JP5757309B2 - エポキシ樹脂組成物、トウプリプレグ及び圧力容器 - Google Patents
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Description
[1] エポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物は、成分A:エポキシ樹脂、成分B:三ハロゲン化ホウ素アミン錯体であるエポキシ樹脂硬化剤、及び成分C:熱可塑性樹脂を含み、
前記成分Cが以下の成分であり、
前記エポキシ樹脂組成物は硬化させたとき、硬化物中で、前記エポキシ樹脂の硬化物相と、前記熱可塑性樹脂の相とが海島相分離構造である相分離構造1を形成し、
前記相分離構造1における島構造を海構造として、さらに海島相分離構造である相分離構造2を形成する特性を有するエポキシ樹脂組成物。
成分C:S−B−Mトリブロック共重合体及びM−B−Mトリブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1つのブロック共重合体であり、
前記S、B及びMで表される各ブロックは共有結合によって連結されており、
前記ブロックMは、ポリメタクリル酸メチルのホモポリマー、又は、前記ブロックMの仕込み量である全モノマーの総質量に対して、モノマー換算でメタクリル酸メチルを少なくとも50質量%含有するコポリマーであり、
前記ブロックBは、ブロックMに非相溶で、そのガラス転移温度が20℃以下であるブロックであり、
前記ブロックSは、ブロックB及びMに非相溶で、かつ、そのガラス転移温度が、ブロックBのガラス転移温度よりも高いブロックである。
[2] 前記成分Bの含有量が、前記成分A 100質量部に対し、8〜20重量部であり、前記成分Cの含有量が、前記成分A 100質量部に対し、1〜50重量部である前記[1]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[3] 前記相分離構造1における、海構造がエポキシ樹脂の硬化物相であり、島構造が熱可塑性樹脂の相である、前記[1]又は[2]に記載のエポキシ樹脂組成物。
[4] 前記相分離構造2における、島構造がエポキシ樹脂の硬化物からなる球状である、前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
[5] 前記相分離構造1における島構造の、長辺の長さが50nm〜300μmである、前記[1]〜[4]のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
[6] 前記相分離構造2における島構造の、長辺の長さ(但し、該島構造が球状の場合はその直径)が10nm〜100μmである、前記[1]〜[5]のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
[7] 更に、成分D:ゴム粒子を、前記成分A 100質量部に対し、12〜110質量部含有する、前記[1]〜[6]のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物。
[8] 前記[1]〜[7]のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物を、強化繊維束に含浸させてなるトウプリプレグ。
[9] 前記強化繊維束が炭素繊維束である前記[8]に記載のトウプリプレグ。
[10] 前記炭素繊維束は、繊維径3〜12μmのフィラメントを1000〜70000本まとめた炭素繊維束である、前記[9]に記載のトウプリプレグ。
[11] 前記炭素繊維の、JIS R 7601に準拠したストランド強度が3500 MPa以上である、[9]または[10]記載のトウプリプレグ。
[12] 前記[8]〜[11]のいずれか1つに記載のトウプリプレグを用いて製造された複合材料補強圧力容器。
[13] 前記[1]〜[7]のいずれか1つに記載のエポキシ樹脂組成物を含浸させた強化繊維束を用いて、フィラメントワインディング成形により製造された複合材料補強圧力容器。
[14] 前記エポキシ樹脂組成物を含浸させた強化繊維束を、ライナーに巻き付け、フィラメントワインディング成形により製造された複合材料補強圧力容器であり、前記ライナーが熱可塑性樹脂製である、前記[13]に記載の複合材料補強圧力容器。
[15] 前記強化繊維束が炭素繊維束である、前記[13]又は[14]に記載の複合材料補強圧力容器。
[16] ライナーの外面を複合材料層が被覆してなる複合材料補強圧力容器であり、該複合材料層が、前記[8]〜[11]のいずれか1つに記載のトウプリプレグを用いて形成された層である、複合材料補強圧力容器。
[17] 前記ライナーが熱可塑性樹脂製である、前記[16]に記載の複合材料補強圧力容器。
[18] 前記[8]〜[11]のいずれか1つに記載のトウプリプレグを用いて形成された、複合材料からなる緊張材。
本発明におけるエポキシ樹脂組成物は下記の成分A〜Cを必須成分とする。
成分A:エポキシ樹脂
成分B:三ハロゲン化ホウ素アミン錯体
成分C:熱可塑性樹脂(前記成分A及びBを含有するエポキシ樹脂組成物と相溶可能であり、かつ硬化後に相分離構造を形成するポリマー)
また本発明におけるエポキシ樹脂組成物は、前記成分A〜C以外にも、上述の通り成分D:ゴム粒子や、各種添加剤等を含有していてもよい。
このようなエポキシ樹脂組成物は、公知の方法に従って調製すればよく、例えば特開2012−25892号公報や、WO2011/037239号公報等に記載の方法に準じて調製すればよい。
なお、本願明細書及び請求の範囲における「海島相分離構造」とは相分離構造の1種である。例えば2種類の樹脂を混合し硬化させた際に、混合比率に偏りがあれば、大量成分が連続相、少量成分が孤立相となる構造となる。このとき、連続相を「海構造」、孤立相を「島構造」と称する。
前記相分離構造1においては、海構造がエポキシ樹脂の硬化物相であり、島構造が熱可塑性樹脂の相であることが好ましい。また前記相分離構造2においては、島構造がエポキシ樹脂の硬化物相であることが好ましく、球状であることが特に好ましい。
