いて、C光源、2度視野の条件で反射光測定法にて測定した。
先ず、ヒートエージング前の各試験片のYI値(YIB)を測定した。次いで、各試験片をハイテンプオーブン(タバイスペック社製、機種名「PMS−B」)を使用して温度140℃で48時間ヒートエージングした。ヒートエージング後の各試験片のYI値(YIA)を測定し、以下の式によりΔYI値を算出した。
ΔYI=YIA−YIB
試験片2、試験片4、試験片6を用い、JIS K7111に準じ、23℃の測定温度でノッチ付きシャルピー衝撃強度を測定した。
試験片2、試験片4、試験片6を用い、JIS K7171に準じ、23℃の測定温度で曲げ弾性率及び曲げ最大点強度を測定した。
UL−94Vの方法に準じ、5本の試験片7を用いて難燃性テストを行った。難燃性の判定はUL−94V記載の評価方法に従い、V−0、V−1、V−2、HBに分類した(V−0が最も難燃性が高いことを示す)。総燃焼時間は、5本の合計燃焼時間(第一接炎時、第二接炎時の燃焼時間を含む)であり、単位は「秒」で示す。
以下の実施例及び比較例で用いた化合物の略号を表1に示す。
<製造例1>
(ゴムラテックス(H−1)の製造)
表2中の成分(1)の欄に示す6種類の材料を容量70Lのオートクレーブ中に仕込み、昇温して43℃となった時点で、表2中の成分(2)の欄に示す4種類の材料からなるレドックス系開始剤をオートクレーブ内に添加し、重合を開始した後、さらに60℃まで昇温した。重合開始から8時間反応させて、ブタジエン系ゴム粒子を含むラテックス(ゴムラテックス(H−1))を得た。得られたゴムラテックス(H−1)中のブタジエン系ゴム粒子の体積平均粒子径は90nmであった。
表3中の成分(3)の欄に示す6種類の材料を反応容器内に仕込み、内温を60℃に昇温した後、表3中の成分(4)の欄に示す3種類の材料からなる混合物を、2時間にわたり連続滴下で投入して重合させた。さらに2時間撹拌を続けることにより、モノマー転化率97%以上の酸基含有共重合体ラテックス(K−1)を得た。
製造したゴムラテックス(H−1)のうち、ポリマー固形分として75質量部のゴムラテックス(H−1)をガラスフラスコに配合し、内温50℃にてポリマー固形分として2質量部の酸基含有共重合体ラテックス(K−1)を加えて30分間保持してゴムラテックス(H−1)中のゴム粒子を肥大化させ、肥大化ゴムラテックス(H−1’)を得た。得られた肥大化ゴムラテックス(H−1’)中のゴム粒子の体積平均粒子径は200nmであった。
引き続き、肥大化ゴムラテックス(H−1’)の入った反応容器内に、表4中の初期仕込みの欄に示す脱イオン水と、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートと、アルケニルコハク酸カリウムの3種類の材料を加え、温度を65℃まで昇温した。次いで、表4中の「1段目グラフト」の欄に示す3種類の材料からなる混合物を25分間かけて滴下し重合を進行させた後、40分間保持し、第1グラフト重合工程を行った。
その後、該重合体の存在下で、表4中の「2段目グラフト」の欄に示す2種類の材料からなる混合物を30分間かけて滴下した後、1時間保持し、第2グラフト重合工程を行った。
その後、該重合体の存在下で、表4中の「3段目グラフト」の欄に示す2種類の材料からなる混合物を10分間かけて滴下した後、2時間保持し、第3グラフト重合工程を行い、ゴム質グラフト重合体ラテックスを得た。
酸化防止剤の種類及び使用量と、凝析剤の種類及び使用量を表7に示す条件に変更したこと以外は、製造例1と同様にしてゴム質グラフト重合体(A−2)〜(A−4)、(A’−1)、(A’−3)を得た。
ゴムラテックス(H−1)の製造に使用する乳化剤を牛脂脂肪酸ナトリウム(花王社製、商標名:NSソープ)2.5質量部に変更したこと以外は、製造例1と同様にしてゴム質グラフト重合体ラテックスを得た。
得られたゴム質グラフト重合体ラテックスを用い、酸化防止剤の種類及び使用量を表7に示す条件に変更したこと以外は、製造例1と同様にしてゴム質グラフト重合体(A−5)を得た。
ゴムラテックス(H−1)の製造に使用する乳化剤をドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(花王社製、商標名:ネオペレックスG−15)2.5質量部に変更したこと以外は、製造例1と同様にしてゴム質グラフト重合体ラテックスを得た。
得られたゴム質グラフト重合体ラテックスを用い、酸化防止剤の種類及び使用量を表7に示す条件に変更したこと以外は、製造例1と同様にしてゴム質グラフト重合体(A’−2)を得た。
