JP2006219513A - エポキシ樹脂組成物・プリプレグ・繊維強化複合材料 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物・プリプレグ・繊維強化複合材料 Download PDF

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Abstract

【課題】タック・ドレープ性に優れ、かつ、機械物性にすぐれた樹脂組成物を提供することにある。
【解決手段】下記[A]〜[C]を必須成分とし、かつ[B]が[A]に溶解していることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
[A]エポキシ樹脂
[B]熱可塑性樹脂
[C]平均粒径が1μm以下の架橋NBR粒子
【選択図】 なし

Description

本発明は、エポキシ樹脂組成物・プリプレグ・繊維強化複合材料に関する。より詳しくは、プリプレグとしてはタック・ドレープ性などの作業性に優れ、かつ繊維強化複合材料しては、耐衝撃性・圧縮強度などの機械物性にすぐれるエポキシ樹脂組成物に関するものである。
近年、炭素繊維やアラミド繊維などを強化繊維として用いた繊維強化複合材料は、その高い比強度・比弾性率を利用して、航空機や自動車などの構造材料や、テニスラケット、ゴルフシャフト、釣り竿などの一般産業用途に利用されて、年々拡がりを見せている。
近年、使用例が増えるに従い、この繊維強化複合材料に対する要求特性は、厳しくなってきている。
特に、プリプレグのタックやドレープ性などの作業性に関わる特性と、繊維強化複合材料としたときの物性、特に耐衝撃性や圧縮特性などとの両立がもとめられてきている。
従来のプリプレグでは、固形ゴム(エラストマー)をマトリックス樹脂に混ぜ込むことにより、タック・ドレープ性や靱性を確保することが古くから行われてきた。しかし、固形ゴムの配合では、タック・ドレープ性や、繊維強化複合材料の靱性は確保できるが、マトリックス樹脂の弾性率が下がるために圧縮強度が下がることがあり、配合できる量に限界があった。
圧縮強度を保ちつつ、靱性を確保するためにポリスルホンや芳香族オリゴマーなどに代表される熱可塑性樹脂を配合する方法が開示されている。しかし、この方法では、タック・ドレープ性が損なわれることや、耐溶剤性に劣るという熱可塑性樹脂の一般的欠点が露呈することがあり、組成物の設計の自由度が小さかった。(例えば、特許文献1、2)
また、マトリックス樹脂に樹脂粒子を配合して耐衝撃性や、ピール強度などに代表される靱性を上げる方法が開示され、ベース樹脂に熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂からなる樹脂微粒子を分散させて耐衝撃性を向上させ、タック・ドレープ性を維持した例がある。ただ、この例では、微粒子として、ゴム粒子の使用は言及されていない上、ゴム(エラストマー)の使用は、耐熱性と靱性の効果の面で不十分とされている。(特許文献3)
ベース樹脂にゴム粒子を配合した例としては、5〜75μmの固形ゴム粒子をエポキシ樹脂組成物に配合し、耐衝撃性を向上させた例があるが、ゴム粒子の粒子径が大きいために、この場合でも固形ゴムを配合した場合と同様に圧縮強度を低下させることがある。(特許文献4)
また、樹脂微粒子として1μm以下のナノサイズの架橋ゴム粒子を使用することによりピール強度を向上させることが開示されている。この例のなかでは、熱可塑性樹脂と樹脂粒子の組み合わせが開示されているが、タック・ドレープ性への影響の大きい熱可塑性樹脂の配合量について言及がなく、またナノサイズのゴム粒子のタック改善への特異的な効果には一切言及されていない。(特許文献5)
このように、タック・ドレープ性と圧縮特性・耐衝撃性のすべてを満足する良い方法がないというのが実状である。
特開昭60−243113号公報 特開昭61−228016号公報 特開昭63−162732号公報 特開平4−268361号公報 国際公開第99/02586号パンフレット
本発明の課題は、タック・ドレープ性に優れ、かつ、機械物性にすぐれた樹脂組成物を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明は次の構成を有する。すなわち下記の[A]〜[C]を必須成分とし、かつ[B]が[A]に溶解していることを特徴とするエポキシ樹脂組成物である。
[A]エポキシ樹脂
[B]熱可塑性樹脂
[C]平均粒径が1μm以下の架橋NBR粒子
本発明によれば、以下に説明するとおり、繊維強化複合材料のマトリックス樹脂として目的に応じた設計の自由度の高いエポキシ樹脂組成物を提供するものであり、本発明のエポキシ樹脂組成物と強化繊維とからなるプリプレグはタック・ドレープ性に優れたものとなる。また、本発明の繊維強化複合材料は、航空宇宙用途、海洋船舶用途、一般産業用途などに好適な圧縮特性や耐衝撃性などを両立した機械物性を有するものとなる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の要するところは下記のごとく、マトリックス樹脂に熱可塑性樹脂を溶解させ、かつ、粒径1μm以下の架橋NBR粒子を分散させることにより、タック・ドレープ性と圧縮特性と靱性を満足するエポキシ樹脂組成物を見出した点による。
