JP4747920B2 - 電解加工方法および電解加工装置 - Google Patents

電解加工方法および電解加工装置 Download PDF

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Description

本発明は、電気分解により被加工物の孔内を拡幅する電解加工方法および電解加工装置に関する。
従来技術として、下記特許文献1に開示された電解加工方法がある。この従来技術の電解加工方法は、被加工物に形成した孔内に開口端から棒状の電極を配置し、被加工物と電極との間に電圧を印加して、電気分解により被加工物の孔内のバリを除去するものである。そして、電気分解を行なうときに、被加工物を電極の軸方向に相対的に移動させることで、バリ取り精度を向上するようになっている。
特開平4−115829号公報
上記従来技術の電解加工方法では、孔内の拡幅(拡径)は行なわれていないが、上記従来技術の方法で拡幅を行なうと、拡幅部の拡大とともに電極と孔の内面との間隔が大きくなり、拡幅部の加工形状精度が悪化するという問題がある。
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、被加工物の孔部内に拡幅部を形成する場合に、拡幅部の加工形状精度を向上することが可能な電解加工方法および電解加工装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明の電解加工方法では、
被加工物(90)に形成された孔部(91)内に、孔部(91)の開口端(91a)から棒状の電極(10)を軸方向(X)に挿入配置する配置工程と、
配置工程の後、被加工物(90)と電極(10)との間に電解液を供給しつつ、被加工物(90)と電極(10)との間に電圧を印加して被加工物(90)を電気分解により溶出し、被加工物(90)の孔部(91)内の開口端(91a)から所定距離離れた位置に拡幅部(92)を形成する電解工程と、を備える電解加工方法であって、
電解工程は、
拡幅部(92)を概目標形状にまで加工する粗加工工程と、
粗加工工程の後に、電極(10)を軸を中心に回転させて、拡幅部(92)を目標形状に仕上げる仕上げ加工工程とからなり、
仕上げ加工工程でのみ、電極(10)の軸方向(X)の先端部(11)を径方向(Y)に拡大することを特徴としている。
これによると、電解工程では、拡幅部(92)を拡大していっても、電極(10)先端部(11)と孔部(91)の内面との間隔が大きくなることを防止することが可能である。したがって、拡幅部(92)の加工形状精度を向上することが可能である。
また、仕上げ加工工程でのみ先端部(11)を径方向(Y)に拡大すればよいので、比較的容易な拡大動作制御で、拡幅部(92)の加工形状精度を向上することが可能である。さらに、仕上げ加工工程では、電極(10)が先端部(11)を拡大して、先端部(11)が軸を中心とした周方向に同一形状をなしていなくとも、周方向において安定した電気分解を行ない、安定した拡幅を行なうことができる。
また、請求項2に記載の発明の電解加工方法では、電解工程では、拡幅部(92)が拡大するときに、被加工物(90)と電極(10)との間隔が略一定となるように先端部(11)を径方向(Y)に拡大することを特徴としている。
これによると、電解工程では、拡幅部(92)を拡大していっても、電極(10)先端部(11)と孔部(91)の内面との間隔を略一定に維持することができる。したがって、拡幅部(92)の加工形状精度を一層向上することが可能である。
また、請求項3に記載の発明の電解加工方法では、電解工程では、電極(10)の少なくとも一部を軸方向(X)に移動して、先端部(11)を径方向(Y)に拡大することを特徴としている。
これによると、棒状の電極(10)の外部から先端部(11)を径方向(Y)に拡大操作することが容易である。
そして、請求項4に記載の発明の電解加工方法のように、
電極(10)は、先端部(11)側が先割れ状に複数に分割されるとともに、先端側ほど径外方向に位置するように形成されており、
配置工程では、電極(10)を外筒体(20)内に収納して、複数に分割形成した先端部(11a)を外筒体(20)により径内方向に押圧して収縮させ、
電解工程では、電極(10)を軸方向(X)に移動して先端部(11a)を外筒体(20)から開放し、先端部(11a)を容易に径外方向に拡大することができる。
また、請求項5に記載の発明の電解加工方法のように、
電極(110)は、軸方向(X)に進退可能なロッド部材(110b)を備え、
電解工程では、ロッド部材(110b)を軸方向(X)に移動させて、先端部(111)を径方向(Y)に拡大するものとすることができる。
