JP2021134284A - 熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】流動性、耐薬品性に優れ、かつ樹脂加工時の熱による黄変が少なく色調安定性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供する。【解決手段】(A)と(B)の合計を100重量部として、ゴム質重合体(a)の存在下に、少なくとも芳香族ビニル系単量体(b1)、シアン化ビニル系単量体(b2)を含有するビニル系単量体混合物(b)をグラフト共重合してなるグラフト共重合体(A)20〜40重量部および、少なくとも芳香族ビニル系単量体(c1)およびシアン化ビニル系単量体(c2)を含有するビニル系単量体混合物(c)を共重合してなるビニル系共重合体(B)60〜80重量部を含む熱可塑性樹脂組成物であり、前記熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分(C)全体の重量平均分子量が100,000〜200,000、シアン化ビニル単量体単位の平均含有量が29〜35重量%であり、アセトン可溶分(C)全体を100重量%として、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%未満である成分(d1)の割合が20〜45重量%、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%以上35重量%以下である成分(d2)の割合が50〜80重量%、シアン化ビニル単量体単位の含有量が35重量%を超える成分(d3)の割合が10重量%未満であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、ビニル系共重合体およびグラフト共重合体を配合してなる熱可塑性樹脂組成物およびその成形品に関する。
ジエン系ゴムなどのゴム質重合体に、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル系化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物をグラフト共重合して得られるABS樹脂は、耐衝撃性、剛性などの機械的強度、成形性、外観およびコストパフォーマンスなどに優れることから、家電製品、通信関連機器、一般雑貨および医療関連機器などの用途分野で幅広く利用されている。さらにその中で、樹脂割れの原因となる薬品との接触頻度が高い化粧品容器用途等においては、高い耐薬品性が求められる。一般的にABS樹脂においては、芳香族ビニル化合物に対してシアン化ビニル化合物の比率を高める程、シアノ基に起因する分子間力によって薬品浸透性を抑制でき、耐薬品性を高めることができる。また、芳香族ビニル化合物およびシアン化ビニル化合物の共重合体成分の高分子量化によって分子鎖同士の絡み合いが増大し、分子鎖間への薬品の浸透を抑制することができる。しかしながら、シアン化ビニル化合物の比率を高める手法においては、シアン化ビニル化合物の比率が増加するほど、共重合時にシアン化ビニル化合物が隣接した構造を生成する確率が著しく増加し、隣接したシアン化ビニル化合物同士が熱によって環化反応を起こすことで樹脂加工時の黄変(熱着色)の原因となり、色調安定性を損なう。また、高分子量化の手法においては、高分子量化するほど流動性が低下し、樹脂加工性を損なう。よって、高い耐薬品性を有し、かつ色調安定性および流動性を両立させた樹脂組成物が求められる。例えば、特許文献1では、加工流動性、耐衝撃性に優れ、かつ塗装を施した時の外観が優れる樹脂組成物として、グラフト共重合体、シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体からなり、アセトン可溶な樹脂成分のシアン化ビニル化合物単位の平均含有率が50〜65モル%であり、かつアセトン可溶な樹脂成分の70重量%以上が、シアン化ビニル化合物単位の平均含有率±2.5モル%の範囲内に存在する樹脂組成物が提案されている。また、特許文献2では、流動性、耐薬品性、耐衝撃性に優れ、薬品接触時の暗所黄変を低減した成形品を得ることができる熱可塑性樹脂組成物として、グラフト共重合体および、少なくとも芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体を含有するビニル系単量体混合物を共重合してなるビニル系共重合体からなり、アセトン可溶分の重量平均分子量が150,000〜250,000、シアン化ビニル系単量体単位の含有率が29〜36重量%である熱可塑性樹脂組成物が提案されている。
特開平3−215547号公報 特開2016−188292号公報
特許文献1に記載の樹脂組成物は、耐薬品性付与を目的として、アセトン可溶な樹脂成分中のシアン化ビニル系単量体の占める比率を高めており、コンパウンドや成形等の樹脂加工時に黄変する恐れがある。特許文献2に記載の熱可塑性樹脂組成物は、耐薬品性付与を目的として、シアン化ビニル系単量体含有率35〜45重量%の高ニトリル含有ビニル系共重合体の含有率を高めており、コンパウンドや成形等の樹脂加工時に黄変する恐れがある。
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、流動性、耐薬品性に優れ、かつ樹脂加工時の熱による黄変が少なく色調安定性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、アセトン可溶分中のシアン化ビニル系単量体含有量を特定の重量組成とし、さらに特定の重量平均分子量とすることで、優れた流動性、耐薬品性に加えて、樹脂加工時の熱による黄変を抑制し、色調安定性に優れた熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出した。本発明は以下の(1)〜(3)で構成される。
(1)(A)と(B)の合計を100重量部として、
ゴム質重合体(a)の存在下に、少なくとも芳香族ビニル系単量体(b1)、シアン化ビニル系単量体(b2)を含有するビニル系単量体混合物(b)をグラフト共重合してなるグラフト共重合体(A)20〜40重量部および、
少なくとも芳香族ビニル系単量体(c1)およびシアン化ビニル系単量体(c2)を含有するビニル系単量体混合物(c)を共重合してなるビニル系共重合体(B)60〜80重量部を含む熱可塑性樹脂組成物であり、
前記熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分(C)全体の重量平均分子量が100,000〜200,000、シアン化ビニル単量体単位の平均含有量が29〜35重量%であり、アセトン可溶分(C)全体を100重量%として、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%未満である成分(d1)の割合が20〜45重量%、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%以上35重量%以下である成分(d2)の割合が50〜80重量%、シアン化ビニル単量体単位の含有量が35重量%を超える成分(d3)の割合が10重量%未満であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
(2)ビニル系共重合体(B)が、ビニル系共重合体(B−1)とビニル系共重合体(B−2)の混合物であり、ビニル系共重合体(B−1)のアセトン可溶分(C−1)全体を100重量%として、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%未満である成分(e1)の割合が60〜85重量%、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%以上35重量%以下である成分(e2)の割合が10〜30重量%、シアン化ビニル単量体単位の含有量が35重量%を超える成分(e3)の割合が15重量%未満であり、
ビニル系共重合体(B−2)のアセトン可溶分(C−2)全体を100重量%として、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%未満である成分(f1)の割合が10重量%未満、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%以上35重量%以下である成分(f2)の割合が80重量%以上、シアン化ビニル単量体単位の含有量が35重量%を超える成分(f3)の割合が10重量%未満であることを特徴とする(1)に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(3)(1)または(2)に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
