JP5201424B2 - 炭素膜被覆切削工具およびその製造方法 - Google Patents
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Description
すなわち、研削加工による切れ刃の形成では、ダイヤモンドが砥石よりも硬いため、加工途中での砥石の形態変化を生じ、高精度に狙いの形状加工を行うことが困難であるという不都合があった。また、レーザとダイヤモンド被膜とを共に相対運動させながら走査加工する方法は、さらに形態に倣ったワーク移動が必要で制御が複雑であるという問題がある。さらに、ダイヤモンド被膜に対して垂直にレーザ光を照射する加工法では、加工後の形態が加工前の膜の起伏に倣うおそれがあり、均一なダイヤモンド被膜の形成が必須であり、やはり高精度な加工が難しいという不都合があった。特に、切削工具の切れ刃などの刃先にダイヤモンド被膜を形成すると、厚さに応じて刃先に被膜が盛り上がって形成されてしまうことから、刃先の加工が困難であった。このため、従来では、ダイヤモンド被膜でコーティングされていると共に鋭利なエッジを有した切削工具を作製することが困難であった。
すなわち、この炭素膜被覆切削工具の製造方法では、炭素膜形成工程において、予め切れ刃の刃先に炭素膜を他の部分より盛り上げて形成しておくことで、レーザ加工工程における炭素膜の削りしろを大きく設けて、より深い凹面およびより鋭利なエッジを形成することが可能になる。なお、すくい面と逃げ面との2面が近接する切れ刃の刃先は、炭素膜が成長し易い場所であることから、炭素膜を厚めにCVD成膜でコーティングすることで、切れ刃の刃先に炭素膜を他の部分より盛り上げて形成することができる。
すなわち、この炭素膜被覆切削工具の製造方法では、炭素膜が、ダイヤモンド膜であり、レーザビームの波長が、360nm以下であるので、ダイヤモンド加工に適した波長のレーザビームにより高精度にダイヤモンド膜を加工することができる。
すなわち、本発明に係る炭素膜被覆切削工具によれば、互いに隣接するすくい面側の炭素膜の表面と逃げ面側の炭素膜の表面とが、切れ刃の刃先近傍で凹面とされ、切れ刃の刃先に形成された炭素膜が、すくい面と逃げ面との成す角度より鋭角な断面形状を有しているので、従来よりもさらに鋭利なエッジを有することができる。
また、本発明に係る炭素膜被覆切削工具の製造方法によれば、レーザ加工工程で、ビーム断面の光強度分布がガウシアン分布であるレーザビームを、刃先前方から刃先近傍におけるすくい面側または逃げ面側の炭素膜に向けて照射すると共に刃先の延在方向に沿って走査して前記凹面を形成するので、高精度に前記凹面を刃先に沿って形成することができ、鋭利なエッジを形成することができる。
したがって、本発明の炭素膜被覆切削工具および上記製法で作製した炭素膜被覆切削工具は、炭素膜による耐摩耗性だけでなく切れ味に優れ、非鉄金属および複合材料加工用の切削工具としても適している。
上記炭素膜形成工程では、予め切れ刃2aの刃先2bに炭素膜3を他の部分より盛り上げて形成しておく。すなわち、すくい面4aと逃げ面4bとの2面が近接する切れ刃2aの刃先2bは、炭素膜3が成長し易い場所であることから、炭素膜3を厚めにCVD成膜でコーティングすることで、切れ刃2aの刃先2bに炭素膜3を他の部分より盛り上げて形成することができる。
また、レーザ光照射機構22は、レーザビームLの走査方向を、楕円形状である上記光強度分布の長軸方向または短軸方向に一致させている。これは、レーザビームLの走査方向が、上記光強度分布の長軸方向または短軸方向に一致せずに長軸または短軸に対して傾いた方向であると、走査終端部分の加工形状が傾いてズレが生じてしまうためである。なお、本実施形態では、レーザビームLの走査方向を、上記光強度分布の短軸方向に一致させている。
なお、炭素膜3が、ダイヤモンド膜である場合、レーザビームLの波長は、360nm以下の紫外線レーザ光を使用する。
上記ガルバノスキャナ27は、移動機構24の直上に配置されている。また、上記CCDカメラ28は、ガルバノスキャナ27に隣接して設置されている。
なお、炭素膜3によっては、加工表面から1μm程度まではダイヤモンドがアモルファスカーボンになる等の構造変化が起こり得る。
さらに、炭素膜形成工程において、予め切れ刃2aの刃先2bに炭素膜3を他の部分より盛り上げて形成しておくことで、レーザ加工工程における炭素膜3の削りしろを大きく設けて、より深い凹面3aおよびより鋭利なエッジを形成することが可能になる。
また、上述したように、切れ刃2aの部分は、成膜サイトが平面よりも多くなるため、厚くかつラウンド化してダイヤモンド膜(炭素膜3)が成膜されている。
また、このときのレーザ加工工程前の切れ刃部分の拡大画像を図6の(a)に示すと共に、レーザ加工工程後の切れ刃部分の拡大画像を図6の(b)に示す。なお、画像中の仮想線(二点鎖線)で囲んだ部分が、切れ刃部分である。これら画像からわかるように、レーザ加工工程後は、切れ刃部分がレーザ加工工程前に比べて非常にシャープに鋭角化されている。
Claims (4)
- 工具基体の切れ刃の表面に炭素膜が形成された炭素膜被覆切削工具であって、
互いに隣接するすくい面側の前記炭素膜の表面と逃げ面側の前記炭素膜の表面とが、前記切れ刃の刃先近傍でえぐられて凹面とされ、
前記切れ刃の刃先に形成された前記炭素膜が、前記すくい面と前記逃げ面との成す角度より鋭角な断面形状を有していることを特徴とする炭素膜被覆切削工具。 - 請求項1に記載の炭素膜被覆切削工具を製造する方法であって、
工具基体の切れ刃の表面に炭素膜を形成する炭素膜形成工程と、
レーザビームを照射して前記切れ刃の表面の前記炭素膜を加工するレーザ加工工程と、を有し、
該レーザ加工工程で、ビーム断面の光強度分布がガウシアン分布である前記レーザビームを、前記刃先前方から前記刃先近傍における前記すくい面側または前記逃げ面側の前記炭素膜に向けて照射し前記炭素膜の先端部に前記レーザビームの外周側を当てると共に前記刃先の延在方向に沿って走査して前記凹面を形成することを特徴とする炭素膜被覆切削工具の製造方法。 - 請求項2に記載の炭素膜被覆切削工具の製造方法において、
前記炭素膜形成工程において、前記切れ刃の刃先に前記炭素膜を他の部分より盛り上げて形成しておくことを特徴とする炭素膜被覆切削工具の製造方法。 - 請求項2または3に記載の炭素膜被覆切削工具の製造方法において、
前記炭素膜が、ダイヤモンド膜であり、
前記レーザビームの波長が、360nm以下であることを特徴とする炭素膜被覆切削工具の製造方法。
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