JP2015098584A - トウプリプレグ - Google Patents

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Abstract

【課題】 スポーツ用品や自動車、圧力容器、航空機、緊張材等の一般産業用途に好適に使用できる、紙管からの解舒性や工程通過性、形態保持性に優れたトウプリプレグを提供する。
【解決手段】 粒子状の成分を含むマトリックス樹脂組成物を含浸させた強化繊維束からなるトウプリプレグであって、タック試験結果の平均最大ストレス値が5,000Pa〜55,000Paの範囲であるトウプリプレグ。特に強化繊維束が炭素繊維束であり、好ましくは樹脂含有率が特定範囲であるもの。
【選択図】図1

Description

本発明は紙管からの解舒性や工程通過性、形態保持性に優れたトウプリプレグである。当該トウプリプレグはスポーツ用品、自動車、圧力容器、航空機、緊張材等の一般産業用途に用いることが出来る。
自動車等の移動体に搭載する天然ガスや水素ガスの貯蔵タンクにはその軽量性からタンクライナーを強化繊維複合材料で補強した圧力容器が利用されている。使用される強化繊維としてはガラス繊維、炭素繊維等がある。中でも炭素繊維は比強度が高く圧力容器軽量化のメリットが大きく、天然ガスの貯蔵タンクよりも高い耐圧性能が要求される水素ガスの貯蔵タンクに好適に使用されている。
強化繊維複合材料で補強した圧力容器は一般的にフィラメントワインディング成形(FW成形)で作製される。すなわち強化繊維束を1本、又は複数本引き揃え工程中でマトリックス樹脂組成物を供給、含浸させながら回転するタンクライナーへ所望の張力、角度で巻きつけて行く成形法である。
工程中で含浸させながら巻き付ける代わりに、予め強化繊維束に樹脂組成物を含浸させたトウプリプレグを使用することもできる。この場合は工程中でのマトリックス樹脂組成物の供給、含浸は行わず回転するタンクライナーへ所望の張力、角度で巻きつけて行く。またFW成形においてトウプリプレグを使用することで様々な利点を得ることができる。すなわち、工程中で未硬化の樹脂組成物を取り扱う必要がないため作業環境を向上させることができること、工程中で強化繊維束へマトリックス樹脂組成物の供給・含浸の必要がないため工程速度を向上させることができること、マトリックス樹脂組成物の含有率が制御されたトウプリプレグを使用することで高品位、高性能な成形品を得ることができること等である。
すなわちトウプリプレグには所望の量のマトリックス樹脂組成物が強化繊維束に十分含浸されていること、高速でトウプリプレグを解舒することができること、さらにFW成形中にトウプリプレグの形態が大きく変化しないことが要求される。
トウプリプレグは通常紙管に巻き取られ、使用する際には紙管から解舒される。この時、高速でトウプリプレグを解舒するためにはトウプリプレグのタック(べたつき)が弱くなければならない。トウプリプレグのタックを弱くする方法の1つに、強化繊維束に含浸させるマトリックス樹脂組成物の粘度を下げる方法がある(特許文献1)。
またトウプリプレグのタックを弱くし、かつトウプリプレグの形態保持性を良好に保つ方法として、強化繊維束に含浸させるマトリックス樹脂組成物の粘度をトウプリプレグの使用環境温度(通常室温)でべたつかない程度まで高くする方法がある(特許文献2)。
特開平9−087365号公報 特開昭55−015870号公報
しかし特許文献1に開示された技術のように、マトリックス樹脂組成物の粘度が低すぎるとトウプリプレグの形態保持性が弱く、FW成形中にガイドロール等でトウプリプレグが折りたたまれその形態が大きく変化してしまう。またさらに、通常トウプリプレグは数百gから1kg程度の張力をかけて紙管に巻き取るが、この際にトウプリプレグが含むマトリックス樹脂組成物が絞り出され包含するマトリックス樹脂組成物量が変化する問題も起きる。
一方、特許文献2に開示されたような高粘度のマトリックス樹脂組成物は、強化繊維束に十分含浸させることが困難であり、特許文献2ではマトリックス樹脂組成物を溶媒に溶かし強化繊維束に含浸させている。マトリックス樹脂組成物を溶媒に溶かした場合、少なからず溶媒がトウプリプレグに残存してしまう。残存した溶剤は当該トウプリプレグを使用して作製した硬化物中に空隙を発生させ、その強度、品位を大きく落とす原因となってしまう。
本発明はかかる背景に鑑み、紙管からの解舒性やFW成形工程における工程通過性、並びに形態保持性に優れたトウプリプレグを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、鋭意検討の結果、本発明者らは特定の条件を満たすトウプリプレグを使用することにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下に関する。
〔1〕 粒子状の成分を含むマトリックス樹脂組成物を含浸させた強化繊維束からなるトウプリプレグであって、タック試験結果の平均最大ストレス値が5,000〜55,000Paの範囲であるトウプリプレグ。
〔2〕 前記マトリックス樹脂組成物の30℃における粘度が5〜300Pa・sである、前記〔1〕に記載のトウプリプレグ。
〔3〕 前記強化繊維束が炭素繊維束である、前記〔1〕又は〔2〕に記載のトウプリプレグ。
〔4〕 樹脂含有率が20〜40質量%である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
〔5〕 前記マトリックス樹脂組成物が下記の成分(A)〜(C)を含み、該成分(B)の含有量が該成分(A)100質量部に対して5〜20質量部であり、該成分(C)の含有量が特定有機化合物成分100質量部に対して1〜30質量部であり、かつ成分(C)の一次粒子径が1〜30μmである、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):三塩化ホウ素アミン錯体
成分(C):粒子状の熱可塑性樹脂
なお本発明における「特定有機化合物成分」とは、本発明のマトリックス樹脂組成物中に含まれる成分(A)、成分(B)、後述する成分(E)、及び後述する「エポキシ樹脂に溶解させた熱可塑性樹脂」の総称である。なお、例えば本発明のマトリックス樹脂組成物が、該「特定有機化合物成分」のうち成分(A)しか含有していない場合は、当該マトリックス樹脂組成物における「特定有機化合物成分」とは成分(A)のみを指し、成分(A)、成分(B)及び「エポキシ樹脂に溶解させた熱可塑性樹脂」を含む場合は、当該マトリックス樹脂組成物における「特定有機化合物成分」とは成分(A)、成分(B)及び「エポキシ樹脂に溶解させた熱可塑性樹脂」の全てを表す。
〔6〕 前記マトリックス樹脂組成物が下記の成分(A)、成分(C)および成分(D)を含み、該成分(C)及び成分(D)の含有量の合計が特定有機化合物成分100質量部に対して3〜30質量部であり、かつ成分(C)の一次粒子径が1〜30μmである、前記〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(C):粒子状の熱可塑性樹脂
成分(D):粒子状のエポキシ樹脂硬化剤、もしくは粒子状のエポキシ樹脂硬化剤および粒子状のエポキシ樹脂硬化助剤
〔7〕 前記成分(D)における粒子状のエポキシ樹脂硬化剤が、エポキシ樹脂イミダゾールアダクト化合物、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物、変性脂肪族アミン化合物、ジシアンジアミド及び芳香族ポリアミンからなる群より選ばれた少なくとも1種である、前記〔6〕に記載のトウプリプレグ。
〔8〕 前記成分(D)における粒子状のエポキシ樹脂硬化助剤が、エポキシ樹脂イミ
