JP2015168729A - 水性防錆塗料及び水性防錆塗装金属製品 - Google Patents

水性防錆塗料及び水性防錆塗装金属製品 Download PDF

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Abstract

【課題】 薄膜で長期間の防錆性能に優れるだけでなくコンクリートと被塗装物との付着性能にも優れる水性防錆塗料及びこれを塗装した防錆塗装金属製品を提供する。
【解決手段】 エポキシ樹脂エマルション、水溶性アクリル樹脂、水性防錆剤、水性湿潤剤を含有する水性防錆塗料であって、エポキシ樹脂エマルションを構成する樹脂と水溶性アクリル樹脂の総量に対するエポキシ樹脂エマルションを構成するエポキシ樹脂量の割合が30質量%以上であり、塗料中の全樹脂成分の割合が10質量%以上40質量%以下であり、水性防錆塗料の割合が0.1質量%以上5質量%以下、水性湿潤剤の割合が0.1質量%以上5質量%以下であり、水溶性アクリル樹脂のガラス転移点が0℃以上125℃以下であり、水溶性アクリル樹脂の酸価が80mg/KOH以上240mg/KOH以下であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属製品の錆を防ぐ水性防錆塗料及びその水性防錆塗料を施した水性防錆塗装金属製品に関する。
以前より工作機械、輸送機械、これらの部品、鋼管、鉄筋、鉄骨、階段、手摺等の建設資材、その他金属製品は、最終製品となる前段階の材料に防錆、及び、保護を目的とした処理がその表面に行われている。前記金属製品は、原料費、強度、加工の容易性等の理由により鉄系の金属材料で製造されることが多く、製造から実際に使用するまでの間なんら措置をせずにそのままにしておくと、空気中の水分、腐食性物質等によりその表面が酸化されて錆が生じてしまう。このため、錆の発生を未然に防止し金属製品の品質を保持するため、製品用の材料の製造後すぐに処理を行うのが一般的である。
前記金属製品の中でも、表面の状態が加工に影響するプレス金型等の工作機械部品、表面の状態が強度に影響する金具等の金属部品、コンクリートに埋設される鉄筋、鉄骨、アンカーボルト等の建設資材においては、最終製品についても表面保護を目的とした処理として防錆塗装が行われることが多い。
従来使用されてきた塗料は、揮発性有機溶剤を含有するものが多いため、使用に当たって作業者や周辺環境に対する揮発性有機化合物(VOC)対策が必要である。又、従来使用されてきた塗料は、有機溶剤を含有するため、保管をする場合においても保管量、保管場所等管理に十分注意を払う必要がある。このため、有機溶剤を極力含まない水性塗料が求められている。
金属製品の表面の保護を目的とした水性塗料として、例えば、特許文献1に記載される様な合成樹脂エマルションを塗膜形成成分とし、ジノニルナフタレンスルホン酸の金属塩又はアミン塩を防錆剤として含有する水性防錆塗料が知られている。
又、金属製品の表面の保護を目的として塗装された金属製品として、例えば、特許文献2に記載される様なエポキシ粉体塗料による防食皮膜を有するコンクリート埋設鉄筋材が知られている。
特開2011−57942号公報 特許第4319995号公報
保護対象である金属製品は、製造後すぐに出荷されるとは限らず出荷まで保管され、又、購入者に配達されても保管される場合もあり、すぐに使用されるとは限らない。更に、金属製品に分類されるコンクリートに埋設される鉄筋、鉄骨等の建設資材の場合は、塗膜が鉄筋、鉄骨等とコンクリートとの付着を妨げてはならない。そして、埋設された建設資材の一部が露出した状態で次工程の工事を待つことも多い。工事期間が長期間にわたる場合、延長された場合、又は、工事が一時中断した場合は、建設資材がそのままの状態で夏場の高温多湿環境下、冬場の低温乾燥環境下等環境変化が大きい状態で保管、放置されることもあり得る。
しかしながら、特許文献1に記載の水性防錆塗料は、防錆性能を有するものの、塗料を塗布してからその水性防錆塗料が乾燥塗膜となるまでの間に発生する錆について考慮したものであり(段落0013等参照)、又、乾燥後の塗膜厚も50〜1000μmで使用することを考慮したものでもある(段落0036等参照)。よって、塗膜が厚い特許文献1に記載の水性防錆塗料は、薄膜塗膜の形成性、及び、塗装された金属製品のコンクリートに対する付着性能を考慮した塗料でない。
特許文献2に記載の塗料は、防錆性能を有し、塗装された金属製品がコンクリートに対する付着性能も有するが、成分の異なる塗料で複数回塗装して、焼付ける必要がある。又、特許文献1に記載の水性防錆塗料と同様に、塗膜厚も200〜400μmで使用することを考慮したものであり(段落0028、0029参照)、薄膜塗膜の形成性を考慮した塗料でない。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、薄膜塗膜を形成性しコンクリートとの付着性能に優れる水性防錆塗料であって、塗装後の環境変化にも対応可能であり長期間の防錆性能に優れる水性防錆塗料を提供することを課題とする。
又、本発明は、コンクリートとの付着性能に優れ、薄膜で塗装された長期間の防錆性能に優れる防錆塗装金属製品を提供することを他の課題とする。
即ち、本発明に係る水性防錆塗料は、エポキシ樹脂エマルションと、水溶性アクリル樹脂と、水性防錆剤と、水性湿潤剤とを含有する水性防錆塗料であって、前記エポキシ樹脂エマルションを構成する樹脂と前記水溶性アクリル樹脂との総量に対する前記エポキシ樹脂エマルションを構成するエポキシ樹脂量の割合が30質量%以上であり、前記エポキシ樹脂エマルションを構成する樹脂と前記水溶性アクリル樹脂との総量の前記水性防錆塗料に対する割合が10質量%以上40質量%以下であり、前記水性防錆剤の前記水性防錆塗料に対する割合が0.1質量%以上5質量%以下であると共に、前記水性湿潤剤の前記水性防錆塗料に対する割合が0.1質量%以上5質量%以下であって、前記水溶性アクリル樹脂のガラス転移点が0℃以上125℃以下であり、かつ、前記水溶性アクリル樹脂の酸価が80mg/KOH以上240mg/KOH以下であることを特徴とする。
この様な構成によれば、エポキシ樹脂が塗膜の強度を持続すると共に、アクリル樹脂が塗膜の柔軟性を持続して、塗装後の被塗装物の変形、温度変化、湿度変化等の環境変化に長期間対応可能な薄膜塗膜が形成可能な水性防錆塗料となる。又、この様な構成によれば、塗料の表面張力が低下して塗装し易い水性防錆塗料となる。更に、コンクリートとの良好な付着性能を備える塗膜が形成可能な水性防錆塗料となる。
又、本発明に係る水性防錆塗料の前記水性湿潤剤が、ポリエーテル変性シリコーン系水性湿潤剤であることが好ましい。
この様な構成によれば、塗膜の表面張力がより低下することにより、変性エポキシ樹脂と水溶性アクリル樹脂がより均一で強靭な塗膜を形成する。同時に、塗膜とコンクリートとの良好な付着性能も持続される。