本発明における[A]成分に使用されるエポキシ樹脂は、耐熱性や機械特性発現のために必要な成分である。
具体的には、アミン類、フェノール類、カルボン酸、分子内不飽和炭素などの化合物を前駆体とするエポキシ樹脂が好ましい。
アミン類を前駆体とするグリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、キシレンジアミンのグリシジル化合物、トリグリシジルアミノフェノールや、グリシジルアニリンのそれぞれの位置異性体やアルキル基やハロゲンでの置換体が挙げられる。中でも、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンは耐熱性に優れるため航空機構造材としての複合材料用樹脂として好ましい。一方、グリシジルアニリン類は高い弾性率が得られるため好ましい。
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンの市販品としては、スミエポキシELM434(住友化学製)や、アラルダイトMY720、アラルダイトMY721、アラルダイトMY9512、アラルダイトMY9612、アラルダイトMY9634、アラルダイトMY9663(以上ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)、エピコート604(ジャパンエポキシレジン社製)などが挙げられる。
キシレンジアミンのグリシジル化合物の市販品としてはTETRAD−X(三菱瓦斯化学社製)が挙げられる。
トリグリシジルアミノフェノールの市販品としてはエピコート630(ジャパンエポキシレジン社製)、アラルダイトMY0500、MY0510(以上ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)、ELM100(住友化学製)などが挙げられる。
グリシジルアニリン類の市販品としては、GAN、GOT(以上日本化薬(株)製)などが挙げられる。
フェノールを前駆体とするグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジフェニルフルオレン型エポキシ樹脂やそれぞれの各種異性体やアルキル、ハロゲン置換体などがあげられる。また、フェノールを前駆体とするエポキシ樹脂をウレタンやイソシアネートで変性したエポキシ樹脂なども、このタイプに含まれる。
特に、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂や、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、イソシアネート変性によりオキサゾリドン環を有するエポキシ樹脂は、低吸水率や耐熱性の観点から好ましく用いられる。
また、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を臭素化したものは、耐熱性、耐水性、難燃性の面で好ましく用いられる。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、エピコート(登録商標)825、エピコート826、エピコート827、エピコート828、エピコート834、エピコート1001、エピコート1002、エピコート1003、エピコート1004、エピコート1004AF、エピコート1007、エピコート1009(以上ジャパンエポキシレジン(株)製)、エピクロン(登録商標)850(大日本インキ化学工業(株)製)、エポトート(登録商標)YD−128(東都化成(株)製)、DER−331、DER−332(ダウケミカル社製)などが挙げられる。
ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としてはエピコート806、エピコート807、エピコート1750、エピコート4004P、エピコート4007P、エピコート4009P(以上ジャパンエポキシレジン(株)製)、エピクロン830(大日本インキ化学工業(株)製)、エポトートYD−170、エポトートYD−175、エポトートYDF2001、エポトートYDF2004(以上東都化成(株)製)などが挙げられる。
ビスフェノールS型エポキシ樹脂としては、EXA−1515(大日本インキ化学工業(株)製)などがあげられる。
ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、エピコートYX4000H、エピコートYX4000、エピコートYL6616(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、NC−3000(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としてはエピコート152、エピコート154(以上ジャパンエポキシレジン社製)、エピクロンN−740、エピクロンN−770、エピクロンN−775(以上、大日本インキ化学工業(株)製)などが挙げられる。
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、エピクロンN−660、エピクロンN−665、エピクロンN−670、エピクロンN−673、エピクロンN−695(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、EOCN−1020、EOCN−102S、EOCN−104S(以上、日本化薬(株)製)などが挙げられる。
レゾルシノール型エポキシ樹脂の市販品としては、デナコール(登録商標)EX−201(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂の市販品としては、エピクロンHP4032(大日本インキ化学工業(株)製)、NC−7000、NC−7300(以上、日本化薬(株)製)などが挙げられる。
トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂の市販品としてはTMH−574(住友化学社製)などが挙げられる。
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としてはエピクロンHP7200、エピクロンHP7200L、エピクロンHP7200H(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、Tactix558(ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)、XD−1000−1L、XD−1000−2L(以上、日本化薬(株)製)などが挙げられる。
ウレタンおよびイソシアネート変性エポキシ樹脂の市販品としては、オキサゾリドン環を有するAER4152(旭化成エポキシ(株)製)やACR1348(旭電化(株)製)などが挙げられる。
カルボン酸を前駆体とするエポキシ樹脂としては、フタル酸のグリシジル化合物や、ヘキサヒドロフタル酸、ダイマー酸のグリシジル化合物の各種異性体が挙げられる。
フタル酸ジグリシジルエステルの市販品としてはエポミック(登録商標)R508(三井化学(株)製)、デナコールEX−721(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルの市販品としてはエポミックR540(三井化学(株)製)、AK−601(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
ダイマー酸ジグリシジルエステルの市販品としては、エピコート871(ジャパンエポキシレジン(株)製)や、エポトートYD−171(東都化成(株)製)などが挙げられる。
分子内不飽和炭素を前駆体とするエポキシ樹脂としては、例えば脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。その市販品としては、セロキサイド(登録商標)2021、セロキサイド2080(以上ダイセル化学工業(株)製)、CY183(ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)が挙げられる。
本発明における[B]成分は、[A]成分に溶解可能な、エポキシ樹脂組成物を含浸させたプリプレグにタックならびにドレープ性を与えるために必要な成分である。
具体的には、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルスルホン、ボリビニルホルマール、ポリメタクリル酸メチルなどが好ましく用いられる。
これらの中で特に、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホンのごとく、主骨格に少なくともフェニルエーテル基かフェニルチオエーテル基の一方を含むものが耐熱性の観点から好ましく用いられる。また、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリスルホンは、耐溶剤性の観点から好ましく用いられる。また、末端官能基がエポキシ基と反応性を有するものは、エポキシ樹脂との接着性や相溶性の観点から好ましく用いられる。反応性の官能基として、水酸基、アミノ基、酸無水物などが挙げられる。
