JP2009006436A - 加工工具の製造方法及び加工工具 - Google Patents

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【課題】 レーザ光の熱影響を抑制して加工によるダイヤモンド膜の膜厚の制御が容易に行える加工工具の製造方法及びこれにより作製された加工工具を提供すること。
【解決手段】 切刃を被覆膜で被覆する工程と、被覆膜に紫外線レーザUVを照射する工程とを備える。すなわち、ダイヤモンドが紫外線を吸収しやすいことから、紫外線レーザ光UVを照射することで被覆膜の加熱を抑制できる。これにより、切れ味を必要としない黒鉛などの加工用途だけでなく、切れ味を必要とするアルミニウム合金などの高精度加工の用途に用いることが可能な鋭利な刃先を有する加工工具を製造できる。
【選択図】 図3

Description

本発明は、例えばダイヤモンドコーティングされた加工工具の製造方法及び加工工具に関する。
ドリルなどの加工工具は、例えば超硬合金材料が用いられているが、その刃先部分をダイヤモンド膜で被覆することにより耐摩耗性を向上させることが行われている。以下、このダイヤモンド膜で被覆された工具を、ダイヤモンドコーティング工具とも称す。このダイヤモンド膜は、例えば超硬合金材料で構成された基体の表面にCVD法などを用いることにより形成されている。
しかし、ダイヤモンドコーティング工具は、コーティングされたままのダイヤモンド膜表面に凹凸が生じていると共に、刃先部分の全体にダイヤモンド膜で被覆されているため、刃先部分が曲面形状となって切れ味が低下してしまう。そのため、ダイヤモンド膜で被覆された加工工具は、切れ味を必要とするアルミニウム合金の高精度加工などには使用されず、例えば工具の切れ味を必要としない黒鉛などの加工に用途が限定されていた。
ここで、刃先部分を、砥石を用いて研磨することで鋭利にすることが考えられる。しかし、ダイヤモンド膜が薄膜であるため、砥石を用いた加工による膜厚の制御が困難である。そこで、刃先部分に例えばYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)などの赤外線レーザ光やその第二高調波の可視レーザ光を照射することで、刃先部分のダイヤモンド膜を加工して鋭利にする加工工具の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平4−146007号公報
しかしながら、上記従来の加工工具の製造方法においても、以下の課題が残されている。すなわち、YAGレーザ光の赤外線レーザ光又はその逓倍波の可視レーザ光でダイヤモンド膜を加工しようとする場合、これらの波長では熱加工機構でダイヤモンド膜が加工されるため炭化するという問題がある。また、加熱の影響により、ダイヤモンド膜の効果的な加工が困難である。炭化や過熱の影響を受けた場合、所望の加工部位以外の箇所もダメージを受けるため、例えば鋭利な刃先を形成するような加工は非常に困難である。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、レーザ光の熱影響を抑制して加工によるダイヤモンド膜の膜厚の制御が容易に行える加工工具の製造方法及びこれにより作製された加工工具を提供することを目的とする。
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明の加工工具の製造方法は、切刃が形成された基体と、ダイヤモンドで構成されて前記切刃を被覆する被覆膜とを有する加工工具の製造方法であって、前記切刃を前記被覆膜で被覆する工程と、該被覆膜に紫外線レーザ光を照射して加工する工程と、を備えることを特徴とする。