ダゾールアダクト化合物、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物、変性脂肪族アミン化合物及びウレア化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種である(但し、該成分(D)の一部として併用される粒子状のエポキシ樹脂硬化剤とは異なる化合物である)、前記〔6〕又は〔7〕に記載のトウプリプレグ。
〔9〕 更に、前記マトリックス樹脂組成物が下記成分(E)を含み、かつ該成分(E)の含有量が前記成分(A)100質量部に対して10〜110質量部である、前記〔5〕〜〔8〕のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
成分(E):ゴム粒子
〔10〕 前記成分(E)がブタジエンゴムを含むゴム粒子である、前記〔9〕に記載のトウプリプレグ。
タック試験結果の平均最大ストレス値を5,000Pa〜55,000Paの範囲とすることにより、紙管からの解舒性や工程通過性、形態保持性に優れたトウプリプレグを得ることができる。当該トウプリプレグはスポーツ用品、自動車、圧力容器、航空機、緊張材等の一般産業用途に用いることが出来る。
実施例および比較例で使用した、クリール、ガイド、ダンサーロール、ゴデッドロール及びワインダーから成る高速解除性評価に使用する装置を示す模式図である。
本発明は、粒子状の成分を含むマトリックス樹脂組成物を含浸させた強化繊維束からなるトウプリプレグであって、タック試験結果の平均最大ストレス値が5,000〜55,000Paの範囲であるトウプリプレグに存する。
紙管からの解舒性やFW成形時の工程通過性並びに形態保持性が良好なトウプリプレグとするためには、タック試験結果の平均最大ストレス値を5,000Pa〜55,000Paの範囲とする必要がある。以下、これらに関して説明する。
<トウプリプレグ>
トウプリプレグとは、数千〜数万本のフィラメントが一方向に配列した強化繊維束に樹脂組成物を含浸させて得られる細幅の中間基材である。本発明のトウプリプレグは、後述する本発明のマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸させることにより得られる。この強化繊維束を構成するフィラメントの繊維径及び本数に特に制限は無いが、繊維径は3〜100μmであることが好ましく、本数は1,000〜70,000本であることが好ましい。
なお本発明における「繊維径」とは、それぞれの繊維の断面の等面積円相当直径のことである。
繊維径が3μm未満では、例えばフィラメントが、各種加工プロセスにおいて、ロールやボビン等の表面で横方向(つまり繊維方向と直交する方向)に移動(以下「横移動」と称することがある。詳細は後述する。)する際に、切断したり毛羽だまりが生じたりする場合があり、100μmを越えるとフィラメントが硬くなり、屈曲性が低下する傾向がある。
本発明における強化繊維束としてはガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、黒鉛繊維、ボロン繊維等、通常の繊維強化複合材料に使用される強化繊維を使用することができる。なかでも好ましくはJIS R 7601に準拠したストランド強度が3500MPa以上の炭素繊維、黒鉛繊維;より好ましくはストランド強度4500MPa以上の炭素繊維、黒鉛繊維;より一層好ましくはストランド強度が5000MPa以上の炭素繊維である。特に圧力容器や緊張材として使用する場合、使用する炭素繊維束のストランド強度は、強いほど好ましい。
なお、強化繊維束が炭素繊維束である場合、フィラメントの繊維径は3〜12μm、本数は1,000〜70,000であることが好ましい。
繊維径が3μm未満では、例えばフィラメントが、各種加工プロセスにおいて、ロールやボビン等の表面で横移動を起こす際に、切断したり毛羽だまりが生じたりする場合がある。上限については、炭素繊維の製造上の困難性から、通常12μm程度である。
<トウプリプレグの解舒性>
トウプリプレグの製造方法に関しては後述するが、トウプリプレグはシート状のプリプレグとは異なり、通常フィルムや離型紙で表面を覆われることなく、ガラス繊維束や炭素繊維束と同様にそのまま紙管等のボビンに巻き取られる。そして紙管に巻き取られたトウプリプレグを解舒し使用する。
その為、トウプリプレグのタック(べたつき)が強いと、解舒の際の抵抗が強く高速での解舒が出来なかったり、強化繊維束の単糸が取られ上手く解舒出来ないという問題が生じる。
<トウプリプレグの形態保持性>
通常トウプリプレグは紙管に、紙管の軸方向に往復させられながら巻き取られている。このためトウプリプレグの解舒の際、解舒されるトウプリプレグの位置が紙管の軸方向に動くためトウプリプレグの位置を固定するためのガイドを使用する必要がある。使用されるガイドの形状は様々であるが、一般に表面に周方向の溝を有し自由回転するロールや櫛状のものが使用される。解舒されたトウプリプレグはロール表面の溝や櫛の歯を通過させることでその位置が固定される。ロールや櫛に接触する際にトウプリプレグが折りたたまれることがあるが、トウプリプレグのタックが強すぎると折りたたまれたまま開かなくなってしまう。またトウプリプレグが包含するマトリックス樹脂組成物の粘度が低すぎる等の理由により、トウプリプレグが柔らかすぎると、ロールや櫛に接触する際の形状が変化する場合がある。トウプリプレグの形状が大きく変化してしまうと、成形品の品質や物性に悪影響を及ぼす場合があり問題である。
<トウプリプレグの工程通過性>
例えばFW成形でトウプリプレグを使用する場合、一般にガイドやいくつかのロールを通過してマンドレルへ巻きつけられる。トウプリプレグのタックが強すぎると工程中のロール表面などでトウプリプレグが強く擦過し強化繊維束が傷つけられる場合がある。強化繊維束が傷つくと成形品の品質や物性に悪影響を及ぼす場合がある。
本発明者らは鋭意検討の結果、粒子状の成分を含むマトリックス樹脂組成物を含浸させた強化繊維束からなり、以下に述べる手順で行われたタック試験の結果として得られる、平均最大ストレス値が5,000Pa〜55,000Paの範囲であるトウプリプレグが、紙管からの解舒性や工程通過性、形態保持性に優れることを見出した。
<タック試験>
トウプリプレグのタックは以下のタック試験で測定できる。
装置:タックテスターTA−500(株式会社ユービーエム製)
プランジャーの試料との接触面積:3.1cm
プランジャー押しつけ時間:10秒
プランジャー押しつけ荷重:90,000Pa
プランジャー上昇速度:1mm/秒
測定温度:23℃
測定湿度:50%RH
手順:
1)トウプリプレグを試料台に置き固定する。この際、プランジャーと接触するトウプリプレグの面は、当該トウプリプレグが紙管に巻かれていた時に見えていなかった面(即ち紙管側の面)とする。
2)プランジャーに90,000Pa荷重をかけ、トウプリプレグに10秒間押し当てる。
3)プランジャーを1mm/秒で上昇させる。
4)プランジャーを上昇させる間のストレス値の最大値を最大ストレス値とし、合計3回測定して、得られた最大ストレス値の平均値を平均最大ストレス値とする。
タック試験で得られるトウプリプレグの平均最大ストレス値が55,000Paより大きいと、トウプリプレグの強いタックのため高速での解舒が出来なかったり、トウプリプレグが折りたたまれた場合に再び開くことが出来ないという問題が生じる。平均最大ストレス値が5,000Paより小さいと、FW成形を行う際にトウプリプレグがマンドレルにくっつかなかったり、マンドレルに巻きつけている際に滑ってしまったりする場合がある。本発明に係るトウプリプレグの平均最大ストレス値として、より好ましくは50,000以下である。
<マトリックス樹脂組成物の粘度>
