JP4403205B2 - 耐食性に優れた塗膜形成金属材 - Google Patents

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Description

本発明は、非クロム系塗料組成物による耐食性に優れた防錆塗膜を表裏両面に形成した塗膜形成金属材に関し、さらに詳しくは平面部の耐食性のみならず、加工部や端面部の耐食性に優れた塗膜形成金属材に関する。
従来、コイルコーティングなどによって塗装されたプレコート鋼板などのプレコート金属板は、建築物の屋根、壁、シャッター、ガレージなどの建築資材、各種家電製品、配電盤、冷凍ショーケース、鋼製家具及び厨房器具などの住宅関連商品として幅広く使用されている。
プレコート金属板からこれらの住宅関連商品を製造するには、通常、プレコート鋼板を切断しプレス成型し接合される。したがって、これらの住宅関連商品 には、切断面である金属露出部やプレス加工によるワレ発生部が存在することが多い。上記金属露出部やワレ発生部は、他の部分に比べて耐食性が低下しやすいので耐食性の向上のため、プレコート鋼板の下塗塗膜中にクロム系の防錆顔料を含ませることが一般的に行われてきた。
しかしながら、クロム系の防錆顔料は、防錆性に優れた6価クロムを含有していたり生成したりし、この6価クロムは人体への健康面、環境保護の観点から問題となっている。
これまで、非クロム系の防錆顔料としては、燐酸亜鉛、トリポリ燐酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛など数多くのものが市場に出ており、非クロム系顔料を組合せたプライマーとして、種々のものが提案されている。例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂とフェノール樹脂のビヒクル成分に、防錆顔料として、珪酸カルシウムとバナジン酸リンとの組合せや、炭酸カルシウムと珪酸カルシウムとリン酸アルミニウムとバナジン酸リンとの組合せの防錆顔料を配合した塗料が記載されている。また、特許文献2には、ポリエステルに、防錆顔料として、第2リン酸マグネシウムと酸化マンガン・酸化バナジウム焼成物との組合せや、リン酸カルシウムと酸化バナジウムとの焼成物を配合した塗料が記載されている。しかしながら、特許文献1及び2に記載された塗料から形成された塗膜は、クロム系顔料を使用した塗料に比べ、耐食性に劣るものであり、特に加工部及び端面部における耐食性が不十分である。また、耐アルカリ性や耐酸性などの耐薬品性劣ることが多い。また、防錆顔料を多量に使用すると耐水性が劣ることが多く、プレコート金属板製造においてクロム系の防錆顔料を代替えするまでには至っていない。
また、特許文献3には、水酸基又はエポキシ基を含有する有機樹脂と硬化剤からなるビヒクル成分に、吸油量が30〜200ml/100g、細孔容積が0.05〜1.2ml/gであるシリカ微粒子を含有する塗料であって、かつ該塗料から形成される硬化塗膜のガラス転移温度が40〜125℃の範囲内である塗料組成物が記載されている。しかしながら、特許文献3に記載された塗料から形成された塗膜は、かなりの耐食性を示すが、クロム系顔料を使用した塗料に比べ、いまだ耐食性及び耐薬品性に劣るものであり、特に端面部における耐食性が不十分である。
特開平11−61001号公報 特開2000−199078号公報 特開2000−129163号公報
本発明の目的は、表裏両面に非クロム系塗料組成物による防錆塗膜が形成されており、平面部の耐食性のみならず、加工部や端面部の耐食性に優れた塗膜形成金属材を提供することである。
そこで、本発明者らは、従来の上記問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、水酸基含有塗膜形成性樹脂系に、防錆顔料として、特定のバナジウム化合物、特定の珪素含有物及びリン酸系カルシウム塩を所定量配合した防錆塗料組成物による防錆塗膜を金属材の表裏両面に形成するによって、平面部の耐食性のみならず、加工部や端面部の耐食性に優れた塗膜形成金属材を得ることができることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、「1.金属基材の表裏両面に、下記防錆塗料組成物による防錆塗膜層が形成されてなることを特徴とする塗膜形成金属材。
防錆塗料組成物:(A)水酸基含有塗膜形成性樹脂、(B)架橋剤及び(C)防錆顔料混合物を含有する塗料組成物であって、該防錆顔料混合物(C)が、(1)五酸化バナジウム、バナジン酸カルシウム及びメタバナジン酸アンモニウムのうちの少なくとも1種のバナジウム化合物、(2)金属珪酸塩及び(3)リン酸系カルシウム塩、からなるものであって、該樹脂(A)及び該架橋剤(B)の合計固形分100質量部に対して、
バナジウム化合物(1)の量が3〜50質量部、
金属珪酸塩(2)の量が3〜50質量部、及び
リン酸系カルシウム塩(3)の量が3〜50質量部
であり、かつ該防錆顔料混合物(C)の量が10〜150質量部である防錆塗料組成物。
2.水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)が、水酸基含有エポキシ樹脂及び水酸基含有ポリエステル樹脂のうちの少なくとも1種である上記項1記載の塗膜形成金属材、
3.架橋剤(B)が、アミノ樹脂、フェノール樹脂及びブロック化されていてもよいポリイソシアネート化合物のうちの少なくとも1種の架橋剤である上記項1又は2記載の塗膜形成金属材、
4.リン酸系カルシウム塩が、リン酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸ニ水素カルシウム及びトリポリリン酸カルシウムのうちの少なくとも1種である上記項1〜3のいずれか一項に記載の塗膜形成金属材。
5.さらに、防錆顔料混合物(C)以外の防錆性顔料、ニ酸化チタン顔料及び体質顔料のうちの少なくとも1種の顔料成分を含有する上記項1〜4のいずれか一項に記載の塗膜形成金属材、
6.さらに、紫外線吸収剤及び紫外線安定剤のうちの少なくとも1種を含有する上記項1〜5のいずれか一項に記載の塗膜形成金属材、
7.前記樹脂(A)及び架橋剤(B)の合計固形分100質量部に対して配合される防錆顔料混合物(C)を構成するバナジウム化合物(1)、珪素含有物(2)及び該リン酸系カルシウム塩(3)の各量的範囲内の質量部量の混合物を、25℃の5質量%濃度の塩化ナトリウム水溶液10000質量部に添加して6時間攪拌し25℃で48時間静置した上澄み液を濾過した濾液のpHが3〜10であることを特徴とする上記項1〜6のいずれか一項に記載の塗膜形成金属材。
8.金属基材が、表面に化成処理が施されていてもよい、鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板のうちのいずれかである上記項1〜7のいずれか1項に記載の塗膜形成金属材、
9.金属基材上の少なくとも片面の防錆塗膜層の上に、上塗塗膜層が形成されてなることを特徴とする上記項1〜8のいずれか1項に記載の塗膜形成金属材、
10.金属基材の表裏両面に、上記項1に記載の防錆塗料組成物を硬化膜厚が2〜10μmとなるように塗装し、両塗膜を同時に焼付けることにより防錆塗膜層を形成することを特徴とする塗膜形成金属材の製造方法、
11.金属基材の表裏両面に、上記項1に記載の防錆塗料組成物を硬化膜厚が2〜10μmとなるように塗装し、両塗膜を同時に焼付けた後、少なくとも片面の防錆塗料組成物による防錆塗膜層の上に上塗塗料組成物を硬化膜厚が8〜30μmとなるように塗装し焼付けることを特徴とする塗膜形成金属材の製造方法。」を提供するものである。
本発明の塗膜形成金属材は、クロム系の防錆顔料を含まず、環境衛生面で有利な塗料組成物による塗膜が金属材の両面に形成されてなるものであり、平面部の耐食性に優れるのみならず、これまで非クロム系防錆塗料では達成が困難であった塗装金属板などにおける加工部や端面部の耐食性に優れた塗膜を形成できるという効果を発揮する。
