本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、新たにプリント基板を設計・製造することなくピン配置もしくは大きさが異なるマイコンを実装することができる、新規な構造のマイコン実装用プリント基板を提供することにある。
さらに本発明は、マイコン実装用プリント基板を用いた新規な制御装置を提供することも、目的とする。
マイコン実装用プリント基板に関する本発明の第一の態様は、マイコンが実装されるプリント基板に対して、少なくとも第一のマイコン用実装パターンと第二のマイコン用実装パターンが形成されていることを特徴とする。
本態様のマイコン実装用プリント基板は、プリント基板に、第一のマイコン用実装パターンと第二のマイコン用実装パターンの少なくとも2つのマイコン用実装パターンが形成されており、1 種類のプリント基板に少なくとも第一のマイコンと第二のマイコンの2種類のマイコンを選択的に実装することができるようになっている。すなわち、1 種類のマイコンが供給不足に陥ったような場合でも、新たにプリント基板の再設計・製造を行う必要が無く、もとの1種類のプリント基板にもう1種類のマイコンを実装するだけでマイコンを置き換えることができるのである。これにより、新たにプリント基板を再設計・製造する場合に発生するであろう膨大な時間や労力や費用といった無駄をなくすと共に、供給不足といった事態を有利に防止することができる。
なお、第一のマイコン用実装パターンと第二のマイコン用実装パターンは、プリント基板の異なる層に形成されていてもよいし、同じ層に形成されていてもよい。例えば、第一のマイコン用実装パターンと第二のマイコン用実装パターンは、プリント基板の同じ層の別の場所に形成されていてもよいし、一方のパターンが他方よりも十分に小さい場合は、大きいパターンを周辺部に小さいパターンを中心部に設けることにより同じ領域内に2つのパターンを形成することもできる。また、スペースが許せば、さらに第三のマイコン用実装パターンやそれ以上の複数のマイコン用実装パターンを形成して、さらなる汎用性の向上を図ることができる。
マイコン実装用プリント基板に関する本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載のマイコン実装用プリント基板において、前記第一のマイコン用実装パターンが前記プリント基板の表裏一方の面に形成されている一方、前記第二のマイコン用実装パターンが前記プリント基板の表裏他方の面に形成されているものである。
本態様によれば、例えば第一のマイコン用実装パターンがプリント基板の表面に、一方第二のマイコン用実装パターンがプリント基板の裏面に形成されている。すなわち、第一のマイコン用実装パターンと第二のマイコン用実装パターンをプリント基板の別の面に形成されているので、同じ面に設けられているような場合に比して、パターンの設計をよりコンパクトに、またより容易に行うことが可能となる。さらに組立工程における各マイコン用実装パターンの識別性も有利に確保できる。
マイコン実装用プリント基板に関する本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載のマイコン実装用プリント基板において、前記第二のマイコン用実装パターンが、第二のマイコンの搭載領域と前記第一のマイコン用実装パターンの配線パターンに接続する導通路を含んで構成されているものである。
本態様によれば、第二のマイコン用実装パターンが、第二のマイコンの搭載領域と第一のマイコン用実装パターンの配線パターンに接続する導通路から構成されている。すなわち、マイコンを動作される上で欠かせないメモリ等の各種外付け部品が実装される配線パターンは第一のマイコン用実装パターンの配線パターンを利用することにより、パターンの設計をさらにコンパクトに且つ容易に行うことが可能となるのである。要するに、第二のマイコン用実装パターンは単に第一のマイコン用実装パターンとのピン配置の違いを補正するように形成されているのである。
制御装置に関する本発明の第一の態様は、ケース内に内部回路が収容されてなる制御装置において、前記内部回路が、前記第一乃至第三の何れか一つの態様に記載のマイコン実装用プリント基板を含んで構成されていることを特徴とする。
本態様によれば、ケース内に内部回路が収容されてなる制御装置の内部回路が、本発明のマイコン実装用プリント基板を含んで構成されている。これにより、東日本大震災の如き災害時のような想定外のケースにおいても、制御装置に採用されているマイコンが容易に置き換え可能とされていることから、制御装置の供給不足といった事態を有利に防止することができる。
本発明によれば、プリント基板に、第一のマイコン用実装パターンと第二のマイコン用実装パターンの少なくとも2つのマイコン用実装パターンが形成されていることから、1種類のマイコンが供給不足に陥ったような場合でも、新たにプリント基板の再設計・製造を行う必要が無く、もとの1種類のプリント基板にもう1種類のマイコンを実装するだけでマイコンを置き換えることができる。これにより、新たにプリント基板を再設計・製造する場合に発生するであろう膨大な時間や労力や費用といった無駄をなくすと共に、供給不足といった事態を有利に防止することができる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1及び図2には、電気接続箱10が示されている。電気接続箱10は、本体12と、本体12とは別体で本発明に係る制御装置14を含んで構成されている。制御装置14は、ECU等の車両の電子制御ユニットであり、本体12に取り付けられ電気接続されることで、本体12から電源供給を受け、また、本体12内に実装されている図示しないリレー等の電子部品の制御を行う。なお、本発明における電気接続箱10とは、ジャンクションブロックやヒューズボックス、リレーボックス等を含む。