本発明は、流動性、耐薬品性に優れ、かつ樹脂加工時の熱による黄変が少なく色調安定性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
実施例において臨界歪み値ε(耐薬品性)を評価するために用いた1/4楕円治具の概略図である。
本発明の実施形態における熱可塑性樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」と記載する場合がある)は、前述のグラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B)を含有する。この樹脂組成物のアセトン不溶分を濾過した濾液をロータリーエバポレーターで濃縮することによりアセトン可溶分(C)を得ることが出来る。以下これら各成分について説明する。
グラフト共重合体(A)を含有することにより、成形品の耐衝撃性および耐薬品性を向上させることができる。ビニル系共重合体(B)を含有することにより、熱可塑性樹脂組成物の流動性および成形品の耐薬品性を向上させることができる。
<グラフト共重合体(A)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成するグラフト共重合体(A)は、ゴム質重合体(a)の存在下に、少なくとも芳香族ビニル系単量体(b1)、シアン化ビニル系単量体(b2)を含有するビニル系単量体混合物(b)をグラフト共重合して得られるものである。ビニル系単量体混合物(b)は、前記(b1)、(b2)と共重合可能な他の単量体をさらに含有してもよい。
ゴム質重合体(a)としては、例えば、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)(SBR)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)(NBR)、ポリイソプレン、ポリ(ブタジエン−アクリル酸ブチル)、ポリ(ブタジエン−メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸エチル)、エチレン−プロピレンラバー、ポリ(エチレン−イソプレン)、ポリ(エチレン−アクリル酸メチル)、天然ゴムなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。なかでも、耐衝撃性をより向上させる観点から、ポリブタジエン、SBR、NBR、エチレン−プロピレンラバー、天然ゴムが好ましい。
また、グラフト共重合体(A)を構成するゴム質重合体(a)および後述するビニル系単量体混合物(b)の総量に対して、ゴム質重合体(a)の含有量は、20〜80重量%が好ましい。ゴム質重合体(a)の含有量が20重量%以上であれば、成形品の耐衝撃性をより向上させることができる。ゴム質重合体(a)の含有量は35重量%以上がより好ましい。一方、ゴム質重合体(a)の含有量が80重量%以下であれば、熱可塑性樹脂組成物の成形性をより向上させることができる。ゴム質重合体(a)の含有量は65重量%以下がより好ましい。
ゴム質重合体(a)の重量平均粒子径は、特に制限はないが、成形品の耐衝撃性を向上させる観点から、0.1μm以上が好ましく、0.15μm以上がより好ましい。一方、成形品の耐衝撃性、流動性を向上させる観点から、1.5μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましい。
ここで、ゴム質重合体(a)の重量平均粒子径は、ゴム質重合体ラテックスを水媒体で希釈、分散させ、レーザ散乱回折法粒度分布測定装置“LS13320”(ベックマン・コールター(株))により測定した粒子径分布から算出することができる。
芳香族ビニル系単量体(b1)としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレンなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、熱可塑性樹脂組成物の流動性および成形品の剛性をより向上させる観点から、スチレンが好ましい。
ビニル系単量体混合物(b)中の芳香族ビニル系単量体(b1)の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の流動性および成形品の剛性をより向上させる観点から、ビニル系単量体混合物(b)の合計100重量%中、60重量%以上が好ましく、65重量%以上がより好ましい。一方、ビニル系単量体混合物(b)中の芳香族ビニル系単量体(b1)の含有量は、流動性、成形品の耐衝撃性を向上させる観点から、85重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましい。
シアン化ビニル系単量体(b2)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、成形品の耐薬品性および耐衝撃性をより向上させる観点から、アクリロニトリルが好ましい。
ビニル系単量体混合物(b)中のシアン化ビニル系単量体(b2)の含有量は、成形品の耐薬品性および耐衝撃性をより向上させる観点から、ビニル系単量体混合物(b)の合計100重量%中、15重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましい。一方、ビニル系単量体混合物(b)中のシアン化ビニル系単量体(b2)の含有量は、成形品の色調を安定させる観点から、35重量%以下が好ましく、30重量%以下がより好ましい。
グラフト共重合体(A)は、グラフト共重合体(A)約1g(m:サンプル重量)にアセトン80mlを加え、70℃の湯浴中で3時間還流し、この溶液を13000r.p.mで20分間遠心分離した後、不溶分を濾過し、80℃で5時間減圧乾燥することによって、アセトン不溶分を分離することができる。アセトン不溶分はゴム質重合体とゴム質重合体にグラフト共重合した、少なくとも芳香族ビニル系単量体(b1)とシアン化ビニル系単量体(b2)からなるビニル系共重合体である。得たアセトン不溶分を200℃に設定した加熱プレスにて、厚み30±5μmのフィルムとし、FT−IR分析を行う。FT−IRチャートに現れる下記ピークの強度比からシアン化ビニル系単量体単位の含有量とその重量を定量することができる。
芳香族ビニル系単量体単位:ベンゼン核の振動に帰属される1605cm−1のピーク
シアン化ビニル系単量体単位:−C≡N伸縮に帰属される2240cm−1のピーク
アセトン不溶分のシアン化ビニル系単量体単位の含有量は、アセトン不溶分中の芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体の合計を100重量%としたとき、耐薬品性向上の観点から20重量%以上が好ましく、25重量%以上がより好ましい。また、加工時の熱による黄変を抑制するという観点から、40重量%以下が好ましく、35重量%以下がより好ましい。
また、これらと共重合可能な他の単量体は、前述の芳香族ビニル系単量体(b1)、シアン化ビニル系単量体(b2)以外のビニル系単量体であって、本発明の効果を損なわないものであれば特に制限はない。具体的には、不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、不飽和脂肪酸、アクリルアミド系単量体、マレイミド系単量体などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体としては、例えば、炭素数1〜6のアルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのエステルが好ましい。炭素数1〜6のアルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのエステルは、さらに水酸基やハロゲン基などの置換基を有してもよい。炭素数1〜6のアルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。なお、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸またはメタクリル酸を示す。