更に、本発明に係る金属製品は前記水性防錆塗料を施した水性防錆塗装金属製品であって、前記水性防錆塗装金属製品表面の前記水性防錆塗料の乾燥後の膜厚が3μm以上20μm以下であることを特徴とする。
この様な構成によれば、水分等の金属製品の錆の発生原因物質の被塗装物表面への付着を防止し、被塗装物の表面から錆の発生原因物質を効率的に遮断することが可能となる。又、変性エポキシ樹脂を含む防錆性に優れた塗膜の強度、及び、付着性能に影響を与える乾燥後の塗膜中の低分子成分量を制御して、防錆性、及び、塗膜とコンクリートとの付着性能を適切に持続することが可能となる。
本発明の水性防錆塗料は、薄膜塗膜を形成性しコンクリートとの付着性能に優れ、塗装後の環境変化にも対応可能であり長期間の防錆性能に優れるという効果を提供することができる。
又、本発明の水性防錆塗装金属製品は、コンクリートとの付着性能に優れ、塗装後の環境変化にも対応可能であり長期間の防錆性能に優れるという効果を提供することができる。
次に、本発明に係る水性防錆塗料、及び、この水性防錆塗料で塗装した金属製品の構成について詳細に説明する。
<水性防錆塗料>
以下説明する様に、本発明に係る水性防錆塗料は、エポキシ樹脂エマルション、水溶性アクリル樹脂、水性防錆剤、及び、水性湿潤剤を含む。
以下、各成分について説明する。
(エポキシ樹脂エマルション)
エポキシ樹脂エマルションは、水溶性アクリル樹脂と共に、乾燥、硬化することで鉄筋等の建設資材を含む金属製品の腐食原因物質が金属製品表面に付着することを防止し、腐食原因物質を金属製品表面から遮断する塗膜を金属製品の表面に形成するものである。水性防錆塗料がエポキシ樹脂を含むことにより塗膜の強度が向上し、水等の腐食原因物質を金属製品表面から、エポキシ樹脂を含まない場合と比べてより確実により効果的に遮断する。このため、塗膜厚が3〜20μmの薄膜厚でも防錆性能が最低でも12ヶ月間持続する。
エポキシ樹脂エマルションは、エポキシ樹脂を乳化剤を用いて水中で強制撹拌して乳化したエマルション、変性エポキシ樹脂を水中で強制撹拌して乳化したエマルション、変性エポキシ樹脂を乳化剤を用いて水中で強制撹拌して乳化したエマルション等、水性溶媒にエポキシ樹脂を分散させた乳化体である。
エポキシ樹脂エマルションを構成するエポキシ樹脂は、塗料、並びに、エポキシ樹脂エマルションの主要成分であり、例えば、エポキシ樹脂と脂肪酸の反応物(変性エポキシ樹脂)を挙げることが出来る。又、エポキシ樹脂エマルションを構成するエポキシ樹脂は、例えば、エポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、スチレンの1種、又は、2種以上を含む重合物との反応物を挙げることが出来る。更に、エポキシ樹脂エマルションを構成するエポキシ樹脂は、例えば、エポキシ樹脂存在下で、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、スチレンの1種、又は、2種以上を反応させた反応物を挙げることが出来る。そして、エポキシ樹脂エマルションを構成するエポキシ樹脂は、例えば、エポキシ樹脂とポリオキシアルキレンアミン化合物との反応物であってもよい。これらの中でも、エポキシ樹脂存在下で、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、スチレンの1種、又は、2種以上を反応させた反応物が実用的である。
なお、水性溶媒に分散可能である限り、エポキシ樹脂エマルションを構成するエポキシ樹脂は変性されている必要はなく、特にこれらに限定するものではない。
エポキシ樹脂エマルションを構成するエポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、又は、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂であって、エポキシ当量が約150〜約1000の範囲の樹脂が好ましい。具体的には、jER807、828、834、1001、1004(三菱化学株式会社製)、YSLV−80XY(新日鉄住金化学株式会社製)、DER331、383(ダウ・ケミカル社製)、エピコート828、834、1001、1004(油化シェルエポキシ株式会社製)等を挙げることが出来る。
なお、水性溶媒に分散可能である限り、エポキシ樹脂エマルションを構成するエポキシ樹脂はビスフェノール型エポキシ樹脂に限られるものではなく、エポキシ樹脂の種類に制限はない。
(水溶性アクリル樹脂)
水溶性アクリル樹脂は、乾燥、硬化することでエポキシ樹脂エマルションを構成するエポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂等と共に鉄筋等の金属製品の腐食原因物質が金属製品表面に付着することを防止し、腐食原因物質を金属製品の表面から遮断する塗膜を金属製品の表面に形成するものである。
水溶性アクリル樹脂は、又、乾燥、硬化して被塗装物の表面に塗膜を形成して腐食の原因物質を遮断するだけでなく、塗膜に柔軟性を付与する。水性防錆塗料が水溶性アクリル樹脂を含有することにより、被塗装物の表面に形成された塗膜が被塗装物の熱膨張、熱収縮等による変形に追従することで、塗膜の割れ、剥離等の損傷を防止して防錆性能を長期間持続しつつ発揮する。
水溶性アクリル樹脂は、水溶性のアクリル樹脂だけでなく、水溶性のアクリル系樹脂を含む。本発明の水溶性アクリル樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、ビニルスルホン酸、及び、(メタ)アリルスルホン酸の中から任意に選択される単量体の1種、又は、2種以上と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル類、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類、及び、スチレンの中から任意に選択される単量体の1種、又は、2種以上との重合体を挙げることが出来る。これらの中でも、(メタ)アクリル酸と、メタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、及び、スチレンが実用的である。
なお、反応性二重結合を有する水溶性アクリル系樹脂単量体である限り、特にこれらに限定するものではない。
(エポキシ樹脂含有率)
水性防錆塗料を構成するエポキシ樹脂エマルションを構成する樹脂と水溶性アクリル樹脂との合計量に対するエポキシ樹脂量、即ち、全樹脂成分量に対するエポキシ樹脂含有量であるエポキシ樹脂含有率は、塗料の防錆性能に影響する。
