JP5870621B2 - レーザ加工装置及びレーザ加工方法 - Google Patents
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Description
従来のレーザ加工を行った加工面の平滑性は、切削工具での加工と比較して悪く、面粗さの小さい加工面を得ることが困難であった。一方、光学部材や工具の切刃など、表面の平滑さが要求される製品に対しても、近年、レーザ加工が採用されてきている。そのため、レーザ加工による平滑仕上げが各所で試みられている。しかしながら、特許文献1の技術では、回転体の軸方向へのレーザ光の走査と、回転体の回転に伴って加工面に凹凸の大きい螺旋状の加工痕が発生してしまうため、平滑な加工面を得るためには同一箇所を繰り返しレーザ照射することで加工痕を低減する必要があり、加工時間の増加を招いていた。
すなわち、このレーザ加工装置では、制御部が、レーザビームの焦点位置を加工対象物の加工面上におけるレーザビームの揺動範囲の中心位置に配するので、揺動の中心位置で最もエネルギー密度が高い小径でレーザビームが照射されると共に揺動の両端部では、エネルギー密度の低い比較的大きな径でレーザビームが照射される。このため、揺動中心では深く大きな凹凸で加工対象物が加工されると共に揺動端部では、浅く小さな凹凸で加工対象物が加工される。したがって、揺動中心では大きく加工できると共に揺動幅全体としては滑らかな加工痕を得ることができる。
すなわち、このレーザ加工装置では、レーザ光照射機構が、ガウシアン形状の断面光強度分布を有したレーザビームを照射するので、レーザビームの光軸を回転軸に対してねじれの位置に配した状態で加工対象物の外周面に対してレーザビームを照射する際(特に接線方向からレーザビームを照射した際)にビームの外周側のエネルギー密度が大きく低下しているガウシアン形状の断面光強度分布により加工面の面粗さがより小さくなる。
すなわち、本発明に係るレーザ加工装置及びレーザ加工方法によれば、レーザビームの焦点位置と前記仮想面との距離を一定に維持したままレーザビームを加工対象物の外周面に照射させると共に前記回転軸に沿って揺動させてレーザ旋盤加工を行うので、螺旋状の加工痕の発生を抑制して凹凸の小さい平滑な加工面を短時間で得ることができる。したがって、簡易な装置構成で加工可能であり、加工面の平滑性が向上すると共に高い生産性が得られる。
例えば、本発明のレーザ加工装置及びレーザ加工方法は、ドリルやエンドミルの形態加工等の円柱または円筒に類する形状の金属元素の無機化合物や非金属元素の単体または化合物を主成分とする材料などの加工に好適である。
また、図2において、符号W0は、加工前の加工対象物Wの断面形状(加工前形態)を示し、符号W1は、加工目標の加工対象物Wの断面形状(加工目標形態)を示している。なお、図2は加工前形態W0が不均衡な略円柱形態である場合を示しており、そのような場合でも、加工後の加工対象物の形態は、加工対象物の回転軸とレーザビームの光軸LAの位置関係、およびレーザビームLの焦点位置により半径が決定される精度の高い円柱となることを表している。
なお、図中、上記のX,Y方向及びこれらに直交するZ方向に対して、角度θ1で水平面に対して傾斜した回転軸Oの延在方向をXθ方向とし、これに直交する水平方向をYθとし、これらに直交する方向をZθ方向として記載している。
上記ガルバノスキャナ10及び集光光学系は、位置調整機構2の直上に配置されている。また、上記CCDカメラ11は、ガルバノスキャナ10及び集光光学系に隣接して設置されている。
角度θ2の値は次のように設定する。一般に、レーザビームを加工対象物の傾斜面に照射する場合、加工対象物のレーザ照射部における傾斜面の法線とレーザビームの光軸のなす角θがある一定の大きさを超えると、加工対象物表面へ照射されるレーザビームのエネルギー密度(cosθに比例)が加工対象物の加工閾値を下回り、加工が進行しなくなる。そのときの角度を、加工限界角と定義する。そのため、レーザ旋盤加工において、レーザビームLの照射点P2における加工目標形態W1の外周面の法線HとレーザビームLの光軸LAとの角度θ2を加工限界角に設定し、十分な時間レーザ加工を行った場合、加工対象物Wの形態は加工目標形態W1に一致することになる。また、その際に加工対象物Wの実際の加工後の形態は加工前形態W0にはほとんど影響されない。なお、加工限界角は、レーザビームの種類やエネルギー密度、加工対象物の材種などの組み合わせによって変化するため、予め実験により調べておく必要がある。
また、制御部4は、レーザビームLの焦点位置P1を加工対象物Wの加工面上におけるレーザビームLの揺動範囲の中心位置に配する。
さらに、上記揺動時の走査速度と加工対象物Wの回転速度は、揺動するレーザビームLによる加工面上のビーム径が、揺動の往復時で互いに一部重なるように設定される。すなわち、上記揺動速度は、上記回転速度に比べて十分に早い速度に設定される。なお、レーザビームLの走査速度は、一定でなくても構わず、揺動に合わせて周期的に変化させても構わない。