これによれば、ロッド部材(110b)を介して、棒状の電極(110)の外部から先端部(111)を径方向(Y)に容易に拡大することができる。
そして、請求項6に記載の発明の電解加工方法のように、
電極(110)は、
先端部(111)が複数に分割され、各分割体(111a)が径方向(Y)にスライド可能に形成されるとともに、
ロッド部材(110b)には、各分割体(111a)に摺接するテーパ部(110c)が形成されており、
電解工程では、ロッド部材(110b)を軸方向(X)に前進もしくは後退させて、テーパ部(110c)により各分割体(111a)を径外方向にスライドさせ、先端部(111)を径方向(Y)に拡大するものとすることができる。
また、請求項7に記載の発明の電解加工方法のように、
電極(210)は、
先端部(211)が中空体として形成されるとともに、
ロッド部材(210b)が、中空体(211)の先端側面に接続しており、
電解工程では、ロッド部材(210b)を軸方向(X)に後退させ、中空体(211)を軸方向(X)に潰して、先端部(211)を径方向(Y)に拡大するものとすることができる。
また、請求項8に記載の発明の電解加工方法では、
電極(310)は、
先端部(311)が中空体として形成されるとともに、
中空体(311)の内部空間に連通する圧力印加通路(312)を備えており、
電解工程では、圧力印加通路(312)を介して中空体(311)の内部空間に印加される圧力を変更して、中空体(311)を変形させ、先端部(311)を径方向(Y)に拡大することを特徴としている。
これによっても、棒状の電極(310)の外部から先端部(311)を径方向(Y)に容易に拡大することができる。
また、請求項9に記載の発明の電解加工方法のように、仕上げ加工工程では、粗加工工程よりも、被加工物(90)と電極(10)との間に印加する電圧を低くすることが好ましい。
また、請求項10に記載の発明の電解加工装置では、
被加工物(90)に形成された孔部(91)内に、孔部(91)の開口端(91a)から軸方向(X)に挿入配置可能な棒状の電極(10)と、
被加工物(90)と電極(10)との間に電圧を印加する電圧印加手段(40)と、
電極(10)の配置および電圧印加手段(40)による電圧印加を制御する制御手段(50)と、を備え、
制御手段(50)は、被加工物(90)と電極(10)との間に電解液を供給しつつ、電圧印加手段(40)により被加工物(90)と電極(10)との間に電圧を印加して被加工物(90)を電気分解により溶出し、被加工物(90)の孔部(91)内の開口端(91a)から所定距離離れた位置に拡幅部(92)を形成する電解加工装置であって、
電極(10)は、軸方向(X)の先端部(11)を径方向(Y)に拡大可能に形成され、
制御手段(50)は、
拡幅部(92)を概目標形状にまで電気分解加工する粗加工工程の後に、軸を中心に電極(10)を回転させて、拡幅部(92)を電気分解加工で目標形状に仕上げる仕上げ加工工程を実行し、
仕上げ加工工程でのみ、電極(10)の先端部(11)を径方向(Y)に拡大させることを特徴としている。
これによると、請求項1に記載の電解加工方法を行なうことができる。
また、請求項11に記載の発明の電解加工装置では、制御手段(50)は、拡幅部(92)の拡大に合わせて、被加工物(90)と電極(10)との間隔が略一定となるように先端部(11)を径方向(Y)に拡大することを特徴としている。
これによると、請求項2に記載の電解加工方法を行なうことができる。
また、請求項12に記載の発明の電解加工装置では、制御手段(50)は、電極(10)の少なくとも一部を軸方向(X)に移動させて、先端部(11)を径方向(Y)に拡大することを特徴としている。
これによると、請求項3に記載の電解加工方法を行なうことができる。
また、請求項13に記載の発明の電解加工装置では、
電極(10)は、先端部(11)側が先割れ状に複数に分割されるとともに、先端側ほど径外方向に位置するように形成されており、
制御手段(50)は、電極(10)を外筒体(20)内に収納して、複数に分割形成した先端部(11a)を外筒体(20)により径内方向に押圧して収縮させた状態から、電極(10)を軸方向(X)に移動して先端部(11a)を外筒体(20)から開放し、先端部(11a)を径外方向に拡大することを特徴としている。
これによると、請求項4に記載の電解加工方法を行なうことができる。
また、請求項14に記載の発明の電解加工装置では、
電極(110)は、軸方向(X)に進退可能なロッド部材(110b)を備え、
制御手段(50)は、ロッド部材(110b)を軸方向(X)に移動させて、先端部(111)を径方向(Y)に拡大することを特徴としている。
これによると、請求項5に記載の電解加工方法を行なうことができる。
