JP2016204540A - トウプリプレグ、及び複合材料補強圧力容器 - Google Patents

トウプリプレグ、及び複合材料補強圧力容器 Download PDF

Info

Publication number
JP2016204540A
JP2016204540A JP2015088851A JP2015088851A JP2016204540A JP 2016204540 A JP2016204540 A JP 2016204540A JP 2015088851 A JP2015088851 A JP 2015088851A JP 2015088851 A JP2015088851 A JP 2015088851A JP 2016204540 A JP2016204540 A JP 2016204540A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
component
tow prepreg
resin composition
matrix resin
fiber bundle
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2015088851A
Other languages
English (en)
Inventor
行弘 原田
Yukihiro Harada
行弘 原田
岡本 敏
Satoshi Okamoto
敏 岡本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Rayon Co Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Rayon Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Rayon Co Ltd filed Critical Mitsubishi Rayon Co Ltd
Priority to JP2015088851A priority Critical patent/JP2016204540A/ja
Publication of JP2016204540A publication Critical patent/JP2016204540A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Filling Or Discharging Of Gas Storage Vessels (AREA)
  • Reinforced Plastic Materials (AREA)

Abstract

【課題】 スプールからの解舒性や、フィラメントワインディング工程における工程通過性、及び形態保持性に優れ、硬化時の樹脂フローが抑制されたトウプリプレグと、これを用いて得られるタンクバースト圧が高い(繊維強化)複合材料圧力容器を提供する。【解決手段】 下記成分(A)、成分(B)、成分(C1)、及び成分(C2)を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸してなるトウプリプレグ。成分(A):エポキシ樹脂成分(B):エポキシ樹脂硬化剤成分(C1):プレゲル化剤粒子成分(C2):プレゲル化剤粒子の溶解物。但し、該プレゲル化剤粒子は、前記成分(C1)と同じものでもよく、異なるものでもよい。【選択図】 なし

