JP2011202206A - 不溶性電極及びその製造方法 - Google Patents

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Suketsugu Matsuo
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Abstract

【課題】 チタン又はチタン合金からなる導電性基体の表面に電極活性物質を被覆した不溶性電極において、アノード電流に対してだけでなく、カソード電流に対しても電極寿命を経済的に延長する。
【解決手段】チタン又はチタン合金からなる導電性基体の表面に電極活性物質を被覆する前に、その導電性電極の表面をフッ酸系の電解質溶液を用いた電解酸化処理により多孔質化する。基体の表層部が表面粗度と同じμmオーダー径の粗大孔と表面粗度より格段に小さいnmオーダー径の微細孔との組合せにより複合的に多孔質化される。基体表面に被覆された電極活性物質が表層部内に複雑に且つ長く入り込み、強固なアンカー効果により基体表面に強固に固定される。
【選択図】 図2A

Description

本発明は、長期にわたって電解を継続する必要がある工業用電解又は民生用電解に使用される不溶性電極及びその製造方法に関し、更に具体的には、酸素発生を伴う電解工程(主として亜鉛、錫又は銅の電気めっきやステンレス鋼の表面処理、金属の電解採取)、又は塩素発生を伴う電解工程(主としてイオン交換膜又は隔膜を装着した食塩電解や無隔膜方式の海水電解、クロレート電解、水電解)などに適した不溶性電極及びその製造方法に関する。
従来、鋼板の電気亜鉛メッキや電気錫メッキ、銅箔製造等の酸素発生を伴う電解工程においては、鉛又は鉛合金からなる電極が使用されてきた。これらの電極の使用は、溶出した鉛によるメッキ液の汚染、製造膜質の低下、陽極に析出した鉛による電極劣化等を伴うという問題があった。これらの問題の結果、電解設備を停止せざるを得なくなり、電解設備又は附帯設備の停止に伴う生産性の低下や、メンテナンス作業に要する作業者の労力増加等を含め、安定操業の中断と経済性への影響が問題となっていた。食塩電解、海水電解、クロレート電解、水電解で使用される電極に関しても同様の問題があり、安定操業が可能な長寿命の電極が望まれていた。
このような事情を背景として、鉛又は鉛合金電極に代わるクリーンな酸素発生用電極として、導電性基体上に電極活性物質層を形成した不溶性電極が開発され、種々提案されている。その一つがバルブ金属、なかでも特にチタン又はチタンを主成分とする合金(以下チタン合金という)を導電性基体に用いた電極であり、その基体表面に、白金族金属又はその酸化物からなる電極活性物質を層状に被覆したものが、種々の工業用電解又は民生用電解における不溶性電極として広く使用されている。
不溶性電極を作製する際の電極活性物質被覆法としては、一般に熱分解焼結法が採用されている。その際、導電性基体の表面を事前に粗面化し、これによって発現するアンカー効果により、電極活性物質層を導電性基体の表面へ強固に密着、固定させ、これによって不溶性電極の耐久性を向上させることが行われている。
導電性基体を粗面化する一般的な前処理方法としては、アルミナ、スチールショット、スチールグリッドなどの研削材を吹き付けて機械的に粗面化するブラスト処理法や、シュウ酸、硝酸、硫酸、塩酸、フッ酸などの流動浴又は静止浴に浸漬させて、導電性基体の表面を溶解させる化学的エッチング等があり、これらの前処理法を2種類以上組み合わせる方法も考えられている(特許文献1)。
しかしながら、これらの前処理方法を行った後に白金族金属又はその酸化物からなる電極活性物質を熱分解焼結法により被覆した場合、形成された電極活性物質層にクラックが発生し、電極活性物質層が導電性基体表面から剥離しやすい。また、剥離に至らないまでも、導電性基体から電極活性物質が浮き上がる。これらのために、電極機能が失われやすいという問題があり、同時に電極寿命の短命化に繋がるという問題もある。
一方、電極の短命化に対しては、導電性基体と電極活性物質層との間にバルブ金属からなる中間層を介在させる手法が考えられている。この中間層はスパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法により導電性基体表面に形成され(特許文献2)、電気メッキ法等によっても形成される。しかしながら、これらの手法は技術的に高度な方法であるため、製造工数の増大や加工処理費用の増大を伴い、電極製造コストを大きく高めることになる。また、耐久性向上の別の手法として、電極活性物質層の層厚を大きくさせることも有効であるが、前述の手法と同様にコスト高が顕著になる。
このような状況下で、本出願人は先に、チタン又はチタンを主成分とする合金からなる導電性基体の表面を、電解質溶液中で電解酸化して多孔質化し、多孔質化された導電性基体の表面に電極活性物質を層状に被覆する技術を開発した(特許文献3)。この技術によると、導電性基体の多孔質体化された表層部に電極活性物質が木の根のように深く複雑に入り込み、文字どおりの強力なアンカー効果が得られ、その結果として、電極活性物質が基体表面上に長期間強固に保持され続ける。その結果、アノード電流が流れる場合の寿命は延長される。すなわち、通常の陽極としての寿命は延長される。
