本発明は、鋼のような複数の鉄材料の複数の製品、例えば、複数のクランクシャフトのレーザによる表面硬化の分野に関する。
材料をその融点より低い高温で加熱した後、それを焼き入れ、すなわち、固いマルテンサイトを形成するように急速に冷却することにより、中炭素鋼のような複数の鉄材料を硬化することが、当技術分野において周知である。加熱は、複数の炉で、または誘導加熱によって生じ、冷却は、水または他の複数の成分と混合された水のような冷却流体を適用することによって生じる。
しばしば、硬化される必要があるのは表面のみである。表面硬化は、材料の耐摩耗性を向上させ、場合によっては、残留圧縮応力に起因する疲労強度を増大させるために使用可能である。表面硬化は、使用時に大きな摩耗を受ける複数の表面、例えば、複数のクランクシャフトの複数の軸頸表面のような複数の軸受表面を硬化するために有用たり得る。
レーザ表面硬化は、高エネルギーのレーザ光が基板表面を硬化させるための熱源として用いられる表面処理方法である。例えば、以下を参照すると、レーザ光を用いて表面硬化を実現させることが知られている。
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表面硬化のためにレーザ光を用いることは、レーザビームは、ワークピースから本質的に独立しており、容易に制御され、真空を必要とせず、燃焼生成物を生成しないといういくつかの利点がある。また、レーザビームは、概して、金属の製品またはワークピースのみを局所的に加熱するため、ワークピースの残りは、ヒートシンクとして作用することができ、自己焼き入れとしても知られる急速冷却を確実にする。すなわち、ワークピースの冷たい内部が、マルテンサイトが表面に形成可能となるような高い率での内部への熱伝導によって、熱い表面を焼き入れするために十分に大きいヒートシンクを構成する。つまり、複数の冷却流体のような外部冷却媒体の必要性を、なくすことができる。
複数の金属硬化加工においてレーザ光を熱源として用いることに関する1つの問題は、硬化ゾーンの幅が、レーザスポットの複数の寸法によって限定されることである。光学系を用いて、スポットの形状を変更すること、例えば、多かれ少なかれ均一な強度分布を有する実質的に矩形のスポットを与えることが知られている。代案として、熱源が軌跡に沿って移動する矩形の源と見なされ得るように、軌跡にわたってスポットを繰り返し移動させるべく、(駆動手段に関連付けられたスキャンミラーのような)スキャン手段が、使用可能である。
その複数の利点にも関わらず、レーザ硬化は、この技術の多数の実際の用途のために十分なほどには生産率が高くないと考えらてれていること、及び、加熱されるべき全ての部分が所望の程度にまで加熱されることは実現困難であることから、使用されない場合が多い。正しい加熱は、過熱による損傷を生じることなく、必要な深さで、硬化及び焼き戻しが確実に実現されるために必須である。
例えば、クランクシャフト(往復運動する線形ピストンの動きを回転に変換するエンジンの部分)は、複雑な製品であり、レーザ光による硬化が困難と見なされることが多い。クランクシャフトの例が、図1に示される。クランクシャフト1000は、鍛造または鋳造された鋼製品であり、2つまたはそれより多くの中央に構成された同軸の円筒状軸頸1001(「主軸頸」としても知られる)及び1つまたは複数のオフセットされた円筒状クランクピン軸頸1002(「ロッド軸頸」としても知られる)を有し、これらは、複数の軸頸の複数の表面に対して実質的に垂直に延びる複数の壁1005を確立する複数のカウンターウェイト及び複数のウェブによって分離される。製品の複雑な形状により、レーザビームでその表面を正しく「スキャン」することは困難となり得る。硬化する複数の軌跡または複数のエリアは、異なる複数の幅を有することができ、及び/または非対称であることができ、及び/または(複数の壁1005及び軸頸1001および1002の複数の表面の場合)異なる複数の平面に構成されることができる。つまり、今日では、その後にポリマーベースの水焼き入れ加工を行う高周波数誘導加熱が、複数のクランクシャフトの硬化に頻繁に用いられる。しかしながら、この加工は、所望の硬化を達成するために有用であることが明らかであるもの、特定の複数の欠点を含む。例えば、誘導によって加熱を生成するするための複数のインダクタは、クランクシャフトの特定の設計に従って設計されなければならないため、柔軟性が減少し、誘導機械を新たな種類のクランクシャフトに適応させるために時間を費やし、コストがかかる可能性がある。さらに、誘導による加熱は、クランクシャフトを所望の程にまで加熱するために必要なエネルギーに関してコストがかかる。さらに、冷却加工は複雑でコストがかかり、必要な冷却流体の大量使用に起因して、環境の観点から問題がある。その上、冷却流体の温度及び流れのような複数のパラメータは、正しい硬化加工を確実にするために、慎重に制御されなければならない。
つまり、熱源としてレーザ光を用いる硬化は、柔軟性、環境への優しさ、エネルギー消費及びコストに関して、魅力的な代案たり得る。
ドイツ特許公報第102005005141B3号は、クランクシャフトの複数の軸頸の複数の表面をレーザ硬化するための方法を開示する。この方法によれば、複数の軸頸の各々をレーザ光で加熱する間に、クランクシャフトを保持した後、主軸頸軸周り及び複数のロッド軸頸の複数の軸周りにこれを回転させる6軸産業用ロボットが用いられる。つまり、産業用ロボットの動きの性能を用いて、レーザ源とレーザビームが投影される表面との間の距離が一定に保たれる。
米国特許出願公開公報第2004/0244529A1も、クランクシャフトの小さい領域を硬化させるために、レーザを用いることを教示する。この場合に、レーザ光は、複数の離間した部分を硬化させるために用いられ、当該部分の範囲は、硬化されるべき領域にわたって異なる。クランクシャフトの小さい部分のみがこれらの離間した複数の部分で硬化されるため、他の複数の高感熱性部分に対する過熱を懸念する必要がない。
ドイツ特許出願公開公報第3905551A1号は、クランクシャフト表面を硬化させるためのシステムを教示し、レーザビームは、クランクシャフトに投影され、その後ビームがクランクシャフトの複数の異なる部分に投影されるように、ビーム及びクランクシャフト間で相対移動が生じる。ビームのパワーまたはパワー分布は、クランクシャフトの各部分の形状に応じて、かつ、レーザビームの所望の浸透深さに応じて、適合される。ドイツ特許出願公開公報第3905551A1号に教示されるように、当該アプローチは、高生産率を考慮していない可能性があるこという問題がある。硬化された層において十分な深さを実現するためには(自動車産業では、典型的には、有効硬化深さに関して少なくとも800、1000、1500、2000または3000μmもの硬化深さが必要とされ、200μm以上の深さまで100%変換されたマルテンサイトを有することが望まれることが多い)、表面の特定の部分の温度を上げるだけでは不十分であり、表面のみならず、表面下の材料を十分な深さにまで加熱するために、エネルギーは十分に長い時間適用されなければならない。表面の過剰な加熱は望ましくないため、所望の浸透を実現するためには、単にレーザビームのパワー量ではなく、レーザ加熱が関連エリアに適用される時間を増大させることが最良の方法である。ドイツ特許出願公開公報第3905551A1号に開示されたシステムでは、レーザビームは、固定されたままで、特定のエリアに適用されるが、主軸頸または複数のロッド軸頸の大部分にわたる適度な加熱及び浸透を得るためには、大時間長が必要であると見られる。つまり、ドイツ特許出願公開公報第3905551A1号が記載する方法は、クランクシャフト表面において複数の非常に特定の部分を硬化させるためには適切であるが、複数の軸頸の複数の表面全般を硬化させるためには適切とはいえない場合がある。
欧州特許出願公開公報第1972694A2号には、1つまたは複数のレーザを用いて、クランクシャフトの複数の特定の部分、すなわち、複数のフィレット部分を硬化することが主に記載される。レーザ光は、硬化されるべき部分に向けられ、クランクシャフトは、回転させられる。開示された方法は、予備加熱段階、主加熱段階及び加熱後段階を含むことができる。レーザ照射は、一定に維持され、クランクシャフトの回転が生じると考えられる。欧州特許出願公開公報第1972694A2号は、クランクシャフト表面の複数の高感熱性部分に対する過熱のリスクについては言及していない。
米国特許出願公開公報第2004/0108306A1号は、自動車製造業者が、誘導加熱加工を用いて、クランクシャフトの複数の軸受、すなわち、主軸頸及び複数のロッド軸頸の複数の表面を硬化させ、機械的ローリング加工が、圧縮応力を改善するべく、複数のフィレットをロール掛けするために用いられることを認識する。しかしながら、米国特許出願公開公報第2004/0108306A1号によれば、これらの複数の加工は、資本集約的、時間集約的であり、不均一性をもたらし、焼き戻し加工を必要とする複数の潤滑油孔においてクラックが生じる傾向があるといわれる。米国特許出願公開公報第2004/0108306A1号は、機械的ローリング加工の必要性をなくすことを目的とする、レーザによるフィレットの加熱処理を教示する。光学式パイロメータの使用による閉ループ温度制御が、提案されている。レーザ及びフィレット間で固定された加熱距離を維持するための制御可能x,yメカニズムの使用が、提案されている。
S.M.Shariffらの「Laser Surface Hardening of a Crankshaft」、SAE2009−28−0053(SAE International)は、説明された複数の異なる位置で、硬化された硬化深さが200μmを超え、硬度が500−600HVとなることを目的とする、クランクシャフトのレーザ表面硬化を論じている。当該文献は、複数の孔周辺における、境界でのヒートシンク効果の減少及び熱の蓄積に起因する溶融の問題を述べている。当該問題は、適切な開始位置を選択し、複数の加工パラメータを許容範囲で変化させることによって、孔境界における予備加熱効果を減少させることにより、対処可能であることが述べられている。
複数のクランクシャフトのような複数の複雑な製品に関して、レーザ硬化が多用されない1つの理由は、複数の部分の正しい加熱、すなわち、複数の感熱性部分の過熱を回避しつつ、正しい硬化を保証する十分な加熱(概して、硬化された層は、少なくとも1000、1500、2000μm以上のような、少なくとも800μm以上の有効硬化深さを有さなければならず、及び/または200μm以上のような深さまで100%変換されたマルテンサイトを有する)を実現することが困難となり得ると考えられることである。例えば、図1に示されるものようなクランクシャフトの場合、複数の潤滑油孔1003に対応する複数の軸頸の加熱を考慮するものに対して、及び任意に、複数のフィレット1004を考慮するものに対しても、注意を払わなければならない。例えば、軸頸の回転中に表面全体を過熱するために、大きいレーザスポットが軸頸表面に単に投影され、表面の各部分が同量のエネルギーを受けるように、レーザビームの回転速度及びパワーが一定に保たれ、かつ、所望の硬化を生成するべく表面の主要部分に対する適度な加熱を実現するために、このエネルギーが十分である場合に、複数の潤滑油孔の複数の境界において、加熱が過剰となり、つまり、当該複数の境界を損傷する可能性がある。同じことが、共通してアンダーカットされた複数のフィレットにおいて生じる可能性がある。つまり、複数の境界が、過熱された場合に損傷を被る可能性がある。
本発明の第1の態様は、クランクシャフトの軸頸の表面をレーザ硬化する方法に関し、軸頸は、硬化されるべき表面エリアを備え、表面エリアは、クランクシャフトの回転軸(X)と平行な第1の方向及び軸頸の周方向(W)に対応する第2の方向に延在し、表面エリアは、少なくとも1つの高感熱性サブエリア及び少なくとも1つの低感熱性サブエリアを備え、少なくとも1つの高感熱性サブエリアは、クランクシャフトの潤滑油孔に隣接するエリアを含み、方法は、
表面エリアに有効レーザスポットを生成するために、レーザ源からのレーザビームを表面エリアに投影する段階であって、有効レーザスポットは、第1の方向において、硬化されるべき表面エリアの主要部分にわたって(例えば50%より多く、75%より多く、85%より多く、または90%もしくは95%より多く、例えば99%より多く、または100%もにわたって、及び、特に、例えば、表面エリアが、例えば少なくとも800μm以上の有効硬化深さが望ましい場合には、100%を超えないとしても、硬化されるべき表面エリアの主要部分にわたって)延在する段階と、
その後または徐々に、周方向において、表面エリアの複数の異なる部分に有効レーザスポットを投影するために、周方向において、クランクシャフトの表面とレーザ源との間の相対移動を生じさせる段階とを備え、
有効レーザスポットは、2次元エネルギー分布(レーザビームのエネルギーまたはパワーが有効レーザスポット内で分布する状態に関する)を有する。
方法は、潤滑油孔隣接エリアに対する過熱を回避するために、低感熱性サブエリアを加熱する場合に、潤滑油孔隣接エリアを含む高感熱性サブエリアを加熱する場合とエネルギー分布が異なるように、エネルギー分布を適応させる段階をさらに備える。それにより、当該適応を実行することによって、例えば、複数の潤滑油孔の複数の境界を過熱及び損傷することなく、硬化されるべき表面エリアの効率的かつ適度な加熱を実現することができる。
本発明のいくつかの実施形態では、有効レーザスポットを表面エリアに適用する時間の大部分(例えば、少なくとも50%、75%、90%、95%またはそれより多く)の間で、有効レーザスポットは、周方向に、少なくとも5mm、好ましくは少なくとも7mm、より好ましくは少なくとも10mm、さらにより好ましくは少なくとも15mm、20mm、30mmまたはそれより大きく、例えば少なくとも50mmの幅(または軸頸表面の湾曲に沿って線形の拡張)を有する。周方向、すなわち、レーザ源と軸頸表面との間に生じさせられる相対移動の方向における十分な拡張を用いることにより、合理的に短い時間内で硬化加工を完了させつつ、硬化されるべき表面エリアの各部分を十分な時間加熱することが可能となる。すなわち、有効レーザスポットの周方向における十分な拡張により、過剰な高温を用いることなく、十分な浸透または硬化深さを達成しつつ、比較的高い速度での相対移動を実行することが可能となる。この理由により、周方向において有効レーザスポットの幅が大きいことが、好ましい可能性がある。.勿論、適用可能なパワーは、エリアの十分な加熱を与えるために十分でなければならないため、用いられるレーザのパワーに関する性能と、有効レーザスポットによってカバーされる表面エリアとの間でバランスがとられていなければならない。第1の方向に1または数cmオーダの幅を有する複数の軸頸を有する複数の自動車のクランクシャフトに対して、数kW(例えば3−4kW)の範囲の出力パワーを有する複数のレーザを用いる場合に、有効スポットは、例えば、周方向に1cmオーダの幅を有することができ、レーザと軸頸表面との間の線形相対速度は、約60cm/分オーダとなり得るという知見が得られた。多くの産業上の目的のため、レーザビームは、少なくとも3kW、より好ましくは、例えば6kWのパワーを有さなければならないと考えられている。
本発明のいくつかの実施形態では、有効レーザスポットは、等価なまたはレーザビームを第1の方向及び第2の方向にスキャンすることによって得られた仮想レーザスポットであり、これらの2つの方向の間の複数の方向、すなわち、第1及び第2の方向に対して傾斜した、例えば、直線のまたは湾曲した経路または複数の線に沿った複数の方向を含み、スキャンサイクル中の2次元エネルギー分布が、スキャン速度、スキャンパターン、レーザスポットのサイズ、レーザビームのパワー及びレーザビーム内のパワー分布によって決定されるように、レーザスポットがスキャン速度で変位するスキャンパターンに繰り返し従う。つまり、これらの複数のパラメータのうち1つまたは複数が、2次元エネルギー分布を動的に適応させるために、使用可能である。これにより、レーザ源とワークピース表面との間で相対変位する間に、すなわち、例えば、クランクシャフトがその長軸周りに回転する間に、有効レーザスポット内の2次元エネルギー分布だけではなく、有効レーザスポットのサイズ及び形状を、容易に適応させ、及び変更することが可能となり、それにより、複数の潤滑油孔と隣接する複数のエリアのような複数の高感熱性サブエリアに対する過熱を回避するために、2次元エネルギー分布を適応させる。本発明のいくつかの実施形態では、潤滑油孔隣接エリアに対する過熱を回避するために、エネルギー分布が、低感熱性サブエリアを加熱する場合に、潤滑油孔隣接エリアを含む高感熱性サブエリアを加熱する場合と異なるように、エネルギー分布の適応は、スキャン速度、スキャンパターン、レーザスポットのサイズ、レーザビームのパワー及びレーザビーム内のパワー分布のうちの少なくとも1つを適応させることによって実行される。本発明のいくつかの実施形態では、エネルギー分布の適応は、レーザビームのパワーを適応させることによって、例えば、レーザスポットをスキャンパターンに沿ってスキャンする間に、レーザビームをオン及びオフにすることによって実行される。例えば、ファイバレーザのようなレーザを用いる場合に、レーザビームは非常に高速でオン及びオフにスイッチされることが可能であり、つまり、スキャンパターンに追従しつつ、レーザビームをオン及びオフにすることによって、所望のエネルギー分布を得ることができる。つまり、加熱は、スキャンパターンの特定の複数の線または複数の線の複数の部分をスキャンする間に、レーザビームをオンにすることによって実現可能である。
本発明のいくつかの実施形態では、レーザビームを、毎秒少なくとも300回、より好ましくは毎秒少なくとも600回、より好ましくは毎秒少なくとも1,000回、より好ましくは毎秒少なくとも5,000回、さらにより好ましくは毎秒少なくとも10,000回、複数の適用可能なパワー状態のうちの1つに選択的に設定するために、レーザスポットをスキャンパターンに沿ってスキャンする間に、選択的にレーザビームのパワーを適応させることによって、エネルギー分布は、少なくとも部分的に制御される。用語「パワー状態」は、複数の異なるパワー状態が、例えば、0kW、1kW、4kW、5kW、6kW、9kW及び10kWのような、レーザビームの複数の異なるパワーレベルに対応するように、レーザビームが所定の平均パワーを有する状態を指す。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、2つのパワー状態、すなわち、レーザビームがオンである場合の「オン」状態、及びレーザビームがオフ、すなわち、パワーがゼロである(またはパワーがゼロに近い)場合の「オフ」状態が存在し得る。しかしながら、あらゆる他の適用可能なパワー状態、すなわち、平均パワーがゼロより高く、レーザビームの最大パワーより小さい複数のパワー状態も、使用可能である。例えば、レーザビームの最大パワーが10kWの場合に、0kWおよび10kWにに対応する2つの適用可能なパワー状態が存在可能であり、及び/または、2kW、4kW、5kW、6kW及び/または8kWのような複数の中間値に対応する複数の適用可能なパワー状態が存在可能である。表現「適用可能」は、複数のパワー状態は、用いられているレーザ装置により実現可能であるという事実を指す。表現「に設定される」は、現実の状態変化が毎秒何度も生じなければならないことを示唆するものではない(例えば、いくつかの隣接セグメントは、1つのセグメントから次のものに通過する場合に、レーザのパワーを変化させる必要がないように、これらに割り当てられた同じパワー状態を有してもよい)が、適切な場合に、例えば、制御システムによって与えられた複数の命令に従う場合はいつでも、レーザがパワー状態を何度も変化させることが可能なように構成されることを示す。それにより、エネルギー分布のセグメント化または「ピクセル化」は、毎秒300、600、1000、5000または10000セグメントまたはピクセルで実現可能であり、レーザビームは、各セグメントもしくはピクセルの中で、または少なくとも当該セグメントまたはピクセルの中で、当該セグメントまたはピクセルに割り当てられたパワー状態によって決定されるように、平均パワーを有する。例えば、スキャンパターンに周波数50Hzで繰り返し従う場合に、スキャンパターンに沿ったエネルギー分布は、例えば、スキャンパターンに沿って分布する、毎秒300、600、1000、5000および10000セグメントまたはピクセルにそれぞれ対応する6、12、20、100または200セグメントまたはピクセルに割り当てられた複数のパワー状態によって決定可能である。毎秒あたりピクセルの率が同じで、スキャン速度100Hzの場合に、エネルギー分布は、スキャンパターンの3、6、10、50及び100セグメントまたはピクセルによって、それぞれ決定される。概して、少なくとも6セグメントまたはピクセルを用いることが好ましく、すなわち、例えば、スキャンパターンは、各々が3セグメントを有する2行を備えることができ、各セグメントは、それに割り当てられたパワー状態を有する。明らかに、複数の異なるパワー状態の間で変化が生じた場合に、レーザビームのパワーが前のパワー状態によって決定されたパワーと異なる複数の過渡期が存在することがあり、新たなパワー状態、例えば、ビームパワーは、パワー曲線に傾きがあり、レーザビームスキャンパターンに沿ってスキャンする間に1つのセグメントから次への推移が生じるように、増減可能である。
このアプローチ、すなわち、スキャンパターンの複数の異なるセグメントまたはピクセルにおけるビームのパワーの変化が、例えば、複数の潤滑油孔の複数の境界に対する過熱を回避するために、エネルギー分布に高柔軟性を与え、エネルギー分布の確率及び動的な変更を容易にする。セグメント化またはピクセル化のアプローチにより、適切な加熱パターンが実現されるまで、複数のトライアルアンドエラーテストを用い、複数の異なるセグメントに割り当てられた複数のパワー状態を適応させることによって、適切な複数のエネルギー分布パターンを容易に見出すこともできる。市販のファイバレーザのような適切な複数のレーザが用いられる場合には、複数の異なるパワー状態の間で、高速での切り替えが生じ得る。ファイバレーザは、他の適用可能な複数のレーザよりコストがかかる場合があるが、例えば「オン」及び「オフ」状態の間で、すなわち、他の複数のパワー状態/複数のパワーレベルの間で制御された切り替えを行うために必要な時間が短いことに起因して、有利となり得る。このような複数のレーザのオン/オフまたはオフ/オンの切り替え時間は、1msより小さく、例えば0msまたはそれより短くなり得る。
本発明の複数の実施形態のうちのいくつかでは、スキャンパターンは、複数のセグメントを備えることができ、複数のセグメントの各々は、所与の時点で、それに割り当てられた複数の適用可能なパワー状態のうちの1つを有する。低感熱性サブエリアの加熱中における、複数のセグメントのうちの少なくとも1つに割り当てられたパワー状態は、潤滑油孔隣接エリアを含む高感熱性サブエリアの加熱中と異なる可能性があり、すなわち、例えば、有効レーザスポットが潤滑油孔に近づく場合に、特定の複数のセグメント又は全てのセグメントに割り当てられたパワー状態を変化させることによって、エネルギー分布は動的に適応され得る。
代替的または追加的に、エネルギー分布の適応は、レーザスポットをスキャンパターンに沿ってスキャンする間に、スキャン速度を適応させることによって、(さらに)実行可能である。固定レーザビームパワーの場合に、より速いスピードは、より少ないエネルギーが適用され、逆もまた同様であることを示唆する。
本発明のいくつかの実施形態では、有効レーザスポット内の複数のポイントにおける温度変動が、温度の極大と以下の極小との間で、200℃より小さく、好ましくは150℃より小さく、より好ましくは100℃より小さく、さらにより好ましくは50℃より小さい振幅を有するように、スキャンが十分に高いスキャン速度で実行される。この文脈では、変動の振幅は、初期の有効レーザスポットの先端境界における、最高温度までの大幅な加熱、及びその後の有効レーザスポットの末端境界における低温までの冷却を除き、温度曲線の極大及び極小間で繰り返される複数の変化の振幅を指す。適切な硬化のためには、金属が急速に十分な高温に達し、大きな変動は硬化の質に負の影響を与える可能性があるため、金属がその後、当該温度でそのような変動なく、当該十分な高温に十分な時間長留まることが望ましい。10、25、50、75、100、150、200または300Hzを超えるスキャン速度(すなわち、毎秒のスキャンパターンの複数の繰り返し)は、加熱されたスポットが次のスキャンサイクルの間にレーザビームによって再加熱される前に、スポットの温度が急落することを防止するために、適切たり得る。適切な硬化は、複数の特定の最小温度を必要とし、所望の硬化深さに急速に到達された場合に、複数の高温が好ましい。しかしながら、過剰な温度は、例えば、粒度の増大に起因する負の影響を、質に与え得る。つまり、折衷的な温度が見出されなければならず、この温度からの偏差ができる限り小さくなければならない。つまり、毎秒のサイクルに関する高スキャン速度が、温度の揺らぎまたは変動の振幅を減少させるために、好ましい可能性がある。
本発明のいくつかの実施形態では、有効レーザスポットにおけるエネルギー分布は、第1の方向において有効レーザスポットの複数の端部に向かって、第1の方向において有効レーザスポットの中央に向かうより大きいエネルギーが適用されるようになる。熱エネルギーが吸収され、クランクシャフトにおいて分布する態様に起因して、有効レーザスポットの複数の側方端部に向かってより大きいエネルギーを適用することが、硬化された層の実質的に均一な厚さ、すなわち、硬化された層が複数の側方端部に向かって非常に薄くなり、その中央に向かって曲線に従ってゆっくりと増大する断面ではなく、実質的に矩形の断面を得るために役立つという知見が得られた。しかしながら、軸頸の複数の端部において、複数のアンダーカットまたは複数のフィレットの過熱を回避するためには、注意を払わなければならない。
本発明のいくつかの実施形態では、有効レーザスポットによって走査されるエリアが、最初により高い平均パワーでレーザ照射を受け、その後、より低い平均パワーでレーザ照射を受けるように、エネルギー分布は、有効レーザスポットの先端部分または境界において、有効レーザスポットの末端部分または境界より高いエネルギー密度を有する。このことにより、必要な硬化深さを実現するべく、有効レーザスポットが特定のエリアに適用されなければならない時間を減少させるために、硬化のために適切な温度が急速に到達される効率が増大する。つまり、例えば、軸頸の表面に対する硬化を完了するための時間が少なくなる。
本発明のいくつかの実施形態では、方法は、潤滑油孔の両方の側面で、第1の方向において、有効レーザスポットを表面エリアに適用する段階を備え、潤滑油孔が複数の側面のうちの第1の側面下を延在せず、複数の側面のうちの第2の側面下を延在するように、潤滑油孔は、傾斜した態様で内側に向かって延在し、有効レーザスポットは、複数の側面のうちの第1の側面に、複数の側面のうちの第2の側面より大きいエネルギーを適用するように適合される。複数の側面のうちの第2の側面下における潤滑油孔の存在に起因して、ヒートシンク効果は、当該側面においてより低い。従って、他の側面より小さいエネルギーが、好ましくは、このような潤滑油孔が存在しないことにより、より良い熱の消失が可能な当該側面に適用されなければならない。このように、加熱エネルギーの使用が最適化され、過熱リスクが最小化される。すなわち、これらの本発明の複数の実施形態によれば、複数の潤滑油孔に対応するワークピースにおいて、硬化されるべき表面にだけではなく、表面下の構造にも注意が払われる。
本発明のいくつかの実施形態では、有効レーザスポットは、低感熱性サブエリアにおいて第1の形状を有し、潤滑油孔に到達した際に実質的にU形状を有し、潤滑油孔を離れる際に実質的に逆U形状を有し、逆もまた同様となるように適合され、第1の形状は、任意に、実質的に矩形または三角形状である.複数の用語「U」及び「逆U」は、潤滑油孔が「上から」近づく場合の状況を指す。基本的に、軸頸表面にわたって相当に均質な加熱を提供するために適切な、実質的に矩形、台形または三角形の有効レーザスポットは、潤滑油孔周りを加熱するためには適切ではない可能性がある。従って、有効レーザスポットは、潤滑油孔またはその複数の境界を実質的に直接加熱することなくこれを受容するために実質的に「U」形状(「V」形状などを含む)を与えられることができ、次に、潤滑油孔またはその複数の境界が有効レーザスポットによって直接加熱されることなく、潤滑油孔が離れることを可能とするために、反転されることができる。有効レーザスポットの形状の変化は、スキャンパターンの形状を変更することにより、及び/またはスキャンパターンの1つまたは複数の部分または複数のセグメントに割り当てられたパワー状態を変化させることによって、実現可能である。例えば、各々が複数のセグメントで形成された複数の線を備えるスキャンパターンを用いる場合に、「U」形状の有効レーザスポットは、1つまたは複数の線の中央部分において、複数のセグメントのうち1つまたは複数に割り当てられたパワー状態を変化させることによって、例えば、オフ状態を当該複数のセグメントに割り当てることによって、または当該複数のセグメントにレーザビームの低レベルのパワーに対応するパワー状態を割り当てることによって、実現可能である。
本発明の更なる態様は、クランクシャフトの軸頸の表面をレーザ硬化する方法に関し、軸頸は、硬化されるべき表面エリアを備え、表面エリアは、クランクシャフトの回転軸と平行な第1の方向及び軸頸の周方向に対応する第2の方向に延在し、表面エリアは、少なくとも1つの高感熱性サブエリア及び少なくとも1つの低感熱性サブエリアを備え、少なくとも1つの高感熱性サブエリアは、潤滑油孔隣接エリアを含み、方法は、
レーザ源からのレーザビームを表面エリアに投影する段階と、
硬化されるべき表面エリアの周方向セグメントを硬化させるべく、その後、レーザビームを表面エリアの周方向において複数の異なる部分に投影するために、周方向において、クランクシャフトの表面とレーザ源との間の相対移動を生じさせる段階と、
硬化されるべき表面エリアの硬化が完了するまで、周方向セグメントの第1の方向における拡張を増大させるために、レーザビームを第1の方向に変位させる段階とを備える。
方法は、潤滑油孔隣接エリアを含む高感熱性サブエリアに対応する場合に、当該エリアに対する過熱を回避するべく、潤滑油孔と隣接する低感熱性サブエリアより小さいエネルギーを適用するために、レーザビームをレーザ源とクランクシャフトの表面との間の相対移動と同期させることによって、エネルギーがクランクシャフトに適用される態様を適応させる段階を備える。
本発明のこの態様によれば、硬化は、最初に、表面エリアの1つの端部で、第1の方向において生じ、その後、表面エリア全体が硬化されるまで、硬化されるべき表面エリアの他の端部に向かって延在するように、表面エリアの硬化は実行される。この方法の利点は、硬化の端部では、既に硬化されたエリアとの重複が生じないことである。これによれば、既に硬化されたエリアの再加熱及び過剰な焼き戻しに関連する複数の問題のリスクが減少する。
本発明のいくつかの実施形態では、周方向において、クランクシャフトの表面とレーザ源との間で相対移動を生じさせる段階は、クランクシャフトを高速で、例えば3000rpmまたは6000rpmを超える速度で回転させる段階を含む。これにより、現在加熱を受けているのエリア内における温度の大きな変動を回避することが助長される。
本発明のいくつかの実施形態では、方法は、軸頸の周方向セグメントにおいて、複数の有効レーザスポットの各々で、複数のセクションまたは複数のセクタを、周方向において同時に加熱するために、1つより多くのレーザビームを表面エリアに対して同時に適用する段階を備える。例えば、2つのレーザビームは、軸頸の対向する側面から同時に照射することができ、つまり、2つのセクションまたはセクタを、軸頸の周方向または環状セグメントの各々180度まで加熱する。それにより、1つだけのレーザビームが、このようなセクションまたはセクタを1つだけ加熱するために用いられる場合と比べて、加熱された領域内における実質的な温度変動を防止するために、クランクシャフトの回転速度をより低くする必要がある。
本発明のいくつかの実施形態では、方法は、潤滑油孔の両方の側面で、第1の方向において表面エリアを加熱するためにエネルギーを適用する段階を備え、潤滑油孔が複数の側面のうちの第1の側面下を延在せず、複数の側面のうちの第2の側面下を延在するように、潤滑油孔は、傾斜した態様で内側に向かって延在し、方法は、複数の側面のうちの第2の側面より大きいエネルギーを複数の側面のうちの第1の側面に適用するを備える。それにより、上述されたように、エネルギー利用は最適化され、過熱リスクは最小化される。
本発明のいくつかの実施形態では、方法は、軸頸の周方向部分を繰り返し加熱するために、(レーザビーム及び/またはクランクシャフトを移動させる、例えば、クランクシャフトその長軸周りに回転させることによって)第1の速度で、軸頸の周方向における有効レーザスポットの移動を与える段階と、第1の方向において、第1の速度より低い第2の速度で、有効レーザスポットを移動させ、それにより、複数の新たな周方向部分を加熱する一方で、軸頸の硬化された周方向セグメントのサイズを徐々に増大させるべく、自己焼き入れを与えるために、複数の以前に加熱された周方向部分の冷却を可能とする段階とを備える。すなわち、周方向における、有効レーザスポットと軸頸の表面との間の高速の相対移動によって、軸頸の環状セグメントは、所望の硬化温度に加熱され、硬化を与えるために、温度の過剰な変動なく、当該温度で十分に長い時間保持されることができ、かつ、実質的に軸頸の表面全体に対する硬化が完了するまで第1の方向における移動に起因して、硬化されたセグメントが第1の方向に膨張する。
本発明のいくつかの実施形態では、有効レーザスポットは、中心から外された態様で、軸頸に投影される。これにより、レーザスポットを大きくすることが助長され、場合によっては、熱のより良い分布に役立つ。また、レーザスポットの先端境界及び末端境界では、レーザビームが異なる角度で表面に入射することに起因して、レーザスポットの先端境界は、末端境界より高いパワー密度を有する可能性があるため、このアプローチが役立つ可能性がある。本明細書で説明されるように、これにより、表面が所望の温度に達するために必要な加熱時間を短縮することができる。このアプローチは、例えば、実質的に正方形または矩形のレーザスポットを与える固定光学系との組み合わせで使用可能である。レーザビームを中央から外すことは、後方反射に起因する損傷または障害のリスクを減少させるという利点も伴う。
本発明の更なる態様は、ワークピース表面に対するレーザ硬化の方法に関し、ワークピースは、少なくとも1つの硬化されるべき表面エリアを備え、表面エリアは、少なくとも1つの高感熱性サブエリア及び少なくとも1つの低感熱性サブエリアを備え、方法は、
レーザスポットを表面エリアに生成するために、レーザ源からのレーザビームを当該エリアに投影する段階と、
ワークピースの表面とレーザ源との間で相対移動を生じさせ、それにより、レーザスポットが、その後、表面エリアの複数の異なる部分に投影されることを可能にする段階と、
2次元の等価なまたは仮想の有効レーザスポットを表面エリアに生成するために、相対移動の間、表面エリアの各部分にわたって、2次元でレーザビームを繰り返しスキャンする段階であって、有効レーザスポットは、エネルギー分布を有する段階とを備え、
高感熱性サブエリアの過熱を防止するために、エネルギー分布は、高感熱性サブエリアにおいて、低感熱性サブエリアと異なるように適合される。
本発明のいくつかの実施形態では、方法は、有効レーザスポット内で、レーザビームをスキャンパターンに沿ってスキャンする段階と、エネルギー分布を得るために、任意に、スキャンパターンに沿ってレーザビームをオン及びオフにすることによって、スキャンパターンに沿ってレーザビームのパワーを変更する段階とを備える。
本発明のいくつかの実施形態では、毎秒少なくとも300回、より好ましくは毎秒少なくとも600回、より好ましくは毎秒少なくとも1,000回、より好ましくは毎秒少なくとも5,000回、さらにより好ましくは毎秒少なくとも10,000回、レーザビームを複数の適用可能なパワー状態のうちの1つに選択的に設定するために、レーザスポットをスキャンパターンに沿ってスキャンする間に、レーザビームのパワーを選択的に適応させることによって、エネルギー分布は制御される。例えば、スキャンパターンは、複数のセグメントを備えることができ、複数のセグメントの各々は、それに割り当てられた複数の適用可能なパワー状態のうちの1つを有し、複数のセグメントのうちの少なくとも1つに割り当てられたパワー状態は、低感熱性サブエリアにおいて、高感熱性サブエリアと異なるように選択可能である。すなわち、複数のセグメントのうちの1つ、いくつかまたはそれより多くに割り当てられた複数のパワー状態は、例えば、複数の潤滑油孔の複数の境界に対する過熱または軸頸の複数の既に硬化された部分に対する過剰な再加熱等を回避するためのプロセスの間に、動的に変更可能である。
上述されたように、用語「パワー状態」は、レーザビームが、「オン」もしくは「オフ」または最大値及びゼロ(またはゼロにより近い)間のパワーレベルのような所定の平均パワーを有する状態を指す。表現「適用可能」は、複数のパワー状態は、用いられているレーザ装置で実現可能であるという事実を指す。表現「に設定される」は、現実の状態変化が毎秒多数生じなければならないことを示唆するものではなく、適切な場合に、例えば、制御システムによって与えられた複数の命令に従う場合はいつでも、レーザはパワー状態を変化させることが可能なように構成されることを示す。それにより、エネルギー分布のセグメント化または「ピクセル化」は、毎秒300、600、1000、5000または10000セグメントまたはピクセルで実現可能である。例えば、毎秒300セグメントは、6つのセグメントをスキャン周波数50Hzで有するスキャンパターンに対応可能である。上述されたように、複数の異なるパワー状態の変化が生じる場合に、レーザビームのパワーが前のパワー状態及び新たなパワー状態によって決定されたパワーと異なる複数の過渡期が存在し得る、例えば、レーザビームスキャンパターンに沿ってスキャンする間に、パワー曲線の傾きが存在する一方で、1つのセグメントから次への推移が生じるように、ビームパワーが増減し得る。
レーザが複数の異なるパワー状態の間で切り替える性能がより高いほど、所与のスキャン周波数に対して、より多数のセグメントまたはピクセルが、スキャンパターンを生成するために使用可能である。例えば、複数のパワーレベル間での切り替えを毎秒1000回の速度で可能とするレーザ源の場合に、スキャン周波数100Hzが、各々が所望のパワー状態を割り当て可能な10のセグメントを備えるスキャンパターンで使用可能であり、動作時に、複数のクランクシャフトの複数の潤滑油孔の複数の境界のような、複数の感熱性部分に対する過熱を防止するように適合され得る。
本発明のいくつかの実施形態では、方法は、有効レーザスポット内で、レーザビームに対して、高感熱性サブエリアにおいて、低感熱性サブエリアと比べて異なるスキャンパターンを用いる段階を備える。
本発明のいくつかの実施形態では、方法は、有効レーザスポットの少なくとも一部が、高感熱性サブエリアにおいて、低感熱性サブエリアと比べて異なるようにスキャン速度を適応させることによって、エネルギー分布を適応させる段階を備える。
本発明のいくつかの実施形態では、有効レーザスポットは、ワークピースの表面部分を硬化温度に加熱するために選択されたエネルギー分布及び密度を有する先端部分、加熱された表面部分の冷却を、焼き入れのために可能にするために選択されたエネルギー分布及び密度(例えば、極めて低エネルギー密度、例えばパワーがゼロ、またはパワーがゼロに近い)を有する中間部分、及びその焼き戻しを生成するべく、焼き入れされた部分を加熱するために選択されたエネルギー分布及び密度を有する末端部分を備える。概して、複数のクランクシャフトのような多くのワークピースは、その硬化に加えて、硬度を減少させ、延性を高め、脆弱性を減少させるために、焼き戻しを必要とする。焼き戻しのために、ワークピースは、概して、硬化のために用いられる温度より低い温度に加熱される。ワークピースが、レーザ処理を用いて硬化された場合に、焼き戻しは、炉または竈内で行うことができるが、硬化に用いられたものと同様のレーザ処理を、異なるエネルギー密度及び/または分布で適用して、その焼き戻しが行われることもできる。例えば、クランクシャフトの場合、焼き戻しは、硬化サイクルの後で焼き戻しサイクルを適用することによって行われる。例えば、軸頸の360度を硬化した後、有効レーザスポットは、今回はその焼き戻しのために、軸頸周りに、またはこれに沿って再度移動可能である。しかしながら、有効レーザスポットを用いることによって、同じサイクルまたは加工段階で硬化及び焼き戻しを与えることもでき、有効レーザスポットは、所望の硬化深さを得るために、ワークピースの表面を所望の硬化温度に加熱し、表面を当該温度で十分な時間維持するための先端部分、その焼き入れまたは自己焼き入れを生成するべく、加熱された部分の冷却を可能とするために、エネルギーまたはパワー密度が実質的に0W/cm2のような低エネルギー密度を有する中間部分、及び必要に応じて焼き戻しに必要な程度まで焼き入れされた部分を再加熱するためのエネルギー分布及び密度を有する末端部分を含む。このように、焼き入れ及び焼き戻しの両方を生成するために、例えば、クランクシャフトの軸頸の表面の場合に、クランクシャフトをその回転軸周りに一度回転させることによって、有効レーザスポットに処理されるべき表面を一度走査させることで十分たり得る。
本発明のいくつかの実施形態では、有効レーザスポットは、直線または湾曲した複数の線のような複数の線を備えるパターンに従って、レーザビームをワークピースにわたって繰り返しスキャンすることによって確立され、複数の線は、好ましくは実質的に平行であり、スキャンは、スキャン周波数で繰り返され、複数の線の各々は、複数のセグメントまたはピクセルを備え、方法は、レーザビームの出力パワーを、複数のセグメントのうちのいくつかの中で、複数のセグメントのうちの他のものと比べて異なるレベルに選択的に設定するために、所定のレーザビームパワー値を複数のセグメントの各々に割り当てる段階を備える。レーザビームパワーを複数のセグメントに割り当てる段階は、レーザビームが、複数のセグメントのうち選択された複数に対して「オン」でなければならず、複数のセグメントのうち他の複数に対して「オフ」でなければならないことを規定する段階を含むことができ、これは、スキャンの間にレーザのオン及びオフを切り替えることによって実現可能である。つまり、ピクセル化されたエネルギー分布が、容易に実現される。このアプローチは、容易に変動可能な所望のエネルギー分布を与えるために役立つ可能性がある一方で、有効レーザスポットは、例えば、ワークピースを軸周りに回転させることによって、加熱されるべき表面に沿って走査される。本発明のいくつかの実施形態では、このスキャン周波数は、少なくとも50Hz(レーザビームは、仮想レーザスポットを毎秒少なくとも50回完了させるためにスキャンされるように)、好ましくは少なくとも100Hzであり、複数の線は、少なくとも2つの線、好ましくは少なくとも3つの線、より好ましくは少なくとも4つの線、例えば5−10の線を備え、各線は、少なくとも3つのセグメント、好ましくは少なくとも5つのセグメント、より好ましくは少なくとも10のセグメント、例えば10−20のセグメントを備える。この種類の構成は、スキャンサイクルの間に、スキャンパターン内のスポットにおける実質的な温度変動を回避するために十分な詳細及び十分な周波数により、所望のエネルギー分布を確立するために適切たり得る。高速のオンオフ切り替えを可能とするファイバレーザのような複数のレーザの利用により、50Hzを超えるスキャン周波数のような複数の比較的高いスキャン周波数でも、多数のセグメントまたはピクセルを実現することが可能となる。各セグメントは、それに割り当てられたビームパワー状態を有することができ、ビームパワー状態は、セグメントまたはその部分の間、レーザビームの意図されたパワーを示し、複数のセグメントに割り当てられた複数のパワー状態は、硬化加工の間、例えば、複数の高感熱性サブエリアに対する過熱を回避するために、動的に変更可能である。すなわち、複数のセグメントに割り当てられた複数のパワー状態を適応させることによって、有効レーザスポットのエネルギー分布は適合可能である。.
