JP2010065241A - 水性エマルション処理液およびそれを用いた化成処理鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)有機樹脂、(B)バルブメタル化合物、(C)ポリエーテル変性シリコーン、および(D)水を含む、水性エマルション処理液であって、前記(A)有機樹脂のエマルション粒子径は、10〜100nmであり、前記(B)バルブメタル化合物の含有量は、前記(A)有機樹脂100質量部に対し、0.1〜5質量部であり、前記(C)ポリエーテル変性シリコーンの含有量は、前記(A)有機樹脂と(D)水の合計100質量部に対し、0.01〜3.0質量部である、水性エマルション処理液で、めっき鋼板を化成処理して、化成処理鋼板とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、めっき鋼板を化成処理した際に、高温高湿環境下での耐食性に優れる化成処理鋼板を与える(単に「高温高湿環境下での耐食性に優れる」ともいう)、水性エマルション処理液、およびこれにより化成処理された化成処理鋼板を提供することを目的とする。
(B)バルブメタル化合物、
(C)ポリエーテル変性シリコーン、および
(D)水を含む、水性エマルション処理液であって、
前記(A)有機樹脂のエマルション粒子径は、10〜100nmであり、
前記(B)バルブメタル化合物の含有量は、前記(A)有機樹脂100質量部に対し、0.1〜5質量部であり、
前記(C)ポリエーテル変性シリコーンの含有量は、前記(A)有機樹脂と(D)水の合計100質量部に対し、0.01〜3.0質量部である、水性エマルション処理液。
[2]前記(C)ポリエーテル変性シリコーンは、分子中のSi原子の数とポリエーテル基の数の比率が、モル比にして1:0.001〜1である、[1]に記載の処理液。
[3]前記(A)有機樹脂は、ウレタン樹脂またはアクリル樹脂である、[1]または[2]に記載の処理液。
[4]めっき鋼板の表面に、[1]〜[3]のいずれかに記載の処理液を塗布し、乾燥してなる化成処理皮膜を有する、化成処理鋼板。
[5]前記化成処理皮膜は、厚み方向で前記(C)ポリエーテル変性シリコーンの濃度が異なり、前記化成処理皮膜の表層近傍に、前記(C)ポリエーテル変性シリコーンが濃縮されている、[4]に記載の化成処理鋼板。
本発明の水性エマルション処理液は、
(A)有機樹脂、
(B)バルブメタル化合物、
(C)ポリエーテル変性シリコーン、および
(D)水を含む、水性エマルション処理液であって、水性エマルション処理液であって、
前記(A)有機樹脂のエマルション粒子径は、10〜100nmであり、
前記(B)バルブメタル化合物の含有量は、前記(A)有機樹脂100質量部に対し、0.1〜5質量部であり、
前記(C)ポリエーテル変性シリコーンの含有量は、前記(A)有機樹脂と(D)水の合計100質量部に対し、0.01〜3.0質量部であることを特徴とする。
水性エマルション処理液とは、分散媒である水に、主として(A)有機樹脂が微粒子となって分散している処理液である。水性エマルション処理液中、(B)バルブメタル化合物、および(C)ポリエーテル変性シリコーンは、微粒子として分散していてもよいし、水に溶解していてもよい。以下、本発明の水性エマルション処理液は、単に「処理液」とも呼ばれる。
有機樹脂とは、有機高分子化合物である。有機樹脂は、めっき鋼板に塗布されて、化成処理皮膜を形成する。有機樹脂の例には、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン樹脂、またはこれらの変性物が含まれる。本発明においては、前記有機樹脂の2種以上を併用してもよい。
ポリイソシアネートの例には、以下のものが含まれる。
フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、またはナフタレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート。
シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、またはテトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート。
