JP2004084931A - クランクシャフトおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】フィレット部にロール加工を行う従来のクランクシャフトでは、設備費やコストがかかるほか、修正を要する曲がりが発生するといった問題点があった。
【解決手段】ジャーナルJやクランクピンPである軸部と、軸部とクランクウエブW等の接合部であるフィレット部ftに対して、軸部とフィレット部ftのみに高エネルギービームによる焼入れが施してあるクランクシャフトAとし、必要な部位のみに曲げ強度や耐摩耗性を確保すると共に、焼入れ後の曲がり量を非常に小さくして、製造における工程数の削減や設備費の低減を実現した。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等のエンジンを構成するクランクシャフトおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来において、高出力エンジン用のクランクシャフトとしては、ジャーナルやクランクピンである軸部や、軸部とウランクウエブ等の接合部であるフィレット部(R部)に焼入れ処理を行った後、フィレット部にロール加工を行うことで曲げ強度および曲げ疲労強度を得るようにしたものがあった。このようなクランクシャフトは、例えば、特開2000−337345号公報に記載されている。
【0003】
また、特公平6−45826号公報には、窒化または浸炭によりクランクシャフトの表面全体に表面焼入れを施した後、環状隅角部(フィレット部)をレーザや高周波等により局所焼入れすることにより、クランクシャフトの疲労強度を高めるようにした熱処理方法が記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したような従来のクランクシャフトでは、その製造にロール加工を採用した場合には、エンジン型式等によってフィレット部のR形状が異なるのに対して、夫々専用のロールを用意する必要があり、しかも、消耗品であるロールの交換頻度が比較的高いので、設備費がかさむという問題があった。また、ロール加工を行った場合、クランクシャフトに曲がりが発生することがある。このため、曲がりを修正する工程を追加しなければならないほか、その修正によってロール加工で付与した圧縮残留応力の一部が開放されてしまうという問題があった。
【0005】
さらに、表面全体に表面焼入れを施してからフィレット部に局所焼入れを行う場合には、2つの工程を経るためにロット生産を余儀なくされ、生産のリードタイムが長くなって生産性が低下するという問題があり、また、表面全体に焼入れを行っているので、機能上不要な部位までも硬化することとなり、後の仕上げ加工において被加工性が低下すると共に、工具の寿命低下や加工時間の増大といった問題があった。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、上記従来の状況に鑑みて成されたもので、製造における工程数の削減や設備費の低減を実現することができるうえに、必要な部位のみに曲げ強度や耐摩耗性を確保することができるクランクシャフトおよびその製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係わるクランクシャフトは、ジャーナルやクランクピンである軸部と、軸部とクランクウエブ等の接合部であるフィレット部に対して、これら軸部とフィレット部のみにレーザ等の高エネルギービームによる焼入れが施してあることを特徴とし、さらに、本発明に係わるクランクシャフトの製造方法は、クランクシャフトを製造するに際し、ジャーナルやピンである軸部と、軸部とクランクウエブ等の接合部であるフィレット部に対して、これら軸部とフィレット部のみにレーザ等の高エネルギービームによる焼入れを施すことを特徴としている。なお、焼入れは、上記の軸部やフィレット部のほか、フランジの外周面などの部位にも施すことが可能である。
【0008】
【発明の効果】