上述された本発明の複数の異なる態様では、ワークピースの部分に沿って及び/またはわたってのレーザビームまたはレーザスポットのスキャンを含み、このスキャンは、レーザスポットが、複数のセグメントを備えるスキャンパターンに繰り返し従うように実行可能であり、2次元エネルギー分布に影響する少なくとも1つのパラメータ値は、複数のセグメントの各々と関連付けられ、例えば、レーザスポットがセグメントに沿って移動させられる度に、各セグメントに対応する動作を適応させるために用いられるために、制御システムのメモリに格納される。少なくとも1つのパラメータ値は、動作時に、少なくとも1つのパラメータ値が、複数のセグメントのうちの少なくとも1つに対して、有効レーザスポットが高感熱性サブエリアを加熱する場合に、低感熱性サブエリアを加熱する場合と異なるように、動的に適応され得る。例えば、所与のセグメントに対して、異なる複数のパラメータ値(または複数のパラメータ値の組み合わせ)は、複数の異なるメモリ位置に格納可能であり、加熱されているサブエリアに応じて、パラメータ値は、1つのメモリ位置または他のメモリ位置から取下げられることができる。しかしながら、これは例に過ぎず、他の複数の実装も、本発明の範囲である。セグメント化されたスキャンパターンの利用が見出されたことにより、クランクシャフトの特定の設計に適合されるエネルギー分布を容易に見出し、実装することが可能となった。例えば、クランクシャフトの潤滑油孔の複数の境界周りのエリアのような、ワークピースの複数の高感熱性部分に対応して、より小さいパワー/エネルギーを適用するために、2次元エネルギー分布に影響する1つまたは複数のパラメータを適応させることによって、エネルギー分布を容易に変更することができる。つまり、オペレータは、各セグメントに対応して、複数の異なる値を特定の複数のパラメータに割り当てることによって、複数の異なるエネルギー分布を定義することができ、クランクシャフトの軸頸の表面のようなワークピースの部分に対する硬化の間に、複数の異なるエネルギー分布の間で切り替えることによって、適切な硬化が実現可能である一方で、複数の感熱性部分に対する局部的な過熱を回避する。セグメント化されたスキャンパターンの利用及び複数のパラメータ値をセグメント単位で割り当てることにより、適切な複数の値を容易に、例えば、少数のトライアルアンドエラーテストで、見出すことが可能となる。例えば、潤滑油孔に対応するために、特定の複数のセグメントに割り当てられた複数の値は、有効レーザスポットがワークピースの対応する複数のサブエリアに到達した場合に、複数の潤滑油孔に隣接して適用されるエネルギーを減少させるために選択可能である。
複数のパラメータ値は、スキャン速度、レーザスポットのサイズ、レーザビームのパワー、レーザビーム内のパワー分布、対応するセグメントの長さ及び対応するセグメントの方向のうちの少なくとも1つを示すことができる。本発明の多くの実施形態では、レーザビームのパワー及び/またはスキャン速度は、好ましい複数のパラメータである可能性がある。パラメータの選択は、レーザビームが、オン/オフのような複数の異なるパワーレベル間で、または複数の異なる中間パワーレベル間で、切り替え可能な速度のような因子に、及び、スキャンシステムが、セグメント単位によるセグメントに対するスキャン速度の急速な制御された変化を可能とする程度に、依存し得る。出力パワーの急速な制御された変化を可能とする複数のレーザが用いられる場合に、レーザビームのパワーは、エネルギー分布を決定する複数のパラメータのうちの少なくとも1つとして、有利に利用可能である。
方法は、各セグメントに対して、対応する少なくとも1つのパラメータ値をメモリに格納する段階を備えることができ、少なくとも1つのセグメントに対して、少なくとも2つの異なる値がメモリに格納され、第1の値は、低感熱性サブエリアを加熱する場合に用いられ、第2の値は、高感熱性サブエリアを加熱する場合に適用される。つまり、複数の異なる2次元エネルギー分布に対応する複数のパラメータ値は、複数の異なるメモリ位置に格納可能であり、高感熱性または低感熱性サブエリアが加熱されているか否かに応じて、制御システムは、1つのメモリ位置などの複数のパラメータ値を用いる。つまり、システム及び方法を新たな種類のクランクシャフトに適応させる場合に、オペレータは、スキャンパターン及び複数のパラメータ値を設計する、例えば、クランクシャフトの軸頸に対する過熱の主要部分の間に用いられる第1のエネルギー分布、有効レーザスポットが潤滑油孔を有するサブエリアに近づく場合に用いられる第2のエネルギー分布、有効レーザスポットが潤滑油孔を有するサブエリアを離れる場合に 用いられる第3のエネルギー分布を設計することによって、複数の異なるエネルギー分布のセットを設計することができる。複数の2次元エネルギー分布パターンは、つまり、軸頸の幅及び潤滑油孔のサイズ及び/または位置を考慮するように容易に適合可能である。
スキャンは、例えば、毎秒少なくとも300セグメント、好ましくは毎秒少なくとも600セグメント、より好ましくは毎秒少なくとも1,000セグメント、より好ましくは毎秒少なくとも5,000セグメント、さらにより好ましくは毎秒少なくとも10,000セグメントの平均速度で、実行可能である。高スキャン速度が、十分に多数のセグメントが2次元エネルギー分布に柔軟性を与えることを可能としつつ、一方で、加熱されているエリアにおいて、各スキャンサイクル間の実質的な温度変動を回避するために、スキャンパターンを高周波数で繰り返すために好ましい可能性がある。例えば、毎秒300セグメントのスキャン速度では、6つのセグメントまたはピクセルを有するスキャンパターンは、周波数50Hzで繰り返されることができる。多数のセグメントまたはピクセルは、エネルギー分布をできる限り硬化されている表面の複数の特徴に適応させる可能性を増大させるために役立つ可能性があり、一方で、スキャンパターンの繰り返しの高周波数は、各スキャンサイクル間での、加熱されているエリア内における望ましくない温度の揺らぎのリスクを減少させる。
上述された本発明の複数の態様のいくつかの実施形態では、方法は、有効レーザスポットが、周方向において、有効レーザスポットを軸頸周りに変位させることによって硬化された、クランクシャフトの軸頸の以前に硬化された部分のような、表面エリアの以前に硬化された部分に達した場合に、有効レーザスポットの先端部分において、エネルギー密度を減少させる段階を備える。それにより、軸頸の既に加熱及び硬化された部分に対する過度の加熱が防止され得る。本発明のいくつかの実施形態では、有効レーザスポットの先端境界において、パワー/エネルギー密度は、単に減少するが、硬化された部分を、その焼き戻し目的で特定の程度に再加熱するために、有効レーザスポットは、例えば、周方向において、軸頸周りに移動し続ける。本発明の複数の他の実施形態では、方法は、有効レーザスポットが表面エリアの以前に硬化された部分、例えば、周方向において、有効レーザスポットを軸頸周りに変位させることによって硬化された、クランクシャフトの軸頸の以前に硬化された部分に到達した場合に、有効レーザスポットの先端部分において、有効レーザスポットの移動を阻害する段階を備え、一方で、有効レーザスポットの末端部分は、周方向に移動し続けることにより、有効レーザスポットが消滅するまで、有効レーザスポットの周方向におけるサイズを徐々に減少させる。すなわち、有効レーザスポットは、以前に硬化された部分に到達した場合に、実質的に停止し、すなわち、例えば、先端境界は停止し、末端境界は先端境界に追いついて、硬化サイクルを完了させる。
両方の場合において、方法の実装は、有効レーザスポットが、スキャンパターンの複数のセグメントのような複数のセグメントから構成される場合に、実質的に容易となり得る。その先端境界で開始する有効レーザスポットの削減または取り消しは、例えば、ビームのパワーを減少させ、及び/またはスキャン速度を向上させることによって、及び/または単に複数のセグメントを取り消しまたは再構成することによって、エネルギー密度を複数のセグメントにおいて適応させることによって実現可能である。つまり、有効レーザスポットを生成するために、レーザビームの2次元スキャンの利用との組み合わせで、セグメント化のアプローチは、柔軟性を与え、当業者が、例えば、複数のクランクシャフトの複数の軸頸に対する周方向におけるレーザ硬化の場合に、有効レーザスポットが、軌跡の中で以前に硬化された部分に到達することの取り扱いを容易にする。
本発明の更なる態様は、中炭素鋼のワークピース、例えば、クランクシャフトのようなワークピース表面に対するレーザ硬化の方法に関する。「表面」という記載は、表面全体 が硬化されるべきであることを意味するものではない。例えば、クランクシャフトの場合、表面の複数の部分、例えば、1つまたは複数の軸頸及び/または複数の軸頸と隣接する複数の壁の複数の表面が硬化されることで十分となり得る。
ワークピースは、少なくとも1つの硬化されるべき表面エリア(例えば、クランクシャフトの1つまたは複数の主軸頸及び/または1つまたは複数のロッド軸頸、及び/またはクランクシャフトの複数の壁面の表面)を備え、表面エリアは、少なくとも1つの高感熱性サブエリア(例えば、クランクシャフトの場合、潤滑油孔の直ぐ周りのエリア及び/またはアンダーカットフィレットの境界に近いエリア。ここでは、材料が存在しないことが、ヒートシンク性能を減少させ、過熱リスクの増大を示唆する。また、複数の尖った端部は、軸頸の残りの滑らかで規則的な表面より、過熱によって損傷を受ける可能性が高い)と、少なくとも1つの低感熱性サブエリア(例えば、クランクシャフトの場合、潤滑油孔及び/またはアンダーカットフィレットからより離れた軸頸表面の部分であり、ここで、複数の境界及び複数の隙間が存在しないことは、過熱リスクの減少を示唆する)とを備える。
方法は、レーザスポットを当該エリアに生成するために、レーザ源からのレーザビームを表面エリアに投影する段階と、
ワークピースの表面とレーザ源との間の相対移動を(例えば、ワークピースをX軸周りに回転させ、及び/またはワークピース及び/またはレーザ源を、X軸に直交するY及び/またはZ軸に沿って変位させることによって)生じさせ、それにより、レーザスポットが、その後、表面エリアの複数の異なる部分に投影されることを可能にする段階(すなわち、レーザ源がスキャン手段との組み合わせで、レーザスポットを表面エリアの特定の部分またはセクションに向けることができる各時点における、例えば、X、Y及びZ軸に従ったワークピースとレーザ源との間の相対位置に応じて、かつ、例えば、スキャン手段が、レーザスポットの厚さを有する一連の当該エリアに、または例えば、エリアの実質的に矩形のセクションに、1次元または2次元移動を与えるか否かに応じて)と、
相対移動の間、当該エリアの各部分にわたって、レーザビームをスキャンする段階とを備える。スキャンは、1次元のみで、例えば、ワークピースの回転軸と平行に、及び/またはレーザ源の位置と関連するワークピースの表面の移動方向と垂直に、または、2次元で実行可能であり、つまり、矩形パターン、楕円形パターン、三角形パターン、台形パターン、六角形パターン、八角形パターン等のような経路またはパターンに従い、または、例えば、当該部分に沿って及び/またはこれにわたって、蛇行したまたは三角形のスキャンを前後に実行することによって、または、実質的に平行な複数の線のような複数の線に沿ってレーザビームをスキャンすることによって、このようなパターンによって輪郭を描かれたエリアを埋める。用語「レーザビームをスキャンする」は、1つまたは複数のスキャンミラーのような、なんらかの種類の光学式スキャン手段などを用いて、レーザビーム自体が変位することを意味するものと解釈されなければならない。
スキャンは、レーザスポットが表面エリアのスキャンパターンまたは経路に従うように実行される。
本発明のこの態様によれば、(i)スキャン速度、及び/または (ii)レーザビームパワー、及び/または (iii)レーザスポットサイズ のうちの少なくとも1つが、スキャンパターンの1つの部分において、スキャンパターンの他の部分と異なることによって、高感熱性サブエリアにおいてワークピースの過熱を回避する(またはそのリスクを減少させる)。
つまり、高感熱性エリアにおいて、低感熱性エリアと比べて、表面エリアの単位当たりにおける、ワークピースに伝導されるエネルギー量を減少させるために、高感熱性サブエリアでは、低感熱性サブエリアより、スキャン速度がより高い可能性があり、及び/または、レーザビームパワーが削減される可能性があり、及び/または、レーザスポットエリアがより大きい可能性があり、これは、例えば、フォーカスレンズを移動させることによって実現可能なことである。
本発明のいくつかの実施形態では、スキャンパターンは、複数のセグメントを備え、複数のセグメントの各々に対して、(i)スキャン速度、及び/または (ii)レーザビームパワー、及び/または (iii)レーザスポットサイズが割り当てられ、スキャン速度、レーザビームパワー及びレーザスポットサイズのうちの少なくとも1つは、複数のセグメントのうちの少なくとも1つに対して、複数のセグメントのうち少なくとも他のものと比べて、異なるように選択される。
複数のセグメントは、直線または湾曲であってもよく、多角形またはあらゆる他の幾何学図形を形成可能である。これらは、スキャン中にレーザスポットが繰り返し従う閉曲線、またはレーザスポットが両方の方向に繰り返し従うことができる開曲線を形成することができる。複数のセグメントは、短くてもよく、レーザビームが特定の時間長にわたって静止するために選択可能な複数のポイントを含むことさえできる。つまり、スキャン中に表面へのエネルギー伝導の影響を有するパラメータの少なくとも1つの値を各セグメントに割り当てることによって、適切な熱伝導の分布及び加熱が、実現可能となる。例えば、コンピュータによって制御されるスキャンシステムでは、このアプローチにより、オペレータは、スキャンパターンに沿って、複数の異なるエネルギー伝導プロファイルを容易に試し、トライアルアンドエラーによって、具体的なクランクシャフトのような具体的な製品に対し、適切な1つに到達することができる。また、このアプローチは、ワークピースに対する適度な加熱を与えるものに到達するまで、1つまたは複数のセグメントに対するスキャン速度、レーザビームパワー及び/またはレーザスポットサイズを変更し、スキャンパターンの幾何学的レイアウトを変更してさえも、複数の異なるエネルギー伝導プロファイルで実験可能なように、コンピュータ化されたシミュレーションシステムで容易に実装可能である。スキャンパターン(例えば、複数のセグメントの長さを調整することによって)、及び/またはスキャン速度、及び/またはレーザビームパワー及び/またはレーザスポットサイズのバリエーションを可能とするコンピュータ入力手段が、提供可能である。勿論、追加的な複数のパラメータも、組み込み可能である。
例えば、スキャン速度は、高感熱性サブエリアにより近いセグメントにおいて、感熱性サブエリアからさらに離れた2つの隣接セグメントより高くなるように選択可能である。例えば、クランクシャフトの場合、スキャン速度は、加工のなんらかの段階で潤滑油孔を実際に横切る1つまたは2つのセグメントに対して、複数の隣接セグメントより高くなるように選択可能である。複数の異なるセグメントに対して、レーザスポットが従う経路に沿って異なるスキャン速度を用いることは、市販のスキャン手段で容易に実装されるという利点を有する。
本発明のいくつかの実施形態では、レーザビームパワーは、高感熱性サブエリアにより近いセグメントにおいて、感熱性サブエリアからさらに離れた2つの隣接セグメントより低くなるように選択される。例えば、クランクシャフトの場合、加工のなんらかの段階で、複数の潤滑油孔を実際に横切る、すなわち、複数の潤滑油孔によって横切られる1つまたは2つのセグメントにおいて、複数の隣接セグメントより、スキャン速度は、より高くなるように選択可能であり、及び/または、レーザビームパワーは、より低くなるように選択可能である。
本発明のいくつかの実施形態では、レーザスポットは、高感熱性サブエリアにより近いセグメントにおいて、感熱性サブエリアからさらに離れた2つの隣接セグメントよりより大きいエリアを有するように選択される。つまり、レーザビーム経路の特定の部分の間、「焦点を外す」ことによって、表面エリアの単位当たりにおけるパワーの集中は小さくなり、複数のクランクシャフトの複数の潤滑油孔に対応するもののような複数の小さい感熱性エリアに対する過熱を回避するために役立つ可能性がある。
本発明のこの態様のいくつかの実施形態では、複数のセグメントのうち1つまたは複数に割り当てられた (i)スキャン速度、及び/または (ii)レーザビームパワー、及び/または (iii)レーザスポットサイズ が少なくとも一度変更される間に、ワークピースの表面は、例えば、パターンまたはセグメントが高感熱性サブエリアに到達する、またはこれを離れる度に、レーザ源に対して移動させられる。つまり、例えば、パターンの1つまたは複数のセグメントに対応するスキャン速度、及び/またはレーザビームパワー、及び/またはレーザスポットサイズは、例えば、複数のセグメントのうち1つまたは複数が、高感熱性サブエリア、例えばクランクシャフトの複数の潤滑油孔またはその近くに到達した場合に、かつ、当該セグメントまたは複数のセグメントが高感熱性サブエリアを離れる場合にも、加工中に変更可能である。このように、加熱処理は、ワークピースの全てのエリアに対して、これらの感熱性に従って容易にかつ合理的に最適化可能である。
本発明のこの態様は、複数のセグメントの各々に対して、(i)少なくとも1つのスキャン速度、及び/または (ii)少なくとも1つのレーザビームパワー、及び/または (iii)少なくとも1つのレーザスポットサイズ割り当てることによって、レーザビームを制御するために、パーソナルコンピュータ、PLCなどのような電子制御手段をプログラミングする段階をさらに備えることができる。
本発明のいくつかの実施形態では、スキャンパターンは、(例えば、複数のセグメントによって画定された)幾何学的形状を有し、スキャンパターンの幾何学的形状が少なくとも一度変更される間に、ワークピースの表面は、レーザ源に対して移動させられる。例えば、ワークピースの1回転中のような加工の1つの段階では、例えば、潤滑油孔が表面エリアのスキャンされた部分に近づく場合に、1つまたは複数のセグメントは、高感熱性サブエリアに対する過熱を回避するために、単に省略可能であり、または、スキャンパターンは、1つまたは複数のエリアにおけるパワー密度を減少させるために、変更可能である。
本発明の更なる態様は、ワークピース表面に対するレーザ硬化の方法に関し(中炭素鋼のワークピース、例えば、クランクシャフトのようなもの。「表面」という記載は、表面全体が硬化されるべきであることをを意味するものではない。例えば、クランクシャフトの場合、表面の複数の部分、例えば、1つまたは複数の軸頸及び/または複数の軸頸と隣接する複数の壁の複数の表面が硬化されれば十分たり得る)、ワークピースは、少なくとも1つの硬化されるべき表面エリア(例えば、クランクシャフトの1つまたは複数の主軸頸及び/または1つまたは複数のロッド軸頸表面、及び/またはクランクシャフトの複数の壁面)を備える。表面エリアは、少なくとも1つの高感熱性サブエリア(例えば、クランクシャフトの場合、潤滑油孔の直ぐ周りのエリア、及び/またはアンダーカットフィレットの境界に近いエリア。ここでは、材料が存在しないことが、ヒートシンク性能を減少させ、過熱リスクの増大を示唆する。また、複数の尖った端部は、軸頸の残りの滑らかで規則的な表面より、過熱によって損傷を受ける可能性が高い)と、少なくとも1つの低感熱性サブエリア(例えば、クランクシャフトの場合、潤滑油孔及び/またはアンダーカットフィレットからより離れた軸頸表面の部分であり、ここで、複数の境界及び複数の隙間が存在しないことは、過熱リスクの減少を示唆する)とを備える。方法は、レーザスポットを表面エリアに生成するために、レーザ源からのレーザビームを表面エリアに投影する段階と、ワークピースの表面とレーザ源との間の相対移動を(例えば、ワークピースをX軸周りに回転させること、及び/またはワークピース及び/またはレーザ源を、X軸に直交するY及び/またはZ軸に沿って変位させることによって)生じさせ、それにより、レーザスポットが、その後、表面エリアの複数の異なる部分に投影されることを可能にする段階(すなわち、レーザ源がスキャン手段との組み合わせで、レーザスポットを表面エリアの特定の部分またはセクションに向けることができる各時点における、例えば、X、Y及びZ軸に従ったワークピースとレーザ源との間の相対位置に応じて、かつ、例えば、スキャン手段が、レーザスポットの直径、長さに対応する厚さまたは幅を有する一連の当該エリアに、または例えば、エリアの実質的に矩形のセクションに、1次元または2次元移動を与えるか否かに応じて)とを備える。
相対移動の間、レーザビームを表面エリアの各部分にわたってスキャンする段階(スキャンは、1次元のみで、例えば、ワークピースの回転軸と平行に、及び/またはレーザ源の位置と関連するワークピースの表面の移動方向と垂直に、または、2次元で実行可能であり、つまり、矩形パターン、楕円形パターン、三角形パターン、台形パターン、六角形パターン、八角形パターン等のようなパターンに従い、または、例えば、当該エリアに沿って及び/またはこれにわたって、蛇行したまたは三角形のスキャンを前後に実行することによって、または、複数の平行な線のような複数の線を追跡することによって、このようなパターンによって輪郭を描かれたエリアを埋める。用語「レーザビームをスキャンする」は、1つまたは複数のスキャンミラーのような、なんらかの種類の光学式スキャン手段を用いて、レーザビーム自体が変位することを意味するものと解釈されなければならない)とを備え、
スキャンは、レーザスポットが当該エリアにおいてスキャンパターンまたは経路に従うように実行される。
本発明のこの態様によれば、スキャンパターンの幾何学的構成は、相対移動中に表面エリアとレーザ源との間で少なくとも一度変更される。例えば、スキャンパターンは、複数のセグメントを備えることができ、1つまたは複数のセグメントは、高感熱性サブエリアに対する過熱を回避するために、単に省略可能であり、または、パターンは、1つまたは複数のエリアにおけるパワー密度を減少させるために、変更可能である。つまり、例えば、クランクシャフトの場合、レーザ源とワークピースの表面との間の相対移動の間、1つまたは複数の潤滑油孔がスキャンされたエリアに近づく場合に、スキャンパターンは、例えば、経路のエネルギー密度を減少させることによって、すなわち、複数のセグメントを分離することによって、及び/または1つまたは複数のセグメントを省略することによって、適合可能である。例えば、1つのセグメントは、省略可能である。元の閉曲線スキャンパターンを開曲線スキャンパターンに変化させることにより、レーザスポットは、開曲線を前後に追跡可能である。省略されたセグメントが潤滑油孔の位置に対応する場合、これは、潤滑油孔の複数の境界に対する加熱に寄与しない。
本発明の更なる態様は、ワークピース(例えば、中炭素鋼のような鉄材料のワークピース、例えば、クランクシャフト)の表面に対するレーザ硬化の方法に関し、ワークピースは、少なくとも1つの硬化されるべき表面エリア(例えば、クランクシャフトの場合、クランクシャフトの1つまたは複数の主軸頸及び/または1つまたは複数のロッド軸頸の表面、及び/またはクランクシャフトの複数の壁面)を備え、表面エリアは、少なくとも1つの高感熱性サブエリア(例えば、クランクシャフトの場合、潤滑油孔の直ぐ周りのエリア、及び/またはアンダーカットフィレットの境界に近いエリア。ここでは、材料が存在しないことが、ヒートシンク性能を減少させ、過熱リスクの増大を示唆する。また、複数の尖った端部は、軸頸の残りの滑らかで規則的な表面より、過熱によって損傷を受ける可能性が高い)と、少なくとも1つの低感熱性サブエリア(例えば、潤滑油孔及び/またはアンダーカットフィレットからより離れた軸頸表面の部分であり、ここで、複数の境界及び複数の隙間が存在しないことは、過熱リスクの減少を示唆する)とを備える。
方法は、レーザ源からのレーザビームを表面エリアに投影し、これによって、レーザスポットを表面エリアに生成する段階と、ワークピースの表面とレーザ源との間の相対移動を(例えば、ワークピースX軸周りに回転させること、及び/または、ワークピース及び/またはレーザ源を、X軸に直交するY及び/またはZ軸に沿って変位させることによって)生じさせ、それにより、レーザスポットが、その後、表面エリアの複数の異なる部分に投影されることを可能にする段階(すなわち、レーザ源がスキャン手段との組み合わせで、レーザスポットを表面エリアの特定の部分またはセクションに向けることができる各時点における、例えば、X、Y及びZ軸に従ったワークピースとレーザ源との間の相対位置に応じて、かつ、例えば、スキャン手段が、レーザスポットの直径、長さに対応する厚さまたは幅を有する一連の当該エリアに、または例えば、エリアの実質的に矩形のセクションに、1次元または2次元移動を与えるか否かに応じて)と、相対移動の間、当該エリアの各部分にわたってレーザビームをスキャンする段階(スキャンは、1次元のみで、例えば、ワークピースの回転軸と平行に、及び/またはレーザ源の位置と関連するワークピースの表面の移動方向と垂直に、または、2次元で実行可能であり、つまり、矩形パターン、楕円形パターン、三角形パターン、台形パターン等のようなパターンに従い、または、例えば、当該エリアに沿って及び/またはこれにわたって、蛇行したまたは三角形のスキャンを前後に実行することによって、または、レーザビームを複数の平行な線のような複数の線を備えるパターンに従わせることによって、このようなパターンによって輪郭を描かれたエリアを埋める。用語「レーザビームをスキャンする」は、1つまたは複数のスキャンミラーのような、なんらかの種類の光学式スキャン手段を用いて、レーザビーム自体が変位することを意味するものと解釈されなければならない。XYZスキャナの場合、スポットがX及びY方向に移動可能であることに加えて、なんらかの種類の駆動手段によってZ方向に変位可能なフォーカスレンズが提供され、それにより、レーザスポットのサイズの動的適応が可能となる。それにより、スポットの位置及びそのサイズの両方が、硬化加工を最適化するために、制御及び適合可能となる。)と、レーザビームを変調する段階とを備える。
本発明のこの態様によれば、レーザビームは、ワークピースの各部分に対する過熱を防止するために、レーザスポットが高感熱性サブエリアにある場合に、それが低感熱性サブエリアにある場合と異なるように変調される。より詳細には、
A.レーザビームのパワーは、変調され(例えば、レーザスポットが高感熱性サブエリアにある場合に、レーザスポットが低感熱性サブエリアにある場合よりパワーが低くなるように。パワーを変調する段階は、パワーを一時的にゼロまたはゼロ付近に減少させる段階をも含む。)、及び/または
B.レーザビームのスキャン速度は、変調され(例えば、レーザスポットが高感熱性サブエリアにある場合に、レーザスポットが低感熱性サブエリアにある場合より、レーザスポットが、ワークピースの表面を高速で移動するように。スキャン速度を変調する段階は、レーザビームの移動を一時的に停止させる段階をも含む。)、及び/または
C.レーザスポットが高感熱性サブエリアに対応する場合に、低感熱性サブエリアに対応する場合とは異なるスキャンパターンに従うように、レーザビームのスキャンパターンは変調され(つまり、高感熱性サブエリアに対して、例えば、クランクシャフトの複数の潤滑油孔または複数のアンダーカットフィレットの、例えば複数の境界における過熱リスクを減少させるスキャンパターンが選択可能である)、及び/または
D.レーザスポットサイズが高感熱性サブエリアに対応する場合に、低感熱性サブエリアに対応する場合とは異なる(例えば、より大きい)ように、レーザビームのレーザスポットサイズは変調される(つまり、高感熱性サブエリアに対して、例えば、クランクシャフトの複数の潤滑油孔または複数のアンダーカットフィレットの複数の境界における加熱を減少させるスポットサイズが、使用可能である。例えば、レーザビームの焦点を外すことによってスポットサイズを増大させることで、レーザスポットの表面エリアの単位当たりパワー量が減少する)。
つまり、例えば、本発明のこれらの態様の全てにおいて、かつ、軸受複数のクランクシャフト表面、すなわち、主軸頸及び複数のロッド軸頸の複数の表面に対する硬化の場合に、レーザビームは、複数の軸頸のうちの1つにフォーカス可能であり、ビームは、次に、軸頸にわたって、及び/または軸頸の部分にわたって、スキャンされ得る。一方で、レーザ光源とクランクシャフトの表面との間の相対移動によって、クランクシャフトの周全体が、スキャンされ得る。ここで、例えば、軸頸幅のオーダの幅を有するレーザスポットのような大きいサイズの正方形または矩形のレーザスポットを生成するために光学式手段を用いる代わりに、次に軸頸にわたってスキャンされるより小さいスポットが、使用可能である。このように、スキャン速度、パワー、スキャンパターン及び/またはレーザスポットサイズに関するビームの変調により、加熱処理は、表面の複数の異なる部分の複数の特殊性、例えば、クランクシャフトの場合、複数の潤滑油孔及び複数のフィレットのような複数の領域の感熱性に適合可能である。つまり、単に大きいレーザスポットを表面に適用し、表面をレーザ源に対して移動させる、例えば、ワークピースを回転させる(ドイツ特許公報第10 2005 005 141B3号によって示唆されていると見られる)ことによって、表面の全ての部分を単に同様に扱う代わりに、全ての部分に対する十分な加熱を得る一方で、特定の複数の部分に対する過熱を回避するべく、表面の複数の異なる部分が異なる量のエネルギーを受けるように、より小さいスポットが使用可能であり、スキャン及び変調が実行可能である。ビームを変調することによって、表面の複数の異なる部分は、異なるように処理され得る。例えば、スキャンパターンは、複数の潤滑油孔の複数の境界に対する過熱を防止するために、複数の潤滑油孔に近いエリアにおいて変更可能である。また、あるいは代案として、過熱の発生を防止するために、焦点を外すまたはレーザビームの表面に対する入射角度を適応させることによって、ビーム強度は削減可能であり、及び/または速度は増大可能であり、及び/またはレーザスポットのサイズは増大可能である。つまり、硬化されるべき表面エリア全体を均質に 加熱する代わりに、複数の潤滑油孔周りの複数のエリア及び/または複数のアンダーカットフィレット付近の複数のエリアののような複数のエリアにおいて、過熱リスクを減少させることに注意を払うことができる。これらの複数のエリアでは、材料が存在しないことにより、加熱された表面から離れて、熱の変動が減少し、これは過熱リスクが実質的に増大したことを示唆する。また、軸頸において、これらの複数のエリアの複数の尖った端部では、他の複数の部分の滑らかな面より過熱によって損傷を受ける可能性が高い。
つまり、これらの複数のパラメータのうち1つまたは複数を変更することによって、過熱リスクは削減可能である。
上述された本発明の複数の態様のいずれかを用いる場合、かつ、特に、レーザビームを1または2次元でスキャンすることによって、等価なまたは仮想の有効レーザスポットを生成する場合に、当業者 は、具体的なクランクシャフトの各設計に適切な複数の変調技術を決定するために、複数のコンピュータシミュレーション及び/または実際の複数のトライアルアンドエラーテストを用いることができる。システムを新たな種類のクランクシャフトに適応させることは、つまり、例えば、新たな複数のスキャン速度プロファイル、複数のレーザ光強度プロファイル、複数のスキャンパターン及び/または複数のスポットサイズを導入すること、例えば、これらの複数のパラメータの複数の異なる値をスキャンパターンの複数の異なるセグメントに割り当てることによって、ソフトウェアを変更することのみを必要とする。これによって、適切なパフォーマンスを実現するために、複数のトライアルアンドエラーシミュレーション中に、かつ、実生活での動作中にも(例えば、パイロメータならびに関連ソフトウェア及び適切なフィードバックに基づく制御を用いて)、複数のトライアルアンドエラーシミュレーションを容易に実行し、スキャンパターン及び関連する複数のパラメータを動的に変更することができる。実際、1つの種類のクランクシャフトに対して選択されたビーム変調技術またはエネルギー分布アプローチは、例えば、複数の潤滑油孔の寸法における複数の変化及び位置における複数の変化が考慮されることによって、他の種類のクランクシャフトに容易に適合可能である場合が多い。つまり、この技術は、誘導による加熱に基づくものよりはるかに柔軟である。本発明の複数の実施形態を用いることによって、適応は、基本的に、ハードウェアではなく、ソフトウェアの適応に属し得る。
例えば、変調の複数の代案A、B、C及びDのいずれも、単独で使用可能であり、または、Aは、BまたはCと共に使用可能であり、またはBは、Cと共に使用可能であり、または、A及びB及びCは、共に使用可能であり、かつ、Dは、任意に、上述の複数の組み合わせのいずれかと共に使用可能である。つまり、上述された本発明の複数の異なる態様は、ワークピースに対するレーザ加熱を複数の異なるワークピースの設計に適応させるために、極めて柔軟なプラットフォームを与え、ハードウェアを適応させる必要を実質的に減少させ。これは、複数のクランクシャフトのような複数のワークピースの誘導加熱に対して、さらに重要な利点を示唆する。例えば、選択肢A、B、C及びDに対する選択は、実用的な複数の考慮、例えば、異なる複数の種類のレーザ及びスキャンシステムに関するコスト、スキャン速度及び/またはレーザビームパワー強度を変化させる性能、複数のスキャンパターンを変化させる性能、例えば、単軸または双軸のいずれのスキャンシステムが用いられるかに応じて、等に基づいてなされることができる。
この変調アプローチは、複数の潤滑油孔及び複数のフィレットならびに複数のアンダーカットにおける加熱を防止するために有用であるのみならず、複数のワークピースの場合、複数のクランクシャフトの軸頸の周のような周全体のいずれが硬化されるべきかに関して役立つ。周のほぼ360度全体が一度加熱処理を受けると、レーザビームは、既に硬化された、及び実質的に再度加熱されてはならないエリアに再度近づく。レーザビームを適切に変調することによって(速度、スキャンパターン、パワー及び/またはスポットサイズに関して、及び/または仮想のまたは等価なレーザスポットのような有効レーザスポット内におけるエネルギー分布を適応させることによって)、適度な加熱は、周の最初に加熱された部分と最後に加熱された部分との間のこの境界領域においても実現可能である。
本発明の更なる態様は、ワークピース(例えば、中炭素鋼のような鉄材料のワークピース、例えば、クランクシャフト)表面に対するレーザ硬化の方法に関し、ワークピースは、少なくとも1つの硬化されるべき表面エリア(例えば、クランクシャフトの1つまたは複数の主軸頸及び/または1つまたは複数のロッド軸頸の表面)を備える。
方法は、レーザ源からのレーザビームを表面エリアに投影し、これによって、レーザスポットを表面エリアに生成する段階と、ワークピースの表面とレーザ源との間の相対移動を(例えば、ワークピースX軸周りに回転させること、及び/または、ワークピース及び/またはレーザ源を、X軸に直交するY及び/またはZ軸に沿って変位させることによって)生じさせ、それにより、レーザスポットが、その後、表面エリアの複数の異なる部分に投影されることを可能にする段階(すなわち、レーザ源がスキャン手段との組み合わせで、レーザスポットを表面エリアの部分またはセクションに向けることができる各時点における、例えば、X、Y及びZ軸に従ったワークピースとレーザ源との間の相対位置に応じて、かつ、例えば、スキャン手段が、レーザスポットの直径、長さまたは幅に対応する厚さを有する一連の当該エリアに、または例えば、エリアの実質的に矩形のセクションに、1次元または2次元移動を与えるか否かに応じて)と、相対移動の間、当該エリアの各部分にわたってレーザビームをスキャンする段階(スキャンは、1次元のみで、例えば、ワークピースの回転軸と平行に、または、2次元で実行可能であり、つまり、矩形パターン、楕円形パターン、三角形パターン、台形パターン等のようなパターンに従い、または、このようなパターンの複数の境界内において、例えば、蛇行した態様でレーザビームを移動させることによって、このようなパターンを埋める。用語「レーザビームをスキャンする」は、1つまたは複数のスキャンミラーのような、なんらかの種類の光学式スキャン手段を用いて、レーザビーム自体が変位することを意味するものと解釈されなければならない。)とを備え、レーザビームによって走査されるエリアに入るワークピースの表面の部分が、最初により高い平均パワーでレーザ照射を受け、その後、より低い平均パワーでレーザ照射を受けるように加熱が実行される。これは、レーザスポットが、エリアのユニット当たり、末端部分より先端部分により多くの時間留まるように、より高いスキャン密度を有する先端部分と、より低いスキャン密度を有する末端部分とを有するスキャンパターンを与えることによって実現可能であり、これにより、処理されるべき表面部分が最初に先端部分に入り、その後末端部分に入る。平均パワーという用語は、スキャンサイクル全体の間における表面エリア当たりパワーの平均量として理解されるべきである。この目標を達成する他の方法は、レーザビームが90度より小さい角度で表面に作用するように、少なくとも部分的に中心から外された態様で、レーザビームを投影することによる。レーザビームを中央から外すことは、後方反射に起因する損傷または障害のリスクを減少させるという利点をさらに伴う。
本発明の更なる態様は、(クランクシャフトの主軸頸またはロッド軸頸の表面のような)実質的に円形の断面を有するワークピース(例えば、中炭素鋼のような鉄材料のワークピース、例えば、クランクシャフト)の部分の表面をレーザ硬化する方法に関する。
方法は、レーザ源からのレーザビームを表面に投影し、これにより、レーザスポットを表面に生成する段階と、ワークピースの表面とレーザ源との間で相対移動を生じさせ(例えば、ワークピースX軸周りに回転させること、及び/または、ワークピース及び/またはレーザ源を、X軸に直交するY及び/またはZ軸に沿って変位させることによって)、それにより、その後、レーザスポットが、表面の周に沿って、表面の複数の異なる部分に投影されることを可能にする段階とを備える。
本発明のこの態様によれば、レーザビームは、中心から外された態様で、表面に投影される。すなわち、レーザビームの中央は、円形断面の中央を通る線と整合されていない。これにより、レーザスポットを大きくすることがが助長され、熱の分布をより良くすることに役立つ場合がある。また、このアプローチは、レーザスポットの先端境界及び末端境界において、レーザビームが表面に対して複数の異なる角度で入射することに起因して、レーザスポットの先端境界が末端スポットより高いパワー密度を有する可能性があることから、役立つ可能性がある。上述されたように、これは、表面が所望の温度に達するために必要な加熱時間を短縮可能である。このアプローチは、例えば、実質的に正方形または矩形のレーザスポットを与える固定光学系との組み合わせで使用可能である。また、レーザビームを中央から外すことは、後方反射に起因する損傷または障害のリスクを減少させるという利点をさらに伴う。
本発明の更なる態様は、ワークピースの部分の表面をレーザ硬化する方法に関し、方法は、レーザ源からのレーザビームを表面に投影し、これにより、レーザスポットを表面に生成する段階と、ワークピースの表面とレーザ源との間で相対移動を生じさせ、それにより、その後、前記レーザスポットが表面の複数の異なる部分に投影されることを可能にする段階とを備える。レーザビームは、表面と直交しない方向で、好ましくは表面に対して70°より小さい、例えば60°より小さい、または45°よりさらに小さい角度を形成して、表面に投影される。これにより、レーザスポットのサイズを増大させること、つまり、表面エリア当たりパワー量を減少させ、かつ、表面とレーザ源との間の所与の相対速度に対して、レーザスポットと表面上の所与の点との間の相互作用の時間を増大させることが助長される。これは、硬化された層の深さの増大に寄与することができる。
本発明の更なる態様は、ワークピース(中炭素鋼のワークピース、例えば、クランクシャフトのような)表面に対するレーザ硬化の方法に関する。
方法は、レーザ源からのレーザ光を加熱されるべき複数の表面エリアに投影する段階を備える。本発明のこの態様によれば、レーザ光は、第1の表面エリア及び第1の表面エリアと実質的に垂直に延在する第2の表面エリアに(同時にまたはその後または連続的に)投影される。方法は、レーザビームをS波偏光成分を有する第1のレーザビーム成分及びP波偏光成分を有する第2のレーザビーム成分に分割する段階と、第1のレーザビーム成分を、第1の表面エリアの加熱のために用いる段階と、第2のレーザビーム成分を、第2の表面エリアの加熱のために用いる段階とを備える。このように、パワー吸収と入射角度との間の関係 と、この関係が分極に依存する態様とが、加熱効率を高めるために使用可能である。
上述された本発明の全ての態様において、ワークピースとレーザ源との間の相対移動を生じさせる段階は、硬化されるべき表面エリアの周全体にアクセス可能となるように、ワークピースを(システムのいわゆるX軸と平行たり得る)回転軸周りに回転させる段階を含むことができる。例えば、クランクシャフトは、主軸頸の中央を通る長軸周りに回転可能である。
さらに、ワークピースとレーザ源との間の相対移動を生じさせる段階は、回転軸と直交する(例えば、Y軸と平行な)第1の方向及び回転軸と直交する(例えば、Z軸と平行な)第2の方向に、相対移動を生じさせる段階を含むことができる。このように、主軸頸の中央軸周りに回転する複数のロッドクランクシャフトの軸頸のような、偏心して配置された複数のものの場合にも、レーザ光源と処理されるべき表面との間の距離は、一定に保持可能である。この主軸がシステムのX軸に対応する場合、レーザ光源のY及びZ軸のような2つの他の方向における相対移動を生じさせることは、レーザ光源と処理されるべき表面との間の距離が、確実に一定に保たれることを助長可能である。例えば、第1の方向における移動は、ワークピースを(例えば、水平方向に)変位させることによって生じさせることができ、第2の方向における移動は、レーザ源を(例えば、垂直方向に)変位させることによって生じさせることができる。また、任意に、レーザ源は、回転軸と平行に移動可能とされ得る。つまり、レーザ光源は、例えば、その後、クランクシャフトの複数の異なる軸頸に作用するために用いられてもよい。
本発明の多くの実施形態では、ワークピースは、複数の潤滑油孔を有するクランクシャフトであってもよい。
本発明の更なる態様は、クランクシャフト表面をレーザ硬化する方法に関し、クランクシャフトは、主軸頸、複数のロッド軸頸及び複数の潤滑油孔を備える。
方法は、レーザ源からのレーザビームを、硬化されるべき軸頸の表面に投影することにより、レーザスポットを表面に生成する段階と、(例えば、主軸頸の中心軸に対応し得る軸周りに)クランクシャフトを回転させることにより、表面をレーザ源に対して移動させる段階とを備える。
本発明のこの態様によれば、クランクシャフトが回転する間、レーザビームは、軸頸の表面の少なくとも一部にわたって、所定のスキャンパターンに従ってスキャンされる。表面において、複数の高感熱性サブエリアに、複数の低感熱性サブエリアより小さいエネルギーを適用するために、スキャンは実行される。予め決定されたという用語は、予め決定された態様で、及び/またはなんらかの種類の温度センサまたは温度カメラからのフィードバックに基づく制御システムに従って動作する間の、スキャンパターンの動的適応の可能性を除外するものではない。
表面において、複数の高感熱性サブエリアに、複数の低感熱性サブエリアより小さいエネルギーを適用するために、例えば、スキャンは、レーザビームのパワーを実質的に一定に維持し、かつ、スキャン速度及び/またはスキャンパターン、すなわち、レーザビームが表面において従うパターンまたは経路を適応させるように、実行可能である。本発明の他の複数の態様では、表面において、複数の高感熱性サブエリアに、複数の低感熱性サブエリアより小さいエネルギーを適用するために、例えば、スキャンパターンの複数のセグメントに対応して、レーザビームのオンオフ状態を動的に適応させることにより、スキャンパターンを実質的に一定に維持し、スキャン速度及び/またはビームパワーを適応させるように、スキャンは実行される。本発明のいくつかの実施形態では、複数の高感熱性エリアは、クランクシャフトの複数の軸頸の複数の軸方向端部において、複数の潤滑油孔と隣接する複数のエリア及び/または複数のフィレットと隣接する複数のエリアを含む。
本発明のいくつかの実施形態では、スキャンパターンは、複数のセグメントを備え、パワー状態に対応するパワーレベルに対して、各セグメントに対応してレーザビームのパワーを設定するために、ビームパワー状態は、複数のセグメントの各々に割り当てられる。レーザは、複数のパワー状態の決定に応じて、複数のセグメントのうちのいくつかにおいて、ビームパワーが他の複数のセグメントと比べて異なるように、複数のビームパワー状態の要求に応じて、レーザビームのパワーを変化させるように構成される。レーザスポットをスキャンパターンに沿ってスキャンすることは、好ましくは毎秒少なくとも300セグメント、好ましくは毎秒少なくとも600セグメント、より好ましくは毎秒少なくとも1,000セグメント、より好ましくは毎秒少なくとも5,000セグメント、さらにより好ましくは毎秒少なくとも10,000セグメントの率で生じ、スキャンパターンは、少なくとも10Hz、より好ましくは少なくとも50Hz、さらにより好ましくは少なくとも100Hzの周波数で繰り返される。つまり、スキャンパターンのセグメント化またはピクセル化は、加熱されているエリアのパワーまたはエネルギー分布が、例えば、スキャンされているエリアの感熱性に従って適合されることを可能とする一方で、同時にスキャンパターンを高周波数で繰り返し、それにより、現在加熱されているエリア内における温度の揺らぎを減少させるように実現可能である。
本発明の多くの実施形態では、レーザ源は、「オン」状態から「オフ」状態への切り替えのために約100μs以下を必要とし、逆もまた同様であるファイバレーザのような、ファイバレーザを備える。複数のファイバレーザは、典型的には、硬化目的のために十分なパワーを有する複数のビームを生成するダイオードレーザのような他の複数の種類のレーザよりコストがかかる。つまり、当業者は、複数のクランクシャフトのような複数のワークピースを硬化させるためにファイバレーザを用いることに消極的な可能性がある。しかしながら、ファイバレーザは、オン及びオフの高速切り替えが可能であり、つまり、等価なレーザスポットの複数の線に沿って及び/または複数のサブエリアまたはピクセル内でエネルギーを分布させるために、レーザのオン及びオフを切り替える間に、ビームが有効レーザスポットにわたって所定のスキャンパターンに従うことによって、特に、適切なエネルギー分布を得るために有用たり得る。また、複数のファイバレーザは、フォーカスされたレーザスポットとビーム出口との間の焦点距離を大きくすることができるように、高品質で比較的小さい直径の複数のビームを生成する。これは、スキャンの場合に、スキャンミラーなどの移動がより小さくなり得ることから、かつ、複数のクランクシャフトのような複数の複雑な対象の表面にわたってレーザビームをスキャンする場合にも、複数のカウンターウェイト及び複数の壁が焦点距離の短い複数のレーザビームに対する障害を意味し得ることから、利点となり得る。
本発明の更なる態様は、ワークピース表面の少なくとも一部を硬化するためのシステムに関し、システムは、レーザ源と、ワークピースの表面とレーザ源との間で相対移動を生じさせるための手段とを備える。本発明のいくつかの実施形態では、レーザ源は、ワークピースの表面の部分にわたって、レーザビームを1または2次元でスキャンするためのスキャン手段を与えられ、またはこれと関連付けられる。システムは、システムの動作を制御するために、コンピュータ、コンピュータシステム、PLC等のような電子制御手段をさらに備える。
本発明のこの態様によれば、電子制御手段は、上述された複数の態様のいずれかに記載された方法を実行するために、システムを動作させるように構成される。
スキャンパターン、すなわち、パターンの経路の幾何学的構成のような複数のパラメータ、及び/またはスキャン速度、及び/またはレーザビームパワー、及び/またはレーザスポットサイズ、及び/または硬化されるべき表面におけるレーザビームの波長または入射角度のような複数のパラメータをさえ変更することによって、システムは、硬化されるべき表面に沿って、及びこれにわたって行われる加熱を最適化するための柔軟性を与える。トライアルアンドエラーの複数の実験は、複数のトライアルワークピースに対して、または複数のコンピュータシミュレーションを用いることによって実行可能であり、オペレータは、複数の高感熱性エリアまたは複数のものを過剰に劣化させることのがない、複数の許容可能な硬化の特徴を与えるのではなく、複数のパラメータの組み合わせに到達するまで、複数のセグメントの長さ及び位置/方向、各セグメントに対するスキャン速度、各セグメントにおけるレーザビームのパワー等のような複数のパラメータの複数の値を動的に変更することができる。
