JP2022065281A - トウプレグ、および繊維強化複合材料 - Google Patents

トウプレグ、および繊維強化複合材料 Download PDF

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Abstract

【課題】ボビンを立てた際の紙管からのずり落ちが発生しにくいこと、解舒時の巻き締まりが少なくボビンの形状安定性が良いこと、フィラメントワインディング成形時のトウの拡幅性が良く、隙間ができにくいことを同時に満たすトウプレグを提供することを課題とする。【解決手段】25℃における粘度が5~150Pa・s であるエポキシ樹脂組成物を、繊度が30~4000g/1000mである炭素繊維束に含浸させたトウプレグであって、該トウプレグの樹脂含有率(Rc)が20~40質量%であり、かつ、該トウプレグの表面を光学顕微鏡を用いて倍率200倍で観察したとき、視野面積に対する、エポキシ樹脂に溶解していない固形成分によって被覆された部分の面積の割合(被覆率)が0%以上かつ2.5%未満であり、さらに、該トウプレグを同一方向に3層積層し、中央のトウプレグを、温度25℃、湿度50%RH、速度1mm/min、垂直荷重20.6Nの条件下で引き抜いて測定した層間摩擦係数が、0.04以上かつ0.10未満であるトウプレグ。【選択図】なし

Description

本発明は、特に、繊維強化複合材料で構成された中空の容器や円筒の製造に好適に用いられるトウプレグに関するものである。より詳しくは、取り扱い性に優れ、空隙が少なく品質の良い成形品を得ることができるトウプレグに関するものである。
炭素繊維、ガラス繊維などの強化繊維を用いた繊維強化複合材料は、その優れた軽量性から、航空・宇宙、自動車、鉄道車両、船舶、土木建築およびスポーツ用品などの数多くの分野に適用されている。特に、高性能が要求される用途では、連続した強化繊維を用いた繊維強化複合材料が用いられ、強化繊維としては比強度、比弾性率に優れた炭素繊維が、そして熱硬化性樹脂としては、炭素繊維との接着性に優れたエポキシ樹脂が多く用いられている。
近年の炭素繊維の用途拡大を受け、成形法も広がりを見せている。このうち、フィラメントワインディングは、圧力容器などの中空の容器や円筒の製造に好適に用いられる方法である。ボビンから巻きだした強化繊維束を液状の熱硬化性樹脂に浸漬した後、型の上に巻き上げる従来のウェット法に代わって、熱硬化性樹脂が強化繊維束にあらかじめ含浸されたトウプリプレグ、ヤーンプリプレグあるいはストランドプリプレグなどと呼ばれる細幅の帯状中間基材(以下、トウプレグと記載する)を供給して型の上に巻き上げて用いる手法が、生産性および品質の観点から、注目されている。
トウプレグは、通常、数百から数千メートルを紙管に巻き取ったボビン形状で供給され、繊維強化複合材料の成形工程において高速で解舒される。このとき、ボビンを立てた際の紙管からのずり落ちが発生しにくいことや、解舒時の巻き締まりが少なくボビンの形状安定性が良いことに加え、フィラメントワインディング成形時のトウの拡幅性が良く、隙間ができにくいことも求められている。また、品質の安定したトウプレグを提供するため、トウに含浸する前のエポキシ樹脂を長期間保管した際に、エポキシ樹脂の変質が少ないことも求められている。
また、トウプレグが好適に用いられる圧力容器用途では、高圧ガスの急速充填時に起こる温度上昇に対して十分な耐熱性を有していること、長期間にわたる繰り返しの使用による性能低下が少ないことなども求められる。これらの要求性能を満足させるためには、マトリックス樹脂の靱性の向上、耐熱性(ガラス転移温度)の向上が有用である。
特許文献1は、トウプレグをライナーに巻き付ける前に加熱することでマトリックス樹脂の粘度を下げて空隙形成を抑制し、続いて、巻き付け後に冷却することでマトリックス樹脂の粘度を高めてトウの滑りを抑制する複合容器の製造方法を開示しているが、巻き付け用の製造設備に加熱冷却機構を設置する必要があるため、経済的観点から満足のいくものではなかった。
特許文献2は、硬化剤を含む低粘度な第1樹脂を含浸させたトウプレグの表層部に、高粘度で硬化剤を含まない第2樹脂を塗布することでタックを強め、フィラメントワインディング成形中のトウの滑りを防止できる技術を開示しているが、樹脂を2回に分けて含浸させる必要があるため、トウプレグの製造工程の複雑化をまねき、経済的観点から満足のいくものではなかった。
特開2010-234658号公報 特開2015-98556号公報
本発明は、かかる背景に鑑み、ボビンを立てた際の紙管からのずり落ちが発生しにくいこと、解舒時の巻き締まりが少なくボビンの形状安定性が良いこと、フィラメントワインディング成形時のトウの拡幅性が良く、隙間ができにくいことを同時に満たすトウプレグを提供することを課題とする。
本発明は、かかる課題を解決するために次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明のトウプレグは、25℃における粘度が5~150Pa・s であるエポキシ樹脂組成物を、繊度が30~4000g/1000mである炭素繊維束に含浸させたトウプレグであって、該トウプレグの樹脂含有率が20~40質量% であり、かつ、該トウプレグの表面を光学顕微鏡を用いて倍率200倍で観察したとき、視野面積に対する、エポキシ樹脂に溶解していない固形成分によって被覆された部分の面積の割合(被覆率)が0%以上かつ2.5%未満 であり、さらに、該トウプレグを同一方向に3層積層し、中央のトウプレグを、温度25℃、湿度50%RH、速度1mm/min、垂直荷重20.6Nの条件下で引き抜いて測定した層間摩擦係数が、0.04以上かつ0.10未満であるトウプレグである。
本発明のトウプレグは、ボビンを立てた際の紙管からのずり落ちが発生しにくいこと、解舒時の巻き締まりが少なくボビンの形状安定性が良いこと、フィラメントワインディング成形時のトウの拡幅性が良く、隙間ができにくいことを同時に満たすため、フィラメントワインディング法による圧力容器などの中空の容器や円筒の製造時の取り扱い性に優れ、かつ、空隙が少なく品質の良い成形品を得ることができる。
a)は本発明の層間摩擦係数の測定法を示す断面図であり、b)は本発明の層間摩擦係数の測定法を示す平面図である。 トウプレグボビンの紙管からのずり落ち現象を表した模式図である。 トウプレグボビンの解舒時の巻き締まり現象を表した模式図である。 トウプレグの表面を光学顕微鏡を用いて倍率200倍で撮像した画像の一例である。 本発明の巻き締まり速度の測定法を示す正面図である。 a)は本発明の拡幅比率の測定法を示す正面図であり、b)は本発明の拡幅比率の測定法を示す側面図である。
本発明は、次の構成を有するものである。すなわち、本発明のトウプレグは、25℃における粘度が5~150Pa・s であるエポキシ樹脂組成物を、繊度が30~4000g/1000mである炭素繊維束に含浸させたトウプレグであって、該トウプレグの樹脂含有率(Rc)が20~40質量% であり、かつ、該トウプレグの表面を光学顕微鏡を用いて倍率200倍で観察したとき、視野面積に対する、エポキシ樹脂に溶解していない固形成分によって被覆された部分の面積の割合(被覆率)が0%以上かつ2.5%未満 であり、さらに、該トウプレグを同一方向に3層積層し、中央のトウプレグを、温度25℃、湿度50%RH、速度1mm/min、垂直荷重20.6Nの条件下で引き抜いて測定した層間摩擦係数が、0.04以上かつ0.10未満であるトウプレグである。
