JP6376912B2 - 亜鉛めっき鋼材用の錆処理剤及びそれを用いた補修方法 - Google Patents
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(a)エポキシ樹脂、(b)アセチルアセトン、(c)防錆顔料、(d)体質顔料及び(e)溶剤を含有する主剤と、硬化剤とから構成され、主剤及び硬化剤を混合した錆処理剤の全量に対して、(b)アセチルアセトンの含有量が0.25〜2質量%、(c)防錆顔料の含有量が1〜20質量%であり、かつ、(b)アセチルアセトンと(c)防錆顔料の比率(質量比)が、1:5〜1:15の範囲であり、
前記主剤と硬化剤とを混合した後の粘度が、120〜600mPa・s(20℃)であることを特徴とする錆処理剤
(2)硬化剤が、ポリアミン系、ポリカルボン酸系及びフェノール樹脂系からなる群より選択される少なくとも1種である前記(1)に記載の錆処理剤。
(3)(a)エポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂から選択される少なくとも1種である前記(1)または(2)に記載の錆処理剤。
(4)(c)防錆顔料が、リン酸塩から選択される少なくとも1種である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の錆処理剤。
(5)(d)体質顔料が、タルクである前記(1)〜(4)のいずれかに記載の錆処理剤。
(6)錆を有する亜鉛めっき鋼材の補修方法であって、
錆を有する亜鉛めっき鋼材面をケレン処理し、錆を完全に除去することなく脆弱な錆のみを除去した後、錆の一部が残存した状態で前記(1)〜(5)のいずれかに記載の錆処理剤を塗布する工程を含むことを特徴とする補修方法。
非クロメート系防錆顔料としては、例えば、
リン酸亜鉛、リン・ケイ酸亜鉛、リン酸アルミニウム亜鉛、リン酸カルシウム亜鉛、リン酸カルシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸カルシウム、トリポリリン酸二水素アルミニウム、メタリン酸アルミニウム、メタリン酸カルシウムなどのリン酸系;
亜リン酸亜鉛、亜リン酸鉄、亜リン酸アルミニウムなどの亜リン酸系;
モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸バリウムなどのモリブデン酸系;
酸化バナジウムなどのバナジウム系;
ホウ酸塩系;
メタホウ酸バリウムなどのメタホウ酸系;
シアナミド亜鉛カルシウム系;
カルシウム、亜鉛、コバルト、鉛、ストロンチウム、バリウムなどのカチオンを多孔質シリカ粒子に結合させた変性シリカ;
カチオンをイオン交換によって結合させたイオン交換シリカ;
などを、単独で又は2種以上を組合せて使用することが好ましい。
これらの防錆顔料のなかでも、さらに好ましいのは、リン酸塩、亜リン酸塩、縮合リン酸塩であり、トリポリリン酸二水素塩等の縮合リン酸塩が特に好ましい。塩としては、アルミニウム又は亜鉛が好ましい。
エポキシ樹脂は、形成塗膜の仕上がり性、硬化性、防食性などの点から、通常、エポキシ当量が100〜10,000の範囲内にあり、かつ数平均分子量が200〜20,000の範囲内にあるものが好適である。なお、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したポリスチレン換算の数平均分子量である。
ビスフェノールとしては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン[ビスフェノールB]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、p−(4−ヒドロキシフェニル)フェノール、オキシビス(4−ヒドロキシフェニル)、スルホニルビス(4−ヒドロキシフェニル)、4,4´−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタンなどを挙げることができ、上記のビスフェノール類は、1種で又は2種以上の混合物として使用することができる。
またノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールグリオキザール型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