Description

本発明は、トウプリプレグ、及び繊維強化複合材料を用いた複合材料補強圧力容器に関する。当該トウプリプレグは圧力容器以外にも、スポーツ用品、自動車、航空機、緊張材等の一般産業用途に用いることが出来る。
自動車等の移動体に搭載する圧縮天然ガスや水素の貯蔵タンクには、その軽量性からタンクライナー(以下、「ライナー」という。)を繊維強化複合材料で補強した圧力容器が利用されている。繊維強化複合材料に使用される強化繊維としてはガラス繊維、炭素繊維等がある。中でも炭素繊維は比強度が高いため圧力容器軽量化のメリットが大きく、特に圧縮天然ガスの貯蔵タンクよりも高い耐圧性能が要求される、水素の貯蔵タンクに好適に使用されている。
繊維強化複合材料を用いた圧力容器(以下、「複合材料補強圧力容器」と称することがある。)は一般に、フィラメントワインディング(FW)成形によって製造される。FW成形とは、1本、又は複数本引き揃えた強化繊維束にマトリックス樹脂組成物を供給し、含浸させたものを、回転するライナー等のマンドレルへ所定の張力、角度で巻きつけた後、該マトリックス樹脂組成物を硬化される成形法である。多くの場合は、強化繊維束にマトリックス樹脂組成物を供給して、含浸させる工程(含浸工程)に引き続き、回転するライナーなどのマンドレルにこれを巻き付ける工程(FW工程)を連続して行う。
またFW工程の直前で、強化繊維束にマトリックス樹脂組成物を供給し含浸させるのではなく、予め強化繊維束にマトリックス樹脂組成物を含浸させたトウプリプレグを作製しておき、これをFW工程で使用することもできる。この場合、トウプリプレグを回転するマンドレルへ所定の張力、角度で巻きつけていく。
FW成形においてトウプリプレグを使用することで、様々な利点を得ることができる。例えば、トウプリプレグを用いれば、圧力容器の製造過程で未硬化のマトリックス樹脂組成物を取り扱う必要がないため作業環境を向上させることができる。加えて含浸工程を有さないため、FW工程の工程速度を向上させることができることができる。さらに、マトリックス樹脂組成物の含有率が管理されたトウプリプレグを使用することで、安定的に高性能な成形品を得ることができる。
トウプリプレグに求められる特性としては、所定の量のマトリックス樹脂組成物が強化繊維束に十分含浸されていること、スプールに巻かれた状態から高速で解舒できること、さらにFW工程中にトウプリプレグが折りたたまれたまま、ライナーに巻き付けられる等の不具合が生じないことが要求される。
また、マンドレルにトウプリプレグを巻きつけた後、該トウプリプレグに含まれるマトリックス樹脂組成物を加熱し硬化させる工程(加熱硬化工程)において、加熱され粘度が低下したマトリックス樹脂組成物が、重力や、トウプリプレグのライナーへの巻きつけ張力により強化繊維束外へ流れ出てしまい、トウプリプレグ中のマトリックス樹脂組成物が不足して、成形品(繊維強化複合材料)中にボイドが多く発生したり、繊維強化複合材料中のマトリックス樹脂組成物の量が変化したりして、得られる複合材料補強圧力容器の性能や品質に悪影響を及ぼす場合がある(以後、このようにマトリックス樹脂組成物がトウプリプレグから流れ出る現象を「樹脂フロー」と称す)。このため、加熱硬化工程において、マトリックス樹脂組成物の粘度が低くなりすぎないことも要求される。
通常、トウプリプレグは紙管等のボビンに巻き取られ、使用する際には巻かれた状態から解舒される。この時、高速で解舒するためにはトウプリプレグのタック(べたつき)が弱くなければならない。トウプリプレグのタックを弱くする方法の1つに、強化繊維束に含浸させるマトリックス樹脂組成物として低粘度の樹脂組成物を使用する方法がある(特許文献1)。また、トウプリプレグのタックを弱くし、かつトウプリプレグの柔軟性を良好に保つ方法として、マトリックス樹脂組成物の粘度をトウプリプレグの使用環境温度(通常室温)でべたつかない程度まで高くする方法がある(特許文献2)。
特開平9−087365号公報 特開昭55−015870号公報
しかし特許文献1に開示された技術のように、粘度の低いマトリックス樹脂組成物を使用すると、FW工程中にガイドロール等でトウプリプレグが折りたたまれ、その形態が大きく変化してしまう場合がある。
また、通常トウプリプレグは数百gから1kg程度の張力をかけて紙管に巻き取るが、この際にトウプリプレグからマトリックス樹脂組成物が絞り出され、紙管側に位置するトウプリプレグより、他方(外周側)に位置するトウプリプレグの方がマトリックス樹脂組成物の含有量が高くなる問題も起きる(以後、当該現象を「巻き絞り」と称す)。
さらにマトリックス樹脂組成物の粘度が低すぎるため、これを加熱硬化させる過程で樹脂フロー多量に発生し、得られる複合材料補強圧力容器の繊維強化複合材料層にボイドが多く生じ、耐圧性能や強度が低下したり、品質が安定しない等の問題が生じる可能性がある。
一方、特許文献2に開示されたような高粘度のマトリックス樹脂組成物は、強化繊維束に十分含浸させることが困難である。特許文献2ではマトリックス樹脂組成物を溶剤に溶かして強化繊維束に含浸させた後、加熱し乾燥することにより溶剤を除去しているが、この方法では得られたトウプリプレグ中に、溶剤が少なからず残存してしまう。残存した溶剤は当該トウプリプレグを使用して作製した繊維強化複合材料中に空隙を発生させ、その強度、品質を大きく落とす原因となってしまう。
また特許文献2には、前述した加熱硬化過程における樹脂フロー量につき開示されていない。しかし該文献に開示された熱可塑性樹脂、例えば平均分子量40,000のポリカーボネート樹脂や平均分子量25,000のポリスルホンを用いてマトリックス樹脂組成物の樹脂フローを十分に抑制するためには、これらを多量に配合する必要があり、トウプリプレグの使用環境温度(通常室温)でのマトリックス樹脂組成物の粘度が必要以上に高くなり、トウプリプレグの解舒性や工程通過性に問題が生じたり、マトリックス樹脂組成物の硬化物の物性が低下したりする可能性がある。
本発明はかかる背景に鑑み、スプールからの解舒性や、FW工程における工程通過性、並びに形態保持性に優れ、かつ、硬化時の樹脂フローが抑制されたトウプリプレグ、及びこれを使用し得られる品質が安定し、かつ破壊圧力が高い複合材料補強圧力容器を提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、鋭意検討の結果、本発明者らは特定の条件を満たすトウプリプレグを使用することにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下に関する。
〔1〕下記成分(A)、成分(B)、成分(C1)、及び成分(C2)を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸してなるトウプリプレグ。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
成分(C1):プレゲル化剤粒子
成分(C2):プレゲル化剤粒子の溶解物。但し、該プレゲル化剤粒子は、前記成分(C1)と同じものでもよく、異なるものでもよい。
〔2〕 前記成分(A)100質量部に対し、前記成分(C1)の配合量が5〜20質量部であり、かつ成分(C2)の配合量が1〜5質量部である、〔1〕に記載のトウプリプレグ。
〔3〕 前記成分(C1)及び(C2)が、各々独立に、アクリル系樹脂からなるコアシェル粒子である、〔1〕または〔2〕に記載のトウプリプレグ。
〔4〕 下記成分(A)、成分(B)、成分(C11)、及び成分(C21)を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸してなるトウプリプレグ。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
成分(C11):アクリル系樹脂からなるコアシェル粒子
成分(C21):前記マトリックス樹脂組成物中に溶解しているアクリル系樹脂。但し該アクリル系樹脂は、前記成分(C11)を構成するものと同じであってもよく、異なっていても良い。
〔5〕 前記成分(B)が三塩化ホウ素アミン錯体であり、かつその配合量が成分(A)100質量部に対して3〜15質量部である、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
〔6〕 前記成分(A)が、成分(A1):分子内に芳香族環を有する液状の2官能エポキシ樹脂を含む、〔1〕〜〔5〕のいずれかの一項に記載のトウプリプレグ。
〔7〕 前記成分(A)が、さらにヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルを含む、〔6〕に記載のトウプリプレグ。
〔8〕 前記強化繊維束が炭素繊維束である、〔1〕〜〔7〕のいずれかの一項に記載のトウプリプレグ。
〔9〕 〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載のトウプリプレグを用いて製造された、複合材料補強圧力容器。
〔10〕 前記トウプリプレグを金属ライナー、又は樹脂ライナーに巻き付けて製造された、〔9〕に記載の複合材料補強圧力容器。
〔11〕下記成分(A)に成分(C2’)を溶解し、更に成分(C1)及び成分(B)を配合することによりマトリックス樹脂組成物を調製する調製工程、
前記マトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸させ、樹脂含浸強化繊維束を得る含浸工程、
前記樹脂含浸強化繊維束をボビンに巻き取る巻取工程、
を有するトウプリプレグの製造方法。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
成分(C1):プレゲル化剤粒子
成分(C2’):プレゲル化剤粒子。但し、該プレゲル化剤粒子は、前記成分(C1)と同じものでもよく、異なるものでもよい。
本発明における成分(C1)は、トウプリプレグの使用環境温度(本発明では20℃〜30℃を意味する。以下同様。)ではマトリックス樹脂組成物中に粒子として存在するが、トウプリプレグの加熱硬化工程における加熱温度以上、マトリックス樹脂組成物の硬化温度以下の温度領域ではマトリックス樹脂組成物、具体的にはマトリックス樹脂組成物中の成分(A)に溶解するか、または成分(A)により膨潤する。
マトリックス樹脂組成物がこのような成分(C1)を含むことにより、本発明のトウプリプレグは、スプールからの解舒性やFW工程における工程通過性、並びに形態保持性に優れる。
かつ、加熱硬化工程においてマトリックス樹脂組成物に溶解するか、または膨潤した成分(C1)と、マトリックス樹脂組成物中に溶解している成分(C2)を含むことにより、加熱硬化工程における樹脂フローが抑制されたトウプリプレグを提供することが出来る。
さらに該トウプリプレグを用いることにより、破壊圧力が高い複合材料補強圧力容器を、安定的に提供することができる。
本発明で使用するマトリックス樹脂組成物の、昇温粘度測定における粘度変化を説明する図である。 実施例1にて得られた複合材料補強圧力容器の、繊維強化複合材料層断面の顕微鏡写真である。 実施例2にて得られた複合材料補強圧力容器の、繊維強化複合材料層断面の顕微鏡写真である。 比較例1にて得られた複合材料補強圧力容器の、繊維強化複合材料層断面の顕微鏡写真である。 比較例2にて得られた複合材料補強圧力容器の、繊維強化複合材料層断面の顕微鏡写真である。
本発明は、下記成分(A)、成分(B)、成分(C1)、及び成分(C2)を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸してなる、トウプリプレグ及びその用途に関する。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
成分(C1):プレゲル化剤粒子
成分(C2):プレゲル化剤粒子の溶解物。但し、該プレゲル化剤は、前記成分(C1)と同じものでもよく、異なるものでもよい。
以下、詳細に説明する。
なおエポキシ樹脂という用語は熱硬化性樹脂の一つのカテゴリーの名称、或いは分子内に1つ以上のエポキシ基を有する化合物という化学物質のカテゴリーの名称として用いられるが、本発明においては後者の意味で用いられる。
<トウプリプレグ>
トウプリプレグとは、数千〜数万本の強化繊維のフィラメントが一方向に配列した強化繊維束に、マトリックス樹脂組成物を含浸させた後、これを紙管等のボビンに巻き取ることにより得られる細幅の中間基材である。なお本発明において、このようにボビンに巻き取られたもの、或いは巻き取られた後解舒されたものを「トウプリプレグ」と称し、単にマトリックス樹脂組成物が含浸された強化繊維束を「樹脂含浸強化繊維束」と称す。
本発明のトウプリプレグは、後述する本発明で用いられるマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸させることにより得られる。この強化繊維束を構成するフィラメントの繊維径及び本数に特に制限は無いが、繊維径は3〜100μmであることが好ましく、本数は1,000〜70,000本であることが好ましい。なお本発明における「繊維径」とは、それぞれの繊維の断面の等面積円相当直径のことである。
繊維径が3μm未満では、例えばフィラメントが、各種加工プロセスにおいて、ロールやボビン等の表面で横移動(繊維方向と直交する方向への移動。以下同様)を起こす際に、切断したり毛羽だまりが生じたりする場合があり、100μmを越えるとフィラメントが硬くなり、屈曲性が低下する傾向がある。
本発明における強化繊維束としてはガラス繊維、炭素繊維(なお本発明では、黒鉛繊維も炭素繊維に含まれるものとする)、アラミド繊維、ボロン繊維等、通常の繊維強化複合材料に使用される強化繊維を使用することができる。なかでも好ましくはJIS R 7601に準拠したストランド強度が3500MPa以上の炭素繊維、より好ましくはストランド強度4500MPa以上の炭素繊維、より一層好ましくはストランド強度が5000MPa以上の炭素繊維である。特に圧力容器や緊張材として使用する場合、使用する炭素繊維束のストランド強度は、強いほど好ましい。
なお、強化繊維束が炭素繊維束である場合、フィラメントの繊維径は3〜12μm、本数は1,000〜70,000であることが好ましい。繊維径が3μm未満では、例えばフィラメントが、各種加工プロセスにおいて、ロールやスプール等の表面で横移動を起こす際に、切断したり毛羽だまりが生じたりする場合がある。上限については、炭素繊維の製造上の困難性から、通常12μm程度である。
<トウプリプレグの解舒性>
トウプリプレグの製造方法に関しては後述するが、トウプリプレグはシート状のプリプレグとは異なり、通常は、フィルムや離型紙で表面を覆われることなく、ガラス繊維束や炭素繊維束と同様にそのまま紙管等に巻き取られる。そして紙管に巻かれたトウプリプレグを解舒して使用する。
トウプリプレグのタック(べたつき)が強すぎると、解舒時の抵抗が強く高速で解舒が出来なかったり、強化繊維束の単糸が取られて上手く解舒出来なかったりする問題が生じる。
<トウプリプレグの形態保持性>