本発明に係わるクランクシャフトおよびその製造方法によれば、ジャーナルやクランクピンである軸部、軸部とクランクウエブ等の接合部であるフィレット部のように、曲げ強度や耐摩耗性が要求される部位のみに所定の特性を確保することができると共に、それ以外の部位には硬化処理を施さないため、総入熱量が少なくなるのに伴って曲がり量をきわめて小さくすることができる。これにより、曲がりの修正工程や、加工取代の設定ならびに荒研磨の工程を廃止することが可能となって製造における工程数を削減することができると共に、設備費やコストを大幅に低減することができる。また、高エネルギービームの加工装置は、高周波焼入れやロール加工の装置に比べて汎用性が高いので、エンジン型式等により形状が異なる複数種のクランクシャフトの焼入れに容易に対処することができ、設備稼働率や生産性の向上を実現することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて、本発明に係わるクランクシャフトおよびその製造方法の一実施形態を説明する。
【0010】
図1に示すクランクシャフトAは、軸部として、軸線上のジャーナルJやコネクティングロッド連結用のクランクピンPを備えると共に、これら軸部の間に、クランクウエブW、カウンタウエイトCおよびフランジ(またはリヤフランジ、カラー)Fを備えたものであって、軸部とクランクウエブW等の間に、双方を滑らかに連続させる接合部としてのフィレット部(R部)ftが設けてある。
【0011】
クランクシャフトAは、曲げ強度や耐摩耗性が要求される部位として、フィレット部ftを含む各軸部(J,P)の外周面とフランジFの外周面に対して、レーザ等の高エネルギービームによる局所的な焼入れが施してある。
【0012】
焼入れは、図2に示すように、クランクシャフトAを軸線回りに高速で回転させ、軸線回りの同一回転面上における複数位置すなわち図示では180度異なる上下2箇所から、クランクシャフトAに高エネルギービームEBを照射すると共に、各高エネルギービームEBをクランクシャフトAの軸線方向に走査することにより行う。この際、高エネルギービームEBは、焼入れ部位の表面溶融を伴わない熱量としている。また、高エネルギービームEBは、例えば照射部を軸線と平行に移動させることで軸線方向に走査することも可能であるが、R形状を有するフィレット部ftに対応させるために、図3に示すように、照射部の回動により照射角度を変化させることで軸線方向に走査する。
【0013】
これにより、クランクシャフトAには、図4(a)に示すように、焼入れによる硬化層Bが得られる。このとき、当該クランクシャフトの製造方法では、クランクシャフトAを高速回転させながら、高エネルギービームEBを2箇所から照射して軸線方向に走査し、且つ焼入れ部位の表面溶融を伴わない熱量で焼入れを行うので、例えば図4(b)に示すような表面溶融を発生させることなく焼入れが行われる。したがって、当然のことながら溶融部位を除去する工程も不要であり、これにより生産性の向上も実現できる。また、当該製造方法によれば、図5(a)〜(d)に示すような螺旋状あるいは直線状の焼きなまし層Gが発生することも無く、図4(a)に示す如き均一な硬化層Bが連続的に得られる。
【0014】
ここで、当該製造方法では、軸部(J,P)に加える熱量よりもフィレット部ftに加える熱量が大きくなるようにして局所的な焼入れを行っている。これにより、硬化層Bは、軸部(J,P)の深さD1よりもフィレット部ftの深さD2が大きくなる。これは、軸部については、耐摩耗性や仕上げ加工時での加工の均一性の確保、および打痕対策のため、機能上表面が硬ければ良く、深さをさほど必要としないことから、硬化層Bを浅くしている。なお、軸部における硬化層Bを深くすると変形量が増大する傾向にあることからも、軸部の硬化層Bを浅くしている。
【0015】
これに対して、フィレット部ftについては、マルテンサイト化する際に体積膨張が生じることを利用し、圧縮残留応力を付与するために焼入れをしている。圧縮残留応力は、曲げ応力と反対方向の応力であるため、耐摩耗性の向上に寄与する。そして、強度は焼入れの体積(深さと幅)で効いてくることから、フィレット部ftのように曲げ強度等が要求される部位については、硬化層Bを深くしている。
【0016】
なお、上記のように軸部(J,P)とフィレット部ftに加える熱量を変えて硬化層Bの深さD1,D2を変化させるには、付与する高エネルギービームのエネルギー量を増減させれば良く、具体的には高エネルギービームの照射出力や照射時間、あるいは加工速度(回転速度、走査速度)を適宜変化させる。
