JP2012111859A - 透明防食塗料組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】塗膜外観、耐糸錆性、耐水性のいずれも良好なクロムフリーの透明防食塗料組成物の提供。
【解決手段】(A)ポリビニルアセタール樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)酸価80〜200mgKOH/gのアクリル系共重合体、および(D)架橋剤を含有する透明防食塗料組成物。
【選択図】なし
【解決手段】(A)ポリビニルアセタール樹脂、(B)エポキシ樹脂、(C)酸価80〜200mgKOH/gのアクリル系共重合体、および(D)架橋剤を含有する透明防食塗料組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、金属地肌面に塗布して金属地肌の金属光沢を損ねずに糸錆化を防止することができる透明防食塗料組成物に関する。
近年、自動車の車体軽量化の要請に伴いホイール、ブレーキシリンダー、ラジエーター、エンジンシリンダーヘッド等の自動車部品をアルミニウム系あるいはマグネシウム系の軽合金により構成する比率が高まっている。特にホイールをアルミニウム系合金で形成した所謂アルミホイールの普及は目覚ましく、意匠性に優れたものを含め広く実用されている。
一般にアルミホイールはアルミニウム系合金を鋳造、鍛造などの手段によりホイール形状に成形加工したのち、内外面の必要部分を切削して作製されるが、美粧性や耐候性を付与するために全面もしくは一部に塗装が施される。この塗装は、通常、着色顔料や金属粉末顔料、防錆顔料、体質顔料などを含有する塗料で下塗りし、種類によっては再度部分的に切削したのち、露出する地肌の金属光沢を長期に保持するために無色透明のクリヤー塗料で1〜2回上塗りする工程が採られている。
このうち、下塗り塗料としてはストロンチウムクロメート、ジンククロメート、塩基性硫酸鉛といった防錆顔料や、無公害顔料として知られるリンモリブデン酸系顔料等を含む組成のものが使用されているためホイールの防食性は大いに向上している。しかし、従来から上塗りに用いられている熱硬化性アクリルメラミン樹脂系のクリヤー塗料は、透明性、耐候性、付着性などの点では優れているものの、塗膜に傷が入った場合の防食性に難点がある。このため、ポリエステル樹脂やエポキシ樹脂と併用して塗膜形成成分の改善が進められている。しかし、ポリエステル樹脂は加工性に優れているものの、防食性に難点があり、また、エポキシ樹脂は防食性に優れているものの、耐候性に難点があり、防錆顔料を含む下塗り塗料に匹敵する防食性を付与するまでには至っていない。
このような問題点の解消を図るため、ポリビニルアセタール樹脂およびエポキシ樹脂に、クロムやニッケルなどの金属のリン酸塩を組み合わせて配合することにより、アルミニウム系やマグネシウム系合金の切削地肌独特の金属光沢(虹色の干渉縞反射光を指す)を損なうことなく透明性、防食性および耐水性に優れた塗膜を形成することができる透明防食塗料組成物(特開平05−9410号公報) が提案されている。
近年、安全や環境の観点から、特にクロム系の防食剤を含有しない塗料が求められている。そこで、本発明は、クロム系防食剤を使用せずに、アルミニウム系やマグネシウム系合金の切削地肌独特の金属光沢を損なうことのない透明かつ高防食性能の塗料組成物を提供する。
本発明者らは、上記課題の解決につき鋭意研究を重ねた結果、ポリビニルアセタール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂もしくはブロックイソシアネート化合物に、高酸価のアクリル系共重合体を含有することで、外観、耐水性が良好で、かつ、クロムやニッケルなどの金属のリン酸塩を含有する塗料と同等以上の防食性を発揮するクロムフリーの環境対応塗料を提供できることを見いだした。さらに、高酸価のアクリル系共重合体を全樹脂固形分中1〜10質量%含有することで、非常に優れた特性を発揮することを明らかにした。
上記の目的を達成するための本発明による透明防食塗料組成物は、
(A)ポリビニルアセタール樹脂、
(B)エポキシ樹脂、
(C)酸価80〜200mgKOH/gのアクリル系共重合体、および
(D)架橋剤
を主成分とすることを構成上の特徴とする。
(A)ポリビニルアセタール樹脂、
(B)エポキシ樹脂、
(C)酸価80〜200mgKOH/gのアクリル系共重合体、および
(D)架橋剤
を主成分とすることを構成上の特徴とする。