エポキシ樹脂エマルションを構成する樹脂と水溶性アクリル樹脂との総量に対するエポキシ樹脂量は30質量%以上とする。エポキシ樹脂含有率が30質量%未満では塗料中、及び、全樹脂成分中のエポキシ樹脂量が少ないため、エポキシ樹脂を含有することによる防錆性能が得られない。
エポキシ樹脂の含有率が高いほど防錆性能が高くなるため特に制限はなく、エポキシ樹脂の含有率の上限は、後記する樹脂成分量の上限を満たす範囲内であればよい。
(樹脂成分量)
水性防錆塗料中の樹脂成分量、即ち、水性防錆塗料におけるエポキシ樹脂エマルションを構成する樹脂と水溶性アクリル樹脂の総含有量は、塗料の造膜性能、及び、塗料の取り扱い易さに影響を与える。
エポキシ樹脂エマルションを構成する樹脂と水溶性アクリル樹脂の合計量(樹脂成分)の割合は、水性防錆塗料全体を100質量%として、10質量%以上40質量%以下とする。
エポキシ樹脂エマルションを構成する樹脂と水溶性アクリル樹脂の合計量の割合が10質量%未満では、塗料中の塗膜形成成分が少ないため塗装した際に塗膜厚が薄くなって塗膜の強度が低下することにより、塗膜の割れ、剥離等の損傷が発生し易くなる。又、塗膜厚が不均一になって塗膜の強度に差が生じることにより、塗膜の割れ、剥離等の損傷が発生し易くなる。このため、この塗膜の割れ、剥離を通して腐食の原因物質である水分等が被塗装物である金属製品の表面に達し易くなり、防錆塗料として必要とされる防錆性能が得られない。又、樹脂成分が少なくて塗料として成立しない可能性もある。
一方、エポキシ樹脂エマルションを構成する樹脂と水溶性アクリル樹脂の合計量の割合が40質量%を超えると、水性防錆塗料の粘度が高くなる。このため、水性防錆塗料中の樹脂成分量の割合が40質量%を超えると、薄膜で均一な塗膜の形成が難しくなり、水性防錆塗料の取り扱いが不便になる等のため好ましくない。又、ゲル化して塗料として成立しない可能性もある。
(水溶性アクリル樹脂のガラス転移点)
水溶性アクリル樹脂のガラス転移点(Tg)は、0℃以上125℃以下とする。ガラス転移点が0℃未満では、水性防錆塗料乾燥後の塗膜が軟質になり塗膜強度が低下する。このため、塗膜強度が低下した部分を起点として塗膜の割れ、剥離等の損傷が発生して腐食の原因物質が浸入することにより、被塗装物である金属製品に対する水性防錆塗料の防錆性能が低下する。ガラス転移点が125℃を超えると、水性防錆塗料乾燥後の塗膜が硬質になり塗膜の柔軟性が低下する。このため、被塗装物の熱膨張、熱収縮等による変形に追従することができなくなり、塗膜の割れ、剥離等の損傷が発生して腐食の原因物質が浸入するため、被塗装物である金属製品に対する水性防錆塗料の防錆性能が低下する。
より好ましい水溶性アクリル樹脂のガラス転移点の下限値は、10℃以上である。
より好ましい水溶性アクリル樹脂のガラス転移点の上限値は、115℃以下である。
水溶性アクリル樹脂のガラス転移点は、測定試料をJIS K7121の規定に従い、示差走査熱量測定装置にて測定することにより測定可能である。
又、後記する水溶性アクリル樹脂合成後の水溶性アクリル樹脂を含む反応溶液をJIS K5601‐1‐2に従い、105℃で1時間加熱乾燥することで測定試料を得る。次に、この得られた測定試料をJIS K7121の規定に従い、示差走査熱量測定装置にて測定することによっても、水溶性アクリル樹脂のガラス転移点は測定可能である。
水溶性アクリル樹脂の組成、重合度等を調節することにより、ガラス転移点(Tg)が本発明の範囲内となるように調節することができる。
(水溶性アクリル樹脂の酸価)
水溶性アクリル樹脂の酸価は、水性防錆塗料の樹脂成分を水等の溶媒に溶解し易くすると共に、水性防錆塗料の被塗装物である金属製品の表面に防錆性能を有する塗膜を薄膜で均一に形成し易くするために規定する。
水溶性アクリル樹脂の酸価は、80mg/KOH以上240mg/KOH以下とする。酸価が80mg/KOH未満では、水溶性アクリル樹脂の親水性が低いため塗料の造膜性能が低下する。このため、塗膜の厚さが不均一となり塗膜の強度が不均一となる。そして、塗膜強度が低下した部分を起点として塗膜の割れ、剥離等の損傷が発生して腐食の原因物質が浸入することにより、防錆性能が低下する。又、酸価が240mg/KOHを超えると、乾燥後の塗膜の水和性が高くなるため雨水、結露等による水分等を塗膜に取り込み易くなる。このため、腐食の原因物質である水分等が金属製品の表面に到達し易くなり、防錆性能が低下する。
より好ましい水溶性アクリル樹脂の酸価の下限値は、100mg/KOH以上である。
より好ましい水溶性アクリル樹脂の酸価の上限値は、220mg/KOH以下である。
水溶性アクリル樹脂の酸価は、水溶性アクリル樹脂を体積比でトルエン:エタノール=2:1の混合溶媒で希釈して、JIS K5601‐2‐1の規定に従い測定することで得ることが可能である。
又、後記する水溶性アクリル樹脂合成後の水溶性アクリル樹脂を含む反応溶液を体積比でトルエン:エタノール=2:1の混合溶媒で希釈して、JIS K5601‐2‐1の規定に従い測定することによっても、水溶性アクリル樹脂の酸価は測定可能である。
このようにして測定される酸価が本発明の範囲内となるように、水溶性アクリル樹脂の組成、重合度等を調節することが好ましい。
(水性防錆剤)
水性防錆剤は、塗膜中でエポキシ樹脂エマルションを構成する樹脂、及び、水溶性アクリル樹脂と共存して水性防錆塗料の防錆性能を向上させる成分である。水性防錆剤は、被塗装物である鉄筋等の建設資材とコンクリートとの付着性能を持続向上させるものが好ましい。このため、水溶性アクリル樹脂と混合し易く、コンクリートとの親和性が高い水性防錆剤を用いる。
水性防錆剤は水性(水溶性)であればその種類は問わないが、有機酸、及び、塩基からなるものが好ましい。
有機酸の例としては、オクタン酸、オレイン酸、ダイマー酸、ナフテン酸等のカルボン酸類、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸等のスルホン酸類、アルキルリン酸類等が挙げられる。アルキルナフタレンスルホン酸の例としては、ジノリルナフタレンスルホン酸が挙げられる。
塩基の例としては、アンモニア、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の水溶性アミン類が挙げられる。
使用するのが好ましい水性防錆剤は、これら有機酸、及び、塩基の中からそれぞれ任意に1種類を選択して組み合わせることで得られる。更に、これら有機酸の中から任意に選択した1種類とこれら塩基の中から任意に選択した2種類以上、又は、これら有機酸の中から任意に選択した2種類以上とこれら塩基の中から任意に選択した1種類との組み合わせによる混合物でもよい。そして、これら2種類以上の有機酸、及び、これら2種類以上の塩基との組み合わせによる混合物でもよい。なお、特に好ましい組み合わせは、アルキルナフタレンスルホン酸、カルボン酸と、ジエタノールアミンの組み合わせである。
