JP2015528059A - 超伝導高周波空洞の電気化学システム及び電解研磨方法 - Google Patents

超伝導高周波空洞の電気化学システム及び電解研磨方法 Download PDF

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Abstract

フッ化水素酸不含低粘度電解質溶液と、この電解質溶液と接触している電極と、電極から離間し、電解質溶液及び電源と接触している超伝導高周波空洞とを含み、電源は電極に電気的に接続された第1電線と、空洞に電気的に接続された第2電線とを備え、電極と加工物との間に電流を流すように形成され、電流はアノードパルスとカソードパルスとを含み、カソードパルスはアノードパルスの少なくともいくつかの間に挿入される超伝導高周波(SCRF)空洞用の電気化学的仕上げシステム。超伝導高周波空洞は仕上げ加工の際に垂直に向けられている。

Description

本発明は、エネルギー省フェルミ国立加速研究所注文書番号594128のもとで開発された。
本願は、金属及び金属合金の中空体の電気化学的加工又は研磨、特にスーパーコライダに用いられるタイプの空洞のような超伝導高周波空洞の表面仕上げに関するものである。
超伝導高周波空洞用の最も一般的な加工技術は、スタンピングにより高純度ニオブシートから薄い殻(例えば約1〜3mm)のシェル部材を形成することである。これらのシェル部材は、中空空洞を形成する用に溶接される。不均一な電解研磨をもたらすガスポケット及び気泡巻き込みの悪影響を避けるために、特許文献1(Siemens社)に開示されたような水平空洞の水平加工が開発された。超伝導高周波空洞の水平加工に用いられる装置の概念図を図10に示す。超伝導高周波空洞100は、水平に配置され、一対の回転自在なエンドキャップ120上に設置される。エンドキャップの1つは導電性外周面140を含む。カソード160は空洞100を通過する。図示された実施形態においては、超伝導高周波空洞は、図に示された本体中央の大径部により模式的に表された単一セルを含む。カソード160はカソードリード440により整流器400に電気的に接続される。整流器400のアノードリード420は、超伝導高周波空洞100に電気的に接続された導電性回転表面140に接続される。空洞100は粘着性電解質320により部分的に充填される。電解質320は、空洞100に電解質を分配する電解質フィードチューブ340を通してタンク300から供給される。電解質はセル100内を連続的に循環される。電解質はリターンチューブ360を通してセルから回収される。セル100中の電解質320の量は、電解研磨の工程中に発生するガスを含む。このガスは、220で模式的に示されたベントによりこの空間からパージされる。ガスパージ200は、セル100の反対側のエンドキャップ120Aで実施される。空洞は、エンドブロック120上で図中に示された矢印方向Aに回転される。
ニオブのような電解研磨不動態化金属にしばしば用いられる媒体の1つはフッ化水素酸である。ここで説明されているように、これらの不動態化金属と共に用いられる電解質は高粘性となる傾向があり、これは上述された水平加工設計の使用が要求されるガス巻き込みの問題をもたらす。したがって、ニオブ及び他の強不動態化金属の研磨方法、特に高粘性電解質の使用に要求されない超伝導高周波空洞の表面仕上げの使用が必要である。
Inmanによる特許文献2において詳細に説明されているように、電気化学的研磨、電解的研磨又は電解研磨は、金属(M)が下記式の電気化学反応により表面から選択的に除去される工程である。
→Mn++ne 式1
図1に示されているように、電解研磨中に、対象表面の凹所又は谷間よりも表面のピーク又は隆起が優先的に除去されるように、電流分布が制御される。図2に描かれた第1の又は幾何学的な電流分布の場合においては、カソードから表面隆起までの抵抗性経路長(Ωp)は、カソードから凹所までの距離(Ωr)よりも短い。その結果、ピークが優先的に分解される。ピークと凹所との電流分布の相違は電解質抵抗の上昇とともに大きくなる。高抵抗性電解質及び低電解質温度はピークと凹所との電流の相違を増大させる。温度低下は抵抗を上昇させる。