不飽和脂肪酸としては、例えば、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、ブテン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
アクリルアミド系単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等が挙げられる。
マレイミド系単量体としては、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−オクチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。
本発明において、グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分の重量平均分子量は、特に制限はないが、50,000〜300,000が好ましい。グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分の重量平均分子量が50,000以上であれば、成形品の耐薬品性をより向上させることができる。一方、グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分の重量平均分子量が300,000以下であれば、流動性をより向上させることができるが、200,000以下がより好ましい。
アセトン可溶分の重量平均分子量が50,000〜300,000の範囲にあるグラフト共重合体(A)は、例えば、後述する開始剤や連鎖移動剤を用いること、重合温度を後述の好ましい範囲にすることなどにより、容易に製造することができる。
本発明において、グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分の分散度は、特に制限はないが、2.0〜2.5が好ましい。グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分の分散度が2.0〜2.5であれば、グラフト共重合体(A)を容易に製造することができ、流動性、成形品の耐薬品性をより向上させることができる。
アセトン可溶分の分散度が2.0〜2.5の範囲にあるグラフト共重合体(A)は、例えば、後述する開始剤や連鎖移動剤を用いること、重合温度を後述の好ましい範囲にすることになどにより、容易に製造することができる。
ここで、グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分の重量平均分子量および分散度は、グラフト共重合体(A)からアセトン不溶分を濾過した濾液をロータリーエバポレーターで濃縮することにより採取したアセトン可溶分約0.03gをテトラヒドロフラン約15gに溶解した約0.2重量%の溶液を用いて測定したGPCクロマトグラムから、ポリスチレンを標準物質として換算することにより求めることができる。なお、GPC測定は、下記条件により測定することができる。
測定装置:Waters2695
カラム温度:40℃
検出器:RI2414(示差屈折率計)
キャリア溶離液流量:0.3ml/分(溶媒:テトラヒドロフラン)
カラム:TSKgel SuperHZM−M(6.0mmI.D.×15cm)、TSKgel SuperHZM−N(6.0mmI.D.×15cm)直列(いずれも東ソー)。
グラフト共重合体(A)のグラフト率には特に制限はないが、成形品の耐衝撃性を向上させる観点から、10〜100%が好ましい。
ここで、グラフト共重合体(A)のグラフト率は、以下の方法により求めることができる。まず、グラフト共重合体(A)約1g(m:サンプル重量)にアセトン80mlを加え、70℃の湯浴中で3時間還流し、この溶液を13000r.p.mで20分間遠心分離した後、不溶分を濾過し、アセトン不溶分を得る。得られたアセトン不溶分を80℃で5時間減圧乾燥させ、その重量(n)を測定し、下記式よりグラフト率を算出する。ここで、Xはグラフト共重合体(A)のゴム質重合体含有率(%)である。
グラフト率(%)={[(n)−((m)×X/100)]/[(m)×X/100]}×100。
本発明において、グラフト共重合体(A)の製造方法に特に制限はなく、乳化重合法、懸濁重合法、連続塊状重合法、溶液連続重合法等の任意の方法を用いることができる。乳化重合法または塊状重合法が好ましく、ゴム質重合体(a)の粒子径を所望の範囲に容易に調整することができること、重合時の除熱により重合安定性を容易に調整することができることから、乳化重合法がより好ましい。
グラフト共重合体(A)を乳化重合法により製造する場合、ゴム質重合体(a)とビニル系単量体混合物(b)の仕込み方法は、特に限定されない。例えば、これら全てを初期一括仕込みしてもよいし、共重合体組成の分布を調整するために、ビニル系単量体混合物(b)の一部を連続的に仕込んでもよいし、ビニル系単量体混合物(b)の一部または全てを分割して仕込んでもよい。ここで、ビニル系単量体混合物(b)の一部を連続的に仕込むとは、ビニル系単量体混合物(b)の一部を初期に仕込み、残りを経時的に連続して仕込むことを意味する。また、ビニル系単量体混合物(b)の一部または全てを分割して仕込むとは、ビニル系単量体混合物(b)の一部または全てを、初期仕込みより後の時点で仕込むことを意味する。
グラフト共重合体(A)を乳化重合法により製造する場合、乳化剤として各種界面活性剤を添加してもよい。各種界面活性剤としては、カルボン酸塩型、硫酸エステル塩型、スルホン酸塩型などのアニオン系界面活性剤が特に好ましく使用される。これらを2種以上組み合わせてもよい。なお、ここで言う塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
カルボン酸塩型の乳化剤としては、例えば、カプリル酸塩、カプリン酸塩、ラウリル酸塩、ミスチリン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、オレイン酸塩、リノール酸塩、リノレン酸塩、ロジン酸塩、ベヘン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩などが挙げられる。
硫酸エステル塩型の乳化剤としては、例えば、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンラウリル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩などが挙げられる。
スルホン酸塩型の乳化剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩縮合物などが挙げられる。
グラフト共重合体(A)を乳化重合法により製造する場合、必要により開始剤を使用してもよい。開始剤としては、過酸化物、アゾ系化合物、水溶性の過硫酸カリウムなどが挙げられる。これらを2種以上組み合わせてもよい。また、開始剤は、レドックス系でも使用される。
過酸化物のとしては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルイソプロピルカルボネート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオクテート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロへキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロへキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどが挙げられる。なかでも、クメンハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロへキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロへキサンが特に好ましく用いられる。
アゾ系化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カーボニトリル、アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、1−t−ブチルアゾ−2−シアノブタン、2−t−ブチルアゾ−2−シアノ−4−メトキシ−4−メチルペンタンなどが挙げられる。なかでも、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カーボニトリルが特に好ましく用いられる。