塗膜形成金属材の耐食性には、表面の塗膜の耐食性だけでなく、裏面の塗膜の耐食性が大きく影響する。これまで、表面及び裏面の両塗膜とも非クロム系である塗膜形成金属材では、特に、加工部や端面部の耐食性が十分でなかったが、新規な非クロム系塗料による防錆塗膜を両面に形成した本発明の塗膜形成金属材は、平面部、加工部、端面部のいずれにおいても優れた耐食性を示すことができるものである。
金属材として、亜鉛メッキ鋼板、アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板を使用した場合において、本発明の塗膜形成金属材は、特に、優れた耐食性を発揮することができる。
本発明の塗膜形成金属材の表裏両面に防錆塗膜を形成するため使用される非クロム系の防錆塗料組成物は、下記水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)、架橋剤(B)及び防錆顔料混合物(C)を含有する塗料組成物である。
水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)
防錆塗料組成物に用いられる水酸基含有塗膜形成樹脂としては、塗料分野で通常使用できる塗膜形成能を有する水酸基含有樹脂である限り特に制限なく使用することができ、代表例として、水酸基を含有する、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂などの1種又は2種以上の混合樹脂を挙げることができる。塗膜形成性樹脂としては、なかでも、水酸基含有ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種の有機樹脂を好適に使用することができる。
上記水酸基含有ポリエステル樹脂としては、オイルフリーポリエステル樹脂、油変性アルキド樹脂、また、これらの樹脂の変性物、例えばウレタン変性ポリエステル樹脂、ウレタン変性アルキド樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂などが包含される。上記水酸基含有ポリエステル樹脂は、数平均分子量1,500〜35,000、好ましくは2,000〜25,000、ガラス転移温度(Tg点)10〜100℃、好ましくは20℃〜80℃、水酸基価2〜100mgKOH/g、好ましくは5〜80mgKOH/gを有するものが好適である。
本明細において、樹脂の「数平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)で測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。カラムは、「TSKgel G−4000HXL」、「TSKgel G−3000HXL」、「TSKgel G−2500HXL」、「TSKgel G−2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1cc/分、検出器;RIの条件で行ったものである。また、本明細書において、樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差熱分析(DSC)によるものである。
上記オイルフリーポリエステル樹脂は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とのエステル化物である。多塩基酸成分としては、例えば無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、無水マレイン酸などから選ばれる1種以上の二塩基酸及びこれらの酸の低級アルキルエステル化物が主として用いられ、必要に応じて安息香酸、クロトン酸、p−t−ブチル安息香酸などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、無水ピロメリット酸などの3価以上の多塩基酸などが併用される。多価アルコール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチルペンタンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどの二価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。両成分のエステル化又はエステル交換反応は、それ自体既知の方法によって行うことができる。酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、及びこれらの酸の低級アルキルエステル化物が特に好ましい。
アルキド樹脂は、上記オイルフリーポリエステル樹脂の酸成分及びアルコール成分に加えて、油脂肪酸をそれ自体既知の方法で反応せしめたものであって、油脂肪酸としては、例えばヤシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、キリ油脂肪酸などを挙げることができる。アルキド樹脂の油長は30%以下、特に5〜20%程度のものが好ましい。
ウレタン変性ポリエステル樹脂としては、上記オイルフリーポリエステル樹脂、又は上記オイルフリーポリエステル樹脂の製造の際に用いられる酸成分及びアルコール成分を反応させて得られる低分子量のオイルフリーポリエステル樹脂を、ポリイソシアネート化合物とそれ自体既知の方法で反応せしめたものが挙げられる。また、ウレタン変性アルキド樹脂は、上記アルキド樹脂、又は上記アルキド樹脂製造の際に用いられる各成分を反応させて得られる低分子量のアルキド樹脂を、ポリイソシアネート化合物とそれ自体既知の方法で反応せしめたものが包含される。ウレタン変性ポリエステル樹脂及びウレタン変性アルキド樹脂を製造する際に使用しうるポリイソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、2,4,6−トリイソシアナトトルエンなどが挙げられる。上記のウレタン変性樹脂は、一般に、ウレタン変性樹脂を形成するポリイソシアネート化合物の量がウレタン変性樹脂に対して30重量%以下の量となる変性度合のものを好適に使用することができる。
エポキシ変性ポリエステル樹脂としては、上記ポリエステル樹脂の製造に使用する各成分から製造したポリエステル樹脂を用い、この樹脂のカルボキシル基とエポキシ基含有樹脂との反応生成物や、ポリエステル樹脂中の水酸基とエポキシ樹脂中の水酸基とをポリイソシアネート化合物を介して結合した生成物などの、ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂との付加、縮合、グラフトなどの反応による反応生成物を挙げることができる。かかるエポキシ変性ポリエステル樹脂における変性の度合は、一般に、エポキシ樹脂の量がエポキシ変性ポリエステル樹脂に対して、0.1〜30重量%となる量であ ることが好適である。
アクリル変性ポリエステル樹脂としては、上記ポリエステル樹脂の製造に使用する各成分から製造したポリエステル樹脂を用い、この樹脂のカルボキシル基又は水酸基にこれらの基と反応性を有する基、例えばカルボキシル基、水酸基又はエポキシ基を含有するアクリル樹脂との反応生成物や、ポリエステル樹脂に(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸エステルなどをパーオキサイド系重合開始剤を使用してグラフト重合してなる反応生成物を挙げることができる。かかるアクリル変性ポリエステル樹脂における変性の度合は、一般に、アクリル樹脂の量がアクリル変性ポリエステル樹脂に対して、0.1〜50重量%となる量であることが好適である。
以上に述べたポリエステル樹脂のうち、なかでもオイルフリーポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂が、加工性、耐食性などのバランスの点から好適である。