海構造及び島構造が、各々このような相であることにより、高い靱性及び耐熱性を有することができると考えられる。なお、「エポキシ樹脂の硬化物相」は、その相を破壊しない範囲で、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤由来の成分以外の成分を含有していてもよく、「熱可塑性樹脂の相」も同様に、その相を破壊しない範囲で、熱可塑性樹脂以外の成分を含有していてもよい。
前記相分離構造1における島構造の、長辺の長さは、特に制限は無いが、好ましくは50nm〜300μm、より好ましくは50nm〜200nm、更に好ましくは50nm〜100μmである。
この範囲であることにより、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物における亀裂が島相へ進展しやすくなり、亀裂進展距離が伸び、硬化物の靱性値が向上するという利点がある。 また相分離構造2における島構造の、長辺の長さ(但し、前記島構造が球状の場合はその直径)は、前記相分離構造1の島構造(即ち、相分離構造2の海構造)のサイズを超えない限り特に制限は無いが、好ましくは10nm〜100μm、より好ましくは10nm〜50μmであり、更に好ましくは10nm〜30μmである。
この範囲であることにより、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物における亀裂が島相へ進展しやすくなり、かつ、小さい島相の方が大きい島相よりも亀裂進展距離が伸び、硬化物の靱性値が向上するという利点がある。
なお、ここでいう「長辺の長さ」とは、島構造の最長部分の長さを意味する。
長辺の長さを測定するには、本願実施例に記載のように、まずエポキシ樹脂組成物を用いて硬化板を作製し、その断面をレーザースキャン顕微鏡で観察し、島構造の各短辺における最短距離を結び、その中心を線で繋いだ長さを長辺とした。島構造の長辺の長さの測定例を図3に示す。
本発明におけるエポキシ樹脂組成物は、前記エポキシ樹脂100質量部に対し、前記エポキシ樹脂硬化剤を8〜20重量部、前記熱可塑性樹脂を1〜50重量部含有することが好ましい。
特に、組成物に含まれる各成分が、以下に記す種類及び量であることが好ましい。
成分(A)はエポキシ樹脂である。
通常、エポキシ樹脂という用語は熱硬化性樹脂の一つのカテゴリーの名称、および分子内に複数の1,2−エポキシ基を有する化合物という化学物質のカテゴリーの名称として用いられるが、本発明においては後者の意味で用いられる。また、エポキシ樹脂組成物という用語はエポキシ樹脂と硬化剤、場合により他の成分を含む組成物を意味する。
前記エポキシ樹脂は、分子内に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であれば特に制限は無いが、硬化物への耐熱性付与の観点から、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂、及び分子内に脂肪族環を有するエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1つのエポキシ樹脂であることが好ましい。
成分Aとしては、分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂を使用することが好ましい。分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂を使用することにより、本発明のエポキシ樹脂組成物の粘度を取り扱いに適した範囲に調整することが出来る。また、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物の機械的特性を適正な範囲に調整することができる。
なお、ここでいう「2官能のエポキシ樹脂」とは、分子内に2個のエポキシ基を有する化合物を意味する。
分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂における芳香族環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環等が挙げられる。
分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、レゾルシンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ヒドロキノンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テレフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスクレゾールフルオレンジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、さらに2種以上のエポキシ樹脂を併用しても良い。
中でも、分子内に芳香族環を有する2官能のエポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂組成物の粘度を低くすることが出来るため取り扱いや強化繊維束への含浸が容易であり、かつ硬化物の耐熱性も優れる点から、特にエポキシ当量が170g/eq以上、200g/eq以下である液状のビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましい。
なお、ここでいう「3官能、4官能のエポキシ樹脂」とは、分子内に3個または4個のエポキシ基を有する化合物を意味する。
分子内に芳香族環を有する3官能や4官能のエポキシ樹脂における芳香族環としては、例えば「2官能のエポキシ樹脂」が有しうる芳香族環と同様の環が挙げられる。
分子内に芳香族環を有する4官能エポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルアミン型エポキシ樹脂が挙げられる。具体的には、ジアミノジフェニルメタン型、ジアミノジフェニルスルホン型、メタキシレンジアミン型、等のエポキシ樹脂が挙げられる。
中でもエポキシ樹脂組成物の粘度を比較的低くすることが出来るため、強化繊維束への含浸や取り扱いが容易となり、かつ硬化物の耐熱性も優れることから、エポキシ当量が110g/eq以上、130g/eq以下であるN,N,N’,N’−テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)型エポキシ樹脂が特に好ましく用いられる。