【0017】
このように、上記のクランクシャフトAおよびその製造方法によれば、ジャーナルJやクランクピンPである軸部、軸部PとクランクウエブW等の接合部であるフィレット部ft、およびフランジ部Fのように、曲げ強度や耐摩耗性が要求される部位に所定の特性を確保することができ、この際、表面溶融や焼なまし層Gを発生させることなく、安定した硬化層Bを形成し得ると共に、部位毎の要求に応じて硬化層Bの深さD1、D2を変えることも自在である。そして、他の部位には硬化処理を施さないので、総入熱量が少なくなるのに伴って曲がり量がきわめて小さいものとなり仕上げ加工後の変形量も非常に少なくなる。
【0018】
したがって、従来のロール加工、曲がりの修正工程、および加工取代の設定ならびに荒研磨の工程を廃止することが可能であり、先述したように溶融部位の除去工程も不要であり、これにより製造における工程数を大幅に削減することが可能であると共に、設備費やコストを大幅に低減し得るものとなる。また、曲がりの修正工程が廃止されることで、フィレット部ftの圧縮残留応力が開放されるような不具合も解消され、曲げ強度の低下を防ぐことができる。
【0019】
とくに、軸部(J,P)に加える熱量よりもフィレット部ftに加える熱量を大きくして、軸部(J,P)の硬化層Bの深さD1よりもフィレット部ftの硬化層Bの深さD2を大きくすれば、軸部(J,P)については、熱処理による残留応力が小さくなり、曲がりが発生しないうえに、加工性が良好になる。これに対して、フィレット部ftについては、圧縮残留応力が残って強度が向上し、しかも、軸部(J,P)のように長手方向にわたる部位ではなく局所的な部位であるから、熱量が加わることによるシャフトの曲がりの影響が無いものとなり、なお且つジャーナルJのようにシャフトを支持する部位でも無いので、機械加工が不要である。そのため、高エネルギービームEBによって曲がりが生じることも無く、後の曲がり矯正が不要になるうえに、加工性も良好になる。
【0020】
さらに、高エネルギービームの加工装置は、高周波焼入れやロール加工の装置に比べて汎用性が高いので、エンジン型式等により形状が異なる複数種のクランクシャフトの焼入れに対処することもきわめて容易である。これにより、装置の稼働率も高くなり、生産性も高められる。
【0021】
図6は、クランクシャフトAに対して、高エネルギービームEBをその照射角度を変化させながら走査するに際し、クランクシャフトAのカウンタウエイトCに、高エネルギービームEBとの干渉を避けるための傾斜面状の逃げ形状Qを設けた場合を示す図である。
【0022】
このように、カウンタウエイトCに逃げ形状Qを設けておけば、高エネルギービームEBとカウンタウエイトCとが干渉しないばかりでなく、とくにフィレット部ftに対する照射角度を大きくすることが可能になり、図4(a)に示す如く焼入れ端部B1をフィレット部ftから少しでも遠ざけることで、曲げ疲労による焼入れ境界面B2での亀裂発生を抑制することができる。また、高エネルギービームEBの照射角度の増大に伴って、焼入れ形状の自由度も高められる。
【0023】
(実施例1)
被処理材として、直径40mm、50mmまたは84mmであって、軸部およびフィレット部を有するS45C材を使用した。高エネルギービームとしてはレーザビームを用い、加工点のスポットサイズをφ4.8mmとして被処理材の上下2箇所から同時照射した。
【0024】
軸部については、レーザビームの出力を1.5〜2.0kWとし、被処理材の軸回りの回転数を330rpmとし、レーザビームの軸線方向の走査速度(送り速度)を0.1m/minとした。レーザビームは、照射角度を−6.3°〜6.3°と変化させることで走査し、送り長さは22mm、23mmまたは8.5mmとした。フィレット部については、レーザビームの出力を0.7〜1.5kWとし、被処理材の軸回りの回転数を5rpm、6.3rpmまたは8rpmとした。レーザビームは、照射角度を−6.3°〜6.3°と変化させることで走査した。
【0025】
