JP2018158963A - トウプリプレグ、および複合材料補強圧力容器 - Google Patents

トウプリプレグ、および複合材料補強圧力容器 Download PDF

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Abstract

【課題】圧力容器に成形・硬化した際にボイドが少なく高い繊維強度発現率を示し、取扱い性に優れたトウプリプレグ、及びこれを使用した、巻回体と複合材料補強圧力容器を提供する。【解決手段】125℃における表面自由エネルギーが32.0〜36.0mJ/m2である成分(A)エポキシ樹脂、及び成分(B)エポキシ樹脂硬化剤を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸したトウプリプレグ、得られたトウプリプレグを用いた巻回体及び複合材料補強圧力容器、並びに前記マトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸させて樹脂含浸強化繊維束を得る含浸工程と、得られた樹脂含浸強化繊維束をマンドレルまたはライナーに巻き付けるフィラメントワインディング工程と、樹脂含浸強化繊維束に含まれるマトリックス樹脂組成物を加熱硬化させる硬化工程とを含む、巻回体及び複合材料補強圧力容器の製造方法。【選択図】 なし

Description

本発明は、トウプリプレグ、及び繊維強化複合材料を用いた複合材料補強圧力容器に関する。当該トウプリプレグは圧力容器以外にも、スポーツ用品、自動車、航空機、緊張材等の一般産業用途に用いることが出来る。
自動車等の移動体に搭載する圧縮天然ガスや水素の貯蔵タンクには、その軽量性からタンクライナー(以下、「ライナー」という)を繊維強化複合材料で補強した圧力容器が利用されている。繊維強化複合材料に使用される強化繊維としてはガラス繊維、炭素繊維等がある。中でも炭素繊維は比強度が高いため圧力容器軽量化のメリットが大きく、高い耐圧性能が要求される圧力容器に好適に用いられている。
繊維強化複合材料を用いた圧力容器(以下、「複合材料補強圧力容器」と称することがある。)は一般に、フィラメントワインディング(FW)成形によって製造される。FW成形とは、1本、又は複数本引き揃えた強化繊維束にマトリックス樹脂組成物を供給し、含浸させたものを、回転するライナー等のマンドレルへ所定の張力、角度で巻きつけた後、該マトリックス樹脂組成物を硬化させる成形法である。多くの場合は、強化繊維束にマトリックス樹脂組成物を供給して、含浸させる工程(含浸工程)に引き続き、回転するライナーなどのマンドレルにこれを巻き付ける工程(FW工程)を連続して行う。
またFW工程の直前で、強化繊維束にマトリックス樹脂組成物を供給し含浸させるのではなく、予め強化繊維束にマトリックス樹脂組成物を含浸させたトウプリプレグを作製しておき、これをFW工程で使用することもできる。この場合、トウプリプレグを回転するマンドレルへ所定の張力、角度で巻きつける。
FW成形においてトウプリプレグを使用することには、様々な利点がある。例えば、トウプリプレグを用いれば、圧力容器の製造過程で未硬化のマトリックス樹脂組成物を取り扱う必要がないため、作業環境を向上させることができる。加えて含浸工程を有さないため、FW工程の工程速度を向上させることができる。さらに、マトリックス樹脂組成物の含有率が管理されたトウプリプレグを使用することで、安定的に高性能な成形品を得ることができる。
圧力容器に使用されるトウプリプレグは、繊維強化複合材料とした際の繊維強度発現率が高いことが求められる。強化繊維の繊維強度発現率とは、強化繊維自体の引っ張り強度に対する、該強化繊維を含む繊維強化複合材料の繊維方向の引っ張り強度の割合である。すなわち、特定のマトリックス樹脂組成物を用いることにより、強化繊維が本来有する引張強度を十分に発現させることができる。繊維強度発現率を高めることにより、複合材料補強圧力容器に内圧をかけた時の破裂圧力(バースト圧力)を高めることができる。
トウプリプレグをライナーに巻き付けた中間成形体は通常熱をかけて樹脂組成物を硬化させることで複合材料補強圧力容器とするが、圧力をかけずに成形するためボイドが発生しやすく、繊維強度発現率が低くなりやすい。
得られるFRP(繊維強化複合材料)について、ボイドやピンホールがほとんど発生しないプリプレグ用の樹脂組成物としては、100℃における表面エネルギーが35mJ/m以下の樹脂組成物が開示されている(特開2004−224979)。
特開2004−224979
しかしながら、特許文献1に開示された技術はプリプレグ用の樹脂組成物であり、トウプリプレグの製造に用いた際の取り扱い性を考慮しておらず、トウプリプレグに適用することは難しい。
本発明は、圧力容器に成形・硬化した際にボイドが少なく高い繊維強度発現率を示し、取扱い性に優れたトウプリプレグ、及びこれを使用した複合材料補強圧力容器を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明者らは特定の条件を満たすトウプリプレグを使用することにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下に関する。
[1]