しかしながら、陽極の陰極化現象を伴う電解プロセスでは、陰極化が生じる部分で陽極の消耗が急速に進み、この部分的な消耗に陽極全体の寿命が支配されるため、期待されるほどの寿命延長効果が得られない。また、電極製造時における電解酸化処理での電解電圧が最低でも40Vと高く、目標電圧までの所要時間も長いことから、電極製造コストの面でも問題がある。以下に陽極の陰極化現象について説明する。
例えば鋼板の電気メッキラインにおいては、鋼板の両面をメッキするために2枚の陽極が対向配置され、その間を陰極となる鋼帯が通過することにより、鋼帯の両面にメッキ金属が析出する。ここで、対向配置された2枚の陽極の幅(鋼帯の進行方向に直角な方向の寸法)は、その間を通過する鋼帯の幅が多種類あるため、鋼帯の最大幅に合わせて設定されている。このため、最大幅より小さい幅の鋼帯が通過するときは、陽極の両側の側端部で電極同士が直接対向することになる。そして、鋼板の両面に厚さの異なる金属メッキを施すような場合は、2枚の陽極の間に電位差が生じ、低電位側の陽極においては、電極同士が直接対向する側端部が陰極として機能し、カソード電流が流れる。
これが陽極の陰極化現象であり、カソード電流が流れる陽極の側端部では、カソード反応に対する耐性が殆どないため、鋼帯に対向する中央部に比して電極活物質の消耗が急速に進行し、この側端部での急速な電極活物質の消耗が、陽極全体の寿命を支配することになる。
このような事情から、カソード電流に対する耐性を高めることが不溶性電極での重要な技術課題となっており、この技術課題を解決する手段の一つが、陰極化現象によってカソード電流が流れる部分で電極活物質層の層厚を他の部分の層厚よりも厚くすることである(特許文献4参照)。
陽極の陰極化現象に伴う局部的な電極活物質の消耗の抑制に、電極活物質層の層厚増大は有効である。しかし、その増大の割りには、消耗抑制効果は十分とは言えない。なぜなら、陽極基体上に電極活物質が相当量残存しているにもかかわらず、その電極活物質が基体表面から浮き上がったり両者の間に不働態膜が形成されたりして、陽極機能が喪失する場合が少なくないからである。しかも、電極活物質層の層厚を大きくした場合は、電極活物質の剥離・脱落が顕著になる問題もある。
これに加え、電極活物質層の層厚増大はコストの大幅な増加を伴う。すなわち、電極活物質層は電極被覆液を塗布し焼成するいわゆる焼付けコートの繰り返しにより、所定の層厚に形成される。層厚を増大させるためには、焼付けコートの繰り返し回数を増やす必要があり、高価な電極活物質の使用量の増加だけでなく工程数の増加も顕著になる。
また、陽極寿命の延長を図る場合、電極活物質を改良する場合が少なくないが、コストが嵩む割に効果が小さかった。
このようなことから、アノード電流はもとより、カソード電流に対しても電極機能を長期間安定に維持でき、しかも、電極活物質の使用量を極力制限できる長寿命で経済的な不溶性電極の開発が待たれている。
特開平8−109490号公報 特開平2−282491号公報 特開2009−197284号公報 特開平10−287998号公報
本発明の目的は、基体表面に被覆された電極活性物質の密着性、固定強度に優れ、アノード電流はもとよりカソード電流に対しても高い耐性を示し、なおかつ経済性に優れた不溶性電極を提供することにある。
本発明の別の目的は、基体表面に被覆された電極活性物質の密着性、固定強度に優れ、アノード電流はもとよりカソード電流に対しても高い耐性を示し、なおかつ経済性に優れた不溶性電極の製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明者らは前述したチタン又はチタンを主成分とする合金からなる導電性基体の表面に対する電解酸化による多孔質化が不可欠であると考え、様々な種類の電解質溶液について、電解電圧と基体表面性状との関係の調査を続けたところ、今回、以下の如き新事実を知見した。
電解酸化に使用する電解質溶液の種類によっては、基体表面が粗面化されると共に、その表面から所定深さに至る表層部が、表面粗度と比較して極めて小さいnmオーダー径の微細孔により多孔質化されることがある。具体的には、チタン系基材に対してフッ素系の電解質溶液を使用した場合である。この場合、電解酸化での電解電圧によっては、基体表面の粗面化が顕著に進行して、表面粗度と同程度の比較的大きい粗大孔により多孔質表層部が多孔質化される。すなわち、基体表層部がnmオーダー径の微細孔と、その細孔径より十分に大きいμmオーダー径の粗大孔とにより複合的に多孔質化されるのである。これらの結果、基体表面に被覆された電極活性物質が、多孔質表層部内に深く複雑に食い込むことにより強固に固定され、アノード電流に対しては勿論のこと、陰極化現象等が生じたときのカソード電流に対しても非常に高い耐性が得られる。
しかも、この電解酸化では、定電流による電解酸化での電解電圧が5〜100Vと低く、気孔径が異なる複合多孔質層が形成される電解電圧の場合でさえも、その電解電圧は10〜50Vと低い。
本発明はかかる知見を基礎として完成されたものであり、その不溶性電極は、チタン又はチタンを主成分とする合金からなり、且つ電解質溶液中で電解酸化することにより表面がμmオーダーの粗度で粗面化されると共に、その表面から所定深さにわたって表面粗度より十分に小さいnmオーダー径の微細孔により多孔質化された導電性基体と、前記導電性基体の表面から多孔質表層部内にかけて被覆固定された電極活性物質とを具備している。