また、請求項15に記載の発明の電解加工装置では、
電極(110)は、先端部(111)が複数に分割され、各分割体(111a)が径方向(Y)にスライド可能に形成されるとともに、ロッド部材(110b)には、各分割体(111a)に摺接するテーパ部(110c)が形成されており、
制御手段(50)は、ロッド部材(110b)を軸方向(X)に前進もしくは後退させて、テーパ部(110c)により各分割体(111a)を径外方向にスライドさせ、先端部(111)を径方向(Y)に拡大することを特徴としている。
これによると、請求項6に記載の電解加工方法を行なうことができる。
また、請求項16に記載の発明の電解加工装置では、
電極(210)は、先端部(211)が中空体として形成されるとともに、ロッド部材(210b)が、中空体(211)の先端側面に接続しており、
制御手段(50)は、ロッド部材(210b)を軸方向(X)に後退させて、中空体(211)を軸方向(X)に潰し、先端部(211)を径方向(Y)に拡大することを特徴としている。
これによると、請求項7に記載の電解加工方法を行なうことができる。
また、請求項17に記載の発明の電解加工装置では、
電極(310)は、先端部(311)が中空体として形成されるとともに、中空体(311)の内部空間に連通する圧力印加通路(312)を備えており、
制御手段(50)は、圧力印加通路(312)を介して中空体(311)の内部空間に印加される圧力を変更して、中空体(311)を変形させ、先端部(311)を径方向(Y)に拡大することを特徴としている。
これによると、請求項8に記載の電解加工方法を行なうことができる。
また、請求項18に記載の発明の電解加工装置では、制御手段(50)は、仕上げ加工工程では、粗加工工程よりも、被加工物(90)と電極(10)との間に印加する電圧を低くするように、電圧印加手段(40)を制御することを特徴としている。
これによると、請求項9に記載の電解加工方法を行なうことができる。
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用した第1の実施形態における電解加工装置1の概略構成を示す模式図、図2は、電解加工装置1の要部である電極先端部の構造を示す断面図である。また、図3は、電解加工装置1により加工される被加工物であるワーク90を示す工程別断面図である。
図3に示すように、本実施形態におけるワーク90は、内燃機関に高圧の燃料を噴射するための燃料噴射インジェクタのノズル部を構成するものである。
ワーク90は、図3(a)に示すように、鋼材を鍛造加工して形成した本体部に、図3(b)に示すように、ニードル弁を配設するための孔部(ニードル穴)91と燃料供給穴99とをドリル加工等により穴あけ加工した後、図3(c)に示すように、孔部91内に拡幅部92が形成される。
この拡幅部92は、ニードル穴である孔部91と燃料供給穴99とを連通する等の目的のために、孔部91の開口端91aから所定距離離れた位置(奥まった位置)に、本実施形態の電解加工装置1を用いた電解加工により形成される。
図1に示すように、本実施形態の電解加工装置1は、棒状の電極10と、この電極10の先端側を除く外周面を覆う外筒体である絶縁筒20とを備えている。ここで、電極10は、例えば、ステンレスもしくは銅合金等により形成されており、絶縁筒20は、例えば、ポリアミド樹脂もしくはフッ素樹脂等により形成されている。
この電極10および絶縁筒20からなる構成は、その上方に配設された送り機構部30により上下方向(電極10の軸方向、図示X方向)に移動可能となっており、電極10および絶縁筒20からなる構成を、図示しない保持部に保持されたワーク90の孔部91内に開口端91aから進退させることができるようになっている。
また、送り機構30は、電極10および絶縁筒20からなる構成を軸心を中心に回転できるようになっている。
送り機構部30は、電極10を上下方向(軸方向、図示X方向)に移動させる移動手段であるサーボモータ31を内蔵している。これにより、電極10を絶縁筒20に対し軸方向(図示X方向)に移動できるようになっている。なお、移動手段はサーボモータ31に限定されず、他の電気駆動のアクチュエータであってもよいし、油気圧により作動するアクチュエータ等であってもよい。
また、電解加工装置1は、電極10が負極、ワーク90が正極となるように電圧を印加する電圧印加手段である直流電源40を備えている。
符号50を付した構成は、制御手段をなす制御装置であり、制御装置50は、サーボモータ31を含む送り機構部30および直流電源40等の作動制御を行なうようになっている。
図2に示すように、本実施形態の電極10は、先端部11側にスリット部12が形成されて、先端部11は先割れ状に複数に(本例では2つに)分割された先端部11aからなっている。
