JP2021116404A - トウプレグ - Google Patents

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正博 都築
聡一 吉崎
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聡一 吉崎
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Nobuyuki Arai
信之 荒井
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Abstract

【課題】フィラメントワインディング成形時のトウの拡幅性が良好で隙間ができにくく、かつ、含浸させた樹脂組成物の粘度の経時安定性が良好で高速条件での解舒性が低下しにくく、さらに、繊維強化複合材料の0°引張強度利用率が高く圧力容器の破裂強度を高めることが可能なトウプレグを提供することを課題とする。【解決手段】下記成分[A]〜[B]を含み、かつ条件(I)〜(III)を満たすエポキシ樹脂組成物が強化繊維束に含浸されてなるトウプレグ。[A]エポキシ樹脂[B]25℃で液状の液状芳香族アミン(I)液状芳香族アミン[B]の活性水素当量数(H)と、エポキシ樹脂[A]中のエポキシ当量数(E)の比(H/E)が1.25〜1.8(II)エポキシ樹脂[A]中のエポキシ基のうち、グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合が30〜85%(III)平行平板振動レオメータを用いて、25℃、周波数10Hzで測定した複素せん断粘度(η10)が150Pa・s以下(IV)エポキシ樹脂組成物を25℃にて48時間保管した後の増粘倍率が7倍以下【選択図】なし

Description

本発明は、特に、繊維強化複合材料で構成された中空の容器や円筒の製造に好適に用いられるトウプレグに関するものである。より詳しくは、取り扱い性に優れ、空隙が少なく品質の良い成形品を得ることができ、特に圧力容器の破裂強度を向上可能なトウプレグに関するものである。
炭素繊維、ガラス繊維などの強化繊維を用いた繊維強化複合材料は、その優れた軽量性から、航空・宇宙、自動車、鉄道車両、船舶、土木建築およびスポーツ用品などの数多くの分野に適用されている。特に、高性能が要求される用途では、連続した強化繊維を用いた繊維強化複合材料が用いられ、強化繊維としては比強度、比弾性率に優れた炭素繊維が、そして熱硬化性樹脂としては、炭素繊維との接着性に優れたエポキシ樹脂が多く用いられている。
近年の炭素繊維の用途拡大を受け、成形法も広がりを見せている。このうち、フィラメントワインディングは、圧力容器などの中空の容器や円筒の製造に好適に用いられる方法である。生産性および品質の観点から、従来のウェット法に加え、強化繊維束に熱硬化性樹脂をあらかじめ含浸したトウプリプレグ、ヤーンプリプレグあるいはストランドプリプレグなどと呼ばれる細幅の中間基材(以下、トウプレグと記載する)を用いる手法が注目されている。
トウプレグは、通常、数百から数千メートルを紙管に巻き取ったボビン形状で供給され、繊維強化複合材料の成形工程において高速で解舒され、フィラメントワインディング成形に用いられる。この際、トウの間に隙間ができると、成形品中に空隙として残り、強度が低下するため、トウの拡幅性が良く、隙間ができにくいことが求められている。
また、ボビン形状への巻き取りの際は離型紙を用いないことが経済的に好ましいため、トウプレグの製造・保管・使用の期間において、含浸させた樹脂組成物の粘度の経時的増大が少なく、高速での解舒性が低下しにくいことも求められている。
特にトウプレグが好適に用いられる圧力容器用途では、部材のさらなる軽量化の要求が高まっており、破裂強度の向上により強化繊維の使用量を削減する技術が求められている。破裂強度の向上には繊維強化複合材料の繊維軸方向の引張強度(0°引張強度)を高めることが有用であり、これは強化繊維の引張強度を高めるか、0°引張強度利用率を高めることによって達成できる。0°引張強度利用率は、繊維強化複合材料が強化繊維の強度をどれだけ活用しているかの指標であり、同じ種類と量の強化繊維を用いた場合は、0°引張強度利用率が高い方が、高い0°引張強度が得られる。
また、圧力容器には、ガスの充填時の温度上昇に耐えるために耐熱性が高いこと、繰り返しの使用による性能低下が少ないことなども求められる。これらの要求性能を満足させるためには、樹脂硬化物の耐熱性、および変形能力を高めることが有用である。
特許文献1は、固形硬化剤であるジシアンジアミドを分散させたエポキシ樹脂組成物を強化繊維束に含浸させてなるトウプレグを開示しているが、このようなトウプレグでは、フィラメントワインディング成形時のトウの拡幅性が悪く、隙間ができやすいという課題があった。
特許文献2は、硬化剤として液状アミンを用いたウェットフィラメントワインディング成形用のエポキシ樹脂組成物を開示している。このような樹脂組成物は良好な拡幅性と繊維強化複合材料の0°引張強度利用率を得られるが、トウプレグとして用いるには粘度の経時安定性(ポットライフ)が不十分だった。
特許文献3は、硬化剤としてハロゲン化ホウ素アミン錯体を溶解させたエポキシ樹脂組成物を強化繊維束に含浸させてなるトウプレグを開示しているが、このようなトウプレグは、フィラメントワインディング成形時のトウの拡幅性や解舒性、繊維強化複合材料の0°引張強度利用率が、必ずしも十分ではなかった。
特開2016−190920号公報 国際公開WO2016/063692号 国際公開WO2013/183667号
本発明は、かかる背景に鑑み、フィラメントワインディング成形時のトウの拡幅性が良好であり、かつ、含浸させたエポキシ樹脂組成物のポットライフが良好であり、さらに、繊維強化複合材料の0°引張強度利用率が高いトウプレグを提供することを課題とする。
本発明は、かかる課題を解決するために次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明のトウプレグは、下記成分[A]〜[B]を含み、かつ条件(I)〜(III)を満たすエポキシ樹脂組成物が強化繊維束に含浸されてなるトウプレグである。
[A]エポキシ樹脂
[B]25℃で液状の液状芳香族アミン
(I)液状芳香族アミン[B]の活性水素当量数(H)と、エポキシ樹脂[A]中のエポキシ当量数(E)の比(H/E)が1.25〜1.80
(II)エポキシ樹脂[A]中のエポキシ基のうち、グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合が30〜85%
(III)平行平板振動レオメータを用いて、25℃、周波数10Hzで測定した複素せん断粘度(η10)が150Pa・s以下
本発明のトウプレグを用いれば、フィラメントワインディング成形時のトウの拡幅性が良好で、空隙の少ない成形品が得られる。また、樹脂組成物のポットライフが良好であるため、高速条件での解舒性が低下しにくい。さらに、繊維強化複合材料の0°引張強度利用率が高いため、生産性、破裂強度ともに優れた圧力容器を得ることができる。
本発明は、次の構成を有するものである。すなわち、下記成分[A]〜[B]を含み、かつ条件(I)〜(IV)を満たすエポキシ樹脂組成物が強化繊維束に含浸されてなるトウプレグである。
[A]エポキシ樹脂
[B]25℃で液状の液状芳香族アミン
(I)液状芳香族アミン[B]の活性水素当量数(H)と、エポキシ樹脂[A]中のエポキシ当量数(E)の比(H/E)が1.25〜1.80
(II)エポキシ樹脂[A]中のエポキシ基のうち、グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合が30〜85%
(III)平行平板振動レオメータを用いて、25℃、周波数10Hzで測定した複素せん断粘度(η10)が150Pa・s以下
(IV)エポキシ樹脂組成物を25℃にて48時間保管した後の増粘倍率が7倍以下。
(成分[A]について)
本発明における成分[A]は、エポキシ樹脂である。かかるエポキシ樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型などのビスフェノール型エポキシ樹脂、グリシジルアニリン型、ジアミノジフェニルメタン型、ジアミノジフェニルスルホン型、アミノフェノール型、メタキシレンジアミン型、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン型等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型、ヒダントイン型、フェノールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、ビフェニル型、ジシクロペンタジエン型、オキサゾリドン型、ビフェニルアラルキル型、ビスナフタレン型、トリスヒドロキシフェニルメタン型およびテトラフェニロールエタン型のエポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いてもよいし、適宜混合して用いてもよい。