また、本発明の不溶性電極製造方法は、チタン又はチタンを主成分とする合金からなる導電性基体の表面を、電解質溶液中で電解酸化してμmオーダーの粗度で粗面化すると共に、その表面から所定深さにわたって表面粗度より十分に小さいnmオーダー径の微細孔により多孔質化する工程と、導電性基体の表面から多孔質表層部内にかけて電極活性物質を被覆固定する工程とを包含している。
本発明の不溶性電極及びその製造方法においては、導電性基体の表面を、電極活性物質被覆前に電解質溶液中での電解酸化処理により粗面化すると共に、その表面から所定深さにわたって表面粗度より十分に小さいnmオーダー径の微細孔により多孔質化することが重要であり、なかでも特に、表面の粗面化を進行させて表面粗度と同じμmオーダー径の粗大孔を形成して、表層部を複合多孔質層とすることが重要である。このような多孔質表層部は、基体に被覆された電極活性物質を表層部内に多数本の細い根のように複雑な形状で長距離にわたって侵入させ、強固なアンカー効果を発揮して、アノード電流はもとよりカソード電流に対しても耐性を高める。また、被覆厚を大きくする必要がない。このような機能は、基体の表層部を微細孔と粗大孔との組合せによって複合多孔質層とした場合に特に顕著となる。
このような粗面化及び多孔質化、更には微細孔と粗大孔による複合多孔質化は、電解酸化用電解質溶液としてフッ素系のもの、具体的にはフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化水素カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム等のハロゲン化物塩の単独溶液又は混合溶液、若しくはこれらの溶液に硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム等の中性塩を1種類又は2種類以上混合した溶液等を使用した場合に実現可能である。
しかも、このようなフッ素系の電解質溶液を使用した電解酸化処理では、定電流電解での電解電圧が5〜100Vと低く、複合多孔質化に至っては僅か10〜50Vの電解電圧で実現可能であり、電極活性物質を複数層重ねる必要もない。このため、電極製造に要する電気コストを小さく抑制することができる。
ちなみに、特許文献3に記載された従来の電解酸化による多孔質体化では、導電性基体の表面が前記表面粗度と同程度のμmオーダー径の粗大孔により多孔質化するだけで、nmオーダー径の微細孔による多孔質化は行われない。その結果、電極活性物質の固定強度は劣る。特に、カソード電流に対する耐性が低い。また、定電流電解での電解電圧が40〜300Vと高い。電解酸化処理に使用される電解質溶液は、シュウ酸、ホウ酸、硝酸、リン酸、硫酸、塩酸又はフッ酸等が含まれる導電性の高い酸液である。
本発明で重要な電解酸化処理は、電解質溶液中で導電性基体を陽極とし、任意の導電材料を陰極として一定電流を通じる定電流電解により実施することができる。また、一定電圧を印加する定電圧電解により実施することができる。これらの電解酸化処理では、電解を停止するタイミングが重要であり、定電流電解の場合は電解電圧が5〜100Vに到達した時点で電解を停止するのが好ましく、5〜50V、とりわけ10〜50Vに到達した時点で電解を停止するのが、より好ましい。このタイミングで電解を停止することにより、導電性基体の表面がμmオーダーの粗度で粗面化されると共に、その表面から所定深さに至る表層部がnmオーダー径の微細孔により多孔質化され、アンカー効果に有利な表層部形状が形成され、電解電圧が10〜50Vの場合は、基体表面の粗面化が進行して表面粗度と同じμmオーダー径の粗大孔が形成されることにより、nmオーダー径の微細孔とμmオーダー径の粗大孔とによるアンカー効果にとりわけ有利な複合多孔質層が表層部に形成される。
ところで、定電流電解では、通電開始と共に電解電圧が上昇し始める。電解電圧がピークに達すると、その電圧が急激に低下する。定電圧電解では、電圧の印加開始と共に電解電流が減少し始める。電解電流が最小値に達すると、その電流が最大値に戻る。これは、電解酸化の開始と共に導電性基体表面に酸化膜が形成され、電解の進行と共に酸化も進行して通電抵抗が増大するためである。電解停止のタイミングが早すぎる場合は、導電性基体表面の粗面化及び多孔質化が進行しない。反対に電解停止が遅れると、導電性基体の表層部の粗面化及び多孔質化が過剰に進むために、多孔質層の全体が剥離する危険がある。多孔質層の全体が剥離すると、導電性基体表面の多孔質化を最初からやり直す必要があり、余分な電力を費やすことになる。また、多孔質層が剥離しないまでも、電解酸化が過剰に進むと、多孔質層の機械的強度が低下し、電極使用中における電極活性物質層の剥離現象、これによる電極の短命化を抑制する効果が得られないおそれがある。
このように、電解酸化処理では、導電性基体の表層部を好ましい性状とするために、その電解を停止するタイミングが重要であり、定電流電解の場合は、その停止タイミングが、好ましくは電解電圧が5〜100Vに到達した時点、より好ましくは5〜50Vに到達した時点、特に好ましくは10〜50Vということである。