以上の条件で被処理材の軸部およびフィレット部に焼入れを行ったところ、軸部においては、表面硬度がHRC50〜55程度、硬化層深さが0.05〜0.20mmであり、表面溶融の発生は無かった。フィレット部においては、表面硬度がHRC50〜55程度、硬化層深さが0.5〜0.7mmであり、表面溶融の発生は無かった。また、焼入れ前後の曲がり量は0.2mm未満であり、仕上げ研磨加工前後での変形量は0.02mm未満であった。
【0026】
これにより、当該クランクシャフトの製造方法によれば、軸部およびフィレット部といった必要な部位に充分な強度が得られるうえに、曲がり量がきわめて小さいクランクシャフトを提供し得ることを確認した。
【0027】
図7は、本発明に係わるクランクシャフトの製造方法の他の実施形態および焼入れ装置の実施形態を説明する図である。なお、先の実施形態と同一の構成部位は、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0028】
図示の焼入れ装置は、クランクシャフトAをその軸線が水平になる状態で回転可能に保持し、軸部であるジャーナルJとカウンタウエイトCとの接合部であるフィレット部ftに対して、高エネルギービームであるレーザビームLBを照射することにより、同フィレット部ftに焼入れを施すものとなっている。この焼入れ装置は、レーザ発振器1と、ジャーナルJの軸線に対して直交する方向、すなわち図示例では垂直方向からレーザビームLBを通す反射筒(カライドスコープ)2を備えている。
【0029】
反射筒2は、レーザ発振器1に連結したホルダ部3と、ホルダ部3から一対のカウンタウエイトC,Cの間に延出する反射部4を備えている。ホルダ部3は、レーザ発振器1が発振したレーザビームLBを集光する集光用凹レンズ5を内蔵している。反射部4は、内側に、対向する一対の集光用反射面(鏡面)4A,4Aと、これらの集光用反射面4A,4Aに対して90度異なる配置とした照射用反射面(鏡面)4Bを備えている。
【0030】
一対の集光用反射面4A,4Aは、反射部4の上下方向にわたって設けてあると共に、下方に向けて間隔が漸次減少するように傾斜しており、レーザビームLBを多重反射させて集光する。照射用反射面4Bは、反射部4の下側ほぼ半分に設けてあると共に、下方に向けて筒内空間を狭めるように傾斜しており、レーザビームLBをフィレット部ftに対する入反射面に対して偏光面が直交する方向に反射する。
【0031】
ここで、図8にレーザビームLBの入反射面と偏光面との関係を示す。図8(a)は、被処理材WにレーザビームLBを照射した際、その入反射経路を含む入反射面F1と偏光面F2が同一平面である場合を示し、この場合をP偏光とする。図8(b)は、入反射面F1と偏光面F2が直交している場合を示し、この場合をS偏光とする。
【0032】
また、図9は、レーザビームLBの入射角度とレーザ吸収率との関係を示すグラフであって、照射面に対する入射角度が垂直である場合を0度とすると、P偏光では、入射角度が約15を超えるとレーザ吸収率が次第に減少する。これに対して、S偏光では、入射角度が約70度に至るまでレーザ吸収率がほぼ一定であり、その後、レーザ吸収率が減少する。
【0033】
そこで、当該焼入れ装置およびこの装置を用いたクランクシャフトの製造方法では、照射角度の変動によるレーザ吸収率への影響が小さいS偏光を採用し、反射筒2にレーザビームLBを通すことにより、一対の集光用反射面4A,4AでレーザビームLBを多重反射させて集光すると共に、照射用反射面4Bにより、レーザビームLBをS偏光入射になるようにしてフィレット部ftに照射する。
【0034】
このとき、当該焼入れ装置およびクランクシャフトの製造方法では、レーザビームLBが焼入れ部位の表面溶融を伴わない熱量であるものとし、また、クランクシャフトAを軸線回りに回転させることにより、フィレット部ftの全周にわたってレーザビームLBを照射して、同フィレット部ftに焼入れを施す。
【0035】
これにより、図10に示すように、フィレット部ftには、カウンタウエイト側(垂直面側)とジャーナル側(水平面側)とに、ほぼ対称の焼入れ層が得られることとなり、焼入れ層は、表面溶融が無くて比較的均一な深さである。
【0036】
なお、焼入れ層の深さが極端に不均一な場合には、焼入れ層の深さが大きい部分で表面溶融が発生し、所望の焼入れ品質が得られなくなることがある。また、表面溶融が発生しない範囲で焼入れが成立する場合でも、加工速度を低下させるか、レーザ出力を高く設定する必要がある。
