JP2016188271A - プリプレグの製造方法 - Google Patents

プリプレグの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2016188271A
JP2016188271A JP2015067861A JP2015067861A JP2016188271A JP 2016188271 A JP2016188271 A JP 2016188271A JP 2015067861 A JP2015067861 A JP 2015067861A JP 2015067861 A JP2015067861 A JP 2015067861A JP 2016188271 A JP2016188271 A JP 2016188271A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
epoxy resin
fiber
reinforcing fiber
resin composition
fiber bundle
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2015067861A
Other languages
English (en)
Inventor
行弘 原田
Yukihiro Harada
行弘 原田
岡本 敏
Satoshi Okamoto
敏 岡本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Rayon Co Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Rayon Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Rayon Co Ltd filed Critical Mitsubishi Rayon Co Ltd
Priority to JP2015067861A priority Critical patent/JP2016188271A/ja
Publication of JP2016188271A publication Critical patent/JP2016188271A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Reinforced Plastic Materials (AREA)

Abstract

【課題】 本発明では、十分にマトリックス樹脂が含浸し、成形物の強度低下が抑えられ力学特性に優れる繊維強化複合材料を生産性よく得られるトウプリプレグを得ることを課題とする。【解決手段】 単繊維繊度1.0dtex以上2.4dtex以下、単繊維の繊維軸に垂直な断面形状が真円度0.7以上0.9以下である炭素繊維束にエポキシ樹脂組成物を含浸するトウプリプレグの製造方法である。ここで、真円度は、下記式(1)で求められる値であり、SとLはそれぞれ、光学顕微鏡で補強繊維の単繊維の繊維軸に垂直な断面の形状を観察し画像解析から得られる単繊維の断面積と周長である。真円度=(4πS)/L2・・・・(1)【選択図】 なし