上記変性エポキシ樹脂としては、上記ビスフェノール型エポキシ樹脂又はノボラック型エポキシ樹脂に、例えば、乾性油脂肪酸を反応させたエポキシエステル樹脂;アクリル酸又はメタクリル酸などを含む重合性不飽和モノマーを反応させたエポキシアクリレート樹脂;イソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂;上記ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂又は上記各種変性エポキシ樹脂中のエポキシ基にアミン化合物を反応させて、アミノ基又は4級アンモニウム塩を導入したアミン変性エポキシ樹脂などを挙げることができる。
上記のエポキシ樹脂のなかでも、金属素地や下塗り塗料との密着性に優れ、かつ生成したキレート化物を錆処理剤層内で固定化する性能に優れるという観点より、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好適である。エポキシ樹脂は、キレート化物を保護する保護膜のような作用をし、錆処理剤の上に塗布する下塗り塗料との密着性を高めて剥離を防止する効果もある。
硬化剤の含有量は、主剤及び硬化剤を混合した錆処理剤の全量に対して、2〜20質量%であることが好ましく、さらに好ましくは2〜15質量%である。硬化剤の含有量をこのような範囲とすることで、低温で硬化性があり(5℃−24hrで完全硬化)、所望の粘度(120〜600mPa・s:20℃)の錆処理剤を容易に実現することができる。エポキシ樹脂用硬化剤の含有量が2質量%未満の場合は、錆処理剤の粘度付与効果が十分に得られないために、塗膜が薄くなり、防錆性が低下する傾向があり、20質量%を超える場合は、錆処理剤の粘度が上昇することにより、塗布作業性が低下する。
ポリアミン系硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどのポリアルキレンアミン;トリメチルヘキサメチレンジアミン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、ネオペンタンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,3−ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ポリアミン;N−アミノエチルピペラジン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,3−ビスアミノエチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ジ(アミノシクロヘキシル)メタン、1,3−ジ−(アミノシクロヘキシル)プロパン、2,4−ジアミノ−シクロヘキサン、N,N´−ジエチル−1,4−ジアミノシクロヘキサンなどの脂環族ポリアミン;m−キシレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4´−ジアミノ−3,3´−ジエチルジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォンなどの芳香族ポリアミン;ジシアンアミド、ポリアミドアミン(ポリアミド樹脂)、ケチミン化合物、変成ポリアミン(例えば、エアープロダクツジャパン株式会社製の「サンマイドE−1000」)などが挙げられる。
ポリカルボン酸系硬化剤としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチル−3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。
フェノール樹脂系硬化剤としては、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールノボラック樹脂、ポリp−ビニルフェノールなどが挙げられる。
なお、上記粘度は、主剤と硬化剤を混合した後の塗装前の錆処理剤のポットライフ期間(1〜8時間)内の粘度を意味する。
主剤と硬化剤を混合した錆処理剤の20℃における粘度を測定した。粘度計はBLII型粘度計(東機産業社(株)製)ローターNo.1及びNo.2を用いた。
JIS K 5600−1−5:1999に準拠して、調製した錆処理剤の塗布時の作業性を評価した。下記の基準に基づいて判定し、○以上を合格とした。
◎:非常に良好(滑らかで刷毛、ローラー作業性に優れる)
○:良好(高粘度でやや突っ張る、もしくは低粘度で伸びすぎて膜厚を確保しにくいが刷毛、ローラー作業性には支障がない)
△:やや難あり(突っ張り感が強く、刷毛、ローラー作業性に支障が生じる)
×:難あり(粘りが強く刷毛、ローラー作業は不可能)
JIS K 5600−7−9 サイクルAに準じて促進試験を行った。ただし、錆処理剤の乾燥後の膜厚は30μm、錆処理剤の硬化・乾燥条件は、23℃−50%RH、7日間とした。下記の基準に基づいて判定し、○以上を合格とした。
◎:非常に良好(複合サイクル 350サイクルにおいて錆が発生しない)
