JP5870621B2 - レーザ加工装置及びレーザ加工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、円柱状または円筒状等の加工対象物を回転させながらレーザ加工するレーザ加工装置およびレーザ加工方法に関する。
従来、円柱状または円筒状の加工対象物を回転させながら加工する方法として、切削、研削工具を用いた旋盤加工がある。これは、微小寸法の脆性材料を加工する場合、μm単位の高い加工寸法精度を得ることが困難であることや、チッピング等の問題を生ずることがあり、これを解消できる加工方法としてレーザを用いた旋盤加工方法が開発されている。
例えば、特許文献1には、円柱状の加工対象物を中心軸の周りに回転させながら、比較的長い焦点距離のレンズにより集光したレーザ光の焦点が円柱状の加工対象物の側面に接するように照射して加工を行う方法や、円柱状の加工対象物を中心軸の周りに回転させながら、比較的短い焦点距離のレンズにより集光したレーザ光の光軸が加工対象物の表面に対して垂直に、かつレーザ光の焦点が加工対象物の表面となるように照射して加工を行う方法が提案されている。
特開平08−132259号公報
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
従来のレーザ加工を行った加工面の平滑性は、切削工具での加工と比較して悪く、面粗さの小さい加工面を得ることが困難であった。一方、光学部材や工具の切刃など、表面の平滑さが要求される製品に対しても、近年、レーザ加工が採用されてきている。そのため、レーザ加工による平滑仕上げが各所で試みられている。しかしながら、特許文献1の技術では、回転体の軸方向へのレーザ光の走査と、回転体の回転に伴って加工面に凹凸の大きい螺旋状の加工痕が発生してしまうため、平滑な加工面を得るためには同一箇所を繰り返しレーザ照射することで加工痕を低減する必要があり、加工時間の増加を招いていた。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、回転体の平滑な加工面を容易に得ることができるレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを目的とする。
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明のレーザ加工装置は、円柱状、円筒状または外周面の少なくとも一部が断面円弧状とされた柱状若しくは棒状の加工対象物にレーザビームを照射して形状形成を行うレーザ加工装置であって、前記加工対象物を保持して軸中心に回転させると共に前記加工対象物と前記レーザビームとの相対的な位置関係を調整する位置調整機構と、前記加工対象物の外周面に前記レーザビームを集光して照射するレーザ光照射機構と、前記位置調整機構及び前記レーザ光照射機構を制御する制御部とを備え、前記制御部が、前記位置調整機構及び前記レーザ光照射機構により、前記レーザビームの光軸に直交する仮想面に対して前記加工対象物の回転軸を傾斜させ、前記レーザビームの光軸を前記回転軸に対してねじれの位置に配した状態で前記加工対象物を回転させ、前記レーザビームの焦点位置と前記仮想面との距離を一定に維持したまま前記レーザビームを前記加工対象物の外周面に照射させると共に前記回転軸に沿って揺動させてレーザ旋盤加工を行うことを特徴とする。
また、本発明のレーザ加工方法は、円柱状、円筒状または外周面の少なくとも一部が断面円弧状とされた柱状若しくは棒状の加工対象物にレーザビームを照射して形状形成を行う加工方法であって、前記加工対象物を保持して軸中心に回転させると共に前記加工対象物と前記レーザビームとの相対的な位置関係を調整する位置調整工程と、前記加工対象物の外周面に前記レーザビームを集光して照射するレーザ光照射工程とを有し、前記レーザビームの光軸に直交する仮想面に対して前記加工対象物の回転軸を傾斜させ、前記レーザビームの光軸を前記回転軸に対してねじれの位置に配した状態で前記加工対象物を回転させ、前記レーザビームの焦点位置と前記仮想面との距離を一定に維持したまま前記レーザビームを前記加工対象物の外周面に照射させると共に前記回転軸に沿って揺動させてレーザ旋盤加工を行うことを特徴とする。