本発明における層間摩擦係数は、トウプレグを積層したトウプレグ積層体において、トウプレグの層間で発生する摩擦現象における静止摩擦係数を指す。ここで層間とは、トウプレグの表面どうしが接する境界領域であり、本発明においては、顕微鏡等で明瞭に観察されない場合も層間と表現する。
本発明において、層間摩擦係数は次の方法で測定する。まずはじめに、図1に示すように繊維方向を同一にして、2本のトウプレグ4の間に1本のトウプレグ3を挟み、圧板1を用いて、積層したトウプレグに対して垂直方向に20.6Nの荷重を与える(以降、垂直荷重と記載する)。次に、挟まれたトウプレグ3を、温度25℃、湿度50%RH、速度1mm/minで引き抜く際に得られる荷重の最大値を読み取る。読み取った最大荷重を、トウプレグ3とトウプレグ4の接触部分に加わる垂直荷重の2倍で除して得た静止摩擦係数を、本発明における層間摩擦係数とする。垂直荷重の2倍の値を用いる理由は、摩擦抵抗を受けるトウプレグの表面が2箇所存在するからである。より詳しい試験法の詳細は、後述の実施例に記載する。
かかる方法で測定した、本発明のトウプレグの層間摩擦係数は、0.04以上かつ0.10未満である。かかる範囲を満たすことで、ボビンを立てた際の紙管からのずり落ちが発生しにくいこと、解舒時の巻き締まりが少なくボビンの形状安定性が良いこと、フィラメントワインディング成形時のトウの拡幅性が良く、隙間ができにくいことを同時に満たすトウプレグを得ることができる。このように、不具合の発生が抑制されたトウプレグを用いることで、歩留まりの向上や成形品の品質向上が可能となる。
ここで、ボビンを立てた際の紙管からのずり落ちとは、数百から数千メートルのトウプレグを紙管に巻き取った、ボビン形状のトウプレグを、紙管長手方向が作業台の面に対して垂直となるように設置して静置した際に、トウプレグが滑り落ち、ボビン形状が崩れる現象である。ずり落ち現象を表した模式図を図2に示す。一旦ずり落ち現象が発生すると、形状が崩れたボビン端部で糸が外れる綾落ち現象が発生するため、トウの解舒ができなくなる。
また、解舒時の巻き締まりとは、数百から数千メートルのトウプレグを紙管に巻き取ったボビン形状のトウプレグを、フィラメントワインディング装置のクリールに取り付け、張力を付与して成形を行った際に、付与した張力によってボビンが絞られて変形し、ボビン表面の凹凸や、ボビン端面のふくれだしが生じる現象である。巻き締まり現象を表した模式図を図3に示す。巻き締まり現象が生じると、ふくれだしたボビン端部で糸が外れる綾落ち現象が発生するため、トウプレグの解舒ができなくなる。
また、フィラメントワインディング成形時のトウの拡幅とは、圧力容器のライナーや、円筒の成形に用いるマンドレルに巻き付けた際の圧力で、トウプレグの幅が広がる現象である。トウプレグの拡幅性が不足すると、成形品中、特に圧力容器を製造する際には口金近くに空隙が発生し、破裂強度を低下させる原因となる。
本発明のトウプレグの層間摩擦係数は、後述するエポキシ樹脂組成物の粘度、トウプレグの樹脂含有率(Rc)、エポキシ樹脂に溶解していない固形成分によって被覆された部分の面積の割合(被覆率)等によって適正範囲へ調整することができる。
本発明のトウプレグに用いるエポキシ樹脂組成物の25℃における粘度は、5~150Pa・sとする必要があり、5~100Pa・sであることが好ましく、5~50Pa・sであることがより好ましい。エポキシ樹脂組成物の粘度をかかる範囲とすることで、層間摩擦係数を適正範囲へ調整することができる。本発明において、エポキシ樹脂組成物の粘度が低いほど、トウプレグの樹脂含有率(Rc)を下げ、炭素繊維の含有率を上げることができるため、繊維強化複合材料の軽量化に寄与することができる。また、エポキシ樹脂組成物の粘度が低いほど、トウプレグの製造工程において、エポキシ樹脂組成物を加熱・温調して粘度調整する機構を簡素化できるため、設備費用・エネルギー消費を抑制できる観点から好ましい。
また、本発明のトウプレグに用いるエポキシ樹脂組成物は、平行平板振動レオメータを用いて、25℃、周波数0.1Hzで測定した複素せん断粘度(η0.1)の、平行平板振動レオメータを用いて、25℃、周波数10Hzで測定した複素せん断粘度(η10)に対する比(η0.1/η10)が1.5以上 であることが好ましく、3.0以上であることがより好ましい。η0.1/η10がかかる範囲を満たすことで、ボビンを立てた際の紙管からのずり落ちを抑制できるため、解舒時の巻き締まり抑制効果、フィラメントワインディング成形時のトウの拡幅性とのバランスを良好にできる。なお、η0.1/η10の上限については特に限定されないが、通常300以下である。η0.1/η10をかかる範囲に制御するための手段としては、熱可塑性樹脂や揺変剤などの粘度調整剤の添加などが挙げられる。
本発明のトウプレグに用いる炭素繊維束としては、具体的にはアクリル系、ピッチ系およびレーヨン系等の炭素繊維束が挙げられ、特に引張強度の高いアクリル系の炭素繊維束が好ましく用いられる。
本発明のトウプレグに用いる炭素繊維束は、繊度が30~4000g/1000mであることが必要であり、通常は、直径が3~100μmのフィラメントが1,000~70,000本束ねられて構成される炭素繊維束が用いられる。炭素繊維束の繊度をかかる範囲とすることで、帯状の中間基材として取り扱いやすく、エポキシ樹脂組成物が内部までを均一に含浸されたトウプレグを得ることができる。
また、本発明のトウプレグに用いる炭素繊維束は、炭素繊維の単繊維表面の算術平均粗さ(Ra)が1~20nm であることが好ましい。炭素繊維の単繊維表面の算術平均粗さ(Ra)をかかる範囲とすることで、層間摩擦係数の適正範囲への調整が容易となる。ここで、単繊維表面の算術平均粗さ(Ra)とは、炭素繊維表面の凹凸の指標であり、原子間力顕微鏡(AFM)により測定する600nm×600nmの3次元表面形状の像について、繊維の丸みを3次曲面で近似したものを平均線とし、得られた3次元表面形状の像を対象として、算出した算術平均粗さ(Ra)である。
本発明のトウプレグの樹脂含有率(Rc)は、20~40質量%である必要があり、20~36質量%であると好ましく、20~30質量%であるとより好ましい。ここで、トウプレグの樹脂含有率(Rc)とは、トウプレグの質量に占めるエポキシ樹脂組成物の質量の割合である。Rcをかかる範囲とすることで、層間摩擦係数を適正範囲へ調整することができる。また、Rcが20質量%以上であると、得られる繊維強化複合材料の内部の未含浸部分やボイドのような欠陥が発生することを抑制でき、40質量%以下であると、トウプレグのボビンからの樹脂組成物の染み出しや、フィラメントワインディング成形工程における樹脂組成物の飛散を抑制できる。Rcが小さいほど、炭素繊維の含有率を上げることができるため、繊維強化複合材料の軽量化に寄与することができ好ましい。Rcは、炭素繊維束に含浸させるエポキシ樹脂組成物の質量を制御することで変更することができる。
本発明のトウプレグは、トウプレグの表面を光学顕微鏡を用いて倍率200倍で観察したとき、視野面積に対する、エポキシ樹脂に溶解していない固形成分によって被覆された部分の面積の割合(被覆率)が0%以上かつ2.5%未満である必要がある。
本発明において、前記被覆率は次の方法で測定する。まず始めに、トウプレグの表面を、光学顕微鏡を用いて、倍率200倍で、リング照明を当てながら撮像し、図4に例示するようなデジタル画像を得る。リング照明を当てることで、エポキシ樹脂による光の反射をキャンセルし、エポキシ樹脂に溶解していない固形成分が強調された像を得ることができる。続いて、得られたデジタル画像を、画像解析用ソフトウェアを用いて二値化し、エポキシ樹脂に溶解していない固形成分によって被覆された部分を認識して、その面積を計算する。前記方法で得たエポキシ樹脂に溶解していない固形成分によって被覆された部分の面積を、実際に撮像した面積で除し、百分率表記した値を、被覆率とする。この測定方法では、最小で1μm程度の大きさの被覆部分を判別することができる。