この発明では、紫外線レーザ光を照射することにより、基体及びダイヤモンドの被覆膜を加熱することなく被覆膜の加工が行える。したがって、加工工具の切刃の刃先形状を鋭利にできる。すなわち、ダイヤモンドは赤外線や可視光に対して相対的に紫外線、特にNd:YAGレーザやNd:YLFレーザの4倍波以下の波長の吸収が大きいことから、紫外線レーザ光を照射することで所望の加工箇所が選択的に加工され、ダイヤモンド被覆膜および基体の加熱を抑制できる。これにより、工具の切れ味を必要としない黒鉛などの加工用途だけでなく、切れ味を必要とするアルミニウム合金の高精度加工など他の加工用途に用いることが可能な鋭利な刃先を有する加工工具を製造できる。
また、本発明の加工工具の製造方法は、前記紫外線レーザ光の波長が、266nm以下であることが好ましい。
この発明では、赤外光や可視光の波長よりも波長が十分に短い紫外線レーザ光を照射することにより、被覆膜及び基体の加熱をより確実に抑制できる。
また、本発明の加工工具の製造方法は、前記紫外線レーザ光を、加工面に対してほぼ直角に照射することが好ましい。
この発明では、紫外線レーザ光を加工面に対してほぼ直角に照射することで、紫外線レーザ光のエネルギーを有効に活用しながら被覆膜の加工が行える。
本発明の加工工具は、上記記載の加工工具の製造方法により製造されていることを特徴とする。
この発明では、上記記載の加工工具の製造方法により製造されているので、ダイヤモンドコーティング工具において刃先部分が非常に鋭利に加工されており、黒鉛などの加工用途だけでなく、切れ味を必要とするアルミニウム合金などの高精度加工の用途にも広く用いることができる。
本発明の加工工具の製造方法によれば、基体及びダイヤモンド膜の熱影響を抑制して非熱的加工により刃先部分を鋭利に加工することができるので、黒鉛以外の加工用途にも使用可能なダイヤモンドコーティング工具を得ることができる。したがって、この製法により加工作製された加工工具によれば、非常に鋭利な刃先を有し、切れ味がよく、黒鉛だけでなく、切れ味を必要とするアルミニウム合金などの高精度加工の用途にも用いることが可能である。
以下、本発明にかかる加工工具の製造方法及び加工工具の一実施形態を、図1から図3を参照しながら説明する。ここで、図1は本発明の製造方法により製造されたソリッドタイプのエンドミルまたはドリルを示す(a)が外観図、(b)が外周刃を示す拡大図、図2及び図3はエンドミルまたはドリルの製造装置を示す概略構成図である。なお、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
本実施形態におけるエンドミルまたはドリル(加工工具)1は、図1に示すように、ほぼ円柱棒状を有し、超硬合金材料で構成された基体2と、この基体2を被覆する被覆膜3とを有したダイヤモンドコーティング工具である。
上記基体2は、ほぼ円柱棒状であって一端に刃部4が形成されている。この刃部4には、螺旋状に切屑排出溝5が周方向等間隔で複数形成されている。また、刃部4には、切屑排出溝5のうちエンドミルまたはドリル1の回転方向を向く壁面と刃部4の先端面との交差稜線である切刃6が形成されている。
上記被覆膜3は、例えばCVD法などの気相法で合成されたダイヤモンドで構成されており、基体2のうち少なくとも刃部4を覆っている。
なお、エンドミルまたはドリル1は、超硬合金材料からなる母材を研削することによって形成される。
また、本実施形態における被覆膜3は、図2及び図3に示す加工装置10により加工される。加工装置10は、図2及び図3に示すように、紫外線レーザ光を出射するレーザ光源11と、被覆膜3が形成された基体2を保持する保持手段12と、保持手段12が載置されたステージ13とを備えている。
レーザ光源11は、例えば固体レーザであるNd:YLFやNd:YAGレーザ光の波長の1/4程度である波長262nmや266nmの紫外線レーザ光UVを出射する構成となっている。そして、レーザ光源11と保持手段12により保持された基体2との間には、その出射側に焦点レンズ21が設けられている。焦点レンズ21は、図2及び図3に示す矢印A1方向のように紫外線レーザ光UVの光軸方向で移動可能となっており、紫外線レーザ光UVの焦点位置を変更する構成となっている。また、紫外線レーザ光UVの光軸上には、紫外線レーザ光UVを遮光して加工装置10の外部に紫外線レーザ光UVが漏洩することを防止するダンパ22が設けられている。