通常トウプリプレグは紙管に、紙管の軸方向に往復させられながら巻き取られている。このため解舒の際には、解舒されるトウプリプレグの位置が紙管の軸方向に動くため、トウプリプレグの位置を固定するためのガイドを使用する必要がある。使用されるガイドの形状は様々であるが、一般に表面に周方向の溝を有し自由回転するロールや櫛状のものが使用される。解舒されたトウプリプレグは、ロール表面の溝や櫛の歯を通過することでその位置が固定される。ロールや櫛に接触する際にトウプリプレグが折りたたまれることがあるが、トウプリプレグのタックが強いと折りたたまれたまま開かなくなってしまう。またマトリックス樹脂組成物の粘度が低すぎる等の理由によりトウプリプレグが柔らかすぎると、ロールや櫛に接触する際のトウプリプレグの形状が変化する場合がある。トウプリプレグの形状が大きく変化してしまうと、これを巻き付け、硬化させて得られる複合材料補強圧力容器の破壊圧力や耐圧サイクル特性に悪影響を及ぼす場合がある。
<トウプリプレグの工程通過性>
FW工程において、一般にトウプリプレグはガイドやいくつかのロールを通過してマンドレルへ巻きつけられる。トウプリプレグのタックが強すぎると工程中のロール表面などでトウプリプレグが強く擦過し、強化繊維束が傷つけられる場合がある。強化繊維束が傷つくと、これを用いて作製される複合材料補強圧力容器の破壊圧力や耐圧サイクル特性に悪影響を及ぼす場合がある。
<トウプリプレグのタック>
トウプリプレグのタックは、平均最大ストレス値で表すことができる。なおストレス値とは、プランジャーと試料の接触面に生じる引張応力を意味し、平均最大ストレス値とは、以下に述べるタック試験により得られる値である。
(タック試験)
装置:タックテスターTA−500(株式会社ユービーエム製)
プランジャーの試料との接触面積:約3.1cm
プランジャー押しつけ時間:10秒
プランジャー押しつけ荷重:90,000Pa
プランジャー上昇速度:1mm/秒
測定環境温度:23℃
測定環境湿度:50%RH
手順:
1)トウプリプレグを試料台に置き固定する。この際、プランジャーと接触するトウプリプレグの面は、当該トウプリプレグが紙管に巻かれていた時の内側面(即ち紙管側の面)とする。
2)プランジャーに90,000Paの荷重をかけ、トウプリプレグに10秒間押し当てる。
3)プランジャーを1mm/秒で上昇させる。
4)プランジャーを上昇させる間のストレス値の最大値を最大ストレス値とし、合計3回測定して、得られた最大ストレス値の平均値を平均最大ストレス値とする。
本発明のトウプリプレグにおける平均最大ストレス値は、2kPa以上65kPa以下とすることが好ましく、10kPa以50kPa以下とすることがさらに好ましい。2kPaより大きくすることで、FW工程においてマンドレルに対する適度な粘着性を有することができ、マンドレルへの巻きつけ時に滑る等の問題を回避できる。また平均最大ストレス値を65kPaより小さくすることで、ボビン巻きからの高速解舒が可能になり、また、解舒後のトウプリプレグが折りたたまれたまま、ライナーに巻き付けられることを防止できる。
<トウプリプレグを使用する環境温度におけるマトリックス樹脂組成物の粘度>
トウプリプレグのタックの強弱に影響を与える大きな因子として、トウプリプレグが含有するマトリックス樹脂組成物の粘度が挙げられる。特にトウプリプレグを使用する環境温度でのマトリックス樹脂組成物の粘度が、トウプリプレグのタックに大きな影響を与える。スプールからの解舒性やFW工程における工程通過性、及び形態保持性に優れたトウプリプレグを得るためには、マトリックス樹脂組成物の30℃における粘度が3Pa・sec〜300Pa・secであることが好ましく、さらには5Pa・sec〜200Pa・secであることがより好ましい。
マトリックス樹脂組成物の30℃における粘度を300Pa・sec以下とすることで、トウプリプレグのタックが強くなりすぎない。またトウプリプレグが適度なドレープ性を有するため、隣接するトウプリプレグ間に空隙を生じさせることなくライナーに巻き付けることができる。またマトリックス樹脂組成物の30℃における粘度を3Pa・sec以上とすることで、これを含むトウプリプレグは適度なタックを有し、マンドレルに対する適度な粘着性を有することができるため、マンドレルへの巻きつけ時に滑る等の問題を回避することができる。またトウプリプレグが柔らかくなりすぎないため、FW工程におけるガイド通過時のトウプリプレグの形状変化を防ぐことができる。
<マトリックス樹脂組成物の含有量>
トウプリプレグのタックの強弱に影響を与える他の大きな因子として、マトリックス樹脂組成物の含有量が挙げられる。
本発明のトウプリプレグにおけるマトリックス樹脂組成物の含有量は、20質量%以上、40質量%以下が好ましい。20質量%以上にすることで、強化繊維束中に、十分な量のマトリックス樹脂組成物を容易に行き渡らせることが出来、成形品に多くの空隙が発生することを防ぐことができる。マトリックス樹脂組成物の含有量を40質量%以下にすることで、タックが強くなりすぎることを防ぐことができる。また繊維強化複合材料の繊維含有体積率を高くできるため、機械的特性を効果的に発現できる。解舒性や工程通過性、形態保持性がより優れ、かつ機械的特性をより効果的に発現させるためには、トウプリプレグにおけるマトリックス樹脂組成物の含有量を20質量%以上、30質量%以下とすることがより好ましい。
<マトリックス樹脂組成物>
一方、本発明に使用されるマトリックス樹脂組成物は、下記の成分(A)、成分(B)、成分(C1)、及び成分(C2)を含む。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
成分(C1):プレゲル化剤粒子
成分(C2):プレゲル化剤粒子の溶解物。但し、該プレゲル化剤は、前記成分(C1)と同じものでもよく、異なるものでもよい。
<成分(A)>
成分(A)はエポキシ樹脂である。
成分(A)としては、成分(A1):分子内に芳香族環を有する液状の2官能エポキシ樹脂、を主として使用することが好ましい。成分(A1)を使用することにより、マトリックス樹脂組成物の粘度を適した範囲に調整することが出来、かつ硬化物の機械的特性を適正な範囲に調整することができる。
なお、ここでいう「2官能エポキシ樹脂」とは、分子内に2個のエポキシ基を有する化合物を意味する。
成分(A1)が含有する芳香族環としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環等が挙げられる。
具体的には、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、レゾルシン型、ヒドロキノン型、ビスフェノキシエタノールフルオレン型、ビスフェノールフルオレン型、ビスクレゾールフルオレン型、及びノボラック型などのジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;
テレフタル酸型などのジグリシジルエステル型エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また2種以上のエポキシ樹脂を併用しても良い。
これら成分(A1)の中でも、マトリックス樹脂組成物の粘度を適切な範囲に容易に調整することが出来、かつ硬化物の機械的特性を適正な範囲に調整することができる点から、特にエポキシ当量が170g/eq以上、200g/eq以下である液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。
また前記成分(A1)に、分子内に芳香族環を有さない2官能エポキシ樹脂、特に比較的低粘度であり分子内に芳香族環を有さないエポキシ樹脂を併用することが好ましい。具体的には、成分(A2):25℃で粘度が15Pa・sec以下である、分子内に脂肪族環を有し、芳香族環を有さない2官能エポキシ樹脂、を併用することが好ましい。
成分(A2)を併用することにより、後述するトウプリプレグの加熱硬化工程において、後述する成分(C1):プレゲル化剤粒子が成分(A)中に溶解するか、または成分(A)により膨潤しやすくなり、かつマトリックス樹脂組成物の粘度をトウプリプレグの製造に適した範囲に、容易に調整することが出来る。
また成分(A2)の中でも、特に脂肪族環にグリシジル基等のエポキシ基を含む置換基が結合した化合物は、これをマトリックス樹脂組成物に配合することにより、硬化物の耐熱性を高く保つことができるため、より一層好ましい。
脂肪族環にグリシジル基等のエポキシ基を含む置換基が結合した化合物としては、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、メチルテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル等が挙げられるが、上記効果の観点から、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルが特に好ましい。
前記成分(A1)と成分(A2)とを併用する際の好ましい配合比としては、成分(A1)及び(A2)の配合量の和を100質量部とした場合、成分(A1)の好ましい配合量は55〜95質量部、より好ましい配合量は70〜85質量部である。成分(A1)の配合量が95質量部より多い(つまり成分(A2)の配合量が5質量部より少ない)場合、成分(A2)配合の効果、すなわち成分(C1)がトウプリプレグの加熱硬化工程で、成分(A)中に溶解するか、または成分(A)により膨潤しやすくなり、かつマトリックス樹脂組成物の粘度をトウプリプレグの製造に適した範囲に容易に調整出来る効果が十分に得られない可能性がある。また成分(A1)の配合量が55質量部より少ない(つまり成分(A2)の配合量が45質量部より多い)場合、該マトリックス樹脂組成物の硬化物が高い耐熱性や機械的特性を有することが難しくなる可能性がある。
上記成分(A1)及び(A2)以外にも、耐熱性向上や粘度調整を目的として、各種のエポキシ樹脂を用いることができる。例えば、3官能以上のエポキシ樹脂や、脂肪族骨格をもつ前記成分(A2)以外のエポキシ樹脂が挙げられる。3官能のエポキシ樹脂としてはトリアジン骨格含有エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、アミノクレゾール型エポキシ樹脂等が挙げられる。4官能以上のエポキシ樹脂としてはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられる。脂肪族骨格をもつ前記成分(A2)以外のエポキシ樹脂としては、ブタンジオールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
成分(A1)及び(A2)以外のエポキシ樹脂の含有量は、樹脂の種類および配合の目的により好ましい範囲が異なるが、本発明に使用されるマトリックス樹脂組成物の30℃における粘度が前述した範囲となるよう選択されることが好ましい。
<成分(B)>
成分(B)は、エポキシ樹脂硬化剤である。
エポキシ樹脂硬化剤としては、一般にエポキシ樹脂を硬化させうるものであればどのような構造のものでもよい。例えば、アミン、酸無水物(カルボン酸無水物)、フェノール(ノボラック樹脂等)、メルカプタン、ルイス酸アミン錯体、オニウム塩、イミダゾールなどが挙げられる。これらの中でも、本発明で使用されるエポキシ樹脂硬化剤としては、マトリックス樹脂組成物に均一に相溶可能であること、ポットライフに優れることという点で、ルイス酸アミン錯体が好ましい。
ルイス酸アミン錯体としてはハロゲン化ホウ素アミン錯体などが挙げられ、具体的には例えば三フッ化ホウ素・ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素・モノエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素・トリエタノールアミン錯体等の三フッ化ホウ素アミン錯体、三塩化ホウ素・オクチルアミン錯体等の三塩化ホウ素アミン錯体が挙げられる。これらのルイス酸アミン錯体の中でも、特に、エポキシ樹脂に対する溶解性が優れ、これを含むマトリックス樹脂組成物のポットライフに優れ、かつ該マトリックス樹脂組成物が低温・短時間で硬化する点で、三塩化ホウ素アミン錯体が好ましい。
マトリックス樹脂組成物中の三塩化ホウ素アミン錯体の好ましい配合量は、成分(A)100質量部に対して3〜15質量部であり、より好ましくは4〜11質量部である。三塩化ホウ素アミン錯体の配合量が3質量部より少ない場合は、マトリックス樹脂組成物を十分硬化するために150℃より高い温度に加熱する必要があり、高い硬化温度と室温との温度差による大きな硬化収縮に伴い発生する内部応力が、複合材料補強圧力容器の繊維強化複合材料層に蓄積され、複合材料補強圧力容器の破壊圧力等の性能が低下する可能性があったり、ポリエチレンのような比較的安価な樹脂ライナーを使用できなくなったりする問題がある。一方、三塩化ホウ素アミン錯体の配合量が15質量部より多いと、マトリックス樹脂組成物の硬化物の耐熱性が低下する可能性がある。
<成分(C1):プレゲル化剤粒子>
成分(C1)は、トウプリプレグに含まれるマトリックス樹脂組成物中で粒子の状態で存在するプレゲル化剤である。なお本発明において、「プレゲル化剤」とは、ある温度以下では樹脂組成物中で粒子として存在し、それ以上の温度では樹脂組成物中に溶解するものを意味する。詳細は後述する。
本発明のトウプリプレグは、粒子の状態で存在するプレゲル化剤(成分(C1))を強化繊維束中に含むことで、単繊維同士が密に充填することを防ぐ効果が得られる。これにより強化繊維束中の単繊維間の空隙の体積を大きくして、強化繊維束中により多くのマトリックス樹脂組成物を含有(含浸)可能となる。十分にマトリックス樹脂組成物が含浸されていれば、トウプリプレグ表層に存在するマトリックス樹脂組成物を減らすことができ、トウプリプレグのタックを抑えることができる。またさらに、前述した通り、マトリックス樹脂組成物の粘度が低すぎる場合には、トウプリプレグを紙管に巻き取る際に巻き絞りが生じるが、成分(C1)を含むことで強化繊維束中により多くのマトリックス樹脂組成物を含有可能となり、当該巻き絞りの現象も抑制することが出来る。
トウプリプレグの製造方法に関しては後述するが、通常、強化繊維束へマトリックス樹脂組成物を供給し含浸させる際には、マトリックス樹脂組成物の粘度をより低くすするため加温する必要がある。本発明の成分(C1)として使用するプレゲル化剤は、当該加温時の温度では、成分(A)へ溶解せず、また成分(A)により膨潤せず粒子形状を保つものである。
当該加温時の温度(40℃程度である場合が多い)において、成分(C1)が成分(A)へ溶解するか、または成分(A)により膨潤する場合、マトリックス樹脂組成物が大きく増粘し、トウプリプレグ製造の際に、強化繊維束へマトリックス樹脂組成物を供給し含浸させることが困難となる。
前記成分(C1)として、より具体的には、エポキシ当量が170g/eq以上、200g/eq以下である液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂に、均一に分散させ、40℃環境下で3時間加温されても溶解せず、または成分(A)により膨潤しないことが好ましい。
またトウプリプレグから所望の成形品を得るためには、例えばマンドレルに巻かれたトウプリプレグを、それが含有するマトリックス樹脂組成物が硬化する温度で加熱する必要がある。この加熱の際に、成分(C1)が成分(A)に殆ど或いは全く溶解せず、かつ成分(A)により殆ど或いは全く膨潤しない場合は、得られた成形品中に多数の空隙が生じる可能性がある。マトリックス樹脂組成物の成分(C1)が、成分(A)に溶解しているか、または成分(A)により膨潤しているかは、未硬化のマトリックス樹脂組成物を昇温粘度測定することにより概ね判断可能である。具体的には以下の条件でマトリックス樹脂組成物の昇温粘度測定を行い、図1に示す概念図のように、硬化反応に起因する粘度増加までに成分(C1)が成分(A)に溶解するか、成分(A)により膨潤することに起因する粘度増加が生じていれば、成形時の加熱・硬化の際に成分(C1)が成分(A)に概ね溶解可能または成分(A)により膨潤可能であると判断できる。
