JP2019089951A - トウプリプレグ、繊維強化複合材料及び複合材料補強圧力容器とその製造方法 - Google Patents

トウプリプレグ、繊維強化複合材料及び複合材料補強圧力容器とその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】スプールからの解舒性や、FW工程における工程通過性、及び形態保持性に優れたトウプリプレグ、並びにこれを用いて得られるタンクバースト圧が高く、外観が良好な圧力容器とその製造方法を提供する。【解決手段】成分(A):エポキシ樹脂、成分(B):エポキシ樹脂硬化剤、及び成分(C):熱可塑性樹脂を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸したトウプリプレグであって、前記成分(C)が成分(A)に溶解しており、前記マトリックス樹脂組成物の30℃における粘度が1〜100Pa・sであり、昇温粘度2℃/分で昇温して粘度測定した際に得られる最低粘度が0.1〜1Pa・sであり、最低粘度を示す温度が80℃以上130℃以下であるトウプリプレグを提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、トウプリプレグ、及び繊維強化複合材料を用いた圧力容器とその製造方法に関する。
自動車等の移動体に搭載する圧縮天然ガスや水素ガスの貯蔵タンクには、その軽量性からタンクライナー(以下、「ライナー」という。)を繊維強化複合材料で補強した圧力容器が利用されている。繊維強化複合材料に使用される強化繊維としてはガラス繊維、炭素繊維等がある。中でも炭素繊維は比強度が高く圧力容器軽量化のメリットが大きく、高い耐圧性能が要求されるガスの貯蔵タンクに好適に使用されている。
繊維強化複合材料を用いた圧力容器(以下、「複合材料補強圧力容器」と称することがある。)は一般に、フィラメントワインディング(FW)成形によって製造される。FW成形とは、1本、又は複数本引き揃えた強化繊維束にマトリックス樹脂組成物を供給して、含浸させたものを、回転するライナー等のマンドレルへ所定の張力、角度で巻きつけた後、該マトリックス樹脂組成物を硬化させる成形法である。多くの場合は、強化繊維束にマトリックス樹脂組成物を供給して、含浸させる工程(含浸工程)に引き続き、回転するライナーなどのマンドレルにこれを巻き付ける工程(FW工程)を連続して行う。
またFW工程の直前で、強化繊維束にマトリックス樹脂組成物を供給し含浸させるのではなく、予め強化繊維束にマトリックス樹脂組成物を含浸させたトウプリプレグを作製しておき、これをFW工程で使用することもできる。この場合、トウプリプレグを回転するマンドレルへ所定の張力、角度で巻きつけて行く。
FW成形においてトウプリプレグを使用することで、様々な利点を得ることができる。例えば、トウプリプレグを用いれば、圧力容器の製造過程で未硬化のマトリックス樹脂組成物を取り扱う必要がないため、作業環境を向上させることができる。加えて、含浸工程を有さないため、FW工程の工程速度を向上させることができることができる。さらに、マトリックス樹脂組成物の含有率が管理されたトウプリプレグを使用することで、安定的に高性能な成形品を得ることができる。
トウプリプレグに求められる特性としては、所定量のマトリックス樹脂組成物が強化繊維束に十分含浸されていること、スプールに巻かれた状態から高速で解舒できること、さらにFW工程中にトウプリプレグが折りたたまれたまま、マンドレルに巻き付けられる等の不具合が生じないことが要求される。
また、ライナー等のマンドレルにトウプリプレグを巻き付けた後、トウプリプレグに含まれるマトリックス樹脂組成物を加熱して硬化させる工程において、加熱により粘度が低下したマトリックス樹脂組成物が、重力やトウプリプレグのライナーへの巻き付け張力により、強化繊維束外へ流れ出てしまう場合や、逆にマトリックス樹脂組成物の粘度が高すぎることにより、マトリックス樹脂組成物が流動しづらい場合がある。その結果、繊維強化複合材料中にボイドが多く発生したり、複合材料補強圧力容器の外観が悪化したりすることによって、得られる複合材料補強圧力容器の性能や品質に悪影響を及ぼす場合がある(以下、マトリックス樹脂組成物がトウプリプレグから流れ出ることを、「樹脂フロー」と言うことがある)。このため、マトリックス樹脂組成物を加熱して硬化させる工程において、マトリックス樹脂組成物の粘度が適度な範囲にあることも要求される。
特許文献1には、スプールからの解舒性や、FW工程における工程通過性、並びに形態保持性に優れ、かつ、硬化時の樹脂フローが抑制されたトウプリプレグが開示されている。
また、特許文献2には、タック性、ドレープ性およびマンドレルへの巻き付け性に優れたプリプレグが得られる樹脂組成物が開示されている。
特開2016−204540号公報 特開平11−5887号公報
しかし、特許文献1に開示された技術では、トウプリプレグに含まれるマトリックス樹脂を加熱して硬化させる工程(加熱硬化工程)において、エポキシ樹脂の硬化が開始する前に、マトリックス樹脂組成物中に含まれる粒子状のプレゲル化剤による増粘が起こるため、樹脂フローが起こる時間が不足し、複合材料補強圧力容器の外観が悪化する。
一方、特許文献2に開示されたプリプレグに関する技術では、マトリックス樹脂組成物の粘度が高いため、トウプリプレグに適用した場合、強化繊維束にマトリックス樹脂組成物を十分含浸させることが困難であり、また、FW工程における工程通過性が悪化する。
本発明はかかる背景に鑑み、スプールからの解舒性や、FW工程における工程通過性、及び形態保持性に優れたトウプリプレグ、これを用いて得られる、タンクバースト圧が高く、外観が良好な圧力容器とその製造方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、鋭意検討の結果、本願の発明者らは特定の条件を満たすトウプリプレグを使用することにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下に関する。
[1] 以下の成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸したトウプリプレグであって、前記成分(C)が成分(A)に溶解しており、前記マトリックス樹脂組成物の30℃における粘度が1〜100Pa・sであり、昇温粘度2℃/分で昇温して粘度測定した際に得られる最低粘度が0.1〜1Pa・sであり、最低粘度を示す温度が80℃以上130℃以下である、トウプリプレグ。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
成分(C):熱可塑性樹脂
[2] 前記成分(A)が、分子内に芳香族環を有する液状の2官能エポキシ樹脂を含む、[1]に記載のトウプリプレグ。
[3] 前記成分(A)が、脂肪族環構造を有するエポキシ樹脂を含む、[1]または[2]に記載のトウプリプレグ。
[4] 前記成分(B)はジシアンジアミドを含む、[1]〜[3]のいずれか一つに記載のトウプリプレグ。
[5] 成分(D)硬化促進剤を含む、[4]に記載のトウプリプレグ。
[6] 前記成分(C)の重量平均分子量が20万〜500万である、[1]〜[5]のいずれか一つに記載のトウプリプレグ。
[7] 前記成分(C)がビニル重合体である、[1]〜[6]のいずれか一つに記載のトウプリプレグ。
[8] 前記成分(A)100質量部に対する前記成分(C)の含有量が、0.5〜5質量部である、[1]〜[7]のいずれか一つに記載のトウプリプレグ。
[9] 前記トウプリプレグ質量に対する中の前記マトリックス樹脂組成物の含有率が20〜45質量%である、[1]〜[8]のいずれか一つに記載のトウプリプレグ。
[10] 前記強化繊維束が炭素繊維束である、[1]〜[9]のいずれか一つに記載のトウプリプレグ。
[11] [1]〜[10]のいずれか一つに記載のトウプリプレグを硬化した、繊維強化複合材料。