これらのエポキシ樹脂の中でも、エポキシ樹脂組成物の調製工程、トウプレグの製造工程、トウプレグ保管時の安定性を確保するため、グリシジルアミン型エポキシ樹脂を含むことが必要である。かかる工程・期間でのエポキシ樹脂組成物の増粘を防ぐことで、トウプレグ製造時のエポキシ樹脂組成物の含浸状態を良好にでき、成形時の解舒性を良好に保つことができる。グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、グリシジルアニリン型、ジアミノジフェニルメタン型、ジアミノジフェニルスルホン型、アミノフェノール型、メタキシレンジアミン型、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン型などが挙げられる。また、かかるグリシジルアミン型エポキシ樹脂の市販品としては、GAN(N,N−ジグリシジルアニリン、日本化薬(株)製)、GOT(N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、日本化薬株式会社製)、“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、住友化学株式会社製)、“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434L(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、住友化学株式会社製)、“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434VL(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、住友化学株式会社製)、“Araldite(登録商標)”MY720(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ハンツマン・ジャパン株式会社製)、“Araldite(登録商標)”MY721(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ハンツマン・ジャパン株式会社製)、“jER(登録商標)”604(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、三菱ケミカル株式会社製)、YH−404(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)、“ARALDITE(登録商標)”MY0510(テトラグリシジル−p−アミノフェノール、ハンツマン・ジャパン株式会社製)などが挙げられる。
かかるグリシジルアミン型エポキシ樹脂の中でも、耐熱性や力学特性のバランスに優れることから、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンを用いることが好ましい。
さらに、エポキシ樹脂組成物のポットライフを向上する効果に優れることから、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの中でも、50℃における粘度が10Pa・s以下であるものを用いることがより好ましく、9.0Pa・s以下であるものを用いることがさらに好ましく、6.0Pa・s以下であるものを用いることが最も好ましい。かかるテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの市販品としては、“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434L(50℃粘度:8.2Pa・s、住友化学株式会社製)、“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434VL(50℃粘度:5.0Pa・s、住友化学株式会社製)、“Araldite(登録商標)”MY721(50℃粘度:3.6〜5.0Pa・s、ハンツマン・ジャパン株式会社製)、“jER(登録商標)”604(50℃粘度:5.0〜10Pa・s、三菱ケミカル株式会社製)、YH−404(50℃粘度:3.6〜5.2Pa・s、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)などが挙げられる。
(成分[A1]について)
本発明では、成分[A]として、主成分の化学構造中にヒドロキシ基を有さない、25℃で固体のエポキシ樹脂[A1]を含むことが好ましい。[A1]を含むことで、エポキシ樹脂組成物のポットライフを維持しつつ粘度や力学特性が調整でき、トウプレグの特性を、製造プロセスに適合しやすくなる。ここで、主成分とは、エポキシ樹脂を構成する成分のうち最も多く含まれる、その製品を代表する成分を指す。例えば、エポキシ樹脂中に、前駆体原料をグリシジル化した際に生じたヒドロキシ基を有する副生成物が含まれていたとしても、それらを意図するものではなく、主成分の化学構造中にヒドロキシ基を有さなければ、成分[A1]として許容される。ヒドロキシ基を有する副生成物が少ない2官能エポキシ樹脂であることが、より好ましい。
かかる成分[A1]としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、オキサゾリドン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビスナフタレン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
また、成分[A1]以外の、主成分の化学構造中にヒドロキシ基を有する、25℃で固体のエポキシ樹脂としては、固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂、固形ビスフェノールF型エポキシ樹脂などが挙げられる。ポットライフを良好とするためにはエポキシ樹脂組成物中のヒドロキシ基を少なくすることが有効であるため、これらの主成分の化学構造中にヒドロキシ基を有するエポキシ樹脂の配合量は、成分[A]100質量部中、5質量部以下であることが好ましく、主成分の化学構造中にヒドロキシ基を有さないエポキシ樹脂のみからなることがより好ましい。
[A1]であるビフェニル型エポキシ樹脂の市販品としては、“jER(登録商標)”YX4000、“jER(登録商標)”YX4000H、“jER(登録商標)”YL6121H(以上、三菱ケミカル株式会社製)などが挙げられる。
[A1]であるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としては、“EPICLON(登録商標)”HP−7200L、“EPICLON(登録商標)”HP−7200、“EPICLON(登録商標)”HP−7200H(以上、DIC株式会社製)、XD−1000−2L、XD−1000、XD−1000H(以上、日本化薬株式会社製)などが挙げられる。
[A1]であるオキサゾリドン型エポキシ樹脂の市販品としては、“D.E.R.(登録商標)”858(Olin Corporation社製)などが挙げられる。
[A1]であるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂の市販品としては、NC−3000−L、NC−3000、NC−3100(以上、日本化薬株式会社製)などが挙げられる。
[A1]であるビスナフタレン型エポキシ樹脂の市販品としては、“EPICLON(登録商標)”HP−4700、“EPICLON(登録商標)”HP−4710、“EPICLON(登録商標)”HP−4770(以上、DIC株式会社製)などが挙げられる。
かかる成分[A1]の中でも、樹脂硬化物の耐熱性、および繊維強化複合材料の0°引張強度利用率に優れることから、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。
また、かかる成分[A1]の中でも、樹脂硬化物の耐熱性と変形能力(伸度)に優れることから、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。
また、かかる成分[A1]の配合量は、成分[A]100質量部中、5〜40質量部であることが好ましく、5〜25質量部であることがより好ましく、10〜25質量部であることがさらに好ましい。成分[A1]の配合量をかかる範囲とすることで、エポキシ樹脂組成物の粘度と、樹脂硬化物の耐熱性および力学特性のバランスに優れた繊維強化複合材料を与えるトウプレグ用エポキシ樹脂組成物を得ることができる。
(成分[B]について)
本発明における成分[B]は、25℃で液状の液状芳香族アミンである。成分[B]を用いることで、ポットライフが良好で、かつフィラメントワインディング成形時のトウの拡幅性が良く、隙間ができにくいトウプレグを得ることができる。ここで、フィラメントワインディング成形時のトウの拡幅とは、圧力容器のライナーや、円筒の成形に用いるマンドレルに巻き付けた際の圧力で、トウプレグの幅が広がる現象である。トウプレグの拡幅性が不足すると、成形品中に空隙が発生しやすく、力学特性を低下させる原因となる。