【0037】
これに対して、当該焼入れ装置およびクランクシャフトの製造方法では、焼入れ層の深さが比較的均一化されると共に、表面を溶融させることなく品質の安定した焼入れ層が得られることとなる。また、比較的低いレーザ出力あるいは高速度での加工が可能であり、これにより、加工時間の短縮や安価な仕様のレーザ発振器への転換を図ることができ、生産コストの低減や生産性の向上を実現することができる。
【0038】
そして、当該焼入れ装置およびクランクシャフトの製造方法では、レーザビームLBのS偏光を採用したことから、照射角度の変動によるレーザ吸収率への影響が小さくなり、レーザビームLBの照射角度をジャーナルJの軸線に対する垂線に近い角度にした場合でも先述の如く良好な焼入れ層が得られるので、とくに反射筒2の先端部の小型化を実現することができる。また、当該焼入れ装置およびクランクシャフトの製造方法では、反射筒2が、その内側の反射面4A,4BでレーザビームLBを多重反射させつつ集光するものであるため、構造が簡単であってさらなる小型化が可能である。
【0039】
これにより、当該焼入れ装置およびクランクシャフトの製造方法では、フリクション低減や小型軽量化を目的として軸部を短縮化したクランクシャフトに対しても、フィレット部への焼入れに容易に対処することができ、ひいてはそのクランクシャフトを用いたエンジンの性能向上にも貢献し得る。
【0040】
なお、上記実施態様では、フィレット部ftへの焼入れを説明したが、この焼入れに前後して、軸部に対して高エネルギービームによる焼入れを施すことも可能であり、この場合には、図1〜図6に基づいて説明した先の実施形態における軸部への焼入れを採用することが可能であり、先の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、フィレット部ftへの焼入れを行う際、軸線回りの同一回転面上における複数位置からレーザビームLBを照射することも可能であり、この場合には、加工時間のさらなる短縮化などを実現し得るものとなる。
【0041】
また、本発明に係わる焼入れ装置およびクランクシャフトの製造方法は、クランクシャフトに適用されるものであるが、類似したフィレット部を有する他の被処理材への適用も当然可能である。
【0042】
(実施例2)
レーザビームには、Nuvonyx社製のダイレクトダイオードレーザ(波長805nm)を使用し、集光光学系には、図7に示す反射筒を使用した。レーザ出力は加工点にて2.0〜3.0kW、加工点でのビームスポットサイズは6×8mm、ビーム照射角度は軸部の軸線に対して38度とし、軸部の回転時の周速度を0.3〜1.4m/minとした。
【0043】
被処理材には、S45C相当材の自動車エンジン用クランクシャフトを使用し、反射筒の先端部と軸部との間隔は0.5〜1.5mm、反射筒の側面とカウンタウエイトとの間隔は0.5〜3.0mm、反射筒の反射部の長さ(図7中の符号D)は115mとした。また、軸部の長さは15mmである。
【0044】
上記の条件でフィレット部(R部)に対して焼入れを行ったところ、R頂点部での焼入れ層の深さが0.7mm程度であり、表面硬度がHRc55〜60程度の良好な焼入れ層(図10参照)を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】クランクシャフトを説明する拡大図付の側面図である。
【図2】軸部に高エネルギービームを照射する状態を説明する斜視図である。
【図3】軸部およびフィレット部に高エネルギービームを照射する状態を説明する側面図である。
【図4】本発明に係わる製造方法により形成した硬化層を説明する断面図(a)、および表面溶融が生じた状態を説明する断面図(b)である。
【図5】螺旋状の焼きなまし層を示す断面図(a)および斜視図(b)と、直線状の焼きなまし層を説明する断面図(c)および斜視図(d)である。
【図6】クランクシャフトのカウンタウエイトに逃げ形状を設けた場合を説明する側面図である。
【図7】焼入れ装置を説明する側部断面図(a)および正面断面図(b)である。