図3に描かれた第3の又は質量移動制御された電流分布の場合においては、ピークからバルク溶液までの拡散距離(Dp)は凹所からバルク溶液までの拡散距離(Dr)よりも小さい。拡散限定された電流がピークから拡散する電解金属イオン又はピークに拡散するアクセプタイオンのいずれかに基づくものであることを当業者は理解するであろうから、ピークにおける金属分解用の拡散限定電流は凹所における拡散限定電流よりも高い。その結果、ピークが優先的に分解される。ピークと凹所との拡散限定電流分布の相違は粘性溶液のものよりも高い。粘性溶液は拡散工程を鈍化する効果を有する。その結果、高粘性電解質(例えば約15〜30cP)及びより高粘性を得るための低温(例えば10℃〜30℃)はピークと凹所との電流の相違を増大させる。その結果、D.Wardによる非特許文献1に記載されているように、低温で操作するある場合においては、上記システムに用いられる電解研磨溶液は一般に高抵抗(例えば10mS/cm〜200mS/cm)及び高粘性(例えば約15cP〜30cP)溶液である。
強結合不動態化層により示される障害にもかかわらず、ニオブ及びニオブ合金のような金属の電気化学加工の様々な技術が開発されている。これらの技術においては、高抵抗及び高粘性電解質に加えて、一般に高電圧及び/又は電解質溶液中のフッ化水素酸が要求される。上記式1に示された反応を行う電気化学的条件は不動態化酸化物を形成する下記反応をも行う。
+xHO→MOx+2xH+2xe 式2
非水系又は最小水系電解質中の電解研磨により、これらの不動態化酸化物を形成する酸素源が除去される。しかしながら、低含水率は追加の制御により維持される。実質的な水の存在下においても、酸化物が電解研磨に干渉しないように、本発明による逆流パルス条件の使用により不動態化酸化物の層が形成される。
米国特許第4,014,765号 米国特許出願第2011/0303553号
D. Ward "Electropolishing" in Electroplating Handbook ed. L. Durney 4th edition pg. 108, Van Nostrand Reinhold, New York (1984) A. Lozano-Morales, A. Bonifas, M. Inman, P. Miller and E.J. Taylor, J. Appl. Surf. Finish., 2 (3), 192-197 (2007) J.J. Sun, E. J. Taylor, R. Srinivasan, J. Materials Processing Technology, 108 356-368 (2001) L. Lilje, E. Kako, D. Kostin, A. Matheisen, W.-D Moller, D. Proch, D. Reschke, K. Saito, P. Schmuser, S. Simrock, T. Suzuki, and K. Twarowski, Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 524 1-12 (2004)
本発明の一態様は、ガス巻込みなしに空洞を加工し得る、比較的低粘性のフッ化水素酸不含電解質を用いるSCRF空洞の電解研磨方法である。他の態様によれば、SCRF空洞は垂直方向に加工される。本発明の他の態様は、空洞の回転又はガスパージを必要とせず、特許文献1に開示された水平加工システムの他の欠点を解消する工程である。他の態様は、SCRF空洞に要求される、コスト効率がよく、増減自在で、高収率な工程をもたらす中空ニオブ体を研磨する工程である。
本発明によれば、SCRF空洞の高不動態金属表面の仕上げにおいて、フッ化水素酸及び/又はフッ化塩を必要とせず、水素の効果を低減するために、電気的アプローチが用いられる。電気的工程は、電解的に無害であり、速度及び投資に関する利点を保持する。表面を研磨するために、加工片を横切る電解質の流速に依存して波形が選択される。表面粗さが低減され、マクロ粗さがミクロ粗さに低減されるにしたがって、必要に応じて波形を変更してもよい。これらの異なる波形は整流器内でプリプログラムされる。
他の態様においては、開示された方法に、任意に電解質水溶液としてもよいフッ化水素酸不含電解質溶液を加工片と電極との間に配置し、加工片と電極との間に電流を通すステップを含んでもよく、電流はアノードパルス及びカソードパルスからなり、カソードパルスは少なくともいくつかのアノードパルスの間に挿入される。
他の態様においては、電解工程において生じる酸素バブルの放出を促進するために、電解質溶液はTriton-Xのような界面活性剤を含む。
開示された電気化学的加工システム及び方法の他の態様は以下の記載、図面及び請求項から明らかになるであろう。