本発明の他の態様は、上述されたようにシステムにおいて実行された場合に、上述された本発明の複数の態様のいずれかの方法を実行するための複数のプログラム命令を備えるコンピュータプログラムと、(任意の適した種類のメモリデバイスまたは電気信号のような)コンピュータプログラムを格納する情報キャリアとに関する。
本発明の他の態様は、クランクシャフトの複数の軸頸の複数の表面に対してレーザ硬化を行うための装置に関し、複数の軸頸は、少なくとも2つの中央に構成された主軸頸と、少なくとも1つのオフセットされたロッド軸頸とを含み、装置は、クランクシャフトを支持し、任意に、クランクシャフトをクランクシャフトの長軸周りに回転させるように構成されるクランクシャフト支持部と、レーザスポットを軸頸に生成するために、レーザビームをクランクシャフトの軸頸に投影するように構成される少なくとも1つのレーザ源とを備え、2次元のスキャンパターンを軸頸の表面に確立するために、レーザ源は、レーザビームを2次元でスキャンするための双方向スキャン手段を含む。2次元スキャンパターンを用いることにより、硬化されるべき表面にわたってレーザスポットを繰り返しスキャンすることによって、有効レーザスポットを確立することが可能となり、適切な1時間当たり生産率を複数のクランクシャフトに関して得るために、所望の硬化深さを実現するために十分な時間、加熱が生じることを可能とする一方で、同時に、クランクシャフトを十分な速度で回転可能とするべく、クランクシャフトがその長軸周りに1回だけ回転する、または有効レーザスポットを1回だけ軸頸周り及びクランクシャフトの周方向に対応する他の方向において360度走査する間に、クランクシャフトの軸頸全体の加熱を可能とするために、有効レーザスポットは、クランクシャフトの長軸と平行な方向に十分な拡張を有する。装置の動作時に、複数の潤滑油孔と隣接する複数のエリアのような複数の感熱性サブエリアに対する過熱を回避するべく、動的に適応され得るエネルギー分布を得るために、2つの方向におけるこのスキャンは、例えば、スキャンパターンを、複数の異なるパワーレベルが割り当てられる複数のセグメントに分割することとの組み合わせが可能である。
本発明のいくつかの実施形態では、クランクシャフト支持部及びレーザ源は、長軸に直交する少なくとも2つの異なる方向において、クランクシャフトが長軸周りに回転する間、ロッド軸頸とレーザ源との間が一定距離となるように、互いに対して変位可能であり、ロッド軸頸は、長軸に対してオフセットされる。
例えば、レーザ源は、第1の方向、好ましくは垂直方向に変位可能であり、クランクシャフト支持部は、第2の方向、好ましくは水平方向に変位可能であり、第1及び第2の方向の両方は、長軸に直交する。本発明のいくつかの実施形態では、レーザ源は、その後でクランクシャフトの複数の軸頸に作用するために、クランクシャフトの長軸と平行にさらに変位可能である。レーザ源は、高速オン/オフ切り替え、及び/または、例えば、レーザスポットが、複数の異なるパワー状態、すなわち、所望の複数のパワーレベルが割り当てられた複数のセグメントを有するスキャンパターンに従う場合に、複数のパワーレベル間での高速切り替えに対応するために、異なる複数のビームパワーレベル間での高速切り替えに適したファイバレーザまたは他のレーザのようなレーザを備えることができる。
装置は、スキャンパターンと関連付けられた複数のパラメータ値を格納するメモリを含む制御ユニットを備えることができ、スキャンパターンは、複数のパラメータ値の複数のセットを含み、複数のパラメータ値の第1のセットは、第1の2次元エネルギー分布をクランクシャフトの軸頸において決定し、複数のパラメータ値の第2のセットは、第2の2次元エネルギー分布を軸頸において決定する。制御システムは、クランクシャフトの軸頸の大部分を硬化する間に、複数のパラメータ値の第1のセットを適用し、潤滑油孔隣接エリアが加熱されている場合に、複数のパラメータ値の第2のセットを適用するように構成可能である。明らかに、複数のパラメータ値の複数のセットがさらに存在可能である。つまり、例えば、クランクシャフトの長軸周りにクランクシャフトが回転する間、2次元エネルギー分布は、複数の高感熱性サブエリアに対する過熱を回避するために、動的に適合可能である。複数のパラメータ値は、ビームパワー及びスキャン速度を含む上述された複数のパラメータ値のいずれかを含むことができる。
制御ユニットは、複数のパラメータ値の第1のセット及び複数のパラメータ値の第2のセットを選択的に適用し、任意に、2次元のスキャンパターンによってカバーされるエリア内またはこれと隣接するような2次元のスキャンパターンに対応する高感熱性サブエリアの出現と同期して、メモリに格納された複数のパラメータ値のさらなるセットを適用することによって、硬化加工を制御するように構成可能である。すなわち、制御ユニットは、潤滑油孔隣接エリアが加熱されるべき場合、すなわち、例えば、クランクシャフトが回転する間に、潤滑油孔が現在レーザビームによってスキャンされているエリアに到達した場合に、例えば、2次元エネルギー分布を変化させることができる。
本発明のいくつかの実施形態では、スキャンパターンは、その各々に複数のパラメータ値のうちの少なくとも1つが割り当てられた、セグメント化された複数のセグメントを備えるスキャンパターンであってもよい。少なくとも1つのパラメータ値は、スキャン速度、レーザスポットのサイズ、レーザビームのパワー、レーザビーム内のパワー分布、対応するセグメントの長さ及び対応するセグメントの方向のうちの少なくとも1つを示すことができる。例えば、スキャン速度、すなわち、セグメントに沿ったレーザスポットの速度及び/またはレーザビームのパワーの適切な選択は、スキャンパターンによってカバーされたエリアのエネルギー分布を決定するために使用可能である。可変なエネルギー分布を動的に実装し、それをクランクシャフトに適応させるためのセグメント化アプローチによる複数の利点のいくつかが、上述された。
本発明のいくつかの実施形態では、装置は、毎秒少なくとも300セグメント、好ましくは毎秒少なくとも600セグメント、より好ましくは毎秒少なくとも1,000セグメント、より好ましくは毎秒少なくとも5,000セグメント、さらにより好ましくは毎秒少なくとも10,000セグメントの平均速度で、スキャンを実行するように構成され得る。上述されたように、毎秒当たりのセグメントが多数であることは、スキャンパターンを、合理的な量、例えば、6またはそれより多くのセグメントと、短いサイクルタイム、すなわち、例えば、50Hz以上のような高い繰り返し率のスキャンで、組み合わせるために有用たり得る。
本発明の更なる態様は、ワークピースの表面エリアを硬化するための機械または装置に関する。用語「表面エリア」は、広く解釈されるべきである。これは、ワークピースの表面の部分、またはワークピースの表面全体を指してもよい。これは、例えば、は、クランクシャフトの軸頸の表面、または当該表面の部分を指してもよい。明らかに、機械は、ワークピース1つより多くの表面エリアを硬化するために有用たり得る。例えば、クランクシャフトの場合、機械は、主軸頸及び/または複数のロッド軸頸のいくつかまたは全ての複数の表面または複数の表面のうちの大半を硬化させるように構成可能である。表面エリア(または複数の表面エリアのうちの少なくとも1つ)は、少なくとも1つの低感熱性サブエリアと、少なくとも1つの高感熱性サブエリアとを備える。
装置は、(例えば、所望の断面を有するように構成されるビームを表面エリアに単に向けることによって、または、表面エリア上でスキャンパターンに沿って「現実の」レーザスポットをスキャンすることにより、仮想のまたは等価な有効レーザスポットを生成することによって)有効レーザスポットを表面エリアに投影するように構成されるレーザ源と、表面エリアの複数の異なる部分または複数の部分を硬化に適した温度にその後徐々に加熱することによって有効レーザスポットが2次元エネルギー分布を有するために、有効レーザスポットが表面エリアに沿って移動させられるように、表面エリアと有効レーザスポットとの間で相対移動を生じさせるための手段とを備える(本発明のいくつかの実施形態では、これらの手段は、クランクシャフトの軸頸周りのようなワークピースの部分の周りで、有効レーザスポットを走査するために、ワークピースを軸周りに回転させるための手段を含む、またはこれからなる)。すなわち、有効レーザスポットが、表面エリアに沿って、例えば、クランクシャフトの軸頸の周方向に、またはこのような軸頸に沿って、クランクシャフトの長さ方向においてその1つの端部からその他の端部に向かって進む場合、有効レーザスポットは、新たな複数の部分を徐々に加熱する一方で、複数の以前加熱された部分の冷却が可能であり、それにより、焼き入れの発生が可能となる。有効レーザスポットは、2次元エネルギー分布を有するように構成される。例えば、エネルギーは、有効レーザスポットにわたってまたはこれに沿って多かれ少なかれ均等に分布可能であり、有効レーザスポットの他の複数のエリアより大きいエネルギー/パワーが、有効レーザスポットのいくつかのエリアにおいて、表面に適用可能である。
装置は、装置の動作を制御するために1つまたは複数のプログラマブルデバイスを含む電子制御システムのような制御システムをさらに備え、制御システムは、高感熱性サブエリアにおいて、低感熱性サブエリアと異なるように、2次元エネルギー分布を変更するように構成される。それにより、硬化されるべき表面エリアの全てまたは大半の全体にわたって所望の硬化深さ及び質を実現するために、表面エリアの加熱が最適化可能であり、複数の高感熱性サブエリアに対する過熱を防止する一方で、複数の低感熱性サブエリアに対する十分な加熱を可能とする。用語「高感熱性」及び「低感熱性」は、広く解釈されるべきであり、概して、これらの複数の特徴に起因して、有効レーザスポットによって、より小さいエネルギーまたはより大きいエネルギーを受けなければならない異なる複数の表面エリアを指す。例えば、低感熱性サブエリアは、例えば、損傷を回避するために、または単に、例えばワークピースの構造に起因して、所望の硬化に達するために必要な加熱が少なくてすむために、より小さいエネルギーを受けなければならない高感熱性エリアより、所望の硬化に達するために大きいエネルギーを必要とするエリアであってもよい。
レーザ源という記載は、少なくとも1つのレーザ源の存在を示唆するが、連携して有効レーザスポットを形成し、及び/または複数の異なる有効レーザスポットを生成するために使用可能な、さらなる複数のレーザ源の存在を除外するものではない。
本発明のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの高感熱性サブエリアは、表面エリアにおいて、潤滑油孔のような孔と隣接するエリア、及び/または アンダーカットフィレットのようなフィレット、及び/または 有効レーザスポットがクランクシャフトの円筒状軸頸のような対象の周に沿って、360°軌道の端部において到達する部分のような、表面エリアの以前に硬化された部分を含む。
低感熱性サブエリアは、例えば、複数の潤滑油孔から離れた、及び/または複数のフィレットから離れた、及び/または以前硬化された部分から離れた、クランクシャフトの軸頸の表面に対応可能である。
本発明のいくつかの実施形態では、装置は、動作するように構成またはプログラムされる。有効レーザスポットの表面エリアに沿った移動の少なくとも一部、好ましくは少なくとも50%の間、より好ましくは少なくとも90%の間、さらにより好ましくは有効レーザスポットが表面エリアに沿って移動する100%の間、有効レーザスポットによって加熱される表面エリア内の複数の部分は、少なくとも0.5秒、好ましくは少なくとも1秒の間加熱されるように、有効レーザスポットがサイズを有し、かつ、表面エリアに沿って速度で移動するように動作する。これにより、多くの用途に対して、硬化された層の十分な深さの実現が助長されるという知見が得られた。熱が材料に十分浸透することを可能とするためには、十分に長い加熱時間が望ましい可能性がある。少なくとも0.5または1秒、任意に、5秒より小さいまたは3秒よりさらに小さい時間が、例えば、複数のクランクシャフトの複数の軸頸に対する硬化のために適切となる可能性があり、例えば、自動車産業において共通して必要とされる複数の硬化深さに達するために十分な熱の浸透を可能とする一方で、硬化の質に対して負の影響を与え得るほど高い温度、例えば、ワークピース材料の融点付近の、またはこれを超える温度を必要としない。本発明の複数の実施形態のうちのいくつかでは、有効レーザスポットが表面エリアに沿って移動する方向における(例えば、クランクシャフトがその長軸周りに回転することによって有効レーザスポットが軸頸周りを周方向に変位する場合に、例えば、クランクシャフトの軸頸の周方向における)有効レーザスポットのサイズは、少なくとも5mm、好ましくは少なくとも7mmより好ましくは少なくとも10mm、さらにより好ましくは少なくとも15mm、20mm、30mmまたはそれより大きく、例えば少なくとも50mmである。硬化されるべき各部分を十分な時間、例えば少なくとも0.5秒または少なくとも1秒、加熱された状態で保持する必要により、有効レーザスポットが硬化されるべき表面エリアに沿って移動可能な速度が制限される。有効レーザスポットがレーザスポットの典型的なサイズであるわずか数mmオーダの直径または幅を有する場合、必要な加熱継続時間は、レーザスポットが、比較的低い速度で硬化されるべき表面エリアに沿って移動しなければならず、例えば、複数のワークピースに関して1時間当たり生産性に負の影響を与えるないことを示唆する。つまり、有効レーザスポットが硬化されるべき表面エリアに沿って移動する方向において、より大きい長さまたは幅を有する有効レーザスポットを用いることにより、有効レーザスポットがより高い速度で移動可能である一方で、依然として十分な加熱時間を可能とすることから、生産性が高められる。
本発明のいくつかの実施形態では、装置は、有効レーザスポットの複数のセグメントを生成することによって、有効レーザスポットを生成するように構成され、複数のセグメントは、少なくとも6つのセグメントを備え、制御システムは、複数のセグメントに割り当てられた複数のパラメータ値に従って、複数のセグメントにおけるエネルギー密度及び/または分布(すなわち、スキャンパターンの複数のセグメントの場合、スキャンサイクルのような特定の時間間隔の間、各セグメントに対応するエネルギー)を選択的に変更することによって、2次元エネルギー分布を変更するように構成され、複数のパラメータ値は、制御システムのメモリに格納される。上述されたように、セグメント化アプローチは、例えば、表面エリアに対する加熱を表面エリアの複数の特徴に適応させるために、複数の異なるエネルギー分布パターンを生成可能とする柔軟性及び簡潔さに起因する、複数の重要な利点を示唆する。例えば、各々が3つのセグメントを備える2行で構成された6つのセグメントを有する単純なパターンを用いる場合、有効レーザスポットが、硬化されているクランクシャフトの軸頸の中央に配置された潤滑油孔に近づく場合に、複数の中央のセグメントのうち1つまたは両方のパワーを減少させることにより、潤滑油孔と隣接して適用されるエネルギーを、軸頸表面の複数の周辺部分に適用されるエネルギーと比べて減少させ、それにより、潤滑油孔と隣接するエリアに対する過熱リスクを減少させる一方で、潤滑油孔からもさらに離れて、例えば、潤滑油孔の複数の境界から離れた潤滑油孔の複数の側面において、表面の適切な硬化を維持することができる。多数のセグメントは、硬化されている表面の複数の感熱性特徴に対する2次元エネルギー分布の非常に正確な調整を可能とする。複数のセグメントは、例えば、複数のセグメントの複数の行及び複数の列を有する配列において、構成可能である。
本発明のいくつかの実施形態では、レーザ源は、レーザ源のレーザビームを2次元でスキャンするように構成されるスキャン手段を備え、制御システムは、スキャンパターンに従う有効レーザスポット(セグメント化された有効レーザスポットの場合、スキャンパターンは、本発明の多くの実施形態では、複数のセグメントを備えることができる)を生成するために、レーザビームを2次元でスキャンするように構成され、スキャンパターンは、少なくとも10Hz、好ましくは少なくとも50Hz、より好ましくは少なくとも100Hz、さらにより好ましくは少なくとも200Hzの反復率で繰り返される。より大きい有効レーザスポットを生成するべく、小さいレーザスポットを表面エリアに沿って、及びこれにわたって移動させるために、レーザビームをスキャンすることは、大きな柔軟性を与えることから、有効レーザスポットにわたるエネルギー分布を考慮する上で有利である。一方で、スキャンパターンの高い繰り返し率により、比較的大きいサイズ、例えば1cm2またはそれより大きい有効レーザスポットが可能であり、それにより、一方で、有効レーザスポットの移動方向に垂直な方向において、比較的大きい幅のレーザスポットが可能となる。例えば、有効レーザスポットが周方向に移動する場合における複数のクランクシャフトの軸頸に対する硬化の場合、軸頸の表面エリア全体が、有効レーザスポットを軸頸周りに一度通過させることによって加熱されるよう、有効レーザスポットが軸頸の幅の大半または全てにわたって拡張可能なように、有効レーザスポットは、複数の軸頸と交差する方向に(すなわち、クランクシャフトの長さ方向に)、比較的大きい幅を有することができる。一方で、同時に、硬化されるべき表面エリアに沿った有効レーザスポットの移動方向における、有効レーザスポットのサイズは、上述されたように、十分な加熱継続時間との組み合わせで、比較的高い速度で移動することを可能とするように、十分大きくすることもできる。
同時に、現在加熱されているエリア内で大きい温度変動を回避することは、上述された複数の理由に対して有利であり、高い繰り返し率により、以前加熱された温度があまりに大きく下降することが可能となる前に、加熱された部分が確実に再加熱可能となる。
スキャンパターンは、ループを形成する複数の隣接セグメントの形態、または複数の平行な線のような複数の線の形態であってもよく、または、これは、あらゆる他の適した構成を有することができる。2次元エネルギー分布を適応させることは、複数のセグメントのいくつかまたは全部の長さ及び/または位置を適応させることを含むことができる。
本発明のいくつかの実施形態では、複数のパラメータ値は、スキャンパターンの対応するセグメントに対応するビームのビームパワーレベル及び/またはスキャン速度を示す。つまり、加熱によって硬化されるべき表面エリアに沿った有効レーザスポットの移動の各特定の時点において適用されるべき2次元エネルギー分布は、各セグメントに割り当てられたビームパワー値及び/またはスキャン速度によって決定可能である。1つの選択肢、他の選択肢または両方の間における選択は、上述されたように、例えば、レーザ源及びスキャンシステムの複数の特徴に依存することができる。本発明の複数の他の実施形態では、複数のパラメータ値は、対応するセグメントの位置または長さを示すことができる。また、他の複数の選択肢が、上述されたように可能であり、これらの複数の選択肢のうち1つまたは複数が、組み合わせて使用可能である。
本発明のいくつかの実施形態では、装置は、クランクシャフトの少なくとも1つの軸頸を硬化するためにプログラムされ、装置は、クランクシャフトの長さ方向において、クランクシャフトの軸頸の50%より多く、好ましくは75%より多く、85%より多く、または90%もしくは95%より多く、例えば99%より多く、または100%もにわたって延在し、及び、特に、例えば、表面エリアが、例えば少なくとも800μm以上の有効硬化深さが望ましい場合には、100%を超えないとしても、硬化されるべき表面エリアの主要部分にわたって有効レーザスポットを生成するためにプログラムされる。小さいレーザスポットを用いてクランクシャフト表面の複数の非常に特定の部分を硬化させることが、当技術分野において周知である。しかしながら、本発明は、(クランクシャフトの複数の軸頸の複数の表面全般のような)複数の主要な表面に対する硬化を、1回だけの走査またはわずか数回の走査で可能とする一方で、同時に、例えば、複数の潤滑油孔及び/または他の複数の高感熱性サブエリアの存在を考慮に入れて、加熱されている表面エリアの複数の部分の複数の特徴に従って、加熱を適応させる。
本発明のいくつかの実施形態では、制御システムは、複数のデータセットを格納するように構成されるメモリを備え、複数のデータセットの各々は、有効レーザスポットの2次元エネルギー分布を示すことにより、装置が有効レーザスポットの2次元エネルギー分布を適応させる間に、有効レーザスポットが低感熱性サブエリアに投影される場合に、レーザ源を動作させるために複数のデータセットのうちの1つを用いることによって、かつ、有効レーザスポットが高感熱性サブエリアに投影される場合に、レーザ源を動作させるために複数のデータセットのうちの少なくとも他の1つを用いることによって、有効レーザスポットが表面エリアに沿って移動させられるように構成される。つまり、装置を具体的なクランクシャフトのような具体的な製品に適応させる場合、オペレータは、クランクシャフトの複数の異なる部分に対して、複数の適切なエネルギー分布、例えば、潤滑油孔から離れた軸頸の一部に対する第1の2次元エネルギー分布、及び潤滑油孔と隣接する複数のエリアに対する1つまたは複数の異なる2次元エネルギー分布を設計し、複数のパラメータの対応する複数のセットを制御システムのメモリに格納し、有効レーザスポットのエネルギー分布を動的に変更するために制御システムをプログラムすることができる間に、有効レーザスポットは、複数の潤滑油孔及び加熱が実行される態様の調整を必要とする他の複数のエリアの出現に同期して、軸頸周りをまたはこれに沿って移動する。
本発明の更なる態様は、クランクシャフトのようなワークピースの少なくとも1つの表面エリアをレーザ硬化する方法であって、上述された装置を用いて、ワークピースの表面エリアを硬化温度に加熱する段階と、焼き入れを生成するために、表面エリアの複数の加熱された部分を冷却可能とする段階とを備える方法に関する。
本発明の他の態様は、複数の軸頸を備え、複数の軸頸のうちの少なくとも1つは、上述された本発明の複数の態様の1つに係る方法によって硬化された表面を有する、クランクシャフトに関する。
本発明の他の態様は、クランクシャフトの複数の軸頸をレーザ硬化するために、上述された装置をプログラミングする方法であって、
複数のデータセットを確立するために、レーザビームパワー及び/またはスキャン速度及び/またはセグメントの長さ及び/またはセグメントの方向のような複数のパラメータ値に関するエネルギー分布を(有効レーザスポットを確立するためにレーザビームスポットが従うべきスキャンパターンの複数のセグメントのような)複数のセグメントに割り当てる段階であって、各データセットは、硬化されるべき表面エリアに投影され、かつ、表面エリアに沿って変位される有効レーザスポットの特定の2次元エネルギー分布に対応する段階と、
複数のデータセットを格納する段階と、
表面エリアの低感熱性サブエリアを加熱するための複数のデータセットのうちの少なくとも1つに従ってエネルギー分布を適応させることによって、かつ、表面エリアの高感熱性サブエリアを加熱するためのデータセットの少なくとも他の1つに従ってエネルギー分布を適応させることによって、有効レーザスポットの表面エリアに沿った移動と同期して、有効レーザスポットのエネルギー分布を適応させるために、装置をプログラミングする段階とを備える、方法に関する。上述されたように、セグメント化アプローチにより、当業者は、適した複数の2次元エネルギー分布を容易に確立、試験及び選択することができ、硬化されるべきエリアの複数の異なるサブエリアにこれらを割り当て、例えば、複数の具体的なデータセットを潤滑油孔周りのエリアに割り当て、他の複数の具体的なデータセットをクランクシャフトの以前に硬化された部分と重複するエリアに割り当てる。
本発明のいくつかの実施形態では、この方法は、データセットを確立する段階の後、対応する2次元エネルギー分布をスクリーン上で算出及び可視化する段階を備える。多くの場合、可視化は、当業者が、スキャンパターンの複数のセグメントのような複数のセグメントに対する複数のパラメータ値の特定の割り当てに対応する、選択された2次元のデータセットが、クランクシャフトの対応する部分に対して適度な加熱を与える可能性が高いか否かを決定することを助長する。一方で、純粋な複数の数学的方法及び複数のコンピュータが、複数のセグメントに対する複数のパラメータ値の最適な割り当てを算出するために使用可能である一方で、可視化は、当業者にとって利用可能な役立つツールとなり得る。
使用に適した複数のレーザが、2kW−10kWの範囲(上限及び下限は範囲に含まれる)のパワーを有するビームのような高いビームパワーを与えるものとなり得るという知見が得られた。このような複数のレーザは、例えば、特に、複数のクランクシャフトの表面硬化に適切たり得る。
典型的には、この種類のレーザで、かつ、例えば、クランクシャフト表面の表面硬化の目的で、硬化されるべき表面に投影されたレーザスポットは、好ましくは2mmから5mm、例えば約3mmの範囲の直径を有することができる。この種類のスポットは、2kW−10kWのレーザビームを用いたクランクシャフト表面の硬化に適切と考えられる。
硬化は、好ましくは、硬化されたエリアにおいて、任意に、複数の高感熱性サブエリア近傍及び/または硬化されたエリアの複数の境界または複数の端部セクションを除き、少なくとも800μm以上(例えば少なくとも1200μmまたは少なくとも1500μmまたはさらに2000μm以上)の硬化された層の有効硬化深さを実現するために実行される場合が多い。これらの複数の硬化深さは、例えば、複数のクランクシャフトに適切である。2kW-10kWの範囲のパワーを有するレーザを用いて、これらの複数の硬化深さは、レーザビームをクランクシャフトに約2−6分適用して(正確な時間は、ビームパワー、硬化されるべき表面エリア及び層の深さのような複数の特徴に依存する)実現可能であると考えられる。いくつかのクランクシャフトを平行に処理することによって、サイクルタイム は、実質的に削減可能である。例えば、2つまたは3つのクランクシャフトを平行に処理することによって、典型的には、1分オーダのサイクルタイムが実現可能となる.必要な深さは、典型的には、800μmから2000μmの範囲、またはそれより大きくてもよい。
スキャンパターン及びビームパワー、レーザスポットのサイズ、スキャン速度、及び/またはレーザビームの入射角度のような他の複数のパラメータの適応により、レーザビームと特定のエリアとの間の相互作用の時間を増大させることが可能となり、これは、硬化された層の深さの増大を助長可能である。例えば、所与のパターンが、レーザ源と硬化されるべき表面との相対移動の方向に膨張する場合、及び/または(例えば、円形断面を有する部分の表面に対してビームを中央から外す、または平坦な表面に対してビームを傾けることによって)レーザビームと表面との間の入射角度が減少する場合、ビームと表面上の所与の点との間の相互作用の継続時間は増大可能であり、これは、硬化された層の深さの増大に寄与し得る。
スキャン速度(すなわち、硬化されるべき表面にわたって、レーザスポットがスキャンシステムによってスキャンされる速度)は、上述されたように、スキャンパターンまたは経路に沿って変化可能であるが、平均スキャン速度は、典型的には、2000mm/sから8000mm/sの範囲であってもよい。このようなスキャン速度は、2kWから10kWの範囲のパワーを有するレーザビームを用いる場合、複数のクランクシャフトの表面硬化に適切たり得る。
明らかに、上述された複数の異なる態様は、互いに互換可能である場合はいつでも、互いに組み合わせ可能である。
説明を完全にし、本発明に対するより良い理解を与えるために、複数の図面のセットが与えられる。複数の図面は、説明の不可欠な部分を形成し、本発明を実行する複数の異なる態様を示すが、これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきものではなく、本発明を実施する態様の複数の例に過ぎない。複数の図面は、以下の複数の図を備える。
当技術分野において公知のクランクシャフトの斜視概略図である。
本発明の一実施可能形態に係るシステムの斜視概略図である。
本発明の一実施可能形態に係るレーザ源1の部分及びワークピースの部分の概略正面図である。
図3の実施形態の硬化加工の一時点におけるワークピースのセクションの概略上面図である。
図3の実施形態の硬化加工の異なる時点におけるワークピースのセクションの概略上面図である。
本発明の実施形態の変形例に係る硬化加工の一時点におけるワークピースのセクションの概略上面図である。
本発明の実施形態の変形例に係る硬化加工の異なる時点におけるワークピースのセクションの概略上面図である。
高パワー密度を有する先端部分と、低パワー密度を有する少なくとも1つの末端部分とを有する仮想レーザスポットの概略上面図である。
高パワー密度を有する先端部分と、低パワー密度を有する少なくとも1つの末端部分とを有する仮想レーザスポットの概略上面図である。
高パワー密度を有する先端部分と、低パワー密度を有する少なくとも1つの末端部分とを有する仮想レーザスポットの概略上面図である。
高パワー密度を有する先端部分と、低パワー密度を有する少なくとも1つの末端部分とを有する仮想レーザスポットの概略上面図である。
図3に示されるレイアウトの変形例のY−Z平面における概略側断面図である。
図3に示されるレイアウトの変形例のY−Z平面における概略側断面図である。
本発明のいくつかの実施形態において、レーザ源の部分として使用可能な偏光器を概略的に示す。
コンピュータシステム及びコンピュータシステムに格納される、及び/またはこれによって生成されるスキャンパターンを概略的に示す。
コンピュータシステム内の複数のメモリ位置を概略的に示す。
本発明の代替的な実施形態に係るコンピュータシステム内の複数のメモリ位置を概略的に示す。
潤滑油孔周りのエリアを硬化する場合に、有効レーザスポットのエネルギー分布が適合される態様を概略的に示す。
潤滑油孔周りのエリアを硬化する場合に、有効レーザスポットのエネルギー分布が適合される態様を概略的に示す。
潤滑油孔周りのエリアを硬化する場合に、有効レーザスポットのエネルギー分布が適合される態様を概略的に示す。
本発明のいくつかの実施形態に係る潤滑油孔の拡張が考慮される態様を概略的に示す。
レーザビームが有効レーザスポットをスキャンする周波数に応じた、加熱されているエリアの表面温度の変動の振幅を概略的に示す。
レーザビームが有効レーザスポットをスキャンする周波数に応じた、加熱されているエリアの表面温度の変動の振幅を概略的に示す。
有効レーザスポットが、クランクシャフトの軸頸の硬化をその環状セグメントの硬化によって生成するために適用され得る態様を概略的に示す。
有効レーザスポットが、クランクシャフトの軸頸の硬化をその環状セグメントの硬化によって生成するために適用され得る態様を概略的に示す。
図16B及び16Cのようなスキャンパターンに対して算出された、有効レーザスポットにわたるエネルギーまたはパワー分布を示す。
異なる複数のスキャンパターンのうちの1つの複数のセグメントの構成を概略的に示す。
パターンの複数の異なるセグメントに割り当てられた異なる複数のスキャン速度のうちの1つを概略的に示す。
図17B及び17Cのようなスキャンパターンに対して算出された、有効レーザスポットにわたるエネルギーまたはパワー分布を示す。
異なる複数のスキャンパターンのうちの1つの複数のセグメントの構成を概略的に示す。
パターンの複数の異なるセグメントに割り当てられた異なる複数のスキャン速度のうちの1つを概略的に示す。
図18B及び18Cのようなスキャンパターンに対して算出された、有効レーザスポットにわたるエネルギーまたはパワー分布を示す。
異なる複数のスキャンパターンのうちの1つの複数のセグメントの構成を概略的に示す。
パターンの複数の異なるセグメントに割り当てられた異なる複数のスキャン速度のうちの1つを概略的に示す。
軌跡の以前に硬化された部分への有効レーザスポットの到達を概略的に示す。
軌跡の以前に硬化された部分への有効レーザスポットの到達を概略的に示す。
軌跡の以前に硬化された部分への有効レーザスポットの到達を概略的に示す。
図2は、本発明の一実施可能形態に係るシステムを示す。システムは、レーザキャリッジ11に搭載されたレーザ源1を収容するフレーム構造を備え、レーザキャリッジ11は、第1のレーザキャリッジ駆動手段12、例えば、サーボモータまたはあらゆる他の適した駆動手段によって、垂直方向、システムの垂直なZ軸と平行に変位可能である。一方で、レーザ源1は、水平方向、システムの水平なX軸と平行に、水平軌道14に沿って、他のサーボモータまたは他の適した駆動手段のような第2のレーザキャリッジ駆動手段13によって、さらに駆動され得る。一方で、システムは、2つのワークピースキャリッジ20を備え、各ワークピースキャリッジは、2つのワークピース1000(この実施形態では、複数のワークピースは、複数のクランクシャフトである)を平行に収容可能であり、各ワークピースを中心軸(この実施形態では、中心軸は、クランクシャフトの主軸頸の複数の中央を通る長軸に対応する)に沿って回転させるための駆動手段(図示せず)を含み、軸は、システムのX軸と平行である。一方で、各ワークピースキャリッジ20は、ワークピースキャリッジを水平方向、X軸と直交するシステムのY軸と平行に移動させるように構成される(サーボモータまたはあらゆる他の適した駆動手段のような)ワークピースキャリッジ駆動手段21と関連付けられ 水平及び垂直方向という記載は、説明を単純化するためにのみ用いられ、あらゆる他の複数の軸方向は、明らかに適用可能であり、本発明の範囲に属する。この場合、レーザ源1は、最初に、複数のワークピースキャリッジ20のうちの第1のワークピースキャリッジにおいて、複数のワークピース1000の1つの表面の複数の関連部分を硬化させるために用いられ、次に、これは、複数のワークピースキャリッジ20のうちの第1のワークピースキャリッジにおいて、他のワークピース1000表面の複数の関連部分を硬化させるために用いられ、次に、これは、その中に構成された複数のワークピース1000の複数の表面を硬化させるべく、複数のワークピースキャリッジ20のうちの第2のワークピースキャリッジと面するために、軌道14に沿って移動させられる。一方で、レーザ源1は、複数のワークピースキャリッジのうちの第2のワークピースキャリッジにおいて、複数のワークピースに対して動作し、複数のワークピースキャリッジのうちの第1のワークピースキャリッジにおいて、複数のワークピースは、取り外され、かつ、レーザ源によって処理されるべき新たな複数のワークピースと置換可能であり、逆もまた同様である。明らかに、多数の代案が適用可能である。例えば、ワークピースキャリッジ当たり1つだけのワークピースが存在してもよく、または、ワークピースキャリッジ当たり2つより多くのワークピースが存在してもよい。ワークピースキャリッジ当たり1つのレーザ源が存在してもよい(すなわち、対応するレーザ源を有する第2のレーザ源キャリッジが、軌道14に追加可能である)。また、図2に示されたいくつかの構成、またはその複数の変形例は、平行して配置されてもよい。また、ワークピースキャリッジにおいて、いくつかの複数のワークピースがレーザ硬化処理を同時にに受けられるように、各レーザキャリッジは、1つより多くのレーザ源1を設けられてもよい。レーザ源の数、ワークピースキャリッジの数、及びワークピースの数の間の関係は、例えば、システムの動作を停止させることなく複数のワークピースの取り付け及び取り外しを可能とすることによって、システムにおいてよりコストがかかる複数の部分の使用を最適化し、かつ、生産性を最適化するために、選択可能である。本発明のいくつかの実施形態では、複数のレーザビームを同時に同じクランクシャフトに向けるために、例えば、クランクシャフトの複数の異なる軸頸に対して、またはクランクシャフトの同じ軸頸に対して同時に作用するために、複数のレーザ源が使用可能である。本発明のいくつかの実施形態では、ワークピースが複数の主軸頸1001及び複数のロッド軸頸1002を有するクランクシャフト1000である場合、主軸頸表面が円形で、クランクシャフトの回転軸周りに対称であるため、クランクシャフトの複数の主軸頸1001に対する加熱処理の間に、レーザ源は、Z軸方向に移動せず、ワークピースキャリッジは、Y軸方向に移動しない。本発明のいくつかの実施形態では、レーザ源及び/または複数のワークピースは、X軸方向における主軸頸の全延長に沿ってレーザ加熱処理を適用する必要がある場合には、X軸に沿って移動してもよい。これは、レーザビームをX軸方向に変位させるレーザ源のパワー性能及びスキャン手段(図示せず)の性能に依存する。レーザビームが、主軸頸1001の経路にわたって、X軸方向におけるその全延長に沿ってスキャンされ得る場合には、1つの軸頸に対する処理から他の1つに対する処理に切り替える場合のみ、例えば、クランクシャフトの複数の主軸頸1001の1つに対する加熱処理の間、レーザ源1をX軸方向に変位させる必要はない可能性がある。同じことが、例えば、クランクシャフトの複数のロッド軸頸1002に対する加熱処理に適用される。しかしながら、ロッド軸頸1002に対する加熱処理の間、その中心軸は、主軸頸の中心軸から径方向に変位させられ、各クランクシャフトワークピース1000が回転する間、(レーザ源のスキャン手段の出力、またはレンズ表面のような)レーザ源と間をレーザビームが投影される表面との間を一定距離に保つために、ワークピースキャリッジ20において、レーザ光源1は、垂直方向、Z軸と平行に移動させられ、ワークピースキャリッジ2は、水平方向、Y軸と平行に移動させられる。本発明の複数の他の実施形態では、複数のクランクシャフトは、Z及びY軸と平行に移動可能である。また、あるいはその代わりに、レーザ源は、Z及びY軸と平行に移動可能とするように構成可能である。第1及び第2のレーザキャリッジ駆動手段12、13の動作、及びワークピースキャリッジ駆動手段21ならびに複数のワークピース1000を複数のワークピースキャリッジ20において回転させるための駆動手段の動作は、コンピュータ、コンピュータシステムまたはPLC(図2では図示せず)のような電子制御手段によって、制御可能である。本発明のいくつかの実施形態では、レーザ源1は、レーザビームの方向を変更するように構成されるスキャンシステムを含む。このような複数のスキャンシステムは、当技術分野において周知であり、多くの場合、1つまたは複数のスキャンミラーを含み、その複数の角度は、複数の正弦関数、複数の三角関数等のような複数のスキャン関数に従って、コンピュータの制御下で、変更可能である。1軸スキャンシステム(例えば、1つの軸の周りに回転可能なスキャンミラーを有するスキャンシステムなど)が使用されることにより、ワークピース1000の回転に起因して、レーザビームをX軸と平行に、すなわち、レーザ源1に対するワークピース1000表面の移動方向と垂直にスキャンすることができる。表面の関連部分にわたる高速スキャンは、つまり、スキャンなしのスポットの拡張よりはるかに大きいX方向への拡張を有する仮想スポットを生成することができる。つまり、より大きいエリアにわたってビームパワーが分布することから、元のスポットは、回転させられて、より広いが、より小さいパワー密度を有する(X方向により大きい拡張を有する)仮想スポットとなる。二軸スキャンシステムによって(例えば、双軸ミラーまたは2つの単軸ミラーを有するスキャンシステムによって)、レーザビームは、例えば、一方でX軸と平行に、かつ一方でY軸と平行に、及びこれらの組み合わせにより、2方向に移動可能である。つまり、レーザ源に対する表面の移動方向と垂直に表面をスキャンすることは別として、すなわち、X軸方向において複数の軸頸の表面に「沿って」表面をスキャンすることは別として、レーザビームは、その移動方向、すなわち、Y軸と平行に、表面をスキャンすることもできる。それにより、クランクシャフトの軸頸の表面が、軸頸の周方向にもスキャンされ得る。また、レーザビームは、X方向及びY方向への移動を組み合わせた複数の経路(すなわち、例えば、図12A−12Bに示されるように、周方向のW方向において、円形のクランクシャフトの軸頸に投影された場合に)を描くことができる。それにより、ビームは、矩形、楕円形、台形等のような複数の複雑な形状を有する複数の経路に従うことができる。レーザスポットは、表面にわたってスキャンされることによって、(例えば、矩形の境界内で蛇行パターンに従うことによって、または当該境界内で複数の離間した線に従うことによって)Y(またはW)方向に実質的高さを有する、内部を埋められた仮想の矩形を形成し、または、矩形または任意の他の幾何学的形状を有する複数の境界の輪郭を繰り返し描くことができる。つまり、スキャンシステムの性能を用いて、所望の拡張及び形状を有する仮想のまたは等価な有効レーザスポットが、X方向及びYまたはW方向の両方において生成可能である。いわゆるXYZスキャナの場合、X及びY方向に移動可能であることに加えて、なんらかの種類の駆動手段によって、Z方向に変位可能なフォーカスレンズが提供され、それにより、レーザスポットのサイズの動的適応が可能となる。それにより、両方のスポットの位置及び当該サイズは、硬化加工を最適化するように制御及び適合可能である。また、代案として、またはフォーカスレンズなどの変位に加えて、レーザスポットのサイズは、第1のレーザキャリッジ駆動手段を用いてレーザ源をZ軸と平行に移動させることによって、制御及び適合可能である。また、例えば、上述されたドイツ特許出願公開公報第3905551A1号から公知であるように、システムは、レーザスポット内におけるパワー分布を変化させるための手段を含むことができる。図3は、概略的に示された二軸スキャンシステム3を含むレーザ源1を概略的に示し、二軸スキャンシステム3は、双軸ミラーまたは2つの単軸ミラーに基づき、入射レーザビーム2をX軸と平行な垂直平面及びY軸と平行な垂直平面において屈折させるように構成される。角度αは、X軸と平行な垂直平面における最大走査を示し、角度βは、Y軸と平行な平面における最大走査を示す。図3は、ワークピースより上に、より詳細には、クランクシャフトの主軸頸1001より上に配置されたレーザ源1を概略的に示し、主軸頸1001は、潤滑油孔1003を含み、ワークピースキャリッジ(図示せず)内で、矢印によって示唆される方向に回転させられる。レーザビームのスキャンに起因するレーザスポットによって走査可能な部分またはセクション1006が、図3に概略的に示される。つまり、この種類のレーザ源を用いてワークピースの上面に投影された小さいレーザスポットは、角度α及びβに従って、スキャンシステムに可能とされた最大走査によって決定されるセクション1006内において、任意の所望の形状を有するパターンを高速で繰り返しスキャンすることによって得られる、より大きい仮想のまたは等価なスポットと置換可能である。つまり、1つだけの小さいスポットをレーザビームで加熱する代わりに、より大きいエリアが、(ただし、より小さいエリアの単位当たりパワーで)当該エリアをレーザビームでスキャンすることによって、時間間隔の間に加熱可能である。あるいは、換言すると、例えば、適切な固定光学系を用いることによって、(大きい矩形のスポットのような)大きいスポットを与える代わりに、対応するパワー分布は、より大きいエリアにわたって、より小さい、かつよりパワー集約的なスポットをスキャンすることによって実現可能である。これは、1つの重要な利点を伴う。これは、表面の複数の異なる部分の異なる複数の特徴に従って、例えば、感熱性及び過熱による損傷リスクに応じて、スキャンパターン、スキャン移動速度、ビームパワー及び/またはスポットサイズを適応させることによって、異なる量のエネルギーを、表面の複数の異なる部分に動的に適用する可能性を与える。例えば、スキャンパターン、スキャン