トウプレグの良好な拡幅性を得るためには、芳香族アミンが25℃で液状である必要がある。25℃で液状であれば、固体の芳香族アミンを、25℃で液状の芳香族アミンに溶解させた混合物であっても良い。ここで、芳香族アミンとは、芳香環と直接結合したアミノ基を有する化合物の総称である。かかる成分[B]としては、例えば、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミンなどの、芳香環を1つ有する化合物、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどの、芳香環を2つ有する化合物などが挙げられる。かかる成分[B]の市販品としては、“jERキュア(登録商標)”WA(ジエチルトルエンジアミン、三菱ケミカル株式会社製)、“LONZACURE(登録商標)”DETDA80(ジエチルトルエンジアミン、ロンザジャパン株式会社製)、Ethacure100plus(ジエチルトルエンジアミン、Albemarle社製)、Ethacure300(ジメチルチオトルエンジアミン、Albemarle社製)、“KAYAHARD(登録商標)”A−A(3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、日本化薬株式会社製)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(東京化成工業株式会社製)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、適宜混合して用いてもよい。
かかる成分[B]の中でも、エポキシ樹脂組成物のポットライフに優れることから、各アミノ基のオルト位に、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基のうちのいずれかを、少なくとも1つ有することが好ましい。
(成分[B1]について)
さらに、本発明において、エポキシ樹脂組成物のポットライフと、樹脂硬化物の耐熱性に優れることから、成分[B]として、下記化学式(1)で表される構造をもつ25℃で液状の液状芳香族アミン[B1]を含むことが好ましい。
Figure 2021116404
式中、R、R、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基のうちのいずれかであり、R、R、Rは同一であっても異なっていてもよい。
かかる成分[B1]の中でも、エポキシ樹脂組成物のポットライフと、樹脂硬化物の耐熱性のバランスに優れることから、各アミノ基のオルト位に、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基のうちのいずれかを、少なくとも1つ有することが好ましい。かかる成分[B1]としては、例えば、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミンなどが挙げられる。かかる成分[B1]の市販品としては、“jERキュア(登録商標)”WA(ジエチルトルエンジアミン、三菱ケミカル株式会社製)、“LONZACURE(登録商標)”DETDA80(ジエチルトルエンジアミン、ロンザジャパン株式会社製)、Ethacure100plus(ジエチルトルエンジアミン、Albemarle社製)、Ethacure300(ジメチルチオトルエンジアミン、Albemarle社製)などが挙げられる。
(成分[C]について)
本発明のトウプレグに用いるエポキシ樹脂組成物は、成分[C]として強靱化剤を含むことが好ましい。ここで、強靱化剤とは、樹脂硬化物の靱性を高めるために一般的に用いられる添加剤のことを指す。成分[C]を含むことで、樹脂硬化物の変形能力を高めることができ、繰り返しの使用による性能低下が少ない圧力容器を得ることができる。かかる成分[C]としては、特に制限はなく、例えば、アクリルゴム微粒子、ブタジエンゴム微粒子、ブタジエン−スチレンゴム微粒子、シリコーンゴム微粒子などのゴム微粒子、ゴム微粒子を異種ポリマーで被覆したコアシェル構造をもつコアシェルゴム微粒子、液状NBR(ニトリル−ブタジエンゴム)、CTBN(末端カルボキシ基変性NBR)、ATBN(末端アミノ基変性NBR)、主鎖内カルボキシ基変性NBRなどの液状ゴム、ブロックコポリマー、熱可塑性樹脂などが挙げられる。これらの強靱化剤は、単独で用いてもよいし、適宜混合して用いてもよい。
かかる成分[C]の中でも、樹脂硬化物の変形能力と耐熱性のバランスに優れることから、コアシェルゴム粒子を含むことがより好ましい。コアシェルゴム粒子とは、架橋されたゴム状ポリマーまたはエラストマーを主成分とする粒子状コア成分の表面に、コア成分とは異種のシェル成分ポリマーをグラフト重合することで、粒子状コア成分の表面の一部あるいは全体をシェル成分で被覆したものである。
また、かかる成分[C]の配合量は、成分[A]100質量部に対して、3〜30質量部であることが好ましい。成分[C]の配合量をかかる範囲とすることで、エポキシ樹脂組成物の粘度と、樹脂硬化物の耐熱性および力学特性のバランスに優れた繊維強化複合材料を与えるトウプレグ用エポキシ樹脂組成物を得ることができる。
(その他添加剤等)
本発明のトウプレグに用いるエポキシ樹脂組成物は、本発明の効果を失わない範囲において、熱可塑性樹脂や揺変剤などの粘度調整剤、消泡剤、安定剤、難燃剤、顔料などの各種添加剤を含有することができる。熱可塑性樹脂としては、エポキシ樹脂に可溶な熱可塑性樹脂であることが好ましい。エポキシ樹脂に可溶な熱可塑性樹脂としては、例えばポリビニルホルマールやポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール、フェノキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルピロリドン、ポリスルホンなどを挙げることができる。揺変性付与剤としては、アマイドワックス、水添ひまし油などの有機系のものや、シリカ、アルミナ、アルミニウムとケイ素の混合酸化物、酸化チタン、軽質炭酸カルシウム、スメクタイト系粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ベントナイト、ヘクトライト、サポナイトなど)、セピオライト、カーボンブラックなどの無機系のものが挙げられる。
(条件(I)について)
本発明のトウプレグに含浸させるエポキシ樹脂組成物は、液状芳香族アミン[B]の活性水素当量数(H)と、エポキシ樹脂[A]中のエポキシ当量数(E)の比(H/E)が1.25〜1.80であることが必要であり、1.25〜1.60であると好ましく、1.40〜1.60であるとさらに好ましい。H/Eをかかる範囲とすることで、繊維強化複合材料の0°引張強度利用率を高めることができる。H/Eが1.25より小さいと繊維強化複合材料の0°引張強度利用率を十分に高めることができず、H/Eが1.80より大きいと樹脂硬化物が脆くなり十分な変形能力を得ることができない。
(条件(II)について)
本発明のトウプレグに含浸させるエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂[A]中のエポキシ基のうち、グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合が30〜85%であることが必要であり、40〜70%であると好ましい。グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合をかかる範囲とすることで、エポキシ樹脂組成物のポットライフと、樹脂硬化物の力学特性のバランスに優れた繊維強化複合材料を与えるトウプレグ用エポキシ樹脂組成物を得ることができる。グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合が30%より小さいとエポキシ樹脂組成物のポットライフが低下し、グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合が85%より大きいと樹脂硬化物の十分な変形能力を得ることができない。グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合は、n種類のグリシジルアミン型エポキシ樹脂とm種類のエポキシ樹脂[A]を含む場合、式(1)〜式(3)によって算出することができる。
Figure 2021116404
Figure 2021116404
Figure 2021116404
ここで、
:グリシジルアミン型であるエポキシ基の数
:エポキシ樹脂[A]中のエポキシ基の数
Ai:i番目のグリシジルアミン型エポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq)
Ai:i番目のグリシジルアミン型エポキシ樹脂の配合部数(質量部)
Bj:j番目のエポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq)
Bj:j番目のエポキシ樹脂の配合部数(質量部)
であり、nはグリシジルアミン型エポキシ樹脂の成分数を、mはエポキシ樹脂[A]の成分数を表す。
従来技術では、本発明における成分[B]を用いて、H/Eを条件(I)の範囲とする場合に、エポキシ樹脂組成物のポットライフが低下して不十分となるが、成分[A]としてグリシジルアミン型エポキシを含み、かつ条件(II)を満たすことで、十分なポットライフを有するエポキシ樹脂組成物を得ることができる。
(条件(III)について)
本発明のトウプレグに含浸させるエポキシ樹脂組成物は、平行平板振動レオメータを用いて、25℃、周波数10Hzで測定した複素せん断粘度(η10)が150Pa・s以下であることが必要であり、110Pa・s以下であると好ましく、50Pa・s以下であるとより好ましい。η10をかかる範囲とすることで、フィラメントワインディング成形時のトウの拡幅性が良く、隙間ができにくいトウプレグを得ることができる。
(条件(IV)について)