電解研磨の概念図である。 抵抗性電解質による電解研磨の概念図である。 粘性電解質による電解研磨の概念図である。 開示された電気化学的加工システムの一実施例の概念図である。 図4の電気化学的加工システムに関連して用いられるアノードパルス−カソードパルス波形のグラフである。 異なる電解質中における金属の分極曲線の一例である。 異なる電解質中におけるニオブの二電極分極曲線である。 (a)Vf=20V,(b)Vf=30V,(c)Vf=40Vを用いた、周囲温度(20℃以下)での31重量%HSOの電解質中における電解研磨後のニオブの平均表面粗さに対するVfの効果を示すグラフである。 Vf=30V,Vr=8V,周波数=1000Hz,Df/Dr=10%/90%,異なるRaoを用いた、室温(20℃以下)での31重量%HSOの電解質中における電解研磨後のニオブの平均表面粗さに対する時間の効果を示すグラフである。 従来技術に開示されているような水平加工する電解研磨装置の概念図である。 一実施形態のSCRFCを垂直加工する電解研磨装置の概念図である。 他の実施形態の複数空洞SCRFCを垂直加工する電解研磨装置の概念図である。
Inmanによる特許文献2は参照としてここに含まれている。
ここで用いられているように、「電気化学的加工」は、除去の範囲にかかわらず、加工片から材料の除去を含む電気化学的工程を広く意味する。例えば、電気化学的加工には、電化学的研磨、電気化学的エッチング、電気化学的マスク透過エッチング、電気化学的成形、電気化学的バリ取り等が含まれる。
ここで用いられているように、「フッ化水素酸不含」は、フッ化水素酸と同様にフッ化物酸及び塩を実質的に含まないように処方された電解質を含む。
図11及び図12は、超伝導高周波空洞が垂直に配置され電解研磨される本発明の2つの実施形態を概念的に示す。図11において、空洞100は単一セルを含み(図10と同様)、図12において、空洞500は複数(9つの)セルを含む。カソード160はセル100及び500内で垂直に配置され、エンドブロック120により保持される。エンドブロック120は、図10に示されたエンドブロックとは異なり、回転するように設計されておらず、電解研磨工程の間に生じるガスをパージする手段を含まない。これは使用された粘度である必要がないため、表面仕上げ工程に干渉しないように、工程の間に生じた酸素ガスが電解質中に容易に分散される。カソード160は整流器400のカソード440に電気的に連結される。セル100/500はエンドプレート120により整流器400のアノード420に電気的に連結される。電解質300は、フィードチューブ340により電解質フィードタンク300から空洞100/500の底部に導入される。空洞100/500の上部において、空洞からエンドキャップ120を経て電解質リターンチューブ360を通して電解質が排出される。
電解研磨工程の間に電解質が補給されるように、空洞を通過する電解質の流れが調整される。
電源又は整流器は電極と加工物との間に電流を通すように構成され、電流はアノードパルスとカソードパルスからなり、カソードパルスは少なくともいくつかのアノードパルス間に挿入される。電解質は、フッ化水素酸及び/又はフッ化物塩を含まないことを特徴とする。一実施形態においては、70重量%以下の硫酸水溶液である。ある実施形態においては、電解質中の含水量は5重量%超又は10重量%超又は20重量%超又は70重量%超である。
ここに開示された電解質溶液は、強結合不動態化層を有する傾向がある他の金属及び合金を含む他の金属及び合金と同様に、ニオブ及びニオブ合金を電気化学的に加工するために、アノードパルス−カソードパルス波形とともに用いられる。例えば、開示された電解質溶液は、ニオブ及びニオブ合金、チタン及び(チタンモリブデン合金、ニチノールとしても知られているチタンニッケル合金のような)チタン合金、ジルコニア及びジルコニア合金、ハフニウム及びハフニウム合金、タンタル及びタンタル合金、モリブデン及びモリブデン合金、タングステン及びタングステン合金を電気化学的に加工するために、アノードパルス−カソードパルス波形とともに用いられる。他の実施形態においては、この工程は、血管のような医療用途及び他のステントに用いられるタイプのコバルトクロム合金を研磨するために用いてもよい。