なお、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂として、2官能エポキシ樹脂と3官能や4官能エポキシ樹脂とを併用する場合、これらの割合は、質量比で3官能及び4官能エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1つのエポキシ樹脂:2官能エポキシ樹脂が10:90〜40:60であることが好ましく、15:85〜60:40であることがより好ましい。
2官能エポキシ樹脂の含有量が著しく多いと、硬化物のガラス転移温度が150℃以上の比較的高い耐熱性を付与することが困難であるという問題が生じる場合がある。逆に、2官能エポキシ樹脂の含有量が著しく少ないと、硬化物が著しく脆くなり、エポキシ樹脂組成物が比較的高粘度となり、取り扱いや強化繊維束への含浸が困難になるという問題が生じる可能性がある。また3官能や4官能エポキシ樹脂の含有量が著しく多いと、エポキシ樹脂組成物が比較的高粘度となり、取り扱いや強化繊維束への含浸が困難になるという問題が生じる場合がある。逆に、3官能や4官能エポキシ樹脂の含有量が著しく少ないと、硬化物のガラス転移温度が150℃以上の比較的高い耐熱性を付与することが困難であるという問題が生じる可能性がある。
脂肪族環にエポキシ環が縮合した化合物としては、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチルカルボキシレート等が挙げられる。
成分Aとしてこれらを使用する場合、エポキシ樹脂組成物の粘度を低くすることが出来るため、取り扱いや強化繊維束への含浸が容易となり、かつ硬化物の耐熱性も優れるため、好ましい。さらに、繊維強化複合材料を作製した場合、マトリックス樹脂と強化繊維の表面との接着の強さを適切に調整できる効果も得られるため、好ましい。また、脂肪族環にグリシジル基等のエポキシ基を含む置換基が結合した化合物における脂肪族環としては、炭素数6の脂肪族環が好ましく、具体的にはシクロヘキサン環等が挙げられる。
脂肪族環にグリシジル基等のエポキシ基を含む置換基が結合した化合物としては、例えばヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、メチルテトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。成分Aとしてこれらを使用する場合、エポキシ樹脂組成物の粘度を低くすることが出来るため、取り扱いや強化繊維束への含浸が容易となり、かつ繊維強化複合材料を作製した場合、マトリックス樹脂と強化繊維の表面との接着の強さを適切に調整できるため、好ましい。上記、分子内に脂肪族環を有するエポキシ樹脂は、2種以上を併用しても良い。
また、成分Aとして、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂と分子内に脂肪族環を有するエポキシ樹脂とを併用して用いても良い。
このように、本発明の成分Aとしては種々のエポキシ樹脂が使用できるが、硬化物への耐熱性付与の観点から、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂が好ましい。特に、成分A100質量部中、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂が30〜100質量部であることが好ましく、40〜100質量部であることがより好ましく、50〜100質量部であることが更に好ましく、さらに60〜100重量部であることが最も好ましい。
具体的には、上記分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂としては、エポキシ当量が170g/eq以上、200g/eq以下である液状のビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましく、これらを成分A100質量部中、30〜100質量部で用いることが好ましい。
なお、成分Aとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、上述以外のエポキシ樹脂を含有していてもよい。
成分Bは、三ハロゲン化ホウ素アミン錯体である。
三ハロゲン化ホウ素アミン錯体としては、三塩化ホウ素や三フッ化ホウ素等のハロゲン化ホウ素と有機アミンとからなる錯体が好ましい。即ち、成分Bとしては、三塩化ホウ素アミン錯体や三フッ化ホウ素アミン錯体が好ましい。
具体的には、例えば三フッ化ホウ素アニリン錯体、三フッ化ホウ素p−クロロアニリン錯体、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体、三フッ化ホウ素イソプロピルアミン錯体、三フッ化ホウ素ベンジルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジメチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジエチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ジブチルアミン錯体、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素ジベンジルアミン錯体、これらに於けるフッ素原子が塩素原子に置き換わった化合物、及び三塩化ホウ素ジメチルオクチルアミン錯体等が挙げられる。
これら錯体の中でも特にエポキシ樹脂に対する溶解性が優れ、含有する組成物の保存安定性に優れ、工業的に入手が容易である三フッ化ホウ素ピペリジン錯体又は三塩化ホウ素ジメチルオクチルアミン錯体が好ましく使用できる。
これら錯体を硬化剤として使用することによって作製された繊維強化複合材料は、マトリックス樹脂と強化繊維の表面との接着の強さにおいて、優れた引張強度を発現するのに適した強さを得ることが出来る。