前記水酸基含有塗膜形成樹脂として好適なエポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノ ボラック型エポキシ樹脂;これらのエポキシ樹脂中のエポキシ基又は水酸基に各種変性剤が反応せしめられた変性エポキシ樹脂を挙げることができる。変性エポキシ樹脂の製造において、その変性剤による変性時期は、特に限定されるものではなく、エポキシ樹脂製造の途中段階に変性してもエポキシ樹脂製造の最終段階に変性してもよい。
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂は、例えばエピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒などの触媒の存在下に高分子量まで縮合させてなる樹脂、エピクロルヒドリンとビスフェノールとを、必要に応じてアルカリ触媒などの触媒の存在下に、縮合させて低分子量のエポキシ樹脂とし、この低分子量エポキシ樹脂とビスフェノールとを重付加反応させることにより得られた樹脂のいずれであってもよい。
上記ビスフェノールとしては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン[ビスフェノールB]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、p−(4−ヒドロキシフェニル)フェノール、オキシビス(4−ヒドロキシフェニル)、スルホニルビス(4−ヒドロキシフェニル)、4,4´−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタンなどを挙げることができ、なかでもビスフェノールA、ビスフェノールFが好適に使用される。上記ビスフェノール類は、1種で又は2種以上の混合物として使用することができる。
ビスフェノール型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン製の、エピコート828、同812、同815、同820、同834、同1001、同1004、同1007、同1009、同1010;旭チバ社製の、アラルダイトAER6099;及び三井化学(株)製の、エポミックR−309などを挙げることができる。
また、水酸基含有塗膜形成樹脂として好適なエポキシ樹脂である前記ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、分子内に多数のエポキシ基を有するフェノールグリオキザール型エポキシ樹脂など、各種のノボラック型エポキシ樹脂を挙げることができる。
前記変性エポキシ樹脂としては、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂又は上記ノボラック型エポキシ樹脂に、例えば、乾性油脂肪酸を反応させたエポキシエステル樹脂;アクリル酸又はメタクリル酸などを含有する重合性不飽和モノマー成分を反応させたエポキシアクリレート樹脂;イソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂;上記ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂又は上記各種変性エポキシ樹脂中のエポキシ基にアミン化合物を反応させて、アミノ基又は4級アンモニウム塩を導入してなるアミン変性エポキシ樹脂などを挙げることができる。
架橋剤(B)
架橋剤(B)は、前記水酸基含有塗膜形成樹脂(A)と反応し、硬化途膜を形成するものであり、加熱などにより前記水酸基含有塗膜形成樹脂(A)と反応して硬化させることができるものであれば特に制限なく使用することができるが、なかでもアミノ樹脂、フェノール樹脂及びブロック化されていてもよいポリイソシアネート化合物が好適である。これらの架橋剤は、1種で又は2種以上組合せて使用することができる。
上記アミノ樹脂としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグラナミン、ステログタナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。上記反応に用いられるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンツアルデヒド等が挙げられる。また、上記メチロール化アミノ樹脂を適当なアルコールによってエーテル化したものもアミノ樹脂として使用できる。エーテル化に用いられるアルコールの例としてはメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノールなどが挙げられる。
上記架橋剤として使用できるフェノール樹脂は、上記水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)と架橋反応するものであり、フェノール成分とホルムアルデヒド類とを反応触媒の存在下で加熱して縮合反応させてメチロール基を導入して得られるメチロール化フェノール樹脂のメチロール基の一部または全てをアルコールでアルキルエーテル化してなるレゾール型フェノール樹脂が挙げられる。
レゾール型フェノール樹脂の製造においては、出発原料である上記フェノール成分として、2官能性フェノール化合物、3官能性フェノール化合物、4官能性以上のフェノール化合物などを使用することができる。
上記フェノール化合物として、例えば、2官能性フェノール化合物としては、o−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−エチルフェノール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノールなどを挙げることができ、3官能性フェノール化合物としては、石炭酸、m−クレゾール、m−エチルフェノール、3,5−キシレノール、m−メトキシフェノールなどが挙げられ、4官能性フェノール化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどを挙げることができる。中でも耐スクラッチ性の向上のためには3官能性以上のフェノール化合物、特に石炭酸及び/又はm−クレゾールを用いることが好ましい。これらのフェノール化合物は1種で、又は2種以上混合して使用することができる。
フェノール樹脂の製造に用いられるホルムアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド又はトリオキサンなどが挙げられ、1種で又は2種以上混合して使用することができる。
メチロール化フェノール樹脂のメチロール基の一部をアルキルエーテル化するのに用いられるアルコールとしては、炭素原子数1〜8個、好ましくは1〜4個の1価アルコールを好適に使用することができる。 好適な1価アルコールとしてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどを挙げることができる。
フェノール樹脂は、水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)との反応性などの点からベンゼン核1核当りアルコキシメチル基を平均して0.5個以上、好ましくは0.6〜3.0個有するものが適している。
上記架橋剤として使用できるブロック化されていてもよいポリイソシアネート化合物におけるブロック化されていないポリイソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネートもしくはトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートの如き脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネートもしくはイソホロンジイソシアネートの如き環状脂肪族ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートもしくは4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードMDIの如き芳香族ジイソシアネート類の如き有機ジイソシアネートそれ自体、またはこれらの各有機ジイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは上記した如き各有機ジイソシアネート同志の環化重合体、更にはイソシアネート・ビウレット体等が挙げられる。