以下の成分(A)、成分(B)を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸したトウプリプレグであって、前記成分(A)の125℃における表面自由エネルギーが32.0〜36.0mJ/mであるトウプリプレグ。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
[2]
前記成分(A)100質量部中、脂環構造を有するエポキシ樹脂の含有量が5〜100質量部である[1]に記載のトウプリプレグ。
[3]
前記マトリックス樹脂組成物の30℃における粘度が1〜300Pa・sである[1]または[2]に記載のトウプリプレグ。
[4]
前記成分(B)はジシアンジアミドを含む[1]〜[3]のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
[5]
前記マトリックス樹脂組成物が、さらに成分(C)を含む[1]〜[4]のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
成分(C):硬化促進剤
[6]
前記マトリックス樹脂組成物が、前記成分(A)〜(C)を含み、
前記成分(B)の含有量が、前記成分(A)100質量部に対して、0.5〜10質量部であり、 前記成分(C)の含有量が、前記成分(A)100質量部に対して、1〜10質量部である、[5]に記載のトウプリプレグ。
[7]
前記強化繊維束が炭素繊維束である[1]〜[6]のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
[8]
前記トウプリプレグ質量に対する前記マトリックス樹脂組成物の含有率が20〜35質量%である[1]〜[7]のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
[9]
[1]〜[8]のいずれか一項に記載のトウプリプレグを硬化した繊維強化複合材料。
[10]
[1]〜[8]のいずれか一項に記載のトウプリプレグの硬化物の層を有する複合材料補強圧力容器。
[11]
以下の成分(A)、成分(B)を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸させて樹脂含浸強化繊維束を得る含浸工程と、得られた樹脂含浸強化繊維束をマンドレルに巻き付けて巻回体を得るフィラメントワインディング工程と、得られた巻回体を加熱し、樹脂含浸強化繊維束に含まれる前記マトリックス樹脂組成物を硬化させる硬化工程とを含む、巻回体の製造方法であって、成分(A)の125℃における表面自由エネルギーが32.0〜36.0mJ/mである巻回体の製造方法。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
[12]
以下の成分(A)、成分(B)を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸させて樹脂含浸強化繊維束を得る含浸工程と、得られた樹脂含浸強化繊維束をライナーに巻き付けて圧力容器中間体を得るフィラメントワインディング工程と、得られた圧力容器中間体を加熱し、樹脂含浸強化繊維束に含まれる前記マトリックス樹脂組成物を硬化させる硬化工程とを含む、複合材料補強圧力容器の製造方法であって、成分(A)の125℃における表面自由エネルギーが32.0〜36.0mJ/mである複合材料補強圧力容器の製造方法。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
本発明によれば、特定のマトリックス樹脂を用いることにより、圧力容器に成形した際にボイドが少なく高い繊維強度発現率を示すトウプリプレグ、及びこれを使用した複合材料補強圧力容器を提供することができる。
本発明は、成分(A)、成分(B)を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸したトウプリプレグであって、前記成分(A)の125℃における表面自由エネルギーが32.0〜36.0mJ/mであるトウプリプレグに関する。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
以下、詳細に説明する。
トウプリプレグとは、数千〜数万本の強化繊維のフィラメントが一方向に配列した強化繊維束に、マトリックス樹脂組成物を含浸させた後、これを紙管等のボビンに巻き取ることにより得られる細幅の中間基材である。なお本発明において、このようにボビンに巻き取られたもの、或いは巻き取られた後解舒されたものを「トウプリプレグ」と称し、単にマトリックス樹脂組成物が含浸された強化繊維束を「樹脂含浸強化繊維束」と称す。
本発明のトウプリプレグは、後述する本発明で用いられるマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸させることにより得られる。この強化繊維束を構成するフィラメントの繊維径及び本数に特に制限は無いが、繊維径は3〜100μmであることが好ましく、本数は1,000〜70,000本であることが好ましい。なお本発明における「繊維径」とは、それぞれの繊維の断面の等面積円相当直径のことである。
繊維径が3μm未満では、例えばフィラメントが、各種加工プロセスにおいて、ロールやボビン等の表面で横移動(繊維方向と直交する方向への移動。以下同様)を起こす際に、切断したり毛羽だまりが生じたりする場合があり、100μmを越えるとフィラメントが硬くなり、屈曲性が低下する傾向がある。