[12] [11]の繊維強化複合材料の層を有する複合材料補強圧力容器。
[13] 以下の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸させて樹脂含浸強化繊維束を得る含浸工程と、得られた樹脂含浸強化繊維束をライナーに巻き付けて圧力容器中間体を得るフィラメントワインディング工程と、得られた圧力容器中間体を加熱し、樹脂含浸強化繊維束に含まれる前記マトリックス樹脂組成物を硬化させる硬化工程とを含む、複合材料補強圧力容器の製造方法であって、前記成分(C)が成分(A)に溶解しており、前記マトリックス樹脂組成物の30℃における粘度が1〜100Pa・sであり、昇温粘度2℃/分で昇温して粘度測定した際に得られる最低粘度が0.1〜1Pa・sであり、最低粘度を示す温度が80℃以上130℃以下である、複合材料補強圧力容器の製造方法。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
成分(C):熱可塑性樹脂
本発明によれば、成分(C)の熱可塑性樹脂が成分(A)のエポキシ樹脂に溶解することにより、環境温度での粘度と硬化開始時の粘度を高度に制御することで、スプールからトウプリプレグが解離する解舒性、FW工程における工程通過性、及び形態保持性に優れるトウプリプレグが得られる。また、該トウプリプレグを用いることにより、タンクバースト圧力が高く、外観が良好な圧力容器を提供することができる。
本発明は、下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸したトウプリプレグであって、前記成分(C)が成分(A)に溶解しており、該マトリックス樹脂組成物の30℃における粘度が1〜100Pa・sであり、昇温粘度2℃/分で昇温して粘度測定した際に得られる最低粘度が0.1〜1Pa・sであり、最低粘度を示す温度が80℃以上130℃以下のトウプリプレグである。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
成分(C):熱可塑性樹脂
なおエポキシ樹脂という用語は熱硬化性樹脂の一つのカテゴリーの名称、或いは分子内に1以上のエポキシ基を有する化合物という化学物質のカテゴリーの名称として用いられるが、本発明においては後者の意味で用いられる。
<トウプリプレグ>
トウプリプレグとは、数千〜数万本の強化繊維のフィラメントが一方向に配列した強化繊維束に、マトリックス樹脂組成物を含浸させた後、これを紙管等のボビンに巻き取ることにより得られる細幅の中間基材である。なお本発明において、このようにボビンに巻き取られたもの、或いは巻き取られた後に解舒されたものを「トウプリプレグ」と称し、単にマトリックス樹脂組成物が含浸された強化繊維束を「樹脂含浸強化繊維束」と称す。
本発明のトウプリプレグは、後述する本発明で用いられるマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸させることにより得られる。この強化繊維束を構成する強化繊維のフィラメントの繊維径に特に制限は無いが、3μm以上50μm以下であることが好ましく、4μm以上30μm以下がより好ましく、5μm以上15μm以下が特に好ましい。
尚、本発明における「繊維径」とは、それぞれの繊維の断面の等面積円相当直径のことである。尚、繊維の断面積の測定方法は従来の方法、例えば、JIS7607に記載の方法が適用される。
繊維径が3μm未満では、例えばフィラメントが、各種加工プロセスにおいて、ロールやボビン等の表面で横移動(繊維方向と直交する方向への移動。以下同様)を起こす際に、切断したり毛羽だまりが生じたりする場合があり、50μmを越えるとフィラメントが硬くなり、屈曲性が低下する傾向がある。
強化繊維束を構成するフィラメントの本数は特に制限はないが、1,000本以上70,000本以下であることが好ましく、6000本以上60000本以下がより好ましく、12000本以上50000本以下が特に好ましい。1,000本以上70,000本以下であると、トウプリプレグとした時のねじれや幅方向の折れ曲がりが起こりにくい。
なお、強化繊維が炭素繊維である場合、フィラメントの繊維径は3μm以上12μm以下が好ましく、4μm以上9μm以下がより好ましく、4μm以上7μm以下が特に好ましい。繊維径が3μm未満では、例えばフィラメントが、各種加工プロセスにおいて、ロールやスプール等の表面で横移動を起こす際に、切断したり毛羽だまりが生じたりする場合がある。上限については、炭素繊維の製造上の困難性から、通常12μmが上限値程度である。
炭素繊維束を構成するフィラメントの本数は特に制限はないが、1,000本以上70,000本以下であることが好ましく、6000本以上60000本以下がより好ましく、12000本以上50000本以下が特に好ましい。1,000本以上70,000本以下であると、トウプリプレグとした時のねじれや幅方向の折れ曲がりが起こりにくい。
本発明における強化繊維束を構成する強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維(なお本発明では、黒鉛繊維も炭素繊維に含まれるものとして扱う)、アラミド繊維、ボロン繊維等、通常の繊維強化複合材料に使用される強化繊維を使用することができる。なかでも好ましくはJIS R 7601に準拠したストランド強度が3500MPa以上の炭素繊維、より好ましくはストランド強度4500MPa以上の炭素繊維、より一層好ましくはストランド強度が5000MPa以上の炭素繊維である。特に圧力容器や緊張材として使用する場合、使用する炭素繊維束のストランド強度は、強いほど好ましい。
<トウプリプレグのタック>
トウプリプレグのタックは、平均最大ストレス値で表すことができる。
なおストレス値とは、プランジャーと試料の接触面に生じる引張応力を意味し、平均最大ストレス値とは、以下に述べるタック試験により得られる値である。
<タック試験>
装置:タックテスターTA−500(株式会社ユービーエム製)
プランジャーの試料との接触面積:3.1cm2
プランジャー押しつけ時間:10秒
プランジャー押しつけ圧力:90,000Pa
プランジャー上昇速度:1mm/秒
測定温度:23℃
測定湿度:50%RH
手順:
1)トウプリプレグを試料台に置き固定する。この際、プランジャーと接触するトウプリプレグの面は、前記トウプリプレグが紙管に巻かれていた時の内側面(即ち紙管側の面)とする。
2)プランジャートウプリプレグに90,000Paの下方向の圧力をかけ10秒間押し当てる。
3)プランジャーを1mm/秒で上昇させる。
4)プランジャーを上昇させる間のストレス値の最大値を最大ストレス値とし、合計3回測定して、得られた最大ストレス値の平均値を平均最大ストレス値とする。
本発明のトウプリプレグの平均最大ストレス値は、2kPa以上50kPa以下とすることが好ましく、10kPa以上50kPa以下とすることがより好ましく、20kPa以上50kPa以下とすることが特に好ましい。
2kPa以上とすることで、FW工程においてマンドレルに対する適度な粘着性を有することができ、マンドレルへの巻きつけ時に発生する、滑る等の問題を回避できる。また平均最大ストレス値を50kPa以下とすることで、ボビン巻きからの高速解舒が可能になり、また、解舒後のトウプリプレグが折りたたまれたまま、ライナーに巻き付けられることを防止できる。
<マトリックス樹脂組成物の粘度>
トウプリプレグのタックの強弱に影響を与える大きな因子として、トウプリプレグが含有するマトリックス樹脂組成物の粘度が挙げられる。特にトウプリプレグを使用する環境温度でのマトリックス樹脂組成物の粘度が、トウプリプレグのタックに大きな影響を与える。スプールからの解舒性やFW工程における工程通過性、及び形態保持性に優れたトウプリプレグを得るためにはマトリックス樹脂組成物の30℃における粘度が、1Pa・s以上100Pa・s以下であることが好ましく、さらには5Pa・s以上80Pa・s以下であることがより好ましく、10Pa・s以上60Pa・s以下であることが特に好ましい。尚、環境温度とは、20〜35℃の温度を指す。