(水性防錆剤の含有率)
水性防錆剤の含有率は、水性防錆塗料全体を100質量%とした場合に0.1質量%以上5質量%以下とする。水性防錆剤の添加割合が0.1質量%未満では、防錆剤の性能が十分に発揮されないため水性防錆塗料の防錆性能が低下する。又、水性防錆剤の添加割合が5質量%を超えると、水性防錆剤が界面活性剤としても作用するため、乾燥後の塗膜表面の潤滑性が増加して乾燥後の塗膜とコンクリートとの接触抵抗が減少する。よって、水性防錆剤の添加割合が5質量%を超えると、塗膜とコンクリートとの付着性能が低下する。
水性湿潤剤の含有率は、後記する不揮発性成分量に基づいて算出することが好ましい。
(水性湿潤剤)
水性湿潤剤は、塗料の造膜性能を向上させて、金属製品表面上に防錆性能を有する塗膜を薄膜で均一に形成させるための成分である。
水性湿潤剤は、塗膜を形成するエポキシ樹脂エマルション、及び、水溶性アクリル樹脂と混合させるために、これらとの親和性を有するものとする。水性湿潤剤は、本発明たる水性防錆塗料の防錆性能をより効果的に発揮させるために、水性防錆塗料の表面張力を低下させて被塗装物である鉄筋等の建設資材を含む金属製品への湿潤性(濡れ性、ヌレ性)を向上させるものが好ましい。更に、水性湿潤剤は水性防錆塗料のコンクリートとの付着性能を持続して向上させるものが好ましい。
このため、湿潤剤は親水性である水性湿潤剤とする。
水性湿潤剤は、水性(水溶性)であればその種類は問わない。例えば、アクリル樹脂系水性湿潤剤、フッ素変性ポリマー系水性湿潤剤、及び、シリコーン系水性湿潤剤が挙げられる。水性湿潤剤の中でもポリエーテル変性シリコーン系水性湿潤剤が好ましい。
ポリエーテル変性シリコーン系水性湿潤剤は、塗膜の表面張力の低下度合いが大きく、変性エポキシ樹脂と水溶性アクリル樹脂がより均一で強靭な塗膜を形成しやすくなるため好ましい。同時に、塗膜とコンクリートとの良好な付着性能も持続しやすいため好ましい。
本願発明に係る水性湿潤剤として使用可能である市販の水性湿潤剤の具体例としては、ポリエーテル変性シリコーン系水性湿潤剤であるポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンとしてビックケミージャパン株式会社製BYK345が、ポリエーテル変性シロキサンとしてビックケミージャパン株式会社製BYK349が、及び、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンとして楠本化成株式会社製DISPARLON LS−480が挙げられる。
(水性湿潤剤の含有率)
水性湿潤剤の含有率は、水性防錆塗料全体を100質量%とした場合に0.1質量%以上5質量%以下とする。水性湿潤剤の添加割合が0.1質量%未満では、水性防錆塗料の湿潤性が低下して不均一な塗膜となるため、塗膜の強度に差が生じて塗膜強度が低下した部分を起点として塗膜の割れ、剥離等の損傷が発生しやすくなる。そして、損傷部分から腐食の原因物質である水分等が金属製品表面まで浸入することにより、水性防錆塗料の防錆性能が低下する。又、水性湿潤剤の添加割合が5質量%を超えると、乾燥後の塗膜表面の潤滑性が増加して乾燥後の塗膜とコンクリートとの接触抵抗が減少するため、コンクリートとの付着性能が低下する。
水性湿潤剤の含有率は、後記する不揮発性成分量に基づいて算出することが好ましい。
(反応溶媒)
反応溶媒は、エポキシ樹脂を変性して変性エポキシ樹脂を合成するために使用する溶媒である。反応溶媒は、エポキシ樹脂、変性に使用する樹脂等の化合物、及び、重合開始剤が溶解するものを使用する。反応溶媒は、例えば、脂肪酸、アクリル樹脂単量体(モノマー)、ポリオキシアルキレンアミン化合物、エポキシ樹脂、及び、重合開始剤が溶解する溶媒が好ましい。
反応溶媒は、加えて、変性エポキシ樹脂合成後変性エポキシ樹脂を単離せずにエポキシ樹脂エマルションの製造が可能となる、水と任意の割合で均一に混合する溶媒でもあればより好ましい。これらの条件を満たす反応溶媒として、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。
(重合溶媒)
重合溶媒は、水溶性アクリル樹脂単量体(モノマー)を重合して水溶性アクリル樹脂(重合体、ポリマー)を合成するために使用する溶媒である。重合溶媒は、水溶性アクリル樹脂単量体(モノマー)、水溶性アクリル樹脂(重合体、ポリマー)、及び、重合開始剤が溶解するものを使用する。
重合溶媒は、加えて、水溶性アクリル樹脂合成後水溶性アクリル樹脂を単離せずに水溶性アクリル樹脂を含む溶液(反応溶液)の状態で水性防錆塗料の製造が可能となる、水と任意の割合で均一に混合する溶媒でもあればより好ましい。これらの条件を満たす重合溶媒として、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。なお、反応溶媒と重合溶媒はそれぞれ条件を満たす場合は、同じ種類の溶媒であってもよい。
(重合開始剤)
重合開始剤は、水溶性アクリル樹脂単量体(モノマー)を重合して水溶性アクリル樹脂(重合体、ポリマー)を重合するために使用する。重合開始剤は、使用する水溶性アクリル樹脂単量体、重合溶媒、又は、目標とする水溶性アクリル樹脂の分子量、重合度等から適宜選択することが可能であり、重合開始剤の種類に特に制限はない。例えば、重合開始剤としてt‐ブチルパーオキシベンゾエートが挙げられる。
(希釈溶媒)
希釈溶媒は、変性したエポキシ樹脂の反応溶液に添加してエポキシ樹脂エマルションとするための溶媒である。又、希釈溶媒は、重合した水溶性アクリル樹脂の反応溶液に添加して水溶性アクリル樹脂溶液とする溶媒である。
希釈溶媒は、エポキシ樹脂エマルション、及び、水溶性アクリル樹脂の固化を防止するために、水を主成分として水溶性のアミン類を所定量添加して塩基性にしたものが好ましい。添加可能な水溶性のアミン類としては、例えば、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、アンモニア水等が挙げられる。水溶性のアミン類の添加量、及び、pHは、変性エポキシ樹脂、水溶性アクリル樹脂の酸価に合わせて適宜調整可能である。
(有機溶媒)
本発明に係る水性防錆塗料の濃度、物性を調整するために、水と任意の割合で均一に混合する有機溶媒を加えることも可能である。
混合可能な有機溶媒の例としては、2‐ブトキシエタノール、3‐メトキシ‐3‐メチル‐1‐ブタノール、2‐プロパノール等のアルコール類、及び、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類が挙げられる。
(その他の塗料成分)
本発明に係る水性防錆塗料は、水性防錆塗料全体を100質量%とした場合に防錆性能、及び、付着性能を阻害しない範囲である、0質量%を超えて30質量%以下の範囲で、他の塗料成分を含有することも可能である。