本発明における強化繊維束としてはガラス繊維、炭素繊維(なお本発明では、黒鉛繊維も炭素繊維に含まれるものとする)、アラミド繊維、ボロン繊維等、通常の繊維強化複合材料に使用される強化繊維を使用することができる。なかでも比強度が高い炭素繊維が好ましく、より好ましくはJIS R 7601に準拠したストランド強度が3500MPa以上の炭素繊維、特に好ましくはストランド強度4500MPa以上の炭素繊維、最も好ましくはストランド強度が5000MPa以上の炭素繊維である。特に圧力容器や緊張材として使用する場合、使用する炭素繊維束のストランド強度は、強いほど好ましい。
なお、強化繊維束が炭素繊維束である場合、フィラメントの繊維径は3〜12μm、本数は1,000〜70,000であることが好ましい。繊維径が3μm未満では、例えばフィラメントが、各種加工プロセスにおいて、ロールやスプール等の表面で横移動を起こす際に、切断したり毛羽だまりが生じたりする場合がある。上限については、炭素繊維の製造上の困難性から、通常12μm程度である。
<マトリックス樹脂組成物の含有量>
トウプリプレグの取扱い性や繊維強度発現率に影響を与える他の大きな因子として、マトリックス樹脂組成物の含有量が挙げられる。
本発明のトウプリプレグにおけるマトリックス樹脂組成物の含有量は、20質量%以上、35質量%以下が好ましい。20質量%以上にすることで、強化繊維束中に、十分な量のマトリックス樹脂組成物を容易に行き渡らせることができ、繊維強化複合材料中に多くの空隙が発生することを防ぐことができるため、繊維強度発現率を高くすることができる。マトリックス樹脂組成物の含有量を35質量%以下にすることで、タックが強くなりすぎることを防ぐことができる。また繊維強化複合材料の繊維含有体積率を高くできるため、強化繊維の機械的特性を効果的に発現できる。解舒性や工程通過性、形態保持性がより優れ、かつ機械的特性をより効果的に発現させるためには、トウプリプレグにおけるマトリックス樹脂組成物の含有量を20質量%以上、30質量%以下とすることがより好ましい。
<マトリックス樹脂組成物>
[成分(A):エポキシ樹脂]
成分(A)はエポキシ樹脂である。本発明においてエポキシ樹脂という用語は分子内に1つ以上のエポキシ基を有する化合物という化学物質のカテゴリーの名称として用いられる。
成分(A)の125℃における表面自由エネルギーは32.0〜36.0mJ/mである。表面自由エネルギーを32.0mJ/m以上とすることにより、熱硬化時にマトリックス樹脂組成物が強化繊維間に保持されやすくなり、ボイドの発生を防ぐことができる。表面自由エネルギーを36.0mJ/m以下とすることにより、含浸性を良好にしボイドの発生を防ぐことができる。表面自由エネルギーを適切な範囲とすることで、マトリックス樹脂組成物の強化繊維に対する濡れを適度にすることができ、繊維強化複合材料中のボイドを防ぐことができる。
成分(A)として、液状の2官能以上のエポキシ樹脂を使用することが望ましい。「2官能エポキシ樹脂」とは、分子内に2個のエポキシ基を有する化合物を意味する。液状の2官能以上のエポキシ樹脂を使用することで、マトリックス樹脂組成物の粘度を適した範囲に調整することが出来、かつ硬化物の機械的特性を適正な範囲に調整することができる。
具体的には、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、レゾルシン型、ヒドロキノン型、ビスフェノキシエタノールフルオレン型、ビスフェノールフルオレン型、ビスクレゾールフルオレン型、及びノボラック型などのジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テレフタル酸型などのジグリシジルエステル型エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また2種以上のエポキシ樹脂を併用しても良い。
また成分(A)は、脂環構造を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。脂環構造を有するエポキシ樹脂を含むことにより、表面自由エネルギーを適正な範囲にすることができ、繊維強度発現率を高めることができる。
脂環構造を有するエポキシ樹脂としては、脂肪族環にグリシジル基等のエポキシ基を含む置換基が結合した化合物が挙げられる。このような化合物としては、例えばヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールF型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
脂環構造を有するエポキシ樹脂の含有量は成分(A)100質量部のうち5〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは10〜75質量部、さらに好ましくは25〜50質量部である。5質量部以上とすることで脂環構造を有するエポキシ樹脂を添加する効果を十分に得ることができる。脂環構造を有するエポキシ樹脂は比較的反応性に劣るため、75質量部以下とすることが好ましく、芳香族環を有するエポキシ樹脂を併用することが望ましい。