トウプリプレグのタックの強弱に影響を与える大きな因子として、トウプリプレグが含有するマトリックス樹脂組成物の粘度がある。紙管からの解舒性や工程通過性、形態保持性に優れたトウプリプレグを得るためにはマトリックス樹脂組成物の30℃における粘度が5Pa・s〜300Pa・sであることが好ましく、さらには10Pa・s〜200Pa・sであることがより好ましく、10Pa・s〜100Pa・sであることが特に好ましい。
マトリックス樹脂組成物の30℃における粘度が300Pa・sより大きいと、トウプリプレグのタックが強くなり、上述したタック試験結果の平均最大ストレス値が55,000Paより大きくなる場合や、トウプリプレグ製造工程において強化繊維束へマトリックス樹脂組成物を含浸させることが困難になる場合がある。またマトリックス樹脂組成物の30℃における粘度が5Pa・sより小さいと、平均最大ストレス値が5,000Paより小さくなってしまったり、トウプリプレグが柔らかくなりすぎガイドを通過する際にトウプリプレグの形状が変化する場合がある。
<マトリックス樹脂組成物の含有量>
トウプリプレグのタックの強弱に影響を与える他の大きな因子として、マトリックス樹脂組成物の含有量がある。
トウプリプレグに含まれるマトリックス樹脂組成物の含有量は、20質量%以上、40質量%以下が好ましい。20質量%以下であると強化繊維束中に十分マトリックス樹脂組成物を容易に行き渡らせることが出来ず成形品に多くのボイドが発生することがある。マトリックス樹脂組成物の含有量が40質量%以上であるとタック試験結果の平均最大ストレス値が55,000Paより大きくなったり、強化繊維複合材料の繊維含有体積率が低くなってしまい機械特性を効果的に発現できなかったりする。解舒性や工程通過性、形態保持性がより優れ、かつ機械特性の性能をより効果的に発現させるためには、マトリックス樹脂組成物の含有量を20質量%以上、30質量%以下とすることがより好ましい。
紙管からの解舒性や工程通過性、及び形態保持性に優れた、タック試験結果の平均最大ストレス値が5,000Pa〜55,000Paとなるトウプリプレグを得るためには、以下のマトリックス樹脂組成物を使用することが好ましい。
<マトリックス樹脂組成物1>
少なくとも下記の成分(A)〜(C)を含み、該成分(B)の含有量が成分(A)100質量部に対して5〜20質量部であり、成分(C)の含有量が特定有機化合物成分100質量部に対して1〜30質量部であり、かつ成分(C)の一次粒子径が1〜30μmであるマトリックス樹脂組成物。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):三塩化ホウ素アミン錯体
成分(C):粒子状の熱可塑性樹脂
すなわち該マトリックス樹脂組成物1は、前述した「粒子状の成分」として成分(C):粒子状の熱可塑性樹脂を含む。また「特定有機化合物成分」については前述のとおりであり、マトリックス樹脂組成物1において成分(A)〜(C)以外に、後述する成分(E)やエポキシ樹脂に溶解させたポリエーテルスルホンの様な熱可塑性樹脂を含む場合は、成分(A)と成分(B)とその他の成分(E)、及びエポキシ樹脂に溶解させた熱可塑性樹脂の全てが「特定有機化合物成分」に相当し、その合計100質量部に対する成分(C)の含有量を1〜30質量部とする。
<マトリックス樹脂組成物2>
少なくとも下記の成分(A)、成分(C)および成分(D)を含み、かつ該成分(C)及び成分(D)の含有量の合計が特定有機化合物成分100質量部に対して3〜30質量部であり、かつ成分(C)の一次粒子径が1〜30μmであるマトリックス樹脂組成物。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(C):粒子状の熱可塑性樹脂
成分(D):粒子状のエポキシ樹脂硬化剤、もしくは粒子状のエポキシ樹脂硬化剤および粒子状のエポキシ樹脂硬化助剤
すなわち該マトリックス樹脂組成物2は、前述した「粒子状の成分」として成分(C):粒子状の熱可塑性樹脂、及び成分(D):粒子状のエポキシ樹脂硬化剤、もしくは粒子状のエポキシ樹脂硬化剤及び粒子状のエポキシ樹脂硬化助剤、を含む。また「特定有機化合物成分」については前述のとおりであり、マトリックス樹脂組成物2において成分(A)、成分(C)、成分(D)以外に、後述する成分(E)やエポキシ樹脂に溶解させたポリエーテルスルホンの様な熱可塑性樹脂を含む場合は、成分(A)とその他の成分(E)、及びエポキシ樹脂に溶解させた熱可塑性樹脂の全てが「特定有機化合物成分」に相当し、その合計100質量部に対する成分(C)及び成分(D)の含有量の合計を3〜30質量部とする。
<成分(A)>
成分(A)はエポキシ樹脂である。
通常、エポキシ樹脂という用語は熱硬化性樹脂の一つのカテゴリーの名称、および分子内にエポキシ基を有する化合物という化学物質のカテゴリーの名称として用いられるが、本発明においては後者の意味で用いられる。
成分(A)としては、分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂を主として、または成分(A)の全量として使用することが好ましい。分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂を使用することにより、マトリックス樹脂組成物の粘度を適した範囲に調整することが出来、かつ硬化物の機械的特性を適正な範囲に調整することができる。
なお、ここでいう「2官能のエポキシ樹脂」とは、分子内に2個のエポキシ基を有する化合物を意味する。
分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂における芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環等が挙げられる。
分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、レゾルシンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ヒドロキノンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テレフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、さらに2種以上のエポキシ樹脂を併用しても良い。
中でも分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂としては、マトリックス樹脂組成物の粘度を適した範囲に調整することが出来、かつ硬化物の機械的特性を適正な範囲に調整することができる点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましく、特にエポキシ当量が170g/eq以上、200g/eq以下である液状のビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましい。
<成分(B)>
成分(B)は、三ハロゲン化ホウ素アミン錯体である。
三ハロゲン化ホウ素アミン錯体としては、三塩化ホウ素や三フッ化ホウ素等のハロゲン化ホウ素と有機アミンとからなる錯体が好ましい。即ち、成分(B)としては、三塩化ホウ素アミン錯体や三フッ化ホウ素アミン錯体が好ましい。
具体的には、例えば三フッ化ホウ素アニリン錯体、三フッ化ホウ素p−クロロアニリン錯体、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体、三フッ化ホウ素イソプロピルアミン錯体、三フッ化ホウ素ベンジルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジメチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジブチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素ジベンジルアミン錯体、これらに於けるフッ素原子が塩素原子に置き換わった化合物、及び三塩化ホウ素ジメチルオクチルアミン錯体等が挙げられる。