その他の塗料成分の例としては、抑泡剤(消泡剤)、増粘剤、粘弾性調整剤、体質顔料、無機着色顔料、有機着色顔料等が挙げられる。体質顔料の具体例としては炭酸カルシウム、タルク等が、無機着色顔料の具体例としては酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ等が挙げられる。
(不揮発性成分)
本発明に係る水性防錆塗料に含まれる各成分量を不揮発性成分率から算出することも可能である。不揮発性成分率は、例えば、JIS K5601‐1‐2に規定する105℃で1時間加熱することにより得られる不揮発性成分量から算出することが可能である。
水性防錆塗料の製造において、エポキシ樹脂エマルション、水溶性アクリル樹脂等の各塗料成分を合成した後、その反応溶液から各塗料成分を単離せずに、溶液状態のまま各塗料成分を取り扱う方が製造工程上都合のよい場合が多い。この様な場合であっても、この不揮発性成分率の算出結果を使用することにより、各塗料成分の含有量を算出して本発明に係る水性防錆塗料を製造することが可能である。
算出可能な含有成分としては、例えば、エポキシ樹脂エマルションを構成するエポキシ樹脂、水溶性アクリル樹脂、水性防錆剤、水性湿潤剤等が挙げられる。
(粘度)
合成したエポキシ樹脂エマルション、及び、水溶性アクリル樹脂の反応溶液を希釈溶媒で希釈した水溶性アクリル樹脂溶液等の粘度は、ブルックフィールド型粘度計(DV−1 Prime Viscometer、Brookfieldengineering Laboratorics社製)を用いて25℃で、JIS Z8803(2011)の規定に従い、測定して得ることが可能である。
水性防錆塗料の粘度は、造膜性能、及び、取り扱いの点で、20mPa・s以上200mPa・s以下が好ましい。
<水性防錆塗料の製造方法>
水性防錆塗料は、エポキシ樹脂エマルションと、水溶性アクリル樹脂と、水性防錆剤と、水性湿潤剤とを合成して、エポキシ樹脂エマルションと、水溶性アクリル樹脂と、水性防錆剤と、水性湿潤剤とを混合して製造する。一例として、以下に製造方法を示す。
(エポキシ樹脂エマルション)
水と任意の割合で均一に混合する反応溶媒とエポキシ樹脂を均一に加熱撹拌しながらこの溶液中に、エポキシ樹脂と反応して水に分散させる変性単量体(モノマー)等、及び、重合開始剤を滴下する。次に、滴下が終了した反応溶液を一定時間加熱撹拌することで、このエポキシ樹脂単量体と変性単量体との反応を進行させて本発明に使用する水分散可能な変性エポキシ樹脂(重合体、ポリマー)を得る。そして、得られた変性エポキシ樹脂反応溶液に希釈溶媒を撹拌しながら加えて混合する。以上の手順により、エポキシ樹脂エマルションを得ることが可能である。
変性単量体(モノマー)としては、例えば、カルボキシル基を有するアクリル酸、カルボキシル基を有するメタクリル酸等のアクリル系樹脂が挙げられる。反応溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。
本発明に係る水性防錆塗料の製造においては、変性した変性エポキシ樹脂を単離せず、そのまま反応溶液ごと希釈溶媒により希釈して得られるエポキシ樹脂エマルションを用いることができる。
(水溶性アクリル樹脂)
水と任意の割合で均一に混合する重合溶媒を加熱撹拌しながらこの溶媒中に、アクリル樹脂単量体(モノマー)、及び、重合開始剤を滴下する。次に、滴下が終了した反応溶液を一定時間加熱撹拌することで、このアクリル樹脂単量体の重合反応を進行させて水溶性アクリル樹脂(重合体、ポリマー)を得る。得られた水溶性アクリル樹脂を反応溶液ごと希釈溶媒に撹拌しながら加える。以上の手順により、水溶性アクリル樹脂溶液を得ることが可能である。
アクリル樹脂単量体(モノマー)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、メタクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、及び、スチレンが挙げられる。
重合溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。
本発明に係る水性防錆塗料の製造においては、この重合反応により得られる水溶性アクリル樹脂を単離せず、そのまま反応溶液ごと希釈溶媒により希釈して得られる水溶性アクリル樹脂溶液を用いることができる。
(水性防錆塗料)
水性防錆塗料は、エポキシ樹脂エマルション、水溶性アクリル樹脂溶液、水性防錆剤、水性湿潤剤、そして、希釈溶媒を室温で容器内において撹拌して混合することで得られる。
<水性防錆塗装金属製品>
本発明に係る水性防錆塗装金属製品は、本発明に係る水性防錆塗料で塗装した金属製品である。本発明に係る水性防錆塗料は、被塗装物である金属製品の種類、材質、大きさ、用途等を問わない。金属製品の材質としては、例えば、鉄、アルミニウム、これらの合金などが挙げられる。金属製品の表面に、例えば、錫、亜鉛等の鍍金処理が施されていてもよいし、ショットブラスト、サンディング、ブラシ等での素地調整処理が施されていてもよい。金属製品の種類として、例えば、H型鋼、非常階段、コンクリート埋設鉄筋、コンクリート埋設金具、鉄骨、アンカーボルト等の建設資材、プレス金型等の機械部品、金具等の金属部品が挙げられる。
(塗膜の膜厚)
本発明に係る水性防錆塗装金属製品における水性防錆塗料による塗膜の膜厚は、塗装した後の乾燥後の膜厚で3μm以上20μm以下とする。乾燥後の塗膜の膜厚が3μm未満であると、塗膜の厚さが不均一となり塗膜の強度に差が生じて塗膜強度が低下した部分を起点として塗膜の割れ、剥離等の損傷が発生し易くなる。そして、この割れ、剥離等の損傷から腐食原因物質である水分等が浸入することにより、水性防錆塗料の防錆性能が低下する。乾燥後の塗膜の膜厚が20μmを超えると、曲げ加工時等に曲率半径が大きくなることで割れ、剥離等の損傷が発生し易くなり腐食原因物質が浸入して防錆効果が低下する。膜厚は、JIS K5600(1999)に従い測定することが可能である。
水性防錆塗装金属製品に形成される水性防錆塗料の膜厚は、5μm以上15μm以下が好ましい。
(塗装方法)
本発明に係る水性防錆塗料の金属製品への塗装方法に制限はなく、被塗装物である金属製品の形状、大きさに合わせて各種の塗装方法を適宜選択可能である。例えば、スプレー塗装、刷毛塗り、浸漬塗装等が挙げられる。
水性防錆塗料の乾燥後の膜厚を3μm以上20μm以下とする方法についても制限はなく、1回の塗装で乾燥後の膜厚が3μm以上20μm以下となる様に塗装をしてもよいし、複数回繰り返して重ねて塗装することにより乾燥後の膜厚が3μm以上20μm以下となる様に塗装をしてもよい。
水性防錆塗料の乾燥方法についても制限はなく、送風による強制乾燥、加熱乾燥、自然乾燥等任意の方法を採ることができる。