本発明のトウプレグに含浸させるエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂組成物を25℃にて48時間保管した後の増粘倍率が7倍以下であることが必要であり、5倍以下であることが好ましい。エポキシ樹脂組成物を25℃にて48時間保管した後の増粘倍率をかかる範囲とすることで、製造・保管・使用の期間において、含浸させた樹脂組成物の粘度の経時的増大が少なく、高速での解舒性が低下しにくいトウプレグを得ることができる。
本発明のトウプレグに用いるエポキシ樹脂組成物の調製には、様々な公知の方法を用いることができる。例えばニーダー、プラネタリーミキサー、メカニカルスターラー、ディゾルバー、三本ロールといった機械を用いて混練しても良いし、ビーカーとスパチュラなどを用い、手で混ぜても良い。
本発明のトウプレグは、本発明のトウプレグに用いるエポキシ樹脂組成物を、強化繊維束に含浸したものである。ここで、強化繊維束としては、直径が3〜100μmのフィラメントが1,000〜70,000本束ねられて構成される強化繊維束が通常用いられる。
本発明のトウプレグに用いる強化繊維束としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などからなる繊維束が挙げられる。これらの繊維束を2種以上混合して用いても構わない。この中で、軽量かつ高剛性な繊維強化複合材料が得られる炭素繊維束を用いることが好ましい。かかる炭素繊維束としては、具体的にはアクリル系、ピッチ系およびレーヨン系等の炭素繊維束が挙げられ、特に引張強度の高いアクリル系の炭素繊維束が好ましく用いられる。
本発明のトウプレグにおける、エポキシ樹脂組成物の質量含有率(Rc)は、目的に応じて特に制限なく設定することができるが、好ましくは20〜40%であり、20〜30%がさらに好ましく、22〜28%が最も好ましい。エポキシ樹脂組成物と強化繊維束との質量比率が20%以上であれば、得られる繊維強化複合材料の内部の未含浸部分やボイドのような欠陥が発生することを抑制できる。また、40%以下であれば強化繊維束の体積含有率を高めることができるため、繊維強化複合材料の力学特性を効果的に発現でき、軽量化に寄与できる。
本発明のトウプレグは、様々な公知の方法で製造することができる。すなわち、本発明のトウプレグに用いるエポキシ樹脂組成物を、有機溶媒を用いずに加熱により低粘度化し、強化繊維束を浸漬させながら含浸させる方法、加熱して低粘度化した該エポキシ樹脂組成物を回転ロールや離型紙上に塗膜化し、次いで強化繊維束の片面、あるいは両面に転写したあと、屈曲ロールあるいは圧力ロールを通すことで加圧して含浸させる方法などで製造できる。高品位なトウプレグが製造できることから、本発明のトウプレグの製造方法は、エポキシ樹脂組成物で被覆された回転ロールを、強化繊維束の少なくとも片面に接触させる工程を含むことが好ましい。トウプレグは、通常、数百から数千メートルを紙管に巻き取ったボビン形状で供給される。
本発明のトウプレグは航空・宇宙、自動車、鉄道車両、船舶、土木建築およびスポーツ用品などの数多くの分野に使用することができ、特に、圧力容器などの中空の容器や、円筒の製造に好適に使用することができる。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。ただし、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、組成比の単位「部」は、特に注釈のない限り質量部を意味する。また、各種特性(物性)の測定は、特に注釈のない限り温度23℃、相対湿度50%の環境下で行った。
<実施例および比較例で用いた材料>
(1)強化繊維束
・“トレカ(登録商標)”T720SC−36K(引張強度5880MPa、フィラメント数36000本、総繊度1650tex、密度1.8g/cm、東レ株式会社製)。
(2)成分[A]:エポキシ樹脂
・“jER(登録商標)”828(液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱ケミカル株式会社製)
・“jER(登録商標)”807(液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、三菱ケミカル株式会社製)
・GAN(N,N−ジグリシジルアニリン、日本化薬株式会社製)
・“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、50℃粘度:11.9Pa・s)
・“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434VL(テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、50℃粘度:5Pa・s)
・“jER(登録商標)”1001(固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱ケミカル株式会社製)。
・“jER(登録商標)”YX4000(成分[A1]であるビフェニル型エポキシ樹脂、三菱ケミカル株式会社製)
・“EPICLON(登録商標)”HP−7200L(成分[A1]であるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、DIC株式会社製)
・“D.E.R.(登録商標)”858(成分[A1]であるオキサゾリドン型エポキシ樹脂、Olin Corporation社製)
・NC−3000−L(成分[A1]であるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製)
・“EPICLON(登録商標)”HP−4770(成分[A1]であるビスナフタレン型エポキシ樹脂、DIC株式会社製)
(3)成分[B]:25℃で液状の液状芳香族アミン
・“jERキュア(登録商標)”WA(成分[B1]である25℃で液状の液状芳香族アミン、ジエチルトルエンジアミン、三菱ケミカル株式会社製)
・“KAYAHARD(登録商標)”A−A(3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、日本化薬株式会社製)。
(4)成分[C]:強靱化剤
・“カネエース(登録商標)”MX−125(スチレンブタジエンゴム型コアシェルゴム粒子25%の液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂マスターバッチ、株式会社カネカ製)
・“カネエース(登録商標)”MX−267(ポリブタジエンゴム型コアシェルゴム粒子37%の液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂マスターバッチ、株式会社カネカ製)
・“Hypro(登録商標)”1300X13NA(末端カルボキシル基変性ブタジエンニトリルゴム、CVC Thermoset Specialties社製)
・“Nanostrength(登録商標)”M52N(アクリルブロック共重合体、アルケマ株式会社製)。
(5)その他の成分
・“ビニレック(登録商標)”K(添加剤、ポリビニルホルマール樹脂、JNC株式会社製)
・“jERキュア(登録商標)”DICY7(エポキシ樹脂硬化剤、ジシアンジアミド、三菱ケミカル株式会社製)
・“Baxxodur(登録商標)”EC201(エポキシ樹脂硬化剤、イソホロンジアミン、BASFジャパン株式会社製)
・DCMU99(エポキシ樹脂硬化促進剤、3−フェニル−1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチル尿素、保土谷化学工業株式会社製)。
・“BYK(登録商標)”1790(消泡剤、ビックケミ−・ジャパン株式会社製)
・“DOWSIL(登録商標)”SH200 Fluid(消泡剤、ダウ・東レ株式会社製)
・“ノーバレット(登録商標)”120UF(難燃剤、燐化学工業株式会社製)
・“アデカスタブ(登録商標)”LA−63P(光安定剤、株式会社ADEKA製)
・“AEROSIL(登録商標)”RY200S(揺変剤、日本アエロジル株式会社製)
・“AEROSIL(登録商標)”R805(揺変剤、日本アエロジル株式会社製)
<エポキシ樹脂組成物の調製方法>
ビーカー中に、成分[A]、および必要に応じてその他成分を投入して、加熱、撹拌を行った。トウプレグを製造する直前に成分[B]を投入し、25℃〜65℃にて、成分[B]が成分[A]に相溶して均一となるまで撹拌し、エポキシ樹脂組成物を得た。成分[B]が成分[A]に相溶して均一となったことは、目視で判定した。また、成分[B]投入後の撹拌温度は、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の反応性を考慮し、急激な反応が開始しない温度範囲にて行った。実施例および比較例の成分含有比について表1〜5に示した。
<エポキシ樹脂組成物の粘度の測定方法>
JIS K 7244−10(2005)に従い、以下に示す条件にて、エポキシ樹脂組成物の粘度を測定した。
装置:ARES−G2(TA Instruments社製)
プレート構成:アルミ製φ40mmディスポプレート
アルミ製φ42mmディスポーザプルカップ
ギャップ:1.0mm
温度:25℃
測定周波数:10Hz
歪:10%。
<エポキシ樹脂組成物の増粘倍率の測定方法>
本発明のトウプレグにおける、エポキシ樹脂組成物の安定性の評価手法としては、エポキシ樹脂組成物を25℃、50%RHにて48時間静置した後の粘度を、調製した直後の粘度で除して得られる、増粘倍率を指標にした。エポキシ樹脂組成物の粘度としては、平行平板振動レオメータを用いて、25℃、周波数10Hzで測定した複素せん断粘度を用いた。
<樹脂硬化板の作製方法>