マトリックス樹脂組成物の30℃における粘度を100Pa・s以下とすることで、トウプリプレグのタックが強くなりすぎない。またトウプリプレグが適度なドレープ性を有するため、隣接するトウプリプレグ間に空隙を生じさせることなくライナーに巻き付けることができる。またマトリックス樹脂組成物の30℃における粘度を1Pa・s以上とすることで、これを含むトウプリプレグは適度なタックを有し、マンドレルに対する適度な粘着性を有することができるため、マンドレルへの巻きつけ時に発生する、滑る等の問題を回避することができる。またトウプリプレグが柔らかくなりすぎないため、FW工程におけるガイド通過時のトウプリプレグの形状変化を防ぐことができる。
マトリックス樹脂組成物の昇温硬化時の最低粘度は0.1〜1Pa・sであることが好ましい。この範囲であれば、硬化時の樹脂フローを適度にすることができる。また、昇温硬化時に最低粘度を示す温度は80〜130℃であることが好ましい。80℃以上とすることで、樹脂フローが起こるための時間を十分確保することができる。130℃以下とすることで、樹脂フローが多くなりすぎることを防ぐことができ、マトリックス樹脂組成物の硬化性も良好となる。
<マトリックス樹脂組成物の含有量>
トウプリプレグのタックの強弱に影響を与える他の大きな因子として、マトリックス樹脂組成物の含有量が挙げられる。
本発明のトウプリプレグにおけるマトリックス樹脂組成物の含有量は、トウプリプレグ全体の質量に対して20質量%以上45質量%以下が好ましい。20質量%以上にすることで、強化繊維束中に、十分な量のマトリックス樹脂組成物を容易に行き渡らせることが出来、成形品に多くの空隙が発生することを防ぐことができる。マトリックス樹脂組成物の含有量を45質量%以下にすることで、タックが強くなりすぎることを防ぐことができる。また、繊維強化複合材料の繊維含有体積率を高くできるため、機械的特性を効果的に発現できる。解舒性や工程通過性、形態保持性がより優れ、かつ機械的特性をより効果的に発現させるためには、トウプリプレグにおけるマトリックス樹脂組成物の含有量を20質量%以上30質量%以下とすることがより好ましい。
<マトリックス樹脂組成物>
一方、本発明に使用されるマトリックス樹脂組成物は、下記の成分(A)〜(C)を含む。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
成分(C):熱可塑性樹脂
<成分(A)>
成分(A)はエポキシ樹脂である。
成分(A)としては、分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂を主として使用することが好ましい。分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂を使用することにより、マトリックス樹脂組成物の粘度を適した範囲に調整することが出来、かつ硬化物の機械的特性を適正な範囲に調整することができる。
なお、ここでいう「2官能のエポキシ樹脂」とは、分子内に2個のエポキシ基を有する化合物を意味する。
分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂における芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環等が挙げられる。
分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、レゾルシン型、ヒドロキノン型、ビスフェノキシエタノールフルオレン型、ビスフェノールフルオレン型、ビスクレゾールフルオレン型、及びノボラック型などのジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;テレフタル酸型、ヘキサヒドロフタル酸型などのジグリシジルエステル型エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また2種以上のエポキシ樹脂を併用しても良い。
これら分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂の中でも、マトリックス樹脂組成物の粘度を、適切な範囲に容易に調整することが出来、かつ硬化物の機械的特性を適正な範囲に調整することができる点から、特にエポキシ当量が170g/eq以上200g/eq以下である液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
上記分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂以外にも、耐熱性向上や粘度調整を目的として、各種のエポキシ樹脂を用いることができる。例えば、3官能以上のエポキシ樹脂や、脂肪族骨格をもつエポキシ樹脂が挙げられる。3官能のエポキシ樹脂としてはトリアジン骨格含有エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、アミノクレゾール型エポキシ樹脂等が挙げられる。4官能以上のエポキシ樹脂としてはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。脂肪族骨格をもつエポキシ樹脂としては、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルなどの直鎖型脂肪族エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂などの脂肪族環構造を有するエポキシ樹脂が挙げられる。
特に、脂肪族環構造を有するエポキシ樹脂を含有することにより、マトリックス樹脂組成物の粘度をトウプリプレグの製造に適した範囲に容易に調整することが出来る、更には硬化物の耐熱性を高く保つことができるという効果があるため好ましい。
脂肪族環構造を有するエポキシ樹脂の含有量は、樹脂の種類および配合の目的により好ましい範囲が異なるが、本発明に使用されるマトリックス樹脂組成物の30℃における粘度が前述した範囲となるよう選択することが好ましい。
具体的には、脂肪族環構造を有するエポキシ樹脂の含有量は、成分(A)エポキシ樹脂100質量部に対し、好ましくは5質量部以上50質量部以下、より好ましくは10質量部以上40質量部以下、特に好ましくは20質量部以上35質量部以下である。
<成分(B)>
成分(B)は、エポキシ樹脂硬化剤である。
エポキシ樹脂硬化剤としては、一般にエポキシ樹脂を硬化させうるものであればどのような構造のものでもよい。例えば、アミン、酸無水物(カルボン酸無水物)、フェノール(ノボラック樹脂等)、メルカプタン、ルイス酸アミン錯体、オニウム塩、イミダゾールなどが挙げられる。
これらの中でも、本発明で使用されるエポキシ樹脂硬化剤としては、ジシアンジアミドが好ましい。ジシアンジアミドは、粒子状の熱活性型の潜在性硬化剤であり、マトリックス樹脂組成物調製工程における安定性や室温での保存安定性、および強化繊維束にマトリックス樹脂組成物を含浸させる工程で受ける熱に対する安定性に優れる。
すなわち、ジシアンジアミドは、一般的なトウプリプレグを使用する環境温度(具体的には20℃〜35℃)、マトリックス樹脂組成物の調製工程(具体的には40℃〜60℃)、強化繊維束へのマトリックス樹脂組成物を含浸する工程(具体的には60℃〜80℃)ではエポキシ樹脂成分にほとんど溶解せず、粒子状のままエポキシ樹脂成分に分散した状態で存在するため、エポキシ樹脂中のエポキシ基と接触する面積が小さく、反応性をほとんど示さない。