(ポリオルガノシロキサンゴムラテックス(L−1)の製造)
表5中の成分(5)の欄に示す5種類の材料を混合して、ホモミキサ−にて10000rpm で5分間攪拌した後、ホモジナイザーに20MPaの圧力で2回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンエマルションを得た。
冷却コンデンサーを備えたセパラブルフラスコに、上記エマルションを入れ、硫酸0.20部と蒸留水49.8部との混合物を3分間にわたり投入した。この水溶液を80℃に加熱した状態で、7時間温度を維持し、冷却した。次いでこの反応物を室温で6時間保持した後、水酸化ナトリウム水溶液で中和した。
このようにして得られたポリオルガノシロキサンゴムラテックス(L−1)のラテックスを180℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ、29.8質量%であった。また、このラテックスの数平均粒子径は384nm、体積平均粒子径は403nmであった。
ポリマー固形分として10質量部のポリオルガノシロキサンゴムラテックス(L−1)の入った反応容器内に、表6中の「初期仕込み」の欄に示す残りの4種類の材料を加え、温度を65℃まで昇温した。次いで、表6中の「開始剤」の欄に示す4種類の材料からなる混合物を添加して重合を進行させた後、1時間保持し、シリコーン/アクリル複合ゴム部の重合工程を行った。
その後、該重合体の存在下で、表6中の「グラフト」の欄に示す3種類の材料からなる混合物を45分間かけて滴下した後、1時間半保持し、グラフト重合工程を行い、シリコーン/アクリル複合ゴム質グラフト重合体ラテックスを得た。
ゴムラテックス中のゴム粒子の体積平均粒子径、ゴム質グラフト重合体の体積平均粒子径、ゴム質グラフト重合体中の硫酸イオン量、亜硫酸イオン量、及び塩素イオン量を前記測定方法に従って測定し、ゴム質グラフト重合体による耐金属腐食性を前記評価方法に従って評価した。結果を表8、9に示す。
表10に示す種類のゴム質グラフト重合体を用い、前記ペレットの作製方法1に従ってペレット状のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物1を得た。なお、比較例5では、ゴム質グラフト重合体の代わりにゴム質共重合体を用いた。
得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物1を用い、前記試験片の作製方法1に従って試験片1、2を作製し、耐衝撃性、曲げ弾性率及び曲げ最大点強度、耐熱着色性を前記評価方法に従って評価した。結果を表10に示す。
一方、硫酸イオン及び亜硫酸イオンの合計量が3.5ppmよりも多いゴム質グラフト重合体(A’−1)、(A’−2)を用いた比較例1、2のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形した成形品(試験片)は、耐熱着色性に劣っていた。また、曲げ最大点強度も低かった。特に、耐熱着色性に関しては、比較例1は初期の色味(YIB)に劣っており、比較例2は140℃で48時間試験後のΔYIが高かった。
塩素イオンの含有量が150ppmよりも多いゴム質グラフト重合体(A’−3)、シリコーン/アクリル複合ゴム質グラフト重合体(S−1)は、耐金属腐食性に劣っていた。特に、シリコーン/アクリル複合ゴム質グラフト重合体(S−1)を用いた比較例4のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形した成形品(試験片)は、耐衝撃性に劣っていた。また、成形品のYIBが高く、初期の色味が悪かった。これは、シリコーン/アクリル複合ゴム質グラフト重合体(S−1)に残存しているドデシルベンゼンスルホン酸塩が色味に影響していると考えられる。また、ΔYIも高かった。
ゴム質グラフト重合体の代わりに、ゴム質共重合体を用いた比較例5のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形した成形品(試験片)は、耐衝撃性に劣っていた。また、曲げ最大点強度も低かった。
表11に示す種類のゴム質グラフト重合体を用い、前記ペレットの作製方法2に従ってペレット状のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物2を得た。
得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物2を用い、前記試験片の作製方法2に従って試験片3、4を作製し、耐衝撃性、曲げ弾性率及び曲げ最大点強度、耐熱着色性を前記評価方法に従って評価した。結果を表11に示す。