さらに、レーザ光照射機構3が、ガウシアン形状の断面光強度分布を有したレーザビームLを照射するので、レーザビームLの外周側のエネルギー密度が大きく低下しているガウシアン形状の断面光強度分布により加工面の面粗さがより小さくなる。
なお、トリミング前の外径は600μmであり、トリミング後の外径は500μmである。この際の加工設定条件を以下に示す。
・レーザ光波長:355nm
・レーザビームの繰り返し周波数:166kHz
・レーザビームのビーム径(焦点位置)d:12.5μm
・レーザビーム焦点におけるエネルギー密度(単位面積、単位パルス当たり):19mJ/mm2
・レーザビームの揺動の走査速度:580mm/s(一定)
・加工対象物の材種:cBN焼結体
・加工対象物の回転速度:180°/s
・加工対象物の軸方向移動速度:40μm/s
・加工対象物の傾斜角θ:45°
・パルス間距離δ:5μm
・揺動幅Δ:100μm
δ=((580×1000)/(166×1000))/cos45°≒5μm
となり、δ≒0.4d(d:ビーム径)となる。
また、揺動幅Δ=100μm、加工対象物の傾斜角θ=45°により、回転軸方向の揺動幅ΔAは約141μmとなる。加工対象物Wの360°回転時の軸方向の移動量pは80μmであるため、p=0.57ΔAとなる。
δ=(1000・v)/(α・cosθ)[μm]
として得られる。このとき、加工対象物Wの回転軸方向の送り速度と、加工対象物Wの回転により発生する表面速度については、レーザビームLの揺動速度に比べて十分に小さいとして無視する。
これらの測定結果からわかるように、レーザビームLの揺動を行わない比較例では、加工時間に対して面粗さRaの低下度合いが小さく、10分加工後でも面粗さRaが0.2程度であるのに対し、本発明の実施例では、短い加工時間で面粗さRaが大きく低下し、5分程度で最小値(面粗さRa:約0.04μm)まで達している。
これらの写真からわかるように、レーザビームLを揺動させない場合(比較例)では、表面に螺旋状の加工痕が発生して凹凸が大きいのに対し、レーザビームLを揺動させた場合(本実施例)では、螺旋状の加工痕が無く、外周面全体にわたって均一で平滑な表面状態が確認できる。
Claims (4)
- 円柱状、円筒状または外周面の少なくとも一部が断面円弧状とされた柱状若しくは棒状の加工対象物にレーザビームを照射して形状形成を行うレーザ加工装置であって、
前記加工対象物を保持して軸中心に回転させると共に前記加工対象物と前記レーザビームとの相対的な位置関係を調整する位置調整機構と、
前記加工対象物の外周面に前記レーザビームを集光して照射するレーザ光照射機構と、
前記位置調整機構及び前記レーザ光照射機構を制御する制御部とを備え、
前記制御部が、前記位置調整機構及び前記レーザ光照射機構により、前記レーザビームの光軸に直交する仮想面に対して前記加工対象物の回転軸を傾斜させ、前記レーザビームの光軸を前記回転軸に対してねじれの位置に配した状態で前記加工対象物を回転させ、前記レーザビームの焦点位置と前記仮想面との距離を一定に維持したまま前記レーザビームを前記加工対象物の外周面に照射させると共に前記回転軸に沿って揺動させてレーザ旋盤加工を行い、前記レーザビームの照射点における加工目標形態の外周面の法線と前記レーザビームの光軸との角度を、加工限界角に設定することを特徴とするレーザ加工装置。 - 請求項1に記載のレーザ加工装置において、
前記制御部が、前記レーザビームの焦点位置を前記加工対象物の加工面上における前記レーザビームの揺動範囲の中心位置に配することを特徴とするレーザ加工装置。 - 請求項1又は2に記載のレーザ加工装置において、
前記レーザ光照射機構が、ガウシアン形状の断面光強度分布を有した前記レーザビームを照射することを特徴とするレーザ加工装置。 - 円柱状、円筒状または外周面の少なくとも一部が断面円弧状とされた柱状若しくは棒状の加工対象物にレーザビームを照射して形状形成を行う加工方法であって、
前記加工対象物を保持して軸中心に回転させると共に前記加工対象物と前記レーザビームとの相対的な位置関係を調整する位置調整工程と、
前記加工対象物の外周面に前記レーザビームを集光して照射するレーザ光照射工程とを有し、
前記レーザビームの光軸に直交する仮想面に対して前記加工対象物の回転軸を傾斜させ、前記レーザビームの光軸を前記回転軸に対してねじれの位置に配した状態で前記加工対象物を回転させ、前記レーザビームの焦点位置と前記仮想面との距離を一定に維持したまま前記レーザビームを前記加工対象物の外周面に照射させると共に前記回転軸に沿って揺動させてレーザ旋盤加工を行い、前記レーザビームの照射点における加工目標形態の外周面の法線と前記レーザビームの光軸との角度を、加工限界角に設定することを特徴とするレーザ加工方法。
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