図2(b)に示すように、電極10の先端部11側の部位は、フリーな状態(応力を付勢されていない状態)では、スリット部12が開いて、分割された各先端部11aは、先端側ほど径外方向に位置するように形成されている。
したがって、図2(a)に示すように、電極10の先端部11を除く部位を絶縁筒20内に収納した場合には、複数に分割形成した先端部11aを絶縁筒20により径内方向に押圧して収縮させる。また、図2(b)に示すように、サーボモータ31(図1参照)により電極10が絶縁筒20内から図示下方側に送り出されると、絶縁筒20による押圧力の付勢から開放されてスリット部12が開き、各先端部11aは径外方向に拡大される。
電極10には、硝酸ナトリウム水溶液等の電解液を供給するための供給通路13が軸方向に延びるように形成されている。そして、電極10とワーク90との間に電圧を印加するときには、図示しないポンプ手段等により、電極10とワーク90との間に電解液を供給するようになっている。
次に、上記構成の電解加工装置1を用いたワーク90の電解加工方法について説明する。図4は、ワーク90の孔部91内に拡幅部92を形成する工程を示す工程別断面図である。なお、図4では燃料供給穴99の図示を省略している。
まず、図4(a)に示すように、ワーク90の孔部91内に、孔部91の開口端91a(図1、図3参照)から棒状の電極10を軸方向(図示X方向)に挿入配置する。このとき、図2(a)に示したように、電極10を絶縁筒20内に収納して、複数に分割形成した先端部11aを絶縁筒20により径内方向に押圧して収縮させている。
電極10の孔部91内への配置を完了したら、図4(b)に示すように、ワーク90と電極10との間に電圧を印加してワーク90を電気分解により溶出させ、ワーク90の孔部91内に拡幅部92を形成する。このとき、電極10は、孔部91内に挿入配置された状態のままの図2(a)に示した状態とし、比較的高い電圧を印加して、拡幅部92を概目標形状(最終目標形状に至る前の形状)にまで加工する。
そして次に、図4(c)に示すように、電極10を絶縁筒20に対し軸方向(図示X方向)下方側に移動して、分割した先端部11aからなる先端部11を絶縁筒20から開放し(スリット部12が開く状態とし)、先端部11aを径外方向に拡大する。このとき、ワーク90と電極10との間には、図4(b)に示す工程より低い電圧を印加している。
この工程は、拡幅部92の角部93を電気分解して鋭角形状を除去するためのものであり、図4(c)に示す電極10先端部11の拡大は、角部93の除去に伴ない拡幅部92が拡大するときに、サーボモータ31による電極10移動量を調節して、ワーク90内面(角部93面)と電極10との間隔が略一定となるように先端部11aを径方向(図示Y方向)に拡大している。
また、図1に示した制御装置50は、直流電源40の電圧印加に伴ないワーク90から電極10に流れる電流を監視しており、ワーク90と電極10との間の電流密度が略一定となるように、印加電圧を制御している。
これにより、ワーク90を最終目標形状にまで加工する。なお、電気分解を行なう工程のうち、少なくとも図4(c)に示す工程では、送り機構30は、電極10および絶縁筒20を軸心を中心に回転駆動している。
ここで、角部93は、上記加工により拡幅される部位(被拡幅部)であり、拡幅部92の一部であると言える。
ここで、図4(a)に示す工程が本実施形態における配置工程であり、図4(b)および図4(c)に示す工程が本実施形態における電解工程である。また、電解工程のうち、図4(b)に示す工程が本実施形態における粗加工工程であり、図4(c)に示す工程が本実施形態における仕上げ加工工程である。
上述の構成および作動によれば、電解工程の仕上げ加工工程において、ワーク90と電極10との間に電圧を印加しつつ、電極10の軸方向の先端部11をワーク90と電極10との間隔が略一定となるように径方向に拡大することができる。
したがって、仕上げ加工工程では、ワーク90と電極10との間に電流を安定して流すことができ、拡幅部92角部93の加工形状精度を極めて向上することができる。
ワーク90は、高圧燃料を噴射するための部品であり、使用時には内部に極めて高い圧力が印加される。拡幅部92角部93が鋭角形状であると、印加される高い内圧によりワーク90の信頼性が大きく低下する。したがって、本実施形態により、鋭角形状を完全に除去して鈍角形状(円弧形状を含む)とした形状精度が良好なワーク90が得られる効果は極めて大きい。
また、電極10先端部11の径方向への拡大は、電極10をサーボモータ31により軸方向に移動するだけで行なえるので、拡大制御が極めて容易である。