Description

本発明は、トウプリプレグの製造方法に関する。
トウプリプレグは、まず、マトリックス樹脂を均一な厚みで塗工したロールに強化繊維トウを擦過するか、またはマトリックス樹脂をポンプにより強化繊維トウ上に定量供給するかして、マトリックス樹脂が付与された強化繊維トウを得、次にこの強化繊維等を加熱ロールに擦過することでマトリックス樹脂を強化繊維トウの内部まで含浸して製造される。
強化繊維トウの片側の表面(単に、「供給面」という。)にマトリックス樹脂を供給し、供給面の反対の面にまでマトリックス樹脂を均一に行き渡らせ、マトリックス樹脂の含浸が十分に進んだトウプリプレグを得ることは、用いる強化繊維トウが多くの単繊維からなればなるほど困難であった。
強化繊維トウへのマトリックス樹脂の含浸が不十分であると、トウプリプレグを使用して作製した成形物には、ボイド等の欠陥が多く発生し、成形物の強度低下の原因となる。
単繊維数の多い強化繊維トウに十分にマトリックス含浸する方法としては、含浸のための加熱ロールの本数を増やしたり、トウプリプレグの製造速度を落とし加熱ロールとの接触時間を増やしたり、強化繊維トウの両面からマトリックス樹脂を供給したりする方法(特許文献1)が知られている。
しかし、これらの方法はトウプリプレグ製造設備の初期投資を押し上げたり、製造コストを押し上げたりする問題があった。
特開2005−335296号公報
本発明の目的は、上記の従来の問題点を解決し、生産性良くトウプリプレグを製造することのできるトウプリプレグの製造方法を提供することにある。
本発明の要旨は、単繊維繊度1.0dtex以上2.4dtex以下、単繊維の繊維軸に垂直な断面形状が真円度0.7以上0.9以下である炭素繊維束にエポキシ樹脂組成物を含浸するトウプリプレグの製造方法にある。
ここで、真円度は、下記式(1)で求められる値であり、SとLはそれぞれ、光学顕微鏡で補強繊維の単繊維の繊維軸に垂直な断面の形状を観察し画像解析から得られる単繊維の断面積と周長である。
真円度=(4πS)/L・・・・(1)
本発明によれば、十分にマトリックス樹脂が含浸し、成形物の強度低下が抑えられ力学特性に優れる繊維強化複合材料を生産性よく得られるトウプリプレグを得ることができる。
また複合材料補強圧力容器や複合材料からなる緊張材の性能向上のためには強化繊維の繊維方向への引張強度が求められる。強化繊維の繊維方向への引張強度向上の手段としては、強化繊維自身の強度を向上させる手段の他に強化繊維の真直性を向上させる手段が考えられる。すなわち成形時、例えばマトリックス樹脂が熱硬化性樹脂組成物であると、マトリックス樹脂が硬化するまでの間、加熱され低粘度となったマトリックス樹脂は成形時に加わる外部からの圧力や重力により移動する(以下、樹脂フローと称する)。この成形時のマトリックス樹脂の移動により強化繊維の真直性が損なわれ、成形物の強度低下の原因となる。
(炭素繊維)
本発明における炭素繊維プリプレグの炭素繊維は特には限定されないが、PAN系炭素繊維、PITCH系炭素繊維が挙げられる。望ましくはPAN系炭素繊維である。炭素繊維は、同じプリプレグについて1種類のものを使用しても良いし、複数種類のものを使用してもかまわない。
本発明における炭素繊維基材を構成する炭素繊維は、平均単繊維繊度が1.0dtex以上である。平均単繊維繊度が1.0dtex未満の場合は含浸状態が悪くなるので本発明には用いられない。平均単繊維繊度が1.0dtex以上である場合には含浸状態が更に良好となるので好ましい。
また、平均単繊維繊度が1.0dtex未満の場合は、大型成形物や複合材料補強圧力容器を成形する際に生じる樹脂フローの影響で炭素繊維の真直性が失われ、強度低下が起こり得るために本発明には用いられない。平均単繊維繊度1.0dtex以上である場合には、大型成形物や複合材料補強圧力容器を成形する際の樹脂フローが多くても繊維の真直性が保たれるため、強度低下が起こりにくいので好ましい。
また、本発明における炭素繊維基材を構成する炭素繊維は、平均単繊維繊度が2.4dtex以下である。平均単繊維繊度が2.4dtexを超えるものは、繊維の強度や弾性率の低下に至る傾向がある。従って本発明には平均単繊維繊度が2.4dtex以下のものを用いる。
また、炭素繊維トウは、単繊維の繊維軸に垂直な断面の真円度が0.7以上、0.9以下であることが望ましい。真円度が0.7以上0.9以下であれば、炭素繊維の含有率を高くすることが可能となり、繊維強化複合材料の力学特性を維持できる。ここで、真円度は下記式(I)にて求められる値であって、Sは、単繊維の繊維軸に垂直な断面をSEM観察し、画像解析することにより得られる単繊維の断面積であり、Lは、同様に単繊維の断面の周長の長さである。
真円度 = 4πS/L (I)
前記炭素繊維トウの単繊維は、その表面に長手方向に延びる溝状のでこぼこを複数有し、該単繊維の円周長さが2μmの範囲での最高部と最低部の高低差が10〜80nmであることが望ましい。前記高低差が10nmより小さいとマトリックス樹脂の含浸性を悪化させる可能性があり、本発明の効果を低減させてしまう。また、前記高低差が80nmより大きいと炭素繊維トウの収束性を低下させる傾向があり、繊維強化複合材料の力学特性を低下させる可能性がある。
本発明のプリプレグに用いられる炭素繊維は、その単繊維の繊維軸に垂直な断面の直径Diが8μm以上であることが好ましい。プリプレグ製造において、マトリックス樹脂の含浸および成形時のフローは、樹脂が単繊維間の空隙を通過することでなし得るため、単繊維同士が形成する空隙の大きさが含浸性および樹脂フローに影響を与える一つの要因となる。直径Diが8μm未満の場合には、単繊維間の空隙が小さくなることで含浸性が低下し、含浸状態の悪いプリプレグとなってしまう。直径Diが9μm以上の場合には含浸性が更に良好となるので更に好ましく、10μm以上の場合は特に好ましい。
また単繊維の直径Diは20μm以下が好ましい。前述の様に、単繊維の直径が大きくなると繊維束の強度低下の問題があるが、仮にこの問題が解決したとしても、炭素繊維は内部や表面に含まれる欠陥により引張強度が低下し、単繊維が太くなるにつれて欠陥の入る確率が高くなることに起因して繊維束の引張強度が低下する。20μmを超える場合は炭素繊維の引張強度が低くなってしまうので好ましくない。なお、単繊維の直径Diは単繊維の繊維軸に垂直な断面をSEM観察して画像解析することにより得られる繊維断面の長径(最大フェレ径)である。
(熱硬化性樹脂組成物)
本発明のトウプリプレグに含まれる熱硬化性樹脂組成物は、加熱により架橋構造を形成するものであればいずれを用いても良く、熱硬化性樹脂、硬化剤、その他の付加成分からなる。また本発明のトウプリプレグに含まれる熱硬化性樹脂組成物は、1種類の熱硬化性樹脂組成物のみを使用しても2種類以上の熱硬化性樹脂組成物を使用しても良い。熱硬化性樹脂組成物の中でも、エポキシ樹脂組成物は炭素繊維と合わせて使用することで強度、耐熱性等の物性が優れた成形品を得ることができるため好ましい。
<エポキシ樹脂>
通常、エポキシ樹脂という用語は熱硬化性樹脂の一つのカテゴリーの名称、および分子内に複数の1,2−エポキシ基を有する化合物という化学物質のカテゴリーの名称として用いられるが、本発明においては後者の意味で用いられる。また、エポキシ樹脂組成物という用語はエポキシ樹脂と硬化剤、場合により他の成分を含む組成物を意味する。
前記エポキシ樹脂は、分子内に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば特に制限は無いが、硬化物への耐熱性付与の観点から、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂、及び分子内に脂肪族環を有するエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1つのエポキシ樹脂であることが好ましい。
エポキシ樹脂としては、分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂を使用することが好ましい。分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂を使用することにより、本発明のエポキシ樹脂組成物の粘度を取り扱いに適した範囲に調整することが出来る。また、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の機械的特性を適正な範囲に調整することができる。