これらのレーザ加工装置及びレーザ加工方法では、上記状態で加工対象物を回転させ、レーザビームの焦点位置と前記仮想面との距離を一定に維持したままレーザビームを加工対象物の外周面に照射させると共に前記回転軸に沿って揺動させてレーザ旋盤加工を行うので、揺動によりレーザ光の焦点位置と加工対象物の照射位置との距離が周期的に変動することで、加工対象物の照射位置におけるレーザ光のビーム形状が周期的に変化し、凹凸の小さい平滑な加工面を得ることができる。したがって、加工対象物の外周面に、螺旋状の加工痕が発生することを抑制することができ、面粗さの小さい加工面を短時間で得ることができる。
また、本発明のレーザ加工装置は、前記制御部が、前記レーザビームの焦点位置を前記加工対象物の加工面上における前記レーザビームの揺動範囲の中心位置に配することを特徴とする。
すなわち、このレーザ加工装置では、制御部が、レーザビームの焦点位置を加工対象物の加工面上におけるレーザビームの揺動範囲の中心位置に配するので、揺動の中心位置で最もエネルギー密度が高い小径でレーザビームが照射されると共に揺動の両端部では、エネルギー密度の低い比較的大きな径でレーザビームが照射される。このため、揺動中心では深く大きな凹凸で加工対象物が加工されると共に揺動端部では、浅く小さな凹凸で加工対象物が加工される。したがって、揺動中心では大きく加工できると共に揺動幅全体としては滑らかな加工痕を得ることができる。
また、本発明のレーザ加工装置は、前記レーザ光照射機構が、ガウシアン形状の断面光強度分布を有した前記レーザビームを照射することを特徴とする。
すなわち、このレーザ加工装置では、レーザ光照射機構が、ガウシアン形状の断面光強度分布を有したレーザビームを照射するので、レーザビームの光軸を回転軸に対してねじれの位置に配した状態で加工対象物の外周面に対してレーザビームを照射する際(特に接線方向からレーザビームを照射した際)にビームの外周側のエネルギー密度が大きく低下しているガウシアン形状の断面光強度分布により加工面の面粗さがより小さくなる。
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係るレーザ加工装置及びレーザ加工方法によれば、レーザビームの焦点位置と前記仮想面との距離を一定に維持したままレーザビームを加工対象物の外周面に照射させると共に前記回転軸に沿って揺動させてレーザ旋盤加工を行うので、螺旋状の加工痕の発生を抑制して凹凸の小さい平滑な加工面を短時間で得ることができる。したがって、簡易な装置構成で加工可能であり、加工面の平滑性が向上すると共に高い生産性が得られる。
例えば、本発明のレーザ加工装置及びレーザ加工方法は、ドリルやエンドミルの形態加工等の円柱または円筒に類する形状の金属元素の無機化合物や非金属元素の単体または化合物を主成分とする材料などの加工に好適である。
本発明に係るレーザ加工装置及びレーザ加工方法の一実施形態において、レーザ加工装置を示す概略的な全体構成図である。 本実施形態において、回転軸に対する垂直断面において加工対象物とレーザビームの照射方向との位置関係を示す説明図である。 本実施形態において、正面(Y方向)から見た加工対象物とレーザビームの揺動との位置関係を示す説明図である。 本実施形態において、加工対象物に照射されるレーザビーム径と揺動との関係を示す説明図である。 本実施形態において、揺動範囲における加工対象物でのレーザビームの照射状態(a)と加工状態(b)とを示す図である。 本実施形態において、加工対象物の外周面に垂直にレーザビームを照射した場合(a)と外周面の接線方向からレーザビームを照射した場合(b)についての加工状態を示す説明図である。 本発明に係るレーザ加工装置及びレーザ加工方法の実施例において、揺動させた場合と揺動させない場合とにおける加工時間に対する加工面の面粗さを示すグラフである。 本発明に係るレーザ加工装置及びレーザ加工方法の比較例において、レーザビームを揺動させない場合における加工後の加工対象物を示す拡大写真である。 本発明の実施例において、レーザビームを揺動させた場合における加工後の加工対象物を示す拡大写真である。