グラフト共重合体(A)を製造するために用いられる開始剤の添加量は、特に制限はないが、グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分の重量平均分子量および分散度を前述の範囲に調整しやすいという観点からゴム質重合体(a)とビニル系単量体混合物(b)の合計100重量部に対して、0.1〜0.5重量部が好ましい。
グラフト共重合体(A)を製造する場合、連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤を使用することにより、グラフト共重合体(A)のアセトン可溶分の重量平均分子量、分散度、グラフト率を所望の範囲に容易に調整することができる。
連鎖移動剤としては、例えば、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタンなどのメルカプタン、テルピノレンなどのテルペンなどが挙げられる。これらを2種以上組み合わせてもよい。なかでも、n−オクチルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンが好ましく用いられる。
グラフト共重合体(A)を製造するために用いられる連鎖移動剤の添加量は、特に制限はないが、グラフト共重合体(A)の重量平均分子量および分散度、グラフト率を前述の範囲に調整しやすいという観点から、ゴム質重合体(a)とビニル系単量体混合物(b)の合計100重量部に対して0.05重量部以上が好ましく、0.2重量部以上がより好ましい。一方、0.7重量部以下が好ましく、0.6重量部以下がより好ましい。
グラフト共重合体(A)を乳化重合法により製造する場合、重合温度に特に制限はないが、グラフト共重合体(A)の重量平均分子量および分散度、グラフト率を前述の範囲に調整しやすいという観点、乳化安定性の観点から40〜70℃が好ましい。
グラフト共重合体(A)を乳化重合法により製造する場合、グラフト共重合体ラテックスに凝固剤を添加して、グラフト共重合体(A)を回収することが一般的である。凝固剤としては、酸または水溶性塩が好ましく用いられる。
酸としては、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、酢酸などが挙げられる。水溶性塩としては、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化バリウム、塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムナトリウムなどが挙げられる。これらを2種以上組み合わせてもよい。成形品の色調を向上させる観点からは、熱可塑性樹脂組成物中に乳化剤を残存させないことが好ましく、乳化剤としてアルカリ脂肪酸塩を用い、酸凝固することが好ましい。
<ビニル系共重合体(B)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成するビニル系共重合体(B)は、少なくとも芳香族ビニル系単量体(c1)およびシアン化ビニル系単量体(c2)を含有するビニル系単量体混合物(c)を共重合して得られるものであり、各々の単量体組成比が異なる2種以上の共重合体の組み合わせでもよく、重量平均分子量の異なる2種以上の共重合体の組み合わせでもよい。
芳香族ビニル系単量体(c1)としては、芳香族ビニル系単量体(b1)として例示したものが挙げられ、スチレンが好ましく、シアン化ビニル系単量体(c2)としては、シアン化ビニル系単量体(b2)として例示したものが挙げられ、アクリロニトリルが好ましい。
ビニル系単量体混合物(c)中の芳香族ビニル系単量体(c1)の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の流動性および成形品の剛性をより向上させる観点から、ビニル系単量体混合物(c)の合計100重量%中、60重量%以上が好ましく、65重量%以上がより好ましい。一方、ビニル系単量体混合物(c)中の芳香族ビニル系単量体(c1)の含有量は、流動性、成形品の耐衝撃性を向上させる観点から、80重量%以下が好ましく、75重量%以下がより好ましい。
ビニル系単量体混合物(c)中のシアン化ビニル系単量体(c2)の含有量は、成形品の耐薬品性および耐衝撃性をより向上させる観点から、ビニル系単量体混合物(c)の合計100重量%中、20重量%以上が好ましく、25重量%以上がより好ましい。一方、ビニル系単量体混合物(c)中のシアン化ビニル系単量体(c2)の含有量は、成形品の色調を安定させる観点から、40重量%以下が好ましく、35重量%以下がより好ましい。
また、これらと共重合可能な他の単量体は、前述の芳香族ビニル系単量体(c1)、シアン化ビニル系単量体(c2)以外のビニル系単量体であって、本発明の効果を損なわないものであれば特に制限はない。具体的には、ビニル系単量体混合物(b)において他の単量体として例示したものが挙げられる。
本発明において、ビニル系共重合体(B)の重量平均分子量は、特に制限はないが、100,000〜250,000が好ましい。ビニル系共重合体(B)の重量平均分子量が100,000以上であれば、成形品の耐薬品性および耐衝撃性をより向上させることができる。一方、ビニル系共重合体(B)の重量平均分子量が250,000以下であれば、流動性をより向上させることができる。120,000〜200,000がより好ましい。
本発明において、ビニル系共重合体(B)の製造方法に特に制限はなく、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法、溶液重合法等の任意の方法を用いることができる。なかでも、重合制御の容易さ、後処理の容易さおよび生産性の観点から、塊状重合、懸濁重合が好ましい。
一般的に、連続塊状重合においては、シアン化ビニル系単量体単位の含有量の重量割合分布が比較的狭いビニル系共重合体(B)が得られ、懸濁重合においては、シアン化ビニル系単量体単位の含有量の重量割合分布が比較的広いビニル系共重合体(B)が得られる。本発明の目的を達成するためには、ビニル系共重合体(B)は1種または2種以上の連続塊状重合から得られたビニル系共重合体でもよく、1種または2種以上の懸濁重合から得られたビニル系共重合体の組み合わせでもよいが、1種または2種以上の連続塊状重合から得られたビニル系共重合体と、1種または2種以上の懸濁重合から得られたビニル系共重合体の組み合わせでもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B)の合計100重量部に対して、グラフト共重合体(A)20〜40重量部およびビニル系共重合体(B)60〜80重量部を配合してなる。グラフト共重合体(A)が40重量部を超え、ビニル系共重合体(B)が60重量部未満の場合、成形品の耐薬品性や剛性が低下する。一方、グラフト共重合体(A)が20重量部未満であり、ビニル系共重合体(B)が80重量部を超える場合、成形品の耐薬品性や耐衝撃性が低下する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、グラフト共重合体(A)およびビニル系共重合体(B)の合計100重量部に対して、グラフト共重合体(A)中に含まれるゴム質重合体(a)相当分は10〜25重量%が好ましい。ゴム質重合体(a)相当分をかかる範囲とすることにより、成形品の耐薬品性、耐衝撃性をより向上させることができる。
<アセトン可溶分(C)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、アセトン可溶分(C)全体の重量平均分子量が100,000〜200,000、シアン化ビニル単量体単位の含有量が29〜35重量%であり、アセトン可溶分(C)全体を100重量%として、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%未満である成分(d1)の割合が20〜45重量%、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%以上35重量%以下である成分(d2)の割合が50〜80重量%、シアン化ビニル単量体単位の含有量が35重量%を超える成分(d3)の割合が10重量%未満である。