一実施形態において開示されたフッ化水素酸不含電解質溶液は、約1cP〜15cP又は約1cP〜8cP又は約1cP〜4cPの粘度のような低粘度を有する電解質であってもよい。特別の実施形態においては、低濃度、例えば約1重量%〜70重量%、特に約15重量%〜40重量%、さらに特に約20重量%〜40重量%の硫酸からなる水溶液であってもよい。本発明の他の実施形態においては、硫酸/クロム酸/リン酸、リン酸/クロム酸、リン酸/硫酸、リン酸、リン酸/硫酸/クロム酸、リン酸/硫酸/塩酸、硫酸/グリコール酸、リン酸/硫酸、硫酸/クロム酸、硫酸/クエン酸及び他の酸の組み合わせのような他の酸、フッ化水素酸及びフッ化物及び塩不含電解質を用いてもよい。一般的には、200mS/cm超又は400mS/cm超又は600mS/cm超又は800mS/cm超のような高導電率を有する電解質を選択することが望ましい。
本発明の一実施形態においては、上記のような実質的に水を含む水性電解質を用いてもよい。しかしながら、他の実施形態は、水を15%未満、10%未満又は5%未満含む非水性又は最小水性電解質を用いてもよい。含水電荷質を用いる場合、以下の式に基づいて酸素が発生する。
O→2H+O+2e 式3
界面活性剤の添加が電解研磨を促進することが見出されている。この理由の1つとしては、界面活性剤が電解質の攪拌による拡散工程に影響を与えない小さな泡の形成を促進するためである。このため、Triton X(ポリエチレングリコールp−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニルエーテル(Rohm and Haas社製)のような従来の界面活性剤を従来の量で用いてもよい。
図4を参照すると、符号200で示された電気化学的加工システムの一実施形態は、タンク204及びカバー208で定義された加工チャンバー202、電解質保持タンク222、導管218、ポンプ220、電極304、加工物302、電源228及び電解質溶液を含む。加工チャンバー202は、重力排水管206により電解質保持タンク222に流体連通される。加工チャンバー202から電解質保持タンク222に流れる電解質溶液を濾過するためにフィルター224が排水管206に連結される。加工チャンバー202は導管218により電解質保持タンク222に流体連通され、ポンプ220は矢印234により示されているように電解質保持タンク222から加工チャンバー202に電解質溶液を送り出す。
加工チャンバー202内では、電解質溶液を電解質保持タンク222に排出し得るように、タンク204の壁面及び底部から十分に離間して加工物ホルダー210がタンク204の底部近傍に配置される。加工物302は加工物ホルダー210に支持され、電源228の第1電線302に連結される。
加工物302は電気化学的に加工し得る装置又はものであってもよい。一実施形態においては、加工物は医療用ステントであってもよい。他の実施形態においては、歯科用インプラントであってもよい。他の実施形態においては、線形粒子加速器の構成要素である超伝導高周波空洞であってもよい。第1態様において、加工物26は金属又は合金から形成され又は金属又は合金を含む装置又はものであってもよい。第2態様においては、加工物は強結合不動態化層を形成する金属又は合金から形成され又は金属又は合金を含む装置又はものであってもよい。強結合不動態化層を形成する金属又は合金の例示には、ニオブ、チタン及びタンタルが含まれる。第3態様においては、加工物はニオブ又はニオブ合金から形成され又はニオブ又はニオブ合金を含む装置であってもよい。例えば、加工物は粒子加速器内の超伝導高周波空洞を定義するニオブ構造又はニオブ構造の一部であってもよい。第4態様においては、加工物はチタン又はチタン合金から形成され又はチタン又はチタン合金を含む装置又はものであってもよい。例えば、加工物はレジスト材料を塗工したニチロールチューブであってもよく、このレジスト材料は電気的加工後に外科用ステントを定義するように作られている。他の態様においては、加工物はコバルトクロム合金から形成され又はコバルトクロム合金を含む装置であってもよい。
電極ホルダー214は加工物ホルダー210上の加工チャンバー202内に配置される。電極ホルダー214には導管218により電解質溶液が供給される。電極304は電源228の第2電線232(第1電線302とは反対の極性)に連結され、ツールホルダー214が電極フィードコントローラー226の制御下垂直軸方向に電極304を移動するように、電極ホルダー214により支持される。