ブロック化ポリイソシアネート化合物は、上記ポリイソシアネート化合物のフリーのイソシアネート基をブロック化剤によってブロック化したものである。上記ブロック化剤としては、例えばフェノール、クレゾール、キシレノールなどのフェノール系;ε−カプロラクタム;δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタムなどラクタム系;メタノール、エタノール、n−,i−又はt−ブチルアルコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコールなどのアルコール系;ホルムアミドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシムなどオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系などのブロック化剤を好適に使用することができる。上記ポリイソシアネート化合物と上記ブロック化剤とを混合することによって容易に上記ポリイソシアネート化合物のフリーのイソシアネート基をブロックすることができる。
前記水酸基含有途膜形成性樹脂(A)と上記架橋剤(B)との配合割合は、(A)及び(B)成分の合計固形分100重量部に基づいて、水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)が55〜95重量部、さらには60〜95重量部であって、架橋剤(B)が5〜45重量部、さらには5〜40重量部の範囲内であることが耐食性、耐沸騰水性、加工性、硬化性などの点から好適である。
上記防錆塗料組成物の硬化性を上げるため必要に応じて硬化触媒を配合することができる。架橋剤(B)がアミノ樹脂、特に低分子量の、メチルエーテル化またはメチルエーテルとブチルエーテルとの混合エーテル化メラミン樹脂を含有する場合には、硬化触媒としてスルホン酸化合物又はスルホン酸化合物のアミン中和物が好適に用いられる。スルホン酸化合物の代表例としては、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などを挙げることができる。スルホン酸化合物のアミン中和物におけるアミンとしては、1級アミン、2級アミン、3級アミンのいずれであってもよい。これらのうち、塗料の安定性、反応促進効果、得られる塗膜の物性などの点から、p−トルエンスルホン酸のアミン中和物及び/又はドデシルベンゼンスルホン酸のアミン中和物が好適である。
架橋剤(B)がフェノ ール樹脂である場合、硬化触媒として、上記スルホン酸化合物又はスルホン酸化合物のアミン中和物が好適に用いられる。
架橋剤(B)がブロック化ポリイソシアネート化合物である場合には、硬化剤であるブロック化ポリイソシアネート化合物のブロック剤の解離を促進する硬化触媒が好適であり、好適な硬化触媒として、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2−エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、2−エチルヘキサン酸鉛などの有機金属触媒などを挙げることができる。
架橋剤(B)が2種以上の架橋剤の組合せである場合には、各架橋剤に有効な硬化触媒を組合せて使用することができる。
防錆顔料混合物(C)
上記防錆塗料組成物に配合される防錆顔料混合物(C)は、下記(1)バナジウム化合物、(2)金属珪酸塩及び(3)リン酸系カルシウム塩からなるものである。
バナジウム化合物(1)
バナジウム化合物(1)は、五酸化バナジウム、バナジン酸カルシウム及びメタバナジン酸アンモニウムのうちの少なくとも1種のバナジウム化合物である。五酸化バナジウム、バナジン酸カルシウム及びメタバナジン酸アンモニウムは、5価バナジウムイオンの水への溶出性に優れており、バナジウム化合物(1)から放出される5価バナジウムイオンが、素材金属と反応したり、他の防錆顔料混合物からのイオンと反応することにより耐食性向上に効果的に働く。
金属珪酸塩(2)
金属珪酸塩(2)は、二酸化珪素と金属酸化物とからなる塩であり、オルト珪酸塩、ポリ珪酸塩などのいずれであってもよい。珪酸塩としては、例えば、珪酸亜鉛、珪酸アルミニウム、オルト珪酸アルミニウム、水化珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムベリリウム、珪酸ナトリウム、オルト珪酸カルシウム、メタ珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ジルコニウム、オルト珪酸マグネシウム、メタ珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカルシウム、珪酸マンガン、珪酸バリウム、カンラン石、ザクロ石、トルトバイタイト、イキョク鉱、ベニトアイト、ネプチュナイト、リョクチュウ石、トウキ石、ケイカイ石、バラキ石、トウセン石、ゾノトラ石、タルク、ギョガン石、アルミノ珪酸塩、ホウ珪酸塩、ベリロ珪酸塩、チョウ石、フッ石などを挙げることができる。
金属珪酸塩(2)としては、なかでもオルト珪酸カルシウム、メタ珪酸カルシウムが好適である。
リン酸系カルシウム塩(3)
リン酸系カルシウム塩(3)は、金属元素としてカルシウムを含有するリン酸塩であり、例えば、リン酸第三カルシウム、リン酸カルシウムアンモニウム、第一リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、リン酸塩化フッ化カルシウムなどを挙げることができる。リン酸系カルシウム塩(3)から放出されるリン酸イオン及びカルシウムイオンが耐食性の向上に効果的に働く。
本発明塗料組成物において、前記樹脂(A)及び該架橋剤(B)の合計固形分100質量部に対して、防錆顔料混合物(C)は、上記バナジウム化合物(1)、金属珪酸塩(2)及びリン酸系カルシウム塩(3)が下記範囲内にある。
バナジウム化合物(1):3〜50質量部、好ましくは5〜30質量部、
金属珪酸塩(2):3〜50質量部、好ましくは5〜30質量部、
リン酸系カルシウム塩(3):3〜50質量部、好ましくは5〜30質量部。
また、本発明塗料組成物において、防錆顔料混合物(C)の量が10〜150質量部、好ましくは15〜100質量部であることが耐食性の観点から好適である。
本発明塗料組成物においては、防錆顔料混合物として、これら(1)、(2)及び(3)を所定量組合せることによって、相乗的に耐食性を向上させることができるものである。
また、前記樹脂(A)及び架橋剤(B)の合計固形分100質量部に対して配合される防錆顔料混合物(C)を構成するバナジウム化合物(1)、金属珪酸塩(2)及び該リン酸系カルシウム塩(3)の各量的範囲内の質量部量の混合物を、25℃の5質量%濃度の塩化ナトリウム水溶液10000質量部に添加して6時間攪拌し25℃で48時間静置した上澄み液を濾過した濾液のpHが3〜10、好ましくは5〜9であることが、バナジウム化合物(1)、金属珪酸塩(2)及びリン酸系カルシウム塩(3)の水分による溶解性及び防錆顔料の溶解液と金属板との反応性の観点から好適であり、この範囲にあることが耐食性の点からより好適である。
すなわち、上記pH測定をする濾液は、25℃の5質量%濃度の塩化ナトリウム水溶液10000質量部に対して、バナジウム化合物(1)が3〜50質量部の範囲内のいずれかの量、金属珪酸塩(2)が3〜50質量部の範囲内のいずれかの量、及びリン酸系カルシウム塩(3)が3〜50質量部の範囲内のいずれかの量添加し溶解した溶解液の濾液である。