速度、ビームパワー及び/またはレーザスポットサイズは、複数の潤滑油孔近傍または複数のアンダーカットフィレット近傍の表面に適用される加熱エネルギー量を制限するために、選択(及び硬化加工中に、動的に適合)可能である。適切な硬化深さ及び質を得るために、スキャンは、繰り返し、かつ、好ましくは、例えば、10Hzより大きい、またはより好ましくは、50、100、150、200もしくは250Hzより大きい高周波数で実行されることにより、加熱されたエリア内における温度の大きな変動を回避することができる。図4A及び4Bは、クランクシャフト、すなわち、硬化加工における2つの異なる段階の間のクランクシャフトの主軸頸1001の部分の上面図である。クランクシャフトは、ワークピースキャリッジ(図示せず)内で、矢印によって示された方向に回転させられる。図4Aでは、参照番号2Aは、スキャンパターンを示す。レーザスポットは、実質的に矩形の経路2Aに従うように生成される。代替的な実施形態では、レーザスポットは、矩形を埋めるために、すなわち、矩形の表面全体に影響を与えるために、実質的に矩形のエリア2A内で、例えば、矩形エリア2A内で蛇行パターンまたは他のパターンに従って、スキャンされる。両方の場合において、スキャンは、ワークピース1001の表面に対するレーザビームの投影が、加熱の投影から、レーザビームが中空の矩形2Aまたは内部を埋められた矩形2Aの形態でそれぞれ投影されていたとしたら実現されていた加熱と、実質的に等価となる結果となるように、高速で実行される。図4Aでは、ワークピースが当該エリアにおいて中実であることから、レーザビームによって走査されたエリアは、低感熱性サブエリアである。ここで、図4Bでは、潤滑油孔1003は、レーザビームによって走査され得るセクションまたは部分に達している。潤滑油孔の複数の境界が過熱によって損傷を受け得ることから、かつ、孔に金属が存在しないことにより、そのエリアにおいてワークピースのヒートシンク性能が減少することから、潤滑油孔1003に直近のエリアは、高感熱性エリアである。つまり、レーザビームが、図4Aのような低感熱性領域に投影される場合と同様に、潤滑油孔1003に直近のエリアに投影される場合、潤滑油孔1003の複数の境界に損傷を与える過熱が生じ得る。従って、本発明のこの実施形態では、異なるスキャンパターン2Bは、ワークピースが図4B示される状況にある場合に用いられる。この場合に、レーザビームは、それぞれ、より大きい矩形2Bの形状である経路に従う、または、より大きい矩形2Bの輪郭を描かれたエリアを埋めるために、蛇行したパターンもしくは複数の複数の平行な線に従う。これは、レーザビームからのパワーがより大きいエリアにわたって広がる、つまり、過熱リスクを減少させることを示唆する。換言すると、スキャンパターンに関するレーザビームの変調は、過熱リスクを減少させるために、図4Bに示される状況では、図4Aに示される状況と異なる。明らかに、矩形パターンまたは矩形を埋める蛇行パターンを用いる必要はない。当業者は、当人が最も便利と考えるパターンを自由に用いることができる。例えば、ファイバレーザまたはレーザビームの高速オン/オフ切り替えを可能とする他のレーザが用いられる場合、複数の複数の平行な線を備えるパターンが使用可能であり、低感熱性エリアまたはサブエリアがスキャンされる場合、複数の線の間の距離は、高感熱性エリアまたはサブエリアがスキャンされる場合より小さくなり得る。あるいは、より好ましくは、複数の線の間の距離は、実質的に一定に保持され得るが、ビームパワー及び/または複数の線に沿うスキャン速度は、スキャン速度がより高くなるように、及び/またはビームパワーが高感熱性エリアにおいて低感熱性エリアより低くなるように、適合可能である。また、これらの複数のアプローチの組み合わせが、使用可能である。.複数の複数の平行な線に沿ってスキャンする場合、本発明の多くの実施形態では、複数の多角形のミラーが、使用可能である。.レーザスポットが従うパターンまたは経路を変更することに加えて、あるいは代案として、当業者は、クランクシャフトの複数の潤滑油孔1003の複数の境界のような複数の感熱性エリアの劣化が許容可能なレベルであるような適切な硬化を実現するために、レーザビームのパワー及び/またはレーザビームのスキャン速度、及び/またはレーザスポットのサイズ、及び/またはレーザスポット内のパワー分布を変更することを選択することができる。この種類の手段は、複数のアンダーカットフィレットまたは硬化の軌跡の端部におけるエリア、すなわち、基本的に、ワークピースが一度ほぼ360度回転したエリアのような、他の複数の感熱性エリアに対してもとることができ、レーザビームは、許容できない硬度低下につながる過剰な焼き戻し効果を回避するために、それによって以前加熱され、実質的に再加熱されてはならないエリアに近づく。図5A及び5Bは、本発明の代替的な実施形態に係る硬化加工の2つの異なる段階の間における、クランクシャフト、すなわち、クランクシャフトの主軸頸1001の部分の上面図である。図4A及び4Bに対して示されたものが、準用される。図5A及び5Bでは、スキャンパターンは、軸頸のほぼ全幅にわたって、実質的に複数のフィレット1004の1つから他の1つにまで拡張する。図4A及び4Bに示されるように、スキャンパターンは、潤滑油孔1003周りの高感熱性サブエリアにおいて、低感熱性サブエリアまたは潤滑油孔からさらに離れた領域(図5A参照)より低いパワー密度(図5B参照)であることを示唆するように設計される。この場合に、潤滑油孔1003周りのエリアがスキャンされている場合に、台形のスキャンパターンがより大きい高さであることによって、これが実現される。しかしながら、この場合、複数のフィレット1004と隣接するエリアも、例えば、複数のアンダーカットフィレットを用いることに起因して、感熱性エリアであると考えられる。つまり、スキャンパターンは、当該エリアにおいても低パワー密度 を与えるように構成される。これは、台形のスキャンパターンを用いることによって実現され、これにより、実質的に一定のスキャン速度で、矩形のスキャンパターンが用いられる場合より小さいエネルギーが複数のフィレット近傍で受けられる。図4A及び4Bの実施形態の場合と同様に、レーザビームは、図5Aまたは5Bに示された台形2Cおよび2Dの輪郭に従うことができ、または、これは、例えば、複数の台形内の蛇行した経路または複数の台形内の複数の線に従って、複数の台形をカバーしまたは埋める。これらの複数のパターンが複数の例に過ぎないことは当業者にとっては明白であり、その当業者は、方法及びシステムを特定のワークピース設計に適応させる場合に、無数の適用可能な複数のパターンの中から選択することが可能である。図6Aは、矩形断面を有し、かつ、高パワー密度の先端部分2E及び低パワー密度の末端部分2Fを有する仮想レーザスポット5の上面図である。仮想レーザスポットは、矩形エリアをカバーする蛇行したパターンに従う、より小さい現実のレーザスポットを繰り返しスキャンすることによって得られる。この場合に、高パワー密度は、矩形エリアの第1の部分において密な蛇行パターンを用いることによって得られ、矩形エリアの第2の部分において疎な蛇行パターンを用いることによって得られる。矢印は、ワークピース表面が仮想レーザスポットに対して移動する方向を示す。このように、加熱されるべきワークピースの部分は、最初に仮想レーザスポットの先端境界によって影響され、つまり、表面エリアの比較的大量の単位当たりパワーを受ける。これは、高速加熱には有利であり、レーザ硬化の場合に、ワークピースの部分がオーステナイト化温度範囲に高速で達することを意味する。これは、所与のレーザビームパワー及び加熱されるべき表面の所与の移動速度に対して、ワークピースの加熱されたエリアが、オーステナイト化温度範囲に、またはそれより上の温度で、パワーが仮想レーザスポットにわたって均等に分布する場合より長い時間保持され得ることを意味する。パワーが均等に分布したとすれば、表面がオーステナイト化温度域に達するためにより長い時間がかかったこととなる。図6Bは、蛇行したパターンを用いる代わりに、レーザスポットが複数の複数の平行な線に従うことにより、(仮想のまたは等価な)有効レーザスポット5を形成する代替的な実施形態を示す。高パワー密度の先端部分2Eにおける複数の線に沿って、レーザビームのパワーがより低い及び/またはスキャン速度がより高い、低パワー密度の末端部分2Fと比べて、レーザビームのパワーはより高く、及び/またはスキャン速度はより低い。このように、有効レーザスポット5全体で、所望のエネルギー分布が得られる。複数の線の代わりに、あらゆる他の種類のスキャンパターンが、所望の2次元エネルギー分布を与えるために使用可能である。例えば、複数の高感熱性領域またはクランクシャフトの複数の潤滑油孔付近のような複数のエリアにおいてより小さいエネルギーを適用するために、レーザビームの高速オン/オフ切り替え及び/またはパワーの急速な変化を可能とするレーザを用いて、硬化されるべき表面の複数の特徴に従って適合可能な、非常に正確なエネルギー分布を可能とする非常に複雑な複数のパターンが、使用可能である。例えば、ファイバレーザは、例えば、「ピクセル」アプローチを用いることによって、この種類のエネルギー分布を実装するために役立つ可能性があり、これにより、非常に特定の複数のサブエリアは、所望の2次元エネルギー分布に従って加熱される。複数の平行な線に沿って高速スキャンを行う場合、当技術分野において公知であるように、複数の多角形のミラーが使用可能である。図6Cは、3つの異なる部分を備える有効レーザスポット5を示し、当該部分が、すなわち、スキャンパターンの複数の線を備える第1の部分2H、このような複数の線を全く有さない第2の部分2I、及びスキャンパターンの複数の線を備える第3の部分2Jを備える。第1の部分2Hは、任意に、より高いエネルギー密度の先端サブ部分2E、及びより低いエネルギー密度の末端サブ部分2Fを備えることができる。一方で、第1の部分2Iにおけるエネルギー密度は、順番に第2の部分2Iのエネルギー密度よりも高くすることができる第3の部分2Jのエネルギー密度よりも高くすることができ、エネルギー密度がゼロまたはゼロ付近である。有効レーザスポット5、および/またはラインの異なるセグメントにおけるレーザビームのオン/オフ切り替えに繰り返し、スキャンパターンのラインの全てに沿ってレーザビームを走査する走査速度及び/又はビームパワーを適合させることにより得ることができます所望の電力やエネルギー分布パターンに応じてエネルギーを分散するようになっている。加熱が行われない第2の部分に起因して、スキャンパターンの第1の部分2Hは(主要なサブ部分2Eでできるだけ速やかに1400℃オーダのような高温に被加工物の表面温度をもたらすように選択することができる)、適切に有効なレーザスポットとの間の相対運動の方向に第1の部分2Hの長さを選択することによって、(所望の硬化深さを達成するのに十分な時間の間それを維持するために高パワー密度の速度を考慮した加工物の表面は、)相対移動は、第二の部分2Iは、自己焼き入れとして、加熱された部分を冷却することによって焼入れを可能にすることができ、第3の部分2Jは、硬化されたエリアを焼き戻しするように、400−500°Cオーダのような温度にワークピースを加熱するための適切なスキャンパターン、ビームの速度及びパワーを特徴とすることができる。このように、焼入れ焼戻しは、硬化及び焼戻しするずれや表面上の有効レーザスポット5の掃引の1つだけの段階の間に続いて行うことができる。これは、焼入れおよび焼戻しの完全な配列をスピードアップするのに役立つことができる。(表面が加熱される温度は、使用される鋼の種類とその組成に、例えば、被加工物の材料に依存する。1400°Cの値は、一例としてのみ記載
されたものである。) 図6Dは、概略的に、各ラインが5つのセグメントまたはピクセル51A、51Bを備える6つのライン51を有するスキャンパターンを示す。各セグメントに対して、レーザビームが硬化加工中に動的に変化可能な所望のエネルギー分布に従ってオン(セグメントまたはピクセル51A)またはオフ(セグメントまたは画素51B)になる。つまり、図6Dのレイアウトは、このように6x5のピクセル化を示し、市販のレーザ及びスキャンシステムによって容易に入手可能である。オン/オフの高速切り替えを可能にするレーザ、例えばファイバレーザの使用は、所定のスキャン周波数のスキャンパターンの画素数を増加させることができる。50Hz又は100Hz以上などの特定のスキャン周波数で達成可能な複数の線の数は、使用されるスキャン手段によって異なる。代わりに、または単にレーザビームをオン及びオフすることに加えて、他のレーザビームのパワー状態、つまり、使用可能な最大パワー、ゼロ(またはゼロに近い)パワーとの間で異なる電力レベルが使用可能である。異なるセグメントに対応したパワー状態は、メモリに格納することができ、例えば、セグメントの一つまたは複数に割り当てられた電力レベルを低減することにより油潤滑孔に隣接する領域におけるエネルギー密度を低下させるように動的に硬化プロセスの間に必要に応じて変更することができる。このセグメント化またはピクセル化のアプローチは非常に実用的であり、ユーザがパワー状態の異なる組み合わせを試みることによって、望ましい結果を提供する組み合わせを見つけるまで、効果的なレーザスポット全体で適切なエネルギー分布、つまり、ビームが異なるセグメントで持つべきである電力を検索することができる。レーザは、異なるパワー状態またはレベル間の迅速な切り替えを可能にしている場合、多数のセグメントが毎秒完了可能であり、実質的な温度変動を回避するためにスキャンパターンの繰り返し、十分に高い速度を可能にする一方で、同時に、セグメントの合理的な量に対応する。例えば、レーザがパワー状態の変更を毎秒1000回可能とする場合は、100Hzのスキャンパターンの繰り返し周波数は、10セグメントを有するスキャンパターンと組み合わせることができる。
図7Aは、図3に示すシステムの変形例において主軸頸1001を通る断面図である。ここで、レーザ光源は、わずかにX軸に沿って主軸頸1001の対称の垂直面に関してオフセットされている。これは、βの角度を走査する際のレーザビームは、この場合には約90度である角度γ1、この場合、実質的に90度より小さい角度γ2との間に、異なる角度で被加工物の表面に到達することを意味する。スキャン速度及びパターンがスキャン全体にわたって一定である場合、ビームのパワーは、同様に一定に保たれる。これは、表面エリアの単位あたりのパワー密度が、(つまり、回転体より、末端境界でのより低いスキャン中にレーザビームによって走査されるエリアに入る)より小さな角度γ2に、より大きな角度γ1に起因して、先端境界で高くなることを意味する。図6Aに関連して説明したように、この構成は、表面温度が急速にオーステナイト化温度域に到達することを助長することができる。図7Bは、図3の角度αに応じて、つまり、レーザ光が安定に維持されるか、X軸に垂直な平面に平行にのみスキャンされる別の構成を示す。この場合、対称面に関してレーザビームのオフセット位置は、レーザビームが90度よりも実質的に小さい角度γの下表面に当たることを意味する。これは、2つの効果を有し得る。第1に、スポットの面積は、それが大きな面積にわたってレーザ光のパワーが広がるように有利であることができる、大きさになる。また、(Y軸方向における)レーザビームの厚さは、それが無視できるほど小さくない場合には、スポット、及びスポットの末端境界における対応する角度のレーザビームと先端の加工物の表面との間の入射角の差が存在することになる。これにより、先端境界でより高いパワー密度を、スポットに入る表面の急速加熱の上述の効果が達成できることを意味する。この実施形態は、例えば、有利には、固定された光学略矩形レーザスポットを提供して使用することができる。さらにまたは代替的に、この概念は、レーザスポットの直径又は幅に対応する幅を有する仮想矩形の確立、X軸に平行な一次元走査と組み合わせて使用され、長さがX軸に平行なレーザビームの走査に対応することができる。レーザスポットのサイズを大きくするために、同様のアプローチが硬化される表面領域は平坦又は非円形である場合に行うことができ、それがフラット領域と垂直にならないようにレーザビームが平坦な領域に投影することができる。時々、それは非常に小さな角度を除いて、レーザで到達することが困難である表面を硬化することが望ましい。例えば、クランクシャフトの場合には、主軸頸の面とロッド軸頸から略垂直に延びる壁面1005は、多くの場合、図2のような構成のレーザ光源1から出射されたレーザ光を平行にする。光が表面に対して小さな角度で受光したレーザは、大きい角度、例えば90度で、すなわち、表面に対して垂直に受光されたレーザ光よりもよく吸収される傾向がある。これは、それらの表面での電力の吸収率を低下させる、およびそれらの硬化がより困難かつ/またはエネルギーを消費する傾向があることができる。しかしながら、吸収も偏光に依存する。つまり、レーザビームは、電力の逆の偏光吸収を、(その表面に関して90度である)の表面に対して垂直に向けられているときに電力をより良く吸収され、一方の偏光(S又はP)のために、、レーザビームは、ほとんど表面と整列ビームの方向と、そのようなゼロに近い角度、即ち、小さい角度で表面に向けられる。このような壁は時々かなり大きく、かなり短い軸頸で分離されているクランクシャフトなどのワークピースの場合、少なくとも軸頸に近い壁の一部に対して、図2のような構成は、比較的小さな角度で壁1005にレーザ光を投射する必要がある。図8は、レーザ光源1の一部として使用することができる偏光システム4を示す。これは、このようなs偏光2'およびp型に入射レーザビームを分割する偏光キューブとしてビーム分割偏光子41を含み、その1つは、次に、例えば、表面を硬化させるために使用することができ、偏光ビーム2''は、メインジャーナル1001とロッドジャーナル1002との他方は、壁1005の表面を硬化させるために使用することができる。ミラー42,43及び44は、s偏光2 'およびp偏光2'が実質的に平行になるようにこれらを再調整するために使用可能である。図9は、概略的に、コンピュータの入力を有する、キーボードおよび/またはマウス、およびコンピュータ画面102のような手段101、例えば、パーソナルコンピュータまたは他のプログラマブルデバイス又は手段としてコンピュータ手段またはシステム100を示す。スキャンパターン2Gは、画面上に示されている。この場合に、スキャンパターンは、セグメントA、B、C、D、E、F、GおよびHの複数を含む多角形である。図示の実施形態では、セグメントは、多角形、すなわち、八角形を形成する。しかしながら、より大きな又はより小さな数のセグメントを使用することができ、セグメントの一部またはすべての代わりに真っ直ぐで湾曲することができ、セグメントは、多かれ少なかれ平行な複数のラインのような他の方法で分布可能である。コンピュータシステムは、オペレータが画面上のカーソルを移動させることにより、例えば、マウスまたは他の入力手段を使用することにより、例えば、パターンのレイアウトを変更することができるように配置することができる。代案として、タッチセンシティブスクリーンを使用することができる。ユーザがセグメントをタッチすることにより、それらの位置、方向および/または長さを変更することで、パターンの形状を操作することができる。パターンの形状は、二次元のエネルギー分布を持つ仮想のまたは等価な有効レーザスポットを生成するために、例えば、硬化されるべき表面をスキャンする際に、レーザスポットが描く経路を表す。画面上において、複数のラインA-Hの各々は、それぞれ、セグメントA-Hの一つに対応する。ラインA-Hの各々は、セグメントA-Hの対応する1つに関連したレーザスポットの特性、例えばスキャン速度の範囲を示す。図示の実施形態では、各ラインの隣の矢印、すなわち、スキャンパターンに従って、レーザスポットは、対応するセグメントに沿って移動する速度をセグメントに対して選択された特定のスキャン速度を示す。この場合、最高スキャン速度はセグメントAおよびEに割り当てられて、幾分低い高スキャン速度がセグメントC及びGに割り当てられており、より低い走査速度は、セグメントB、D、H及びFに割り当てられる。本発明の他の実施形態では、別のセグメントに異なるスキャン速度を割り当てること加えて、またはその代替として、異なるレーザビームパワーは、「オン」にレーザビームを選択することによって、または「オフ」として、異なるセグメントに割り当てることができ、または別の利用可能な電力状態で(例えば、10%、25%、50%、75%、または最大電力の90%)、所望のエネルギー分布に応じて、異なるセグメントに対する。セグメントは、スキャンスポットの中心に続く経路を示すことができ、スキャンスポットは、例えば、セグメントA及びCの半分の長さに対応する直径を有することができる。その場合、スポットがセグメントa-hによって経路を決定するたびに、セグメント内のエリア全体を直接レーザによって加熱された場合、同様に領域の一部として外部の距離までのセグメントは、レーザスポットの直径の半分に相当する。八角形2Gは、例えば、代わりに長方形の2A/ 2Bまたは図4および図5の実施形態における台形2C/ 2Dを使用することができる。この場合、例えば、セグメントCおよびGにおけるより高いスキャン速度は、アンダーカットフィレット1004のエリアに対する過熱を防止するの助長可能な潤滑油孔1003のエリアで加熱し、セグメントAおよびEで増加速度を低減することができる。また、コンピュータシステムは、プログラムすることができ(たとえば、1つのリモート油潤滑孔からエリアが走査されているパターン2Gの種類、パターンの他の種類を使用するように、異なるおよび/または異なる配向セグメントを有するパターンおよび/または隣接する領域は、あるいは潤滑油孔は、一部またはすべてのセグメントに割り当てられた異なる速度又はビームパワーを含む)でスキャンされる。例えば、潤滑油孔の周囲のエリアが異なる速度(および/またはビーム出力)でスキャンされているか否かに応じて、セグメントC及びgにおいて、セグメントの同一の輪郭を使用することができる。このシステムは、例えば、スキャンパターン(形状、スキャン速度、レーザビーム強度、レーザスポットサイズ等)のトライアルアンドエラーが可能であり、ワークのレーザ焼入れを行うと変更することにより、結果に応じて、1つ以上のセグメントに対して、走査パターン2Gの試行錯誤の適応を可能にするために温度計と一緒に使用することができる。また、あるいは代案として、コンピュータシステム100は、異なるセグメントa-hに割り当てられる走査速度から(および/またはそのようなレーザ光のパワー、レーザのスポットサイズ、等のような他のパラメータ)、短い時間でユーザが有用であることが示されるパターン構成を見つけることができるように、選択されたパターン2Gからもたらされる加熱をシミュレートするシミュレーションソフトウェアを提供することができる。シミュレーションの結果は、例えば、スクリーン102上に表示することができる。次に、ユーザは、パターン2Gと異なるセグメントに割り当てられたパラメータを動的に変更し、得られた加熱を観察することができる。このツールは、異なるセグメントに割り当てられた適切なパラメータ値を使用して、適切なスキャニングパターンを見つけるべく、所与のワークピースの設計に対して、容易に事前設計するために役立つことがある。例えば、この種類のシステムは、有利には、動的に適応するパターンのパラメータ(その形状及び寸法、例えば、拡大またはセグメントを短くすることによって)、例えば、および/またはパワー密度(例えば、レーザ光のパワーの内容を変更することによって)、パワー(走査速度を変更することにより)、例えば、レーザスポットの速度、などの各セグメントに関連するパラメータ、レーザビームと表面との間の入射角を変化させることによってデフォーカス集束レンズを変位させることなどによってレーザスポットのサイズを変化させることによって、および/または、例えば、所定のクランクシャフトに適したスキャンパターンまたはスキャンパターンを見つけるために使用することができる。本発明のいくつかの実施形態では、レーザビーム内のパワー分布を適合させることもできる。本発明のいくつかの実施形態では、図6(d)のいずれかに沿った特定のスキャンパターンのようなものを選択することができ、エネルギー分布の適合は、各セグメント51A、51Bに割り当てられる光パワーおよび/または走査速度を選択することによって確立することができる。セグメントの数を増加および/またはセグメントの長さを減少させることによって、一方では、パターン輪郭の生成を可能にする、走査パターンのセグメントベースの定義のこの種を使用して、および/またはその配向および/または位置を修正し、選択し、別の電源または、スキャン速度、ビームパワーおよび/または各セグメントのスポットサイズの値としてエネルギー関連パラメータの値を割り当て、容易に加熱されるべき表面の異なる部分に対する十分な加熱を得ることができるという知見が得られた。このようなクランクシャフトの潤滑油孔1003に隣接する領域として高感熱性サブエリアは、例えば、適切に処理されることができる。他のパラメータを、高感熱性エリアのために、より低感熱性サブエリアの両方(スポットに従う経路の点で)に、同じスキャンパターンを使用するものの、適応させることによって、例えば、より多くの熱敏感な部分の過熱を回避するために、(より低い光パワーなど、および/または)より高いスキャン速度を有する選択されたセグメントを選択することによって、セグメントCおよびGで速度を増加させる図9の場合には、中央にレーザビームをパターン2Gに従ってスキャンされる軸頸に渡って配置された潤滑油孔1003に対する過熱を低減するのに役立つ。図6Dの場合、中央セグメントのいくつかに低い(例えば、ゼロとして
、またはゼロに近い)ビームパワーを割り当てる際に、パターン、図6Dの矢印によって示唆さ方向に、ライン51の51Bの中心部を通って潤滑油孔を通過する時に過熱を防止するのを助けることができる。スキャンパターンと異なるサブエリアに関連付けられたパラメータ値の異なるセットを使用することにより、図5Aによって示唆されるように、例えば、クランクシャフトの回転中に、軸頸が、図9のレイアウトを有するスキャンパターンと、スキャンすることができる。レーザ光は、このように潤滑油孔に隣接する領域に対する過熱リスクを低減するために、より高速に、これらのセグメントをスキャンするようにするとき、潤滑油孔1003に達するか、スキャンされている表面の部分に接近すると、セグメントC及びGに関連する速度値は、変更することができる。セグメントの長さと方向を変更することによって、例えば、パターンの形状を変更することにより、さらにセグメントを除外することによって、処理されることができる。例えば、スキャンパターン2Gのセグメントgは、ワークピースの全回転中に、省略され得るか、潤滑油孔を含むワークピースに隣接する領域をスキャンするとき、または、その場合には、レーザスポットは、セグメントA、B、C、D、Eの上セグメントFまで、そしてその後のセグメントF、E、D、B及びCを介して、即ち、反対方向に戻り、セグメントHの端に到達するまで区間hからの経路をたどることができる。つまり、したがって、コンピュータシステムは、セグメント化されたスキャンパターンに基づいて、レーザ光の制御を提供し、ここでの異なる値、例えば、スキャン速度(すなわち、その経路に沿うレーザスポットの移動速度)、レーザビームパワー、及び/またはレーザスポットサイズが、異なるセグメントに割り当てられ、感熱性部分への損傷を低減するべく、損傷や危険を伴う表面の十分な硬化のために、スキャンパターンを適応させることにより表面の最適化されたエネルギー分布と最適化された加熱を提供する上で有用であり得る。上述された説明は、主に、スキャン速度について説明したが、レンズを移動させることにより、明らかに、加熱はまた、例えば、デフォーカスなどにより、レーザビーム、またはパワー密度の電力を変更することによって変更することができる。しかしながら、現存のレーザスキャン手段の多くに対して、速度を変更することは好ましい選択肢であってもよい。レーザを使用した場合のパワーを変更する、オン/オフ切り替えやビームのパワーの急激な変化に(例えば、現在および「オン」と「オフ」との間で変化させるため、約100マイクロ秒を必要とする多くのファイバレーザなど)を高速で可能にするレーザビームは、例えば、オンとオフを切り替えることによって、スイッチング時間が短縮される傾向から、ますます興味深い選択肢となる。仮想レーザスポットを提供するために(このような急速に図9、または図6dの一つとして、このようなセグメント化の有効レーザスポットのパターン2G以下の領域をスキャンすることで、「八角」レーザスポットなど)、高周波、高速でスキャンがで実行されなければならない。例えば、実際の実施形態において、レーザビームは、例えば、8ミリ秒の期間内のセグメントa-hに沿ってスキャンサイクルを完了することができる。多くの場合、このような低速オン/オフ切り替えのダイオードレーザまたは他のレーザを使用するときのように、それぞれ、すべてのセグメントで適切なレベルでそれを配置することが急速に十分な光のパワーを変更することは困難またはコストがかかる可能性がある。それは多くの場合、市販のスキャンシステムの容量の範囲内であるスキャン速度を変更することにより、より実用的になる。しかしながら、パワーレベルの切り替えのためのレーザ性能に応じて、ビームパワーの調節が好ましい。図9のスキャンパターンは、相互接続されたセグメントのセットを備える。しかしながら、使用されるレーザ及び/又はスキャン手段の種類に応じて、非相互接続されたセグメントを使用することができる。例えば、スキャンパターンは、線または点または複数の画素を含むことができる。ファイバレーザのようなレーザがオン/オフ切り替えを高速にするために可能に使用される場合、この種のスキャンパターンのがしばしば好ましい。それにより、非常に複雑で洗練されたパターンが、スキャンされている領域におけるエネルギー分布の非常に正確な選択を可能にするために、使用することができる。つまり、システムは、クランク軸における正確さ、例えば感熱性エリアのような存在を考慮して必要とされるエネルギー分布、油潤滑孔を提供するように調整することができる。図10は、スキャンパターン2GのセグメントA-Hの各々に割り当てられた第1及び第2のコンピュータメモリ110,120を概略的に示し、複数の列を有するメモリマトリクスを構成する各記憶エリアは、各列が一つのメモリ位置を含むコンピュータシステム100に関連する。列は、以下のデータを含むことができる。走査パターンのセグメント列111および121内のデータ、すなわち、パターンの形状を定義することができる(例えば、各セグメントの開始点と終了点など)セグメントの配置。走査速度列112および122内のデータは、レーザスポットが走査パターン又は経路の対応するセグメントに沿って移動する速度で、すなわち、各セグメントについて、そのセグメントに関連付けられた走査速度を定義することができる。ビームパワー列123および133内のデータはつまり、レーザ光のパワーは、それが対応するセグメントに沿って移動するように、各セグメントは、ビームパワーのために、定義することができる。スポットサイズ列114および124内のデータは、対応するセグメントに沿って移動するように、セグメントごとにレーザスポットのサイズ定義することができる。電動フォーカスレンズを移動させることによって、または、システムのZ軸、従ってスポットの大きさと、単位面積あたりの電力密度と並行してレーザ光源を移動させることにより、例えば、/集束レーザビームをデフォーカスすることによって、変更することができます。これは、オフ設定で示唆され、例えば、図7Aおよび図7Bを数字としてのレーザ光を、例えば、表面にレーザ光の入射角を変更することによって達成することができます。本発明のいくつかの実施形態では、唯一のこれらのコンピュータのメモリ領域、つまり、速度、ビームパワー、スポットサイズは、プロセス全体を通して一定にすることができる。他の実施形態では、例えば、潤滑油孔1003として、動的にワーク1000の表面とレーザ光源2との間の相対移動中に走査を変更するために使用できる2つまたはこれらのメモリ領域をより多く、ポインタ130がある。これは、走査される表面の部分、第1の走査パターンに近づく(パラメータ値の、その関連するセットと、例えば、走査速度、レーザビームのパワー、レーザスポットサイズおよび/または入射角のための)第一のメモリによって定義されますで過熱を防止するために領域110には、第2の記憶領域120によって定義される(走査速度、レーザビームのパワーおよび/またはレーザスポットサイズ等のパラメータ値の、その関連するセットを有する)は、潤滑油孔の縁において、第2の走査パターンで置換することができる。例えば、第二の走査パターンは、高い走査速度および/またはより低いレーザ光パワーを有し、および/または第1の走査パターンと比較して、スキャン中の潤滑油孔が横断するセグメントに関連する大きなレーザスポットサイズができる。
本発明のいくつかの実施形態では、列111−114の1つまたはいくつかが存在するであろう、またはプロセスのさらなる態様に関連するデータを特定する複数の列があってもよい。本発明のいくつかの実施形態では、走査速度、レーザスポットサイズおよびレーザ光パワーの1つまたは二つは、異なるセグメントとパターン間で変化する。いくつかの実施形態では、プロセス全体を通して一定のままで、一つのメモリ領域110のレーザスポット、ならびにそれに関連するパラメータ値に従う経路とが存在してもよい。図11は、複数の本発明の代替的な実施形態に係る各コンピュータの記憶領域140、150がメモリ位置141ピクセルまたは領域のセグメントに対応してスキャンする、2つのコンピュータのメモリ領域を概略的に示す。各メモリ位置は、レーザ、または特定の電力レベルを示す値のオンまたはオフ状態を示す値として、レーザパワーを示す電力状態値を含むことができる。つまり、(例えば、上のエリア前記レーザビームが伸びる平行な複数のラインに追従させることによって)走査される領域の上にレーザビームを走査すると、レーザ光をオン・オフに対応するメモリ位置の値に応じてすることができる。本発明のいくつかの実施形態では、各メモリ位置は、走査パターンの「行」に対応することができ、そして本発明の他の実施形態では、各メモリ位置は、ラインの部分またはセグメントに対応することができるピクセル化エネルギー分布ができるように達成される(例えば、セグメント化またはピクセル化エネルギー分布を有する走査パターンの例を図6Dに示される)。本発明のいくつかの実施形態では、各メモリロケーションは、割り当てられた(例えば、オン/オフおよび/または中間の電力レベルのような)異なるレーザパワーレベルを有するサブセグメントにスキャンされるピクセル化または領域の分割の詳細レベルに対応することができ、それらは、走査速度及びレーザのオン/オフの切り替えのための能力のような特徴に依存することができる。ただ、図10に示す実施形態の場合のように、ポインタ130は、従って、例えば、スキャンされた領域の特性に応じてエネルギー分布を適合させる、1つの走査パターンの種類と他の間で切り替えるために使用することができるように、潤滑油孔の存在が考慮される。図11によって示唆された20×20のピクセル化は、単に一例であり、行と行あたりのピクセルの他の任意の適切な数を使用することができる。例えば、行数は、与えられた走査周波数のために、走査手段の速度と、走査周波数(すなわち、走査パターンが繰り返される頻度で)、そして行当たりのピクセルまたはピクセルの数によって制限され、行数は、レーザのオン/オフ切り替え上の容量によって制限され得る。例えば、オン及びオフを切り替えるために100μSを必要とするレーザの場合、すなわち、1サイクル、かつ効果的に完了するために、100ヘルツの走査周波数と5線の走査パターンを用い、200μレーザスポット、1ラインあたりの画素数は約10であることがでる。図12A−12Cは、有効レーザスポットのエネルギー分布を潤滑油孔に適応するように適合させることができる方法を示す。潤滑油孔1003は、クランクシャフトのジャーナルの表面に配置され、表面は、クランクシャフトの回転軸と平行な第1の方向、そして第2の周方向Wにに延びる。図12Aでは、より高い電力密度及びより低い電力密度の末尾部分2Fと先端部2Eを有する略矩形状の等価な有効なレーザスポット5が使用される。しかしながら、油潤滑穴1003は、例えば、クランクシャフトの表面により起因するレーザ光源との間の相対運動に効果的なレーザスポットに接近すると、図12Bに示すように、その長手方向軸の周りにクランクシャフトの回転エネルギー分布実質的に油潤滑穴1003に隣接する領域の過熱を避けるように、先端部2eの中心に向かって力またはエネルギー密度を低減することによって適合される。ここでは、有効レーザスポットは、実質的にU字形である。続いて、油潤滑穴1003が主要部2Eを通過した後に、主要部の元のエネルギー分布は、油潤滑穴1003に適応するように適合されているトレーリング部分2Fにおけるエネルギー分布に対し、末尾部分の中心に向かって、エネルギーまたは電力密度を低減することによって、復元される。ここでは、有効レーザスポット5は、実質的に、本発明のいくつかの実施形態では、異なるセグメントに割り当てられた電力状態を図6Dのいずれかを使用して行に分割またはピクセル化を使用して得られ、適応することができる(逆U字型を採用していますようにする)効果的なレーザスポットの対応する形状を提供することを目的とする。すなわち、潤滑油孔が有効レーザスポットを通過しながら油潤滑孔に隣接する複数の感熱エリアに少ないエネルギーを印加するように、エネルギー分布が適合されている、どのような表面に適用されるよりも、潤滑油孔から離れて硬化される。潤滑油孔の周囲には潤滑油孔に隣接してより多くの感熱性サブエリアを損なうことなく硬化させることができる。U字型の有効レーザスポットの横の部分は、潤滑油孔の両側エリアを硬化するのに役立つ。図12A−12Cに示されるエネルギー分布の変化は、例えば、および/またはビーム出力は、例えば、方法を適合させることにより(走査パターンに沿って分配される方法を適合させることにより、走査パターンを適合させることにより得ることができる。ここで、レーザビームは、及び/又は走査パターン、等の異なるセグメントに対応して走査速度を適応させることによって)走査パターンの異なるセグメントの間にスイッチオン及びオフされる。図13は、エネルギー分布が油潤滑穴1003の上に配置されていない油潤滑孔の側面1003Aに複数のエネルギー5Aを適用することにより、考慮に油潤滑孔1003の傾きを取るように適合され、少なくされる様子、油潤滑孔がクランクシャフトの本体に向かって延びている側に、すなわち、油潤滑孔の上に配置される油潤滑孔の側面1003Bへのエネルギーを概略的に示す。これは、例えば、正確に走査パターンの異なるセグメントに割り当てられた電力状態を選択することによって得られる。エネルギーの適用の違いを考慮したことに伴う図13の右側に向かって下方に延びる油潤滑孔の存在に、導電性材料の不在は、油潤滑孔1003の右側に適用される熱の容量を減少させることを要し、加熱された領域から離れて行われる。それは左側1003Aよりも、図13の油潤滑孔の右側1003Bに厚い硬化層のために提供するであろうと基本的に、エネルギーの無駄にあたる両側に同量のエネルギーを適用する。それは、硬化層の最小厚さの要件を遵守する必要性に達するが、しかし、硬化層の最も薄い部分は、要件を満たす。つまり、油潤滑孔1003の右側の硬化層を余分な厚く作ることは、設計により設定された要件を満たすことに関して、単にエネルギーの無駄を何ら意味するものではない。また、両側に同量のエネルギーを適用する辺の一方は、過熱リスクを意味する可能性がある。このリスクは、油潤滑孔の内壁と硬化するトラックの表面との間の角度、即ち、角度がシャープである油潤滑孔が延びた側にシャープであるという事実に起因して増加されるエッジは、右の鋭利であることを意味し、左よりも図13の油潤滑孔の右は、過熱した場合の被害のリスクを増加させる。上に示したように、温度の大幅な変動を避けるために、高速スキャンが好ましい。レーザビームを繰り返し複数の平行な線に沿って等価なまたは仮想有効なレーザスポットを形成する場合、2次元走査パターンに沿って走査したときの部分が前記走査パターン内のまま、ワークの部分を繰り返し加熱される。仮想レーザスポット全体で繰り返しスキャンしたときに、実際のレーザスポットは、表面の異なるスポットを繰り返し加熱し、これらのスポットは、このように最高温度に繰り返し加熱され、それらが加熱された各時間の後、走査の次のサイクル中に、ある走査パターンに沿ってレーザビームの次の走査の間これらは再び加熱されるまで冷却する傾向がある。これは、局所的な温度の最大値とできるだけ小さい極小間のこれらの変動を維持することが望ましい。この目的のために、高い走査速度と周波数が好ましい。図14Aおよび14Bは、概略的に固定された走査パターンと電源を使用してクランクシャフトに実施した試験の結果を示す。図14Aの場合には、50ヘルツの走査周波数が使用された(すなわち、レーザビームは、毎秒50回の完全な走査パターンに従った)。これは、最高温度に達した後、極大値と極小値の間の変動は200℃に近く、実際には、100℃以上の振幅を用いて行ったことが分かる。それは不十分な硬化または硬化深さおよび/またはリスクを過熱するリスクを意味する可能性があり、問題となる可能性がある。図14Bは、概略的に図14Aのものと同じ条件で、250ヘルツの走査周波数で行う試験の結果を示す。ここでは、グラフの厚さに対応する極大値と極小値との間の温度振動は、100°Cよりも実質的に小さい振幅を持っていることがみられる。図15A及び15Bは、有効レーザスポット5が30−180度の部分を加熱するように、油潤滑穴1003とアンダーカットフィレット1004と、環状セグメント1001Aのクランクシャフトのジャーナル1001に適用することができる方法を概略的に示す。有効レーザスポット5がジャーナルWの周方向に多くて180度以下で拡張するように、ジャーナルは、回転Xのその軸周りに回転させることができ、全体の環状の部分を加熱する、および/またはレーザ光源クランクシャフトに対して変位させる。環状セグメント1001Aを加熱するように、全周を加熱するように、加熱は、例えば、ジャーナルを回転させることができ、図15Aにアンダーカットフィレット1004の近くに示されるようにジャーナル1001の一側端部で開始し、十分な温度に十分な時間の間行われ、必要な硬化深さを保証する。軸頸の全表面を硬化させるために、効果的なレーザスポット5は、徐々に、例えば、X軸と平行にすることによって、又はレーザ光源を変位させることにより、回転軸Xと平行な方向に、ジャーナルに沿って移動されます走査ミラーを用いて、X軸に平行なビームを変位させる。つまり、加熱された環状セグメント1001Aは、当該方向に拡張され、前に加熱された部分が急冷が達成されるように冷やすために始めることができる。有効レーザスポットは、ジャーナルの大部分にわたって変位しているか、図15Bにおいては、上に移動するときに急冷することができ、それを加熱し、観察される。有効レーザスポットは、図15Bの右端のフィレットに達するまで変位する。二次元のエネルギー分布は、これらの部品の過熱を防止するために、フィレット1004の近傍に適応し、また、油潤滑孔1003に対応する。硬化を行うこの方法の利点は、すなわち、硬化領域の成長が他のジャーナルの一方の端部からの方向で起こるように、既に硬化部分のない再加熱は、ジャーナルの回転軸Xと平行な第1の方向ではなく周方向Wで存在しないことである。すなわち、硬化は、周方向ではなく、左から右に生じる。つまり、基本的に、望ましくない再加熱、すでに硬化した表面領域の過度の加熱にのリスクがない。周方向のジャーナルの表面を硬化させる場合には、一般的に、つまり、周方向にトラックに沿って移動を完了するに近い効果的なレーザスポットは、以前に硬化された部分に到達する領域の重複領域に特別な注意を払わなければならない。あらかじめ硬化された部分の高温での再加熱は、このような硬化のために使用される温度として、一般的に避けるべきである。図19A−19Cは、図12A-12Cのものと同様の構成が、代わりの油潤滑孔、レーザスポットがジャーナルの前に硬化部分1001Bに相当に接近している感熱性部分領域を示す。本実施形態では、概略的に図19Aに示されるように、有効レーザスポットが(図6Dのものと同様の)セグメントのアレイで構成されており、有効レーザスポットの先端が先に加熱部分1001Bに到達すると、第一段目のセグメントは、例えば、前記セグメントに対応し、「オフ」状態にレーザを設定することによって、(図19B参照)が解除される。図19Cでは、有効レーザスポットを周方向に縮小していることにより、セグメントの更なる行が、キャンセルされている。すなわち、トレーリングエッジまたは部分が追いつく一方の部分をリードする場合、以前に硬化された部分1
001Bを満たす場合に有効レーザスポットが消滅するまで、効果的なレーザスポットは次第に、その前縁または部分で解除される。本発明の他の実施形態において、有効レーザスポットは解除されず、全体的な電力/エネルギーそれらが低減される。つまり、有効レーザスポットは、焼戻しに適した温度に表面を加熱するため、ジャーナル1回以上移動することができる。本発明の他の実施形態では、レーザ光源を複数同時に環状セグメント1001Aの全360度に加熱するように、同時に、例えば、環状セグメントのいくつかのセクションを加熱するために使用することができる。これは、上述したように、負に、硬化の品質に影響を与える可能性が温度の急速変動を回避するために、クランクシャフトを回転させる必要性を低減する。クランク軸の回転が非常に高速だと、実装にコストがかかる可能性があり、迅速に移動するオイル潤滑穴に隣接する領域の過熱を避けるために、それはより困難に有効なレーザスポット又はスポットのエネルギー分布を適合させるために行うことができる。従って、本発明は、レーザ表面硬化に非常に柔軟なアプローチを提供し、したがって、このような硬化層の深さ、例えば、局面で非常に有用な、例えば、熱伝達感度の点で実質的に異なる特性を有する表面部分を有する被加工物のレーザ焼入れ、及び/又は実質的に異なる要件とすることができる。システムは、例えば、高温計からのフィードバックと、PID制御で動作可能である。一方で、本発明は、本明細書に記載された特定の実施形態に限定されるものではなく、あらゆる当業者によって考慮され得る(例えば、材料、寸法、成分、構成等の選択に関する)あらゆるバリエーションを特許請求の範囲において定義された本発明の全般的な範囲に属するものとしてカバーすることは明らかである。
本発明は、鋼のような複数の鉄材料の複数の製品、例えば、複数のクランクシャフトのレーザによる表面硬化の分野に関する。
材料をその融点より低い高温で加熱した後、それを焼き入れ、すなわち、固いマルテンサイトを形成するように急速に冷却することにより、中炭素鋼のような複数の鉄材料を硬化することが、当技術分野において周知である。加熱は、複数の炉で、または誘導加熱によって行われ、冷却は、水または他の複数の成分と混合された水のような冷却流体を適用することによって行われる。
しばしば、硬化される必要があるのは表面のみである。表面硬化は、材料の耐摩耗性を向上させ、場合によっては、残留圧縮応力に起因する疲労強度を増大させるために使用可能である。表面硬化は、使用時に大きな摩耗を受ける複数の表面、例えば、複数のクランクシャフトの複数のジャーナル表面のような複数の軸受表面を硬化するために有用たり得る。
レーザ表面硬化は、高エネルギーのレーザ光が基板表面を硬化させるための熱源として用いられる表面処理方法である。例えば、以下を参照すると、レーザ光を用いて表面硬化を実現させることが公知である。
F. Vollertsen, et al., "State of the art of Laser Hardening and Cladding", Proceedings of the Third International WLT-Conference on Lasers in Manufacturing 2005 Munich, June 2005;
M. Seifert, et al., "High Power Diode Laser Beam Scanning in Multi-Kilowatt Range", Proceedings of the 23rd International Congress on Applications of Lasers and Electro-Optics 2004;
S. Safdar, et al., "An Analysis of the Effect of Laser Beam Geometry on Laser Transformation Hardening", Journal of Manufacturing Science and Engineering, Aug. 2006, Vol. 128, pp. 659-667;
H. Hagino, et al., "Design of a computer-generated hologram for obtaining a uniform hardened profile by laser transformation hardening with a high-power diode laser", Precision Engineering 34 (2010), pp. 446-452;
米国特許公報第4313771A号
ドイツ特許出願公開公報第4123577A1号
欧州特許出願公開公報第1308525A2号
欧州特許出願公開公報第2309126A1号
特開2008−202438 特開昭61−58950
米国特許公報第4797532A号
表面硬化のためにレーザ光を用いることは、レーザビームは、ワークピースから本質的に独立しており、容易に制御され、真空を必要とせず、燃焼生成物を生成しないといういくつかの利点がある。また、レーザビームは、概して、金属の製品またはワークピースのみを局所的に加熱するため、ワークピースの残りは、ヒートシンクとして作用することができ、自己焼き入れとしても知られる急速冷却を確実にする。すなわち、ワークピースの冷たい内部が、マルテンサイトが表面に形成可能となるような高い率での内部への熱伝導によって、熱い表面を焼き入れするために十分に大きいヒートシンクを構成する。つまり、複数の冷却流体のような外部冷却媒体の必要性を、なくすことができる。
複数の金属硬化加工においてレーザ光を熱源として用いることに関する1つの問題は、硬化ゾーンの幅が、レーザスポットの寸法によって限定されることである。光学系を用いて、スポットの形状を変更すること、例えば、多かれ少なかれ均一な強度分布を有する実質的に矩形のスポットを与えることが公知である。代案として、熱源が軌跡に沿って移動する矩形の源と見なされ得るように、軌跡にわたってスポットを繰り返し移動させるべく、(駆動手段に関連付けられたスキャンミラーのような)スキャン手段が、使用可能である。
その複数の利点にも関わらず、レーザ硬化は、この技術の多数の実際の用途のために十分なほどには生産率が高くないと考えられていること、及び、加熱されるべき全ての部分が所望の程度にまで加熱されることは実現困難であることから、使用されない場合が多い。正しい加熱は、過熱による損傷を生じることなく、必要な深さで、硬化及び焼き戻しが確実に実現されるために必須である。
例えば、クランクシャフト(ピストンの往復直線運動を回転に変換するエンジンの部分)は、複雑な製品であり、レーザ光による硬化が困難と見なされることが多い。クランクシャフトの例が、図1に示される。クランクシャフト1000は、鍛造または鋳造された鋼製品であり、2つまたはそれより多くの中央に構成された同軸の円筒状ジャーナル1001(「主ジャーナル」としても知られる)及び1つまたは複数のオフセットされた円筒状クランクピンジャーナル1002(「ロッドジャーナル」としても知られる)を有し、これらは、複数のジャーナルの複数の表面に対して実質的に垂直に延びる複数の壁1005を確立する複数のカウンターウェイト及び複数のウェブによって分離される。製品の複雑な形状により、レーザビームでその表面を正しく「スキャン」することは困難となり得る。硬化する複数の軌跡または複数のエリアは、異なる複数の幅を有することができ、及び/または非対称であることができ、及び/または(複数の壁1005及びジャーナル1001および1002の複数の表面の場合)異なる複数の平面に構成されることができる。つまり、今日では、その後にポリマーベースの水焼き入れ加工を行う高周波数誘導加熱が、複数のクランクシャフトの硬化に頻繁に用いられる。しかしながら、この加工は、所望の硬化を達成するために有用であることが明らかであるもの、特定の複数の欠点を含む。例えば、誘導によって加熱を生成するための複数のインダクタは、クランクシャフトの特定の設計に従って設計されなければならないため、柔軟性が減少し、誘導機械を新たな種類のクランクシャフトに適応させるために時間を費やし、コストがかかる可能性がある。さらに、誘導による加熱は、クランクシャフトを所望の程度にまで加熱するために必要なエネルギーに関してコストがかかる。さらに、冷却加工は複雑でコストがかかり、必要な冷却流体の大量使用に起因して、環境の観点から問題がある。その上、冷却流体の温度及び流れのような複数のパラメータは、正しい硬化加工を確実にするために、慎重に制御されなければならない。
つまり、熱源としてレーザ光を用いる硬化は、柔軟性、環境への優しさ、エネルギー消費及びコストに関して、魅力的な代案たり得る。
ドイツ特許公報第10 2005 005 141B3号は、クランクシャフトの複数のジャーナルの複数の表面をレーザ硬化するための方法を開示する。この方法によれば、複数のジャーナルの各々をレーザ光で加熱する間に、クランクシャフトを保持した後、主ジャーナル軸周り及び複数のロッドジャーナルの複数の軸周りにこれを回転させる6軸産業用ロボットが用いられる。つまり、産業用ロボットの移動性能を用いて、レーザ源とレーザビームが投射される表面との間の距離が一定に保たれる。