また、ジシアンジアミドは粒子状であるため、強化繊維束中に含むことで単繊維同士が密に充填することを防ぐ効果が得られる。これにより強化繊維束中の空隙の体積を大きくして、強化繊維束中により多くのマトリックス樹脂組成物を含浸させることが可能となる。トウプリプレグ中に、十分な量のマトリックス樹脂組成物を含浸させることができれば、トウプリプレグ表面に存在するマトリックス樹脂組成物を減らすことができる。このように、トウプリプレグ表面に存在するマトリックス樹脂組成物を減らすことで、トウプリプレグのタックを適度な範囲にすることができる。トウプリプレグのタックを適度な範囲にすることで、トウプリプレグをボビンに巻き取る際に、トウプリプレグが滑ってしまうことによる、トウプリプレグの巻き形態のひずみを抑制したり、トウプリプレグの解舒性を良好にしたりすることができる。
成分(A)の100質量部に対するジシアンジアミドの含有量は、2〜10質量部とすることが好ましく、2〜8.5質量部がより好ましく、3〜7質量部がさらに好ましい。
成分(A)に対するジシアンジアミドの含有量が上記範囲内であれば、得られるトウプリプレグのタック、マトリックス樹脂組成物の保存安定性、硬化時の発熱量および硬化物の特性を適正な範囲とすることができる。
成分(B)としてジシアンジアミドを用いる場合は、さらに成分(D)硬化促進剤を用いることが好ましい。
成分(D)硬化促進剤は、1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
成分(D)硬化促進剤は、ジシアンジアミドの硬化性を高めるために用いる。成分(D)硬化促進剤としては、例えば、尿素誘導体、イミダゾール誘導体、エポキシ樹脂イミダゾールアダクト化合物、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物、変性脂肪族アミン化合物、ルイス酸錯体、オニウム塩、フェノール化合物等が挙げられる。
なかでも、マトリックス樹脂組成物の貯蔵安定性と硬化性とのバランスを両立できることから、尿素誘導体、イミダゾール誘導体が好適に用いられる。
尿素誘導体は、分子内に少なくとも1つのジメチルウレイド基を有する。
尿素誘導体としては、分子内に少なくとも1つのジメチルウレイド基を持ち、高温で加熱することによりイソシアネート基とジメチルアミンを生成し、これらがエポキシ樹脂のエポキシ基やジシアンジアミドまたはその誘導体を活性化するものであれば、特に制限されない。
尿素誘導体としては、例えば、ジメチルウレイド基が脂肪族化合物に結合した脂肪族ジメチル尿素、ジメチルウレイド基が芳香環に結合した芳香族ジメチル尿素などが挙げられる。
脂肪族ジメチル尿素としては、例えばイソホロンジイソシアネートとジメチルアミンとから得られるジメチル尿素、m−キシリレンジイソシアネートとジメチルアミンとから得られるジメチル尿素、ヘキサメチレンジイソシアネートとジメチルアミンとから得られるジメチル尿素などが挙げられる。
芳香族ジメチル尿素としては、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素、3−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−1,1−ジメチル尿素、4,4’−メチレンビス(ジフェニルジメチルウレア)、及び2,4−トルエンビス(3,3−ジメチルウレア)、が挙げられ、貯蔵安定性と硬化性のバランスに優れることから、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、2,4−トルエンビス(3,3−ジメチルウレア)が好ましい。
これらの中でも、硬化速度が速くなる点で、芳香族ジメチルウレアが好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
イミダゾール誘導体は、分子内にイミダゾール環を有し、主にイミダゾール環上に置換基を持つ化合物を指す。イミダゾール誘導体は、その構造の中に非共有電子対を有する窒素原子を有し、これがエポキシ樹脂のエポキシ基やジシアンジアミドまたはその誘導体を活性化し、硬化反応を促進する。イミダゾール誘導体としては、貯蔵安定性と硬化性のバランスに優れることから、2,4−ジアミノ−6−[2−(2−メチル−1−イミダゾリル)エチル]−1,3,5−トリアジン、1−シアノ−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート等が好ましい。
マトリックス樹脂組成物中の成分(D)硬化促進剤の含有量は、硬化促進剤の種類や、所望の硬化温度により異なるが、得られるトウプリプレグのタック性や貯蔵安定性、硬化時の発熱量および硬化物の特性を適正な範囲とするため、成分(A)の100質量部に対して、0.1〜10質量部とすることが好ましく、0.3〜8質量部がよりに好ましく、0.5〜7質量部がさらに好ましい。
なお、成分(A)の100質量%に対する、ジシアンジアミドおよび成分(D)硬化促進剤の合計の含有量は、2〜12質量部であることが好ましく、3〜9質量部がより好ましい。
成分(A)に対する、ジシアンジアミドおよび硬化促進剤の合計の含有量が前記下限値以上であれば、低温での硬化性を高めることができ、前記上限値以下であれば、得られるトウプリプレグのタックが低くなりすぎない。
<成分(C)>
成分(C)は、熱可塑性樹脂である。
成分(C)の重量平均分子量は、20万〜500万であることが好ましい。40万〜200万であることがより好ましく、50万〜100万であることがさらに好ましい。重量平均分子量を20万以上とすることで、トウプリプレグに含まれるマトリックス樹脂組成物を加熱して硬化させる工程において、加熱されることにより粘度が低下したマトリックス樹脂組成物が、重力やトウプリプレグのライナーへの巻き付け張力により、強化繊維束外へ流れ出てしまうことを抑制することができる。重量平均分子量を500万以下とすることで、成分(C)熱可塑性樹脂の成分(A)への溶解が難しくなることを防ぐことができる。前記重量平均分子量は、重量平均分子量はGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を用いて測定し、ポリスチレン換算で算出した値とする。
成分(C)は、成分(A)エポキシ樹脂に溶解可能であれば特に限定されないが、分子量の制御や、成分(A)エポキシ樹脂への溶解性の制御が容易であることから、ビニル系単量体を重合してなるビニル重合体が好ましい。
ビニル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル−メタクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート等、その他の(水酸基以外の)官能基含有(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、イソクロトン酸、サリチル酸ビニロキシ酢酸、アリロキシ酢酸、2−(メタ)アクリロイルプロパン酸、3−(メタ)アクリロイルブタン酸、4−ビニル安息香酸等のカルボキシル基含有ビニル単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド;モノメチルイタコネート、モノエチルイタコネート、モノプロピルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジプロピルイタコネート、ジブチルイタコネート等のイタコン酸エステル;モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、モノプロピルフマレート、モノブチルフマレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジプロピルフマレート、ジブチルフマレート等のフマル酸エステル;モノメチルマレート、モノエチルマレート、モノプロピルマレート、モノブチルマレート、ジメチルマレート、ジエチルマレート、ジプロピルマレート、ジブチルマレート等のマレイン酸エステル;及びビニルピリジン、ビニルアルコール、ビニルイミダゾール、ビニルピロリドン、酢酸ビニル、1−ビニルイミダゾール等の、その他のビニル単量体、が挙げられる。なお、本発明において(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを示す。