アセトン可溶分(C)全体の重量平均分子量を100,000以上200,000以下とすることが好ましい。100,000以上とすることにより、成形品の耐衝撃性、耐薬品性を向上させることができる。一方、アセトン可溶分(C)全体の重量平均分子量を200,000以下とすることにより、流動性を向上させることができる。耐薬品性と流動性を良好なバランスとするためには、アセトン可溶分(C)全体の重量平均分子量を130,000以上180,000以下とすることがより好ましい。
アセトン可溶分(C)全体のシアン化ビニル系単量体単位の平均含有量は29重量%以上35重量%以下である。シアン化ビニル系単量体単位の平均含有量を29重量%以上とすることにより、成形品の耐薬品性、剛性および耐衝撃性を向上させることができる。一方、アセトン可溶分(C)全体のシアン化ビニル系単量体単位の平均含有量を35重量%以下とすることにより、樹脂加工時の熱による黄変を抑制することができる。耐薬品性と熱による黄変抑制を良好なバランスとするためには、アセトン可溶分(C)全体のシアン化ビニル系単量体単位の平均含有量を30重量%以上34重量%以下とすることが好ましく、30重量%以上33重量%以下とすることがより好ましい。
アセトン可溶分(C)全体を100重量%として、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%未満である成分(d1)の割合は20重量%以上45重量%以下である。かかる範囲とすることで、耐衝撃性、耐薬品性を向上させることができるが、さらに耐衝撃性、耐薬品性を向上させるためには25重量%以上40重量%以下とすることがより好ましく、29重量%以上40重量%以下とすることがより好ましい。
アセトン可溶分(C)全体を100重量%として、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%以上35重量%以下である成分(d2)の割合は50重量%以上80重量%以下である。かかる範囲とすることで加工時の熱による黄変を抑制し、耐薬品性を向上させることができるが、さらに加工時の熱による黄変を抑制し、耐薬品性を向上させるためには55重量%以上75重量%以下が好ましく、55重量%以上70重量%以下がより好ましい。
アセトン可溶分(C)全体を100重量%として、シアン化ビニル単量体単位の含有量が35重量%を超える成分(d3)の割合は10重量%未満である。かかる範囲とすることで、加工時の熱による黄変を抑制することができるが、耐薬品性と黄変抑制を良好なバランスとするためには、0.1重量%以上8重量%未満とすることが好ましく、1重量%以上6重量%未満とすることがより好ましい。
d1〜d3が上記のような割合となる組成物を得るためには、d1〜d3各々の割合が異なる複数のビニル系共重合体を組み合わせることが好ましい。ビニル系共重合体(B)が、ビニル系共重合体(B−1)とビニル系共重合体(B−2)の混合物であり、ビニル系共重合体(B−1)のアセトン可溶分(C−1)成分を100重量%として、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%未満である成分(e1)の割合が60〜85重量%、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%以上35重量%以下である成分(e2)の割合が10〜30重量%、シアン化ビニル単量体単位の含有量が35重量%を超える成分(e3)の割合が15重量%未満であり、
ビニル系共重合体(B−2)のアセトン可溶分(C−2)全体を100重量%として、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%未満である成分(f1)の割合が10重量%未満、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%以上35重量%以下である成分(f2)の割合が80重量%以上、シアン化ビニル単量体単位の含有量が35重量%を超える成分(f3)の割合が10重量%未満である組み合わせを選択することが特に好ましい。
ここで、熱可塑性樹脂組成物中のアセトン可溶分(C)全体の重量平均分子量は、熱可塑性樹脂組成物からアセトン不溶分を濾過した濾液をロータリーエバポレーターで濃縮することにより採取したアセトン可溶分(C)約0.03gをテトラヒドロフラン約15gに溶解した約0.2重量%の溶液を用いて、上記グラフト共重合体(A)で例示した方法と同様に測定することができる。
ここで、熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分(C)に含まれるシアン化ビニル系単量体単位の含有量は、熱可塑性樹脂組成物からアセトン不溶分を濾過した濾液をロータリーエバポレーターで濃縮することにより採取したアセトン可溶分(C)を80℃で5時間減圧乾燥する。その後、230℃に設定した加熱プレスにより作製した厚み30±5μmのフィルムについて、FT−IR分析を行い、FT−IRチャートに現れる下記ピークの強度比からシアン化ビニル系単量体単位の含有量とその重量を定量することができる。
芳香族ビニル系単量体単位:ベンゼン核の振動に帰属される1605cm−1のピーク
シアン化ビニル系単量体単位:−C≡N伸縮に帰属される2240cm−1のピーク
ここで、アセトン可溶分(C)全体を100重量%として、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%未満である成分(d1)、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%以上35重量%以下である成分(d2)およびシアン化ビニル単量体単位の含有量が35重量%を超える成分(d3)の割合は、以下の測定によって得られる。
熱可塑性樹脂組成物からアセトン不溶分を濾過した濾液をロータリーエバポレーターで濃縮することにより採取したアセトン可溶分(C)5gをアセトン80mlに溶解させた後、シクロヘキサンを徐々に添加し、白濁したところで添加をやめる。この白濁溶液を13000r.p.mで20分間遠心分離した後、上澄みを分離して得られた不溶分を、80℃で5時間減圧乾燥させ、その重量を測定する。
得た不溶分を230℃で加熱プレスし、作製した厚み30±5μmのフィルムについてFT−IR分析を行い、FT−IRチャートに現れる下記ピークの強度比からシアン化ビニル単量体単位の含有量とその重量を定量する。
芳香族ビニル系単量体単位:ベンゼン核の振動に帰属される1605cm−1のピーク
シアン化ビニル系単量体単位:−C≡N伸縮に帰属される2240cm−1のピーク
分離した上澄み液に対して、シクロヘキサンを5mL追添加し、白濁溶液に対して、同様の操作を行い、不溶分のシアン化ビニル単量体単位の含有量と重量を得られる。シクロヘキサン追添加によって上澄み液の白濁が無くなるまで、シクロヘキサン5mL添加、不溶分の分離、乾燥、FT−IR分析を繰り返すことで得られた、各々のアセトン不溶分のシアン化ビニル系単量体単位含有量とその重量によって(d1)、(d2)および(d3)それぞれの重量割合を求めることができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに他の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を配合してもよい。