かかる方法で測定した、本発明のトウプレグの被覆率が、かかる範囲を満たすことで、層間摩擦係数を適正範囲へ調整することができる。
以下に、本発明のトウプレグを構成する材料について記載する。
(エポキシ樹脂について)
本発明におけるエポキシ樹脂としては、特に制限なく用いることができ、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型などのビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルアニリン型、ジアミノジフェニルメタン型、ジアミノジフェニルスルホン型、アミノフェノール型、メタキシレンジアミン型、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン型等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ポリエチレングリコール型、ポリプロピレングリコール型、ブタンジオール型、ネオペンチルグリコール型、ヘキサンジオール型、シクロヘキサンジメタノール型などの脂肪族エポキシ樹脂、イソシアヌレート型、ヒダントイン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、ジシクロペンタジエンノボラック型、ビフェニル型、トリスヒドロキシフェニルメタン型およびテトラフェニロールエタン型のエポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いてもよいし、適宜混合して用いてもよい。
これらのエポキシ樹脂の中でも、エポキシ樹脂組成物に安定性を付与し、エポキシ樹脂組成物の調製工程、トウプレグの製造工程、トウプレグの保存期間でのエポキシ樹脂組成物の増粘を防ぐ効果があることから、グリシジルアミン型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。かかる工程・期間でのエポキシ樹脂組成物の増粘を防ぐことにより、トウプレグにおけるエポキシ樹脂組成物の含浸状態を良好にでき、成形時の解舒性を良好に保つことができる。グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、グリシジルアニリン型、ジアミノジフェニルメタン型、ジアミノジフェニルスルホン型、アミノフェノール型、メタキシレンジアミン型、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン型などが挙げられる。また、かかるグリシジルアミン型エポキシ樹脂の市販品としては、GAN(N,N-ジグリシジルアニリン、日本化薬株式会社製)、GOT(N,N-ジグリシジル-o-トルイジン、日本化薬株式会社製)、“スミエポキシ(登録商標)”ELM-434(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、住友化学株式会社製)、“Araldite(登録商標)”MY721(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ハンツマン・ジャパン株式会社製)、“ARALDITE(登録商標)”MY0510(テトラグリシジル-p-アミノフェノール、ハンツマン・ジャパン株式会社製)などが挙げられる。
かかるグリシジルアミン型エポキシ樹脂の中でも、耐熱性や力学特性のバランスに優れることから、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンを用いることが好ましい。
さらに、エポキシ樹脂組成物のポットライフを向上する効果に優れることから、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの中でも、50℃における粘度が10Pa・s以下であるものを用いることがより好ましく、9.0Pa・s以下であるものを用いることがさらに好ましく、6.0Pa・s以下であるものを用いることが最も好ましい。かかるテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの市販品としては、“スミエポキシ(登録商標)”ELM-434L(50℃粘度:8.2Pa・s、住友化学株式会社製)、“スミエポキシ(登録商標)”ELM-434VL(50℃粘度:5.0Pa・s、住友化学株式会社製)、“Araldite(登録商標)”MY721(50℃粘度:3.6~5.0Pa・s、ハンツマン・ジャパン株式会社製)、“jER(登録商標)”604(50℃粘度:5.0~10Pa・s、三菱ケミカル株式会社製)、YH-404(50℃粘度:3.6~5.2Pa・s、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)などが挙げられる。
グリシジルアミン型エポキシ樹脂の含有量は、エポキシ樹脂100質量部中、10質量部以上であることが好ましく、10~80質量部であることがより好ましく、20~60質量部であることがさらに好ましい。グリシジルアミン型エポキシ樹脂の含有量を、エポキシ樹脂100質量部中、10質量部以上とすることで、エポキシ樹脂組成物の増粘を防ぐ効果が得られる。また、グリシジルアミン型エポキシ樹脂の含有量を、エポキシ樹脂100質量部中、80質量部以下とすることで、耐熱性と靱性のバランスに優れた繊維強化複合材料を与えるトウプレグ用エポキシ樹脂組成物を得ることができる。
(硬化剤について)
本発明における硬化剤としては、特に制限なく用いることができ、例えば、ジシアンジアミド、シアナミドの他、ジエチルトルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族アミン、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物などのカルボン酸無水物、三フッ化ホウ素アミン錯体、三塩化ホウ素アミン錯体などのハロゲン化ホウ素アミン錯体等のルイス酸、2-エチル-4メチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾールなどが挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いてもよいし、適宜混合して用いてもよい。
ジシアンジアミドの市販品としては、“jERキュア(登録商標)”DICY7、“jERキュア(登録商標)”DICY15(以上、三菱ケミカル株式会社製)などが挙げられる。
シアナミドの市販品としては、“DYHARD(登録商標)”Fluid 111(AlzChem社製)などが挙げられる。
芳香族アミンの市販品としては、“jERキュア(登録商標)”WA(ジエチルトルエンジアミン、三菱ケミカル株式会社製)、“KAYAHARD(登録商標)”A-A(3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、日本化薬株式会社製)、“セイカキュア(登録商標)”S(エポキシ樹脂硬化剤、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、セイカ株式会社製)などが挙げられる。