これらの配合量は、[A]成分の選び方によりことなるが、[A]成分100重量部に対して[B]成分は1〜25重量部が溶解していることが良く、好ましくは、3〜20重量部である。1重量部未満だとエポキシ樹脂組成物の粘度が低くなりすぎ、タックが不十分になることがあり、25重量部よりも多いと、エポキシ樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて、タックが不十分になることがあるばかりか、ドレープ性も損なわれることがある。本発明のエポキシ樹脂組成物として、その粘度領域は、タック・ドレープ性を達成するために、50℃における粘度が100〜2000Pa・sにあることが好ましい。[A]成分や[C]成分の種類、配合比により[B]成分の量を調整することで好ましい粘度範囲に調整することができる。これらの熱可塑性樹脂は、単独でも2種類以上を混合して用いても良い。2種類以上の熱可塑性樹脂を加える場合は、少なくともどちらか一方の成分が、[A]成分に溶解していればよい。
本発明における[C]成分は、エポキシ樹脂組成物を含浸させたプリプレグに適度なタックを与えるためや、エポキシ樹脂組成物の硬化物、繊維強化複合材料の靱性及び耐衝撃性の向上の為に必要な成分である。
具体的には、平均粒径が1μm以下の架橋NBR粒子である。粒子径が1μmより大きいと、繊維束内に、粒子が入っていかず高靭性化効果が得られにくかったり、また同等の靭性を得るために、粒子の組成物中における割合を増やさざるを得なくなり、組成物の設計が難しくなることや、タック性が弱くなることがある。
本発明における粒子径とは、後述する顕微鏡観察によって得られる1次粒子の長径のことを指し、平均粒径は少なくとも50個の粒子の観察により求められる。
また、これらの粒子は表面の末端官能基がエポキシ樹脂もしくは硬化剤と反応性を有していると、粒子とエポキシ樹脂の接着性が改良され、より高靭性なものが得られるため好ましい。この様な末端官能基としては、エポキシ基、カルボキシル基、水酸基などが挙げられる。
このような架橋NBR粒子の市販品を挙げると、末端官能基がカルボキシル基であるFX602(日本合成ゴム製)やDP5097(ZeonChemical製)、末端官能基がエポキシ基であるFX501(日本合成ゴム製)などが挙げられる。
[C]成分の量は、エポキシ樹脂組成物に必要な靱性によって異なるが、[A]成分100重量部に対し、0.5重量部〜15重量部が好ましい。0.5重量部未満であると、靱性向上効果が得られにくいことがあり、15重量部より多くになると、組成物の耐熱性を落とすことがあり好ましくない。
架橋NBR粒子の形態や大きさや存在分布状態の評価は走査型電子顕微鏡によって行うことが好ましい。粒子形態、大きさについてはプリプレグ中のマトリックス樹脂を適当な溶剤により溶解させ粒子成分のみを濾別し、走査型電子顕微鏡で観察することが好ましい。粒子の含有量は、濾別した微粒子の重量とプリプレグ重量および溶け残った強化繊維の重量から計算できる。
また、架橋NBR粒子のプリプレグ中の存在分布については、プリプレグ中の樹脂が流動しない条件で長時間掛けて徐々に硬化させたのち、研磨面を観察することで確認することが好ましい。観察前に四酸化オスミウムや、燐タングステン等による染色によってコントラストを付けたり、溶剤によって、粒子のみを溶解させて空洞を作るなどの処理をすることがより好ましい。
本発明のエポキシ樹脂の硬化剤としては、エポキシ樹脂と反応しうる活性基を有する化合物であればこれを用いることができる。好ましくは、アミノ基、酸無水物基、アジド基を有する化合物が適している。例えば、ジシアンジアミド、脂環式アミン、脂肪族アミン、芳香族アミン、アミノ安息香酸エステル類、各種酸無水物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、イミダゾール誘導体をはじめ、三フッ化ホウ素錯体や三塩化ホウ素錯体のようなルイス酸錯体などが挙げられる。
特に機械物性にすぐれた硬化物を与えるという面で芳香族アミン硬化剤が好ましく用いられる。中でも、耐熱性の観点から芳香族ポリアミン類が好ましい。
芳香族ポリアミンの具体例をあげると、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、メタキシレンジアミンやこれらの各種誘導体などが挙げられる。これらの硬化剤は単独もしくは2種類以上を併用する事ができる。中でも、組成物により耐熱性を与える面からジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンが望ましい。
その添加量の最適値は、[A]〜[C]成分の種類・量、硬化剤の種類によりことなる。例えば、芳香族アミン硬化剤では、化学量論的な当量比が本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれる全エポキシ基に対して0.5〜1.4の間にあることが好ましい。特に好ましくは0.6〜1.4である。