以下、本発明に係るレーザ加工装置及びレーザ加工方法の一実施形態を、図1から図6を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能又は認識容易な大きさとするために必要に応じて縮尺を適宜変更している部分がある。
本実施形態のレーザ加工装置1は、図1に示すように、円柱状、円筒状または外周面の少なくとも一部が断面円弧状とされた柱状若しくは棒状の加工対象物Wにレーザビーム(レーザ光)Lを照射して形状形成を行うレーザ加工装置であって、加工対象物Wを保持して軸中心に回転させると共に加工対象物WとレーザビームLとの相対的な位置関係を調整する位置調整機構2と、加工対象物Wの外周面にレーザビームLを集光して照射するレーザ光照射機構3と、位置調整機構2及びレーザ光照射機構3を制御する制御部4とを備えている。
上記制御部4は、位置調整機構2及びレーザ光照射機構3により、図2及び図3に示すように、レーザビームLの光軸LAに直交する仮想面Kに対して加工対象物Wの回転軸Oを傾斜させ、レーザビームLの光軸LAを回転軸Oに対してねじれの位置に配した状態で加工対象物Wを回転させ、レーザビームLの焦点位置と仮想面Kとの距離を一定に維持したままレーザビームLを加工対象物Wの外周面(加工面)に照射させると共に回転軸Oに沿って揺動させてレーザ旋盤加工を行う機能を有している。
また、図2において、符号W0は、加工前の加工対象物Wの断面形状(加工前形態)を示し、符号W1は、加工目標の加工対象物Wの断面形状(加工目標形態)を示している。なお、図2は加工前形態W0が不均衡な略円柱形態である場合を示しており、そのような場合でも、加工後の加工対象物の形態は、加工対象物の回転軸とレーザビームの光軸LAの位置関係、およびレーザビームLの焦点位置により半径が決定される精度の高い円柱となることを表している。
上記加工対象物Wとしては、種々の材料で形成されたものが加工可能である。例えば、金属元素を主成分とする材料(単体金属、合金、金属間化合物など)、金属元素の無機化合物(酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物など)、非金属元素の単体または化合物(シリコン、ダイヤモンド、cBNなど)、有機化合物や有機金属化合物、あるいはそれらの微粒子を混合した焼結体などである。特に、本発明の効果を得るためには、金属元素の無機化合物や非金属元素の単体または化合物などが好ましい。すなわち、加工対象物Wが上記材料で構成されていると、金属元素を主成分とする材料や有機化合物などに比べてレーザ照射部の溶融が小さく、レーザ加工痕がはっきり現れるため、より高い平滑性の向上効果が得られるからである。なお、後述する実施例の加工対象物Wでは、円柱状のcBN焼結体が採用されている。
上記位置調整機構2は、水平面に平行なかつ互いに直交するX方向及びY方向に移動可能なXYステージ部5と、該XYステージ部5上に設けられ水平面に対しての加工対象物Wの設置面を任意の角度θ1で傾斜可能なゴニオステージ部6と、該ゴニオステージ部6上に設けられ加工対象物Wを保持して回転可能なモータ等の回転機構7が固定されていると共に傾斜方向に移動可能な1軸ステージ部8とで構成されている。