これら錯体の中でも特にエポキシ樹脂に対する溶解性が優れ、含有する組成物のポットライフが優れ、工業的に入手が容易である三塩化ホウ素ジメチルオクチルアミン錯体が好ましく使用できる。
これら錯体を硬化剤として使用することによって作製された繊維強化複合材料は、マトリックス樹脂組成物と強化繊維の表面との接着の強さにおいて、優れた引張強度を発現するのに適した強さを得ることが出来る。
前記成分(A)として、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂を使用する場合は、より低温で短時間に硬化できることから、成分(B)として三塩化ホウ素アミン錯体を使用することが好ましい。
成分(B)の好ましい配合量は、本発明のマトリックス樹脂組成物中に含まれる成分(A)100質量部に対して、通常5質量部以上、好ましくは8質量部以上であり、また通常20質量部以下、好ましくは18質量部以下、より好ましくは17質量部以下である。成分(B)の配合量が著しく多い、又は著しく少ない場合、硬化樹脂の耐熱性が低くなってしまう場合がある。
<成分(C)>
成分(C)は粒子状の熱可塑性樹脂である。
熱可塑性樹脂としてはポリアミド、ポリエチレン、ポリビニルホルマール、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルスルホンなどが挙げられる。
また成分(C)の一次粒子径としては、レーザー回折・散乱式粒度分析計で測定したザウタミーン径(Sauter’s mean diameter(ザウター平均粒径)。SMD)が1μm〜30μmであることが好ましく、さらに2μm〜15μmであることがより好ましい。成分(C)を強化繊維束中に含むことで、単繊維同士が密に充填することを防ぐ効果が得られる。これにより強化繊維束中の空隙の体積を大きくして、強化繊維束中により多くのマトリックス樹脂組成物を含有可能となり、十分にマトリックス樹脂組成物が含浸していればトウプリプレグ表層に存在するマトリックス樹脂組成物を減らすことができる。トウプリプレグ表層に存在するマトリックス樹脂組成物を減らすことにより、トウプリプレグのタックを低減することができる。
またさらに、比較的低粘度であるマトリックス樹脂組成物を強化繊維束へ含浸して成るトウプリプレグは、外力が加わると容易に形態が変化し、マトリックス樹脂組成物の表面張力によりトウプリプレグの幅は細く、断面は丸くなってしまう。成分(C)を強化繊維束中に存在させることで、上述のトウプリプレグの形態変化を抑制することが出来る。
成分(C)の一次粒子径が1μmよりも小さいと、強化繊維束中の単繊維同士が密に充填することを防ぐ効果が得られない可能性があり、また30μmよりも大きいと、強化繊維束にマトリックス樹脂組成物を含浸させる際に成分(C)が極端に濾別されてしまい、強化繊維束中の単繊維同士が密に充填することを防ぐ効果が得られなかったり、トウプリプレグ製造工程やトウプリプレグを使用したFW工程において濾別された成分(C)がロールやガイドに付着し堆積して、工程トラブルの原因となったりする可能性がある。
タック試験結果の平均最大ストレス値が5,000Pa〜55,000Paとなるトウプリプレグとするためには、上述したマトリックス樹脂組成物1では、特定有機化合物成分100質量部に対して、成分(C)の含有量を1〜30質量部とすることが好ましく、さらに成分(C)を2〜10質量部とすることがより好ましい。成分(C)の量が少なすぎると、十分に強化繊維束中の繊維間の空隙の体積を十分に大きくすることが困難になる可能性があり、また多すぎると、強化繊維束中の空隙の体積が大きくなり過ぎ、当該トウプリプレグを使用して作製した成形品に多くのボイドが生じる場合がある。
また上述したマトリックス樹脂組成物2では、特定有機化合物成分100質量部に対して、成分(C)と後述する成分(D)との合計含有量を3〜30質量部とすることが好ましく、4〜20質量部とすることがより好ましい。さらに成分(C)の含有量を5〜10質量部とすることが特に好ましい。
成分(C)と成分(D)を併用する場合、成分(D)によるマトリックス樹脂組成物の硬化性と、上述したような強化繊維束中の繊維間に適度な空隙を設ける作用を勘案すると、その合計含有量を3質量部以上とすることが好ましく、また上限値は、上述のマトリックス樹脂組成物1の場合等同様の理由により、30質量部とすることが好ましい。
<成分(D)>
成分(D)は粒子状のエポキシ樹脂硬化剤、もしくは粒子状のエポキシ樹脂硬化剤および粒子状のエポキシ樹脂硬化助剤(併用)である。
前記成分(D)における粒子状のエポキシ樹脂硬化剤は、エポキシ樹脂イミダゾールアダクト化合物、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物、変性脂肪族アミン化合物、ジシアンジアミド及び芳香族ポリアミンからなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。 また、粒子状のエポキシ樹脂硬化助剤は、エポキシ樹脂イミダゾールアダクト化合物、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物、変性脂肪族アミン化合物及びウレア化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。但し、該エポキシ樹脂硬化助剤としては、併用する粒子状のエポキシ樹脂硬化剤とは異なる化合物を選択する。
また成分(D)の平均粒子径としては、レーザー回折・散乱式粒度分析計で測定したザウタミーン径が1μm〜30μmであることが好ましく、さらに2μm〜15μmであることがより好ましい。成分(D)は、成分(A)エポキシ樹脂を硬化させるだけではなく、上述の成分(C)と同様の効果、すなわち強化繊維束中の繊維間に適度な空隙を設ける効果を奏する。
タック試験結果の平均最大ストレス値が5,000Pa〜55,000Paとなるトウプリプレグとし、かつ成分(A)エポキシ樹脂を十分に硬化するためには、上述したマトリックス樹脂組成物2において、特定有機化合物成分100質量部に対して、成分(C)と成分(D)の含有量の合計を3〜30質量部とすることが好ましく、4〜20質量部とすることがより好ましい。さらに成分(C)の含有量を5〜10質量部とすることが特に好ましい。
3質量部より少ないと、十分に強化繊維束中の空隙の体積を大きくすることができなかったり、成分(A)エポキシ樹脂を十分に硬化できない可能性がある。また30質量部より多いと、強化繊維束中の空隙の体積が大きくなり過ぎ、当該トウプリプレグを使用して作製した成形品に多くのボイドが生じたり、硬化剤過多のため硬化物の機械特性が低下したりする場合がある。
<成分(E)>
本発明のマトリックス樹脂組成物は、マトリックス樹脂組成物1及び2のいずれも、更に成分(E):ゴム粒子を含有していても良い。
成分(E)は、硬化後のマトリックス樹脂組成物の靱性向上のために配合される。成分(E)としては、架橋ゴム粒子、及び架橋ゴム粒子の表面に架橋ゴム粒子を構成するポリマーとは異なるポリマーをグラフト重合したコアシェル型ゴム粒子からなる群から選択される少なくとも1つのゴム粒子が、好ましく用いられる。
架橋ゴム粒子については、ゴムの種類は制限されず、例えばブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコ−ンゴム、ブチルゴム、NBR,SBR,IR,EPR等が用いられる。架橋ゴム粒子の例としては、製品名:YR−500シリーズ(東都化成(株)製)等が挙げられる。