カルボン酸無水物の市販品としては、HN-2200(メチルテトラヒドロ無水フタル酸、日立化成株式会社製)、“リカシッド(登録商標)”HH(ヘキサヒドロ無水フタル酸、新日本理化株式会社製)、“KAYAHARD(登録商標)”MCD(メチルナジック酸無水物、日本化薬株式会社製)などが挙げられる。
ハロゲン化ホウ素アミン錯体の市販品としては、Accelerator DY 9577(三塩化ホウ素アミン錯体、ハンツマン・ジャパン株式会社製)、LEECURE B-550(三フッ化ホウ素アミン錯体、Leepoxy plastics社製)などが挙げられる。
イミダゾールの市販品としては、“キュアゾール(登録商標)”2E4MZ、“キュアゾール(登録商標)”2MZA-PW、“キュアゾール(登録商標)”2MAOK-PW、“キュアゾール(登録商標)”2P4MHZ-PW(以上、四国化成工業株式会社製)などが挙げられる。
かかる硬化剤の中でも、前記被覆率を小さく制御し、層間摩擦係数を本発明の適正範囲に調整することが容易である観点から、25℃においてエポキシ樹脂に相溶している硬化剤を用いることが好ましい。ここで、エポキシ樹脂に相溶しているとは、トウプレグに含浸させるエポキシ樹脂組成物中において、実質的に固形の硬化剤を含まないことを意味し、目視や光学顕微鏡による観察、光散乱法による粒度分布測定などの手法で、原料の硬化剤に由来する粒子成分が検出されなければ、相溶していることを確認できる。このため硬化剤は、エポキシ樹脂との急激な反応が開始しない温度範囲においてエポキシ樹脂に溶解でき、25℃において相溶状態を保つことのできる固形硬化剤、または25℃において相溶状態を保つことのできる液状硬化剤であることが好ましく、液状硬化剤であることがより好ましい。
これらの硬化剤の中でも、力学特性のバランスに優れた繊維強化複合材料を与えるトウプレグ用エポキシ樹脂組成物を得ることができることから、芳香族アミンが特に好ましく用いられる。ここで、芳香族アミンとは、芳香環と直接結合したアミノ基を有する化合物の総称である。かかる芳香族アミンとしては、アミノベンジルアミン、ジエチルトルエンジアミンなどの、芳香環を1つ有する化合物、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンなどの、芳香環を2つ有する化合物などが挙げられる。
かかる芳香族アミンの中でも、前記被覆率を小さく制御し、層間摩擦係数を本発明の適正範囲に調整することが容易である観点から、25℃で液状の液状芳香族アミンがより好ましい。
また、かかる25℃で液状の液状芳香族アミンの中でも、優れた保存安定性と耐熱性が得られることから、下記化学式(1)で表される化合物を含むことがより好ましい。
Figure 2022065281000001
式中、R、R、Rは、水素、炭素数1~4のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基のうちのいずれかであり、R、R、Rは同一であっても異なっていてもよい。
かかる化学式(1)で表される25℃で液状の液状芳香族アミンの市販品としては、 “jERキュア(登録商標)”WA(ジエチルトルエンジアミン、三菱ケミカル株式会社製)、“LONZACURE(登録商標)”DETDA80(ジエチルトルエンジアミン、ロンザジャパン株式会社製)などが挙げられる。
かかる芳香族アミンの含有量は、エポキシ樹脂のエポキシ基に対し、活性水素が0.7~2.0当量となる量であることが好ましく、0.7~1.8当量の範囲となる量であることがより好ましい。芳香族アミンの含有量をかかる範囲とすることで、力学特性のバランスに優れた繊維強化複合材料を与えるトウプレグ用エポキシ樹脂組成物を得ることができる。
(添加剤について)
本発明において、層間摩擦係数の調整や、樹脂硬化物の力学特性等の性能の向上を目的に、熱可塑性樹脂や揺変剤などの粘度調整剤、ゴム成分などの強靱化剤、その他、消泡剤、安定剤、難燃剤、顔料などの各種添加剤を含有することができる。熱可塑性樹脂としては、エポキシ樹脂に可溶な熱可塑性樹脂であることが好ましい。エポキシ樹脂に可溶な熱可塑性樹脂としては、例えばポリビニルホルマールやポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール、フェノキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルピロリドン、ポリスルホンなどを挙げることができる。揺変剤としては、アマイドワックス、水添ひまし油などの有機系のものや、シリカ、アルミナ、アルミニウムとケイ素の混合酸化物、酸化チタン、軽質炭酸カルシウム、スメクタイト系粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ベントナイト、ヘクトライト、サポナイトなど)、セピオライト、カーボンブラックなどの無機系のものが挙げられる。消泡剤としては、非シリコンポリマー系消泡剤、シリコン系消泡剤などが挙げられる。
本発明のトウプレグに用いるエポキシ樹脂組成物は、25℃でエポキシ樹脂に相溶する強靱化剤および/または粒子径が50nm~1μmである強靱化剤を含み、該エポキシ樹脂組成物を150℃で4時間硬化させて得られる硬化物の靱性値KIcが1.0~3.0MPa・m0.5であることが好ましい。かかる条件を満たすことで、層間摩擦係数の過剰な増大を伴うことなく、樹脂硬化物の靱性を高めることができ、繰り返しの使用による性能低下が少ない繊維強化複合材料を得ることができる。
ここで、25℃でエポキシ樹脂に相溶するとは、トウプレグに含浸させるエポキシ樹脂組成物中において、実質的に固形の強靱化剤成分を含まず、粗大な液-液相分離を生じないことを意味し、エポキシ樹脂と強靱化剤を混合して目視観察することによって相溶していることを確認できる。
また、本発明において強靱化剤の粒子径は、体積平均粒子径を指し、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法等の手法により測定できる。
25℃でエポキシ樹脂に相溶する強靱化剤としては、例えば、液状ブタジエンニトリルゴム、CTBN(カルボキシル基末端ブタジエンニトリルゴム)、ATBN(アミノ基末端ブタジエンニトリルゴム)、主鎖内カルボキシ基変性ブタジエンニトリルゴムなどの液状ゴムなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、適宜混合して用いてもよい。また、かかる液状ゴムの市販品としては、“Hypro(登録商標)”1300X31、“Hypro(登録商標)”1300X13、“Hypro(登録商標)”1300X13NA、“Hypro(登録商標)”1300X8(以上、CVC Thermoset Specialties社製)などが挙げられる。
粒子径が50nm~1μmである強靱化剤としては、例えば、アクリルゴム微粒子、ブタジエンゴム微粒子、ブタジエン-スチレンゴム微粒子、シリコーンゴム微粒子などのゴム微粒子、ゴム微粒子を異種ポリマーで被覆したコアシェル構造をもつコアシェルゴム微粒子などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、適宜混合して用いてもよい。
また、かかるコアシェルゴム微粒子の市販品としては、“カネエース(登録商標)”MX-125、“カネエース(登録商標)”MX-150、“カネエース(登録商標)”MX-154、“カネエース(登録商標)”MX-257、“カネエース(登録商標)”MX-267、“カネエース(登録商標)”MX-416、“カネエース(登録商標)”MX-451、“カネエース(登録商標)”MX-EXP(HM5)(以上、株式会社カネカ製)などが挙げられる。
