JP5535572B2 - 超伝導加速空洞の表面処理方法 - Google Patents
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Description
このため超伝導加速空洞は、内表面の表面処理を行って組み立てられている(たとえば、特許文献1参照)。
まず、1回目の電解研磨(ステップS101)によって製造された超伝導加速空洞101の材料の不純物を取り除くとともに超伝導加速空洞101の内表面の付着物を取り除く。このときの研磨量は100μm程度である。次いで、電解研磨時に内表面に吸蔵された水素を除去ために、超伝導加速空洞101を10−5Pa程度の高真空中で750℃に上げる熱処理であるアニール(ステップS102)が、たとえば、180分行われる。
2回目の電解研磨が終了すると、内表面のゴミ等の異物を除去する最終洗浄が行われる。最終洗浄としては、過酸化水素水を用いた過酸化水素水超音波洗浄(ステップS105)、超純水を用いた超純水超音波洗浄(ステップS106)および超純水を高圧で吹き付ける超純水高圧洗浄(ステップS107)が行われている。
なお、過酸化水素水超音波洗浄では、過酸化水素水の替わりにオゾン水、エタノールあるいは中性洗剤を用いて行われることもある。
超純水高圧洗浄は、図8に示されるように、超純水製造装置107で生成された超純水をポンプ109で数十kgf/cm2に加圧して、フィルタ111を通してノズル113から超伝導加速空洞101の内面に噴射する。この際、超伝導加速空洞101は矢印Aのように上下に往復運動させると同時に、矢印Bのように回転またはノズルを回転させることで、超伝導加速空洞101の内表面を一様に高圧水洗する。
その後、洗浄に用いられた水分の除去等のために、超伝導加速空洞101を120℃に上げる熱処理であるベーキング(ステップS108)が、たとえば、40時間行われる。
さらに、超純水高圧水洗浄は、超伝導加速空洞101の内表面全面に高圧水を吹き付ける必要があるため、作業時間が多くなる。たとえば、過酸化水素水超音波洗浄あるいは超純水超音波洗浄は1時間程度で行えるのに対して、超純水高圧水洗浄は十数時間を必要とする。
すなわち、本発明にかかる超伝導加速空洞の表面処理方法は、超伝導材料によって環状に形成された超伝導加速空洞の内表面を表面処理する超伝導加速空洞の表面処理方法であって、予め周波数調整された超伝導加速空洞の内面を電解研磨によって研磨処理する電解研磨工程と、該電解研磨工程で研磨処理された前記超伝導加速空洞の内表面を洗浄する洗浄工程と、該洗浄工程で洗浄された前記超伝導加速空洞を変形しないように拘束して密閉された内部空間を真空吸引しつつ高温で熱処理する熱処理工程と、を備えていることを特徴とする。
また、熱処理工程を最後にまとめたので、電解研磨工程を1度で済ますことができる。
このように、電解研磨工程および熱処理工程を1工程で行うようにしたので、作業工程数を少なくすることができる。これにより、段取り変えが少なくなるので、作業時間を短縮でき、作業コストを低減できる。また、段取り変えが少なくなると、作業中に異物が混入する恐れが少なくなるので、洗浄効果を向上することができる。
図1には、本発明の一実施形態にかかる超伝導加速空洞の表面処理方法の表面処理工程が示されている。図2は、本実施形態にかかる超伝導加速空洞の表面処理方法の電解研磨工程を示すブロック図である。図3は、本実施形態にかかる超伝導加速空洞の表面処理方法の超音波洗浄工程を示すブロック図である。図4は、本実施形態にかかる超伝導加速空洞の表面処理方法の熱処理工程を示すブロック図である。図5は、熱処理工程の別の実施態様を示すブロック図である。
加速空洞(超伝導加速空洞)1は、図2〜図5に示されるように、中央部が膨らんだ円筒形状のセル3が、たとえば、5個組み合わされた構造体である。加速空洞1は、たとえば、超伝導材料であるニオブ材を曲げ加工、プレス成型加工、電子ビーム溶接などを行うことによって所定の形状に製造される(ステップS1)。
図2は、電解研磨装置5が示されている。
一対の回転保持具7はそれぞれ円板形状で、加速空洞1の軸線方向の端部を保持し、保持軸19によって連結されている。一対の回転保持具7の対向する面には外周に歯が刻まれた歯車21が供えられている。
回転装置9には、各歯車21と噛み合う一対の歯車23と、歯車23を連結する回転軸25と、回転軸25を回転させるモータ27とが備えられている。
電解液供給装置11には、電解液を保持するタンク31と、タンク31の電解液を一方のキャップ29を通って陰極13の内部に供給する電解液供給管33と、電解液供給管33の途中に設置されたポンプ35と、他方のキャップ29を通って加速空洞1の内部空間およびタンク31を連通する電解液排出管37と、が備えられている。
陰極13は、中空で内部に供給された電解液を加速空洞1の内部空間に供給する開口部39が備えられている。
キャップ19には、加速空洞1の内部空間のガスを排出するガス排出管41が備えられている。
所定量の電解液が加速空洞1内に溜まると、電源17から陽極15に電力が供給され、加速空洞1を均等に正電圧に印加する。加速空洞1が正電圧に印加されると陰極13との間で電解液を通って電流が流れ、電解液の電気分解が起こる。
この電気分解により加速空洞1の内表面が研磨される。
電気分解で発生したガスは加速空洞1の上部に溜まり、ガス排出管41を介して外部に排出される。
なお、加速空洞1の端部にピエゾ素子43を取り付け、ピエゾ素子43に図示しない電源から電力を供給して加速空洞1を振動させるようにしてもよい。
このようにすると、電解研磨工程で析出されるたとえば、イオウ分等の異物が加速空洞1の内表面に付着することを抑制できるので、洗浄効果を向上させることができる。