図3に示されているように、制御装置14は、合成樹脂から形成されたケース16の内部に本発明の第一の実施形態としての内部回路たるマイコン実装用プリント基板18が収容された構造とされている。ケース16は、一方の開口する略矩形箱体形状のアッパケース20およびロアケース22が、互いの開口部分を他方で覆蓋した状態で重ね合されて、互いにロックアーム24aとロック24bからなるロック部24によってロック固定された中空箱体構造とされている。そして、ケース16の上面26および下面28は、本体12の取付面30(図1参照)よりも一回り小さな矩形状とされており、制御装置14の本体12への取付状態において、ケース16の上面26が取付面30への重ね合わせ面とされている。なお、以下の説明において、上方とは、図3中の上方、下方とは、図3中の下方を言うものとする。
ケース16内に収容されたマイコン実装用プリント基板18は、図3に示されているように、矩形の板形状を有しており、マイコン実装用プリント基板18の中央部分には、マイコン32に加えてマイコン32を動作される上で欠かせないメモリ34等の各種外付け部品が適宜に実装されている。またマイコン実装用プリント基板18にはその他に、本体12の図示しないプリント基板に設けられた本体側コネクタ36(図2参照)と接続する制御装置側コネクタ38と、後述する側方接続型コネクタ44、が実装されている。そしてマイコン実装用プリント基板18に設けられた図示しない配線パターンによって、メモリ34等の各種外付け部品や制御装置側コネクタ38や後述する側方接続型コネクタ44がマイコン32に対して電気接続されるようになっている。なお、制御装置側コネクタ38は、マイコン実装用プリント基板18の一方の側縁部40aに沿って延在しており、マイコン実装用プリント基板18がケース16内に収容された状態で、アッパケース20に貫設された開口穴42を通じて、ケース16の上面26上に突出されている。一方、側方接続型コネクタ44は、マイコン実装用プリント基板18の一方の側縁部40aに直交する側縁部40bに沿って延在しており、マイコン実装用プリント基板18がケース16内に収容された状態で、アッパケース20に貫設された切欠部46を通じて、ケース16の側面に突設されており、かかる側方接続型コネクタ44に対して図示しないコネクタが接続されるようになっている。
そして、図1〜3に示されているように、ケース16において、制御装置側コネクタ38が突設されている側縁部48aの対辺となる側縁部48b(図2中、右側)には、両端部分に略矩形ブロック形状の一対の回動部50,50が外方に向かって突設されている。
上述の如き構造とされた本体12と制御装置14の組み付けは、例えば特開2010−200503号公報に示されているような公知の手法を用いて行う。すなわち、先ず、図1に示すように、制御装置14の上面26を本体12の取付面30と対向させた向きで、回動部50,50を、本体12の支持部52,52に挿入する。これにより、回動部50,50と支持部52,52によるヒンジが形成される。次に、回動部50,50を回転中心として制御装置14を回動させることによって、制御装置14が本体12の取付面30に重ね合わされることとなる。その結果、制御装置14に設けられた制御装置側コネクタ38が、本体12の取付面30に突出された本体側コネクタ36の内部に挿し入れられて、本体12の図示しないプリント基板と制御装置14のマイコン実装用プリント基板18が電気的に接続されるようになっている。そして、制御装置14において、回動部50,50と反対の側縁部48a側に設けられたロックアーム54と本体12に設けられたロック56が係合することによって、制御装置14が本体12に固定されて、組み付けが完了する。
次に、図4を用いて、本発明の第一の実施形態としてのマイコン実装用プリント基板18の使用方法について詳述する。図4に示されているように、マイコン実装用プリント基板18は、ガラスエポキシ樹脂などの公知の絶縁材料で形成された略矩形平板状の絶縁基板58と、その表面60及び裏面62にそれぞれ設けられた第一のマイコン用実装パターン64aと第二のマイコン用実装パターン64bと、を含んで構成されている。すなわち、マイコン実装用プリント基板18の表面60と裏面62にはピン配置が異なる第一のマイコン32aと第二のマイコン32bがそれぞれ実装可能とされており、それ故それぞれのピン配置に対応するように最適設計された実装パターン64a,64bが設けられているのである。従って、図4 (a) に示されているように、マイコン実装用プリント基板18の表面60に設けられた第一のマイコン用実装パターン64aに対して、第一のマイコン32aをはじめとして、メモリ34等の各種外付け部品や制御装置側コネクタ38や側方接続型コネクタ44を実装して用いることができる一方、図4 (b) に示されているように、マイコン実装用プリント基板18の裏面62に設けられた第二のマイコン用実装パターン64bに対して、第二のマイコン32bをはじめとして、メモリ34等の各種外付け部品や制御装置側コネクタ38や側方接続型コネクタ44を実装して用いることもできるようになっているのである。それ故、通常の使用時には、表面60に設けられた第一のマイコン用実装パターン64aに主たるマイコンである第一のマイコン32aをはじめとして各種外付け部品やコネクタ38,44を実装して使用する一方、例えば災害時等に第一のマイコン32aが供給不足に陥ったような場合には、裏面62に設けられた第二のマイコン用実装パターン64bに予備のマイコンである第二のマイコン32bをはじめとして各種外付け部品やコネクタ38,44を実装して使用することができるのである。