コアシェル型ゴム粒子を構成するコア成分としては、前記架橋ゴム粒子と同様のものが挙げられる。中でもスチレンとブタジエンから構成される架橋ゴム状ポリマーが、靭性向上効果が高く好ましい。
コアシェル型ゴム粒子を構成するシェル成分は、前記したコア成分にグラフト重合されており、コア成分を構成するポリマーと化学結合していることが好ましい。なお、ここでいう「化学結合」とは、原子又はイオンを結びつけて、分子又は結晶を形成させる原子間の結合を意味する。特に、ここでの化学結合は電子対が二つの原子に共有されることにより形成される共有結合を意味する。
かかるシェル成分を構成する成分としては、例えばアクリル酸エステル系モノマー、及びメタクリル酸エステル系モノマー、及び芳香族系ビニルモノマー等からなる群から選択される少なくとも1種が重合した重合体を用いることができる。コア成分としてスチレンとブタジエンから構成される架橋ゴム状ポリマーを使用する場合、シェル成分としては、メタクリル酸エステルであるメタクリル酸メチルと芳香族ビニル化合物であるスチレンの混合体を好適に用いることができる。
また、前記シェル成分には、該コアシェル型ゴム粒子の分散状態を安定化させるために、成分(A)、すなわちエポキシ樹脂と反応する官能基が導入されていることが好ましい。かかる官能基としては、例えばヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基が挙げられ、中でもエポキシ基が好ましい。エポキシ基を導入する方法としては、前記したシェル成分に、例えばメタクリル酸2,3−エポキシプロピルを併用して、コア成分にグラフト重合する方法がある。
具体的な市販品としては、アクリルゴムを使用した製品名:W−5500或いは製品名:J−5800(三菱レイヨン(株)製)、シリコーン・アクリル複合ゴムを使用した製品名:SRK−200E(三菱レイヨン(株)製)、ブタジエン・メタクリル酸アルキル・スチレン共重合物からなる製品名:パラロイドEXL−2655(呉羽化学工業(株)製)、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体からなる製品名:スタフィロイドAC−3355或いは製品名:TR−2122(武田薬品工業(株)製)、アクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル共重合物からなる製品名:PARALOID EXL−2611或いは製品名:EXL−3387(Rohm&Haas社製)等を挙げることができる。
成分(E)は、マトリックス樹脂組成物の調製時に攪拌機やロールミル等を使用して成分(A)中へ分散してもよいが、成分(E)が予めエポキシ樹脂に分散されたマスターバッチ型のゴム粒子分散エポキシ樹脂を用いると、マトリックス樹脂組成物の調製時間を短縮するだけでなく、マトリックス樹脂組成物中のゴム粒子の分散状態を良好にすることが出来るので好ましい。さらにはゴム粒子とマトリックス樹脂成分が、化学結合又は物理結合しているものが特に好ましい。
このようなマスターバッチ型の架橋ゴム粒子分散エポキシ樹脂としては、アクリルゴムを含有した製品名:BPF307或いは製品名:BPA328(日本触媒(株)製);スチレン及びブタジエンの共重合体のコア成分とメタクリル酸メチルを含み、かつエポキシ樹脂と反応する官能基を有するシェル成分とからなるコアシェルゴム粒子を含有した製品名:MX−113或いは製品名:MX−416;ブタジエンゴムを含有した製品名:MX−156;シリコンゴムを含有した製品名:MX−960(カネカ(株)製)等が挙げられる。
なお、硬化後のマトリックス樹脂組成物の靭性向上のため、特に後述する圧力容器に使用した場合の破壊圧力の向上効果のためには、成分(E)はブタジエンゴムを含むゴム粒子であることが好ましい。すなわち、ブタジエンゴム粒子や、ブタジエンゴム粒子をコア成分とするコアシェル型ゴム粒子が好ましく、ブタジエンゴム粒子をコア成分とするコアシェル型ゴム粒子が特に好ましい。
またマトリックス樹脂組成物の硬化物中における成分(E)の粒径は、50nm以上、400nm以下であることが好ましく、50nm以上、300nm以下であることがより好ましい。硬化物中の成分(E)の粒径は、以下の方法で測定することができる。
<成分(E)の粒径を走査型電子顕微鏡(SEM)で確認可能な場合>
ASTM D5045に準拠して硬化樹脂の破壊靱性値を測定した際の試験体破面の任意の100μmの範囲をSEMを用いて観察し、確認された成分(E)の粒径、又は成分(E)が抜け落ちた凹部の径を任意の10箇所測定してその平均値を成分(E)の硬化物中の粒径とする。
<成分(E)の粒径をSEMで確認困難な場合>
硬化樹脂板をジクロロメタンに浸漬し成分(E)を溶出させる。成分(E)を溶出させた硬化樹脂板の任意の100μmの範囲を走査型プローブ顕微鏡で観察し、確認された成分(E)が溶出した凹部の径を任意の10箇所測定してその平均値を成分(E)の硬化物中の粒径とする。
硬化物中の粒径を前記範囲内とするためには、好ましくは一次粒子の体積平均粒子径が50nm以上、400nm以下、より好ましくは50nm以上、300nm以下の成分(E)を使用し、攪拌機やロールミル等を使用して成分(A)中へ分散させ、又は成分(E)が予め成分(A)に分散されたマスターバッチ型のゴム粒子分散エポキシ樹脂を用いて、マトリックス樹脂組成物を調製することにより、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物中における成分(E)の粒径を上記範囲内に制御することができる。なお、ゴム粒子の一次粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分析計等で測定することができる。
成分(E)の好ましい配合量は、本発明のマトリックス樹脂組成物中に含まれる成分(A)100質量部に対して、通常10質量部以上、好ましくは16質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、また通常110質量部以下、好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下である。
成分(E)が著しく多い場合は成分(A)への分散が困難となったり、マトリックス樹脂組成物が高粘度となり取り扱いや強化繊維束への含浸が困難となったり、作製したトウプリプレグのタックが強くなったりする場合がある。逆に成分(E)が著しく少ない場合は硬化後のマトリックス樹脂組成物の靭性向上が不十分で、成分(E)配合の効果が得られない場合がある。
<添加剤>
さらに、本発明のマトリックス樹脂組成物には、シリカ粉末、アエロジル、マイクロバルーン、三酸化アンチモン、アルミナ、酸化チタン等の無機粒子、リン化合物等の難燃剤、カーボンブラック、活性炭等の炭素粒子、成分(A)エポキシ樹脂に溶解させた熱可塑性樹脂、また、消泡剤、湿潤剤等の添加剤を目的に応じて、本発明の効果を損なわない程度配合してもよい。
成分(A)、すなわちエポキシ樹脂に溶解させた熱可塑性樹脂としては、例えばポリアミド、ポリエチレン、ポリビニルホルマール、ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルスルホンなどが挙げられる。
本発明のトウプリプレグは、公知のいずれの製造方法でも作製することができる。なかでも以下の手順で作製することが好ましい。
<好ましいトウプリプレグ製造方法>
(1)予め加熱、拡幅した強化繊維束(トウ)の少なくとも片面にマトリックス樹脂組成物を供給する。
(2)供給したマトリックス樹脂組成物を強化繊維束へ均一に含浸させる。
(3)トウプリプレグの温度を室温程度まで冷却する。