かかる強靱化剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して5質量部以上であることが好ましく、5~30質量部であることがより好ましい。強靱化剤の含有量をかかる範囲とすることで、層間摩擦係数の過剰な増大を伴うことなく、樹脂硬化物の靱性を高めることができ、繰り返しの使用による性能低下が少ない繊維強化複合材料を得ることができる。
また、本発明において、エポキシ樹脂組成物を150℃で4時間硬化させて得られる硬化物のガラス転移温度が120~160℃ であることが好ましく、120~150℃であることがより好ましい。樹脂硬化物のガラス転移温度をかかる範囲とすることで、樹脂硬化物の耐熱性と靱性を良好なバランスとすることができる。
本発明のトウプレグにおいて、エポキシ樹脂100質量部に対して、1次粒子径が5~50nmであるフュームドシリカを3~5質量部含むことが好ましい。かかる条件を満たすことで、解舒時の巻き締まり抑制効果と、フィラメントワインディング成形時のトウの拡幅性を、より良好なバランスにできる。ここで、フュームドシリカとは、一次粒子径が数ナノメートルから数十ナノメートルである微粒子状シリカであり、燃焼加熱分解法などにより得られる。フュームドシリカの1次粒子径は、1次粒子の平均径を指し、透過型電子顕微鏡による観察像の解析等によって測定できる。
かかるフュームドシリカの中でも、前記η0.1/η10を本発明の好ましい範囲へ調整することが容易であることから、疎水性表面処理を施した疎水性フュームドシリカがより好ましい。ここで、疎水性表面処理とは、微粒子状シリカ表面のシラノール基に対して、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基などのアルキルシリル基、ジメチルポリシロキサン等の疎水性置換基を結合させる処理である。かかるフュームドシリカの市販品としては、“AEROSIL(登録商標)”R972(1次粒子の平均径:約16nm、日本アエロジル株式会社製)、“AEROSIL(登録商標)”R812(1次粒子の平均径:約7nm、日本アエロジル株式会社製)、“AEROSIL(登録商標)”RY200S(1次粒子の平均径:約16nm、日本アエロジル株式会社製)、“AEROSIL(登録商標)”R805(1次粒子の平均径:約12nm、日本アエロジル株式会社製)などが挙げられる。
本発明のトウプレグにおいて、エポキシ樹脂100質量部に対して、25℃においてエポキシ樹脂に不溶、かつ、1次粒子径が0.5~150μmである粒子を0.5~2質量部含み、前記Rcが20~28%であることが好ましい。かかる条件を満たすことで、解舒時の巻き締まり抑制効果と、フィラメントワインディング成形時のトウの拡幅性を、より良好なバランスにできる。ここで、25℃においてエポキシ樹脂に不溶である粒子としては、特に制限なく用いることができ、例えば、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルスルホンなどの潜在性を持つ硬化剤の粒子の他、熱可塑性樹脂などの有機粒子、シリカ、カーボンなどの無機粒子などが挙げられる。かかる粒子の1次粒子径は、レーザー回折・散乱法等により測定できる。
また、本発明において、前記25℃においてエポキシ樹脂に不溶、かつ、1次粒子径が0.5~150μmである粒子として、ジシアンジアミド を含むことが好ましい。前記粒子の中でも、ジシアンジアミドは、硬化過程において溶解してエポキシ樹脂硬化剤としても働く性質を有し、硬化物中に固形分が欠陥として残りにくいため、力学特性に優れた繊維強化複合材料を与えるトウプレグ用エポキシ樹脂組成物を得ることができる。
ジシアンジアミドの1次粒子径は、0.5~150μmであることが好ましく、0.5~100μmであることがより好ましく、0.5~10μmであることがさらに好ましい。1次粒子径をかかる範囲とすることで、層間摩擦係数の適正範囲への調整が容易となり、かつ、樹脂硬化物の力学特性を良好なものにできる。ここで、ジシアンジアミドの1次粒子径は、体積基準粒度分布を指し、D10が好ましい1次粒子径の範囲の下限以上であり、D90が好ましい1次粒子径の範囲の上限以下であることが好ましい。なお、ジシアンジアミドの1次粒子径は、レーザー回折・散乱法等により測定できる。
本発明のトウプレグに用いるエポキシ樹脂組成物の調製には、様々な公知の方法を用いることができる。例えばニーダー、プラネタリーミキサー、メカニカルスターラー、ディゾルバー、三本ロールといった機械を用いて混練してもよいし、ビーカーとスパチュラなどを用い、手で混ぜてもよい。
本発明のトウプレグは、様々な公知の方法で製造することができる。すなわち、本発明のトウプレグに用いるエポキシ樹脂組成物を、有機溶媒を用いずに加熱により低粘度化し、強化繊維束を浸漬させながら含浸させる方法、常温で低粘度の該エポキシ樹脂組成物、または加熱して低粘度化した該エポキシ樹脂組成物を、回転ロールや離型紙上に塗膜化し、次いで強化繊維束の片面、あるいは両面に転写したあと、屈曲ロールあるいは圧力ロールを通すことで加圧して含浸させる方法などで製造できる。高品位なトウプレグが製造できることから、本発明のトウプレグの製造方法は、エポキシ樹脂組成物で被覆された回転ロールを、強化繊維束の少なくとも片面に接触させる工程を含むことが好ましい。トウプレグは、通常、数百から数千メートルを紙管に巻き取ったボビン形状で供給される。
本発明の繊維強化複合材料は、本発明のトウプレグを、加熱硬化することにより得ることができる。本発明の中間基材は航空・宇宙、自動車、鉄道車両、船舶、土木建築およびスポーツ用品などの数多くの分野に使用することができ、特に、圧力容器などの中空の容器や、円筒の製造に好適に使用することができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、組成比の単位「部」は、特に注釈のない限り質量部を意味する。また、各種特性(物性)の測定は、特に注釈のない限り温度23℃、相対湿度50%の環境下で、測定n数=1で行った。
<実施例および比較例で用いた材料>
(1)炭素繊維束
・東レ株式会社製 炭素繊維(繊度:1645g/1000m、単繊維表面の算術平均粗さ(Ra):2.1nm)。
(2)エポキシ樹脂
・“jER(登録商標)”807(液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、三菱ケミカル株式会社製)
・“jER(登録商標)”828(液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱ケミカル株式会社製)
・“スミエポキシ(登録商標)”ELM-434VL(グリシジルアミン型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、住友化学株式会社製)
・“EPICLON(登録商標)”HP-7200L(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、DIC株式会社製)。
(3)硬化剤
・“jERキュア(登録商標)”DICY7(ジシアンジアミド(D10:0.9μm、D90:7.4μm)、三菱ケミカル株式会社製)
・Accelerator DY 9577(三塩化ホウ素アミン錯体、ハンツマン・ジャパン株式会社製)
・“DYHARD(登録商標)”Fluid 111(シアナミド、AlzChem社製)