前記成分Aとして、分子内に芳香族環を有するエポキシ樹脂及び脂肪族環にグリシジル基等のエポキシ基を含む置換基が結合した化合物(特にヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル)からなる群から選択される少なくとも1つを使用する場合は、より低温で短時間に硬化できることから、成分Bとして三塩化ホウ素アミン錯体を使用することが好ましい。
一方、前記成分Aとして、脂肪族環にエポキシ環が縮合した化合物を使用する場合には、より低温で短時間に硬化できることから、成分Bとして三フッ化ホウ素アミン錯体を使用することが好ましい。
成分Bの好ましい配合量は、本発明のエポキシ樹脂組成物中に含まれる成分A100質量部に対して、通常8質量部以上、好ましくは9質量部以上であり、また通常20質量部以下、好ましくは18質量部以下、より好ましくは17質量部以下である。
即ち、成分Bの好ましい配合量は、成分A100質量部に対して、8質量部以上、20質量部以下が好ましく、8質量部以上、18質量部以下がより好ましく、9質量部以上、18質量部以下がよりさらに好ましく、9質量部以上、17質量部以下が特に好ましい。成分Bの配合量が著しく多い、又は著しく少ない場合、硬化樹脂の耐熱性が低くなってしまう可能性がある。
本発明におけるエポキシ樹脂組成物に含まれる成分C:熱可塑性樹脂としては、前記成分A及びBを含有するエポキシ樹脂組成物と相溶可能であり、かつ成分Cを含むエポキシ樹脂を硬化したときに、硬化物中で、相分離構造を形成する特性を有するポリマー、が挙げられる。
成分Cとしては、具体的には、S−B−Mトリブロック共重合体、及びM−B−Mトリブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体が好ましい。
ここで、前記S、B及びMで表される各ブロックは、共有結合によって連結されている。
ブロックMは、ポリメタクリル酸メチルのホモポリマー、又は、前記ブロックMの仕込み量である全モノマーの総質量に対して、モノマー換算でメタクリル酸メチルを少なくとも50質量%含有するコポリマーである。
ブロックBは、ブロックMに非相溶で、そのガラス転移温度が20℃以下であるブロックであり、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン及び(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1つのモノマーを重合してなるポリマーである。
ブロックSは、ブロックB及びMに非相溶で、かつ、そのガラス転移温度が、ブロックBのガラス転移温度よりも高いブロックであり、スチレン、α−メチルスチレン及びビニルトルエンから選ばれる少なくとも1つのモノマーを重合してなるポリマーである。
トリブロック共重合体M−B−Mの具体例としては、メタクリル酸メチル−ブチルアクリレート−メタクリル酸メチルからなる共重合体が挙げられ、具体的には、Nanostrength M22(アルケマ社製)、極性官能基をもつNanostrength M22N(アルケマ社製)等が挙げられる。
トリブロック共重合体S−B−Mの具体例としては、スチレン−ブタジエン−メタクリル酸メチルからなる共重合体が挙げられ、具体的には、Nanostrength 123、Nanostrength 250、Nanostrength 012,Nanostrength E20,Nanostrength E40(以上、アルケマ社製)等が挙げられる。
成分Cとしては、各種ポリマーを1種類単独で使用してもよく、2種類以上のポリマーを併用してもよい。
成分Cの好ましい配合量は、本発明のエポキシ樹脂組成物中に含まれる成分A100質量部に対して、通常1〜50質量部であり、さらに好ましくは5〜25重量部である。成分Cが多すぎるとエポキシ樹脂組成物が高粘度となり取り扱いや強化繊維束への含浸が困難になるという問題が生じる場合がある。逆に、成分Cが少なすぎると成分Cを含有させることによる効果が十分に得られない可能性がある。
本発明におけるエポキシ樹脂組成物は、さらに成分D:ゴム粒子を含有してもよい。
成分Dとしては、架橋ゴム粒子、及び架橋ゴム粒子の表面に架橋ゴム粒子を構成するポリマーとは異なるポリマーをグラフト重合したコアシェル型ゴム粒子からなる群から選択される少なくとも1つのゴム粒子が、好ましく用いられる。
架橋ゴム粒子については、ゴムの種類は制限されず、例えばブタジエンゴム、アクリルゴム、シリコ−ンゴム、ブチルゴム、NBR,SBR,IR,EPR等が用いられる。
架橋ゴム粒子の例としては、製品名:YR−500シリーズ(東都化成(株)製)等が挙げられる。
「コアシェル型ゴム粒子」とは、架橋されたゴム状ポリマーを主成分とする粒子状コア成分の表面に、コア成分とは異種のシェル成分ポリマーをグラフト重合することで粒子状コア成分の表面の一部あるいは全体をシェル成分で被覆したゴム粒子である。
かかるシェル成分を構成する成分としては、例えばアクリル酸エステル系モノマー、及びメタクリル酸エステル系モノマー、及び芳香族系ビニルモノマー等からなる群から選択される少なくとも1種が重合した重合体を用いることができる。コア成分としてスチレンとブタジエンから構成される架橋ゴム状ポリマーを使用する場合、シェル成分としては、(メタ)アクリル酸エステルであるメタクリル酸メチルと芳香族ビニル化合物であるスチレンの混合体を好適に用いることができる。
具体的な市販品としては、アクリルゴムを使用した製品名:W−5500或いは製品名:J−5800(三菱レイヨン(株)製)、シリコーン・アクリル複合ゴムを使用した製品名:SRK−200E(三菱レイヨン(株)製)、ブタジエン・メタクリル酸アルキル・スチレン共重合物からなる製品名:パラロイドEXL−2655(呉羽化学工業(株)製)、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体からなる製品名:スタフィロイドAC−3355或いは製品名:TR−2122(武田薬品工業(株)製)、アクリル酸ブチル・メタクリル酸メチル共重合物からなる製品名:PARALOID EXL−2611或いは製品名:EXL−3387(Rohm&Haas社製)等を挙げることができる。