(4)トウプリプレグを紙管等に巻取る。
上記工程(1)に供される強化繊維束は、拡幅され扁平形状であることが、マトリックス樹脂組成物との接触面積が広くなるため望ましい。拡幅させる方法としては、円筒バーで擦過させる方法、振動を加える方法、及び押しつぶす方法等が挙げられる。さらに強化繊維束を拡幅する際は、強化繊維束に通常塗布されているサイズ剤を軟化させ拡幅しやすくするため、塗布されたサイズ剤の軟化点程度まで強化繊維束を加熱することが好ましい。さらにこのトウの予備加熱は、マトリックス樹脂組成物が強化繊維束内へ浸透する時に、該樹脂組成物の温度が低下しないように、予め強化繊維束の温度を上昇させておく効果もある。加熱により強化繊維束の温度を、マトリックス樹脂組成物の強化繊維束との接触前の温度以上にしておけば、強化繊維束とマトリックス樹脂組成物の接触後の強化繊維束の温度は、接触前の樹脂温度より低くなることはない。加熱方法としては加熱体との接触加熱、及び赤外線加熱、雰囲気加熱等の非接触加熱法がいずれも使用可能である。
本発明において、強化繊維束の拡幅はインラインで実施してもオフラインで実施してもよい。例えば市販の拡幅されたテープ状強化繊維束はオフラインで拡幅された強化繊維束とみなされる。
マトリックス樹脂組成物の供給方法としては、レジンバス法、回転ロール法、紙上転写法や特開平09−176346号公報、特開2005−335296号公報及び特開2006−063173号公報に記載されたノズル滴下法、特開平08−073630号公報、特開平09−031219号公報、並びに特開平8−73630号公報に記載された樹脂接触並びにトウ移動法が挙げられる。
なかでもマトリックス樹脂組成物の供給量の制御や実施の容易さのため、回転ロール法や樹脂接触並びにトウ移動法がマトリックス樹脂組成物の供給方法として好ましい。また強化繊維束の幅は通常安定化しておらず、その広がり方にはばらつきがある。従って特開平8−73630号公報に記載の通り、強化繊維束を拡幅した後、樹脂接触直前あるいは樹脂接触時にトウ幅を狭めて安定化させることが効果的である。具体例としては、樹脂吐出口部又はその直前の位置に所定幅の溝を設けて、該溝内に強化繊維束を走行させて強化繊維束の幅を狭める方法がある。
マトリックス樹脂組成物の強化繊維束への含浸時の加熱は、公知の方法で行うことができる。中でも加熱ロールや熱板等の加熱体に擦過させる方法、マトリックス樹脂組成物が供給された強化繊維束が空走する際に加熱炉を通過させたり、赤外線加熱等の非接触加熱手段で加熱させたりすることが好ましい。強化繊維束へマトリックス樹脂組成物が供給されてから加熱体までの間、及び加熱体と加熱体との間で強化繊維束やマトリックス樹脂組成物の温度が下がらないよう非接触加熱手段で加熱しておくことがより一層好ましい。
またさらに含浸工程において、強化繊維束へ外力を加えて強化繊維束を構成するフィラメントを横方向(すなわち繊維方向と直交する方向)に移動させ、フィラメント間の相対位置を変化させて樹脂とフィラメントの接触機会を増やす工程を加えることが好ましい。単なる加圧や毛細管現象による含浸効果以上の均一な含浸効果を上げることが出来る。
具体的には、強化繊維束を折り畳む、強化繊維束を拡幅する、強化繊維束を縮幅する、又は強化繊維束を加撚する等の少なくとも一つの手段で行う。これらの手段において、折り畳み手段と加撚手段は、縮幅手段と同様に強化繊維束の幅を狭める傾向にある。そして強化繊維束の幅を狭める作用を有する手段と、強化繊維束の幅を拡大する手段とを併用すると、均一含浸の効果が高くなる。なお、加撚は樹脂含浸時に行えばよく、含浸後に撚りのない状態が必要なら含浸後に撚り戻しをすればよい。また仮撚りであれば撚り戻しをする必要はなく、撚りのない強化繊維束が必要な場合には望ましい。また加撚と同時にあるいは直後に擦過を加えれば、強化繊維束の幅の広がる傾向がでてきて、更に樹脂の厚さ方向の移動のため含浸の均一性は高くなる。
フィラメントの横移動による均一含浸において、強化繊維束の走行速度未満の周速で回転する回転体に強化繊維束を接触させて擦過させることは、毛羽の堆積やロールのクリーニング等にとって有用である。擦過されていれば強化繊維束は回転体表面で絡まりつくこともなく、また回転体は強化繊維束で擦られ、且つ回転しているので強化繊維束と接触する面は常にクリーニングされている状態となり、製造環境の向上にも有用である。ただし回転体の周速は強化繊維束の走行速度の50%以上99%以下とすることが好ましい。回転体の周速が強化繊維束の走行速度に対し1/2未満であると強く擦過されることで強化繊維束が毛羽立つ場合があり、後の工程での巻きつきや紙管に巻き取られたトウプリプレグを解舒する際に問題が生じる可能性がある。
マトリックス樹脂組成物が強化繊維束に均一に含浸されていない場合、作製した強化繊維複合材料の機械的特性が低下し、本発明の効果が十分に得る事が出来ない可能性がある。
マトリックス樹脂組成物を均一に含浸させた強化繊維束は、紙管への巻取り工程までに、冷却体への擦過や非接触冷却手段等の公知の冷却手段を使用して室温程度まで冷却しておくことが好ましい。十分に冷却しない状態で巻き取ってしまうと、マトリックス樹脂組成物が低粘度であるため巻き取る際に滑りが生じ巻き形態が乱れてしまったり、一度巻き取ってしまうと中心部からは熱が逃げにくく温度が高い状態が比較的長時間続いてしまうため、マトリックス樹脂組成物のポットライフが短くなってしまったりする。
このようにして得られた本発明のトウプリプレグは紙管からの解舒、工程通過性、ドレープ性に優れるという長所(特色)があるため、フィラメントワインディング成形や引抜き成形などに適する。
以下、実施例及び比較例によって本発明をさらに説明する。
<実施例および比較例>
各例で用いた樹脂組成物の原料、調製方法、および各物性の測定方法を以下に示す。各マトリックス樹脂組成物の組成、および物性の測定結果を表1及び2にまとめて示す。なお、表1及び2中の各成分の数値は、マトリックス樹脂組成物に配合する各成分の質量部数を表す。なお本発明の範囲は、実施例に限定されるものではない。
<原料>
〔成分(A)〕
jER1001
「製品名」jER1001
「成分」ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2官能エポキシ樹脂)
(エポキシ当量:475g/eq)
「供給元」三菱化学株式会社
CY−184
「製品名」アラルダイト CY−184
「成分」 ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル
(エポキシ当量:158g/eq)
「供給元」 ハンツマン・ジャパン株式会社
〔成分(E)を成分(A)に分散したマスターバッチ型のゴム粒子分散エポキシ樹脂〕
MX−257
「製品名」カネエースMX−257
「成分」ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2官能エポキシ樹脂。エポキシ当量:189g/eq):63質量%、及びブタジエン系コアシェル型ゴム粒子(体積平均粒径:200nm):37質量%
「供給元」株式会社カネカ
MX−154
「製品名」カネエースMX−154
「成分」ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2官能エポキシ樹脂。エポキシ当量:189g/eq):60質量%、及びブタジエン系コアシェル型ゴム粒子(体積平均粒径:100nm):40質量%
「供給元」株式会社カネカ
〔成分(B)〕
DY9577
「製品名」DY9577
「成分」三塩化ホウ素アミン錯体
「供給元」ハンツマン・ジャパン株式会社
〔成分(C)〕
2001UD
「製品名」ORGASOL 2001UD NAT1
「成分」ポリアミド12(ザウタミーン径:5.3μm)
「供給元」Arkema Inc.