本発明の組成物における(A)成分であるポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールとアルデヒド類をアセタール化反応させて得られるもので、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリビニルプロピオナール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルヘキシラール樹脂等を挙げることができる。このうち、本発明の目的には、塗膜の耐水性、金属表面への密着性などの面から平均重合度300〜2000、ブチラール化度60〜75モル%のポリビニルブチラール樹脂が好適に用いられる。
平均重合度の測定は、JIS K 6726に規定された方法に従う。
ブチラール化度は、NMR(核磁気共鳴)法によって測定することができる。測定に際し、プロトン核磁気共鳴スペクトルは次のように評価する。まず、ポリビニルブチラールの1重量%重水素化DMSO溶液を作成し、少量のテトラメチルシランを標準物質(0ppm)として添加し、測定温度25℃にて測定を行い、これによって求められたそれぞれのスペクトルの吸収ピーク積分値から算出する。具体的には、側鎖のブチラール基のCH3由来のプロトンは0.8〜0.9ppmのケミカルシフトに帰属し、その吸収ピーク積分値をチャートより読み取りIAとする。主鎖および側鎖のブチラール基のCH2由来のプロトンは1.0〜1.9のケミカルシフトに帰属し、その吸収ピーク積分値をチャートより読み取りIBとする。2つの吸収ピーク積分値(IA、IB)を用いて、下式によって、ブチラール化度を算出した。
ブチラール化度は、NMR(核磁気共鳴)法によって測定することができる。測定に際し、プロトン核磁気共鳴スペクトルは次のように評価する。まず、ポリビニルブチラールの1重量%重水素化DMSO溶液を作成し、少量のテトラメチルシランを標準物質(0ppm)として添加し、測定温度25℃にて測定を行い、これによって求められたそれぞれのスペクトルの吸収ピーク積分値から算出する。具体的には、側鎖のブチラール基のCH3由来のプロトンは0.8〜0.9ppmのケミカルシフトに帰属し、その吸収ピーク積分値をチャートより読み取りIAとする。主鎖および側鎖のブチラール基のCH2由来のプロトンは1.0〜1.9のケミカルシフトに帰属し、その吸収ピーク積分値をチャートより読み取りIBとする。2つの吸収ピーク積分値(IA、IB)を用いて、下式によって、ブチラール化度を算出した。
本発明の組成物における(A)成分であるポリビニルアセタール樹脂は、塗料中の含有量(全樹脂固形分中の質量%)が10〜50質量%、より好ましくは20〜40質量%である。含有量が10質量%未満であると得られる塗膜の金属表面への密着性が低下し、50質量%を超えると得られる塗膜の耐水性が低下(白化)する。
本発明の組成物における(B)成分であるエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を含有する化合物からなる汎用エポキシ樹脂を適用するこができる。具体的には、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、1,1,2,2−テトラキス(4’−ヒドロキシフェニル)エタンなどポリフェノール類化合物のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、フロログルシンなど多価フェノール類のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;エチレングリコール、ブタンジオール、グリセロール、エリスリトール、ポリオキシアルキレングリコールなど多価アルコール類のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;ノボラック型エポキシ樹脂;ビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシドなどの環状脂肪族系エポキシ樹脂;フタル酸、シクロヘキサン−1,2ジカルボン酸などポリカルボン酸エステル縮合物のポリグリシジルエステル系エポキシ樹脂;ポリグリシジルアミン系エポキシ樹脂などが挙げられる。これらエポキシ樹脂のうち、ポリフェノール類化合物のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂またはノボラック型エポキシ樹脂を配合することが好ましく、特に数平均分子量が 800〜3000、ガラス転移点25〜70℃のビスフェノールAまたはビスフェノールFからなるグリシジルエーテル系エポキシ樹脂を配合すると一層好ましい防食効果を与える。