米国特許出願公開公報第2004/0244529A1も、クランクシャフトの小さい領域を硬化させるために、レーザを用いることを教示する。この場合に、レーザ光は、複数の離間した部分を硬化させるために用いられ、当該部分の範囲は、硬化されるべき領域にわたって異なる。クランクシャフトの小さい部分のみがこれらの離間した複数の部分で硬化されるため、他の複数の高感熱性部分に対する過熱を懸念する必要がない。
ドイツ特許出願公開公報第3905551A1号は、クランクシャフト表面を硬化させるためのシステムを教示し、レーザビームは、クランクシャフトに投射され、その後ビームがクランクシャフトの複数の異なる部分に投射されるように、ビーム及びクランクシャフト間で相対移動が生じる。ビームのパワーまたはパワー分布は、クランクシャフトの各部分の形状に応じて、かつ、レーザビームの所望の浸透深さに応じて、適合される。ドイツ特許出願公開公報第3905551A1号に教示されるように、当該アプローチは、高生産率を考慮していない可能性があるこという問題がある。硬化された層において十分な深さを実現するためには(自動車産業では、典型的には、有効硬化深さに関して少なくとも800、1000、1500、2000または3000μmもの硬化深さが必要とされ、200μm以上の深さまで100%変換されたマルテンサイトを有することが望まれることが多い)、表面の特定の部分の温度を上げるだけでは不十分であり、表面のみならず、表面下の材料を十分な深さにまで加熱するために、エネルギーは十分に長い時間適用されなければならない。表面の過剰な加熱は望ましくないため、所望の浸透を実現するためには、単にレーザビームのパワー量ではなく、レーザ加熱が関連エリアに適用される時間を増大させることが最良の方法である。ドイツ特許出願公開公報第3905551A1号に開示されたシステムでは、レーザビームは、固定されたままで、特定のエリアに適用されるが、主ジャーナルまたは複数のロッドジャーナルの大部分にわたる適度な加熱及び浸透を得るためには、大量の時間が必要であると見られる。つまり、ドイツ特許出願公開公報第3905551A1号が記載する方法は、クランクシャフト表面において複数の非常に特定の部分を硬化させるためには適切であるが、複数のジャーナルの複数の表面全般を硬化させるためには適切とはいえない場合がある。
欧州特許出願公開公報第1972694A2号には、1つまたは複数のレーザを用いて、クランクシャフトの複数の特定の部分、すなわち、複数のフィレット部分を硬化することが主に記載される。レーザ光は、硬化されるべき部分に向けられ、クランクシャフトは、回転させられる。開示された方法は、予備加熱段階、主加熱段階及び加熱後段階を含むことができる。レーザ照射が一定に維持される間に、クランクシャフトの回転が生じると考えられる。欧州特許出願公開公報第1972694A2号は、クランクシャフト表面の複数の高感熱性部分に対する過熱のリスクについては言及していない。
米国特許出願公開公報第2004/0108306A1号は、自動車製造業者が、誘導加熱加工を用いて、クランクシャフトの複数の軸受、すなわち、主ジャーナル及び複数のロッドジャーナルの複数の表面を硬化させる一方で、機械的ローリング加工が、圧縮応力を改善するべく、複数のフィレットをロール掛けするために用いられることを認識する。しかしながら、米国特許出願公開公報第2004/0108306A1号によれば、これらの複数の加工は、資本集約的、時間集約的であり、不均一性をもたらし、焼き戻し加工を必要とする複数の潤滑油孔においてクラックが生じる傾向があるといわれる。米国特許出願公開公報第2004/0108306A1号は、機械的ローリング加工の必要性をなくすことを目的とする、レーザによるフィレットの加熱処理を教示する。光学式パイロメータの使用による閉ループ温度制御が、提案されている。レーザ及びフィレット間で固定された加熱距離を維持するための制御可能x,yメカニズムの使用が、提案されている。
S.M.Shariffらの「Laser Surface Hardening of a Crankshaft」、SAE2009−28−0053(SAE International)は、説明された複数の異なる位置で、硬化された硬化深さが200μmを上回り、硬度が500−600HVとなることを目的とする、クランクシャフトのレーザ表面硬化を論じている。当該文献は、複数の孔周辺における、境界でのヒートシンク効果の減少及び熱の蓄積に起因する溶融の問題を述べている。当該問題は、適切な開始位置を選択し、複数の加工パラメータを許容範囲で変化させることによって、孔境界における予備加熱効果を減少させることにより、対処可能であることが述べられている。
複数のクランクシャフトのような複数の複雑な製品に関して、レーザ硬化が多用されない1つの理由は、複数の部分の正しい加熱、すなわち、複数の感熱性部分の過熱を回避する一方で、正しい硬化を保証する十分な加熱(概して、硬化された層は、少なくとも1000、1500、2000μm以上のような、少なくとも800μm以上の有効硬化深さを有さなければならず、及び/または200μm以上のような深さまで100%変換されたマルテンサイトを有する)を実現することが困難となり得ると考えられることである。例えば、図1に示されるものようなクランクシャフトの場合、複数の潤滑油孔1003に対応する複数のジャーナルの加熱を考慮するものに対して、及び任意に、複数のフィレット1004を考慮するものに対しても、注意を払わなければならない。例えば、ジャーナルの回転中に表面全体を加熱するために、大きいレーザスポットがジャーナル表面に単に投射され、表面の各部分が同量のエネルギーを受けるように、レーザビームの回転速度及びパワーが一定に保たれ、かつ、所望の硬化を生成するべく表面の大部分に対する適度な加熱を実現するために、このエネルギーが十分である場合に、複数の潤滑油孔の複数の境界において、加熱が過剰となり、つまり、当該複数の境界を損傷する可能性がある。同じことが、共通してアンダーカットされた複数のフィレットにおいて生じる可能性がある。つまり、複数の境界が、過熱された場合に損傷を受ける可能性がある。
[本発明の説明] 本発明の第1の態様は、クランクシャフトのジャーナルの表面をレーザ硬化する方法に関し、ジャーナルは、硬化されるべき表面エリアを備え、表面エリアは、クランクシャフトの回転軸(X)と平行な第1の方向及びジャーナルの周方向(W)に対応する第2の方向に延在し、表面エリアは、少なくとも1つの高感熱性サブエリア及び少なくとも1つの低感熱性サブエリアを備え、少なくとも1つの高感熱性サブエリアは、クランクシャフトの潤滑油孔に隣接するエリアを含み、方法は、
表面エリアに有効レーザスポットを生成するために、レーザ源からのレーザビームを表面エリアに投射する段階であって、有効レーザスポットは、第1の方向において、硬化されるべき表面エリアの大部分にわたって(例えば50%より多く、75%より多く、85%より多く、または90%もしくは95%より多く、例えば99%より多く、または100%にもわたって、及び、特に、例えば、表面エリアが、例えば少なくとも800μm以上の有効硬化深さが望ましい場合には、100%を超えないとしても、硬化されるべき表面エリアの大部分にわたって)延在する段階と、
その後または徐々に、周方向において、表面エリアの複数の異なる部分に有効レーザスポットを投射するために、周方向において、クランクシャフトの表面とレーザ源との間の相対移動を生じさせる段階とを備え、
有効レーザスポットは、2次元エネルギー分布(レーザビームのエネルギーまたはパワーが有効レーザスポット内で分布する状態に関する)を有する。
方法は、潤滑油孔隣接エリアに対する過熱を回避するために、低感熱性サブエリアを加熱する場合に、潤滑油孔隣接エリアを含む高感熱性サブエリアを加熱する場合とエネルギー分布が異なるように、エネルギー分布を適応させる段階をさらに備える。それにより、当該適応を実行することによって、例えば、複数の潤滑油孔の複数の境界を過熱及び損傷することなく、硬化されるべき表面エリアの効率的かつ適度な加熱を実現することができる。
本発明のいくつかの実施形態では、有効レーザスポットを表面エリアに適用する時間の大部分(例えば、少なくとも50%、75%、90%、95%またはそれより多く)の間で、有効レーザスポットは、周方向に、少なくとも5mm、好ましくは少なくとも7mm、より好ましくは少なくとも10mm、さらにより好ましくは少なくとも15mm、20mm、30mmまたはそれより大きく、例えば少なくとも50mmの幅(またはジャーナル表面の湾曲に沿って線形の拡張)を有する。周方向、すなわち、レーザ源とジャーナル表面との間に生じさせられる相対移動の方向における十分な拡張を用いることにより、合理的に短い時間内で硬化加工を完了させる一方で、硬化されるべき表面エリアの各部分を十分な時間加熱することが可能となる。すなわち、有効レーザスポットの周方向における十分な拡張により、過剰な高温を用いることなく、十分な浸透または硬化深さを達成する一方で、比較的高い速度での相対移動を実行することが可能となる。この理由により、周方向において有効レーザスポットの幅が大きいことが、好ましい可能性がある。勿論、適用可能なパワーは、エリアの十分な加熱を与えるために十分でなければならないため、用いられるレーザのパワーに関する性能と、有効レーザスポットによってカバーされる表面エリアとの間でバランスがとられていなければならない。第1の方向に1または数cmオーダの幅を有する複数のジャーナルを有する複数の自動車のクランクシャフトに対して、数kW(例えば3−4kW)の範囲の出力パワーを有する複数のレーザを用いる場合に、有効スポットは、例えば、周方向に1cmオーダの幅を有することができる一方で、レーザとジャーナル表面との間の線形相対速度は、約60cm/分オーダとなり得るという知見が得られた。多くの産業上の目的のため、レーザビームは、少なくとも3kW、より好ましくは、例えば6kWのパワーを有さなければならないと考えられている。
本発明のいくつかの実施形態では、有効レーザスポットは、等価なまたはレーザビームを第1の方向及び第2の方向にスキャンすることによって得られた仮想レーザスポットであり、これらの2つの方向の間の複数の方向、すなわち、第1及び第2の方向に対して傾斜した、例えば、直線のまたは湾曲した経路または複数の線に沿った複数の方向を含み、スキャンサイクル中の2次元エネルギー分布が、スキャン速度、スキャンパターン、レーザスポットのサイズ、レーザビームのパワー及びレーザビーム内のパワー分布によって決定されるように、レーザスポットがスキャン速度で変位するスキャンパターンに繰り返し従う。つまり、これらの複数のパラメータのうち1つまたは複数が、2次元エネルギー分布を動的に適応させるために、使用可能である。これにより、レーザ源とワークピース表面との間で相対変位する間に、すなわち、例えば、クランクシャフトがその長さ方向軸周りに回転する間に、有効レーザスポット内の2次元エネルギー分布だけではなく、有効レーザスポットのサイズ及び形状を、容易に適応させ、及び変更することが可能となり、それにより、複数の潤滑油孔と隣接する複数のエリアのような複数の高感熱性サブエリアに対する過熱を回避するために、2次元エネルギー分布を適応させる。本発明のいくつかの実施形態では、潤滑油孔隣接エリアに対する過熱を回避するために、エネルギー分布が、低感熱性サブエリアを加熱する場合に、潤滑油孔隣接エリアを含む高感熱性サブエリアを加熱する場合と異なるように、エネルギー分布の適応は、スキャン速度、スキャンパターン、レーザスポットのサイズ、レーザビームのパワー及びレーザビーム内のパワー分布のうちの少なくとも1つを適応させることによって実行される。本発明のいくつかの実施形態では、エネルギー分布の適応は、レーザビームのパワーを適応させることによって、例えば、レーザスポットをスキャンパターンに沿ってスキャンする間に、レーザビームをオン及びオフにすることによって実行される。例えば、ファイバレーザのようなレーザを用いる場合に、レーザビームは非常に高速でオン及びオフに切り替え可能であり、これにより、スキャンパターンに従う間に、レーザビームをオン及びオフにすることによって、所望のエネルギー分布を得ることができる。つまり、加熱は、スキャンパターンの特定の複数の線または複数の線の複数の部分をスキャンする間に、レーザビームをオンにすることによって実現可能である。
本発明のいくつかの実施形態では、レーザビームを、毎秒少なくとも300回、より好ましくは毎秒少なくとも600回、より好ましくは毎秒少なくとも1,000回、より好ましくは毎秒少なくとも5,000回、さらにより好ましくは毎秒少なくとも10,000回、複数の適用可能なパワー状態のうちの1つに選択的に設定するために、レーザスポットをスキャンパターンに沿ってスキャンする間に、選択的にレーザビームのパワーを適応させることによって、エネルギー分布は、少なくとも部分的に制御される。用語「パワー状態」は、複数の異なるパワー状態が、例えば、0kW、1kW、4kW、5kW、6kW、9kW及び10kWのような、レーザビームの複数の異なるパワーレベルに対応するように、レーザビームが所定の平均パワーを有する状態を指す。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、2つのパワー状態、すなわち、レーザビームがオンである場合の「オン」状態、及びレーザビームがオフ、すなわち、パワーがゼロである(またはパワーがゼロに近い)場合の「オフ」状態が存在し得る。しかしながら、あらゆる他の適用可能なパワー状態、すなわち、平均パワーがゼロより高く、レーザビームの最大パワーより小さい複数のパワー状態も、使用可能である。例えば、レーザビームの最大パワーが10kWの場合に、0kWおよび10kWに対応する2つの適用可能なパワー状態が存在可能であり、及び/または、2kW、4kW、5kW、6kW及び/または8kWのような複数の中間値に対応する複数の適用可能なパワー状態が存在可能である。表現「適用可能」は、複数のパワー状態は、用いられているレーザ装置により実現可能であるという事実を指す。表現「に設定される」は、現実の状態変化が毎秒何回も生じなければならないことを示唆するものではない(例えば、いくつかの隣接セグメントは、1つのセグメントから次のものに通過する場合に、レーザのパワーを変化させる必要がないように、これらに割り当てられた同じパワー状態を有してもよい)が、適切な場合に、例えば、制御システムによって与えられた複数の命令に従う場合はいつでも、レーザがパワー状態を何回も変化させることが可能なように構成されることを示す。それにより、エネルギー分布のセグメント化または「ピクセル化」は、毎秒300、600、1000、5000または10000セグメントまたはピクセルで実現可能であり、レーザビームは、各セグメントもしくはピクセルの部分の中で、または少なくとも当該セグメントまたはピクセルの中で、当該セグメントまたはピクセルに割り当てられたパワー状態によって決定されるように、平均パワーを有する。例えば、スキャンパターンに周波数50Hzで繰り返し従う場合に、スキャンパターンに沿ったエネルギー分布は、例えば、スキャンパターンに沿って分布する、毎秒300、600、1000、5000および10000セグメントまたはピクセルにそれぞれ対応する6、12、20、100または200セグメントまたはピクセルに割り当てられた複数のパワー状態によって決定可能である。毎秒あたりピクセルの率が同じで、スキャン速度100Hzの場合に、エネルギー分布は、スキャンパターンの3、6、10、50及び100セグメントまたはピクセルによって、それぞれ決定される。概して、少なくとも6セグメントまたはピクセルを用いることが好ましく、すなわち、例えば、スキャンパターンは、各々が3セグメントを有する2行を備えることができ、各セグメントは、それに割り当てられたパワー状態を有する。明らかに、複数の異なるパワー状態の間で変化が生じた場合に、レーザビームのパワーが前のパワー状態及び新たなパワー状態によって決定されたパワーと異なる複数の過渡期が存在することがあり、例えば、ビームパワーは、パワー曲線に傾きがある一方で、レーザビームスキャンパターンに沿ってスキャンする間に1つのセグメントから次への推移が生じるように、増減可能である。
このアプローチ、すなわち、スキャンパターンの複数の異なるセグメントまたはピクセルにおけるビームのパワーの変化が、例えば、複数の潤滑油孔の複数の境界に対する過熱を回避するために、エネルギー分布に高柔軟性を与え、エネルギー分布の確立及び動的な変更を容易にする。セグメント化またはピクセル化のアプローチにより、適切な加熱パターンが実現されるまで、複数のトライアルアンドエラーテストを用い、複数の異なるセグメントに割り当てられた複数のパワー状態を適応させることによって、適切な複数のエネルギー分布パターンを容易に見出すこともできる。市販のファイバレーザのような適切な複数のレーザが用いられる場合には、複数の異なるパワー状態の間で、高速での切り替えが生じ得る。ファイバレーザは、他の適用可能な複数のレーザよりコストがかかる場合があるが、例えば「オン」及び「オフ」状態の間で、すなわち、他の複数のパワー状態/複数のパワーレベルの間で制御された切り替えを行うために必要な時間が短いことに起因して、有利となり得る。このような複数のレーザのオン/オフまたはオフ/オンの切り替え時間は、1msより小さく、例えば0.1msまたはそれより短くなり得る。
本発明の複数の実施形態のうちのいくつかでは、スキャンパターンは、複数のセグメントを備えることができ、複数のセグメントの各々は、所与の時点で、それに割り当てられた複数の適用可能なパワー状態のうちの1つを有する。低感熱性サブエリアの加熱中における、複数のセグメントのうちの少なくとも1つに割り当てられたパワー状態は、潤滑油孔隣接エリアを含む高感熱性サブエリアの加熱中と異なる可能性があり、すなわち、例えば、有効レーザスポットが潤滑油孔に近づく場合に、特定の複数のセグメント又は全てのセグメントに割り当てられたパワー状態を変更することによって、エネルギー分布は動的に適応され得る。
代替的または追加的に、エネルギー分布の適応は、レーザスポットをスキャンパターンに沿ってスキャンする間に、スキャン速度を適応させることによって、(さらに)実行可能である。固定レーザビームパワーの場合に、より速いスピードは、より少ないエネルギーが適用され、逆もまた同様であることを示唆する。
本発明のいくつかの実施形態では、有効レーザスポット内の複数のポイントにおける温度変動が、温度の極大とそれに続く極小との間で、200℃より小さく、好ましくは150℃より小さく、より好ましくは100℃より小さく、さらにより好ましくは50℃より小さい振幅を有するように、スキャンが十分に高いスキャン速度で実行される。この文脈では、変動の振幅は、初期の有効レーザスポットの先端境界における、最高温度までの大幅な加熱、及びその後の有効レーザスポットの末端境界における低温までの冷却を除き、温度曲線の極大及び極小間で繰り返される複数の変化の振幅を指す。適切な硬化のためには、金属が急速に十分な高温に達し、大きな変動は硬化の質に負の影響を与える可能性があるため、金属がその後、当該温度においてそのような変動がなく、当該十分な高温に、十分な時間長にわたって留まることが望ましい。10、25、50、75、100、150、200または300Hzを超えるスキャン速度(すなわち、毎秒のスキャンパターンの複数の繰り返し)は、加熱されたスポットが次のスキャンサイクルの間にレーザビームによって再加熱される前に、スポットの温度が急落することを防止するために、適切たり得る。適切な硬化は、複数の特定の最小温度を必要とし、所望の硬化深さに急速に到達された場合に、複数の高温が好ましい。しかしながら、過剰な温度は、例えば、粒度の増大に起因する負の影響を、質に与え得る。つまり、折衷的な温度が見出されなければならず、この温度からの偏差ができる限り小さくなければならない。つまり、毎秒のサイクルに関する高スキャン速度が、温度の揺らぎまたは変動の振幅を減少させるために、好ましい可能性がある。
本発明のいくつかの実施形態では、有効レーザスポットにおけるエネルギー分布は、第1の方向において有効レーザスポットの複数の端部に向かって、第1の方向において有効レーザスポットの中央に向かうより大きいエネルギーが適用されるようになる。熱エネルギーが吸収され、クランクシャフトにおいて分布する態様に起因して、有効レーザスポットの複数の側方端部に向かってより大きいエネルギーを適用することが、硬化された層の実質的に均一な厚さ、すなわち、硬化された層が複数の側方端部に向かって非常に薄くなり、その中央に向かって曲線に従ってゆっくりと増大する断面ではなく、実質的に矩形の断面を得るために役立つという知見が得られた。しかしながら、ジャーナルの複数の端部において、複数のアンダーカットまたは複数のフィレットの過熱を回避するためには、注意を払わなければならない。
本発明のいくつかの実施形態では、有効レーザスポットによって走査されるエリアが、最初により高い平均パワーでレーザ照射を受け、その後、より低い平均パワーでレーザ照射を受けるように、エネルギー分布は、有効レーザスポットの先端部分または境界において、有効レーザスポットの末端部分または境界より高いエネルギー密度を有する。このことにより、必要な硬化深さを実現するべく、有効レーザスポットが特定のエリアに適用されなければならない時間を減少させるために、硬化のために適切な温度が急速に到達される効率が増大する。つまり、例えば、ジャーナルの表面に対する硬化を完了するための時間が少なくなる。
本発明のいくつかの実施形態では、方法は、潤滑油孔の両方の側面で、第1の方向において、有効レーザスポットを表面エリアに適用する段階を備え、潤滑油孔が複数の側面のうちの第1の側面下を延在せず、複数の側面のうちの第2の側面下を延在するように、潤滑油孔は、傾斜した態様で内側に向かって延在し、有効レーザスポットは、複数の側面のうちの第1の側面に、複数の側面のうちの第2の側面より大きいエネルギーを適用するように適合される。複数の側面のうちの第2の側面下における潤滑油孔の存在に起因して、ヒートシンク効果は、当該側面においてより低い。従って、他の側面より小さいエネルギーが、好ましくは、このような潤滑油孔が存在しないことにより、より良い熱の消失が可能な当該側面に適用されなければならない。このように、加熱エネルギーの使用が最適化され、過熱リスクが最小化される。すなわち、これらの本発明の複数の実施形態によれば、複数の潤滑油孔に対応するワークピースにおいて、硬化されるべき表面にだけではなく、表面下の構造にも注意が払われる。
本発明のいくつかの実施形態では、有効レーザスポットは、低感熱性サブエリアにおいて第1の形状を有し、潤滑油孔に到達した際に実質的にU形状を有し、潤滑油孔を離れる際に実質的に逆U形状を有し、逆もまた同様となるように適合され、第1の形状は、任意に、実質的に矩形または三角形状である.複数の用語「U」及び「逆U」は、潤滑油孔が「上から」近づく場合の状況を指す。基本的に、ジャーナル表面にわたって相当に均質な加熱を与えるために適切な、実質的に矩形、台形または三角形の有効レーザスポットは、潤滑油孔周りを加熱するためには適切ではない可能性がある。従って、有効レーザスポットは、潤滑油孔またはその複数の境界を実質的に直接加熱することなくこれを受けるために実質的に「U」形状(「V」形状などを含む)を与えられることができ、次に、潤滑油孔またはその複数の境界が有効レーザスポットによって直接加熱されることなく、潤滑油孔が離れることを可能とするために、反転されることができる。有効レーザスポットの形状の変化は、スキャンパターンの形状を変更することにより、及び/またはスキャンパターンの1つまたは複数の部分または複数のセグメントに割り当てられたパワー状態を変化させることによって、実現可能である。例えば、各々が複数のセグメントで形成された複数の線を備えるスキャンパターンを用いる場合に、「U」形状の有効レーザスポットは、1つまたは複数の線の中央部分において、複数のセグメントのうち1つまたは複数に割り当てられたパワー状態を変化させることによって、例えば、オフ状態を当該複数のセグメントに割り当てることによって、または当該複数のセグメントにレーザビームの低レベルのパワーに対応するパワー状態を割り当てることによって、実現可能である。
本発明のさらなる態様は、クランクシャフトのジャーナルの表面をレーザ硬化する方法に関し、ジャーナルは、硬化されるべき表面エリアを備え、表面エリアは、クランクシャフトの回転軸と平行な第1の方向及びジャーナルの周方向に対応する第2の方向に延在し、表面エリアは、少なくとも1つの高感熱性サブエリア及び少なくとも1つの低感熱性サブエリアを備え、少なくとも1つの高感熱性サブエリアは、潤滑油孔隣接エリアを含み、方法は、
レーザ源からのレーザビームを表面エリアに投射する段階と、
硬化されるべき表面エリアの周方向セグメントを硬化させるべく、その後、レーザビームを表面エリアの周方向において複数の異なる部分に投射するために、周方向において、クランクシャフトの表面とレーザ源との間の相対移動を生じさせる段階と、
硬化されるべき表面エリアの硬化が完了するまで、周方向セグメントの第1の方向における拡張を増大させるために、レーザビームを第1の方向に変位させる段階とを備える。
方法は、潤滑油孔隣接エリアを含む高感熱性サブエリアに対応する場合に、当該エリアに対する過熱を回避するべく、潤滑油孔と隣接する低感熱性サブエリアより小さいエネルギーを適用するために、レーザビームをレーザ源とクランクシャフトの表面との間の相対移動と同期させることによって、エネルギーがクランクシャフトに適用される態様を適応させる段階を備える。
本発明のこの態様によれば、硬化は、最初に、表面エリアの1つの端部で、第1の方向において生じ、その後、表面エリア全体が硬化されるまで、硬化されるべき表面エリアの他の端部に向かって延在するように、表面エリアの硬化は実行される。この方法の利点は、硬化の端部では、既に硬化されたエリアとの重複が生じないことである。これによれば、既に硬化されたエリアの再加熱及び過剰な焼き戻しに関連する複数の問題のリスクが減少する。
本発明のいくつかの実施形態では、周方向において、クランクシャフトの表面とレーザ源との間で相対移動を生じさせる段階は、クランクシャフトを高速で、例えば3000rpmまたは6000rpmを超える速度で回転させる段階を含む。これにより、現在加熱を受けているエリア内における温度の大きな変動を回避する助けとなる。
本発明のいくつかの実施形態では、方法は、ジャーナルの周方向セグメントにおいて、複数の有効レーザスポットの各々で、複数のセクションまたは複数のセクタを、周方向において同時に加熱するために、1つより多くのレーザビームを表面エリアに対して同時に適用する段階を備える。例えば、2つのレーザビームは、ジャーナルの対向する側面から同時に照射することができ、つまり、2つのセクションまたはセクタを、ジャーナルの周方向または環状セグメントの各々180度まで加熱する。それにより、1つだけのレーザビームが、このようなセクションまたはセクタを1つだけ加熱するために用いられる場合と比べて、加熱された領域内における実質的な温度変動を防止するために、クランクシャフトの回転速度をより低くする必要がある。
本発明のいくつかの実施形態では、方法は、潤滑油孔の両方の側面で、第1の方向において表面エリアを加熱するためにエネルギーを適用する段階を備え、潤滑油孔が複数の側面のうちの第1の側面下を延在せず、複数の側面のうちの第2の側面下を延在するように、潤滑油孔は、傾斜した態様で内側に向かって延在し、方法は、複数の側面のうちの第2の側面より大きいエネルギーを複数の側面のうちの第1の側面に適用する段階を備える。それにより、上述されたように、エネルギー利用は最適化され、過熱リスクは最小化される。
本発明のいくつかの実施形態では、方法は、ジャーナルの周方向部分を繰り返し加熱するために、(レーザビーム及び/またはクランクシャフトを移動させる、例えば、クランクシャフトその長さ方向軸周りに回転させることによって)第1の速度で、ジャーナルの周方向における有効レーザスポットの移動を与える段階と、第1の方向において、第1の速度より低い第2の速度で、有効レーザスポットを移動させ、それにより、複数の新たな周方向部分を加熱する一方で、ジャーナルの硬化された周方向セグメントのサイズを徐々に増大させるべく、自己焼き入れを与えるために、複数の以前に加熱された周方向部分の冷却を可能とする段階とを備える。すなわち、周方向における、有効レーザスポットとジャーナルの表面との間の高速の相対移動によって、ジャーナルの環状セグメントは、所望の硬化温度に加熱され、硬化を与えるために、温度の過剰な変動なく、当該温度で十分に長い時間保持されることができ、かつ、実質的にジャーナルの表面全体に対する硬化が完了するまで第1の方向における移動に起因して、硬化されたセグメントが第1の方向に膨張する。
本発明のいくつかの実施形態では、有効レーザスポットは、中心から外された態様で、ジャーナルに投射される。これは、レーザスポットを大きくする助けとなり、場合によっては、熱のより良い分布に役立つ。また、レーザスポットの先端境界及び末端境界では、レーザビームが異なる角度で表面に入射することに起因して、レーザスポットの先端境界は、末端境界より高いパワー密度を有する可能性があるため、このアプローチが役立つ可能性がある。本明細書で説明されるように、これにより、表面が所望の温度に達するために必要な加熱時間を短縮することができる。このアプローチは、例えば、実質的に正方形または矩形のレーザスポットを与える固定光学系との組み合わせで使用可能である。レーザビームを中央から外すことは、後方反射に起因する損傷または障害のリスクを減少させるという利点も伴う。
本発明のさらなる態様は、ワークピース表面に対するレーザ硬化の方法に関し、ワークピースは、少なくとも1つの硬化されるべき表面エリアを備え、表面エリアは、少なくとも1つの高感熱性サブエリア及び少なくとも1つの低感熱性サブエリアを備え、方法は、
レーザスポットを表面エリアに生成するために、レーザ源からのレーザビームを当該エリアに投射する段階と、
ワークピースの表面とレーザ源との間で相対移動を生じさせ、それにより、レーザスポットが、その後、表面エリアの複数の異なる部分に投射されることを可能にする段階と、
2次元の等価なまたは仮想の有効レーザスポットを表面エリアに生成するために、相対移動の間、表面エリアの各部分にわたって、2次元でレーザビームを繰り返しスキャンする段階であって、有効レーザスポットは、エネルギー分布を有する段階とを備え、
高感熱性サブエリアの過熱を防止するために、エネルギー分布は、高感熱性サブエリアにおいて、低感熱性サブエリアと異なるように適合される。
本発明のいくつかの実施形態では、方法は、有効レーザスポット内で、レーザビームをスキャンパターンに沿ってスキャンする段階と、エネルギー分布を得るために、任意に、スキャンパターンに沿ってレーザビームをオン及びオフにすることによって、スキャンパターンに沿ってレーザビームのパワーを変更する段階とを備える。
本発明のいくつかの実施形態では、毎秒少なくとも300回、より好ましくは毎秒少なくとも600回、より好ましくは毎秒少なくとも1,000回、より好ましくは毎秒少なくとも5,000回、さらにより好ましくは毎秒少なくとも10,000回、レーザビームを複数の適用可能なパワー状態のうちの1つに選択的に設定するために、レーザスポットをスキャンパターンに沿ってスキャンする間に、レーザビームのパワーを選択的に適応させることによって、エネルギー分布は制御される。例えば、スキャンパターンは、複数のセグメントを備えることができ、複数のセグメントの各々は、それに割り当てられた複数の適用可能なパワー状態のうちの1つを有し、複数のセグメントのうちの少なくとも1つに割り当てられたパワー状態は、低感熱性サブエリアにおいて、高感熱性サブエリアと異なるように選択可能である。すなわち、複数のセグメントのうちの1つ、いくつかまたはそれより多くに割り当てられた複数のパワー状態は、例えば、複数の潤滑油孔の複数の境界に対する過熱またはジャーナルの複数の既に硬化された部分に対する過剰な再加熱等を回避するために、加工中に動的に変更可能である。
上述されたように、用語「パワー状態」は、レーザビームが、「オン」もしくは「オフ」または最大値及びゼロ(またはゼロにより近い)間のパワーレベルのような所定の平均パワーを有する状態を指す。表現「適用可能」は、複数のパワー状態は、用いられているレーザ装置で実現可能であるという事実を指す。表現「に設定される」は、現実の状態変化が毎秒何回も生じなければならないことを示唆するものではなく、適切な場合に、例えば、制御システムによって与えられた複数の命令に従う場合はいつでも、レーザはパワー状態を変化させることが可能なように構成されることを示す。それにより、エネルギー分布のセグメント化または「ピクセル化」は、毎秒300、600、1000、5000または10000セグメントまたはピクセルで実現可能である。例えば、毎秒300セグメントは、6つのセグメントをスキャン周波数50Hzで有するスキャンパターンに対応可能である。上述されたように、複数の異なるパワー状態の間において変化が生じる場合に、レーザビームのパワーが前のパワー状態及び新たなパワー状態によって決定されたパワーと異なる複数の過渡期が存在し得る、例えば、レーザビームスキャンパターンに沿ってスキャンする間に、パワー曲線の傾きが存在する一方で、1つのセグメントから次への推移が生じるように、ビームパワーが増減し得る。
レーザが複数の異なるパワー状態の間で切り替える性能がより高いほど、所与のスキャン周波数に対して、より多数のセグメントまたはピクセルが、スキャンパターンを生成するために使用可能である。例えば、複数のパワーレベル間での切り替えを毎秒1000回の速度で可能とするレーザ源の場合に、スキャン周波数100Hzが、各々が所望のパワー状態を割り当て可能な10のセグメントを備えるスキャンパターンで使用可能であり、動作中に、複数のクランクシャフトの複数の潤滑油孔の複数の境界のような、複数の感熱性部分に対する過熱を防止するように適合され得る。
本発明のいくつかの実施形態では、方法は、有効レーザスポット内で、レーザビームに対して、高感熱性サブエリアにおいて、低感熱性サブエリアと比べて異なるスキャンパターンを用いる段階を備える。
本発明のいくつかの実施形態では、方法は、有効レーザスポットの少なくとも一部が、高感熱性サブエリアにおいて、低感熱性サブエリアと比べて異なるようにスキャン速度を適応させることによって、エネルギー分布を適応させる段階を備える。
本発明のいくつかの実施形態では、有効レーザスポットは、ワークピースの表面部分を硬化温度に加熱するために選択されたエネルギー分布及び密度を有する先端部分、加熱された表面部分の冷却を、焼き入れのために可能にするために選択されたエネルギー分布及び密度(例えば、極めて低エネルギー密度、例えばパワーがゼロ、またはパワーがゼロに近い)を有する中間部分、及びその焼き戻しを生成するべく、焼き入れされた部分を加熱するために選択されたエネルギー分布及び密度を有する末端部分を備える。概して、複数のクランクシャフトのような多くのワークピースは、その硬化に加えて、硬度を減少させ、延性を高め、脆弱性を減少させるために、焼き戻しを必要とする。焼き戻しのために、ワークピースは、概して、硬化のために用いられる温度より低い温度に加熱される。ワークピースが、レーザ処理を用いて硬化された場合に、焼き戻しは、炉または竈内で行うことができるが、硬化に用いられたものと同様のレーザ処理を、異なるエネルギー密度及び/または分布で適用して、その焼き戻しが行われることもできる。例えば、クランクシャフトの場合、焼き戻しは、硬化サイクルの後で焼き戻しサイクルを適用することによって行われる。例えば、ジャーナルの360度を硬化した後、有効レーザスポットは、今回はその焼き戻しのために、ジャーナル周りに、またはこれに沿って再び移動可能である。しかしながら、有効レーザスポットを用いることによって、同じサイクルまたは加工段階で硬化及び焼き戻しを与えることもでき、有効レーザスポットは、所望の硬化深さを得るために、ワークピースの表面を所望の硬化温度に加熱し、表面を当該温度で十分な時間維持するための先端部分、その焼き入れまたは自己焼き入れを生成するべく、加熱された部分の冷却を可能とするために、エネルギーまたはパワー密度が実質的に0W/cm2のような低エネルギー密度を有する中間部分、及び必要に応じて焼き戻しに必要な程度まで焼き入れされた部分を再加熱するためのエネルギー分布及び密度を有する末端部分を含む。このように、焼き入れ及び焼き戻しの両方を生成するために、例えば、クランクシャフトのジャーナルの表面の場合に、クランクシャフトをその回転軸周りに一度回転させることによって、有効レーザスポットに処理されるべき表面を一度走査させることで十分たり得る。
本発明のいくつかの実施形態では、有効レーザスポットは、直線または湾曲した複数の線のような複数の線を備えるパターンに従って、レーザビームをワークピースにわたって繰り返しスキャンすることによって確立され、複数の線は、好ましくは実質的に平行であり、スキャンは、スキャン周波数で繰り返され、複数の線の各々は、複数のセグメントまたはピクセルを備え、方法は、レーザビームの出力パワーを、複数のセグメントのうちのいくつかの中で、複数のセグメントのうちの他のものと比べて異なるレベルに選択的に設定するために、所定のレーザビームパワー値を複数のセグメントの各々に割り当てる段階を備える。レーザビームパワーを複数のセグメントに割り当てる段階は、レーザビームが、複数のセグメントのうち選択された複数に対して「オン」でなければならず、複数のセグメントのうち他の複数に対して「オフ」でなければならないことを規定する段階を含むことができ、これは、スキャンの間にレーザのオン及びオフを切り替えることによって実現可能である。つまり、ピクセル化されたエネルギー分布が、容易に実現される。このアプローチは、容易に変動可能な所望のエネルギー分布を与えるために役立つ可能性がある一方で、有効レーザスポットは、例えば、ワークピースを軸周りに回転させることによって、加熱されるべき表面に沿って走査される。本発明のいくつかの実施形態では、このスキャン周波数は、少なくとも50Hz(レーザビームは、仮想レーザスポットを毎秒少なくとも50回完了させるためにスキャンされるように)、好ましくは少なくとも100Hzであり、複数の線は、少なくとも2つの線、好ましくは少なくとも3つの線、より好ましくは少なくとも4つの線、例えば5−10の線を備え、各線は、少なくとも3つのセグメント、好ましくは少なくとも5つのセグメント、より好ましくは少なくとも10のセグメント、例えば10−20のセグメントを備える。この種類の構成は、スキャンサイクルの間に、スキャンパターン内のスポットにおける実質的な温度変動を回避するために十分な詳細及び十分な周波数により、所望のエネルギー分布を確立するために適切たり得る。高速のオンオフ切り替えを可能とするファイバレーザのような複数のレーザの利用により、50Hzを上回るスキャン周波数のような複数の比較的高いスキャン周波数でも、多数のセグメントまたはピクセルを実現することが可能となる。各セグメントは、それに割り当てられたビームパワー状態を有することができ、ビームパワー状態は、セグメントまたはその部分の間、レーザビームの意図されたパワーを示し、複数のセグメントに割り当てられた複数のパワー状態は、硬化加工の間、例えば、複数の高感熱性サブエリアに対する過熱を回避するために、動的に変更可能である。すなわち、複数のセグメントに割り当てられた複数のパワー状態を適応させることによって、有効レーザスポットのエネルギー分布は適合可能である。
上述された本発明の複数の異なる態様では、ワークピースの部分に沿って及び/またはわたってのレーザビームまたはレーザスポットのスキャンを含み、このスキャンは、レーザスポットが、複数のセグメントを備えるスキャンパターンに繰り返し従うように実行可能であり、2次元エネルギー分布に影響する少なくとも1つのパラメータ値は、複数のセグメントの各々と関連付けられ、例えば、レーザスポットがセグメントに沿って移動させられる度に、各セグメントに対応する動作を適応させるために用いられるために、制御システムのメモリに格納される。少なくとも1つのパラメータ値は、動作中に、少なくとも1つのパラメータ値が、複数のセグメントのうちの少なくとも1つに対して、有効レーザスポットが高感熱性サブエリアを加熱する場合に、低感熱性サブエリアを加熱する場合と異なるように、動的に適応され得る。例えば、所与のセグメントに対して、異なる複数のパラメータ値(または複数のパラメータ値の組み合わせ)は、複数の異なるメモリ位置に格納可能であり、加熱されているサブエリアに応じて、パラメータ値は、1つのメモリ位置または他のメモリ位置から取下げられることができる。しかしながら、これは例に過ぎず、他の複数の実装も、本発明の範囲である。セグメント化されたスキャンパターンの利用が見出されたことにより、クランクシャフトの特定の設計に適合されるエネルギー分布を容易に見出し、実装することが可能となった。例えば、クランクシャフトの潤滑油孔の複数の境界周りのエリアのような、ワークピースの複数の高感熱性部分に対応して、より小さいパワー/エネルギーを適用するために、2次元エネルギー分布に影響する1つまたは複数のパラメータを適応させることによって、エネルギー分布を容易に変更することができる。つまり、オペレータは、各セグメントに対応して、複数の異なる値を特定の複数のパラメータに割り当てることによって、複数の異なるエネルギー分布を定義することができ、クランクシャフトのジャーナルの表面のようなワークピースの部分に対する硬化の間に、複数の異なるエネルギー分布の間で切り替えることによって、適切な硬化が実現可能である一方で、複数の感熱性部分に対する局部的な過熱を回避する。セグメント化されたスキャンパターンの利用及び複数のパラメータ値をセグメント単位で割り当てることにより、適切な複数の値を容易に、例えば、少数のトライアルアンドエラーテストで、見出すことが可能となる。例えば、潤滑油孔に対応するために、特定の複数のセグメントに割り当てられた複数の値は、有効レーザスポットがワークピースの対応する複数のサブエリアに到達した場合に、複数の潤滑油孔に隣接して適用されるエネルギーを減少させるために選択可能である。
複数のパラメータ値は、スキャン速度、レーザスポットのサイズ、レーザビームのパワー、レーザビーム内のパワー分布、対応するセグメントの長さ及び対応するセグメントの方向のうちの少なくとも1つを示すことができる。本発明の多くの実施形態では、レーザビームのパワー及び/またはスキャン速度は、好ましい複数のパラメータである可能性がある。パラメータの選択は、レーザビームが、オン/オフのような複数の異なるパワーレベル間で、または複数の異なる中間パワーレベル間で、切り替え可能な速度のような因子に、及び、スキャンシステムが、セグメント単位によるセグメントに対するスキャン速度の急速な制御された変化を可能とする程度に、依存し得る。出力パワーの急速な制御された変化を可能とする複数のレーザが用いられる場合に、レーザビームのパワーは、エネルギー分布を決定する複数のパラメータのうちの少なくとも1つとして、有利に利用可能である。
方法は、各セグメントに対して、対応する少なくとも1つのパラメータ値をメモリに格納する段階を備えることができ、少なくとも1つのセグメントに対して、少なくとも2つの異なる値がメモリに格納され、第1の値は、低感熱性サブエリアを加熱する場合に用いられ、第2の値は、高感熱性サブエリアを加熱する場合に適用される。つまり、複数の異なる2次元エネルギー分布に対応する複数のパラメータ値は、複数の異なるメモリ位置に格納可能であり、高感熱性または低感熱性サブエリアが加熱されているか否かに応じて、制御システムは、1つのメモリ位置などの複数のパラメータ値を用いる。つまり、システム及び方法を新たな種類のクランクシャフトに適応させる場合に、オペレータは、スキャンパターン及び複数のパラメータ値を設計する、例えば、クランクシャフトのジャーナルに対する加熱の大部分の間に用いられる第1のエネルギー分布、有効レーザスポットが潤滑油孔を有するサブエリアに近づく場合に用いられる第2のエネルギー分布、有効レーザスポットが潤滑油孔を有するサブエリアを離れる場合に 用いられる第3のエネルギー分布を設計することによって、複数の異なるエネルギー分布のセットを設計することができる。複数の2次元エネルギー分布パターンは、例えば、ジャーナルの幅及び潤滑油孔のサイズ及び/または位置を考慮するように容易に適合可能である。
スキャンは、例えば、毎秒少なくとも300セグメント、好ましくは毎秒少なくとも600セグメント、より好ましくは毎秒少なくとも1,000セグメント、より好ましくは毎秒少なくとも5,000セグメント、さらにより好ましくは毎秒少なくとも10,000セグメントの平均速度で、実行可能である。高スキャン速度が、十分に多数のセグメントが2次元エネルギー分布に柔軟性を与えることを可能とする一方で、一方で、加熱されているエリアにおいて、各スキャンサイクル間の実質的な温度変動を回避するべく、スキャンパターンを高周波数で繰り返すために好ましい可能性がある。例えば、毎秒300セグメントのスキャン速度では、6つのセグメントまたはピクセルを有するスキャンパターンは、周波数50Hzで繰り返されることができる。多数のセグメントまたはピクセルは、エネルギー分布をできる限り硬化されている表面の複数の特性に適応させる可能性を増大させるために役立つ可能性があり、一方で、スキャンパターンの繰り返しの高周波数は、各スキャンサイクル間での、加熱されているエリア内における望ましくない温度の揺らぎのリスクを減少させる。
上述された本発明の複数の態様のいくつかの実施形態では、方法は、有効レーザスポットが、周方向において、有効レーザスポットをジャーナル周りに変位させることによって硬化された、クランクシャフトのジャーナルの以前に硬化された部分のような、表面エリアの以前に硬化された部分に到達した場合に、有効レーザスポットの先端部分において、エネルギー密度を減少させる段階を備える。それにより、ジャーナルの既に加熱及び硬化された部分に対する過度の加熱が防止され得る。本発明のいくつかの実施形態では、有効レーザスポットの先端境界において、パワー/エネルギー密度は、単に減少するが、硬化された部分を、その焼き戻し目的で特定の程度に再加熱するために、有効レーザスポットは、例えば、周方向において、ジャーナル周りに移動し続ける。本発明の複数の他の実施形態では、方法は、有効レーザスポットが表面エリアの以前に硬化された部分、例えば、周方向において、有効レーザスポットをジャーナル周りに変位させることによって硬化された、クランクシャフトのジャーナルの以前に硬化された部分に到達した場合に、有効レーザスポットの先端部分において、有効レーザスポットの移動を阻害する段階を備え、一方で、有効レーザスポットの末端部分は、周方向に移動し続け、それにより、有効レーザスポットが消滅するまで、有効レーザスポットの周方向におけるサイズを徐々に減少させる。すなわち、有効レーザスポットは、以前に硬化された部分に到達した場合に、実質的に停止し、すなわち、例えば、先端境界は停止し、末端境界は先端境界に追いついて、硬化サイクルを完了させる。
両方の場合において、方法の実装は、有効レーザスポットが、スキャンパターンの複数のセグメントのような複数のセグメントから構成される場合に、実質的に容易となり得る。その先端境界で開始する有効レーザスポットの削減または取り消しは、例えば、ビームのパワーを減少させ、及び/またはスキャン速度を向上させることによって、及び/または単に複数のセグメントを取り消しまたは再構成することによって、エネルギー密度を複数のセグメントにおいて適応させることによって実現可能である。つまり、有効レーザスポットを生成するために、レーザビームの2次元スキャンの利用との組み合わせで、セグメント化のアプローチは、柔軟性を与え、当業者が、例えば、複数のクランクシャフトの複数のジャーナルに対する周方向におけるレーザ硬化の場合に、有効レーザスポットが、軌跡の中で以前に硬化された部分に到達することの取り扱いを容易にする。
本発明のさらなる態様は、中炭素鋼のワークピース、例えば、クランクシャフトのようなワークピース表面に対するレーザ硬化の方法に関する。「表面」という記載は、表面全体 が硬化されるべきであることを意味するものではない。例えば、クランクシャフトの場合、表面の複数の部分、例えば、1つまたは複数のジャーナル及び/または複数のジャーナルと隣接する複数の壁の複数の表面が硬化されることで十分となり得る。
ワークピースは、少なくとも1つの硬化されるべき表面エリア(例えば、クランクシャフトの1つまたは複数の主ジャーナル及び/または1つまたは複数のロッドジャーナル、及び/またはクランクシャフトの複数の壁面の表面)を備え、表面エリアは、少なくとも1つの高感熱性サブエリア(例えば、クランクシャフトの場合、潤滑油孔の直ぐ周りのエリア及び/またはアンダーカットフィレットの境界に近いエリア。ここでは、材料が存在しないことが、ヒートシンク性能を減少させ、過熱リスクの増大を示唆する。また、複数の尖った端部は、ジャーナルの残りの滑らかで規則的な表面より、過熱によって損傷を受ける可能性が高い)と、少なくとも1つの低感熱性サブエリア(例えば、クランクシャフトの場合、潤滑油孔及び/またはアンダーカットフィレットからより離れたジャーナル表面の部分であり、ここで、複数の境界及び複数の隙間が存在しないことは、過熱リスクの減少を示唆する)とを備える。