逆に、処理液中の有機樹脂のエマルション粒子径が100nmを超えると、形成される化成処理皮膜の緻密性が低下するので、化成処理鋼板の耐食性や加工性が低下する。
バルブメタルとは、その酸化物が高い絶縁抵抗を示す金属をいい、バルブメタル元素を含む化合物をバルブメタル化合物という。バルブメタルの例には、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、およびWが含まれる。バルブメタル化合物の例には、これらの金属の塩や有機金属化合物が含まれ、その具体例には以下の化合物が含まれる。
また、フッ素化合物と前記バルブメタル化合物を含む化成処理液を調製し、化成処理中にフッ素とバルブメタルを反応させて、バルブメタルフッ化物を皮膜中に生成させてもよい。この場合のフッ素化合物の例には、NH4FやMF6が含まれる(Mは金属元素)。NH4FやMF6の含有量は、有機樹脂100質量部に対し0.1〜3.0質量部であることが好ましい。
ポリエーテル変性シリコーンとは、ポリシロキサン結合からなる主鎖を有するシリコーンであって、その末端または側鎖にポリエーテル基を有するシリコーンをいう。ポリシロキサン結合からなる主鎖を有するシリコーンの例には、ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルシロキサンにおける一部のメチル基が、他のアルキル基またはアリーレン基であるシリコーンが含まれる。
この他に、シリコーンの変性に用いられる基としては、アミノ基、カルボキシル基、またはメルカプト基が知られている。これらの基は、シリコーンの親水性を高める役割を果たすものの、本発明のバルブメタル化合物と反応しやすい。そのため、前記(A)成分と(B)成分とアミノ基等で変性されたシリコーンを含む処理液は、化成処理皮膜とされた際にシリコーンが皮膜中を移動しにくい。これに対し、本発明の処理液は、ポリエーテル基で変性されたシリコーンを採用するため、バルブメタル化合物と反応しにくく、シリコーンが皮膜の表層部へ移動しやすい。
ポリオキシアルキレン基の具体例には、−OCH2−(OCH2)n、−OC2H5−(OC2H5)nが含まれる。この例において、nは1以上の整数を示す。
本発明で用いられる水は、通常エマルションに用いられる水であれば特に限定されない。
本発明の処理液は、発明の効果を損なわない範囲で任意に製造されるが、以下、好ましい製造方法を説明する。
本発明の処理液は、
(a)水分散性有機樹脂エマルションを準備する工程と、
(b)前記水分散性有機樹脂エマルションに、バルブメタル化合物およびポリエーテル変性シリコーンを混合する工程、を含み製造されることが好ましい。
本工程では、水分散性有機樹脂エマルションを準備する。水分散性有機樹脂エマルションは、市販品を購入してもよいが、次に述べる方法で準備することが好ましい。
1)有機樹脂を溶媒に溶解した樹脂溶液と、界面活性剤と、水を高せん断攪拌してエマルションを得る界面活性剤法。
2)水中にモノマーが分散したエマルションを調製して、モノマーを重合させる乳化重合法。
3)親水基を分子内に導入した有機樹脂を準備して、水中に分散させる自己乳化法。
本工程では、前工程で準備した水分散性有機樹脂エマルションに、バルブメタル化合物およびポリエーテル変性シリコーンを混合する。両者を混合する手段は特に限定されないが、攪拌機や三本ロールを用いて両者を混合することが好ましい。混合する温度も特に限定されないが、室温で混合することが好ましい。
本発明の処理液を鋼板に塗布し、乾燥させることにより、当該処理液により化成処理された化成処理鋼板が得られる。
鋼板とは板状の鋼である。鋼板の例には、普通鋼板、めっき鋼板、ステンレス鋼板が含まれる。めっき鋼板の例には、溶融めっき、電気めっき、蒸着めっきなどが施された鋼板が含まれる。溶融めっき鋼板の例には、溶融Zn浴、溶融Zn−Al合金浴、溶融Zn−Al−Mg合金浴、溶融Zn−Mg合金浴、溶融Al浴、溶融Al−Si合金浴などを用い、連続めっきまたは浸漬めっきにより得られるものが含まれる。あるいは鋼板として、溶融めっき後に合金化処理した合金化溶融めっき鋼板を用いてもよい。
化成処理は公知の方法で行ってよいが、以下に好ましい化成処理方法を説明する。
本発明の化成処理液を用いた化成処理は、
(c)めっき鋼板を準備する工程と、
(d)前記めっき鋼板に、本発明の化成処理液を塗布し、加熱する工程と、を含み実施されることが好ましい。