成分(A)として、他に耐熱性向上や粘度調整を目的として、各種のエポキシ樹脂を用いることができる。例えば、3官能以上のエポキシ樹脂や、脂肪族骨格をもつエポキシ樹脂が挙げられる。3官能のエポキシ樹脂としてはトリアジン骨格含有エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、アミノクレゾール型エポキシ樹脂等が挙げられる。4官能以上のエポキシ樹脂としてはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。脂肪族骨格をもつエポキシ樹脂としては、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
[成分(B):エポキシ樹脂硬化剤]
本発明のマトリックス樹脂組成物に用いる(B)エポキシ樹脂硬化剤としては、例えばアミン、酸無水物(カルボン酸無水物)、フェノール(ノボラック樹脂等)、メルカプタン、ルイス酸アミン錯体、オニウム塩、イミダゾールなどが挙げられるが、エポキシ樹脂を硬化させうるものであればどのような構造のものでもよい。これらの中でも、圧力容器用途には樹脂硬化物の靱性の点から、アミン、酸無水物またはルイス酸アミン錯体が好ましい。
アミンとしては、例えばジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミン、脂肪族アミン、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、及びこれらの異性体や変性体などが挙げられる。特にマトリックス樹脂組成物のポットライフに優れる点でジシアンジアミドが特に好ましい。ジシアンジアミドやジアミノジフェニルスルホン等の微粒子状の硬化剤を用いる場合、微粒子状の硬化剤の粒径が1〜20μmであることが好ましく、3〜15μmであることがさらに好ましい。1μm以上とすることでマトリックス樹脂組成物の粘度を適切な範囲とすることができ、20μm以下とすることでトウプリプレグにマトリックス樹脂組成物を含浸させる際に強化繊維束の表面に微粒子状の硬化剤が濾別されることを防ぐことができる。
酸無水物としては、例えば無水フタル酸、無水マレイン酸、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ピロメリット酸無水物等が挙げられる。
ルイス酸アミン錯体としては、例えば三フッ化ホウ素・ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素・モノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素・トリエタノールアミン錯体等のフッ化ホウ素アミン錯体、三塩化ホウ素・オクチルアミン錯体等の塩化ホウ素アミン錯体、塩化亜鉛アミン錯体、塩化アルミニウムアミン錯体が挙げられる。特に、マトリックス樹脂組成物のポットライフに優れ、硬化性に優れる点で、フッ化ホウ素アミン錯体、塩化ホウ素アミン錯体等のハロゲン化ホウ素アミン錯体が好ましい。
マトリックス樹脂組成物中の成分(B)エポキシ樹脂硬化剤の含有量は、アミン、酸無水物等のエポキシ樹脂硬化剤の活性水素当量(酸無水物の場合は中和当量とする)が求められる場合は、成分(A)エポキシ樹脂のエポキシ1当量に対する成分(B)エポキシ樹脂硬化剤の活性水素当量の比が0.3〜1.0となる量が好ましく、0.4〜0.8がより好ましい。活性水素当量の比が0.3以上であれば、エポキシ樹脂を十分に硬化することができる。一方、活性水素当量の比が1.0以下であれば、マトリックス樹脂組成物の硬化物の靱性を高くできる。ただし、成分(B)エポキシ樹脂硬化剤としてジシアンジアミドを用いる場合は、マトリックス樹脂組成物100質量部に対し、成分(B)エポキシ樹脂硬化剤を0.5〜10質量部とすることが好ましく、1〜8質量部がより好ましく、2〜7質量部が特に好ましい。成分(B)エポキシ樹脂硬化剤の含有量を0.5質量部以上とすることにより、エポキシ樹脂を十分に硬化することができ、10質量部以下とすることにより、マトリックス樹脂組成物の硬化物の靱性を高くできる。
[成分(C):硬化促進剤]
ジシアンジアミドは単独では硬化温度が高いため、ジシアンジアミドの硬化活性を高めるために、硬化促進剤を用いてもよい。ジシアンジアミドの硬化促進剤としては3−フェニルー1,1−ジメチル尿素(PDMU)、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)、3−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−1,1−ジメチル尿素、2,4−ビス(3,3−ジメチルウレイド)トルエン(TBDMU)等の尿素誘導体や、イミダゾール誘導体等が挙げられる。
硬化剤として酸無水物を用いる場合も、硬化促進剤を用いても良い。酸無水物の硬化促進剤としてはイミダゾール誘導体、アミンアダクト型潜在性硬化促進剤類、強塩基化合物の有機酸塩類、オニウム塩類、尿素アダクト型潜在性硬化促進剤類及びヒドラジド系潜在性硬化促進剤が挙げられる。
成分(C)の含有量は、硬化時の発熱量および硬化物の特性を適正な範囲とするため、成分(A)100質量部に対し、1〜10質量部の範囲とすることが好ましく、2〜5質量部の範囲とすることがさらに好ましい。
[任意成分]
本発明のマトリックス樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、シリカ粉末、アエロジル、マイクロバルーン、三酸化アンチモン、アルミナ、酸化チタン等の無機粒子、リン化合物等の難燃剤、カーボンブラック、活性炭等の炭素粒子、また、消泡剤、湿潤剤等の添加剤を目的に応じて、本発明の効果を損なわない程度配合してもよい。