特別な一態様においては、電極304は中心孔を含み、電極304は、電極304の中心孔が加工物302に向けられるように、電極ホルダー214に連結される。電気化学的な工程の間に、電解質溶液はポンプ220により導管218を通して電解質保持タンク222から電極ホルダー214を経て電極304に送り出される。電解質溶液の流速はEvとして表現される。電解質溶液は電極304の中心孔を通して流れ、排管206を通して電解質保持タンク222に戻る前に、電極304と加工物302との間に存在する。電源228は、開示されたアノードパルス−カソードパルス波形にしたがって、第1電線230及び第2電線232を通して加工物302及び電極304に電流を供給する。
工程の間の電極から加工物302までの距離は最適化パラメータを考慮し、他の要因のうちの電解質溶液の組成及び実施される電気化学的加工のタイプに依存する。例えば、電極から加工物までの距離は、電気化学的成形工程の間では約0.5〜20ミリメータ又は特に0.5〜10ミリメータ、電気化学的研磨工程の間では約5〜12ミリメータ及び電気化学的バリ取り工程の間では約5〜50ミリメータの範囲である。
図5Aに示されるように、符号50で示されたアノードパルス−カソードパルス波形は、複数のアノードパルス52と複数のカソードパルス54を含む。特別な一実施形態は図5Bに示される。
波形の期間Tは、アノードオン時間t、カソードオン時間t、緩和時間t及び中間時間tの合計(T=t+t+t+t)である。波形の期間Tの逆数(1/T)は波形の周波数fである。期間Tに対するアノードオン時間tの比率(t/T)はアノードデューティー周期Dであり、期間Tに対するカソードオン時間tの比率(t/T)はカソードデューティー周期Dである。アノードオン時間t及びカソードオン時間tの間の電流密度(すなわち、電極の単位面積当たりの電流)はそれぞれアノードピークパルス電流密度及びカソードピークパルス電流密度として表現される。アノード電荷移動密度Qはアノード電流密度I及びアノードオン時間tの積(I)であり、カソード電荷移動密度Qはカソード電流密度I及びカソードオン時間tの積(I)である。
アノードパルス−カソードパルス波形の第1実施形態においては、アノードピーク電流Iは約2〜6A/cmの範囲であり、カソードピーク電流Iは約8〜15A/cmの範囲である。
他の実施形態においては、アノードパルスの電圧及びオン時間は、上記式2によりカソードデューティー周期の間に効果的に除去できない不動態化層の厚さを計算することなく、上記式1により表面におけるミクロピークから金属を除去するように調整される。したがって、アノード電圧及びオン時間は、カソードパルスにより除去できる量の不動態化酸化物のみを生成しつつ、ミクロピーク上の金属を酸化するように調整される。不動態化酸化物層が除去できないと、研磨が妨げられ又は終了される。適切な条件は金属の性質に応じて変更されるであろう。一実施形態においては、比較的短いアノードパルスtは、一般に約0.01ms〜約100ms、好ましくは約0.05ms〜約10msであり、アノードデューティー周期は、約1〜60%又は約5%〜約60%、好ましくは約1〜40%又は約10%〜約40%である。カソードパルスtは、約0.01ms〜約900ms、好ましくは約0.1ms又は約0.5ms〜約90msのパルス幅を有し、デューティー周期は、約40%〜約99%又は約95%、好ましくは約60%〜約99%又は約90%である。緩和時間tは約0〜約600msの範囲であり、中間オフ時間tは約0〜約1000msの範囲である。波形50の周波数fは約1Hz〜約5000Hz、好ましくは約10Hz〜約2000Hz、より好ましくは約100Hz〜約2000Hz又は約100Hz〜約1000Hzの範囲である。
この時点で、加工物から均一に金属を除去し、加工物の適合度をより正確にするように、パルス波形50のパラメータが選択されると当業者は認識するであろう。また、加工物表面で発生した水素を低減又はアノード消費し、不均一酸化物膜の効果を低減又は除去するために、電界が用いられる。アノードピーク電流I、アノードオン時間t、カソードピーク電流I、カソードオン時間t、緩和時間t及び中間オフ時間tは、これらの目的を達せするための他の要因のうちの加工物26の組成、電極の組成、電解質溶液の組成及び実施する電気化学的工程のタイプに応じて変更してもよい。さらに、開示されたシステム及び方法の環境下で電圧及び電流は比例し、これにより、電圧を制御するのに実用上便利であるが、図5の縦軸が電流又は電圧のいずれかを示していることを当業者は認識するであろう。さらに、波形50は示されているような長方形である必要はない。