なお、ここでいう「2官能のエポキシ樹脂」とは、分子内に2個のエポキシ基を有する化合物を意味する。分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂における芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環等が挙げられる。
分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、レゾルシンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ヒドロキノンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テレフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、さらに2種以上のエポキシ樹脂を併用しても良い。
中でも、分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂組成物の粘度を低くすることが出来るため取り扱いや強化繊維束への含浸が容易であり、かつ硬化物の耐熱性も優れる点から、特にエポキシ当量が170g/eq以上、200g/eq以下である液状のビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂としては、分子内に芳香族環を有する3官能や4官能のエポキシ樹脂を使用してもよい。エポキシ樹脂として、分子内に芳香族環を有する3官能や4官能のエポキシ樹脂を使用することにより、本発明のエポキシ樹脂組成物の取り扱い、及び、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の耐熱性を適正な範囲に調整することができる。
なお、ここでいう「3官能、4官能のエポキシ樹脂」とは、分子内に3個または4個のエポキシ基を有する化合物を意味する。
分子内に芳香族環を有する3官能や4官能のエポキシ樹脂における芳香族環としては、例えば「2官能のエポキシ樹脂」が有しうる芳香族環と同様の環が挙げられる。
分子内に芳香族環を有する3官能エポキシ樹脂としては、具体的には、ノボラック型エポキシ樹脂、N,N ,O−トリグリシジル−P−又は−m−アミノフェノール型エポキシ樹脂、N,N,O−トリグリシジル−4−アミノ−m−又は−5−アミノ−o−クレゾール型エポキシ樹脂、1,1,1−(トリグリシジルオキシフェニル)メタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
分子内に芳香族環を有する4官能エポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルアミン型エポキシ樹脂が挙げられる。具体的には、ジアミノジフェニルメタン型、ジアミノジフェニルスルホン型、メタキシレンジアミン型、等のエポキシ樹脂が挙げられる。中でもエポキシ樹脂組成物の粘度を比較的低くすることが出来るため、強化繊維束への含浸や取り扱いが容易となり、かつ硬化物の耐熱性も優れることから、エポキシ当量が110g/eq以上、130g/eq以下であるN,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)型エポキシ樹脂が特に好ましく用いられる。」
分子内に芳香族環を有する3官能エポキシ樹脂及び4官能エポキシ樹脂は、これらに限定されるものではない。また、2種以上の分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂を併用しても良い。 なお、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂として、2官能エポキシ樹脂と3官能や4官能エポキシ樹脂とを併用する場合、これらの割合は、質量比で3官能及び4官能エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1つのエポキシ樹脂:2官能エポキシ樹脂が10:90〜40:60であることが好ましく、15:85〜60:40であることがより好ましい。
2官能エポキシ樹脂の含有量が著しく多いと、硬化物のガラス転移温度が150℃以上の比較的高い耐熱性を付与することが困難であるという問題が生じる場合がある。逆に、2官能エポキシ樹脂の含有量が著しく少ないと、硬化物が著しく脆くなってしまったり、エポキシ樹脂組成物が比較的高粘度となり、取り扱いや強化繊維束への含浸が困難になってしまったりという問題が生じる可能性がある。また3官能や4官能エポキシ樹脂の含有量が著しく多いと、エポキシ樹脂組成物が比較的高粘度となり、取り扱いや強化繊維束への含浸が困難になるという問題が生じる場合がある。逆に、3官能や4官能エポキシ樹脂の含有量が著しく少ないと、硬化物のガラス転移温度が150℃以上の比較的高い耐熱性を付与することが困難であるという問題が生じる可能性がある。
エポキシ樹脂としては、分子内に脂肪族環を有する2〜4官能のエポキシ樹脂を使用してもよい。前記エポキシ樹脂としては、脂肪族環にエポキシ環が縮合した化合物や、脂肪族環にグリシジル基等のエポキシ基を含む置換基が結合した化合物等が挙げられる。 脂肪族環にエポキシ環が縮合した化合物における脂肪族環としては、炭素数6の脂肪族環が好ましく、具体的にはシクロヘキサン環等が挙げられる。
脂肪族環にエポキシ環が縮合した化合物としては、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート等が挙げられる。
エポキシ樹脂としてこれらを使用する場合、エポキシ樹脂組成物の粘度を低くすることが出来るため、取り扱いや強化繊維束への含浸が容易となり、かつ硬化物の耐熱性も優れるため、好ましい。さらに、繊維強化複合材料を作製した場合、マトリックス樹脂と強化繊維の表面との接着の強さを適切に調整できる効果も得られるため、好ましい。また、脂肪族環にグリシジル基等のエポキシ基を含む置換基が結合した化合物における脂肪族環としては、炭素数6の脂肪族環が好ましく、具体的にはシクロヘキサン環等が挙げられる。
脂肪族環にグリシジル基等のエポキシ基を含む置換基が結合した化合物としては、例えばヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、メチルテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。エポキシ樹脂としてこれらを使用する場合、エポキシ樹脂組成物の粘度を低くすることが出来るため、取り扱いや強化繊維束への含浸が容易となり、かつ繊維強化複合材料を作製した場合、マトリックス樹脂と強化繊維の表面との接着の強さを適切に調整できるため、好ましい。上記、分子内に脂肪族環を有するエポキシ樹脂は、2種以上を併用しても良い。
また、エポキシ樹脂として、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂と分子内に脂肪族環を有するエポキシ樹脂とを併用して用いても良い。
このように、本発明のエポキシ樹脂としては種々のエポキシ樹脂が使用できるが、硬化物への耐熱性付与の観点から、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂が好ましい。特に、エポキシ樹脂100質量部中、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂が30〜100質量部であることが好ましく、40〜100質量部であることがより好ましく、50〜100質量部であることが更に好ましく、さらに60〜100重量部であることが最も好ましい。
具体的には、上記分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂としては、エポキシ当量が170g/eq以上、200g/eq以下である液状のビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましく、これらをエポキシ樹脂100質量部中、30〜100質量部で用いることが好ましい。
なお、エポキシ樹脂としては、本発明の効果を損なわない範囲で、上述以外のエポキシ樹脂を含有していてもよい。
(硬化剤)
本発明のプリプレグに含まれるマトリックス樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の硬化剤は、例えばルイス酸アミン錯体、アミン、酸無水物(カルボン酸無水物等)、フェノール