このようなマスターバッチ型の架橋ゴム粒子分散エポキシ樹脂としては、アクリルゴムを含有した製品名:BPF307或いは製品名:BPA328(日本触媒(株)製);スチレン及びブタジエンの共重合体のコア成分とメタクリル酸メチルを含み、かつエポキシ樹脂と反応する官能基を有するシェル成分とからなるコアシェルゴム粒子を含有した製品名:MX−113或いは製品名:MX−416;ブタジエンゴムを含有した製品名:MX−156;シリコンゴムを含有した製品名:MX−960(カネカ(株)製)等が挙げられる。
なお、硬化後のエポキシ樹脂組成物の靭性向上のため、特に後述する圧力容器に使用した場合の破壊圧力の向上効果のためには、成分Dはブタジエンゴムを含むゴム粒子であることが好ましい。すなわち、ブタジエンゴム粒子や、ブタジエンゴム粒子をコア成分とするコアシェル型ゴム粒子が好ましく、ブタジエンゴム粒子をコア成分とするコアシェル型ゴム粒子が特に好ましい。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物中における成分Dの粒径は、50nm以上、400nm以下であることが好ましく、50nm以上、300nm以下であることがより好ましい。硬化物中の成分Dの粒径は、以下の方法で測定することができる。
ASTM D5045に準拠して硬化樹脂の破壊靱性値を測定した際の試験体破面の任意の100μm2の範囲をSEMを用いて観察し、確認された成分Dの粒径、又は成分Dが抜け落ちた凹部の径を任意の10箇所測定してその平均値を成分Dの粒径とする。
(成分Dの粒径をSEMで確認困難な場合)
硬化樹脂板をジクロロメタンに浸漬し成分Dを溶出させる。成分Dを溶出させた硬化樹脂板の任意の100μm2の範囲を走査型プローブ顕微鏡で観察し、確認された成分Dが溶出した凹部の径を任意の10箇所測定してその平均値を成分Dの粒径とする。
硬化物中の粒径を前記範囲内とするためには、好ましくは一次粒子の体積平均粒子径が50nm以上、400nm以下、より好ましくは50nm以上、300nm以下の成分D:ゴム粒子を使用し、攪拌機やロールミル等を使用して成分A中へ分散させ、又は成分Dが予め成分Aに分散されたマスターバッチ型のゴム粒子分散エポキシ樹脂を用いて、エポキシ樹脂組成物を調製することにより、前記エポキシ樹脂組成物の硬化物中における成分Dの粒径を上記範囲内に制御することができる。なお、ゴム粒子の一次粒子の体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分析計等で測定することができる。
成分Dの好ましい配合量は、本発明のエポキシ樹脂組成物中に含まれる成分(A1)100質量部に対して、通常12質量部以上、好ましくは16質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、また通常110質量部以下、好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下である。
即ち、成分Dの好ましい配合量は、成分A100質量部に対して、通常12質量部以上、110質量部以下が好ましく、16質量部以上、100質量部以下がより好ましく、20質量部以上、80質量部以下が特に好ましい。
成分Dが著しく多い場合はエポキシ樹脂への分散が困難となり、エポキシ樹脂組成物が高粘度となってしまい、取り扱いや強化繊維束への含浸が困難となる問題が生じる場合がある。逆に、成分Dが著しく少ない場合は、硬化後のエポキシ樹脂組成物の靭性向上が不十分で、本発明の効果が得られないという問題が生じる可能性がある。
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、シリカ粉末、アエロジル、マイクロバルーン、三酸化アンチモン、アルミナ、酸化チタン等の無機粒子;リン化合物等の難燃剤;カーボンブラック、活性炭等の炭素粒子;また、消泡剤;湿潤剤等の添加剤を目的に応じて配合してもよい。これら添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であればよく、本発明におけるエポキシ樹脂組成物100重量部に対して0.1重量部以上、20重量部以下であることが望ましい。
トウプリプレグとは、数千〜数万本のフィラメントが一方向に配列した強化繊維束に樹脂組成物を含浸させて得られる細幅の中間基材である。本発明のトウプリプレグは、上述した本発明のエポキシ樹脂組成物を強化繊維束に含浸させることにより得られる。この強化繊維束を構成するフィラメントの繊維径及び本数に特に制限は無いが、繊維径は3〜100μmであることが好ましく、本数は1,000〜70,000本であることが好ましい。
なお本発明における「繊維径」とは、それぞれの繊維の断面の等面積円相当直径のことである。
繊維径が3μm未満では、例えばフィラメントが、各種加工プロセスにおいて、ロールやボビン等の表面で横移動を起こす際に、切断したり毛羽だまりが生じたりする場合があり、100μmを越えるとフィラメントが硬くなり、屈曲性が低下する傾向がある。
なお、強化繊維束が炭素繊維束である場合、フィラメントの繊維径は3〜12μm、本数は1,000〜70,000であることが好ましい。
繊維径が3μm未満では、例えばフィラメントが、各種加工プロセスにおいて、ロールやボビン等の表面で横移動を起こす際に、切断したり毛羽だまりが生じたりする場合がある。上限については、炭素繊維の製造上の困難性から、通常12μm程度である。
トウプリプレグに含まれるエポキシ樹脂組成物の含有量は、20重量%以上、40重量%以下が好ましい。20重量%以上であると、強化繊維束中に十分エポキシ樹脂組成物を容易に行き渡らせることが出来、40重量%以下であると、強化繊維複合材料の繊維含有体積率が高いため、機械特性を効果的に発現できる。機械特性の性能をより効果的に発現させるには、20重量%以上、30重量%以下がより好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、公知の手段で硬化させることができる。中でも熱風炉等の、エポキシ樹脂組成物の周囲を均一に加熱できる加熱手段を使用することが好ましい。好ましい硬化温度及び硬化時間は、成分(A)及び成分(B)の種類により異なるが、通常110℃〜135℃程度で2時間くらい加熱することにより硬化させることができる。
<好ましいトウプリプレグ製造方法>
(1)強化繊維束の少なくとも片面にエポキシ樹脂組成物を供給する前に、予めトウを加熱、拡幅する。
(2)強化繊維束の少なくとも片面にエポキシ樹脂組成物を供給する。