本工程ではめっき鋼板を準備する。準備する手段は特に限定されないが、既に述べたとおりの方法で準備することが好ましい。または、市販品を購入してめっき鋼板を準備してもよい。
本工程では、前工程で準備しためっき鋼板に、本発明の化成処理液を塗布し、乾燥する。塗布する工程を塗布工程、乾燥する工程を乾燥工程ともいう。
化成処理液は既に述べた方法で調製される。調製された処理液は、ロールコート法、スピンコート法、スプレー法などでめっき鋼板のめっき層の上に塗布される。塗布後、水洗することなく塗布膜を乾燥して、めっき層の上に化成処理皮膜を形成する。
不揮発分30質量%、エマルションの平均粒径10nmの水性ウレタン樹脂エマルションを準備した。有機樹脂100質量部に対し、バルブメタル化合物として炭酸ジルコニウムアンモニウムを0.7質量部(ZrO2換算で0.33質量部)、ポリエーテル変性シリコーン(東レ・ダウコーニング(株)製、品名FZ-77)は有機樹脂と水の合計100質量部に対し、0.2質量部を加えて、定法により混合し、処理液を得た。
1)塩水噴霧試験
化成処理鋼板から試験片(150mm×70mm)を切り出し、端面シールを施した。この試験片を用いて塩水噴霧試験(JIS Z2371に準拠)240hを実施し、平坦部の白錆発生面積率を評価した。
白錆発生面積率が5%未満である場合は◎、5%以上10%未満である場合は○、10%以上20%未満である場合は△、20%以上である場合は×と評価した。
化成処理鋼板から試験片(150mm×70mm)を切り出し、端面シールを施した。この試験片を雰囲気温度50℃、RH98%の高温高湿槽内に480h放置し、平坦部の白錆発生面積を評価した。
白錆発生面積率が5%未満である場合は◎、5%以上10%未満である場合は○、10%以上20%未満である場合は△、20%以上である場合は×と評価した。
化成処理鋼板から試験片(30mm×250mm)を切り出し、端面シールを施した。この試験片を用いてドロービード試験(金型;ビード高さ4mm、加圧力;3000N、引き抜き速度8.3×10−2m/秒)を行い、金型摺動部の化成処理皮膜の残存率を測定した。
皮膜残存率が80%以上である場合は◎、60%以上80%未満である場合は○、40%以上60%未満である場合は△、40%未満である場合は×と評価した。
有機樹脂エマルション、バルブメタル化合物およびポリエーテル変性シリコーンの種類、添加量を表1に示すとおりに変更し、実施例1と同様にして化成処理鋼板を得た。得られた化成処理鋼板について、実施例1と同様の評価を行った。
有機樹脂エマルション、バルブメタル化合物およびシリコーンの種類、添加量を、表1に示すとおりとし、実施例1と同様にして化成処理鋼板を得た。得られた化成処理鋼板について、実施例1と同様の評価を行った。
アミノ基やメルカプト基で変性したシリコーンを用いた比較例9、10の化成処理鋼板は、塗膜表層へのシリコーンの濃化が不足するので高温高湿試験での耐食性が劣っていた。
2 ポリエーテル変性シリコーンが濃縮されているc層
3 c層以外の層
4 めっき鋼板
5 c層とc層以外の層の界面
Claims (5)
- (A)有機樹脂、
(B)バルブメタル化合物、
(C)ポリエーテル変性シリコーン、および
(D)水を含む、水性エマルション処理液であって、
前記(A)有機樹脂のエマルション粒子径は、10〜100nmであり、
前記(B)バルブメタル化合物の含有量は、前記(A)有機樹脂100質量部に対し、0.1〜5質量部であり、
前記(C)ポリエーテル変性シリコーンの含有量は、前記(A)有機樹脂と(D)水の合計100質量部に対し、0.01〜3.0質量部である、水性エマルション処理液。 - 前記(C)ポリエーテル変性シリコーンは、分子中のSi原子の数とポリエーテル基の数の比率が、モル比にして1:0.001〜1である、請求項1に記載の処理液。
- 前記(A)有機樹脂は、ウレタン樹脂またはアクリル樹脂である、請求項1に記載の処理液。
- めっき鋼板の表面に、請求項1に記載の処理液を塗布し、乾燥してなる化成処理皮膜を有する、化成処理鋼板。
- 前記化成処理皮膜は、厚み方向で前記(C)ポリエーテル変性シリコーンの濃度が異なり、前記化成処理皮膜の表層近傍に、前記(C)ポリエーテル変性シリコーンが濃縮されている、請求項4に記載の化成処理鋼板。
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