これらの単量体は、1種を単独で使用、又は2種以上を併用することができる。
ビニル重合体は、乳化重合または懸濁重合によって得られる粒子を用いることが、成分(A)エポキシ樹脂への溶解性に優れることから好ましい。
マトリックス樹脂組成物中の成分(C)熱可塑性樹脂の配合量は、特に限定されないが、成分(A)100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下が好ましく、1質量部以上4質量部以下がより好ましい。0.5質量部以上とすることで、マトリックス樹脂組成物の昇温時の最低粘度を高めることができ、5質量部以下とすることで、マトリックス樹脂組成物の昇温時の最低粘度が高くなりすぎることを防ぐことができる。
[任意成分]
マトリックス樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、熱可塑性エラストマーや、シリカ粉末、アエロジル、マイクロバルーン、三酸化アンチモン、アルミナ、酸化チタン等の無機粒子、リン化合物等の難燃剤、カーボンブラック、活性炭等の炭素粒子、また、消泡剤、湿潤剤等の添加剤を、目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。
<トウプリプレグの製造方法>
本発明のトウプリプレグは、上述した成分(A)、(B)、及び(C)を含むマトリックス樹脂組成物を調製する調製工程、該マトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸させて樹脂含浸強化繊維束を得る含浸工程、得られた樹脂含浸強化繊維束を紙管などのボビンに巻き取る巻取工程、を経て製造することができる。
含浸工程および巻取工程には、公知の方法を採用することができるが、中でも以下の工程(1)〜(4)を含むことが好ましい。
工程(1):スプールから引き出した強化繊維束に張力をかけ、(必要に応じて加熱し)拡幅する。
工程(2):拡幅された強化繊維束の少なくとも片面に、(必要に応じて加熱した)マトリックス樹脂組成物を定量(強化繊維束単位量当たり、マトリックス樹脂組成物が所定の量となるように)供給する。
工程(3):供給したマトリックス樹脂組成物を強化繊維束へ含浸させ、樹脂含浸強化繊維束とする。
工程(4):樹脂含浸強化繊維束を(必要に応じて室温程度まで冷却して)紙管等のボビンに巻き取る。
マトリックス樹脂組成物を含浸させる強化繊維束は、マトリックス樹脂組成物との接触面積が広くなるため、拡幅され扁平形状であることが好ましい。
マトリックス樹脂組成物が強化繊維束に均一に含浸されると、作製した繊維強化複合材料の機械的特性が向上し、本発明の効果が十分に得られる。
<複合材料補強圧力容器の製造方法>
本発明の一実施態様において、成分(A):エポキシ樹脂、成分(B):エポキシ樹脂硬化剤及び成分(C):熱可塑性樹脂 を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸させて樹脂含浸強化繊維束を得る含浸工程と、得られた樹脂含浸強化繊維束を紙管などのボビンに巻き取りトウプリプレグを得る巻取工程と、トウプリプレグをボビンから巻き出す解舒工程と、巻き出したトウプリプレグをライナーに巻き付けて圧力容器中間体を得るフィラメントワインディング工程と、得られた圧力容器中間体を加熱し、樹脂含浸強化繊維束に含まれるマトリックス樹脂組成物を硬化させる硬化工程とを含むことにより、複合材料補強圧力容器を製造することができる。
また、本発明の別の実施態様において、成分(A):エポキシ樹脂、成分(B):エポキシ樹脂硬化剤及び成分(C)熱可塑性樹脂を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸させて樹脂含浸強化繊維束を得る含浸工程と、得られた樹脂含浸強化繊維束をライナーに巻き付けて圧力容器中間体を得るフィラメントワインディング工程と、得られた圧力容器中間体を加熱し、樹脂含浸強化繊維束に含まれるマトリックス樹脂組成物を硬化させる硬化工程とを含むことにより、複合材料補強圧力容器を製造することができる。
本発明の複合材料補強圧力容器の製造方法は、上述したマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸させて樹脂含浸強化繊維束を得る含浸工程と、得られたトウプリプレグ又は樹脂含浸強化繊維束をライナーに巻き付けるフィラメントワインディング工程(FW工程)と、該FW工程を経て得られた圧力容器中間体を加熱し、強化繊維束に含浸したマトリックス樹脂組成物を硬化させる硬化工程とを含む。
なお、本発明の複合材料補強圧力容器の製造方法は、含浸工程とFW工程との間に、マトリックス樹脂組成物が含浸した強化繊維束(すなわち「樹脂含浸強化繊維束)をボビンに巻き取りトウプリプレグを得る巻取工程と、トウプリプレグをボビンから巻き出す解舒工程を有していてもよいが、該巻取工程及び解舒工程を経ずに、含浸工程にて得られた樹脂含浸強化繊維束を直接FW工程に供しても良い。
フィラメントワインディング機(FW機)としては、従来公知のものを使用できる。複合材料補強圧力容器を作製する場合には、ライナーをマンドレルとして樹脂含浸強化繊維束やトウプリプレグを巻き付ける。FW機は、1本の樹脂含浸強化繊維束又はトウプリプレグをマンドレルに巻き付けるものであってもよいし、複数本の樹脂含浸強化繊維束又はトウプリプレグを同時にマンドレルに巻き付けるものであってもよい。
ライナーに樹脂含浸強化繊維束やトウプリプレグを巻き付ける際には、強化繊維の異方性材料としての特質を生かすため、異なる特性を有する複合材料が積層された構造となるように巻き付けることが好ましい。樹脂含浸強化繊維束又はトウプリプレグからなる層が硬化したものを複合材料層という。
本発明においては、複合材料層の構成や厚み、樹脂含浸強化繊維束やトウプリプレグをライナーへ巻き付ける角度は、容器の用途や形状、容器に要求される耐圧性能等に応じて適宜選択することができる。
樹脂含浸強化繊維束やトウプリプレグの巻き付け方としては、フープ巻きとヘリカル巻きが知られている。慣用として、鏡部を補強する複合材料層を「ヘリカル層」、胴部を補強する複合材料層を「フープ層」と称する。
硬化工程は、圧力容器中間体を加熱し、樹脂含浸強化繊維束やトウプリプレグに含まれるマトリックス樹脂組成物を硬化させる工程である。硬化温度、硬化時間、及び昇温・降温速度は、マトリックス樹脂組成物の配合組成に応じて決定される。加熱する方法は、真空バッグとヒーターを用いる方法、熱収縮テープを巻き付けて、オーブン中で加熱して加熱と加圧を同時に行う方法、ライナー内部に加圧物質を充填し内圧をかけながら加熱する方法などが用いられる。
本発明によれば、成分(C)の熱可塑性樹脂が成分(A)のエポキシ樹脂に溶解することにより、環境温度での粘度と硬化開始時の粘度を高度に制御することで、スプールからトウプリプレグが解離する解舒性、FW工程における工程通過性、及び形態保持性に優れるトウプリプレグが得られる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
各例で用いた樹脂組成物の原料、調製方法、および各物性の測定方法を以下に示す。表中の各成分の数値は、マトリックス樹脂組成物に配合する各成分の質量部数を表す。
<原料>
(成分(A))
・ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製;製品名「jER828」)