上記防錆塗料組成物には、前記水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)、架橋剤(B)、防錆顔料混合物(C)、及び必要に応じて配合される硬化触媒以外に、塗料分野で使用できる着色顔料、体質顔料、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、有機溶剤;沈降防止剤、消泡剤、塗面調整剤などの添加剤等を必要に応じて配合することができる。
上記着色顔料としては、例えばシアニンブルー、シアニングリーン、アゾ系やキナクリドン系などの有機赤顔料などの有機着色顔料;チタン白、チタンエロー、ベンガラ、カーボンブラック、各種焼成顔料などの無機着色顔料を挙げることができ、なかでもチタン白を好適に使用することができる。
上記体質顔料としては、例えばタルク、クレー、シリカ、マイカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等を挙げることができる。
上記紫外線吸収剤としては、例えば2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−アミルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、イソオクチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ジ(1,1−ジメチルベンジン)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[ 2−ヒドロキシ−3−ジメチルベンジル−5−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、メチル− 3 −[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート/ポリエチレングリコール300との縮合物などのベンゾトリアゾール系誘導体;2−[4−(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2 −ヒドロキシフェニル−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン系誘導体;エタンジアミド−N−(2−エトキシフェニル)−N'−(2−エチルフェニル)−(オキサリックアミド)、エタンジアミド−N−(2−エトキシフェニル)−N'−(4−イソドデシルフェニル)−(オキサリックアミド)などの蓚酸アニリド系誘導体などを挙げることができる。
上記紫外線安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物;CHIMASORB944、TINUVIN144、TINUVIN292、TINUVIN770、IRGANOX1010、IRGANOX1098(以上、これらの商品名の製品は、いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社の製品である。)などを挙げることができる。
紫外線吸収剤や紫外線安定剤を塗料中に配合することによって、この塗膜表面の光による劣化を抑制することができ、この塗料をプライマーとして使用した場合にも、上層塗膜を通過してプライマー塗膜表面に到達した光によるプライマー表面の劣化を抑制することができるので、プライマー塗膜表面の劣化によるプライマー塗膜と上層塗膜との層間剥離を防止でき、優れた耐食性を維持できる。
本発明塗料組成物に配合できる前記有機溶剤は、本発明組成物の塗装性改善などのために必要に応じて配合されるものであり、水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)及び架橋剤(B)を溶解ないし分散できるものが使用でき、具体的には、例えば、トルエン、キシレン、高沸点石油系炭化水素などの炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテルアルコール系溶剤などを挙げることができ、これらは単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
上記防錆塗料組成物は、この塗料組成物から得られる硬化塗膜のガラス転移温度が40〜115℃、好ましくは50〜105℃であることが塗膜の耐食性、耐酸性及び加工性などの点から好適である。塗膜のガラス転移温度は、DINAMIC VISCOELASTOMETER MODEL VIBRON(ダイナミックビスコエラストメータ モデルバイブロン) DDV−IIEA型(東洋ボールドウィン社製、自動動的粘弾性測定機)を用いて周波数110Hzにおける温度分散測定によるtanδの変化から求めた極大値の温度である。
上記防錆塗料組成物が金属板上に塗装され、形成された塗膜は、優れた耐食性を示す。その理由として本発明者らは、腐食環境下での塩化物イオンなどによる素材金属の溶解により生成される金属イオンと5価のバナジウムイオン(VO やVO 3−のバナジン酸イオン)との酸化還元反応を経ない直接的な沈殿性塩の生成、5価バナジウムイオンと素材金属との酸化還元反応により生成する3価バナジウムイオン及び素材金属イオンが、ケイ酸イオンと効果的に沈殿性の塩又は化合物を生成することで、素材露出面を効果的に被覆すること、更には、同時に溶出するリン酸イオンにより、腐食進行部位及びその周辺が、特に5価バナジウムイオンと素材金属との酸化還元反応が進行するのに好適なpH域に調整されるためであると考えている。また、防錆顔料混合物を構成する前記(1)(2)及び(3)を併用することで、前記(1)(2)及び(3)のそれぞれが有する耐酸性や耐アルカリ性及び耐水性の弱さを効果的に打ち消すことができる。更にはカルシウムイオンはpH10を越えるような素材金属が溶解し易い強アルカリ雰囲気下での素材金属の溶解を抑制する作用を持つため、優れた耐薬品性と耐水性をも同時に達成できる。これら防錆顔料混合物に基く作用の相乗効果が大きく働き、優れた耐食性を達成できたものと考えている。
本発明の塗膜形成金属材
金属基材の表裏両面に上記防錆塗料組成物を塗装し硬化させることによって本発明の塗膜形成金属材を得ることができる。塗装される金属基材としては、冷延鋼板、鉄製成型部品などの鉄製基材;溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、亜鉛メッキ鋼製成型部品などの亜鉛メッキ鋼材;鉄−亜鉛合金メッキ鋼板(ガルバニル鋼板)、アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板(合金中アルミニウムを約55%含有する「ガルバリウム鋼板」、合金中アルミニウムを約5%含有する「ガルファン」など)、亜鉛合金メッキ鋼製成型部品などの亜鉛合金メッキ鋼材;ステンレス鋼板、アルミニウム板、銅板、銅メッキ鋼板、錫メッキ鋼板等のその他の金属基材が挙げられ、これらの金属基材表面は、化成処理がなされていてもよい。化成処理としては、例えば、リン酸亜鉛処理やリン酸鉄処理などのリン酸塩処理、複合酸化膜処理、リン酸クロム処理、クロメート処理などを挙げることができる。
上記金属基材上に、前記防錆塗料組成物をロールコート法、カーテンフローコート法、スプレー法、刷毛塗り法、浸漬法などの公知の方法により表裏両面に塗装し、硬化させることによって本発明の塗膜形成金属材を得ることができる。金属基材の片面に塗装し硬化させた後、もう一方の面に塗装し硬化させる方法、及び金属基材の表裏両面に塗装した後、表裏両面を同時に硬化させる方法のいずれの方法で硬化途膜を形成してもよい。
金属基材上に形成される前記防錆塗料組成物による塗膜の硬化膜厚は、特に制限されるものではないが、通常2〜10μm、好ましくは3〜6μmの範囲である。塗膜の硬化は、使用する樹脂の種類などに応じて適宜設定すればよく、コイルコーティング法などによって塗装したものを連続的に焼付ける場合には、通常、素材到達最高温度が160〜250℃、好ましくは180〜230℃となる条件で15〜60秒間焼付けられる。バッチ式で焼付ける場合には、通常、80〜200℃で10〜30分間焼付けることによって行うことができる。