(マトリックス樹脂組成物の昇温粘度測定条件)
装置:AR−G2(ティー・エー・インスツルメント社製)
使用プレート:35mmΦパラレルプレート
プレートギャップ:0.5mm
測定周波数:10rad/sec
昇温速度:2℃/min
ストレス:3000dynes/cm
トウプリプレグの使用環境温度、即ち比較的低温のマトリックス樹脂組成物中で成分(C1)、すなわちプレゲル化剤粒子が存在するため、これを含むマトリックス樹脂組成物を含浸させてなるトウプリプレグは、表面のタックが高くなり過ぎず、結果的に解舒性や取扱性に優れる。一方、該成分(C1)はトウプリプレグの使用環境温度と、成分(A)と成分(B)の反応(マトリックス樹脂組成物の硬化反応)が進行する温度との間で、マトリックス樹脂組成物中の成分(A)に溶解するか、成分(A)により膨潤するため、該トウプリプレグを使用して作製された繊維強化複合材料は、粒子の存在に起因するボイドを有さず、高い強度を有することができる。したがって、本発明のトウプリプレグを用いて作製された複合材料補強圧力容器は、高い破壊圧力を達成することができる。
マトリックス樹脂組成物中の成分(C1)の配合量は、成分(A)100質量部に対して5〜20質量部であることが好ましい。トウプリプレグのマトリックス樹脂組成物含有量が多くなるほど、またトウプリプレグ中のマトリックス樹脂組成物の粘度が高くなるほど、トウプリプレグのタックを好適な範囲とするために、成分(C1)の配合量を多くする必要がある。成分(C1)の配合量を、成分(A)100質量部に対して5質量部以上とすることで、トウプリプレグのタックが強くなりすぎることを防ぐことができ、20質量部以下とすることで、トウプリプレグのタックが弱くなりすぎて、例えば後述する圧力容器製造時のFW工程で、プリプレグがライナーに張り付かなかったり、滑りが生じてしまう等の不具合を防ぐことができる。また、当該トウプリプレグを使用して作製した繊維強化複合材料中に、空隙が多量に生じることを防ぐことができる。
成分(C1)は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
成分(C1)として、好ましくはビニル重合体粒子が挙げられる。ここでビニル重合体粒子とは、ビニル単量体を重合して得られる高分子のエマルジョンを噴霧乾燥して得られる微粒子を意味する。
プレゲル化剤粒子の内部モルフォロジーについては特に限定されるものではなく、重合体組成、分子量、ガラス転移温度、溶解度パラメーター等の各種因子が均一であっても、コアシェル構造やグラディエント構造等、一般的に認識されている様々な粒子モルフォロジーを有していてもよい。プレゲル化剤粒子は、いわゆるコアシェル粒子の様な2層以上の同心円状のモルフォロジーを有する多段構造であることが好ましい。プレゲル化剤粒子の内部モルフォロジーを制御する方法としては、例えば、粒子の内側と外側で溶解度パラメーターや分子量の異なる多層構造粒子にする方法が挙げられる。この方法は、マトリックス樹脂組成物のポットライフとゲル化速度とを両立し易くなることから好ましい。例えば、プレゲル化剤粒子の最外層(シェル)を構成する成分を比較的熱に対して安定、すなわち成分(A)に溶解しづらい成分とし、内層(コア)を成分(A)に溶解しやすい成分とすることで、ある閾値温度未満では熱に対して安定、かつ閾値温度以上で容易に成分(A)に溶解可能となる。
ラジカル重合可能なビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル−メタクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル単量体;
ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;
グリシジル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート等の、その他の官能基含有(メタ)アクリレート;
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、イソクロトン酸、サリチル酸ビニロキシ酢酸、アリロキシ酢酸、2−(メタ)アクリロイルプロパン酸、3−(メタ)アクリロイルブタン酸、4−ビニル安息香酸等のカルボキシル基含有ビニル単量体;
(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;
(メタ)アクリルアミド;
モノメチルイタコネート、モノエチルイタコネート、モノプロピルイタコネート、モノブチルイタコネート、ジメチルイタコネート、ジエチルイタコネート、ジプロピルイタコネート、ジブチルイタコネート等のイタコン酸エステル;
モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、モノプロピルフマレート、モノブチルフマレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジプロピルフマレート、ジブチルフマレート等のフマル酸エステル;
モノメチルマレート、モノエチルマレート、モノプロピルマレート、モノブチルマレート、ジメチルマレート、ジエチルマレート、ジプロピルマレート、ジブチルマレート等のマレイン酸エステル;及び
ビニルピリジン、ビニルアルコール、ビニルイミダゾール、ビニルピロリドン、酢酸ビニル、1−ビニルイミダゾール等のビニル単量体;
ビニルピリジン、ビニルアルコール、ビニルイミダゾール、ビニルピロリドン、酢酸ビニル、1−ビニルイミダゾール等の、その他のビニル単量体、
が挙げられる。なお、本発明において(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを示す。
これらの単量体は、1種を単独で使用、又は2種以上を併用することができる。
これらのうち、成分(C1)がコアシェル構造である場合、コアを構成する重合体は、上述した(メタ)アクリレートを原料とするものが好ましく、シェルを構成する重合体は、上述した(メタ)アクリレート、その他の官能基含有(メタ)アクリレート、及びカルボキシル基含有ビニル単量体から選択される単量体を原料とするものが好ましい。
ビニル重合体粒子は、例えばPCT公開パンフレットWO2010/090246等に記載の方法に準じ、上述したビニル単量体に、重合開始剤、乳化剤、分散安定剤、連鎖移動剤などを加えて製造することができる。
また当該成分(C1)のレーザー回折・散乱式粒度分析計で測定した1次粒子のメディアン径(D50)は0.1μm〜2.0μmであることが好ましく、さらに0.5μm〜1.0μmであることがより好ましい。成分(C1)のメディアン径(D50)が0.1μm未満のプレゲル化剤をした場合、小径化に伴い成分(C1)がより熱に対して不安定、すなわち成分(A)へ溶解しやすくなってしまうため、マトリックス樹脂組成物調製中やトウプリプレグ作製中に成分(C1)が成分(A)へ溶解してしまう可能性がある。一方、成分(C1)として1次粒子のメディアン径(D50)が2.0μmより大きいプレゲル化剤をした場合、マトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸する際に強化繊維表面で成分(C1)が濾別されて十分に強化繊維束内部に行き届かず、トウプリプレグのタックを抑える効果が十分に得られない可能性がある。
成分(C1)を、他の成分と混練してマトリックス樹脂組成物を調製する際には、公知の混練装置を用いることができる。当該公知の混練装置としては、例えば、らいかい機、アトライタ、プラネタリミキサー、ディゾルバー、三本ロール、ボールミル及びビーズミルなどが挙げられる。また、これらは2種以上を併用することができる。
本発明に用いられるマトリックス樹脂組成物を得るために混練を行う場合、成分(C1)をマトリックス樹脂組成物中に均一に分散させるために、予め成分(C1)を少量の他の成分と混練してマスターバッチ化しておき、ここに後で残りの成分を追加することが好ましい。また、混練による剪断発熱等で、混練物の温度が上がる場合には、水冷や混練速度の調節などにより、混練物の温度を上げない工夫をすることが好ましい。
<成分(C2):プレゲル化剤粒子の溶解物>
成分(C2)は、マトリックス樹脂組成物、より具体的には成分(A)に溶解した状態で存在するプレゲル化剤である。当該プレゲル化剤粒子としては、例えば成分(C1)の例として前述したものから選択することができるが、成分(C1)と同じものでもよく、異なるものでもよい。(なお、成分(C2)の原料となるプレゲル化剤粒子を「成分(C2’):プレゲル化剤粒子」と称することがある。)成分(A)に溶解した状態とは、プレゲル化剤が成分(A)により膨潤した後、プレゲル化剤を構成する成分、例えばビニル重合体が成分(A)中に溶解した状態を指す。
通常マトリックス樹脂組成物は、加熱されることにより粘度が大きく低下する。例えば複合材料補強圧力容器の製造における加熱硬化工程で、樹脂フローによりトウプリプレグ中のマトリックス樹脂組成物が不足して、得られる繊維強化複合材料中にボイドが多く発生したり、繊維強化複合材料中のマトリックス樹脂組成物の量が変化したりして、得られる複合材料補強圧力容器の性能や品質に悪影響を及ぼす場合がある。
マトリックス樹脂組成物に、ビニル重合体の様な長い分子鎖を有す化合物を配合すると、これらの分子間相互作用により、加熱に伴う粘度低下を抑制することが出来る。該相分子間互作用は分子鎖がより長い、言い換えると分子量がより大きい化合物ほど大きくなる。すなわち、分子鎖がより長い化合物ほど少量の添加で加熱に伴うマトリックス樹脂組成物の粘度低下を十分に抑制することが出来る。
したがって、成分(C2)の原料として使用するプレゲル化剤粒子は、前記成分(C1)の例として挙げたビニル単量体を重合してなる重合体の中でも、比較的分子量の大きいものが好ましい。具体的には重量平均分子量が30万〜150万であることが好ましく、さら50万〜90万であることが一層好ましい。
また当該プレゲル化剤粒子がコアシェル構造を有し、コア成分とシェル成分とで重量平均分子量が異なる場合は、「コア成分の重量平均分子量とプレゲル化剤粒子中のコア成分の比率との積」と「シェル成分の重量平均分子量とプレゲル化剤粒子中のシェル成分の比率との積」との和を、当該コアシェル構造を有するプレゲル化剤粒子の重量平均分子量とすればよい。
重量平均分子量が30万より小さいプレゲル化剤粒子を成分(C2)の原料として使用した場合、加熱に伴うマトリックス樹脂組成物の粘度低下を十分に抑制することが困難になる傾向がある。この場合、当該粘度低下抑制のためにはより多くの成分(C2)が必要となり、結果として、マトリックス樹脂組成物の、トウプリプレグの使用環境温度付近の粘度も大きく上昇してトウプリプレグのタックが強くなり、紙管からの解舒性や、FW工程における工程通過性、並びにトウプリプレグ自体の形態保持性に問題が生じる場合がある。一方、重量平均分子量が150万より大きいプレゲル化剤粒子を成分(C2)の原料として使用した場合、プレゲル化剤粒子を構成する重合体の分子間相互作用が強くなり過ぎ、マトリックス樹脂組成物の取り扱いが困難となったり、トウプリプレグの製造が困難となる等、問題が生じる可能性がある。
成分(C2)の原料として使用するプレゲル化剤の1次粒子のメディアン径(D50)も、前述した成分(C1)と同様0.1μm〜2.0μmであることが好ましく、さらに0.5μm〜1.0μmであることがより好ましい。0.1μm未満の場合、マトリックス樹脂組成物調製中の粉じん爆発の恐れが非常に高くなってしまう等、取扱いが困難になってしまうおそれがある。また2.0μmより大きい場合、大径化に伴いプレゲル化剤粒子が成分(A)へ溶解しづらくなり、マトリックス樹脂組成物の調製に長時間を要してしまう可能性がある。
成分(C2)の配合量は、成分(A)100質量部に対して1〜5質量部が好ましく、1.5〜3質量部がより好ましい。成分(C2)の配合量を1〜5質量部とすることで、トウプリプレグの加熱硬化工程におけるマトリックス樹脂組成物の樹脂フローを抑制することが出来、結果としてボイドが少なく、マトリックス樹脂組成物の含有量も安定した、高強度の繊維強化複合材料を得ることができる。つまり、このようなトウプリプレグを使用することにより、高強度、高耐圧性かつ高品質の複合材料補強圧力容器を、安定的に得ることが出来る 成分(C2)の配合量が1質量部より少ないと、加熱に伴うマトリックス樹脂組成物の粘度低下を十分に抑制することが出来ず、当該マトリックス樹脂組成物を含むトウプリプレグを用いて作製された繊維強化複合材料には、樹脂フローに起因するボイドが生じ、十分な強度を有することができず、このような繊維強化複合材料を用いて作製された複合材料補強圧力容器は破壊圧力等の性能が低下してしまう可能性がある。一方、成分(C2)の配合量が5質量部より多いと、プレゲル化剤の分子間相互作用が強く成り過ぎ、これを含むマトリックス樹脂組成物の粘度が高くなるため取り扱いが困難となったり、強化繊維束への含浸性が低下してトウプリプレグの製造が困難となったりする問題が生じる場合がある。
成分(C2)の配合により、マトリックス樹脂組成物の加熱時の粘度低下を抑制し、硬化時の樹脂フローを抑制することができるかどうかは、マトリックス樹脂組成物の昇温粘度測定における最低粘度でも判断することが出来る。当該最低粘度は0.12〜2.00Pa・secの範囲であることが好ましく、0.15〜1.40Pa・secの範囲であることが一層好ましい。当該最低粘度が0.12Pa・sec未満であると、加熱に伴うマトリックス樹脂組成物の粘度低下を十分に抑制することが出来ず、作製した複合材料補強圧力容器における繊維強化複合材料層部分に樹脂フローに起因するボイドが生じ、当該圧力容器の破壊圧力等の性能が低下してしまう可能性がある。一方、当該最低粘度が2.00Pa・secよりも大きいと、トウプリプレグ作製時にマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に供給し、含浸させることが困難となる場合がある。
成分(C2)として使用するプレゲル化剤粒子は、1種類を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
成分(C2)を含むマトリックス樹脂組成物を製造するには、例えばその原料となるプレゲル化剤粒子を、マトリックス樹脂組成物の他の成分と混練した後、混練物を当該プレゲル化剤粒子の溶解温度以上に加熱して溶解させればよい。成分(C2)を他の成分と混練する際には、例えば、らいかい機、アトライタ、プラネタリミキサー、ディゾルバー、三本ロール、ボールミル及びビーズミルなどの公知の混練装置を用いることが出来る。これらは2種以上を併用することができる。
また、成分(C2)がその効果を奏するには、マトリックス樹脂組成物中に比較的均一に存在する必要がある。そのために、成分(C2)の原料として使用するプレゲル化剤粒子を少量の他の成分、特に少量の成分(A)と混練してマスターバッチ化しておくことが好ましい。また、混練による剪断発熱等で、混練物の温度が上がる場合には、水冷や混練速度の調節などにより混練中に温度を上げない工夫をすることが好ましい。
当該マスターバッチを、残りの成分(A)に加え、室温付近から撹拌しながら徐々に昇温し、さらに100〜150℃に達したら昇温を止め、当該温度で30分から5時間程度撹拌することで、比較的均一に成分(C2)が存在するマトリックス樹脂組成物を得ることが出来る。