まず、エポキシ樹脂組成物を、真空中で脱泡した後、“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールドに注入した。次に、熱風オーブン中で室温から110℃まで1分間に2.5℃ずつ昇温した後、該温度で6時間保持して該エポキシ樹脂組成物を硬化した。続いて、室温まで降温し、モールドから脱型することで、2mm厚の樹脂硬化板を作製した。
<ガラス転移温度の測定>
2mm厚の樹脂硬化板から、幅12.7mm、長さ45mmの試験片を切り出し、粘弾性測定装置(ARES、ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて、ねじり振動周波数1.0Hz、昇温速度5.0℃/分の条件下で、30〜250℃の温度範囲でDMA測定を行った。ガラス転移温度(Tg)は、貯蔵弾性率G’曲線において、ガラス状態での接線と転移状態での接線との交点における温度とした。
<樹脂硬化物の3点曲げ測定>
樹脂硬化板から、幅10mm、長さ60mmの試験片を切り出し、インストロン万能試験機(インストロン社製)を用いて、スパンを32mm、クロスヘッドスピードを2.5mm/分、サンプル数n=6とし、JIS K7171(1994)に従って3点曲げを実施し、破壊伸度の平均値をもとめた。
<トウプレグの作製方法>
クリール、キスロール、ニップロール、ワインダーを備えたトウプレグ製造装置を用いて、炭素繊維“トレカ(登録商標)”T720SC−36Kの片面に、20〜60℃の温度に調整したエポキシ樹脂組成物を塗工した後、ニップロールを通過させることで該エポキシ樹脂組成物を強化繊維束内部まで含浸してトウプレグを得た。トウプレグのボビンは、初期張力を600〜1000gf、ワインド比を6〜10として、巻き幅が230〜260mmの円筒型となるよう、2300mを紙管に巻き取った。
<トウプレグのRcの測定方法>
トウプレグのRcは、トウプレグのボビン質量(W)、紙管の質量(W)、炭素繊維の単位長さあたりの質量(W)、ボビンに巻き取ったトウプレグの長さ(W)から、式(4)に従ってもとめた。実施例および比較例のRcについて表1〜4に示した。
Figure 2021116404
<繊維強化複合材料の0°引張強度利用率の測定方法>
離型フィルムを貼り付けた金属板でトウプレグを挟み込み、トウに一定の張力をかけながら、熱風オーブン中で室温から110℃まで1分間に2.5℃ずつ昇温した後、110℃で6時間保持してエポキシ樹脂組成物を硬化させた。エポキシ樹脂組成物が硬化したトウプレグの両端に、タブ間の距離が150mmとなるように幅14mm、長さ50mmのガラス繊維強化プラスチック製タブを接着して、試験片を作製した。この試験片を用いて、インストロン万能試験機(インストロン社製)を用いて、クロスヘッドスピード3.0mm/分にて引張試験を行い、繊維長手方向(0°方向)の断面積あたりの破断荷重をもとめた。試験片の断面積は強化繊維の単位長さあたりの質量を密度で除して求めた。また、10個の試験片の引張強度の平均値を用いて0°引張強度利用率を算出した。0°引張強度利用率(%)は、トウプレグ硬化物の0°引張強度/強化繊維のストランド強度×100により算出した。
<強化繊維のストランド強度の測定方法>
強化繊維のストランド強度は、JIS R7608:2007「樹脂含浸ストランド試験法」に準拠し、次の手順に従って求めた。測定する炭素繊維束の樹脂含浸ストランドは、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(100質量部)、3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3質量部)およびアセトン(4質量部)からなる組成物を、炭素繊維または黒鉛化繊維に含浸し、125℃の温度で30分硬化させて作製した。炭素繊維の樹脂含浸ストランドの測定本数は6本とし、各測定結果の平均値をストランド強度とした。引張弾性率の測定伸度域は伸度0.3〜0.7%の範囲とした。本実施例では、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレートとして、ダイセル化学工業社製“セロキサイド(登録商標)”2021Pを用いた。
<圧力容器の作製方法>
フィラメントワインディング成形装置に、7.5Lのポリエチレン製ライナーを設置し、本発明のトウプレグをライナー全体に巻きつけた。第1層として、ライナーの軸方向に対して±89°をなすフープ層を、その厚みが1.4mmとなるように巻き付けた。次に、第2層として、ライナーの軸方向に対して±20°をなすヘリカル層を、その厚みが2.2mmとなるように巻き付けた。さらに、第3層として、ライナーの軸方向に対して±89°をなすフープ層を、その厚みが0.6mmとなるように巻き付け、中間体を得た。なお、各層の厚みは、ノギスで外径を測定することによりもとめた。当該中間体を硬化炉中で回転させながら、110℃にて6時間硬化させ、圧力容器を得た。
<トウプレグの拡幅性の評価方法>
トウプレグの拡幅性が不足すると、圧力容器の口金周辺に空隙を生じるため破壊の起点になりやすく、破裂強度の低下を招く。そこで、作製した圧力容器を切断して口金周辺の繊維強化複合材料層の断面を観察した際に発見された最も大きな空隙の大きさを拡幅性の指標とした。空隙が小さく品位が良好であるものをA評価、空隙が大きく品位が悪いものをC評価、空隙がA評価のものよりは大きいがC評価のものよりは小さく、実用上許容されるレベルであるものをB評価とした。
(実施例1)
成分[A]として“jER(登録商標)”807を75質量部、“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434を25質量部(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:33%)、成分[B]として“jERキュア(登録商標)”WAを43.9質量部(H/E=1.50)を用いて、上記<エポキシ樹脂組成物の調製方法>に従ってエポキシ樹脂組成物を調製した。このエポキシ樹脂組成物の、25℃、周波数10Hzで測定した複素せん断粘度(η10)は4.9Pa・s、エポキシ樹脂組成物を25℃にて48時間保管した後の増粘倍率は6.5倍であった。また、樹脂硬化物のガラス転移温度は115℃、曲げ破壊伸度は7.6%であった。
次に、このエポキシ樹脂組成物を用いて、上記<トウプレグの作製方法>に従って、Rcが26%のトウプレグを得た。この繊維強化複合材料の0°引張強度利用率は96%、拡幅性の評価結果はA評価であった。
(実施例2〜3)
表1に示したように、グリシジルアミン型エポキシ樹脂である“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434の含有量を変更し、成分[B]である“jERキュア(登録商標)”WAをH/Eが1.50となるように配合した以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表1に示したように、拡幅性、ポットライフ、0°引張強度利用率の全てで良好な結果が得られた。
(実施例4〜7)
表1に示したように、50℃における粘度が10Pa・s以下であるテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンである、“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434VLを用い(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:34〜61%)、成分[B]である“jERキュア(登録商標)”WAの配合量を変更した以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表1に示したように、拡幅性、ポットライフ、0°引張強度利用率の全てで良好な結果が得られた。また、グリシジルアミン型エポキシ樹脂として50℃における粘度が10Pa・s以下であるテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンを用いたことにより、特にポットライフに優れる結果が得られた。さらに、H/Eを1.25とした実施例5、H/Eを1.50とした実施例6は、H/Eを1.75とした実施例7と比較して、樹脂硬化物の耐熱性と変形能力のバランスに優れ、実施例6が全ての評価結果のバランスに最も優れた。
(実施例8〜10)
表1に示したように、50℃における粘度が10Pa・s以下であるテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンである、“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434VLを50質量部(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:59〜60%)、成分[B]である“jERキュア(登録商標)”WAをH/Eが1.50となるように配合し、さらに成分[C]として“カネエース(登録商標)”MX267(エポキシ樹脂[A]100質量部に対する強靱化剤の含有量:5〜27質量部)を加えた以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表1に示したように、拡幅性、ポットライフ、0°引張強度利用率の全てで良好であり、さらに樹脂硬化物の変形能力と耐熱性のバランスに特に優れる結果が得られた。