(3)供給したエポキシ樹脂組成物を強化繊維束へ均一に含浸させる。
(4)トウプリプレグの温度を室温程度まで冷却する。
(5)トウプリプレグを紙管等に巻取る。
このようにして得られた本発明のトウプリプレグはボビンからの解舒、工程通過性、ドレープ性に優れるという長所(特色)があるため、フィラメントワインディング成形や引抜き成形等に適する。
「複合材料補強圧力容器」とは、複合材料で補強した圧力容器を意味する。
「複合材料」とは、繊維強化複合材料を意味し、本発明においては、本発明のトウプリプレグを加熱(及び必要に応じて加圧)し硬化させた後、冷却して得られる硬化物か、或いは強化繊維束を本発明のエポキシ樹脂組成物に含浸させた後、プリプレグを経ずに加熱(及び必要に応じて加圧)し硬化させた後、冷却して得られる硬化物を意味する。
本発明の複合材料は、スポーツ用品、自動車、圧力容器、航空機、緊張材等の一般産業用途に用いることが出来るが、特に圧力容器や緊張材に用いた場合、高い性能を示すことを特徴とする。特に、水素貯蔵用の圧力容器や自動車等の移動体に搭載する圧力容器として使用した場合に、少量の複合材料による補強で圧力容器として十分な性能を得られるため、より軽量な圧力容器を得ることができ、その長所が最も生かされる。
本発明の複合材料補強圧力容器(以下、単に「本発明の圧力容器」と称することがある)は、通常、その内層に樹脂製や金属製のライナーを用い、このライナーの外面を複合材料層が覆うことにより形成されている。
本発明の複合材料補強圧力容器の製造方法に用いるライナーは、用途によって樹脂製、又は金属製を選んで用いることができる。
なお、本願明細書及び請求の範囲における「ライナー」とは、筒状の胴と胴の両端開口部を閉鎖する鏡板からなり、通常両端の鏡板の1つは口金取り付け部を有し、他方は口金取り付け部を有さない。
水素貯蔵用の圧力容器や自動車等の移動体に搭載する圧力容器では、より軽量化できるため樹脂製ライナーを使用することが好ましい。樹脂製ライナーとしては、高密度ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を回転成形やブロー成形にて容器形状に賦形し、金属製の口金をつけたライナーが使用できる。樹脂製ライナーは耐熱性が比較的低いためエポキシ樹脂組成物を硬化する際の反応発熱を低く抑える必要がある。本発明はゴム粒子等のエポキシ樹脂や硬化剤以外の発熱反応を起こさない成分を比較的多く含むため、硬化時の発熱が小さく、ライナーが樹脂製であっても好適に使用することが出来る。又、金属製のライナーは、パイプ形状や板形状のアルミニウム合金や鋼鉄等をスピニング加工等により容器形状に賦形したあとで、口金形状を付与して得られる。
本発明の圧力容器における複合材料層の形成工程において、前述したトウプリプレグや、エポキシ樹脂組成物を含浸させた強化繊維束をライナーに巻き付けるための代表的な方法として、フィラメントワインディング(FW)法がある。
フィラメントワインディング(FW)法は、強化繊維束を1本、又は複数本引き揃え、マトリックス樹脂を供給、含浸させながら、回転するタンクライナーへ所望の張力、角度で強化繊維束を巻きつけて行くこと、又はトウプリプレグを使用する場合は、強化繊維束を1本、又は複数本引き揃え、マトリックス樹脂の供給、含浸は行わず、回転するタンクライナーへ所望の張力、角度で巻きつけて行くこと、を含む成形法である。
本発明で用いるフィラメントワインディング装置(FW機)は従来公知のFW機でよく、ただ1本の強化繊維束、又はトウプリプレグを芯金又は芯金に固定したライナーに巻き付けることができるFW機であっても、複数本の強化繊維束、又はトウプリプレグを同時に巻き付けられるFW機であってもかまわない。
本発明においては、その層構造の構成、各層の厚み、強化繊維束、又はトウプリプレグをライナーへ巻きつける角度、及び張力は、容器の用途や形状、内容物の種類等によって自由に選択することができる。
本発明の複合材料補強圧力容器は、少量の複合材料による補強で圧力容器として十分な性能が得られるため、軽量であり、特に水素貯蔵用の圧力容器や自動車等の移動体に搭載する圧力容器として好適に使用される。
<実施例 及び、比較例>
各例で用いた樹脂組成物の原料、調製方法、及び各物性の測定方法を以下に示す。各エポキシ樹脂組成物の組成、及び物性の測定結果を実施例、比較例を表1に示す。なお、表1の中の各成分の数値は、エポキシ樹脂組成物に配合する各成分の質量部数を表す。
実施例、比較例においては以下の原料を使用した。
jER828
「製品名」jER828
「成分」ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:189g/eq)
CY−184
「製品名」ARALDITE CY−184
「成分」ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂(エポキシ当量:151g/eq)
「メーカー」ハンツマン・ジャパン株式会社
MX−113
「製品名」カネエースMX−113
「成分」
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(2官能エポキシ樹脂。エポキシ当量: 189g/eq):66質量%
ブタジエン系コアシェル型ゴム粒子(体積平均粒径:100nm):3 3質量%
「メーカー」株式会社カネカ
MX−416
「製品名」カネエースMX−416
「成分」
TGDDM型エポキシ樹脂(4官能エポキシ樹脂。エポキシ当量:11 2g/eq):75質量%
DY9577
「製品名」DY9577
「成分」三塩化ホウ素アミン錯体
「メーカー」ハンツマン・ジャパン株式会社
M52N
「製品名」Nanostrength M52N
「成分」メタクリル酸メチルとブチルアクリレートとのブロック共重合
「メーカー」アルケマ株式会社
M52
「製品名」Nanostrength M52
「成分」メタクリル酸メチルとブチルアクリレートとのブロック共重合
「メーカー」アルケマ株式会社
(硬化剤)
DICY7
「製品名」jERキュア DICY7
「成分」ジシアンジアミド
「メーカー」三菱化学株式会社
2P4MHZ−PW
「製品名」キュアゾール2P4MHZ―PW