<任意成分>
本発明に使用するマトリックス樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、周知の各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤とは、熱可塑性エラストマー、エラストマー微粒子、コアシェル型エラストマー微粒子、希釈剤、シリカ等の無機粒子、カーボンナノチューブ等の炭素質成分、リン化合物等の難燃剤、脱泡剤等であるがこれらに限らない。
中でも、マトリックス樹脂組成物の硬化物の耐熱性を低下させることなく靱性を向上させるために、コアシェル型エラストマー微粒子を添加することが好ましい。コアシェル型エラストマー微粒子として市販品として入手可能なものとしては「メタブレン」(三菱レイヨン(株)製)や、「スタフィロイド」(アイカ工業(株)製)、「パラロイド」(ダウケミカル社製)等が挙げられる。コアシェル型エラストマー微粒子はエポキシ樹脂に予め分散されたマスターバッチ型のエポキシ樹脂としても入手することができ、このようなコアシェル型エラストマー分散エポキシ樹脂としては、「カネエース」((株)カネカ製)や「アクリセットBPシリーズ」((株)日本触媒製)等が挙げられる。マトリックス樹脂組成物の調製を容易にするだけでなく、マトリックス樹脂組成物中のコアシェル型エラストマー粒子の分散状態を良好にすることが出来るので、コアシェル型エラストマー粒子が分散されたエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
<その他>
前述のように、本発明に使用するマトリックス樹脂組成物は、前記成分(A)、(B)、(C1)及び(C2)を含むが、成分(C2)原料のプレゲル化剤粒子としてアクリル系樹脂からなる粒子を使用した場合、マトリックス樹脂組成物中には成分(C2)としてアクリル系樹脂が存在することになる。ここで「アクリル系樹脂」とは、(メタ)アクリレート、その他の官能基含有(メタ)アクリレート、及びカルボキシル基含有ビニル単量体から選択される単量体を原料とする重合体を表す。
併せて成分(C1)として、前述した単量体成分のうち成分(C11)アクリル系樹脂からなるコアシェル型粒子を使用した場合、本発明のトウプリプレグは以下のように表現できる。
すなわち下記成分(A)、成分(B)、成分(C11)、及び成分(C21)を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸してなるトウプリプレグである。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
成分(C11):アクリル系樹脂からなるコアシェル粒子
成分(C21):前記マトリックス樹脂組成物中に溶解しているアクリル系樹脂。
但し該アクリル系樹脂は、前記成分(C11)を構成するものと同じであってもよく、異なっていても良い。
なお成分(A),(B),(C11)及び(C21)を含むマトリックス樹脂組成物は、前述した成分(A),(B),(C1)及び(C2)を必須成分とするマトリックス樹脂組成物と同様に、前述した任意成分を含有していても良い。
<トウプリプレグの製造方法>
本発明のトウプリプレグは、前記成分(A)、(B)、(C1)及び(C2)を含むマトリックス樹脂組成物を調製し、これを強化繊維束に含浸させ、さらに紙管などのボビンに巻き取ることにより製造することができる。
具体的には、下記成分(A)に成分(C2’)を溶解し、更に成分(C1)及び成分(B)を配合することによりマトリックス樹脂組成物を調製する調製工程、
前記マトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸させ、樹脂含浸強化繊維束を得る含浸工程、
前記樹脂含浸強化繊維束をボビンに巻き取る巻取工程、
を有するトウプリプレグの製造方法。
成分(A):エポキシ樹脂
成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
成分(C1):プレゲル化剤粒子
成分(C2’):プレゲル化剤粒子。但し、該プレゲル化剤粒子は、前記成分(C1)と同じものでもよく、異なるものでもよい。
なお前述した様に、成分(C1)及び成分(C2’)はいずれも、予め少量の成分(A)と混練してマスターバッチ化しておき、これを使用することが好ましい。また各成分を混合する際の剪断発熱の影響を受けないように、成分(B)はこれら必須成分のうち最後に加えることが好ましい。
前記マトリックス樹脂組成物の強化繊維束への含浸工程および巻取工程には、公知の方法を採用することができるが、中でも以下の工程(1)〜(4)を含むことが好ましい。
工程(1):スプールから引き出した強化繊維束に張力をかけ、(必要に応じて加熱し)拡幅する。
工程(2):拡幅された強化繊維束の少なくとも片面に、(必要に応じて加熱した)マトリックス樹脂組成物を定量(強化繊維束単位量当たり、マトリックス樹脂組成物が所定の量となるように)供給する。
工程(3):供給したマトリックス樹脂組成物を強化繊維束へ含浸させ、樹脂含浸強化繊維束とする。
工程(4):樹脂含浸強化繊維束を(必要に応じて室温程度まで冷却して)紙管等のボビンに巻き取る。
マトリックス樹脂組成物を含浸させる強化繊維束は、マトリックス樹脂組成物との接触面積が広くなるため、拡幅され扁平形状であることが好ましい。
強化繊維束を拡幅する方法としては、円筒バーに擦過させる方法;振動を加える方法;押しつぶす方法などが挙げられる。
さらに強化繊維束を拡幅する際は加熱しておくことが好ましく、強化繊維に付着しているサイズ剤の種類によるが、通常、50〜150℃程度に強化繊維束を加熱することがより好ましい。また拡幅時に強化繊維束を加熱しておくことにより、続く工程(3)において該強化繊維束に含浸させるマトリックス樹脂組成物の温度が低下しないという効果もある。加熱方法に特に制限はなく、加熱体との接触加熱、及び赤外線加熱、雰囲気加熱等の非接触加熱法がいずれも使用可能である。
前記工程(1)における強化繊維束の拡幅は、インラインで実施してもオフラインで実施してもよい。例えば市販の拡幅されたテープ状強化繊維束は、オフラインで拡幅された強化繊維束とみなされる。
強化繊維束へのマトリックス樹脂組成物の供給方法としては、トウをレジンバス内に通過させてマトリックス樹脂組成物を含浸させた後、オリフィス、ロール等によって余剰のマトリックス樹脂組成物を搾り取り樹脂含有量を調整する「レジンバス法」;回転ロール上にマトリックス樹脂組成物層を形成し、これをトウに転写するような転写ロール式の含浸法(例えばドクターブレードを持つ回転ドラムによる含浸法)である「回転ロール法」;紙上にマトリックス樹脂層を形成し、トウに転写する「紙上転写法」;特開平09−176346号公報、特開2005−335296号公報、特開2006−063173号公報等に記載された「ノズル滴下法」;特開平08−073630号公報、特開平09−031219号公報等に記載された「樹脂接触並びにトウ移動法」などが挙げられる。
これらの中でも、マトリックス樹脂組成物の供給量の制御や実施の容易さの点で、回転ロール法や、樹脂接触並びにトウ移動法が好ましい。また、強化繊維束の幅は通常安定しておらず、その広がり方にはばらつきがある。従って特開平8−73630号公報に記載の通り、強化繊維束を拡幅した後、マトリックス樹脂組成物の接触直前あるいは接触時にトウ幅を狭めて安定化することが効果的である。具体例としては、樹脂吐出口、塗工部、又はその直前の位置に所定幅の溝を設けて、強化繊維束を、該溝内を走行させて強化繊維束の幅を狭める方法がある。
強化繊維束へのマトリックス樹脂組成物の含浸は、公知の方法にて行うことができる。中でも加熱ロールや熱板等の加熱体に擦過させる方法;マトリックス樹脂組成物が供給された強化繊維束を、加熱炉内すなわち加熱雰囲気内を空走させる方法;赤外線加熱等の非接触加熱手段で加熱する方法が好ましい。強化繊維束へマトリックス樹脂組成物が供給されてから、加熱体により加熱されるまでの間、及び加熱体と加熱体との間で強化繊維束やマトリックス樹脂組成物の温度が下がらないように、非接触加熱手段で加熱しておくことがより一層好ましい。
また、強化繊維束へマトリックス樹脂組成物を含浸させる工程において、強化繊維束へ外力を加えて強化繊維束を構成するフィラメントをロール表面で横移動させること等により、強化繊維束の断面形状を変化させることが好ましい。このような操作により、フィラメント同士の相対位置を変化させて、マトリックス樹脂組成物とフィラメントの接触機会を増やすことができる。結果、単なる加圧や毛細管現象による含浸効果を上回る、均一な含浸効果を上げることができる。
フィラメント同士の相対位置を変化させる操作として、具体的には、強化繊維束を折り畳む、強化繊維束を拡幅する、強化繊維束を縮幅する、又は強化繊維束を加撚する等が挙げられる。これらの操作において、折り畳み操作と加撚操作は、縮幅操作と同様に強化繊維束の幅を狭める傾向にある。そして強化繊維束の幅を狭める作用を有する操作と、強化繊維束の幅を拡大する操作とを併用すると、均一含浸の効果がより高くなる。なお、加撚はマトリックス樹脂組成物の含浸時に行なえばよく、含浸後に撚りのない状態が必要である場合には、含浸後に撚り戻しをすればよい。また、加撚と同時にあるいは直後に擦過を加えれば、強化繊維束の幅は広がる傾向となり、更に強化繊維束の厚さ方向にマトリックス樹脂組成物が移動するため、含浸の均一性は高くなる。
フィラメントをロール表面で横移動させる際、強化繊維束の走行速度未満の周速で回転するロールに強化繊維束を接触させて擦過させることは、毛羽の堆積防止やロールのクリーニングの面から有用である。擦過されていれば強化繊維束はロール表面で絡まりつくこともなく、またロールは強化繊維束で擦られ、かつ回転しているので強化繊維束と接触する面は常にクリーニングされている状態となる。ただしロールの周速は強化繊維束の走行速度の50%以上99%以下とすることが好ましく、80%以上95%以下とすることがより好ましい。ロールの周速が強化繊維束の走行速度に対し50%未満であると強く擦過されることで強化繊維束が毛羽立つ場合があり、後の工程で巻きつきが生じたり、ボビンに巻き取られたトウプリプレグを解舒する際に問題が生じる場合がある。
マトリックス樹脂組成物が強化繊維束に均一に含浸されると、作製した繊維強化複合材料の機械的特性が向上し、本発明の効果が十分に得られる。
マトリックス樹脂組成物を均一に含浸させた強化繊維束は、紙管への巻取り工程までに室温程度まで冷却しておくことが好ましい。十分に冷却しない状態で、弛緩などのボビンに巻き取ってしまうと、マトリックス樹脂組成物が低粘度であるため巻き取る際に滑りが生じ巻き形態が乱れてしまったり、トウプリプレグのスプールの中で温度が高い状態が比較的長時間続いてしまうため、トウプリプレグのシェルフライフが短くなることもある。強化繊維束の冷却は、冷却体への擦過や非接触冷却手段等、公知の冷却手段を使用して行うことができる。
<複合材料補強圧力容器の製造方法>
本発明の複合材料補強圧力容器の製造方法は、上記の様に作製したトウプリプレグをライナーに巻き付けるフィラメントワインディング工程(FW工程)と、該FW工程を経て得られた圧力容器中間体を加熱し、トウプリプレグが含むマトリックス樹脂組成物を硬化させる硬化工程とを含む。
(FW工程)
FW工程は、作製したトウプリプレグを回転するライナーに巻き付ける工程である。なおトウプリプレグをライナーに巻き付けて得られたものを「圧力容器中間体」と称すことがある。
フィラメントワインディング機(FW機)としては、従来公知のものを使用できる。複合材料補強圧力容器を作製する場合には、ライナーをマンドレルとしてトウプリプレグを巻き付ける。FW機は、1本のトウプリプレグをマンドレルに巻き付けるものであってもよいし、複数本のトウプリプレグを同時にマンドレルに巻き付けられるものであってもよい。
ライナーにトウプリプレグを巻き付ける際には、強化繊維の異方性材料としての特質を生かすため、異なる特性を有する複合材料が積層された構造となるように巻き付けることが好ましい。トウプリプレグからなる層が硬化したものを繊維強化複合材料層という。
本発明においては、繊維強化複合材料層の構成や厚み、トウプリプレグをライナーへ巻き付ける角度は、容器の用途や形状、容器に要求される耐圧性能等に応じて自由に選択することができる。
トウプリプレグの巻き付け方としては、フープ巻きとヘリカル巻きが知られている。慣用として、鏡部及び胴部を補強する繊維強化複合材料層を「ヘリカル層」、胴部を補強する繊維強化複合材料層を「フープ層」と称する。
(硬化工程)
硬化工程は、圧力容器中間体を加熱し、トウプリプレグに含まれるマトリックス樹脂組成物を硬化させる工程である。硬化温度、硬化時間、そして昇温・降温速度は、マトリックス樹脂組成物の配合組成に応じて決定される。加熱する方法は、真空バッグとヒーターを用いる方法、熱収縮テープを巻き付けてオーブン中で加熱して、加熱と加圧を同時に行う方法、ライナー内部に加圧物質を充填し内圧をかけながら加熱する方法などが用いられる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
各例で用いた樹脂組成物の原料、調製方法、および各物性の測定方法を以下に示す。各マトリックス樹脂組成物の組成、および物性の測定結果を表3にまとめて示す。なお、表3中の各成分の数値は、マトリックス樹脂組成物に配合する各成分の質量部数を表す。
<原料>
<成分(A)>
jER828
「製品名」jER828
「成分」ビスフェノールA型エポキシ樹脂(液状の2官能エポキシ樹脂)
(エポキシ当量:189g/eq)
「供給元」三菱化学株式会社
CY184
「製品名」Araldite CY184
「成分」ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル
(エポキシ当量:158g/eq)
「供給元」ハンツマン・ジャパン株式会社
<成分(B)>
DY9577
「製品名」Accelerator DY9577
「成分」三塩化ホウ素アミン錯体
「供給元」ハンツマン・ジャパン株式会社
<成分(C1)、及び成分(C2)>
ビニル重合体粒子P
<任意成分>
BYK−A506
「製品名」BYK−A506
「成分」破泡性ポリシロキサン溶液
「供給元」ビックケミージャパン株式会社
<ビニル重合体粒子Pの製造方法>
温度計、窒素ガス導入管、攪拌棒、滴下漏斗、冷却管を装備した2リットルの4つ口フラスコに、イオン交換水584.0gを入れ、30分間窒素ガスを充分に通気し、純水中の溶存酸素を置換した。窒素ガス通気を停止した後、200rpmで攪拌しながら80℃に昇温した。内温が80℃に達した時点で、表1に記載の単量体混合物(M1)、開始剤として過硫酸カリウム0.40g、さらにイオン交換水19.6gを添加し、1時間重合を行った。当該単量体混合物(M1)からなる重合体がビニル重合体粒子のシードとなる。
引き続き、表1に記載の単量体混合物(M2)を滴下によって投入した。当該単量体混合物(M2)からなる重合体がビニル重合体粒子のコアとなる。
その後、単量体混合物(M2)の重合による発熱が見られなくなった後1時間保持し、単量体混合物(M3)を投入した。当該単量体混合物(M3)からなる重合体がビニル重合体粒子のシェルとなる。さらに単量体混合物(M3)投入後、80℃にて1時間攪拌を継続して、重合体粒子分散液(L1)を得た。