また、架橋剤(B)として、ブロック化していないポリイソシアネートを用いる場合や、樹脂(A)としてビスフェノール型エポキシ樹脂を用い架橋剤(B)としてアミン化合物を用いる場合のような、塗膜形成過程における架橋反応に特に加熱を必要としない組み合わせの場合には、常法に従い、常温乾燥にて硬化させることが出来る。
本発明の塗膜形成金属材は、化成処理されていてもよい金属板の表裏両面上に、前記防錆塗料組成物による塗膜が設けられており、このものをそのまま使用に供することができるが、美粧性、耐久性の向上などの目的で、さらに、この防錆塗膜の片面又は両面上に上塗塗膜を設けることもできる。
上塗塗膜を片面に設ける場合、片面の硬化した防錆塗膜面上に上塗塗料を塗装し、もう一方の面の防錆塗膜は、この上塗塗装時点では硬化していてもいなくてもよく、上塗塗装後、塗装された基材を加熱し、塗膜を硬化させることができる。上塗塗膜を両面に設ける場合、通常、表裏両面に硬化した防錆塗膜を有する金属材を用い、その片面の防錆塗膜面上に上塗塗料を塗装し硬化させた後、もう一方の防錆塗膜面上に上塗塗料を塗装し硬化させる方法、及び金属基材の防錆塗膜面の表裏両面上に上塗塗料を塗装した後、表裏両面を同時に硬化させる方法のいずれの方法で上塗塗膜を硬化させてもよい。上塗塗膜の膜厚は、通常、8〜30μm、好ましくは10〜25μmであることが好適である。
上記上塗塗膜を形成する上塗塗料としては、例えば、ポリエステル樹脂系、アルキド樹脂系、アクリル樹脂系、シリコン変性ポリエステル樹脂系、シリコン変性アクリル樹脂系、フッ素樹脂系などの上塗塗料を挙げることができる。プレコート鋼板用途など加工性が特に重視される場合には高度加工用のポリエステル系上塗塗料を使用することによって加工性の特に優れた塗膜形成金属材を得ることができる。本発明の塗膜形成金属材は、耐食性に優れた塗膜性能を示すことができる。
被塗物となる金属基材として、亜鉛メッキ鋼板、アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板を使用することによって、平面部の耐食性はかなり向上してきている一方、これまで、切断した端面部、成型加工した加工部においては、耐食性は不十分であったが、特定の防錆塗料組成物による塗膜を表裏両面に形成した本発明の塗膜形成金属材は、端面部、加工部においても優れた耐食性を得ることができるものである。
以下、製造例、実施例によって本発明をより具体的に説明する。本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下、「部」および「%」はいずれも質量基準によるものである。
製造例1 レゾール型フェノール樹脂架橋剤溶液の製造
反応容器に、ビスフェノールA100部、37%ホルムアルデヒド水溶液178部及び水酸化ナトリウム1部を配合し、60℃で3時間反応させた後、減圧下、50℃で1時間脱水した。ついでn−ブタノール100部とリン酸3部を加え、110〜120℃で2時間反応を行った。反応終了後、得られた溶液を濾過して生成したリン酸ナトリウムを濾別し、固形分約50%のレゾール型フェノール樹脂架橋剤溶液B1を得た。得られた樹脂は、数平均分子量880で、ベンゼン核1核当たり平均メチロール基数が0.4個及び平均アルコキシメチル基数が1.0個であった。
防錆塗料組成物の調製
調製例1
エピコート#1009(ジャパンエポキシレジン社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水酸基含有樹脂)85部を混合溶剤1[シクロヘキサノン/エチレングリコールモノブチルエーテル/ソルベッソ150(エッソ石油社製、高沸点芳香族炭化水素系溶剤)=3/1/1(質量比)]135部に溶解したエポキシ樹脂溶液225部に、五酸化バナジウム5部、メタ珪酸カルシウム3部、リン酸カルシウム3部、チタン白20部、バリタ20部及び混合溶剤2[ソルベッソ150(エッソ石油社製、高沸点芳香族炭化水素系溶剤)/シクロヘキサノン=1/1(質量比)]の適当量を混合し、ツブ(顔料粗粒子の粒子径)が20ミクロン以下となるまで顔料分散を行った。次いで、この分散物にデスモジュールBL−3175(住化バイエルウレタン社製、メチルエチルケトオキシムでブロック化したHDIイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物溶液、固形分約75%)20部(固形分量で15部)、タケネートTK−1(武田薬品社製、有機錫系ブロック剤解離触媒、固形分約10%)2部を加えて均一に混合し、さらに上記混合溶剤2を加えて粘度約80秒(フォードカップ#4/25℃)に調整して防錆塗料組成物を得た。
調製例2〜31
調製例1において、使用する水酸基含有樹脂、架橋剤、防錆顔料、その他顔料を下記表1に示すとおりとする以外は、調製例1と同様に行い、各防錆塗料組成物を得た。表1における水酸基含有樹脂、架橋剤及び顔料成分の量は、いずれも固形分質量による表示である。但し、調製例14においては、タケネートTK−1は配合せず、また、調製例17及び18においては、2部のタケネートTK−1に代えて、ネイキュア5225(米国キングインダストリイズ社製、ドデシルベンゼンスルホン酸のアミン中和溶液)1部を配合するものとする。調製例30及び31は、従来のクロム系防錆顔料を含有する防錆塗料組成物の調製例である。
表1に樹脂成分(水酸基含有樹脂と架橋剤との合計固形分質量100質量部)に対する各防錆顔料の量の合計を、25℃の5質量%濃度の塩化ナトリウム水溶液10000質量部に添加して6時間攪拌し25℃で48時間静置した上澄み液を濾過した濾液のpH(防錆顔料溶解液のpH)も記載する。例えば、調製例1の防錆顔料溶解液のpHは、25℃の5質量%濃度の塩化ナトリウム水溶液10000質量部に、五酸化バナジウム5質量部、メタ珪酸カルシウム3質量部及びリン酸カルシウム3質量部を添加して上記条件にて溶解させた上澄み液を濾過した濾液のpHである。
Figure 0004403205
Figure 0004403205
上記表1において、表中の(注)は、それぞれ下記の意味を有する。
(注1)エポキー837:三井化学(株)社製、商品名、ウレタン変性エポキシ樹脂、水酸基含有樹脂、1級水酸基価約35、酸価約0。
(注2)バイロン296:東洋紡績(株)社製、商品名、エポキシ変性ポリエステル樹脂、水酸基含有樹脂、水酸基価7、酸価6。
(注3)アラキード7018:荒川化学(株)社製、商品名、ポリエステル樹脂、水酸基含有樹脂、水酸基価約10、酸価3以下。
(注4)スミジュールN3300:住化バイエルウレタン(株)社製、イソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物、固形分100%
(注5)サイメル303:日本サイテックインダストリイズ(株)社製、商品名、メチルエーテル化メラミン樹脂。
(注6)sandvor3058:クラリアント社製、商品名、ヒンダードアミン系紫外線安定剤。
調製例32 裏面用塗料組成物の製造(比較例用)
エピコート#1009(ジャパンエポキシレジン社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水酸基含有樹脂)80部を混合溶剤1[シクロヘキサノン/エチレングリコールモノブチルエーテル/ソルベッソ150(エッソ石油社製、高沸点芳香族炭化水素系溶剤)=3/1/1(質量比)]120部に溶解したエポキシ樹脂溶液200部に、チタン白40部、バリタ40部及び混合溶剤2[ソルベッソ150(エッソ石油社製、高沸点芳香族炭化水素系溶剤)/シクロヘキサノン=1/1(質量比)]の適当量を混合し、ツブ(顔料粗粒子の粒子径)が20ミクロン以下となるまで顔料分散を行った。次いで、この分散物にデスモジュールBL−3175(住化バイエルウレタン社製、メチルエチルケトオキシムでブロック化したHDIイソシアヌレート型ポリイソシアネート化合物溶液、固形分約75%)26.7部(固形分量で20部)、タケネートTK−1(武田薬品社製、有機錫系ブロック剤解離触媒、固形分約10%)2部を加えて均一に混合し、さらに上記混合溶剤2を加えて粘度約80秒(フォードカップ#4/25℃)に調整して裏面用塗料を得た。