(実施例11)
表2に示したように、グリシジルアミン型エポキシ樹脂である“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434の含有量を50質量部(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:61%)とし、成分[B]として“jERキュア(登録商標)”WAを49.3質量部(H/E=1.50)配合し、成分[C]として“Hypro(登録商標)”1300X13NAを5質量部加えた以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表2に示したように、拡幅性、ポットライフ、0°引張強度利用率の全てで良好であり、さらに樹脂硬化物の変形能力に優れる結果が得られた。
(実施例12)
表2に示したように、グリシジルアミン型エポキシ樹脂である“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434の含有量を50質量部(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:61%)とし、成分[B]である“jERキュア(登録商標)”WAを49.3質量部(H/E=1.50)配合し、成分[C]として“Nanostrength(登録商標)”M52Nを5質量部加えた以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表2に示したように、拡幅性、ポットライフ、0°引張強度利用率の全てで良好であり、さらに樹脂硬化物の変形能力に優れる結果が得られた。
(実施例13)
表2に示したように、グリシジルアミン型エポキシ樹脂として、GANを50質量部(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:58%)を、成分[B]として“jERキュア(登録商標)”WAを38.9質量部(H/E=1.25)を用いた以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表2に示したように、拡幅性、ポットライフ、0°引張強度利用率の全てで良好な結果が得られた。
(実施例14)
表2に示したように、グリシジルアミン型エポキシ樹脂として、GANを50質量部(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:57%)を、成分[B]として“jERキュア(登録商標)”WAを46.8質量部(H/E=1.50)を配合し、さらに成分[C]として“カネエース(登録商標)”MX267を73質量部(エポキシ樹脂[A]100質量部に対する強靱化剤の含有量:27質量部)加えた以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表2に示したように、拡幅性、ポットライフ、0°引張強度利用率の全てで良好であり、さらに実施例13と比較して樹脂硬化物の変形能力に優れる結果が得られた。
(実施例15)
表2に示したように、成分[A]として“jER(登録商標)”828を30質量部、グリシジルアミン型エポキシ樹脂として、GANを20質量部と“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434を20質量部(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:51%)、成分[B]として“jERキュア(登録商標)”WAを42.7質量部(H/E=1.50)を配合し、さらに成分[C]として“カネエース(登録商標)”MX125を40質量部(エポキシ樹脂[A]100質量部に対する強靱化剤の含有量:10質量部)加えた以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表2に示したように、拡幅性、ポットライフ、0°引張強度利用率の全てで良好であり、さらに実施例13と比較して樹脂硬化物の耐熱性と変形能力のバランスに優れる結果が得られた。
(実施例16)
表2に示したように、50℃における粘度が10Pa・s以下であるテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンとして、“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434VLを38.3質量部(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:48%)、成分[B]として“jERキュア(登録商標)”WAを47.2質量部(H/E=1.50)を配合し、さらに成分[C]として“カネエース(登録商標)”MX267を54.6質量部(エポキシ樹脂[A]100質量部に対する強靱化剤の含有量:20.2質量部)加えた以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表2に示したように、拡幅性、ポットライフ、0°引張強度利用率の全てで良好な結果が得られた。
(実施例17)
表2に示したように、成分[A1]としてNC−3000−Lを10.5質量部加え、成分[B]として“jERキュア(登録商標)”WAをH/Eが1.50となるように配合した以外は、実施例16と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表2に示したように、拡幅性、ポットライフ、0°引張強度利用率の全てで良好であり、実施例16と比較して、ポットライフを損なうことなく、粘度を上げる調整ができた。さらに、樹脂硬化物の変形能力と耐熱性のバランスに特に優れる結果が得られた。
(実施例18)
表2に示したように、成分[A1]として“EPICLON(登録商標)”HP−7200Lを21質量部加え、成分[B]として“jERキュア(登録商標)”WAをH/Eが1.50となるように配合した以外は、実施例16と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表2に示したように、拡幅性、ポットライフ、0°引張強度利用率の全てで良好であり、実施例16と比較して、ポットライフを損なうことなく、粘度を上げる調整ができた。さらに、樹脂硬化物の耐熱性、および0°引張強度利用率のバランスに特に優れる結果が得られた。
(実施例19)
表2に示したように、成分[A1]として“D.E.R.(登録商標)”858を10.5質量部加え、成分[B]として“jERキュア(登録商標)”WAをH/Eが1.50となるように配合した以外は、実施例16と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表3に示したように、拡幅性、ポットライフ、0°引張強度利用率の全てで良好であり、実施例16と比較して、ポットライフを損なうことなく、粘度を上げる調整ができた。
(実施例20)
表2に示したように、成分[A1]として“jER(登録商標)”YX4000を21質量部加え、成分[B]として“jERキュア(登録商標)”WAをH/Eが1.50となるように配合した以外は、実施例16と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表3に示したように、拡幅性、ポットライフ、0°引張強度利用率の全てで良好であり、実施例16と比較して、ポットライフを損なうことなく、粘度を上げる調整ができた。
(実施例21)
表3に示したように、成分[A1]として“EPICLONE(登録商標)”HP−4770を10.5質量部加え、成分[B]として“jERキュア(登録商標)”WAをH/Eが1.50となるように配合した以外は、実施例16と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表3に示したように、拡幅性、ポットライフ、0°引張強度利用率の全てで良好であり、実施例16と比較して、ポットライフを損なうことなく、粘度を上げる調整ができた。
(実施例22)
表3に示したように、成分[B]として“KAYAHARD(登録商標)”A−Aを60.8質量部(H/E=1.50)用いた以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表3に示したように、拡幅性、ポットライフ、0°引張強度利用率の全てで良好な結果が得られた。ただし、実施例1と比較すると、実施例1の樹脂硬化物の変形能力と耐熱性のバランスの方が優れていた。
(実施例23)
表3に示したように、50℃における粘度が10Pa・s以下であるテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンである、“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434VLを50質量部(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:60%)、成分[B]として“KAYAHARD(登録商標)”A−Aを69.9質量部(H/E=1.50)配合し、さらに成分[C]として“カネエース(登録商標)”MX267を46質量部(エポキシ樹脂[A]100質量部に対する強靱化剤の含有量:17質量部)を加えた以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表3に示したように、拡幅性、ポットライフ、0°引張強度利用率の全てで良好であり、さらに実施例22と比較して樹脂硬化物の耐熱性と変形能力のバランスに優れる結果が得られた。