重合体粒子分散液(L1)をL−8型スプレードライヤー(大河原化工機(株)製)を用いて噴霧乾燥し(入口温度/出口温度=150/65℃、ディスク回転数25000rpm)、ビニル重合体粒子Pを得た。なお、一次粒子のメディアン径(D50)は約0.7μmであった。
表1中の略称は以下の化合物を示す。
MMA:メチルメタクリレート
n−BMA:n−ブチルメタクリレート
「ペレックスOT−P」:花王(株)製、商品名。ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム
MAA:メタクリル酸(三菱レイヨン(株)製)
「エマルゲン106」:花王(株)製、商品名。ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤。HLB=10.5
〔実施例および比較例〕
<実施例1>
(マトリックス樹脂組成物の調製)
表3に記載の各成分を記載の割合で含有するマトリックス樹脂組成物を調製した。まずjER828とビニル重合体粒子Pとを、質量比で1:1の割合で混合した。当該混合物を三本ロールミルを使用してさらに混練して、マスターバッチとした。ガラスフラスコにマスターバッチ6質量部(jER828を3質量部、及びビニル重合体粒子Pを3質量部含む)とjER828を87質量部秤量し、オイルバスで40℃〜50℃に加温しながら均一になるまで撹拌した後、オイルバスの設定温度を約120℃に昇温してさらに約3時間、内容物を加温し撹拌した。内容物が透明となりビニル重合体粒子PがjER828に均一に溶解したことを確認した後、ガラスフラスコをオイルバスから取り出し内容物が40℃以下となるまで放冷した。そして、当該ガラスフラスコにマスターバッチ20質量部(jER828を10質量部、及びビニル重合体粒子Pを10質量部含む)、DY9577を質量10部、BYK−A 506を0.3質量部秤量した。ウォーターバスを用いてガラスフラスコの内容物を40℃〜50℃に加温しながら均一になるまで撹拌し、マトリックス樹脂組成物を得た。
(マトリックス樹脂組成物の昇温粘度測定)
以下の通りマトリックス樹脂組成物の昇温粘度測定を行った。得られた測定結果の30℃時の粘度をマトリックス樹脂組成物の「30℃時の粘度」とし、さらに得られた測定結果において最も小さい粘度をマトリックス樹脂組成物の「最低粘度」、その時の温度をマトリックス樹脂組成物の「最低粘度時の温度」とした。結果を表3に示す。
装置:AR−G2(ティー・エー・インスツルメント社製)
使用プレート:35mmΦパラレルプレート
プレートギャップ:0.5mm
測定周波数:10rad/sec
昇温速度:2℃/min
ストレス:3000dynes/cm
(トウプリプレグの作製)
強化繊維束として、フィラメント数30,000本の炭素繊維「37−800WD」(三菱レイヨンカーボンファイバーアンドコンポジッツ社製、引張強度5520MPa、引張弾性率255GPa)を用いてトウプリプレグを作製した。
具体的な作製方法を以下に示す。クリールから強化繊維束を送り出し、表面温度が100℃程度に加温された開繊バーを通し、幅10から15mmに拡幅させた。拡幅された強化繊維束を、40℃程度に加温されたマトリックス樹脂組成物が塗工されたタッチロールに接触させ、強化繊維束にマトリックス樹脂組成物を供給した。マトリックス樹脂組成物が供給された強化繊維束を、50〜60℃程度に加温された含浸ロールに擦過させることにより、マトリックス樹脂組成物を強化繊維束内部まで含浸させた後、ワインダーにて紙管に巻き取りトウプリプレグを得た。なお、ドクターブレードとタッチロール間のクリアランスを調整することによって、強化繊維束に対する樹脂の付着量(即ちトウプリプレグの樹脂含有率)を約24質量%に調整した。
(トウプリプレグの解舒性、形態保持性、工程通過性の評価)
後述の方法で複合材料補強圧力容器の製造する際、トウプリプレグの解舒性、形態保持性、工程通過性、いずれも問題が生じることなく複合材料補強圧力容器が製造できた場合は「○」、少し問題はあるが凡そ安定して複合材料補強圧力容器を製造できた場合は「△」、いずれかに明らかな問題が生じた場合は「×」と評価した。
なお「解舒性に問題が生じる」とは、FW工程においてスプールに巻き取られたトウプリプレグを解舒する際にリンガーが発生する、すなわちトウプリプレグの強化繊維束を構成する単糸が、下層のトウプリプレグ表面のマトリックス樹脂組成物のベタツキにより絡め取られ、上手く解舒出来ない状態を意味し、「形態保持性に問題が生じる」とは、FW工程においてテープ状のトウプリプレグが工程通過中に折り畳まれ細い紐状になり、マンドレルに巻き付けた際に巻きが大きく乱れてしまったり、巻かれたトウプリプレグの間に大きな隙間が生じてしまったりする状態を意味し、「工程通過性に問題が生じる」とは、FW工程においてトウプリプレグが各ロールと擦過し、通過する際にロール表面に付着したマトリックス樹脂組成物により、トウプリプレグの強化繊維束を構成する単糸が絡め取られてしまい、当該巻きつきが原因でトウプリプレグが工程を通過できない状態を意味する。
これらの評価結果を表3に示す。
(複合材料補強圧力容器の製造)
FW装置を用いて、先に得られたトウプリプレグを、容量9リットルのアルミニウム製ライナー(全長540mm、胴部長さ415mm、胴部外径163mm、胴部の中央での肉厚3mm)に巻き付けた。使用したアルミニウム製のライナーは、JIS H 4040のA6061−T6に規定されるアルミニウム素材に熱処理を施した材料からなるものである。
トウプリプレグは、紙管から巻き出し、ガイドロールを介して位置を調整した後に、以下のようにしてライナーへ巻き付けた。
まず、ライナーの胴部に接する第一層目として、胴部上にライナーの回転軸方向に対し88.6°をなすよう、トウプリプレグを巻き付けた。その後、ライナーの回転軸方向に対し11.0°の角度でトウプリプレグを巻き付け、ライナーの鏡部を補強するヘリカル層を積層し、以降、表2に示す「ラミネートNo.3〜8」に記載の角度でトウプリプレグを順次をライナーに巻き付けて、圧力容器中間体を作製した。
得られた圧力容器中間体をFW装置から外し、加熱炉内に吊り下げて、炉内温度を2℃/分で130℃まで昇温した後、130℃で2時間保持して硬化させた。その後、炉内温度を1℃/分で60℃まで冷却し、複合材料補強圧力容器を得た。
(複合材料補強圧力容器の破壊圧力測定試験)
水圧破壊試験機に複合材料補強圧力容器をセットし、該圧力容器内に水を満たした後、昇圧速度15MPa/分で複合材料補強圧力容器に水圧を負荷し、複合材料補強圧力容器が破裂したときの水圧を記録して複合材料補強圧力容器の破壊圧力とした。結果を表3に示す。
(複合材料補強圧力容器の断面観察)
得られた複合材料補強圧力容器の表2記載のラミネートNo.1にあたる繊維強化複合材料層部分を切り出し、その断面を観察した。切り出した繊維強化複合材料層部分は、断面観察前にREFINE−POLISHER APM−122(リファインテック株式会社製)を使用して観察面の研磨を行った。断面の観察には工業用顕微鏡ECLIPSE LV100ND(株式会社ニコン製)を使用した。結果を図2に示す。
(トウプリプレグのタック試験)
トウプリプレグのタックは以下のタック試験で測定した。得られた平均最大ストレス値をトウプリプレグのタックを示す値とした。結果を表3に示す。
装置:タックテスターTA−500(株式会社ユービーエム製)
プランジャーの試料(測定対象であるプリプレグ)との接触面積:約3.1cm
プランジャー押しつけ時間:10秒
プランジャー押しつけ荷重:90,000Pa
プランジャー上昇速度:1mm/秒
測定温度:23℃
測定湿度:50%RH
手順:
1)トウプリプレグを試料台に置き固定する。この際、プランジャーと接触するトウプリプレグの面は当該トウプリプレグが紙管に巻かれていた時に見えていなかった面(即ち紙管側の面)とする。
2)プランジャーをトウプリプレグに90kPa荷重をかけ10秒間押し当てる。
3)プランジャーを1mm/秒で上昇させる。
4)プランジャーを上昇させる間のストレス値の最大値を最大ストレス値とし、合計5回測定して 得られた最大ストレス値の平均値を平均最大ストレス値とした。結果を表3に示す。
<実施例2>
表3に記載の各成分を記載の割合で含有するマトリックス樹脂組成物を調製した。まずjER828とビニル重合体粒子Pとを質量比で1:1の割合で混合した。当該混合物を三本ロールミルを使用してさらに混練して、マスターバッチとした。ガラスフラスコにマスターバッチ6質量部(jER828を3質量部、及びビニル重合体粒子Pを3質量部含む)とjER828を62質量部、CY184を25質量部秤量し、オイルバスで40℃〜50℃程度に加温しながら均一になるまで撹拌した後、オイルバスの設定温度を約120℃に昇温してさらに約3時間、内容物を加温し撹拌した。内容物が透明となりビニル重合体粒子PがjER828、及びCY184に均一に溶解したことを確認した後、ガラスフラスコをオイルバスから取り出し内容物が40℃以下となるまで放冷した。そして、当該ガラスフラスコにマスターバッチ20質量部(jER828を10質量部、及びビニル重合体粒子Pを10質量部含む)、DY9577を質量10部、BYK−A 506を0.3質量部秤量した。ウォーターバスを用いてガラスフラスコの内容物を40℃〜50℃程度に加温しながら均一になるまで撹拌し、マトリックス樹脂組成物を得た。
マトリックス樹脂組成物の昇温粘度測定、トウプリプレグの作製、トウプリプレグの解舒性、形態保持性、工程通過性の評価、複合材料補強圧力容器の製造、複合材料補強圧力容器の破壊圧力測定試験、複合材料補強圧力容器の断面観察、トウプリプレグのタック試験はいずれも実施例1と同様に実施した。結果を表3及び図3に示す。
<実施例3>
表3に記載の各成分を記載の割合で含有するマトリックス樹脂組成物を調製した。まずjER828とビニル重合体粒子Pとを質量比で1:1の割合で混合した。当該混合物を三本ロールミルを使用してさらに混練して、マスターバッチとした。ガラスフラスコにマスターバッチ6質量部(jER828を3質量部、及びビニル重合体粒子Pを3質量部含む)とjER828を57質量部、CY184を25質量部秤量し、オイルバスで40℃〜50℃に加温しながら均一になるまで撹拌した後、オイルバスの設定温度を約120℃としてさらに約3時間、内容物を加温し撹拌した。内容物が透明となりビニル重合体粒子PがjER828、及びCY184に均一に溶解したことを確認した後、ガラスフラスコをオイルバスから取り出し内容物が40℃以下となるまで放冷した。そして、当該ガラスフラスコにマスターバッチ30質量部(jER828を15質量部、及びビニル重合体粒子Pを15質量部含む)、DY9577を質量10部、BYK−A 506を0.3質量部秤量した。ウォーターバスを用いてガラスフラスコの内容物を40℃〜50℃に加温しながら均一になるまで撹拌し、マトリックス樹脂組成物を得た。
複合材料補強圧力容器の製造時の硬化温度を110℃とした以外は実施例1と同様に、マトリックス樹脂組成物の昇温粘度測定、トウプリプレグの作製、トウプリプレグの解舒性、形態保持性、工程通過性の評価、複合材料補強圧力容器の製造、複合材料補強圧力容器の破壊圧力測定試験、トウプリプレグのタック試験を実施した。結果を表3に示す。
<比較例1>
(マトリックス樹脂組成物の調製)
表3に記載の各成分を記載の割合で含有するマトリックス樹脂組成物を調製した。まずガラスフラスコにjER828を100質量部、DY9577を質量10部、BYK−A 506を0.3質量部秤量した。そして、ウォーターバスを用いて当該ガラスフラスコの内容物を40℃〜50℃に加温しながら均一になるまで撹拌し、マトリックス樹脂組成物を得た。
複合材料補強圧力容器の製造時の硬化温度を110℃とした以外は実施例1と同様に、マトリックス樹脂組成物の昇温粘度測定、トウプリプレグの作製、トウプリプレグの解舒性、形態保持性、工程通過性の評価、複合材料補強圧力容器の製造、複合材料補強圧力容器の断面観察、トウプリプレグのタック試験を実施した。結果を表3及び図4に示す。
<比較例2>
表3に記載の各成分を記載の割合で含有するマトリックス樹脂組成物を調製した。まずjER828とビニル重合体粒子Pとを質量比で1:1の割合で混合した。当該混合物を三本ロールミルを使用してさらに混練して、マスターバッチとした。ガラスフラスコにマスターバッチ20質量部(jER828を10質量部、及びビニル重合体粒子Pを10質量部含む)、jER828を90質量部、DY9577を質量10部、BYK−A 506を0.3質量部秤量した。ウォーターバスを用いてガラスフラスコの内容物を40℃〜50℃に加温しながら均一になるまで撹拌し、マトリックス樹脂組成物を得た。
マトリックス樹脂組成物の昇温粘度測定、トウプリプレグの作製、トウプリプレグの解舒性、形態保持性、工程通過性の評価、複合材料補強圧力容器の製造、複合材料補強圧力容器の破壊圧力測定試験、複合材料補強圧力容器の断面観察、トウプリプレグのタック試験はいずれも実施例1と同様に実施した。結果を表3及び図5に示す。
実施例1〜3にて得られたトウプリプレグは、いずれも工程通過性、形態保持性、解舒性に優れ、かつ硬化の際の樹脂フローが抑制されたものであった。さらにこれらを使用し得られた複合材料補強圧力容器は、繊維強化複合材料層中にボイドが少なく、優れた破壊圧力を示した。
一方、比較例1のトウプリプレグは、成分(C1)を含まないため形態保持性を欠き、巻き絞りの現象も見られた、さらに比較例1のトウプリプレグから作製した複合材料補強圧力容器では、マトリックス樹脂組成物中に成分(C2)を含まないため硬化の際の樹脂フローに起因するボイドが、繊維強化複合材料層中に多数見られた。比較例2のトウプリプレグは成分(C1)を含むため、工程通過性、形態保持性、解舒性に優れていたが、マトリックス樹脂組成物中に成分(C2)を含まないため、これを用いて作製された複合材料補強圧力容器では、硬化の際の樹脂フローに起因するボイドが繊維強化複合材料層中に多数見られ、その破壊圧力も低くなってしまった。
比較例1と実施例1〜3、及び比較例2のトウプリプレグの平均最大ストレス値(タック)を比較すると、成分(C1)を含む実施例1〜3及び比較例2の値が比較例1よりも小さく、成分(C1)を含むことで、強化繊維束中の空隙の体積を大きくして強化繊維束中により多くのマトリックス樹脂組成物を含有可能となり、トウプリプレグ表層に存在するマトリックス樹脂組成物が少ないためトウプリプレグのタックが小さくなったと分かる。
実施例1と比較例2のマトリックス樹脂組成物の最低粘度を比較すると、実施例1の最低粘度は比較例2のよりも高く、成分(C2)を含むことで、加熱に伴うマトリックス樹脂組成物の粘度低下を十分に抑制でき、複合材料補強圧力容器の製造時の樹脂フローに起因する繊維強化複合材料層中のボイド発生も抑制できる。実際に図2に示す、実施例1の複合材料補強圧力容器の繊維強化複合材料層断面にはボイドがほぼ見られなかったが、図5に示す比較例2の繊維強化複合材料層の断面には多くのボイド(図5中の黒色の部分)が見られ、作製した複合材料補強圧力容器の破壊圧力も実施例1の複合材料補強圧力容器の方が比較例2のものよりも高い値を示した。
実施例1と実施例2の最低粘度、及び最低粘度時の温度を比較すると、25℃時の粘度が約1Pa・s(すなわち比較的低粘度である)の、成分(A2)に相当するCY184を含む実施例2の最低粘度の方が実施例1よりも高く、かつ最低粘度時の温度が実施例1よりも低かった。これはCY184(成分(A2))を含むことで成分(C1)が成分(A)へ溶解し易くなったことに起因している。