(ノボラック樹脂等)、メルカプタン、オニウム塩、イミダゾールなどが挙げられるが、エポキシ樹脂を硬化させうるものであればどのような構造のものでもよい。これらの中でも、ルイス酸アミン錯体やアミン型の硬化剤が好ましい。これら硬化剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ルイス酸アミン錯体としては、三塩化ホウ素や三フッ化ホウ素等のハロゲン化ホウ素と有機アミンとからなる錯体、即ち三塩化ホウ素アミン錯体や三フッ化ホウ素アミン錯体が好ましい。
具体的には、例えば三フッ化ホウ素アニリン錯体、三フッ化ホウ素p−クロロアニリン錯体、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体、三フッ化ホウ素イソプロピルアミン錯体、三フッ化ホウ素ベンジルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジメチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジブチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素ジベンジルアミン錯体、これらに於けるフッ素原子が塩素原子に置き換わった化合物、及び三塩化ホウ素ジメチルオクチルアミン錯体等が挙げられる。
これら錯体の中でも特にエポキシ樹脂に対する溶解性が優れ、含有する組成物のポットライフが優れ、工業的に入手が容易である三フッ化ホウ素ピペリジン錯体又は三塩化ホウ素ジメチルオクチルアミン錯体が好ましく使用できる。
これら錯体を硬化剤として使用することによって作製された繊維強化複合材料は、マトリックス樹脂と強化繊維の表面との接着の強さにおいて、優れた引張強度を発現するのに適した強さを得ることが出来る。さらに三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、三塩化ホウ素ジメチルオクチルアミン錯体の様なエポキシ樹脂に対する溶解性が優れる錯体を使用した場合、作製した繊維強化複合材料へのボイド発生を抑制できる。これにより、繊維強化複合材料は優れた引張強度発現効果を得ることが出来る。
前記エポキシ樹脂として、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂及び脂肪族環にグリシジル基等のエポキシ基を含む置換基が結合した化合物(特にヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル)からなる群から選択される少なくとも1つを使用する場合は、より低温で短時間に硬化できることから、硬化剤として三塩化ホウ素アミン錯体を使用することが好ましい。
一方、前記成分エポキシ樹脂として、脂肪族環にエポキシ環が縮合した化合物を使用する場合には、より低温で短時間に硬化できることから、硬化剤として三フッ化ホウ素アミン錯体を使用することが好ましい。
硬化剤がルイス酸アミン錯体とした場合、好ましい配合量は、本発明のエポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂100質量部に対して、通常8質量部以上、好ましくは9質量部以上であり、また通常20質量部以下、好ましくは18質量部以下、より好ましくは17質量部以下である。即ち、硬化剤がルイス酸アミン錯体とした場合、好ましい配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、8質量部以上、20質量部以下が好ましく、8質量部以上、18質量部以下がより好ましく、9質量部以上、18質量部以下がよりさらに好ましく、9質量部以上、17質量部以下が特に好ましい。ルイス酸アミン錯体の配合量が著しく多い、又は著しく少ない場合、硬化樹脂の耐熱性が低くなってしまう可能性がある。
アミン型の硬化剤としては、例えばジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミン、脂肪族アミン、イミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、及びこれらの異性体、変成体などがある。これらの中でも、プリプレグの保存性に優れる点で、ジシアンジアミドが特に好ましい。
また、本発明のプリプレグに含まれるマトリックス樹脂組成物には、エポキシ樹脂の硬化剤の硬化活性を高めるために、硬化助剤を用いてもよい。例えばエポキシ樹脂の硬化剤がジシアンジアミドである場合の硬化助剤は3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素(DCMU)、3−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−1,1−ジメチル尿素、2,4−ビス(3,3−ジメチルウレイド)トルエン等の尿素誘導体が好ましく、エポキシ樹脂の硬化剤がカルボン酸無水物やノボラック樹脂である場合の硬化助剤は三級アミンが好ましく、エポキシ樹脂の硬化剤がジアミノジフェニルスルホンである場合の硬化助剤はイミダゾール化合物、フェニルジメチルウレア(PDMU)等のウレア化合物、三フッ化ホウ素モノエチルアミン、三塩化ホウ素アミン錯体等のアミン錯体が好ましい。
これらの中でも硬化剤がジシアンジアミドであり、硬化助剤がDCMUである組み合わせが特に好ましい。
<付加成分>
本発明のプリプレグに含まれるマトリックス樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー及びエラストマーからなる群より選ばれた1種以上の付加成分を含有してもよい。これらの付加成分は、マトリックス樹脂組成物の粘度、貯蔵弾性率及びチキソトロピー性を適正化する役割があり、かつ、マトリックス樹脂組成物の硬化物の粘弾性を変化させたり、靭性を向上させたり等の役割がある。これらの付加成分は、各種成分と共に混合してもよいし、予めエポキシ樹脂中に溶解しておいてもよい。
硬化後のエポキシ樹脂組成物の靱性向上のため、付加成分としてはエラストマー粒子が好ましく、中でも架橋ゴム粒子、及び架橋ゴム粒子の表面に架橋ゴム粒子を構成するポリマーとは異なるポリマーをグラフト重合したコアシェル型ゴム粒子からなる群から選択される少なくとも1つのゴム粒子が、さらに好ましく用いられる。
架橋ゴム粒子については、ゴムの種類は制限されず、例えばブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコ−ンゴム、ブチルゴム、NBR,SBR,IR,EPR等が用いられる。架橋ゴム粒子の例としては、製品名:YR−500シリーズ(東都化成(株)製)等が挙げられる。
「コアシェル型ゴム粒子」とは、架橋されたゴム状ポリマーを主成分とする粒子状コア成分の表面に、コア成分とは異種のシェル成分ポリマーをグラフト重合することで粒子状コア成分の表面の一部あるいは全体をシェル成分で被覆したゴム粒子である。
コアシェル型ゴム粒子を構成するコア成分としては、前記架橋ゴム粒子と同様のものが挙げられる。中でもスチレンとブタジエンから構成される架橋ゴム状ポリマーが、靭性向上効果が高く好ましい。
コアシェル型ゴム粒子を構成するシェル成分は、前記したコア成分にグラフト重合されており、コア成分を構成するポリマーと化学結合していることが好ましい。なお、ここでいう「化学結合」とは、原子又はイオンを結びつけて、分子又は結晶を形成させる原子間の結合を意味する。特に、ここでの化学結合は電子対が二つの原子に共有されることにより形成される共有結合を意味する。
かかるシェル成分を構成する成分としては、例えばアクリル酸エステル系モノマー、及びメタクリル酸エステル系モノマー、及び芳香族系ビニルモノマー等からなる群から選択される少なくとも1種が重合した重合体を用いることができる。コア成分としてスチレンとブタジエンから構成される架橋ゴム状ポリマーを使用する場合、シェル成分としては、(メタ)アクリル酸エステルであるメタクリル酸メチルと芳香族ビニル化合物であるスチレンの混合体を好適に用いることができる。
また、前記シェル成分には分散状態を安定化させるために、本発明のエポキシ樹脂組成物を構成する成分(A1)と反応する官能基が導入されていることが好ましい。かかる官能基としては、例えばヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基が挙げられ、中でもエポキシ基が好ましい。エポキシ基を導入する方法としては、前記したシェル成分に、例えばメタクリル酸2,3−エポキシプロピルを併用して、コア成分にグラフト重合する方法がある。