アノードパルス及びカソードパルスはいずれかの電圧−時間(又は電流−時間)プロファイルを有する。長方形のパルスは単に簡略化されているにすぎない。また、パルス列の始点として選択される時点が完全に任意であると当業者は認識するであろう。アノードパルス又はカソードパルスのいずれか(又はパルス列中のいずれかの点)は始点と見なされる。アノード開始パルスによる表示は議論において簡略化をもたらす。一実施形態によれば、カソード電圧は約4〜40ボルト又は約4〜15ボルト又は約8〜35ボルト又は約6〜12ボルトであり、一実施形態においては約35ボルトである。これは、4ボルト以下のカソード電圧が好適な強不動態化金属から加工物が作製されていない方法とは対照的である。カソード電圧は強不動態化材料の表面を脱不動態化するために用いられる。カソード電圧は4ボルト超必要であり、当業者は所望の電気化学的溶解、すなわちエッチング及び/又は研磨に必要なアノード電圧を測定することができる。
特別な理論に限定されることなく、アノードパルス間へのカソードパルスの挿入は初期の酸素をカソード消費又は酸化物膜をカソード低減し、不均一な酸化物膜の形成に起因する悪影響を低減又は削除する効果を有する。その結果、次のアノードパルスが負荷されたときに、形成された不動態化層が容易に破壊され、これにより、下地金属の腐食を防ぐ傾向のある不導態の局所的な島がほとんど形成されない。
純度99.9%のニオブ箔をペンシルバニア州OakdaleのGoodFellow社から購入し、電解研磨に用いるために2つの異なるクーポンサイズに切断した。最終的なクーポンサイズは、1)25.4mm×25.4mm×3mm、2)30mm×10mm×3mmであった。
簡単で効果的で費用対効果の高いスクリーニング方法としては、分極曲線が対象の電解質を選択するために用いられる。図6において、曲線1は活性金属の挙動を示し、曲線2は不動態化金属の挙動を示す。電界が負荷される前に、電解質中に浸漬された金属アノードは定常状態電圧(Ess)を有する。電力が負荷されると、電極電圧はEssからEab(破壊電圧)にプラス方向にシフトする。Eabを超えると、アノードで生じる分解反応に起因して電流密度が急激に上昇する(AB領域)。限定電流密度Ilimに到達すると、アノード金属の分解速度の上昇が止まり(BC領域)、金属原子が金属イオン及び活性アニオンとの化合物を形成し、電解質中に移動する。限定電流密度Ilim及びΔEに対するΔIの比率(分極曲線上のABの傾斜)はそれぞれ金属分解速度及び電解質中の電流効率として表現される。BC領域においては、電流密度は一定に保たれ(曲線1)又は金属イオンの除去速度を限定する質量移動現象を示す低い値に落ち込む(曲線2)。金属分解物は溶解度の限界に達し、電極表面上にゆるい析出又は不動態膜を形成する。金属分解が不動態電解質中で行われると、不動態膜が電解質中を通過する金属イオンより速く成長し、その結果、電流密度が低い値に落ち込む(曲線2)。一般的に、限定電流は、反応物の溶解度の低下に起因して、電解質濃度の上昇に伴って低下する。限定電流は拡散に強く関わるため、電解質流速の増加によりパルス/パルス逆工程において増加する。アノード電圧が分極曲線のCD領域まで上昇すると、高電圧が不動態膜及び析出を分解又は除去し、電流密度を上昇するために金属のイオン化速度を上昇させる。
異なる電解質における金属光沢及び平滑性は分極テストから直接観測され、エッチング工程における電解質の効果に関する情報が得られる。分極曲線のAB領域においては、金属が腐食される。表面上の様々な微視的領域の異なる分解速度のため、金属表面粗さは高い。金属表面は、曲線1の場合と同様に高アノード電圧(BC領域)で平滑化又は均一研磨される。アノード電圧がCD領域に到達すると、高電圧での金属分解は(細線、筋及びくぼみのような)微小欠陥を有する研磨表面をもたらす。最適な分極曲線は、(1)低破壊電圧(Eab)を示し、(2)ΔI/ΔEの高比率を有し、(3)平滑及び光沢表面を提供する。
Nbクーポンを電解研磨するパルス/パルス逆工程を可能とする電解質を選択するために、DC分極研究が行われた。異なる電解質タイプ及び濃度のNbの電気化学的活性(例えば総電流密度)を研究するために、二電極DC分極研究が25.4mm×25.4mm×3mmのNbクーポン上で実施された。カソードとしてプラチナ塗工Nbメッシュが用いられた。全ての分極曲線実験は室温(20℃以下)で行われた。この研究のためにTecNuパワーサプライ(Model SPR-300/100/48-3)が使用された。セル電圧は1分当たり5ボルトの増加量で上昇した。総電流密度はFLUKE 196C Scopemeterカラーシステムに記録されたオシロスコープ結果から読み取られた。