1002UD
「製品名」ORGASOL 1002D NAT1
「成分」ポリアミド12(ザウタミーン径:18μm)
「供給元」Arkema Inc.
Vestosint2159
「製品名」Vestsint2159
「成分」ポリアミド12(ザウタミーン径:10μm)
「供給元」エボニック インダストリーズ AG
〔成分(D)〕
DICY15
「製品名」jERキュア DICY15
「成分」ジシアンジアミド(ザウタミーン径:2μm)
「供給元」三菱化学株式会社
PN−23
「製品名」アミキュア PN−23
「成分」アミンアダクト型硬化剤(ザウタミーン径:6μm)
「供給元」味の素ファインテクノ株式会社
2014FG
「製品名」アンカミン 2014FG
「成分」変性脂肪族アミン(ザウタミーン径:2μm)
「供給元」エアプロダクツジャパン株式会社
表1及び2に記載の組成のマトリックス樹脂組成物を、以下の通り調製した。なお表中の各成分の数値は質量部を表す。
<実施例1の樹脂調製>
MX−257の一部に2001UDをロールミルを使用して分散させた。2001UDを分散させたMX−257と残りのMX−257、CY−184、DY9577をフラスコへ秤量した後、ウォーターバスを使用して内容物を40〜65℃で加温しながら、内容物が目視で均一となるまで撹拌し実施例1のマトリックス樹脂組成物を得た。
<実施例2の樹脂調製>
MX−257の一部に1002Dをロールミルを使用して分散させた。1002Dを分散させたMX−257と残りのMX−257、CY−184、DY9577をフラスコへ秤量した後、ウォーターバスを使用して内容物を40〜65℃で加温しながら、内容物が目視で均一となるまで撹拌し実施例2のマトリックス樹脂組成物を得た。
<実施例3の樹脂調製>
MX−257に2001UDをロールミルを使用して分散させた。2001UDを分散させたMX−257、DY9577をフラスコへ秤量した後、ウォーターバスを使用して内容物を40〜65℃で加温しながら、内容物が目視で均一となるまで撹拌し実施例3のマトリックス樹脂組成物を得た。
<実施例4〜7の樹脂調製>
MX−257の一部にVestosint2159をロールミルを使用して分散させた。Vestosint2159を分散させたMX−257と残りのMX−257、CY−184、DY9577をフラスコへ秤量した後、ウォーターバスを使用して内容物を40〜65℃で加温しながら、内容物が目視で均一となるまで撹拌し実施例4〜7のマトリックス樹脂組成物を得た。
<実施例8〜11の樹脂調製>
MX−257の一部にVestosint2159をロールミルを使用して分散させた。残りのMX−257とjER1001とをフラスコに秤量し、ウォーターバスを使用して内容物を80〜110℃で加温しながら、内容物が目視で均一となるまで撹拌した。調製した残りのMX−257とjER1001の混合物はフラスコから取り出し室温程度まで放冷させた。Vestosint2159を分散させたMX−257、残りのMX−257とjER1001の混合物、DY9577をフラスコへ秤量した後、ウォーターバスを使用して内容物を40〜65℃で加温しながら、内容物が目視で均一となるまで撹拌し実施例8〜11のマトリックス樹脂組成物を得た。
<実施例12の樹脂調製>
MX−257の一部にDICY15、PN−23、2014FG、及び2001UDをロールミルを使用して分散させた。DICY15、PN−23、2014FG、及び2001UDを分散させたMX−257と残りのMX−257をフラスコへ秤量した後、ウォーターバスを使用して内容物を40〜55℃で加温しながら、内容物が目視で均一となるまで撹拌し実施例12のマトリックス樹脂組成物を得た。
<実施例13の樹脂調製>
MX−257の一部にPN−23、及び2001UDをロールミルを使用して分散させた。PN−23、及び2001UDを分散させたMX−257と残りのMX−257、そしてCY−184とをフラスコへ秤量した後、ウォーターバスを使用して内容物を40〜55℃で加温しながら、内容物が目視で均一となるまで撹拌し実施例13のマトリックス樹脂組成物を得た。
<比較例1の樹脂調製>
すべての原料をフラスコへ秤量した後、ウォーターバスを使用して内容物を40〜65℃で加温しながら、内容物が目視で均一となるまで撹拌し比較例1のマトリックス樹脂組成物を得た。
<比較例2〜4の樹脂調製>
MX−257の一部にVestosint2159をロールミルを使用して分散させた。Vestosint2159を分散させたMX−257と残りのMX−257、CY−184、DY9577をフラスコへ秤量した後、ウォーターバスを使用して内容物を40〜65℃で加温しながら、内容物が目視で均一となるまで撹拌し比較例2〜4のマトリックス樹脂組成物を得た。
<マトリックス樹脂組成物の粘度測定方法>
上述の各実施例及び比較例にて得られたマトリックス樹脂組成物につき、昇温時の粘度を以下の測定条件で測定し、30℃の時の粘度をもとめた。
測定条件
装置:AR−G2(ティー・エー・インスツルメント社製)
使用プレート:35mmΦパラレルプレート
プレートギャップ:0.5mm
測定周波数:10rad/sec
昇温速度:2℃/min
ストレス:3000dynes/cm
<トウプリプレグの作製>
上述の各実施例及び比較例で得られたマトリックス樹脂組成物と、グラフィル社製高強度炭素繊維 製品名:37−800(引張強度:5520MPa、引張弾性率:255GPa、フィラメント数:30,000本)を用いてトウプリプレグを作製した。
まず、上記炭素繊維を50〜100℃に加熱し、幅11〜15mmに拡幅させた。
拡幅させた炭素繊維束(以下、単に「炭素繊維束」と称す)に、マトリックス樹脂組成物供給装置を用いて、40〜65℃に加温したマトリックス樹脂組成物を定量的に供給し、さらに加熱ロールから構成される樹脂含浸装置を用いて、炭素繊維束に均一に含浸させた。マトリックス樹脂組成物が強化繊維束へ均一に含浸するよう含浸手段の一つとして、フィラメントを横方向(フィラメントの繊維方向と直交する方向)に動かす方法を採った。これを室温まで冷却した後、紙管に巻き取った。
<平均最大ストレス値の測定>
上述の<トウプリプレグの作製>で得られた各トウプリプレグにつき、以下の手順でタック試験を行い、平均最大ストレス値を求めた。
〔タック試験〕
装置:タックテスターTA−500(株式会社ユービーエム製)
プランジャーの試料との接触面積:3.1cm
プランジャー押しつけ時間:10秒
プランジャー押しつけ荷重:90,000Pa
プランジャー上昇速度:1mm/秒
測定温度:23℃
測定湿度:50%RH
手順:
1)トウプリプレグを試料台に置き固定した。この際、プランジャーと接触するトウプリプレグの面は、当該トウプリプレグが紙管に巻かれていた時に見えていなかった面(即ち紙管側の面)とした。
2)プランジャーに90,000Pa荷重をかけ、トウプリプレグに10秒間押し当てた。
3)プランジャーを1mm/秒で上昇させた。
4)プランジャーを上昇させる間のストレス値の最大値を最大ストレス値とし、合計3回測定して、得られた最大ストレス値の平均値を平均最大ストレス値とした。
<トウプリプレグの高速解舒性評価>
図1に示したクリール、ガイド、ダンサーロール、ゴデッドロール及びワインダーから成る装置を使用して紙管に巻き取られたトウプリプレグを50m/minの速度で200m巻出すことでトウプリプレグの高速解舒性評価を行った。また巻出しの張力は1000gとした。この間にリンガーが発生せず、且つ工程中のガイド、ロール等に巻きつきが生じずに解舒出来た場合、合格と判断した。