上記保持手段12は、ステージ13上に載置、固定されており、基体2を保持する回転保持部25と、回転保持部25が載置されたX軸移動部26と、X軸移動部26が載置されたY軸移動部27とを備えている。
上記回転保持部25は、基体2をその両面がステージ13の上面に対してほぼ垂直となるように保持している。そして、回転保持部25は、図2及び図3に示す矢印A2方向のように、基体2をその中心軸を回転軸として回転可能に保持している。
上記X軸移動部26は、図2及び図3に示す矢印A3方向のように、回転保持部25をステージ13の上面内の一方向であるX軸方向に移動可能に保持している。
上記Y軸移動部27は、図2及び図3に示す矢印A4方向のように、X軸移動部26をステージ13の上面と平行な水平面内の一方向であってX軸と直交するY軸方向に移動可能に保持している。
上記ステージ13は、平面視でほぼ円形を有しており、図2及び図3に示す矢印A5方向のように、その中心軸を軸回りとして上面の面内で回転可能となっている。
次に、エンドミルまたはドリル1の製造方法について説明する。
まず、超硬合金材料で構成された円柱棒状の母材を研削する。これにより、刃部4を有する基体2を形成する。そして、研削された基体2のうち少なくとも刃部4の表面にCVD法によりダイヤモンドで構成された被覆膜3を形成する。
次に、図2及び図3に示す加工装置10を用いて被覆膜3を加工する。
まず、被覆膜3が形成された基体2を回転保持部25で固定する。そして、レーザ光源11を駆動し、例えば図2及び図3に示すように、焦点レンズ21を紫外線レーザ光UVの光軸方向(図2及び図3に示す矢印A1方向)で移動させ、紫外線レーザ光UVを平面視でステージ13の中心と重なる位置で集光させる。
この状態で、ステージ13を中心軸の軸回りで回転させると共に、X軸移動部26及びY軸移動部27により回転保持部25で保持された基体2を水平面内(図2及び図3に示す矢印A3〜A5方向)で適宜移動させる。このとき、紫外線レーザ光UVが照射面に対してほぼ直交するように基体2を移動させる。
そして、基体2の切刃6を被覆する被覆膜3に紫外線レーザ光UVを照射する。このとき、ステージ13、回転保持部25、X軸移動部26及びY軸移動部27により基体2を適宜移動させながら、図4に示すように被覆膜3に対する紫外線レーザ光UVの照射位置を変更する。ここで、図4は、基体2の刃先部分を示す拡大図である。
なお、被覆膜3の照射面における紫外線レーザ光UVの照射幅は、例えば20μmとなっている。また、紫外線レーザ光UVを刃先部分に対してほぼ垂直となるように照射するため、紫外線レーザ光UVのエネルギーが照射領域に対して効率よく与えられる。
これにより、紫外線レーザ光UVの照射領域における被覆膜3の表層が除去される。そして、図4に示すように、紫外線レーザ光UVの照射位置を移動させることで紫外線レーザ光UVを照射した部分における被覆膜3の表層を除去して平坦化し、切刃6の刃先形状を鋭利にする。
以上のようにして、エンドミルまたはドリル1を作製する。
ここで、CVD法により形成されたダイヤモンドからなる被覆膜を表面に形成した丸棒状の超硬合金素材に対して紫外線レーザ光UVを照射した際の表面形状のSEM像を図5に示す。なお、図5では、丸棒状の超硬合金素材に対して照射幅が20μmで走査するように紫外線レーザ光UVを照射している。図5に示すように、紫外線レーザ光UVを照射することで、加工面の表面が平坦化されていることがわかる。これにより、切刃6の先端形状を鋭利にすることが可能となる。
以上のようなエンドミルまたはドリルの製造方法によれば、紫外線レーザ光UVの照射により基体2及び被覆膜3の加熱を抑制して切刃6の刃先部分を鋭利に加工することができる。そして、このようにして製造されたエンドミルまたはドリル1を用いることで、切れ味を必要としない黒鉛などの加工用途だけでなく、切れ味を必要とするアルミニウム合金などの高精度加工も可能となる。また、262nmや266nmの紫外線レーザ光UVを照射することで、紫外線レーザ光UVの吸収による基体2及び被覆膜3の加熱をより確実に抑制できる。