・“KAYAHARD(登録商標)”A-A(25℃で液状の液状芳香族アミン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、日本化薬株式会社製)
・“jERキュア(登録商標)”WA(25℃で液状の液状芳香族アミン、ジエチルトルエンジアミン、三菱ケミカル株式会社製)。
(4)添加剤
・“AEROSIL(登録商標)”RY200S(疎水性フュームドシリカ、1次粒子の平均径:約16nm、日本アエロジル株式会社製)
・“カネエース(登録商標)”MX-150(ポリブタジエンゴム型コアシェルゴム粒子(粒子径:100nm)40%の液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂マスターバッチ、株式会社カネカ製)
・“カネエース(登録商標)”MX-267(ポリブタジエンゴム型コアシェルゴム粒子(粒子径:100nm)37%の液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂マスターバッチ、株式会社カネカ製)
・“Hypro(登録商標)”1300X13(末端カルボキシル基変性ブタジエンニトリルゴム、CVC Thermoset Specialties社製)
・“ビニレック”K(ポリビニルホルマール樹脂、JNC株式会社製)。
<単繊維表面の算術平均粗さ(Ra)の測定方法>
炭素繊維を長さ数mm程度にカットし、銀ペーストを用いて基板(シリコンウエハ)上に固定した後、原子間力顕微鏡(AFM)によって、各単繊維の中央部における3次元表面形状の像を得た。原子間力顕微鏡は、Digital instruments社製 NanoScope IIIaにおいて、Dimension 3000ステージシステムを使用した。観測条件は以下の通りとした。
・走査モード:タッピングモード
・探針:シリコンカンチレバー
・走査範囲:0.6μm×0.6μm
・走査速度:0.3Hz
・ピクセル数:512×512
・測定環境:室温、大気中
各試料について、単繊維1本から1箇所ずつ観察して得られた像について、繊維断面の丸みを3次曲線で近似し、得られた像全体を対象として、算術平均粗さ(Ra)を算出した。単繊維5本について求めた値の平均値を用いた。
<エポキシ樹脂組成物の調製方法>
ビーカー中に、硬化剤以外の成分を投入した後、100℃に加熱して均一となるまで撹拌した。フュームドシリカを用いる場合は、加熱撹拌したエポキシ樹脂を25~40℃まで冷却した後、3本ロールミルを用いて分散させた。続いて、エポキシ樹脂の温度を25~60℃とした後、硬化剤を投入して均一となるまで撹拌しエポキシ樹脂組成物を得た。25℃でエポキシ樹脂に相溶する強靱化剤を使用した場合は、目視観察することによって相溶していることを確認した。実施例および比較例の成分含有比について表1~3に示した。
<エポキシ樹脂組成物の25℃における粘度の測定方法>
JIS Z8803(2011)における「円すい-平板形回転粘度計による粘度測定方法」に従い、標準コーンローター(1°34’×R24)を装着したE型粘度計(東機産業株式会社製、TVE-30H)を使用して、回転速度を5~20回転/分として測定した。サンプルカップ内を測定温度(25℃)に調整し、エポキシ樹脂組成物を投入後、1分以上経過し表示値が安定したところで値を読み取った。
<η0.110の測定方法>
JIS K 7244-10(2005)に従い、以下に示す条件にて、エポキシ樹脂組成物の粘度の周波数依存性を測定し、周波数0.1Hzで測定した複素せん断粘度(η0.1)の、周波数10Hzで測定した複素せん断粘度(η10)に対する比を求めた。
装置:ARES-G2(TA Instruments社製)
プレート構成:アルミ製φ40mmディスポプレート
アルミ製φ42mmディスポーザプルカップ
ギャップ:1.0mm
温度:25℃
測定周波数:0.1~10Hz
歪:10%。
<樹脂硬化板の作製方法>
エポキシ樹脂組成物を、真空中で脱泡した後、“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mm、または6mmになるように設定したモールドに注入した。次に、熱風オーブン中で室温から150℃まで1分間に2.5℃ずつ昇温した後、該温度で4時間保持して該エポキシ樹脂組成物を硬化した。続いて、室温まで降温し、モールドから脱型することで、樹脂硬化板を作製した。
<ガラス転移温度の測定方法>
2mm厚の樹脂硬化板から、幅12.7mm、長さ45mmの試験片を切り出し、粘弾性測定装置(ARES、ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて、ねじり振動周波数1.0Hz、昇温速度5.0℃/分の条件下で、30~250℃の温度範囲でDMA測定を行った。ガラス転移温度(Tg)は、貯蔵弾性率G’曲線において、ガラス状態での接線と転移状態での接線との交点における温度とした。
<樹脂硬化物の破壊靱性測定方法>
ASTM D5045に準拠したSENB(Single Edge Noched Bend)試験法に準拠して実施した。6mm厚の樹脂硬化板から、長さ60mm、幅12.7mmの試験片を切り出した後、予亀裂を導入した。その後、インストロン万能試験機(インストロン社製)を用いて、スパン間を50.8mm、クロスヘッドスピードを10mm/分、サンプル数n=6とし、破壊靱性値(KIC)を測定した。
<トウプレグの作製方法>
クリール、キスロール、ニップロール、ワインダーを備えたトウプレグ製造装置を用いて、炭素繊維束の片面に、20~60℃の温度に調整したエポキシ樹脂組成物を塗工した後、ニップロールを通過させることで該エポキシ樹脂組成物を強化繊維束内部まで含浸してトウプレグを得た。トウプレグのボビンは、初期張力を600~1000gf、ワインド比を6~10として、巻き幅が230~260mmの円筒型となるよう、2300mを紙管に巻き取った。
<トウプレグのRcの測定方法>
トウプレグのRcは、トウプレグのボビン質量(W)、紙管の質量(W)、炭素繊維の単位長さあたりの質量(W)、ボビンに巻き取ったトウプレグの長さ(W)から、式(1)に従ってもとめた。
Figure 2022065281000002
<層間摩擦係数の測定方法>
次の(a)、(b)、(c)の操作を順に行うことにより、層間摩擦係数を測定した。
(a)まず始めに、図1に示すように、幅40mm×長さ150mmの離型紙2上に、長さ150mmに裁断した1層目のトウプレグ4を設置し、その上に、同サイズに裁断した2層目のトウプレグ3を、長さ60mmがオーバーラップするように積層した。次に、2層目のオーバーラップ部に接するように、1層目のトウプレグ4上に長さ20mmのスペーサー5用トウプレグを積層し、その上に長さ150mmの3層目のトウプレグ4を1層目と重なるように積層してトウプレグ積層体を作製した。続いて、トウプレグ積層体の、垂直荷重による必要以上の変形を防ぐため、セロハンテープを積層して、前記トウプレグ積層体の厚みと同等としたスペーサー6を、トウプレグ積層体の側面に接するように設置した。最後に、最下層の離型紙2と重なるように、幅40mm×長さ150mmの離型紙2を貼り付け、試験用サンプルを作製した。
(b)温度25℃、湿度50%RHの試料室内に、前記試験用サンプルを設置し、オーバーラップ部60mmとスペーサー中央10mmまでの範囲(幅10mm、長さ70mmの範囲)に、圧板1で20.6Nの一定垂直荷重を加えた。