図7は異なる電解質200及び300g/L塩化ナトリウム(NaCl)、31重量%硫酸(HSO)、200g/L臭化ナトリウム(NaBr)、50g/Lフッ化ナトリウム(NaF)及び21重量%リン酸(HPO)中のNb基材の電気化学的活性を要約している。全ての場合にNbの破壊は観測されず、測定された電流は水酸化(2HO→O+2H+2e)及びNbアノード酸化と関連すると仮定される。70Vまでの電圧を観測された最高及び最低総電流密度はそれぞれ31重量%HSO及び50g/LNaF電解質中であった。
このデータはNb酸化物膜の引張り強さを示し、DC分極研究はフッ化Nbの電解研磨におけるパルス/パルス逆波形の有効性をテストするために、水素酸を用いることなく酸化物膜を破壊する必要のある状態で光を放つことができない。図4に示されたように可変硫を有する電気化学セルが用いられる。従来技術に記載されたように、不動態金属及び合金の金属除去を好適に実施するために、可変流チャンネルセルが用いられる。電解質流の利点は、Nbイオン、熱及び(主に水電解質から発生する酸素及び水素に起因して得られる)泡のような電解研磨される基材の表面からの不要な副産物の除去である。
従来技術で報告されたように、300g/LNaCl電解質は、ニッケル系合金及びステンレス鋼のような異なる不動態金属のプラス/プラス逆電解研磨に好適に用いられ、これにより、Nbの電気化学的活性を最初に研究するために用いられた。実験セットの最初の設計は、MINITAB(登録商標)と呼ばれる統計ソフトウエアを用いて開発された。周波数、デューティー周期及び逆(カソード)電圧は各変数について3段階で変えられる。三つの異なる周波数は、3つの異なるフォワード(アノード)デューティー周期(D=10,50及び90%)及び3つの異なる逆電圧(V=2,4及び8V)で10,100及び1000Hzであった。アノードと同サイズのNbクーポンをカソードとして用いた。電解質速度は12m/sで一定に保たれ、48Vのフォワード(アノード)電圧(V)は周囲温度(20℃以下)の全ての実験において用いられた。電解質の温度は制御されなかった。それぞれの場合における総実行時間は10分間であった。
均一なエッチングは300g/LNaCl中で達成されなかったが、クーポンの端部でNbが破壊され、電解質流がセルに出入りした証拠があった。酸化物も電気化学的活性を示す表面上に形成された。これらの酸化物は、スコッチブライトパッド、石けん及び水を用いて除去できる程度で、強靱ではなかった。しかしながら、高電解質流及び極狭電極間ギャップは現実的に収容されそうにない。
31重量%HSO中の初期の実験においては、一定のパラメータは、電解質速度(E)=0.4m/s、V=20V、V=8V、実行時間=10分間、アノード−カソード距離=5mm、周囲温度(20℃以下)である。低流量チャンネルセルは内蔵温度制御を有していなかったため、電解質温度は27℃の開始温度から各実験終了の約27℃まで上昇した。従来の電解研磨においては、Nb基材上のエッチングピットを防ぐために、40℃を超える温度は避けなければならない。実験セットの設計はMINITAB(登録商標)を用いて行われた。2つの異なるデューティー周期(Dr=10及び90%)の2つの異なる周波数(10及び100Hz)を総実験回数3回で用いた。
Figure 2015528059
=20V及びアノード−カソード距離=5mmを用いて31重量%HSO電解質中で10分間Nbを電解研磨する逆パルス波形を用いた実験の設計
実行1は全くエッチングの証拠を示さなかった。異なる観測色は基材上に形成されたNb酸化物層を表す。実行2は、フッ化水素酸不含電解質中でNb基材が均一に電気化学的にエッチングされたことを示唆するある程度のエッチングを示した。実行3もある程度のエッチングを示したが、実行2に比べて非常に少なかった。
これらの主な結果に基づき、実行2に用いられるパルス/パルス逆波形をさらに調査した。具体的には、実行2と同じ波形パラメータが用いられたが、10分間に代えて37分間クーポンを電解研磨した。約161mmの領域において2.7μm/minの平均除去速度でクーポンから100μmのNbを良好に均一に除去した。