また、電解工程の仕上げ加工工程では、電極10を、軸心を中心に回転させている。したがって、電極10がスリット部12を開き、各先端部11aが相互に離間して、軸を中心とした周方向に同一形状が連続していなくとも、周方向において安定した電気分解を行ない、安定した拡幅(拡径)を行なうことができる。
また、電解工程は、拡幅部92を概目標形状にまで速やかに加工する粗加工工程と、粗加工工程の後に拡幅部92角部93を目標形状に仕上げる仕上げ加工工程とからなり、仕上げ加工工程でのみ、先端部11を径方向に拡大している。
これによると、拡幅部92の加工時間を短縮できるとともに、仕上げ加工工程でのみ先端部11を径方向に拡大すればよいので、比較的容易な拡大動作制御で拡幅部92の加工形状精度を向上することができる。
また、電極10先端部11を径方向に拡大する構成を一部品により形成することができるので、電極構成部品数を低減することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図5に基づいて説明する。
本第2の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、電極先端部を径方向に拡大する構成が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
図5(a)に示すように、本実施形態では、電極110は、軸方向(図示X方向)に延びる筒状体である電極本体部110aと、この電極本体部110a内を軸方向(図示X方向)に進退可能なロッド部材であるロッド部110bと、電極本体部110aの図示下方端に配設された先端部111とにより構成されている。
電極110の先端部111は複数に分割され、各分割体111aが径方向(図示Y方向)に電極本体部110aに対しスライド可能に形成されている。また、各分割体111aの電極軸心側の面は傾斜面となっており、ロッド部110bの先端部に形成されたテーパ部110cと常時摺接するようになっている。
そして、電解工程の仕上げ加工工程を行なう時には、ここでは図示を省略したサーボモータ31(図1参照)が、図5(b)に示すように、ロッド部110bを軸方向(図示X方向)下方側に前進させて、テーパ部110cにより各分割体111aを径外方向にスライドさせ、先端部111を径方向に拡大するようになっている。
なお、本実施形態では、電解液を供給する供給通路13の図示を省略している。
上述の構成の電極110を採用すれば、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
また、移動手段であるサーボモータ31は、電極110の一部であるロッド部110bを軸方向に前進させることで電極110先端部111の径方向への拡大ができるので、拡大動作が容易である。
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について図6に基づいて説明する。
本第3の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、電極先端部を径方向に拡大する構成が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
図6(a)に示すように、本実施形態では、電極210は、軸方向(図示X方向)に延びる筒状体である電極本体部210aと、この電極本体部210a内を軸方向(図示X方向)に進退可能なロッド部材であるロッド部210bと、電極本体部210aの図示下方端に配設された先端部211とにより構成されている。
電極210の先端部211は筒状体もしくは球状体等の中空構造の中空体として形成されており、ロッド部210bの図示下方端が、先端部211の先端側面(図示下方側面)に接続している。
そして、電解工程の仕上げ加工工程を行なう時には、ここでは図示を省略したサーボモータ31(図1参照)が、図6(b)に示すように、ロッド部210bを軸方向(図示X方向)上方側に後退させて、中空構造の先端部211を軸方向に潰して、先端部211を径方向に拡大するようになっている。
なお、本実施形態では、電解液を供給する供給通路13の図示を省略している。
上述の構成の電極210を採用すれば、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
また、移動手段であるサーボモータ31は、電極210の一部であるロッド部210bを軸方向に後退させることで電極210先端部211の径方向への拡大ができるので、拡大動作が容易である。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について図7に基づいて説明する。