<マトリックス樹脂組成物の粘度>
マトリックス樹脂組成物の30℃における粘度が1Pa・s〜300Pa・sであることが好ましく、さらには3Pa・s〜100Pa・sであることがより好ましい。
マトリックス樹脂組成物の30℃における粘度を300Pa・s以下とすることで、トウプリプレグのタックが強くなりすぎず、トウプレグをスプールに巻かれた状態から高速解舒することができる。またマトリックス樹脂組成物の30℃における粘度を1Pa・s以上とすることで、これを含むトウプリプレグは適度なタックを有し、ライナーやマンドレルに対する適度な粘着性を有することができるため、ライナーやマンドレルへの巻きつけ時に滑る等の問題を回避することができる。
<マトリックス樹脂組成物の調製方法>
本発明のマトリックス樹脂組成物は、様々な公知の方法で製造することができる。例えば、各成分をプラネタリミキサーやニーダーにて混練する方法がある。
本発明の成分(B)エポキシ樹脂硬化剤の一部であるジシアンジアミドや成分(C)硬化促進剤の一部は粒子状のまま成分(A)エポキシ樹脂に分散されるが、前記粒子状成分が凝集しており分散不良となる可能性があるため、成分(A)の一部を使用して一部の成分(B)や一部の粒子状の成分(C)を予備混練してマスターバッチ化することが好ましい。予備混練は三本ロールミルやボールミル等の混練装置を使用することが好ましい。一部の成分(B)や一部の粒子状の成分(C)を予めマスターバッチ化することで、分散不良による硬化物の物性ムラや硬化不良、及び強化繊維束へのマトリックス樹脂組成物の含浸不良を防ぐことができる。
<トウプリプレグの製造方法>
本発明のトウプリプレグは公知の製造方法で作製することができるが、中でも以下の工程(1)〜(4)を経て製造することが好ましい。
工程(1):スプールから引き出した強化繊維束に張力をかけ、(必要に応じて加熱し)拡幅する。
工程(2):拡幅された強化繊維束の少なくとも片面に、(必要に応じて加熱した)マトリックス樹脂組成物を定量(強化繊維束単位量当たり、マトリックス樹脂組成物が所定の量となるように)供給する。
工程(3):供給したマトリックス樹脂組成物を強化繊維束へ含浸させ、樹脂含浸強化繊維束とする。
工程(4):樹脂含浸強化繊維束を(必要に応じて室温程度まで冷却して)紙管等のボビンに巻き取る。
マトリックス樹脂組成物を含浸させる強化繊維束は、マトリックス樹脂組成物との接触面積が広くなるため、拡幅され扁平形状であることが好ましい。
強化繊維束を拡幅する方法としては、円筒バーに擦過させる方法、振動を加える方法、押しつぶす方法などが挙げられる。
さらに強化繊維束を拡幅する際は加熱しておくことが好ましく、強化繊維に付着しているサイズ剤の種類によるが、通常、50〜150℃程度に強化繊維束を加熱することが好ましい。また拡幅時に強化繊維束を加熱しておくことにより、続く工程(3)において該強化繊維束に含浸させるマトリックス樹脂組成物の温度が低下しないという効果もある。加熱方法に特に制限はなく、加熱体との接触加熱、及び赤外線加熱、雰囲気加熱等の非接触加熱法がいずれも使用可能である。
前記工程(1)における強化繊維束の拡幅は、インラインで実施してもオフラインで実施してもよい。例えば市販の拡幅されたテープ状強化繊維束は、オフラインで拡幅された強化繊維束とみなされる。
強化繊維束へのマトリックス樹脂組成物の供給方法としては、トウをレジンバス内に通過させてマトリックス樹脂組成物を含浸させた後、オリフィス、ロール等によって余剰のマトリックス樹脂組成物を搾り取り樹脂含有量を調整する「レジンバス法」;回転ロール上にマトリックス樹脂組成物層を形成し、これをトウに転写するような転写ロール式の含浸法(例えばドクターブレードを持つ回転ドラムによる含浸法)である「回転ロール法」;紙上にマトリックス樹脂層を形成し、トウに転写する「紙上転写法」;特開平09−176346号公報、特開2005−335296号公報、特開2006−063173号公報等に記載された「ノズル滴下法」;特開平08−073630号公報、特開平09−031219号公報等に記載された「樹脂接触並びにトウ移動法」などが挙げられる。
これらの中でも、マトリックス樹脂組成物の供給量の制御や実施の容易さの点で、回転ロール法や、樹脂接触並びにトウ移動法が好ましい。また、強化繊維束の幅は通常安定しておらず、その拡幅巾にはばらつきがある。従って特開平8−73630号公報に記載の通り、強化繊維束を拡幅した後、マトリックス樹脂組成物の接触直前あるいは接触時にトウ幅を狭めて安定化することが効果的である。具体例としては、樹脂吐出口、塗工部、又はその直前の位置に所定幅の溝を設けて、強化繊維束を、該溝内を走行させて強化繊維束の幅を狭める方法がある。
強化繊維束へのマトリックス樹脂組成物の含浸は、公知の方法にて行うことができる。中でも加熱ロールや熱板等の加熱体に擦過させる方法;マトリックス樹脂組成物が供給された強化繊維束を、加熱炉内すなわち加熱雰囲気内を空走させる方法;赤外線加熱等の非接触加熱手段で加熱する方法が好ましい。強化繊維束へマトリックス樹脂組成物が供給されてから、加熱体により加熱されるまでの間、及び加熱体と加熱体との間で強化繊維束やマトリックス樹脂組成物の温度が下がらないように、非接触加熱手段で加熱しておくことがより一層好ましい。