方法は、
レーザスポットを当該エリアに生成するために、レーザ源からのレーザビームを表面エリアに投射する段階と、
ワークピースの表面とレーザ源との間の相対移動を(例えば、ワークピースをX軸周りに回転させ、及び/またはワークピース及び/またはレーザ源を、X軸に直交するY及び/またはZ軸に沿って変位させることによって)生じさせ、それにより、レーザスポットが、その後、表面エリアの複数の異なる部分に投射されることを可能にする段階(すなわち、レーザ源がスキャン手段との組み合わせで、レーザスポットを表面エリアの特定の部分またはセクションに向けることができる各時点における、例えば、X、Y及びZ軸に従ったワークピースとレーザ源との間の相対位置に応じて、かつ、例えば、スキャン手段が、レーザスポットの直径、長さまたは幅に対応する厚さを有する一連の当該エリアに、または例えば、エリアの実質的に矩形のセクションに、1次元または2次元移動を与えるか否かに応じて)と、
相対移動の間、当該エリアの各部分にわたって、レーザビームをスキャンする段階とを備える。スキャンは、1次元のみで、例えば、ワークピースの回転軸と平行に、及び/またはレーザ源の位置と関連するワークピースの表面の移動方向と垂直に、または、2次元で実行可能であり、つまり、矩形パターン、楕円形パターン、三角形パターン、台形パターン、六角形パターン、八角形パターン等のような経路またはパターンに従い、または、例えば、当該部分に沿って及び/またはこれにわたって、蛇行したまたは三角形のスキャンを前後に実行することによって、または、実質的に平行な複数の線のような複数の線に沿ってレーザビームをスキャンすることによって、このようなパターンによって輪郭を描かれたエリアを埋める。用語「レーザビームをスキャンする」は、1つまたは複数のスキャンミラーのような、なんらかの種類の光学式スキャン手段などを用いて、レーザビーム自体が変位することを意味するものと解釈されなければならない。
スキャンは、レーザスポットが表面エリアのスキャンパターンまたは経路に従うように実行される。
本発明のこの態様によれば、
(i)スキャン速度、及び/または
(ii)レーザビームパワー、及び/または
(iii)レーザスポットサイズ のうちの少なくとも1つが、スキャンパターンの1つの部分において、スキャンパターンの他の部分と異なることによって、高感熱性サブエリアにおいてワークピースの過熱を回避する(またはそのリスクを減少させる)。
つまり、高感熱性エリアにおいて、低感熱性エリアと比べて、ワークピースに伝導される単位表面積当たりエネルギー量を減少させるために、高感熱性サブエリアでは、低感熱性サブエリアより、スキャン速度がより高い可能性があり、及び/または、レーザビームパワーが削減される可能性があり、及び/または、レーザスポットエリアがより大きい可能性があり、これは、例えば、フォーカスレンズを移動させることによって実現可能なことである。
本発明のいくつかの実施形態では、スキャンパターンは、複数のセグメントを備え、複数のセグメントの各々に対して、
(i)スキャン速度、及び/または
(ii)レーザビームパワー、及び/または
(iii)レーザスポットサイズが割り当てられ、
スキャン速度、レーザビームパワー及びレーザスポットサイズのうちの少なくとも1つは、複数のセグメントのうちの少なくとも1つに対して、複数のセグメントのうち少なくとも他のものと比べて、異なるように選択される。
複数のセグメントは、直線または湾曲であってもよく、多角形またはあらゆる他の幾何学図形を形成可能である。これらは、スキャン中にレーザスポットが繰り返し従う閉曲線、またはレーザスポットが両方の方向に繰り返し従うことができる開曲線を形成することができる。複数のセグメントは、短くてもよく、レーザビームが特定の時間長にわたって静止するために選択可能な複数のポイントを含むことさえできる。つまり、スキャン中に表面へのエネルギー伝導の影響を有するパラメータの少なくとも1つの値を各セグメントに割り当てることによって、適切な熱伝導の分布及び加熱が、実現可能となる。例えば、コンピュータによって制御されるスキャンシステムでは、このアプローチにより、オペレータは、スキャンパターンに沿って、複数の異なるエネルギー伝導プロファイルを容易に試し、トライアルアンドエラーによって、具体的なクランクシャフトのような具体的な製品に対し、適切な1つに到達することができる。また、このアプローチは、ワークピースに対する適度な加熱を与えるものに到達するまで、1つまたは複数のセグメントに対するスキャン速度、レーザビームパワー及び/またはレーザスポットサイズを変更し、スキャンパターンの幾何学的レイアウトを変更してさえも、複数の異なるエネルギー伝導プロファイルで実験可能なように、コンピュータ化されたシミュレーションシステムで容易に実装可能である。スキャンパターン(例えば、複数のセグメントの長さを調整することによって)、及び/またはスキャン速度、及び/またはレーザビームパワー及び/またはレーザスポットサイズのバリエーションを可能とするコンピュータ入力手段が、与えられてもよい。勿論、追加的な複数のパラメータも、組み込み可能である。
例えば、スキャン速度は、高感熱性サブエリアにより近いセグメントにおいて、感熱性サブエリアからさらに離れた2つの隣接セグメントより高くなるように選択可能である。例えば、クランクシャフトの場合、スキャン速度は、加工のなんらかの段階で潤滑油孔を実際に横切る1つまたは2つのセグメントに対して、複数の隣接セグメントより高くなるように選択可能である。複数の異なるセグメントに対して、レーザスポットが従う経路に沿って異なるスキャン速度を用いることは、市販のスキャン手段で容易に実装されるという利点を有する。
本発明のいくつかの実施形態では、レーザビームパワーは、高感熱性サブエリアにより近いセグメントにおいて、感熱性サブエリアからさらに離れた2つの隣接セグメントより低くなるように選択される。例えば、クランクシャフトの場合、加工のなんらかの段階で、複数の潤滑油孔を実際に横切る、すなわち、複数の潤滑油孔によって横切られる1つまたは2つのセグメントにおいて、複数の隣接セグメントより、スキャン速度は、より高くなるように選択可能であり、及び/または、レーザビームパワーは、より低くなるように選択可能である。
本発明のいくつかの実施形態では、レーザスポットは、高感熱性サブエリアにより近いセグメントにおいて、感熱性サブエリアからさらに離れた2つの隣接セグメントよりより大きいエリアを有するように選択される。つまり、レーザビーム経路の特定の部分の間、「デフォーカスする」ことによって、単位表面積当たりパワーの集中は減少し、複数のクランクシャフトの複数の潤滑油孔に対応するもののような複数の小さい感熱性エリアに対する過熱を回避するために役立つ可能性がある。
本発明のこの態様のいくつかの実施形態では、複数のセグメントのうち1つまたは複数に割り当てられた (i)スキャン速度、及び/または
(ii)レーザビームパワー、及び/または
(iii)レーザスポットサイズ が少なくとも一度変更される間に、ワークピースの表面は、例えば、パターンまたはセグメントが高感熱性サブエリアに到達する、またはこれを離れる度に、レーザ源に対して移動させられる。つまり、例えば、パターンの1つまたは複数のセグメントに対応するスキャン速度、及び/またはレーザビームパワー、及び/またはレーザスポットサイズは、例えば、複数のセグメントのうち1つまたは複数が、高感熱性サブエリア、例えばクランクシャフトの複数の潤滑油孔またはその近くに到達した場合に、かつ、当該セグメントまたは複数のセグメントが高感熱性サブエリアを離れる場合にも、加工中に変更可能である。このように、加熱処理は、ワークピースの全てのエリアに対して、これらの感熱性に従って容易にかつ合理的に最適化可能である。
本発明のこの態様は、複数のセグメントの各々に対して、
(i)少なくとも1つのスキャン速度、及び/または
(ii)少なくとも1つのレーザビームパワー、及び/または
(iii)少なくとも1つのレーザスポットサイズ割り当てることによって、レーザビームを制御するために、パーソナルコンピュータ、PLCなどのような電子制御手段をプログラミングする段階をさらに備えることができる。
本発明のいくつかの実施形態では、スキャンパターンは、(例えば、複数のセグメントによって画定された)幾何学的形状を有し、スキャンパターンの幾何学的形状が少なくとも一度変更される間に、ワークピースの表面は、レーザ源に対して移動させられる。例えば、ワークピースの1回転中のような加工の1つの段階では、例えば、潤滑油孔が表面エリアのスキャンされた部分に近づく場合に、1つまたは複数のセグメントは、高感熱性サブエリアに対する過熱を回避するために、単に省略可能であり、または、スキャンパターンは、1つまたは複数のエリアにおけるパワー密度を減少させるために、変更可能である。
本発明のさらなる態様は、ワークピース表面に対するレーザ硬化の方法に関し(中炭素鋼のワークピース、例えば、クランクシャフトのようなものであり、「表面」という記載は、表面全体が硬化されるべきであることを意味するものではない。例えば、クランクシャフトの場合、表面の複数の部分、例えば、1つまたは複数のジャーナル及び/または複数のジャーナルと隣接する複数の壁の複数の表面が硬化されれば十分たり得る)、ワークピースは、少なくとも1つの硬化されるべき表面エリア(例えば、クランクシャフトの1つまたは複数の主ジャーナル及び/または1つまたは複数のロッドジャーナル表面、及び/またはクランクシャフトの複数の壁面)を備える。表面エリアは、少なくとも1つの高感熱性サブエリア(例えば、クランクシャフトの場合、潤滑油孔の直ぐ周りのエリア、及び/またはアンダーカットフィレットの境界に近いエリア。ここでは、材料が存在しないことが、ヒートシンク性能を減少させ、過熱リスクの増大を示唆する。また、複数の尖った端部は、ジャーナルの残りの滑らかで規則的な表面より、過熱によって損傷を受ける可能性が高い)と、少なくとも1つの低感熱性サブエリア(例えば、クランクシャフトの場合、潤滑油孔及び/またはアンダーカットフィレットからより離れたジャーナル表面の部分であり、ここで、複数の境界及び複数の隙間が存在しないことは、過熱リスクの減少を示唆する)とを備える。方法は、
レーザスポットを表面エリアに生成するために、レーザ源からのレーザビームを表面エリアに投射する段階と、
ワークピースの表面とレーザ源との間の相対移動を(例えば、ワークピースをX軸周りに回転させること、及び/またはワークピース及び/またはレーザ源を、X軸に直交するY及び/またはZ軸に沿って変位させることによって)生じさせ、それにより、レーザスポットが、その後、表面エリアの複数の異なる部分に投射されることを可能にする段階(すなわち、レーザ源がスキャン手段との組み合わせで、レーザスポットを当該エリアの特定の部分またはセクションに向けることができる各時点における、例えば、X、Y及びZ軸に従ったワークピースとレーザ源との間の相対位置に応じて、かつ、例えば、スキャン手段が、レーザスポットの直径、長さに対応する厚さまたは幅を有する一連の当該エリアに、または例えば、エリアの実質的に矩形のセクションに、1次元または2次元移動を与えるか否かに応じて)とを備える。
相対移動の間、レーザビームを表面エリアの各部分にわたってスキャンする段階(スキャンは、1次元のみで、例えば、ワークピースの回転軸と平行に、及び/またはレーザ源の位置と関連するワークピースの表面の移動方向と垂直に、または、2次元で実行可能であり、つまり、矩形パターン、楕円形パターン、三角形パターン、台形パターン、六角形パターン、八角形パターン等のようなパターンに従い、または、例えば、当該エリアに沿って及び/またはこれにわたって、蛇行したまたは三角形のスキャンを前後に実行することによって、または、複数の平行な線のような複数の線を追跡することによって、このようなパターンによって輪郭を描かれたエリアを埋める。用語「レーザビームをスキャンする」は、1つまたは複数のスキャンミラーのような、なんらかの種類の光学式スキャン手段を用いて、レーザビーム自体が変位することを意味するものと解釈されなければならない)とを備え、
スキャンは、レーザスポットが当該エリアにおいてスキャンパターンまたは経路に従うように実行され、スキャンパターンは、幾何学的構成を有する。
本発明のこの態様によれば、スキャンパターンの幾何学的構成は、相対移動中に表面エリアとレーザ源との間で少なくとも一度変更される。例えば、スキャンパターンは、複数のセグメントを備えることができ、1つまたは複数のセグメントは、高感熱性サブエリアに対する過熱を回避するために、単に省略可能であり、または、パターンは、1つまたは複数のエリアにおけるパワー密度を減少させるために、変更可能である。つまり、例えば、クランクシャフトの場合、レーザ源とワークピースの表面との間の相対移動の間、1つまたは複数の潤滑油孔がスキャンされたエリアに近づく場合に、スキャンパターンは、例えば、経路のエネルギー密度を減少させることによって、すなわち、複数のセグメントを分離することによって、及び/または1つまたは複数のセグメントを省略することによって、適合可能である。例えば、1つのセグメントは、省略可能である。元の閉曲線スキャンパターンを開曲線スキャンパターンに変化させることにより、レーザスポットは、開曲線を前後に追跡可能である。省略されたセグメントが潤滑油孔の位置に対応する場合、これは、潤滑油孔の複数の境界に対する加熱に寄与しない。
本発明のさらなる態様は、ワークピース(例えば、中炭素鋼のような鉄材料のワークピース、例えば、クランクシャフト)の表面に対するレーザ硬化の方法に関し、ワークピースは、少なくとも1つの硬化されるべき表面エリア(例えば、クランクシャフトの場合、クランクシャフトの1つまたは複数の主ジャーナル及び/または1つまたは複数のロッドジャーナルの表面、及び/またはクランクシャフトの複数の壁面)を備え、表面エリアは、少なくとも1つの高感熱性サブエリア(例えば、クランクシャフトの場合、潤滑油孔の直ぐ周りのエリア、及び/またはアンダーカットフィレットの境界に近いエリア。ここでは、材料が存在しないことが、ヒートシンク性能を減少させ、過熱リスクの増大を示唆する。また、複数の尖った端部は、ジャーナルの残りの滑らかで規則的な表面より、過熱によって損傷を受ける可能性が高い)と、少なくとも1つの低感熱性サブエリア(例えば、潤滑油孔及び/またはアンダーカットフィレットからより離れたジャーナル表面の部分であり、ここで、複数の境界及び複数の隙間が存在しないことは、過熱リスクの減少を示唆する)とを備える。
方法は、
レーザ源からのレーザビームを表面エリアに投射し、これによって、レーザスポットを表面エリアに生成する段階と、
ワークピースの表面とレーザ源との間の相対移動を(例えば、ワークピースX軸周りに回転させること、及び/または、ワークピース及び/またはレーザ源を、X軸に直交するY及び/またはZ軸に沿って変位させることによって)生じさせ、それにより、レーザスポットが、その後、表面エリアの複数の異なる部分に投射されることを可能にする段階(すなわち、レーザ源がスキャン手段との組み合わせで、レーザスポットを当該エリアの特定の部分またはセクションに向けることができる各時点における、例えば、X、Y及びZ軸に従ったワークピースとレーザ源との間の相対位置に応じて、かつ、例えば、スキャン手段が、レーザスポットの直径、長さに対応する厚さまたは幅を有する一連の当該エリアに、または例えば、エリアの実質的に矩形のセクションに、1次元または2次元移動を与えるか否かに応じて)と、
相対移動の間、当該エリアの各部分にわたってレーザビームをスキャンする段階(スキャンは、1次元のみで、例えば、ワークピースの回転軸と平行に、または、2次元で実行可能であり、これにより、矩形パターン、楕円形パターン、三角形パターン、台形パターン等のようなパターンに従い、または、例えば、当該エリアに沿って及び/またはこれにわたって、蛇行したまたは三角形のスキャンを前後に実行することによって、または、レーザビームを複数の平行な線のような複数の線を備えるパターンに従わせることによって、このようなパターンによって輪郭を描かれたエリアを埋める。用語「レーザビームをスキャンする」は、1つまたは複数のスキャンミラーのような、なんらかの種類の光学式スキャン手段を用いて、レーザビーム自体が変位することを意味するものと解釈されなければならない。XYZスキャナの場合、スポットがX及びY方向に移動可能であることに加えて、なんらかの種類の駆動手段によってZ方向に変位可能なフォーカスレンズが与えられ、それにより、レーザスポットのサイズの動的適応が可能となる。それにより、スポットの位置及びそのサイズの両方が、硬化加工を最適化するために、制御及び適合可能となる。)と、
レーザビームを変調する段階とを備える。
本発明のこの態様によれば、レーザビームは、ワークピースの各部分に対する過熱を防止するために、レーザスポットが高感熱性サブエリアにある場合に、それが低感熱性サブエリアにある場合と異なるように変調される。より詳細には、
A.レーザビームのパワーは、変調され(例えば、当該パワーが、レーザスポットが高感熱性サブエリアにある場合に、レーザスポットが低感熱性サブエリアにある場合より低くなるように。パワーを変調する段階は、パワーを一時的にゼロまたはゼロ付近に減少させる段階をも含む。)、
及び/または
B.レーザビームのスキャン速度は、変調され(例えば、レーザスポットが高感熱性サブエリアにある場合に、レーザスポットが低感熱性サブエリアにある場合より、レーザスポットが、ワークピースの表面を高速で移動するように。スキャン速度を変調する段階は、レーザビームの移動を一時的に停止させる段階をも含む。)、
及び/または
C.レーザスポットが高感熱性サブエリアに対応する場合に、低感熱性サブエリアに対応する場合とは異なるスキャンパターンに従うように、レーザビームのスキャンパターンは変調され(つまり、高感熱性サブエリアに対して、例えば、クランクシャフトの複数の潤滑油孔または複数のアンダーカットフィレットの、例えば複数の境界における過熱リスクを減少させるスキャンパターンが選択可能である)、
及び/または
D.レーザスポットサイズが高感熱性サブエリアに対応する場合に、低感熱性サブエリアに対応する場合とは異なる(例えば、より大きい)ように、レーザビームのレーザスポットサイズは変調される(つまり、高感熱性サブエリアに対して、例えば、クランクシャフトの複数の潤滑油孔または複数のアンダーカットフィレットの複数の境界における加熱を減少させるスポットサイズが、使用可能である。例えば、レーザビームをデフォーカスすることによってスポットサイズを増大させることで、レーザスポットの単位表面積当たりパワー量が減少する)。
つまり、例えば、本発明のこれらの態様の全てにおいて、かつ、軸受複数のクランクシャフト表面、すなわち、主ジャーナル及び複数のロッドジャーナルの複数の表面に対する硬化の場合に、レーザビームは、複数のジャーナルのうちの1つにフォーカス可能であり、ビームは、次に、ジャーナルにわたって、及び/またはジャーナルの部分にわたって、スキャンされ得る。一方で、レーザ光源とクランクシャフトの表面との間の相対移動によって、クランクシャフトの周全体が、スキャンされ得る。ここで、例えば、ジャーナル幅のオーダの幅を有するレーザスポットのような大きいサイズの正方形または矩形のレーザスポットを生成するために光学式手段を用いる代わりに、次にジャーナルにわたってスキャンされるより小さいスポットが、使用可能である。このように、スキャン速度、パワー、スキャンパターン及び/またはレーザスポットサイズに関するビームの変調により、加熱処理は、表面の複数の異なる部分の複数の特殊性、例えば、クランクシャフトの場合、複数の潤滑油孔及び複数のフィレットのような複数の領域の感熱性に適合可能である。つまり、単に大きいレーザスポットを表面に適用し、表面をレーザ源に対して移動させる、例えば、ワークピースを回転させる(ドイツ特許公報第10 2005 005 141B3号によって示唆されていると見られる)ことによって、表面の全ての部分を単に同様に扱う代わりに、全ての部分に対する十分な加熱を得る一方で、特定の複数の部分に対する過熱を回避するべく、表面の複数の異なる部分が異なる量のエネルギーを受けるように、より小さいスポットが使用可能であり、スキャン及び変調が実行可能である。ビームを変調することによって、表面の複数の異なる部分は、異なるように処理され得る。例えば、スキャンパターンは、複数の潤滑油孔の複数の境界に対する過熱を防止するために、複数の潤滑油孔に近いエリアにおいて変更可能である。また、あるいは代案として、過熱の発生を防止するために、デフォーカスするまたはレーザビームの表面に対する入射角度を適応させることによって、ビーム強度は削減可能であり、及び/または速度は増大可能であり、及び/またはレーザスポットのサイズは増大可能である。つまり、硬化されるべき表面エリア全体を均質に 加熱する代わりに、複数の潤滑油孔周りの複数のエリア及び/または複数のアンダーカットフィレット付近の複数のエリアのような複数のエリアにおいて、過熱リスクを減少させることに注意を払うことができる。これらの複数のエリアでは、材料が存在しないことにより、加熱された表面から離れて、熱の変動が減少し、これは過熱リスクが実質的に増大したことを示唆する。また、ジャーナルにおいて、これらの複数のエリアの複数の尖った端部では、他の複数の部分の滑らかな面より過熱によって損傷を受ける可能性が高い。
つまり、これらの複数のパラメータのうち1つまたは複数を変更することによって、過熱リスクは削減可能である。
上述された本発明の複数の態様のいずれかを用いる場合、かつ、特に、レーザビームを1または2次元でスキャンすることによって、等価なまたは仮想の有効レーザスポットを生成する場合に、当業者 は、具体的なクランクシャフトの各設計に適切な複数の変調技術を決定するために、複数のコンピュータシミュレーション及び/または実際の複数のトライアルアンドエラーテストを用いることができる。システムを新たな種類のクランクシャフトに適応させることは、つまり、例えば、新たな複数のスキャン速度プロファイル、複数のレーザ光強度プロファイル、複数のスキャンパターン及び/または複数のスポットサイズを導入すること、例えば、これらの複数のパラメータの複数の異なる値をスキャンパターンの複数の異なるセグメントに割り当てることによって、ソフトウェアを変更することのみを必要とする。これによって、適切なパフォーマンスを実現するために、複数のトライアルアンドエラーシミュレーション中に、かつ、実生活での動作中にも(例えば、パイロメータならびに関連ソフトウェア及び適切なフィードバックに基づく制御を用いて)、複数のトライアルアンドエラーシミュレーションを容易に実行し、スキャンパターン及び関連する複数のパラメータを動的に変更することができる。実際、1つの種類のクランクシャフトに対して選択されたビーム変調技術またはエネルギー分布アプローチは、例えば、複数の潤滑油孔の寸法における複数の変化及び位置における複数の変化が考慮されることによって、他の種類のクランクシャフトに容易に適合可能である場合が多い。つまり、この技術は、誘導による加熱に基づくものよりはるかに柔軟である。本発明の複数の実施形態を用いることによって、適応は、基本的に、ハードウェアではなく、ソフトウェアの適応に属し得る。
例えば、変調の複数の代案A、B、C及びDのいずれも、単独で使用可能であり、または、Aは、BまたはCと共に使用可能であり、またはBは、Cと共に使用可能であり、または、A及びB及びCは、共に使用可能であり、かつ、Dは、任意に、上述の複数の組み合わせのいずれかと共に使用可能である。つまり、上述された本発明の複数の異なる態様は、ワークピースに対するレーザ加熱を複数の異なるワークピースの設計に適応させるために、極めて柔軟なプラットフォームを与え、ハードウェアを適応させる必要を実質的に減少させ。これは、複数のクランクシャフトのような複数のワークピースの誘導加熱に対して、さらに重要な利点を示唆する。例えば、選択肢A、B、C及びDに対する選択は、実用的な複数の考慮、例えば、異なる複数の種類のレーザ及びスキャンシステムに関するコスト、スキャン速度及び/またはレーザビームパワー強度を変化させる性能、複数のスキャンパターンを変化させる性能、例えば、単軸または双軸のいずれのスキャンシステムが用いられるかに応じて、等に基づいてなされることができる。
この変調アプローチは、複数の潤滑油孔及び複数のフィレットならびに複数のアンダーカットにおける過熱を防止するために有用であるのみならず、複数のワークピースの場合、複数のクランクシャフトのジャーナルの周のような周全体のいずれが硬化されるべきかに関して役立つ。周のほぼ360度全体が一度加熱処理を受けると、レーザビームは、既に硬化された、及び実質的に再び加熱されてはならないエリアに再び近づく。レーザビームを適切に変調することによって(速度、スキャンパターン、パワー及び/またはスポットサイズに関して、及び/または仮想のまたは等価なレーザスポットのような有効レーザスポット内におけるエネルギー分布を適応させることによって)、適度な加熱は、周の最初に加熱された部分と最後に加熱された部分との間のこの境界領域においても実現可能である。
本発明のさらなる態様は、ワークピース(例えば、中炭素鋼のような鉄材料のワークピース、例えば、クランクシャフト)表面に対するレーザ硬化の方法に関し、ワークピースは、少なくとも1つの硬化されるべき表面エリア(例えば、クランクシャフトの1つまたは複数の主ジャーナル及び/または1つまたは複数のロッドジャーナルの表面)を備える。
方法は、
レーザ源からのレーザビームを表面エリアに投射し、これによって、レーザスポットを表面エリアに生成する段階と、
ワークピースの表面とレーザ源との間の相対移動を(例えば、ワークピースX軸周りに回転させること、及び/または、ワークピース及び/またはレーザ源を、X軸に直交するY及び/またはZ軸に沿って変位させることによって)生じさせ、それにより、レーザスポットが、その後、表面エリアの複数の異なる部分に投射されることを可能にする段階(すなわち、レーザ源がスキャン手段との組み合わせで、レーザスポットを当該エリアの部分またはセクションに向けることができる各時点における、例えば、X、Y及びZ軸に従ったワークピースとレーザ源との間の相対位置に応じて、かつ、例えば、スキャン手段が、レーザスポットの直径、長さまたは幅に対応する厚さを有する一連の当該エリアに、または例えば、エリアの実質的に矩形のセクションに、1次元または2次元移動を与えるか否かに応じて)と、
相対移動の間、当該エリアの各部分にわたってレーザビームをスキャンする段階(スキャンは、1次元のみで、例えば、ワークピースの回転軸と平行に、または、2次元で実行可能であり、これにより、矩形パターン、楕円形パターン、三角形パターン、台形パターン等のようなパターンに従い、または、このようなパターンの複数の境界内において、例えば、蛇行した態様でレーザビームを移動させることによって、このようなパターンを埋める。用語「レーザビームをスキャンする」は、1つまたは複数のスキャンミラーのような、なんらかの種類の光学式スキャン手段などを用いて、レーザビーム自体が変位することを意味するものと解釈されなければならない。)とを備え、
レーザビームによって走査されるエリアに入るワークピースの表面の部分が、最初により高い平均パワーでレーザ照射を受け、その後、より低い平均パワーでレーザ照射を受けるように加熱が実行される。これは、レーザスポットが、単位面積当たり、末端部分より先端部分により多くの時間留まるように、より高いスキャン密度を有する先端部分と、より低いスキャン密度を有する末端部分とを有するスキャンパターンを与えることによって実現可能であり、これにより、処理されるべき表面部分が最初に先端部分に入り、その後末端部分に入る。平均パワーという用語は、スキャンサイクル全体の間における表面積当たりパワーの平均量として理解されるべきである。この目標を達成する他の方法は、レーザビームが90度より小さい角度で表面に作用するように、少なくとも部分的に中心から外された態様で、レーザビームを投射することによる。レーザビームを中央から外すことは、後方反射に起因する損傷または障害のリスクを減少させるという利点をさらに伴う。
本発明のさらなる態様は、(クランクシャフトの主ジャーナルまたはロッドジャーナルの表面のような)実質的に円形の断面を有するワークピース(例えば、中炭素鋼のような鉄材料のワークピース、例えば、クランクシャフト)の部分の表面をレーザ硬化する方法に関する。
方法は、
レーザ源からのレーザビームを表面に投射し、これにより、レーザスポットを表面に生成する段階と、
ワークピースの表面とレーザ源との間で相対移動を生じさせ(例えば、ワークピースX軸周りに回転させること、及び/または、ワークピース及び/またはレーザ源を、X軸に直交するY及び/またはZ軸に沿って変位させることによって)、それにより、その後、レーザスポットが、表面の周に沿って、表面の複数の異なる部分に投射されることを可能にする段階とを備える。
本発明のこの態様によれば、レーザビームは、中心から外された態様で、表面に投射される。すなわち、レーザビームの中央は、円形断面の中央を通る線と整合されていない。これは、レーザスポットを大きくする助けとなり、熱の分布をより良くすることに役立つ場合がある。また、このアプローチは、レーザスポットの先端境界及び末端境界において、レーザビームが表面に対して複数の異なる角度で入射することに起因して、レーザスポットの先端境界が末端スポットより高いパワー密度を有する可能性があることから、役立つ可能性がある。上述されたように、これは、表面が所望の温度に達するために必要な加熱時間を短縮可能である。このアプローチは、例えば、実質的に正方形または矩形のレーザスポットを与える固定光学系との組み合わせで使用可能である。また、レーザビームを中央から外すことは、後方反射に起因する損傷または障害のリスクを減少させるという利点をさらに伴う。
本発明のさらなる態様は、ワークピースの部分の表面をレーザ硬化する方法に関し、方法は、
レーザ源からのレーザビームを表面に投射し、これにより、レーザスポットを表面に生成する段階と、
ワークピースの表面とレーザ源との間で相対移動を生じさせ、それにより、その後、前記レーザスポットが表面の複数の異なる部分に投射されることを可能にする段階とを備える。レーザビームは、表面と直交しない方向で、好ましくは表面に対して70°より小さい、例えば60°より小さい、または45°よりさらに小さい角度を形成して、表面に投射される。これは、レーザスポットのサイズを増大させること、つまり、表面積当たりパワー量を減少させ、かつ、表面とレーザ源との間の所与の相対速度に対して、レーザスポットと表面上の所与の点との間の相互作用の時間を増大させる助けとなる。これは、硬化された層の深さの増大に寄与することができる。
本発明のさらなる態様は、ワークピース(中炭素鋼のワークピース、例えば、クランクシャフトのような)表面に対するレーザ硬化の方法に関する。
方法は、レーザ源からのレーザ光を加熱されるべき複数の表面エリアに投射する段階を備える。本発明のこの態様によれば、レーザ光は、第1の表面エリア及び第1の表面エリアと実質的に垂直に延在する第2の表面エリアに(同時にまたはその後または連続的に)投射される。方法は、レーザビームをS波偏光成分を有する第1のレーザビーム成分及びP波偏光成分を有する第2のレーザビーム成分に分割する段階と、第1のレーザビーム成分を、第1の表面エリアの加熱のために用いる段階と、第2のレーザビーム成分を、第2の表面エリアの加熱のために用いる段階とを備える。このように、パワー吸収と入射角度との間の関係 と、この関係が偏光に依存する態様とが、加熱効率を高めるために使用可能である。
上述された本発明の全ての態様において、ワークピースとレーザ源との間の相対移動を生じさせる段階は、レーザ光スポットが硬化されるべき表面エリアの周全体にアクセス可能となるように、ワークピースを(システムのいわゆるX軸と平行たり得る)回転軸周りに回転させる段階を含むことができる。例えば、クランクシャフトは、主ジャーナルの中央を通る長さ方向軸周りに回転可能である。
さらに、ワークピースとレーザ源との間の相対移動を生じさせる段階は、回転軸と直交する(例えば、Y軸と平行な)第1の方向及び回転軸と直交する(例えば、Z軸と平行な)第2の方向に、相対移動を生じさせる段階を含むことができる。このように、主ジャーナルの中央軸周りに回転するクランクシャフトの複数のロッドジャーナルのような、偏心して配置された複数のものの場合にも、レーザ光源と処理されるべき表面との間の距離は、一定に保持可能である。この主軸がシステムのX軸に対応する場合、Y及びZ軸のような2つの他の方向におけるレーザ光源の間の相対移動を生じさせることは、レーザ光源と処理されるべき表面との間の距離が、確実に一定に保たれることの助けとなる。例えば、第1の方向における移動は、ワークピースを(例えば、水平方向に)変位させることによって生じさせることができ、第2の方向における移動は、レーザ源を(例えば、垂直方向に)変位させることによって生じさせることができる。また、任意に、レーザ源は、回転軸と平行に移動可能とされ得る。つまり、レーザ光源は、例えば、その後、クランクシャフトの複数の異なるジャーナルに作用するために用いられてもよい。
本発明の多くの実施形態では、ワークピースは、複数の潤滑油孔を有するクランクシャフトであってもよい。
本発明のさらなる態様は、クランクシャフト表面をレーザ硬化する方法に関し、クランクシャフトは、主ジャーナル、複数のロッドジャーナル及び複数の潤滑油孔を備える。
方法は、
レーザ源からのレーザビームを、硬化されるべきジャーナルの表面に投射することにより、レーザスポットを表面に生成する段階と、(例えば、主ジャーナルの中心軸に対応し得る軸周りに)クランクシャフトを回転させることにより、表面をレーザ源に対して移動させる段階とを備える。
本発明のこの態様によれば、クランクシャフトが回転する間、レーザビームは、ジャーナルの表面の少なくとも一部にわたって、所定のスキャンパターンに従ってスキャンされることにより、表面を加熱する。表面において、複数の高感熱性サブエリアに、複数の低感熱性サブエリアより小さいエネルギーを適用するために、スキャンは実行される。予め決定されたという用語は、予め決定された態様で、及び/またはなんらかの種類の温度センサまたは温度カメラからのフィードバックに基づく制御システムに従って動作する間の、スキャンパターンの動的適応の可能性を除外するものではない。
表面において、複数の高感熱性サブエリアに、複数の低感熱性サブエリアより小さいエネルギーを適用するために、例えば、スキャンは、レーザビームのパワーを実質的に一定に維持し、かつ、スキャン速度及び/またはスキャンパターン、すなわち、レーザビームが表面において従うパターンまたは経路を適応させるように、実行可能である。本発明の他の複数の態様では、表面において、複数の高感熱性サブエリアに、複数の低感熱性サブエリアより小さいエネルギーを適用するために、例えば、スキャンパターンの複数のセグメントに対応して、レーザビームのオンオフ状態を動的に適応させることにより、スキャンパターンを実質的に一定に維持し、スキャン速度及び/またはビームパワーを適応させるように、スキャンは実行される。本発明のいくつかの実施形態では、複数の高感熱性エリアは、クランクシャフトの複数のジャーナルの複数の軸方向端部において、複数の潤滑油孔と隣接する複数のエリア及び/または複数のフィレットと隣接する複数のエリアを含む。
本発明のいくつかの実施形態では、スキャンパターンは、複数のセグメントを備え、パワー状態に対応するパワーレベルに対して、各セグメントに対応してレーザビームのパワーを設定するために、ビームパワー状態は、複数のセグメントの各々に割り当てられる。レーザは、複数のパワー状態の決定に応じて、複数のセグメントのうちのいくつかにおいて、ビームパワーが他の複数のセグメントと比べて異なるように、複数のビームパワー状態の要求に応じて、レーザビームのパワーを変化させるように構成される。レーザスポットをスキャンパターンに沿ってスキャンすることは、 好ましくは毎秒少なくとも300セグメント、好ましくは毎秒少なくとも600セグメント、より好ましくは毎秒少なくとも1,000セグメント、より好ましくは毎秒少なくとも5,000セグメント、さらにより好ましくは毎秒少なくとも10,000セグメントの率で生じ、スキャンパターンは、少なくとも10Hz、より好ましくは少なくとも50Hz、さらにより好ましくは少なくとも100Hzの周波数で繰り返される。つまり、スキャンパターンのセグメント化またはピクセル化は、加熱されているエリアのパワーまたはエネルギー分布が、例えば、スキャンされているエリアの感熱性に従って適合されることを可能とする一方で、同時にスキャンパターンを高周波数で繰り返し、それにより、現在加熱されているエリア内における温度の揺らぎを減少させるように実現可能である。
本発明の多くの実施形態では、レーザ源は、「オン」状態から「オフ」状態への切り替えのために約100μs以下を必要とし、逆もまた同様であるファイバレーザのような、ファイバレーザを備える。複数のファイバレーザは、典型的には、硬化目的のために十分なパワーを有する複数のビームを生成するダイオードレーザのような他の複数の種類のレーザよりコストがかかる。つまり、当業者は、複数のクランクシャフトのような複数のワークピースを硬化させるためにファイバレーザを用いることに消極的な可能性がある。しかしながら、ファイバレーザは、オン及びオフの高速切り替えが可能であり、つまり、等価なレーザスポットの複数の線に沿って及び/または複数のサブエリアまたはピクセル内でエネルギーを分布させるために、レーザのオン及びオフを切り替える間に、ビームが有効レーザスポットにわたって所定のスキャンパターンに従うことによって、特に、適切なエネルギー分布を得るために有用たり得る。また、複数のファイバレーザは、フォーカスされたレーザスポットとビーム出口との間の焦点距離を大きくすることができるように、高品質で比較的小さい直径の複数のビームを生成する。これは、スキャンの場合に、スキャンミラーなどの移動がより小さくなり得ることから、かつ、複数のクランクシャフトのような複数の複雑な対象の表面にわたってレーザビームをスキャンする場合にも、複数のカウンターウェイト及び複数の壁が焦点距離の短い複数のレーザビームに対する障害を意味し得ることから、利点となり得る。
本発明のさらなる態様は、ワークピース表面の少なくとも一部を硬化するためのシステムに関し、システムは、レーザ源と、ワークピースの表面とレーザ源との間で相対移動を生じさせるための手段とを備える。本発明のいくつかの実施形態では、レーザ源は、ワークピースの表面の部分にわたって、レーザビームを1または2次元でスキャンするためのスキャン手段を与えられ、またはこれと関連付けられる。システムは、システムの動作を制御するために、コンピュータ、コンピュータシステム、PLC等のような電子制御手段をさらに備える。
本発明のこの態様によれば、電子制御手段は、上述された複数の態様のいずれかに記載された方法を実行するために、システムを動作させるように構成される。
スキャンパターン、すなわち、パターンの経路の幾何学的構成のような複数のパラメータ、及び/またはスキャン速度、及び/またはレーザビームパワー、及び/またはレーザスポットサイズ、及び/または硬化されるべき表面におけるレーザビームの波長または入射角度のような複数のパラメータをさえ変更することによって、システムは、硬化されるべき表面に沿って、及びこれにわたって行われる加熱を最適化するための柔軟性を与える。トライアルアンドエラーの複数の実験は、複数のトライアルワークピースに対して、または複数のコンピュータシミュレーションを用いることによって実行可能であり、オペレータは、複数の高感熱性エリアまたは複数のものを過剰に劣化させることがない、複数の許容可能な硬化の特性を与えるのではなく、複数のパラメータの組み合わせに到達するまで、複数のセグメントの長さ及び位置/方向、各セグメントに対するスキャン速度、各セグメントにおけるレーザビームのパワー等のような複数のパラメータの複数の値を動的に変更することができる。
本発明の他の態様は、上述されたようにシステムにおいて実行された場合に、上述された本発明の複数の態様のいずれかの方法を実行するための複数のプログラム命令を備えるコンピュータプログラムと、(任意の適した種類のメモリデバイスまたは電気信号のような)コンピュータプログラムを格納する情報キャリアとに関する。
本発明の他の態様は、クランクシャフトの複数のジャーナルの複数の表面に対してレーザ硬化を行うための装置に関し、複数のジャーナルは、少なくとも2つの中央に構成された主ジャーナルと、少なくとも1つのオフセットされたロッドジャーナルとを含み、装置は、
クランクシャフトを支持し、任意に、クランクシャフトをクランクシャフトの長さ方向軸周りに回転させるように構成されるクランクシャフト支持部と、
レーザスポットをジャーナルに生成するために、レーザビームをクランクシャフトのジャーナルに投射するように構成される少なくとも1つのレーザ源とを備え、
2次元のスキャンパターンをジャーナルの表面に確立するために、レーザ源は、レーザビームを2次元でスキャンするための双方向スキャン手段を含む。2次元スキャンパターンを用いることにより、硬化されるべき表面にわたってレーザスポットを繰り返しスキャンすることによって、有効レーザスポットを確立することが可能となり、複数のクランクシャフトに関して適切な時間当たり生産率を得るために、所望の硬化深さを実現するために十分な時間、加熱が生じることを可能とする一方で、同時に、クランクシャフトを十分な速度で回転可能とするべく、クランクシャフトがその長さ方向軸周りに1回だけ回転する、または有効レーザスポットを1回だけジャーナル周り及びクランクシャフトの周方向に対応する他の方向において360度走査する間に、クランクシャフトのジャーナル全体の加熱を可能とするために、有効レーザスポットは、クランクシャフトの長さ方向軸と平行な方向に十分な拡張を有する。装置の動作中に、複数の潤滑油孔と隣接する複数のエリアのような複数の感熱性サブエリアに対する過熱を回避するべく、動的に適応可能なエネルギー分布を得るために、2つの方向におけるこのスキャンは、例えば、スキャンパターンを、複数の異なるパワーレベルが割り当てられる複数のセグメントに分割することとの組み合わせが可能である。
本発明のいくつかの実施形態では、クランクシャフト支持部及びレーザ源は、長さ方向軸に直交する少なくとも2つの異なる方向において、クランクシャフトが長さ方向軸周りに回転する間、ロッドジャーナルとレーザ源との間が一定距離となることを可能とするように、互いに対して変位可能であり、ロッドジャーナルは、長さ方向軸に対してオフセットされる。
例えば、レーザ源は、第1の方向、好ましくは垂直方向に変位可能であり、クランクシャフト支持部は、第2の方向、好ましくは水平方向に変位可能であり、第1及び第2の方向の両方は、長さ方向軸に直交する。本発明のいくつかの実施形態では、レーザ源は、その後でクランクシャフトの複数のジャーナルに作用するために、クランクシャフトの長さ方向軸と平行にさらに変位可能である。レーザ源は、高速オン/オフ切り替え、及び/または、例えば、レーザスポットが、複数の異なるパワー状態、すなわち、所望の複数のパワーレベルが割り当てられた複数のセグメントを有するスキャンパターンに従う場合に、複数のパワーレベル間での高速切り替えに対応するために、異なる複数のビームパワーレベル間での高速切り替えに適したファイバレーザまたは他のレーザのようなレーザを備えることができる。
装置は、スキャンパターンと関連付けられた複数のパラメータ値を格納するメモリを含む制御ユニットを備えることができ、スキャンパターンは、複数のパラメータ値の複数のセットを含み、複数のパラメータ値の第1のセットは、第1の2次元エネルギー分布をクランクシャフトのジャーナルにおいて決定し、複数のパラメータ値の第2のセットは、第2の2次元エネルギー分布をジャーナルにおいて決定する。制御システムは、クランクシャフトのジャーナルの大部分を硬化する間に、複数のパラメータ値の第1のセットを適用し、潤滑油孔隣接エリアが加熱されている場合に、複数のパラメータ値の第2のセットを適用するように構成可能である。明らかに、複数のパラメータ値の複数のセットがさらに存在可能である。つまり、例えば、クランクシャフトの長さ方向軸周りにクランクシャフトが回転する間、2次元エネルギー分布は、複数の高感熱性サブエリアに対する過熱を回避するために、動的に適合可能である。複数のパラメータ値は、ビームパワー及びスキャン速度を含む上述された複数のパラメータ値のいずれかを含むことができる。
制御ユニットは、クランクシャフトがその長さ方向軸周りに回転する間に、複数のパラメータ値の第1のセット及び複数のパラメータ値の第2のセットを選択的に適用し、任意に、例えば、2次元のスキャンパターンによってカバーされるエリア内またはこれと隣接するエリアにおいて、2次元のスキャンパターンに対応する高感熱性サブエリアの出現と同期して、メモリに格納された複数のパラメータ値のさらなるセットを適用することによって、硬化加工を制御するように構成可能である。すなわち、制御ユニットは、潤滑油孔隣接エリアが加熱されるべき場合、すなわち、例えば、クランクシャフトが回転する間に、潤滑油孔が現在レーザビームによってスキャンされているエリアに到達した場合に、例えば、2次元エネルギー分布を変化させることができる。
本発明のいくつかの実施形態では、スキャンパターンは、その各々に複数のパラメータ値のうちの少なくとも1つが割り当てられた、セグメント化された複数のセグメントを備えるスキャンパターンであってもよい。少なくとも1つのパラメータ値は、スキャン速度、レーザスポットのサイズ、レーザビームのパワー、レーザビーム内のパワー分布、対応するセグメントの長さ及び対応するセグメントの方向のうちの少なくとも1つを示すことができる。例えば、スキャン速度、すなわち、セグメントに沿ったレーザスポットの速度及び/またはレーザビームのパワーの適切な選択は、スキャンパターンによってカバーされたエリアのエネルギー分布を決定するために使用可能である。可変なエネルギー分布を動的に実装し、それをクランクシャフトに適応させるためのセグメント化アプローチによる複数の利点のいくつかが、上述された。
本発明のいくつかの実施形態では、装置は、毎秒少なくとも300セグメント、好ましくは毎秒少なくとも600セグメント、より好ましくは毎秒少なくとも1,000セグメント、より好ましくは毎秒少なくとも5,000セグメント、さらにより好ましくは毎秒少なくとも10,000セグメントの平均速度で、スキャンを実行するように構成され得る。上述されたように、毎秒当たりのセグメントが多数であることは、スキャンパターンを、合理的な量、例えば、6またはそれより多くのセグメントと、短いサイクルタイム、すなわち、例えば、50Hz以上のような高い繰り返し率のスキャンで、組み合わせるために有用たり得る。
本発明のさらなる態様は、ワークピースの表面エリアを硬化するための機械または装置に関する。用語「表面エリア」は、広く解釈されるべきである。これは、ワークピースの表面の部分、またはワークピースの表面全体を指してもよい。これは、例えば、は、クランクシャフトのジャーナルの表面、または当該表面の部分を指してもよい。明らかに、機械は、ワークピース1つより多くの表面エリアを硬化するために有用たり得る。例えば、クランクシャフトの場合、機械は、主ジャーナル及び/または複数のロッドジャーナルのいくつかまたは全ての複数の表面または複数の表面のうちの大半を硬化させるように構成可能である。表面エリア(または複数の表面エリアのうちの少なくとも1つ)は、少なくとも1つの低感熱性サブエリアと、少なくとも1つの高感熱性サブエリアとを備える。
装置は、(例えば、所望の断面を有するように構成されるビームを表面エリアに単に向けることによって、または、表面エリア上でスキャンパターンに沿って「現実の」レーザスポットをスキャンすることにより、仮想のまたは等価な有効レーザスポットを生成することによって)有効レーザスポットを表面エリアに投射するように構成されるレーザ源と、表面エリアの複数の異なる部分または複数の部分を硬化に適した温度にその後徐々に加熱するために、有効レーザスポットが表面エリアに沿って移動させられるように、表面エリアと有効レーザスポットとの間で相対移動を生じさせるための手段とを備える(本発明のいくつかの実施形態では、これらの手段は、クランクシャフトのジャーナル周りのようなワークピースの部分の周りで、有効レーザスポットを走査するために、ワークピースを軸周りに回転させるための手段を含む、またはこれからなる)。すなわち、有効レーザスポットが、表面エリアに沿って、例えば、クランクシャフトのジャーナルの周方向に、またはこのようなジャーナルに沿って、クランクシャフトの長さ方向においてその1つの端部からその他の端部に向かって進む場合、有効レーザスポットは、新たな複数の部分を徐々に加熱する一方で、複数の以前加熱された部分の冷却が可能であり、それにより、焼き入れの発生が可能となる。有効レーザスポットは、2次元エネルギー分布を有するように構成される。例えば、エネルギーは、有効レーザスポットにわたってまたはこれに沿って多かれ少なかれ均等に分布可能であり、有効レーザスポットの他の複数のエリアより大きいエネルギー/パワーが、有効レーザスポットのいくつかのエリアにおいて、表面に適用可能である。