定電流電解での電流値としては、陽極での電解電流密度で表して0.001〜1A/cm2 が好ましく、更に好ましくは0.001〜0.3A/cm2 である。この電流値が0.001A/cm2 未満であると、必要な電解電流が得られ難い傾向となり、反対に1A/cm2 を超えると電解が安定しないとなる傾向が生じる。
電解酸化処理に使用される電解質溶液としては、前述したとおり、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化水素カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム等のハロゲン化物塩の単独溶液又は混合溶液、若しくはこの溶液に硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム等の中性塩を1種類又は2種類以上混合した溶液であり、更にはこれらを含む電解質溶液を挙げることができる。これらの電解質溶液中には、溶解速度を促進させる手段として、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン等のハロゲンイオン、或いは過塩素酸イオン、塩素酸イオン、臭素酸イオン、臭素イオン等の酸化力の高いイオンを含むハロゲン化物イオンを添加してもよい。更には、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硝酸カリウム等の中性塩を添加してもよい。電解質溶液中にハロゲンイオン又は酸化力の高いハロゲン化物イオンを添加することについては、導電性基体における多孔質層の孔形状が異なるものとなる可能性があり、電極寿命の大幅延長を期待できる。
フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化水素カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム等のハロゲン化物塩の各電解質溶液濃度は0.1モル以上であればよく、2種類以上ハロゲン化物塩を混合する場合も各濃度が合計で0.1モル以上であればよい。また、中性塩を混合した場合も各濃度が合計で0.1モル以上であればよい。
基体表層部に形成される多孔質層の層厚は2〜30μmが適当である。これが小さいと、基体表面に被覆された電極活性物質の固定効果が劣る。反対に大きすぎる場合は基体表層部の脆弱化が問題になる。特に好ましい層厚は5〜15μmである。層厚のコントロールは電解電圧及びその保持時間の変更等により行うことができ、これらが大きくなるほど層厚が大となる。
本発明において導電性基体に用いられるチタン又はチタン合金としては、日本工業規格(JIS規格)に定められた1種、2種、3種、4種の各種工業用純チタンや、ニッケル、ルテニウム、タンタル、パラジウム、タングステン等を添加して耐食性を向上させたチタン合金、アルミニウム、バナジウム、モリブデン、錫、鉄、クロム、ニオブ等を添加したチタン合金を一例として挙げることができる。また、チタン又はチタン合金からなる導電性電極の形状としては、板、ロッド、メッシュ等を挙げることができる。
導電性基体をアルカリ、有機溶剤で洗浄した後、直接電解酸化処理することができるが、電解酸化処理を行う前に、通常行われている表面処理法である機械的処理や化学処理を行ってもよい。金属の機械的表面前処理法としては、微細な研磨材を使って、導電性基体表面を緻密に凹凸化するブラスト処理法があり、ブラスト処理法としては、アルミナ、スチールショット、スチールグリッド等を研削材として金属表面前処理を行う圧縮エアによる投射方法等がある。研磨材の粒径は20〜600μmが好ましいが、次に記載する化学エッチング処理法との併用を考慮する場合は50〜300μmがよい。
金属の化学的表面前処理の方法としては、シュウ酸、硝酸、硫酸、塩酸、フッ酸等の浴中で化学エッチング処理を行う方法がある。これらの方法では、温度が20〜90℃の範囲内の流動浴又は静止浴中に、金属材を1〜5時間の範囲内で浸漬させることにより、その材料表面の化学的な溶解が可能となり、不規則に凹凸部を形成することができる。
電極が酸素発生用の場合、導電性基体の表面に被覆する電極活性物質としては、白金族金属又はその酸化物とバルブ金属(チタン、タンタル、ニオブ、タングステン、ジルコニウム)及び錫からなる群より選ばれた1種類以上の金属の酸化物との混合酸化物が好適である。代表的な例としては、イリジウム−タンタル混合酸化物、イリジウム−タンタル−チタン混合酸化物等を挙げることができる。この際、金属換算でイリジウム金属50〜95wt%と白金族金属以外の金属50〜5wt%とからなる混合酸化物が、酸素発生に対する電極活性及び耐久性に優れている。そのなかでも、金属換算でイリジウム金属50〜90wt%とバルブ金属及び錫から選ばれた金属50wt%未満とからなる混合酸化物がよく、金属換算でイリジウム金属65〜90wt%とバルブ金属及び錫から選ばれた金属35〜10wt%とからなる混合酸化物が特によい。金属換算でイリジウム金属が50wt%未満であると、電極活性物質の酸素発生能力が不十分となる。つまり耐久性も低下する。反対に、金属換算でイリジウム金属が95wt%を超えると酸化イリジウムの電解液への溶解速度が速くなるため耐久性が低下する。