また、強化繊維束へマトリックス樹脂組成物を含浸させる工程において、強化繊維束へ外力を加えて強化繊維束を構成するフィラメントをロール表面で横移動させること等により、強化繊維束の断面形状を変化させることが好ましい。このような操作により、フィラメント同士の相対位置を変化させて、マトリックス樹脂組成物とフィラメントの接触機会を増やすことができる。結果、単なる加圧や毛細管現象による含浸効果を上回る、均一な含浸効果を上げることができる。
フィラメント同士の相対位置を変化させる操作として、具体的には、強化繊維束を折り畳む、強化繊維束を拡幅する、強化繊維束を縮幅する、又は強化繊維束を加撚する等が挙げられる。これらの操作において、折り畳み操作と加撚操作は、縮幅操作と同様に強化繊維束の幅を狭める傾向にある。そして強化繊維束の幅を狭める作用を有する操作と、強化繊維束の幅を拡大する操作とを併用すると、均一含浸の効果がより高くなる。なお、加撚はマトリックス樹脂組成物の含浸時に行なえばよく、含浸後に撚りのない状態が必要である場合には、含浸後に撚り戻しをすればよい。また、加撚と同時にあるいは直後に擦過を加えれば、強化繊維束の幅は広がる傾向となり、更に強化繊維束の厚さ方向にマトリックス樹脂組成物が移動するため、含浸の均一性は高くなる。
フィラメントをロール表面で横移動させる際、強化繊維束の走行速度未満の周速で回転するロールに強化繊維束を接触させて擦過させることは、毛羽の堆積防止やロールのクリーニングの面から有用である。擦過されていれば強化繊維束はロール表面で絡まりつくこともなく、またロールは強化繊維束で擦られ、かつ回転しているので強化繊維束と接触する面は常にクリーニングされている状態となる。ただしロールの周速は強化繊維束の走行速度の50%以上99%以下とすることが好ましく、80%以上95%以下とすることがより好ましい。ロールの周速が強化繊維束の走行速度に対し50%未満であると強く擦過されることで強化繊維束が毛羽立つ場合があり、後の工程で巻きつきが生じたり、ボビンに巻き取られたトウプリプレグを解舒する際に問題が生じたりする場合がある。
マトリックス樹脂組成物が強化繊維束に均一に含浸されると、作製した繊維強化複合材料の機械的特性が向上し、本発明の効果が十分に得られる。
マトリックス樹脂組成物を均一に含浸させた強化繊維束は、紙管への巻取り工程までに室温程度まで冷却しておくことが好ましい。十分に冷却しない状態で、紙管などのボビンに巻き取ってしまうと、マトリックス樹脂組成物が低粘度であるため巻き取る際に滑りが生じ巻き形態が乱れてしまったり、トウプリプレグのスプールの中で温度が高い状態が比較的長時間続いてしまったりするため、トウプリプレグのシェルフライフが短くなることもある。強化繊維束の冷却は、冷却体への擦過や非接触冷却手段等、公知の冷却手段を使用して行うことができる。
<複合材料補強圧力容器の製造方法>
本発明の複合材料補強圧力容器は、前述した本発明のトウプリプレグの硬化物が、補強層としてプラスチックライナーに巻き付いた複合材料補強圧力容器である。
本発明の複合材料補強圧力容器の製造方法は、上記の様に作製したトウプリプレグをライナーに巻き付けるフィラメントワインディング工程(FW工程)と、該FW工程を経て得られた圧力容器中間体を加熱し、トウプリプレグが含むマトリックス樹脂組成物を硬化させる硬化工程とを含む。
[FW工程]
FW工程は、作製したトウプリプレグを回転するライナーに巻き付ける工程である。なおトウプリプレグをライナーに巻き付けて得られたものを「圧力容器中間体」と称すことがある。
フィラメントワインディング機(FW機)としては、従来公知のものを使用できる。複合材料補強圧力容器を作製する場合には、ライナーをマンドレルとしてトウプリプレグを巻き付ける。FW機は、1本のトウプリプレグをマンドレルに巻き付けるものであってもよいし、複数本のトウプリプレグを同時にマンドレルに巻き付けられるものであってもよい。
ライナーにトウプリプレグを巻き付ける際には、強化繊維の異方性材料としての特質を生かすため、異なる特性を有する繊維強化複合材料が積層された構造となるように巻き付けることが好ましい。トウプリプレグからなる層が硬化したものを繊維強化複合材料層という。
本発明においては、繊維強化複合材料層の構成や厚み、トウプリプレグをライナーへ巻き付ける角度は、容器の用途や形状、容器に要求される耐圧性能等に応じて自由に選択することができる。
[硬化工程]
硬化工程は、圧力容器中間体を加熱し、トウプリプレグに含まれるマトリックス樹脂組成物を硬化させる工程である。硬化温度、硬化時間、そして昇温・降温速度は、マトリックス樹脂組成物の配合組成に応じて決定されるが、本発明のトウプリプレグは80〜120℃の低い温度で、1〜10時間の範囲の任意時間で加熱することが好ましい。加熱条件は1段階でも良く、複数の加熱条件を組み合わせた多段階条件でも良い。加熱する方法は、真空バッグとヒーターを用いる方法、熱収縮テープを巻き付けてオーブン中で加熱して、加熱と加圧を同時に行う方法、ライナー内部に加圧物質を充填し内圧をかけながら加熱する方法などが用いられ、これらを硬化条件に応じて組み合わせることもできる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
各例で用いた樹脂組成物の原料、調製方法、および各物性の測定方法を以下に示す。各マトリックス樹脂組成物の組成、および物性の測定結果を表1にまとめて示す。なお、表1中の各成分の数値は、マトリックス樹脂組成物に配合する各成分の質量部数を表す。
<原料>
<成分(A)>
jER828
「製品名」jER828
「成分」ビスフェノールA型エポキシ樹脂
(エポキシ当量:189g/eq)