具体的な市販品としては、アクリルゴムを使用した製品名:W−5500或いは製品名:J−5800(三菱レイヨン(株)製)、シリコーン・アクリル複合ゴムを使用した製品名:SRK−200E(三菱レイヨン(株)製)、ブタジエン・メタクリル酸アルキル・スチレン共重合物からなる製品名:パラロイドEXL−2655(呉羽化学工業(株)製)、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体からなる製品名:スタフィロイドAC−3355或いは製品名:TR−2122(武田薬品工業(株)製)、アクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル共重合物からなる製品名:PARALOID EXL−2611或いは製品名:EXL−3387(Rohm&Haas社製)等を挙げることができる。
ゴム粒子は、エポキシ樹脂組成物の調製時に攪拌機やロールミル等を使用して成分(A1)中へ分散してもよいが、ゴム粒子が予めエポキシ樹脂に分散されたマスターバッチ型のゴム粒子分散エポキシ樹脂を用いると、エポキシ樹脂組成物の調製時間を短縮するだけでなく、エポキシ樹脂組成物中のゴム粒子の分散状態を良好にすることが出来るので好ましい。さらにはゴム粒子とエポキシ樹脂成分が化学結合又は物理結合しているものが特に好ましい。
このようなマスターバッチ型の架橋ゴム粒子分散エポキシ樹脂としては、アクリルゴムを含有した製品名:BPF307或いは製品名:BPA328(日本触媒(株)製);スチレン及びブタジエンの共重合体のコア成分とメタクリル酸メチルを含み、かつエポキシ樹脂と反応する官能基を有するシェル成分とからなるコアシェルゴム粒子を含有した製品名:MX−113或いは製品名:MX−416;ブタジエンゴムを含有した製品名:MX−156;シリコンゴムを含有した製品名:MX−960(カネカ(株)製)等が挙げられる。
付加成分がゴム粒子である場合、好ましい配合量は、本発明のエポキシ樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂100質量部に対して、通常12質量部以上、好ましくは16質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、また通常110質量部以下、好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下である。
即ち、付加成分がゴム粒子である場合、好ましい配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、通常12質量部以上、110質量部以下が好ましく、16質量部以上、100質量部以下がより好ましく、20質量部以上、80質量部以下が特に好ましい。
ゴム粒子が著しく多い場合はエポキシ樹脂への分散が困難となったり、エポキシ樹脂組成物が高粘度となってしまい、取り扱いや強化繊維束への含浸が困難となる問題が生じる場合がある。逆に、ゴム粒子が著しく少ない場合は、硬化後のエポキシ樹脂組成物の靭性向上が不十分で、本発明の効果が得られないという問題が生じる可能性がある。
<熱硬化性樹脂組成物の粘度>
本発明のトウプリプレグに使用する熱硬化性樹脂組成物の、30℃における粘度は300Pa・s以下であることが好ましく、150Pa・s以下がより好ましい。粘度が300Pa・sを超えるとエポキシ樹脂組成物が高粘度となるため取り扱いや強化繊維束への含浸が困難になったり、トウプリプレグとした場合にボビンからの解舒、工程通過性、ドレープ性に問題が生じる場合がある。
なお粘度の下限値は、トウプリプレグが工程を通過する際やFW成形の際に、強化繊維束に供給したエポキシ樹脂組成物が脱落するといった問題が生じたり、FW成形でマンドレルやライナーにトウプリプレグや樹脂が供給された強化繊維束を巻きつけてゆく際に、ライナーや複合材料補強圧力容器にエポキシ樹脂組成物が垂れ落ちるといった問題が生じたりする、との理由から、通常0.1Pa・s程度である。
即ち、本発明の第1の態様におけるエポキシ樹脂組成物の30℃における粘度は、0.1Pa・s以上、300Pa・s以下であることが好ましく、0.1Pa・s以上、 150 Pa・s以下がより好ましい。
<エポキシ樹脂組成物の含有量>
トウプリプレグに含まれるエポキシ樹脂組成物の含有量は、20質量%以上40質量%以下が好ましい。エポキシ樹脂組成物の含有量が20質量%以上であれば強化繊維束中にエポキシ樹脂組成物を十分に行き渡らせることができ、40質量%以下であれば強化繊維複合材料の繊維含有体積率が高くなるため、機械特性を効果的に発現できる。機械特性をより効果的に発現させるには、エポキシ樹脂組成物の含有量は20質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
<トウプリプレグの製造方法>
本発明のトウプリプレグは、公知の製造方法により製造できるが、中でも以下の工程(1)〜(5)を経て製造することが好ましい。
工程(1):強化繊維束(トウ)の少なくとも片面にエポキシ樹脂組成物を供給する前に、予めトウを加熱、拡幅する。
工程(2):強化繊維束の少なくとも片面にエポキシ樹脂組成物を供給する。
工程(3):供給したエポキシ樹脂組成物を強化繊維束へ均一に含浸させる。
工程(4):トウプリプレグの温度を室温程度まで冷却する。
工程(5):トウプリプレグを紙管等のボビンに巻き取る。
強化繊維束は拡幅され扁平形状であることが好ましい。強化繊維束が拡幅され扁平形状であれば、エポキシ樹脂組成物との接触面積が広くなる。強化繊維束を拡幅させる方法としては、円筒バーで擦過させる方法;振動を加える方法;押しつぶす方法などが挙げられる。さらに強化繊維束を拡幅する際は、強化繊維束に通常塗布されているサイズ剤を軟化させ、拡幅しやすくするため加熱しておくことが好ましく、強化繊維束に塗布されたサイズ剤の軟化点程度まで強化繊維束を加熱することがより好ましい。さらに強化繊維束の予備加熱は、エポキシ樹脂組成物との接触後、強化繊維束内へのエポキシ樹脂組成物の浸透時に樹脂温度が低下しないように、予め強化繊維束の温度を上昇させておく意味もある。加熱により強化繊維束の温度を接触前の樹脂温度以上にしておけば、強化繊維束とエポキシ樹脂組成物の接触後の強化繊維束の温度は接触前の樹脂温度より低くなることはない。
加熱方法としては加熱体との接触加熱、及び通電加熱、誘電加熱、赤外線加熱、雰囲気加熱等の非接触加熱法がいずれも使用可能である。
強化繊維束の拡幅は、インラインで実施してもオフラインで実施してもよい。例えば市販の拡幅されたテープ状強化繊維束はオフラインで拡幅された強化繊維束とみなされる。
強化繊維束へのエポキシ樹脂組成物の供給方法としては、レジンバス法;回転ロール法;紙上転写法;特開平09−176346号公報、特開2005−335296号公報、特開2006−063173号公報に記載されたノズル滴下法;特開平08−073630号公報、特開平09−031219号公報、特開平8−73630号公報に記載された樹脂接触並びにトウ移動法などが挙げられる。
これらの中でも、エポキシ樹脂組成物の供給量の制御や実施の容易さの点で、回転ロール法や樹脂接触並びにトウ移動法が、エポキシ樹脂組成物の供給方法として好ましい。また、強化繊維束の幅は通常安定化しておらず、その広がり方にはばらつきがある。従って特開平8−73630号公報に記載の通り、強化繊維束を拡幅した後、エポキシ樹脂組成物の接触直前あるいは接触時にトウ幅を狭めて安定化させることが効果的である。具体例としては、樹脂吐出口部又はその直前の位置に所定幅の溝を設けて、該溝内に強化繊維束を走行させて強化繊維束の幅を狭める方法がある。
強化繊維束へのエポキシ樹脂組成物の含浸方法は、公知の含浸方法を使用することができる。中でも加熱ロールや熱板等の加熱体に擦過させる方法;エポキシ樹脂組成物が供給された強化繊維束が空走する際に加熱炉を通過させる方法;空気電熱加熱、通電加熱、誘電加熱、赤外線加熱等の非接触加熱手段で加熱する方法が好ましい。強化繊維束へエポキシ樹脂組成物が供給されてから加熱体により加熱されるまでの間、及び加熱体と加熱体との間で強化繊維束やエポキシ樹脂組成物の温度が下がらないように、非接触加熱手段で加熱しておくことがより一層好ましい。
また、強化繊維束へエポキシ樹脂組成物を含浸させる工程において、強化繊維束へ外力を加えて強化繊維束を構成するフィラメントを横方向(長手方向と直交する方向)に動かし、フィラメント間の相対位置を変化させてエポキシ樹脂組成物とフィラメントの接触機会を増やす工程を加えることが好ましい。これにより、単なる加圧や毛細管現象による含浸効果以上の均一な含浸効果を上げることができる。