実施例1
下記塗装仕様1にて塗膜形成金属材を作成した。
塗装仕様1:
化成処理が施されたガルバリウム鋼板(板厚0.35mm、アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板、合金中アルミニウムを約55%含有、合金メッキ目付量150g/m、表2中「GL鋼板」と表示する。)に、前記調製例1で得た防錆塗料組成物を乾燥膜厚8μmとなるようにバーコーターにて塗装し、素材到達最高温度が180℃となるようにして30秒間焼き付けて裏面塗膜を形成した。この裏面塗膜を形成した塗装板の裏面塗膜と反対側の表面の鋼板面に、調製例1で得た防錆塗料組成物を乾燥膜厚5μmとなるようにバーコーターにて塗装し、素材到達最高温度が220℃となるようにして40秒間焼き付けてプライマー塗膜を形成した。冷却後、このプライマー塗膜上に、KPカラー1580B40(関西ペイント社製、商品名、ポリエステル系上塗塗料、青色、硬化塗膜のガラス転移温度約70℃)をバーコーターにて乾燥膜厚が約15μmとなるように塗装し、素材到達最高温度が220℃となるようにして40秒間焼き付けて塗膜形成金属材を得た。
実施例2〜25、比較例1〜17及び参考例1〜4
上記実施例1において、表面と裏面に使用する防錆塗料組成物を後記表2に示すとおりとする以外は実施例1と同様の操作を行い、各塗膜形成金属材を得た。
実施例26
下記塗装仕様2にて塗膜形成金属材を作成した。
塗装仕様2:
リン酸亜鉛化成処理が施された溶融亜鉛メッキ鋼板(板厚0.35mm、亜鉛メッキ目付量250g/m、表3中「GI鋼板」と表示する。)に、前記調製例1で得た防錆塗料組成物を乾燥膜厚8μmとなるようにバーコーターにて塗装し、素材到達最高温度が180℃となるようにして30秒間焼き付けて裏面塗膜を形成した。この裏面塗膜を形成した塗装板の裏面塗膜と反対側の表面の鋼板面に、調製例1で得た防錆塗料組成物を乾燥膜厚5μmとなるようにバーコーターにて塗装し、素材到達最高温度が220℃となるようにして40秒間焼き付けて各プライマー塗装板を得た。冷却後、これらのプライマー塗装板上に、KPカラー1580B40(関西ペイント社製、商品名、ポリエステル系上塗塗料、青色、硬化塗膜のガラス転移温度約70℃)をバーコーターにて乾燥膜厚が約15μmとなるように塗装し、素材到達最高温度が220℃となるようにして40秒間焼き付けて塗膜形成金属材を得た。
実施例27〜50、比較例18〜34及び参考例5〜8
上記実施例26において、表面と裏面に使用する防錆塗料組成物を後記表3に示すとおりとする以外は実施例26と同様の操作を行い、各塗膜形成金属材を得た。
塗膜性能試験
上記実施例1〜50及び比較例1〜34及び参考例1〜8で得られた各塗膜形成金属材を試験板として、下記試験方法に従って塗膜性能試験を行った。試験結果を後記表2及び3に示す。
試験方法
耐沸騰水性:5cm×10cmの大きさに切断した各試験用塗装板を約100℃の沸騰水中に2時間浸漬した後、引き上げて表面側の塗膜外観を評価するとともに、碁盤目テープ付着試験を行い評価した。碁盤目テープ付着試験は、JIS K−5400 8.5.2(1990)碁盤目テープ法に準じて、切り傷の隙間間隔を1mmとし、碁盤目100個を作り、その表面にセロハン粘着テープを密着させ、急激に剥がした後の塗面に残存する碁盤目の数を調べた。
◎:塗膜にフクレの発生、白化などの異常がなく、残存碁盤目数100個、
○:塗膜にフクレの発生、白化などの異常がなく、残存碁盤目数91〜99個、
△:塗膜にフクレ又は白化などの異常がわずかに認められ、残存碁盤目数91〜99個である、又は塗膜にフクレの発生、白化などの異常がないが、残存碁盤目数71〜90個、
×:塗膜にフクレの発生がかなりもしくは著しく認められる、又は残存碁盤目数70個以下。
耐アルカリ性:5cm×10cmの大きさに切断した各試験用塗装板の切断面を防錆塗料にてシールし、塗装板の表面側中央部に素地に達するクロスカットを入れた。この塗装板を20℃の5%水酸化ナトリウム水溶液に48時間浸漬した後、取出し洗浄し、室温にて乾燥した塗装板の表面側の塗膜外観を評価するとともに、クロスカット部にセロハン粘着テープを密着させ、急激に剥がした後の塗膜におけるカット部からの剥離幅(片側)を評価した。
◎:フクレの発生がなく、カット部からのテープ剥離幅が1.5mm以下、
○:フクレの発生がなく、カット部からのテープ剥離幅が1.5mmを超え、3mm以下、
△:フクレの発生が少し認められるが、カット部からのテープ剥離幅が3mm以下、又はフクレの発生が認められないが、カット部からのテープ剥離幅が3mmを超える、
×:フクレの発生が認められ、かつカット部からのテープ剥離幅が3mmを超える、
耐酸性:5cm×10cmの大きさに切断した各試験用塗装板の切断面を防錆塗料にてシールし、塗装板の表面側中央部に素地に達するクロスカットを入れた。この塗装板を20℃の5%硫酸水溶液に48時間浸漬した後、取出し洗浄し、室温にて乾燥した塗装板の表面側の塗膜外観を評価するとともに、クロスカット部にセロハン粘着テープを密着させ、急激に剥がした後の塗膜におけるカット部からの剥離幅(片側)を評価した。
◎:フクレの発生がなく、カット部からのテープ剥離幅が1.5mm以下、
○:フクレの発生がなく、カット部からのテープ剥離幅が1.5mmを超え3mm以下、
△:フクレの発生が少し認められるが、カット部からのテープ剥離幅が3mm以下、又はフクレの発生が認められないが、カット部からのテープ剥離幅が3mmを超える、
×:フクレの発生が認められ、かつカット部からのテープ剥離幅が3mmを超える。
耐スクラッチ性:20℃の室温において、コインスクラッチテスター(自動化技研工業社製)を用いて、各試験用塗装板の表面側の塗面に10円銅貨の縁を45度の角度に保ち、3kgの荷重をかけて押し付けながら10円銅貨を10mm/秒の速度で約30mm引っ張って塗面に傷を付けた時の傷の程度を下記基準に従って評価した。
◎:傷の部分に金属の素地は見られない、
○:傷の部分に金属の素地がわずかに見られる、
△:傷の部分に金属の素地がかなり見られる、
×:傷の部分に塗膜がほとんど残らず金属の素地がきれいに見られる。
耐食性試験として、下記の複合サイクル腐食試験(CCT試験)を行い、また、下記の耐候塩水噴霧試験を行った。
複合サイクル腐食試験:各試験用塗装板の長辺のエッジ部のバリが表面側塗膜面に向って右側において表面側に向き、左側において裏面側に向くように、6cm×12cmの大きさに切断した各試験用塗装板の表面側中央部に素地に達する狭角30度、線幅0.5mmのクロスカットをカッターナイフの背中を用いて入れ、塗装板上端エッジ部を防錆塗料にてシールし、上端部に4T折り曲げ加工部(塗装板の表面側を外側にして折り曲げ、その内側に塗装板と同じ厚さの板を4枚挟み、上記塗装板を万力にて180度折り曲げする加工)を設けた。
塗装仕様1の試験用塗装板については、JIS−H8502.8.1に準じ、(35℃で5%食塩水噴霧2時間)−(60℃で乾燥4時間)−(50℃でRH95%以上の耐湿試験器内で耐湿試験2時間)を1サイクルとして、150サイクル(合計1200時間)試験を行った。この試験後の塗装板のエッジ部、クロスカット部、4T折り曲げ加工部の状態を評価した。
塗装仕様2の試験用塗装板については、上記塗装仕様1の試験用塗装板におけるサイクル試験において、サイクル数を150サイクル(合計1200時間)から100サイクル(合計800時間)に変更する以外は同様の試験を行った。この試験後の塗装板のエッジ部、クロスカット部、4T折り曲げ加工部の状態を評価した。