「供給元」三菱化学株式会社
ST−3000
「製品名」ST−3000
「成分」水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂
(エポキシ当量:230g/eq)
「供給元」新日鉄住金化学株式会社
YX−8034
「製品名」YX−8034
「成分」水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂
(エポキシ当量:230g/eq)
「供給元」DIC株式会社
CY184
「製品名」Araldite CY184
「成分」ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル
(エポキシ当量:158g/eq)
「供給元」ハンツマン・ジャパン株式会社
jER1032H60
「製品名」jER1032H60
「成分」特殊多官能エポキシ樹脂
(エポキシ当量:169g/eq)
「供給元」三菱化学株式会社
EPU−73B
「製品名」アデカレジンEPU−73B
「成分」ウレタン変性エポキシ樹脂
(エポキシ当量:245g/eq)
「供給元」株式会社ADEKA
<成分(B)>
DICY7
「製品名」jERキュア DICY7
「成分」ジシアンジアミド
「供給元」三菱化学株式会社
<成分(C)>
オミキュア94
「製品名」オミキュア94
「成分」3−フェニル−1,1−ジメチル尿素
「供給元」ピイ・ティ・アイ・ジャパン株式会社
(表面自由エネルギーの測定)
成分(A)の125℃における表面自由エネルギー測定は、自動表面張力計(CBVP A‐3型、協和界面科学株式会社製)にH型恒温槽を取り付けて、白金プレートを用いて、ウイルヘルミー法によって表面エネルギーを3回測定し、その平均値を算出した。
〔実施例および比較例〕
<実施例1>
(マトリックス樹脂組成物の調製)
表1に記載の各成分を記載の割合で含有するマトリックス樹脂組成物を調製した。まずjER828とジシアンジアミドとを質量比で1:1の割合で混合し、当該混合物を三本ロールミルを使用してさらに混練して、マスターバッチとした。続いてjER828とオミキュア94とを質量比で1:1の割合で混合し、同様に当該混合物を三本ロールミルを使用してさらに混練して、マスターバッチとした。
ガラスフラスコに、jER828を68質量部、ST−3000を25質量部秤量し、オイルバスを使用してガラスフラスコの内容物を40℃〜60℃に加温しながら均一になるまで撹拌し、さらにjER828とジシアンジアミドのマスターバッチ10質量部(jER828を5質量部、及びジシアンジアミドを5質量部含む)、jER828とオミキュア94のマスターバッチ4質量部(jER828を2質量部、及びオミキュア94を2質量部含む)を秤量してから添加して40℃〜60℃に加温しながら均一になるまで撹拌し、マトリックス樹脂組成物を得た。
(マトリックス樹脂組成物の粘度測定)
得られたマトリックス樹脂組成物につき、以下の通り粘度測定を行った。結果を表1に示す。
装置:AR−G2(ティー・エー・インスツルメント社製)
使用プレート:直径35mmのパラレルプレート
測定温度:30℃
プレートギャップ:0.5mm
測定周波数:10rad/sec
ストレス:300Pa
(トウプリプレグの作製)
強化繊維束として、フィラメント数30,000本の炭素繊維束「TRH50 30M」(三菱レイヨン株式会社製、引張強度5600MPa、引張弾性率260GPa)を用いてトウプリプレグを作製した。
具体的な作製方法を以下に示す。クリールから強化繊維束を送り出し、表面温度が100℃程度に加温された開繊バーを通し、幅10〜15mmに拡幅させた。拡幅された強化繊維束を、樹脂粘度が塗工可能な粘度になるように加温してあるマトリックス樹脂組成物が塗工されたタッチロールに接触させ、強化繊維束にマトリックス樹脂組成物を供給した。マトリックス樹脂組成物が供給された強化繊維束を、80℃程度に加温された含浸ロールを通過させることにより、マトリックス樹脂組成物を強化繊維束内部まで含浸させた後、自然冷却させてからワインダーにて紙管に巻き取りトウプリプレグを得た。なお、ドクターブレードとタッチロール間のクリアランスを調整することによって、強化繊維束に対する樹脂の付着量(即ちトウプリプレグの樹脂含有率)を調整した。
(複合材料補強圧力容器の製造)
FW装置を用いて、先に得られたトウプリプレグを、容量9リットルのアルミニウム製ライナー(全長540mm、胴部長さ415mm、胴部外径163mm、胴部の中央での肉厚3mm)に巻き付けた。使用したアルミニウム製のライナーは、JIS H 4040のA6061−T6に規定されるアルミニウム素材に熱処理を施した材料からなるものである。
トウプリプレグは、紙管から巻き出し、ガイドロールを介して位置を調整した後に、以下のようにしてライナーへ巻き付けた。
まず、ライナーの胴部に接する第一層目として、胴部上にライナーの回転軸方向に対し88.6°をなすよう、トウプリプレグを巻き付けた。その後、ライナーの回転軸方向に対し11.0°の角度でトウプリプレグを巻き付け、ライナーの鏡部を補強するヘリカル層を積層し、以降、表2に示す「ラミネートNo.3〜8」に記載の角度でトウプリプレグを順次ライナーに巻き付けて、圧力容器中間体を作製した。
得られた圧力容器中間体をFW装置から外し、加熱炉内に吊り下げて、炉内温度を1℃/分で130℃まで昇温した後、130℃で4時間保持して硬化させた。その後、炉内温度を1℃/分で60℃まで冷却し、複合材料補強圧力容器を得た。