電極が塩素発生用の場合、導電性基体の表面に被覆する電極活性物質としては、イリジウム、ルテニウム、白金、パラジウム等の白金族金属とチタン、タンタル、ニオブ、タングステン、ジルコニウム等のバルブ金属及び錫からなる群より選ばれた1種類以上の金属の酸化物との混合酸化物が好適である。代表的な例としては、イリジウム−ルテニウム−チタン混合酸化物、ルテニウム−チタン酸化物を挙げることができる。白金及びイリジウム酸化物も用いることができる。
電解酸化で表面処理した導電性基体表面への電極活性物質の被覆法としては、従来より採用されている熱分解焼結法や電気メッキ法等を適用できるが、熱分解焼結法が好ましい。すなわち、導電性基体表面に電極活性物質の金属塩溶液を塗布乾燥し、320〜550℃の温度で加熱処理をする。目標とする電極活性物質量を確保するために、塗布、乾燥、焼成の工程を数回から数十回繰り返す。このようにして製造した電極は、導電性基体表面への前処理としてブラスト処理、化学エッチング処理を行った電極と比べて、耐久性に優れ寿命が長いことを、各種の実験で確認している。
本発明の不溶性電極は、チタン又はチタンを主成分とする合金からなり、且つ電解質溶液中で電解酸化することにより表面がμmオーダーの粗度で粗面化されると共に、その表面から所定深さにわたって表面粗度より十分に小さいnmオーダー径の微細孔により多孔質化された導電性基体の多孔質表層部に電極活性物質が被覆固定された構成を採用することにより、電極活性物質が、複雑な形状で距離の長いアンカー効果により、導電性基体の表面に強固に且つ緻密に接合保持されるので、アノード電流に対してのみならず、カソード電流に対しても長寿命であり、なおかつ製造コストが安い。
特に、カソード電流に対しては、従来の電解酸化処理法により製造された不溶性電極と比べて寿命延長効果が大きいので、陽極の陰極化現象を生じる部分に使用して、その陽極寿命を著しく延長することができる。
このような効果は、導電性基体の表層部が、nmオーダー径の微細孔とμmオーダー径の粗大孔とが組合わされた複合多孔質層である場合に特に顕著である。
また、本発明の不溶性電極製造方法は、チタン又はチタンを主成分とする合金からなり、且つ電解質溶液中で電解酸化することにより表面をμmオーダーの粗度で粗面化すると共に、その表面から所定深さにわたって表面粗度より十分に小さいnmオーダー径の微細孔により多孔質化する工程と、導電性基体の表面から多孔質表層部内にかけて電極活性物質を被覆固定する工程とを含むことにより、電極活性物質が、複雑な形状で距離の長いアンカー効果により、導電性基体の表面に強固に且つ緻密に接合保持されるので、アノード電流に対してのみならず、カソード電流に対しても長寿命であり、なおかつ製造コストが安い不溶性電極を製造することができる。
特に、カソード電流に対しては、従来の電解酸化処理法により製造された不溶性電極と比べて寿命延長効果が大きいので、陽極の陰極化現象を生じる部分に使用して、その陽極寿命を著しく延長することができる。
そして、このような効果は、導電性基体の多孔質表層部を、nmオーダー径の微細孔とμmオーダー径の粗大孔とが組み合わされた複合多孔質体層とした場合に特に顕著である。
電極活性物質被覆の前処理として導電性基体の表面に電解酸化処理をフッ素系電解質溶液により電解電圧7Vまで実施したときの表面性状を示すSME写真であり、倍率は10000倍である。 電極活性物質被覆の前処理として導電性基体の表面に電解酸化処理をフッ素系電解質溶液により電解電圧7Vまで実施したときの表面性状を示すSME写真であり、倍率は50000倍である。 電極活性物質被覆の前処理として導電性基体の表面に電解酸化処理をフッ素系電解質溶液により電解電圧20Vまで実施したときの表面性状を示すSME写真であり、倍率は10000倍である。 電極活性物質被覆の前処理として導電性基体の表面に電解酸化処理をフッ素系電解質溶液により電解電圧20Vまで実施したときの表面性状を示すSME写真であり、倍率は50000倍である。 電極活性物質被覆の前処理として導電性基体の表面に電解酸化処理をフッ素系電解質溶液により電解電圧100Vまで実施したときの表面性状を示すSME写真であり、倍率は10000倍である。 電極活性物質被覆の前処理として導電性基体の表面に電解酸化処理をフッ素系電解質溶液により電解電圧100Vまで実施したときの表面性状を示すSME写真であり、倍率は50000倍である。 電極活性物質被覆の前処理として導電性基体の表面に電解酸化処理をシュウ酸溶液により行ったときの表面性状を示すSME写真であり、倍率は5000倍である。
以下に本発明の実施形態を、不溶性電極の製造工程順に説明する。
第1工程として、製造すべき不溶性電極に対応する形状に形成された、チタン又はチタン合金からなる導電性基体を用意する。次いで、第2工程として、この導電性基体を脱脂後、前処理として電解酸化処理する。
電解酸化処理ではフッ素系の電解質溶液中で、前記導電性基体を陽極、白金板等を陰極として、定電流発生装置により一定電流を通じる。通電開始時の通電抵抗は小さいので、電解電圧は低い。通電開始と共に導電性基体の表面が酸化されることにより通電抵抗が増大し、電解電圧が徐々に高くなる。通電の間、電解電圧を測定し、これが所定電圧に達した時点で通電を停止する。到達電圧により電解保持時間が異なる。これにより、前記導電性基体の表面が所定の深さにわたって多孔質化される。