図3には、過酸化水素水超音波洗浄、超純水超音波洗浄および超純水高圧水洗浄を行う洗浄装置43の概略構成が示されている。
第一超音波電源47および第二超音波電源49は切換スイッチ55によって切換えられるようにされている。
洗浄液排水管53には、その開閉を行う排出弁67が備えられている。
開閉弁65が閉じられた状態を維持し、開閉弁61および供給弁57が開かれると、過酸化水素水供給管59および洗浄液供給管51を通って過酸化水素水が加速空洞1の内部に供給される。加速空洞1の内部に過酸化水素水が充満すると、開閉弁61および供給弁57が閉じられる。この状態で、たとえば、第一超音波電源47が投入されると振動子45が、略100KHzで振動するので、過酸化水素水による超音波洗浄が行われる。過酸化水素水超音波洗浄は、たとえば、1時間程度行われる。
このとき、排水弁67は開いた状態を維持させる。これにより加速空洞1の内部空間に残留した過酸化水素水が超純水によって洗い落とされ洗浄液排水管53を通って排出される。所定の時間経過したら排出弁67を閉じ、洗浄液供給管51から供給される超純水を加速空洞1の内部空間に貯留し、充満させる。
超音波洗浄が一定時間、たとえば、1時間行われると、切換スイッチ55を作動して、第二超音波電源49に切替える。これにより、振動子45は、略2MHzで振動することになるので、メガソニック洗浄を行うことができる。
このようにすると、洗浄工程で除去された異物が加速空洞1の内表面に再付着することを抑制できるので、洗浄効果を向上させることができる。
引き続いて、超純水高圧水洗浄が行なわれる。
図4には、高温ベーキングを行う熱処理装置71の概略構成が示されている。
熱処理装置71には、加速空洞1の変形を防止するように拘束する保持部材73と、加速空洞1の内部を真空吸引する真空吸引部材75と、加速空洞1を加熱するヒータ77と、断熱ジャケット79とが備えられている。
真空吸引部材75には、真空ポンプ85と、真空ポンプ85および加速空洞1の内部を連通させる吸引配管87と、吸引配管87を開閉させる開閉弁89とが備えられている。
断熱ジャケット79は、断熱材で構成され、ヒータ77および加速空洞1の外側を覆うように一方の保持板81に取り付けられている。断熱ジャケット79の内部空間には、空気が閉じ込められている。これは、加速空洞1の外側が酸化されるのを防止するために窒素、アルゴン等の不活性ガスを封入するようにしてもよい。
ヒータ77は、断熱ジャケット79内を、ニオブ材に吸蔵された水素が放出され始める、たとえば、400〜600℃以上に加温することができるものとされている。
吸引配管87を加速空洞1の内部空間と連通するように取り付ける。
この状態で、ヒータ77で加温するとともに真空ポンプ85を作動し加速空洞1の内部空間を真空吸引し、たとえば10−5Pa程度の圧力とする。ヒータ77による加温はたとえば750℃で3時間行われる。この加温により加速空洞の内表面に吸蔵された水素等が析出される。この水素は吸引配管87を通って排出される。
このとき、加速空洞1の内外圧力差は大きくなるが、加速空洞1は保持部材73によって変形しないように拘束されているので、内外の圧力差があっても変形を抑制することができる。なお、必要によって引き続き従来のベーキングを実施してもよい。
このように、電解研磨工程および熱処理工程を1工程で行うようにしたので、作業工程数を少なくすることができる。これにより、段取り変えが少なくなるので、表面処理の作業時間を短縮でき、作業コストを低減できる。
また、段取り変えが少なくなると、作業中に異物が混入する恐れが少なくなるので、洗浄効果を向上することができる。
たとえば、図5に示されるように、真空炉91の内部にヒータ77等を設置し、真空炉91の内部を真空吸引部材75と同様な構成とされる第二の真空吸引部材93によって真空吸引するようにしてもよい。
このようにすると、ヒータ77が真空雰囲気で用いられるので、ヒータ77による高温が容易に得られる。また、加速空洞1の内外圧力差が小さくなるので、一層容易に加速空洞1の変形を防止できる。
Claims (5)
- 超伝導材料によって環状に形成された超伝導加速空洞の内表面を表面処理する超伝導加速空洞の表面処理方法であって、
予め周波数調整された超伝導加速空洞の内面を電解研磨によって研磨処理する電解研磨工程と、
該電解研磨工程で研磨処理された前記超伝導加速空洞の内表面を洗浄する洗浄工程と、
該洗浄工程で洗浄された前記超伝導加速空洞を変形しないように拘束して密閉された内部空間を真空吸引しつつ高温で熱処理する熱処理工程と、
を備えていることを特徴とする超伝導加速空洞の表面処理方法。 - 前記洗浄工程は、前記超伝導加速空洞の密閉した内部空間に洗浄液を充填し、該内部空間に配置された振動子による超音波振動による超音波洗浄を行うことを特徴とする請求項1に記載の超伝導加速空洞の表面処理方法。
- 前記電解研磨工程あるいは前記洗浄工程では、前記超伝導加速空洞自体を振動させていることを特徴とする請求項1または2に記載の超伝導加速空洞の表面処理方法。
- 前記洗浄工程は少なくとも、洗浄液として過酸化水素水、オゾン水、エタノールおよび中性洗剤液のいずれかで洗浄した後、洗浄液を超純水に切替えて洗浄することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の超伝導加速空洞の表面処理方法。
- 前記洗浄工程では、前記振動子の振動数が0.5MHz〜3MHzに切換えられるようにされていることを特徴とする請求項4に記載の超伝導加速空洞の表面処理方法。
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