具体的には、強化繊維束を折り畳む、強化繊維束を拡幅する、強化繊維束を縮幅する、又は強化繊維束を加撚する等の少なくとも一つの手段で行う。これらの手段において、折り畳み手段と加撚手段は、幅縮小手段と同様に強化繊維束の幅を狭める傾向にある。そして強化繊維束の幅を狭める作用を有する手段と、強化繊維束の幅を拡大する手段とを併用すると、均一含浸の効果がより高くなる。なお、加撚はエポキシ樹脂組成物の含浸時に行なえばよく、含浸後に撚りのない状態が必要である場合には、含浸後に撚り戻しをすればよい。また、仮撚りであれば撚り戻しをする必要はなく、撚りのない強化繊維束が必要な場合には望ましい。また加撚と同時にあるいは直後に擦過を加えれば、強化繊維束の幅の広がる傾向となり、更に樹脂の厚さ方向の移動のため含浸の均一性は高くなる。
フィラメントの横方向移動の均一含浸において、強化繊維束の走行速度未満の周速で回転する回転体に強化繊維束を接触させて擦過させることは、毛羽の堆積やロールのクリーニング等にとって有用である。擦過されていれば強化繊維束は回転体表面で絡まりつくこともなく、また回転体は強化繊維束で擦られ、かつ回転しているので強化繊維束と接触する面は常にクリーニングされている状態となり、製造環境の向上にも有用である。ただし回転体の周速は強化繊維束の走行速度の50%以上99%以下とすることが好ましい。回転体の周速が強化繊維束の走行速度に対し1/2未満であると強く擦過されることで強化繊維束が毛羽立つ場合があり、後の工程での巻きつきやボビンに巻き取られたトウプリプレグを解舒する際に問題が生じる場合がある。
エポキシ樹脂組成物が強化繊維束に均一に含浸されると、作製した強化繊維複合材料(トウプリプレグ)の機械的特性が向上し、本発明の効果が十分に得られる。
エポキシ樹脂組成物を均一に含浸させた強化繊維束は、ボビンへの巻き取り工程までに冷却体への擦過や非接触冷却手段等の公知の冷却手段を使用して室温程度まで冷却しておくことが好ましい。十分に冷却しない状態で巻き取ってしまうと、エポキシ樹脂組成物が低粘度であるため巻き取る際に滑りが生じ、巻き形態が乱れてしまうことがある。また、一度巻き取ってしまうと中心部からは熱が逃げにくく、温度が高い状態が比較的長時間続いてしまうため、エポキシ樹脂組成物のポットライフが短くなり、トウプリプレグの保存安定性が低下することもある。
<作用効果>
以上説明した本発明のトウプリプレグは、十分にマトリックス樹脂が含浸され、成形物の強度低下が抑えられ力学特性に優れる繊維強化複合材料を生産性よく得られる。
本発明のトウプリプレグは、上記の特性を有するため、フィラメントワインディング成形法で作製する複合材料補強圧力容器や引き抜き成形法で作製する緊張材等に適する。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
各例で用いた原材料を以下に示す。
<炭素繊維>
・炭素繊維トウ1
平均単繊維繊度:1.35dtex
真円度:0.76
直径Di:11.9μm
フィラメント数:24000 本
ストランド強度:4500 MPa
ストランド弾性率:242 GPa
・炭素繊維トウ2
平均単繊維繊度:0.53dtex
真円度:0.85
直径Di:7.0μm
フィラメント数:60000 本
ストランド強度:4900 MPa
ストランド弾性率:250 GPa
<エポキシ樹脂>
「製品名」カネエースMX−154
「成分」ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2官能エポキシ樹脂。エポキシ当量:189g/eq):60質量%、ブタジエン系コアシェル型ゴム粒子(体積平均粒径:100nm):40質量%
「メーカー」株式会社カネカ
<硬化剤>
「製品名」DY9577
「成分」三塩化ホウ素アミン錯体
「メーカー」ハンツマン・ジャパン株式会社・ジシアンジアミド
<マトリックス樹脂調製>
フラスコにカネエースMX−154とDY9577とを10対1の比で秤量した。60度に設定したウォーターバスを使用してフラスコを加温しながら、スリーワンモーターと撹拌翼とを使用してカネエースMX−154とDY9577とが均一となるまで撹拌することで、マトリックス樹脂を得た。
<マトリックス樹脂の粘度測定方法>
マトリックス樹脂の粘度測定方法は次の方法による。すなわち、TAインスツルメント社製のAR−G2または同等の装置により、測定周波数10rad/sec.、25mm直径の平プレート、プレート間ギャップは0.5mm、昇温速度2℃/分の条件で26℃〜34℃までの温度範囲で測定し、30℃での粘度を求める。30℃調度での測定値が得られない場合はもっとも近い2点から補完して求める。
<炭素繊維の直径及び真円度の測定方法>
(1)サンプルの作製
長さ5cmに切断した炭素繊維束をエポキシ樹脂(エポマウント主剤:エポマウント硬化剤=100:9(質量比))に包埋し、2cmに切断して横断面を露出させ、鏡面処理した。
(2)観察面のエッチング処理
更に、繊維の外形を明瞭にするために、サンプルの横断面を次の方法でエッチング処理した。
・使用装置:日本電子(株) JP−170 プラズマエッチング装置
・処理条件:雰囲気ガス:Ar/02=75/25
・プラズマ出力:50W
・真空度:約120Pa
・処理時間:5分間
(3)SEM観察
前記(1)及び(2)により得られたサンプルの横断面を、SEM(PHILIPS FEI―XL20)を用いて観察し、画面上に5個以上の繊維断面が写っている写真を任意に5枚撮影した。
(4)炭素繊維単繊維の直径測定
各サンプルについて5枚の顕微鏡写真から任意に20個、ただし1枚の写真から3個以上の単繊維断面を選んで、画像解析ソフトウエア(日本ローパー(株)製、製品名:Image−Pro PLUS)を用いて繊維断面の外形をトレースし、断面の長径(最大フェレ径)dを計測した。選んだ単繊維断面全ての長径dの平均を、炭素繊維単繊維の直径Diとした。
(5)炭素繊維単繊維の真円度測定
画像解析ソフトウエア(日本ローパー(株)製、製品名 :Image−Pro PLUS)を用いて繊維断面 の外形をトレースし、周長Lおよび面積Sを計測した。各サンプルについて5枚の写真から任意に20個、ただし1枚の写真から3個以上の繊維断面を選んで計測し、LおよびSの平均値を求め、次式により真円度を算出した。
・真円度=(4πS)/L
<トウプリプレグの作製>
先に調製したマトリックス樹脂と炭素繊維トウ1、または炭素繊維トウ2とを用いて、以下のようにしてトウプリプレグを作製した。
まず、炭素繊維トウを50〜100℃に加熱し拡幅させた。拡幅させた炭素繊維トウに、トウプリプレグとした際にマトリックス樹脂の含有量が28質量%となるように、ドクターブレードを使用して45℃に調温した円柱状のドラムに45℃に調温したマトリックス樹脂を一定厚みで塗工してその上に炭素繊維トウの片面を接触させることでマトリックス樹脂を供給し、さらに7本の65℃の加熱ロールから構成される樹脂含浸装置を用いて、炭素繊維トウにマトリックス樹脂を含浸させた。マトリックス樹脂を含浸した炭素繊維トウを室温まで冷却した後、ボビンに巻き取り、トウプリプレグとした。
<トウプリプレグのタック測定>
トウプリプレグのタック値を以下の通り測定した。
装置:タックテスター TA−500(株式会社ユービーエム製)
測定条件
接触面積 : 3.131cm
プランジャーの押しつけ時間 : 10秒
プランジャーの押しつけ荷重 : 90,000Pa
タック測定時の上昇速度 : 1mm/秒
測定温度 : 23℃/50%
1)トウプレグを試料台に固定。
2)試料台をタックテスターに装着し、上記の条件で測定した。
3)プランジャーを上昇させる際の最大ストレス値をタック値とし、n=3の平均値を結果とした。
<実施例1>
炭素繊維トウ1にマトリックス樹脂を含有率が33wt%となるように含浸させ実施例1のトウプリプレグを得た。当該トウプリプレグのマトリックス樹脂供給面のタックと反供給面のタックを測定した。供給面のタック値は9.3kPa、反供給面のタック値は9.0kPaであった。供給面のタック値と反供給面のタック値が同程度であり、炭素繊維トウへ片面のみマトリックス樹脂を供給したが反供給面まで十分に含浸していることが分かる。
<比較例1>
炭素繊維トウ2にマトリックス樹脂を含有率が33wt%となるように含浸させ比較例1のトウプリプレグを得た。当該トウプリプレグのマトリックス樹脂供給面のタックと反供給面のタックを測定した。供給面のタック値は9.3kPa、反供給面のタック値は7.7kPaであった。供給面のタック値と比較して反供給面のタック値が低く、炭素繊維トウへ片面のみマトリックス樹脂を供給したが反供給面まで十分に含浸していないことが分かる。