このように、予めマイコン実装用プリント基板18の裏面62に予備のマイコンである第二のマイコン32bを実装可能な第二のマイコン用実装パターン64bを設けておくことにより、新たにマイコン実装用プリント基板の再設計・製造を行わなくとも、マイコン32を容易に置き換えることができるのである。これにより、新たにマイコン実装用プリント基板を再設計・製造する場合に発生するであろう膨大な時間や労力や費用といった無駄をなくすと共に、供給不足といった事態を有利に防止することができるのである。
また、本実施形態では、第一のマイコン用実装パターン64aと第二のマイコン用実装パターン64bがそれぞれマイコン実装用プリント基板18の表裏の別の面に形成されていることから、例えば同じ表面60に設けられているような場合に比して、実装パターンの設計をより容易に且つよりコンパクトに行うことが可能となる。加えてマイコン等の実装工程において、各マイコン32a,32bを実装する面が異なることから、各マイコン用実装パターン64a,64bを容易に識別することができるので、各マイコン32a,32bを誤ったマイコン用実装パターンに実装することを有利に防止できる。
次に、図5を用いて、本発明の第二の実施形態としてのマイコン実装用プリント基板66について詳述するが、上記実施形態と同様な構造とされた部材および部位については、図中に、上記実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。すなわち、かかるマイコン実装用プリント基板66は、第二のマイコン用実装パターン68bが、第二のマイコン32bの搭載領域70bとパッド部72bと第一のマイコン用実装パターン68aの配線パターン76aに接続する導通路78bを含んで構成されている点に関して、上記実施形態と異なる実施形態を示すものである。
図5 (a) に示されているように、マイコン実装用プリント基板66の表面60に設けられた第一のマイコン用実装パターン68aは、第一のマイコン32aの搭載領域70aと、パッド部72aと、第一のマイコン32aの端子80a1〜16を裏面62の第二のマイコン32bの対応する端子80b1〜16にスルーホール82を介して接続するための導通路78aと、第一のマイコン32aの端子80a1〜16に各種外付け部品や各種コネクタ38,44を接続するための配線パターン76aと、を含んで構成されている。要するに、マイコン実装用プリント基板66の表面60には、前実施形態のマイコン実装用プリント基板18の表面60に設けられた第一のマイコン用実装パターン64aと同様のパターンが形成されているのである。
一方、図5 (b) に示されているように、マイコン実装用プリント基板66の裏面62に設けられた第二のマイコン用実装パターン68bは、第二のマイコン32bの搭載領域70bと、パッド部72bと、第二のマイコン32bの端子80b1〜16を表面60の第一のマイコン32aの対応する端子80a1〜16にスルーホール82を介して接続する導通路78b、を含んで構成されている。なお、上記対応する端子というのは同じ機能を有する端子のことであり、具体的には、図5 (b) において端子80b1〜16の横の括弧内に併記されている端子番号(80a1〜16)の端子を指す。ここで、例えば、端子80b5,80b16は電源に接続されるVCC端子、端子80b8,80b13はグランドに接続されるVSS端子となっている。
要するに、本実施形態においては、第二のマイコン用実装パターン68bは、第二のマイコン32bの端子80b1〜16を第一のマイコン32aの対応する端子80a1〜16に接続しているだけであり、各種外付け部品や各種コネクタ38,44及びそれらと第二のマイコン32bの端子80b1〜16を接続するための配線パターンは、マイコン実装用プリント基板66の表面60に設けられた第一のマイコン用実装パターン68aの配線パターン76aで代用されるようになっているのである。それ故、第二のマイコン用実装パターン68bの設計については容易且つコンパクトに行うことが可能となるのである。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、かかる実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでない。本実施形態ではいずれも第一のマイコン用実装パターン64a,68aと第二のマイコン用実装パターン64b、68bはマイコン実装用プリント基板18,66の異なる面に形成されていたが、第一のマイコン用実装パターンと第二のマイコン用実装パターンを、マイコン実装用プリント基板の同じ面の別の場所に形成するようにしてもよい。さらに、一方のマイコン用実装パターンが他方よりも十分に小さい場合は、大きいパターンを周辺部に小さいパターンを中心部に設けることにより同じ領域内に両方のマイコン用実装パターンを形成することもできる。また、スペースが許せば、マイコン実装用プリント基板の表裏両面又は片面を用い、さらに第三のマイコン用実装パターンやそれ以上の複数のマイコン用実装パターンを形成して、さらなる汎用性の向上を図ることもできる。