なお、図中、上記のX,Y方向及びこれらに直交するZ方向に対して、角度θ1で水平面に対して傾斜した回転軸Oの延在方向をXθ方向とし、これに直交する水平方向をYθとし、これらに直交する方向をZθ方向として記載している。
上記レーザ光照射機構3は、Qスイッチのトリガー信号によりレーザビームLとなるレーザ光を発振するレーザ光源9と、照射するレーザビームLを走査させるガルバノスキャナ10と、保持された加工対象物Wの加工位置を確認するために撮像するCCDカメラ11とを備えている。なお、ガルバノスキャナ10の直下には、レーザビームLをスポット状に集光する光学系(集光光学系)(図示略)が設置されている。
上記レーザ光源9は、190〜550nmのいずれかの波長のレーザ光を照射できるものが使用可能であり、例えば後述する実施例では、波長355nmのレーザ光を発振して出射できるものを用いている。
上記ガルバノスキャナ10及び集光光学系は、位置調整機構2の直上に配置されている。また、上記CCDカメラ11は、ガルバノスキャナ10及び集光光学系に隣接して設置されている。
上記制御部4は、位置調整機構2とレーザ光照射機構3とを制御して加工対象物WとレーザビームLとの相対的な位置関係を調整する機能を有している。すなわち、制御部4は、レーザ旋盤加工を行うために、図2から図4に示すように、レーザビームLの光軸LAを加工対象物Wの回転軸Oに対してねじれの位置に配する位置調整を行うと共にレーザビームLを照射しつつ揺動させる。この揺動は、焦点位置P1の高さを維持したままレーザビームLを光軸LAに対して垂直な方向に一定の幅で繰り返し往復させて走査させる動作である。
例えば、制御部4は、上記レーザ旋盤加工を行う際にXYステージ部5や1軸ステージ8を動かし、図2に示すようにレーザビームLの焦点を加工対象物Wの加工目標形態W1の表面とし、かつ、レーザビームLの照射点における加工目標形態W1の外周面の法線HとレーザビームLの光軸LAとの角度θ2が予め設定した値となる位置へ加工対象物を移動する。なお、制御部4はXYステージ部5を動かす代わりに、ガルバノスキャナ10及び集光光学系のミラーの操作によりレーザビームLの光軸LAを動かすことで同様の位置調整を行っても良い。
角度θ2の値は次のように設定する。一般に、レーザビームを加工対象物の傾斜面に照射する場合、加工対象物のレーザ照射部における傾斜面の法線とレーザビームの光軸のなす角θがある一定の大きさを超えると、加工対象物表面へ照射されるレーザビームのエネルギー密度(cosθに比例)が加工対象物の加工閾値を下回り、加工が進行しなくなる。そのときの角度を、加工限界角と定義する。そのため、レーザ旋盤加工において、レーザビームLの照射点P2における加工目標形態W1の外周面の法線HとレーザビームLの光軸LAとの角度θ2を加工限界角に設定し、十分な時間レーザ加工を行った場合、加工対象物Wの形態は加工目標形態W1に一致することになる。また、その際に加工対象物Wの実際の加工後の形態は加工前形態W0にはほとんど影響されない。なお、加工限界角は、レーザビームの種類やエネルギー密度、加工対象物の材種などの組み合わせによって変化するため、予め実験により調べておく必要がある。
また、揺動による加工面の平滑化の効果を得ながら、最も大きなレーザ加工速度を得るためには、揺動の全ての領域において加工対象物Wに照射されるレーザビームLを、レーザ光によりアブレーション反応が生じるエネルギー密度の下限以上とすれば良い。また、加工対象物Wの材料種類に応じて、レーザ光によりアブレーション反応が生じるエネルギー密度の下限未満であってアブレーション反応は生じないが溶融が生じるエネルギー密度の下限以上の領域にレーザビームLのエネルギー密度を設定して表面を溶融させることで面粗さを低減させる効果が得られる場合もある。
このレーザ加工装置1を用いた本実施形態のレーザ加工方法は、図2および図に示すように、レーザビームLの光軸LAを加工対象物Wの回転軸Oに対してねじれの位置に配した状態で加工対象物Wを回転させ、レーザビームLを加工対象物Wの外周面に照射させるレーザ旋盤加工を行う。