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリ乳酸系樹脂等のポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、芳香族または脂肪族ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、芳香族または脂肪族ポリケトン樹脂、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ビニルエステル系樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらを2種以上配合してもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、さらに必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、ガラス繊維、ガラスパウダー、ガラスビーズ、ガラスフレーク、アルミナ、アルミナ繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、ステンレス繊維、ウィスカ、チタン酸カリ繊維、ワラステナイト、アスベスト、ハードクレー、焼成クレー、タルク、カオリン、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウムおよび鉱物などの無機充填材;ヒンダードフェノール系、含硫黄化合物系または含リン有機化合物系などの酸化防止剤;フェノール系、アクリレート系などの熱安定剤;ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系またはサリシレート系などの紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系光安定剤;高級脂肪酸、酸エステル、酸アミド系または高級アルコールなどの滑剤および可塑剤;モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびエチレンワックスなどの離型剤;各種難燃剤;難燃助剤;亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤;リン酸、リン酸1ナトリウム、無水マレイン酸、無水コハク酸などの中和剤;核剤;アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系などの帯電防止剤;カーボンブラック、顔料、染料などの着色剤などを配合することができる。
次に、本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、例えば、前述のグラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B)および必要に応じてその他成分を溶融混練することにより得ることができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はなく、熱可塑性樹脂組成物を構成する各成分を、混合機を用いて混合する方法や、これらを均一に溶融混練する方法などが挙げられる。混合機としては、例えば、V型ブレンダー、スーパーミキサー、スーパーフローターおよびヘンシェルミキサーなどが挙げられる。溶融混練機としては、例えば、ニーダー、一軸または二軸押出機などが挙げられる。溶融混練温度は200〜300℃が好ましく、樹脂加工時の黄変を抑制する観点から220〜270℃がより好ましい。得られた熱可塑性樹脂組成物は、ペレタイザによりペレット化して用いられることが一般的である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、任意の成形方法により成形することができる。成形方法としては、例えば、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形、ガスアシスト成形などが挙げられ、射出成形が好ましく用いられる。射出成形時のシリンダー温度は210〜300℃が好ましく、金型温度は30〜80℃が好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、任意の形状の成形品として広く用いることができる。成形品としては、例えば、フィルム、シート、繊維、布、不織布、射出成形品、押出成形品、真空圧空成形品、ブロー成形品、他の材料との複合体などが挙げられる。本発明の成形品は、家電製品、通信関連機器、一般雑貨および医療関連機器などの用途に有用であり、なかでも、薬品との接触を伴う外装部品に好ましく用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。まず、実施例における評価方法について説明する。
(1)ゴム質重合体(a)の重量平均粒子径
ゴム質重合体ラテックスを水媒体で希釈、分散させ、レーザ散乱回折法粒度分布測定装置“LS 13 320”(ベックマン・コールター株式会社)により粒子径分布を測定した。その粒子径分布より、ゴム質重合体(a)の重量平均粒子径を算出した。
(2)グラフト共重合体(A)のグラフト率
グラフト共重合体(A)サンプル約1g(m:サンプル質量)にアセトン80mlを加え、70℃の湯浴中で3時間還流し、この溶液を13000r.p.mで20分間遠心分離した後、不溶分を濾過した。得られたアセトン不溶分を80℃で5時間減圧乾燥させ、その質量(n)を測定し、下記式よりグラフト率を算出した。ここで、Xはグラフト共重合体(A)のゴム質重合体含有率である。
グラフト率(%)={[(n)−(m)×X]/[(m)×X]}×100。
また、アセトン可溶分をロータリーエバポレーターにより濃縮することにより得た。
(3)重量平均分子量
(2)で得られたグラフト共重合体(A)のアセトン可溶分、ビニル系共重合体(B)、熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶部分(C)(グラフト共重合体(A)を熱可塑性樹脂組成物とし、(2)と同様な操作で得られる)、各々のサンプル約0.03gをテトラヒドロフラン約15gに溶解し、約0.2重量%の溶液を調製した。下記条件により測定したGPCクロマトグラムより、ポリスチレンを標準物質として換算した重量平均分子量を算出した。
機器:Waters2695
カラム温度:40℃
検出器:RI2414(示差屈折率計)
キャリア溶離液流量:0.3ml/min(溶媒:テトラヒドロフラン)
カラム:TSKgel SuperHZM−M(6.0mmI.D.×15cm)、TSKgel SuperHZM−N(6.0mmI.D.×15cm)直列(いずれも東ソー)。
(4)熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分(C)のアクリロニトリルの平均含有量
熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分(C)を230℃で加熱プレスし作製した厚み30±5μmのフィルムについて、FT−IR分析を行い、FT−IRチャートに現れる下記ピークの強度比からアクリロニトリル単量体単位の平均含有量を求めた。
スチレン単量体単位:ベンゼン核の振動に帰属される1605cm−1のピーク
アクリロニトリル単量体単位:−C≡N伸縮に帰属される2240cm−1のピーク。
(5)熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分(C)のアクリロニトリル含有量組成の重量割合
熱可塑性樹脂組成物からアセトン不溶分を濾過した濾液をロータリーエバポレーターで濃縮することにより採取したアセトン可溶分(C)5gをアセトン80mlに溶解させた後、シクロヘキサンを徐々に添加し、白濁したところで添加をやめた。この白濁溶液を13000r.p.mで20分間遠心分離した後、上澄みを分離し、不溶分を得た。不溶分は80℃で5時間減圧乾燥させ、その重量を測定した。
得た不溶分を230℃で加熱プレスし、作製した厚み30±5μmのフィルムについてFT−IR分析を行い、FT−IRチャートに現れる下記ピークの強度比からアクリロニトリル単量体単位の含有量とその重量を定量した。
スチレン単量体単位:ベンゼン核の振動に帰属される1605cm−1のピーク
アクリロニトリル単量体単位:−C≡N伸縮に帰属される2240cm−1のピーク。
分離した上澄み液に対して、シクロヘキサンを5mL添加し、白濁溶液に対して、同様の操作を行い、不溶分のアクリロニトリル単量体単位の含有量と重量得た。シクロヘキサン追添加によって上澄み液の白濁が無くなるまで、シクロヘキサン5mL添加、不溶分の分離、乾燥、FT−IR分析を繰り返すことで、アクリロニトリル単量体単位の含有量が31重量%未満であるアセトン可溶分(d1)、31重量%以上35重量%以下であるアセトン可溶分(d2)および35重量%を超えるアセトン可溶分(d3)各々の重量割合を求めた。
(6)臨界歪み値ε(耐薬品性)
80℃の温度の熱風乾燥機中で3時間乾燥した熱可塑性樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度230℃に設定した日精樹脂工業(株)製射出成形機PS60E−12Aで成形して得た短冊状試験片(長さ127mm、幅12.7mm、厚さ1.5mm)を、熱風乾燥機内で温度80℃24時間アニール処理を行い、室温23℃湿度50%環境下で24時間放置した後、図1に示した1/4楕円治具に沿わせて固定後、試験片表面に資生堂(株)製日やけ止め用乳液「アネッサ パーフェクトUV スキンケアミルク」を試験片全面に塗布した。室温23℃湿度50%にて72時間放置後、試験片上に発生したクラックの位置から、数式1に基づいて臨界歪み値ε(%)を算出した。