数平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)によって測定することができ、ポリスチレン標準による換算値によって算出することができる。
ガラス転移点の測定は、ASTM D 3418に規定された方法に従う。
ガラス転移点の測定は、ASTM D 3418に規定された方法に従う。
本発明の組成物における(B)成分であるエポキシ樹脂は、塗料中の含有量(全樹脂固形分中の質量%)が40〜80質量%、より好ましくは50〜70質量%である。含有量が40質量%未満であると防食性が低下し、80質量%を超えると硬くなり内部応力が増大して、密着性が低下する。
一方、本発明の組成物における(C)成分である酸価80〜200mgKOH/gのアクリル系共重合体としては、アクリル酸、メタクリル酸等の酸性単量体と中性単量体との共重合体を用いることができる。中性単量体としては、スチレン、アクリル酸またはメタクリル酸と炭素数1〜4のアルキルとのエステルが挙げられる。
本発明の組成物における(C)成分である酸価80〜200mgKOH/gのアクリル系共重合体は、塗料中の含有量(全樹脂固形分中の質量%)が1〜10質量%、より好ましくは2〜5質量%である。含有量が1質量%未満であると密着性が低下し、10質量%を超えると他の成分との相溶性が不良になり塗膜の透明性が低下する。
本発明の組成物における(C)成分であるアクリル系共重合体の酸価が80mgKOH/g未満であると密着性が低下し、200mgKOH/gを超えると他の成分との相溶性が不良になり塗膜の透明性が低下する。
本発明の組成物における(C)成分である酸価80〜200mgKOH/gのアクリル系共重合体は、塗料中の含有量(全樹脂固形分中の質量%)が1〜10質量%、より好ましくは2〜5質量%である。含有量が1質量%未満であると密着性が低下し、10質量%を超えると他の成分との相溶性が不良になり塗膜の透明性が低下する。
本発明の組成物における(C)成分であるアクリル系共重合体の酸価が80mgKOH/g未満であると密着性が低下し、200mgKOH/gを超えると他の成分との相溶性が不良になり塗膜の透明性が低下する。
本発明において、全樹脂固形分とは、焼付硬化したときに塗膜に含まれる成分をいい、焼付温度で揮発しない成分が相当する。
本発明において、酸価(mgKOH/g)は、試料1g中に含まれる全酸性成分を中和するのに必要な水酸化カリウムの量で定義され、その測定方法はJIS K 5601−2−1に規定された方法に従う。
本発明の組成物における(D)成分である架橋剤としては、アミノ樹脂およびブロックイソシアネート化合物を用いることができる。これらはそれぞれ単独で使用されるほか、両成分を併用することもできる。アミノ樹脂とブロックイソシアネート化合物とを併用する場合には、各成分が相互の反応性の欠点を補完してバランスの良好な架橋剤が得られることになる。
本発明の組成物における(D)成分である架橋剤は、塗料中の含有量(全樹脂固形分中の質量%)が1〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%である。含有量が1質量%未満であると架橋度が低いため耐水性が不良になり、塗膜が白化し、20質量%を超えると架橋度が高いため、金属基材との密着性が低下する。
本発明の組成物における(D)成分である架橋剤は、塗料中の含有量(全樹脂固形分中の質量%)が1〜20質量%、より好ましくは5〜15質量%である。含有量が1質量%未満であると架橋度が低いため耐水性が不良になり、塗膜が白化し、20質量%を超えると架橋度が高いため、金属基材との密着性が低下する。
このうちアミノ樹脂としては、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等であり、好ましくはメラミン樹脂であるn−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂等のアルコキシ基がメトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基などであるアルコキシメチルメラミン樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、通常、メラミンにホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等のアルデヒドを付加反応または付加縮合反応させ、これを炭素数1〜4の1価アルコールでエーテル化することにより得ることができる。