<トウプリプレグの形態保持性評価>
トウプリプレグが、FW成形等の工程においてガイドを通過した際に、折り畳まれた後に再度開かれて、ガイドを通過する前のトウ幅程度となるかどうか、すなわちトウプリプレグの形態保持性を以下の方法で評価した。
手順:
1)紙管に巻き取られたトウプリプレグを約20cm巻出し切り取った。
2)切り取った約20cm長のトウプリプレグの凡そ中央部分を約5cm折りたたんだ。この時、折り目の線が強化繊維と沿うように、かつトウプリプレグを折りたたんだ時に紙管側が内となるようにした。
3)約20cm長のトウプリプレグを机上に置き、これの折りたたまれた部分の上に長さ5cm、幅1cm、厚さ2mmの樹脂板、さらに当該樹脂板の上に200gの重りを置いた。
4)この状態で15秒間静置した後、200gの重りと樹脂板を取りさった。
5)約20cm長のトウプリプレグの両端部を手で持ち、トウプリプレグが張るよう両端部を引っ張った。この際に折りたたまれた部分が開いた場合を合格、開かなかった場合を不合格とした。
<実施例1のトウプリプレグ評価>
上記の作製工程の通り実施例1のトウプリプレグを作製した。作製工程において顕著に成分(C)が濾別されロールやガイドに付着、堆積することは無く、さらに濾別された成分(C)のロールやガイドへの付着、堆積に起因する工程トラブルも発生しなかった。作製した実施例1のトウプリプレグは適切なタックであり、紙管からの解舒性やFW成形工程における工程通過性、並びに形態保持性の点で良好であった。またトウプリプレグ高速解舒性評価、トウプリプレグの形態保持性評価においても合格であった。
<実施例2〜11のトウプリプレグ評価>
上記の作製工程の通り実施例2〜11のトウプリプレグを作製した。作製工程において顕著に成分(C)が濾別されロールやガイドに付着、堆積することは無く、さらに濾別された成分(C)のロールやガイドへの付着、堆積に起因する工程トラブルも発生しなかった。作製した実施例2〜11のトウプリプレグは適切なタックであり、紙管からの解舒性やFW成形工程における工程通過性、並びに形態保持性の点で良好であった。
<実施例12、13のトウプリプレグ評価>
上記の作製工程の通り実施例2〜10のトウプリプレグを作製した。作製工程において顕著に成分(C)や成分(D)が濾別されロールやガイドに付着、堆積することは無く、さらに濾別された成分(C)のロールやガイドへの付着、堆積に起因する工程トラブルも発生しなかった。作製した実施例12、13のトウプリプレグは適切なタックであり、紙管からの解舒性やFW成形工程における工程通過性、並びに形態保持性の点で良好であった。
<比較例1のトウプリプレグ評価>
上記の作製工程の通り比較例1のトウプリプレグを作製した。作製工程において工程トラブルは発生しなかった。作製した比較例1のトウプリプレグはタックが非常に強く、紙管からの高速で解舒性する際に抵抗が強くスムーズに解舒出来なかったり、リンガーが発生したりした。またタックが非常に強いためFW成形工程においてガイド、ロール等に巻きつきが生じたり、ガイドで折りたたまれたトウプレグを再び拡幅することが出来なかったりした。またトウプリプレグ高速解舒性評価、トウプリプレグの形態保持性評価においても不合格であった。
<比較例2〜4のトウプリプレグ評価>
上記の作製工程の通り比較例2〜4のトウプリプレグを作製した。作製工程において成分(C)が濾別されロールやガイドに多量に付着、堆積し、さらに濾別された成分(C)のロールやガイドへの付着、堆積に強化繊維の端糸がとられロールやガイドでの巻きつきが発生した。作製した比較例2〜4のトウプリプレグはタックが非常に弱く、紙管からの解舒性やFW成形工程における工程通過性、並びに形態保持性の点で良好であったが、FW成形の際にトウプリプレグがライナーに付着せず支障が生じた。


1 紙管に巻かれたトウプリプレグ
2 ガイド
3 ダンサーロール
4 ゴデッドロール

Claims (10)

  1. 粒子状の成分を含むマトリックス樹脂組成物を含浸させた強化繊維束からなるトウプリプレグであって、タック試験結果の平均最大ストレス値が5,000〜55,000Paの範囲であるトウプリプレグ。
  2. 前記マトリックス樹脂組成物の30℃における粘度が5〜300Pa・sである請求項1に記載のトウプリプレグ。
  3. 前記強化繊維束が炭素繊維束である請求項1又は2に記載のトウプリプレグ。
  4. 樹脂含有率が20〜40質量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
  5. 前記マトリックス樹脂組成物が下記の成分(A)〜(C)を含み、該成分(B)の含有量が該成分(A)100質量部に対して5〜20質量部であり、該成分(C)の含有量が特定有機化合物成分100質量部に対して1〜30質量部であり、かつ成分(C)の一次粒子径が1〜30μmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
    成分(A):エポキシ樹脂
    成分(B):三塩化ホウ素アミン錯体
    成分(C):粒子状の熱可塑性樹脂
  6. 前記マトリックス樹脂組成物が下記の成分(A)、成分(C)および成分(D)を含み、該成分(C)及び成分(D)の含有量の合計が特定有機化合物成分100質量部に対して3〜30質量部であり、かつ成分(C)の一次粒子径が1〜30μmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
    成分(A):エポキシ樹脂
    成分(C):粒子状の熱可塑性樹脂
    成分(D):粒子状のエポキシ樹脂硬化剤、もしくは粒子状のエポキシ樹脂硬化剤および粒子状のエポキシ樹脂硬化助剤
  7. 前記成分(D)における粒子状のエポキシ樹脂硬化剤が、エポキシ樹脂イミダゾールアダクト化合物、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物、変性脂肪族アミン化合物、ジシアンジアミド及び芳香族ポリアミンからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項6に記載のトウプリプレグ。
  8. 前記成分(D)における粒子状のエポキシ樹脂硬化助剤が、エポキシ樹脂イミダゾールアダクト化合物、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物、変性脂肪族アミン化合物及びウレア化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種である(但し、該成分(D)の一部として併用される粒子状のエポキシ樹脂硬化剤とは異なる化合物である) 請求項6又は7に記載のトウプリプレグ。
  9. 更に、前記マトリックス樹脂組成物が下記成分(E)を含み、かつ該成分(E)の含有量が前記成分(A)100質量部に対して10〜110質量部である、請求項5〜8のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
    成分(E):ゴム粒子
  10. 前記成分(E)がブタジエンゴムを含むゴム粒子である請求項9記載のトウプリプレグ。
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