Claims (11)

  1. 下記成分(A)、成分(B)、成分(C1)、及び成分(C2)を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸してなるトウプリプレグ。
    成分(A):エポキシ樹脂
    成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
    成分(C1):プレゲル化剤粒子
    成分(C2):プレゲル化剤粒子の溶解物。但し、該プレゲル化剤粒子は、前記成分(C1)と同じものでもよく、異なるものでもよい。
  2. 前記成分(A)100質量部に対し、前記成分(C1)の配合量が5〜20質量部であり、かつ成分(C2)の配合量が1〜5質量部である、請求項1に記載のトウプリプレグ。
  3. 前記成分(C1)及び(C2)が、各々独立に、アクリル系樹脂からなるコアシェル粒子である、請求項1または2に記載のトウプリプレグ。
  4. 下記成分(A)、成分(B)、成分(C11)、及び成分(C21)を含むマトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸してなるトウプリプレグ。
    成分(A):エポキシ樹脂
    成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
    成分(C11):アクリル系樹脂からなるコアシェル粒子
    成分(C21):前記マトリックス樹脂組成物中に溶解しているアクリル系樹脂。但し該アクリル系樹脂は、前記成分(C11)を構成するものと同じであってもよく、異なっていても良い。
  5. 前記成分(B)が三塩化ホウ素アミン錯体であり、かつその配合量が成分(A)100質量部に対して3〜15質量部である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のトウプリプレグ。
  6. 前記成分(A)が、成分(A1):分子内に芳香族環を有する液状の2官能エポキシ樹脂を含む、請求項1〜5のいずれかの一項に記載のトウプリプレグ。
  7. 前記成分(A)が、さらにヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルを含む、請求項6に記載のトウプリプレグ。
  8. 前記強化繊維束が炭素繊維束である、請求項1〜7のいずれかの一項に記載のトウプリプレグ。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載のトウプリプレグを用いて製造された、複合材料補強圧力容器。
  10. 前記トウプリプレグを金属ライナー、又は樹脂ライナーに巻き付けて製造された、請求項9に記載の複合材料補強圧力容器。
  11. 下記成分(A)に成分(C2’)を溶解し、更に成分(C1)及び成分(B)を配合することによりマトリックス樹脂組成物を調製する調製工程、
    前記マトリックス樹脂組成物を強化繊維束に含浸させ、樹脂含浸強化繊維束を得る含浸工程、
    前記樹脂含浸強化繊維束をボビンに巻き取る巻取工程、
    を有するトウプリプレグの製造方法。
    成分(A):エポキシ樹脂
    成分(B):エポキシ樹脂硬化剤
    成分(C1):プレゲル化剤粒子
    成分(C2’):プレゲル化剤粒子。但し、該プレゲル化剤粒子は、前記成分(C1)と同じものでもよく、異なるものでもよい。