また、ブロックイソシアネート化合物は、以下のブロック剤でイソシアネート基の反応をブロックしたものである。ブロック剤[以下、( )内に解離温度を示す。]としては、メタノール(180〜185 ℃)、エタノール(180〜185℃)、n−ペンタノール(205〜210 ℃)、エチレンクロルヒドリン(155〜160℃)、イソプロピルアルコール(170〜175 ℃)等のアルコール類;フェノール(140〜145℃)、p−ニトロフェノール(120〜125 ℃)、クレゾール(135〜140 ℃)等のフェノール類;アセチルアセトン(105〜110 ℃)、アセト酢酸エチル(125〜130 ℃)、MEKオキシム(150〜155 ℃)、ε−カプロラクタム(140〜144 ℃)等が挙げられる。好ましくは解離温度が100〜180℃、より好ましくは120〜160℃範囲のブロック剤を選択使用する。なお、イソシアネート化合物としては、TDI系、MDI系、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系、IPDI(イソホロンジイソシアネート)系等の脂肪族、脂環族の多官能イソシアネートを適宜に1種または2種以上用い、必要により錫系触媒を適用して反応させる。
本発明の組成物には、さらに、透明防食塗料組成物に用いることができる通常の添加剤を含有することができる。添加剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、表面調製剤などが挙げられ、これらの配合量は当業者の公知の範囲である。
本発明の透明防食塗料組成物を塗布する金属基材としては、アルミニウム基材が挙げられる。アルミニウム基材としては、特に制限はないが、例えば、自動車用アルミニウムホイール、自動車車体用アルミニウムフレームなどが挙げられる。上記アルミニウム基材は、材質としては、通常、アルミニウムを主成分とし、マグネシウム、ケイ素などを含む合金からなっている。また、上記アルミニウム基材は、軽量性、デザイン性などの目的で、任意の形状に成形加工したものを使用できる。さらに、ショットブラストした凹凸上の鋳肌面、切削した平滑面などが混在するアルミニウム基材も使用できる。
上記アルミニウム基材の表面を、ノンクロメート化成処理剤によって処理を行う。上記ノンクロメート化成処理剤は、クロム金属を含有しない処理剤であり、例えば、ジルコニウム系処理剤、チタニウム系処理剤、リン酸系処理剤などが挙げられる。なかでも、ジルコニウム系処理剤および/またはチタニウム系処理剤を用いることが好ましい。上記ジルコニウム系処理剤および/またはチタニウム系処理剤は、ジルコニウムイオンおよび/またはチタニウムイオンならびにフッ素イオンを含有するものであることが好ましく、さらにリン酸イオンを含有するものであってもよい。上記ジルコニウムイオンおよび/またはチタニウムイオンの含有量は、上記ノンクロメート化成処理剤中、金属元素換算合計で0.01〜0.125g/Lであることが好ましい。0.01g/L未満であると形成される皮膜の質量が不足し、防食性などの性能が不十分となる場合があり、0.125g/Lを超えると形成される皮膜の質量が過剰となり、皮膜の厚さが厚くなるため、アルミニウム基材の金属感が損なわれる場合がある。
本発明の透明防食塗料組成物は、上記した成分(A)ポリビニルアセタール樹脂、(B)エポキシ樹脂および(C)酸価80〜200mgKOH/gのアクリル系共重合体、および(D)架橋剤を配合添加し、十分に撹拌して製造されるが、金属地肌面に対する該塗料組成物の塗装工程を、アルミホイールを例にして説明すると次のようになる。
まず、所定の形状に鋳造成型されたアルミホイールの内外面の必要部分を切削し、ノンクロム系化成処理剤で表面処理を施す。
次に、一般的な防錆含量を含む下塗り塗料を塗布し、その上に美粧性を付与するための着色顔料や金属粉末顔料を含む上塗り塗料を全外面に塗装し、この両塗膜は同時に、または個別に乾燥硬化させる。
さらに、美粧性のために、アルミ金属光沢部分を作り出す目的で、アルミホイールを部分的に切削し、再度、化成処理剤で表面処理を施す。
次に、一般的な防錆含量を含む下塗り塗料を塗布し、その上に美粧性を付与するための着色顔料や金属粉末顔料を含む上塗り塗料を全外面に塗装し、この両塗膜は同時に、または個別に乾燥硬化させる。
さらに、美粧性のために、アルミ金属光沢部分を作り出す目的で、アルミホイールを部分的に切削し、再度、化成処理剤で表面処理を施す。
次に、本発明の透明防食塗料組成物を非切削部も含め外全面にスプレー塗装する。形成する塗膜の厚さは1〜15μmが好適であり、15μmより厚くなると内部応力が高くなり、密着性や可撓性が低下し、1μmより薄くなると連続膜が形成できなくなり防食性が低下する。