○:良好(複合サイクル 350サイクルにおいてわずかに点錆が認められる(0.5%未満、Ri2相当))
△:やや難あり(複合サイクル 350サイクルにおいて点錆が認められる(0.5%以上))
−:試験対象外(高粘度で作業が不可能なため)
JIS K 5600−5−7(プルオフ法)に準拠して錆処理剤の付着力を評価した。1試験片につき長さ方向に3箇所の付着力を測定し平均値を求めた。使用機器はオートマチックアドヒージョンテスター(POSITEST AT−A(DeFelsko Corporation製)を使用した。
以下に示すエポキシ樹脂、アセチルアセトン、防錆顔料、体質顔料及び溶剤を、表1に示す配合にて主剤を調製した後、ポリアミン系硬化剤を添加して攪拌することにより、錆処理剤を調製した。調製した錆処理剤の組成(質量部)を表1に示す。なお、No.3〜6は本発明例、No.1〜2及びNo.7〜12は比較例である。
(a)エポキシ樹脂;D.E.R.671−X75(ダウケミカル日本株式会社製)
(b)アセチルアセトン;Huzhou Xinaote Phamaceutical & Chemical Co.,Ltd製
(c)防錆顔料;トリポリリン酸アルミニウム系顔料
(d)体質顔料;タルク
(e)溶剤;キシレン
(f)ポリアミン系硬化剤;サンマイドE−1000(エアープロダクツジャパン株式会社製)
実際に送電用鉄塔に使用され、劣化した亜鉛めっき鋼板を用いて防錆性試験を実施した。試験片は、劣化レベルVの山形鋼を150mmの長さに切断して使用した。
試験片として用いた山形鋼は、下塗り(錆止め塗料)と上塗りの塗装が施されていたもので、以下の状態のものである。
「劣化レベルV」;上塗り塗料のみならず下塗り塗料が消失し、鉄素地が露出した状態。
「3種ケレン」;浮いている錆をマジックロン等、手工具で除去するケレン処理。
「2種軽微ケレン」;ワイヤーカップ等、電動工具で脆弱な錆のみを除去するケレン処理。
「2種ケレン」;ディスクサンダー等、電動工具を用いて完全に錆を除去するケレン処理。
実際に送電用鉄塔に使用され劣化した亜鉛めっき鋼板を用いて、本発明の錆処理剤の付着力を評価した。
実施例2の場合と同様、劣化レベルVの山形鋼を150mmの長さに切断して試験片とした。程度の異なる3種類のケレン処理を行い、表1のNo.4に示す錆処理剤を乾燥後の膜厚が30μmになるように刷毛で塗布し、さらに下塗り塗料(日本ペイント防食コーティングス(株)製、商品名:ラストークタワー下塗)を塗布し、初期付着試験を実施した。
実際の送電用鉄塔の劣化レベルVの箇所に2種軽微ケレン処理を行った後、錆処理剤を塗布したところ、良好に錆処理剤を塗布することができた。24時間後、下塗り塗料(日本ペイント防食コーティングス(株)製、ラストークタワー下塗)を塗布し、さらに上塗り塗料(日本ペイント防食コーティングス(株)製、ラストークタワー上塗)を塗布した。塗布後の観察を定期的に実施したが、2年経過後も錆の発生は認められていない。
Claims (6)
- 錆の発生した亜鉛めっき鋼材に用いられる錆処理剤であって、
(a)エポキシ樹脂、(b)アセチルアセトン、(c)防錆顔料、(d)体質顔料及び(e)溶剤を含有する主剤と、硬化剤とから構成され、主剤及び硬化剤を混合した錆処理剤の全量に対して、(b)アセチルアセトンの含有量が0.25〜2質量%、(c)防錆顔料の含有量が1〜20質量%であり、かつ、(b)アセチルアセトンと(c)防錆顔料の比率(質量比)が、1:5〜1:15の範囲であり、
前記主剤と硬化剤とを混合した後の粘度が、120〜600mPa・s(20℃)であることを特徴とする錆処理剤。 - 硬化剤が、ポリアミン系、ポリカルボン酸系及びフェノール樹脂系からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の錆処理剤。
- (a)エポキシ樹脂が、ビスフェノール型エポキシ樹脂から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の錆処理剤。
- (c)防錆顔料が、リン酸塩から選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の錆処理剤。
- (d)体質顔料が、タルクである請求項1〜4のいずれかに記載の錆処理剤。
- 錆を有する亜鉛めっき鋼材の補修方法であって、
錆を有する亜鉛めっき鋼材面をケレン処理し、錆を完全に除去することなく脆弱な錆のみを除去した後、錆の一部が残存した状態で請求項1〜5のいずれかに記載の錆処理剤を塗布する工程を含むことを特徴とする補修方法。
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