Claims (1)

  1. 単繊維繊度1.0dtex以上2.4dtex以下、単繊維の繊維軸に垂直な断面形状が真円度0.7以上0.9以下である炭素繊維束にエポキシ樹脂組成物を含浸するトウプリプレグの製造方法。
    ここで、真円度は、下記式(1)で求められる値であり、SとLはそれぞれ、光学顕微鏡で補強繊維の単繊維の繊維軸に垂直な断面の形状を観察し画像解析から得られる単繊維の断面積と周長である。
    真円度=(4πS)/L・・・・(1)
JP2015067861A 2015-03-30 2015-03-30 プリプレグの製造方法 Pending JP2016188271A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015067861A JP2016188271A (ja) 2015-03-30 2015-03-30 プリプレグの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015067861A JP2016188271A (ja) 2015-03-30 2015-03-30 プリプレグの製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2016188271A true JP2016188271A (ja) 2016-11-04

Family

ID=57239346

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015067861A Pending JP2016188271A (ja) 2015-03-30 2015-03-30 プリプレグの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2016188271A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018154780A (ja) * 2017-03-21 2018-10-04 三菱ケミカル株式会社 プリプレグ及び炭素繊維強化複合材料
CN109382633A (zh) * 2018-11-09 2019-02-26 湖北三江航天江北机械工程有限公司 固体火箭发动机燃烧室壳体的形状精度控制方法