液状の2官能エポキシ樹脂、エポキシ当量:189g/eq
・ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル(ハンツマン・ジャパン株式会社製;製品名「Araldite CY184」)エポキシ当量:158g/eq
(成分(B))
・ジシアンジアミド(三菱ケミカル株式会社製;製品名「jERキュア DICY7」)
(成分(C))
・ポリエーテルスルホン(BASF社製;製品名「Ultrason E2020P」)
・ビニル重合体粒子P1
(成分(D))
・3−フェニル−1,1−ジメチル尿素(ピイ・ティ・アイ・ジャパン株式会社;製品名「オミキュア94」)
〔ビニル重合体粒子(P1)の製造〕
<ビニル重合体エマルジョン(L1)及びビニル重合体粒子(P1)の製造>
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した2リットルの4つ口フラスコに、イオン交換水584gを入れ、30分間窒素ガスを充分に通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、表1に記載の単量体混合物(M1)、開始剤として過硫酸カリウム0.40gを添加し、1時間重合を行った。引き続き、単量体混合物(M2)を滴下によって投入した。
その後、単量体混合物(M2)の重合による発熱が見られなくなった後1時間保持し、単量体混合物(M3)を投入した。
さらに単量体混合物(M3)投入後、80℃にて1時間攪拌を継続して、重合体粒子分散液(L1)を得た。
重合体粒子分散液(L1)をL−8型スプレードライヤー(大河原化工機(株)製)を用いて噴霧乾燥し(入口温度/出口温度=150/65℃、ディスク回転数25000rpm)、ビニル重合体粒子(P1)を得た。
Figure 2019089951
表1中の略称は以下の化合物を示す。
MMA:メチルメタクリレート
n−BMA:n−ブチルメタクリレート
KPS:過硫酸カリウム
ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(花王(株)製;商品名「ペレックスOT−P」)
MAA:メタクリル酸(三菱レイヨン(株)製)
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤(花王(株)製;商品名「エマルゲン106」)HLB=10.5
〔実施例および比較例〕
<実施例1>
(マトリックス樹脂組成物の調製)
表3に記載の各成分を記載の割合で含有するマトリックス樹脂組成物を調製した。まずビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)とビニル重合体粒子P1とを、質量比で1:1の割合で混合した。当該混合物を三本ロールミルを使用してさらに混練して、マスターバッチとした。同様に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)とジシアンジアミド(DICY7)の質量比1:1のマスターバッチ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)と3−フェニル−1,1−ジメチル尿素(オミキュア94)の質量比1:1のマスターバッチを調製した。ガラスフラスコにビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)とビニル重合体粒子P1のマスターバッチ8質量部(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)を4質量部、及びビニル重合体粒子P1を4質量部含む)とビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)を88.5質量部秤量し、オイルバスで40〜50℃に加温しながら均一になるまで撹拌した後、オイルバスの設定温度を約120℃に昇温してさらに約3時間、内容物を加温し撹拌した。内容物が透明となりビニル重合体粒子P1がビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)に溶解したことを確認した後、ガラスフラスコをオイルバスから取り出し内容物が40℃以下となるまで放冷した。そして、当該ガラスフラスコにビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)とジシアンジアミド(DICY7)のマスターバッチ12質量(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)を6質量部、及びジシアンジアミド(DICY7)を6質量部含む)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)と3−フェニル−1,1−ジメチル尿素(オミキュア94)のマスターバッチ3質量部(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)を1.5質量部、及び3−フェニル−1,1−ジメチル尿素(オミキュア94)を1.5質量部含む)を秤量した。ガラスフラスコの内容物を40〜50℃に加温しながら均一になるまで撹拌し、マトリックス樹脂組成物を得た。
(マトリックス樹脂組成物の昇温粘度測定)
以下の通りマトリックス樹脂組成物の昇温粘度測定を行った。得られた測定結果の30℃時の粘度をマトリックス樹脂組成物の「30℃粘度」とし、さらに得られた測定結果において最も小さい粘度をマトリックス樹脂組成物の「最低粘度」、その時の温度をマトリックス樹脂組成物の「最低粘度時の温度」とした。結果を表3に示す。
装置:AR−G2(ティー・エー・インスツルメント社製)
使用プレート:35mmΦパラレルプレート
プレートギャップ:0.5mm
測定周波数:10rad/sec
昇温速度:2℃/min
ストレス:300Pa
(マトリックス樹脂組成物硬化物の破壊靭性(KIc)試験)
得られたマトリックス樹脂組成物を真空ポンプを用いて脱泡を行い、3mm厚となるように所定の型枠内に注入したものを、熱風オーブンを用いて昇温速度1℃/分で昇温し、130℃で4時間保持して硬化させることにより、マトリックス樹脂組成物硬化物の硬化樹脂板を得た。得られた硬化樹脂板について、ASTM D5045に示されるSENB法によって破壊靭性値(KIc)を測定した。結果を表3に示す。
(トウプリプレグの作製)
強化繊維束として、フィラメント数30,000本の炭素繊維「37−800WD」(三菱ケミカルカーボンファイバーアンドコンポジッツ社製、引張強度5520MPa、引張弾性率255GPa)を用いてトウプリプレグを作製した。
具体的な作製方法を以下に示す。クリールから強化繊維束を送り出し、表面温度が100℃程度に加温された開繊バーを通し、幅10〜15mmに拡幅させた。拡幅された強化繊維束を、60℃程度に加温されたマトリックス樹脂組成物が塗工されたタッチロールに接触させ、強化繊維束にマトリックス樹脂組成物を供給した。マトリックス樹脂組成物が供給された強化繊維束を、80℃程度に加温された含浸ロールに擦過させることにより、マトリックス樹脂組成物を強化繊維束内部まで含浸させた後、ワインダーにて紙管に巻き取りトウプリプレグを得た。なお、ドクターブレードとタッチロール間のクリアランスを調整することによって、強化繊維束に対する樹脂の付着量(即ちトウプリプレグの樹脂含有率)を約28質量%に調整した。
(トウプリプレグのタック試験)
トウプリプレグのタックは以下のタック試験で測定した。得られた平均最大ストレス値をトウプリプレグのタックを示す値(タック値)とした。結果を表3に示す。
装置:タックテスターTA−500(株式会社ユービーエム製)
プランジャーの試料(測定対象であるプリプレグ)との接触面積:約3.1cm2
プランジャー押しつけ時間:10秒
プランジャー押しつけ圧力:90,000Pa