一方、硫酸イオン及び亜硫酸イオンの合計量が3.5ppmよりも多いゴム質グラフト重合体(A’−1)、(A’−2)を用いた比較例6、7のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形した成形品(試験片)は、耐熱着色性に劣っていた。また、曲げ最大点強度も低かった。
塩素イオンの含有量が150ppmよりも多いゴム質グラフト重合体(A’−3)、シリコーン/アクリル複合ゴム質グラフト重合体(S−1)は、耐金属腐食性に劣っていた。特に、シリコーン/アクリル複合ゴム質グラフト重合体(S−1)を用いた比較例9のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形した成形品(試験片)は、耐衝撃性に劣っていた。また、成形品のYIBが高く、初期の色味が悪かった。これは、シリコーン/アクリル複合ゴム質グラフト重合体(S−1)に残存しているドデシルベンゼンスルホン酸塩が色味に影響していると考えられる。また、ΔYIも高かった。
表12に示す種類のゴム質グラフト重合体を用い、前記ペレットの作製方法3に従ってペレット状のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物3を得た。なお、比較例14では、ゴム質グラフト重合体の代わりにゴム質共重合体を用いた。
得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物3を用い、前記試験片の作製方法3に従って試験片5〜7を作製し、耐衝撃性、曲げ弾性率及び曲げ最大点強度、難燃性、耐熱着色性を前記評価方法に従って評価した。結果を表12に示す。
一方、硫酸イオン及び亜硫酸イオンの合計量が3.5ppmよりも多いゴム質グラフト重合体(A’−1)、(A’−2)を用いた比較例10、11のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形した成形品(試験片)は、耐熱着色性に劣っていた。また、曲げ最大点強度も低かった。特に、比較例10で得られた成形品は、難燃性にも劣っていた。
塩素イオンの含有量が150ppmよりも多いゴム質グラフト重合体(A’−3)、シリコーン/アクリル複合ゴム質グラフト重合体(S−1)は、耐金属腐食性に劣っていた。特に、シリコーン/アクリル複合ゴム質グラフト重合体(S−1)を用いた比較例13のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形した成形品(試験片)は、難燃性に劣っていた。また、成形品のYIBが高く、初期の色味が悪かった。これは、シリコーン/アクリル複合ゴム質グラフト重合体(S−1)に残存しているドデシルベンゼンスルホン酸塩が色味に影響しているものと考えられる。また、ΔYIも高かった。
ゴム質グラフト重合体の代わりに、ゴム質共重合体を用いた比較例14のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形した成形品(試験片)は、耐衝撃性及び曲げ最大点強度も低く、難燃性も劣っていた。
Claims (3)
- ポリブチレンテレフタレート樹脂と、ゴム質グラフト重合体とを含むポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であって、
前記ゴム質グラフト重合体は、ゴム質部分がジエン構造単位を50質量%以上又はアルキル(メタ)アクリレート構造単位を86質量%以上含む重合体であり、
前記ゴム質グラフト重合体から下記の抽出処理により熱水抽出した水中に含まれる硫酸イオン及び亜硫酸イオンの合計量が3.5ppm以下であり、
かつ前記ゴム質グラフト重合体中に含まれる塩素イオンの含有量が150ppm以下である、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(抽出処理)
ゴム質グラフト重合体20.0gに脱イオン水200mlを加え、95℃で20時間抽出する。 - 難燃剤をさらに含む、請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
- 請求項1または2に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を成形して得られる、成形品。
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