以上、本発明に係る水性防錆塗料は、(変性)エポキシ樹脂と所定のガラス転移点を有する水溶性アクリル樹脂を含有することにより、乾燥後の塗膜が薄膜でありながら強度と柔軟性を兼ね備える。このため、薄膜の塗膜が塗装後の金属製品等の被塗装物の伸縮、変形等にも長期間追従可能であり、塗膜の割れ、剥離等の損傷が発生し難くなる。よって、防錆性能が高く、長期間持続し、発揮される。塗装後に金属製品等が屋外で長期間保管され、使用されても塗膜の割れ、剥離を生じ難く、長期間にわたり防錆性能に優れる。季節変化、環境変化、塩害を受けやすい沿岸部等の使用環境の違いに対応することも可能である。
又、本発明に係る水性防錆塗料は、所定の酸価を有する水溶性アクリル樹脂を含有することにより、水に均一に分散し易く塗膜が薄膜で均一になるため、塗料の塗膜形成性能を向上させることが可能になり、かつ、塗膜の長期間の防錆性能が向上する。
更に、本発明に係る水性防錆塗料は、塗膜を薄膜とすることが可能であり、親水性を有すると共に塗膜中の低分子成分量が少ないため、塗膜がコンクリートとの付着を妨げず、コンクリートとの付着性能にも優れる。このため、本発明に係る水性防錆塗料により塗装した鉄筋等の建設資材は塗膜を除去することなくそのまま使用可能であり、省力化を図ることができる。
そして、本発明に係る水性防錆塗料は、水に難溶性、又は、不溶性の有機溶剤を含有しない水性塗料であり、かつ、有機溶媒の含有量を低減できるため引火の危険性も低く、取り扱いが容易である。又、揮発性有機化合物(VOC)により環境を汚染するおそれも少なく揮発性有機化合物対策を必要としないため、製造コスト、及び、使用コストの低減を図ることができる。
加えて、本発明に係る水性防錆塗料は、低粘度であるため取り扱い易く、被塗装物への湿潤性(濡れ性、ヌレ性)にも優れている。又、塗料の造膜性能が優れているため、均一かつ薄膜での塗装が可能であり塗料の塗り残しも防止できる。そして、焼付けが不要である水性塗料であるため、特別な装置を必要とせず、塗装方法、乾燥方法について制限もない。よって、被塗装物の形状、大きさ等に合わせて適切な方法で塗装、及び、乾燥をすることが可能であり、様々な金属製品に使用が可能である。
即ち、この特徴を生かして、コンクリートに埋設される鉄筋、アンカーボルト、金具等の大きさ、及び、質量も様々な金属製品に対して、スプレー塗装、刷毛塗り、浸漬塗装等各種任意の塗装方法により均一かつ薄膜での塗装が可能である。
以下に、これら本発明の効果を確認した実施例について説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(エポキシ樹脂エマルションの調製)
滴下ロート、冷却用コンデンサー、及び、撹拌機を備えたフラスコに、反応溶媒としてエチレングリコールモノブチルエーテル(三協化学株式会社製ブチルセロソルブ)267質量部と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピコート834、油化シェルエポキシ株式会社製、エポキシ当量230〜270)240質量部とを入れて、窒素気流下で撹拌しながら165〜175℃に加温した。このフラスコ中のエポキシ樹脂溶液にメタクリル酸メチル(三菱ガス化学株式会社製)39質量部、メタクリル酸ブチル(三菱ガス化学株式会社製)43質量部、スチレン(旭化成ケミカルズ株式会社製)28質量部、メタクリル酸(三菱ガス化学株式会社製)50質量部、及び、t‐ブチルパーオキシベンゾエート(日油株式会社製パーブチルZ)4質量部を混合したものを1時間かけて滴下した。滴下終了後、更に165〜175℃で2時間加熱撹拌をした。これにより変性エポキシ樹脂Aを含む反応溶液を得た。
得られた反応溶液に、水165質量部、及び、28%アンモニア水164質量部からなる希釈溶媒を撹拌しながら加えて、エポキシ樹脂エマルションAeを得た。得られたエポキシ樹脂エマルジョンAeの組成を表1に示す。なお、エポキシ樹脂エマルションの質量部の値はエポキシ樹脂エマルション全体を基準(1000質量部)とする。
Figure 2015168729
又、表1に示す単量体成分組成で、変性エポキシ樹脂Aと同様の反応条件により、変性エポキシ樹脂BないしEを得た。得られた変性エポキシ樹脂を含む反応溶液に表1に記載の希釈溶媒を撹拌しながら加えてエポキシ樹脂エマルションBeないしEeを得た。得られたエポキシ樹脂エマルションBeないしEeの組成を表1に記す。
(エポキシ樹脂エマルションの不揮発性成分含有率)
得られたエポキシ樹脂エマルションAeないしEeの樹脂不揮発性成分含有率は、加熱残分測定法(JIS K5601−1−2に規定する105℃、1時間加熱)で測定した。結果を表2に示す。得られた各不揮発性成分含有率は、後述する水性防錆塗料の製造における各エポキシ樹脂エマルションの樹脂含有量の算出に用いた。
(エポキシ樹脂エマルションの粘度)
エポキシ樹脂エマルションAeないしEeの粘度を、ブルックフィールド型粘度計(DV−1 Prime Viscometer、Brookfieldengineering Laboratorics社製)を用いて25℃で測定した。結果を表1に示す。
(水溶性アクリル樹脂溶液の調製)
滴下ロート、冷却用コンデンサー、及び、撹拌機を備えたフラスコに重合溶媒としてエチレングリコールモノブチルエーテル(三協化学株式会社製ブチルセロソルブ)392質量部を入れて撹拌しながら窒素気流下で165〜175℃に加温した。このフラスコ中のエチレングリコールモノブチルエーテルにメタクリル酸(三菱ガス化学株式会社製)130質量部、メタクリル酸メチル(三菱ガス化学株式会社製)100質量部、スチレン(旭化成ケミカルズ株式会社製)100質量部、アクリル酸ブチル(三菱化学株式会社製)70質量部、及び、t‐ブチルパーオキシベンゾエート(日油株式会社製パーブチルZ)8質量部を混合したものを1時間かけて滴下した。滴下終了後、更に165〜175℃で1時間加熱撹拌をした。これにより水溶性アクリル樹脂Aを含む反応溶液を得た。
得られた反応溶液に、水100質量部、及び、28%アンモニア水100質量部からなる希釈溶媒を撹拌しながら加えて希釈し、水溶性アクリル樹脂溶液Asを得た。得られた水溶性アクリル樹脂溶液Asの組成を表2に示す。なお、水溶性アクリル樹脂の質量部の値は水溶性アクリル樹脂全体を基準(1000質量部)とする。
Figure 2015168729
又、表2に示す単量体成分組成で、水溶性アクリル樹脂Aと同様の重合条件により、水溶性アクリル樹脂BないしMを含む反応溶液を得た。得られた水溶性アクリル樹脂を含む反応溶液に表2に記載の希釈溶媒を撹拌しながら加えて、同様に水溶性アクリル樹脂溶液BsないしMsを得た。得られた水溶性アクリル樹脂溶液BsないしMsの組成を表2に示す。
(水溶性アクリル樹脂のガラス転移点)