(実施例24)
表3に示したように、成分[A1]としてNC−3000−Lを11質量部加え、成分[B]として“KAYAHARD(登録商標)”A−AをH/Eが1.50となるように配合した以外は、実施例23と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表3に示したように、拡幅性、ポットライフ、0°引張強度利用率の全てで良好であり、実施例23と比較して、ポットライフを損なうことなく、粘度を上げる調整ができた。さらに、樹脂硬化物の変形能力と耐熱性のバランスに特に優れる結果が得られた。
(実施例25)
表3に示したように、成分[A1]として“EPICLON(登録商標)”HP−7200Lを21質量部加え、成分[B]として“KAYAHARD(登録商標)”A−AをH/Eが1.50となるように配合した以外は、実施例23と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表2に示したように、拡幅性、ポットライフ、0°引張強度利用率の全てで良好であり、実施例23と比較して、ポットライフを損なうことなく、粘度を上げる調整ができた。さらに、樹脂硬化物の耐熱性、および0°引張強度利用率のバランスに特に優れる結果が得られた。
(実施例26〜27)
表3に示したように、添加剤として“ビニレック(登録商標)”Kを加えた以外は、実施例16と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表3に示したように、拡幅性、ポットライフ、0°引張強度利用率の全てで良好な結果が得られた。ただし、粘度が高いため、拡幅性の評価結果がB評価となり、実施例16の方が優れていた。
(実施例28)
表6に示したように、50℃における粘度が10Pa・s以下であるテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンである、“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434VLを75質量部用いた以外は(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:81%)、実施例5と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表6に示したように、拡幅性、ポットライフ、0°引張強度利用率の全てで良好な結果が得られた。
(実施例29〜35)
表6に示したように、各種添加剤を配合した以外は、実施例16〜19、実施例23〜25と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表6に示したように、拡幅性、ポットライフ、0°引張強度利用率の全てで良好な結果が得られた。消泡剤を配合した実施例では、硬化後の圧力容器の表面に残存する泡が低減でき、外観品位が向上した。揺変剤を配合した実施例では、トウプレグのボビンの形状安定性が向上した。
(比較例1)
表4に示したように、成分[A]としてグリシジルアミン型エポキシ樹脂を用いず、“jER(登録商標)”828のみを用いたほか(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:0%)、硬化剤として成分[B]を用いず、“jERキュア(登録商標)”DICY7を6.3質量部、およびDCMU99を2質量部用いた以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表4に示したように、トウプレグの拡幅性が不十分であり、C評価であった。“jERキュア(登録商標)”DICY7のような、成分[B]とは異なり、成分[A]に相溶していない固形のエポキシ樹脂硬化剤を用いた場合には、トウプレグの拡幅性が不十分となることがわかる。
(比較例2)
表4に示したように、成分[A]としてグリシジルアミン型エポキシ樹脂を用いず、“jER(登録商標)”828のみを用いたほか(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:0%)、成分[B]である“jERキュア(登録商標)”WAを23.6質量部(H/E=1.00)用いた以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表4に示したように、拡幅性は良好であったものの、ポットライフ、および0°引張強度利用率が各実施例に対して劣る結果となった。このように、グリシジルアミン型エポキシ樹脂を配合しない場合はポットライフが低下し、H/Eが小さい場合は0°引張強度利用率が不十分となることが分かる。
(比較例3)
表4に示したように、成分[A]としてグリシジルアミン型エポキシ樹脂を用いず、“jER(登録商標)”828のみを用いたほか(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:0%)、成分[B]である“jERキュア(登録商標)”WAを47.2質量部(H/E=2.00)用いた以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物を作製、評価した。評価結果は、表4に示したように、ポットライフが各実施例および比較例2に対して劣る結果となった。また、樹脂硬化物が脆いため、ガラス転移温度、曲げ破壊伸度の測定ができなかった。このように、グリシジルアミン型エポキシ樹脂を配合しない場合は、H/Eの増加によりポットライフが低下することが分かる。また、H/Eを2.00と過剰に配合した場合は、樹脂硬化物が脆くなることが分かる。
(比較例4)
表4に示したように、50℃における粘度が10Pa・s以下であるテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンとして、“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434VLを50質量部(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:61%)用いたほか、成分[B]である“jERキュア(登録商標)”WAを23.6質量部(H/E=1.00)用いた以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表4に示したように、拡幅性、ポットライフは良好であったものの、0°引張強度利用率が各実施例に対して劣る結果となった。実施例2との比較からH/Eが小さい場合は0°引張強度利用率が不十分となることが分かる。
(比較例5)
表4に示したように、成分[A]としてグリシジルアミン型エポキシ樹脂を用いず、“jER(登録商標)”807のみを用いたほか(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:0%)、成分[B]である“jERキュア(登録商標)”WAを25.5質量部(H/E=1.00)用いた以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表4に示したように、拡幅性、ポットライフは良好であったものの、0°引張強度利用率が各実施例に対して劣る結果となった。ポットライフは許容される範囲であったが、グリシジルアミン型エポキシ樹脂を含む比較例4と比較すると劣っていた。このように、グリシジルアミン型エポキシ樹脂を配合しない場合はポットライフが低下し、H/Eが小さい場合は0°引張強度利用率が不十分となることが分かる。
(比較例6)
表4に示したように、成分[A]としてグリシジルアミン型エポキシ樹脂を用いず、“jER(登録商標)”807のみを用いたほか(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:0%)、成分[B]である“jERキュア(登録商標)”WAを50.9質量部(H/E=2.00)用いた以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物を作製、評価した。評価結果は、表4に示したように、ポットライフが各実施例および比較例5に対して劣る結果となった。また、樹脂硬化物が脆いため、ガラス転移温度、曲げ破壊伸度の測定ができなかった。このように、グリシジルアミン型エポキシ樹脂を配合しない場合は、H/Eの増加によりポットライフが低下することが分かる。また、H/Eを2.00と過剰に配合した場合は、樹脂硬化物が脆くなることが分かる。
(比較例7〜8)
表5に示したように、成分[A]として、“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434VLの配合量を変化させ(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:22%および86%)、成分[B]である“jERキュア(登録商標)”WAをH/Eが1.50となるように配合した以外は、比較例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表5に示したように、グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合が22%と不足している比較例7ではポットライフが不十分であり、グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合が86%と過剰な比較例8では樹脂硬化物の十分な変形能力が得られないことが分かる。