(c)垂直荷重を加えて10分後に、2層目のトウプレグ3を繊維方向に引張速度1mm/minで引き抜き、引き抜き荷重を測定した。引き抜き開始後に現れる、引き抜き荷重の最大値を静止摩擦力として、下記式(2)~(6)に従って静止摩擦係数を求めた。この際、引き抜きと共に2層目のトウプレグが垂直荷重を受けるオーバーラップ部の面積が減少するため、初期のオーバーラップ部の長さから、引き抜き荷重が最大となった時点の引き抜き変位を差し引いた、オーバーラップ部の面積で受ける垂直荷重の2倍で、引き抜き荷重を除して得た値を静止摩擦係数とした。また、この際、測定開始直後は、トウプレグ3がたるみをもつため、引き抜き荷重が最大となった時点の引き抜き変位は、このたるみが解消するまでの変位を差し引いて補正した値を用いた。本発明における層間摩擦係数は、この静止摩擦係数を3回測定し、その平均値を採用した。
Figure 2022065281000003
ここで、前記式(2)~(6)中の記号は以下の意味を表す。
F:引き抜き荷重の最大値(静止摩擦力)
N:最大荷重時にトウプレグ3とトウプレグ4のオーバーラップ部に加わる垂直荷重
P:最大荷重時にトウプレグ3とトウプレグ4のオーバーラップ部に加わる垂直圧力
34:最大荷重時のトウプレグ3とトウプレグ4のオーバーラップ部の面積
:スペーサー5の面積
W:トウプレグの幅
34:最大荷重時のトウプレグ3とトウプレグ4のオーバーラップ部の長さ
:初期のオーバーラップ部の長さ
:トウプレグ3の初期のたるみが解消するまでの変位
:最大荷重時の引き抜き変位。
<被覆率の測定方法>
まず始めに、トウプレグを10mmの長さに裁断し、エポキシ樹脂組成物を塗工した面を観察できるように試料台に設置し、トウプレグの表面を、キーエンス社製デジタルマイクロスコープ VHX-5000を用いて、倍率200倍で、リング照明を当てながら撮像し、図2に例示するようなデジタル画像を得た。リング照明を当てることで、エポキシ樹脂による光の反射をキャンセルし、エポキシ樹脂に溶解していない固形成分が強調された像を得ることができた。続いて、得られたデジタル画像を、画像解析用ソフトウェアImageJを用いて二値化し、エポキシ樹脂に溶解していない固形成分によって被覆された部分を認識して、その面積を計算した。前記方法で得たエポキシ樹脂に溶解していない固形成分によって被覆された部分の面積を、実際に撮像した面積で除し、百分率表記した値を、被覆率とした。
<トウプレグのずり落ち性の評価方法>
上記<トウプレグの作製方法>に従って得たトウプレグのボビンを25℃に温調したのち、紙管長手方向が作業台の面に対して垂直となるように設置して10分静置し、円筒状のボビン下端の移動量を計測した。10mm以上の移動が生じずボビンの形状安定性が良好であった時をA、低頻度で上記異常が発生するが許容できる時をB、高頻度で上記異常が発生し、許容できない時をCとしてランク付けした。評価順位としてはAが最も良く、Cが最も悪い。
<トウプレグの巻き締まり速度の測定方法>
始めに、上記<トウプレグの作製方法>に従って得たトウプレグのボビンを、張力7Nでリワインドして巻き付け張力を一定にした後、図5に示す装置を用いてトウプレグの巻き終わり箇所に5kgの錘を吊り下げた。次に、錘を吊り下げた後の錘の変位量を変位計(レーザー読取式)で記録して変位カーブ(変位量vs経過時間)を作成した。変位カーブの初期の傾きから巻締まり速度(mm/s)を算出した。本発明において、この巻き締まり速度は、4回の測定の平均値を採用した。なお、この平均値が小さいほどトウプレグは巻締まりにくいといえる。
<トウプレグの拡幅性の評価方法>
始めに、外径146mm、全長250mmの円筒状のライナー(アルミ製)に対し、上記<トウプレグの作製方法>に従って得たトウプレグ1本を用いて、クリール張力を30Nとして、ヘリカル層(±45°)を巻き付けた。次に、図6に示すように、2層目以降のヘリカル層の胴部、および鏡部におけるトウプレグの糸幅をノギスで測定した。ヘリカル層の鏡部の糸幅を、ヘリカル層の胴部の糸幅で除した値を、トウプレグの拡幅比率とした。本発明では、測定箇所を変えながら7箇所について糸幅の測定を行い、算出したトウプレグの拡幅比率の平均値を採用した。なお、この平均値が1.0に近いほど拡幅性が良好であるといえる。
(実施例1)
エポキシ樹脂として“jER(登録商標)”828を100質量部、硬化剤としてAccelerator DY 9577を1.0質量部用いて、上記<エポキシ樹脂組成物の調製方法>に従ってエポキシ樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物の25℃における粘度は17Pa・sであった。また、上記<樹脂硬化板の作製方法>に従って得た樹脂硬化物のガラス転移温度は108℃、破壊靱性値(KIC)は0.7MPa・m0.5であった。
次に、このエポキシ樹脂組成物を用いて、上記<トウプレグの作製方法>に従って、トウプレグを得た。このトウプレグのRcは26.3質量%、被覆率は0%、層間摩擦係数は0.049であった。このトウプレグについて評価を行った結果、ずり落ち性はB評価、拡幅比率は0.86、巻き締まり速度は18と、全ての試験において良好な結果が得られた。
(実施例2~3)
表1に示したようにエポキシ樹脂組成物の組成を変更した以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグを作製、評価した。評価結果は、樹脂組成物の25℃における粘度、樹脂硬化物のガラス転移温度、破壊靱性値(KIC)、Rc、被覆率、層間摩擦係数、ずり落ち性、拡幅比率、巻き締まり速度の全てで良好な結果が得られた。
樹脂組成物の粘度が相対的に高い実施例3では、トウプレグ製造時にエポキシ樹脂組成物を加温し、塗工しやすい粘度に低下させ、かつ硬化反応の進行による増粘がないように温度管理する必要があったが、実施例2では粘度が50Pa・sよりも低いため、簡易的な温調操作のみで良く、操業性が優れていた。
(実施例4~6)
表1に示したようにエポキシ樹脂組成物の組成を変更した以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグを作製、評価した。評価結果は、樹脂組成物の25℃における粘度、樹脂硬化物のガラス転移温度、破壊靱性値(KIC)、Rc、被覆率、層間摩擦係数、ずり落ち性、拡幅比率、巻き締まり速度の全てで良好な結果が得られた。
実施例4~6の全てで、1次粒子径が50nm~1μmである強靱化剤を含むため、優れた靱性値を示した。また、η0.1/η10が1.5以上 であるため、ずり落ち性はA評価が得られ、実施例1よりも優れた結果を示した。
さらに、エポキシ樹脂100質量部に対して、1次粒子径が5~50nmであるフュームドシリカを3~5質量部含む実施例6では、解舒時の巻き締まり抑制効果と、フィラメントワインディング成形時のトウの拡幅性が、より良好なバランスとなった。
(実施例7~10)
表2に示したようにエポキシ樹脂組成物の組成を変更し、硬化剤として25℃で液状の液状芳香族アミンを用いた以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグを作製、評価した。評価結果は、樹脂組成物の25℃における粘度、樹脂硬化物のガラス転移温度、破壊靱性値(KIC)、Rc、被覆率、層間摩擦係数、ずり落ち性、拡幅比率、巻き締まり速度の全てで良好な結果が得られた。
実施例7~10は、25℃で液状の液状芳香族アミンを用いたことにより、被覆率が小さく制御でき、粘度が増大しやすい固形エポキシ(“EPICLON(登録商標)”HP-7200L)や、強靱化剤を多量に配合する場合においても、層間摩擦係数を本発明の適正範囲に調整することが容易であった。