このレーザ旋盤加工を行う際、制御部4は、レーザビームLの光軸LAに直交する仮想面Kに対して加工対象物Wの回転軸Oを傾斜させ、レーザビームLの光軸LAを回転軸Oに対してねじれの位置に配した状態で加工対象物Wを回転させ、レーザビームLの焦点位置P1と仮想面Kとの距離を一定に維持したままレーザビームLを加工対象物Wの外周面に照射させると共に回転軸Oに沿って揺動させてレーザ旋盤加工を行う。
また、制御部4は、レーザビームLの焦点位置P1を加工対象物Wの加工面上におけるレーザビームLの揺動範囲の中心位置に配する。
すなわち、図4及び図5の(a)に示すように、焦点位置P1に一致している揺動範囲の中心位置で最もエネルギー密度が高い小径でレーザビームLが照射されると共に、焦点位置P1から離間した揺動の両端部では、エネルギー密度の低い比較的な大きな径でレーザビームLが照射される。このため、図5の(b)に示すように、揺動範囲の中心位置では深く大きな凹凸で加工対象物Wが加工されると共に揺動端部では、浅く小さな凹凸で加工対象物Wが加工される。したがって、揺動中心では大きく加工できると共に揺動幅全体としては滑らかな加工痕を得ることができる。
このようにレーザビームLが揺動するため、局所的なレーザ照射部において焦点位置P1からの距離が変化するため、パルス照射されるレーザビームLのパルス毎の加工痕(パルス痕)の形状も揺動範囲で変化し、全体としてランダムなパルス痕が分散する結果、加工面の凹凸が小さく、均等化される。
なお、レーザビームLの繰り返し周波数と揺動時の走査速度とで決定されるレーザビームLのパルス間距離δは、図5の(a)に示すように、パルス照射され加工面上で隣接するレーザビームLのビーム径が互いに一部重なるように設定される。
さらに、上記揺動時の走査速度と加工対象物Wの回転速度は、揺動するレーザビームLによる加工面上のビーム径が、揺動の往復時で互いに一部重なるように設定される。すなわち、上記揺動速度は、上記回転速度に比べて十分に早い速度に設定される。なお、レーザビームLの走査速度は、一定でなくても構わず、揺動に合わせて周期的に変化させても構わない。
また、上記レーザ光照射機構3は、ガウシアン形状の断面光強度分布を有した基本モード(TEM00)のレーザビームLを照射する。このようなレーザビームLを用いる理由は、図6の(a)に示すように、レーザビームLの光軸LAを加工対象物Wの回転軸Oに対して垂直に配した場合(加工面に垂直に照射した場合)、1つのパルスによる加工痕が断面U字型の鋭利な形状になってしまい加工面の凹凸が大きくなるのに対し、レーザビームLの光軸LAを加工対象物Wの回転軸Oに対してねじれの位置に配した場合、特に加工面の接線方向から照射した場合、幅が広く浅い加工面となり加工面の凹凸が小さいためである。
また、レーザビームLの照射位置は、図2に示すように、レーザビームLが加工対象物Wの加工目標形態W1の接線付近となる位置P2に設定する。P2は、レーザビームLの光軸LAと加工目標形態W1のP2における法線とのなす角が加工限界角となる位置である。
上述したように、本実施形態のレーザ加工装置1及びレーザ加工方法では、上記状態で加工対象物Wを回転させ、レーザビームLの焦点位置P1と仮想面Kとの距離を一定に維持したままレーザビームLを加工対象物Wの外周面に照射させると共に回転軸Oに沿って揺動させてレーザ旋盤加工を行うので、揺動によりレーザビームLの焦点位置P1と加工対象物Wの照射位置との距離が周期的に変動することで、加工対象物Wの照射位置におけるレーザビームLのビーム形状が周期的に変化し、凹凸の小さい平滑な加工面を得ることができる。したがって、加工対象物Wの外周面に、螺旋状の加工痕が発生することを抑制することができ、面粗さの小さい加工面を短時間で得ることができる。