JP2015088851A 2015-04-24 2015-04-24 トウプリプレグ、及び複合材料補強圧力容器 Pending JP2016204540A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015088851A JP2016204540A (ja) 2015-04-24 2015-04-24 トウプリプレグ、及び複合材料補強圧力容器

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015088851A JP2016204540A (ja) 2015-04-24 2015-04-24 トウプリプレグ、及び複合材料補強圧力容器

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2016204540A true JP2016204540A (ja) 2016-12-08

Family

ID=57487047

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015088851A Pending JP2016204540A (ja) 2015-04-24 2015-04-24 トウプリプレグ、及び複合材料補強圧力容器

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2016204540A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019089951A (ja) * 2017-11-15 2019-06-13 三菱ケミカル株式会社 トウプリプレグ、繊維強化複合材料及び複合材料補強圧力容器とその製造方法
CN112444445A (zh) * 2020-10-20 2021-03-05 航天材料及工艺研究所 一种使用无溶剂胶液制备碳化硅纤维束丝力学试样的方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019089951A (ja) * 2017-11-15 2019-06-13 三菱ケミカル株式会社 トウプリプレグ、繊維強化複合材料及び複合材料補強圧力容器とその製造方法
CN112444445A (zh) * 2020-10-20 2021-03-05 航天材料及工艺研究所 一种使用无溶剂胶液制备碳化硅纤维束丝力学试样的方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6020734B2 (ja) トウプリプレグ、及び複合材料圧力容器とその製造方法
JP6222387B1 (ja) トウプリプレグ、複合材料補強圧力容器および複合材料補強圧力容器の製造方法
JP6747517B2 (ja) 繊維強化熱可塑性樹脂成形品
TWI545155B (zh) 環氧樹脂組成物、預浸絲束、複合材料補強壓力容器以及鋼腱
JP6503683B2 (ja) トウプリプレグ
JP5757309B2 (ja) エポキシ樹脂組成物、トウプリプレグ及び圧力容器
JP6094686B2 (ja) 樹脂組成物およびそのプレス成形体
JPWO2019225442A1 (ja) トウプレグおよびその製造方法、ならびに圧力容器の製造方法
JP6523016B2 (ja) トウプリプレグ用エポキシ樹脂組成物およびトウプリプレグ
JP2016204540A (ja) トウプリプレグ、及び複合材料補強圧力容器
JP2019089951A (ja) トウプリプレグ、繊維強化複合材料及び複合材料補強圧力容器とその製造方法
JP2018158963A (ja) トウプリプレグ、および複合材料補強圧力容器
JP2016199824A (ja) 耐炎化繊維束、炭素繊維前駆体繊維束、およびそれからなる炭素繊維の製造方法
JP2016188271A (ja) プリプレグの製造方法
JP4400268B2 (ja) 炭素繊維前駆体用油剤
JP2004316052A (ja) 炭素繊維製造用油剤及び炭素繊維の製造方法
JP6915733B2 (ja) トウプリプレグおよび複合材料補強圧力容器の製造方法
JP6720508B2 (ja) トウプリプレグ、複合材料補強圧力容器及びその製造方法
JP2007145963A (ja) 炭素繊維強化複合材料成形用中間体および炭素繊維強化複合材料
JP2022065282A (ja) トウプレグ、および繊維強化複合材料
JP2018172603A (ja) 樹脂組成物及びその製造方法、プリプレグ、並びに成型体
JP2004043769A (ja) エポキシ樹脂組成物並びにロービングプリプレグ及びその製造方法
JP2022065281A (ja) トウプレグ、および繊維強化複合材料