【図8】レーザビームの入反射面と偏光面が同一平面である場合を示す斜視図(a)およびレーザビームの入反射面と偏光面が直交している場合を示す斜視図(b)である。
【図9】P偏光とS偏光についてレーザビームの入射角度とレーザ吸収率との関係を示すグラフである。
【図10】焼入れを施したフィレット部の断面を示す写真である。
【符号の説明】
A   クランクシャフト
C    カウンタウエイト
EB  高エネルギービーム
F   フランジ
ft  フィレット部
J   ジャーナル(軸部)
LB  レーザビーム(高エネルギービーム)
P   クランクピン(軸部)
Q   逃げ形状
W   クランクウエブ
2   反射筒
4A  集光用反射面
4B  照射用反射面

Claims (12)

  1. ジャーナルやクランクピンである軸部と、軸部とクランクウエブ等の接合部であるフィレット部に対して、これら軸部とフィレット部のみに高エネルギービームによる焼入れが施してあることを特徴とするクランクシャフト。
  2. クランクシャフトを製造するに際し、ジャーナルやピンである軸部と、軸部とクランクウエブ等の接合部であるフィレット部に対して、これら軸部とフィレット部のみに高エネルギービームによる焼入れを施すことを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
  3. クランクシャフトを製造するに際し、ジャーナルやピンである軸部とクランクウエブ等との接合部であるフィレット部に対して、高エネルギービームによる焼入れを施し、この際、高エネルギービームとしてレーザビームを用いると共に、内側に反射面を有する反射筒を用い、反射筒にレーザビームを通して、レーザビームを集光すると共に、レーザビームをフィレット部に対する入反射面に対して偏光面が直交する方向に反射させて、そのレーザビームをフィレット部に照射することを特徴とするクランクシャフトの製造方法。
  4. クランクシャフトを軸回りに回転させながらフィレット部にレーザビームを照射することを特徴とする請求項3に記載のクランクシャフトの製造方法。
  5. フィレット部に対する焼入れに前後して、軸部に対して高エネルギービームによる焼入れを施すことを特徴とする請求項3または4に記載のクランクシャフトの製造方法。
  6. 軸部に加える熱量よりもフィレット部に加える熱量を大きくしたことを特徴とする請求項2または5に記載のクランクシャフトの製造方法。
  7. 高エネルギービームによる焼入れは、焼入れ部位の表面溶融を伴わない熱量で行うことを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載のクランクシャフトの製造方法。
  8. クランクシャフトを軸線回りに回転させると共に、高エネルギービームを軸線方向に走査して焼入れを行うことを特徴とする請求項2,5〜7のいずれかに記載のクランクシャフトの製造方法。
  9. クランクシャフトに対して、軸線回りの同一回転面上における複数位置から高エネルギービームを照射することを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載のクランクシャフトの製造方法。
  10. クランクシャフトに対して、軸線方向に照射角度を変化させながら高エネルギービームを走査することを特徴とする請求項2,5〜9のいずれかに記載のクランクシャフトの製造方法。
  11. クランクシャフトのカウンタウエイトに、高エネルギービームとの干渉を避ける逃げ形状を設けておくことを特徴とする請求項10に記載のクランクシャフトの製造方法。
  12. クランクシャフトの製造において、ジャーナルやピンである軸部とクランクウエブ等との接合部であるフィレット部に対して、高エネルギービームによる焼入れを施す装置であって、高エネルギービームとしてレーザビームを用いると共に、軸部の軸線に対して直交する方向からレーザビームを通す反射筒を用い、反射筒が、内側に、レーザビームを多重反射させて集光する一対の集光用反射面と、レーザビームをフィレット部に対する入反射面に対して偏光面が直交する方向に反射する照射用反射面を備えていることを特徴とする焼入れ装置。
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