装置は、装置の動作を制御するために1つまたは複数のプログラマブルデバイスを含む電子制御システムのような制御システムをさらに備え、制御システムは、高感熱性サブエリアにおいて、低感熱性サブエリアと異なるように、2次元エネルギー分布を変更するように構成される。それにより、硬化されるべき表面エリアの全てまたは大半の全体にわたって所望の硬化深さ及び質を実現するために、表面エリアの加熱が最適化可能であり、複数の高感熱性サブエリアに対する過熱を防止する一方で、複数の低感熱性サブエリアに対する十分な加熱を可能とする。用語「高感熱性」及び「低感熱性」は、広く解釈されるべきであり、概して、これらの複数の特性に起因して、有効レーザスポットによって、より小さいエネルギーまたはより大きいエネルギーを受けなければならない異なる複数の表面エリアを指す。例えば、低感熱性サブエリアは、例えば、損傷を回避するために、または単に、例えばワークピースの構造に起因して、所望の硬化に達するために必要な加熱が少なくてすむために、より小さいエネルギーを受けなければならない高感熱性エリアより、所望の硬化に達するために大きいエネルギーを必要とするエリアであってもよい。
レーザ源という記載は、少なくとも1つのレーザ源の存在を示唆するが、連携して有効レーザスポットを形成し、及び/または複数の異なる有効レーザスポットを生成するために使用可能な、さらなる複数のレーザ源の存在を除外するものではない。
本発明のいくつかの実施形態では、少なくとも1つの高感熱性サブエリアは、
表面エリアにおいて、潤滑油孔のような孔と隣接するエリア、
及び/または
アンダーカットフィレットのようなフィレット、
及び/または
有効レーザスポットがクランクシャフトの円筒状ジャーナルのような対象の周に沿って、360°軌道の端部において到達する部分のような、表面エリアの以前に硬化された部分を含む。
低感熱性サブエリアは、例えば、複数の潤滑油孔から離れた、及び/または複数のフィレットから離れた、及び/または以前に硬化された部分から離れた、クランクシャフトのジャーナルの表面に対応可能である。
本発明のいくつかの実施形態では、装置は、有効レーザスポットの表面エリアに沿った移動の少なくとも一部、好ましくは少なくとも50%の間、より好ましくは少なくとも90%の間、さらにより好ましくは有効レーザスポットが表面エリアに沿って移動する100%の間、有効レーザスポットによって加熱される表面エリア内の複数の部分が、少なくとも0.5秒、好ましくは少なくとも1秒の間加熱されるように、有効レーザスポットがサイズを有し、かつ、表面エリアに沿って速度で移動するように動作するべく、構成またはプログラムされる。これは、多くの用途に対して、硬化された層の十分な深さを実現する助けとなるという知見が得られた。熱が材料に十分浸透することを可能とするためには、十分に長い加熱時間が望ましい可能性がある。少なくとも0.5または1秒、任意に、5秒より小さいまたは3秒よりさらに小さい時間が、例えば、複数のクランクシャフトの複数のジャーナルに対する硬化のために適切となる可能性があり、例えば、自動車産業において共通して必要とされる複数の硬化深さに達するために十分な熱の浸透を可能とする一方で、硬化の質に対して負の影響を与え得るほど高い温度、例えば、ワークピース材料の融点付近の、またはそれより上の温度を必要としない。本発明のこれらの実施形態のうちのいくつかでは、有効レーザスポットが表面エリアに沿って移動する方向における(例えば、クランクシャフトがその長さ方向軸周りに回転することによって有効レーザスポットがジャーナル周りを周方向に変位する場合に、例えば、クランクシャフトのジャーナルの周方向における)有効レーザスポットのサイズは、少なくとも5mm、好ましくは少なくとも7mmより好ましくは少なくとも10mm、さらにより好ましくは少なくとも15mm、20mm、30mmまたはそれより大きく、例えば少なくとも50mmである。硬化されるべき各部分を十分な時間、例えば少なくとも0.5秒または少なくとも1秒、加熱された状態で保持する必要により、有効レーザスポットが硬化されるべき表面エリアに沿って移動可能な速度が制限される。有効レーザスポットがレーザスポットの典型的なサイズであるわずか数mmオーダの直径または幅を有する場合、必要な加熱継続時間は、レーザスポットが、比較的低い速度で硬化されるべき表面エリアに沿って移動しなければならず、例えば、複数のワークピースに関して時間当たり生産性に負の影響を与えないことを示唆する。つまり、有効レーザスポットが硬化されるべき表面エリアに沿って移動する方向において、より大きい長さまたは幅を有する有効レーザスポットを用いることにより、有効レーザスポットがより高い速度で移動可能である一方で、依然として十分な加熱時間を可能とすることから、生産性が高められる。
本発明のいくつかの実施形態では、装置は、有効レーザスポットの複数のセグメントを生成することによって、有効レーザスポットを生成するように構成され、複数のセグメントは、少なくとも6つのセグメントを備え、制御システムは、複数のセグメントに割り当てられた複数のパラメータ値に従って、複数のセグメントにおけるエネルギー密度及び/または分布(すなわち、スキャンパターンの複数のセグメントの場合、スキャンサイクルのような特定の時間間隔の間、各セグメントに対応するエネルギー)を選択的に変更することによって、2次元エネルギー分布を変更するように構成され、複数のパラメータ値は、制御システムのメモリに格納される。上述されたように、セグメント化アプローチは、例えば、表面エリアに対する加熱を表面エリアの複数の特性に適応させるために、複数の異なるエネルギー分布パターンを生成可能とする柔軟性及び簡潔さに起因する、複数の重要な利点を示唆する。例えば、各々が3つのセグメントを備える2行で構成された6つのセグメントを有する単純なパターンを用いる場合、有効レーザスポットが、硬化されているクランクシャフトのジャーナルの中央に配置された潤滑油孔に近づく場合に、複数の中央のセグメントのうち1つまたは両方のパワーを減少させることにより、潤滑油孔と隣接して適用されるエネルギーを、ジャーナル表面の複数の周辺部分に適用されるエネルギーと比べて減少させ、それにより、潤滑油孔と隣接するエリアに対する過熱リスクを減少させる一方で、潤滑油孔からもさらに離れて、例えば、潤滑油孔の複数の境界から離れた潤滑油孔の複数の側面において、表面の適切な硬化を維持することができる。多数のセグメントは、硬化されている表面の複数の感熱性特性に対する2次元エネルギー分布の非常に正確な調整を可能とする。複数のセグメントは、例えば、複数のセグメントの複数の行及び複数の列を有する配列において、構成可能である。
本発明のいくつかの実施形態では、レーザ源は、レーザ源のレーザビームを2次元でスキャンするように構成されるスキャン手段を備え、制御システムは、スキャンパターンに従う有効レーザスポット(セグメント化された有効レーザスポットの場合、スキャンパターンは、本発明の多くの実施形態では、複数のセグメントを備えることができる)を生成するために、レーザビームを2次元でスキャンするように構成され、スキャンパターンは、少なくとも10Hz、好ましくは少なくとも50Hz、より好ましくは少なくとも100Hz、さらにより好ましくは少なくとも200Hzの反復率で繰り返される。より大きい有効レーザスポットを生成するべく、小さいレーザスポットを表面エリアに沿って、及びこれにわたって移動させるために、レーザビームをスキャンすることは、大きな柔軟性を与えることから、有効レーザスポットにわたるエネルギー分布を考慮する上で有利である。一方で、スキャンパターンの高い繰り返し率により、
比較的大きいサイズ、例えば1cm2またはそれより大きい有効レーザスポットが可能であり、それにより、一方で、有効レーザスポットの移動方向と直交する方向において、比較的大きい幅のレーザスポットが可能となる。例えば、有効レーザスポットが周方向に移動する場合における複数のクランクシャフトのジャーナルに対する硬化の場合、ジャーナルの表面エリア全体が、有効レーザスポットをジャーナル周りに一度通過させることによって加熱されるよう、有効レーザスポットがジャーナルの幅の大半または全てにわたって拡張可能なように、有効レーザスポットは、複数のジャーナルと交差する方向に(すなわち、クランクシャフトの長さ方向に)、比較的大きい幅を有することができる。一方で、同時に、硬化されるべき表面エリアに沿った有効レーザスポットの移動方向における、有効レーザスポットのサイズは、上述されたように、十分な加熱継続時間との組み合わせで、比較的高い速度で移動することを可能とするように、十分大きくすることもできる。
同時に、現在加熱されているエリア内で大きい温度変動を回避することは、上述された複数の理由に対して有利であり、高い繰り返し率により、以前加熱された温度があまりに大きく下降することが可能となる前に、加熱された部分が確実に再加熱可能となる。
スキャンパターンは、ループを形成する複数の隣接セグメントの形態、または複数の平行な線のような複数の線の形態であってもよく、または、これは、あらゆる他の適した構成を有することができる。2次元エネルギー分布を適応させることは、複数のセグメントのいくつかまたは全部の長さ及び/または位置を適応させることを含むことができる。
本発明のいくつかの実施形態では、複数のパラメータ値は、スキャンパターンの対応するセグメントに対応するビームのビームパワーレベル及び/またはスキャン速度を示す。つまり、加熱によって硬化されるべき表面エリアに沿った有効レーザスポットの移動の各特定の時点において適用されるべき2次元エネルギー分布は、各セグメントに割り当てられたビームパワー値及び/またはスキャン速度によって決定可能である。1つの選択肢、他の選択肢または両方の間における選択は、上述されたように、例えば、レーザ源及びスキャンシステムの複数の特性に依存することができる。本発明の複数の他の実施形態では、複数のパラメータ値は、対応するセグメントの位置または長さを示すことができる。また、他の複数の選択肢が、上述されたように可能であり、これらの複数の選択肢のうち1つまたは複数が、組み合わせて使用可能である。
本発明のいくつかの実施形態では、装置は、クランクシャフトの少なくとも1つのジャーナルを硬化するためにプログラムされ、装置は、クランクシャフトの長さ方向において、クランクシャフトのジャーナルの50%より多く、好ましくは75%より多く、85%より多く、または90%もしくは95%より多く、例えば99%より多く、または100%もにわたって延在し、及び、特に、例えば、表面エリアが、例えば少なくとも800μm以上の有効硬化深さが望ましい場合には、100%を超えないとしても、硬化されるべき表面エリアの大部分にわたって有効レーザスポットを生成するためにプログラムされる。小さいレーザスポットを用いてクランクシャフト表面の複数の非常に特定の部分を硬化させることが、当技術分野において周知である。しかしながら、本発明は、(クランクシャフトの複数のジャーナルの複数の表面全般のような)複数の主要な表面に対する硬化を、1回だけの走査またはわずか数回の走査で可能とする一方で、同時に、例えば、複数の潤滑油孔及び/または他の複数の高感熱性サブエリアの存在を考慮に入れて、加熱されている表面エリアの複数の部分の複数の特性に従って、加熱を適応させる。
本発明のいくつかの実施形態では、制御システムは、複数のデータセットを格納するように構成されるメモリを備え、複数のデータセットの各々は、有効レーザスポットの2次元エネルギー分布を示すことにより、装置が有効レーザスポットの2次元エネルギー分布を適応させる間に、有効レーザスポットが低感熱性サブエリアに投射される場合に、レーザ源を動作させるために複数のデータセットのうちの1つを用いることによって、かつ、有効レーザスポットが高感熱性サブエリアに投射される場合に、レーザ源を動作させるために複数のデータセットのうちの少なくとも他の1つを用いることによって、有効レーザスポットが表面エリアに沿って移動させられるように構成される。つまり、装置を具体的なクランクシャフトのような具体的な製品に適応させる場合、オペレータは、クランクシャフトの複数の異なる部分に対して、複数の適切なエネルギー分布、例えば、潤滑油孔から離れたジャーナルの部分に対する第1の2次元エネルギー分布、及び潤滑油孔と隣接する複数のエリアに対する1つまたは複数の異なる2次元エネルギー分布を設計し、複数のパラメータの対応する複数のセットを制御システムのメモリに格納し、有効レーザスポットのエネルギー分布を動的に変更するために制御システムをプログラムすることができる間に、有効レーザスポットは、複数の潤滑油孔及び加熱が実行される態様の調整を必要とする他の複数のエリアの出現に同期して、ジャーナル周りをまたはこれに沿って移動する。
本発明のさらなる態様は、クランクシャフトのようなワークピースの少なくとも1つの表面エリアをレーザ硬化する方法であって、上述された装置を用いて、ワークピースの表面エリアを硬化温度に加熱する段階と、焼き入れを生成するために、表面エリアの複数の加熱された部分を冷却可能とする段階とを備える方法に関する。
本発明の他の態様は、複数のジャーナルを備え、複数のジャーナルのうちの少なくとも1つは、上述された本発明の複数の態様の1つに係る方法によって硬化された表面を有する、クランクシャフトに関する。
本発明の他の態様は、クランクシャフトの複数のジャーナルをレーザ硬化するために、上述された装置をプログラミングする方法であって、
複数のデータセットを確立するために、レーザビームパワー及び/またはスキャン速度及び/またはセグメントの長さ及び/またはセグメントの方向のような複数のパラメータ値に関するエネルギー分布を(有効レーザスポットを確立するためにレーザビームスポットが従うべきスキャンパターンの複数のセグメントのような)複数のセグメントに割り当てる段階であって、各データセットは、硬化されるべき表面エリアに投射され、かつ、表面エリアに沿って変位される有効レーザスポットの特定の2次元エネルギー分布に対応する段階と、
複数のデータセットを格納する段階と、
表面エリアの低感熱性サブエリアを加熱するための複数のデータセットのうちの少なくとも1つに従ってエネルギー分布を適応させることによって、かつ、表面エリアの高感熱性サブエリアを加熱するためのデータセットの少なくとも他の1つに従ってエネルギー分布を適応させることによって、有効レーザスポットの表面エリアに沿った移動と同期して、有効レーザスポットのエネルギー分布を適応させるために、装置をプログラミングする段階とを備える、方法に関する。上述されたように、セグメント化アプローチにより、当業者は、適した複数の2次元エネルギー分布を容易に確立、試験及び選択することができ、硬化されるべきエリアの複数の異なるサブエリアにこれらを割り当て、例えば、複数の具体的なデータセットを潤滑油孔周りのエリアに割り当て、他の複数の具体的なデータセットをクランクシャフトの以前に硬化された部分と重複するエリアに割り当てる。
本発明のいくつかの実施形態では、この方法は、データセットを確立する段階の後、対応する2次元エネルギー分布をスクリーン上で算出及び可視化する段階を備える。多くの場合、可視化は、当業者が、スキャンパターンの複数のセグメントのような複数のセグメントに対する複数のパラメータ値の特定の割り当てに対応する、選択された2次元のデータセットが、クランクシャフトの対応する部分に対して適度な加熱を与える可能性が高いか否かを決定する助けとなる。純粋な複数の数学的方法及び複数のコンピュータが、複数のセグメントに対する複数のパラメータ値の最適な割り当てを算出するために使用可能である一方で、可視化は、当業者にとって利用可能な役立つツールとなり得る。
使用に適した複数のレーザが、2kW−10kWの範囲(上限及び下限は範囲に含まれる)のパワーを有するビームのような高いビームパワーを与えるものとなり得るという知見が得られた。このような複数のレーザは、例えば、特に、複数のクランクシャフトの表面硬化に適切たり得る。
典型的には、この種類のレーザで、かつ、例えば、クランクシャフト表面の表面硬化の目的で、硬化されるべき表面に投射されたレーザスポットは、好ましくは2mmから5mm、例えば約3mmの範囲の直径を有することができる。この種類のスポットは、2kW−10kWのレーザビームを用いたクランクシャフト表面の硬化に適切と考えられる。
硬化は、好ましくは、硬化されたエリアにおいて、任意に、複数の高感熱性サブエリア近傍及び/または硬化されたエリアの複数の境界または複数の端部セクションを除き、少なくとも800μm以上(例えば少なくとも1200μmまたは少なくとも1500μmまたはさらに2000μm以上)の硬化された層の有効硬化深さを実現するために実行される場合が多い。これらの複数の硬化深さは、例えば、複数のクランクシャフトに適切である。2kW−10kWの範囲のパワーを有するレーザを用いて、これらの複数の硬化深さは、レーザビームをクランクシャフトに約2−6分適用して(正確な時間は、ビームパワー、硬化されるべき表面エリア及び層の深さのような複数の特徴に依存する)実現可能であると考えられる。いくつかのクランクシャフトを平行に処理することによって、サイクルタイム は、実質的に削減可能である。例えば、2つまたは3つのクランクシャフトを平行に処理することによって、典型的には、1分オーダのサイクルタイムが実現可能となる.必要な深さは、典型的には、800μmから2000μmまでの範囲、またはそれより大きくてもよい。
スキャンパターン及びビームパワー、レーザスポットのサイズ、スキャン速度、及び/またはレーザビームの入射角度のような他の複数のパラメータの適応により、レーザビームと特定のエリアとの間の相互作用の時間を増大させることが可能となり、これは、硬化された層の深さを増大させる助けとなり得る。例えば、所与のパターンが、レーザ源と硬化されるべき表面との間の相対移動の方向に膨張する場合、及び/または(例えば、円形断面を有する部分の表面に対してビームを中央から外す、または平坦な表面に対してビームを傾けることによって)レーザビームと表面との間の入射角度が減少する場合、ビームと表面上の所与の点との間の相互作用の継続時間は増大可能であり、これは、硬化された層の深さの増大に寄与し得る。
スキャン速度(すなわち、硬化されるべき表面にわたって、レーザスポットがスキャンシステムによってスキャンされる速度)は、上述されたように、スキャンパターンまたは経路に沿って変化可能であるが、平均スキャン速度は、典型的には、2000mm/sから8000mm/sまでの範囲であってもよい。このようなスキャン速度は、2kWから10kWの範囲のパワーを有するレーザビームを用いる場合、複数のクランクシャフトの表面硬化に適切たり得る。
明らかに、上述された複数の異なる態様は、互いに互換可能である場合はいつでも、互いに組み合わせ可能である。
説明を完全にし、本発明に対するより良い理解を与えるために、複数の図面のセットが与えられる。複数の図面は、説明の不可欠な部分を形成し、本発明を実行する複数の異なる態様を示すが、これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきものではなく、本発明を実施する態様の複数の例に過ぎない。複数の図面は、以下の複数の図を備える。
当技術分野において公知のクランクシャフトの斜視概略図である。
本発明の一実施可能形態に係るシステムの斜視概略図である。
本発明の一実施可能形態に係るレーザ源1の部分及びワークピースの部分の概略正面図である。
図3の実施形態の硬化加工の一時点におけるワークピースのセクションの概略上面図である。
図3の実施形態の硬化加工の異なる時点におけるワークピースのセクションの概略上面図である。
本発明の実施形態の変形例に係る硬化加工の一時点におけるワークピースのセクションの概略上面図である。
本発明の実施形態の変形例に係る硬化加工の異なる時点におけるワークピースのセクションの概略上面図である。
高パワー密度を有する先端部分と、低パワー密度を有する少なくとも1つの末端部分とを有する仮想レーザスポットの概略上面図である。
高パワー密度を有する先端部分と、低パワー密度を有する少なくとも1つの末端部分とを有する仮想レーザスポットの概略上面図である。
高パワー密度を有する先端部分と、低パワー密度を有する少なくとも1つの末端部分とを有する仮想レーザスポットの概略上面図である。
高パワー密度を有する先端部分と、低パワー密度を有する少なくとも1つの末端部分とを有する仮想レーザスポットの概略上面図である。
図3に示されるレイアウトの変形例のY−Z平面における概略側断面図である。
図3に示されるレイアウトの変形例のY−Z平面における概略側断面図である。
本発明のいくつかの実施形態において、レーザ源の部分として使用可能な偏光器を概略的に示す。
コンピュータシステム及びコンピュータシステムに格納される、及び/またはこれによって生成されるスキャンパターンを概略的に示す。
コンピュータシステム内の複数のメモリ位置を概略的に示す。
本発明の代替的な実施形態に係るコンピュータシステム内の複数のメモリ位置を概略的に示す。
潤滑油孔周りのエリアを硬化する場合に、有効レーザスポットのエネルギー分布が適合される態様を概略的に示す。
潤滑油孔周りのエリアを硬化する場合に、有効レーザスポットのエネルギー分布が適合される態様を概略的に示す。
潤滑油孔周りのエリアを硬化する場合に、有効レーザスポットのエネルギー分布が適合される態様を概略的に示す。
本発明のいくつかの実施形態に係る潤滑油孔の拡張が考慮される態様を概略的に示す。
レーザビームが有効レーザスポットをスキャンする周波数に応じた、加熱されているエリアの表面温度の変動の振幅を概略的に示す。
レーザビームが有効レーザスポットをスキャンする周波数に応じた、加熱されているエリアの表面温度の変動の振幅を概略的に示す。
有効レーザスポットが、クランクシャフトのジャーナルの硬化をその環状セグメントの硬化によって生成するために適用され得る態様を概略的に示す。
有効レーザスポットが、クランクシャフトのジャーナルの硬化をその環状セグメントの硬化によって生成するために適用され得る態様を概略的に示す。
図16B及び16Cのようなスキャンパターンに対して算出された、有効レーザスポットにわたるエネルギーまたはパワー分布を示す。
異なる複数のスキャンパターンのうちの1つの複数のセグメントの構成を概略的に示す。
パターンの複数の異なるセグメントに割り当てられた異なる複数のスキャン速度のうちの1つを概略的に示す。
図17B及び17Cのようなスキャンパターンに対して算出された、有効レーザスポットにわたるエネルギーまたはパワー分布を示す。
異なる複数のスキャンパターンのうちの1つの複数のセグメントの構成を概略的に示す。
パターンの複数の異なるセグメントに割り当てられた異なる複数のスキャン速度のうちの1つを概略的に示す。
図18B及び18Cのようなスキャンパターンに対して算出された、有効レーザスポットにわたるエネルギーまたはパワー分布を示す。
異なる複数のスキャンパターンのうちの1つの複数のセグメントの構成を概略的に示す。
パターンの複数の異なるセグメントに割り当てられた異なる複数のスキャン速度のうちの1つを概略的に示す。
軌跡の以前に硬化された部分への有効レーザスポットの到達を概略的に示す。
軌跡の以前に硬化された部分への有効レーザスポットの到達を概略的に示す。
軌跡の以前に硬化された部分への有効レーザスポットの到達を概略的に示す。
図2は、本発明の一実施可能形態に係るシステムを示す。システムは、レーザキャリッジ11に搭載されたレーザ源1を収容するフレーム構造を備え、レーザキャリッジ11は、第1のレーザキャリッジ駆動手段12、例えば、サーボモータまたはあらゆる他の適した駆動手段によって、垂直方向、システムの垂直なZ軸と平行に変位可能である。一方で、レーザ源1は、他のサーボモータまたは他の適した駆動手段のような第2のレーザキャリッジ駆動手段13によって駆動され、水平方向、システムの水平なX軸と平行に、水平軌道14に沿って、さらに駆動され得る。
一方で、システムは、2つのワークピースキャリッジ20を備え、各ワークピースキャリッジは、2つのワークピース1000(この実施形態では、複数のワークピースは、複数のクランクシャフトである)を平行に収容可能であり、各ワークピースを中心軸(この実施形態では、中心軸は、クランクシャフトの主ジャーナルの複数の中央を通る長さ方向軸に対応する)に沿って回転させるための駆動手段(図示せず)を含み、軸は、システムのX軸と平行である。一方で、各ワークピースキャリッジ20は、ワークピースキャリッジを水平方向、X軸と直交するシステムのY軸と平行に変位させるように構成される(サーボモータまたはあらゆる他の適した駆動手段のような)ワークピースキャリッジ駆動手段21と関連付けられる。
水平及び垂直方向という記載は、説明を単純化するためにのみ用いられ、あらゆる他の複数の軸方向は、明らかに適用可能であり、本発明の範囲に属する。
この場合、レーザ源1は、最初に、複数のワークピースキャリッジ20のうちの第1のワークピースキャリッジにおいて、複数のワークピース1000の1つの表面の複数の関連部分を硬化させるために用いられ、次に、これは、複数のワークピースキャリッジ20のうちの第1のワークピースキャリッジにおいて、他のワークピース1000表面の複数の関連部分を硬化させるために用いられ、次に、これは、その中に構成された複数のワークピース1000の複数の表面を硬化させるべく、複数のワークピースキャリッジ20のうちの第2のワークピースキャリッジと面するために、軌道14に沿って移動させられる。一方で、レーザ源1は、複数のワークピースキャリッジのうちの第2のワークピースキャリッジにおいて、複数のワークピースに対して動作し、複数のワークピースキャリッジのうちの第1のワークピースキャリッジにおいて、複数のワークピースは、取り外され、かつ、レーザ源によって処理されるべき新たな複数のワークピースと置換可能であり、逆もまた同様である。
明らかに、多数の代案が適用可能である。例えば、ワークピースキャリッジ当たり1つだけのワークピースが存在してもよく、または、ワークピースキャリッジ当たり2つより多くのワークピースが存在してもよい。ワークピースキャリッジ当たり1つのレーザ源が存在してもよい(すなわち、対応するレーザ源を有する第2のレーザ源キャリッジが、軌道14に追加可能である)。また、図2に示されたいくつかの構成、またはその複数の変形例は、平行して配置されてもよい。また、ワークピースキャリッジにおいて、いくつかの複数のワークピースがレーザ硬化処理を同時に受けられるように、各レーザキャリッジ11は、1つより多くのレーザ源1を設けられてもよい。レーザ源の数、ワークピースキャリッジの数、及びワークピースの数の間の関係は、例えば、システムの動作を停止させることなく複数のワークピースの取り付け及び取り外しを可能とすることによって、システムにおいてよりコストがかかる複数の部分の使用を最適化し、かつ、生産性を最適化するために、選択可能である。本発明のいくつかの実施形態では、複数のレーザビームを同時に同じクランクシャフトに向けるために、例えば、クランクシャフトの複数の異なるジャーナルに対して、またはクランクシャフトの同じジャーナルに対して同時に作用するために、複数のレーザ源が使用可能である。
本発明のいくつかの実施形態では、ワークピースが複数の主ジャーナル1001及び複数のロッドジャーナル1002を有するクランクシャフト1000である場合、主ジャーナル表面が円形で、クランクシャフトの回転軸周りに対称であるため、クランクシャフトの複数の主ジャーナル1001に対する加熱処理の間に、レーザ源は、Z軸方向に移動せず、ワークピースキャリッジは、Y軸方向に移動しない。本発明のいくつかの実施形態では、レーザ源及び/または複数のワークピースは、X軸方向における主ジャーナルの全延長に沿ってレーザ加熱処理を適用する必要がある場合には、X軸に沿って移動してもよい。これは、レーザビームをX軸方向に変位させるレーザ源のパワー性能及びスキャン手段(図示せず)の性能に依存する。レーザビームが、主ジャーナル1001の経路にわたって、X軸方向におけるその全延長に沿ってスキャンされ得る場合には、1つのジャーナルに対する処理から他の1つに対する処理に切り替える場合のみ、例えば、クランクシャフトの複数の主ジャーナル1001の1つに対する加熱処理の間、レーザ源1をX軸方向に変位させる必要はない可能性がある。同じことが、例えば、クランクシャフトの複数のロッドジャーナル1002に対する加熱処理に適用される。
しかしながら、ロッドジャーナル1002に対する加熱処理の間、その中心軸は、主ジャーナルの中心軸から径方向に変位させられ、各クランクシャフトワークピース1000が回転する間、(レーザ源のスキャン手段の出力、またはレンズ表面のような)レーザ源とレーザビームが投射される表面との間を一定距離に保つために、ワークピースキャリッジ20において、レーザ光源1は、垂直方向、Z軸と平行に移動させられ、ワークピースキャリッジ2は、水平方向、Y軸と平行に移動させられる。本発明の複数の他の実施形態では、複数のクランクシャフトは、Z及びY軸と平行に移動可能である。また、あるいはその代わりに、レーザ源は、Z及びY軸と平行に移動可能とするように構成可能である。
第1及び第2のレーザキャリッジ駆動手段12、13の動作、及びワークピースキャリッジ駆動手段21ならびに複数のワークピース1000を複数のワークピースキャリッジ20において回転させるための駆動手段の動作は、コンピュータ、コンピュータシステムまたはPLC(図2では図示せず)のような電子制御手段によって、制御可能である。
本発明のいくつかの実施形態では、レーザ源1は、レーザビームの方向を変更するように構成されるスキャンシステムを含む。このような複数のスキャンシステムは、当技術分野において周知であり、多くの場合、1つまたは複数のスキャンミラーを含み、その複数の角度は、複数の正弦関数、複数の三角関数等のような複数のスキャン関数に従って、コンピュータの制御下で、変更可能である。1軸スキャンシステム(例えば、1つの軸の周りに回転可能なスキャンミラーを有するスキャンシステムなど)が使用されることにより、ワークピース1000の回転に起因して、レーザビームをX軸と平行に、すなわち、レーザ源1に対するワークピース1000表面の移動方向と垂直にスキャンすることができる。表面の関連部分にわたる高速スキャンは、つまり、スキャンなしのスポットの拡張よりはるかに大きいX方向への拡張を有する仮想スポットを生成することができる。つまり、より大きいエリアにわたってビームパワーが分布することから、元のスポットは、より広いが、より小さいパワー密度を有する(X方向により大きい拡張を有する)仮想スポットとなる。
二軸スキャンシステムによって(例えば、双軸ミラーまたは2つの単軸ミラーを有するスキャンシステムによって)、レーザビームは、例えば、一方でX軸と平行に、かつ一方でY軸と平行に、及びこれらの組み合わせにより、2方向に移動可能である。つまり、レーザ源に対する表面の移動方向と垂直に表面をスキャンすることは別として、すなわち、X軸方向において複数のジャーナルの表面に「沿って」表面をスキャンすることは別として、レーザビームは、その移動方向、すなわち、Y軸と平行に、表面をスキャンすることもできる。それにより、クランクシャフトのジャーナルの表面が、ジャーナルの周方向にもスキャンされ得る。また、レーザビームは、X方向及びY方向への移動を組み合わせた複数の経路(すなわち、例えば、図12A−12Bに示されるように、周方向のW方向において、円形のクランクシャフトのジャーナルに投射された場合に)を描くことができる。それにより、ビームは、矩形、楕円形、台形等のような複数の複雑な形状を有する複数の経路に従うことができる。レーザスポットは、表面にわたってスキャンされることによって、(例えば、矩形の境界内で蛇行パターンに従うことによって、または当該境界内で複数の離間した線に従うことによって)Y(またはW)方向に実質的高さを有する、内部を埋められた仮想の矩形を形成し、または、矩形または任意の他の幾何学的形状を有する複数の境界の輪郭を繰り返し描くことができる。つまり、スキャンシステムの性能を用いて、所望の拡張及び形状を有する仮想のまたは等価な有効レーザスポットが、X方向及びYまたはW方向の両方において生成可能である。いわゆるXYZスキャナの場合、X及びY方向に移動可能であることに加えて、なんらかの種類の駆動手段によって、Z方向に変位可能なフォーカスレンズが与えられ、それにより、レーザスポットのサイズの動的適応が可能となる。それにより、スポットの位置及び当該サイズの両方は、硬化加工を最適化するように制御及び適合可能である。また、フォーカスレンズなどの変位の代案として、またはこれに加えて、レーザスポットのサイズは、第1のレーザキャリッジ駆動手段を用いてレーザ源をZ軸と平行に移動させることによって、制御及び適合可能である。また、例えば、上述されたドイツ特許出願公開公報第3905551A1号から公知であるように、システムは、レーザスポット内におけるパワー分布を変化させるための手段を含むことができる。
図3は、概略的に示された二軸スキャンシステム3を含むレーザ源1を概略的に示し、二軸スキャンシステム3は、双軸ミラーまたは2つの単軸ミラーに基づき、入射レーザビーム2をX軸と平行な垂直平面及びY軸と平行な垂直平面において偏向させるように構成される。角度αは、X軸と平行な垂直平面における最大走査を示し、角度βは、Y軸と平行な平面における最大走査を示す。図3は、ワークピースより上に、より詳細には、クランクシャフトの主ジャーナル1001より上に配置されたレーザ源1を概略的に示し、主ジャーナル1001は、潤滑油孔1003を含み、ワークピースキャリッジ(図示せず)内で、矢印によって示唆される方向に回転させられる。レーザビームのスキャンに起因するレーザスポットによって走査可能な部分またはセクション1006が、図3に概略的に示される。つまり、この種類のレーザ源を用いてワークピースの上面に投射された小さいレーザスポットは、角度α及びβに従って、スキャンシステムに可能とされた最大走査によって決定されるセクション1006内において、任意の所望の形状を有するパターンを高速で繰り返しスキャンすることによって得られる、より大きい仮想のまたは等価なスポットと置換可能である。つまり、1つだけの小さいスポットをレーザビームで加熱する代わりに、より大きいエリアが、(ただし、より小さい単位面積当たりパワーで)当該エリアをレーザビームでスキャンすることによって、時間間隔の間に加熱可能である。あるいは、換言すると、例えば、適切な固定光学系を用いることによって、(大きい矩形のスポットのような)大きいスポットを与える代わりに、対応するパワー分布は、より大きいエリアにわたって、より小さい、かつよりパワー集約的なスポットをスキャンすることによって実現可能である。これは、1つの重要な利点を伴う。これは、表面の複数の異なる部分の異なる複数の特性に従って、例えば、感熱性及び過熱による損傷リスクに応じて、スキャンパターン、スキャン移動速度、ビームパワー及び/またはスポットサイズを適応させることによって、異なる量のエネルギーを、表面の複数の異なる部分に動的に適用する可能性を与える。例えば、スキャンパターン、スキャン速度、ビームパワー及び/またはレーザスポットサイズは、複数の潤滑油孔近傍または複数のアンダーカットフィレット近傍の表面に適用される加熱エネルギー量を制限するために、選択(及び硬化加工中に、動的に適合)可能である。適切な硬化深さ及び質を得るために、スキャンは、繰り返し、かつ、好ましくは、例えば、10Hzより大きい、またはより好ましくは、50、100、150、200もしくは250Hzより大きい高周波数で実行されることにより、加熱されたエリア内における温度の大きな変動を回避することができる。
図4A及び4Bは、クランクシャフト、すなわち、硬化加工における2つの異なる段階の間のクランクシャフトの主ジャーナル1001の部分の上面図である。クランクシャフトは、ワークピースキャリッジ(図示せず)内で、矢印によって示された方向に回転させられる。
図4Aでは、参照番号2Aは、スキャンパターンを示す。レーザスポットは、実質的に矩形の経路2Aに従うように生成される。代替的な実施形態では、レーザスポットは、矩形を埋めるために、すなわち、矩形の表面全体に影響を与えるために、実質的に矩形のエリア2A内で、例えば、矩形エリア2A内で蛇行パターンまたは他のパターンに従って、スキャンされる。両方の場合において、ワークピース1001の表面に対するレーザビームの投射が、加熱の観点から、中空の矩形2Aまたは内部を埋められた矩形2Aの形態でそれぞれレーザビームが投射されていたとしたら実現されていた加熱と、実質的に等価となる結果となるように、スキャンは高速で実行される。図4Aでは、ワークピースが当該エリアにおいて中実であることから、レーザビームによって走査されたエリアは、低感熱性サブエリアである。
ここで、図4Bでは、潤滑油孔1003は、レーザビームによって走査され得るセクションまたは部分に達している。潤滑油孔の複数の境界が過熱によって損傷を受け得ることから、かつ、孔に金属が存在しないことにより、そのエリアにおいてワークピースのヒートシンク性能が減少することから、潤滑油孔1003に直近のエリアは、高感熱性エリアである。つまり、レーザビームが、図4Aのような低感熱性領域に投射される場合と同様に、潤滑油孔1003に直近のエリアに投射される場合、潤滑油孔1003の複数の境界に損傷を与える過熱が生じ得る。
従って、本発明のこの実施形態では、異なるスキャンパターン2Bは、ワークピースが図4B示される状況にある場合に用いられる。この場合に、レーザビームは、それぞれ、より大きい矩形2Bの形状である経路に従う、または、より大きい矩形2Bの輪郭を描かれたエリアを埋めるために、蛇行したパターンもしくは複数の平行な線に従う。これは、レーザビームからのパワーがより大きいエリアにわたって広がる、つまり、過熱リスクを減少させることを示唆する。換言すると、スキャンパターンに関するレーザビームの変調は、過熱リスクを減少させるために、図4Bに示される状況では、図4Aに示される状況と異なる。
明らかに、矩形パターンまたは矩形を埋める蛇行パターンを用いる必要はない。当業者は、当人が最も便利と考えるパターンを自由に用いることができる。例えば、ファイバレーザまたはレーザビームの高速オン/オフ切り替えを可能とする他のレーザが用いられる場合、複数の平行な線を備えるパターンが使用可能であり、低感熱性エリアまたはサブエリアがスキャンされる場合、複数の線の間の距離は、高感熱性エリアまたはサブエリアがスキャンされる場合より小さくなり得る。あるいは、より好ましくは、複数の線の間の距離は、実質的に一定に保持され得るが、ビームパワー及び/または複数の線に沿うスキャン速度は、スキャン速度がより高くなるように、及び/またはビームパワーが高感熱性エリアにおいて低感熱性エリアより低くなるように、適合可能である。また、これらの複数のアプローチの組み合わせが、使用可能である。複数の平行な線に沿ってスキャンする場合、本発明の多くの実施形態では、複数の多角形のミラーが、使用可能である。レーザスポットが従うパターンまたは経路を変更することに加えて、あるいは代案として、当業者は、クランクシャフトの複数の潤滑油孔1003の複数の境界のような複数の感熱性エリアの劣化が許容可能なレベルであるような適切な硬化を実現するために、レーザビームのパワー及び/またはレーザビームのスキャン速度、及び/またはレーザスポットのサイズ、及び/またはレーザスポット内のパワー分布を変更することを選択することができる。この種類の手段は、複数のアンダーカットフィレットまたは硬化の軌跡の端部におけるエリア、すなわち、基本的に、ワークピースが一度ほぼ360度回転したエリアのような、他の複数の感熱性エリアに対してもとることができ、レーザビームは、許容できない硬度低下につながる過剰な焼き戻し効果を回避するために、それによって以前加熱され、実質的に再加熱されてはならないエリアに近づく。
図5A及び5Bは、本発明の代替的な実施形態に係る硬化加工の2つの異なる段階の間における、クランクシャフト、すなわち、クランクシャフトの主ジャーナル1001の部分の上面図である。図4A及び4Bに対して示されたものが、準用される。図5A及び5Bでは、スキャンパターンは、ジャーナルのほぼ全幅にわたって、実質的に複数のフィレット1004の1つから他の1つにまで拡張する。図4A及び4Bに示されるように、スキャンパターンは、潤滑油孔1003周りの高感熱性サブエリアにおいて、低感熱性サブエリアまたは潤滑油孔からさらに離れた領域(図5A参照)より低いパワー密度(図5B参照)であることを示唆するように設計される。この場合、潤滑油孔1003周りのエリアがスキャンされている場合に、台形のスキャンパターンがより大きい高さであることによって、これが実現される。
しかしながら、この場合、複数のフィレット1004と隣接するエリアも、例えば、複数のアンダーカットフィレットを用いることに起因して、感熱性エリアであると考えられる。つまり、スキャンパターンは、当該エリアにおいても低パワー密度 を与えるように構成される。これは、台形のスキャンパターンを用いることによって実現され、これにより、実質的に一定のスキャン速度で、矩形のスキャンパターンが用いられる場合より小さいエネルギーが複数のフィレット近傍で受けられる。
図4A及び4Bの実施形態の場合と同様に、レーザビームは、図5Aまたは5Bに示された台形2Cおよび2Dの輪郭に従うことができ、または、これは、例えば、複数の台形内の蛇行した経路または複数の台形内の複数の線に従って、複数の台形をカバーしまたは埋める。
これらの複数のパターンが複数の例に過ぎないことは当業者にとっては明白であり、その当業者は、方法及びシステムを特定のワークピース設計に適応させる場合に、無数の適用可能な複数のパターンの中から選択することが可能である。
図6Aは、矩形断面を有し、かつ、高パワー密度の先端部分2E及び低パワー密度の末端部分2Fを有する仮想レーザスポット5の上面図である。仮想レーザスポットは、矩形エリアをカバーする蛇行したパターンに従う、より小さい現実のレーザスポットを繰り返しスキャンすることによって得られる。この場合に、高パワー密度は、矩形エリアの第1の部分において密な蛇行パターンを用いることによって得られ、矩形エリアの第2の部分において疎な蛇行パターンを用いることによって得られる。矢印は、ワークピース表面が仮想レーザスポットに対して移動する方向を示す。このように、加熱されるべきワークピースの部分は、最初に仮想レーザスポットの先端境界によって影響され、つまり、比較的大量の単位表面積当たりパワーを受ける。これは、高速加熱には有利であり、レーザ硬化の場合に、ワークピースの部分がオーステナイト化温度範囲に高速で達することを意味する。これは、所与のレーザビームパワー及び加熱されるべき表面の所与の移動速度に対して、ワークピースの加熱されたエリアが、オーステナイト化温度範囲で、またはそれより上の温度で、パワーが仮想レーザスポットにわたって均等に分布する場合より長い時間保持され得ることを意味する。パワーが均等に分布したとすれば、表面がオーステナイト化温度域に達するためにより長い時間がかかったこととなる。
図6Bは、蛇行したパターンを用いる代わりに、レーザスポットが複数の平行な線に従うことにより、(仮想のまたは等価な)有効レーザスポット5を形成する代替的な実施形態を示す。高パワー密度の先端部分2Eにおける複数の線に沿って、レーザビームのパワーがより低い及び/またはスキャン速度がより高い、低パワー密度の末端部分2Fと比べて、レーザビームのパワーはより高く、及び/またはスキャン速度はより低い。このように、有効レーザスポット5全体で、所望のエネルギー分布が得られる。複数の線の代わりに、あらゆる他の種類のスキャンパターンが、所望の2次元エネルギー分布を与えるために使用可能である。例えば、複数の高感熱性領域またはクランクシャフトの複数の潤滑油孔付近のような複数のエリアにおいてより小さいエネルギーを適用するために、レーザビームの高速オン/オフ切り替え及び/またはパワーの急速な変化を可能とするレーザを用いて、硬化されるべき表面の複数の特性に従って適合可能な、非常に正確なエネルギー分布を可能とする非常に複雑な複数のパターンが、使用可能である。例えば、ファイバレーザは、例えば、「ピクセル」アプローチを用いることによって、この種類のエネルギー分布を実装するために役立つ可能性があり、これにより、非常に特定の複数のサブエリアは、所望の2次元エネルギー分布に従って加熱される。複数の平行な線に沿って高速スキャンを行う場合、当技術分野において公知であるように、複数の多角形のミラーが使用可能である。
図6Cは、3つの異なる部分を備える有効レーザスポット5を示し、当該部分は、すなわち、スキャンパターンの複数の線を備える第1の部分2H、このような複数の線を全く有さない第2の部分2I、及びスキャンパターンの複数の線を備える第3の部分2Jである。第1の部分2Hは、任意に、より高いエネルギー密度の先端サブ部分2E、及びより低いエネルギー密度の末端サブ部分2Fを備えることができる。一方で、第1の部分2Hにおけるエネルギー密度は、第3の部分2Jにおけるエネルギー密度より高くなり得る。第3の部分2Jにおけるエネルギー密度は、順に、第2の部分2Iにおけるエネルギー密度より高くなり得る。第2の部分2Iにおけるエネルギー密度は、ゼロまたはゼロ付近となり得る。有効レーザスポット5は、スキャンパターンの全ての線に沿ってレーザビームを繰り返しスキャンし、所望のパワーまたはエネルギー分布パターンに従ってエネルギーを分布させるために、線の複数の異なるセグメントにおけるレーザビームのスキャン速度及び/またはビームパワー及び/またはオン/オフ切り替えを適応させることによって得られる。加熱が行われない第2の部分に起因して、スキャンパターンの第1の部分2Hは、ワークピースの表面温度を(先端サブ部分2Eにおける高パワー密度に起因して)できる限り急速に約1400℃オーダのような高温にし、所望の硬化深さを実現するために(有効レーザスポットとワークピースの表面との間の相対移動方向における第1の部分2Hの長さを、相対移動速度を考慮して適切に選択することによって)これを当該温度で十分な時間保つように選択可能であり、第2の部分2Iは、加熱された部分に対する冷却によって、自己焼き入れのような焼き入れを可能とすることができ、第3の部分2Jは、硬化されたエリアを焼き戻しするべく、ワークピースを400−500℃オーダのような温度に加熱するために適切なスキャンパターン、速度及びビームパワーを有することができる。このように、その後、硬化及び焼き戻しされるべき表面にわたる、有効レーザスポット5の変位または走査の1つだけの段階の間に、硬化及び焼き戻しは、行われることができる。これは、一連の硬化及び焼き戻しを完了させる速度を上げるために寄与することができる。(表面が加熱される温度は、ワークピース材料、例えば、使用される鋼の種類及びその組成に依存する。of 1400 °Cという値は、単に、例として説明されるものである。)
図6Dは、6本の線51を有するスキャンパターンを概略的に示し、各線は、5つのセグメントまたはピクセル51A、51Bを備える。各セグメントに対して、レーザビームは、硬化加工の間に動的に変化する所望のエネルギー分布に従って、オン(複数のセグメントまたはピクセル51A)またはオフ(複数のセグメントまたはピクセル51B)である。つまり、図6Dのレイアウトは、つまり、6x5のピクセル化を示し、市販のレーザ及び複数のスキャンシステムで容易に得られる。高速オン/オフ切り替えが可能なレーザ、例えば、ファイバレーザを用いることによって、所定のスキャン周波数に対して、スキャンパターンのピクセルの数を増大させることができる。50Hzまたは100Hz以上のような特定のスキャン周波数に対して実現可能な線の数は、とりわけ、使用されるスキャン手段に依存する。
レーザビームを単にオン及びオフにすることに代えて、またはそれに加えて、複数の他のレーザビームパワー状態、すなわち、最大パワーとゼロ(またはゼロ付近)パワーとの間の複数の異なるパワーレベルも、使用可能である。複数の異なるセグメントに対応する複数のパワー状態は、メモリに格納可能であり、例えば、必要な場合にはいつでも複数のセグメントのうち1つまたは複数に割り当てられたパワーレベルを減少させることによって、潤滑油孔隣接エリアにおけるエネルギー密度を減少させるために、硬化加工の間に動的に変更可能である。このセグメント化またはピクセル化アプローチは、非常に実用的であり、ユーザが、複数のパワー状態の複数の異なる組み合わせ、すなわち、ビームが複数の異なるセグメントにおいて有さなければならないパワーを、所望の結果を与える組み合わせを見出すまで試すことによって、有効レーザスポットにわたる適切な複数のエネルギー分布を見出すことを可能とする。レーザが、複数の異なるパワー状態またはレベル間における高速切り替えを可能とする場合、多数のセグメントは、毎秒、実質的な温度変動を回避するためにスキャンパターンの十分に高い繰り返し率を可能とする一方で、同時に、合理的な量の複数のセグメントに対応し、完了可能である。例えば、レーザが毎秒1000回のパワー状態における変化を可能とする場合、100Hzのスキャンパターンの繰り返し周波数は、10のセグメントを有するスキャンパターンとの組み合わせが可能となる。