すなわち、反応性が高いフッ素系の電解質溶液中での電解酸化処理によってミクロ的な酸化、剥離が繰り返されることにより、導電性基体の表面に微細な凹部が数nmから数十nmの密なピッチで無数に形成され、電解酸化処理の進行と共にその凹部の数、深さともに増大する。その結果、導電性基体の表面から数百nmから数μmの深さの表層部にnmオーダー径の微細孔により多孔質層が形成される。また、導電性基体の表面がμmオーダーの粗度で粗面化される。通電停止時の電圧値、すなわち通電停止のタイミングは、基体表層部の多孔性状に大きな影響を与える。その結果として、通電停止時の電圧値によっては、基体表面の粗面化が進行してμmオーダー径の粗大孔が形成され、nmオーダー径の微細孔とμmオーダー径の粗大孔とが組み合わされた複合多孔質層が基体表層部に形成される。
ここで使用するフッ素系の電解質溶液は、前述したとおり、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化水素カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム等のハロゲン化物塩の単独溶液又は混合溶液、若しくはこの溶液に硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム等の中性塩を1種類又は2種類以上混合した溶液であり、更にはこれらを含む電解質溶液である。
導電性基体の前処理が終わると、第3工程として、多孔質化された前記基体の表層部に電極活性物質層を被覆固定する。
この工程では、イリジウム、ルテニウム、白金等の白金族金属とバルブ金属との混合酸化物、具体的にはイリジウム−タンタル混合酸化物、イリジウム−タンタル−チタン混合酸化物等といった電極活性物質の金属塩溶液を調製し、これを前記基体の表面に塗布し乾燥させた後、所定の加熱温度で焼成する。金属塩溶液の塗布−乾燥−焼成を繰り返すことにより、前記基体の表面に所定厚の電極活性物層を形成する。
形成された電極活性物質層は、下地である導電性基体の表面がμmオーダーの粗度で粗面化されていると共に、表面から所定深さにわたってnmオーダー径の微細孔により多孔質化され、場合によってはnmオーダー径の微細孔とμmオーダー径の粗大孔との組合せにより複合多孔質層が形成されているために、前記表面にナノスケールの強固なアンカー効果により高い密着性、緻密性及び接合強度で固定され、その結果、電極の使用時にアノード電流が流れた場合はもとよりカソード電流が流れた場合にも電極活性物質の脱落が効果的に抑制され、陰極化現象が生じる使用条件下でも電極の使用寿命が延びる。
詳しく説明すると、導電性基体の表面を多孔質化した場合でも、導電性基体の表面に形成された電極活性物質層にクラックが入り、操業液が浸透して導電性基体に達し、これを酸化することが予想される。導電性基体の表面に電極活性物質の被覆前処理とてブラスト処理や化学エッチング処理を行った場合、その表面が凹凸化し、表面積が増大しているだけであるので、接合面積の増大による接合強度の上昇は得られるが、実際的なアンカー効果は得られない。このため、クラックを通して操業液が導電性基体の表面に達し、その酸化、腐食が進み始めると、電極活性物質層は基体表面から急速に剥離し、剥離しないまでも基体表面から浮き上がる。結果、電極機能が失われる。
これに対し、本実施形態の不溶性電極の場合、導電性基体の表面がμmオーダーの粗度で粗面化されると共に、表面から数百nmから数μmの深さの表層部が、nmオーダー径の微細孔により多孔質化されており、電解条件によっては、この表層部が、nmオーダー径の微細孔とμmオーダー径の粗大孔との組合せによる複合多孔質層となっている。このため、導電性基体の表面に被覆された電極活性物質は、導電性基体の表層部に深く、しかも複雑に食い込んで基体表面上に固定されることになる。このナノスケールの強固なアンカー効果のため、クラックを通して操業液が導電性基体の表面に達し、その酸化、腐食が進み始めたとしても、電極活性物質は基体表面との接合性を維持したまま、その表面上に長く保持され続ける。つまり、電極活性物質は導電性基体の表面上に長期間保持され続けるのである。このため、電極機能を失うまでの期間が長くなり、電極寿命が延びる。これが、本発明者が現在考えている電極延長の主たるメカニズムである。
次に、本発明の実施例を説明し、比較例と対比することにより、本発明の効果を明らかにする。
(実施例)
導電性基体として、市販のJIS2種チタン板(長さ5cm、幅1cm、厚さ1.5mm)を用意した。これを10分間アセトン脱脂した後、このチタン板を陽極、白金板(長さ5cm、幅1cm、厚さ1.5mm)を陰極として、チタン板の表面を電解酸化処理した。電解酸化処理では、NH4 Fのハロゲン化物塩(0.5モル/L)の電解質溶液を用いた。また、NH4 Fのハロゲン化物塩(0.5モル/L)と(NH4 )2 SO4 の中性塩(1モル/L)の混合液を電解質溶液とした。更に、NH4 Fのハロゲン化物塩(0.05モル/L)と(NH4 )2 SO4 の中性塩(1モル/L)の混合液を電解質溶液とした。そして、陽極と陰極間距離を1cm、陽極の電解電流密度を0.001A/cm2 として、電解電圧が初期の3Vから所定Vに達するまで定電流電解を続けた。