本第4の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、電極先端部を径方向に拡大する構成が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。
図7(a)に示すように、本実施形態では、電極310には、略球状体(球状体もしくは扁平形状の球状体等)の中空体からなる先端部311が形成されている。また、電極310には軸方向(図示X方向)に延びる圧力伝達通路312が形成されており、この圧力伝達通路312は先端部311の内部空間に連通している。
図示を省略しているが、本実施形態の電解加工装置は移動手段として圧力変更手段を備えており、圧力伝達通路312を介して先端部311の内部空間に印加される圧力を変更できるようになっている。圧力伝達通路312は、本実施形態における圧力印加通路に相当する。
そして、電解工程の仕上げ加工工程を行なう時には、図示を省略した圧力変更手段が先端部311の内部空間を減圧して、図7(b)に示すように、中空構造の先端部311を軸方向に潰して、先端部311を径方向に拡大するようになっている。
なお、本実施形態では、電解液を供給する供給通路13の図示を省略している。
上述の構成の電極310を採用すれば、第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
また、移動手段である圧力変更手段により先端部311の内圧を変更するだけで先端部311の径方向への拡大ができるので、拡大動作が容易である。
なお、上記例では先端部311の内部を減圧して先端部311を径方向に拡大していたが、径方向に伸縮する導電材料からなる先端部を採用し、先端部の内部を加圧して先端部を径方向に拡大するものであってもよい。
(他の実施形態)
上記第2の実施形態では、ロッド部110bを軸方向図示下方側に前進させて、テーパ部110cにより各分割体111aを径外方向にスライドさせ、先端部111を径方向に拡大していたが、これに限定されるものではなく、ロッド部を軸方向に後退させるものであってもよい。
例えば、図8に示すように、テーパ部110cを逆向きに設け、ロッド部110bを軸方向図示上方側に後退させて、テーパ部110cにより各分割体111aを径外方向にスライドさせ、先端部111を径方向に拡大するものであってもよい。
また、電極先端部の径方向に拡大する構成も、上記各実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、パンタグラフ構造の先端部を採用して、電極軸方向高さを変更することにより、先端部を径方向に拡大するものであってもよい。
また、上記各実施形態では、電解工程の少なくとも仕上げ加工工程において電極を軸心を中心に回転していたが、電解加工において所望の加工形状精度が得られるのであれば、電極を回転するものでなくてもかまわない。
また、上記各実施形態では、電解工程の仕上げ加工工程のみで、電極の先端部を径方向に拡大していたが、粗加工工程および仕上げ加工工程の両方において、電極の先端部を径方向に拡大するものであってもかまわない。
また、電解工程を粗加工工程と仕上げ加工工程とに分けない場合であっても、本発明は適用して有効である。
また、上記各実施形態では、ワーク90は、燃料噴射インジェクタのノズル部であったが、これに限定するものではない。貫通・非貫通を問わず孔部を有するワークの孔部内の開口端から所定距離離れた位置(奥まった位置)に拡幅部を形成する場合に、本発明を適用して有効である。
例えば、図9に示すように、燃料噴射インジェクタのボディ部190の孔部191A、191Bが交差する部位において、角部193の鋭角形状を除去するように拡幅を行なう場合にも適用することができる。
本発明を適用した第1の実施形態における電解加工装置1の概略構成を示す模式図である。 (a)、(b)は、第1の実施形態における電極先端部の構造を示す断面図である。 (a)、(b)、(c)は、被加工物であるワーク90の工程別断面図である。 (a)、(b)、(c)は、ワーク90の孔部91内に拡幅部92を形成する工程を示す工程別断面図である。 (a)、(b)は、第2の実施形態における電極先端部の構造を示す断面図である。 (a)、(b)は、第3の実施形態における電極先端部の構造を示す断面図である。 (a)、(b)は、第4の実施形態における電極先端部の構造を示す断面図である。 他の実施形態における電極先端部の構造を示す断面図である。 他の実施形態における被加工物の例を示す断面図である。
符号の説明
1 電解加工装置
10、110、210、310 電極
11、11a、111、111a、211、311 先端部
20 絶縁筒(外筒体)
30 送り機構部
31 サーボモータ(移動手段)