Figure 2021134284
ε:臨界歪み(%) 、a:治具の長軸(mm)、b:治具の短軸(mm)、
t:試験片の厚み(mm)、X:クラック発生点の長軸方向長(mm)
(a、b、tは定数で、a=127、b=38、t=1.5)
(7)初期YI(イエローインデックス)(初期色調)
80℃の温度の熱風乾燥機中で3時間乾燥した熱可塑性樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度250℃に設定した日精樹脂工業(株)製射出成形機PS60E−12Aで成形し、プレート試験片(長さ90mm、幅50mm、厚さ2.5mm)を得た。室温23℃湿度50%にて24時間放置後、サカタインクスエンジニアリング社製積分球分光光度計CE−7000AでD65光源、10°視野の条件にてプレート試験片のYI値を測定した。
(8)ΔYI(熱滞留黄変性)
80℃の温度の熱風乾燥機中で3時間乾燥した熱可塑性樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度250℃に設定した日精樹脂工業(株)製射出成形機PS60E−12Aでシリンダー25mmの位置まで計量した後、30分間熱滞留させた。30分経過後、成形したプレート試験片(長さ90mm、幅50mm、厚さ2.5mm)を、室温23℃湿度50%にて24時間放置後、サカタインクスエンジニアリング社製積分球分光光度計CE−7000AでD65光源、10°視野の条件にてプレート試験片のYI値を測定した。初期YI値と250℃、30分間熱滞留後に成形したプレート試験片のYI値の差をΔYI値とした。
(9)メルトフローレート(流動性)
各実施例および比較例により得られた熱可塑性樹脂組成物ペレットを80℃の熱風乾燥機中で3時間乾燥した後、測定温度220℃、荷重98Nの条件で、ISO113に準拠した方法によりメルトフローレートを測定した。
(参考例1)[グラフト共重合体(A−1)の製造]
撹拌翼を備えた内容量20mの反応器に、ポリブタジエンラテックス(ゴムの重量平均粒子径0.30μm、ゲル含有率85%)60重量部(固形分換算)、純水120重量部、ラウリン酸ナトリウム0.4重量部、ブドウ糖0.2重量部、ピロリン酸ナトリウム0.2重量部、硫酸第一鉄0.01重量部を仕込み、窒素置換後、60℃に温調し、撹拌しながら、スチレン6.6重量部、アクリロニトリル2.6重量部およびt−ドデシルメルカプタン0.046重量部の単量体混合物を30分間かけて初期添加した。
次いで、クメンハイドロパーオキサイド0.36重量部、乳化剤であるラウリン酸ナトリウム1.5重量部および純水25重量部の開始剤混合物を5時間かけて連続滴下した。同時に並行して、スチレン22.2重量部、アクリロニトリル8.6重量部およびt−ドデシルメルカプタン0.154重量部の単量体混合物を3時間かけて連続追滴下した。単量体混合物滴下後、2時間、開始剤混合物のみを連続滴下し、その後重合を終了させた。得られたグラフト共重合体ラテックスを1.5重量%硫酸で凝固した後、水酸化ナトリウムで中和し、洗浄、遠心分離、乾燥して、パウダー状のグラフト共重合体(A−1)を得た。
このグラフト共重合体(A−1)のグラフト率は36%、アセトン可溶分の重量平均分子量は81,000、アクリロニトリル単量体単位の平均含有量は28重量%であった。
(参考例2)[グラフト共重合体(A−2)の製造]
初期添加する単量体混合物をスチレン7.4重量部、アクリロニトリル1.8重量部およびt−ドデシルメルカプタン0.046重量部とし、連続追添加した単量体混合物をスチレン24.6重量部、アクリロニトリル6.2重量部およびt−ドデシルメルカプタン0.154重量部としたこと以外は、参考例1と同様な方法で、パウダー状のグラフト共重合体(A−2)を得た。グラフト共重合体(A−2)のグラフト率は38%、アセトン可溶分の重量平均分子量は80,000、アクリロニトリル単量体単位の平均含有量は20重量%であった。
(参考例3)[グラフト共重合体(A−3)の製造]
初期添加する単量体混合物をスチレン6.0重量部、アクリロニトリル3.2重量部およびt−ドデシルメルカプタン0.046重量部とし、連続追添加した単量体混合物をスチレン20.0重量部、アクリロニトリル10.8重量部およびt−ドデシルメルカプタン0.154重量部としたこと以外は、製造例1と同様な方法で、パウダー状のグラフト共重合体(A−3)を得た。グラフト共重合体(A−3)のグラフト率は40%、アセトン可溶分の重量平均分子量は78,000、アクリロニトリル単量体単位の平均含有量は34重量%であった。
(参考例4)[ビニル系共重合体(B−1)の製造]
単量体蒸気の蒸発乾留用コンデンサーおよびヘリカルリボン翼を有する2mの完全混合型重合槽と、単軸押出機型予熱機と、2軸押出機型脱モノマー機からなる連続式塊状重合装置を用いて、以下の方法によりビニル系共重合体(B−1)の製造を実施した。
まず、スチレン67重量部、アクリロニトリル33重量部、n−オクチルメルカプタン0.40重部および1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.015重量部からなる単量体混合物を、150kg/時で完全混合型重合槽に連続的に供給し、重合温度を130℃、槽内圧を0.08MPaに保ちながら連続塊状重合させた。完全混合型重合槽出口における重合反応混合物の重合率は65±3%に制御した。
次に、重合反応混合物を単軸押出機型予熱機により予熱した後、2軸押出機型脱モノマー機に供給し、未反応単量体を2軸押出機型脱モノマー機のベント口から減圧蒸発回収した。回収した未反応単量体は、連続的に完全混合型重合槽へ還流させた。その後、溶融混練物をストランド状に吐出させ、カッターにより切断してペレット状のビニル系共重合体(B−1)を得た。得られたビニル系共重合体(B−1)の重量平均分子量は90,000であった。また、アクリロニトリル単量体単位の平均含有量は33重量%であった。
(参考例5)[ビニル系共重合体(B−2)の製造]
まず懸濁重合用の媒体としてメタクリル酸メチル−アクリルアミド共重合体を製造した。具体的製造方法は以下のとおりである。
アクリルアミド80重量部、メタアクリル酸メチル20重量部、過硫酸カリウム0.3重量部、イオン交換水1800重量部を反応器中に仕込み反応器中の気相を窒素ガスで置換しよくかき混ぜながら70℃に保った。反応は単量体が完全に、重合体に転化するまで続けて、アクリルアミドとメタアクリル酸メチル二元共重合体の水溶液として得た。得られた反応液はやや白濁した粘性を有する水溶液であった。これに水酸化ナトリウムを35重量部とイオン交換水を加え0.6%のアクリルアミドとメタアクリル酸メチルとの二元共重合体水溶液としてアルカリ性に保ち、70℃で2時間攪拌した後、室温にまで冷却することで透明な懸濁重合用の媒体の水溶液を得た。
20Lのオートクレーブに前記メタクリル酸メチル−アクリルアミド二元共重合体水溶液6重量部、純水150重量部を入れて400rpmで攪拌し、系内を窒素ガスで置換した。70℃まで昇温後、アクリロニトリル41.8重量部、スチレン3.8重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.034重量部、2,2‘アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.293重量部およびt−ドデシルメルカプタン0.44重量部の単量体混合物を、反応系を攪拌しながら30分かけて添加し、重合反応を開始した。単量体混合物を添加後、15分、40分、65分、85分経過したところで、供給ポンプを用いてスチレンを1回あたり4.0重量部、4回添加した。さらに、単量体混合物を添加後95分経過したところで供給ポンプを用いてスチレンを38.4重量部反応容器に添加した。全ての単量体の添加後60分かけて100℃に昇温した。到達後30分間100℃に維持した後、冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行って、ビーズ状のビニル系共重合体(B−2)を得た。重量平均分子量は110,000、アクリロニトリル単量体単位の平均含有量は36重量%であった。
(参考例6)ビニル系共重合体(B−3)