なお、本明細書中で、塗膜の厚さは、硬化塗膜に基づくものである。
なお、本明細書中で、塗膜の厚さは、硬化塗膜に基づくものである。
また、本発明の透明防食塗料組成物の上に、耐候性や美粧性の向上のためクリヤー塗料を塗装し、同時に、または個別に乾燥硬化させることもできる。
上記クリヤー塗料は、特に限定されず、塗膜形成性樹脂および硬化剤等を含有するクリヤー塗料を利用できる。更に、下地の意匠性を妨げない程度であれば着色顔料を含有することもできる。このクリヤー塗料の形態としては、溶剤型、水性型および粉体型のものが挙げられる。
上記溶剤型クリヤー塗料の好ましい例としては、透明性あるいは耐酸エッチング性等の点から、アクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂とアミノ樹脂および/またはイソシアネートとの組み合わせ、あるいはカルボン酸・エポキシ硬化系を有するアクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂系等が挙げられる。
また、上記水性型クリヤー塗料の例としては、上記溶剤型クリヤー塗料の例として挙げたものに含有される塗膜形成性樹脂を、塩基で中和して水性化した樹脂を含有するものが挙げられる。この中和は、重合の前または後に、ジメチルエタノールアミンおよびトリエチルアミンのような3級アミンを添加することにより行うことができる。
一方、粉体型クリヤー塗料としては、熱可塑性および熱硬化性粉体塗料のような通常の粉体塗料を用いることができる。熱硬化性粉体塗料が、良好な物性の塗膜が得られるため好ましい。熱硬化性粉体塗料の具体的なものとしては、エポキシ系、アクリル系およびポリエステル系の粉体クリヤー塗料等が挙げられるが、耐候性が良好なアクリル系粉体クリヤー塗料が特に好ましい。
更に、上記クリヤー塗料には、必要に応じて、硬化触媒、粘性制御剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤等の添加剤を含むことができる。
本発明の塗料組成物の軽合金材料における防食性の付与効果は主に糸錆発生を防止することにあるが、塗料樹脂の観点から考察した場合の糸錆性の防止には、(1)O2 、H2 O、イオン透過性を小さくする、(2)素地との密着性を強化する、(3)膜厚を大きくする。(4)ヤング率の高い強靭な塗膜とする、(5)内部応力を小さくする等の要件が必要となる。本発明の塗料組成では、塗膜の内部応力抑制および表面との密着性の相乗作用によって、該糸錆性の防止効果を有効に達成するものである。
糸錆と内部応力は無関係のようにみられるが、内部応力・密着性・糸錆性という図式を考えると密着性を介して相互に関連していることが判る。つまり塗膜の内部応力は、塗膜形成の初期段階よりも経時的な環境条件によって増大するから内部応力の大きな塗膜ほど、素材と塗膜間に付着劣化が生じ、糸錆の進行が容易となる。本発明の組成において、樹脂系成分を(A)ポリビニルアセタール樹脂と(B)エポキシ樹脂とで構成するのは、架橋に伴う内部応力の増大、密着性の劣化等の現象を抑制させる機能を与えるための要件となる。すなわち、エポキシ樹脂は防食性には優れる一方、内部応力が大きい性癖があるが、配合するポリビニルアセタール樹脂が巧みに緩衝的な働きを営んで、内部応力を抑制するために作用する。この作用を介して内部応力が小さく、高酸価のアクリル系共重合体を適用することでより密着性の高い強靭な塗膜が形成される。
(A)ポリビニルアセタール樹脂と(B)エポキシ樹脂との固形分混合比は、10/90〜50/50であることが好ましく、20/80〜40/60であることがより好ましい。上記固形分混合比が10/90未満であると、形成された塗膜内の成分(A)の存在比が減少するため内部応力が高くなり、耐糸錆性が低下する。上記固形分混合比が50/50を超えると、形成された塗膜内の成分(B)の存在比が減少するため耐水性および防食性が低下する。
以上のとおり、本発明によれば金属地肌面に塗装して金属光沢を損ねずに糸錆発生を効果的に防止することができ、透明で防食性に優れ、安全・環境にも配慮した塗料組成物を提供することができる。
以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明する。
実施例1〜7、比較例1〜5