図7Aは、図3に示されるシステムの変形例における主ジャーナル1001の断面図である。ここで、レーザ源は、X軸に沿って主ジャーナル1001の対称の垂直平面に対してわずかにオフセットされる。これは、レーザビームが、β角度を走査する場合、この場合には約90度である角度γ1と、この場合には実質的に90度より小さい角度γ2との間の複数の異なる角度で、ワークピースの表面に達することを意味する。スキャン速度及びパターンがスキャン全体で一定であり、かつ、ビームパワーが同様に一定に保たれる場合、これは、単位表面積当たりパワー密度が、より大きい角度γ1に起因して、先端境界(すなわち、回転体表面が、スキャン中にレーザビームによって走査されたエリアに入る位置)においてより高く、より小さい角度γ2に起因して、末端境界においてより低いことを意味する。図6Aに関連して説明されたように、この構成は、表面温度がオーステナイト化温度域に急速に達する助けとなり得る。
図7Bは、レーザビームが安定して保たれ、または、X軸と平行な垂直平面においてのみ、すなわち、図3の角度αに従ってスキャンされる、代替的な構成を示す。この場合に、対称平面に対するレーザビームのオフセット位置は、レーザビームが、90度より実質的に小さい角度γ下で表面に当たることを示唆する。これは、2つの効果を有する可能性がある。まず、スポットエリアがより大きくなり、これがレーザビームのパワーをより大きいエリアにわたって広げることから、利点となり得る。また、レーザビームの(Y軸方向における)厚さが無視可能なほど小さくはない場合、スポットの先端境界におけるレーザビームとワークピースの表面との間の入射角度と、スポットの末端境界における対応する角度との間に差が生じる。これは、スポットに入る場合に、表面に対する高速加熱の上述された効果が、先端境界における高パワー密度に起因して、実現可能となることを意味する。この実施形態は、例えば、実質的に矩形のレーザスポットを与える固定光学系により、有利に使用可能である。また、あるいはその代わりに、この概念は、X軸と平行の1次元スキャンとの組み合わせで使用可能であり、レーザスポットの直径または幅に対応する幅と、X軸と平行なレーザビームの走査に対応する長さとを有する仮想矩形を確立する。
レーザスポットのサイズを増大させるために、硬化されるべき表面エリアが平坦または非円形の場合、同様の複数のアプローチがなされることができる。レーザビームは、それが平坦なエリアと直交しないように、当該平坦なエリアに投射され得る。
複数の非常に小さい角度を除き、レーザでは達することが困難な複数の表面を硬化させることが望ましい場合がある。例えば、複数のクランクシャフトの場合に、主ジャーナル及び複数のロッドジャーナルの複数の表面から実質的に垂直に延在する複数の壁面1005は、図2のような構成のレーザ源1から発射された複数のレーザビームとほぼ平行となることが多い。これは、これらの複数の表面において、パワー吸収率を減少させ、これらの硬化をより困難に、及び/またはエネルギー消費を増やしがちにし得る。表面に対して小さい角度で受光されたレーザ光は、90度のような大きい角度、すなわち、表面に対して垂直に受光されたレーザ光より吸収されにくい傾向がある。
しかしながら、吸収は、偏光にも依存する。つまり、レーザビームが表面と垂直に(すなわち、表面に対して90度で)向けられる場合に1つの偏光(sまたはp)に対して、パワーがより良く吸収されると、レーザビームが、ゼロ付近の角度のような小さい角度で表面に向けられる、すなわち、ビームの方向がほぼ表面に整合される場合、反対の偏光により、パワーの吸収は、より高くなる。複数の壁がかなり大きく、かつ、かなり短いジャーナルによって離間している場合がある複数のクランクシャフトのような複数のワークピースの場合に、図2のような構成は、少なくとも複数のジャーナル付近の複数の壁の部分に対して、比較的小さい角度でレーザビームを複数の壁1005に投射しなければならない。図8は、レーザ源1の部分として使用可能な偏光系4を示す。これは、入射レーザビームをS波偏光ビーム2'及びP波偏光ビーム2''に分割する偏光キューブのようなビーム分割偏光器41を含み、これらのうちの1つは、次に、例えば、複数の主ジャーナル1001及び複数のロッドジャーナル1002の表面に対する硬化のために使用可能であり、これらのうちの他の1つは、複数の壁1005の表面に対する硬化のために使用可能である。ミラー42、43および44は、S波偏光ビーム2'及びP波偏光ビーム2''と実質的に平行となるように再整合させるために使用可能である。
図9は、パーソナルコンピュータもしくは他のプログラマブルデバイスのようなコンピュータ手段またはシステム100、またはキーボード及び/またはマウスのようなコンピュータ入力手段101と、コンピュータスクリーン102とを有する手段を概略的に示す。スキャンパターン2Gは、スクリーンに示される。この場合に、スキャンパターンは、複数のセグメントa、b、c、d、e、f、g及びhを備える多角形である。図示された実施形態では、複数のセグメントは、多角形、すなわち、八角形を形成する。しかしながら、より多数またはより少数のセグメントが、使用可能であり、複数のセグメントのいくつかまたは全部は、直線の代わりに湾曲していてもよく、複数のセグメントは、より多数またはより少数の複数の平行な線のような他の態様で分布してもよい。コンピュータシステムは、例えば、マウスまたは他の入力手段を用いること、例えば、カーソルをスクリーン上で移動させることによって、オペレータがパターンのレイアウトを変化させることができるように構成されてもよい。代案として、ユーザが複数のセグメントに触れることによってパターン形状を操作し、それにより、これらの位置、方向及び/または長さを変化させることを可能とするタッチセンサスクリーンが、使用可能である。パターン形状は、硬化されるべき表面に対してスキャンする場合に、例えば、2次元エネルギー分布を有する仮想のまたは等価な有効レーザスポットを生成するために、レーザスポットが描く経路を示す。スクリーンには、複数の線A−Hも示され、これらの各々は、複数のセグメントa−hのうちの1つにそれぞれ対応する。複数の線A−Hの各々は、セグメントa−hのうちの対応する1つに関するレーザスポットの1つの特性、例えば、スキャン速度範囲を示す。図示された実施形態では、各線に隣接する矢印は、当該セグメントに対して選択された特定のスキャン速度、すなわち、レーザスポットが対応するセグメントに沿って移動する一方で、スキャンパターンに追従する速度を示す。この場合、最高スキャン速度は、セグメントc及びgに割り当てられ、いくらかより低いスキャン速度は、セグメントa及びeに割り当てられ、さらにより低いスキャン速度は、セグメントb、d、h及びfに割り当てられている。本発明の複数の他の実施形態では、異なるスキャン速度を複数の異なるセグメントに割り当てることに加えて、あるいは代案として、異なるレーザビームパワーは、例えば、所望のエネルギー分布に従って、複数の異なるセグメントに対して、レーザビームを「オン」もしくは「オフ」、または(最大パワーの10%、25%、50%、75%または90%のような)他の適用可能なパワー状態となるように選択することによって、複数の異なるセグメントに割り当てられてもよい。複数のセグメントは、スキャンスポットの中央が従う経路を示してもよく、スキャンスポットは、例えば、セグメントa及びcの長さの半分に対応する直径を有してもよい。その場合、スポットが複数のセグメントa−hによって決定された経路を完了するたびに、レーザスポット直径の半分に対応する距離まで、当該複数のセグメント外のエリアの部分だけではなく、当該複数のセグメント内のエリア全体が、レーザによって直接加熱される。
八角形2Gは、例えば、図4および5の複数の実施形態における矩形2A/2Bまたは台形2C/2Dの代わりに、使用可能である。この場合に、例えば、セグメントc及びgにおけるより高いスキャン速度は、複数の潤滑油孔1003のエリアにおける加熱を減少させることができ、セグメントa及びeにおいて増大された速度は、複数のアンダーカットフィレット1004のエリアに対して、過熱を防止する助けとなり得る。また、コンピュータシステムは、複数の潤滑油孔から離れたエリアがスキャンされている場合に、1つの種類のパターン2Gを、かつ、複数の潤滑油孔と隣接する、又は含むエリアがスキャンされている場合に、他の種類のパターン(例えば、異なる及び/または異なるように方向づけられた複数のセグメントを有する、及び/または複数のセグメントのいくつかまたは全部に割り当てられた複数の異なる速度または複数のビームパワーを有するパターン)用いるために、プログラムされてもよい。例えば、セグメントc及びgにおいて、複数の潤滑油孔周りのエリアがスキャンされているか否かに応じて、複数のセグメントの同じ輪郭は、異なる速度(及び/またはビームパワー)で用いられてもよい。
このシステムが、スキャンパターン2Gのトライアルアンドエラー適応を可能とするために、例えば、複数のトライアルワークピースに対するレーザ硬化を実行し、複数の結果に応じて、1つまたは複数のセグメントに対してスキャンパターン(形状、スキャン速度、レーザビーム強度、レーザスポットサイズ等)を変更することによって、パイロメータと共に使用可能である。また、あるいは代案として、ユーザが、役立つと思われるパターン構成を短時間内で見出すことができるように、コンピュータシステム100は、選択されたパターン2G及び複数の異なるセグメントa−hに割り当てられたスキャン速度(及び/またはレーザビームパワー、レーザスポットサイズ等のような他の複数のパラメータ)の結果である加熱をシミュレートするために、シミュレーションソフトウェアを与えられてもよい。シミュレーションの結果は、例えば、スクリーン102に表示されてもよい。ユーザは、次に、パターン2G及び複数の異なるセグメントに割り当てられた複数のパラメータを動的に変更し、結果の加熱を観察することができる。このツールは、所与のワークピース設計に対して、複数の異なるセグメントに割り当てられた適切な複数のパラメータ値で、適したスキャンパターンを容易に見出し、または設計するために役立つ可能性がある。
例えば、この種類のシステムは、例えば、パターンの複数のパラメータ(その形状及び複数の寸法、例えば、複数のセグメントを拡大または縮小することによって、)及び/または、例えば、レーザスポット速度(スキャン速度を変更することによって)、パワー(例えば、レーザビームのパワー含有量を変更することによって)及び/またはパワー密度(例えば、レーザスポットのサイズを変化させることによって、例えば、デフォーカスすることによって、例えば、フォーカスレンズを変位させることによって、またはレーザビームと表面との間の入射角度を変化させることによって)のような各セグメントに関する複数のパラメータを動的に適応させることによって、適したスキャンパターンまたは所与のクランクシャフトに対する複数のスキャンパターンを見出すために、有利に使用可能である。本発明のいくつかの実施形態では、レーザビーム内のパワー分布も、適合可能である。本発明のいくつかの実施形態では、図6Dに示されたものと一致するもののような特定のスキャンパターンが選択可能であり、エネルギー分布の適応は、各セグメント51A、51Bに割り当てられたビームパワー及び/またはスキャン速度を選択することによって確立されてもよい。
スキャンパターンのこの種類のセグメントに基づく定義を用いることは、セグメントの数及び/または複数のセグメントの長さを増大及び/または減少させ、及び/またはこれらの方向及び/または位置を変更し、スキャン速度、ビームパワー及び/またはスポットサイズの値のような異なるパワーまたはエネルギーに関する複数のパラメータ値を選択して各セグメントに割り当てることによって、パターン輪郭の形成を可能とする一方で、加熱されるべき表面の異なる複数の部分に対する適度な加熱を容易に得ることを可能とするという知見が得られた。クランクシャフトの複数の潤滑油孔1003と隣接するエリアのような複数の高感熱性サブエリアは、例えば、以下によって、適切に対処されてもよい。
複数の高感熱性エリアに対する過熱を回避するために、複数の高感熱性エリア及び複数の低感熱性エリアの両方に対して、(スポットが従う経路に関して)同じスキャンパターンを用いるが、例えば、選択されたセグメントがより高いスキャン速度(及び/またはより低いビームパワー等)を有するように選択することによって、他の複数のパラメータを適応させる。図9の場合、セグメントc及びgにおける速度を増大させることが、パターン2Gに従ってレーザビームがスキャンされるジャーナル中央に配置された複数の潤滑油孔1003において、過熱を減少させる助けとなる。図6Dの場合、(ゼロまたはゼロ付近のような)低いビームパワーを、複数の線51の複数の中央のセグメント51Bのうちのいくつかに割り当てることも、図6Dで矢印によって示唆される方向にパターンの中央部分を通る潤滑油孔において、過熱を防止する助けとなり得る。
複数の異なるサブエリアに対して、複数のスキャンパターン及び関連づけられた複数のパラメータ値の複数の異なるセットを用いる。例えば、クランクシャフトが回転する間、ジャーナルは、図5Aによって示唆されるように、ただし、図9のレイアウトを有するスキャンパターンで、スキャンされ得る。潤滑油孔1003がスキャンされている表面の部分に達するまたは近づく場合、セグメントc及びgに関連付けられた速度値は、レーザビームがこれらの複数のセグメントを、より速いスピードでスキャンし、つまり、潤滑油孔隣接エリアに対する過熱リスクを減少させるように、変更されてもよい。
例えば、複数のセグメントの長さ及び方向を変更することによって、かつ、さらに、複数のセグメントを除外することによって、パターン形状を変化させる。例えば、スキャンパターン2Gのセグメントgは、ワークピースの回転全体の間、または潤滑油孔と隣接するまたはこれを含むワークピースのエリアをスキャンする場合に、除外されてもよい。その場合、レーザスポットは、複数のセグメントa、b、c、d、eにわたって、及びセグメントfまで、セグメントhからの経路に従い、次に、反対方向、すなわち、複数のセグメントf、e、d、c、b及びaにわたって、セグメントhの端部に到達するまで、戻ってもよい。
つまり、セグメント化されたスキャンパターンに基づいて、レーザビームの制御を与えるコンピュータシステムは、例えば、
スキャン速度(すなわち、その経路に沿ったレーザスポットの移動速度)、
レーザビームパワー、及び/または
レーザスポットサイズという複数の異なる値が、複数の異なるセグメントに割り当てられてもよく、複数の感熱性部分に対する損傷または損傷のリスクを減少させつつ、表面を適切に硬化させることを目的として、表面の最適化されるエネルギー分布及び最適化される加熱を与えるために、スキャンパターンを適応させることに有用である可能性がある。上述された説明は、主にスキャン速度について言及しているが、例えば、レンズを移動させて、例えば、デフォーカスすることによって、レーザビームのパワーまたはパワー密度を変更することにより、明らかに、加熱も変更可能である。しかしながら、現在既存の多数のレーザ及びスキャン手段に対して、速度を変更することは、好ましい選択肢となり得る。高速オン/オフ切り替えまたはビームパワーの急速な変化を可能とする(「オン」及び「オフ」間の変化に現在約100μsを必要とする多数のファイバレーザのような)複数のレーザが用いられる場合、レーザビームのパワーを変更することは、例えば、これをオン及びオフ切り替えすることによって、大いに興味深い選択肢となる。切り替え時間が短縮化する傾向を考慮すると、選択肢はさらにより興味深いものとなる。
(図9のパターン2Gに従うエリア、または図6Dのようなセグメント化された有効レーザスポットを高速でスキャンすることによる「八角形」レーザスポットのような)仮想レーザスポットを与えるために、スキャンは、高周波数、すなわち、高速で実行されなければならない。例えば、実際の実施形態では、レーザビームは、複数のセグメントa−hに沿って、例えば、8msの期間に、スキャンサイクルを完了してもよい。複数のダイオードレーザまたはオン/オフ切り替えが遅い他の複数のレーザを用いるような場合、各セグメントにおいてこれを正しいレベルに配置できるほど急速にビームパワーを変更することは、困難またはコストがかかることが多い。市販の複数のスキャンシステム性能内のものにスキャン速度を変更することが、より実用的であることが多い。しかしながら、レーザのパワーレベル切り替え性能に応じて、ビームパワーを変調することが、好ましい可能性がある。
図9のスキャンパターンは、複数の相互接続されたセグメントのセットを有する。しかしながら、使用されるレーザ及び/またはスキャン手段の種類に応じて、複数の相互接続されていないセグメントも、使用可能である。例えば、スキャンパターンは、複数の線もしくは複数のドットまたは複数のピクセルを備えることができる。この種類のスキャンパターンは、ファイバレーザのような高速オン/オフ切り替えを可能とするレーザが用いられる場合に好ましいことが多い。それにより、スキャンされているエリアにおけるエネルギー分布の非常に正確な選択を可能とする非常に複雑で精緻な複数のパターンが、使用可能である。つまり、システムは、例えば、クランクシャフトにおける複数の潤滑油孔のような複数の感熱性領域の存在を考慮して必要とされるエネルギー分布を正確に与えるために、調整されてもよい。
図10は、コンピュータシステム100に関連付けられた第1及び第2のコンピュータメモリエリア110、120を概略的に示し、各メモリエリアは、複数の列を有するメモリマトリックスを備え、各列は、スキャンパターン2Gの複数のセグメントa−hの各々に割り当てられた1つのメモリ位置を含む。複数の列は、以下のデータを含んでもよい。
スキャンパターンセグメント列111および121におけるデータは、パターン形状、すなわち、(各セグメントの開始及び終了ポイントのような)複数のセグメント構成を定義してもよい。
スキャン速度列112および122におけるデータは、各セグメントに対して、当該セグメントに関連付けられたスキャン速度、すなわち、レーザスポットがスキャンパターンまたは経路の対応するセグメントに沿って移動する速度を定義してもよい。
ビームパワー列113および123におけるデータは、各セグメントに対して、ビームパワー、すなわち、対応するセグメントに沿って移動する際のレーザビームのパワーを定義してもよい。
スポットサイズ列114および124におけるデータは、各セグメントに対して、対応するセグメントに沿って移動する際のレーザスポットのサイズを定義してもよい。レーザビームをフォーカス/デフォーカスすること、例えば、電動フォーカスレンズを移動させることによって、または、レーザ源をシステムのZ軸と平行に移動させることによって、スポットサイズ及び、つまり、単位表面積当たりパワー密度は、変化可能である。レーザビームの表面に対する入射角度を変更すること、例えば、図7Aおよび7Bにおいて示唆されるように、例えば、レーザビームをオフセットすることによって、これも実現可能である。
本発明のいくつかの実施形態では、これらの複数のコンピュータメモリエリアのうちの1つだけが存在し、すなわち、速度、ビームパワー及びスポットサイズは、加工全体で一定であってもよい。複数の他の実施形態では、これらの複数のメモリエリアのうち2つまたはそれより多くが存在し、ポインタ130は、ワークピース1000の表面とレーザ源2との間の相対移動の間に、スキャンを動的に変更するために使用可能である。例えば、潤滑油孔1003は、スキャンされている表面の部分に近づくことから、第1のメモリエリア110によって定義される第1のスキャンパターン(例えば、スキャン速度、レーザビームパワー、レーザスポットサイズ及び/または入射角度に対する複数のパラメータ値のその関連付けられたセットを有する)は、潤滑油孔の複数の境界における過熱防止のために、第2のメモリエリア120によって定義される第2のスキャンパターン(スキャン速度、レーザビームパワー及び/またはレーザスポットサイズ等に対する複数のパラメータ値のその関連付けられたセットを有する)と置換可能である。例えば、第2のスキャンパターンは、第1のスキャンパターンと比べて、スキャン中に潤滑油孔によって横切られる複数のセグメントと関連付けられたより高いスキャン速度、及び/またはより低いレーザビームパワー、及び/またはより大きいレーザスポットサイズを有してもよい。
本発明のいくつかの実施形態では、列111−114の1つだけまたはいくつかが存在し、または、加工の複数のさらなる態様に関するデータを規定するより多くの列が存在してもよい。本発明のいくつかの実施形態では、スキャン速度、レーザスポットサイズ及びレーザビームパワーのうちの1つだけまたは2つは、複数の異なるセグメント及び複数のパターンの間で異なる。いくつかの実施形態では、レーザスポットが従う経路は、その関連付けられた複数のパラメータ値と共に、加工全体で一定のままであることから、1つだけのメモリエリア110が存在してもよい。
図11は、本発明の代替的な実施形態に係る2つのコンピュータメモリエリアを概略的に示し、各コンピュータメモリエリア140、150は、各々がスキャンされるべきエリアのピクセルまたはセグメントに対応する複数のメモリ位置141、151を備える。各メモリ位置は、レーザのオン又はオフ状態を示す値、または特定のパワーレベルを示す値のような、レーザパワーを示すパワー状態値を備えることができる。つまり、スキャンされるべきエリアにわたって(例えば、レーザビームを当該エリアにわたって延在する複数の平行な線に従わせることによって)レーザビームをスキャンする場合、レーザビームは、対応するメモリ位置の値に従ってオン及びオフにされてもよい。本発明のいくつかの実施形態では、各メモリ位置は、スキャンパターンの「線」に対応してもよく、本発明の複数の他の実施形態では、ピクセル化されたエネルギー分布が実現可能であるように(このようなセグメント化またはピクセル化されたエネルギー分布を有するスキャンパターンの例が図6Dにおいて与えられる)各メモリ位置は、線の部分またはセグメントに対応してもよい。スキャンされるべきエリアを、これらに割り当てられた(オン/オフ及び/または複数の中間パワーレベルのような)異なる複数のレーザパワーレベルを有する複数のサブセグメントにピクセル化または再分割することの詳細のレベルは、レーザのスキャン速度及びオン/オフ切り替え性能のような複数の機能に依存してもよい。図10に示された実施形態の場合とまったく同じように、ポインタ130が、1つの種類のスキャンパターンと他の種類との間で切り替えを行うために使用可能であり、これにより、例えば、潤滑油孔の存在を考慮に入れるために、スキャンされているエリアの複数の特性に応じて、エネルギー分布を適応させる。図11によって示唆された20x20のピクセル化は、単なる例として示されたものであり、あらゆる他の適した数の行及び1行当たりピクセルが、使用可能である。例えば、線の数は、スキャン手段の速度及びスキャン周波数(すなわち、スキャンパターンが繰り返される周波数)によって限定されてもよく、ピクセルまたは線1本当たりピクセルの数は、所与のスキャン周波数及び線の数に対して、レーザのオン/オフ切り替え性能によって限定されてもよい。例えば、オンに切り替えるために100μs、オフに切り替えるために100μsを必要とする、すなわち、1つのオン/オフサイクルに対して200μsであり、有効な仮想レーザスポットを完了させるために、スキャン周波数100Hz及び5つの線のスキャンパターンを用いるレーザの場合、線1本当たりピクセルの数は、約10であってもよい。
図12A−12Cは、有効レーザスポットのエネルギー分布が、潤滑油孔に対応するために適合可能である態様を示す。潤滑油孔1003は、クランクシャフトのジャーナルの表面に配置され、当該表面は、クランクシャフトの回転軸と平行な第1の方向、及び第2の周方向Wに延在する。図12Aでは、高パワー密度の先端部分2Eと低パワー密度の末端部分2Fとを有する、実質的に矩形の等価な有効レーザスポット5が用いられる。しかしながら、図12Bに示されるように、例えば、クランクシャフトがその長さ方向軸周りに回転することに起因する、クランクシャフトの表面とレーザ源との間の相対移動に起因して、潤滑油孔1003が有効レーザスポットに近づく場合、潤滑油孔1003隣接エリアに対する過熱を回避するために、パワーまたはエネルギー密度を先端部分2Eの中央に向かって減少させることによって、エネルギー分布は、実質的に適応される。ここで、有効レーザスポットは、実質的にU形状である。その後、潤滑油孔1003が先端部分2Eを一度通ると、末端部分の中央に向かってエネルギーまたはパワー密度を減少させることによって、先端部分における元のエネルギー分布が回復される一方で、末端部分2Fにおけるエネルギー分布は、潤滑油孔1003に対応するように適合される。ここで、有効レーザスポット5は、(本発明のいくつかの実施形態において、図6Dのものと一致するセグメント化またはピクセル化を用いて、かつ、有効レーザスポットの対応する複数の形状を与えるために、複数の異なるセグメントに割り当てられた複数のパワー状態を適応させることで得られる)逆U形状を実質的に採用する。すなわち、一方で、潤滑油孔は、有効レーザスポットを通過し、エネルギー分布は、潤滑油孔と隣接する高感熱性エリアに、潤滑油孔から離れた硬化されるべき表面に適用されるものより小さいエネルギーを適用するために、適合される。潤滑油孔周りのエリアは、潤滑油孔と隣接する高感熱性サブエリアに損傷を与えることなく硬化されてもよい。U形状の有効レーザスポットの複数の側方部分は、潤滑油孔の複数の側面における複数のエリアを硬化させるために機能する。図12A−12Cに示されたエネルギー分布の変化は、例えば、スキャンパターンを適応させることによって、及び/または(例えば、スキャンパターンの複数の異なるセグメントの間で、レーザビームがオン及びオフ切り替えされる態様を適応させることによって)ビームパワーがスキャンパターンに沿って分布する態様を適応させることによって、及び/またはスキャンパターンの複数の異なるセグメントに対応するスキャン速度を適応させること等によって得られる。
図13は、より大きいエネルギー5Aを潤滑油孔1003より上に配置されていない潤滑油孔の側部1003Aに、より小さいエネルギーを潤滑油孔より上に配置される潤滑油孔の側部1003B、すなわち、潤滑油孔がクランクシャフト本体に向かって延在する方向の側部に適用することによって、エネルギー分布が、潤滑油孔1003の傾きを考慮するように適合される態様を概略的に示す。これは、例えば、スキャンパターンの複数の異なるセグメントに割り当てられた複数のパワー状態を正しく選択することによって得られる。エネルギー適用におけるこの差は、図13の右に向かって下方に延在する潤滑油孔の存在に起因して導電性材料が存在しないことにより、加熱されたエリアから離れて実行されるべき潤滑油孔1003の右に適用される熱容量が減少するという事実を考慮に入れる。同じ量のエネルギーを両側に適用することは、図13の潤滑油孔の右側1003Bに、左側1003Aより厚い硬化された層を与えることから、これは、基本的にエネルギーの無駄になる。しかしながら、硬化された層の最小厚さの要件に準じた必要に関して、硬化された層の最も薄い部分は、要件を満たさなければならない。つまり、潤滑油孔1003の右で、硬化された層を余計に厚くすることは、顧客によって設定された複数の要件を満たすと見られる点で無意味であり、単にエネルギーの無駄を示す。また、同じ量のエネルギーを両側に適用することは、1つの側における過熱リスクの増大を示唆する可能性がある。このリスクは、潤滑油孔の内壁と硬化されるべき軌跡の表面との間の角度は、潤滑油孔が延在する側でより鋭い、すなわち、図13の潤滑油孔の右における角度が左より鋭いという、境界が右においてより鋭く、過熱の場合に損傷リスクを増大させることを意味する事実に起因して増大する。
上述されたように、スキャンは、好ましくは、温度の大きな変動を回避するために、高速で行われる。レーザビームが、等価なまたは仮想の有効レーザスポットを形成するために、2次元のスキャンパターンに沿って、例えば、複数の平行な線に沿って繰り返しスキャンされる場合、ワークピースの複数の部分が繰り返し加熱される一方で、複数の部分は、スキャンパターン内に残留する。実際のレーザスポットは、仮想レーザスポット全体で繰り返しスキャンされる場合に、表面の異なる複数のスポットを繰り返し加熱し、これらの複数のスポットは、これにより、最高温度に繰り返し加熱され、その後、これらが加熱される度に、レーザビームスキャンパターンに沿う次の走査の間、すなわち、次のスキャンサイクルの間に、これらは再び加熱されるまで冷却する傾向がある。極大温度及び極小温度の間のこれらの変動をできる限り小さく保つことが望ましい。この目的のために、高スキャン速度及び周波数が好ましい。図14A及び14Bは、固定スキャンパターン及びパワーを用いてクランクシャフト上で実行された複数のテスト結果を概略的に示す。図14Aの場合、スキャン周波数50Hz(すなわち、レーザビームがスキャンパターンを毎秒50回完了した)が用いられた。最高温度到達後、極大及び極小間で、100°Cを超え、実際には200℃近い振幅での変動が生じたことが確認された。これは、過熱リスク及び/または不適切な硬化または硬化深さのリスクを示唆する可能性があるため、問題となり得る。
図14Bは、図14Aのものと同じ複数の条件で、ただし、スキャン周波数250Hzで実行されたテスト結果を概略的に示す。ここで、グラフの厚さに対応する極大及び極小間での温度変動が、実質的に100℃より小さい振幅を有する態様が観察された。
図15A及び15Bは、有効レーザスポット5が、その環状セグメント1001Aの30−180度のようなセクションを加熱するために、潤滑油孔1003及び複数のアンダーカットフィレット1004を有するクランクシャフトのジャーナル1001に適用され得る態様を概略的に示す。有効レーザスポット5は、ジャーナルの周方向Wにおいて180度を超えて延在しないことから、環状セグメント全体を加熱するために、ジャーナルは、その回転軸X周りに回転させられてもよく、及び/またはレーザ源は、クランクシャフトに対して変位させられてもよい。加熱は、図15Aに示されるように、アンダーカットフィレット1004に近接するジャーナル1001の1つの側方端部において開始してもよく、例えば、ジャーナルは、環状セグメント1001Aを十分な温度に、かつ必要な硬化深さを保証するために十分な時間加熱するべく、周全体を加熱するために、回転させられてもよい。ジャーナルの表面全体を硬化させるために、有効レーザスポット5は、例えば、レーザ源をX軸と平行に変位させることによって、または、スキャンミラーを用いてビームをX軸と平行に変位させることによって、ジャーナルに沿って、回転軸Xと平行な方向に、徐々に変位させられる。つまり、加熱された環状セグメント1001Aは、当該方向に延在させられ、以前加熱された部分は、冷却を開始してもよく、これにより焼き入れが実現される。図15Bでは、有効レーザスポットがジャーナルの大部分にわたって変位させられ、これを加熱し、かつ、移動を続ける場合に焼き入れを可能とした態様が観察可能である。有効レーザスポットは、それが図15Bの右側端部におけるフィレットに達するまで変位する。2次元エネルギー分布は、複数のフィレット1004近傍で、かつ、潤滑油孔1003にも対応して、これらの複数の部分に対する過熱を防止するように適合される。硬化を実行するこの態様の利点は、硬化されたエリアの成長が、ジャーナルの1つの端部から他の端部への方向において、すなわち、ジャーナルの回転軸Xと平行な第1の方向において生じ、周方向Wには生じないことから、既に硬化された部分に対する再加熱が行われないことである。すなわち、硬化は、左から右に生じ、周方向には生じない。つまり、既に硬化された表面エリアに対する望ましくない再加熱及び過剰な焼き戻しのリスクは、基本的に存在しない。
ジャーナル表面を周方向に硬化する場合、概して、重複エリア、すなわち、有効レーザスポットが、周方向における軌跡に沿った自身の移動の完了近くに、以前に硬化された部分に到達するエリアに対して、特別な注意が払わなければならない。以前に硬化された部分を硬化のために用いられた温度のような高温に再加熱することは、概して、回避されなければならない。図19A−19Cは、図12A−12Cのものと同様の構成を示すが、複数の潤滑油孔の代わりに、レーザスポットが近づく高感熱性サブエリアは、ジャーナルの以前に硬化された部分1001Bに対応する。この実施形態では、図19Aにおいて概略的に示されるように、有効レーザスポットは、複数のセグメントの配列(図6Dのものと同様の)から構成され、有効レーザスポットの先端境界が以前加熱された部分1001Bに到達した場合に、例えば、当該複数のセグメントに対応して、レーザを「オフ」状態に設定することによって、第1の行における複数のセグメントは、取り消される(図19B参照),図19Cでは、複数のセグメントのさらに複数の行が取り消され、これによって、有効レーザスポットは、周方向において縮小されている。すなわち、有効レーザスポットは、以前に硬化された部分1001Bに遭遇した場合に、その先端境界または部分において徐々に取り消される一方で、末端境界または部分は、有効レーザスポットが消滅するまで、当該先端部分に追いつく。
本発明の複数の他の実施形態では、有効レーザスポットは取り消されないが、そのパワー/エネルギーが全体的に減少させられる。つまり、有効レーザスポットは、ジャーナル周りにもう1回移動し、焼き戻しに適した温度に表面を加熱することができる。本発明の複数の他の実施形態では、複数のレーザ源が、環状セグメントのいくつかの複数のセクションを同時に加熱するために、例えば、環状セグメント1001Aの360度全体を同時に加熱するために、使用可能である。これは上述されたように、硬化の質に負の影響を与え得る温度変動を回避するために、クランクシャフトを高速で回転させる必要を減少させる。クランクシャフトを非常に高速で回転させることは、実装にコストがかかる可能性があり、高速移動する潤滑油孔と隣接するエリアに対する過熱を回避するために、有効レーザスポットまたは複数のスポットのエネルギー分布を適応させることを、より困難にする可能性がある。
本発明は、つまり、レーザ表面硬化に対する極めて柔軟なアプローチを与え、従って、例えば、熱伝導感度に関して実質的に異なる複数の特性、及び/または、例えば、硬化された層の深さのような複数の態様の点で実質的に異なる複数の要件を有する複数の表面部分を有する複数のワークピースに対するレーザ硬化にとって、非常に有用となり得る。
システムは、パイロメータからのフィードバック、及び、例えばPID制御により動作可能である。
以下は、本発明がその1つの実用的な実施形態に従って実装され得る態様の例である。
図16A、17A及び18Aは、それぞれ、図16B及び16C、17B及び17C、18B及び18Cのようなスキャンパターンに対して算出された有効レーザスポットにわたるパワーまたはエネルギー分布を示す。スキャンパターンは、上述された図9に示されたタイプ、すなわち、8つのセグメントを備えるスキャンパターンである。ユーザは、これらの位置、方向及び長さの点で再構成してもよく、ユーザは、これらに対して、1つまたは複数のパワー/エネルギー関連の複数のパラメータ値、例えば、レーザビームパワー及び/またはスキャンパターンに沿って投射されたレーザスポットの速度を選択及び適応させてもよい。この例では、一定のパワーが用いられ、速度は、セグメント単位によってセグメントに適合された。上述されたように、コンピュータシステム100は、ユーザが、役立つとみられるパターン構成を短時間で見出すことができるように、選択されたパターン2G及び複数の異なるセグメントa−hに割り当てられたスキャン速度(及び/またはレーザビームパワー、レーザスポットサイズ等のような他の複数のパラメータ)の結果である加熱またはエネルギー分布を計算/シミュレートするための計算/シミュレーションソフトウェアを与えられてもよい。図16A、17A及び18Aに示されたもののような、算出された複数のエネルギー分布は、複数のエネルギー分布が適切である可能性が高いか否かをユーザが判断する助けとなるように、スクリーン102上で可視化されてもよい。
図16A、17A及び18Aは、有効レーザスポットにわたる、算出されたエネルギー/パワー分布を示し、これらは、以下の複数の値に対して、図16B、17B、18B、16C、17C及び18Cの特定の複数のパターン及び複数の速度に基づいて算出される。d1−d12は、図示された例に従うパターンの複数の寸法を示す。この例による複数の値は、mm単位であり、以下のとおりである。
d1=16、d2=2.8、d3=3.1、d4=3.9、d5=7、d6=1.4、d7=0.4、d8=13、d9=5.1、d10=6、d11=2.8、d12=0.2
v1−v10は、スキャンパターンの複数の異なる部分に割り当てられた複数のスキャン速度を示す。この例による複数の値は、mm/s単位であり、以下のとおりである。
v1=3600、v2=8000、v3=4600、v4=3500、v5=6000、v6=5500、v7=3600、v8=8000、v9=5430、v10=8000、v11=5500
図16A、17Aおよび18Aでは、対応するパワーまたは複数のエネルギー分布パターンが、示される。図16A−16Cは、クランクシャフトのジャーナルの表面を、クランクシャフトの長さ方向軸と平行な方向においてジャーナルにわたって、潤滑油孔から離れた低感熱性サブエリアにおいて、加熱するために適切たり得るパターンに関する。つまり、図16A−16Cのパターン及び複数の速度は、図12Aに示されるもののような状況において使用可能である。図17A−17Cは、有効レーザスポットが図12Bに示されたような位置にある場合のような、有効レーザスポットが潤滑油孔に近づく場合に、「U形状」などを採用する有効レーザスポットにわたるパターン及び対応するエネルギー分布を示す。ここで、図9に示されたスキャンパターンを考慮すると、複数の中央のセグメントのうちの1つ、図9によれば「c」のようなセグメントは、潤滑油孔と隣接する感熱性サブエリアに対する過熱を回避するために、除外されている。対応する態様では、図18A−18Cは、有効レーザスポットが潤滑油孔隣接エリアを離れようとする、すなわち、図12Cに示されたもののような位置にある場合のエネルギー分布及びスキャンパターンを示す。
この構成と、低炭素(0.40%)鋼(1538MV型)の複数のジャーナルに直径3.4mmのレーザスポットを与えるレーザビームを適用することとにより、1mmの純マルテンサイト層を有する有効硬化深さ(硬度>HRC45)2.5mmが実現された。レーザビームのパワーは2700Wであり、ジャーナルは、幅21mmの主ジャーナルであった。レーザビームのパワーが2400Wに設定されたこと、及びスキャンパターンの幅が14mmに低減されたことを除き、実質的に同じ設定及び複数の値を用いて、幅19mmのロッドジャーナルの表面を硬化した場合にも、非常に類似した複数の結果が得られた。両方の場合において、有効レーザスポットは、周方向において速度168mm/分で、表面に沿って移動した。
スキャンパターンは、図7Aにおける示唆に従ってその中央が、硬化されているジャーナル中央に対してオフセットされるように適用された。(レーザ源及びジャーナルの長さ方向中央軸を含む平面と直交する方向における)オフセットは、半径34.45mmの主ジャーナルに対して31mm、半径28.45mmのロッドジャーナルに対して25.2mmであった。オフセットに起因して、ジャーナルに投射された有効レーザスポットの合計エリアは、オフセットなしで投射された場合のものより大きかった。
1:レーザ源
2:レーザビーム
2':s偏光レーザビーム
2'':p偏光レーザビーム
2A:レーザビームによってスキャンされた経路またはレーザビームによってスキャンされたエリア
2B:レーザビームによってスキャンされた経路またはレーザビームによってスキャンされたエリア
2C:レーザビームによってスキャンされた経路またはレーザビームによってスキャンされたエリア
2D:レーザビームによってスキャンされた経路またはレーザビームによってスキャンされたエリア 2E:高パワー密度を有する仮想的な矩形レーザスポットの部分
2F:低パワー密度を有する仮想的な矩形レーザスポットの部分
2G:レーザビームによってスキャンされた経路であるスキャンパターン
2H:硬化に適合されたパワー密度を有する有効レーザスポットの部分
2I:焼き入れに適合されたパワー密度を有する有効レーザスポットの部分
2J:焼き戻しに適合されたパワー密度を有する有効レーザスポットの部分
3:スキャンシステム
4:偏光系
5:有効レーザスポット
5A、5B:傾斜した潤滑油孔周りのエネルギー分布
11:レーザキャリッジ
12:レーザ源の垂直移動のための第1のレーザキャリッジ駆動手段
13:レーザ源の水平移動のための第2のレーザキャリッジ駆動手段
14:レーザ源の移動のための水平軌道
20:ワークピースキャリッジ
21:ワークピースキャリッジ駆動手段
41:偏光器
42:ミラー
43:ミラー
44:ミラー
51:スキャンパターンの複数の線
51A:「オン」である複数のセグメントまたはピクセル
51B:「オフ」である複数のセグメントまたはピクセル
100:コンピュータシステム
101:コンピュータ入力手段
102:コンピュータスクリーン
110:第1のコンピュータメモリエリア
111:スキャンパターンセグメント列
112:スキャン速度列
113:ビームパワー列
114:スポットサイズ列
120:第2のコンピュータメモリエリア
121:スキャンパターンセグメント列
122:スキャン速度列
123:ビームパワー列
124:スポットサイズ列
130:ポインタ
140:第1のコンピュータメモリエリア
141:ピクセル値(オン/オフ)を格納するためのメモリ位置
150:第2のコンピュータメモリエリア
151:ピクセル値(オン/オフ)を格納するためのメモリ位置
1000:クランクシャフト
1001:主ジャーナル
1001A:加熱/硬化された主ジャーナル表面の環状セグメント
1001B:ジャーナルの以前に硬化された部分
1002:ロッドジャーナル
1003:複数の潤滑油孔
1003A、1003B:潤滑油孔の開口の複数の側部におけるジャーナルの複数の部分
1004:複数のフィレット
1005:複数のジャーナルと直交する表面
1006:レーザビームによってスキャンされ得るエリアまたはセクション
a、b、c、d、e、f、g、h:スキャンパターンの複数のセグメント
A、B、C、D、E、F、G、H:複数の速度インジケータ
α、β、γ、γ1、γ2:説明中で示された複数の角度
X、Y、Z:空間における複数の方向
W:周方向
d1−d12:スキャンパターンの異なる複数の寸法の複数のインジケータ(mm単位)
v1−v11:スキャンパターンの複数の異なるセグメントに対応するスキャン速度の複数のインジケータ(mm/s単位)
本明細書において、用語「有効レーザスポット」は、エリアを照射及び加熱するために、レーザビームが有効に投射されるエリアを指す。有効レーザスポットは、レーザスポットの形状を作り、かつ、有効レーザスポットにわたって所望の態様でパワーを分布させるために、光学系を用いて元のレーザビームを変換することによって得られるレーザスポット、または、レーザビームの加熱効果が、1つのスキャンサイクルの間における、仮想のまたは等価なレーザスポットにわたるパワー分布に対応するパワー分布を有する固定レーザビームが用いられた場合と実質的に同じとなるように、レーザビームを同じエリアまたは実質的に同じエリアに繰り返し適用するべく、スキャンパターンに従ってレーザビームを高速で繰り返しスキャンすることによって得られる仮想のまたは等価なレーザスポットであってもよい。ここで、用語「高速」は、硬化されるべき表面エリアの複数の部分がレーザスポットによって繰り返し加熱されるように、スキャン速度が、例えば、周方向において、レーザ源とクランクシャフトの表面との間の相対移動速度よりはるかに大きいことを意味する。例えば、典型的には、スキャン速度は、例えば、毎秒少なくとも10、50または100スキャンサイクルが実現されるように、選択可能である。好ましくは、有効レーザスポットが、実際のまたは現実のレーザスポットを硬化されるべき表面エリアにわたって繰り返しスキャンすることによって得られる仮想のまたは等価なレーザスポットである場合、このスキャンは、好ましくは2次元で生じ、前述の複数の次元のいずれかにおいて、仮想レーザスポットのサイズは、例えば、クランクシャフトの軸または回転と平行な方向に、及びクランクシャフトのジャーナルの周方向に、前述の次元における実際のまたは現実のレーザスポットのサイズの、好ましくは少なくとも2、3、4、5、10、20倍以上である。スキャンという用語は、好ましくは、レーザビームの移動を示唆することを意図され、スキャンパターンは、好ましくは、すなわち、レーザ源とワークピースの表面との間の相対移動を考慮に入れずに、ビームが固定表面上で従うパターンを指すことを意図される。
概して、処理されたエリアまたはセグメントの成長は、有効レーザスポット及び表面を互いに対して移動させること、例えば、クランクシャフトの場合、クランクシャフトを回転させることによって、有効レーザスポットと硬化されるべき表面との間の相対移動によって実現される。十分な硬化深さを実現するために、例えば、硬化深さが1000μmまたはそれより大きい場合、表面温度が十分に高くなるだけではなく、ワークピースが必要な深さにまで加熱されるように、実質的に硬化されるべき表面エリアの各部分が、有効レーザスポットのエリア内に、典型的には、例えば、クランクシャフトの複数のジャーナルの場合、0.5−5秒、例えば1−3秒のような十分な時間長にわたって留まることが好ましい。レーザビームのパワー密度を増大させることは、表面エリアに対する過熱がワークピースに損傷を与え得るため、これが起きてはならないことから、十分な加熱時間の代わりとはならない。つまり、表面温度は、十分な時間、適切な範囲内になければならない。従って、所望のまたは必要な硬化深さを実現するために、硬化されるべき複数の部分が十分な時間有効レーザスポット内に留まることを可能とする一方で、1次元において、十分な幅の硬化の軌跡を与えるために(例えば、実質的にクランクシャフトのジャーナルの全幅をカバーするために)、かつ、他の次元において、有効レーザスポットと処理されるべき表面との間における高い相対速度を可能とするために(つまり、高生産率を与える)、大きいサイズの有効レーザスポットが望ましい。
本明細書において、用語「クランクシャフト」は、好ましくは、ピストンの往復直線運動を回転に変換するエンジンの部分、例えば、複数のトラック、自動車及びオートバイのような多くの型のモーター付き車両において使用されるもののような内燃エンジンに用いられる種類のクランクシャフトを指す。
本明細書において、硬化深さは、好ましくは、有効硬化深さを指し、これは、好ましくは、硬化された場合の表面から特定のレベルの硬度が維持される最も遠い点までの垂直距離を指す。当該レベルは、例えば、40−55HRCの範囲、好ましくは45HRCであってもよい。複数のクランクシャフトの分野では、複数の所望の硬度レベルは、概して、鋼の炭素含有量を考慮に入れて決定されるが、典型的なレベルは、45HRCである。本明細書に関して、かつ、複数のクランクシャフトのジャーナルに対する硬化の点で、少なくとも1000、2000または3000μmの硬化深さが好ましい。
目的の他の態様は、100%変換されたマルテンサイトが観察可能となるまでのレベルまたは深さであってもよい。本明細書に関して、かつ、複数のクランクシャフトのジャーナルに対する硬化の点で、この深さは、好ましくは、少なくとも200、300、500、800、1000μmまたはそれより大きくてもよい。
セグメント化されたスキャンパターンが用いられる場合、毎秒少なくとも300セグメントのスキャン速度が、好ましい可能性がある一方で、例えば、毎秒少なくとも600、1000、5000および10000セグメントの速度が、好ましくは少なくとも10Hz、より好ましくは少なくとも50Hz、さらにより好ましくは少なくとも100Hzまたは200Hzであるスキャンパターンの繰り返し周波数との組み合わせで、より好ましい可能性がある。
本発明は、複数のクランクシャフトの表面硬化についていくつか言及することにより記載されている一方で、本発明の範囲は、複数のクランクシャフトに対する表面処理に決して限定されるものではない。
この文章において、用語「備える」及びその複数の派生語(「備え」等のような)は、排除的な意味で理解されるべきではない。すなわち、これらの複数の用語は、記載及び定義されるものが、さらなる複数の要素、段階等を含み得る可能性を排除するものとして解釈されるべきではない。
一方で、本発明は、本明細書に記載された特定の実施形態に限定されるものではなく、あらゆる当業者によって考慮され得る(例えば、材料、寸法、成分、構成等の選択に関する)あらゆるバリエーションを特許請求の範囲において定義された本発明の全般的な範囲に属するものとしてカバーすることは明らかである。