硬化剤はモノマー、オリゴマーいずれの形でも使用できる。[A]〜[C]成分との混合時は粉体、液体いずれの形態でも良い。これらの硬化剤は単独で用いていもいいし、併用してもよい。また、硬化促進剤と併用しても良い。例えば、芳香族ポリアミン類とルイス酸錯体の組み合わせや、ジシアンジアミドとイミダゾール誘導体との組み合わせ、ジシアンジアミドと尿素化合物の組み合わせ、芳香族ポリアミン、ジシアンジアミドと尿素化合物のような組み合わせは、比較的低温で硬化しながら、高い耐熱耐水性が得られるために好ましくもちいられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物には強化繊維層間を確保するために、実質的にエポキシ樹脂に不溶な粒子を添加してもよい。層間を確保することにより、耐衝撃性が向上するなどの靱性向上効果が得られる。具体的にはガラスビーズ、硬化した熱硬化性樹脂からなる粒子、エポキシに不溶化した熱可塑性樹脂などが添加できる。これらの粒径は5μmから75μmであると、強化繊維束中に入りこまず、かつ、繊維の配向を乱さないという面で好ましい。これらの配合量は[A]成分100重量部に対して、1〜10重量部が好ましい。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物の物性を損なわない範囲で、ナノカーボンや無機充填剤などを添加しても良い。ナノカーボンとしては、カーボンナノチューブ、フラーレンやそれぞれの誘導体が挙げられる。無機充填剤としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物の混練方法は、一般的にエポキシ樹脂組成物の調製に使用されるどのような方法でもよい。例えば、ニーダーやプラネタリーミキサーなどが用いられる。
本発明のプリプレグは、例えば、リバースロールコーターやナイフコーターなどにより前記本発明のエポキシ樹脂組成物を離型紙上に塗布してフィルム化し、強化繊維に該エポキシ樹脂組成物のフィルムを重ねて加熱加圧して含浸させることにより製造することができる。
本発明のプリプレグに用いる強化繊維としては、ガラス繊維、ケブラー繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、ホウ素繊維などが挙げられる。中でも比強度・比弾性率の点で炭素繊維や黒鉛繊維が好ましい。
本発明においては、用途に応じてあらゆる種類の炭素繊維や黒鉛繊維を用いることが可能であるが、耐衝撃性に優れ、高い剛性および機械強度を有する複合材料が得られることから、JIS R7601に記載の方法によるストランド引張試験における引張弾性率が200GPa以上、引張強度4.4GPa以上 、引張伸度1.7%以上の高強度高伸度炭素繊維が最も適している。
これら強化繊維の形態としては、一方向に引き揃えた長繊維、二方向織物、不織布、マット、ニット、組み紐などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明のプリプレグは単位面積あたりの強化繊維量が100〜2000g/mであることが好ましい。かかる強化繊維量が、100g/m未満では、所定の厚みを得るために積層枚数を多くする必要があり、作業が繁雑となることがあり好ましくない。一方で、2000g/mを超えるとプリプレグのドレープ性が悪くなるため好ましくない。
本発明のプリプレグは繊維重量含有率が30〜80%のものが好ましく用いられる。好ましくは35〜70%であり、更に好ましくは40〜65%である。繊維重量含有率が30%未満だと樹脂の量が多すぎて、比強度、比弾性率に優れる繊維強化複合材料の利点が得られず、80%を超えると樹脂の含浸不良が生じ、得られる複合材料はボイドの多いものとなる恐れがある。
本発明の繊維強化複合材料は、上記のプリプレグを賦形し、加熱硬化することにより製造できる。賦形は単数または複数のプリプレグを型上や、コア材上に積層してもよい。加熱は、オートクレーブ、オーブン、プレスなどの装置により行われる。加熱の際、減圧もしくは加圧しても良い。コア材としては、フォームコアやハニカムコアなどが好ましく用いられる。フォームコアとしては、ウレタンやポリイミドが好ましく用いられる。ハニカムコアとしてはアルミコアやガラスコア、アラミドコアなどが好ましく用いられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、この実施例における物性の測定、評価およびプリプレグの作製は以下のように行った。
(1)未硬化樹脂の粘度測定
エポキシ樹脂組成物の未硬化物の粘度は、動的粘弾性測定装置(レオメーターRDA2:レオメトリック社製)を用い、直径40mmのパラレルプレートを用い、昇温速度2℃/minで単純昇温し、周波数0.5Hz、Gap 1mmで測定を行った。
(2)硬化物のガラス転移温度
硬化物のガラス転移温度の測定については示差熱量計(DSC)を用いて、JIS K7121(1987)に基づいてもとめた中間点温度をガラス転移温度とした。
(3)硬化物の靱性試験方法
インストロン万能試験機(インストロン社製)を用い、ASTEM D5045に従って実験をおこなった。ここで言う、硬化物の靱性とは変形モード1(開口型)の臨界応力強度のことをさしている。
(4)プリプレグの作製