実施例1〜7、比較例1〜5の各々について、ポリビニルアセタール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル系共重合体および架橋剤を、表1(実施例)および表2(比較例)に示す量(いずれも固形分換算の質量部)で配合し、十分に撹拌して透明防食塗料を得た。表1および表2に記号で示した各成分の種類は、下記のとおりである。
実施例1〜7、比較例1〜5の各々について、ポリビニルアセタール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル系共重合体および架橋剤を、表1(実施例)および表2(比較例)に示す量(いずれも固形分換算の質量部)で配合し、十分に撹拌して透明防食塗料を得た。表1および表2に記号で示した各成分の種類は、下記のとおりである。
(A)ポリビニルアセタール樹脂
A−1:ポリビニルアセトアセタール(エスレックBX−2:積水化学工業社製)
A−2:ポリビニルブチラール(エスレックB BL−3:積水化学工業社製)
A−1:ポリビニルアセトアセタール(エスレックBX−2:積水化学工業社製)
A−2:ポリビニルブチラール(エスレックB BL−3:積水化学工業社製)
(B)エポキシ樹脂
B−1:水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(エポトートST−5100:東都化成社製)
B−2:ビスフェノール型エポキシ樹脂(エポトートYD−014:東都化成社製)
B−1:水添ビスフェノール型エポキシ樹脂(エポトートST−5100:東都化成社製)
B−2:ビスフェノール型エポキシ樹脂(エポトートYD−014:東都化成社製)
(C)アクリル系共重合体
C−1:アクリル系共重合体(固形分酸価170mgKOH/g)(ハイテック532:日本シェラック社製)
C−2:アクリル系共重合体(固形分酸価90mgKOH/g)(ハイテック331−40:日本シェラック社製)
C−3:アクリル系共重合体(固形分酸価26mgKOH/g)(ダイアナールHR−686:三菱レーヨン社製)
C−1:アクリル系共重合体(固形分酸価170mgKOH/g)(ハイテック532:日本シェラック社製)
C−2:アクリル系共重合体(固形分酸価90mgKOH/g)(ハイテック331−40:日本シェラック社製)
C−3:アクリル系共重合体(固形分酸価26mgKOH/g)(ダイアナールHR−686:三菱レーヨン社製)
(D)架橋剤
D−1:ブロックイソシアネート(デスモジュルBL−3175:住友バイエルウレタン社製ヘキサメチレンジイソシアネート系メチルエチルケトキシムブロック化イソシアネート)
D−2:メラミン樹脂(ユーバン20SE−60:三井東圧化学社製)
D−1:ブロックイソシアネート(デスモジュルBL−3175:住友バイエルウレタン社製ヘキサメチレンジイソシアネート系メチルエチルケトキシムブロック化イソシアネート)
D−2:メラミン樹脂(ユーバン20SE−60:三井東圧化学社製)
切削加工したアルミホイールを、化成処理剤(日本ペイント社製ノンクロム系化成処理剤、アルサーフ375)で処理したのち、この上に前記の透明防食塗料を約15μmの乾燥膜厚になるようにスプレー塗装し、150 ℃で20分間加熱して塗膜を硬化させて、下塗りとした。さらに、この上に、上塗り塗料としてクリヤー塗料(日本ペイント社製アクリルメラミン樹脂系クリヤー塗料、スーパーラック 5000AW−2クリヤー)を約30μmの乾燥膜厚になるようにスプレー塗装し、150℃で20分間加熱して塗膜を硬化させた。得られた各塗膜につき外観、耐糸錆性および耐水性を評価し、結果を表1(実施例)および表2(比較例)に示した。なお、各項目の評価は下記の方法に従って行った。
(1) 塗膜外観評価(透明性)
目視観察により、次の評価基準に従って塗膜の透明性を判定した。
◎・・・全く透明である
○・・・僅かに着色はあるが、アルミホイールの金属感あり
△・・・着色があり、アルミホイールの金属感が乏しい
×・・・着色がひどく、アルミホイールの金属感なし
目視観察により、次の評価基準に従って塗膜の透明性を判定した。
◎・・・全く透明である
○・・・僅かに着色はあるが、アルミホイールの金属感あり
△・・・着色があり、アルミホイールの金属感が乏しい
×・・・着色がひどく、アルミホイールの金属感なし
(2) 耐糸錆性試験評価
カッターナイフでアルミ素地に達する3cmの長さの直線切り傷を付けたのち、5質量%の食塩を含む1規定の塩酸水(35 ℃) に浸漬し、直ちに取り出して室内で付着水滴がなくなるまで乾かした。次いで、温度40〜45℃、湿度70〜75%RHに保った恒温恒湿槽の中に72時間置いて取り出した。このものにつき、次の評価基準によりカット部に発生した糸錆の本数、長さを判定し、耐糸錆性を判定した。