電解酸化処理が終わると、35%濃塩酸を6容量%含むブタノール(n−C4 H9 OH)溶液に、酸化イリジウム酸(H2 IrCl6 ・6H2 O)と塩化タンタル(TaCl5 )を、これらの重量比が65:35となり且つイリジウムとタンタルの合計量が金属換算で70mg/mLとなるように溶解させた塗布液を調製し、この液を電解酸化処理を終えたチタン板の表面に塗布した。塗布後のチタン板を120℃×10分間の条件で乾燥処理した後、340〜550℃に保持した電気炉内で20分間焼成処理した。この塗布−乾燥−焼成の工程を5回繰り返して、チタン板の表面に電極活性物質層を形成した電極を作製した。
作製された電極に対して、正通電の電極寿命加速試験を実施した。正通電試験では、作製された電極の表面をポリテトラフルオロエチレン製のテープで、電解面積が1cm2 となるように被覆したものを陽極とした。また、白金板(長さ2cm、幅2cm、厚さ0.5mm)を陰極とし、定電流電解を行った。電解に使用した電解浴は、硫酸ナトリウムを10wt%溶解し、硫酸によりpHを1.2に調製したものである。電解浴を50℃に保ち、陽極の電解電流密度を1.0A/cm2 とした。陽極寿命の判定基準として、電解電圧が電解初期の値から5V上昇した時点を陽極の寿命とした。
また、同じ電極に対して、正逆通電の電極寿命加速試験を実施した。正逆通電試験では、陽極及び陰極に、電極寿命加速試験で用意したものと同じものを使用した。電解に使用した電解浴は、硫酸ナトリウムを10wt%溶解し、硫酸によりpHを1.2に調製したものである。電解浴を50℃に保ち、電解電流密度が1.0A/cm2 の正通電(アノード通電)を10分間行う毎に、電解電流密度が0.2A/cm2 の逆通電(カソード通電)を10分間行った。陽極寿命の判定基準として、電解電圧が電解初期の値から5V上昇した時点を陽極の寿命とした。
電極作製条件、及び実験条件、並びに実験結果を表1に実施例1〜8として示す。実施例2〜4の不溶性陽極に使用した3種類のチタン板に対して、走査型電子顕微鏡(SME)により表面性状の解析を行った。そのSME写真を図1〜3に示す。図1A及び図1Bに示したチタン板での電解電圧は7V、図2A及び図2Bに示したチタン板での電解電圧は20V、図3A及び図3Bに示したチタン板での電解電圧は100Vである
(比較例)
比較例として、実施例1〜8で用いたのと同様のチタン板を用い、電解質溶液を従来の酸液(0.5モル/Lの硫酸液、若しくは硫酸液と他の酸液との混合液)に変更し、種々の電解電圧に達するまで定電流電解を行って、不溶性電極を作製した。他の電極作製条件は実施例1〜8と同じである。
別の比較例として、実施例1〜8で用いたのと同様のチタン板を用い、10分間アセトン脱脂した後、このチタン板を10%シュウ酸溶液中に80℃で60分間浸漬してエッチング処理を行い、十分に洗浄を行って不溶性電極を作製した。他の電極作製条件は実施例1〜7と同じである。
更に別の比較例として、実施例1〜8で用いたのと同様のチタン板を用い、♯60のアルミナ粒を用いてサンドブラスト処理を行った。十分な水洗の後、10分間アセトン脱脂を行い、再度水洗を行って不溶性電極を作製した。他の電極作製条件は実施例と同じである。
作製された不溶性電極に対して、実施例1〜8と同様に電極寿命加速試験(正通電試験及び正逆通電試験)を実施した。試験条件は実施例1〜7と同じである。試験結果を表2に示す。
実施例1では、電極製造時の電解酸化に電解質溶液として0.5モル/LのNH4 F溶液を用いた。電解電圧は20V、電極活性物質の焼成温度は340℃である。正通電の電極寿命加速試験では、電極寿命は600時間以上であった。正逆通電の電極寿命加速試験でも、電極寿命は50時間以上であった。
一方、比較例1〜3では、電極製造時の電解酸化に電解質溶液として0.5モル/LのH2 SO4 溶液、若しくはこれと他の酸液との混合液を用いた。正通電の電極寿命加速試験での電極寿命は、化学エッチング処理による粗面化を用いた比較例4、ブラスト処理による粗面化を用いた比較例5と比べると長寿命で500時間以上、300時間以上を示すが、実施例1の600時間以上に比べると劣る。特に注目すべきは、正逆通電の電極寿命加速試験での電極寿命であり、その寿命は比較例4及び5と同じ10時間未満に過ぎず、50時間以上の実施例1に比べると著しく劣る。また、比較例1〜3での電解電圧は190Vであり、実施例1の20Vと比べると著しく高い。
実施例2〜7では、電極製造時の電解酸化に電解質溶液として0.5モル/LのNH4 Fと1モル/Lの(NH4 )2 SO4 の混合液を用いた。実施例2〜4では電解電圧を7V、20V、100Vの3段階に変化させた。電極活性物質の焼成温度は実施例1と同じ340℃である。電解電圧が7Vの実施例2、及び電解電圧が100Vの実施例4では、電極寿命加速試験での電極寿命は実施例1と同じ正通電で600時間以上、正逆通電で50時間以上であった。一方、電解電圧が20Vの実施例3では、正通電の電極寿命加速試験では800時間以上、正逆通電の電極寿命加速試験では100時間以上と、実施例2及び4の結果を大きく凌ぐ。