(比較例9〜10)
表5に示したように、成分[A]として、GANの配合量を変化させ(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:21%および86%)、成分[B]である“jERキュア(登録商標)”WAをH/Eが1.50となるように配合した以外は、比較例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表5に示したように、グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合が21%と不足している比較例9ではポットライフが不十分であり、グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合が86%と過剰な比較例10では、樹脂硬化物が脆いため、ガラス転移温度、曲げ破壊伸度の測定ができない結果となった。このように、グリシジルアミン型エポキシ基を過剰に配合すると、樹脂硬化物の十分な変形能力を得ることができないことが分かる。
(比較例11)
表5に示したように、添加剤として“ビニレック(登録商標)”Kを7質量部加えた以外は、比較例2と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表5に示したように、粘度が高いため、拡幅性の評価結果がC評価と不十分な結果となった。
(比較例12)
表5に示したように、成分[A]としてグリシジルアミン型エポキシ樹脂を用いず、“jER(登録商標)”828を80質量部用いたほか、主成分の化学構造中にヒドロキシ基を有する固形エポキシ樹脂(成分[A1]でない固形エポキシ樹脂)として“jER(登録商標)”1001を20質量部(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:0%)用い、成分[B]である“jERキュア(登録商標)”WAを20.7質量部(H/E=1.00)用いた以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表5に示したように、拡幅性は良好であったものの、ポットライフ、および0°引張強度利用率が各実施例に対して劣る結果となった。このように、比較例2との比較から、主成分の化学構造中にヒドロキシ基を有する固形エポキシ樹脂を配合した場合は、ポットライフが顕著に低下することが分かる。
(比較例13)
表5に示したように、成分[A]として“jER(登録商標)”828を30質量部、グリシジルアミン型エポキシ樹脂として、GANを20質量部と“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434を10質量部(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:42%)、成分[B]として“jERキュア(登録商標)”WAを38.6質量部(H/E=1.50)を配合し、さらに成分[C]として“カネエース(登録商標)”MX125を40質量部(エポキシ樹脂[A]100質量部に対する強靱化剤の含有量:10質量部)加えた以外は、実施例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表5に示したように、拡幅性、0°引張強度利用率は良好であったものの、ポットライフが各実施例に対して劣る結果となった。このように、グリシジルアミン型エポキシ樹脂を含む場合でも、主成分の化学構造中にヒドロキシ基を有する固形エポキシ樹脂を配合するなどした場合は、ポットライフが低下することが分かる。
(比較例14)
表5に示したように、成分[A]として、GANを30質量部(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:39%)、硬化剤として成分[B]を用いず、“Baxxodur(登録商標)”EC201を26質量部(H/E=1.00)配合した以外は、比較例1と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物を作製、評価した。評価結果は、表5に示したように、ポットライフが不十分であった。硬化剤として液状の脂肪族アミンを用いる場合は、液状芳香族アミンを用いる場合と比較して著しくポットライフが短いことが分かる。
(比較例15)
表6に示したように、50℃における粘度が10Pa・s以下であるテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンである、“スミエポキシ(登録商標)”ELM−434VLを79質量部用い(グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合:85%)、成分[B]である“jERキュア(登録商標)”WAの配合量を42.7質量部(H/E=1.23)とした以外は、実施例28と同じ方法で、エポキシ樹脂組成物、トウプレグ、圧力容器を作製、評価した。評価結果は、表6に示したように、拡幅性、ポットライフは良好であったものの、0°引張強度利用率が各実施例に対して劣る結果となった。実施例28との比較からH/Eが小さい場合は0°引張強度利用率が不十分となることが分かる。
Figure 2021116404
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Claims (10)

  1. 下記成分[A]〜[B]を含み、かつ条件(I)〜(IV)を満たすエポキシ樹脂組成物が強化繊維束に含浸されてなるトウプレグ。
    [A]エポキシ樹脂
    [B]25℃で液状の液状芳香族アミン
    (I)液状芳香族アミン[B]の活性水素当量数(H)と、エポキシ樹脂[A]中のエポキシ当量数(E)の比(H/E)が1.25〜1.80
    (II)エポキシ樹脂[A]中のエポキシ基のうち、グリシジルアミン型であるエポキシ基の割合が30〜85%
    (III)平行平板振動レオメータを用いて、25℃、周波数10Hzで測定した複素せん断粘度(η10)が150Pa・s以下
    (IV)エポキシ樹脂組成物を25℃にて48時間保管した後の増粘倍率が7倍以下
  2. 下記成分[C]を含み、成分[C]の含有量がエポキシ樹脂[A]100質量部に対して3〜30質量部である、請求項1に記載のトウプレグ。
    [C]強靱化剤
  3. 成分[C]として、コアシェルゴム粒子を含む、請求項2に記載のトウプレグ。
  4. 成分[B]として、下記成分[B1]を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のトウプレグ。
    [B1]下記化学式(1)で表される構造をもつ25℃で液状の液状芳香族アミン
    Figure 2021116404
    式中、R、R、Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基のうちのいずれかであり、R、R、Rは同一であっても異なっていてもよい。
  5. 成分[A]として、下記成分[A1]を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のトウプレグ。
    [A1]主成分の化学構造中にヒドロキシ基を有さない、25℃で固体のエポキシ樹脂
  6. 成分[A1]として、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、オキサゾリドン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビスナフタレン型エポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一つを含む、請求項5に記載のトウプレグ。
  7. 成分[A1]として、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を含む、請求項5に記載のトウプレグ。
  8. 成分[A1]として、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂を含む、請求項5に記載のトウプレグ。
  9. 成分[A]として、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンを含む、請求項1〜8のいずれかに記載のトウプレグ。
  10. テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの50℃における粘度が10Pa・s以下である、請求項9に記載のトウプレグ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023176934A1 (ja) * 2022-03-17 2023-09-21 東レ株式会社 エポキシ樹脂組成物、繊維強化複合材料およびその製造方法
WO2023203891A1 (ja) * 2022-04-20 2023-10-26 三菱瓦斯化学株式会社 エポキシ樹脂硬化剤、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物、繊維強化複合材、高圧ガス容器

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