プランジャー上昇速度:1mm/秒
測定温度:23℃
測定湿度:50%RH
手順:
1)トウプリプレグを試料台に置き固定する。この際、プランジャーと接触するトウプリプレグの面は当該トウプリプレグが紙管に巻かれていた時に見えていなかった面(即ち紙管側の面)とする。
2)プランジャーをトウプリプレグに90kPaの圧力をかけ、10秒間保持する。
3)プランジャーを1mm/秒で上昇させる。
4)プランジャーを上昇させる間のストレス値の最大値を最大ストレス値とし、合計5回測定して得られた最大ストレス値の平均値を平均最大ストレス値とした。
(複合材料補強圧力容器の製造)
FW装置を用いて、先に得られたトウプリプレグを、容量9リットルのアルミニウム製ライナー(全長540mm、胴部長さ415mm、胴部外径163mm、胴部の中央での肉厚3mm)に巻き付けた。使用したアルミニウム製のライナーは、JIS H 4040のA6061−T6に規定されるアルミニウム素材に熱処理を施した材料からなるものである。
トウプリプレグは、紙管から巻き出し、ガイドロールを介して位置を調整した後に、以下のようにしてライナーへ巻き付けた。
まず、ライナーの胴部に接する第一層目として、胴部上にライナーの回転軸方向に対し88.6°をなすよう、トウプリプレグを巻き付けた(ラミネートNo.1)。その後、ライナーの回転軸方向に対し11.0°の角度でトウプリプレグを巻き付け(ラミネートNo.2)、ライナーの鏡部を補強するヘリカル層を積層した。以降、表2に示す「ラミネートNo.3〜8」に記載の角度でトウプリプレグを順次をライナーに巻き付けて、圧力容器中間体を作製した。
Figure 2019089951
得られた圧力容器中間体をFW装置から外し、加熱炉内に吊り下げて、炉内温度を1℃/分で130℃まで昇温した後、130℃で4時間保持して硬化させた。その後、炉内温度を1℃/分で60℃まで冷却し、複合材料補強圧力容器を得た。
(複合材料補強圧力容器の破壊圧力測定試験)
水圧破壊試験機に複合材料補強圧力容器をセットし、該圧力容器内に水を満たした後、昇圧速度15MPa/分で複合材料補強圧力容器に水圧を負荷し、複合材料補強圧力容器が破裂したときの水圧を記録して複合材料補強圧力容器の破壊圧力とした。結果を表3に示す。
(複合材料補強圧力容器の外観観察)
得られた複合材料補強圧力容器を目視で観察し、表層や強化繊維束と強化繊維束との間に硬化したマトリックス樹脂組成物がほとんど存在していなかった場合を「C」と評価し、表層や強化繊維束と強化繊維束との間に硬化したマトリックス樹脂組成物が少量存在していた場合を「B」と評価し、適切な量の樹脂フローが生じ、表層や強化繊維束と強化繊維束との間に硬化したマトリックス樹脂組成物が適度に存在した場合を「A」と評価した。結果を表3に示す。
Figure 2019089951
<実施例2>
表3に示す組成の通り、表3に記載の各成分を記載の割合で含有するマトリックス樹脂組成物を調製した。まずビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)とビニル重合体粒子P1とを、質量比で1:1の割合で混合した。当該混合物を三本ロールミルを使用してさらに混練して、マスターバッチとした。同様に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)とジシアンジアミド(DICY7)の質量比1:1のマスターバッチ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)と3−フェニル−1,1−ジメチル尿素(オミキュア94)の質量比1:1のマスターバッチを調製した。ガラスフラスコにビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)とビニル重合体粒子P1のマスターバッチ8質量部(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)を4質量部、及びビニル重合体粒子P1を4質量部含む)とビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)を63.5質量部、CY184を25質量部秤量し、オイルバスで40〜50℃に加温しながら均一になるまで撹拌した後、オイルバスの設定温度を約120℃に昇温してさらに約3時間、内容物を加温し撹拌した。内容物が透明となりビニル重合体粒子P1がビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)に均一に溶解したことを確認した後、ガラスフラスコをオイルバスから取り出し内容物が40℃以下となるまで放冷した。そして、当該ガラスフラスコにビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)とジシアンジアミド(DICY7)のマスターバッチ12質量(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)を6質量部、及びジシアンジアミド(DICY7)を6質量部含む)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)と3−フェニル−1,1−ジメチル尿素(オミキュア94)のマスターバッチ3質量部(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)を1.5質量部、及び3−フェニル−1,1−ジメチル尿素(オミキュア94)を1.5質量部含む)を秤量した。ガラスフラスコの内容物を40〜50℃に加温しながら均一になるまで撹拌し、マトリックス樹脂組成物を得た。
マトリックス樹脂組成物の昇温粘度測定、マトリックス樹脂組成物硬化物の破壊靭性(KIc)試験、トウプリプレグの作製、トウプリプレグのタック試験、複合材料補強圧力容器の製造、複合材料補強圧力容器の破壊圧力測定試験、複合材料補強圧力容器の外観観察はいずれも実施例1と同様に実施した。結果を表3に示す。
<比較例1>
(マトリックス樹脂組成物の調製)
表3に示す組成の通り、表3に記載の各成分を記載の割合で含有するマトリックス樹脂組成物を調製した。まずビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)とジシアンジアミド(DICY7)とを、質量比で1:1の割合で混合した。当該混合物を三本ロールミルを使用してさらに混練して、マスターバッチとした。同様に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)と3−フェニル−1,1−ジメチル尿素(オミキュア94)の質量比1:1のマスターバッチを調製した。ガラスフラスコにビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)とジシアンジアミド(DICY7)のマスターバッチ12質量(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)を6質量部、及びジシアンジアミド(DICY7)を6質量部含む)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)と3−フェニル−1,1−ジメチル尿素(オミキュア94)のマスターバッチ3質量部(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)を1.5質量部、及び3−フェニル−1,1−ジメチル尿素(オミキュア94)を1.5質量部含む)、及びビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)を92.5質量部秤量した。ガラスフラスコの内容物を40〜50℃に加温しながら均一になるまで撹拌し、マトリックス樹脂組成物を得た。