また、制御部4が、レーザビームLの焦点位置P1を加工対象物Wの加工面上におけるレーザビームLの揺動範囲の中心位置に配するので、揺動中心では大きく加工できると共に揺動幅全体としては滑らかな加工痕を得ることができる。
さらに、レーザ光照射機構3が、ガウシアン形状の断面光強度分布を有したレーザビームLを照射するので、レーザビームLの外周側のエネルギー密度が大きく低下しているガウシアン形状の断面光強度分布により加工面の面粗さがより小さくなる。
次に、上記実施形態のレーザ加工装置を用いて実際に円柱形状のcBNのトリミング加工(外径寸法の変更)を行い、その加工面の状態を評価した結果を示す。
なお、トリミング前の外径は600μmであり、トリミング後の外径は500μmである。この際の加工設定条件を以下に示す。
<加工設定条件>
・レーザ光波長:355nm
・レーザビームの繰り返し周波数:166kHz
・レーザビームのビーム径(焦点位置)d:12.5μm
・レーザビーム焦点におけるエネルギー密度(単位面積、単位パルス当たり):19mJ/mm
・レーザビームの揺動の走査速度:580mm/s(一定)
・加工対象物の材種:cBN焼結体
・加工対象物の回転速度:180°/s
・加工対象物の軸方向移動速度:40μm/s
・加工対象物の傾斜角θ:45°
・パルス間距離δ:5μm
・揺動幅Δ:100μm
なお、図4に示す隣り合うパルス間の距離δ(パルス照射されるレーザビームによってパルス毎に生じる隣接する加工痕の中心の間隔)は、上記条件により、
δ=((580×1000)/(166×1000))/cos45°≒5μm
となり、δ≒0.4d(d:ビーム径)となる。
また、揺動幅Δ=100μm、加工対象物の傾斜角θ=45°により、回転軸方向の揺動幅ΔAは約141μmとなる。加工対象物Wの360°回転時の軸方向の移動量pは80μmであるため、p=0.57ΔAとなる。
なお、上記パルス間の距離δは、焦点位置P1におけるビーム径dに対し、0.25d≦δ≦0.75dとなるように設定しており、揺動による平滑化の効果を最大化するためにはこの範囲に設定することが望ましい。パルス間の距離δは、レーザビームLの繰り返しをαkHz、レーザビームLに対する加工対象物Wの回転軸Oの傾斜角をθ[°]、揺動の走査速度をv[mm/s]とすると
δ=(1000・v)/(α・cosθ)[μm]
として得られる。このとき、加工対象物Wの回転軸方向の送り速度と、加工対象物Wの回転により発生する表面速度については、レーザビームLの揺動速度に比べて十分に小さいとして無視する。
また、加工対象物Wが360°回転する間の、レーザ照射点(揺動走査の中心点)の回転軸方向の送り量pは、回転軸方向の揺動幅ΔAに対し、0.25ΔA≦p≦0.75ΔAとなるよう設定しており、揺動による平滑化の効果を最大化するためにはこの範囲に設定することが望ましい。なお、レーザ照射点の回転軸方向の送りは連続かつ一定速度とし、1軸ステージ部8にて行う。
このように設定した条件で本発明の実施例の加工を行ったが、本発明の比較例として、上記加工条件に対してレーザビームLの揺動を行わない場合についても同様に円柱形状のcBNのトリミング加工(外径寸法の変更)を行い、その加工面の状態を評価した。なお、揺動させない点以外は、上記本実施例と同様の加工条件に設定した。
これらの揺動させた場合(本実施例)と揺動させない場合(比較例)とにおける加工時間と加工面の面粗さRaとの関係を測定した結果を図7に示す。この測定には、レーザ顕微鏡を用いて面粗さRaを計測した。
これらの測定結果からわかるように、レーザビームLの揺動を行わない比較例では、加工時間に対して面粗さRaの低下度合いが小さく、10分加工後でも面粗さRaが0.2程度であるのに対し、本発明の実施例では、短い加工時間で面粗さRaが大きく低下し、5分程度で最小値(面粗さRa:約0.04μm)まで達している。
また、レーザビームLを揺動させた場合(本実施例)と揺動させない場合(比較例)とにおける加工後の加工対象物Wの拡大写真を図8及び図9に示す。