(複合材料補強圧力容器のバースト圧力測定試験)
水圧破壊試験機に複合材料補強圧力容器をセットし、該圧力容器内に水を満たした後、昇圧速度15MPa/分で複合材料補強圧力容器に水圧を負荷し、複合材料補強圧力容器が破裂したときの水圧を記録して複合材料補強圧力容器のバースト圧力とした。結果を表1に示す。
<実施例2〜6、比較例1、3>
マトリックス樹脂組成物の組成を表1に記載の通りとした以外は、実施例1と同様にしてマトリックス樹脂組成物を調製した。
マトリックス樹脂組成物の粘度測定、トウプリプレグの作製、複合材料補強圧力容器の製造、及び複合材料補強圧力容器のバースト圧力測定試験はいずれも実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
<比較例2>
マトリックス樹脂組成物の組成を表1に記載の通りとし、マスターバッチを秤量する前にマスターバッチ以外を秤量し、jER1032H60が均一に溶解するまで110℃で撹拌して、60℃程度に放冷した後マスターバッチを秤量した以外は実施例1と同様にしてマトリックス樹脂組成物を調製した。
マトリックス樹脂組成物の粘度測定、トウプリプレグの作製、複合材料補強圧力容器の製造、及び複合材料補強圧力容器バースト圧力測定試験はいずれも実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
実施例1〜6にて得られたトウプリプレグはいずれも高いバースト圧力、すなわち高い繊維強度発現率を示した。

Claims (12)

  1. 以下の成分(A)、成分(B)を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸したトウプリプレグであって、前記成分(A)の125℃における表面自由エネルギーが32.0〜36.0mJ/mであるトウプリプレグ。
    成分(A):エポキシ樹脂
    成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
  2. 前記成分(A)100質量部中の、脂環構造を有するエポキシ樹脂の含有量が5〜100質量部である請求項1に記載のトウプリプレグ。
  3. 前記マトリックス樹脂組成物の30℃における粘度が1〜300Pa・sである請求項1または2に記載のトウプリプレグ。
  4. 前記成分(B)はジシアンジアミドを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
  5. 前記マトリックス樹脂組成物が、さらに成分(C)を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
    成分(C):硬化促進剤
  6. 前記マトリックス樹脂組成物が、前記成分(A)〜(C)を含み、
    前記成分(B)の含有量が、前記成分(A)100質量部に対して、0.5〜10質量部であり、前記成分(C)の含有量が、前記成分(A)100質量部に対して、1〜10質量部である、請求項5に記載のトウプリプレグ。
  7. 前記強化繊維束が炭素繊維束である請求項1〜6のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
  8. 前記トウプリプレグ中の前記マトリックス樹脂組成物の含有率が20〜35質量%である請求項1〜7のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載のトウプリプレグを硬化した繊維強化複合材料。
  10. 請求項1〜8のいずれか一項に記載のトウプリプレグの硬化物の層を有する複合材料補強圧力容器。
  11. 以下の成分(A)、成分(B)を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸させて樹脂含浸強化繊維束を得る含浸工程と、得られた樹脂含浸強化繊維束をマンドレルに巻き付けて巻回体を得るフィラメントワインディング工程と、得られた巻回体を加熱し、樹脂含浸強化繊維束に含まれる前記マトリックス樹脂組成物を硬化させる硬化工程とを含む、巻回体の製造方法であって、成分(A)の125℃における表面自由エネルギーが32.0〜36.0mJ/mである巻回体の製造方法。
    成分(A):エポキシ樹脂
    成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
  12. 以下の成分(A)、成分(B)を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸させて樹脂含浸強化繊維束を得る含浸工程と、得られた樹脂含浸強化繊維束をライナーに巻き付けて圧力容器中間体を得るフィラメントワインディング工程と、得られた圧力容器中間体を加熱し、樹脂含浸強化繊維束に含まれる前記マトリックス樹脂組成物を硬化させる硬化工程とを含む、複合材料補強圧力容器の製造方法であって、成分(A)の125℃における表面自由エネルギーが32.0〜36.0mJ/mである複合材料補強圧力容器の製造方法。
    成分(A):エポキシ樹脂
    成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
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