40 直流電源(電圧印加手段)
50 制御装置(制御手段)
90 ワーク(被加工物)
91 孔部
91a 開口端
92 拡幅部
93 角部(拡幅部の一部)
110b、210b ロッド部(ロッド部材)
110c テーパ部

Claims (18)

  1. 被加工物(90)に形成された孔部(91)内に、前記孔部(91)の開口端(91a)から棒状の電極(10)を軸方向(X)に挿入配置する配置工程と、
    前記配置工程の後、前記被加工物(90)と前記電極(10)との間に電解液を供給しつつ、前記被加工物(90)と前記電極(10)との間に電圧を印加して前記被加工物(90)を電気分解により溶出し、前記被加工物(90)の前記孔部(91)内の前記開口端(91a)から所定距離離れた位置に拡幅部(92)を形成する電解工程と、を備える電解加工方法であって、
    前記電解工程は、
    前記拡幅部(92)を概目標形状にまで加工する粗加工工程と、
    前記粗加工工程の後に、前記電極(10)を前記軸を中心に回転させて、前記拡幅部(92)を目標形状に仕上げる仕上げ加工工程とからなり、
    前記仕上げ加工工程でのみ、前記電極(10)の前記軸方向(X)の先端部(11)を径方向(Y)に拡大することを特徴とする電解加工方法。
  2. 前記電解工程では、前記拡幅部(92)が拡大するときに、前記被加工物(90)と前記電極(10)との間隔が略一定となるように前記先端部(11)を径方向(Y)に拡大することを特徴とする請求項1に記載の電解加工方法。
  3. 前記電解工程では、前記電極(10)の少なくとも一部を前記軸方向(X)に移動して、前記先端部(11)を径方向(Y)に拡大することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電解加工方法。
  4. 前記電極(10)は、前記先端部(11)側が先割れ状に複数に分割されるとともに、先端側ほど径外方向に位置するように形成されており、
    前記配置工程では、前記電極(10)を外筒体(20)内に収納して、複数に分割形成した前記先端部(11a)を前記外筒体(20)により径内方向に押圧して収縮させ、
    前記電解工程では、前記電極(10)を軸方向(X)に移動して前記先端部(11a)を前記外筒体(20)から開放し、前記先端部(11a)を径外方向に拡大することを特徴とする請求項3に記載の電解加工方法。
  5. 前記電極(110)は、前記軸方向(X)に進退可能なロッド部材(110b)を備え、
    前記電解工程では、前記ロッド部材(110b)を前記軸方向(X)に移動させて、前記先端部(111)を径方向(Y)に拡大することを特徴とする請求項3に記載の電解加工方法。
  6. 前記電極(110)は、
    前記先端部(111)が複数に分割され、各分割体(111a)が径方向(Y)にスライド可能に形成されるとともに、
    前記ロッド部材(110b)には、前記各分割体(111a)に摺接するテーパ部(110c)が形成されており、
    前記電解工程では、前記ロッド部材(110b)を前記軸方向(X)に前進もしくは後退させて、前記テーパ部(110c)により前記各分割体(111a)を径外方向にスライドさせ、前記先端部(111)を径方向(Y)に拡大することを特徴とする請求項5に記載の電解加工方法。
  7. 前記電極(210)は、
    前記先端部(211)が中空体として形成されるとともに、
    前記ロッド部材(210b)が、前記中空体(211)の先端側面に接続しており、
    前記電解工程では、前記ロッド部材(210b)を前記軸方向(X)に後退させ、前記中空体(211)を前記軸方向(X)に潰して、前記先端部(211)を径方向(Y)に拡大することを特徴とする請求項5に記載の電解加工方法。
  8. 前記電極(310)は、
    前記先端部(311)が中空体として形成されるとともに、
    前記中空体(311)の内部空間に連通する圧力印加通路(312)を備えており、
    前記電解工程では、前記圧力印加通路(312)を介して前記中空体(311)の内部空間に印加される圧力を変更して、前記中空体(311)を変形させ、前記先端部(311)を径方向(Y)に拡大することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電解加工方法。
  9. 前記仕上げ加工工程では、前記粗加工工程よりも、前記被加工物(90)と前記電極(10)との間に印加する電圧を低くすることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載の電解加工方法。