(4T加工部)4T加工部における錆部の合計長さを評価した。
◎:錆の発生が認められない、
○:白錆が認められるが20mm未満、
△:白錆が20mm以上でかつ40mm未満、
×:白錆が40mm以上、又は赤錆の発生が認められる。
(エッジ部)塗装板の左右の長辺のエッジクリープ幅の平均値を求め、次の基準により評価した。
◎:5mm未満、
○:5mm以上でかつ10mm未満、
△:10mm以上でかつ20mm未満、
×:20mm以上。
(クロスカット部)クロスカット部の腐食状態を、0.5mmのカット幅の地金露出部における白錆発生長さ割合、及びカット部の左右のフクレ幅(両側の和)の平均値により、次の基準で評価した。
◎:地金露出部における白錆発生長さ割合50%未満でかつフクレ幅3mm未満、
○:地金露出部における白錆発生長さ割合50%以上でかつフクレ幅3mm未満、又は地金露出部における白錆発生長さ割合50%未満でかつフクレ幅3mm以上で5mm未満、
△:地金露出部における白錆発生長さ割合50%以上でかつフクレ幅5mm以上で10mm未満、
×:地金露出部における白錆発生長さ割合50%以上でかつフクレ幅10mm以上。
耐候塩水噴霧試験:5cm×10cmの大きさに切断した、塗装仕様1の試験用塗装板に、JIS K 5600 7.7に規定の塗膜の長期耐久性 促進耐候性(キセノンランプ法)試験のA法に基き、(湿潤18分間−乾燥102分間)の繰り返しサイクル条件でキセノンウェザメーターで500時間連続照射を行った。ついで裏面及び切断面を防錆塗料にてシールし、塗装板の表面中央に素地に達するクロスカットを入れた。この塗装板について、塩水噴霧試験(JIS Z−2371)を500時間行った後、平面部の外観を下記基準により評価した。
◎:カット部からのフクレ・錆進行幅がカットを跨いで平均3mm以下であり、その他異常が認められない、
○:カット部からのフクレ・錆進行幅が3mmを超え、かつ5mm以下であり、平面部その他に異常は認められない、又は、平面部に若干のフクレ発生が認められるものの、カット部からのフクレ・錆進行幅は、3mm以下である、
△:カット部からのフクレ・錆進行幅が3mmを超え、かつ5mm以下であり、平面部に若干のフクレ発生が認められる、
×:カット部からのフクレ・錆進行幅が5mmを越える、又は平面部に著しいフクレの発生が認められる。
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Claims (11)

  1. 金属基材の表裏両面に、下記防錆塗料組成物による防錆塗膜層が形成されてなることを特徴とする塗膜形成金属材。
    防錆塗料組成物:(A)水酸基含有塗膜形成性樹脂、(B)架橋剤及び(C)防錆顔料混合物を含有する塗料組成物であって、該防錆顔料混合物(C)が、(1)五酸化バナジウム、バナジン酸カルシウム及びメタバナジン酸アンモニウムのうちの少なくとも1種のバナジウム化合物、(2)金属珪酸塩及び(3)リン酸系カルシウム塩、からなるものであって、該樹脂(A)及び該架橋剤(B)の合計固形分100質量部に対して、
    バナジウム化合物(1)の量が3〜50質量部、
    金属珪酸塩(2)の量が3〜50質量部、及び
    リン酸系カルシウム塩(3)の量が3〜50質量部
    であり、かつ該防錆顔料混合物(C)の量が10〜150質量部である防錆塗料組成物。
  2. 水酸基含有塗膜形成性樹脂(A)が、水酸基含有エポキシ樹脂及び水酸基含有ポリエステル樹脂のうちの少なくとも1種である請求項1記載の塗膜形成金属材。
  3. 架橋剤(B)が、アミノ樹脂、フェノール樹脂及びブロック化されていてもよいポリイソシアネート化合物のうちの少なくとも1種の架橋剤である請求項1又は2記載の塗膜形成金属材。
  4. リン酸系カルシウム塩が、リン酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸ニ水素カルシウム及びトリポリリン酸カルシウムのうちの少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗膜形成金属材。
  5. さらに、防錆顔料混合物(C)以外の防錆性顔料、ニ酸化チタン顔料及び体質顔料のうちの少なくとも1種の顔料成分を含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗膜形成金属材。
  6. さらに、紫外線吸収剤及び紫外線安定剤のうちの少なくとも1種を含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗膜形成金属材。
  7. 前記樹脂(A)及び架橋剤(B)の合計固形分100質量部に対して配合される防錆顔料混合物(C)を構成するバナジウム化合物(1)、珪素含有物(2)及び該リン酸系カルシウム塩(3)の各量的範囲内の質量部量の混合物を、25℃の5質量%濃度の塩化ナトリウム水溶液10000質量部に添加して6時間攪拌し25℃で48時間静置した上澄み液を濾過した濾液のpHが3〜10であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の塗膜形成金属材。
  8. 金属基材が、表面に化成処理が施されていてもよい、鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛合金メッキ鋼板のうちのいずれかである請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗膜形成金属材。
  9. 金属基材上の少なくとも片面の防錆塗膜層の上に、上塗塗膜層が形成されてなることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の塗膜形成金属材。
  10. 金属基材の表裏両面に、下記防錆塗料組成物を硬化膜厚が2〜10μmとなるように塗装し、両塗膜を同時に焼付けることにより防錆塗膜層を形成することを特徴とする塗膜形成金属材の製造方法。
    防錆塗料組成物:(A)水酸基含有塗膜形成性樹脂、(B)架橋剤及び(C)防錆顔料混合物を含有する塗料組成物であって、該防錆顔料混合物(C)が、(1)五酸化バナジウム、バナジン酸カルシウム及びメタバナジン酸アンモニウムのうちの少なくとも1種のバナジウム化合物、(2)金属珪酸塩及び(3)リン酸系カルシウム塩、からなるものであって、該樹脂(A)及び該架橋剤(B)の合計固形分100質量部に対して、
    バナジウム化合物(1)の量が3〜50質量部、
    金属珪酸塩(2)の量が3〜50質量部、及び
    リン酸系カルシウム塩(3)の量が3〜50質量部
    であり、かつ該防錆顔料混合物(C)の量が10〜150質量部である防錆塗料組成物。
  11. 金属基材の表裏両面に、下記防錆塗料組成物を硬化膜厚が2〜10μmとなるように塗装し、両塗膜を同時に焼付けた後、少なくとも片面の防錆塗料組成物による防錆塗膜層の上に上塗塗料組成物を硬化膜厚が8〜30μmとなるように塗装し焼付けることを特徴とする塗膜形成金属材の製造方法。
    防錆塗料組成物:(A)水酸基含有塗膜形成性樹脂、(B)架橋剤及び(C)防錆顔料混合物を含有する塗料組成物であって、該防錆顔料混合物(C)が、(1)五酸化バナジウム、バナジン酸カルシウム及びメタバナジン酸アンモニウムのうちの少なくとも1種のバナジウム化合物、(2)金属珪酸塩及び(3)リン酸系カルシウム塩、からなるものであって、該樹脂(A)及び該架橋剤(B)の合計固形分100質量部に対して、
    バナジウム化合物(1)の量が3〜50質量部、
    金属珪酸塩(2)の量が3〜50質量部、及び
    リン酸系カルシウム塩(3)の量が3〜50質量部
    であり、かつ該防錆顔料混合物(C)の量が10〜150質量部である防錆塗料組成物。
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