得られた水溶性アクリル樹脂AないしMを含む反応溶液をJIS K5601‐1‐2の規定に従い、105℃で1時間加熱乾燥することで得た測定試料について、JIS K7121の規定に従い示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製DSC‐7型)でガラス転移点を測定した。結果を表2に示す。
(水溶性アクリル樹脂の酸価)
得られた水溶性アクリル樹脂AないしMを含む反応溶液を体積比でトルエン:エタノール=2:1の混合溶媒で希釈して、JIS K5601‐2‐1の規定に従い測定した。結果を表2に示す。
(水溶性アクリル樹脂溶液の不揮発性成分含有率)
得られた水溶性アクリル樹脂溶液AsないしMsの樹脂不揮発性成分含有率は加熱残分測定法(JIS K5601−1−2に規定する105℃、1時間加熱)で測定した。結果を表2に示す。得られた各不揮発性成分含有率の値は、後述する水性防錆塗料の製造における各水溶性アクリル樹脂含有量の算出に用いた。
(水溶性アクリル樹脂溶液の粘度)
水溶性アクリル樹脂溶液AsないしMsの粘度をブルックフィールド型粘度計(DV−1 Prime Viscometer、Brookfieldengineering Laboratorics社製)を用いて25℃で測定した。結果を表2に示す。
(水性防錆剤)
水性防錆剤は、有機酸としてジノリルナフタレンスルホン酸(CARBONE SCIENTIFIC CO.,LTD製)37質量部、オクタン酸(東京化成工業株式会社製)23質量部、及び、塩基としてトリエタノールアミン(東京化成工業株式会社製)40質量部を室温にて容器中で直接混合することにより得た。この水性防錆剤を水性防錆剤Aとする。なお、水性防錆剤の質量部の値は水性防錆剤全体を基準(100質量部)とする。
又、表3に示す成分組成で、水性防錆剤Aと同様の条件により、水性防錆剤BないしDを得た。
Figure 2015168729
(水性防錆剤の不揮発性成分含有率)
水性アクリル樹脂溶液の場合と同様の手法により、水性防錆剤AないしDに含まれる不揮発性成分の含有率を測定した。結果を表3に示す。得られた不揮発性成分含有率の各値は、後述する水性防錆塗料の製造における各水性防錆剤含有量の算出に用いた。
(水性湿潤剤)
水性湿潤剤は、表4に示すものを、後述する水性防錆塗料の製造において使用した。
Figure 2015168729
(水性湿潤剤の不揮発性成分含有率)
水性アクリル樹脂溶液の場合と同様の手法により、水性湿潤剤AないしEに含まれる不揮発性成分の含有率を測定した。結果を表4に示す。得られた不揮発性成分含有率の各値は、後述する水性防錆塗料の製造における、各水性湿潤剤含有量の算出に用いた。
(水性防錆塗料の製造)
水487gが入った容器に、エポキシ樹脂としてエポキシ樹脂エマルションAeを384g、水溶性アクリル樹脂として水溶性アクリル樹脂溶液Asを99g、水性防錆剤Aを20g、及び、水性湿潤剤Bを10g投入し、容器中でこれら内容物を撹拌して混合することにより水性防錆塗料である塗料1(実施例)を得た。塗料1の組成を表5に示す。
なお、エポキシ樹脂、及び、水溶性アクリル樹脂の値は、それぞれエポキシ樹脂エマルション、及び、水溶性アクリル樹脂溶液の投入量から計算した値を記載する。
Figure 2015168729
又、表1ないし表4に示す組成、及び、物性を有する各成分を、各々表5に示す比率で塗料1と同様にして水と混合することにより、塗料2ないし塗料17(実施例)を製造した。
(水性防錆塗料の不揮発性成分含有率)
水性アクリル樹脂溶液の場合と同様の手法により、塗料1ないし塗料17に含まれる不揮発性成分の含有率を測定した。結果を表5に示す。
(水性防錆塗料の樹脂成分に対するエポキシ樹脂含有率)
水性防錆塗料の樹脂成分に対するエポキシ樹脂含有率は、エポキシ樹脂エマルションの現実の使用量(質量部)にエポキシ樹脂エマルション中のエポキシ樹脂成分含有率の値を乗じて算出した含有量を、エポキシ樹脂エマルションの使用量(質量部)にエポキシ樹脂エマルションの不揮発成分含有量の値を乗じて算出した樹脂含有量と水溶性アクリル樹脂溶液の使用量(質量部)に水溶性アクリル樹脂溶液の不揮発成分含有量を乗じて算出した樹脂含有量の総量で除して求めた。結果を表5に示す。
更に、塗料1と同様に、表1ないし表4に示す組成、及び、物性を有する各成分を各々表6に示す比率で撹拌して混合することにより、塗料21ないし塗料30(比較例)を製造した。各塗料の不揮発性成分を測定し、エポキシ樹脂含有率を算出した。結果を表6に示す。
Figure 2015168729
(評価試験)
以下の手法により、塗料1〜17、及び、塗料21〜30の防錆性、並びに、コンクリート付着性の評価実験を実施した。
(試験体)
塗料1ないし塗料17(実施例)、及び、塗料21ないし塗料30(比較例)を満たした浸漬槽に標準径25mmの異形棒鋼(JIS G3112.SD345.D25)(鉄筋)を常温(25℃)で浸漬する。被塗物全体を浸漬した後、取り出し、常温(25℃)で24時間静置して乾燥して、試験体1ないし試験体17(実施例)、及び、試験体21ないし試験体30(比較例)を得た。
前記同様の浸漬塗装により、塗料1による塗装乾燥を繰り返し塗膜厚25μmの塗膜を形成して試験体31(比較例)を得た。
(塗装膜厚測定)
試験体1ないし試験体17(実施例)、及び、試験体21ないし試験体31(比較例)の塗装膜厚は、電磁誘導式膜厚計(株式会社ケツト科学研究所、LZ−200J)によりJIS K5600(1999)に従い10点測定し、その平均値を算出して塗装膜厚とした。
(防錆性能評価)
本発明に係る水性防錆塗料の防錆性能評価は、試験体1ないし試験体17(実施例)、及び、試験体21ないし試験体31(比較例)を屋外(神奈川県綾瀬市上土棚北、日本化学塗料株式会社敷地内)の地盤面であるコンクリート舗装面上の高さ1cmの位置で各試験体を水平に静置して12ヶ月間暴露した後、外観を目視にて観察した。
目視にて錆が観察されなかった試験体は防錆性能に優れる(○)とし、錆が観察された試験体は防錆性能に劣る(×)とした。なお、試験体の切断面は評価の対象外とした。
(コンクリート付着性能評価)
本発明に係る水性防錆塗料の付着性能評価は、土木学会が定めるエポキシ樹脂塗装鉄筋の付着強度試験方法(JSCE−E 516−2003)に準拠して無塗装試験体に対する塗装試験体の付着応力度比を塗膜乾燥後の時点で測定した。
測定の結果、付着応力度比が85%以上のものを付着性能に優れるとした。
(曲げ性能評価)
本発明に係る水性防錆塗料の防錆性能評価は、試験体1ないし試験体17(実施例)、及び、試験体21ないし試験体31(比較例)を電動油圧式鉄筋曲げ機(株式会社オグラ製、HBB−32HPW)を用いて90度押し曲げした時、曲げ部の塗膜の割れ、剥離の発生の有無を目視で観察した。曲げ部に塗膜の割れ、剥離が観察されなかった試験体は柔軟性に優れる(○)とし、割れ、剥離の観察された試験体は柔軟性に劣る(×)とした。