マトリックス樹脂組成物の昇温粘度測定、マトリックス樹脂組成物硬化物の破壊靭性(KIc)試験、トウプリプレグの作製、トウプリプレグのタック試験、複合材料補強圧力容器の製造、複合材料補強圧力容器の破壊圧力測定試験、複合材料補強圧力容器の外観観察はいずれも実施例1と同様に実施した。結果を表3に示す。
<比較例2>
表3に示す組成の通り、表3に記載の各成分を記載の割合で含有するマトリックス樹脂組成物を調製した。まず、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)とPES E2020Pとを、質量比で1:1の割合で混合した。当該混合物を三本ロールミルを使用してさらに混練して、マスターバッチとした。同様に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)とジシアンジアミド(DICY7)の質量比1:1のマスターバッチ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)と3−フェニル−1,1−ジメチル尿素(オミキュア94)の質量比1:1のマスターバッチを調製した。ガラスフラスコにビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)とPES E2020Pのマスターバッチ8質量部(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)を4質量部、及びPES E2020Pを4質量部含む)とビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)を88.5質量部秤量し、オイルバスで40〜50℃に加温しながら均一になるまで撹拌した後、オイルバスの設定温度を約120℃に昇温してさらに約3時間、内容物を加温し撹拌した。内容物が透明となりPES E2020PがビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)に溶解したことを確認した後、ガラスフラスコをオイルバスから取り出し内容物が40℃以下となるまで放冷した。そして、当該ガラスフラスコにビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)とジシアンジアミド(DICY7)のマスターバッチ12質量(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)を6質量部、及びジシアンジアミド(DICY7)を6質量部含む)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)と3−フェニル−1,1−ジメチル尿素(オミキュア94)のマスターバッチ3質量部(ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER828)を1.5質量部、及び3−フェニル−1,1−ジメチル尿素(オミキュア94)を1.5質量部含む)を秤量した。ガラスフラスコの内容物を40〜50℃に加温しながら均一になるまで撹拌し、マトリックス樹脂組成物を得た。
マトリックス樹脂組成物の昇温粘度測定、マトリックス樹脂組成物硬化物の破壊靭性(KIc)試験、トウプリプレグの作製、トウプリプレグのタック試験、複合材料補強圧力容器の製造、複合材料補強圧力容器の破壊圧力測定試験、複合材料補強圧力容器の外観観察はいずれも実施例1と同様に実施した。結果を表3に示す。
実施例1または2で得られたトウプリプレグはいずれも硬化の際の樹脂フローが適切に調整されたものであり、複合材料補強圧力容器とした際に優れた破壊圧力を示し、圧力容器の外観も良好であった。
比較例1で得られたトウプリプレグは成分(C)が含まれていないため、樹脂フロー量が過大となり、複合材料補強圧力容器とした際の破壊圧力が劣り、外観も悪化した。比較例2で得られたトウプリプレグは、最低粘度が低すぎたため、樹脂フロー量が過大となり、タンクの外観が悪化した。
当該トウプリプレグは圧力容器以外にも、スポーツ用品、自動車、航空機、緊張材等の一般産業用途に用いることが出来る。また、前記トウプリプレグを用いることにより、タンクバースト圧力が高く、外観が良好な圧力容器を提供することができる。

Claims (13)

  1. 以下の成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸したトウプリプレグであって、前記成分(C)が成分(A)に溶解しており、前記マトリックス樹脂組成物の30℃における粘度が1〜100Pa・sであり、昇温粘度2℃/分で昇温して粘度測定した際に得られる最低粘度が0.1〜1Pa・sであり、最低粘度を示す温度が80℃以上130℃以下である、トウプリプレグ。
    成分(A):エポキシ樹脂
    成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
    成分(C):熱可塑性樹脂
  2. 前記成分(A)が、分子内に芳香族環を有する液状の2官能エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載のトウプリプレグ。
  3. 前記成分(A)が、脂肪族環構造を有するエポキシ樹脂を含む、請求項1または2に記載のトウプリプレグ。
  4. 前記成分(B)はジシアンジアミドを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
  5. 成分(D)硬化促進剤を含む、請求項4に記載のトウプリプレグ。
  6. 前記成分(C)の重量平均分子量が20万〜500万である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
  7. 前記成分(C)がビニル重合体である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
  8. 前記成分(A)100質量部に対する前記成分(C)の含有量が、0.5〜5質量部である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
  9. 前記トウプリプレグ質量に対する中の前記マトリックス樹脂組成物の含有率が20〜45質量%である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
  10. 前記強化繊維束が炭素繊維束である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
  11. 請求項1〜10のいずれか一項に記載のトウプリプレグを硬化した、繊維強化複合材料。
  12. 請求項11の繊維強化複合材料の層を有する複合材料補強圧力容器。
  13. 以下の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸させて樹脂含浸強化繊維束を得る含浸工程と、得られた樹脂含浸強化繊維束をライナーに巻き付けて圧力容器中間体を得るフィラメントワインディング工程と、得られた圧力容器中間体を加熱し、樹脂含浸強化繊維束に含まれる前記マトリックス樹脂組成物を硬化させる硬化工程とを含む、複合材料補強圧力容器の製造方法であって、前記成分(C)が成分(A)に溶解しており、前記マトリックス樹脂組成物の30℃における粘度が1〜100Pa・sであり、昇温粘度2℃/分で昇温して粘度測定した際に得られる最低粘度が0.1〜1Pa・sであり、最低粘度を示す温度が80℃以上130℃以下である、複合材料補強圧力容器の製造方法。
    成分(A):エポキシ樹脂
    成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
    成分(C):熱可塑性樹脂
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