これらの写真からわかるように、レーザビームLを揺動させない場合(比較例)では、表面に螺旋状の加工痕が発生して凹凸が大きいのに対し、レーザビームLを揺動させた場合(本実施例)では、螺旋状の加工痕が無く、外周面全体にわたって均一で平滑な表面状態が確認できる。
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、加工対象物として円柱状のものを用いたが、円柱状の他に、円筒状または外周面の少なくとも一部が断面円弧状とされた柱状若しくは棒状のものが採用可能である。例えば、半割円柱状(軸方向から見て半円状の柱形状)や円柱形状の外周面に複数のスリットが軸方向に沿って形成された略円柱状などの円柱または円筒に類する形状の加工対象物にも適用可能である。
1…レーザ加工装置、2…位置調整機構、3…レーザ光照射機構、4…制御部、K…レーザビームの光軸に直交する仮想面、L…レーザビーム、LA…レーザビームの光軸、O…加工対象物の回転軸、P1…レーザビームの焦点位置、W…加工対象物

Claims (4)

  1. 円柱状、円筒状または外周面の少なくとも一部が断面円弧状とされた柱状若しくは棒状の加工対象物にレーザビームを照射して形状形成を行うレーザ加工装置であって、
    前記加工対象物を保持して軸中心に回転させると共に前記加工対象物と前記レーザビームとの相対的な位置関係を調整する位置調整機構と、
    前記加工対象物の外周面に前記レーザビームを集光して照射するレーザ光照射機構と、
    前記位置調整機構及び前記レーザ光照射機構を制御する制御部とを備え、
    前記制御部が、前記位置調整機構及び前記レーザ光照射機構により、前記レーザビームの光軸に直交する仮想面に対して前記加工対象物の回転軸を傾斜させ、前記レーザビームの光軸を前記回転軸に対してねじれの位置に配した状態で前記加工対象物を回転させ、前記レーザビームの焦点位置と前記仮想面との距離を一定に維持したまま前記レーザビームを前記加工対象物の外周面に照射させると共に前記回転軸に沿って揺動させてレーザ旋盤加工を行い、前記レーザビームの照射点における加工目標形態の外周面の法線と前記レーザビームの光軸との角度を、加工限界角に設定することを特徴とするレーザ加工装置。
  2. 請求項1に記載のレーザ加工装置において、
    前記制御部が、前記レーザビームの焦点位置を前記加工対象物の加工面上における前記レーザビームの揺動範囲の中心位置に配することを特徴とするレーザ加工装置。
  3. 請求項1又は2に記載のレーザ加工装置において、
    前記レーザ光照射機構が、ガウシアン形状の断面光強度分布を有した前記レーザビームを照射することを特徴とするレーザ加工装置。
  4. 円柱状、円筒状または外周面の少なくとも一部が断面円弧状とされた柱状若しくは棒状の加工対象物にレーザビームを照射して形状形成を行う加工方法であって、
    前記加工対象物を保持して軸中心に回転させると共に前記加工対象物と前記レーザビームとの相対的な位置関係を調整する位置調整工程と、
    前記加工対象物の外周面に前記レーザビームを集光して照射するレーザ光照射工程とを有し、
    前記レーザビームの光軸に直交する仮想面に対して前記加工対象物の回転軸を傾斜させ、前記レーザビームの光軸を前記回転軸に対してねじれの位置に配した状態で前記加工対象物を回転させ、前記レーザビームの焦点位置と前記仮想面との距離を一定に維持したまま前記レーザビームを前記加工対象物の外周面に照射させると共に前記回転軸に沿って揺動させてレーザ旋盤加工を行い、前記レーザビームの照射点における加工目標形態の外周面の法線と前記レーザビームの光軸との角度を、加工限界角に設定することを特徴とするレーザ加工方法。
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