20Lのオートクレーブに前記メタクリル酸メチル−アクリルアミド二元共重合体水溶液6重量部、純水150重量部を入れて400rpmで攪拌し、系内を窒素ガスで置換した。70℃まで昇温後、アクリロニトリル28.9重量部、スチレン11.1重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.32重量部、t−ドデシルメルカプタン0.063重量部およびn−オクチルメルカプタン0.094重量部の単量体混合物を、反応系を攪拌しながら30分かけて添加し、重合反応を開始した。単量体混合物を添加後、1時間経過したところで、スチレンを供給ポンプを使用して15重量部添加した。その後、30分間隔でスチレンを1回あたり15重量部として3回を反応容器に添加した。全ての単量体の添加後60分かけて100℃に昇温した。到達後30分間100℃に維持した後、冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行って、ビーズ状のビニル系共重合体(B−3)を得た。重量平均分子量は320,000、アクリロニトリル単量体単位の平均含有量は27重量%であった。
(参考例7)[ビニル系共重合体(B−4)の製造]
初期に添加する単量体混合物のt−ドデシルメルカプタンを0.32部とし、n−オクチルメルカプタンを添加しないこと以外は、参考例5と同様な方法でビニル系共重合体(B−4)を得た。重量平均分子量は130,000、アクリロニトリル単量体単位の平均含有量は27重量%であった。
(参考例8)[ビニル系共重合体(B−5)の製造]
単量体混合物をスチレン72重量部、アクリロニトリル28重量部、n−オクチルメルカプタン0.30重量部としたこと以外は、参考例4と同様な方法でビニル系共重合体(B−5)を得た。得られたビニル系共重合体(B−5)の重量平均分子量100,000であった。また、アクリロニトリル単量体単位の平均含有量は28重量%であった。
(参考例9)[ビニル系共重合体(B−6)の製造]
単量体混合物をスチレン67重量部、アクリロニトリル33重量部、n−オクチルメルカプタン0.16重量部としたこと以外は、参考例4と同様な方法でビニル系共重合体(B−6)を得た。得られたビニル系共重合体(B−6)の重量平均分子量170,000であった。また、アクリロニトリル単量体単位の平均含有量は33重量%であった。
(参考例10)[ビニル系共重合体(B−7)の製造]
単量体混合物をスチレン74重量部、アクリロニトリル26重量部、n−オクチルメルカプタン0.06重量部としたこと以外は、参考例4と同様な方法でビニル系共重合体(B−7)を得た。得られたビニル系共重合体(B−7)の重量平均分子量170,000であった。また、アクリロニトリル単量体単位の平均含有量は26重量%であった。
(参考例11)[ビニル系共重合体(B−8)の製造]
単量体混合物をスチレン72重量部、アクリロニトリル28重量部、n−オクチルメルカプタン0.09重量部としたこと以外は、参考例4と同様な方法でビニル系共重合体(B−8)を得た。得られたビニル系共重合体(B−8)の重量平均分子量170,000であった。また、アクリロニトリル単量体単位の平均含有量は28重量%であった。
(参考例12)[ビニル系共重合体(B−9)の製造]
単量体混合物をスチレン70重量部、アクリロニトリル30重量部、n−オクチルメルカプタン0.12重量部としたこと以外は、参考例4と同様な方法でビニル系共重合体(B−9)を得た。得られたビニル系共重合体(B−9)の重量平均分子量170,000であった。また、アクリロニトリル単量体単位の平均含有量は30重量%であった。
(参考例13)[ビニル系共重合体(B−10)の製造]
単量体混合物をスチレン64重量部、アクリロニトリル36重量部、n−オクチルメルカプタン0.21重量部としたこと以外は、参考例4と同様な方法でビニル系共重合体(B−10)を得た。得られたビニル系共重合体(B−10)の重量平均分子量170,000であった。また、アクリロニトリル単量体単位の平均含有量は36重量%であった。
(参考例14)[ビニル系共重合体(B−11)の製造]
単量体混合物をスチレン62重量部、アクリロニトリル38重量部、n−オクチルメルカプタン0.24重量部としたこと以外は、参考例4と同様な方法でビニル系共重合体(B−11)を得た。得られたビニル系共重合体(B−11)の重量平均分子量170,000であった。また、アクリロニトリル単量体単位の平均含有量は36重量%であった。
以下、実施例および比較例について説明する。
(実施例、比較例)
参考例に記載のグラフト共重合体(A)、ビニル系共重合体(B)表1に示した重量部数で配合し、スクリュー径40mmのベント付単軸押出機((株)池貝製FS40)を用いて、シリンダー設定温度230℃、スクリュー回転数80rpmの条件で溶融混練し、樹脂組成物のペレットを得た。得られた樹脂組成物のペレットからアセトン可溶分(C)を抽出し、重量平均分子量、アクリロニトリル単量体単位の平均含有量、アクリロニトリル単量体単位含有量組成の重量割合、メルトフローレートを求めた。また、所定の条件で成形した各試験片について、臨界歪み値ε、初期YI値、ΔYI値を求めた。
表1の評価結果から、本発明の実施形態における熱可塑性樹脂組成物(実施例1〜11)は、いずれも耐薬品性、初期色調、熱滞留黄変性および流動性が均衡して優れていることが分かる。
一方、比較例1〜7のいずれも、耐薬品性、初期色調、熱滞留黄変性および流動性が均衡して優れているものは無かった。
Figure 2021134284
Figure 2021134284
a:治具の長軸(mm)
b:治具の短軸(mm)
X:クラック発生点の長軸方向長(mm)

Claims (3)

  1. (A)と(B)の合計を100重量部として、
    ゴム質重合体(a)の存在下に、少なくとも芳香族ビニル系単量体(b1)、シアン化ビニル系単量体(b2)を含有するビニル系単量体混合物(b)をグラフト共重合してなるグラフト共重合体(A)20〜40重量部および、
    少なくとも芳香族ビニル系単量体(c1)およびシアン化ビニル系単量体(c2)を含有するビニル系単量体混合物(c)を共重合してなるビニル系共重合体(B)60〜80重量部を含む熱可塑性樹脂組成物であり、
    前記熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶分(C)全体の重量平均分子量が100,000〜200,000、シアン化ビニル単量体単位の平均含有量が29〜35重量%であり、
    アセトン可溶分(C)全体を100重量%として、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%未満である成分(d1)の割合が20〜45重量%、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%以上35重量%以下である成分(d2)の割合が50〜80重量%、シアン化ビニル単量体単位の含有量が35重量%を超える成分(d3)の割合が10重量%未満であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 前記ビニル系共重合体(B)が、ビニル系共重合体(B−1)とビニル系共重合体(B−2)の混合物であり、
    ビニル系共重合体(B−1)のアセトン可溶分(C−1)全体を100重量%として、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%未満である成分(e1)の割合が60〜85重量%、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%以上35重量%以下である成分(e2)の割合が10〜30重量%、シアン化ビニル単量体単位の含有量が35重量%を超える成分(e3)の割合が15重量%未満であり、
    ビニル系共重合体(B−2)のアセトン可溶分(C−2)全体を100重量%として、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%未満である成分(f1)の割合が10重量%未満、シアン化ビニル単量体単位の含有量が31重量%以上35重量%以下である成分(f2)の割合が80重量%以上、シアン化ビニル単量体単位の含有量が35重量%を超える成分(f3)の割合が10重量%未満であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
  3. 請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
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