ここで、紫外線レーザ光UVを加工面に対してほぼ直角に照射するので、紫外線レーザ光UVのエネルギーが有効に活用され、効率のよい加工が行える。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
例えば、加工工具としてエンドミルまたはドリルを挙げているが、切刃が形成された基体のうち少なくとも切刃をダイヤモンド膜の被覆膜で被覆していれば、例えばインサートなど他の加工工具であってもよい。ここで、被覆膜は、基体の表面全体を被覆しているが、少なくとも切刃を被覆していればよい。
また、262nmや266nmの紫外線レーザ光を照射しているが、基体及び被覆膜を加熱せずに加工できれば、他の波長の紫外線レーザ光を照射してもよい。
そして、被覆膜が形成された基体を移動させることにより紫外線レーザ光の照射位置を変更しているが、被覆膜に対する紫外線レーザ光の照射位置を変更できればよく、レーザ光源を移動させることにより照射位置を変更してもよい。
次に、上記実施形態の加工工具の製造方法により実際に工具を加工した実施例について、図6から図8を参照して説明する。
この実施例では、実際に紫外線レーザにより上記加工を行った前後のダイヤモンド膜のラマンシフトを測定して比較した。
本発明のレーザ加工前では、図6に示すように、スペクトルにシャープなダイヤモンドのピークが現れている。本発明の加工工具の製造方法により、波長262nm(4倍波)の紫外線レーザによって加工すると、図7に示すように、シャープなダイヤモンドのピークは加工前と変わらず、良好なダイヤモンド膜のままであることがわかる。これに対して、波長524nmのGreenレーザで加工すると、図8に示すように、スペクトルはブロードになり、ダイヤモンド状カーボンのピークと思われる緩やかなピークが1500cm−1付近に現れている。このように、Greenレーザ加工では、ダイヤモンドが少なくとも一部、相変態してしまっているのに対し、本実施例の紫外線レーザ加工では、良好なダイヤモンド膜が維持されていることがわかる。
本発明に係る加工工具の製造方法及び加工工具の一実施形態において、エンドミルまたはドリルを示す概略的な外観図及び拡大図である。 本実施形態において、被覆膜を加工する加工装置を示す概略平面図である。 本実施形態において、被覆膜を加工する加工装置を示す概略正面図である。 被覆膜に紫外線レーザ光を照射したときの加工状態を示す説明図である。 本発明の製造方法により加工された被覆膜の表面状態を示すSEM像である。 本発明に係る加工工具の製造方法及び加工工具の実施例において、レーザ加工前のダイヤモンド膜のラマンシフトを示すグラフである。 本発明に係る加工工具の製造方法及び加工工具の実施例において、紫外線レーザ加工後のダイヤモンド膜のラマンシフトを示すグラフである。 本発明に係る加工工具の製造方法及び加工工具の従来例において、Greenレーザ加工後のダイヤモンド膜のラマンシフトを示すグラフである。
符号の説明
1…エンドミルまたはドリル(加工工具)、2…基体、3…被覆膜、6…切刃、UV…紫外線レーザ光

Claims (4)

  1. 切刃が形成された基体と、ダイヤモンドで構成されて前記切刃を被覆する被覆膜と、を有する加工工具の製造方法であって、
    前記切刃を前記被覆膜で被覆する工程と、
    該被覆膜に紫外線レーザ光を照射して加工する工程と、を備えることを特徴とする加工工具の製造方法。
  2. 前記紫外線レーザ光の波長が、266nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の加工工具の製造方法。
  3. 前記紫外線レーザ光を、加工面に対してほぼ直角に照射することを特徴とする請求項1または2に記載の加工工具の製造方法。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の加工工具の製造方法により製造されたことを特徴とする加工工具。
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