<実施例>
試験体1ないし試験体17(実施例)の評価試験結果を表5に記載する。
試験体1ないし試験体17はいずれも錆の発生は目視にて確認されなかった。又、試験体1ないし試験体15の付着応力度比は、いずれも90%以上で土木学会が定める基準(JSCE−E 516−2003)の85%を上回り優れていた。特に、試験体1〜4、6、8〜11は、付着応力度比が97%以上で非常に優れていた。
試験体1ないし試験体17は乾燥後の膜厚が3μm以上20μm以下の膜厚で90度曲げ性能評価で割れ、剥離は確認されなかった。
塗料1ないし塗料17は、乾燥後の膜厚が3μm以上20μm以下の薄膜でありながら12ヶ月間の長期間にわたり防錆効果を持続して発揮する金属製品等の防錆性能に優れ、かつ、コンクリートとの付着性能にも優れた塗料である。
<比較例>
試験体21ないし試験体31(比較例)の評価試験結果を表6に記載する。
試験体21ないし試験体26、28、30はいずれも試験体の角部に錆の発生が目視にて確認された。
試験体21に塗布した塗料21に含まれる水溶性アクリル樹脂Jのガラス転移点は0℃未満である。このため、塗膜が軟化して塗膜の強度が不足することにより、塗膜強度が低下した部分を起点として塗膜の割れ、剥離等の損傷が発生して水分等の腐食原因物質が浸入することにより、試験体21に錆が発生した。よって、塗料21は防錆性能に劣った。
試験体22に塗布した塗料22に含まれる水溶性アクリル樹脂Kのガラス転移点は125℃を超える。このため、塗膜が硬化して塗膜の柔軟性が低下することにより、柔軟性が低下した部分を基点として塗膜の割れ、剥離等の損傷が発生して水分等の腐食原因物質が浸入することにより、試験体22に錆が発生した。又、90度曲げ性能においても塗膜の割れ、剥離が発生し、柔軟性が劣った。よって、塗料22は防錆性能に劣った。
試験体23に塗布した塗料23の水溶性アクリル樹脂Lの酸価は80mg/KOH未満である。このため、塗膜の厚さが不均一となることで塗膜の強度が不均一となり、塗膜強度が低下した部分を起点として塗膜の割れ、剥離等の損傷が発生して水分等の腐食原因物質が浸入することにより、試験体23に錆が発生した。又、塗膜の強度が不均一なため、90度曲げ性能においても塗膜の割れ、剥離が発生し、柔軟性が劣った。よって、塗料23は防錆性能に劣った。
試験体24に塗布した塗料24の水溶性アクリル樹脂Mの酸価は240mg/KOHを超える。このため、乾燥後の塗膜の水和性が高くなりすぎて塗膜に水分等の腐食原因物質を含んだ結果、試験体24に錆が発生した。よって、塗料24は防錆性能に劣った。
試験体25に塗布した塗料25の樹脂成分の含有率は10質量%未満である。このため、塗料25中の塗膜形成成分が少なくなりすぎて塗膜厚が得難く、膜厚は2μmであった。そのため、塗膜強度が低下することにより、塗膜強度が低下した部分を起点として塗膜の割れ、剥離等の損傷が発生して水分等の腐食原因物質が浸入して、試験体25に錆が発生した。又、塗膜厚が薄く強度が低いため、90度曲げ性能においても塗膜の割れ、剥離が発生し、柔軟性が劣った。よって、塗料25は防錆性能に劣った。
試験体26に塗布した塗料26の水性防錆剤Aの不揮発性成分に基づく含有率は0.1質量%未満である。このため、防錆性能が低下して試験体26に錆が発生した。よって、塗料26は防錆性能に劣った。
試験体27に塗布した塗料27の水性防錆剤Aの不揮発性成分に基づく含有率は5質量%を超えるため、防錆性能に優れる。しかし、乾燥後の塗膜表面の潤滑性が増加して乾燥後の塗膜とコンクリートとの接触抵抗が減少した。よって、塗料27は金属製品とコンクリートとの付着性能に劣った。
試験体28に塗布した塗料28の水性湿潤剤Bの不揮発性成分に基づく含有率は0.1質量%未満である。このため、湿潤性が低下して塗膜が不均一となることによって塗膜の強度に差が生じて塗膜強度が低下した部分を起点として塗膜の割れ、剥離等の損傷が生じて水分等の腐食原因物質が浸入することで、試験体28に錆が発生した。又、塗膜の強度が不均一なため、90度曲げ性能においても塗膜の割れ、剥離が発生し、柔軟性が劣った。よって、塗料28は防錆性能に劣った。よって、塗料28は防錆性能に劣った。
試験体29に塗布した塗料29の不揮発性成分に基づく水性湿潤剤Bの含有量は5質量%を超えるため、防錆性能に優れる。しかし、乾燥後の塗膜表面の潤滑性が増加して乾燥後の塗膜とコンクリートとの接触抵抗が減少した。よって、塗料29は金属製品とコンクリートとの付着性能に劣った。
試験体30に塗布した塗料30の全樹脂成分量に対するエポキシ樹脂量が30質量%未満のため、塗膜中の防錆性に優れるエポキシ樹脂量が少なく、塗膜強度が低下した部分を起点として塗膜の割れ、剥離等の損傷が発生して水分等の腐食原因物質が浸入する事により試験体30に錆が発生した。よって、塗料30は防錆性能に劣った。
試験体33は塗料1を繰り返し塗装して塗膜厚を25μmとしたため、90度曲げ性能において曲率半径が大きくなり塗膜の割れ、剥離が発生した。よって、塗膜厚が20μmを超えると、柔軟性が劣った。

Claims (3)

  1. エポキシ樹脂エマルションと、
    水溶性アクリル樹脂と、
    水性防錆剤と、
    水性湿潤剤と、を含有する水性防錆塗料であって、
    前記エポキシ樹脂エマルションを構成する樹脂と前記水溶性アクリル樹脂との総量に対する前記エポキシ樹脂エマルションを構成するエポキシ樹脂量の割合が30質量%以上であり、
    前記エポキシ樹脂エマルションを構成する樹脂と前記水溶性アクリル樹脂との総量の前記水性防錆塗料に対する割合が10質量%以上40質量%以下であり、
    前記水性防錆剤の前記水性防錆塗料に対する割合が0.1質量%以上5質量%以下であると共に、
    前記水性湿潤剤の前記水性防錆塗料に対する割合が0.1質量%以上5質量%以下であって、
    前記水溶性アクリル樹脂のガラス転移点が0℃以上125℃以下であり、かつ、
    前記水溶性アクリル樹脂の酸価が80mg/KOH以上240mg/KOH以下であることを特徴とする水性防錆塗料。
  2. 前記水性湿潤剤が、ポリエーテル変性シリコーン系水性湿潤剤であることを特徴とする請求項1に記載の水性防錆塗料。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の水性防錆塗料を施した水性防錆塗装金属製品であって、
    前記水性防錆塗装金属製品表面の前記水性防錆塗料の乾燥後の膜厚が3μm以上20μm以下であることを特徴とする水性防錆塗装金属製品。
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