実施例2〜4での不溶性電極に使用した導電性基体の電解酸化後の表面性状を図1〜3に示すが、電解電圧が7Vの実施例2では、電解酸化後の基体表面が、μmオーダーの粗度で粗面化されると共に、表面から約5μmの深さに至るまでの表層部がnmオーダー径の微細孔により多孔質化されているのに対し、電解電圧が20Vの実施例3では、電解酸化後の基体表面が、μmオーダーの粗度で粗面化されるだけでなく、表面から約10μmの深さに至るまでの表層部が、表面粗度と同じμmオーダー径の粗大孔とnmオーダー径の微細孔との組合せにより複合的に多孔質化されており、この複合多孔質表層部が正逆通電の電極寿命加速試験での電極活性物質の保持、試験結果に大きな好影響を与えていると考えられる。また、電解電圧が100Vの実施例4では、電解酸化後の基体表面が、μmオーダーの粗度で粗面化されると共に、表面から約15μmの深さに至るまでの表層部がnmオーダー径の微細孔により多孔質化されている。
電解電圧が7Vの実施例2の場合と電解電圧が100Vの実施例4の場合とでは、表層部の見かけ上の構造は類似しているが、後者は前者と比べて脆弱であり、電極活性物質の担持体としての機能が劣る。
ちなみに、図4は酸液による電解酸化により表面を処理した比較例1での、基体表面の性状を示しており、その表層部は表面粗度と同じμmオーダー径の粗大孔により多孔質化されているだけであり、nmオーダー径の微細孔による多孔質化は生じていない。このことが電極寿命加速試験結果の低下に繋がっていると考えられる。
実施例5〜7では、実施例2〜4と比べて電極活性物質の焼結温度が高められている。電極寿命加速試験結果が正通電、正逆通電ともに向上している。
実施例8では、電極製造時の電解酸化に電解質溶液として0.05モル/LのNH4 Fと1モル/Lの(NH4 )2 SO4 の混合液を用いた。他の電極製造条件は実施例7と同じである。実施例7と比べて、NH4 Fの濃度が下がっているが、実施例7と同等の電極寿命加速試験結果が得られている。

Claims (11)

  1. チタン又はチタンを主成分とする合金からなり、且つ電解質溶液中で電解酸化することにより表面がμmオーダーの粗度で粗面化されると共に、その表面から所定深さにわたって表面粗度より十分に小さいnmオーダー径の微細孔により多孔質化された導電性基体と、前記導電性基体の表面から多孔質表層部内にかけて被覆固定された電極活性物質とを具備する不溶性電極。
  2. 請求項1に記載の不溶性電極において、前記導電性基体の多孔質表層部が、前記nmオーダー径の微細孔と基体表面の粗度と同じμmオーダー径の粗大孔とで複合多孔質とされることにより、前記導電性基体の表面がμmオーダーの粗度で粗面化されている不溶性電極。
  3. 請求項1又は2に記載の不溶性電極において、前記電解質溶液がフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化水素カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム等のハロゲン化物塩の単独溶液又は混合溶液、若しくはこの溶液に硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム等の中性塩を1種類又は2種類以上混合した溶液である不溶性電極。
  4. 請求項1〜3の何れかに記載の不溶性電極において、前記電極活性物質が白金族又はその酸化物を含む不溶性電極。
  5. 請求項4に記載の不溶性電極において、前記電極活性物質が白金族又はその酸化物に加えて、チタン、タンタル、ニオブ、タングステン、ジルコニウム、スズから選ばれた1種又は2種以上の金属の酸化物を含む不溶性電極。
  6. チタン又はチタンを主成分とする合金からなる導電性基体の表面を、電解質溶液中で電解酸化してμmオーダーの粗度で粗面化すると共に、その表面から所定深さにわたって表面粗度より十分に小さいnmオーダー径の微細孔により多孔質化する工程と、導電性基体の表面から多孔質表層部内にかけて電極活性物質を被覆固定する工程とを含む不溶性電極製造方法。
  7. 請求項6に記載の不溶性電極製造方法において、前記導電性基体の多孔質表層部を、前記nmオーダー径の微細孔と基体表面の粗度と同じμmオーダー径の粗大孔とで複合多孔質とすることにより、前記導電性基体の表面をμmオーダーの粗度で粗面化する不溶性電極製造方法。
  8. 請求項6又は7に記載の不溶性電極製造方法において、前記電解質溶液がフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化水素カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム等のハロゲン化物塩の単独溶液、又は混合溶液、若しくはこれらの溶液に、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム等の中性塩を1種類又は2種類以上混合した溶液である不溶性電極製造方法。
  9. 請求項8に記載の不溶性電極製造方法において、前記電解酸化を、定電流電解により電解電圧が5〜100Vに達するまで実施する不溶性電極製造方法。
  10. 請求項6〜9の何れかに記載の不溶性電極製造方法において、前記電極活性物質が白金族又はその酸化物を含む不溶性電極製造方法。
  11. 請求項10に記載の不溶性電極製造方法において、前記電極活性物質が白金族又はその酸化物に加えて、チタン、タンタル、ニオブ、タングステン、ジルコニウム、スズから選ばれた1種又は2種以上の金属の酸化物を含む不溶性電極製造方法。

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