◎・・・全く錆の発生がないか、長さ1mm以下の錆点のみ
○・・・最大長さ3mm以下の糸錆が2本以下
△・・・最大長さ6mm以下の糸錆が5本以下
×・・・上記に該当しないもの
カッターナイフでアルミ素地に達する3cmの長さの直線切り傷を付けたのち、5質量%の食塩を含む1規定の塩酸水(35 ℃) に浸漬し、直ちに取り出して室内で付着水滴がなくなるまで乾かした。次いで、温度40〜45℃、湿度70〜75%RHに保った恒温恒湿槽の中に72時間置いて取り出した。このものにつき、次の評価基準によりカット部に発生した糸錆の本数、長さを判定し、耐糸錆性を判定した。
◎・・・全く錆の発生がないか、長さ1mm以下の錆点のみ
○・・・最大長さ3mm以下の糸錆が2本以下
△・・・最大長さ6mm以下の糸錆が5本以下
×・・・上記に該当しないもの
(3) 耐水性試験評価
温度38〜40℃に保った恒温水槽に浸漬し、24時間毎に取り出して、塗膜面の白化状況を目視観察し、次の評価基準に従って耐水性を判定した。
◎・・・360時間浸漬しても白化なし
○・・・240時間浸漬しても白化なし
△・・・120時間浸漬しても白化なし
×・・・120時間未満の浸漬で白化が認められる
温度38〜40℃に保った恒温水槽に浸漬し、24時間毎に取り出して、塗膜面の白化状況を目視観察し、次の評価基準に従って耐水性を判定した。
◎・・・360時間浸漬しても白化なし
○・・・240時間浸漬しても白化なし
△・・・120時間浸漬しても白化なし
×・・・120時間未満の浸漬で白化が認められる
表1および2を考察して判るように、本発明の透明防食塗料組成物を塗布した実施例はいずれも塗膜外観、耐糸錆性および耐水性ともに良好な結果を示したが、本発明の要件を外れる塗料組成物を用いた比較例は塗膜外観、耐糸錆性、耐水性のいずれかが悪い結果を示し、上記の性能を兼備させることができなかった。
比較例1の組成物は、(C)成分である酸価80〜200mgKOH/gのアクリル系共重合体を含有しないため、密着性が低下し、耐糸錆性が悪かった。
比較例2の組成物は、(C)成分である酸価80〜200mgKOH/gのアクリル系共重合体の含有量が10質量%を超えるため、膜の透明性が低下し、塗膜外観が悪かった。
比較例3の組成物は、アクリル系共重合体の酸価が80未満であるため、密着性が低下し、耐糸錆性が悪かった。
比較例4の組成物は、(A)成分であるポリビニルアセタール樹脂の含有量が10質量%未満であるため、金属表面への密着性が低下し、耐糸錆性が低かった。
比較例5の組成物は、(A)成分であるポリビニルアセタール樹脂の含有量が40質量%を超えるため、耐水性が悪く、また、(B)成分であるエポキシ樹脂の含有量が40質量%未満であるため、防食性が低下した。
比較例2の組成物は、(C)成分である酸価80〜200mgKOH/gのアクリル系共重合体の含有量が10質量%を超えるため、膜の透明性が低下し、塗膜外観が悪かった。
比較例3の組成物は、アクリル系共重合体の酸価が80未満であるため、密着性が低下し、耐糸錆性が悪かった。
比較例4の組成物は、(A)成分であるポリビニルアセタール樹脂の含有量が10質量%未満であるため、金属表面への密着性が低下し、耐糸錆性が低かった。
比較例5の組成物は、(A)成分であるポリビニルアセタール樹脂の含有量が40質量%を超えるため、耐水性が悪く、また、(B)成分であるエポキシ樹脂の含有量が40質量%未満であるため、防食性が低下した。
本発明の透明防食塗料組成物は、例えばアルミニウム系やマグネシウム系などの軽合金材で製造されるホイール等の自動車部品を透明塗装する目的に有用である。
Claims (4)
- 以下の成分:
(A)ポリビニルアセタール樹脂、
(B)エポキシ樹脂、
(C)酸価80〜200mgKOH/gのアクリル系共重合体、および
(D)架橋剤
を含有する透明防食塗料組成物。 - 架橋剤が、メラミン樹脂またはブロックイソシアネート化合物である請求項1に記載の透明防食塗料組成物。
- アクリル系共重合体が、全樹脂固形分中に1〜10質量%含有されている請求項1に記載の透明防食塗料組成物。
- 前処理を施した金属基材上に、請求項1〜3いずれかに記載の透明防食塗料組成物を下塗りとして使用する塗膜形成方法。
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- 2010-11-25 JP JP2010262257A patent/JP2012111859A/ja not_active Withdrawn
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