  10. 被加工物(90)に形成された孔部(91)内に、前記孔部(91)の開口端(91a)から軸方向(X)に挿入配置可能な棒状の電極(10)と、
    前記被加工物(90)と前記電極(10)との間に電圧を印加する電圧印加手段(40)と、
    前記電極(10)の配置および前記電圧印加手段(40)による電圧印加を制御する制御手段(50)と、を備え、
    前記制御手段(50)は、前記被加工物(90)と前記電極(10)との間に電解液を供給しつつ、前記電圧印加手段(40)により前記被加工物(90)と前記電極(10)との間に電圧を印加して前記被加工物(90)を電気分解により溶出し、前記被加工物(90)の前記孔部(91)内の前記開口端(91a)から所定距離離れた位置に拡幅部(92)を形成する電解加工装置であって、
    前記電極(10)は、前記軸方向(X)の先端部(11)を径方向(Y)に拡大可能に形成され、
    前記制御手段(50)は、
    前記拡幅部(92)を概目標形状にまで電気分解加工する粗加工工程の後に、前記軸を中心に前記電極(10)を回転させて、前記拡幅部(92)を電気分解加工で目標形状に仕上げる仕上げ加工工程を実行し、
    前記仕上げ加工工程でのみ、前記電極(10)の先端部(11)を径方向(Y)に拡大させることを特徴とする電解加工装置。
  11. 前記制御手段(50)は、前記拡幅部(92)の拡大に合わせて、前記被加工物(90)と前記電極(10)との間隔が略一定となるように前記先端部(11)を径方向(Y)に拡大することを特徴とする請求項10に記載の電解加工装置。
  12. 前記制御手段(50)は、前記電極(10)の少なくとも一部を前記軸方向(X)に移動させて、前記先端部(11)を径方向(Y)に拡大することを特徴とする請求項10または請求項11に記載の電解加工装置。
  13. 前記電極(10)は、前記先端部(11)側が先割れ状に複数に分割されるとともに、先端側ほど径外方向に位置するように形成されており、
    前記制御手段(50)は、前記電極(10)を外筒体(20)内に収納して、複数に分割形成した前記先端部(11a)を前記外筒体(20)により径内方向に押圧して収縮させた状態から、前記電極(10)を軸方向(X)に移動して前記先端部(11a)を前記外筒体(20)から開放し、前記先端部(11a)を径外方向に拡大することを特徴とする請求項12に記載の電解加工装置。
  14. 前記電極(110)は、前記軸方向(X)に進退可能なロッド部材(110b)を備え、
    前記制御手段(50)は、前記ロッド部材(110b)を前記軸方向(X)に移動させて、前記先端部(111)を径方向(Y)に拡大することを特徴とする請求項12に記載の電解加工装置。
  15. 前記電極(110)は、
    前記先端部(111)が複数に分割され、各分割体(111a)が径方向(Y)にスライド可能に形成されるとともに、
    前記ロッド部材(110b)には、前記各分割体(111a)に摺接するテーパ部(110c)が形成されており、
    前記制御手段(50)は、前記ロッド部材(110b)を前記軸方向(X)に前進もしくは後退させて、前記テーパ部(110c)により前記各分割体(111a)を径外方向にスライドさせ、前記先端部(111)を径方向(Y)に拡大することを特徴とする請求項14に記載の電解加工装置。
  16. 前記電極(210)は、
    前記先端部(211)が中空体として形成されるとともに、
    前記ロッド部材(210b)が、前記中空体(211)の先端側面に接続しており、
    前記制御手段(50)は、前記ロッド部材(210b)を前記軸方向(X)に後退させて、前記中空体(211)を前記軸方向(X)に潰し、前記先端部(211)を径方向(Y)に拡大することを特徴とする請求項14に記載の電解加工装置。
  17. 前記電極(310)は、
    前記先端部(311)が中空体として形成されるとともに、
    前記中空体(311)の内部空間に連通する圧力印加通路(312)を備えており、
    前記制御手段(50)は、前記圧力印加通路(312)を介して前記中空体(311)の内部空間に印加される圧力を変更して、前記中空体(311)を変形させ、前記先端部(311)を径方向(Y)に拡大することを特徴とする請求項10または請求項11に記載の電解加工装置。
  18. 前記制御手段(50)は、前記仕上げ加工工程では、前記粗加工工程よりも、前記被加工物(90)と前記電極(10)との間に印加する電圧を低くするように、前記電圧印加手段(40)を制御することを特徴とする請求項10ないし請求項17のいずれか1つに記載の電解加工装置。
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