「成分」2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール
「メーカー」四国化成工業株式会社
(硬化助剤)
オミキュア24
「製品名」オミキュア24
「成分」2,4−トルエンビス(ジメチルウレア)
「メーカー」PTIジャパン株式会社
表1に記載の組成の、エポキシ樹脂組成物を調製した。
CY−184とM52Nとをフラスコに秤量した後、オイルバスで145℃〜155℃に加温しながらフラスコの内容物が均一となるまで攪拌した。その後、フラスコをオイルバスから取り出し、内容物の温度が60℃以下となるまで放冷して、残りの原料をフラスコに秤量追加した。続いてウォーターバスで55℃〜65℃に加温しながらフラスコの内容物が均一となるまで攪拌して、エポキシ樹脂組成物を得た。
表1に記載の組成の、エポキシ樹脂組成物を調製した。
全ての原料をフラスコに秤量し、ウォーターバスで45〜60℃に加温しながらフラスコの内容物が均一となるまで攪拌して、エポキシ樹脂組成物を得た。
表1に記載の組成の、エポキシ樹脂組成物を調製した。
CY−184とM52NもしくはM52をフラスコに秤量した後、オイルバスで145℃〜155℃に加温しながらフラスコの内容物が均一となるまで攪拌した。その後、フラスコをオイルバスから取り出し、内容物の温度が60℃以下となるまで放冷して、残りの原料をフラスコに秤量追加した。続いてウォーターバスで55℃〜65℃に加温しながらフラスコの内容物が均一となるまで攪拌して、エポキシ樹脂組成物を得た。
実施例1〜5、比較例1〜4で得られた組成物を用い、樹脂組成物の保存安定性、硬化性確認を行った。また、得られた組成物の硬化板を作製し、破壊靱性の測定を行った。得られた組成物を用い、複合材料補強圧力容器の作製を行い、破裂圧力(耐圧性能)の測定を行った。これらの結果を表1に示した。
エポキシ樹脂組成物を下記の条件に暴露する前後の、エポキシ樹脂組成物の23℃における粘度とタックの変化を触感で確認することで、保存安定性を確認した。
暴露条件
温度:23℃
湿度:50%RH
直径50mmのアルミカップにエポキシ樹脂組成物を13g秤量し、熱風炉で加熱し、硬化の可否を確認した。
昇温条件:室温から2℃/minで硬化温度まで昇温
硬化条件:110℃で2時間保持、又は135℃で2時間保持
降温条件:硬化温度から50℃以下まで自然放冷
熱風炉:ETAC HT−310S(楠本化成製)
調製した各エポキシ樹脂組成物を、厚さ2mm又は3mmのスペーサーを挟んだ2枚のガラス板の間に注入し、110℃まで2℃/分間で昇温後、炉内の温度を110℃℃に保ち、2時間エポキシ樹脂組成物を硬化させることでエポキシ樹脂組成物の硬化板を作製した。
試験片の作製及び試験を、温度20℃、湿度50%RH(相対湿度)の環境下で、ASTM D5045に準拠したSENB(SingleEdge Noched Bend)試験法に準拠して実施した。実施例並びに比較例のエポキシ樹脂組成物を、硬化性確認と同じ加熱条件で硬化させて得た3mmの厚さの硬化樹脂板より、所定寸法(27mm×3mm×6mm)の小片を切り出し、湿式ダイヤモンドカッターにてノッチを入れ、MEK(メチルエチルケトン)にて脱脂した剃刀をノッチの先端に押しつけながらスライドさせて、プリクラックを形成し試験片を作成した。形成した試験片は、万能試験機(インストロン社製、4465)にて破壊靱性試験を行った。
<硬化物の海島相分離構造の観察>
硬化物を包埋樹脂(日新EM製、テクノビット4000)に包埋し、研磨機(リファインテック製、ADM−122)を用い研磨して硬化物断面を得た。
硬化物の断面をLSM(レーザースキャン顕微鏡。オリンパス製「ナノサーチレーザー顕微鏡LEXT3500」)で観察し、観察が可能な倍率、輝度に調整し撮影を行った。
なお、実施例1については、得られた組成物を用いて作製された硬化板の断面のLSM写真を図2に示す。
評価用の複合材料補強圧力容器を以下の手順で作製した。
エポキシ樹脂組成物を樹脂含有率24%となるように含浸させたグラフィル社製高強度炭素繊維 製品名:37−800(引張強度:5300MPa、引張弾性率:255GPa)(即ち、後述の<トウプリプレグの作製>に従って作製されたトウプリプレグ)を、フィラメントワインディング装置を用いて、外径が160mmで、長さが515mmのアルミライナー(容量9リットル、形状は図1を参照のこと)に巻き付けた。使用したアルミライナーは、JIS H 4040のA6061−T6に規定されるアルミニウム素材に熱処理を施した材料でできており、胴部の厚みが約3.3mmであった。
トウプリプレグは、ガイドロールを介して、その位置を調整した後にアルミライナーへ巻き付けた。まずアルミライナーの胴部に接する第一層目として、胴部上に回転軸方向に対し88.6°をなすフープ層をその厚みが0.63mmになるように形成した。その後、回転軸方向に対し14°の角度でライナーの鏡部を補強するヘリカル層を積層し、胴部の繊維強化樹脂層の厚みが2.5mmとなるように巻き付けた。なお、繊維強化樹脂層の厚みはノギスで外径を測定することにより求めた。
上記の手順で繊維強化樹脂層を形成したライナーを、フィラメントワインディング装置から外して熱風炉内に吊り下げ、炉内の温度を110℃まで2℃/分間で昇温させた。繊維強化樹脂層の表面温度が110℃に到達したことを確認した後、2時間、炉内の温度を110℃に保ち、エポキシ樹脂組成物を硬化させた。その後、炉内温度を1℃/分間で60℃まで冷却し、複合材料補強圧力容器(9Lタンク)を得た。
上述の各実施例及び比較例で得られたエポキシ樹脂組成物と、グラフィル社製高強度炭素繊維 製品名:37−800(引張強度:5300MPa、引張弾性率:255GPa。)を用いてトウプリプレグを作製した。
まず、上記炭素繊維を50〜100℃に加熱し、幅11−15mmに拡幅させた。
拡幅させた炭素繊維(以下、単に「炭素繊維束」と称す)に、エポキシ樹脂組成物供給装置を用いて、65℃に調整したエポキシ樹脂組成物を定量的に供給し、さらに加熱ロールから構成される樹脂含浸装置を用いて、炭素繊維束に均一に含浸させた。エポキシ樹脂組成物が強化繊維束へ均一に含浸するよう含浸手段の一つとして、上記のフィラメントを横方向に移動させる方法を採った。
これを室温まで冷却した後、ボビンに巻き取った。