また、実施例7~9は、実施例10と比較してTgが高く、耐熱性が良好だった。さらに、実施例8、および実施例9は、グリシジルアミン型エポキシ樹脂を含むため、実施例7と比較して25℃×24時間後の増粘倍率が小さく、保管安定性が優れていた。
(実施例11~13)
表2に示したようにエポキシ樹脂組成物の組成を変更した以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグを作製、評価した。評価結果は、樹脂組成物の25℃における粘度、樹脂硬化物のガラス転移温度、破壊靱性値(KIC)、Rc、被覆率、層間摩擦係数、ずり落ち性、拡幅比率、巻き締まり速度の全てで良好な結果が得られた。
固形成分を含んでいる場合でも、被覆率を0%以上かつ2.5%未満とすることにより、層間摩擦係数を適正範囲に制御することができた。また、エポキシ樹脂100質量部に対して、25℃においてエポキシ樹脂に不溶、かつ、1次粒子径が0.5~150μmである粒子を0.5~2質量部含み、前記Rcが20~28%である、実施例11、および実施例13では、解舒時の巻き締まり抑制効果と、フィラメントワインディング成形時のトウの拡幅性が、実施例12と比較してより良好なバランスとなった。
(比較例1および比較例2)
表3に示したようにエポキシ樹脂組成物の組成を変更した以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグを作製、評価した。評価の結果、被覆率が2.5%以上であった比較例1および比較例2は、層間摩擦係数が0.10以上と大きかっため、拡幅比率が小さく、不十分な結果となった。
(比較例3)
表3に示したようにエポキシ樹脂組成物の組成を変更し、25℃粘度を5Pa・sよりも低くした以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグを作製、評価した。評価の結果、層間摩擦係数が0.021と、0.04よりも小さかったため、拡幅比率は0.93と良好であったものの、ずり落ち性はC評価、巻き締まり速度は89mm/secと不十分な結果となった。
(比較例4)
表3に示したようにエポキシ樹脂組成物の組成を変更し、25℃粘度を150Pa・sよりも高くした以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグを作製、評価した。評価の結果、層間摩擦係数が0.11と、0.10よりも大きかったため、ずり落ち性はA評価、巻き締まり速度は4.9mm/secと良好であったものの、拡幅比率は0.70と不十分な結果となった。
(比較例5)
表3に示したようにエポキシ樹脂組成物の組成を変更し、Rcを18.9%と20%よりも小さくした以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグを作製、評価した。評価の結果、層間摩擦係数が0.64と、0.10よりも大きかったため、ずり落ち性はA評価、巻き締まり速度は0.5mm/secと良好であったものの、拡幅比率は0.61と不十分な結果となった。
(比較例6)
表3に示したようにエポキシ樹脂組成物の組成を変更し、Rcを42.5%と40%よりも大きくした以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグを作製、評価した。評価の結果、層間摩擦係数が0.033と、0.04よりも小さかったため、拡幅比率は0.97と良好であったものの、ずり落ち性はC評価、巻き締まり速度は45mm/secと不十分な結果となった。また、Rcが大きいことによって、トウプレグのボビンからの樹脂組成物の染み出しや、フィラメントワインディング成形工程における樹脂組成物の飛散が多く、プロセス性が不十分であった。
Figure 2022065281000004
Figure 2022065281000005
Figure 2022065281000006
表中の組成は質量部を表す。
1:圧板
2:離型紙
3:2層目のトウプレグ
4:1層目、3層目のトウプレグ
5:スペーサー用トウプレグ
6:セロハンテープ製スペーサー
7:トウプレグ
8:紙管
9: 錘
10: 可動式の錘台
11:変位計
12:トウプレグ
13:ライナー
14:ヘリカル層の胴部の糸幅
15:ヘリカル層の鏡部の糸幅

Claims (12)

  1. 25℃における粘度が5~150Pa・s であるエポキシ樹脂組成物を、
    繊度が30~4000g/1000mである炭素繊維束に含浸させたトウプレグであって、
    該トウプレグの樹脂含有率(Rc)が20~40質量%であり、
    かつ、該トウプレグの表面を光学顕微鏡を用いて倍率200倍で観察したとき、視野面積に対する、エポキシ樹脂に溶解していない固形成分によって被覆された部分の面積の割合(被覆率)が0%以上かつ2.5%未満であり、
    さらに、該トウプレグを同一方向に3層積層し、中央のトウプレグを、温度25℃、湿度50%RH、速度1mm/min、垂直荷重20.6Nの条件下で引き抜いて測定した層間摩擦係数が、0.04以上かつ0.10未満であるトウプレグ。
  2. 前記炭素繊維の単繊維表面の算術平均粗さ(Ra)が1~20nmである請求項1に記載のトウプレグ。
  3. 前記エポキシ樹脂組成物が、25℃でエポキシ樹脂に相溶する強靱化剤および/または1次粒子径が50nm~1μmである強靱化剤を含み、該エポキシ樹脂組成物を150℃で4時間硬化させて得られる硬化物の靱性値KIcが1.0~3.0MPa・m0.5 である、請求項1または2に記載のトウプレグ。
  4. 前記エポキシ樹脂組成物を、平行平板振動レオメータを用いて、25℃、周波数0.1Hzで測定した複素せん断粘度(η0.1)の、平行平板振動レオメータを用いて、25℃、周波数10Hzで測定した複素せん断粘度(η10)に対する比(η0.1/η10)が1.5以上 である、請求項1~3のいずれかに記載のトウプレグ。
  5. エポキシ樹脂100質量部に対して、1次粒子径が5~50nmであるフュームドシリカを3~5質量部含む、請求項4に記載のトウプレグ。
  6. エポキシ樹脂100質量部に対して、25℃においてエポキシ樹脂に不溶、かつ、1次粒子径が0.5~150μmである粒子を0.5~2質量部 含み、前記Rcが20~28%である、請求項1~3のいずれかに記載のトウプレグ。
  7. 前記25℃においてエポキシ樹脂に不溶、かつ、1次粒子径が0.5~150μmである粒子として、ジシアンジアミド を含む、請求項6に記載のトウプレグ。
  8. 硬化剤として、25℃においてエポキシ樹脂に相溶している硬化剤を含む、請求項1~7のいずれかに記載のトウプレグ。
  9. 前記硬化剤として、25℃で液状の液状芳香族アミンを含む、請求項1~8のいずれかに記載のトウプレグ。
  10. 前記液状芳香族アミンとして、下記化学式(1)で表される化合物を含む、請求項9に記載のトウプレグ。
    Figure 2022065281000007
    式中、R、R、Rは、水素、炭素数1~4のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基のうちのいずれかであり、R、R、Rは同一であっても異なっていてもよい。
  11. エポキシ樹脂として、グリシジルアミン型エポキシ樹脂を含む、請求項1~10のいずれかに記載のトウプレグ。
  12. 請求項1~11のいずれかに記載のトウプレグを硬化させてなる繊維強化複合材料。
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