Nb電解研磨性能における20Vから30Vへさらに40VへのV上昇の効果を研究した。全ての場合において、他のパルス/パルス逆工程パラメータを一定:V=8V、周波数=1000Hz、D/D=10%/90%に維持した。図8は最終的なNb表面上のアノードピーク電圧の効果を要約している。最終的な表面粗さは20Vで得られた。Vが30Vまで上昇されると、Nbの最終的な表面は1.38μmから0.29μmに落ち込んだ。40Vで最終的なNb表面が再び粗くなり始め、表面変色が観測された。
Nbの開始表面粗さRa、最終表面粗さRaの効果も、異なるRaの電解研磨時間の研究を行うことにより研究した。図9は、31重量%HSO電解質中におけるRa=0.56μm(実行4)及びRa=1.53μm(実行5)の電解研磨後のNbクーポンの平均表面粗さに対する時間の効果を比較している。より高い開始表面粗さでは、10分後のRaが1.53μmから0.85μmへと顕著に低減した。その後、60分まで電解研磨時間を延ばすことによりRaをさらにRa=0.33μmまで低減した。最終的な表面におけるさらなる低減は50分たっても起きなかった。
したがって、開示されたアノードパルス−カソードパルス波形と共に開示された電解質溶液を用いた電気化学的加工システム及び方法は、他の金属及び金属合金と同様、フッ化水素酸のようなフッ化物酸又は塩を必要とすることなく、ニオブ及びにオブ合金の加工に用いられる。
開示されたニオブ及び他の金属を加工する電気化学的システム及び方法の様々な態様が示され、記載されたが、明細書を読んだ当業者により変更されてもよい。本願はこのような変更を含み、請求項の範囲だけに限定されるものではない。

Claims (12)

  1. 超伝導高周波空洞内に電極を配置する工程と、
    前記電極に対して前記超伝導高周波空洞を垂直に向ける工程と、
    硫酸水溶液を含み、フッ化水素酸を含むまず、15cP未満の粘度を有する電解質溶液を前記超伝導高周波空洞に充填する工程と、
    前記超伝導高周波空洞と前記電極との間に電流を通す工程とを備え、
    前記電流は、複数のアノードパルスと複数のカソードパルスとからなり、
    前記カソードパルスは、前記アノードパルスの少なくともいくつかの間に挿入されることを特徴とする超伝導高周波空洞を電解研磨する方法。
  2. 前記電解質溶液は、約4cP未満の粘度を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記電解質溶液は、約200mS/cm超の導電率を有することを特徴とする請求項2に記載の方法。
  4. 前記電圧及び前記アノードパルスオン時間は、カソードパルスにより効果的に除去される厚さに不動態金属酸化物の形成を限定しつつ、超伝導高周波空洞を研磨するように調整されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
  5. 前記前記電解質溶液は、フッ化物酸又塩を実質的に含まないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  6. 前記カソードパルス電圧は、4V超であることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
  7. 前記電解質溶液は、電解質水溶液であることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
  8. 前記超伝導高周波空洞は、ニオブ及びニオブ合金、チタン及びチタン合金、ジルコニア及びジルコニア合金、ハフニウム及びハフニウム合金、タンタル及びタンタル合金、モリブデン及びモリブデン合金、タングステン及びタングステン合金、クロムコバルト合金からなる一群から選択された金属からなることを特徴とする請求項2に記載の方法。
  9. 前記超伝導高周波空洞は、ニオブ又はニオブ合金からなることを特徴とする請求項8に記載の方法。
  10. 前記電解質は、少なくとも約10%の水を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
  11. 前記電解質は、約1重量%〜70重量%の硫酸を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
  12. 前記電解質は、約20重量%〜40重量%の硫酸を含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
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