水圧破壊試験機に圧力容器をセットし、圧力容器内に水を満たした後、昇圧速度15MPa/分間で圧力容器に水圧を負荷し、圧力容器が破裂したときの水圧を記録して圧力容器の実測の破裂圧力とした。
また、フープ応力としては、ライナーの内圧に対する抵抗が無い、即ち、ライナーに接するフープ層の径方向応力と圧力容器の破壊圧力とが等しいと仮定し、さらにヘリカル層の周方向の弾性率が無視し得るほど小さい、即ち、フープ層の最外層表面におけるフープ応力がゼロと仮定することによって、式(1)に示す厚肉円筒のフープ応力の算出式により、任意のフープ層におけるフープ応力を得ることができる。
σ=(P×r1 2×(r2 2+r2))/(r2×(r2 2−r1 2))・・・式(1)
σ:厚肉円筒のフープ応力(MPa)
p:圧力容器の内圧(MPa)
r:圧力容器の軸に垂直な断面における中心からの任意の半径(mm)
r1:圧力容器の軸に垂直な断面における中心から圧力容器の内壁までの半径(mm)
r2:圧力容器の軸に垂直な断面における中心から圧力容器の外壁までの半径(mm)
ここで上記のとおり測定したフープ層の厚みが0.63mmのタンクの実測の破裂圧力(実測値)に基づいて算出されるライナーに接するフープ層の破壊フープ応力と、フープの厚みが2.80mmのタンクのライナーに接するフープ層のフープ応力と、が等しくなる場合のタンク内圧を、破裂圧力(換算値)とする。破裂圧力(換算値)が複合材料補強圧力容器(9Lタンク)の仕様である70MPaに安全率2.25倍をかけた158MPaを超える場合を合格と判定した。
実施例1〜5のエポキシ樹脂組成物は、110℃で硬化することが可能であるが、比較例2および比較例4は硬化が不可能であった。比較例2は135℃において硬化可能であるため、硬化剤は適当量あるが、比較例4は135℃においても硬化が不十分であり、硬化剤の量が不適当であることがわかる。
Claims (18)
- エポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物は、成分A:エポキシ樹脂、成分B:三ハロゲン化ホウ素アミン錯体であるエポキシ樹脂硬化剤、及び成分C:熱可塑性樹脂を含み、
前記成分Cが以下の成分であり、
前記エポキシ樹脂組成物は硬化させたとき、硬化物中で、前記エポキシ樹脂の硬化物相と、前記熱可塑性樹脂の相とが海島相分離構造である相分離構造1を形成し、
前記相分離構造1における島構造を海構造として、さらに海島相分離構造である相分離構造2を形成する、エポキシ樹脂組成物。
成分C:S−B−Mトリブロック共重合体及びM−B−Mトリブロック共重合体からなる群から選ばれる少なくとも1つのブロック共重合体であり、
前記S、B及びMで表される各ブロックは共有結合によって連結されており、
前記ブロックMは、ポリメタクリル酸メチルのホモポリマー、又は、前記ブロックMの仕込み量である全モノマーの総質量に対して、モノマー換算でメタクリル酸メチルを少なくとも50質量%含有するコポリマーであり、
前記ブロックBは、ブロックMに非相溶で、そのガラス転移温度が20℃以下であるブロックであり、
前記ブロックSは、ブロックB及びMに非相溶で、かつ、そのガラス転移温度が、ブロックBのガラス転移温度よりも高いブロックである。 - 前記成分Bの含有量が、前記成分A 100質量部に対し、8〜20重量部であり、
前記成分Cの含有量が、前記成分A 100質量部に対し、1〜50重量部である請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。 - 前記相分離構造1における、海構造がエポキシ樹脂の硬化物相であり、島構造が熱可塑性樹脂の相である、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記相分離構造2における、島構造がエポキシ樹脂の硬化物からなる球状である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記相分離構造1における島構造の、長辺の長さが50nm〜300μmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 前記相分離構造2における島構造の、長辺の長さ(但し、該島構造が球状の場合はその直径)が10nm〜100μmである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 更に、成分D:ゴム粒子を、前記成分A 100質量部に対し12〜110質量部含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を、強化繊維束に含浸させてなるトウプリプレグ。
- 前記強化繊維束が炭素繊維束である請求項8に記載のトウプリプレグ。
- 前記炭素繊維束は、繊維径3〜12μmのフィラメントを1000〜70000本まとめた炭素繊維束である、請求項9に記載のトウプリプレグ。
- 前記炭素繊維の、JIS R7601に準拠したストランド強度が3500MPa以上である、請求項9または10に記載のトウプリプレグ。
- 請求項8〜11のいずれか1項に記載のトウプリプレグを用いて製造された、複合材料補強圧力容器。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を含浸させた強化繊維束を用いて、フィラメントワインディング成形により製造された複合材料補強圧力容器。
- 前記エポキシ樹脂組成物を含浸させた強化繊維束を、ライナーに巻き付け、フィラメントワインディング成形により製造された複合材料補強圧力容器であり、前記ライナーが熱可塑性樹脂製である、請求項13に記載の複合材料補強圧力容器。
- 前記強化繊維束が炭素繊維束である、請求項13又は14に記載の複合材料補強圧力容器。
- ライナーの外面を複合材料層が被覆してなる複合材料補強圧力容器であり、該複合材料層が、請求項8〜11のいずれか1項に記載のトウプリプレグを用いて形成された層である、複合材料補強圧力容器。
- 前記ライナーが熱可塑性樹脂製である、請求項16に記載の複合材料補強圧力容器。
- 請求項8〜11のいずれか1項に記載のトウプリプレグを用いて形成された、複合材料からなる緊張材。
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