プリプレグは以下の様にして作製した。未硬化の樹脂組成物をナイフコーターを用いて、目付52g/mで離型紙上にフィルム化し、樹脂フィルムとした。この樹脂フィルムを用いて、一方向に引き揃えた炭素繊維(目付190g/m)の両面から加熱加圧含浸し、一方向プリプレグを得た。なお炭素繊維は”トレカ”(登録商標)T701G−12K−31E(東レ(株))を用いた。
(5)衝撃後残存圧縮強度試験
一方向プリプレグを(+45°/0°/−45°/90°)3s構成で、疑似等方的に24枚積層し、オートクレーブにて、180℃で2時間、0.59MPaの圧力下、昇温速度1.5℃/分で成型して積層体を作製した。この積層体から、縦150mm×横100mmの試験片を切り出し、ASTM D695に従い、ガードナー衝撃装置を用いて試験片の中心部に6.7J/mmの落錘衝撃を与え、前述のインストロン万能試験機を用いて衝撃後の圧縮強度を求めた。
(6)高温湿潤下での0°圧縮強度(CHW)
一方向プリプレグを強化繊維の方向が同一になるよう6枚積層後、オートクレーブにて、180℃で2時間、0.59MPaの圧力下、昇温速度1.5℃/分で成型して積層体を作製した。この積層体から縦(繊維方向)に79.4mm、横12.7mmの試験片を切り出した。この試験片を、71℃の温水中に2週間浸漬した後、JIS K7076(1991)に従い、前述のインストロン万能試験機を用いて、82℃でのCHWを求めた。
(実施例1)[A]成分であるエピコート807、85重量部に対し、[C]成分であるFX501Pを15重量部混練し、均一に分散させ粒子15重量%の分散物を得た。これをFX501/エピコート807分散物とする。
[A]成分としてエピコート630を20重量部、エピコート807を3重量部、エピコートYX4000を20重量部、AER4152を40重量部、[B]成分として、スミカエクセル5003Pを13重量部加え、混練後150℃に昇温し、[B]成分を[A]成分中に溶解させたのち、70℃まで冷却した。
冷却後、70℃に保持したまま、FX501/エピコート807分散物を20重量部(FX501、3部含有)加え混練した。続いて、硬化剤としてエポキシ樹脂に対して当量比が0.85になるように4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(以下、4,4’−DDS)を28重量部、硬化触媒として三フッ化ホウ素ピペリジン錯体を0.7重量部、その他の成分としてベルパールR800(硬化フェノール粒子;鐘紡化学社製)を5重量部加えて混練しエポキシ樹脂組成物を得た。
この樹脂を(1)の条件で粘度を評価したところ、50℃における粘度は、150Pa・sとなった。また、オーブン中で、180℃、2時間で硬化させたところ、ガラス転移温度は180℃となった。(3)に従って樹脂組成物の靱性を評価したところ、1.15MPa・m−1/2となった。
上述の(4)の条件で一方向プリプレグを作製しプリプレグのタックを触感により評価したところ、良好であった。(5)の条件にしたがって、コンポジットの衝撃後圧縮強度を評価したところ、260MPaであった。(6)の条件にしたがって、CHWを評価したところ1050MPaであった。
(実施例2)[A]成分であるYD128、80重量部に対し、[C]成分であるFX602Pを20重量部混練し、均一に分散させ粒子20重量%の分散物を得た。これをFX602P/YD128分散物とする。
[A]成分としてアラルダイトMY721を40重量部、エピクロンHP7200Lを20重量部、YD128を4重量部、AER4152を20重量部添加し、[B]成分として、スミカエクセル5003Pを5重量部加え、混練後150℃に昇温し、[B]成分を[A]成分中に溶解させたのち、70℃まで冷却した。
冷却後、70℃に保持したまま、FX602/YD128分散物を20重量部(FX602、4部含有)加え混練した。続いて、エポキシ樹脂に対して当量比が0.8になるように4,4’−DDSを30重量部、ジシアンジアミド2重量部、ジクロロメチルジメチルウレア0.5重量部、ベルパールR800を7重量部加えて混練しエポキシ樹脂組成物を得た。
この樹脂を(1)の条件で粘度を評価したところ、50℃における粘度は、1350Pa・sとなった。また、オーブン中で、180℃、2時間で硬化させたところ、ガラス転移温度は180℃となった。(3)に従って樹脂組成物の靱性を評価したところ、1.10MPa・m−1/2となった。
上述の(4)の条件で一方向プリプレグを作製しプリプレグのタックを触感により評価したところ、良好であった。(5)の条件にしたがって、コンポジットの衝撃後圧縮強度を評価したところ、275MPaであった。(6)の条件にしたがって、CHWを評価したところ1150MPaであった。
(比較例1)[A]成分としてエピコート630を20重量部、エピコート807を20重量部、エピコートYX4000を20重量部、AER4152重量部、[B]成分として、スミカエクセル5003Pを13重量部加え、混練後150℃に昇温し、[B]成分を[A]成分中に溶解させたのち、70℃まで冷却した。