Citations (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0873630A (ja) * 1994-09-05 1996-03-19 Mitsubishi Rayon Co Ltd トウプリプレグ及びシート状プリプレグの製造方法
WO2012050171A1 (ja) * 2010-10-13 2012-04-19 三菱レイヨン株式会社 炭素繊維前駆体繊維束、炭素繊維束、及びそれらの利用
JP2012192564A (ja) * 2011-03-15 2012-10-11 Mitsubishi Rayon Co Ltd 複合材料積層板
JP2012192565A (ja) * 2011-03-15 2012-10-11 Mitsubishi Rayon Co Ltd 複合材料積層板
JP2013203773A (ja) * 2012-03-27 2013-10-07 Mitsubishi Rayon Co Ltd シートモールディングコンパウンドおよびそれを用いて成形する繊維強化複合材料
JP2013202803A (ja) * 2012-03-27 2013-10-07 Mitsubishi Rayon Co Ltd 炭素繊維強化複合材料
JP2013208726A (ja) * 2012-03-30 2013-10-10 Mitsubishi Rayon Co Ltd 炭素繊維強化複合材料の製造方法
JP2013208724A (ja) * 2012-03-30 2013-10-10 Mitsubishi Rayon Co Ltd 太い炭素繊維を用いた成形用中間材
WO2013183667A1 (ja) * 2012-06-05 2013-12-12 三菱レイヨン株式会社 エポキシ樹脂組成物
JP2015048453A (ja) * 2013-09-04 2015-03-16 三菱レイヨン株式会社 エポキシ樹脂組成物、トウプリプレグ及び圧力容器

Patent Citations (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0873630A (ja) * 1994-09-05 1996-03-19 Mitsubishi Rayon Co Ltd トウプリプレグ及びシート状プリプレグの製造方法
WO2012050171A1 (ja) * 2010-10-13 2012-04-19 三菱レイヨン株式会社 炭素繊維前駆体繊維束、炭素繊維束、及びそれらの利用
JP2012192564A (ja) * 2011-03-15 2012-10-11 Mitsubishi Rayon Co Ltd 複合材料積層板
JP2012192565A (ja) * 2011-03-15 2012-10-11 Mitsubishi Rayon Co Ltd 複合材料積層板
JP2013203773A (ja) * 2012-03-27 2013-10-07 Mitsubishi Rayon Co Ltd シートモールディングコンパウンドおよびそれを用いて成形する繊維強化複合材料
JP2013202803A (ja) * 2012-03-27 2013-10-07 Mitsubishi Rayon Co Ltd 炭素繊維強化複合材料
JP2013208726A (ja) * 2012-03-30 2013-10-10 Mitsubishi Rayon Co Ltd 炭素繊維強化複合材料の製造方法
JP2013208724A (ja) * 2012-03-30 2013-10-10 Mitsubishi Rayon Co Ltd 太い炭素繊維を用いた成形用中間材
WO2013183667A1 (ja) * 2012-06-05 2013-12-12 三菱レイヨン株式会社 エポキシ樹脂組成物
JP2015048453A (ja) * 2013-09-04 2015-03-16 三菱レイヨン株式会社 エポキシ樹脂組成物、トウプリプレグ及び圧力容器

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018154780A (ja) * 2017-03-21 2018-10-04 三菱ケミカル株式会社 プリプレグ及び炭素繊維強化複合材料
CN109382633A (zh) * 2018-11-09 2019-02-26 湖北三江航天江北机械工程有限公司 固体火箭发动机燃烧室壳体的形状精度控制方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6222387B1 (ja) トウプリプレグ、複合材料補強圧力容器および複合材料補強圧力容器の製造方法
JP5293629B2 (ja) トウプリプレグ用エポキシ樹脂組成物およびトウプリプレグ
TWI545153B (zh) 環氧樹脂組成物、預浸絲束、複合材料補強壓力容器以及鋼腱
JP5403184B1 (ja) 繊維強化複合材料
JP5757309B2 (ja) エポキシ樹脂組成物、トウプリプレグ及び圧力容器
JP6020734B2 (ja) トウプリプレグ、及び複合材料圧力容器とその製造方法
TW201841970A (zh) 纖維強化複合材料用環氧樹脂組成物、纖維強化複合材料及成形體
JP2012056980A (ja) トウプリプレグ用エポキシ樹脂組成物およびトウプリプレグ
JP6503683B2 (ja) トウプリプレグ
JP5330073B2 (ja) 搬送用シャフトの製造方法
JP2008095222A (ja) 炭素繊維束およびプリプレグ
JP5561349B2 (ja) プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料
JP2016188271A (ja) プリプレグの製造方法
JP2019089951A (ja) トウプリプレグ、繊維強化複合材料及び複合材料補強圧力容器とその製造方法
JP2018158963A (ja) トウプリプレグ、および複合材料補強圧力容器
JP6070218B2 (ja) サイジング剤塗布炭素繊維、サイジング剤塗布炭素繊維の製造方法、プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料
JP2004027043A (ja) 繊維強化複合材料用エポキシ樹脂組成物及び繊維強化複合材料
JP5561390B2 (ja) プリプレグおよび炭素繊維強化複合材料
JP2016204540A (ja) トウプリプレグ、及び複合材料補強圧力容器
JP2021116403A (ja) トウプレグ
JP4349797B2 (ja) エポキシ樹脂組成物並びにロービングプリプレグ及びその製造方法
JP2020158780A (ja) トウプリプレグおよび複合材料補強圧力容器の製造方法
JP2004149979A (ja) 炭素繊維ストランド
JP2014201659A (ja) 繊維強化プラスチックの引抜成形方法ならびに成形品
JP2011219514A (ja) プリプレグ、炭素繊維複合材料およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180118

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20181015

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20181023

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20181225

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190604

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20191203