続いて、エポキシ樹脂に対して当量比が0.85になるように4,4’−DDSを28重量部、三フッ化ホウ素ピペリジン錯体を0.7重量部、ベルパールR800を7重量部加えて混練しエポキシ樹脂組成物を得た。
この樹脂を(1)の条件で粘度を評価したところ、50℃における粘度は70Pa・sとなった。また、オーブン中で、180℃、2時間で硬化させたところ、ガラス転移温度は183℃となった。(3)に従って樹脂組成物の靱性を評価したところ、0.77MPa・m−1/2となった。
上述の(4)の条件で一方向プリプレグを作製しプリプレグのタックを触感により評価したところ、タックが非常に弱いものであった。(5)の条件にしたがって、コンポジットの衝撃後圧縮強度を評価したところ、190MPaであった。(6)の条件にしたがって、CHWを評価したところ1050MPaであった。
(比較例2)[A]成分であるYD128、80重量部に対し、[C]成分であるFX602Pを20重量部混練し、均一に分散させ粒子20重量%の分散物をえた。これをFX602P/YD128分散物とする。
[A]成分としてアラルダイトMY721を40重量部、エピクロンHP7200Lを20重量部、YD128を4重量部、AER4152を20重量部添加し、混練後150℃に昇温したのち、70℃まで冷却した。
冷却後、70℃に保持したまま、FX602/YD128分散物を20重量部(FX602、4部含有)加え混練した。続いて、エポキシ樹脂に対して当量比が0.8になるように4,4’−DDSを30重量部、ジシアンジアミド2重量部、ジクロロメチルジメチルウレア0.5重量部、ベルパールR800を7重量部加えて混練しエポキシ樹脂組成物を得た。
この樹脂を(1)の条件で粘度を評価したところ、50℃における粘度は、50Pa・sとなった。また、オーブン中で、180℃、2時間で硬化させたところ、ガラス転移温度は180℃となった。(3)に従って樹脂組成物の靱性を評価したところ、1.00MPa・m−1/2となった。
上述の(4)の条件で一方向プリプレグを作製しプリプレグのタックを触感により評価したところ、タックがほとんどなかった。(5)の条件にしたがって、コンポジットの衝撃後圧縮強度を評価したところ、260MPaであった。(6)の条件にしたがって、CHWを評価したところ1150MPaであった。
(比較例3)[A]成分として、ELM434を25重量部、YD128を40重量部、エピコート1001を35重量部、その他成分として、固形ゴムNIPOL1072を4.5重量部加えて続いて混練し、85℃まで昇温し1時間ホールドすることで、固形分を完全に溶解させた。その後65℃まで降温し、エポキシ樹脂に対する当量比が0.7になるように4,4’−DDSを30重量部、トレパールSP500(ナイロン12粒子;東レ(株)製)を7.1重量部添加し30分混練し、エポキシ樹脂組成物を得た。
この樹脂を(1)の条件で粘度を評価したところ、50℃における粘度は、190Pa・sとなった。また、オーブン中にて、180℃、2時間で硬化させたところ、ガラス転移温度は190℃となった。(3)に従って樹脂組成物の靱性を評価したところ、1.05MPa・m−1/2となった。
上述の(4)の条件で一方向プリプレグを作製しプリプレグのタックを触感により評価したところ、タックは良好であった。(5)の条件にしたがって、コンポジットの衝撃後圧縮強度を評価したところ、270MPaであった。(6)の条件にしたがって、CHWを評価したところ850MPaであった。

Claims (6)

  1. 下記[A]〜[C]を必須成分とし、かつ[B]が[A]に溶解していることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
    [A]エポキシ樹脂
    [B]熱可塑性樹脂
    [C]平均粒径が1μm以下の架橋NBR粒子
  2. [B]成分が、[A]成分100重量部に対して、1〜25重量部溶解していることを特徴とする請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
  3. [B]成分が、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホンの内の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1もしくは2に記載のエポキシ樹脂組成物。
  4. [C]成分が、エポキシ基に対して反応性がある官能基を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を繊維基材に含浸させてなるプリプレグ。
  6. 請求項5に記載のプリプレグを硬化させてなる繊維強化複合材料。
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